IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ エイターリンク株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-受信機及び無線給電システム 図1
  • 特許-受信機及び無線給電システム 図2
  • 特許-受信機及び無線給電システム 図3
  • 特許-受信機及び無線給電システム 図4
  • 特許-受信機及び無線給電システム 図5
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-07
(45)【発行日】2023-12-15
(54)【発明の名称】受信機及び無線給電システム
(51)【国際特許分類】
   H02J 7/02 20160101AFI20231208BHJP
   H02J 50/20 20160101ALI20231208BHJP
   H02J 7/00 20060101ALI20231208BHJP
   H02J 7/04 20060101ALI20231208BHJP
   H02J 7/10 20060101ALI20231208BHJP
   H04B 5/02 20060101ALI20231208BHJP
【FI】
H02J7/02 G
H02J50/20
H02J7/00 301D
H02J7/04 C
H02J7/10 H
H02J7/10 B
H04B5/02
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2023063317
(22)【出願日】2023-04-10
【審査請求日】2023-04-10
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】520354692
【氏名又は名称】エイターリンク株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002815
【氏名又は名称】IPTech弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】久保内 智洋
(72)【発明者】
【氏名】小舘 直人
【審査官】辻丸 詔
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-114911(JP,A)
【文献】特開2013-211972(JP,A)
【文献】特開2018-107963(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 50/00-50/90
H02J 7/00
H02J 7/02
H02J 7/04
H02J 7/10
H04B 5/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
交流信号からなる送信電力を無線で受電する受信機であって、
前記受信機は、前記送信電力を整流する整流部と、整流部からの整流電圧を管理する電力管理部と、電力管理部からの出力電圧により充電される充電部と、前記充電部からの供給電力により動作し、前記受信機全体の制御を行う制御部とを有し、
前記充電部は複数のキャパシタを有し、前記充電部は、前記送信電力の受電開始から所定時間までの間、前記複数のキャパシタのうち他のキャパシタの充電電流を一のキャパシタの充電電流よりも小さくする第2の電流制御部を有する受信機。
【請求項2】
前記第2の電流制御部は、前記複数のキャパシタへの充電電力供給経路において、前記一のキャパシタと前記他のキャパシタとの間に介在された電流制限素子である、請求項に記載の受信機。
【請求項3】
前記一のキャパシタの容量が前記他のキャパシタの容量と同等またはより小さい、請求項に記載の受信機。
【請求項4】
交流信号からなる送信電力を無線で送電する送信機と、
前記送信電力を無線で受電する受信機であって、前記送信電力を整流する整流部と、整流部からの整流電圧を管理する電力管理部と、電力管理部からの出力電圧により充電される充電部と、前記充電部からの供給電力により動作し、前記受信機全体の制御を行う制御部とを有する前記受信機とを有する無線給電システムであって、
前記充電部は複数のキャパシタを有し、前記充電部は、前記送信電力の受電開始から所定時間までの間、前記複数のキャパシタのうち他のキャパシタの充電電流を一のキャパシタの充電電流よりも小さくする第2の電流制御部を有する無線給電システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、受信機及び無線給電システムに関する。
【背景技術】
【0002】
外部から供給された電圧により第1蓄電部を充電する電力取得手段と、第1蓄電部に蓄えられた電力を第1蓄電部より容量の大きい第2蓄電部に転送して蓄電させる電力転送手段とを備え、電力転送手段が、第1蓄電部から第2蓄電部へ電力を転送する際の第1蓄電部における一回当たりの電圧低下を抑制する電圧低下抑制部を備える充電装置に関する技術がある(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2016-226130号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
マイクロ波を用いて送信機から受信機に略継続的な電力を給電するワイヤレス給電システムが知られている。かかるワイヤレス給電システムの場合、送信機からのワイヤレス給電の開始当初において、受信機を制御するための制御回路の動作電圧を速やかに確保するニーズがある一方、送信機からのワイヤレス給電が途絶えても受信機の安定動作を継続させたいニーズがある。
【0005】
しかしながら、特許文献1に開示された技術は、RFID技術により外部から動作電力が供給される電子機器に関するものである。従って、特許文献1において外部機器から供給される動作電力は継続的なものではないので、上述したニーズに対応することは難しい。
【0006】
本開示の目的は、ワイヤレス給電がされる受信機において、受信機の速やかな動作及び動作の安定的な継続の双方を図る技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
交流信号からなる送信電力を無線で受電する受信機であって、受信機は、送信電力を整流する整流部と、整流部からの整流電圧を管理する電力管理部と、電力管理部からの出力電圧により充電される充電部と、充電部からの供給電力により動作し、受信機全体の制御を行う制御部とを有し、充電部は複数のキャパシタを有し、送信電力の受電開始から所定時間までは複数のキャパシタのうち一のキャパシタの充電を行い、所定時間後は一のキャパシタ以外の他のキャパシタの充電も行う。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、ワイヤレス給電がされる受信機において、受信機の速やかな動作及び動作の安定的な継続の双方を図る技術を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】第1実施形態に係るワイヤレス給電システム(WPTシステム)の全体の構成を示す図である。
図2図1に示す送信機と、受信機との構成例を表すブロック図である。
図3】第1実施形態に係る受信機の回路構成の概略を示す図である。
図4】第1実施形態に係る受信機における充電部の電源電圧の時間推移を示す図である。の機能的な構成を示す図である。
図5】第2実施形態に係る受信機の回路構成の概略を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本開示の実施形態について図面を参照して説明する。実施形態を説明する全図において、共通の構成要素には同一の符号を付し、繰り返しの説明を省略する。なお、以下の実施形態は、特許請求の範囲に記載された本開示の内容を不当に限定するものではない。また、実施形態に示される構成要素のすべてが、本開示の必須の構成要素であるとは限らない。また、各図は模式図であり、必ずしも厳密に図示されたものではない。
【0011】
また、以下の説明において、「プロセッサ」は、1以上のプロセッサである。少なくとも1つのプロセッサは、典型的には、CPU(Central Processing Unit)のようなマイクロプロセッサであるが、GPU(Graphics Processing Unit)のような他種のプロセッサでもよい。少なくとも1つのプロセッサは、シングルコアでもよいしマルチコアでもよい。
【0012】
また、少なくとも1つのプロセッサは、処理の一部又は全部を行うハードウェア回路(例えばFPGA(Field-Programmable Gate Array)又はASIC(Application Specific Integrated Circuit))といった広義のプロセッサでもよい。
【0013】
また、以下の説明において、「xxxテーブル」といった表現により、入力に対して出力が得られる情報を説明することがあるが、この情報は、どのような構造のデータでもよいし、入力に対する出力を発生するニューラルネットワークのような学習モデルでもよい。従って、「xxxテーブル」を「xxx情報」と言うことができる。
【0014】
また、以下の説明において、各テーブルの構成は一例であり、1つのテーブルは、2以上のテーブルに分割されてもよいし、2以上のテーブルの全部又は一部が1つのテーブルであってもよい。
【0015】
また、以下の説明において、「プログラム」を主語として処理を説明する場合があるが、プログラムは、プロセッサによって実行されることで、定められた処理を、適宜に記憶部及び/又はインタフェース部などを用いながら行うため、処理の主語が、プロセッサ(或いは、そのプロセッサを有するコントローラのようなデバイス)とされてもよい。
【0016】
プログラムは、計算機のような装置にインストールされてもよいし、例えば、プログラム配布サーバ又は計算機が読み取り可能な(例えば非一時的な)記録媒体にあってもよい。また、以下の説明において、2以上のプログラムが1つのプログラムとして実現されてもよいし、1つのプログラムが2以上のプログラムとして実現されてもよい。
【0017】
また、以下の説明において、種々の対象の識別情報として、識別番号が使用されるが、識別番号以外の種類の識別情報(例えば、英字や符号を含んだ識別子)が採用されてもよい。
【0018】
また、以下の説明において、同種の要素を区別しないで説明する場合には、参照符号(又は、参照符号のうちの共通符号)を使用し、同種の要素を区別して説明する場合は、要素の識別番号(又は参照符号)を使用することがある。
【0019】
また、以下の説明において、制御線や情報線は、説明上必要と考えられるものを示しており、製品上必ずしも全ての制御線や情報線を示しているとは限らない。全ての構成が相互に接続されていてもよい。
【0020】
<0 システムの概要>
本開示に係るWPTシステムは、ワイヤレス給電方式に基づいて、送信機から送電された電力を受電して、その電力をデバイスに給電する受信機を有する。
【0021】
詳細は第1実施形態において説明するが、本開示に係るWPTシステムでは、受信機のアンテナでマイクロ波電力(920MHzの略継続的な連続波(CW))を受電して、アンテナと機能的に接続されている整流回路によって電波を直流電圧に変換する。整流回路から出力された直流電圧は、電力管理部によって電圧が制御されたあと、その電圧が充電部(主にキャパシタ)に供給される。
【0022】
充電部を構成する蓄電素子に特段の限定はなく、キャパシタ、リチウムイオン電池、電気二重層コンデンサ、セラミックコンデンサ等が含まれうる。本開示に係るWPTシステムでは、充電部は主にキャパシタを備えるものとして説明を行う。
【0023】
電力管理部から供給された電圧は、充電部に蓄積された電圧が所定値未満である場合、充電部へ供給される。充電部で所定電圧まで充電されると、電力管理部から供給出力された電力は、マイコンに供給される。
【0024】
ここで、ワイヤレス給電において受信機の全体制御を行うマイコンの動作電力は、受信機が受電するマイクロ波電力に依存している。そして、本開示に係るWPTシステムでは、充電部が主にキャパシタを備えているので、送信機からのワイヤレス給電の開始当初は、マイコンを動作させるための十分な電圧が充電部に蓄積されていない。このため、送信機からのワイヤレス給電開始からできるだけ早期に充電部に十分な電圧を蓄積させ、マイコンを早期に動作させることが望ましい。
【0025】
かかる観点を考慮すると、充電部を構成するキャパシタの静電容量(以下、単に「容量」という)を小さくして、充電部を急速に充電させて所定電圧をキャパシタに蓄積することが好ましい。
【0026】
一方、ワイヤレス給電は、給電状態が環境によって左右されるため、安定して一定量の電力を供給するのが困難であり、給電量は経時的に大きく変動する。また、太陽電池やレーザー方式のワイヤレス給電においても同様に給電量が変化しうる。このように給電状態が安定しない状況下においても、受信機のマイコン、さらには受信機が有するセンサ装置への安定した給電を継続させる必要がある。
【0027】
かかる観点を考慮すると、充電部を構成するキャパシタの容量を大きくして、給電状態に変化が生じても、できるだけ安定的にマイコン等への給電を継続させることが好ましい。
【0028】
このように、本開示に係るWPTシステムにおける充電部を構成するキャパシタの容量については、上述した、ある意味相反する観点が存在し、これらはトレードオフの関係にある。
【0029】
そこで、本開示に係るWPTシステムでは、受信機の充電部に複数のキャパシタを設け、送信機からのワイヤレス給電開始(送信電力の受電開始)から所定時間までは、複数のキャパシタのうち一つのキャパシタの充電を行い、まずはマイコン等の動作電力を確保できるまでの充電を行う。次いで、所定時間経過後は、一つのキャパシタ以外のキャパシタについても充電を行い、充電部全体での容量を増加させて充電を行う。これにより、マイコン等への安定した給電を行うことができ、仮に、送信機からの給電状態が変化したとしても、マイコン等への給電を安定的に継続させることができる。
【0030】
この際、上記した一つのキャパシタの容量がそれ以外のキャパシタ(以下、「他のキャパシタ」と称する)と同等または小さいことが好ましい。これにより、送信電力の受電開始から所定時間の間に、マイコン等の動作電力を確保できるまでの充電をより速やかに行うことができ、その結果、受信機の動作開始をより速やかに行うことができる。一方、他のキャパシタの容量を一つのキャパシタの容量と同等または大きくすることで、所定時間経過後に他のキャパシタが十分充電されれば、仮に、送信機からの給電状態が変化したとしても、マイコン等への給電をより安定的に継続させることができる。
【0031】
なお、本開示に係るWPTシステムが有する具体的な構成は上述のものに限定されないことは言うまでも無い。
【0032】
<1.第1実施形態>
<1.1 システム全体の構成図>
図1は、第1実施形態に係るWPTシステム1の全体の構成を示す図である。
【0033】
図1に示すWPTシステム1は、例えば、送信機100、受信機200、第1情報処理装置300、及び第2情報処理装置400を備える。図1に示すWPTシステム1は、例えば、ビル、又は工場等で利用される。
【0034】
なお、本明細書において、送信機100は無線で電力を送信するという意味での(電力)送信機100であり、同様に、受信機200は無線で電力を受信するという意味での(電力)受信機200である。後述するように、送信機100は、例えば、受信機200の状態に関する情報、又はセンサによる計測結果に関する情報を、データ信号として送信機100へ送信し、送信機100はかかるデータ信号を受信することがある。この場合、送信機100はデータ信号を受信する受信機であり、受信機200はデータ信号を送信する送信機として機能する。
【0035】
図1において、WPTシステム1が送信機100を3台含む例を示しているが、WPTシステム1に含まれる送信機100の数は、3台に限定されない。WPTシステム1に含まれる送信機100は、2台以下であってもよいし、4台以上であってもよい。
【0036】
図1において、WPTシステム1が受信機200を7台含む例を示しているが、WPTシステム1に含まれる受信機200の数は、7台に限定されない。WPTシステム1に含まれる受信機200は、6台以下であってもよいし、8台以上であってもよい。
【0037】
図1において、WPTシステム1が第1情報処理装置300を2台含む例を示しているが、WPTシステム1に含まれる第1情報処理装置300の数は、2台に限定されない。WPTシステム1に含まれる第1情報処理装置300は、1台であってもよいし、3台以上であってもよい。
【0038】
送信機100は、例えば、受信機200へ給電信号、又はデータ信号を送信する。送信機100は、例えば、920MHz帯の電波により、受信機200へ給電信号を送信する。送信機100は、例えば、2.4GHz帯の電波により、受信機200へデータ信号を送信する。送信機100は、データ信号を、920MHz帯の電波により送信してもよい。
【0039】
送信機100から送信される送電信号は、一例として、所定の電力を有する連続波(CW)であってもよい。また、送電信号の周波数帯域は、送信機100と受信機200との間の距離を考慮して、例えば920MHz帯域である。例示した周波数帯域より高周波数の帯域であると、送信機100と受信機200の距離を短くしないと、受信機200が動作可能な所定の電力を給電できない可能性があるので、実用的範囲を考慮する(一例として送信機100と受信機200との間の距離が数mであるとか)ことで適切な周波数帯域を決定することができる。
【0040】
この際、WPTシステム1が設置された国の法律等により、所定の電力を有する送電信号を間欠的に行う制限が生じることがある。一例として、送信機100からの送電信号が、日本の電波法に規定する無線局の規定に該当する場合(免許の有無は問わない)、電波法に基づいて送電信号に対して一定の休止期間を設ける必要が生じる場合がある。この場合、ある程度の時間軸上で考えると、送電信号は連続波とは言えない。但し、休止期間を設けることが肝要であり、この休止期間はわずかであれば足りるので、送信機100から送信される送電信号は略継続的な連続波であると見なすことができる。この休止期間そのものの設定手法は任意に選択可能である。つまり、上述した法的な制限等があるならば、この制限等を遵守する範囲内で任意の休止期間を設ければよい。また、仮に、送信機を連続動作させることで送信機の温度が上昇するために休止期間を設ける必要があるならば、送信機の温度を一定にするための任意の休止期間を設ければよい。ここにいう「任意」とは、休止期間そのものの時間幅、休止期間を繰り返す場合はそのタイミング(周期的であるかどうかは法的な制限等に基づけばよい)などについて任意に設定できる、という意味である。
【0041】
送信機100は、例えば、1台の受信機200へ給電してもよいし、複数台の受信機200へ給電してもよい。送信機100は、例えば、1台の受信機200へデータ信号を送信してもよいし、複数台の受信機200へデータ信号を送信してもよい。送信機100は、例えば、他の送信機100と同じデータ信号を送信してもよいし、他の送信機100と異なるデータ信号を送信してもよい。送信機100は、例えば、所定のコマンド信号をデータ信号として受信機200へ送信してもよいし、予め設定された信号をデータ信号として受信機200へ送信してもよい。
【0042】
送信機100は、例えば、受信機200から送信されるデータ信号を受信する。送信機100は、例えば、1台の受信機200から送信されるデータ信号を受信してもよいし、複数の受信機200から送信されるデータ信号を受信してもよい。送信機100は、受信機200から送信されるデータ信号を第1情報処理装置300へ送信する。送信機100は、送信機100の状態に関する情報を第1情報処理装置300へ送信する。
【0043】
受信機200は、例えば、送信機100から送信される給電信号、及び/又はデータ信号を受信する。受信機200は、例えば、充電部を有する場合、送信機100から送信される給電信号を電力へ変換し、変換した電力を充電部に貯える。受信機200は、例えば、所定のセンサを有する場合、送信機100から送信される給電信号を電力へ変換し、変換した電力によりセンサを駆動させる。
【0044】
受信機200は、例えば、受信機200の状態に関する情報、又はセンサによる計測結果に関する情報を、データ信号として送信機100へ送信する。
【0045】
第1情報処理装置300は、WPTシステム1に収容される送信機100、受信機200の動作を監視する情報処理装置である。例えば、第1情報処理装置300は、送信機100から送信される、送信機100、及び受信機200の状態に関する情報に基づき、送信機100、又は受信機200が予め設定された状態になっているか否かを判断する。予め設定された状態になっていると判断した場合、第1情報処理装置300は、所定の情報を第2情報処理装置400へ送信する。
【0046】
また、第1情報処理装置300は、WPTシステム1に収容される送信機100、受信機200についての情報を蓄積する。例えば、第1情報処理装置300は、送信機100から送信される、送信機100及び受信機200の状態に関する情報を、第1情報処理装置300に設けられる記憶部に記憶する。
【0047】
また、第1情報処理装置300は、WPTシステム1に収容される送信機100の動作を制御する。
【0048】
第2情報処理装置400は、WPTシステム1の管理者が操作する情報処理装置である。第2情報処理装置400は、WPTシステム1に収容される送信機100、受信機200、又はこれらの両方が所定の状態になっている旨の連絡を第1情報処理装置300から受信すると、送信機100、受信機200、又はこれらの両方が所定の状態になっていることをユーザに提示する。
【0049】
また、第2情報処理装置400は、第1情報処理装置300に蓄積されている、送信機100及び受信機200の状態に関する情報を分析し、所定の情報をユーザに提示する。所定の情報は、例えば、以下である。
・送信機100の配置に関する情報
・受信機200の配置に関する情報
・消費電力に関する情報
・電力強度に関する情報
【0050】
<1.2 送信機と受信機の構成>
図2は、図1に示す送信機100と、受信機200との構成例を表すブロック図である。図2に示すように、送信機100と受信機200とは、例えば、互いに所定間隔で離間する。例えば、送信機100と受信機200とは、数m程度の距離だけ隔てられて設置される。具体的には、例えば、送信機100は、屋内の高所、例えば、天井、又は壁に設けられた所定の高位置に固定して設置される。受信機200は、屋内の所定のデバイスに設置されたり、給電が必要なデバイスの近傍に載置されたりする。また、受信機200は、ユーザにより携帯されてもよい。送信機100は、所定の周波数、例えば、920MHz帯の電波により、受信機200へ給電信号を送信する。受信機200は、送信機100から送信される給電信号を電力へ変換し、変換した電力を充電するか、又は、変換した電力を所定のデバイスへ供給する。
【0051】
送信機100は、例えば、発振器101、送信アンテナ102、マイコン(制御器)103、データ送受信機104、データ送受信アンテナ105を有する。発振器101、マイコン103、データ送受信機104は、例えば、PCB(プリント基板)に実装されていてもよい。
【0052】
発振器101は、所定周波数帯、例えば、920MHz帯の信号を発振させる。発振された信号は、必要に応じて、増幅されて、不要周波数成分が除去されてもよい。
【0053】
送信アンテナ102は、例えば、920MHz帯の電波を効率的に送信可能に形成されている。送信アンテナ102は、発振器101で発振された信号を、給電信号として放射する。
【0054】
マイコン103は、送信機100の動作を制御する。マイコン103は、例えば、ARMプロセッサを搭載した半導体素子により実現される。マイコン103は、例えば、送信アンテナ102による電波の送信を制御する。
【0055】
例えば、工場で用いられるWPTシステム1では、受信機200は所定値以上の電力を供給することが望ましい。そのため、マイコン103は、受信機200から送信されるフィードバック信号に基づき、送信アンテナ102による電波の送信を制御する。フィードバック信号は、例えば、受信機200内の所定の部位の電圧値に係るものである。フィードバック信号に基づき、受信機200の電界強度が疑似的に把握可能である。送信アンテナ102が、例えば、複数のアンテナ素子を有する場合、マイコン103は、例えば、最適なアンテナ素子から給電信号を送信するように、送信アンテナ102を制御する。例えば、マイコン103は、駆動させるアンテナ素子を切り替えることで、給電信号の偏波方向を調整する。また、マイコン103は、アンテナ素子の駆動タイミングを調整することで、給電信号の指向方向を調整する。
【0056】
また、ビル等の室内で用いられるWPTシステム1では、マイコン103は、受信機200から送信されるフィードバック信号に基づき、送信アンテナ102による電波の送信を制御する。送信アンテナ102が、例えば、単一のアンテナ素子である場合、マイコン103は、例えば、送信アンテナ102からの送電出力の最適化する。
【0057】
データ送受信機104は、デジタルデータのアナログ化、アナログデータの変調等の処理を実施する。また、データ送受信機104は、データ送受信アンテナ105で受信されるデータ信号から抽出される信号の復調、復調されたアナログデータのデジタル化等の処理を実施する。データ送受信機104は、例えば、データ送受信アンテナ105で受信されるデータ信号からフィードバック信号を抽出し、デジタルデータに変換してマイコン103へ送信する。
【0058】
データ送受信アンテナ105は、例えば、2.4GHz帯の電波を効率的に送受信可能に形成されている。データ送受信アンテナ105は、データ送受信機104から供給されるデータ信号を放射する。また、データ送受信アンテナ105は、受信機200から送信されたデータ信号を受信する。
【0059】
受信機200は、例えば、受信アンテナ201、整流回路202、電力管理部203、充電部204、マイコン205、データ送受信機206、データ送受信アンテナ207を有する。整流回路202、電力管理部203、充電部204、マイコン205、データ送受信機206は、例えば、PCB又はFPC(フレキシブル基板)に実装されていてもよい。
【0060】
受信アンテナ201は、例えば、920MHz帯の電波を効率的に受信可能に形成されている。受信アンテナ201は、送信アンテナ102から放射された給電信号を受信する。
【0061】
整流回路202は、給電信号として受信した電波を整流し、直流電圧に変換する。
【0062】
電力管理部203は、直流電圧を管理する。例えば、電力管理部203は、直流電圧に基づいて充電電圧を制御する。電力管理部203は、充電電圧を制御することで、充電部204を充電する。また、電力管理部203は、例えば、充電部204に所定容量以上の電力が蓄えられると、直流電圧を、接続される部材へ供給する。
【0063】
また、電力管理部203は、マイコン205からの制御に応じ、充電部204に蓄えられた電力を放出させる。
【0064】
充電部204は、電力管理部203からの指示に応じて電力を蓄える。また、充電部204は、電力管理部203からの指示に応じて蓄えている電力を放出する。充電部204の詳細な構成については後述する。
【0065】
マイコン205(以下、適宜MCU(Microcontroller)と称することがある)は、受信機200の動作を制御する。マイコン205は、電力管理部203から供給される直流電圧、又は充電部204に蓄えられた電力により駆動される。マイコン205は、電力管理部203を制御し、充電部204に蓄えられた電力を放出させる。
【0066】
受信機200には、例えば、種々のセンサが接続可能である。例えば、熱センサ、温度センサ、光センサ、湿度センサ、振動センサ等が受信機200に接続される。受信機200に接続されたセンサは、例えば、電力管理部203から供給される直流電圧、又は充電部204から放出される電力により駆動される。マイコン205は、受信機200の所定部位における電圧値、受信機200に接続されるセンサの状況、センサにより検出された情報等を、継続的又は断続的に監視する。マイコン205は、受信機200の所定部位における電圧値、受信機200に接続されるセンサの状況、センサにより検出された情報等をデジタルデータとしてデータ送受信機206へ送信する。
【0067】
データ送受信機206は、マイコン205から供給されるデジタルデータのアナログ化、アナログデータの変調等の処理を実施する。また、データ送受信機206は、アナログデータの復調、復調されたアナログデータのデジタル化等の処理を実施する。データ送受信機206は、例えば、電力管理部203から供給される直流電圧、又は充電部204から放出される電力により駆動される。
【0068】
データ送受信アンテナ207は、例えば、2.4GHz帯の電波を効率的に送受信可能に形成されている。データ送受信アンテナ207は、データ送受信機206から供給されるデータ信号を放射する。また、データ送受信アンテナ207は、送信機100から送信されたデータ信号を受信する。例えば、データ送受信アンテナ207は、例えば、電力管理部203から供給される直流電圧、又は充電部204から放出される電力により駆動される。
【0069】
データ送受信アンテナ207から送信(放射)されるデータ信号の送信フォーマットは任意である。特に、データ送受信アンテナ207から放射されるデータ信号は2.4GHz帯の電波であるので、Bluetooth(登録商標)、IEEE 802.11x(つまり、いわゆる無線LAN)フォーマットに準拠した信号であってもよい。この場合、送信機100のデータ送受信機104も、受信機200から送信されるデータ信号のフォーマットに合致したフォーマットのデータ信号を解析できる機能を有することが好ましい。あるいは、また、第1情報処理装置300がこのような機能を有することもできる。
【0070】
<1.3 受信機の回路構成>
図3は、図2に示す受信機200の回路構成の概略を示す図である。なお、以下の説明では、図2を参照して説明した受信機200の構成要素の詳細についての説明は省略する。また、図2に示す受信機200の構成要素のうち、要部のみ図示している。
【0071】
図3に示すように、本実施形態の受信機200を構成する充電部204は、並列接続された2つのキャパシタ204a(C1)、204b(C2)を有する。キャパシタ204aの容量C1はキャパシタ204bの容量C2と同等または小さくなるように、それぞれのキャパシタ204a、204bの容量C1、C2が選択されている。ここに、キャパシタ204aが上述した「一つのキャパシタ」に相当し、キャパシタ204bが上述した「他のキャパシタ」に相当する。
【0072】
キャパシタ204aの容量C1をどのような値に設定するかは、受信機200をどの程度速やかに動作可能な状態にするか、言い換えれば、送信機100からの受電開始からどの程度の時間でマイコン205等が安定動作できるまでの電圧となるようにキャパシタ204aを充電するかにより決定されればよい。加えて、キャパシタ204bの容量C2をどのような値に設定するかは、受信機200の受電状態がどの程度不安定になっても受信機200(主にマイコン205等)の安定動作を確保するかにより決定されればよい。
【0073】
このようなキャパシタ204a、204bの容量C1、C2を設定する手法として、例えば、キャパシタ204bを電気二重層コンデンサにより構成し、キャパシタ204aをセラミックコンデンサ等により構成する手法が挙げられる。セラミックコンデンサは小型化が可能であり、充電部204の基板専有面積の適正化に役立つ。一方、電気二重層コンデンサは大容量であり、マイコン等への給電を安定化させるものとして好ましい。当然、キャパシタ204a、204bの容量の差、種類に特段の限定はなく、充電部204にどのような動作を期待するか(どの程度の急速充電と電源供給の安定かとを期待するか)により、適宜定められればよい。
【0074】
充電部204はまた、キャパシタ204bからマイコン205への電力供給経路に介在されたスイッチ204cと、キャパシタ204bの接地側経路に介在された電界効果トランジスタ(FET)204dとを有する。これらスイッチ204c及び電界効果トランジスタ204dは、キャパシタ204bへの供給電流を調整する第1の電流制御部を構成する。
【0075】
スイッチ204cは、送信機100からの受電開始当初はOFF状態にある。電力管理部203はキャパシタ204aの端子間電圧V1を監視し、この端子間電圧V1が一定値(一例として2V)に達した時点で、電力管理部203からの指示によりONされる。スイッチ204cをONする電圧値は、マイコン205を安定動作させるために十分な電圧である必要はなく、マイコン205が動作開始できる程度の電圧であってもよい。
【0076】
電界効果トランジスタ204dのゲート端子はマイコン205に接続され、マイコン205から供給されるゲート電圧により、キャパシタ204bに供給される充電電流を制御する。なお、マイコン205がゲート電圧の電圧値を微細に調整できる端子を有しない(一例としてアナログ出力端子を有しない)場合、マイコン205と電界効果トランジスタ204dとの間に図略の電圧調整器を設け、マイコン205がこの電圧調整器に対して電界効果トランジスタ204dのゲート電圧をアナログ制御する指令を送出し、電圧調整器がゲート電圧のアナログ制御を行ってもよい。
【0077】
なお、本実施形態では、キャパシタ204bに供給される充電電流の制御を電界効果トランジスタ204dにより行っていたが、他の素子、一例としてバイポーラトランジスタによりキャパシタ204bに供給される充電電流の制御を行ってもよい。この場合、マイコン205は、バイポーラトランジスタのベース電流を制御すればよい。
【0078】
<1.5 動作例>
以下、本実施形態の受信機200の動作の一例について、図3及び図4を参照して説明する。
【0079】
送信機100から受信機200へ給電電力の供給が開始される、言い換えれば、送信機100から受信機200に向けて略継続的な連続波であるワイヤレス給電信号の送信が開始されると、受信機200の受信アンテナ201がこのワイヤレス給電信号を受信し、受信された交流信号であるワイヤレス給電信号は整流回路202により直流電圧に変換され、電力管理部203により充電部204を充電するための充電電圧がこの充電部204に供給される。
【0080】
この時点ではまだ充電部204のスイッチ204cはOFF状態にあるので、電力管理部203からの出力電圧は全てキャパシタ204aに供給され、キャパシタ204aのみが充電される。図4に示すように、キャパシタ204aの端子間電圧V1が上昇する。一方、キャパシタ204bには電力管理部203からの出力電圧は供給されていないので、キャパシタ204bは充電されず、キャパシタ204bの端子間電圧V2は0のままである。
【0081】
このように、送信機100から受信機200への給電電力の開始直後は、充電部204を構成するキャパシタ204a、204bのうち、一つのキャパシタ204aのみが充電される。そして、一つのキャパシタ204aの容量C1は他のキャパシタ204bの容量C2と同等または小さく設定されているので、キャパシタ204aは急速に充電される。この状態が、スイッチ204cがONされるまでの間(つまり所定時間)だけ継続される。
【0082】
これにより、キャパシタ204aを短時間で充分に充電することができるので、送信機100からのワイヤレス給電開始からスイッチ204cがONされるまでの時間を短時間に抑えることができ、結果として、送信機100からのワイヤレス給電開始からマイコン205等の動作開始までの時間を短時間にすることができる。
【0083】
次いで、キャパシタ204aの端子間電圧V1が一定値を越えたら、電力管理部203はスイッチ204cをONにさせる。これにより、充電部を構成するキャパシタ204a、204bのいずれにも充電電圧が供給され、いずれのキャパシタ204a、204bについても充電がされる。
【0084】
しかしながら、スイッチ204cをONすることでいずれのキャパシタ204a、204bへの充電を開始すると、一時期的にキャパシタ204a、204bの端子間電圧V1、V2が低下して、マイコン205への供給電圧がマイコン205の動作を継続できる電圧を下回ることが予想される。
【0085】
そこで、マイコン205は、スイッチ204cがONされることで動作電圧の供給が開始されたら、電界効果トランジスタ204dのゲート電圧V3図4に示すように徐々に増加させて、電界効果トランジスタ204dの抵抗値を徐々に減少させる。これにより、キャパシタ204bへの供給電流を徐々に増加させて、キャパシタ204bの充電を徐々に行う。
【0086】
その後、電界効果トランジスタ204dのゲート電圧が一定値(図3、4において1.8V)にまで上昇すると、電界効果トランジスタ204dの抵抗値は最小になり、キャパシタ204a、204bの端子間電圧V1、V2を合わせた電圧値V1+V2は上昇する。
【0087】
これにより、キャパシタ204a、204bのいずれもが充分に充電されるので、仮に、送信機100からのワイヤレス給電信号が一時期的に途絶えて(例えば送信機100と受信機200との間に人が介在するなど)受信機200の給電状態が悪化したとしても、容量の大きいキャパシタ204bが充分に充電されているので、給電状態が復活するまでの間、キャパシタ204bからの給電によりマイコン205等の動作を継続させることができる。
【0088】
<1.6 第1実施形態の効果>
以上詳細に説明したように、本実施形態のWPTシステム1によれば、ワイヤレス給電がされる受信機200において、受信機200の速やかな動作及び動作の安定的な継続の双方を図ることができる。
【0089】
<2. 第2実施形態>
上述した第1実施形態のWPTシステム1では、他のキャパシタ204bの充電電圧供給を、送信機100からのワイヤレス給電開始から所定時間経過後にスイッチ204cをONすることにより、この所定時間経過後に行うことで、一つのキャパシタ204aの充電を速やかに行っていた。第2実施形態にかかるWPTシステム1では、他のキャパシタへ供給される電流を一つのキャパシタへ供給される電流よりも小さくすることで、一つのキャパシタの充電完了までの時間を他のキャパシタの充電完了までの時間よりも早くしている。
【0090】
<2.1 受信機の回路構成>
図5は、第2実施形態のWPTシステム1における受信機200の充電部204の構成を示す回路図である。
【0091】
図5に示す第2実施形態にかかる充電部204は、並列接続された3つのキャパシタ204e(C3)、204f(C1)、204g(C2)を有する。キャパシタ204eの容量C3はキャパシタ204fの容量C1、キャパシタ204gの容量C2と同等または小さくなるように、それぞれのキャパシタ204e~204gの容量C1、C2、C3が選択されている。ここに、キャパシタ204eが上述した「一つのキャパシタ」に相当し、キャパシタ204f、204gが上述した「他のキャパシタ」に相当する。
【0092】
このようなキャパシタ204e~204gの容量C1、C2、C3を設定する手法として、例えば、第1実施形態と同様に、キャパシタ204f、204gを電気二重層コンデンサにより構成し、キャパシタ204eをセラミックコンデンサ等により構成する手法が挙げられる。なお、本実施形態の充電部204では、キャパシタ204eの容量C1とキャパシタ204gの容量C2を同一容量に設定しているが、これら容量C1、C2に大小関係を設けてもよい。少なくとも容量C1、C2がキャパシタ204eの容量C3よりも大きければよい。
【0093】
キャパシタ204e、204fの充電電力供給経路には、ツェナーダイオード204h及び抵抗204iが並列接続されて介在されている。
【0094】
ツェナーダイオード204hはいわゆる逆方向接続されている。つまり、ツェナーダイオード204hのカソードがキャパシタ204e側に接続され、アノードがキャパシタ204f側に接続されている。このツェナーダイオード204hは、キャパシタ204f、204gへ供給される充電電圧が一定値に達するまで、つまり、降伏電圧に達するまで、キャパシタ204f、204gへ供給される充電電力を抵抗204i経由に限定するものである。従って、ツェナーダイオード204hの降伏電圧は、第1実施形態の場合におけるスイッチ204cがONされる条件である電圧値(例えば2V)、あるいはこの電圧値をやや下回る値に設定されている。
【0095】
抵抗204iは、キャパシタ204f、204gへ供給される充電電圧が一定値に達するまでの間、キャパシタ204f、204gへの充電電流をキャパシタ204eの充電電流よりも小さくするために設けられている。従って、抵抗204iの抵抗値R1は、送信機100からのワイヤレス給電開始からどの程度の時間でキャパシタ204f、204gの充電を完了させるかという観点から設定される。
【0096】
これらツェナーダイオード204h及び抵抗204iは、キャパシタ204f、204gへ供給される充電電圧が一定値に達するまでの間、キャパシタ204f、204gへの供給電流をキャパシタ204eへの供給電流より小さくする第2の電流制御部及び電流制限素子を構成する。
【0097】
なお、本実施形態において、第2の電流制御部及び電流制限素子としてツェナーダイオード204h及び抵抗2041を用いていたが、送信機100からの送信電力の受電開始から所定時間までの間、キャパシタ204f、204gの充電電流をキャパシタ204eの充電電流よりも小さくする回路構成であれば特段の限定はなく、既知の構成が好適に適用可能である。一例として、ツェナーダイオード204hに代えてショットキー(バリア)ダイオードを用いることも可能である。
【0098】
<2.2 動作例>
以下、本実施形態の受信機200の動作の一例について、図5を参照して説明する。
【0099】
第1実施形態の場合と同様に、送信機100からのワイヤレス給電が開始されると、電力管理部203からの直流電圧がキャパシタ204eに供給され、このキャパシタ204eの充電が開始する。この時点では、電力管理部203からの直流電圧はキャパシタ204eの充電電圧として用いられ、ツェナーダイオード204hへの電圧は降伏電圧を越えないので、キャパシタ204f、204gには抵抗204iを経由してのみ充電電力が供給される。この充電電力の電流値は、抵抗204iの抵抗値R1に応じた電流であり、キャパシタ204eへの充電電力の電流値より小さい。従って、キャパシタ204f、204gの充電は、キャパシタ204eの充電よりも緩やかに進む。
【0100】
その後、キャパシタ204eの充電が進むと(つまり所定時間経過後に)、ツェナーダイオード204hへの電圧が降伏電圧を越え、キャパシタ204f、204gには、抵抗204iを経由した経路とともにツェナーダイオード204hを経由した経路で充電電力が供給される。この時点で既にキャパシタ204eの充電がかなり進んでいるので、電力管理部203から供給される充電電力は主にキャパシタ204f、204gの充電に用いられる。
【0101】
これにより、キャパシタ204eを短時間で充分に充電することができるので、送信機100からのワイヤレス給電開始からツェナーダイオード204hへの電圧が降伏電圧を越えるまでの時間を短時間に抑えることができ、結果として、送信機100からのワイヤレス給電開始からマイコン205等の動作開始までの時間を短時間にすることができる。
【0102】
また、ツェナーダイオード204hへの電圧が降伏電圧を越えると、キャパシタ204e~204gのいずれにも充電電力が供給されるので、仮に、送信機100からのワイヤレス給電信号が一時期的に途絶えて(例えば送信機100と受信機200との間に人が介在するなど)受信機200の給電状態が悪化したとしても、容量の大きいキャパシタ204f、204gが充分に充電されているので、給電状態が復活するまでの間、キャパシタ204f、204gからの給電によりマイコン205等の動作を継続させることができる。しかも、ツェナーダイオード204hへの電圧が降伏電圧を越えない時点でも、抵抗204iを経由してキャパシタ204f、204gへの充電電力は供給されているので、ツェナーダイオード204hへの電圧が降伏電圧を越えない時点でもキャパシタ204f、204gを充電でき、結果として、キャパシタ204f、204gを充分に充電させるまでの時間を短縮することができる。
【0103】
<2.3 第2実施形態の効果>
以上詳細に説明したように、本実施形態のWPTシステム1によれば、第1実施形態のWPTシステム1と同様に、ワイヤレス給電がされる受信機200において、受信機200の速やかな動作及び動作の安定的な継続の双方を図ることができる。
【0104】
<3 付記>
なお、上記した実施形態は本開示を分かりやすく説明するために構成を詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、各実施形態の構成の一部について、他の構成に追加、削除、置換することが可能である。
【0105】
また、上記の各構成、機能、処理部、処理手段等は、それらの一部又は全部を、例えば集積回路で設計する等によりハードウェアで実現してもよい。また、本発明は、実施例の機能を実現するソフトウェアのプログラムコードによっても実現できる。この場合、プログラムコードを記録した記憶媒体をコンピュータに提供し、そのコンピュータが備えるプロセッサが記憶媒体に格納されたプログラムコードを読み出す。この場合、記憶媒体から読み出されたプログラムコード自体が前述した実施例の機能を実現することになり、そのプログラムコード自体、及びそれを記憶した記憶媒体は本発明を構成することになる。このようなプログラムコードを供給するための記憶媒体としては、例えば、フレキシブルディスク、CD-ROM、DVD-ROM、ハードディスク、SSD、光ディスク、光磁気ディスク、CD-R、磁気テープ、不揮発性のメモリカード、ROMなどが用いられる。
【0106】
また、本実施例に記載の機能を実現するプログラムコードは、例えば、アセンブラ、C/C++、perl、Shell、PHP、Java(登録商標)等の広範囲のプログラム又はスクリプト言語で実装できる。
【0107】
さらに、実施例の機能を実現するソフトウェアのプログラムコードを、ネットワークを介して配信することによって、それをコンピュータのハードディスクやメモリ等の記憶手段又はCD-RW、CD-R等の記憶媒体に格納し、コンピュータが備えるプロセッサが当該記憶手段や当該記憶媒体に格納されたプログラムコードを読み出して実行するようにしてもよい。
【0108】
以上の各実施形態で説明した事項を以下に付記する。
【0109】
(付記1)
交流信号からなる送信電力を無線で受電する受信機(200)であって、受信機(200)は、送信電力を整流する整流部(202)と、整流部(202)からの整流電圧を管理する電力管理部(203)と、電力管理部(203)からの出力電圧により充電される充電部(204)と、充電部(204)からの供給電力により動作し、受信機(200)全体の制御を行う制御部とを有し、充電部(204)は複数のキャパシタ(204a、204b)を有し、送信電力の受電開始から所定時間までは複数のキャパシタ(204a、204b)のうち一のキャパシタ(204a)の充電を行い、所定時間後は一のキャパシタ(204a)以外の他のキャパシタ(204b)の充電も行う受信機(200)。
(付記2)
一のキャパシタ(204a)の容量が他のキャパシタ(204b)の容量と同等または小さい、付記1に記載の受信機(200)。
(付記3)
充電部(204)は、他のキャパシタ(204b)への供給電流を調整する第1の電流制御部(204c、204d)を有し、第1の電流制御部(204c、204d)は、他のキャパシタ(204b)への供給電流を調整することで、送信電力の受電開始から所定時間までは一のキャパシタ(204a)の充電を行い、所定時間後は他のキャパシタ(204b)の充電も行う付記2に記載の受信機(200)。
(付記4)
第1の電流制御部(204c、204d)は電界効果トランジスタ(204d)であり、この電界効果トランジスタ(204d)のソース-ドレイン間の電流を制御することにより、他のキャパシタ(204b)への供給電流を制御する付記3に記載の受信機(200)。
(付記5)
制御部(205)は、電界効果トランジスタ(204d)のゲート電圧を制御することで、電界効果トランジスタ(204d)のソース-ドレイン間の電流を制御する付記4に記載の受信機(200)。
(付記6)
制御部(205)は、他のキャパシタ(204b)への充電電圧を監視し、充電電圧に基づいて電界効果トランジスタ(204d)のソース-ドレイン間の電流を制御する付記5に記載の受信機(200)。
(付記7)
交流信号からなる送信電力を無線で受電する受信機(200)であって、受信機(200)は、送信電力を整流する整流部(202)と、整流部(202)からの整流電圧を管理する電力管理部(203)と、電力管理部(203)からの出力電圧により充電される充電部(204)と、充電部(204)からの供給電力により動作し、受信機(200)全体の制御を行う制御部(205)とを有し、充電部(204)は複数のキャパシタ(204e~204g)を有し、充電部(204)は、送信電力の受電開始から所定時間までの間、複数のキャパシタ(204e~204g)のうち他のキャパシタ(204f、204g)の充電電流を一のキャパシタ(204e)の充電電流よりも小さくする第2の電流制御部(204h、204i)を有する受信機(200)。
(付記8)
第2の電流制御部(204h、204i)は、複数のキャパシタ(204e~204g)への充電電力供給経路において、一のキャパシタ(204e)と他のキャパシタ(204f、204g)との間に介在された電流制限素子(204h、204i)である、付記8に記載の受信機(200)。
(付記9)
一のキャパシタ(204e)の容量が他のキャパシタ(204f、204g)の容量と同等またはより小さい、付記8に記載の受信機(200)。
(付記10)
交流信号からなる送信電力を無線で送電する送信機(100)と、送信電力を無線で受電する受信機(200)であって、送信電力を整流する整流部(202)と、整流部(202)からの整流電圧を管理する電力管理部(203)と、電力管理部(203)からの出力電圧により充電される充電部(204)と、充電部(204)からの供給電力により動作し、受信機(200)全体の制御を行う制御部とを有する受信機(200)とを有する無線給電システム(1)であって、充電部(204)は複数のキャパシタ(204a、204b)を有し、送信電力の受電開始から所定時間までは複数のキャパシタ(204a、204b)のうち一のキャパシタ(204a)の充電を行い、所定時間後は一のキャパシタ(204a)以外の他のキャパシタ(204b)の充電も行う無線給電システム(1)。
(付記11)
交流信号からなる送信電力を無線で送電する送信機(100)と、送信電力を無線で受電する受信機(200)であって、送信電力を整流する整流部(202)と、整流部(202)からの整流電圧を管理する電力管理部(203)と、電力管理部(203)からの出力電圧により充電される充電部(204)と、充電部(204)からの供給電力により動作し、受信機(200)全体の制御を行う制御部(205)とを有する受信機(200)とを有する無線給電システム(1)であって、充電部(204)は複数のキャパシタ(204e~204g)を有し、充電部(204)は、送信電力の受電開始から所定時間までの間、複数のキャパシタ(204e~204g)のうち他のキャパシタ(204f、204g)のうちの充電電流を一のキャパシタ(204e)の充電電流よりも小さくする第2の電流制御部(204h、204i)を有する無線給電システム(1)。
【符号の説明】
【0110】
1…WPTシステム 100…送信機 200…受信機 201…受信アンテナ 202…整流回路 203…電力管理部 204…充電部 204a、204b、204e、204f、204g…キャパシタ 204c…スイッチ 204d…電界効果トランジスタ 204h…ツェナーダイオード 204i…抵抗 205…マイコン 206…データ送受信機 207…データ送受信アンテナ 300…第1情報処理装置 400…第2情報処理装置

【要約】
【課題】ワイヤレス給電がされる受信機において、受信機の速やかな動作及び動作の安定的な継続の双方を図る。
【解決手段】 交流信号からなる送信電力を無線で受電する受信機200であって、受信機200は、送信電力を整流する整流部202と、整流部202からの整流電圧を管理する電力管理部203と、電力管理部203からの出力電圧により充電される充電部204と、充電部204からの供給電力により動作し、受信機200全体の制御を行う制御部205とを有し、充電部204は複数のキャパシタを有し、送信電力の受電開始から所定時間までは複数のキャパシタのうち一のキャパシタの充電を行い、所定時間後は一のキャパシタ以外の他のキャパシタの充電も行う。
【選択図】 図2
図1
図2
図3
図4
図5