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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-07
(45)【発行日】2023-12-15
(54)【発明の名称】炊飯器および炊飯器の加熱制御方法
(51)【国際特許分類】
   A47J 27/00 20060101AFI20231208BHJP
【FI】
A47J27/00 109G
A47J27/00 109R
A47J27/00 103K
A47J27/00 103H
A47J27/00 103A
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2019121085
(22)【出願日】2019-06-28
(65)【公開番号】P2021006182
(43)【公開日】2021-01-21
【審査請求日】2022-06-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000176866
【氏名又は名称】三菱電機ホーム機器株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001461
【氏名又は名称】弁理士法人きさ特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】小池 成彦
(72)【発明者】
【氏名】石原 杏子
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 雄一郎
(72)【発明者】
【氏名】逸見 憲一
(72)【発明者】
【氏名】内田 毅
(72)【発明者】
【氏名】蜷川 智也
【審査官】河内 誠
(56)【参考文献】
【文献】特開平4-231918(JP,A)
【文献】実開平2-146527(JP,U)
【文献】特開2015-8748(JP,A)
【文献】特開2003-70632(JP,A)
【文献】特開2007-282869(JP,A)
【文献】特開2018-114207(JP,A)
【文献】特開2018-11795(JP,A)
【文献】特開昭55-54923(JP,A)
【文献】特開2016-221159(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47J 27/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
側面と底面とを有する鍋状容器と、
前記底面を加熱する底面加熱部と、
前記側面の少なくとも一部を、上下方向に3つ以上に分割した領域ごとに加熱する複数の側面加熱部と、
前記鍋状容器内の炊飯量を検知する炊飯量検知部と、
昇温工程において、前記底面加熱部と、複数の前記側面加熱部のうち前記炊飯量に応じた側面加熱部と、を駆動させる加熱制御部と、
を備え
複数の前記側面加熱部は、下端が前記鍋状容器の水位線と一致するよう配置され、
前記側面は、前記上下方向の上方に向かうにつれて前記鍋状容器の内径が広がる傾斜部を有する炊飯器。
【請求項2】
3つ以上の前記側面加熱部を備え、
前記領域ごとに1つの前記側面加熱部が配置される請求項1に記載の炊飯器。
【請求項3】
前記側面加熱部は、加熱コイルであり、
前記鍋状容器の上部に配置される前記側面加熱部のターン数または通電比率は、前記鍋状容器の下部に配置される前記側面加熱部のターン数または通電比率より大きい請求項1または2に記載の炊飯器。
【請求項4】
前記加熱制御部は、炊飯工程に応じて、前記底面加熱部と前記側面加熱部との加熱を制御する請求項1~の何れか一項に記載の炊飯器。
【請求項5】
前記鍋状容器の前記底面および前記側面の内側に、突起、溝または親水性の塗膜層が設けられる請求項1~の何れか一項に記載の炊飯器。
【請求項6】
前記突起、前記溝、または前記塗膜層は、複数の前記側面加熱部の間に設けられる請求項に記載の炊飯器。
【請求項7】
鍋状容器の底面を加熱する底面加熱部と、前記鍋状容器の側面の少なくとも一部を、上下方向に3つ以上に分割した領域ごとに加熱する複数の側面加熱部と、を備え、複数の前記側面加熱部は、下端が前記鍋状容器の水位線と一致するよう配置され、前記側面は、前記上下方向の上方に向かうにつれて前記鍋状容器の内径が広がる傾斜部を有する炊飯器の加熱制御方法であって、
炊飯量を検知するステップと、
予熱工程および昇温工程において、前記底面加熱部と、複数の前記側面加熱部のうち前記炊飯量に応じた側面加熱部と、を前記炊飯量に応じた側面加熱部の発熱量が前記底面加熱部の発熱量以上となるよう駆動させるステップと、
沸騰工程において、前記底面加熱部および前記炊飯量に応じた前記側面加熱部を最大電力で駆動させるステップと、
蒸らし工程および保温工程において、前記鍋状容器内の温度を均一に保つよう、前記底面加熱部および前記炊飯量に応じた前記側面加熱部を駆動させるステップと、
を備える炊飯器の加熱制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、側面加熱部と底面加熱部とを備える炊飯器および炊飯器の加熱制御方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の炊飯器において、鍋状容器の底面と側面とにそれぞれ加熱コイルを設け、これらの加熱コイルを独立に駆動させる構成が知られている。鍋状容器の底面と側面とに加熱コイルを設けることで、鍋状容器全体を均一に加熱させることができる。また、特許文献1では、鍋状容器の側面に上部側コイルと下部側コイルとを備え、炊飯量に応じて上部側コイルおよび下部側コイルの発熱量を変化させることが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平10-225374号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1の炊飯器では、炊飯量が少量か多量かのみを判断して、上部側コイルおよび下部側コイルの発熱量を変化させるため、炊飯量によっては最適な加熱ができない。炊飯量によって米に伝わる熱量が異なると、炊きムラ、すなわち炊き上がる米飯の硬さおよび含水率にムラが発生してしまう。
【0005】
本発明は、上記のような課題を解決するものであり、炊飯量に応じた加熱を行い、炊きムラを抑制することができる炊飯器および炊飯器の加熱制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る炊飯器は、側面と底面とを有する鍋状容器と、底面を加熱する底面加熱部と、側面の少なくとも一部を、上下方向に3つ以上に分割した領域ごとに加熱する複数の側面加熱部と、鍋状容器内の炊飯量を検知する炊飯量検知部と、昇温工程において、底面加熱部と、複数の側面加熱部のうち炊飯量に応じた側面加熱部と、を駆動させる加熱制御部と、を備え、複数の側面加熱部は、下端が鍋状容器の水位線と一致するよう配置され、側面は、上下方向の上方に向かうにつれて鍋状容器の内径が広がる傾斜部を有する。
【0007】
本発明に係る炊飯器の加熱制御方法は、鍋状容器の底面を加熱する底面加熱部と、鍋状容器の側面の少なくとも一部を、上下方向に3つ以上に分割した領域ごとに加熱する複数の側面加熱部と、を備え、複数の側面加熱部は、下端が鍋状容器の水位線と一致するよう配置され、側面は、上下方向の上方に向かうにつれて鍋状容器の内径が広がる傾斜部を有する炊飯器の加熱制御方法であって、炊飯量を検知するステップと、予熱工程および昇温工程において、底面加熱部と、複数の側面加熱部のうち炊飯量に応じた側面加熱部と、を炊飯量に応じた側面加熱部の発熱量が底面加熱部の発熱量以上となるよう駆動させるステップと、沸騰工程において、底面加熱部および炊飯量に応じた側面加熱部を最大電力で駆動させるステップと、蒸らし工程および保温工程において、鍋状容器内の温度を均一に保つよう、底面加熱部および炊飯量に応じた側面加熱部を駆動させるステップと、を備える。
【発明の効果】
【0008】
本発明の炊飯器および炊飯器の加熱制御方法によれば、上下方向に3つ以上に分割された領域ごとに加熱する複数の側面加熱部を備え、炊飯量に応じて、複数の側面加熱部の加熱を制御することで、炊飯量の違いによる米に伝わる熱量のばらつきを軽減できる。その結果、炊きムラを抑制し、おいしい米飯を炊くことができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施の形態1における炊飯器の概略構成を示す断面模式図である。
図2】実施の形態1における側面加熱部の配置を説明する図である。
図3】実施の形態1における制御部の機能ブロック図である。
図4】実施の形態1における炊飯器の炊飯工程と、鍋状容器の温度との関係を概略的に示す図である。
図5】実施の形態1における側面加熱部の加熱制御を示すフローチャートである。
図6】変形例1-1における側面加熱部の加熱制御を示すフローチャートである。
図7】変形例1-2における側面加熱部の配置を説明する図である。
図8】変形例1-3における側面加熱部の配置を説明する図である。
図9】変形例1-4における側面加熱部の配置を説明する図である。
図10】変形例1-4における側面加熱部の加熱制御を示すフローチャートである。
図11】実施の形態2の鍋状容器の断面模式図である。
図12】変形例2-1における側面加熱部の配置を説明する図である。
図13】実施の形態3の鍋状容器の断面模式図である。
図14】実施の形態3の鍋状容器の平面図である。
図15】変形例3-1の鍋状容器の断面模式図である。
図16】変形例3-2の鍋状容器の断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、炊飯器の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、図面では各構成部材の大きさの関係が実際のものとは異なる場合がある。また、図1を含め、以下の図面において、同一の符号を付したものは、同一またはこれに相当するものであり、このことは明細書の全文において共通することとする。
【0011】
実施の形態1.
図1は、実施の形態1における炊飯器100の概略構成を示す断面模式図である。炊飯器100は、食材を入れた鍋状容器5を加熱部で加熱することで食材を加熱調理するものである。図1に示すように、炊飯器100は、外観が有底筒状の本体1と、本体1に取り付けられ、本体1の上部開口を開閉する蓋体10と、本体1の内部に収容される鍋状容器5と、を備えている。
【0012】
(炊飯器の構成)
本体1は、容器カバー2と、底面加熱部31と、側面加熱部32と、鍋底温度センサー4と、蓋体10を開閉自在に支持するヒンジ部6と、時間計測部7と、炊飯器100の各部を制御して炊飯工程を実行する制御部8とを備えている。
【0013】
容器カバー2は、有底筒状に形成されていて、その内部に鍋状容器5が着脱自在に収容される。容器カバー2の底部中央には、鍋底温度センサー4が挿入される孔部2aが設けられている。また、容器カバー2の側面の上部には肩部2bが設けられ、鍋状容器5の鍔部5aを容器カバー2の肩部2bに置くことで、鍋状容器5が容器カバー2内に収容される。
【0014】
底面加熱部31は、鍋状容器5の下方に配置され、第1インバータ85から供給される高周波電流により、鍋状容器5の底面5bを誘導加熱するものである。底面加熱部31は、銅線またはアルミ線などの導線が巻回してなる加熱コイルである。なお、底面加熱部31として加熱コイルに替えてシーズヒーター等の電気ヒーターを設けてもよい。底面加熱部31は、同心円に配置された第1底面加熱部31aと、第2底面加熱部31bとからなる。
【0015】
側面加熱部32は、鍋状容器5の外周を囲むように配置され、第2インバータ86から供給される高周波電流により、鍋状容器5の側面5cを誘導加熱するものである。側面加熱部32は、銅線またはアルミ線などの導線が巻回してなる加熱コイルである。なお、側面加熱部32として加熱コイルに替えてシーズヒーター等の電気ヒーターを設けてもよい。側面加熱部32は、上下方向に配置された第1側面加熱部32aと、第2側面加熱部32bと、第3側面加熱部32cと、第4側面加熱部32dと、第5側面加熱部32eとからなる。なお、「上下方向」は、鍋状容器5が水平面に載置された場合の鉛直方向である。
【0016】
図2は、実施の形態1における側面加熱部32の配置を説明する図である。本実施の形態の側面加熱部32は、鍋状容器5の側面5cの少なくとも一部を3つ以上に分割した領域ごとに誘導加熱する。本実施の形態においては、鍋状容器5の側面5cのうち、鍋状容器5の底面5bの内面から、鍋状容器5の最大合数の水位線までの部分が第1領域S1、第2領域S2、第3領域S3、第4領域S4、第5領域S5の5つの領域に分割される。本実施の形態の鍋状容器5の最大合数は、5.5合とする。
【0017】
第1領域S1は、鍋状容器5の底面5bの内面から、鍋状容器5の1合の水位線までの領域である。第2領域S2は、鍋状容器5の1合の水位線から、鍋状容器5の2合の水位線までの領域である。第3領域S3は、鍋状容器5の2合の水位線から、鍋状容器5の3合の水位線までの領域である。第4領域S4は、鍋状容器5の3合の水位線から、鍋状容器5の4合の水位線までの領域である。第5領域S5は、鍋状容器5の4合の水位線から、鍋状容器5の5.5合の水位線までの領域である。
【0018】
そして、第1領域S1に第1側面加熱部32aが配置され、第2領域S2に第2側面加熱部32bが配置され、第3領域S3に第3側面加熱部32cが配置され、第4領域S4に第4側面加熱部32dが配置され、第5領域S5に第5側面加熱部32eが配置される。第1~第5側面加熱部32a~32eは、第1~第5領域S1~S5内の任意の位置に配置することができる。図2の例では、第1~第5側面加熱部32a~32eを、第1~第5領域S1~S5の中央に配置している。また、各第1~第5側面加熱部32a~32eを、各第1~第5領域S1~S5の全体に広がるように配置してもよい。
【0019】
図1に戻って、鍋底温度センサー4は、例えばサーミスタで構成され、鍋状容器5の温度を検知する。本実施の形態の鍋底温度センサー4は、バネ等の弾性手段(図示せず)によって上方に付勢されており、容器カバー2に収容された鍋状容器5の底面5bに接して鍋状容器5の底面温度を検知する。鍋底温度センサー4が検知した鍋状容器5の温度は、制御部8に出力される。なお、鍋底温度センサー4の具体的構成はサーミスタに限定されず、鍋状容器5に接触して温度を検知する接触式温度センサーのほか、例えば赤外線センサー等の鍋状容器5の温度を非接触で検知する非接触式温度センサーを採用してもよい。
【0020】
ヒンジ部6は、本体1の上部の一端側(図1の紙面左側)に設けられ、蓋体10を開閉自在に支持する。なお、本体1に、炊飯器100を運搬するためのハンドル(図示せず)を設けておいてもよい。ハンドルを設ける場合には、ハンドルを本体1の側面上部の略前後中央に軸支し、ハンドルの回転方向を蓋体10の回動方向と一致させるとよい。この構成により、炊飯器100を運搬する際には、使用者はハンドルの軸支点のほぼ直上に位置するようにハンドルを回転させて持ち上げ、ハンドルのみを持って炊飯器100を運搬することが可能となる。
【0021】
時間計測部7は、制御部8からの指示信号に基づいて経過時間をカウントする。時間計測部7がカウントした経過時間は、制御部8に出力される。なお、時間計測部7を制御部8の機能部として設けてもよい。
【0022】
第1インバータ85および第2インバータ86は、商用電源(図示せず)の交流電源を高周波電流に変換して、底面加熱部31および側面加熱部32へ供給する駆動回路である。第1インバータ85は、リレー回路を有し、第1底面加熱部31aと第2底面加熱部31bとを切替えて駆動する。第2インバータ86は、リレー回路を有し、第1~第5側面加熱部32a~32eを個別に駆動する。なお、インバータの数は2つに限定されるものではなく、第1底面加熱部31a、第2底面加熱部31b、および各第1~第5側面加熱部32a~32eに対し、個別にインバータを設ける構成としてもよい。
【0023】
ここで、上記した従来の炊飯器では、側面加熱部による発熱量は10~30Wと、底面加熱部の発熱量1200Wと比べると非常に小さいため、十分な熱量を鍋状容器の側面から米飯に与えているとは言えない。この場合は、鍋状容器の底面からの加熱が主となるため、鍋状容器の底面の米飯と上部の米飯とに温度差が生じてしまい、これが炊きムラが発生する原因の一つとなる。また、この温度差は、炊飯量が多くなるほど大きくなる。例えば、炊飯量が多い場合は、鍋状容器の上下の炊きムラが大きくなる。また、炊飯量が少ない場合は、鍋状容器の上下の炊きムラはなくなるが、鍋状容器の表面に近い米飯が加熱されすぎることで、軟らかく水分の多い米飯に仕上がってしまい、鍋状容器の中央と表面との炊きムラが大きくなる。これに対し、本実施の形態では、2つのインバータを備えることで、底面加熱部31と側面加熱部32の両方を最大発熱量(例えば1200W)で加熱することができる。
【0024】
制御部8は、炊飯器100全体を制御し、炊飯工程を実行する。制御部8は、マイクロコンピュータと、その上で実行されるソフトウェアとにより構成される。または、制御部8を、その機能を実現する回路デバイスなどのハードウェアで構成してもよい。
【0025】
蓋体10は、外蓋11と、内蓋12とを有する。外蓋11には、着脱できるカートリッジ14が設けられ、外蓋11の上面には操作表示部15が設けられている。
【0026】
外蓋11は、蓋体10の上部および側部を構成し、外蓋11の下面(鍋状容器5に対向する面)には、内蓋12が着脱自在に取り付けられている。内蓋12は、例えばステンレスなどの金属で構成されており、外蓋11の本体1側の面に係止材13を介して取り付けられている。内蓋12の周縁部には、鍋状容器5の上端部外周との密閉性を確保するシール材である蓋パッキン9が取り付けられている。また、内蓋12には、内部温度センサー16を挿入させる孔部12aが形成され、外蓋11には、内蓋12の孔部12aに挿入された内部温度センサー16の外周の隙間を塞ぐパッキン11aが取り付けられている。さらに、内蓋12には、鍋状容器5内で発生した蒸気が通る蒸気口12bが設けられ、後述するカートリッジ14の蒸気取入口14aと通じている。
【0027】
カートリッジ14には、炊飯中に発生する蒸気圧に応じて上下動する弁(図示せず)を備えた蒸気取入口14aと、蒸気取入口14aの弁を通過した蒸気を外部へ排出する蒸気排出口14bとが設けられている。蒸気取入口14aは、蒸気口12bに通じており、鍋状容器5内で発生した蒸気は、蒸気口12bを通過して蒸気取入口14aからカートリッジ14内に入ってカートリッジ14内を流れ、蒸気排出口14bからカートリッジ14の外へ流出する。
【0028】
操作表示部15は、外蓋11の上面に設けられている。この操作表示部15は、使用者からの操作入力を受け付けるとともに、操作入力に関する情報および炊飯器100の動作状態を表示する。操作表示部15に対して設定可能な項目としては、例えば、炊飯の開始、取り消し、炊飯予約、炊飯メニューがある。炊飯メニューの具体例としては、白米炊飯または玄米炊飯等の米の種類に関するもの、標準炊飯または早炊き炊飯等の炊飯時間に関するもの、かためまたはやわらかめ等の炊き上がりの米飯のかたさに関するもの等が挙げられる。操作表示部15が表示する項目としては、例えば、炊飯中または予約待機中等の炊飯器100の状態、設定されている炊飯メニューの内容、炊き上がりの予定時刻、現在時刻、炊飯する米200の量等が挙げられる。なお、ここで示した操作表示部15の具体的構成は一例であり、その他の項目を設定または表示してもよい。
【0029】
内部温度センサー16は、例えばサーミスタで構成され、鍋状容器5の内部の温度を検知する。内部温度センサー16は、外蓋11に取り付けられ、一部が内蓋12の孔部12aに挿入される。内部温度センサー16は、孔部12aを介して鍋状容器5内の温度を検知する。内部温度センサー16が検知した鍋状容器5内の温度は、制御部8に出力される。なお、内部温度センサー16の具体的構成はサーミスタに限定されず、その他の接触式温度センサーのほか、例えば赤外線センサー等の鍋状容器5内の温度を非接触で検知する非接触式温度センサーを採用してもよい。
【0030】
鍋状容器5は、有底の筒状を有し、誘導加熱により発熱する磁性体金属を含む材料で構成される。なお、鍋状容器5の底面5bの形状は、平面視で円形、楕円形または多角形の何れであってもよい。鍋状容器5の内部には、被加熱物である米200および水201が収容される。また、本実施の形態の鍋状容器5は羽釜形状を有し、側面5cには、外側へ突出する鍔部5aが全周にわたって設けられる。容器カバー2の肩部2bに鍋状容器5の鍔部5aを置くことで、容器カバー2と鍋状容器5との間は閉ざされた空間となる。この状態で鍋状容器5を加熱すると、閉ざされた空間によって断熱されるため、鍋状容器5の鍔部5aより下方に位置する部分と、その中に収容されている米200の温度が冷めにくくなり効率的に加熱することができる。
【0031】
図3は、実施の形態1における制御部8の機能ブロック図である。制御部8は、プログラムを実行することによって実現される機能部として、加熱制御部81と、表示制御部82と、炊飯量検知部83とを有する。また、制御部8は、RAM、ROMまたはフラッシュメモリなどの不揮発性または揮発性のメモリからなり、各機能部に用いられる各種プログラムおよび各種データを記憶する記憶部84を有する。なお、記憶部84を制御部8とは別に設ける構成としてもよい。
【0032】
加熱制御部81は、鍋底温度センサー4、操作表示部15および内部温度センサー16からの出力に基づいて、第1インバータ85および第2インバータ86を制御し、底面加熱部31および側面加熱部32を駆動させて炊飯工程を実施する。このとき、加熱制御部81は、炊飯量検知部83により検知された炊飯量に基づいて、第1側面加熱部32aと、第2側面加熱部32bと、第3側面加熱部32cと、第4側面加熱部32dと、第5側面加熱部32eとを個別に駆動させる。
【0033】
また、加熱制御部81は、空炊きなどにより鍋状容器5に過加熱が発生したことを検知してもよい。加熱制御部81は、内部温度センサー16により検出される鍋状容器5内の温度変化を監視することで空炊き有無を判断する。具体的には、加熱制御部81は、内部温度センサー16により検出される温度変化の傾きが閾値よりも大きい場合、空炊きが発生していると判断する。加熱制御部81は、空炊きが発生していると判断した場合、底面加熱部31および側面加熱部32の駆動を停止させる。なお、鍋状容器5の上部の温度を検知する温度センサーをさらに備え、加熱制御部81にて、当該温度センサーの検知温度に基づいて空炊きを判断してもよい。
【0034】
表示制御部82は、操作表示部15における操作入力に関する情報および炊飯器100の動作状態などを操作表示部15に表示させる。また、操作表示部15を介した使用者からの操作入力を受け付け、加熱制御部81に出力する。
【0035】
炊飯量検知部83は、鍋底温度センサー4からの出力に基づいて、鍋状容器5内の炊飯量を検知する。具体的には、炊飯量検知部83は、鍋状容器5の加熱と停止とを繰り返す予熱工程における温度変化に基づき、炊飯量を検知する。具体的には、加熱停止時の温度変化と、予め実験等により求められた炊飯量ごとの温度変化の閾値とを比較し、炊飯量を判定する。
【0036】
なお、炊飯量検知部83は、制御部8の機能部として設けられるものに限定されない。例えば、炊飯量検知部83として重量センサーを鍋状容器5の下部または炊飯器100の脚部に備えてもよい。この場合は、重量センサーにより測定される水201と米200の重量から直接的に炊飯量が検知される。または、炊飯量検知部83として、超音波センサーなどからなる距離センサーを内蓋12に設けてもよい。この場合は、距離センサーにより、内蓋12から水201の表面および米200までの距離を測定し、距離から求められる水201および米200の位置から、間接的に炊飯量が検知される。さらに、使用者が合数を設定する「合数ボタン」を操作表示部15に設けることで炊飯量を検知してもよい。
【0037】
(炊飯器の動作)
続いて、本実施の形態における炊飯器100の炊飯工程について説明する。本実施の形態では、操作表示部15に対する使用者の操作入力に応じて、制御部8が記憶部84に記憶された炊飯プログラムに従って、底面加熱部31および側面加熱部32を駆動させ、炊飯工程を実行する。図4は、実施の形態1における炊飯器100の炊飯工程と、鍋状容器5の温度との関係を概略的に示す図である。
【0038】
図4に示すように、炊飯工程は、予熱工程、昇温工程、沸騰維持工程および蒸らし工程からなる。予熱工程は、米と水の温度を、米のデンプンの糊化が始まらない50~60度の一定の温度に保ち、鍋状容器5内の米200の内部にまで吸水を促す工程である。次の昇温工程は、予熱工程終了後から鍋状容器5内の水が沸騰するまでの工程である。鍋状容器5内の水が沸騰すると、制御部8は次の沸騰維持工程に移行する。この沸騰維持工程では、鍋状容器5内の温度が沸騰温度を保持するように加熱し、米のデンプンの糊化を促進する。最後の蒸らし工程は、鍋状容器5内の米を蒸らすことにより、米粒中心部まで糊化を進行させ、さらに、米粒内の水分の分布を均一にする工程である。炊飯工程が終了すると、鍋状容器5内を予め定められた温度に保持する保温工程に移行する。
【0039】
炊飯工程において、加熱制御部81は、底面加熱部31および側面加熱部32を同じタイミングで駆動させてもよいし、任意の時間間隔で交互に駆動させてもよい。または、加熱制御部81は、底面加熱部31および側面加熱部32の同じタイミングでの駆動と、交互の駆動とを切替えてもよい。底面加熱部31および側面加熱部32を同じタイミングで駆動させることで、かまどのような激しい沸騰を鍋状容器5全体から起こすことができ、米200全体を強く加熱することができる。また、底面加熱部31および側面加熱部32を交互に駆動させることで、鍋状容器5内に対流を起こすことができ、米全体を均一に加熱させることができる。ただし、同じタイミングで底面加熱部31および側面加熱部32を駆動させる場合は、最大の消費電力が定格電力を超えないように、発熱量を調節する。
【0040】
炊飯工程における底面加熱部31および側面加熱部32の加熱制御の一例について説明する。なお、以下は標準的な炊飯工程を例にとって説明するが、その他のモードでの炊飯であっても炊飯工程ごとの加熱制御を行うことで、同様の効果が得られる。まず、予熱工程においては、加熱制御部81は、底面加熱部31よりも側面加熱部32を積極的に駆動させる。言い換えると、加熱制御部81は、側面加熱部32の発熱量が底面加熱部31の発熱量以上となるよう第1インバータ85および第2インバータ86を制御する。具体的には、加熱制御部81は、側面加熱部32の総加熱時間を底面加熱部31の総加熱時間以上とする、または側面加熱部32へ供給する電力量を底面加熱部31へ供給する電力量以上とする。
【0041】
底面加熱部31による底面5bの加熱のみでは、米200に熱が吸収されてしまい、均一に加熱を行うことができない。また、鍋状容器5の底面5bの米200が加熱されすぎることで、一部の米のみ糊化が進み、不均一な炊き上がりとなってしまう。これに対し、側面加熱部32により、鍋状容器5の側方から加熱することにより、米200だけでなく水201を加熱することができる。これにより、米200を糊化させずに、水201の温度を吸水が進む温度(約50~60度)まで加熱しやすくなる。その結果、予熱工程の時間短縮、鍋状容器5内の温度差の減少、および米200への集中的な加熱をなくすことができ、米200全体の均一な吸水と加熱が可能となる。
【0042】
次に、昇温工程においても、予熱工程と同様に、加熱制御部81は、側面加熱部32を積極的に駆動させる。昇温工程では急速に鍋状容器5の温度を上昇させるため、予熱工程よりも底面加熱部31および側面加熱部32に供給する電力量が大きくなる。従って、底面加熱部31による加熱のみでは、鍋状容器5の底面5bの米200が予熱工程よりも加熱されすぎてしまう。これに対し、側面加熱部32により鍋状容器5の側方を積極的に加熱することで、米200の不均一な糊化を防ぎ、米200全体を均一に100℃まで加熱することができる。その結果、炊き上がりの差、いわゆる炊きムラをなくすことができる。
【0043】
次に、沸騰工程においては、加熱制御部81は、底面加熱部31および側面加熱部32を最大電力で駆動させる。これにより、鍋状容器5全体から沸騰気泡を発生させ、対流を促進できるとともに、鍋状容器5の表面から中心まで米全体を均一、かつ強い火力で加熱できる。また、加熱制御部81は、底面加熱部31と側面加熱部32とを切替えて間欠的に駆動させ、鍋状容器5内の沸騰気泡を不均一に発生させてもよい。これにより、米200全体に気泡を行き渡らせることができ、カニ穴の発生、更なる対流の促進、およびより均一な加熱が可能となる。
【0044】
蒸らし工程および保温工程においては、加熱制御部81は、鍋状容器5内の温度を均一に保つために、底面加熱部31および側面加熱部32を小さな電力で駆動させる。これにより、鍋状容器5の上下方向の温度差がなくなり、蒸らし工程では米粒内の水分を均等に、保温工程では余分な水分の蒸発を防ぐことが可能となる。
【0045】
このように、炊飯工程に応じて底面加熱部31と側面加熱部32の加熱制御を実施することで、鍋状容器5内の米200全体を均一に加熱でき、炊きムラのないおいしい米飯を炊くことが可能となる。
【0046】
また、加熱制御部81は、上記の炊飯工程において側面加熱部32を駆動させる際には、炊飯量検知部83により検知された炊飯量に応じて、第1~第5側面加熱部32a~32eのうちの何れかを選択して、第2インバータ86により駆動させる。
【0047】
図5は、実施の形態1における側面加熱部32の加熱制御を示すフローチャートである。まず、制御部8の炊飯量検知部83により、鍋状容器5内の炊飯量が検知される(S1)。そして、炊飯量に応じて(S2)、第1側面加熱部32aと、第2側面加熱部32bと、第3側面加熱部32cと、第4側面加熱部32dと、第5側面加熱部32eとを個別に駆動させる。
【0048】
具体的には、炊飯量が1合以下の場合、加熱制御部81は、第1側面加熱部32aのみを駆動させる(S3)。すなわち、炊飯量が1合以下の場合は、炊飯工程において第2~第5側面加熱部32b~32eは駆動されない。炊飯量が2合の場合、加熱制御部81は、第1側面加熱部32aおよび第2側面加熱部32bのみを駆動させる(S4)。すなわち、炊飯量が2合の場合は、炊飯工程において第3~第5側面加熱部32c~32eは駆動されない。炊飯量が3合の場合、加熱制御部81は、第1~第3側面加熱部32a~32cのみを駆動させる(S5)。すなわち、炊飯量が3合の場合は、炊飯工程において第4側面加熱部32dおよび第5側面加熱部32eは駆動されない。炊飯量が4合の場合、加熱制御部81は、第1~第4側面加熱部32a~32dのみを駆動させる(S6)。すなわち、炊飯量が4合の場合は、炊飯工程において第5側面加熱部32eは駆動されない。炊飯量が5合以上の場合、加熱制御部81は、第1~第5側面加熱部32a~32eを駆動させる(S7)。すなわち、炊飯量が5合以上の場合は、炊飯工程において全ての側面加熱部32が駆動される。
【0049】
なお、第1~第5側面加熱部32a~32eのうち2つ以上を駆動させる場合は、全てを同じタイミングで駆動させてもよいし、任意の時間間隔で交互に駆動させてもよい。または、同じタイミングでの駆動と、交互の駆動とを切替えてもよい。第1~第5側面加熱部32a~32eのうち2つ以上を同じタイミングで駆動させることで、激しい沸騰を鍋状容器5全体から起こすことができ、米200全体を強く加熱することができる。また、第1~第5側面加熱部32a~32eのうち2つ以上を交互に駆動させることで、鍋状容器5内に対流を起こすことができ、米全体を均一に加熱させることができる。
【0050】
以上のように、本実施の形態では、炊飯量に応じて第1~第5側面加熱部32a~32eのうちの何れかを選択して駆動させることで、鍋状容器5の側面5cの炊飯量に対応する領域を加熱することができる。これにより、鍋状容器5の側方からの気泡発生による水201と米200との対流を起こすことができ、炊飯量の違いによる米200に伝わる熱量のばらつきを軽減することができる。その結果、炊き上がる米飯の硬さおよび含水率のムラである、いわゆる炊きムラを抑制し、おいしい米飯を炊くことができる。また、何れの炊飯量においても、かまどのように鍋状容器5全体からの沸騰気泡を発生させることができ、鍋状容器5内の米200全体の均一な加熱ができる。
【0051】
(変形例1-1)
炊飯量ごとの側面加熱部32の加熱制御は、図5に示すように1合毎の制御に限定されるものではない。例えば、炊飯量が少量、中量または多量の3通りで異なる加熱制御を行ってもよい。図6は変形例1-1における側面加熱部32の加熱制御を示すフローチャートである。
【0052】
まず、制御部8の炊飯量検知部83により、鍋状容器5内の炊飯量が検知される(S11)。そして、炊飯量に応じて(S12)、第1側面加熱部32aと、第2側面加熱部32bと、第3側面加熱部32cと、第4側面加熱部32dと、第5側面加熱部32eとを個別に駆動させる。具体的には、炊飯量が少量の場合、加熱制御部81は、第1側面加熱部32aおよび第2側面加熱部32bのみを駆動させる(S13)。すなわち、炊飯量が少量の場合は、炊飯工程において第3~第5側面加熱部32c~32eは駆動されない。炊飯量が少量の場合は、例えば炊飯量が0.5合~1.5合の場合である。
【0053】
炊飯量が中量の場合、加熱制御部81は、第1~第3側面加熱部32a~32cのみを駆動させる(S14)。すなわち、炊飯量が中量の場合は、炊飯工程において第4側面加熱部32dおよび第5側面加熱部32eは駆動されない。炊飯量が中量の場合は、例えば炊飯量が2合~3.5合の場合である。
【0054】
炊飯量が多量の場合、加熱制御部81は、第1~第5側面加熱部32a~32eを駆動させる(S15)。炊飯量が多量の場合は、鍋状容器5の全体を加熱することで、底面5bから上面まで、均一に米200を加熱することができ、炊きムラを小さくすることができる。炊飯量が多量の場合は、例えば炊飯量が4合~5.5合の場合である。
【0055】
なお、側面加熱部32の加熱制御において、少量、中量および多量のそれぞれにおいて駆動させる側面加熱部32の範囲は一例であり、空炊きが起こらない範囲の側面加熱部32であればどのように駆動してもよい。
【0056】
(変形例1-2)
また、鍋状容器5と側面加熱部32との位置関係は、図2の例に限定されるものではない。図7は、変形例1-2における側面加熱部32の配置を説明する図である。図7に示すように、第1~第5側面加熱部32a~32eの上端を、鍋状容器5の水位線と一致させてもよい。鍋状容器5の水位線は、第1~第5領域S1~S5の上端にそれぞれ一致する。具体的には、第1側面加熱部32aの上端が1合の水位線と一致するよう配置される。同様に、第2~第5側面加熱部32b~32eがそれぞれ2合~5.5合の水位線と一致するよう配置される。
【0057】
第1~第5側面加熱部32a~32eをこのように配置することにより、空炊きが起こらない最大限の範囲まで加熱することができ、炊飯量ごとの加熱制御の効果を高めることができる。また、鍋状容器5の底面5bから水201の上面まで加熱することができ、かつ、米200と水201とを分けて加熱しやすくなるため、炊飯工程ごとの加熱制御の効果もより高めることができる。これにより、炊きムラをさらに抑制することができる。
【0058】
(変形例1-3)
図8は、変形例1-3における側面加熱部32の配置を説明する図である。図8に示すように、第1~第5側面加熱部32a~32eの下端を、第1~第5領域S1~S5の下端に配置してもよい。第1領域S1の下端は、鍋状容器5の底面5bの内面であり、第2~第5領域S2~S5の下端は、鍋状容器5の水位線である。具体的には、第1側面加熱部32aの下端が鍋状容器5の底面5bの内面と一致するよう配置され、第2側面加熱部32bの下端が1合の水位線と一致するよう配置される。同様に、第3~第5側面加熱部32c~32eがそれぞれ2合~4合の水位線と一致するよう配置される。
【0059】
第1~第5側面加熱部32a~32eをこのように配置することにより、炊飯量が0.5合または1.5合など、規定の合数より少ない場合も、鍋状容器5が余分に加熱されることを抑制できる。これにより、鍋状容器5の破損を防ぐなど、利便性を向上させることができる。
【0060】
(変形例1-4)
また、側面加熱部32の数および鍋状容器5の側面5cの分割領域の数は、実施の形態1の例に限定されるものではない。図9は、変形例1-4における側面加熱部32の配置を説明する図である。図9では、鍋状容器5の側面5cの少なくとも一部が、第1領域S1、第2領域S2、第3領域S3および第4領域S4の4つの領域に分割される。第1領域S1は、鍋状容器5の底面5bの内面から、鍋状容器5の1合の水位線と2合の水位線の中間までの領域である。第2領域S2は、1合の水位線と2合の水位線の中間から、2合の水位線と3合の水位線の中間までの領域である。第3領域S3は、2合の水位線と3合の水位線の中間から、3合の水位線と4合の水位線の中間までの領域である。第4領域S4は、3合の水位線と4合の水位線の中間から、5.5合の水位線までの領域である。
【0061】
そして、第1領域S1に第1側面加熱部32aが配置され、第2領域S2に第2側面加熱部32bが配置され、第3領域S3に第3側面加熱部32cが配置され、第4領域S4に第4側面加熱部32dが配置される。例えば、第1~第4側面加熱部32a~32dは、各合の水位線の位置と、第1~第4側面加熱部32a~32dの中間位置とが略一致するように配置される。なお、当該配置に限定されるものではなく、第1~第4側面加熱部32a~32dを、第1~第4領域S1~S4内の任意の位置に配置してもよい。
【0062】
図10は、変形例1-4における側面加熱部32の加熱制御を示すフローチャートである。まず、制御部8の炊飯量検知部83により、鍋状容器5内の炊飯量が検知される(S21)。そして、炊飯量に応じて(S22)、第1側面加熱部32aと、第2側面加熱部32bと、第3側面加熱部32cと、第4側面加熱部32dとが個別に駆動される。具体的には、炊飯量が1合以下の場合、加熱制御部81は、側面加熱部32を駆動させない(S23)。すなわち、炊飯量が1合の場合は、炊飯工程において、底面加熱部31のみを駆動させる。
【0063】
炊飯量が2合の場合(S22:2合)、加熱制御部81は、第1側面加熱部32aのみを駆動させる(S24)。すなわち、炊飯量が2合の場合は、炊飯工程において第2~第4側面加熱部32b~32dは駆動されない。炊飯量が3合の場合、加熱制御部81は、第1側面加熱部32aおよび第2側面加熱部32bのみを駆動させる(S25)。すなわち、炊飯量が3合の場合は、炊飯工程において第3側面加熱部32cおよび第4側面加熱部32dは駆動されない。炊飯量が4合の場合、加熱制御部81は、第1~第3側面加熱部32a~32cのみを駆動させる(S26)。すなわち、炊飯量が4合の場合は、炊飯工程において第4側面加熱部32dは駆動されない。炊飯量が5合の場合、加熱制御部81は、第1~第4側面加熱部32a~32dを駆動させる(S27)。すなわち、炊飯量が5合以上の場合は、炊飯工程において全ての側面加熱部32が駆動される。
【0064】
本変形例においても、実施の形態1と同様の効果を得ることができる。また、本変形例のように、各合の水位線の位置と第1~第4側面加熱部32a~32dの中間位置とを略一致させることで、第1~第4側面加熱部32a~32dの少なくとも半分は、必ず米200またはや水201が存在する領域を加熱する。これにより、実際よりも炊飯量を1つ上の合数と誤検知してしまった場合、例えば、実際は1合なのに2合と誤検知した場合も、米200または水201が存在しない過加熱領域を抑制し、鍋状容器5の破損を防ぐことができる。その結果、本変形例では、均一加熱による炊きムラの抑制と、鍋状容器5の破損抑制による利便性の向上との両方を実現することができる。さらに、本変形例では、側面加熱部32の数を減らすことができるため、コストの削減および組立性の向上を実現することができる。なお、別の変形例では、鍋状容器5の側面5cの少なくとも一部を10分割して、10個の側面加熱部を設け、0.5合毎に加熱制御をおこなってもよい。この場合は、部品点数は増えるが、炊飯量に応じたより細かい制御を行うことが可能となり、実施の形態1の効果を高めることができる。
【0065】
実施の形態2.
次に、実施の形態2について説明する。実施の形態2では、鍋状容器5Aの形状が実施の形態1と相違する。炊飯器100のその他の構成および制御は、実施の形態1と同様である。
【0066】
図11は、実施の形態2の鍋状容器5Aの断面模式図である。図11は、本実施の形態の鍋状容器5Aの中心を通る縦方向断面を示している。図11に示すように、本実施の形態の鍋状容器5Aの側面5cは、上下方向の上方に向かうにつれて、鍋状容器5Aの内径が広がるよう傾斜する傾斜部52を有する。図11では、傾斜部52が鍋状容器5Aの底面5bから鍋状容器5Aの上端まで設けられ、側面5cが全て傾斜部52となっているが、これに限定されるものではない。例えば、鍋状容器5Aの底面5bから鍋状容器5Aの鍔部5aまで、または鍋状容器5Aに収容される最大合数の米200に対応する水201の高さまでを傾斜部52としてもよい。
【0067】
また、傾斜部52は、水平方向の寸法に対して上下方向の寸法が大きくなるように形成される。ここで、水平方向に直交する断面における傾斜部52の内面の下端および上端を、図11に示されるように、それぞれ基点P1および基点Q1とする。基点P1から基点Q1までの上下方向の距離H1は、基点P1から基点Q1までの水平方向の距離W1よりも大きくなっている。
【0068】
一例として、基点P1から基点Q1までの上下方向の距離H1は、基点P1から基点Q1までの水平方向の距離W1の2倍以上である。また、鍋状容器5Aの中心から基点Q1までの水平方向の距離r1は、一例として、基点P1から基点Q1までの水平方向の距離W1の2倍以上である。鍋状容器5Aの中心から基点Q1までの距離とは、すなわち、鍋状容器5Aの底面5bの中心から基点Q1までの距離を意味している。本実施の形態において、基点P1から基点Q1までの上下方向の距離H1は、底面5bの中心から基点Q1までの水平方向の距離r1よりも大きい。
【0069】
なお、上記した距離W1、距離H1および距離r1の具体的な数値は、あくまで一例における参考値であり、鍋状容器5Aの傾斜部52の傾きは、上記の例に限定されるものではない。また、本実施の形態においても、鍋状容器5Aの傾斜部52に沿って、第1~第5側面加熱部32a~32eが配置され、実施の形態1と同様に制御部8により炊飯量に応じて加熱制御される。
【0070】
ここで、従来は、合数ごとの水位差が小さく、例えば1合と2合では水面の位置がほぼ同一であり、加熱できる範囲が変わらないため、炊飯量に応じた最適な加熱制御ができていなかった。これに対し、鍋状容器5Aのように側面5cに傾斜部52を設けることで、1合または0.5合ごとに水面の位置が変わり、水位差を広くとることができる。これにより、炊飯量が増えるに従い加熱範囲を広げることができる。その結果、第1~第5側面加熱部32a~32eを細かく制御することができ、側面加熱部32による効果を高めることができる。特に、0.5~1.5合程度の少量炊飯時においても、0.5合ごとの水位差を広くとることができるため、炊飯量が少量の場合も炊飯量に応じた最適な加熱量とすることができる。これにより、少量から多量まで細かく加熱制御を実施できる。
【0071】
また、鍋状容器5Aでは、同一容量の場合、実施の形態1の鍋状容器5よりも、底面5bの面積が小さくなる。これにより、底面加熱部31による底面5bの発熱密度が上昇する。さらに、底面5bから発生する沸騰気泡の発生量が多くなる。これにより、鍋状容器5Aの底面5bで発生した気泡は、水面まで上昇する間に多くの米200の間を通ることとなり、鍋状容器5Aの中心の米200まで均一に加熱できる。
【0072】
以上のように、本実施の形態では、鍋状容器5Aに傾斜部52を設けたことで、合数ごとの水位差を広くとることができ、実施の形態1における炊飯量に応じた側面加熱部32の加熱制御による効果をより高めることができる。
【0073】
(変形例2-1)
実施の形態2における鍋状容器5Aの形状に合わせて、側面加熱部32の配置を変更してもよい。図12は、変形例2-1における側面加熱部32の配置を説明する図である。図12に示すように、鍋状容器5Aの上部に配置される側面加熱部のターン数を、下部に配置される側面加熱部のターン数よりも多くしてもよい。具体的には、第1側面加熱部32aのターン数<第2側面加熱部32bのターン数<第3側面加熱部32cのターン数<第4側面加熱部32dのターン数<第5側面加熱部32eのターン数とする。
【0074】
実施の形態2の鍋状容器5Aのように、側面5cに傾斜部52を有する場合、鍋状容器5Aの上部の米200は、下部の米200よりも鍋状容器5Aの内面と接する表面積が増える。そのため、米200全体に均一な加熱を行うには、鍋状容器5Aの上部に配置される側面加熱部32に、下部に配置される側面加熱部32よりも大きい電力を与える必要がある。本変形例では、鍋状容器5Aの上部に向かって側面加熱部32のターン数を増やすことで、鍋状容器5Aの上部の加熱を強くすることができる。これにより、米200全体を均一に加熱でき、実施の形態1の効果をより高めることができる。
【0075】
なお、側面加熱部のターン数を同じとし、側面加熱部に流れる電流を鍋状容器5Aの上部に向かって大きくすることでも、変形例2-1と同様に鍋状容器5Aの上部の加熱を強くすることができる。具体的には、第1側面加熱部32aの通電比率<第2側面加熱部32bの通電比率<第3側面加熱部32cの通電比率<第4側面加熱部32dの通電比率<第5側面加熱部32eの通電比率とする。さらに、ターン数と通電比率との両方を、鍋状容器5Aの上部に向かって大きくすることで、より効果を高めることができる。
【0076】
実施の形態3.
次に、実施の形態3について説明する。実施の形態3では、鍋状容器5の形状が実施の形態1と相違する。炊飯器100のその他の構成および制御は、実施の形態1と同様である。
【0077】
図13は、実施の形態3の鍋状容器5Bの断面模式図である。図14は、実施の形態3の鍋状容器5Bの平面図である。図13に示すように、本実施の形態の鍋状容器5Bは、底面5bおよび側面5cの内側に、突起55a、55bおよび55cを有する。図14に示すように、突起55a、55bおよび55cは、それぞれ平面視で環状に設けられる。
【0078】
鍋状容器5Bの底面5bおよび側面5cの内側に、突起55a、55bおよび55cを設けることで、加熱調理中に、突起55a、55bおよび55cから沸騰気泡が発生および剥離しやすくなる。これにより、鍋状容器5B全体に沸騰気泡を分散することができる。
【0079】
鍋状容器5Bの底面5bからの沸騰気泡は、そのほとんどが鍋状容器5Bの上面までたどり着かず、途中の米200によって吸収されてしまう。また、鍋状容器5Bの側面5cが加熱されることで発生する沸騰気泡は、側面5cの内側表面に沿って上面まで流れてしまうため、鍋状容器5Bの中央上部にはほとんど通らない。米200は沸騰気泡によって熱エネルギーを受け取り、糊化するためのエネルギーとして利用する。そのため、鍋状容器5Bの底面5bまたは側面5cといった、鍋状容器5Bの表面に近い米200が軟らかく炊き上がり、反対に鍋状容器5Bの表面から遠い中央上部に位置する米200が硬く炊き上がる、といった炊きムラが発生してしまう。
【0080】
これに対し、本実施の形態では、鍋状容器5の底面5bおよび側面5cの内側に、突起55a、55bおよび55cを設けることで、所望の場所における沸騰気泡の剥離を起こしやすくし、沸騰気泡が通りにくい範囲にも気泡を通すことができる。また、局所的に集中していた気泡を、鍋状容器5B全体に分散させることができ、炊きムラを減少させることができる。突起55a、55bおよび55cは、沸騰気泡の剥離が起こりにくい場所に配置するとよい。例えば、加熱部が配置されていない場所に突起55a、55bおよび55cを設けるとよい。具体的には、図13に示すように第1底面加熱部31aと第2底面加熱部31bとの間、底面加熱部31と側面加熱部32との間、および第1側面加熱部32aと第2側面加熱部32bとの間に配置するとよい。
【0081】
なお、突起55a、55bおよび55cの形状および数は図13および図14に限定されるものではない。例えば、突起55a、55bおよび55cをリング形状ではなく、任意の間隔で、鍋状容器5Bの周方向に多数配置してもよい。また、突起55a、55bおよび55cの配置は鍋状容器5B全体から沸騰気泡が発生する配置であればよい。
【0082】
(変形例3-1)
図15は、変形例3-1の鍋状容器5Cの断面模式図である。図15に示すように、鍋状容器5Cは、突起55a、55bおよび55cの代わりに溝56a、56bおよび56cを有するものであってもよい。
【0083】
(変形例3-2)
図16は、変形例3-2の鍋状容器5Dの断面模式図である。図16に示すように、鍋状容器5Dは、突起55a、55bおよび55cの代わりに塗膜層57a、57bおよび57cを有するものであってもよい。塗膜層57a、57bおよび57cは、親水性を有するものであり、鍋状容器5Dの内側表面に塗布される。さらに、突起、溝、親水性の塗膜層の代わりに、鍋状容器5の内側の表面粗さを一部変化させてもよい。
【0084】
以上が本発明の実施の形態の説明であるが、本発明は、上記の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲で種々に変形することが可能である。例えば、上記実施の形態では、炊飯器100の被加熱物として、米200を例にした場合における加熱制御について説明したが、被加熱物は米200に限定されるものではない。
【0085】
また、上記実施の形態1~3は、任意に組み合わせることが可能である。例えば、実施の形態2の傾斜部52を有する鍋状容器5Aに、実施の形態3の突起55a、55bおよび55cを設けてもよい。鍋状容器5Aのように、底面5bの面積が上面の面積より小さい形状では、側面5cからの沸騰気泡の発生および剥離が、鍋状容器5A全体への沸騰気泡分散に重要となる。
【0086】
また、底面加熱部31および側面加熱部32の数、ならびに側面5cの分割領域の数は、上記実施の形態に限定されるものではない。例えば、底面加熱部31を1つの加熱コイルとしてもよいし、3つ以上の加熱コイルで構成してもよい。同様に、側面5cの分割領域の数および側面加熱部32の数も、任意の数とすることができる。ただし、炊飯量に応じた制御のしやすさを考えると、3つ以上とすることが望ましい。
【0087】
さらに、上記実施の形態では、炊飯量に応じた側面加熱部32のみを駆動する構成としたが、これに限定されるものではない。例えば、実施の形態1において、炊飯量が1合以下の場合、第2~第5側面加熱部32b~32eを駆動させない構成としたが、加熱制御部81は、第2~第5側面加熱部32b~32eを空炊きの起こらない低電力で駆動させてもよい。これにより、鍋状容器5の上下温度差を小さくできる。その結果、鍋状容器5の底面5bから発生した蒸気が凝縮しにくくなり、凝縮水による鍋状容器5内の炊飯液または米200の温度低下を防ぐことができる。その他の炊飯量の場合においても、選択されなかった側面加熱部を空炊きの起こらない低電力で駆動させてもよい。
【符号の説明】
【0088】
1 本体、2 容器カバー、2a 孔部、2b 肩部、4 鍋底温度センサー、5、5A、5B、5C、5D 鍋状容器、5a 鍔部、5b 底面、5c 側面、6 ヒンジ部、7 時間計測部、8 制御部、9 蓋パッキン、10 蓋体、11 外蓋、11a パッキン、12 内蓋、12a 孔部、12b 蒸気口、13 係止材、14 カートリッジ、14a 蒸気取入口、14b 蒸気排出口、15 操作表示部、16 内部温度センサー、31 底面加熱部、31a 第1底面加熱部、31b 第2底面加熱部、32 側面加熱部、32a 第1側面加熱部、32b 第2側面加熱部、32c 第3側面加熱部、32d 第4側面加熱部、32e 第5側面加熱部、52 傾斜部、55a、55b、55c 突起、56a、56b、56c 溝、57a、57b、57c 塗膜層、81 加熱制御部、82 表示制御部、83 炊飯量検知部、84 記憶部、85 第1インバータ、86 第2インバータ、100 炊飯器。
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