(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-07
(45)【発行日】2023-12-15
(54)【発明の名称】軸受機構及び減速機
(51)【国際特許分類】
F16H 1/32 20060101AFI20231208BHJP
F16C 19/26 20060101ALI20231208BHJP
F16C 9/02 20060101ALI20231208BHJP
【FI】
F16H1/32 A
F16C19/26
F16C9/02
(21)【出願番号】P 2019148304
(22)【出願日】2019-08-13
【審査請求日】2022-07-13
(73)【特許権者】
【識別番号】503405689
【氏名又は名称】ナブテスコ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106909
【氏名又は名称】棚井 澄雄
(74)【代理人】
【識別番号】100126664
【氏名又は名称】鈴木 慎吾
(74)【代理人】
【識別番号】100141139
【氏名又は名称】及川 周
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(72)【発明者】
【氏名】紀平 誠人
【審査官】増岡 亘
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-55654(JP,A)
【文献】特開2014-190517(JP,A)
【文献】特開2008-202764(JP,A)
【文献】特開2013-64450(JP,A)
【文献】特開2015-127579(JP,A)
【文献】特開昭55-129657(JP,A)
【文献】実開平5-19652(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 1/32
F16C 19/26
F16C 9/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸線を中心に回転する回転軸部材と、
前記回転軸部材の外周面に配される複数の円柱状の転動体を保持する保持器と、
前記回転軸部材を通す環状に形成されて前記回転軸部材に対して回転自在に配置され、前記保持器の前記軸線方向への移動を制限する制限部材と、を備え
、
前記回転軸部材は、前記転動体が取り付けられる外周面を有する大径軸と、前記軸線方向で前記大径軸の隣に位置し前記大径軸よりも径寸法が小さい小径軸と、を備え、
前記小径軸の外周に配された小径軸受を備え、
前記制限部材は、前記軸線方向で前記大径軸と前記小径軸受との間に位置し、
前記軸線方向での前記大径軸及び前記小径軸受の間の隙間寸法が、前記制限部材の厚さ寸法よりも大きい軸受機構。
【請求項2】
軸線を中心に回転する回転軸部材と、
前記回転軸部材の外周面に配される複数の円柱状の転動体及び複数の前記転動体を保持する保持器を含む転動体ユニットを有するころ軸受と、
前記回転軸部材を通す環状に形成されて前記回転軸部材に対して回転自在に配置され、前記転動体ユニットの前記軸線方向への移動を制限する制限部材と、を備え
、
前記回転軸部材は、前記ころ軸受が取り付けられる外周面を有する大径軸と、前記軸線方向で前記大径軸の隣に位置し前記大径軸よりも径寸法が小さい小径軸と、を備え、
前記小径軸の外周に配された小径軸受を備え、
前記制限部材は、前記軸線方向で前記大径軸と前記小径軸受との間に位置し、
前記軸線方向での前記大径軸及び前記小径軸受の間の隙間寸法が、前記制限部材の厚さ寸法よりも大きい軸受機構。
【請求項3】
外周面を有する大径軸、及び、軸線方向で前記大径軸の隣に位置し前記大径軸よりも径寸法が小さい小径軸を有する回転軸部材と、
前記小径軸の外周に配される小径軸受と、
前記回転軸部材の外周面に配される複数の円柱状の転動体及び複数の前記転動体を保持する保持器を含む転動体ユニットを有するころ軸受と、
前記回転軸部材を通す環状に形成されて前記転動体ユニットの前記軸線方向への移動を制限し前記軸線方向で前記大径軸及び前記小径軸受の間に位置し前記軸線方向での厚さ寸法が前記軸線方向での前記大径軸及び前記小径軸受の間の隙間寸法よりも小さい制限部材と、を備える軸受機構。
【請求項4】
請求項1から
請求項3のいずれか一項に記載の軸受機構と、
前記回転軸部材が通る内周面を有し前記回転軸部材を回転自在に支持するキャリアと、
前記キャリアを内側で相対的に回転自在に位置する外筒と、
前記回転軸部材が通る内周面を有し前記保持器を含むころ軸受を介して前記回転軸部材を回転自在に支持し前記外筒の内側に配されて前記回転軸部材の回転に伴って揺動回転する揺動歯車と、を備え、
前記回転軸部材は、前記揺動歯車の揺動回転に基づいて前記回転軸部材の回転速度よりも遅い速度で前記外筒及び前記キャリアを相対的に回転させるクランク軸である減速機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、軸受機構及び減速機に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、回転軸部材(クランク軸)の外周面にころ軸受(偏心部位軸受)を配し、回転軸部材の軸線方向でころ軸受の隣に制限部材(ワッシャ)を配置した軸受機構が開示されている。ころ軸受の転動体は回転軸部材の軸線方向に平行する円柱状に形成されているため、ころ軸受は回転軸部材に対してその軸線方向に動き得る。これに対し、制限部材はころ軸受の軸線方向への移動を制限する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1の軸受機構では、制限部材が回転軸部材に固定されて回転軸部材と共に回転する。このため、制限部材ところ軸受(特に転動体や保持器)とが相対的に回転する回転速度が大きい。その結果として、制限部材ところ軸受との間に生じる摩擦が大きくなってしまい、制限部材が摩耗しやすい、という問題がある。
【0005】
本発明は、制限部材の摩耗を抑制又は防止できる軸受機構及び減速機を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係る軸受機構は、軸線を中心に回転する回転軸部材と、前記回転軸部材の外周面に配される複数の円柱状の転動体を保持する保持器と、前記回転軸部材を通す環状に形成されて前記回転軸部材に対して回転自在に配置され、前記保持器の前記軸線方向への移動を制限する制限部材と、を備え、前記回転軸部材は、前記転動体が取り付けられる外周面を有する大径軸と、前記軸線方向で前記大径軸の隣に位置し前記大径軸よりも径寸法が小さい小径軸と、を備え、前記小径軸の外周に配された小径軸受を備え、前記制限部材は、前記軸線方向で前記大径軸と前記小径軸受との間に位置し、前記軸線方向での前記大径軸及び前記小径軸受の間の隙間寸法が、前記制限部材の厚さ寸法よりも大きい。
【0007】
このように構成することで、制限部材は回転軸部材と一体に回転しないため、回転軸部材の軸線を中心とした制限部材の回転速度と、同軸線を中心とした保持器の回転速度と、の差を小さく抑えることができる。これにより、制限部材と保持器との間に生じる摩擦を小さく抑え、制限部材の摩耗を減らすことができる。
【0008】
本発明の他の態様に係る軸受機構は、軸線を中心に回転する回転軸部材と、前記回転軸部材の外周面に配される複数の円柱状の転動体及び複数の前記転動体を保持する保持器を含む転動体ユニットを有するころ軸受と、前記回転軸部材を通す環状に形成されて前記回転軸部材に対して回転自在に配置され、前記転動体ユニットの前記軸線方向への移動を制限する制限部材と、を備え、前記回転軸部材は、前記ころ軸受が取り付けられる外周面を有する大径軸と、前記軸線方向で前記大径軸の隣に位置し前記大径軸よりも径寸法が小さい小径軸と、を備え、前記小径軸の外周に配された小径軸受を備え、前記制限部材は、前記軸線方向で前記大径軸と前記小径軸受との間に位置し、前記軸線方向での前記大径軸及び前記小径軸受の間の隙間寸法が、前記制限部材の厚さ寸法よりも大きい。
【0009】
このように構成することで、制限部材は回転軸部材と一体に回転しないため、回転軸部材の軸線を中心とした制限部材の回転速度と、同軸線を中心としたころ軸受の転動体ユニットの回転速度と、の差を小さく抑えることができる。これにより、制限部材と転動体ユニットとの間に生じる摩擦を小さく抑え、制限部材の摩耗を減らすことができる。
【0011】
本発明の他の態様に係る軸受機構は、外周面を有する大径軸、及び、軸線方向で前記大径軸の隣に位置し前記大径軸よりも径寸法が小さい小径軸を有する回転軸部材と、前記小径軸の外周に配される小径軸受と、前記回転軸部材の外周面に配される複数の円柱状の転動体及び複数の前記転動体を保持する保持器を含む転動体ユニットを有するころ軸受と、前記回転軸部材を通す環状に形成されて前記転動体ユニットの前記軸線方向への移動を制限し前記軸線方向で前記大径軸及び前記小径軸受の間に位置し前記軸線方向での厚さ寸法が前記軸線方向での前記大径軸及び前記小径軸受の間の隙間寸法よりも小さい制限部材と、を備える。
【0012】
このように構成することで、制限部材ところ軸受の転動体ユニットとの相対的な回転速度の差を小さく抑えることができる。これにより、制限部材と転動体ユニットとの間に生じる摩擦を小さく抑え、制限部材の摩耗を減らすことができる。
【0021】
本発明の一態様に係る減速機は、前記軸受機構と、前記回転軸部材が通る内周面を有し前記回転軸部材を回転自在に支持するキャリアと、前記キャリアを内側で相対的に回転自在に位置する外筒と、前記回転軸部材が通る内周面を有し前記ころ軸受を介して前記回転軸部材を回転自在に支持し前記外筒の内側に配されて前記回転軸部材の回転に伴って揺動回転する揺動歯車と、を備え、前記回転軸部材は、前記揺動歯車の揺動回転に基づいて前記回転軸部材の回転速度よりも遅い速度で前記外筒及び前記キャリアを相対的に回転させるクランク軸である。
【発明の効果】
【0022】
上述の軸受機構及び減速機では、制限部材の摩耗を抑制又は防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】本発明の第一実施形態に係る減速機を示す断面図である。
【
図2】
図1の減速機のうち制限部材及びその近傍を示す拡大断面図である。
【
図3】本発明の第二実施形態に係る減速機の要部を示す拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
〔第一実施形態〕
以下、
図1~2を参照して本発明の第一実施形態について説明する。
図1に示すように、本実施形態に係る減速機1は、外筒2と、外筒2の内側に配されるキャリア3及び揺動歯車4と、キャリア3及び揺動歯車4に取り付けられるクランク軸(回転軸部材)5と、揺動歯車4の内周面41e,42eとクランク軸5との間に介在する偏心部位軸受(ころ軸受)8と、クランク軸5に取り付けられた制限部材6とを備える。また、本実施形態の減速機1は、キャリア3の内周面31e,32eとクランク軸5との間に介在するクランク軸受(小径軸受)7を備える。
クランク軸5、偏心部位軸受8、制限部材6及びクランク軸受7は、本実施形態に係る軸受機構100を構成する。軸受機構100は、偏心部位軸受8がクランク軸5の軸線方向に移動することを制限部材6によって制限する。
【0025】
外筒2は、軸線C1を中心とする円筒状に形成されている。外筒2は、その内周に複数の内歯21を備える。具体的に、外筒2は、円筒状の本体筒22と、本体筒22の内周に取り付けられ、本体筒22の周方向に等間隔で並べられた複数の内歯ピン23を備える。内歯ピン23は、前述の内歯21をなす。内歯ピン23は、その軸線が外筒2の軸線C1方向に平行する円柱状に形成されている。
【0026】
キャリア3は、外筒2の内側に位置する。キャリア3は、外筒2に対して軸線C1を中心に相対的に回転する。具体的に、減速機1は、外筒2の内周とキャリア3の外周との間に配置した主軸受B1を備える。主軸受B1は、軸線C1方向に互いに間隔をあけて二つ位置する。二つの主軸受B1は、軸線C1方向で外筒2の内歯21の両側に位置する。主軸受B1は、外筒2とキャリア3との相対的な回転を許容する。
【0027】
キャリア3は、軸線C1方向で後述する揺動歯車4を挟むように構成されている。キャリア3は、軸線C1方向に並ぶ第一部材31及び第二部材32を備える。また、キャリア3は、軸線C1方向で第一、第二部材31,32の間に配されるシャフト部位33を備える。シャフト部位33により、第一部材31と第二部材32との間には揺動歯車4を配する空間が形成される。シャフト部位33は、キャリア3の周方向に間隔をあけて複数(例えば三つ)配列される。シャフト部位33は、図示例のように第二部材32に一体に形成されてもよいし、例えば第一部材31に一体に形成されてもよい。
第一部材31と第二部材32とは、ねじ等の締結部材T1によって互いに締結される。図示例では、締結部材T1は、第一部材31と第二部材32に一体に形成されたシャフト部位33とを締結しているが、これに限ることはない。
【0028】
キャリア3は、軸線C1方向に貫通する中央孔31a,32aを有する。中央孔31a,32aは、第一部材31及び第二部材32にそれぞれ形成されている。中央孔31a,32aは、径方向でキャリア3の中心部分に位置する。中央孔31a,32aは、例えば軸線C1を中心とする孔であってよい。
【0029】
キャリア3は、後述するクランク軸5が挿入される挿入孔31b,32bを有する。挿入孔31b,32bは、第一部材31及び第二部材32にそれぞれ形成されている。第一部材31及び第二部材32に形成された二つの挿入孔31b,32bの軸線は、互いに一致する。第一、第二部材31,32の挿入孔31b,32bの一方は、例えば貫通しなくてもよい。本実施形態の挿入孔31b,32bは、第一部材31及び第二部材32の両方を貫通する。
【0030】
クランク軸5は、その軸線を中心に回転するようにクランク軸受7を介してキャリア3の挿入孔31b,32bの内周面31e,32eに支持される。
具体的に、クランク軸5は、第一、第二ジャーナル部位51,52を備える。第一、第二ジャーナル部位51,52の軸線は互いに一致する。第一、第二ジャーナル部位51,52は、クランク軸5の軸線方向に互いに間隔をあけて位置する。第一ジャーナル部位51は、第一部材31の挿入孔31bに対して回転自在に支持される。また、第二ジャーナル部位52は、第二部材32の挿入孔32bに対して回転自在に支持される。
第一ジャーナル部位51の一部は、クランク軸5の軸線方向でキャリア3の外側(具体的には第一部材31の外側端部31dの外側)に突出する。一方、第二ジャーナル部位52は、軸線方向でのキャリア3の外側(具体的に第二部材32の外側端部32dの外側)に突出しない。
【0031】
また、クランク軸5は、第一、第二ジャーナル部位51,52に対して偏心する偏心部位54を備える。偏心部位54は、クランク軸5の軸線方向で第一、第二ジャーナル部位51,52の間に位置する。偏心部位54は、キャリア3の第一部材31と第二部材32との間の空間に配される。本実施形態の偏心部位54には、軸線方向に並ぶ第一偏心部位54A及び第二偏心部位54Bがある。第一、第二偏心部位54A,54Bは互いに偏心する。第一偏心部位54Aは、クランク軸5の軸線方向で第一ジャーナル部位51の隣に位置する。第一偏心部位(大径軸)54Aの径寸法は、第一ジャーナル部位(小径軸)51の径寸法よりも大きい。第二偏心部位54Bは、クランク軸5の軸線方向で第二ジャーナル部位52の隣に位置する。第二偏心部位(大径軸)54Bの径寸法は、第二ジャーナル部位(小径軸)52の径寸法よりも大きい。
以上のように構成されるクランク軸5は、キャリア3と共に外筒2の内側に配される。図示しないが、クランク軸5は、キャリア3の周方向に互いに間隔をあけて複数(例えば三つ)配列される。
【0032】
クランク軸受7は、第一、第二ジャーナル部位51,52の外周にそれぞれ配される。具体的に、クランク軸受7(以下、第一クランク軸受71と呼ぶ。)は、キャリア3の第一部材31の挿入孔31bと第一ジャーナル部位51の外周面との間に位置する。また、クランク軸受7(以下、第二クランク軸受72と呼ぶ。)は、キャリア3の第二部材32の挿入孔32bと第二ジャーナル部位52の外周面との間に位置する。クランク軸受7は、キャリア3に対するクランク軸5の回転を許容する。
【0033】
図2に示すように、第一クランク軸受71は、転動体ユニット71aを備える。転動体ユニット71aは、挿入孔31bの内周面31eに配された複数の円柱状の転動体71b、及び、複数の転動体71bを保持する保持器71cを含む。複数の転動体71bは、挿入孔31bの内周面31e(第一ジャーナル部位51の外周面)の周方向に並ぶ。また、第一クランク軸受71は、複数の転動体71bに対して径方向内側に配される環状の内輪71d、及び、複数の転動体71bに対して径方向外側に配される環状の外輪71eを備える。
第一クランク軸受71は、例えば転動体71bの軸線方向がクランク軸5の軸線方向に平行する針状ころ軸受であってよい。本実施形態の第一クランク軸受71は、転動体71bの軸線方向がクランク軸5の軸線方向に対して傾斜する円錐ころ軸受である。
【0034】
図示しないが、第二ジャーナル部位52の外周に取り付けられた第二クランク軸受72(
図1参照)の構成は、上記した第一クランク軸受71と同様である。すなわち、第二クランク軸受72は、第一クランク軸受71と同様に、複数の転動体72b及び保持器を含む転動体ユニットと、内輪と、外輪と、備える。
【0035】
図1,2に示すように、キャリア3(第一、第二部材31,32)の内周面31e,32eには、リング状の止め輪10が嵌まっている。止め輪10は、クランク軸5の軸線方向で上記したクランク軸受7に対向する。本実施形態では、止め輪10がクランク軸5の軸線方向でクランク軸受7の外輪71eに対向する。これにより、止め輪10はクランク軸受7がクランク軸5の軸線方向に移動することを制限する。特に、止め輪10は、クランク軸5の軸線方向でクランク軸受7に対してキャリア3の外側に位置するため、クランク軸受7がキャリア3の外側に抜け出ることを防ぐ。
【0036】
図1に示すように、揺動歯車4は、キャリア3と同様に外筒2の内側に位置する。また、揺動歯車4は、軸線C1方向でキャリア3の第一、第二部材31,32の間に位置する。揺動歯車4は、偏心部位軸受8を介してクランク軸5の偏心部位54を回転自在に支持する。揺動歯車4は、クランク軸5の回転に伴って外筒2の内側で揺動回転する。
【0037】
本実施形態の揺動歯車4は、クランク軸5の第一偏心部位54Aに取り付けられる第一揺動歯車41と、第二偏心部位54Bに取り付けられる第二揺動歯車42とを備える。第一、第二揺動歯車41,42は、軸線C1方向(及びこれに平行するクランク軸5の軸線方向)に並ぶ。
第一揺動歯車41は、軸線方向に貫通して第一偏心部位54Aが挿入される第一挿入孔41aを有する。第二揺動歯車42は、軸線C1方向に貫通して第二偏心部位54Bが挿入される第二挿入孔42aを有する。
【0038】
第一、第二揺動歯車41,42は、それぞれ外周に複数の外歯41b,42bを有する。複数の外歯41b,42bは、第一、第二揺動歯車41,42の周方向に並ぶ。第一、第二揺動歯車41,42の外歯41b,42bは、前述した外筒2の内歯21に噛み合う。第一、第二揺動歯車41,42の外周の周方向の長さは、外筒2の内周の周方向の長さよりも小さい。第一、第二揺動歯車41,42の外歯41b,42bの数は、外筒2の内歯21の数よりも少ない。
第一、第二揺動歯車41,42は、それぞれ、キャリア3の中央孔31a,32aの位置に対応する中央孔41c,42c、及び、キャリア3のシャフト部位33が通る貫通孔41d、42dも有する。
【0039】
偏心部位軸受8には、クランク軸5の第一偏心部位54Aの外周と第一揺動歯車41の第一挿入孔41aの内周との間に位置する第一偏心部位軸受81と、クランク軸5の第二偏心部位54Bの外周と第二揺動歯車42の第二挿入孔42aの内周との間に位置する第二偏心部位軸受82と、がある。第一偏心部位軸受81は、第一揺動歯車41に対する第一偏心部位54Aの回転を許容する。第二偏心部位軸受82は、第二揺動歯車42に対する第二偏心部位54Bの回転を許容する。
【0040】
図2に示すように、第一偏心部位軸受81は、転動体ユニット81aを備える。転動体ユニット81aは、第一偏心部位54Aの外周面に配される複数の円柱状の転動体81b、及び、複数の転動体81bを保持する保持器81cを含む。第一偏心部位軸受81は、転動体ユニット81aの他に、例えば複数の転動体81bに対して径方向内側に配される環状の内輪、及び、複数の転動体81bに対して径方向外側に配される環状の外輪を備えてもよい。
複数の転動体81bは、第一偏心部位54Aの外周面の周方向に並ぶ。保持器81cは、第一偏心部位54Aの外周面に沿って配される環状部位81dと、環状部位81dの軸線方向の両端から径方向に突出する鍔部位81eと、を備える。
【0041】
環状部位81dは、環状部位81dを径方向に貫通するポケット81fを有する。ポケット81fは、環状部位81dの周方向に間隔をあけて複数並ぶ。複数のポケット81fには、転動体81bが一つずつ入る。本実施形態では、各転動体81bの一部が環状部位81dの径方向内側からポケット81fに入る。また、各転動体81bの残部は環状部位81dからその径方向内側に飛び出している。
鍔部位81eは、環状部位81dの軸線方向で転動体81bの両側に位置する。
図2では一方の鍔部位81eのみが記載されている。本実施形態の鍔部位81eは、環状部位81dの両端から径方向内側に突出する。鍔部位81eは、環状部位81dの全周にわたって形成されている。これにより、鍔部位81eは複数の転動体81bをその軸線方向から覆う。
【0042】
上記した第一偏心部位軸受81は、転動体81bの軸線方向がクランク軸5の軸線方向に平行する針状ころ軸受である。このため、第一偏心部位軸受81(特に転動体ユニット81a)は、クランク軸5に対してその軸線方向に移動し得る。
【0043】
図1に示す第二偏心部位軸受82の構成は、上記した第一偏心部位軸受81と同様である。すなわち、第二偏心部位軸受82は、第一偏心部位軸受81と同様に、複数の転動体及び保持器を含む転動体ユニットを備える。また、第二偏心部位軸受82は針状ころ軸受である。
【0044】
図1に示すように、本実施形態の減速機1は、クランク軸5に駆動力を伝達してクランク軸5を回転させる伝達歯車9をさらに備える。クランク軸5に対する伝達歯車9の取り付け位置は任意であってよい。本実施形態の伝達歯車9は、軸線C1方向でキャリア3の外側に位置するクランク軸5の第一ジャーナル部位51に取り付けられる。伝達歯車9は、第一ジャーナル部位51の軸線を中心に回転する。伝達歯車9は、外周に複数の外歯91を有する。伝達歯車9の外歯91がモータの入力軸(不図示)等に噛み合うことで、伝達歯車9はモータの駆動力をクランク軸5に伝達する。
【0045】
このように構成される本実施形態の減速機1では、伝達歯車9から駆動力を受けてクランク軸5が回転すると、第一、第二偏心部位54A,54Bの偏心した回転によって、第一、第二揺動歯車41,42の外歯41b,42bと外筒2の内歯21との噛み合わせ位置が周方向に移動するように、第一、第二揺動歯車41,42が外筒2に対して揺動回転する。
【0046】
また、第一偏心部位54Aと第二偏心部位54Bとが互いに偏心しているため、第一揺動歯車41の外歯41b、及び、第二揺動歯車42の外歯42bは、周方向で互いに異なる位置で外筒2の内歯21に噛み合う。これにより、第一揺動歯車41と第二揺動歯車42とは、外筒2の内部で互いに異なる位相で揺動回転する。
【0047】
そして、第一、第二揺動歯車41,42の揺動回転がクランク軸5を介してキャリア3に伝わることで、軸線C1を中心としてキャリア3が外筒2に対して回転する。すなわち、外筒2とキャリア3とが相対的に回転する。この相対的な回転速度は、クランク軸5の回転速度よりも遅い。すなわち、入力されたクランク軸5の回転に対して減速したキャリア3あるいは外筒2の回転を出力できる。
【0048】
図2に示すように、制限部材6は、クランク軸5を通す環状に形成されている。制限部材6は、クランク軸5のうちその軸線方向で偏心部位軸受8の隣に位置する。制限部材6は、軸線方向で偏心部位軸受8の転動体ユニット81aに対向する。これにより、制限部材6は、転動体ユニット81aに接触することで偏心部位軸受8(特に転動体ユニット81a)がクランク軸5の軸線方向に移動することを制限する。制限部材6は、クランク軸5を制限部材6に通した状態でクランク軸5に対してその軸線を中心に回転自在に配置されている。
本実施形態において、制限部材6は、クランク軸5の軸線方向から見て円環状に形成される。また、制限部材6は、クランク軸5の軸線方向を厚さ方向とする板状に形成されている。制限部材6は、クランク軸5の第一ジャーナル部位51を通した上で、第一偏心部位軸受81が取り付けられた第一偏心部位54Aの隣に配される。
【0049】
制限部材6の内径寸法は、少なくとも第一偏心部位54Aの径寸法よりも小さくかつ第一ジャーナル部位51の径寸法よりも大きければよい。これにより、制限部材6はクランク軸5の軸線方向で第一ジャーナル部位51側から第一偏心部位54Aに重なる。また、制限部材6は軸線方向で第一偏心部位54A及び第一クランク軸受71(特に内輪71d)の間に位置する。
制限部材6の厚さ寸法D1は、クランク軸5の軸線方向での第一偏心部位54A及び第一クランク軸受71(特に内輪71d)の間の隙間寸法D2よりも大きい。また、制限部材6の内周縁及び第一ジャーナル部位51の外周面は、クランク軸5の径方向で互いに間隔をあけて位置する。これにより、制限部材6は、クランク軸5に対してその軸線を中心に回転することができる。
制限部材6の内径寸法と第一ジャーナル部位51の径寸法との差分は、小さい方がより好ましい。この場合、制限部材6が第一ジャーナル部位51や第一偏心部位54Aに対して軸線方向に直交する方向に位置ずれることを抑制又は防止できる。
【0050】
制限部材6の外径寸法は第一偏心部位54Aの径寸法よりも大きい。制限部材6の外周部分は第一偏心部位54Aの全周にわたって径方向で第一偏心部位54Aの外側に張り出す。制限部材6の外周部分はクランク軸5の軸線方向で第一偏心部位軸受81の転動体ユニット81aに対向する。これにより、制限部材6の外周部分がクランク軸5に対する第一偏心部位軸受81(特に転動体ユニット81a)の軸線方向への移動を制限する。制限部材6の外周部分には、
図2に例示するように転動体ユニット81aの保持器81c(特に鍔部位81e)が対向し接触してもよいし、例えば転動体ユニット81aの転動体81bが対向し接触してもよい。
制限部材6の外周縁及び内周縁の中心は、互いに一致してもよいし、互いにずれてもよい。
【0051】
図1に示すように、制限部材6は、クランク軸5の第二ジャーナル部位52(
図1参照)を通した上で、第二偏心部位軸受82が取り付けられた第二偏心部位54Bの隣にも配される。すなわち、制限部材6は、クランク軸5の軸線方向で第一、第二偏心部位54A,54Bを挟むように第一、第二偏心部位54A,54Bの両側に配される。
第二偏心部位54Bの隣に配された制限部材6の構成などは、第一偏心部位54Aの隣に配された前述の制限部材6と同様である。
【0052】
このように、上述の軸受機構100及び減速機1では、制限部材6がクランク軸5に対して相対的に回転する。すなわち、制限部材6はクランク軸5と一体に回転しない。このため、クランク軸5の軸線を中心とした制限部材6の回転速度と、同軸線を中心とした偏心部位軸受8の転動体ユニット81a(転動体81bや保持器81c)の回転速度と、の差を小さく抑えることができる。これにより、制限部材6と転動体ユニット81aとが接触しても、制限部材6と転動体ユニット81aとの間に生じる摩擦を小さく抑え、制限部材6の摩耗を減らすことができる。したがって、制限部材6の摩耗を抑制することができる。
また、制限部材6の摩耗を抑制できるため、軸受機構100及び減速機1の信頼性を向上できる。
上記した効果は、偏心部位軸受8がクランク軸5対してその軸線方向に動きやすい針状ころ軸受である場合に、特に有効である。
【0053】
また、制限部材6は、クランク軸5のジャーナル部位51,52を通した上で、クランク軸5の軸線方向で、ジャーナル部位51,52よりも径寸法が大きいクランク軸5の偏心部位54と、ジャーナル部位51,52の外周に配されたクランク軸受7と、の間に位置する。これにより、制限部材6が軸線方向でクランク軸5から外れることを防止できる。
また、クランク軸5の軸線方向での偏心部位54及びクランク軸受7の間の隙間寸法D2が、制限部材6の厚さ寸法D1よりも大きい。これにより、制限部材6がクランク軸5に対して固定されずに確実に回転することができる。したがって、制限部材6の摩耗を確実に抑制できる。
【0054】
制限部材6がクランク軸5に対して回転すると、クランク軸5の軸線方向で偏心部位54とクランク軸受7との間に位置する制限部材6の内周部分は、偏心部位54やクランク軸受7に対して擦れる。すなわち、制限部材6の内周部分と偏心部位54やクランク軸受7との間で摩擦が生じる。ただし、クランク軸5やクランク軸受7に対する制限部材6の内周部分の周速は、制限部材6がクランク軸5に固定されてクランク軸5と共に回転する場合で偏心部位軸受8に対する制限部材6の外周部分の周速よりも小さい。このため、制限部材6の内周部分と偏心部位54やクランク軸受7との間で生じる摩擦に基づく制限部材6の摩耗を、制限部材6がクランク軸5に固定される場合に制限部材6の外周部分と偏心部位軸受8との間に生じる摩擦に基づく制限部材6の摩耗よりも小さく抑えることができる。したがって、本実施形態の軸受機構100では、制限部材6がクランク軸5に固定される場合と比較して、制限部材6の摩耗を抑制することができる。
【0055】
第一実施形態の偏心部位軸受8では、例えば、各転動体81bの一部が保持器81cの環状部位81dの径方向外側からポケット81fに入り、各転動体81bの残部が環状部位81dからその径方向外側に飛び出してもよい。この場合、保持器81cの鍔部位81eは、例えば、環状部位81dの軸線方向の両端から径方向外側に突出すればよい。
【0056】
第一実施形態のクランク軸受7は、例えば転動体ユニットのみを備えてもよい。すなわち、クランク軸受7の内輪や外輪は、例えばクランク軸5やキャリア3に一体に形成されてもよい。
【0057】
〔第二実施形態〕
次に、本発明の第二実施形態について、主に
図3~4を参照して、第一実施形態との相違点を中心に説明する。なお、第一実施形態と共通する構成については、同一符号を付し、その説明を省略する。
【0058】
図3に示すように、本実施形態に係る減速機1Mは、第一実施形態と同様の外筒2(
図1参照)、キャリア3、揺動歯車4、クランク軸(回転軸部材)5及び偏心部位軸受(ころ軸受)8を備える。また、本実施形態の減速機1Mは、第一実施形態と同様のクランク軸受7も備える。
クランク軸5及び偏心部位軸受8は、本実施形態に係る軸受機構100Mを構成する。軸受機構100Mは、偏心部位軸受8がクランク軸5の軸線方向に移動することを制限する。
【0059】
クランク軸5は、外周面を有する円柱状に形成される。クランク軸5は、その外周面から径方向外側に位置する鍔55Mを備える。鍔55Mは、クランク軸5の外周面から径方向外側に突出する。鍔55Mは、例えばクランク軸5の周方向に間隔をあけて複数配列されてよい。本実施形態の鍔55Mは、クランク軸5の周方向全体にわたって形成される。すなわち、鍔55Mは環状に形成されている。
本実施形態の鍔55Mは、クランク軸5のうち各偏心部位54(第一偏心部位54A、第二偏心部位54B)の外周面から径方向外側に突出する。鍔55Mは、クランク軸5の軸線方向で各偏心部位54の外周に位置する偏心部位軸受8(特に転動体ユニット81a,82a)に対向する。これにより、鍔55Mは、偏心部位軸受8(特に転動体ユニット81a,82a)がクランク軸5の軸線方向に移動することを制限する。
【0060】
各偏心部位54は、例えば一つの鍔55Mを一つだけ備えてよい。この場合、鍔55Mは、クランク軸5の軸線方向で第一、第二ジャーナル部位51,52側に位置する各偏心部位54の端部で径方向外側に突出するとよい。この構成では、偏心部位軸受8(特に転動体ユニット81a,82a)がクランク軸5の軸線方向に移動してクランク軸受7に接触する又は当たることを防止できる。
【0061】
本実施形態では、各偏心部位54が一対の鍔55Mを備える。一対の鍔55Mは、クランク軸5の軸線方向での各偏心部位54の両端に位置する。一対の鍔55Mは、クランク軸5の軸線方向での偏心部位軸受8(特に転動体ユニット81a,82a)の両側に位置する。これにより、偏心部位軸受8がクランク軸5の軸線方向の両側に移動することを防止できる。したがって、偏心部位軸受8がクランク軸受7に当たることを防止できると共に、クランク軸5の軸線方向で互いに隣り合う偏心部位軸受8(第一、第二偏心部位軸受81,82)同士が当たることも防止できる。
【0062】
本実施形態の第一偏心部位軸受81は、第一実施形態と同様に、複数の転動体81b及び保持器81cを含む転動体ユニット81aを備える針状ころ軸受である。また、保持器81cは、第一実施形態と同様に、環状部位81d及び一対の鍔部位81eを備える。ただし、本実施形態の転動体ユニット81aでは、
図3,4に示すように、各転動体81bの一部が環状部位81dの径方向外側から環状部位81dのポケット81fに入り、各転動体81bの残部が環状部位81dからその径方向外側に飛び出している。鍔部位81eは、環状部位81dの軸線方向の両端から径方向外側に突出しており、転動体81bをその軸線方向から覆う。
【0063】
また、
図4に示すように、第一偏心部位軸受81の保持器81cは、クランク軸5の周方向に複数の分割体81hに分割される。各分割体81hは、環状部位81d及び鍔部位81eを含み、環状に形成された保持器81cの周方向の一部を構成する。複数の分割体81hを互いに結合することで保持器81cを組み立てることができる。
保持器81cの材料は、例えば比較的強度が高い鉄などであってもよいが、本実施形態では比較的強度が低い樹脂である。分割体81hの数は、二つに限らず、例えば三つ以上であってもよい。
【0064】
図3に示すように、本実施形態の第二偏心部位軸受82は、第一偏心部位軸受81と同様である。すなわち、第二偏心部位軸受82は、複数の転動体82b及び保持器82cを含む転動体ユニット82aを備える針状ころ軸受である。また、第二偏心部位軸受82では、各転動体82bの一部が保持器82cの環状部位82dの径方向外側から環状部位82dのポケット(不図示)に入り、各転動体82bの残部が環状部位82dからその径方向外側に飛び出す。保持器82cの鍔部位82eは、環状部位82dの軸線方向の両端から径方向外側に突出し、転動体82bをその軸線方向から覆う。
図示しないが、第二偏心部位軸受82の保持器82cは、第一偏心部位軸受81と同様に複数の分割体に分割される。また、本実施形態の保持器82cの材料は比較的強度が低い樹脂である。
【0065】
前述したように、各偏心部位軸受8の鍔部位81e,82eは環状部位81d,82dから径方向外側に突出する。このため、各偏心部位54の鍔55Mは、クランク軸5の軸線方向で保持器81c,82c(特に鍔部位81e,82e)に対向する。これにより、偏心部位軸受8(特に転動体ユニット81a,82a)が偏心部位54に対してクランク軸5の軸線方向に移動すると、偏心部位軸受8の保持器81c,82cが鍔55Mに接触する又は当たる。
【0066】
第二実施形態の軸受機構100M及び減速機1Mでは、クランク軸5の軸方向での偏心部位軸受8(特に転動体ユニット81a,82a)の移動が、クランク軸5の鍔55Mによって制限される。これにより、別途制限部材(例えば第一実施形態の制限部材6)をクランク軸5に取り付ける必要がなくなる。すなわち、制限部材を軸受機構100Mの構成から除外して、制限部材の摩耗を防ぐことができる。
また、制限部材の摩耗を防止できるため、軸受機構100M及び減速機1Mの信頼性を向上できる。
上記した効果は、偏心部位軸受8がクランク軸5に対してその軸線方向に動きやすい針状ころ軸受である場合に、特に有効である。
【0067】
また、鍔55Mは、クランク軸5の軸線方向での偏心部位軸受8(特に転動体ユニット81a,82a)の両側に位置する。このため、クランク軸5の軸線方向に並ぶクランク軸5の一対の鍔55Mによって、偏心部位軸受8がクランク軸5に対してその軸線方向の両側に移動することを防止できる。
これにより、偏心部位軸受8の保持器81c,82c(特に鍔部位81e,82e)がクランク軸受7や別の偏心部位軸受8に衝突することを防止できる。また、保持器81c,82cが鍔55Mに衝突することも防止できる。すなわち、保持器81c,82cに大きな荷重が作用することを抑制できる。したがって、保持器81c,82cを鉄などよりも安価で強度が低い樹脂で製造することができる。その結果として、軸受機構100M及び減速機1Mの製造コストの削減を図ることができる。
【0068】
また、保持器81c,82cは、クランク軸5の周方向に複数の分割体81hに分割される。このため、複数の分割体81hをそれぞれクランク軸5の外周面に配置した後に、複数の分割体81hを互いに結合するだけで、保持器81c,82cをクランク軸5の軸方向に並ぶ一対の鍔55Mの間に簡単に配置することができる。
【0069】
第二実施形態の偏心部位軸受8では、例えば、各転動体81b,82bの一部が保持器81c,82cの環状部位81d,82dの径方向内側から環状部位81d,82dのポケット81fに入り、各転動体81b,82bの残部が環状部位81d,82dからその径方向内側に飛び出してもよい。また、保持器81cの鍔部位81e,82eは、環状部位81d,82dの軸線方向の両端から径方向内側に突出してもよい。このような構成では、偏心部位54の鍔55Mが、クランク軸5の軸線方向で転動体81b,82bに対向することがある。この場合、偏心部位軸受8(特に転動体ユニット81a,82a)が偏心部位54に対してクランク軸5の軸線方向に移動すると、偏心部位軸受8の転動体81b,82bが鍔55Mに接触する又は当たる。
【0070】
第二実施形態の鍔55Mは、クランク軸5の偏心部位54に限らず、例えばクランク軸5の第一、第二ジャーナル部位51,52の外周面から突出してもよい。この場合、鍔55Mは、クランク軸5の軸線方向で第一、第二ジャーナル部位51,52の外周に位置するクランク軸受7(特に転動体ユニット71a,72a)の移動を制限できる。
【0071】
以上、本発明の詳細について説明したが、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることができる。
【0072】
本発明に係る軸受機構のころ軸受(例えば偏心部位軸受8)は、例えば転動体の軸線方向が回転軸部材(例えばクランク軸5)の軸線方向に対して傾斜する円錐ころ軸受であってもよい。
【0073】
本発明の減速機での揺動歯車の数は、例えば一つであってもよいし、三つ以上であってもよい。また、クランク軸での偏心部位の数は、揺動歯車の数に対応していればよい。
【0074】
本発明に係る軸受機構は、減速機に適用されることに限らず、任意の機械や装置に適用されてよい。
【符号の説明】
【0075】
1,1M…減速機、2…外筒、3…キャリア、4…揺動歯車、5…クランク軸(回転軸部材)、6…制限部材、7…クランク軸受(小径軸受)、8…偏心部位軸受(ころ軸受)、31…第一部材、31e…内周面、32…第二部材、32e…内周面、41…第一揺動歯車、41e…内周面、42…第二揺動歯車、42e…内周面、51…第一ジャーナル部位(小径軸)、52…第二ジャーナル部位(小径軸)、54…偏心部位(大径軸)、54A…第一偏心部位(大径軸)、54B…第二偏心部位(大径軸)、55M…鍔、71…第一クランク軸受、71a…転動体ユニット、71b…転動体、71c…保持器、71d…内輪、71e…外輪、72…第二クランク軸受、72a…転動体ユニット、72b…転動体、81…第一偏心部位軸受、81a…転動体ユニット、81b…転動体、81c…保持器、81d…環状部位、81e…鍔部位、81h…分割体、82…第二偏心部位軸受、82a…転動体ユニット、82b…転動体、82c…保持器、82d…環状部位、82e…鍔部位、100,100M…軸受機構