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特許7398887野菜摂取啓発方法及び野菜摂取啓発システム
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  • 特許-野菜摂取啓発方法及び野菜摂取啓発システム 図1
  • 特許-野菜摂取啓発方法及び野菜摂取啓発システム 図2
  • 特許-野菜摂取啓発方法及び野菜摂取啓発システム 図3
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-07
(45)【発行日】2023-12-15
(54)【発明の名称】野菜摂取啓発方法及び野菜摂取啓発システム
(51)【国際特許分類】
   G16H 20/60 20180101AFI20231208BHJP
【FI】
G16H20/60
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2019109180
(22)【出願日】2019-06-12
(65)【公開番号】P2020201788
(43)【公開日】2020-12-17
【審査請求日】2021-06-04
【審判番号】
【審判請求日】2022-08-26
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 https://www.kagome.co.jp/library/company/news/2019/img/20190307001.pdf
(73)【特許権者】
【識別番号】000104113
【氏名又は名称】カゴメ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】領家 幸大
(72)【発明者】
【氏名】前田 泰宏
【合議体】
【審判長】伏本 正典
【審判官】中野 浩昌
【審判官】松田 直也
(56)【参考文献】
【文献】独国特許出願公開第102012005583(DE,A1)
【文献】特表2015-526734(JP,A)
【文献】特開2019-67392(JP,A)
【文献】Altech Co.,Ltd.、「Internationally patented device that scores vegetable consumption from 0 to 800! “The Veggie Meter” to be released within Japan on May,2019 Enabling continuous improvement of people’s health by visualizing deficiencies in vegetable consumption」、NEWSCAST、[ONLINE]、掲載日2019年4月3日、検索日2023年5月19日、インターネット、<URL:https://newscast.jp/attachments/q8W07p4J7ewWBQpLH0Cw.pdf>
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
野菜摂取啓発システムであって、それを構成するのは、少なくとも、以下である:
出力装置、
測定装置:これで非侵襲測定されるのは、野菜摂取値であり、及び、
制御装置:これに接続されるのは、前記出力装置及び前記測定装置であり、かつ、
当該制御装置で制御されるのは、前記出力装置であり、
当該出力装置によって出力されるのは、非侵襲測定された野菜摂取値、並びに、野菜摂取の意義及び野菜摂取値の向上施策であり、かつ、
前記野菜摂取の意義又は前記野菜摂取値の向上施策に関連付けられているのは、非侵襲測定された野菜摂取値であり、
前記野菜摂値の向上施策は、野菜摂取方法、適切な食事の選び方、適切な食事量、又は適切な食事の摂り方のうち、少なくとも何れか一つ以上であり、かつ、
前記野菜摂取の意義及び前記野菜摂取値の向上施策が出力されるのは、前記野菜摂取値の出力時又は前記野菜摂取値の出力の後である。
【請求項2】
プログラムであって、それによって処理装置が実行するのは、次の処理である:
制御:ここで制御されるのは、出力装置であり、当該出力装置が出力するのは、測定装置によって非侵襲測定された野菜摂取値、並びに、野菜摂取の意義及び野菜摂取値の向上施策であり、かつ、
前記野菜摂取の意義又は前記野菜摂取値の向上施策に関連付けられているのは、前記非侵襲測定された野菜摂取値であり、
前記野菜摂値の向上施策は、野菜摂取方法、適切な食事の選び方、適切な食事量、又は適切な食事の摂り方のうち、少なくとも何れか一つ以上であり、かつ、
前記野菜摂取の意義及び前記野菜摂取値の向上施策が出力されるのは、前記野菜摂取値の出力時又は前記野菜摂取値の出力の後である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明が関係するのは、野菜摂取啓発方法及び野菜摂取啓発システムである。
【背景技術】
【0002】
我が国において、健康増進法の下、人々に推奨されているのは、生活習慣の改善である。生活習慣に影響する要素は、多岐にわたるが、例示すると、食生活、運動、喫煙、飲酒、ストレス等である。生活習慣が改善されることで、健康が維持される。とりわけ、食生活の改善は、極めて重要である。なぜなら、食事は、人の営みで不可欠だからである。
【0003】
生活習慣の改善手法を理論的に支えているのは、行動科学である。すなわち、人間に自然に備わっているのは、認知能力である。この認知能力を利用することで、行動を変容させる。行動科学の観点から、生活習慣の改善を構成するのは、危険認知、動機付け、行動変容手段の教授、及び、改善結果のフィードバックである。例えば、非特許文献1で紹介されているのは、栄養教育における行動療法の流れである。具体的には、先ずは、問題行動を特定する。次いで、行動変容による利益を強調し、他方、不利益を消去する。更に、自己効力感を高める。これらに加えて、目標行動の維持を支援する。
【0004】
従来の食生活の改善手法が抱えている問題点は、行動が変容し難いことである。危険認知及び改善結果のフィードバックで一般的に採用されているのは、侵襲式の血液検査、及び、自己記入式の食事調査である。侵襲式の血液検査が抱える主な問題点は、日常的な実施が難しい点である。すなわち、被験者の負担が大きく、かつ、分析時間が長い。自己記入式の食事調査が抱える主な問題点は、調査結果が必ずしも客観的ではない点である。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【文献】行動科学に基づいた栄養教育,栄養学雑誌,2002年,Vol.60 No.6 295~298
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、野菜摂取値を改善し易くすることである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
意識又は行動の変容に必要な教育的介入は、大別すると、動機づけ、行動促進及び環境サポートである。動機づけを例示すると、危険の認知、双価性の認識と解消、セルフエフィカシ(自己効力感)の惹起等である。行動促進を例示すると、行動目標の設定、行動強化のための自己モニタリング等である。環境サポートを例示すると、動機づけ及び行動促進に関する情報へのアクセスの容易化などである。以上を踏まえて、本願発明者が見出したのは、(1)客観指標が示されることで、現状が客観的に認知されること、(2)現状が客観的に認知されることで、危険が認知されること、(3)危険が認知されることで、行動が変容し易いことである。そのような観点から、本発明を定義すると、以下のとおりである。
【0008】
野菜摂取啓発方法を構成するのは、少なくとも、測定、提示、及び教授である。すなわち、被啓発者が非侵襲測定されるのは、被啓発者の野菜摂取値である。被啓発者が提示されるのは、非侵襲測定された野菜摂取値である。被啓発者が教授される内容は、野菜摂取の意義及び野菜摂取値の向上施策である。この教授が行われる時期は、当該提示の時又はその後である。
【0009】
野菜摂取啓発システムを構成するのは、少なくとも、出力装置、測定装置及び制御装置である。当該測定装置で非侵襲測定されるのは、被啓発者の野菜摂取値である。当該制御装置に接続されるのは、当該出力装置及び当該測定装置である。当該制御装置で制御されるのは、前記出力装置であり、それによって出力されるのは、非侵襲測定された野菜摂取値、並びに、野菜摂取の意義及び野菜摂取値の向上施策である。
【発明の効果】
【0010】
本発明で可能にするのは、野菜摂取値を改善し易くすることである。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】野菜摂取啓発方法の流れである。
図2】野菜摂取値、野菜摂取の意義、及び野菜摂取値の向上施策の関係性である。
図3】野菜摂取啓発システムの構成である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
<野菜摂取啓発方法>
図1で示すのは、野菜摂取啓発方法の流れである。野菜摂取啓発方法を構成するのは、少なくとも、測定(S10)、提示(S20)、及び教授(S30)である。この野菜摂取啓発方法を更に構成するのは、第2の測定(S40)、及び第2の提示(S50)である。教授(S30)の後、第2の測定(S40)、及び第2の提示(S50)は、繰り返し実行される。具体的には、以下のとおりである。
【0013】
<測定(S10)>
測定の目的は、被啓発者の野菜摂取状況を指標化することである。被啓発者が非侵襲測定されるのは、被啓発者の野菜摂取値である。野菜摂取値を非侵襲測定する手段は、後述する測定装置である。また、野菜摂取値の詳細は、後述する。
【0014】
<提示(S20)>
提示の目的は、被啓発者の野菜摂取状況を特定することである。具体的には、野菜が十分に摂取されているか否かである。被啓発者が提示されるのは、非侵襲測定された野菜摂取値である。非侵襲測定された野菜摂取値を提示する方式は、問わないが、具体的には、電磁的(電子的又は磁気的)である。また、この野菜摂取値を提示する態様は、問わないが、具体的には、聴覚的又は視覚的である。野菜摂取値を提示する手段は、問わないが、具体的には、後述する出力装置である。
【0015】
<教授(S30)>
教授の目的は、2点である。1つ目は、野菜摂取による利益を強調し、他方、不利益を消去することである。2つ目は、自己効力感を高めることである。被啓発者が教授される内容は、野菜摂取の意義及び野菜摂取値の向上施策である。この教授が行われる時期は、提示(S20)の時又はその後である。野菜摂取の意義及び野菜摂取値の向上施策を教授する方式は、問わないが、具体的には、電磁的(電子的又は磁気的)である。また、そのような教授の態様は、問わないが、具体的には、聴覚的又は視覚的である。そのように教授する手段は、問わないが、具体的には、後述する出力装置である。野菜摂取の意義及び野菜摂取値の向上施策の詳細は、後述する。また、教授の後、被啓発者に案内されるのは、次回測定要領である。この要領で示されるのは、主に、次の測定(後述ずる第2の測定)の日や場所等である。この要領を記す媒体は、問わないが、例示すると、紙、樹脂カード、記憶装置等である。
【0016】
<第2の測定(S40)>
第2の測定の目的は、前述の向上施策の実行を支援することである。被啓発者が非侵襲測定されるのは、野菜摂取値であり、その時期は、前述の教授(S30)の日の翌日以後である。野菜摂取値を非侵襲測定する手段は、後述する測定装置である。また、野菜摂取値の詳細は、後述する。
【0017】
<第2の提示(S50)>
第2の提示の目的は、前述の向上施策の実行を支援することである。被啓発者が提示されるのは、非侵襲測定された野菜摂取値である。非侵襲測定された野菜摂取値を提示する方式及び態様は、前述の提示(S20)と同じである。
【0018】
<野菜摂取啓発方法及び行動変容ステージの関係>
前述の測定(S10)から教授(S30)までに対応するのは、行動変容ステージモデル(厚生労働省のホームページ等を参照。)の「無関心期」、「関心期」又は「準備期」である。前述の第2の測定(S40)から第2の提示(S50)までに対応するのは、「実行期」、又は「維持期」である。行動変容ステージモデル(厚生労働省のホームページ等を参照。)で示されるとおり、行動変容にあたり人が通過するステージは、5つである。具体的には、「無関心期」、「関心期」、「準備期」、「実行期」、及び「維持期」である。「無関心期」とは、6カ月以内に行動を変えようと思っていない時期をいう。「関心期」とは、6カ月以内に行動を変えようと思っている時期をいう。「準備期」とは、1カ月以内に行動を変えようと思っている時期をいう。「実行期」とは、行動を変えて6カ月未満である時期をいう。「維持期」とは、行動を変えて6カ月以上である時期をいう。行動変容が達成されるのは、実行期以降である。
【0019】
<野菜摂取値>
野菜摂取値とは、野菜摂取量又は野菜摂取等級をいう。野菜摂取量で示されるのは、推定される野菜摂取量の絶対値である。その表記は、数値(単位)であり、例示すると、100g、350g、450g等である。他方、野菜摂取等級で示されるのは、推定される野菜摂取量の相対値であり、具体的には、推奨される野菜摂取量に対する推定される野菜摂取量である。その表記は、数値(無次元量)、等級、又は、単語である。数値(無次元量)を例示すると、0.8、1.0、1.5等である。等級を例示すると、A、B、C等である。単語を例示すると、不足、十分、過剰等である。非侵襲測定された野菜摂取値の推定根拠は、限定されないが、例示すると、被啓発者の皮膚カロテノイド値である。
【0020】
<野菜摂取の意義>
野菜摂取の意義を教授する目的は、主に、被啓発者の食生活を振り返り危険を認知させること、野菜を十分に摂取することによる利益を認知させること、野菜摂取を妨げる要因を認知させたうえでそれを解消する方法を認知させること、自己効力感を惹起することである。野菜摂取の意義を例示すると、野菜摂取で奏される健康上の利点、野菜不摂取に起因する健康上の不具合、野菜摂取を妨げる要因等である。
【0021】
<野菜摂取値の向上施策>
野菜摂取値の向上施策を教授する目的は、主に、行動目標を設定すること、行動強化のための自己モニタリングすること等である。野菜摂取値の向上施策を例示すると、簡便な野菜摂取方法、適切な食事の選び方、適切な食事量、適切な食事の摂り方などである。
【0022】
<野菜摂取値、野菜摂取の意義、及び野菜摂取値の向上施策の関係性>
図2で示されるのは、野菜摂取値、野菜摂取の意義、及び野菜摂取値の向上施策の関係性である。野菜摂取値、野菜摂取の意義、及び野菜摂取値の向上施策は、有機的に関連している。すなわち、被啓発者の野菜摂取値が示されることで、被啓発者の野菜摂取状況が客観的に認知される。被啓発者の野菜摂取状況が客観的に認知されることで、野菜摂取不足の危険が認知される。野菜摂取不足の危険が認知された上で、野菜摂取値の向上施策が教授されると、野菜摂取が促され易くなる。野菜摂取の意義及び野菜摂取値の向上施策を教授する際に参照されるのは、非侵襲測定された野菜摂取値である。そのために、野菜摂取の意義及び野菜摂取値の向上施策に関連付けられているのは、野菜摂取値である。例えば、測定された野菜摂取値が「非常に低い」である場合、被啓発者が強調的に或いは選択的に教授される内容は、野菜摂取の意義「XXが悪化する。」、及び、野菜摂取値の向上施策「野菜飲料を飲もう。」である。これらの教授内容に付されているのは、項目キー「野菜摂取値が非常に低い場合」である。このようにすることで、教授がより効率化される。
【0023】
<野菜摂取啓発システムの構成>
図3で示されるのは、野菜摂取啓発システムの構成である。野菜摂取啓発システム1を構成するのは、測定装置10、出力装置20、記憶装置30、及び、制御装置40である。これらの装置を接続する方式は、有線又は無線である。これらの装置は、互いに独立し、或いは、その一部又は全部が一体化している。これらの装置の一部又は全部が一体化している場合、そのような一体化を具現化するのは、スマートホンやタブレット端末等である。具体的には、以下のとおりである。
【0024】
<測定装置>
測定装置10で非侵襲測定されるのは、被啓発者の野菜摂取値である。測定装置10を構成するのは、検出部及び演算部である。検出部で検出されるのは、被啓発者の生体情報であり、具体的には、皮膚カロテノイド値である。演算部で演算されるのは、被啓発者の野菜摂取値であり、その際に参照されるのは、換算テーブルである。換算テーブルで示されるのは、野菜摂取値及び皮膚カロテノイド値の対応関係である。測定装置10を具現化するものは、様々であるが、好ましくは、Quick Test(biozoom services社製)である。
【0025】
<出力装置>
出力装置20で出力されるのは、測定された野菜摂取値である。この野菜摂取値を出力する態様は、問わないが、具体的には、音声出力、及び画像出力である。野菜摂取値を音声出力する手段は、音声出力装置であり、例示すると、スピーカーである。野菜摂取値を画像出力する手段は、画像出力装置(表示装置)であり、例示すると、有機ELディスプレイや液晶ディスプレイ等である。
【0026】
<記憶装置>
記憶装置30に記憶されているのは、各種データである。これらのデータの一部又は全部で示されるのは、野菜摂取の意義及び野菜摂取値の向上施策である。記憶装置30の種類は、問わないが、例示すると、ハードディスクドライブ(HDD)やソリッドステートドライブ(SSD)等である。
【0027】
<制御装置>
制御装置40に接続されるのは、測定装置10及び出力装置20である。制御装置40を構成するのは、記憶部(例えば、ROM)、一時記憶部(例えば、RAM等)及び演算部(例えば、CPU等)であり、それによって実行されるのは、各種処理である。制御装置40で制御されるのは、出力装置20であり、それによって出力されるのは、非侵襲測定された野菜摂取値、並びに、野菜摂取の意義及び野菜摂取値の向上施策である。非侵襲測定された野菜摂取値の源泉は、測定装置10である。野菜摂取の意義及び野菜摂取値の向上施策の源泉は、記憶装置30である。
【産業上の利用可能性】
【0028】
本発明が有用な分野は、健康サービス事業である。
図1
図2
図3