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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-07
(45)【発行日】2023-12-15
(54)【発明の名称】電界発光素子およびこれを含む表示装置
(51)【国際特許分類】
   H10K 50/115 20230101AFI20231208BHJP
   C09K 11/06 20060101ALI20231208BHJP
   G09F 9/30 20060101ALI20231208BHJP
   H10K 50/11 20230101ALI20231208BHJP
   H10K 50/15 20230101ALI20231208BHJP
   H10K 50/16 20230101ALI20231208BHJP
   H10K 50/17 20230101ALI20231208BHJP
   H10K 85/10 20230101ALI20231208BHJP
   H10K 85/60 20230101ALI20231208BHJP
【FI】
H10K50/115
C09K11/06 690
G09F9/30 365
H10K50/11
H10K50/15
H10K50/16
H10K50/17
H10K85/10
H10K85/60
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2019163340
(22)【出願日】2019-09-06
(65)【公開番号】P2020077610
(43)【公開日】2020-05-21
【審査請求日】2022-08-17
(31)【優先権主張番号】10-2018-0107005
(32)【優先日】2018-09-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】390019839
【氏名又は名称】三星電子株式会社
【氏名又は名称原語表記】Samsung Electronics Co.,Ltd.
【住所又は居所原語表記】129,Samsung-ro,Yeongtong-gu,Suwon-si,Gyeonggi-do,Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】110000051
【氏名又は名称】弁理士法人共生国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】韓 文 奎
(72)【発明者】
【氏名】丁 大 榮
(72)【発明者】
【氏名】金 光 熙
(72)【発明者】
【氏名】張 銀 珠
(72)【発明者】
【氏名】金 チャン 秀
(72)【発明者】
【氏名】朴 建 洙
(72)【発明者】
【氏名】尹 園 植
【審査官】岩井 好子
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第106997890(CN,A)
【文献】特開2011-192524(JP,A)
【文献】特開2017-139220(JP,A)
【文献】特開2015-156367(JP,A)
【文献】Masanao Era, et al.,Electrophosphorescence from hole-transporting layer doped with cerium halide nano-particles,Journal of Luminescence,2013年,Vo. 141,p. 6-8
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H10K 50/115
C09K 11/06
G09F 9/30
H10K 50/11
H10K 50/15
H10K 50/16
H10K 50/17
H10K 85/10
H10K 85/60
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに対向する第1電極および第2電極と、
前記第1電極と前記第2電極との間に配置され、量子ドット、および置換または非置換されたC4~C20のアルキル基を備えた第1正孔輸送材料を含む発光層と、
前記発光層と前記第1電極との間に配置され、第2正孔輸送材料を含む正孔輸送層と、
前記発光層と前記第2電極との間に配置された電子輸送層と、を含み、
前記第1正孔輸送材料は、下記化学式(2-1)で表される化合物を含むか、または、下記化学式(B)もしくは化学式(D)で表される化合物の中から選ばれた一つ以上を含み、
前記化学式(2-1)において、
11 、R 12 、R 13 、R 14 、R 15 、R 16 は、それぞれ独立して、置換または非置換されたC4~C20アルキル基、置換または非置換されたC3~C20シクロアルキル基、置換または非置換されたC6~C20アリール基、置換または非置換されたC3~C20ヘテロアリール基の中から選ばれるが、R 11 ~R 14 のうちの少なくとも一つは、置換または非置換されたC4~C20アルキル基であり、
13 、R 14 、R 15 、R 16 が置換または非置換されたC3~C20シクロアルキル基、置換または非置換されたC6~C20アリール基、または置換または非置換されたC3~C20ヘテロアリール基のうちのいずれか一つである場合、隣接する芳香族環と融合してC8~C40の融合環を形成し、
前記量子ドットは、Cdを含まないII族-VI族化合物、III族-V族化合物、IV族-VI族化合物、IV族元素または化合物、I族-III族-VI族化合物、Cdを含まないI族-II族-IV族-VI族化合物、またはこれらの組み合わせを含むことを特徴とする電界発光素子。
【化2-1】
【化B】
【化D】
【請求項2】
前記置換または非置換されたC4~C20のアルキル基は、C8~C20のアルキル基であることを特徴とする請求項1に記載の電界発光素子。
【請求項3】
前記第1正孔輸送材料は、非極性溶媒に対する溶解性を有することを特徴とする請求項1に記載の電界発光素子。
【請求項4】
前記発光層の量子ドットと第1正孔輸送材料との総量100重量%に対し、前記第1正孔輸送材料は2重量%以上50重量%未満含まれることを特徴とする請求項1に記載の電界発光素子。
【請求項5】
原子間力顕微鏡(Atomic-force microscopy,AFM)により測定される前記発光層表面の二乗平均粗さは0.5nm~2.0nmであることを特徴とする請求項1に記載の電界発光素子。
【請求項6】
前記量子ドット表面には疏水性リガンドが結合されていることを特徴とする請求項1に記載の電界発光素子。
【請求項7】
前記量子ドットは、コア-シェル構造を有することを特徴とする請求項1に記載の電界発光素子。
【請求項8】
前記第2正孔輸送材料と前記第1正孔輸送材料は、互いに異なる材料であることを特徴とする請求項1に記載の電界発光素子。
【請求項9】
前記第2正孔輸送材料は、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)またはその誘導体、ポリ(スチレンスルホナート)またはその誘導体、ポリ-N-ビニルカルバゾールまたはその誘導体、ポリフェニレンビニレンまたはその誘導体、ポリパラフェニレンビニレンまたはその誘導体、ポリメタクリレートまたはその誘導体、ポリアリールアミンまたはその誘導体、ポリアニリンまたはその誘導体、ポリピロールまたはその誘導体、ポリ(9,9-オクチルフルオレン)またはその誘導体、ポリ(スピロ-ビフルオレン)またはその誘導体、ポリ-(N,N’-ジフェニル-N,N’-ビス(3-メチルフェニル)-(1,1’-ビフェニル)-4,4’-ジアミン)、ポリ[(9,9-ジオクチルフルオレン-2,7-ジイル)-コ-(4.4’-(N-4-ブチルフェニル)-ジフェニルアミン)]、ポリ[(9,9-ジオクチルフルオレン)-コ-N,N-ジフェニル-N,N-ジ-(p-ブチルフェニル)-1,4-ジアミノベンゼン)]、NiO、MoO、またはこれらの組み合わせを含むことを特徴とする請求項に記載の電界発光素子。
【請求項10】
前記電子輸送層は、無機物ナノ粒子、キノロン系化合物、トリアジン系化合物、キノリン系化合物、トリアゾール系化合物、ナフタレン系化合物、またはこれらの組み合わせを含むことを特徴とする請求項1に記載の電界発光素子。
【請求項11】
前記電子輸送層は、無機物ナノ粒子からなる集合層を含むことを特徴とする請求項10に記載の電界発光素子。
【請求項12】
前記電子輸送層は、20nm~100nmの厚さを有することを特徴とする請求項1に記載の電界発光素子。
【請求項13】
前記第1電極と前記正孔輸送層との間に配置される正孔注入層をさらに含むことを特徴とする請求項1に記載の電界発光素子。
【請求項14】
請求項1ないし13のいずれか一項に記載の電界発光素子を含むことを特徴とする表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電界発光素子およびこれを含む表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
量子ドットは、概ね10nm以下の直径を有する半導体ナノ結晶物質として量子閉じ込め(quantum confinement)効果を示す物質である。量子ドットは、通常の蛍光体よりも強い光を狭い波長帯で発生させる。量子ドットの発光は、伝導帯から価電子帯に励起状態の電子が遷移しながら発生するが、同じ物質の場合でも粒子の大きさによって波長が変わる特性を示す。量子ドットの大きさが小さくなるほど短い波長の光を発光するので、大きさを調節して所望する波長領域の光を得ることができる。
【0003】
すなわち、量子ドットを含む発光層と、これを適用した各種電子素子は一般的に燐光および/または蛍光物質を含む発光層を用いる有機発光素子に比べて製造コストが低く、他の色の光を放出させるために発光層に他の有機物質を用いることなく量子ドットの大きさを異にすることによって所望する色の光を放出させることができる。
【0004】
量子ドットを含む発光層の発光効率は、量子ドットの量子効率、電荷キャリアのバランス、光抽出効率などによって決定される。特に量子効率の向上のためには励起子(exciton)を発光層に閉じ込め(confinement)なければならず、多様な要因によって発光層の内部に励起子が閉じ込められない場合、励起子消光(exciton quenching)等の問題が発生する可能性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2016-1548号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記従来技術の問題点に鑑みてなされたものであって、本発明の目的は、発光層の正孔輸送性と表面特性を改善して向上した素子特性を示す電界発光素子、およびこれを含む表示装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するためになされた本発明の一態様による電界発光素子は、互いに対向する第1電極および第2電極と、前記第1電極と前記第2電極との間に配置され、量子ドット、および主鎖に付着された置換または非置換されたC4~C20のアルキル基を備えた第1正孔輸送材料を含む発光層と、前記発光層と前記第1電極との間に配置され、第2正孔輸送材料を含む正孔輸送層と、前記発光層と前記第2電極との間に配置された電子輸送層と、を含むことを特徴とする。
【0008】
前記第1正孔輸送材料は、下記化学式(1)で表される化合物を含み得る。
【化1】
前記化学式(1)において、R~Rは、それぞれ独立して、置換または非置換されたC4~C20アルキル基、置換または非置換されたC3~C20シクロアルキル基、置換または非置換されたC6~C20アリール基、置換または非置換されたC3~C20ヘテロアリール基、置換または非置換されたC1~C20アルキルアミン基、置換または非置換されたC4~C20アリールアミン基、および置換または非置換されたカルバゾリル基の中から選ばれるが、R~Rのうちの少なくとも一つは、置換または非置換されたC4~C20アルキル基であり、R~Rが置換または非置換されたC3~C20シクロアルキル基、置換または非置換されたC6~C20アリール基または置換または非置換されたC3~C20ヘテロアリール基である場合、隣接する芳香族環と融合してC8~C40の融合環を形成し、XとXは、それぞれ独立してNまたはC(-R)の中から選ばれ、XとXは、それぞれ独立して、S、N-R、C(-R)(-R)の中から選ばれ(ここでR、R、R、Rは、それぞれ独立して置換または非置換されたC1~C20アルキル基、置換または非置換されたC3~C20シクロアルキル基、置換または非置換されたC6~C20アリール基、置換または非置換されたC3~C20ヘテロアリール基の中から選ばれる)、L、Lは、それぞれ独立して単結合、および置換または非置換されたメチレン基またはC2~C4アルケニレン基の中から選ばれ、i、j、k、l、およびmは、それぞれ独立して0または1であることが好ましい。
【0009】
前記第1正孔輸送材料は、下記化学式(2)で表される化合物を含み得る。
【化2】
前記化学式(2)において、X、X、L、L、j、k、l、およびmは、それぞれ化学式(1)で定義されたものと同一であり、R~Rは、それぞれ独立して、置換または非置換されたC4~C20アルキル基、置換または非置換されたC3~C20シクロアルキル基、置換または非置換されたC6~C20アリール基、置換または非置換されたC3~C20ヘテロアリール基、置換または非置換されたC1~C20アルキルアミン基、置換または非置換されたC4~C20アリールアミン基、および置換または非置換されたカルバゾリル基の中から選ばれるが、R~Rのうちの少なくとも一つは、置換または非置換されたC4~C20アルキル基であり、R~Rが置換または非置換されたC3~C20シクロアルキル基、置換または非置換されたC6~C20アリール基、または置換または非置換されたC3~C20ヘテロアリール基のうちのいずれか一つである場合、隣接する芳香族環と融合してC8~C40の融合環を形成することができる。
【0010】
~Rのうちの少なくとも二つ以上は、置換または非置換されたC4~C20アルキル基であり得る。
【0011】
前記第1正孔輸送材料は、下記化学式(2-1)ないし化学式(2-2)で表される化合物のうちの少なくとも一つを含み得る。
【化2-1】
【化2-2】
前記化学式(2-1)ないし化学式(2-2)において、X、Xは、それぞれ化学式(1)に定義されたものと同一であり、R11、R12、R13、R14、R15、R16、R21、R22、R23、R24、R25、R26は、それぞれ独立して、置換または非置換されたC4~C20アルキル基、置換または非置換されたC3~C20シクロアルキル基、置換または非置換されたC6~C20アリール基、置換または非置換されたC3~C20ヘテロアリール基の中から選ばれるが、R11~R14のうちの少なくとも一つとR21~R26のうちの少なくとも一つは置換または非置換されたC4~C20アルキル基であり、R27、R28は、それぞれ置換または非置換されたC1~C20アルキルアミン基、置換または非置換されたC4~C20アリールアミン基、および置換または非置換されたカルバゾリル基の中から選ばれ、R13、R14、R15、R16、R23、R24、R25、R26が置換または非置換されたC3~C20シクロアルキル基、置換または非置換されたC6~C20アリール基または置換または非置換されたC3~C20ヘテロアリール基のうちのいずれか一つである場合、隣接する芳香族環と融合してC8~C40の融合環を形成し得る。
【0012】
前記第1正孔輸送材料は、下記化学式(3)で表される化合物を含み得る。
【化3】
前記化学式(3)において、X、X、L、L、j、k、l、およびmは、それぞれ化学式(1)で定義されたものと同一であり、R33、R34、R35、R36、R37、およびR38は、それぞれ独立して、置換または非置換されたC4~C20アルキル基、置換または非置換されたC3~C20シクロアルキル基、置換または非置換されたC6~C20アリール基、置換または非置換されたC3~C20ヘテロアリール基、置換または非置換されたC1~C20アルキルアミン基、置換または非置換されたC4~C20アリールアミン基、および置換または非置換されたカルバゾリル基の中から選ばれるが、R33~R38のうちの少なくとも一つは置換または非置換されたC4~C20アルキル基であり、R33、R34、R35、R36、R37、R38が置換または非置換されたC3~C20シクロアルキル基、置換または非置換されたC6~C20アリール基または置換または非置換されたC3~C20ヘテロアリール基のうちのいずれか一つである場合、隣接する芳香族環と融合してC8~C40の融合環を形成することができる。
【0013】
33~R36のうちの少なくとも二つ以上は、非置換されたC4~C10直鎖状または分枝鎖状アルキル基であり得る。
【0014】
前記第1正孔輸送材料は、下記化学式(A)ないし化学式(F)で表される化合物の中から選ばれた一つ以上を含み得る。
【化A】
【化B】
【化C】
【化D】
【化E】
【化F】
【0015】
前記第1正孔輸送材料は、非極性溶媒に対する溶解性を有し得る。
前記発光層の総量100重量%に対し、前記第1正孔輸送材料は2重量%以上50重量%未満含まれ得る。
原子間力顕微鏡(Atomic-force microscopy,AFM)により測定される前記発光層表面の二乗平均粗さは0.5~2.0であり得る。
前記量子ドット表面には疏水性リガンドが結合されていてもよい。
前記量子ドットは、Cdを含まないII族-VI族化合物、III族-V族化合物、IV族-VI族化合物、IV族元素または化合物、I族-III族-VI族化合物、Cdを含まないI族-II族-IV族-VI族化合物、またはこれらの組み合わせを含み得る。
前記量子ドットは、コア-シェル構造を有し得る。
前記第2正孔輸送材料と前記第1正孔輸送材料は、互いに異なる材料であり得る。
前記第2正孔輸送材料は、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)またはその誘導体、ポリ(スチレンスルホナート)またはその誘導体、ポリ-N-ビニルカルバゾールまたはその誘導体、ポリフェニレンビニレンまたはその誘導体、ポリパラフェニレンビニレンまたはその誘導体、ポリメタクリレートまたはその誘導体、ポリアリールアミンまたはその誘導体、ポリアニリンまたはその誘導体、ポリピロールまたはその誘導体、ポリ(9,9-オクチルフルオレン)またはその誘導体、ポリ(スピロ-ビフルオレン)またはその誘導体、ポリ-(N,N’-ジフェニル-N,N’-ビス(3-メチルフェニル)-(1,1’-ビフェニル)-4,4’-ジアミン)、ポリ[(9,9-ジオクチルフルオレン-2,7-ジイル)-コ-(4.4’-(N-4-ブチルフェニル)-ジフェニルアミン)]、ポリ[(9,9-ジオクチルフルオレン)-コ-N,N-ジフェニル-N,N-ジ-(p-ブチルフェニル)-1,4-ジアミノベンゼン)]、NiO、MoO、またはこれらの組み合わせを含み得る。
前記電子輸送層は、無機物ナノ粒子、キノロン系化合物、トリアジン系化合物、キノリン系化合物、トリアゾール系化合物、ナフタレン系化合物、またはこれらの組み合わせを含み得る。
前記電子輸送層は、無機物ナノ粒子からなる集合層を含み得る。
前記電子輸送層は、20nm~100nmの厚さを有し得る。
前記電界発光素子は、前記第1電極と前記正孔輸送層との間に配置される正孔注入層をさらに含み得る。
【0016】
上記目的を達成するためになされた本発明の一態様による表示装置は、上述した電界発光素子を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、発光層の正孔輸送性と表面特性の改善によって向上した素子特性を示す電界発光素子と、これを含む表示装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の一実施形態による電界発光素子を概略的に示す断面図である。
図2】発光層薄膜の表面モルフォロジーを測定した原子間力顕微鏡(Atomic-force microscopy,AFM)イメージであり、比較製造例1の場合を示す。
図3】発光層薄膜の表面モルフォロジーを測定した原子間力顕微鏡(Atomic-force microscopy,AFM)イメージであり、製造例3の場合を示す。
図4】発光層薄膜の表面モルフォロジーを測定した原子間力顕微鏡(Atomic-force microscopy,AFM)イメージであり、比較製造例2の場合を示す。
図5】発光層薄膜の表面モルフォロジーを測定した原子間力顕微鏡(Atomic-force microscopy,AFM)イメージであり、製造例5の場合を示す。
図6】発光層薄膜の走査電子顕微鏡(Scanning Electron Microscope)イメージであり、比較製造例3の場合を示す。
図7】発光層薄膜の走査電子顕微鏡(Scanning Electron Microscope)イメージであり、比較製造例4の場合を示す。
図8】発光層薄膜の走査電子顕微鏡(Scanning Electron Microscope)イメージであり、製造例10の場合を示す。
図9】発光層薄膜の走査電子顕微鏡(Scanning Electron Microscope)イメージであり、製造例11の場合を示す。
図10】実施例1~4と比較例1による電界発光素子の電圧-電流密度(log scale)の特性を示すグラフである。
図11】実施例9~12と比較例2による電界発光素子の電圧-電流密度(log scale)の特性を示すグラフである。
図12】実施例2、5、11、および14と比較例1、2による電界発光素子の寿命特性を示すグラフである。
図13】実施例3、6、7、および8と比較例1、2による電界発光素子の寿命特性を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態について、本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者が容易に本発明を実施できるように詳細に説明する。しかし、本発明は、様々な異なる形態で具現可能であり、本明細書で説明する実施形態に限定されない。
【0020】
図面で複数の層および領域を明確に表現するために厚さを拡大して示す。明細書全体にわたって類似の部分に対しては同じ図面符号を付けた。層、膜、領域、板などの部分が他の部分の「上に」あるというとき、これは他の部分の「直上に」ある場合だけでなく、その中間に他の部分がある場合も含む。逆にある部分が他の部分の「直上に」あるというときには中間に他の部分がないことを意味する。
【0021】
本明細書で、「族(Group)」とは元素周期律表の族をいう。
ここで、「II族」は、IIA族およびIIB族を含み、II族金属の例は、Cd、Zn、Hg、およびMgを含むが、これに限定されない。
【0022】
一方、本明細書で、「Cdを含まないII族金属」の例は、Cdを除いた残りのII族金属、例えば、Zn、Hg、Mgなどが挙げられる。
「III族」は、IIIA族およびIIIB族を含み、III族金属の例は、Al、In、Ga、およびTlを含むが、これに限定されない。
「IV族」は、IVA族およびIVB族を含み、IV族金属の例は、Si、Ge、Snを含むが、これに限定されない。本明細書で、「金属」という用語はSiのような半金属も含む。
「I族」は、IA族およびIB族を含み、Li、Na、K、Rb、Csを含むが、これに限定されない。
「V族」は、VA族を含み、窒素、リン、ヒ素、アンチモン、およびビスマスを含むが、これに限定されない。
「VI族」は、VIA族を含み、硫黄、セレニウム、テルリウムを含むが、これに限定されない。
【0023】
本明細書で、「アルキル基」は、特定の炭素原子数を有し、少なくとも1の原子価を有する直鎖または分枝鎖飽和脂肪族炭化水素から誘導された官能基を意味する。アルキル基の具体的な例としては、メチル基、エチル基、イソプロピル基、tert-ブチル基、n-オクチル基、n-デシル基、n-ヘキサデシル基などが挙げられる。
【0024】
本明細書で、「アルケニル基」は、一つ以上の炭素-炭素二重結合を有する直鎖または分枝鎖1価炭化水素基を意味する。アルケニル基の具体的な例は、ビニル基、アリール基、2-ブテニル基、3-ペンテニル基などが挙げられる。
【0025】
本明細書で、「アルキニル基」は、一つ以上の炭素-炭素三重結合を有する直鎖または分枝鎖1価炭化水素基を意味する。アルキニル基の具体的な例としては、プロパルギル基(propargyl group)、3-フェンタニル基(3-pentynyl group)などが挙げられる。
【0026】
本明細書で、「アルコキシ基」は、「アルキル-O-」を意味し、ここで「アルキル」は上述したものと同様の意味を有する。
【0027】
本明細書で、「シクロアルキル基」は、すべての環メンバーが炭素である一つ以上の飽和環を有する1価の官能基を示す。
【0028】
本明細書で、「アリール基」は、1以上の環を含有して特定の炭素原子数を有する芳香族炭化水素をいう。用語「アリール」は、一つ以上のシクロアルキル環に融合した芳香族環を有するグループを含むものと解釈される。
【0029】
本明細書で、「アリールアルキレン基」は、アリール基に置換されたアルキレン基を意味する。
【0030】
本明細書で、「ヘテロアリール基」は、環化元素としてN、O、S、Si、およびPからなる群より選ばれた1個~3個のヘテロ原子を含有して一つ以上の置換体として選択的に置換されたアリール基を意味する。ヘテロアリール基の具体的な例としては、オキサゾリル基、フラニル基、チオフェニル基、チアゾリル基、トリアゾリル基、テトラゾリル基、イソオキサゾリル基(isoxazolyl group)、キノリニル基、ピロリル基、ピラゾリル基、ベンソ[b]チオフェニル基、イソキノリニル基、キナゾリニル基、キノキサリニル基、チエニル基、イソインドリル基、および5,6,7,8-テトラヒドロイソキノリン基などが挙げられる。
【0031】
本明細書で、特に定義しない限り、用語「ヘテロアリールアルキレン」は、ヘテロアリール基に置換されたアルキレン基を意味する。
【0032】
本明細書で、「アルキレン」、「シクロアルキレン」、「アリーレン」、および「ヘテロアリーレン」は、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、およびヘテロアリール基からそれぞれ誘導された2価の官能基を意味する。
【0033】
本明細書で、「アルキルアミン基」は、「-NRR’」を意味し、ここでRおよびR’は、それぞれ独立してC1~C20アルキル基である。
【0034】
本明細書で、「アリールアミン基」は、「-NRR’」を意味し、ここでRおよびR’は、それぞれ独立してC6~C30アリール基である。
【0035】
本明細書で、特に定義しない限り、「置換された」とは、各官能基の水素がC1~C30アルキル基、C2~C30アルケニル基、C2~C30アルキニル基、C30アルキニル基、C6~C30アリール基、C7~C30アルキルアリール基、C1~C30アルコキシ基、C1~C30ヘテロアルキル基、C3~C30ヘテロアルキルアリール基、C3~C30シクロアルキル基、C3~C15シクロアルケニル基、C6~C30シクロアルキニル基、C2~C30ヘテロシクロアルキル基、ハロゲン(-F、-Cl、-Br、または-I)、ヒドロキシ基(-OH)、ニトロ基(-NO)、シアノ基(-CN)、アミノ基(-NRR’、ここでRとR’は互いに独立して水素またはC1~C6アルキル基である)、アジド基(-N)、アミジノ基(-C(=NH)NH)、ヒドラジノ基(-NHNH)、ヒドラゾノ基(=N(NH))、アルデヒド基(-C(=O)H)、カルバモイル基(-C(O)NH)、チオール基(-SH)、エステル基(-C(=O)OR、ここでRはC1~C6アルキル基またはC6~C12アリール基である)、カルボキシル基(-COOH)またはその塩(-C(=O)OM、ここでMは有機または無機陽イオンである)、スルホン酸基(-SOH)またはその塩(-SOM、ここでMは有機または無機陽イオンである)、リン酸基(-PO)またはその塩(-POMHまたは-PO、ここでMは有機または無機陽イオンである)、またはこれらの組み合わせを含む意味である。
【0036】
まず、図1を参照して本発明の一実施形態による電界発光素子の概略的な構成を説明する。
【0037】
図1は、本発明の一実施形態による電界発光素子を概略的に示す断面図である。
【0038】
本発明の一実施形態による電界発光素子10は、互いに対向する第1電極110および第2電極160と、両電極の間に配置され、量子ドット141および主鎖に付着された置換または非置換されたC4~C20のアルキル基を備えた第1正孔輸送材料を含む発光層140と、第1電極110と発光層140との間に配置され、第2正孔輸送材料を含む正孔輸送層130と、第1電極110と正孔輸送層130との間に位置して、各構成要素との関係を考慮して省略可能な正孔注入層120と、発光層140と第2電極160との間に配置されている電子輸送層150と、を含む。
【0039】
すなわち、電界発光素子10は、互いに対向する第1電極110と第2電極160との間に、正孔注入層120、正孔輸送層130、発光層140、および電子輸送層150が順次配置された積層型構造を有する。
【0040】
一実施形態で、第1電極110は、駆動電源に直接連結されて発光層140に電流を流す役割を果たし得る。第1電極110は、少なくとも可視光の波長領域帯に対して光透過性を有する物質であり得るが、必ずしもこれに限定されるものではなく、赤外線または紫外線の波長領域に対する光透過性をさらに有する物質であり得る。例えば、第1電極110は、光学的に透明な物質であり得る。
【0041】
一実施形態で、第1電極110は、モリブデン酸化物、タングステン酸化物、バナジウム酸化物、レニウム酸化物、ニオビウム酸化物、タンタル酸化物、チタニウム酸化物、亜鉛酸化物、ニッケル酸化物、銅酸化物、コバルト酸化物、マンガン酸化物、クロム酸化物、インジウム酸化物、またはこれらの組み合わせを含み得る。
【0042】
しかし、一実施形態による第1電極110は必ずしもこれに限定されるものではなく、赤外線または紫外線の波長領域の光に対する光透過性をさらに有する物質であるか、特定の波長領域帯の光のみを選択的に透過する半透過性を有する物質であり得、可視光の波長領域帯の光を反射して第1電極110方向に戻す機能を果たし得る。
【0043】
一方、一実施形態において、第1電極110は、図1に示すように基板100の上に配置され得る。基板100は透明な絶縁基材であり得、軟性物質からなる。基板100は、ガラス、またはガラス転移点(Tg)が150℃よりも大きいフィルム形態の高分子物質からなり、例えば、COC(Cyclo Olefin Copolymer)またはCOP(Cyclo Olefin Polymer)系の素材からなる。
【0044】
一実施形態で、基板100は、第1電極110と第2電極160との間に配置された正孔注入層120、正孔輸送層130、発光層140、および電子輸送層150を支持する役割を果たす。ただし、一実施形態による電界発光素子10の基板100は、第1電極110の下に配置されるものではなく、第2電極160の上に配置されるか、場合によっては省略することもできる。
【0045】
第2電極160は、光学的に透明な物質であり、発光層140から発生した光が透過する透光電極の役割を果たす。一実施形態で、第2電極160は、銀(Ag)、アルミニウム(Al)、銅(Cu)、金(Au)、およびこれらの合金から選ばれた少なくとも一つを含むか、モリブデン酸化物、タングステン酸化物、バナジウム酸化物、レニウム酸化物、ニオビウム酸化物、タンタル酸化物、チタニウム酸化物、亜鉛酸化物、ニッケル酸化物、銅酸化物、コバルト酸化物、マンガン酸化物、クロム酸化物、インジウム酸化物、またはこれらの組み合わせを含み得る。
【0046】
ただし、一実施形態による第2電極160は必ずしもこれに限定されるものではなく、特定の波長領域帯の光のみを選択的に透過する半透過性を有する物質であり得、可視光の波長領域帯の光を反射して第1電極110方向に戻す機能を果たすこともできる。
【0047】
仮に第2電極160が反射電極の機能を果たす場合、第1電極110は少なくとも可視光の波長領域帯に対して光透過性を有する物質からなる透光電極であるか、特定の波長領域帯の光のみを選択的に透過する半透過性電極であり得る。
【0048】
一方、第1電極110および第2電極160のそれぞれは、基板100または有機層上にスパッタリングなどの方法を用いて電極形成用物質を蒸着することによって形成され得る。
【0049】
一方、一実施形態による電界発光素子10は、図1に示すように基板100および各構成要素が上述した積層順に配置された一般的な(conventional)構造を有する。
【0050】
ただし、本発明は必ずしもこれに限定されるものではなく、上述した電界発光素子10の各構成要素間の積層順序を満足する範囲内で可能な多様な構造を有し得る。例えば、基板100が第1電極110の下に配置されずに、第2電極160の上に配置される場合、電界発光素子10はインバーテッド(inverted)構造を有し得る。
【0051】
正孔注入層120は、第1電極110の直上に位置し得る。正孔注入層120は、正孔輸送層130と共に発光層140に正孔を供給する役割を果たす。ただし、正孔注入層120は、正孔輸送層130の形成厚さ、材料などを考慮して省略することもできる。
【0052】
一方、正孔注入層120は、p-型半導体(p-type semiconductor)物質、またはp-型ドーパントでドーピングされた物質からなる。正孔注入層120の例としては、PEDOT[Poly(3,4-ethylenedioxythiophene)]またはその誘導体、PSS[poly(styrene sulfonate)]またはその誘導体、ポリ-N-ビニルカルバゾール(poly-N-vinylcarbazole,PVK)またはその誘導体、ポリフェニレンビニレン(polyphenylenevinylene)またはその誘導体、ポリパラフェニレンビニレン(poly p-phenylene vinylene,PPV)またはその誘導体、ポリメタクリレート(polymethacrylate)またはその誘導体、ポリ(9,9-ジオクチルフルオレン)[poly(9,9-octylfluorene)]またはその誘導体、ポリ(スピロ-ビフルオレン)[poly(spiro-bifluorene)]またはその誘導体、TCTA(トリス(4-カルバゾイル-9-イルフェニル)アミン)、TPD(N,N’-ジフェニル-N,N’-ビス(3-メチルフェニル)-(1,1’-ビフェニル)-4,4’-ジアミン)、NPB(N,N’-ジ(ナフタレン-1-イル)-N-N’-ジフェニル-ベンジジン)、m-MTDATA(トリス(3-メチルフェニルフェニルアミノ)-トリフェニルアミン)、TFB(ポリ[(9,9-ジオクチルフルオレン-2,7-ジイル)-コ-(4,4’-(N-4-ブチルフェニル)ジフェニルアミン)])、PFB(ポリ[(9,9-ジオクチルフルオレン)-コ-(N,N’-ジフェニル-N,N’-ジ-(p-ブチルフェニル)-1,4-ジアミノベンゼン)])、poly-TPD、NiO、MoO等のような金属酸化物、またはこれらの組み合わせが挙げられるが、必ずしもこれに限定されない。
【0053】
正孔輸送層130は、第1電極110の上、例えば第1電極110と正孔注入層120の上に位置する。正孔輸送層130は、発光層140に正孔を供給、輸送する役割を果たす。正孔輸送層130は、発光層140の直下に形成されて発光層140に直接接触している。
【0054】
一実施形態で、正孔輸送層130は第2正孔輸送材料を含む。第2正孔輸送材料としては、p-型半導体(p-type semiconductor)物質、またはp-型ドーパントでドーピングされた物質からなる。
【0055】
一実施形態で、正孔輸送層130に含まれる第2正孔輸送材料は、後述する発光層140に含まれる第1正孔輸送材料とは互いに異なる材料であり得る。一実施形態で、第2正孔輸送材料として、高分子、オリゴマー、金属酸化物、またはこれらの組み合わせを用いることができる。
【0056】
第2正孔輸送材料の例として、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)誘導体、ポリ(スチレンスルホナート)誘導体、ポリ-N-ビニルカルバゾール誘導体、ポリフェニレンビニレン誘導体、ポリパラフェニレンビニレン誘導体、ポリメタクリレート誘導体、ポリアリールアミン誘導体、ポリアニリン誘導体、ポリピロール誘導体、ポリ(9,9-オクチルフルオレン)誘導体、ポリ(スピロ-フルオレン)誘導体、ポリ-(N,N’-ジフェニル-N,N’-ビス(3-メチルフェニル)-(1,1’-ビフェニル)-4,4’-ジアミン)、ポリ[(9,9-ジオクチルフルオレニル-2,7-ジイル-コ(4,4’-(N-4-ブチルフェニル)ジフェニルアミン]、ポリ((9,9-ジオクチルフルオレン)-コ-N,N-ジフェニル-N,N-ジ-(p-ブチルフェニル)-1,4-ジアミノベンゼン)、NiO、MoO、またはこれらの組み合わせが挙げられるが、必ずしもこれに限定されない。
【0057】
このように正孔輸送層130が第2正孔輸送材料として、高分子、オリゴマー、金属酸化物、またはこれらの組み合わせを用いる場合、発光素子の寿命を増加させ、電界発光素子10の作動開始電圧であるターンオン電圧(turn-on voltage)を低くする機能を果たし得る。特に、第2正孔輸送材料を上述した素材の群から選択する場合、単分子型正孔輸送材料の使用時に比べて発光層140に直接接触する正孔輸送層130の表面モルフォロジーを均一に調節することができる。これにより、正孔輸送層130から発光層140に移動する正孔の漏れ経路(leakage path)が最小化されることによって、漏洩電流と駆動電圧を低くすることができる。
【0058】
例えば、正孔輸送層130は、スピンコートなどの湿式コーティング法によって形成され得る。例えば、正孔輸送層130および発光層140をいずれも湿式コーティング法を用いて形成することができる。これにより、正孔輸送層130および/または発光層140を簡便な方法で形成することができる。
【0059】
さらに、一実施形態で、正孔輸送層130および発光層140は、比較的溶解度が異なる物質を用いることができる。例えば、正孔輸送層130は、芳香族非極性(aromatic non-polar)溶媒に対する溶解度に優れ、発光層140は、脂肪族非極性(aliphatic non-polar)溶媒に対する溶解度に優れる。これにより、正孔輸送層130を芳香族非極性溶媒に溶解させ、発光層140を脂肪族非極性溶媒に溶解させて溶液工程を行う場合、既に形成された正孔輸送層130の表面の損傷なしに発光層140を形成することができる。
【0060】
例えば、正孔輸送層130でTFBポリマー膜を成膜する場合、TFB前駆体ポリマーと芳香族非極性溶媒(例えば、トルエン、キシレンなど)が含まれた前駆体溶液を第1電極110または正孔注入層120の上にスピンコート(spin-coating)し、例えば、Nの不活性ガスの雰囲気または真空の中で150℃~1800℃の温度で30分間熱処理(thermal treatment)してTFBからなる正孔輸送層130を製造した後、その上に溶液工程により、脂肪族非極性溶媒(例えばオクタン、ノナン、シクロヘキサンなど)を用いて発光層140を容易に形成することができる。
【0061】
このように正孔輸送層130と発光層140の溶媒選択性を比較的相異するように構成する場合、正孔輸送層130と発光層140をいずれも溶液工程を用いて形成できるので、工程便宜性に優れることはもちろん、相異する溶媒選択性によって後続の発光層140の形成過程で有機溶媒などによって正孔輸送層130の表面が損傷することを最小化することができる。
【0062】
発光層140は、正孔輸送層130の上に位置し、量子ドット141および第1正孔輸送材料を含み得る。
【0063】
発光層140は、第1電極110と第2電極160から供給された電流によって伝達された電子と正孔が結合される場所であり、電子と正孔は、発光層140でのみ結合してエキシトン(exciton)を生成し、生成されたエキシトンは励起状態から基底状態に遷移しながら量子ドット141の大きさに対応する波長の光を発生させる。すなわち、量子ドット141は発光層140に電界発光機能を付与する。
【0064】
特に、量子ドット141は、量子閉じ込め効果(quantum confinement effect)により不連続的なバンドギャップエネルギー(energy band gap)を有するので、入射された光を特定の波長を有する光に変換して放射することができる。したがって、量子ドット141を含む発光層140は優れた色再現率および色純度を有する光を発生させることができる。
【0065】
例えば、発光層140は、所定の波長領域に属する光を発光する。この所定の波長領域の光は、可視域に属する波長領域であり、例えば380nm~488nmの第1波長領域、490nm~510nmの第2波長領域、510nm~580nmの第3波長領域、582nm~600nmの第4波長領域、および620nm~680nmの第5波長領域のうちのいずれか一つに属するものであり得る。
【0066】
一実施形態で、量子ドット141の素材は、特に限定されず、公知となっているか商業的に入手可能な量子ドットを用いることができる。例えば、一実施形態による量子ドット141のそれぞれは、Cdを含まないII族-VI族化合物、III族-V族化合物、IV族-VI族化合物、IV族元素または化合物、I族-III族-VI族化合物、Cdを含まないI族-II族-IV族-VI族化合物、またはこれらの組み合わせを含み得る。すなわち、一実施形態による量子ドット141のそれぞれは、非カドミウム系量子ドットであり得る。このように量子ドット141がいずれも非カドミウム系素材からなる場合、従来のカドミウム系量子ドットに比べて毒性がないため、人体に無害でかつ環境にやさしい。
【0067】
上記II-VI族化合物は、ZnS、ZnSe、ZnTe、ZnO、HgS、HgSe、HgTe、MgSe、MgS、およびこれらの混合物からなる群より選ばれる二元素化合物;ZnSeS、ZnSeTe、ZnSTe、HgSeS、HgSeTe、HgSTe、HgZnS、HgZnSe、HgZnTe、MgZnSe、MgZnS、およびこれらの混合物からなる群より選ばれる三元素化合物;並びにHgZnTeS、HgZnSeS、HgZnSeTe、HgZnSTe、およびこれらの混合物からなる群より選ばれる四元素化合物からなる群より選ばれ得る。上記II-VI族化合物は、III族金属をさらに含むこともできる。
【0068】
上記III-V族化合物は、GaN、GaP、GaAs、GaSb、AlN、AlP、AlAs、AlSb、InN、InP、InAs、InSb、およびこれらの混合物からなる群より選ばれる二元素化合物;GaNP、GaNAs、GaNSb、GaPAs、GaPSb、AlNP、AlNAs、AlNSb、AlPAs、AlPSb、InNP、InNAs、InNSb、InPAs、InPSb、InZnP、およびこれらの混合物からなる群より選ばれる三元素化合物;並びにGaAlNP、GaAlNAs、GaAlNSb、GaAlPAs、GaAlPSb、GaInNP、GaInNAs、GaInNSb、GaInPAs、GaInPSb、InAlNP、InAlNAs、InAlNSb、InAlPAs、InAlPSb、およびこれらの混合物からなる群より選ばれる四元素化合物からなる群より選ばれ得る。上記III-V族化合物は、II族金属をさらに含むこともできる(InZnP)。
【0069】
上記IV-VI族化合物は、SnS、SnSe、SnTe、PbS、PbSe、PbTe、およびこれらの混合物からなる群より選ばれる二元素化合物;SnSeS、SnSeTe、SnSTe、PbSeS、PbSeTe、PbSTe、SnPbS、SnPbSe、SnPbTe、およびこれらの混合物からなる群より選ばれる三元素化合物;並びにSnPbSSe、SnPbSeTe、SnPbSTe、およびこれらの混合物からなる群より選ばれる四元素化合物からなる群より選ばれ得る。
上記I族-III-VI族化合物の例は、CuInSe、CuInS、CuInGaSe、CuInGaSを含むが、これに限定されない。上記I-II-IV-VI族化合物の例は、CuZnSnSe、CuZnSnSを含むが、これに限定されない。上記IV族化合物は、Si、Ge、およびこれらの混合物からなる群より選ばれる単元素;並びにSiC、SiGe、およびこれらの混合物からなる群より選ばれる二元素化合物からなる群より選ばれ得る。
【0070】
上記二元素化合物、三元素化合物、または四元素化合物は、均一な濃度で粒子内に存在するか、または濃度分布が部分的に異なる状態に分けられて同一粒子内に存在するものであり得る。
【0071】
一実施形態によれば、量子ドットは、一つの半導体ナノ結晶粒子と、このコアを囲む他の半導体ナノ結晶シェルからなるコア-シェル構造を有し得る。コアとシェルとの界面はシェルに存在する元素の濃度が中心に行くほど低くなる濃度勾配(gradient)を有する。また、量子ドットは、一つの半導体ナノ結晶コアと、これを囲む多層のシェルを含む構造を有し得る。この時、多層のシェル構造は2層以上のシェル構造を有するものであり、それぞれの層は単一組成または合金または濃度勾配を有し得る。
【0072】
量子ドットがコア-シェル構造を有する場合、コアよりもシェルを構成する物質組成がさらに大きいバンドギャップエネルギーを有しており、量子閉じ込め効果が効果的に示される構造を有し得る。ただし、本発明はこれに限定されない。一方、多層のシェルを構成する場合もコアに近いシェルよりもコアの外側にあるシェルがさらに大きいバンドギャップエネルギーを有する構造であり得、この時、量子ドットは紫外線ないし赤外線の波長範囲を有し得る。
【0073】
量子ドットは、約10%以上、例えば、約20%以上、約30%以上、約40%以上、約50%以上、約60%以上、約70%以上、約90%以上、またはさらに100%の量子効率(quantum efficiency)を有し得る。
【0074】
また、ディスプレイにおいて色純度や色再現性を向上させるために、量子ドットは狭いスペクトルを有し得る。量子ドットは、約45nm以下、例えば約40nm以下、または約30nm以下の発光波長スペクトルの半値幅を有し得る。この範囲で素子の色純度や色再現性を向上させ得る。
【0075】
量子ドットは、約1nm~約100nmの粒径(球形でない場合、最も長い部分の大きさ)を有し得る。例えば、量子ドットは、約1nm~約20nm、例えば、2nm(または3nm)~15nmの粒径(球形でない場合、最も長い部分の大きさ)を有し得る。
【0076】
また、上記量子ドットの形態は、当該技術分野で一般的に用いられる形態のものであれば特に限定されない。例えば、量子ドットは、球形、楕円形、四面体型、ピラミッド型、六八面体型、シリンダー型、多面体型、多重枝型(multi-arm)、または立方体(cubic)のナノ粒子、ナノチューブ、ナノワイヤー、ナノ繊維、ナノシート、またはこれらの組み合わせを含み得る。量子ドットは任意の断面形状を有し得る。
【0077】
一方、上記量子ドットは、商業的に入手可能であるか、または任意の方法で合成することができる。例えば、数ナノサイズの量子ドットは、化学的湿式方法(wet chemical process)により合成することができる。化学的湿式方法では、有機溶媒のうち前駆体物質を反応させて結晶粒子を成長させ、この時に有機溶媒またはリガンド化合物が自然に量子ドットの表面に配位されることによって結晶の成長を調節することができる。有機溶媒およびリガンド化合物の具体的な種類は公知である。
【0078】
このように量子ドットの表面に配位された有機溶媒は、素子内で安定性に影響を与えるので、ナノ結晶の表面に配位されない余分の有機物は過量の非溶媒(non-solvent)に注いで、得られた混合物を遠心分離する過程を経て除去することができる。非溶媒の具体的種類としては、アセトン、エタノール、メタノールなどが挙げられるが、これに限定されない。余分の有機物を除去した後、量子ドットの表面に配位された有機物の量は量子ドット重量の50重量%以下、例えば、30重量%以下、20重量%以下、または10重量%以下であり得る。このような有機物は、リガンド化合物、有機溶媒、またはこれらの組み合わせを含み得る。
【0079】
一実施形態によれば、量子ドット141表面には、疏水性残基を有するリガンド(以下、疏水性リガンドという)が結合されている。一実施形態で、疏水性リガンドは、量子ドット141表面に結合される官能基と、疏水性を付与する疏水性官能基を含み得る。
【0080】
疏水性残基としては、例えば、C4~C20のアルキル基、C4~C20のアルケニル基、C4~C20のアルキニル基、またはこれらの組み合わせが挙げられ、量子ドット141表面に結合される官能基としては、例えば、ヒドロキシ基(-OH)、カルボキシル基(-COOH)などが挙げられる。
【0081】
疏水性リガンドの例としては、オレイン酸、ステアリン酸、パルミチン酸などの脂肪酸が挙げられる。量子ドット141が上述したように疏水性リガンドを有する場合、量子ドット141は全体的に見ると非極性を示し、これを含む発光層140も全体的に見るとき非極性を示す。また、疏水性リガンドが付着された量子ドット141は、非極性溶媒、具体的には、脂肪族非極性溶媒に対する溶媒選択性を有する。
【0082】
本発明の一実施形態による電界発光素子10で、発光層140は、優れた発光効率を示すために量子ドット141を所定の含有量で含み得る。
【0083】
例えば、量子ドット141は、発光層の総量100重量%に対し、例えば5重量%以上、例えば10重量%以上、例えば15重量%以上、例えば20重量%以上含まれ得、例えば98重量%以下、例えば95重量%以下、例えば90重量%以下、例えば85重量%以下、例えば80重量%以下、例えば75重量%以下、例えば70重量%以下、例えば65重量%以下、例えば60重量%以下、例えば55重量%以下、例えば50重量%以下含まれ得、例えば5重量%~98重量%、例えば20重量%~98重量%、例えば20重量%~90重量%、例えば20重量%~85重量%、例えば50重量%~85重量%含まれ得る。
【0084】
ただし、本発明は必ずしもこれに限定されるものではなく、量子ドット141の具体的な含有量は、使用された量子ドット141の素材、放出する光の種類、使用された疏水性リガンドの含有量、正孔輸送層130、発光層140、および/または電子輸送層150の厚さなどに応じて変わる。
【0085】
一方、第1正孔輸送材料は、発光層140の正孔輸送性を向上させる機能を果たす。第1正孔輸送材料は、上述した正孔輸送層130に含まれる第2正孔輸送材料とは異なる材料であり得る。第1正孔輸送材料は、p-型半導体(p-type semiconductor)物質、またはp-型ドーパントでドーピングされた物質からなるが、第2正孔輸送材料とは異なり、単分子ないし低分子材料、またはこれらの組み合わせから選ばれ得る。
【0086】
一実施形態で、第1正孔輸送材料は、主鎖に付着された置換または非置換されたC4~C20のアルキル基を備えるので、非極性溶媒、具体的には脂肪族非極性溶媒に対する溶解性を有する。一実施形態では、第1正孔輸送材料と疏水性リガンドがいずれも脂肪的非極性溶媒に対する溶解性を有することができる。これにより、上記溶液を用いて発光層140を形成する場合、形成された発光層140の表面モルフォロジーに優れることはもちろん、第1正孔輸送材料によって優れた正孔輸送性を有する。
【0087】
さらに、上述したように発光層140と正孔輸送層130とは、それぞれ脂肪族非極性溶媒、芳香族非極性溶媒に対する溶解性を有するので、発光層140形成時の正孔輸送層130表面の損傷を最小化することによって正孔輸送層130が優れた正孔輸送性を維持することができる。
【0088】
一実施形態で、第1正孔輸送材料としては、主鎖に置換または非置換されたC4~C20のアルキル基が付着されたものを用いることができる。第1正孔輸送材料が主鎖に付着された置換または非置換されたC4~C20アルキル基を備える場合、第1正孔輸送材料は非極性溶媒、具体的には脂肪族非極性溶媒によく溶解される。
【0089】
一実施形態で、第1正孔輸送材料の例としては、下記化学式(1)で表される化合物が挙げられる。
【化1】
化学式(1)において、
~Rは、それぞれ独立して、置換または非置換されたC4~C20アルキル基、置換または非置換されたC3~C20シクロアルキル基、置換または非置換されたC6~C20アリール基、置換または非置換されたC3~C20ヘテロアリール基、置換または非置換されたC1~C20アルキルアミン基、置換または非置換されたC4~C20アリールアミン基、および置換または非置換されたカルバゾリル基の中から選ばれるが、R~Rのうちの少なくとも一つは置換または非置換されたC4~C20アルキル基であり、
~Rが置換または非置換されたC3~C20シクロアルキル基、置換または非置換されたC6~C20アリール基、または置換または非置換されたC3~C20ヘテロアリール基である場合、隣接する芳香族環と融合してC8~C40の融合環を形成することができ、
とXは、それぞれ独立してNまたはC(-R)の中から選ばれ、XとXは、それぞれ独立して、S、N-R、C(-R)(-R)の中から選ばれ(ここでR、R、R、Rは、それぞれ独立して置換または非置換されたC1~C20アルキル基、置換または非置換されたC3~C20シクロアルキル基、置換または非置換されたC6~C20アリール基、置換または非置換されたC3~C20ヘテロアリール基の中から選ばれる)、
、Lは、それぞれ独立して単結合、および置換または非置換されたメチレン基またはC2~C4アルケニレン基の中から選ばれ、
i、j、k、l、およびmは、それぞれ独立して0または1である。i、j、k、l、またはmが0であるとき、示される部分に対応するモイエティは存在しないことを意味する。
【0090】
このような第1正孔輸送材料は、化学式(1)で表されるように比較的分子量が小さい化合物を含み、量子ドット表面に存在するリガンドとよく混ざるので、量子ドットだけを含む場合および/または量子ドットおよび高分子/オリゴマーの正孔輸送材料を含む場合に比べて発光層140が向上した表面モルフォロジーを示し得る。
【0091】
具体的には、第1正孔輸送材料は、下記化学式(2)で表される化合物を含み得る。
【化2】
化学式(2)において、
、X、L、L、j、k、l、およびmは、それぞれ化学式(1)で定義されたものと同一であり、
~Rは、それぞれ独立して、置換または非置換されたC4~C20アルキル基、置換または非置換されたC3~C20シクロアルキル基、置換または非置換されたC6~C20アリール基、置換または非置換されたC3~C20ヘテロアリール基、置換または非置換されたC1~C20アルキルアミン基、置換または非置換されたC4~C20アリールアミン基、および置換または非置換されたカルバゾリル基の中から選ばれるが、R~Rのうちの少なくとも一つは置換または非置換されたC4~C20アルキル基であり、
~Rが置換または非置換されたC3~C20シクロアルキル基、置換または非置換されたC6~C20アリール基、または置換または非置換されたC3~C20ヘテロアリール基のうちのいずれか一つである場合、隣接する芳香族環と融合してC8~C40の融合環を形成することができる。
【0092】
化学式(2)において、R~Rのうちの少なくとも二つ以上は、置換または非置換されたC4~C20アルキル基であり得る。この場合、第1正孔輸送材料の脂肪族非極性溶媒に対する溶解能をさらに向上させることができる。
【0093】
例えば、第1正孔輸送材料は、下記化学式(2-1)~化学式(2-2)で表される化合物のうちの少なくとも一つを含み得る。
【0094】
【化2-1】
【化2-2】
化学式(2-1)~化学式(2-2)において、
、Xは、それぞれ化学式(1)に定義されたものと同一であり、
11、R12、R13、R14、R15、R16、R21、R22、R23、R24、R25、R26は、それぞれ独立して、置換または非置換されたC4~C20アルキル基、置換または非置換されたC3~C20シクロアルキル基、置換または非置換されたC6~C20アリール基、置換または非置換されたC3~C20ヘテロアリール基の中から選ばれるが、R11~R14のうちの少なくとも一つとR21~R26のうちの少なくとも一つは置換または非置換されたC4~C20アルキル基であり、
27、R28は、それぞれ置換または非置換されたC1~C20アルキルアミン基、置換または非置換されたC4~C20アリールアミン基、および置換または非置換されたカルバゾリル基の中から選ばれ、
13、R14、R15、R16、R23、R24、R25、R26が置換または非置換されたC3~C20シクロアルキル基、置換または非置換されたC6~C20アリール基、または置換または非置換されたC3~C20ヘテロアリール基のうちのいずれか一つである場合、隣接する芳香族環と融合してC8~C40の融合環を形成し得る。
【0095】
一方、第1正孔輸送材料は、下記化学式(3)で表される化合物を含み得る。
【化3】

化学式(3)において、
、X、L、L、j、k、l、およびmは、それぞれ化学式(1)で定義されたものと同一であり、
33、R34、R35、R36、R37、およびR38は、それぞれ独立して、置換または非置換されたC4~C20アルキル基、置換または非置換されたC3~C20シクロアルキル基、置換または非置換されたC6~C20アリール基、置換または非置換されたC3~C20ヘテロアリール基、置換または非置換されたC1~C20アルキルアミン基、置換または非置換されたC4~C20アリールアミン基、および置換または非置換されたカルバゾリル基の中から選ばれるが、R33~R38のうちの少なくとも一つは置換または非置換されたC4~C20アルキル基である。
33、R34、R35、R36、R37、R38が置換または非置換されたC3~C20シクロアルキル基、置換または非置換されたC6~C20アリール基、または置換または非置換されたC3~C20ヘテロアリール基のうちのいずれか一つである場合、隣接する芳香族環と融合してC8~C40の融合環を形成することができる。
【0096】
化学式(3)において、R33~R36のうちの少なくとも二つ以上は、非置換されたC4~C10直鎖状または分枝鎖状アルキル基であり得る。この場合もまた、第1正孔輸送材料の脂肪族非極性溶媒に対する溶解能をさらに向上させることができる。
【0097】
さらに具体的には、第1正孔輸送材料は、下記化学式(A)~化学式(F)で表される化合物の中から選ばれた一つ以上を含み得る。
【化A】
【化B】
【化C】
【化D】
【化E】
【化F】
【0098】
量子ドットを用いた電界発光素子に広く使われる正孔輸送材料は、電子輸送材料に比べて正孔移動度(hole mobility)が低い方である。また、量子ドットの寿命など、安定性を確保するために量子ドット表面に有機リガンドを結合させて用いるが、量子ドット表面に付着された有機リガンドは多くの場合、正孔移動度が非常に低い。
【0099】
したがって、電界発光素子の駆動時、電子と正孔が発光層の中心で接することができず、正孔輸送層に接する界面、または正孔輸送層で接し得る。この場合、発光層の量子効率が大きく低下する虞があるので、電界発光素子内の電子/正孔キャリアのバランスを適正水準に合わせる必要がある。
【0100】
このため、量子ドットと従来の正孔輸送材料をブレンドして発光層を構成する方案が考慮された。しかし、従来の正孔輸送材料は、多くの場合、高分子/オリゴマーなどの分子量が高い材料を用いるので、量子ドットとブレンドする場合、表面モルフォロジーが均一に形成されない。発光層の表面モルフォロジーが均一でない場合、発光層の表面にクラック(crack)、ポア(pore)等が多数発生し得る。クラックおよび/またはポアは、正孔と電子の漏れ経路(leakage path)として作用するので、表面モルフォロジーが均一でないほど漏洩電流とターンオン電圧(turn-on)が増加する虞があり、素子寿命が大きく低下する虞もある。
【0101】
また、量子ドットと従来の正孔輸送材料をブレンドした組成物をスピンコートする場合、組成物が均一な薄膜をなすことができずに、押し出されてしまい、発光層を形成できない虞もある。
【0102】
これに対し、本発明の一実施形態による電界発光素子10は、発光層140が、疏水性リガンドが結合された量子ドット141、および化学式(1)で表される低分子ないし単分子の第1正孔輸送材料を含む。
【0103】
このように量子ドット141と低分子ないし単分子の第1正孔輸送材料とのブレンドからなる発光層140は、従来の正孔輸送材料と量子ドットとのブレンドからなる場合、または量子ドットのみからなる場合に比べて優れた表面モルフォロジーを有する。これにより、発光層表面のクラックおよび/またはポアを最小化することによって漏洩電流とターンオン電圧を低くする一方、素子の寿命を大きく向上させることができる。
【0104】
さらに、量子ドット141と低分子ないし単分子の第1正孔輸送材料とのブレンドからなる発光層140は、スピンコートなどの溶液工程を用いて均一な薄膜形態に形成することが容易である。
【0105】
一方、本発明の一実施形態による電界発光素子10は、発光層140と正孔輸送層130とが比較的互いに異なる溶媒選択性を有するように設計され得る。これにより、発光層140形成時の正孔輸送層130の表面損傷を最小化できるため、漏洩電流とターンオン電圧をさらに低くすることができる。
【0106】
また、第1正孔輸送材料を発光層140に含むことによって、発光層140に正孔注入が容易になるので、電界発光素子10のターン-オン(turn-on)がはやくなることはもちろん、発光層140に注入される電子/正孔キャリアのバランスを合わせることが容易であり、発光層140に適用される電界電圧が低くなって発光効率、最大輝度、および寿命がいずれも向上する。
【0107】
また、正孔輸送層130と電子輸送層150の正孔/電子輸送性程度に応じて発光層140内の第1正孔輸送素材の量を調節して、発光層140内の正孔/電子キャリアのバランスを効果的に制御することができる。例えば、第1正孔輸送材料は、発光層140総量100重量%に対して、例えば2重量%以上、例えば5重量%以上、例えば10重量%以上含まれ得、例えば50重量%未満、例えば49重量%以下、例えば45重量%以下、例えば40重量%以下、例えば30重量%以下含まれ得、例えば2重量%以上50重量%未満、例えば5重量%以上50重量%未満、例えば5重量%~40重量%、例えば5重量%~30重量%、例えば5重量%~20重量%含まれ得る。
【0108】
第1正孔輸送材料が発光層140内に上述した範囲内で含まれる場合、電界発光素子10の全般的な発光効率および寿命特性を大きく向上させることができる。
【0109】
一実施形態による発光層140の表面モルフォロジーは、原子間力顕微鏡(Atomic-force microscopy,AFM)を用いて確認することができる。一実施形態で、原子間力顕微鏡(Atomic-force microscopy,AFM)により測定される発光層140表面の二乗平均粗さは、例えば0.1以上、例えば0.2以上、例えば0.3以上、例えば0.4以上、例えば0.5以上、例えば0.6以上、例えば0.7以上、例えば0.8以上、例えば0.9以上であり得、例えば2.0以下、例えば1.5以下であり得、例えば0.5~2.0、例えば0.8~1.5であり得る。
【0110】
すなわち、一実施形態による電界発光素子10は、量子ドット141および第1正孔輸送材料をブレンドして発光層140を製造する場合、発光層140が上記のように優れた表面モルフォロジーを有する。
【0111】
ただし、一実施形態による電界発光素子10において、発光層140の表面モルフォロジーを確認する方法は上述した測定方法に限定されない。例えば、量子ドットと正孔輸送材料を含む発光層に対し、ZYGO干渉計(Zygo interferometer)等の他の測定方法を用いて表面モルフォロジーを測定することができ、この場合、上述した範囲と相異する二乗平均粗さの範囲が導き出される。ただし、一実施形態による測定方法を用いて測定された二乗平均粗さが上記範囲を満足する場合、その発光層は本発明の範囲に属する。
【0112】
一実施形態で、発光層140の厚さは、正孔輸送層130および電子輸送層150のそれぞれの素材、それぞれの電子/正孔移動度、厚さなどを考慮して上述した範囲内で多様に選ばれるが、例えば15nm~100nm、例えば20nm~60nm、例えば20nm~50nm、例えば20nm~40nm、例えば25nm~30nmの平均厚さを有し得る。
【0113】
発光層140の厚さが15nm未満の場合、発光層140に存在するボイド(void)、クラック(crack)等が電子/正孔の漏れ経路として作用する可能性が高くなって素子特性が大きく低下する虞があり、電界発光素子の他の構成要素とのキャリアのバランスを合わせることが難しくなる虞がある。
【0114】
また、発光層140の厚さが100nmを超える場合、電子/正孔キャリアのバランスを合わせることが難しく、駆動に必要な電流および電圧条件が過度に高まって効率的な発光にならない虞がある。
【0115】
すなわち、発光層140の厚さ範囲が上記範囲を超える場合、正孔に比べて電子が発光層140に過度に早く、且つ/または過度に少なく供給される虞があり、電子が発光層140と正孔輸送層130との間の界面で正孔に接して界面発光が行われるか、正孔注入層120および/または正孔輸送層130に移動して消光(quench)されてしまう虞もある。
【0116】
ただし、一実施形態による発光層140の厚さは、他の構成要素の素材、厚さとの関係を考慮して多様に調節することができる。例えば、発光層140の発光効率を考慮するとき、ターンオン電圧と発光層の電界を減らして電界によって誘導される消光(field-induced quenching)を最小化するための方案として発光層140の厚さを約60nm以下で形成し得る。
【0117】
このように、一実施形態による電界発光素子10は、発光層140に含まれた第1正孔輸送材料を介して発光層140の輸送能力を向上させ、素子内正孔輸送/注入能力を向上させることができる。その結果、素子内正孔/電子キャリアのバランスを合わせることが容易である。
【0118】
電子輸送層150は、発光層140と第2電極160との間に配置されて発光層140に電子を輸送する役割を果たす。
【0119】
一実施形態で、電子輸送層150の厚さは、素子内の正孔注入層120、正孔輸送層130、および/または発光層140との電荷キャリアのバランスを考慮して多様に変更することができるが、例えば20nm以上、例えば30nm以上、例えば40nm以上、例えば50nm以上であり得、例えば100nm以下、例えば90nm以下、例えば80nm以下、例えば70nm以下、例えば60nm以下であり得、例えば20nm~100nm、例えば20nm~90nm、例えば30nm~80nm、例えば40nm~80nm、例えば60nm~80nmであり得る。
【0120】
電子輸送層150の厚さが上述した範囲を超える場合、電子輸送層150に存在するボイド(void)、クラック(crack)等が電子輸送性に及ぼす影響が増大して素子特性が大きく低下する虞があり、電界発光素子の他の構成要素とのキャリアのバランスを合わせることが難しくなる虞がある。
【0121】
一実施形態で、電子輸送層150は、内部で電子の消光が発生しないように、電界によって発光しない非発光性電子輸送用物質からなる。
【0122】
一方、電子輸送層150は、無機物ナノ粒子を含むか、または蒸着によって形成される有機層であり得る。例えば、電子輸送層150は、無機物ナノ粒子、キノロン系化合物、トリアジン系化合物、キノリン系化合物、トリアゾール系化合物、ナフタレン系化合物、またはこれらの組み合わせを含み得る。
【0123】
一実施形態で、電子輸送層150は、無機物ナノ粒子を含み得る。無機物ナノ粒子は、電子輸送層150に電子輸送性を付与し、発光性を示さない。一実施形態で、電子輸送層150は、2以上の無機物ナノ粒子を含み得る。一実施形態で、電子輸送層150は、2以上の無機物ナノ粒子からなる集合層を含み得る。一実施形態で、電子輸送層150は、2以上の無機物ナノ粒子からなる集合層であり得る。
【0124】
一方、電子輸送層150と第2電極160との間には電子の注入を容易にする電子注入層、および/または正孔の移動を阻止する正孔遮断層がさらに形成されていてもよい。
【0125】
電子注入層および正孔遮断層のそれぞれの厚さは、適切に選択することができる。例えば、各層の厚さは、1nm以上および500nm以下であり得るが、これに限定されない。電子注入層は蒸着によって形成される有機層であり得る。
【0126】
電子注入層は、例えば、1,4,5,8-ナフタレン-テトラカルボン酸二無水物(1,4,5,8-naphthalene-tetracarboxylic dianhydride,NTCDA)、バソクプロイン(bathocuproine,BCP)、トリス[3-(3-ピリジル)-メシチル]ボラン(3TPYMB)、LiF、Alq、Gaq、Inq、Znq、Zn(BTZ)、BeBq、ET204(8-(4-(4,6-di(naphthalen-2-yl)-1,3,5-triazin-2-yl)phenyl)quinolone)、8-hydroxyquinolinato lithium(Liq)、n型金属酸化物(例えば、ZnO、HfO等)、Bphen、ABH113、NET218、NET338、NDN77、NDN87、およびこれらの組み合わせから選ばれる少なくとも一つを含み得るが、これに限定されない。
【0127】
正孔遮断層(HBL)は、例えば、1,4,5,8-ナフタレン-テトラカルボン酸二無水物(1,4,5,8-naphthalene-tetracarboxylic dianhydride,NTCDA)、バソクプロイン(BCP)、トリス[3-(3-ピリジル)-メシチル]ボラン(3TPYMB)、LiF、Alq、Gaq、Inq、Znq、Zn(BTZ)、BeBq、およびこれらの組み合わせから選ばれる少なくとも一つを含み得るが、これに限定されない。
【0128】
上述したように、一実施形態による電界発光素子10は、発光層140に量子ドットおよび第1正孔輸送材料を含み、発光層140の正孔移動度を向上させることができる。また、発光層に含まれる第1正孔輸送材料が、主鎖に置換または非置換されたC4~C20のアルキル基が付着されている単分子ないし低分子材料であるため、非極性溶媒に対する溶解性に優れ、量子ドットと第1正孔輸送材料を含む発光層を溶液工程を用いて形成する場合、形成された発光層の表面モルフォロジーに優れる。
【0129】
また、一実施形態によれば、発光層140と正孔輸送層130が上述したように互いに異なる溶媒選択性を有するように調節することができる。これにより、発光層140の形成時、正孔輸送層130表面の損傷がほとんど発生しないため、正孔輸送層130が優れた正孔輸送性を維持することができる。
【0130】
さらに、発光層140に含まれる第1正孔輸送材料は、主鎖に置換または非置換されたC4~C20のアルキル基が付着されているので、疏水性リガンドが付着された量子ドットと共に脂肪族非極性溶媒によく混ざって溶解され得る。これにより、溶液を用いて発光層140を形成する場合、形成された発光層140の表面モルフォロジーに優れることはもちろん、第1正孔輸送材料によって優れた正孔輸送性を有する。その結果、発光層140自体の正孔輸送性が向上することはもちろんであり、発光層140の伝導性も向上するので、発光層140の電界によって誘導される消光を減少させることによって、電界発光素子10の発光効率、輝度、および寿命が大きく増加する。
【0131】
以下では、上述した電界発光素子10を含む表示装置について説明する。
【0132】
本発明の一実施形態による表示装置は、基板と、基板の上に形成された駆動回路と、駆動回路の上に所定間隔でそれぞれ離隔して配置された第1電界発光素子、第2電界発光素子、および第3電界発光素子とを含み得る。
【0133】
第1~第3電界発光素子は、上述した電界発光素子10と同じ構造を有することができ、それぞれの量子ドットが発光する光の波長が相異する。
【0134】
一実施形態で、第1電界発光素子は、赤色光を発光する赤色素子であり、第2電界発光素子は、緑色光を発光する緑色素子であり、第3電界発光素子は、青色光を発光する青色素子であり得る。すなわち、第1~第3電界発光素子は、表示装置内でそれぞれ赤色、緑色、青色を表示する画素(pixel)である。
【0135】
ただし、本発明は必ずしもこれに限定されるものではなく、第1~第3電界発光素子がそれぞれマゼンタ(magenta)、イエロー(yellow)、シアン(cyan)の色を表示することもでき、その他の色を表示することもできる。
【0136】
一方、第1~第3電界発光素子のうちのいずれか一つのみが上述した電界発光素子10であり得る。この場合、少なくとも青色を表示する第3電界発光素子は上述した電界発光素子10であることが好ましい。
【0137】
一方、一実施形態による表示装置において、各画素の発光層を除いた正孔注入層、正孔輸送層、電子輸送層、電子注入層、正孔遮断層などは一体として共通層をなしている。ただし、本発明は必ずしもこれに限定されるものではなく、表示装置内の各画素別に独立した正孔注入層、正孔輸送層、電子輸送層、電子注入層、正孔遮断層を備えることもでき、正孔注入層、正孔輸送層、電子輸送層、電子注入層、正孔遮断層のうちのいずれか一つ以上は共通層を、残りは別の独立した層をなすこともできる。
【0138】
基板は、透明な絶縁基板であり、軟性物質からなる。基板は、ガラス、またはガラス転移点(Tg)が150℃よりも大きいフィルム形態の高分子物質からなり、例えば、COC(Cyclo Olefin Copolymer)またはCOP(Cyclo Olefin Polymer)系の素材からなる。基板の上には上述した第1~第3電界発光素子がすべて形成されている。すなわち、一実施形態による表示装置の基板は共通層をなしている。
【0139】
駆動回路は、基板の上に位置し、第1~第3電界発光素子のそれぞれに独立して連結される。駆動回路は、1種以上のスキャン線、データ線、駆動電源線、共通電源線などを含む配線と、一つの有機発光素子に対応して配線に連結された二つ以上の薄膜トランジスタ(thin film transistor,TFT)と、一つ以上のキャパシタ(capacitor)等とを含み得る。駆動回路は公知の多様な構造を有することができる。
【0140】
以上で説明したように、一実施形態による表示装置は、向上した素子効率を示すので、優れた発光特性を示すことができる。
【0141】
以下では本発明の具体的な実施例を提示する。ただし、下記に記載された実施例は、本発明を具体的に例示するか、または説明するためのものに過ぎなく、これにより本発明は限定されない。
【0142】
<製造例1>
表面に疏水性リガンドとしてオレイン酸(oleic acid)が付着されている赤色量子ドット(InP、平均粒径:9nm)5×10-5mmolと、化学式(D)で表される化合物(DOFL-TPD)2.66mmolとをオクタン(octane)10mLに入れて5分間攪拌して発光層形成用組成物を製造する。
量子ドットと化学式(D)で表される化合物の総重量を基準に、化学式(D)で表される化合物は5重量%含まれている。
<製造例2>
量子ドットと化学式(D)で表される化合物の総重量を基準に、化学式(D)で表される化合物が10重量%含まれるように、化学式(D)で表される化合物の投入量を調節することを除いては製造例1と同様の方法により発光層形成用組成物を製造する。
<製造例3>
量子ドットと化学式(D)で表される化合物の総重量を基準に、化学式(D)で表される化合物が15重量%含まれるように、化学式(D)で表される化合物の投入量を調節することを除いては製造例1と同様の方法により発光層形成用組成物を製造する。
<製造例4>
量子ドットと化学式(D)で表される化合物の総重量を基準に、化学式(D)で表される化合物が20重量%含まれるように、化学式(D)で表される化合物の投入量を調節することを除いては製造例1と同様の方法により発光層形成用組成物を製造する。
【0143】
<製造例5>
表面に疏水性リガンドとしてオレイン酸が付着されている青色量子ドット(ZnSeTe、平均粒径:13nm)3.33×10-5mmolと、化学式(D)で表される化合物(DOFL-TPD)2.66mmolとをオクタン(octane)10mLに入れて5分間攪拌して発光層形成用組成物を製造する。
量子ドットと化学式(D)で表される化合物の総重量を基準に、化学式(D)で表される化合物は15重量%含まれている。
【0144】
<製造例6>
化学式(D)で表される化合物(DOFL-TPD)の代わりに化学式(B)で表される化合物(DOFL-NPB)を3.64mmolを用いて、量子ドットと化学式(B)で表される化合物の総重量を基準に、化学式(B)で表される化合物が5重量%含まれるように調節することを除いては、製造例1と同様の方法により発光層形成用組成物を製造する。
<製造例7>
量子ドットと化学式(B)で表される化合物の総重量を基準に、化学式(B)で表される化合物が10重量%含まれるように、化学式(B)で表される化合物の投入量を調節することを除いては製造例6と同様の方法により発光層形成用組成物を製造する。
<製造例8>
量子ドットと化学式(B)で表される化合物の総重量を基準に、化学式(B)で表される化合物が15重量%含まれるように、化学式(B)で表される化合物の投入量を調節することを除いては製造例6と同様の方法により発光層形成用組成物を製造する。
<製造例9>
量子ドットと化学式(B)で表される化合物の総重量を基準に、化学式(B)で表される化合物が20重量%含まれるように、化学式(B)で表される化合物の投入量を調節することを除いては製造例6と同様の方法により発光層形成用組成物を製造する。
【0145】
<製造例10>
量子ドットと化学式(D)で表される化合物の総重量を基準に、化学式(D)で表される化合物が30重量%含まれるように、化学式(D)で表される化合物の投入量を調節することを除いては製造例1と同様の方法により発光層形成用組成物を製造する。
【0146】
<製造例11>
量子ドットと化学式(B)で表される化合物の総重量を基準に、化学式(B)で表される化合物が40重量%含まれるように、化学式(B)で表される化合物の投入量を調節することを除いては製造例6と同様の方法により発光層形成用組成物を製造する。
【0147】
<比較製造例1>
表面に疏水性リガンドとしてオレイン酸が付着されている赤色量子ドット(InP、平均粒径:9nm)5×10-5mmolをオクタン(Octane)10mLに入れて5分間攪拌して、発光層形成用組成物を製造する。
<比較製造例2>
表面に疏水性リガンドとしてオレイン酸が付着されている青色量子ドット(ZnSeTe、平均粒径:13nm)3.33×10-5mmolをオクタン(Octane)10mLに入れて5分間攪拌して発光層形成用組成物を製造する。
<比較製造例3>
量子ドットと化学式(B)で表される化合物の総重量を基準に、化学式(B)で表される化合物が50重量%含まれるように、化学式(B)で表される化合物の投入量を調節することを除いては製造例6と同様の方法により発光層形成用組成物を製造する。
<比較製造例4>
量子ドットと化学式(D)で表される化合物の総重量を基準に、化学式(D)で表される化合物が50重量%含まれるように、化学式(D)で表される化合物の投入量を調節することを除いては製造例1と同様の方法により発光層形成用組成物を製造する。
【0148】
<評価1:発光層の表面モルフォロジー>
製造例3、5および比較製造例1、2による発光層形成用組成物をガラス基板の上にスピンコートして、80℃で30分熱処理して平均厚さ約25nmの発光層薄膜を形成する。
【0149】
その後、形成された発光層薄膜に対して原子間力顕微鏡(Atomic-force microscopy,AFM)を用いて各発光層薄膜の表面モルフォロジーを測定した結果を、図2図5に示す。
【0150】
図2図5は、発光層薄膜の表面モルフォロジーを測定した原子間力顕微鏡(Atomic-force microscopy,AFM)イメージであり、それぞれ比較製造例1(図2)、製造例3(図3)、比較製造例2(図4)、製造例5(図5)の場合を示す。
【0151】
図2図5で各イメージの横辺の長さは、それぞれ5μmに該当する縮尺を有し、各イメージで色相が明るいほど比較的上部に位置し、暗いほど比較的下部に位置する。
【0152】
図2図5を参照すると、同種の量子ドットを基準に、発光層薄膜に正孔輸送材料がブレンドされている製造例3と5の場合の方が、正孔輸送材料が含有されない比較製造例1、2の場合に比べて低い二乗平均粗さ(RMS)を示すことが確認される。
【0153】
図2図5の結果から、量子ドットと一実施形態による正孔輸送材料をブレンドして発光層を製造する場合、量子ドットのみが含有された発光層に比べて優れた表面モルフォロジーを示すことが確認される。
【0154】
<評価2:HOD素子の正孔輸送性の評価>
製造例2~3、6~8、および比較製造例1による発光層形成用組成物を用いてHOD(Hole Only Device)素子を製作する。HODは、パターニングされたITO電極上に、PEDOTが水に溶解された正孔注入層形成溶液とTFBがトルエンに溶解された正孔輸送層形成溶液とをそれぞれスピンコートして正孔注入層と正孔輸送層とを順次に形成した後、上述した発光層形成用組成物を塗布および乾燥して発光層を形成し、形成された発光層上に発光層を通過した正孔を遮断(block)できる素材を蒸着し、最終的にAl電極を蒸着して形成する。製作されたHODは素子内で正孔輸送性のみを効果的に感知することができる。
【0155】
以後、HOD素子に5Vと8Vの電圧を印加した後、各発光層で測定された電流密度を下記の表1に示す。
【0156】
【表1】
【0157】
表1を参照すると、各製造例による発光層形成用組成物を用いて製造されたHOD素子は、比較製造例1による発光層形成用組成物を用いて製造されたHOD素子に比べて優れた電流密度を示すことが確認される。
【0158】
一方、同種の正孔輸送材料を基準に見るとき(製造例2と製造例3の比較、および製造例6~8の比較)、正孔輸送材料の含有量が増加することによって電流密度も増加することが確認される。
【0159】
また、用いられた正孔輸送材料が相異する場合(製造例2~3を製造例6~8と比較する場合)、電流密度が相異することが確認される。
【0160】
表1の結果から、製造例による発光層形成用組成物を用いて製造されたHOD素子は、量子ドットと正孔輸送材料をブレンドした発光層を介して正孔輸送性を大きく改善できることが確認される。
【0161】
<評価3:第1正孔輸送材料の含有量による発光層の表面特性>
製造例10~11および比較製造例3~4による発光層形成用組成物をガラス基板の上に塗布および乾燥して発光層薄膜を形成した後、走査電子顕微鏡(Scanning Electron Microscope)を用いてそれぞれの表面を測定した結果を、図6図9に示す。
【0162】
図6図9は、発光層薄膜の走査電子顕微鏡(Scanning Electron Microscope)イメージであり、それぞれ比較製造例3(図6)、比較製造例4(図7)、製造例10(図8)、製造例11(図9)の場合を示す。
【0163】
図6図9を参照すると、製造例10~11による発光層の場合、比較的均一な表面分布を示すことが確認されるが、第1正孔輸送材料を過量含有する場合、比較製造例3~4に示すように表面に相分離(phase separation)現象が発生することが確認される。
【0164】
したがって、評価3の結果から、実施例による電界発光素子は、発光層内の第1正孔輸送材料を上述した含有量の範囲で含有することによって発光層表面の相分離現象を防止し、優れた表面粗さを確保できることが確認される。
【0165】
<実施例1>
第1電極(アノード)のITOが蒸着されたガラス基板に、UV-オゾンで表面処理を15分間行った後、PEDOT:PSS溶液(H.C.Starks)をスピンコートしてAir雰囲気で150℃で10分間熱処理し、再びN雰囲気で150℃で10分間熱処理して平均厚さ30nmの正孔注入層を形成する。
【0166】
次に、正孔注入層上にポリ[(9,9-ジオクチルフルオレニル-2,7-ジイル-コ(4,4’-(N-4-ブチルフェニル)ジフェニルアミン](TFB)(Sumitomo)がトルエンに溶解された正孔輸送層形成溶液をスピンコートして、150℃で30分間熱処理して平均厚さ25nmの正孔輸送層を形成する。
【0167】
次に、正孔輸送層上に製造例1による発光層形成用組成物をスピンコート後、80℃で加熱して平均厚さ25nmの赤色光発光層を形成する。
【0168】
次に、赤色光発光層上にZnOがエタノールに分散されている電子輸送層形成用溶液をスピンコートして、80℃で30分間熱処理して平均厚さ80nmの電子輸送層を形成する。
【0169】
そして、電子輸送層上にアルミニウム(Al)90nmを真空蒸着して第2電極を形成することによって実施例1による電界発光素子を製造する。
【0170】
<実施例2>
製造例1による発光層形成用組成物の代わりに製造例2による発光層形成用組成物を用いることを除いては実施例1と同様の方法により実施例2による電界発光素子を製造する。
<実施例3>
製造例1による発光層形成用組成物の代わりに製造例3による発光層形成用組成物を用いることを除いては実施例1と同様の方法により実施例3による電界発光素子を製造する。
<実施例4>
製造例1による発光層形成用組成物の代わりに製造例4による発光層形成用組成物を用いることを除いては実施例1と同様の方法により実施例4による電界発光素子を製造する。
<実施例5>
製造例1による発光層形成用組成物の代わりに製造例2による発光層形成用組成物を用いて、電子輸送層を60nmの平均厚さで形成することを除いては実施例1と同様の方法により実施例5による電界発光素子を製造する。
<実施例6>
製造例1による発光層形成用組成物の代わりに製造例3による発光層形成用組成物を用いて、電子輸送層を60nmの平均厚さで形成することを除いては実施例1と同様の方法により実施例6による電界発光素子を製造する。
<実施例7>
製造例1による発光層形成用組成物の代わりに製造例3による発光層形成用組成物を用いて、発光層を30nmの平均厚さで形成し、電子輸送層を60nmの平均厚さで形成することを除いては実施例1と同様の方法により実施例7による電界発光素子を製造する。
<実施例8>
製造例1による発光層形成用組成物の代わりに製造例3による発光層形成用組成物を用いて、発光層を30nmの平均厚さで形成することを除いては実施例1と同様の方法により実施例8による電界発光素子を製造する。
<実施例9>
製造例1による発光層形成用組成物の代わりに製造例6による発光層形成用組成物を用いることを除いては実施例1と同様の方法により実施例9による電界発光素子を製造する。
<実施例10>
製造例1による発光層形成用組成物の代わりに製造例7による発光層形成用組成物を用いることを除いては実施例1と同様の方法により実施例10による電界発光素子を製造する。
<実施例11>
製造例1による発光層形成用組成物の代わりに製造例8による発光層形成用組成物を用いることを除いては実施例1と同様の方法により実施例11による電界発光素子を製造する。
<実施例12>
製造例1による発光層形成用組成物の代わりに製造例9による発光層形成用組成物を用いることを除いては実施例1と同様の方法により実施例12による電界発光素子を製造する。
<実施例13>
製造例1による発光層形成用組成物の代わりに製造例7による発光層形成用組成物を用いて、電子輸送層を60nmの平均厚さで形成することを除いては実施例1と同様の方法により実施例13による電界発光素子を製造する。
<実施例14>
製造例1による発光層形成用組成物の代わりに製造例8による発光層形成用組成物を用いて、電子輸送層を60nmの平均厚さで形成することを除いては実施例1と同様の方法により実施例14による電界発光素子を製造する。
【0171】
<比較例1>
製造例1による発光層形成用組成物の代わりに比較製造例1による発光層形成用組成物を用いることを除いては実施例1と同様の方法により比較例1による電界発光素子を製造する。
<比較例2>
製造例1による発光層形成用組成物の代わりに比較製造例1による発光層形成用組成物を用いて、電子輸送層を60nmの平均厚さで形成することを除いては実施例1と同様の方法により比較例2による電界発光素子を製造する。
【0172】
<評価4:発光層内の正孔輸送材料の含有量による電圧-電流密度の関係>
実施例1~4と比較例1による電界発光素子に対する電圧-電流密度の関係と、実施例9~12と比較例2による電界発光素子に対する電圧-電流密度の関係とを測定し、その結果を図10図11にそれぞれ示す。
【0173】
図10は、実施例1~4と比較例1による電界発光素子の電圧-電流密度(log scale)の特性を示すグラフであり、図11は、実施例9~12と比較例2による電界発光素子の電圧-電流密度(log scale)の特性を示すグラフである。
【0174】
図10および図11を参照すると、同一発光層および同一電子輸送層の厚さ条件下で発光層に含有された正孔輸送材料の含有量が増加することによって素子のターンオン電圧が徐々に低くなることが確認される。
【0175】
図10および図11の結果から、実施例による電界発光素子は比較例に比べて向上した正孔輸送性を有し、発光層内の正孔輸送材料の含有量の増加によって徐々に向上する様相を示すことがわかる。
【0176】
<評価5:電子輸送層の平均厚さと素子特性の関係>
実施例2、6、11、13および比較例1、2による電界発光素子に対する諸般の素子特性を測定した結果を、表2に整理して示す。
【0177】
【表2】
【0178】
まず、電子輸送層の平均厚さが同一の場合を基準に実施例と比較例を比較する場合(実施例2、11と比較例1の比較、および実施例6、13と比較例2の比較)、発光層に含まれる正孔輸送材料の種類によって具体的な素子特性は多少差があるが、少なくとも比較例に比べて実施例の最大輝度(Max Luminance)が顕著に優れていることが確認される。
【0179】
一方、同種の正孔輸送材料を基準に(実施例2と6の比較、および実施例11と13の比較)見ると、電子輸送層の平均厚さが変わることによって外部量子効率(External Quantum efficiency)や最大輝度(Max Luminance)等の素子特性が変わることが確認される。
【0180】
一方、実施例2、5、11、14および比較例1、2による電界発光素子の寿命特性をそれぞれ評価し、その結果を表3と図8に示す。
【0181】
図12は、実施例2、5、11、および14と比較例1、2による電界発光素子の寿命特性を示すグラフである。
【0182】
【表3】
【0183】
T95は、輝度が初期輝度(100%)の95%になるまでにかかる時間(h)を示し、T50は、輝度が初期輝度(100%)の50%になるまでにかかる時間(h)を示す。
【0184】
図12と表3を参照すると、まず同一電子輸送層の厚さを基準に(実施例2、11と比較例1の比較、および実施例5、14と比較例2の比較)見ると、実施例による電界発光素子は比較例に比べてT50およびT95がいずれも優れることが確認される。一方、同種の正孔輸送材料を基準に(実施例2と5の比較、および実施例11と14の比較)見ると、電子輸送層の平均厚さが変わることによって寿命特性も多少変わること(特に実施例11と14を参照する場合)が確認される。
【0185】
したがって、評価5の結果から、発光層に含まれた正孔輸送材料の種類によって最適な電子輸送層の平均厚さが互いに異なり得ることが確認される。
【0186】
<評価6:電子輸送層および発光層の平均厚さと素子特性の関係>
実施例3、6、7、8および比較例1、2による電界発光素子に対する諸般の素子特性を測定した後、その結果を表4に整理して示す。
【0187】
【表4】
【0188】
表4を参照すると、同一電子輸送層の平均厚さを基準に(実施例3、8と比較例1の比較、および実施例6、7と比較例2の比較)見ると、発光層の平均厚さに応じて最大輝度が互いに相反した様相を示すことが確認される。すなわち、実施例3と実施例8の場合、発光層の平均厚さが増加することによって最大輝度が増加するが、実施例6と実施例7の場合、かえって最大輝度が減少することが確認される。一方、実施例3、6、7、8および比較例1、2に対する電界発光素子の寿命特性をそれぞれ評価し、結果を表5と図13に示す。
【0189】
図13は、実施例3、6、7、および8と比較例1、2による電界発光素子の寿命特性を示すグラフである。
【0190】
【表5】
【0191】
図13と表5を参照すると、まず同一電子輸送層の厚さを基準に(実施例3、8と比較例1の比較、および実施例6、7と比較例2の比較)見ると、実施例による電界発光素子は、比較例に比べてT50およびT95がいずれも優れることが確認される.一方、同種の正孔輸送材料および同一電子輸送層の平均厚さを基準に(実施例6と7の比較、および実施例3と8の比較)見ると、特に実施例7、8のT95を参照する場合、発光層の厚さが変わることによって寿命特性も変わることが確認される。ただし、実施例3、6、7、8の寿命特性は、T50がいずれも1000時間超過で優れていることが確認される。
【0192】
したがって、評価6の結果から、発光層の平均厚さも素子特性に影響を及ぼし、電子輸送層の平均厚さおよび発光層の平均厚さを適切に調節して素子特性を個別に調節できることが確認される。
【0193】
以上、本発明の実施形態について詳細に説明したが、本発明の技術範囲はこれに限定されるものではなく、特許請求の範囲で定義している基本概念を用いた当業者の多様な変形および改良形態も本発明の権利範囲に属する。
【符号の説明】
【0194】
10 電界発光素子
100 基板
110 第1電極
120 正孔注入層
130 正孔輸送層
140 発光層
141 量子ドット
150 電子輸送層
160 第2電極
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13