(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-07
(45)【発行日】2023-12-15
(54)【発明の名称】プログラムおよび印刷システムの生産方法
(51)【国際特許分類】
G06F 3/12 20060101AFI20231208BHJP
B41J 2/525 20060101ALI20231208BHJP
B41J 25/20 20060101ALI20231208BHJP
G01J 3/50 20060101ALI20231208BHJP
G06T 1/00 20060101ALI20231208BHJP
【FI】
G06F3/12 329
G06F3/12 304
G06F3/12 354
B41J2/525
B41J25/20
G01J3/50
G06T1/00 510
(21)【出願番号】P 2018162164
(22)【出願日】2018-08-30
【審査請求日】2021-08-17
【審判番号】
【審判請求日】2023-03-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001623
【氏名又は名称】弁理士法人真菱国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小林 綾子
(72)【発明者】
【氏名】田中 彩香
(72)【発明者】
【氏名】朝倉 春樹
【合議体】
【審判長】岩間 直純
【審判官】篠塚 隆
【審判官】山内 裕史
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-80051(JP,A)
【文献】特開2013-37185(JP,A)
【文献】特開2018-17520(JP,A)
【文献】特開2002-94816(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J2/525
B41J25/20
B41J29/00-29/70
G01J3/50
G06F3/09-3/12
G06T1/00
H04N1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
測色機による測色用のカラーチャートを含むカラーチャートシートを印刷装置に印刷させるためのプログラムであって、
前記カラーチャートと、前記カラーチャートに対する前記測色機の測色開始位置および
、前記カラーチャートシートのシート表面に垂直な軸周りにおける前記測色機の向きである測色開始向きを示す第1画像と、を含む前記カラーチャートシートを前記印刷装置に印刷させる制御部として、コンピューターを機能させることを特徴とするプログラム。
【請求項2】
前記カラーチャートは、複数のパッチがマトリクス状に配置されたものであり、
前記第1画像は、前記カラーチャートの先頭行における前記測色機の測色開始位置および測色開始向きを示すものであることを特徴とする請求項1に記載のプログラム。
【請求項3】
前記カラーチャートは、前記測色機の往復移動により1行分のパッチの測色が行われるものであり、
前記制御部は、前記カラーチャートと、前記カラーチャートの先頭行の往路における前記測色機の測色開始位置および測色開始向きを示す前記第1画像と、前記カラーチャートの先頭行の復路における前記測色機の測色開始位置および測色開始向きを示す第2画像と、を含む前記カラーチャートシートを前記印刷装置に印刷させることを特徴とする請求項2に記載のプログラム。
【請求項4】
前記第1画像は、前記カラーチャートの先頭行の往路における前記測色機の測色開始位置に前記測色機が配置されたときの、前記測色機を操作するユーザー側から見た前記測色機の輪郭の少なくとも一部を示すものであり、
前記第2画像は、前記カラーチャートの先頭行の復路における前記測色機の測色開始位置に前記測色機が配置されたときの、前記測色機を操作するユーザー側から見た前記測色機の輪郭の少なくとも一部を示すものであることを特徴とする請求項3に記載のプログラム。
【請求項5】
前記制御部は、前記カラーチャートと、前記第1画像と、前記カラーチャートシートを配置するトレイの所定位置に対応した第3画像と、を含む前記カラーチャートシートを前記印刷装置に印刷させることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1項に記載のプログラム。
【請求項6】
前記制御部は、前記カラーチャートと、前記第1画像と、前記カラーチャートシートを配置するトレイへの前記カラーチャートシートの配置から前記カラーチャートの測色までの作業工程で注視すべき個所および前記作業工程の順序を示す第4画像と、を前記印刷装置に印刷させることを特徴とする請求項1ないし5のいずれか1項に記載のプログラム。
【請求項7】
前記カラーチャートは、手動の前記測色機により測色されるものであることを特徴とする請求項1ないし6のいずれか1項に記載のプログラム。
【請求項8】
測色機による測色用のカラーチャートを含むカラーチャートシートを印刷する印刷装置と、
前記測色機および前記印刷装置を制御する制御装置と、を含む印刷システムの生産方法であって、
前記印刷装置により、前記カラーチャートと、前記カラーチャートに対する前記測色機の測色開始位置および測色開始向きを示す第1画像と、を含む前記カラーチャートシートを印刷するステップと、
前記測色機により、前記カラーチャートシートの前記第1画像の位置から測色を開始することにより、前記カラーチャートを測色するステップと、
前記制御装置により、前記測色機による前記カラーチャートの測色の結果に基づいて色調整を行い、前記印刷システムを生産するステップと、を実行することを特徴とする印刷システムの生産方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、測色機による測色用のカラーチャートを印刷装置に印刷させるためのプログラムおよび印刷システムの生産方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば特許文献1のように、測色機により測色されるカラーチャートが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来は、測色に不慣れなユーザーの場合、適切な測色方法がわからずに、測色に失敗することが多い。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明のプログラムは、測色機による測色用のカラーチャートを含むカラーチャートシートを印刷装置に印刷させるためのプログラムであって、カラーチャートと、カラーチャートに対する測色機の測色開始位置および測色開始向きを示す第1画像と、を含むカラーチャートシートを印刷装置に印刷させる制御部として、コンピューターを機能させる。
【0006】
本発明の印刷システムの生産方法は、測色機による測色用のカラーチャートを含むカラーチャートシートを印刷する印刷装置と、測色機および印刷装置を制御する制御装置と、を含む印刷システムの生産方法であって、印刷装置により、カラーチャートと、カラーチャートに対する測色機の測色開始位置および測色開始向きを示す第1画像と、を含むカラーチャートシートを印刷するステップと、測色機により、カラーチャートシートの第1画像の位置から測色を開始することにより、カラーチャートを測色するステップと、制御装置により、測色機によるカラーチャートの測色の結果に基づいて色調整を行い、印刷システムを生産するステップと、を実行する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図3】測色中の測色機と、測色ガイドと、カラーチャートシートと、を示す斜視図である。
【
図7】カラーチャートシートの測色をしている状況をトレイの上から見た図である。
【
図8】カラーチャートシートの測色をしている状況をトレイの断面で見た図である。
【
図12】カラーチャートシート印刷処理を示すフローチャートである。
【
図13】測色・色調整処理を示すフローチャートである。
【
図14】第1測色処理を示すフローチャートである。
【
図15】第2印刷システムのシステム構成図である。
【
図16】速度差を示す情報の表示例を示す図である。
【
図17】速度差を示す情報の表示例を示す図である。
【
図18】速度差を示す情報の表示例を示す図である。
【
図19】速度差を示す情報の表示例を示す図である。
【
図20】速度差を示す情報の表示例を示す図である。
【
図22】第3印刷システムのシステム構成図である。
【
図23】速度差を示す情報の表示例を示す図である。
【
図24】第2測色処理を示すフローチャートである。
【
図25】第4印刷システムのシステム構成図である。
【
図26】理想速度を示す情報の表示例を示す図である。
【
図27】第5印刷システムのシステム構成図である。
【
図28】理想速度を示す情報の表示例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
[第1実施形態]
以下、一実施形態に係るプログラムおよび印刷システムの生産方法について、添付図面に基づいて説明する。第1実施形態では、測色用のカラーチャート41を含むカラーチャートシート4(
図5参照)の印刷について説明する。
【0009】
図1は、第1印刷システムSY1のシステム構成図である。第1印刷システムSY1は、カラーチャートシート4を印刷する印刷装置1と、カラーチャートシート4のカラーチャート41を測色する測色機2と、これら印刷装置1および測色機2を制御するPC(Personal Computer)3と、を備える。PC3は、「制御装置」の一例である。
【0010】
第1印刷システムSY1において、印刷装置1とPC3、および、測色機2とPC3は、ケーブルやネットワーク等の通信回線を介して接続される。その通信回線は、有線通信回線であってもよいし、無線通信回線であってもよい。また、PC3に代えて、スマートフォンなどの情報処理端末を用いてもよい。
【0011】
図2は、測色機2の斜視図である。本実施形態に係る測色機2は、ユーザーによって動かされる手動タイプのものである。測色機2は、測色機本体20と、測色ボタン23と、光学センサー24と、摺動凸部25と、を備える。測色機本体20は、上側、すなわち、測色機2を操作するユーザー側から見て略長円形状を有し、先端側に比べて通信回線がのびる手前側が、若干幅広に構成されている。
【0012】
測色ボタン23は、ユーザーが測色の開始および終了指示を入力するためのものであり、測色機本体20の側面など、ユーザーが測色機2を把持した状態で操作可能な位置に設けられる。本実施形態において、ユーザーは、測色開始時に測色ボタン23を押し、測色中は測色ボタン23を押し続け、測色終了時に測色ボタン23を離すものとする。
【0013】
光学センサー24および摺動凸部25は、測色機本体20の下面、すなわち、カラーチャートシート4と接触する面に設けられる。光学センサー24は、カラーチャート41に含まれる各パッチの色を読み取る。摺動凸部25は、測色機本体20の下面から下方に突出しており、後述する測色ガイド57(
図3参照)のガイド凹部57aに接触する部分となる。
【0014】
図3は、測色中の測色機2と、測色ガイド57と、カラーチャートシート4と、を示す斜視図である。同図に示すように、測色ガイド57は、略長方形の板状部材であり、測色機2の摺動凸部25が摺動するガイド凹部57aが形成されている。ガイド凹部57aは、測色ガイド57の長手方向に沿って、測色ガイド57の左端から右端まで一直線に形成されている。測色ガイド57は、測色機2をカラーチャート41のパッチ行に沿って平行に動かすためのガイドとして用いられる。
【0015】
ユーザーは、測色ガイド57に沿って測色機2をX方向に往復移動させることにより、1行分のパッチの測色を行う。より具体的には、以下に示すように、+X方向の測色である往路測色と、-X方向の測色である復路測色により、1行分のパッチの測色が行われる。
【0016】
ユーザーは、測色機2の移動を開始する前に測色機2の測色ボタン23を押し、測色ボタン23を押した状態で測色機2を+X方向に移動させる。ユーザーは、+X方向への移動が終了した後、測色ボタン23を離す。以上により、往路測色が行われる。次に、ユーザーは、測色機2の測色ボタン23を押し、測色ボタン23を押した状態で測色機を-X方向に移動させる。ユーザーは、-X方向への移動が終了した後、測色ボタン23を離す。以上により、復路測色が行われる。
【0017】
X方向は、「測色機の移動方向」の一例である。なお、測色機2の往復移動の方向は、逆であってもよい。つまり、測色機2の-X方向への移動により往路測色を行い、測色機2の+X方向への移動により復路測色を行ってもよい。ユーザーは、1行分のパッチの測色を終えると、測色ガイド57をパッチ1行分、パッチの列方向に移動させ、次行のパッチ行の測色を行う。
【0018】
図4および
図5は、カラーチャートシート4の平面図である。
図5は、
図4に、説明のための符号を付した図である。すなわち、カラーチャートシート4の実際の印刷物は、
図4に示したものとなる。カラーチャートシート4は、A4サイズ、B5サイズなど、規定の用紙サイズの用紙10をカットすることにより作成される。同図において、ハサミマークが付加された第1破線40がカット位置となる。なお、カラーチャートシート4を規定の用紙サイズに合わせて印刷することで、用紙10のカットを不要としてもよい。
【0019】
カラーチャートシート4は、カラーチャート41を含む。また、カラーチャート41は、パッチ群領域41aと、パッチ群左側領域41bと、パッチ群右側領域41cと、を含む。パッチ群領域41aには、異なる色で着色された複数のパッチがマトリクス状に配置されている。複数のパッチは、全て同サイズの長方形状であり、等間隔に並べられている。
【0020】
カラーチャート41の測色は、往路測色および復路測色のいずれにおいても、パッチ群領域41aの外側から測色を開始および終了することで、正確な測定ができる構成となっている。したがって、例えば往路測色においては、測色機2の光学センサー24がパッチ群左側領域41bに位置している状態から測色が開始され、測色機2の光学センサー24がパッチ群右側領域41cに位置するまで測色機2が+X方向に移動された時点で測色が終了される。
【0021】
パッチ群左側領域41bおよびパッチ群右側領域41cは、パッチ行を示すパッチ行数画像41eを含む。パッチ行数画像41eは、1行目のパッチ行から-Y方向に向かって、順次「1」からの自然数が割り当てられている。なお、以下の説明では、「1行目のパッチ行」を「先頭行」と称する。
【0022】
また、パッチ群左側領域41bおよびパッチ群右側領域41cは、測色ガイド57の上端の位置を示す線画像41fを含む。ユーザーは、例えば、先頭行の測色を行う際、測色ガイド57の上端、すなわち、測色ガイド57の+Y側の端がパッチ行数画像41eの「1」と「2」の間の線画像41f上に位置するように、測色ガイド57を配置する。また、ユーザーは、先頭行の測色が終了すると、2行目のパッチ行の測色を行うために、測色ガイド57の上端がパッチ行数画像41eの「2」と「3」の間の線画像41f上に位置するように、測色ガイド57を移動させる。
【0023】
カラーチャートシート4は、第1画像42aおよび第2画像42bを含む。第1画像42aは、カラーチャート41の先頭行の往路における測色機2の測色開始位置および測色開始向きを示す画像である。なお、測色開始位置とは、カラーチャート41のX方向において測色機2が測色を開始する位置を指す。また、測色開始向きとは、測色開始位置における測色機2の向きであり、カラーチャートシート4のシート表面、すなわちXY平面に垂直な軸周りにおける測色機2の向きを指す。
【0024】
第1画像42aは、カラーチャート41の先頭行の往路における測色機2の測色開始位置に測色機2が配置されたときの、測色機2を操作するユーザー側から見た測色機2の輪郭の一部を示す画像である。
図5の例において、第1画像42aは、測色機2の輪郭の+Y側から-X側にかけての輪郭を示す太実線の画像である。
【0025】
また、第2画像42bは、カラーチャート41の先頭行の復路における測色機2の測色開始位置および測色開始向きを示す画像である。また、第2画像42bは、カラーチャート41の先頭行の復路における測色機2の測色開始位置に測色機2が配置されたときの、測色機2を操作するユーザー側から見た測色機2の輪郭の一部を示す画像である。
図5の例において、第2画像42bは、測色機2の輪郭の+Y側から+X側にかけての輪郭を示す太破線の画像である。そして、第1画像42aおよび第2画像42bは、カラーチャート41と重なる位置には存在しない。
【0026】
なお、第1画像42aおよび第2画像42bは、太実線および太破線に限らず、他の画像、または、他の模様であってもよい。また、第1画像42aおよび第2画像42bは、測色機2の輪郭の全体を示す画像であってもよい。また、第1画像42aおよび第2画像42bは、必ずしも異なる形態の画像でなくてもよく、同じ形態の画像であってもよい。例えば、第1画像42aおよび第2画像42bが、いずれも太実線の画像であってもよい。また、第1画像42aおよび第2画像42bは輪郭のみを表す画像でなくてもよく、輪郭の内部に測色機2の画像等の他の画像を含んでいてもよい。
【0027】
図6は、
図5の一部を拡大した図である。
図5および
図6に示すように、カラーチャートシート4は、第3画像43を含む。第3画像43は、カラーチャートシート4を配置するトレイ5の所定位置に対応した画像である。詳細については後述するが、トレイ5のトレイ本体50は、用紙押さえクリップ51が配置されるクリップ配置領域50aと、クリップ配置領域50a以外の領域であるシート配置領域50bと、を有する(
図7参照)。本実施形態において、所定位置は、トレイ5のシート配置領域50bの左上隅部および上端部を指す。すなわち、第3画像43は、シート配置領域50bの左上隅部に合致する直角三角形の三角形画像43aと、三角形画像43aのX方向に平行な一辺から延びる直線を、カラーチャートシート4の+X側の端まで延長させた直線画像43bと、を含む。ユーザーは、この直線画像43bが、トレイ5のシート配置領域50bの上端、すなわち、トレイ5のクリップ配置領域50aの下端と一致するように、カラーチャートシート4をトレイ5に配置する。
【0028】
また、
図5および
図6に示すように、カラーチャートシート4は、第4画像46を含む。第4画像46は、トレイ5へのカラーチャートシート4の配置からカラーチャート41の測色までの作業工程で注視すべき個所と、作業工程の順序と、を示す画像である。第4画像46は、三角形画像43aの近傍に配置されて「1」の数字が表された第1数字画像46aと、直線画像43bの近傍に配置されて「2」の数字が表された第2数字画像46bと、を含む。また、第4画像46は、第1画像42aの+Y側の近傍に配置されて「3」の数字が表された第3数字画像46cと、第1画像42aの+X側の近傍に配置されて「4」の数字が表された第4数字画像46dと、第2画像42bの+Y側の近傍に配置されて「5」の数字が表された第5数字画像46eと、第2画像42bの-X側の近傍に配置されて「6」の数字が表された第6数字画像46fと、を含む。
【0029】
第1数字画像46aは、1番目の作業工程である、トレイ5へのカラーチャートシート4の配置において注視すべき箇所を示す画像である。また、第2数字画像46bは、2番目の作業工程である、用紙押さえクリップ51によるカラーチャートシート4のクリッピングにおいて注視すべき箇所を示す画像である。第3数字画像46cは、3番目の作業工程である、カラーチャート41の先頭行の往路における測色機2の測色開始において注視すべき箇所を示す画像である。第4数字画像46dは、カラーチャート41の往路における測色機2の移動において注視すべき箇所を示す画像である。第5数字画像46eは、5番目の作業工程である、カラーチャート41の先頭行の復路における測色機2の測色開始において注視すべき箇所を示す画像である。第6数字画像46fは、カラーチャート41の復路における測色機2の移動において注視すべき箇所を示す画像である。
【0030】
また、
図5および
図6に示すように、カラーチャートシート4は、補助画像47を含む。補助画像47は、第1クリップ位置画像47aと、第2クリップ位置画像47bと、往路移動方向画像47cと、復路移動方向画像47dと、を含む。なお、これらの補助画像47を囲む楕円形の破線は、説明のために付したものであり、カラーチャートシート4に印刷されるものではない。
【0031】
第1クリップ位置画像47aは、クリッピング作業を示す画像であり、直線画像43bおよび第2数字画像46bの近傍に配置される。第2クリップ位置画像47bは、クリッピング作業を示す画像であり、第1クリップ位置画像47aより+X側、且つ、直線画像43bの近傍に配置される。往路移動方向画像47cは、カラーチャート41の往路における測色機2の移動方向を示す画像であり、第4数字画像46dの近傍に配置される。復路移動方向画像47dは、カラーチャート41の復路における測色機2の移動方向を示す画像であり、第6数字画像46fの近傍に配置される。
【0032】
また、
図5に示すように、カラーチャートシート4は、チャート情報画像48を含む。チャート情報画像48は、カラーチャート41の識別番号と、ページ番号を示す画像である。チャート情報画像48としては、これらの情報の他、カラーチャート41の解像度、パッチサイズ、カラーチャートシート4を印刷した印刷装置1の機種情報、カラーチャートシート4の印刷日時などの情報を含めてもよい。なお、機種情報や印刷日時の情報は、例えば、カラーチャートシート4の印刷指示を受け付けたときに、測色支援プログラム37aに含まれるカラーチャートシート4の画像データに、これらを示す画像データが付加されて、カラーチャートシート4を印刷するためのカラーチャートシート印刷データが生成される。なお、チャート情報画像48は人間が一瞥して理解できないようなバーコードなどのコード画像であってもよい。
【0033】
図7は、カラーチャートシート4の測色をしている状況をトレイ5の上から見た図である。また、
図8は、カラーチャートシート4の測色をしている状況をトレイ5の断面で見た図である。両図において、ユーザーの手は省略している。両図に示すように、トレイ5は、トレイ本体50と、トレイ本体50の+Y側に設けられた用紙押さえクリップ51と、トレイ本体50の-X側の端に設けられた左端板52と、トレイ本体50の+X側の端に設けられた右端板53と、を備える。
【0034】
図7に示すように、トレイ本体50は、用紙押さえクリップ51が配置されるクリップ配置領域50aと、クリップ配置領域50a以外の領域であるシート配置領域50bと、に区画される。また、左端板52と右端板53との間の長さは、カラーチャートシート4のX方向の長さと略同一の長さであり、シート配置領域50bのY方向長さは、カラーチャートシート4のY方向の長さに、測色ガイド57のY方向長さを加えた長さよりも長くなっている。また、測色ガイド57のX方向における長さは、カラーチャートシート4のX方向の長さと略同一の長さとなっている。
【0035】
一方、
図7および
図8において、実線で示す測色機2は、カラーチャート41の第1画像42aが示す往路における測色開始位置に配置された状態の測色機2である。このとき、測色機2の光学センサー24は、パッチ群左側領域41bに位置する。言い換えれば、PC3は、カラーチャートシート4の左端からパッチ群領域41aの左端までの長さが、第1画像42aの位置および向きに合わせて配置された測色機2の左端から光学センサー24までの長さより長くなるようなカラーチャートシート4を印刷装置1に印刷させる。この構成により、ユーザーは、測色機2を第1画像42aの位置および向きに合わせて配置することで、パッチ群領域41a外側の白地領域から、往路方向における測色を開始でき、ひいては測色失敗を防ぐことができる。なお、
図8に示す実線矢印Aは、往路方向における測色機2の移動方向を示している。
【0036】
また、
図7および
図8において、仮想線で示す測色機2は、カラーチャート41の第2画像42bが示す復路における測色開始位置に配置された状態の測色機2である。このとき、測色機2の光学センサー24は、パッチ群右側領域41cに位置する。言い換えれば、PC3は、カラーチャートシート4の右端からパッチ群領域41aの右端までの長さが、第2画像42bの位置および向きに合わせて配置された測色機2の右端から光学センサー24までの長さより長くなるようなカラーチャートシート4を印刷装置1に印刷させる。この構成により、ユーザーは、測色機2を第2画像42bの位置および向きに合わせて配置することで、パッチ群領域41a外側の白地領域から、復路方向における測色を開始でき、ひいては測色失敗を防ぐことができる。なお、
図8に示す仮想線矢印Bは、復路方向における測色機2の移動方向を示している。
【0037】
また、本実施形態において、カラーチャート41の復路における測色開始位置は、カラーチャート41の往路における測色終了位置と一致し、カラーチャート41の往路における測色開始位置は、カラーチャート41の復路における測色終了位置と一致する。つまり、カラーチャート41の往路における測色終了時において、測色機本体20は第2画像42bの示す位置に存在し、カラーチャート41の復路における測色終了時において、測色機本体20は第1画像42aの示す位置に存在してもよい。この構成により、ユーザーは、往路方向においては、測色機2を第2画像42bの示す位置まで移動させることで、パッチ群領域41a外側の白地領域まで、測色を行うことができ、ひいては測色失敗を防ぐことができる。また、ユーザーは、復路方向においては、測色機2を第1画像42aの示す位置まで移動させることで、パッチ群領域41a外側の白地領域まで、測色を行うことができ、ひいては測色失敗を防ぐことができる。
【0038】
なお、往路においては、測色機2を第2画像42bの示す位置より右側の右端板53に接触する位置まで移動させ、復路においては、測色機2を第1画像42aの示す位置より左側の左端板52に接触する位置まで移動させるようにしてもよい。つまり、必ずしも往路における測色開始位置と復路における測色終了位置、および、復路における測色開始位置と往路における測色終了位置が一致しなくてもよい。
【0039】
図9は、印刷装置1の制御系を示すブロック図である。印刷装置1は、印刷装置制御部11、印刷装置通信部12および印刷部13を備える。印刷装置制御部11は、PC3からの指令に基づき、印刷部13を制御する。例えば、印刷装置制御部11は、PC3からカラーチャートシート印刷データを取得すると、取得したカラーチャートシート印刷データに基づいて、印刷部13にカラーチャートシート4を印刷させる。印刷装置通信部12は、PC3と通信を行う。印刷部13は、インクジェット方式や電子写真方式などの印刷方式により、印刷用紙等の印刷媒体に印刷を行う。
【0040】
図10は、測色機2の制御系を示すブロック図である。測色機2は、測色機制御部21、測色機通信部22、測色ボタン23、光学センサー24および光源を備える。測色機制御部21は、測色ボタン23が押されたとき、および、測色ボタン23が離されたとき、それぞれ押下開始信号および押下解除信号をPC3に送信する。なお、測色機制御部21は、測色ボタン23が押されている間、繰り返し押下信号をPC3に送信する構成でもよい。
【0041】
また、測色機制御部21は、測色ボタン23が押されている間中、周期的に光学センサー24の読み取り結果を取得し、取得した読み取り結果を、測色値データとしてPC3に定期的に送信する。測色機制御部21は、光学センサー24の読み取りと並行して定期的に測色値データの送信を行うが、読みとりと送信は同期して行ってもよいし、異なる周期で行ってもよい。なお、測色機制御部21は、測色ボタン23が離されたタイミングで、測色ボタン23が押されている間に取得して蓄積した測色値データの送信を行う構成でもよい。
【0042】
測色機通信部22は、PC3と通信を行う。測色ボタン23は、ユーザーが測色中に押すボタンである。光学センサー24は、可視光域を含む波長域を複数の部分波長域に分割した部分波長域ごとの分光反射率を測定できるように構成されており、発光部、受光部およびA/D変換部を含む。光学センサー24は、光源を含む発光部により、カラーチャート41に設けられる各パッチに向けて光を照射し、受光部により、その反射光を受光する。また、光学センサー24は、A/D変換部により、受光部の受光量を電気信号に変換し、変換した電気信号を測色機制御部21に出力する。
【0043】
図11は、PC3の制御系を示すブロック図である。PC3は、PC制御部31と、第1PC通信部32と、第2PC通信部33と、PC操作部34と、表示部35と、音声出力部36と、PC記憶部37と、を備える。PC記憶部37は、例えばHDD(Hard Disk Drive)であり、測色支援プログラム37aおよび印刷制御プログラム37bを記憶する。PC制御部31は、「制御部」および「コンピューター」の一例である。また、測色支援プログラム37aは、「プログラム」の一例である。
【0044】
測色支援プログラム37aは、カラーチャートシート4を印刷装置1に印刷させるためのプログラムである。測色支援プログラム37aは、カラーチャートシート4の印刷データを生成するための画像データと、カラーチャート41に含まれる各パッチの基準色を示す基準色データと、を含む。測色支援プログラム37aは、複数種類のカラーチャートシート4に対応して、複数種類の画像データおよび複数種類の基準色データを含む。
【0045】
また、測色支援プログラム37aは、カラーチャート41に対してユーザーが測色機2を動かす操作を支援するためのプログラムである。また、測色支援プログラム37aは、測色機2から取得した測色値データに基づいて、印刷装置1の色調整を行うための色調整データを生成し、生成した色調整データを印刷制御プログラム37bに登録するプログラムである。
【0046】
一方、印刷制御プログラム37bは、カラーチャートシート4以外の印刷物を印刷装置1に印刷させるためのプログラムである。
【0047】
PC制御部31は、CPU(Central Processing Unit)等のプロセッサーと、RAM(Random access memory)やROM(Read Only Memory)等のメモリーと、を含む。RAMは、CPUの作業領域として用いられる。また、ROMには、PC3の制御プログラム等が記憶される。
【0048】
PC制御部31は、測色支援プログラム37aに基づいて、カラーチャートシート4を印刷装置1に印刷させる印刷制御、ユーザーが測色機2を動かす操作を支援する測色支援制御、測色値データに基づいて色調整データを生成し、生成した色調整データを印刷制御プログラム37bに登録する色調整制御、などを行う。PC制御部31の制御に基づく具体的な処理については、後述する。
【0049】
第1PC通信部32は、印刷装置1と通信を行う。第2PC通信部33は、測色機2と通信を行う。PC操作部34は、マウス、キーボードまたはタッチパネルなどであり、ユーザーが各種操作を行うために用いられる。表示部35は、カラーチャート41の測色に関する設定を行うカラーチャート設定画面など、各種情報を表示する。
【0050】
カラーチャート設定画面では、例えば、測色値の種類、測色結果の表示方法、測色機2の種類等が設定される。なお、測色値の種類としては、L*a*b*、Lch、反射絶対濃度、分光反射率、などの中からいずれかが選択される。本実施形態では、測色値の種類としてL*a*b*が選択された場合を説明する。また、測色結果の表示方法としては、測色値データを表形式で表示するのかグリッド形式で表示するのか、また、往路測色結果と、復路測色結果の色差を表示するのか否か、などが選択される。また、測色機2の種類は、対応するカラーチャートシート4の種類と対応付けられており、カラーチャート設定画面で選択された測色機2の種類に応じて、異なるカラーチャートシート4が印刷される。音声出力部36は、ユーザーが測色機2を動かす操作を支援するための音声を出力する。
【0051】
図12は、測色支援プログラム37aが起動されることで開始するカラーチャートシート印刷処理を示すフローチャートである。PC制御部31は、PC操作部34の操作により、カラーチャートシート4の印刷指示を受け付けると(S01)、カラーチャートシート4を印刷装置1に印刷させるためのカラーチャートシート印刷データを生成する(S02)。PC制御部31は、チャート情報画像48を生成するために必要な情報を収集しチャート情報画像48を生成するとともに、カラーチャート設定画面で選択された測色機2の種類に対応するカラーチャートシート4の画像データを選択して、カラーチャートシート印刷データを生成する。PC制御部31は、生成したカラーチャートシート印刷データを、第1PC通信部32を介して印刷装置1に送信する(S03)。
【0052】
図13は、測色・色調整処理を示すフローチャートである。PC制御部31は、PC操作部34の操作により、カラーチャート41の測色開始指示を受け付けると(S11)、測色処理を行う(S12)。PC制御部31は、測色処理により、カラーチャート41に含まれる全てのパッチの測色値データを取得する。PC制御部31は、測色処理終了後、色調整処理を行う。色調整処理は、色調整データを生成する工程(S13)と、色調整データを登録する工程(S14)と、を含む。
【0053】
PC制御部31は、色調整データを生成する工程(S13)において、取得した測色値データに基づいて、印刷装置1の色調整を行うための色調整データを生成する。色調整データとは、取得した各パッチの測色値データに基づく各パッチの色を、対応する各パッチの基準色に近づけるためのデータである。PC制御部31は、取得した各パッチのL*a*b*色空間に基づく測色値データと、測色支援プログラム37aに含まれるL*a*b*色空間に基づく基準色データと、に基づいて、各パッチが基準色で印刷されるように調整するデータである色調整データを生成する。また、PC制御部31は、色調整データを登録する工程(S14)において、生成した色調整データを、測色支援プログラム37aおよび印刷制御プログラム37bに登録する。これにより、測色支援プログラム37aを用いた次回のカラーチャートシート4の印刷や、印刷制御プログラム37bを用いた印刷において、基準色で印刷されるべき箇所が基準色で印刷されやすくなる。
【0054】
このように、PC制御部31により色調整処理が行われることにより、色調整が完了した新たな第1印刷システムSY1を生産することができる。なお、
図12に示したカラーチャート印刷処理および
図13に示した測色・色調整処理は、「印刷システムの生産方法」の一例である。
【0055】
図14は、第1測色処理を示すフローチャートである。このフローチャートは、
図13に示したフローチャートのS12に相当するサブフローチャートである。PC制御部31は、第1測色処理が開始されると、測色ボタン23が押されているか否かを判別する(S31)。測色ボタン23が押されているか否かの判別は、測色機2から押下開始信号を受信したか否かに基づいて行う。PC制御部31は、測色ボタン23が押されていないと判定した場合(S31:No)、S31に戻り、測色ボタン23が押されていると判定した場合(S31:Yes)、光学センサー24の光源が安定しているか否かを判別する(S32)。光源が安定しているか否かの判別は、測色ボタン23の押下開始から所定の時間が経過したか否かに応じて行う。
【0056】
PC制御部31は、光源が安定していないと判定した場合(S32:No)、S32に戻り、光源が安定していると判定した場合(S32:Yes)、音声出力部36により「音A」を出力する(S33)。「音A」は、測色の開始を示す音であり、例えば、短い通知音1回分の音である。PC制御部31は、測色ボタン23が押されているか否かを判別し(S34)、測色ボタン23が押されていないと判定した場合(S34:No)、S34に戻る。また、PC制御部31は、測色ボタン23が押されていると判定した場合(S34:Yes)、測色機2から測色値データを取得する(S35)。
【0057】
その後、PC制御部31は、測色ボタン23が離されたか否かを判別する(S36)。測色ボタン23が離されたか否かの判別は、測色機2から押下解除信号を受信したか否かに基づいて行う。PC制御部31は、測色ボタン23が離されていないと判定した場合は(S36:No)、S35に戻り、測色ボタン23が離されたと判定した場合は(S36:Yes)、測色機2から取得した測色値データ、すなわち、測色機2の往路移動または復路移動に基づくパッチ1行分の測色値データが正しいか否かを判別する(S37)。測色値データが正しいか否かの判別は、取得した各パッチの測色値データと、予め記憶されている各パッチの基準色データと、を比較し、その差が閾値未満であるか否かなど、所定の判定アルゴリズムに基づいて行う。また、S37では、取得した測色値データが、往路測色によるものであったか復路測色によるものであったかを判別し、その判別結果をフラグとして記憶する。
【0058】
PC制御部31は、測色値データが正しくないと判定した場合(S37:No)、音声出力部36により「音B」を出力し(S38)、S31に戻る。「音B」は、測色失敗を示す音であり、例えば、長い通知音1回分の音である。PC制御部31は、測色値データが正しいと判定した場合(S37:Yes)、取得した測色値データが、測色機2の往路測色に基づく測色値データであるか否かを判別する(S39)。測色機2の往路測色に基づく測色値データであるか否かの判別は、例えば、往路測色か復路測色かを示すフラグ、に基づいて行う。
【0059】
PC制御部31は、取得した測色値データが、測色機2の往路測色に基づく測色値データであると判定した場合(S39:Yes)、音声出力部36により「音A」を出力する(S40)。この場合の「音A」は、往路測色の成功を示す音であり、S33で出力した音と同じ音である。また、PC制御部31は、取得した測色値データが、測色機2の往路測色に基づく測色値データではないと判定した場合(S39:No)、音声出力部36により「音C」を出力する(S41)。「音C」は、復路測色の成功を示す音であり、例えば、短い通知音2回分の音である。
【0060】
PC制御部31は、S40またはS41の後、カラーチャート41に含まれる全てのパッチの測色を終了したか否かを判別し(S42)、終了したと判定した場合(S42:Yes)、第1測色処理を終了する。また、PC制御部31は、カラーチャート41に含まれる全てのパッチの測色を終了してないと判定した場合(S42:No)、S31に戻る。
【0061】
以上説明したとおり、第1実施形態によれば、カラーチャートシート4には、カラーチャート41の先頭行の往路における測色機2の測色開始位置および測色開始向きを示す第1画像42aが含まれるため、ユーザーに対し、どの位置から測色を開始したらよいか、また測色開始時点において、測色機2をどのような向きで配置したらよいかを、分かりやすく提示することができる。同様に、カラーチャートシート4には、カラーチャート41の先頭行の復路における測色機2の測色開始位置および測色開始向きを示す第2画像42bが含まれるため、ユーザーに対し、どの位置から復路の測色を開始したらよいか、また復路の測色開始時点において、測色機2をどのような向きで配置したらよいかを、分かりやすく提示することができる。
【0062】
また、第1画像42aは、カラーチャート41の先頭行の往路における測色機2の測色開始位置に測色機2が配置されたときの測色機2の輪郭の少なくとも一部を示す画像であるため、ユーザーに対し、より分かりやすく測色機2の往路における測色開始位置および測色開始向きを提示することができる。同様に、第2画像42bは、カラーチャート41の先頭行の復路における測色機2の測色開始位置に測色機2が配置されたときの測色機2の輪郭の少なくとも一部を示す画像であるため、ユーザーに対し、より分かりやすく測色機2の復路における測色開始位置および測色開始向きを提示することができる。
【0063】
また、カラーチャートシート4には、カラーチャートシート4を配置するトレイ5のシート配置領域50bの左上隅部および上端部に対応した第3画像43が含まれるため、ユーザーに対し、トレイ5のどの位置にカラーチャートシート4を配置したらよいかを、分かりやすく提示することができる。また、カラーチャートシート4には、トレイ5へのカラーチャートシート4の配置からカラーチャート41の測色までの作業工程で注視すべき個所と、作業工程の順序と、を示す第4画像46が含まれるため、ユーザーに対し、どのような順序で、どこに注視しながら作業を進めるべきかを、分かりやすく提示することができる。
【0064】
また、PC制御部31は、第1測色処理において、測色失敗時、往路測色成功時、復路測色成功時に、それぞれ異なる音を出力するため、ユーザーに対し、測色が成功したのか否か、また次に往路測色を行えばよいのか復路測色を行えばよいのかを、分かりやすく提示することができる。
【0065】
なお、第1実施形態では、以下の変形例を採用可能である。
[変形例1-1]
第1実施形態では、測色機2の往復移動により1行分のパッチの測色が行われるものとしたが、片側移動により1行分のパッチの測色が行われる構成でもよい。すなわち、1回の走査で、1行分のパッチの測色が行われる構成でもよい。また、第1実施形態では、手動の測色機2を用いたが、自動的に移動する測色機を用いてもよい。自動的に移動する測色機を用いた場合でも、第1画像42aにより測色機2を最初に配置すべき位置をユーザーに示すことができる。なお、カラーチャート41のX方向への移動だけでなく、Y方向へも自動的に移動する測色機2を用いる場合は、第2画像42bの印刷を不要としてもよい。
【0066】
[変形例1-2]
また、カラーチャート41のパッチの配置は、マトリクス状に限らず、直線状または曲線状など、線状に配置されたものでもよい。また、パッチの形状も、四角形に限らず、丸形状など他の形状であってもよい。また、カラーチャート41に含まれる複数のパッチは、必ずしも、全て同じ形状、且つ、同じ間隔で配置されなくてもよい。
【0067】
[変形例1-3]
また、PC制御部31は、第1測色処理において、測色開始時および往路測色成功時において、同じ音を出力したが(
図14のS33,S40参照)、異なる音を出力してもよい。また、PC制御部31は、通知音を出力するのではなく、「測色を開始します。」、「往路の測色に成功しました。」など音声ガイダンスを出力してもよい。この場合、往路測色成功時には、「次は、復路測色です。」など、復路の測色を促す音声ガイダンスを出力してもよい。また、復路測色成功時には、「次は、2行目の往路測色です。測色ガイドをパッチ1行分移動させてください。」など、次に測色する行数を提示すると共に、復路の測色と測色ガイド57の移動を促す音声ガイダンスを出力してもよい。さらに、測色失敗時には、「測色に失敗しました。往路から測色をやり直してください。」など、測色の失敗を提示すると共に、測色のやり直しを促す音声ガイダンスを出力してもよい。
【0068】
[第2実施形態]
次に、第2実施形態について説明する。第2実施形態は、PC3が、測色支援プログラム37aに基づいて、ユーザーがカラーチャート41に対して測色機2を動かす操作を支援することを特徴とする。特に、本実施形態では、PC3が、カラーチャート41を測色しているときの測色機2の移動速度である実速度と、カラーチャート41の測色に理想的な測色機2の移動速度である理想速度と、の差を示す情報をユーザーに提示することを特徴とする。以下、第1実施形態と異なる点を中心に説明する。なお、本実施形態において、第1実施形態と同様の構成部分については同様の符号を付し、詳細な説明を省略する。また、第1実施形態と同様の構成部分について適用される変形例は、本実施形態についても同様に適用される。
【0069】
図15は、第2印刷システムSY2のシステム構成図である。第2印刷システムSY2は、印刷装置1と、測色機2と、PC3と、カメラ6と、を備える。印刷装置1、測色機2およびPC3の制御系については、第1実施形態と同様の構成を採用可能である。カメラ6は、測色機2の移動速度を計測するために用いられる。
【0070】
カメラ6は、カメラ制御部61と、カメラ通信部62と、撮影部63と、を備える。カメラ制御部61は、撮影部63の撮影結果である撮影動画を生成する。カメラ制御部61は、撮影部63による撮影と並行して、リアルタイムに撮影動画をカメラ通信部62経由でPC3に送信する。撮影部63は、本実施例ではMOSセンサーチップ1つで撮影を行うが、CCDセンサーチップで撮影をしたり、複数のセンサーチップで撮影したりしてもよい。
【0071】
撮影部63は、ユーザーがカラーチャート41に対して測色機2を動かす様子を撮影する。撮影部63は、ユーザーの手によって測色機2が隠れることがないように、カラーチャートシート4の+Y方向側、且つ、上方から撮影を行うことが好ましい。これにより、PC3は、測色機2の移動速度を正確に計測することができる。なお、PC3と別体のカメラ6により撮影を行うのではなく、PC3に設けられた撮影機能を用いて撮影を行ってもよい。
【0072】
本実施形態において、PC制御部31は、ユーザーがカラーチャート41に対して測色機2を動かしたときの測色機2の移動速度である実速度と、カラーチャート41の測色に理想的な測色機2の移動速度である理想速度と、の差を示す情報(以下、「速度差を示す情報」と称する)を、表示部35に表示させる。表示部35は、「提示部」の一例である。
【0073】
PC制御部31は、カメラ6から撮影動画を受信し、受信した撮影動画を解析することにより、測色位置を取得する。測色位置とは、カラーチャート41のX方向における位置を指す。PC制御部31は、取得した測色位置の変化から測色機2の移動速度を計測し、計測した移動速度を実速度として取得する。また、PC制御部31は、測色支援プログラム37aに予め記憶されている、理想速度を取得する。理想速度は、測色機2の種類ごとに記憶されている。つまり、PC制御部31は、カラーチャート設定画面で選択された測色機2の種類に対応する理想速度を取得する。また、PC制御部31は、計測した実速度と、取得した理想速度と、に基づいて、速度差を示す情報を、表示部35に表示させる。例えば、PC制御部31は、速度差を示す情報として、撮影動画と、理想速度を示す動画と、を合成した合成動画60を、表示部35に表示させる。
【0074】
図16は、合成動画60の表示例を示す図である。PC制御部31は、撮影動画として、トレイ5、カラーチャートシート4、測色機2、測色機2を動かすユーザーの手、などを表示する。このように、撮影動画には、測色機2の動きも含まれるため、撮影動画は、実速度を示す動画となる。また、PC制御部31は、理想速度を示す動画として、カラーチャート41上を理想速度で等速移動する第1ライン画像66を表示する。この第1ライン画像66は、測色機2を理想速度で移動させたときのカラーチャート41の測色対象パッチ列を示している。なお、PC制御部31は、撮影動画から、トレイ5の位置やカラーチャート41の位置を判定し、判定した位置に基づいて、第1ライン画像66の表示位置を決定する。
【0075】
PC制御部31は、往路測色の場合、第1ライン画像66をカラーチャート41の+X方向に移動させ、復路測色の場合、第1ライン画像66をカラーチャート41の-X方向に移動させる。なお、第1ライン画像66の移動開始タイミングは、測色機2の測色ボタン23が押されたときであり、第1ライン画像66の移動終了タイミングは、測色機2の測色ボタン23が離されたときである。
【0076】
図16の例は、往路測色時の合成動画60を示したものであるが、カラーチャート41のX方向において、第1ライン画像66が、測色機2の測色位置より測色機2の進行方向、すなわちカラーチャート41の+X方向側に位置しているため、理想速度より実速度が遅いことを示している。ユーザーは、この第1ライン画像66から、測色機2の移動速度を速めた方がよいことに気づくことができる。
【0077】
また、PC制御部31は、合成動画60の一部として、測色機2を理想速度で動かしたときの未測色のパッチ列を示す動画を表示する。PC制御部31は、カラーチャート41に含まれるパッチ列のうち、第1ライン画像66から測色機2の進行方向側に存在するパッチ列を未測色のパッチ列と判定し、判定した未測色のパッチ列を対象として、未測色のパッチ列を示す動画をリアルタイムで表示する。
図16の例では、未測色のパッチ列を示す動画として、第1ライン画像66の移動に伴って表示領域が狭まるグレーアウト画像67が表示されている。グレーアウト画像67は、撮影動画に含まれる未測色のパッチ列に重畳して表示される。ユーザーは、このグレーアウト画像67から、未測色のパッチ列を把握することができ、ひいては、測色機2の移動方向を確認することができる。
【0078】
以上説明したとおり、第2実施形態によれば、PC制御部31は、撮影動画と、理想速度を示す動画と、を合成した合成動画60を表示部35に表示させるため、ユーザーに対し、測色機2を動かす速度が、理想速度より速いのか遅いのかを分かりやすく提示することができる。これにより、ユーザーは、撮影動画に含まれる測色機2のイメージと、理想速度を示す動画と、が一致するように測色機2を移動させることで、理想的な移動速度でカラーチャート41の測色を行うことができる。また、撮影動画は、実速度を示すだけでなく、実速度を計測するためにも用いられるため、実速度を計測するための計測器を別途必要としない。
【0079】
なお、第2実施形態では、以下の変形例を採用可能である。
[変形例2-1]
第2実施形態では、カメラ6からPC3に撮影動画を送信したが、カメラ制御部61により、撮影動画に基づいて測色機2の移動速度を計測し、計測した測色機2の移動速度をPC3に送信する構成でもよい。
【0080】
[変形例2-2]
第2実施形態では、速度差を示す情報として、合成動画60(
図16参照)を例示したが、合成動画60以外の情報を表示してもよい。
図17ないし
図19は、速度差を示す情報として、グラフを表示する例を示したものである。
【0081】
図17の例では、PC制御部31は、パッチ1行分を示す第1パッチ行イメージ画像101と、第1パッチ行イメージ画像101のパッチ行方向、すなわちカラーチャート41のX軸方向における測色機2の位置を横軸、速度を縦軸とする第1グラフ102と、を表示部35に表示させる。第1グラフ102において、網掛け領域103は、理想速度を示している。また、第1実線P1は、理想速度に対して測色機2の移動速度が速いときの実速度の一例を示している。また、第2実線P2は、理想速度に対して測色機2の移動速度が遅いときの実速度の一例を示している。PC制御部31は、実速度の取得に伴って、第1グラフ102に第1実線P1や第2実線P2を描画していく。つまり、測色終了時に、第1実線P1や第2実線P2を描画するのではなく、測色中に、第1実線P1や第2実線P2がリアルタイムに伸びていく。以下、
図18および
図19についても同様である。
【0082】
なお、第1グラフ102は、実際には、第1実線P1と第2実線P2が両方描画されることはないが、
図17では、説明の便宜上、両方を描画した。以下、
図18および
図19についても同様である。
【0083】
図18の例では、PC制御部31は、パッチ1行分を示す第2パッチ行イメージ画像111と、第2パッチ行イメージ画像111のパッチ行方向に沿って設けられた時間軸114と、を表示部35に表示させる。第2パッチ行イメージ画像111は、測色機2が理想速度で動かされたときの各パッチの読み取り時間を示している。また、第3パッチ画像P3は、理想速度に対して測色機2の移動速度が遅いときの各パッチの読み取り時間を示している。つまり、第3パッチ画像P3は、測色機2が理想速度で動かされた場合に比べて、1パッチを読み取るのに時間がかかっていることを示している。逆に、第4パッチ画像P4は、理想速度に対して測色機2の移動速度が速いときの各パッチの読み取り時間を示している。PC制御部31は、実速度の取得に伴って、第3パッチ画像P3および第4パッチ画像P4を描画していく。
【0084】
図19の例では、PC制御部31は、パッチ1行分を示す第3パッチ行イメージ画像121と、第3パッチ行イメージ画像121のパッチ行方向、すなわちカラーチャート41のX軸方向における測色機2の移動距離を横軸、時間を縦軸とする第2グラフ122と、を表示部35に表示させる。第2グラフ122において、第2破線123は、理想速度を示している。また、第5実線P5は、理想速度に対して測色機2の移動速度が速いときの実速度の一例を示している。また、第6実線P6は、理想速度に対して測色機2の移動速度が遅いときの実速度の一例を示している。PC制御部31は、実速度の取得に伴って、第2グラフ122に第5実線P5や第6実線P6を描画していく。
【0085】
[変形例2-3]
また、速度差を示す情報として、合成動画60やグラフ以外に、実速度と理想速度との差に応じて異なる文字を表示させてもよい。
図20は、速度差を示す情報として、文字情報131を表示する場合の表示例を示す図である。本例において、PC制御部31は、カメラ6の撮影動画と共に文字情報131を表示部35に表示させる。同図の文字情報131は、文字「Too Fast」であり、理想速度に対して実速度が速い旨を示している。
【0086】
図21は、
図20に示した表示を実現するための撮影処理を示すフローチャートである。同図に示す撮影処理は、
図13のS12に相当する測色処理が行われている間に実行される処理である。PC制御部31は、測色処理の開始に伴って、カメラ6による動画撮影を開始し(S51)、撮影動画から測色位置を取得する(S52)。PC制御部31は、時間計測を行い(S53)、一定時間が経過したか否かを判別し(S54)、一定時間が経過していないと判定した場合(S54:No)、S53に戻る。また、PC制御部31は、一定時間が経過したと判定した場合(S54:Yes)、撮影動画から測色位置を取得し(S55)、前回取得した測色位置との差異を算出する(S56)。この、前回取得した測色位置との差異は、一定時間における測色機2の移動距離に相当する。
【0087】
PC制御部31は、算出した測色位置の差異が第1閾値より小さいか否かを判別し(S57)、測色位置の差異が第1閾値より小さいと判定した場合(S57:Yes)、理想速度に対して実速度が遅い旨を示す文字情報131を表示し(S58)、S62に進む。また、PC制御部31は、算出した測色位置の差異が第1閾値より大きい第2閾値より大きいか否かを判別し(S59)、測色位置の差異が第2閾値より大きいと判定した場合(S59:Yes)、理想速度に対して実速度が速い旨を示す文字情報131を表示し(S60)、S62に進む。
【0088】
また、PC制御部31は、測色位置の差異が第2閾値以下であると判定した場合(S59:No)、実速度が適切である旨を示す文字情報131を表示する(S61)。その後、PC制御部31は、カラーチャート41に含まれる全てのパッチの測色が終了したか否かを判別し(S62)、測色が終了していないと判定した場合(S62:No)、S53に戻る。また、PC制御部31は、カラーチャート41に含まれる全てのパッチの測色が終了したと判定した場合(S62:Yes)、動画撮影を終了し(S63)、撮影処理を終了する。
【0089】
[変形例2-4]
第2実施形態では、測色機2の移動速度を、カメラ6の撮影動画から計測したが、他の方法を用いて計測してもよい。
図22は、リストバンド型端末7を用いて測色機2の移動速度を計測する第3印刷システムSY3のシステム構成図である。第3印刷システムSY3は、印刷装置1と、測色機2と、PC3と、リストバンド型端末7と、を備える。印刷装置1、測色機2およびPC3の制御系については、第1実施形態と同様である。本例において、リストバンド型端末7は、測色機2の移動速度を計測するだけでなく、速度差を示す情報を表示する表示手段として用いられる。
【0090】
リストバンド型端末7は、端末制御部71と、端末通信部72と、加速度センサー73と、表示画面74と、を備える。表示画面74は、「提示部」の一例である。加速度センサー73は、測色機2を動かすユーザーの手首の移動に伴う加速度の変化を検知する。端末制御部71は、加速度センサー73の検知結果に基づいて、測色機2の移動速度を計測し、計測した移動速度をPC3に送信する。PC3は、リストバンド型端末7から送信された移動速度に基づいて、速度差を示す情報を生成し、生成した情報をリストバンド型端末7に送信する。本例では、速度差を示す情報として、
図23に示す情報を表示するための表示データが送信される。端末制御部71は、PC3から送信された表示データを、表示画面74に表示させる。
【0091】
端末通信部72は、PC3と通信する。端末通信部72は、利便性向上のため、無線通信または赤外線通信などの非接触通信により、PC3と通信を行うことが好ましい。表示画面74は、PC3から送信された表示データに基づいて、速度差を示す情報を表示する。
【0092】
図23の例において、表示データは、メーター表示データ76と、文字表示データ77と、を含む。メーター表示データ76は、測色機2を表す測色機イメージ76aと、測色機イメージ76aを囲むように設けられたメーターイメージ76bと、メーターイメージ76bの略中央を示すセンターイメージ76cと、を含む。メーターイメージ76bは、複数の表示要素を含み、複数の表示要素には、青色から赤色にかけて徐々に色相が変化するように、各色が割り当てられている。例えば、センターイメージ76c付近の表示要素には、緑色が割り当てられる。また、メーターイメージ76bは、測色機2の実速度と理想速度との差に応じて、ON表示となる表示要素の数が変化する。
【0093】
例えば、青色から青緑色までに対応する表示要素がON状態となり、その他の表示要素がOFF状態となっている場合、実速度が理想速度より遅いことを示す。また、青色から緑色までに対応する表示要素がON状態となっている場合、すなわち、全体表示要素数の約半数がON状態となっている場合、実速度がほぼ理想速度であることを示す。また、青色から赤色までに対応する表示要素、すなわち、ON状態となる表示要素数が多い場合、実速度が理想速度より速いことを示す。
【0094】
一方、文字表示データ77としては、実速度が理想速度より遅い場合、その旨を示す文字「Too Slow」が表示される。また、図示しないが、実速度が理想速度より速い場合、その旨を示す文字「Too Fast」が表示される。また、実速度がほぼ理想速度である場合、文字表示データ77は、非表示となる。
【0095】
このように、本例によれば、ユーザーは、自分の手首に装着されたリストバンド型端末7において、実速度と理想速度との速度差を確認することができるため、PC3の表示部35を見る必要がなく、測色作業に集中することができる。
【0096】
なお、変形例2-4のさらなる変形例として、リストバンド型端末7以外のウェアラブル端末により実速度を計測してもよい。例えば、カメラ機能を搭載した眼鏡型端末により実速度を計測してもよい。この場合、眼鏡型端末のディスプレーに、時間差を示す情報を提示してもよい。また、ウェアラブル端末では、実速度の計測のみを行い、時間差を示す情報は、PC3の表示部35に提示する構成でもよい。また、実速度の計測は、加速度センサー73ではなく、速度センサー等のモーションセンサーを用いてもよい。
【0097】
また、変形例2-4のさらなる変形例として、ウェアラブル端末において実速度を計測するのではなく、ウェアラブル端末からセンサーの検知信号をPC3に送信し、PC制御部31が、ウェアラブル端末から送信されたセンサーの検知信号に基づいて、実速度の計測を行う構成でもよい。
【0098】
また、変形例2-4のさらなる変形例として、リストバンド型端末7により表示データを生成してもよい。この場合、リストバンド型端末7は、「コンピューター」の一例となり、リストバンド型端末7内の不図示の記憶部に「プログラム」が記憶されることとなる。つまり、リストバンド型端末7が、実速度を計測し、リストバンド型端末7内の記憶部に予め記憶されている理想速度に基づいて、速度差を示す情報を、表示画面74に表示させてもよい。また、さらなる変形例として、リストバンド型端末7にPC3の機能を搭載し、PCレスの構成としてもよい。この場合、リストバンド型端末7は、印刷装置1および測色機2と通信するための通信機能を備えることとなる。
【0099】
また、変形例2-4のさらなる変形例として、測色機2、PC3およびリストバンド型端末7を、スマートフォンなど、1台の情報処理端末により実現してもよい。この場合、情報処理端末は、「コンピューター」の一例となり、情報処理端末内の不図示の記憶部に「プログラム」が記憶されることとなる。また、この場合、情報処理端末は、印刷装置1と通信するための通信機能を備えることとなる。また、この場合、情報処理端末は、自身に搭載されたカメラ機能を用いて測色を行い、自身に搭載された加速度センサーを用いて実速度を計測する。また、この場合、測色支援プログラム37aおよび印刷制御プログラム37bは、スマートフォン用アプリケーションとして提供可能である。
【0100】
[変形例2-5]
変形例2-3および変形例2-4では、速度差を示す情報として、実速度と理想速度との差に応じて異なる文字を提示させたが、実速度と理想速度との差に応じて異なる色を提示部に提示させてもよい。この場合、提示部としてLED等の発光手段を用いてもよい。また、実速度と理想速度との差に応じて異なる音を提示部に提示させてもよい。この場合、提示部は、スピーカー等の音声出力手段となる。また、さらなる変形例として、文字、色および音のうち2つ以上を組み合わせて、速度差を示す情報を提示部に提示させてもよい。このように、本例によれば、文字、色および音のいずれか、またはそれらの組み合わせにより、ユーザーに対し、実速度と理想速度との差を分かりやすく提示することができる。
【0101】
[変形例2-6]
速度差を示す情報として、振動を発生させてもよい。例えば、実速度と理想速度との差が大きくなったとき、振動部を振動させてもよい。振動部は、例えば、リストバンド型端末7や眼鏡型端末等のウェアラブル端末に設けることが考えられる。
【0102】
[変形例2-7]
速度差を示す情報として、カラーチャート41のパッチ1行分の測色に要する実速度に基づく測色時間と、理想速度に基づく測色時間との差を提示させてもよい。若しくは、カラーチャート41の往路測色または復路測色に要する実速度に基づく測色時間と、理想速度に基づく測色時間との差を提示させてもよい。
【0103】
[第3実施形態]
次に、第3実施形態について説明する。第3実施形態は、第2実施形態と同様に、ユーザーがカラーチャート41に対して測色機2を動かす操作を支援するものであるが、本実施形態では、測色機2の理想速度を示す情報を、表示部35とは異なる提示部に提示させることを特徴とする。以下、第1,第2実施形態と異なる点を中心に説明する。なお、本実施形態において、第1,第2実施形態と同様の構成部分については同様の符号を付し、詳細な説明を省略する。また、第1,第2実施形態と同様の構成部分について適用される変形例は、本実施形態についても同様に適用される。
【0104】
本実施形態のシステム構成図は、第1印刷システムSY1(
図1参照)と同様である。また、印刷装置1、測色機2およびPC3の制御系についても、第1実施形態と同様の構成を採用可能である。
【0105】
PC制御部31は、カラーチャート41の測色に関する設定を表示部35に表示させ、理想速度を示す情報を表示部35とは異なる提示部に提示させる。本実施形態において提示部は、音声出力部36である。
【0106】
上述のとおり、カラーチャート41は、X方向において、同サイズの複数のパッチが等間隔で並べられたものである。PC制御部31は、理想速度を示す情報として、音声出力部36に、一定数のパッチの測色に理想的な時間である一定時間ごとに通知音を発生させる。例えば、X方向に並ぶ4つのパッチの測定に理想的な時間が2秒である場合、PC制御部31は、2秒ごとに通知音を発生させる。なお、カラーチャート41のX方向において、一定数のパッチごとに、通知音が発生するパッチ列を示す画像を、カラーチャートシート4に印刷してもよい。
【0107】
PC制御部31は、一定数のパッチの測色に理想的な時間を、カラーチャート設定画面で選択された測色機2の種類に応じて変更する。ここで、「一定数のパッチ」は、4つのパッチなど固定値である。この「一定数」については、取扱説明書や表示部35への表示によって、ユーザーに提示される。また、「理想的な時間」は、測色支援プログラム37aに記憶されている測色機2の理想速度に基づいて決定される。つまり、PC制御部31は、カラーチャート設定画面で選択された測色機2の種類に対応する理想速度に応じて、「理想的な時間」を変更する。
【0108】
図24は、第3実施形態に係る測色処理である第2測色処理を示すフローチャートである。同図において、S71ないしS75は、第1測色処理のS31ないしS35(
図14参照)と同様であるため、説明を省略する。PC制御部31は、測色値データの取得を開始した後、時間計測を開始し(S76)、一定時間が経過したか否かを判別する(S77)。S77の一定時間は、上述した「理想的な時間」を指す。
【0109】
PC制御部31は、時間計測を開始してから、若しくは、前回の音声出力(S78参照)から一定時間が経過していないと判定した場合(S77:No)、S76に戻る。また、PC制御部31は、時間計測を開始してから、若しくは、前回の音声出力から一定時間が経過したと判定した場合(S77:Yes)、音声出力部36により「音D」を出力する(S78)。この「音D」は、測色機2の移動速度を理想速度に近づけるための通知音であり、S73で出力される「音A」とは異なる音である。
【0110】
PC制御部31は、測色ボタン23が離されたか否かを判別し(S79)、測色ボタン23が離されていないと判定した場合は(S79:No)、S75に戻る。また、PC制御部31は、測色ボタン23が離されたと判定した場合は(S79:Yes)、測色ボタン23が押されている間に取得した測色値データが正しいか否かを判別する(S80)。
【0111】
PC制御部31は、測色値データが正しくないと判定した場合(S80:No)、音声出力部36により「音B」を出力する(S81)。「音B」は、測色失敗を示す音であり、「音A」および「音D」とは異なる音である。また、PC制御部31は、測色値データが正しいと判定した場合(S80:Yes)、カラーチャート41に含まれる全てのパッチの測色を終了したか否かを判別し(S82)、終了したと判定した場合(S82:Yes)、第2測色処理を終了する。また、PC制御部31は、カラーチャート41に含まれる全てのパッチの測色を終了してないと判定した場合(S82:No)、S71に戻る。
【0112】
以上説明したとおり、第3実施形態によれば、PC3は、一定数のパッチの測色に理想的な時間である一定時間ごとに通知音を発生させるため、ユーザーに対し、測色機2の理想的な移動速度を分かりやすく提示することができる。これにより、ユーザーは、通知音の発生に合わせて一定数のパッチの測色を行うことで、理想的な移動速度且つ等速でカラーチャート41の測色を行うことができる。また、通知音により理想的な速度を提示するため、ユーザーは、視線を測色機2に向け、作業に集中することができる。さらに、測色機2の種類に応じて、通知音を発生させる時間間隔を変更するため、使用する測色機2に適した理想速度を、ユーザーに提示することができる。
【0113】
なお、第3実施形態では、以下の変形例を採用可能である。
[変形例3-1]
第3実施形態では、理想速度を示す情報を提示する手段として、音声出力部36を用いたが、プロジェクター8を用いてもよい。
図25は、本例に係る印刷システムである第4印刷システムSY4のシステム構成図である。第4印刷システムSY4は、印刷装置1と、測色機2と、PC3と、プロジェクター8と、を備える。印刷装置1、測色機2およびPC3の制御系については、第1実施形態と同様である。
【0114】
プロジェクター8は、プロジェクター制御部81と、プロジェクター通信部82と、投射部83と、カメラ部84と、投射位置調整部85と、を備える。図示は省略するが、投射部83とカメラ部84は、プロジェクター8の本体の同一面に設けられる。また、投射部83の投射位置は、プロジェクター8を支持する支持台に設けられた投射位置調整部85により調整可能となっている。投射位置調整部85は、支持台の向きおよび傾きを調整する。なお、投射位置調整部85は、支持台の向きおよび傾きだけでなく、投射部83に含まれる投射レンズの向きにより投射位置を調整可能としてもよい。
【0115】
PC制御部31は、プロジェクター制御部81に対し、理想速度を示す情報の投射指令を行う。プロジェクター制御部81は、プロジェクター通信部82を介してPC3と通信し、PC制御部31の投射指令に基づいて、投射部83に、理想速度を示す動画を投射させる。
【0116】
図26に示すように、プロジェクター制御部81は、理想速度を示す動画として、カラーチャート41上を理想速度で移動する第2ライン画像141をカラーチャート41上に投射する。この第2ライン画像141は、第2実施形態で説明した第1ライン画像66(
図16参照)と同様に動く。また、プロジェクター制御部81は、動画の投射前に、カメラ部84をカラーチャート41に向け、カラーチャート41の位置を認識し、投射位置調整部85により投射位置を調整する。
【0117】
このように、本例によれば、プロジェクター8を用いて、理想速度を示す情報をカラーチャート41上に投射するため、ユーザーは、PC3の表示部35を見る必要がなく、測色作業に集中することができる。
【0118】
[変形例3-2]
理想速度を示す情報を提示する手段として、トレイ9を用いてもよい。
図27は本例に係る印刷システムである第5印刷システムSY5のシステム構成図である。第5印刷システムSY5は、印刷装置1と、測色機2と、PC3と、トレイ9と、を備える。印刷装置1、測色機2およびPC3の制御系については、第1実施形態と同様である。
【0119】
トレイ9は、トレイ制御部91と、トレイ通信部92と、LED部93と、を備える。また、トレイ9の外観は、第1実施形態で説明したトレイ5(
図7参照)と同様である。PC制御部31は、トレイ制御部91に対し、理想速度を示す情報の表示指令を行う。トレイ制御部91は、トレイ通信部92を介してPC3と通信し、PC制御部31の表示指令に基づいて、LED部93を駆動制御する。LED部93は、用紙押さえクリップ51に設けられ、X方向に配列された複数のLEDを含む。なお、LED部93に代えて液晶ディスプレーなど他の方法で表示を行う表示装置であってもよい。
【0120】
図28に示すように、トレイ制御部91は、理想速度を示す情報として、LED部93に含まれる複数のLEDのうちいずれかのLEDを点灯させる。点灯するLEDは、理想速度にしたがって切り替わる。つまり、点灯するLEDは、第2実施形態で説明した第1ライン画像66(
図16参照)および変形例3-1で説明した第2ライン画像141(
図26参照)のX方向における位置に合わせて切り替わる。
【0121】
このように、本例によれば、理想速度を示す情報をトレイ9に提示するため、ユーザーは、PC3の表示部35を見る必要がなく、測色作業に集中することができる。また、トレイ9はカラーチャートシート4を配置するためのものであり、これを用いて理想速度を示す情報を提示するため、理想速度を示す情報を提示するための手段を別途必要としない。
【0122】
[変形例3-3]
第3実施形態では、一定数のパッチの測色に理想的な時間を、カラーチャート設定画面で選択された測色機2の種類に応じて変更したが、カラーチャート設定画面において、カラーチャート41の種類およびパッチのサイズが変更可能である場合、PC制御部31は、これらの設定に応じて「理想的な時間」を変更してもよい。また、PC制御部31は、測色機2の種類、カラーチャート41の種類およびパッチのサイズに応じて、「理想的な時間」ではなく「一定数のパッチ」の一定数を変更してもよいし、「理想的な時間」および「一定数のパッチ」の両方を変更してもよい。
【0123】
このように、本例によれば、カラーチャート41の種類やパッチのサイズに応じて、通知音を発生させる時間間隔を変更するため、使用するカラーチャート41の種類やパッチのサイズによらず、測色機2の理想速度を、ユーザーに提示することができる。
【0124】
[その他の変形例]
上記の各実施形態および各変形例に示した印刷システムの各処理を実行する方法、印刷システムの各処理を実行するためのプログラム、またそのプログラムを記録したコンピューター読み取り可能な記録媒体も、権利範囲に含まれる。また、各実施形態および各変形例を組み合わせた構成としてもよい。その他、要旨を逸脱しない範囲で、適宜変更が可能である。例えば、上記の各実施形態および各変形例に示した複数の物品を1つの物品で実現したり、上記の各実施形態および各変形例に示した1つの物品を複数の物品で実現したりしてもよい。また、例えば、測色機2とPC3とを一体のものとして実現してもよいし、測色支援プログラム37aが動作する第1のPCと印刷制御プログラムが動作する第2のPCとの2つのPCが協働して、上述のPC3の機能を果たしてもよい。
【0125】
[付記]
以下、プログラムおよび印刷システムの生産方法について付記する。
プログラムは、測色機による測色用のカラーチャートを含むカラーチャートシートを印刷装置に印刷させるためのプログラムであって、カラーチャートと、カラーチャートに対する測色機の測色開始位置および測色開始向きを示す第1画像と、を含むカラーチャートシートを印刷装置に印刷させる制御部として、コンピューターを機能させる。
【0126】
この構成によれば、カラーチャートに対する測色機の測色開始位置および測色開始向きを示す第1画像を含むカラーチャートシートを印刷可能であるため、ユーザーに対し、測色機の測色を、どの位置から開始したらよいか、また測色開始時点において、測色機をどのような向きで配置したらよいかを、提示することができる。すなわち、測色に不慣れなユーザーが正しく測色を行うことが容易に可能となる。
【0127】
印刷システムの生産方法は、測色機による測色用のカラーチャートを含むカラーチャートシートを印刷する印刷装置と、測色機および印刷装置を制御する制御装置と、を含む印刷システムの生産方法であって、印刷装置により、カラーチャートと、カラーチャートに対する測色機の測色開始位置および測色開始向きを示す第1画像と、を含むカラーチャートシートを印刷するステップと、測色機により、カラーチャートシートの第1画像の位置から測色を開始することにより、カラーチャートを測色するステップと、制御装置により、測色機によるカラーチャートの測色の結果に基づいて色調整を行い、印刷システムを生産するステップと、を実行する。
【0128】
この構成によれば、測色に不慣れなユーザーが、色調整が行われて適切な色印刷することが可能な印刷システムを容易に生産することができる。
【0129】
上記のプログラムにおいて、カラーチャートは、複数のパッチがマトリクス状に配置されたものであり、第1画像は、カラーチャートの先頭行における測色機の測色開始位置および測色開始向きを示すものであることが好ましい。
【0130】
この構成によれば、測色機の測色開始位置および測色開始向きを最も間違えやすいと考えられる、カラーチャートの先頭行の測色開始時において、ユーザーに対し、測色機の測色開始位置および測色開始向きを提示することができる。
【0131】
上記のプログラムにおいて、カラーチャートは、測色機の往復移動により1行分のパッチの測色が行われるものであり、制御部は、カラーチャートと、カラーチャートの先頭行の往路における測色機の測色開始位置および測色開始向きを示す第1画像と、カラーチャートの先頭行の復路における測色機の測色開始位置および測色開始向きを示す第2画像と、を含むカラーチャートシートを印刷装置に印刷させることが好ましい。
【0132】
この構成によれば、カラーチャートの先頭行の往路における測色開始時だけでなく、カラーチャートの先頭行の復路における測色開始時にも、ユーザーに対し、測色機の測色開始位置および測色開始向きを提示することができる。
【0133】
上記のプログラムにおいて、第1画像は、カラーチャートの先頭行の往路における測色機の測色開始位置に測色機が配置されたときの、測色機を操作するユーザー側から見た測色機の輪郭の少なくとも一部を示すものであり、第2画像は、カラーチャートの先頭行の復路における測色機の測色開始位置に測色機が配置されたときの、測色機を操作するユーザー側から見た測色機の輪郭の少なくとも一部を示すものであることが好ましい。
【0134】
この構成によれば、第1画像および第2画像は、測色機の輪郭の少なくとも一部を示すものであるため、ユーザーに対し、測色機の測色開始位置および測色開始向きを分かりやすく提示することができる。
【0135】
上記のプログラムにおいて、制御部は、カラーチャートと、第1画像と、カラーチャートシートを配置するトレイの所定位置に対応した第3画像と、を含むカラーチャートシートを印刷装置に印刷させることが好ましい。
【0136】
この構成によれば、トレイの所定位置に対応した第3画像を含むカラーチャートシートを印刷可能であるため、ユーザーに対し、トレイのどの位置にカラーチャートシートを配置したらよいかを提示することができる。
【0137】
上記のプログラムにおいて、制御部は、カラーチャートと、第1画像と、カラーチャートシートを配置するトレイへのカラーチャートシートの配置からカラーチャートの測色までの作業工程で注視すべき個所および作業工程の順序を示す第4画像と、を印刷装置に印刷させることが好ましい。
【0138】
この構成によれば、作業工程で注視すべき個所および作業工程の順序を示す第4画像を含むカラーチャートシートを印刷可能であるため、ユーザーに対し、どのような順序で、どこに注視しながら作業を進めるべきかを提示することができる。
【0139】
上記のプログラムにおいて、カラーチャートは、手動の測色機により測色されるものであることが好ましい。
【0140】
この構成によれば、安価な手動の測色機を用いてカラーチャートの測色を行うことができる。
【符号の説明】
【0141】
4…カラーチャートシート、10…用紙、40…第1破線、41…カラーチャート、41a…パッチ群領域、41b…パッチ群左側領域、41c…パッチ群右側領域、41e…パッチ行数画像、41f…線画像、42a…第1画像、42b…第2画像、43…第3画像、43a…三角形画像、43b…直線画像、46…第4画像、46a…第1数字画像、46b…第2数字画像、46c…第3数字画像、46d…第4数字画像、46e…第5数字画像、46f…第6数字画像、47…補助画像、47a…第1クリップ位置画像、47b…第2クリップ位置画像、47c…往路移動方向画像、47d…復路移動方向画像、48…チャート情報画像