(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-07
(45)【発行日】2023-12-15
(54)【発明の名称】ロボットの歩行制御システム及び制御方法
(51)【国際特許分類】
B25J 13/00 20060101AFI20231208BHJP
B25J 5/00 20060101ALI20231208BHJP
B25J 11/00 20060101ALI20231208BHJP
A61H 1/02 20060101ALI20231208BHJP
A61H 3/00 20060101ALI20231208BHJP
A61F 2/70 20060101ALI20231208BHJP
A61F 2/60 20060101ALI20231208BHJP
【FI】
B25J13/00 Z
B25J5/00 F
B25J11/00 Z
A61H1/02 R
A61H3/00 A
A61F2/70
A61F2/60
(21)【出願番号】P 2019166402
(22)【出願日】2019-09-12
【審査請求日】2022-03-28
(31)【優先権主張番号】10-2019-0017531
(32)【優先日】2019-02-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】591251636
【氏名又は名称】現代自動車株式会社
【氏名又は名称原語表記】HYUNDAI MOTOR COMPANY
【住所又は居所原語表記】12, Heolleung-ro, Seocho-gu, Seoul, Republic of Korea
(73)【特許権者】
【識別番号】500518050
【氏名又は名称】起亞株式会社
【氏名又は名称原語表記】KIA CORPORATION
【住所又は居所原語表記】12, Heolleung-ro, Seocho-gu, Seoul, Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100127465
【氏名又は名称】堀田 幸裕
(74)【代理人】
【識別番号】100107582
【氏名又は名称】関根 毅
(74)【代理人】
【識別番号】100158964
【氏名又は名称】岡村 和郎
(72)【発明者】
【氏名】ヒョン、ドンジン
【審査官】仁木 学
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-070786(JP,A)
【文献】特開2014-057626(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25J 1/00 ー 21/02
A61H 1/02
A61H 3/00
A61F 2/70
A61F 2/60
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
両側下肢骨格に対応する複数のリンクから構成されたリンク装置と、
リンク装置にトルクを提供して複数のリンクを回転させる駆動装置と、
両側下肢骨格が交互に移動するように
、両側下肢骨格の底端部で測定された荷重に基づいて駆動装置を制御することによりロボットの歩行を具現するとともに、歩行中に両側下肢骨格の底端部が同時に接地したダブルスタンス状態で両側下肢骨格の底端部を歩行方向の反対方向に所定の安定距離だけ仮想で移動させるように駆動装置のトルクを制御することによりダブルスタンス状態で推進力を生成する歩行制御器と、を含む、ロボットの歩行制御システム。
【請求項2】
歩行制御器が両側下肢骨格の底端部を歩行方向の反対方向に所定の安定距離だけ仮想で移動させるように駆動装置のトルクを制御することにより、リンク装置は両側下肢骨格の底端部が同時に地面に固定された状態でそれぞれのリンクが回転して歩行方向に推進されることを特徴とする、請求項1に記載のロボットの歩行制御システム。
【請求項3】
リンク装置は、両側こむら、両側内もも及び両側骨盤にそれぞれ対応する複数のリンクを含み、
駆動装置は、こむらと内ももにそれぞれ対応するリンク間の膝関節及び内ももと骨盤にそれぞれ対応するリンク間の股関節でそれぞれのリンクが回転するようにトルクを提供することを特徴とする、請求項1に記載のロボットの歩行制御システム。
【請求項4】
リンク装置は、両側こむら、両側内もも及び両側骨盤にそれぞれ対応する複数のリンクを含み、
リンク装置の左側骨盤及び右側骨盤にそれぞれ対応するリンクがそれぞれ結合された胴体装置をさらに含み、胴体装置に結合された両側下肢骨格はそれぞれが3つの自由度を有することを特徴とする、請求項1に記載のロボットの歩行制御システム。
【請求項5】
駆動装置は、こむらと内ももにそれぞれ対応するリンク間の膝関節、内ももと骨盤にそれぞれ対応するリンク間の股関節及び骨盤に対応するリンクと胴体装置間の腰関節でそれぞれのリンクが回転するようにトルクを提供することを特徴とする、請求項4に記載のロボットの歩行制御システム。
【請求項6】
歩行制御器で、両側下肢骨格の底端部での安定距離の和が歩幅の0.1以上0.4以下の比率となるように安定距離が設定されることを特徴とする、請求項1に記載のロボットの歩行制御システム。
【請求項7】
両側下肢骨格に対応する複数のリンクから構成されたリンク装置を含むロボットの歩行命令を受ける段階と、
歩行命令を受けた場合、
両側下肢骨格のうち底端部で測定された荷重が相対的に小さい一側下肢骨格が移動するようにリンク装置にトルクを提供してロボットの歩行を具現する段階と、
移動する下肢骨格が変更されるうちに両側下肢骨格の底端部が同時に接地したダブルスタンス状態で両側下肢骨格の底端部を歩行方向の反対方向に所定の安定距離だけ仮想で移動させるように駆動装置のトルクを制御することによりダブルスタンス状態で推進力を生成する段階と、を含む、ロボットの歩行制御方法。
【請求項8】
ロボットの歩行を具現する段階では、両側下肢骨格の底端部で測定された荷重に基づいて移動させるように制御する一側下肢骨格を選択することを特徴とする、請求項7に記載のロボットの歩行制御方法。
【請求項9】
ダブルスタンス状態で推進力を生成する段階では、リンク装置にトルクが提供されれば、両側下肢骨格の底端部が同時に地面に固定された状態で両側下肢骨格に含まれたそれぞれのリンクが回転して歩行方向に推進されることを特徴とする、請求項7に記載のロボットの歩行制御方法。
【請求項10】
ダブルスタンス状態で推進力を生成する段階では、両側下肢骨格の底端部での安定距離の和が歩幅の0.1以上0.4以下の比率となるように安定距離が設定されることを特徴とする、請求項7に記載のロボットの歩行制御方法。
【請求項11】
ダブルスタンス状態で推進力を生成する段階では、両側下肢骨格の底端部を制御する複数のコントロールポイントの位置がベジェ曲線で連結されるように両側下肢骨格の底端部を所定の安定距離だけ移動させることを特徴とする、請求項7に記載のロボットの歩行制御方法。
【請求項12】
リンク装置は、両側こむら、両側内もも及び両側骨盤にそれぞれ対応する複数のリンクを含み、
ダブルスタンス状態で推進力を生成する段階では、こむらと内ももにそれぞれ対応するリンク間の膝関節及び内ももと骨盤にそれぞれ対応するリンク間の股関節でそれぞれのリンクが回転するようにトルクを制御することを特徴とする、請求項7に記載のロボットの歩行制御方法。
【請求項13】
ダブルスタンス状態で推進力を生成する段階の後、他側下肢骨格が移動するようにリンク装置にトルクを提供して両側下肢骨格を交互に移動させることによりロボットの歩行を具現する段階をさらに含むことを特徴とする、請求項7に記載のロボットの歩行制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロボットの歩行制御システム及び制御方法に係り、特に、2足歩行ロボット又は下肢着用ロボットの歩行制御技術に関する。
【背景技術】
【0002】
ロボットは、人間と類似した動作を行う機械装置を意味する。初期には、人間の作業の代わりをする生産型ロボットなどの産業用ロボットが開発された。最近は、人間と同一の形状の2足歩行ロボットに対する研究が多くなり、人間が着用することができる着用式ロボットが開発されている。
【0003】
特に、2足歩行を行うロボットは3足又はそれ以上のロボットに比べて不安定であって相対的に歩行制御が複雑で難しい欠点はあるが、階段などの障害物を会ったとき、柔軟に対応して障害物を踏んで歩行することができる利点を有する。
【0004】
2足歩行ロボット又は下肢着用ロボットの歩行制御では、前方足(Leading Leg)と後方足(Trailing Leg)が互いに交差するように制御する。ただ、従来の歩行制御では2足が同時に地面に接触した状態(Double Stance)での制御戦略がなくて歩行時に推進力が足りない問題があった。
前述の背景技術として説明された事項は、本発明の背景に対する理解増進のためのものに過ぎず、当該技術分野における通常の知識を有する者に既に知られている従来技術に該当することを認めるものと受け入れられてはならない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、かかる問題点を解決するために提案されたもので、その目的は、歩行制御中に両側下肢骨格の端部が同時に接地した状態(Double Stance)で複数のリンクを制御する技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するための本発明によるロボットの歩行制御システムは、両側下肢骨格に対応する複数のリンクから構成されたリンク装置と、リンク装置にトルクを提供して複数のリンクを回転させる駆動装置と、両側下肢骨格が交互に移動するように駆動装置を制御することによりロボットの歩行を具現するとともに、歩行中に両側下肢骨格の底端部が同時に接地したダブルスタンス状態で両側下肢骨格の底端部を歩行方向の反対方向に所定の安定距離だけ仮想で移動させるように駆動装置のトルクを制御することによりダブルスタンス状態で推進力を生成する歩行制御器と、を含む。
【0008】
歩行制御器が両側下肢骨格の底端部を歩行方向の反対方向に所定の安定距離だけ仮想で移動させるように駆動装置のトルクを制御することにより、リンク装置は両側下肢骨格の底端部が同時に地面に固定された状態でそれぞれのリンクが回転して歩行方向に推進されることができる。
【0009】
リンク装置は、両側こむら、両側内もも及び両側骨盤にそれぞれ対応する複数のリンクを含むことができ、駆動装置は、こむらと内ももにそれぞれ対応するリンク間の膝関節及び内ももと骨盤にそれぞれ対応するリンク間の股関節でそれぞれのリンクが回転するようにトルクを提供することができる。
【0010】
リンク装置は、両側こむら、両側内もも及び両側骨盤にそれぞれ対応する複数のリンクを含むことができ、リンク装置の左側骨盤及び右側骨盤にそれぞれ対応するリンクがそれぞれ結合された胴体装置をさらに含むことができ、胴体装置に結合された両側下肢骨格はそれぞれが3つの自由度を有することができる。
【0011】
駆動装置は、こむらと内ももにそれぞれ対応するリンク間の膝関節、内ももと骨盤にそれぞれ対応するリンク間の股関節及び骨盤に対応するリンクと胴体装置間の腰関節でそれぞれのリンクが回転するようにトルクを提供することができる。
【0012】
歩行制御器で、両側下肢骨格の底端部での安定距離の和が歩幅の0.1以上0.4以下の比率となるように安定距離が設定されることができる。
【0013】
上記目的を達成するための本発明のロボットの歩行制御方法は、両側下肢骨格に対応する複数のリンクから構成されたリンク装置を含むロボットの歩行命令を受ける段階と、歩行命令を受けた場合、一側下肢骨格が移動するようにリンク装置にトルクを提供してロボットの歩行を具現する段階と、移動する下肢骨格が変更されるうちに両側下肢骨格の底端部が同時に接地したダブルスタンス状態で両側下肢骨格の底端部を歩行方向の反対方向に所定の安定距離だけ仮想で移動させるように駆動装置のトルクを制御することによりダブルスタンス状態で推進力を生成する段階とを含む。
【0014】
ロボットの歩行を具現する段階では、両側下肢骨格の底端部で測定された荷重に基づいて移動させるように制御する一側下肢骨格を選択することができる。
【0015】
ダブルスタンス状態で推進力を生成する段階では、リンク装置にトルクが提供されれば、両側下肢骨格の底端部が同時に地面に固定された状態で両側下肢骨格に含まれたそれぞれのリンクが回転して歩行方向に推進されることができる。
【0016】
ダブルスタンス状態で推進力を生成する段階では、両側下肢骨格の底端部での安定距離の和が歩幅の0.1以上0.4以下の比率となるように安定距離が設定されることができる。
【0017】
ダブルスタンス状態で推進力を生成する段階では、両側下肢骨格の底端部を制御する複数のコントロールポイントの位置がベジェ曲線で連結されるように両側下肢骨格の底端部を所定の安定距離だけ移動させることができる。
【0018】
リンク装置は、両側こむら、両側内もも及び両側骨盤にそれぞれ対応する複数のリンクを含むことができ、ダブルスタンス状態で推進力を生成する段階では、こむらと内ももにそれぞれ対応するリンク間の膝関節及び内ももと骨盤にそれぞれ対応するリンク間の股関節でそれぞれのリンクが回転するようにトルクを制御することができる。
【0019】
ダブルスタンス状態で推進力を生成する段階の後、他側下肢骨格が移動するようにリンク装置にトルクを提供して両側下肢骨格を交互に移動させることによりロボットの歩行を具現する段階をさらに含むことができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明のロボットの歩行制御システム及び制御方法によれば、2足が同時に地面に接触した状態で推進力を発生させることにより歩行の効率性及び安全性を向上させる効果を有する。
【0021】
また、安全性の向上によって均衡を保つためのロボットの上半身又は着用者の上半身の移動が最小化する効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本発明の一実施例によるロボットの歩行制御システムを示す図である。
【
図2】本発明の一実施例による有限状態機械の制御ロジッグを示す図である。
【
図3】本発明の一実施例によるロボットの歩行制御を示すフローチャートである。
【
図4】本発明の一実施例による地面座標系でのロボットの移動を示す図である。
【
図5】本発明の一実施例によるロボット座標系でのロボットの歩行制御を示す図である。
【
図6】本発明の一実施例によるダブルスタンスの比率による上体角度変化を示す図である。
【
図7】本発明の一実施例によるダブルスタンス制御による上体角度変化を示す図である。
【
図8】本発明の一実施例によるロボットの歩行制御軌跡を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本明細書又は出願に開示されている本発明の実施例についての特定の構造的又は機能的説明は単に本発明による実施例を説明するための目的で例示したもので、本発明による実施例は多様な形態に実施されることができ、本明細書又は出願で説明した実施例に限定されるものと解釈されてはならない。
【0024】
本発明による実施例は多様な変更を加えることができ、さまざまな形態を有することができるので、特定の実施例を図面に例示し、本明細書又は出願に詳細に説明しようとする。しかし、これは本発明の概念による実施例を特定の開示形態に限定しようとするものではなく、本発明の思想及び技術範囲に含まれる全ての変更、均等物又は代替物を含むものと理解されなければならない。
【0025】
第1及び/又は第2などの用語は多様な構成要素を説明するのに使われることができるが、前記構成要素は前記用語によって限定されてはいけない。前記用語は一構成要素を他の構成要素と区別する目的のみで、例えば本発明の概念による権利範囲から逸脱することなく第1構成要素は第2構成要素と名付けることができ、同様に第2構成要素は第1構成要素とも名付けることができる。
【0026】
ある構成要素が他の構成要素に「連結されている」か「接続されている」と言及されたときには、その他の構成要素に直接的に連結されるかあるいは接続されることもできるが、中間に他の構成要素が存在することもできると理解されなければならないであろう。一方、ある構成要素が他の構成要素に「直接連結されている」か「直接接続されている」と言及されたときには、中間に他の構成要素が存在しないと理解されなければならないであろう。構成要素間の関係を説明する他の表現、すなわち「~の間に」と「すぐ~の間に」又は「~に隣り合う」と「~に直接隣り合う」なども同様に解釈されなければならない。
【0027】
本明細書で使用した用語は単に特定の実施例を説明するために使用したもので、本発明を限定しようとする意図ではない。単数の表現は、文脈上明白に他に指示しない限り、複数の表現を含む。本明細書で、「含む」又は「有する「などの用語は開示した特徴、数字、段階、動作、構成要素、部品又はこれらの組合せが存在することを指示しようとするものであり、一つ又はそれ以上の他の特徴、数字、段階、動作、構成要素、部品又はこれらの組合せなどの存在又は付加の可能性を予め排除しないものと理解されなければならない。
【0028】
他に定義しない限り、技術的な又は科学的な用語を含めてここで使う全ての用語は本発明が属する技術分野で通常の知識を有する者によって一般的に理解されるものと同一の意味である。一般的に使われる辞書に定義されているもののような用語は関連技術の文脈上有する意味と一致する意味と解釈されなければならなく、本明細書で明白に定義しない限り、理想的な又は過度に形式的な意味と解釈されない。
【0029】
以下、添付図面に基づいて本発明の好適な実施例を説明する。各図に提示した同じ参照符号は同じ部材を示す。
【0030】
図1は本発明の一実施例によるロボットの歩行制御システムを示す図である。
【0031】
図1を参照すると、本発明のロボットは両側下肢骨格を含む2足歩行ロボットで、別に構成されて2足歩行ができるように制御されるロボット又は下肢着用式ロボットであってもよい。
【0032】
下肢着用式ロボットは下肢の筋力が足りない患者や年寄りが下肢に着用することにより下肢の筋力を補助するロボットで、着用者の両側下肢骨格に対応する複数のリンクから構成されたリンク装置100を含む。
【0033】
下肢着用式ロボットとともに着用者の上体を介して着用者を支持するクラッチ(図示せず)と連動することができ、クラッチ(図示せず)には、下肢着用式ロボットの動作を制御することができるように着用者が操作することができるコントローラー(図示せず)を含むことができる。
【0034】
本発明の一実施例によるロボットの歩行制御システムは、両側下肢骨格に対応する複数のリンクから構成されたリンク装置100、リンク装置100にトルクを提供して複数のリンクを回転させる駆動装置400、及び両側下肢骨格が交互に移動するように駆動装置400を制御することによりロボットの歩行を具現するとともに、歩行中に両側下肢骨格の底端部が同時に接地したダブルスタンス状態で両側下肢骨格の底端部を歩行方向の反対方向に所定の安定距離Ldsだけ仮想で移動させるように駆動装置400のトルクを制御することによりダブルスタンス状態で推進力を生成する歩行制御器300を含む。
【0035】
リンク装置100は左側及び右側の下肢骨格に対応する複数のリンクから構成されることができる。具体的に、
図1に示すように、リンク装置100は、両側こむら、両側内もも及び両側骨盤にそれぞれ対応する複数のリンクを含むことができる。
【0036】
すなわち、リンク装置100は、左側こむらリンク110、右側こむらリンク120、左側こむらリンク110に結合された左側内ももリンク130、右側こむらリンク120に結合された右側内ももリンク140、左側内ももリンク130に結合された左側骨盤リンク150及び右側内ももリンク140に結合された右側骨盤リンク160を含むことができる。
【0037】
駆動装置400はリンク装置100にトルクを提供して複数のリンクを回転させることができる。具体的に、リンク装置100に含まれた複数のリンクが互いに結合された関節で互いに相対回転するようにトルクを提供することができる。
【0038】
一実施例として、駆動装置400はこむら110、120と内もも130、140にそれぞれ対応するリンク間の膝関節及び内もも130、140と骨盤150、160にそれぞれ対応するリンク間の股関節でそれぞれのリンクが回転するようにトルクを提供することができる。駆動装置400は、それぞれの関節で結合されたリンクを回転させるようにそれぞれの関節にトルクを提供するモーターから構成されることができる。
【0039】
すなわち、駆動装置400は、こむらリンクと内ももリンクが互いに結合された膝関節でこむらリンク110、120と内ももリンク130、140が互いに相対回転するようにトルクを提供することができ、内ももリンク130、140と骨盤リンク150、160が互いに結合された股関節で内ももリンク130、140と骨盤リンク150、160が互いに相対回転するようにトルクを提供することができる。特に、膝関節と股関節は着用者の左側から右側に着用者を貫く方向に平行な方向を回転軸としてリンクを相対回転させることができる。
【0040】
追加として、左側こむらリンク110に結合されて地面を支持する左側支持リンク(図示せず)及び右側こむらリンク120に結合されて地面を支持する右側支持リンク(図示せず)をさらに含むことができ、こむらリンク110、120と支持リンク(図示せず)が互いに結合された足首関節(図示せず)はパッシブ(Passive)タイプのもので、別途の動力によるトルクを提供しなくてもよい。
【0041】
また、リンク装置100の左側骨盤150及び右側骨盤160にそれぞれ対応するリンクがそれぞれ結合された胴体装置200をさらに含むことにより、胴体装置200に結合された両側下肢骨格はそれぞれ3つの自由度を有することができる。
【0042】
すなわち、リンク装置100の両側下肢骨格が同時に結合されて着用者の胴体に対応する胴体装置200をさらに含むことができる。胴体装置200は両側下肢骨格の間に位置し、左側骨盤リンク150と右側骨盤リンク160の間でそれぞれ結合されることができる。
【0043】
駆動装置400は、こむら110、120と内もも130、140にそれぞれ対応するリンク間の膝関節(図示せず)、内もも130、140と骨盤150、160にそれぞれ対応するリンク間の股関節、及び骨盤に対応するリンク150、160と胴体装置200間の腰関節でそれぞれのリンクが回転するようにトルクを提供することができる。
【0044】
すなわち、駆動装置400は、左側骨盤リンク150又は右側骨盤リンク160と胴体装置200間の腰関節で左側骨盤リンク150又は右側骨盤リンク160と胴体装置200が互いに相対回転するようにトルクを提供することができる。特に、腰関節では着用者の前後方向に平行な方向の回転軸を中心にリンクを相対回転させることができる。
【0045】
図2は本発明の一実施例による有限状態機械の制御ロジッグを示す図、
図3は本発明の一実施例によるロボットの歩行制御を示すフローチャートである。
【0046】
図2及び
図3をもっと参照すると、本発明の一実施例によるロボットの歩行制御システム又はロボットの歩行制御方法は有限状態機械(Finite-state Machine)の制御ロジッグを含むことができる。
【0047】
特に、着用者の操作によって立ち上がった姿勢から座った姿勢又は座った姿勢から立ち上がった姿勢に制御するか、立ち上がった姿勢での歩行を制御することができる。特に、歩行制御器300は、両側下肢骨格が交互に移動するように駆動装置400を制御することによりロボットの歩行を具現することができる。
【0048】
立ち上がった姿勢で着用者が歩行するようにコントローラーを操作した場合、歩行制御器300は両側下肢骨格のいずれか一つを歩行方向にスイングさせることができる。その後、続いて歩行する場合、歩行制御器300は両側下肢骨格を交互にスイングさせるように駆動装置400を制御することができる。
【0049】
また、歩行制御器300は歩行中に両側下肢骨格の底端部が同時に接地して地面に固定された状態で両側下肢骨格の底端部を歩行方向の反対方向に所定の安定距離Ldsだけ仮想で移動させるように駆動装置400のトルクを制御してダブルスタンス状態で推進力を生成することができる。
【0050】
歩行中に両側下肢骨格の底端部が同時に接地したダブルスタンス状態は左側下肢骨格と右側下肢骨格を交互に移動させる動作間の状態であり、両側下肢骨格のいずれか一つをスイングした後、スイングする下肢骨格を変更するうち状態を意味することができる。
【0051】
すなわち、歩行制御器300は両側下肢骨格を交互にスイングする動作の間に両側下肢骨格の底端部が同時に接地した状態で両側下肢骨格の底端部を歩行方向の反対方向に所定の安定距離Ldsだけ仮想で移動させるように駆動装置400のトルクを制御することができる。
【0052】
これにより、両側下肢骨格が接地した状態(Double Stance)でロボットの推進力を発生させる制御を適用することにより歩行の効率性及び安全性を向上させる効果を有する。
【0053】
図3を参照すると、駆動装置400のトルクはインピーダンス制御によって制御されることができる。
【0054】
両側下肢骨格の端部の軌跡が生成されることにより両側下肢骨格の端部の制御位置
及び制御速度
が決定され、倒れないように安定的な歩行のための膝関節及び股関節でのリンクの角度
及び角速度
が決定される。
【0055】
また、安定的な歩行制御のために、上体の下げ角度
が決定され、腰関節の角度
及び角速度
が決定され、これらを総合してインピーダンス制御することにより各関節で駆動装置400のトルク
が発生する。
【0056】
追加として、駆動装置400のトルクを算出するとき、摩擦力及び重力による補償をさらに考慮して算出することができる。
【0057】
図4は本発明の一実施例による地面座標系でロボットの移動を示す図である。
【0058】
ここで、地面座標系は固定された地面を中心とする座標系であり、ロボットは地面座標系を中心に移動する。歩行制御器300が両側下肢骨格の底端部を所定の安定距離Ldsだけ移動させれば、底端部が地面に固定された状態でロボットが歩行方向に移動する。
【0059】
図4をもっと参照すると、歩行制御器300が両側下肢骨格の底端部を所定の安定距離Ldsだけ仮想で移動させるように駆動装置400のトルクを制御するにより、リンク装置100は両側下肢骨格の底端部が同時に地面に固定された状態でそれぞれのリンクが回転して歩行方向に推進されることができる。
【0060】
歩行制御器300は胴体装置200に位置し、胴体装置200を基準とする両側下肢骨格の回転を制御することができる。すなわち、歩行制御器300は、胴体装置200を基準に両側下肢骨格の底端部を所定の安定距離Ldsだけ仮想で移動させるように駆動装置400のトルクを制御することができる。
【0061】
したがって、歩行制御器300は両側下肢骨格の底端部を歩行方向の反対方向に安定距離Ldsだけ仮想で移動させるように駆動装置400を制御するが、実際には接地した両側下肢の底端部は地面に固定された状態でリンク装置100が回転して胴体装置200が移動することができる。
【0062】
図5は本発明の一実施例によるロボット座標系でロボットの歩行制御を示す図である。
【0063】
ここで、ロボット座標系はロボットの両側下肢骨格の中心を基準とする座標系である。
図5をもっと参照すると、スイング制御及びダブルスタンス制御は、ロボットの両側下肢骨格の底端部をロボット座標系を中心に歩行方向の反対方向に移動させるように駆動装置400を制御し、地面座標系ではロボットの両側下肢骨格の底端部が地面に固定された状態でロボット座標系が歩行方向に移動する。
【0064】
ロボットの歩行は、両側下肢骨格を交互に移動させるように制御して(スイング制御)、その間に両側下肢骨格の底端部が同時に接地した状態で両側下肢骨格の底端部を歩行方向の反対方向に移動させるように制御する(ダブルスタンス制御)。
【0065】
具体的に、スイング制御では、両側下肢骨格のうち歩行方向の前方に位置する下肢骨格(Leading leg)を地面に固定した状態で相対的に後方に位置する下肢骨格(Trailing leg)をスイングして前方に位置する下肢骨格(Leading leg)より前方に移動させることにより歩行を具現することができる。
【0066】
スイング制御のみ行う場合には、前方に位置する下肢骨格(Leading leg)をP1からP3に移動させ、後方に位置する下肢骨格(Trailing leg)はP3からP1に移動させ、歩幅はP1からP3までの距離であり得る。
【0067】
本発明の実施例は、スイング制御の間ごとにダブルスタンス制御を含み、ダブルスタンス制御では両側下肢骨格の底端部を歩行方向の反対方向に所定の安定距離Ldsだけ移動させるように駆動装置400を制御することにより、固定された両側下肢骨格の底端部を基準にリンク装置100が歩行方向に移動することができる。
【0068】
すなわち、スイング制御以前に、前方に位置する下肢骨格(Leading leg)をP1からP2に移動させ、後方に位置する下肢骨格(Trailing leg)はP3からP4に移動させるダブルスタンス制御を含むことができる。この場合、歩幅LstepはP1からP4までの距離であり得る。
【0069】
これにより、下肢骨格のいずれか一つのスイング動作によるシングルスタンス(Single Stance)状態で上体の動きが減少し、よって不安定な状態であるシングルスタンス状態で安全性が向上することにより全体的な歩行安全性が向上する効果を有する。
【0070】
本発明の一実施例による所定の安定距離Ldsはロボットの歩幅Lstepに対して一定の比率を有するように設定されることができる。
【0071】
図6は本発明の一実施例によるダブルスタンスの比率による上体角度変化を示す図である。
【0072】
図6をもっと参照すると、ダブルスタンスの比率は下記のように算出することができ、これによってロボットの歩行による上体角度変化は
図6に示すようであり得る。
【数1】
【0073】
ここで、Ldsは安定距離、Lstepは歩幅である。
【0074】
歩行制御器300で、両側下肢骨格の底端部での安定距離Ldsの和が歩幅Lstepの0.1以上0.4以下の比率となるように安定距離Ldsが設定されることができる。
【0075】
図6に示すように、DSR=0(ダブルスタンス制御を含んでいない場合)又はDSR=0.1の場合にはロボットが歩行方向の反対方向に傾きながら倒れる可能性が高い(Backward falling)。また、DSR=0.4又はDSR=0.5の場合にはロボットが歩行方向に傾きながら倒れる可能性が高い(Forward falling)。
【0076】
したがって、歩行制御器300はダブルスタンスの比率(DSR)を0.1以上0.4以下または0.1超0.4未満になるように安定距離Ldsを設定することができる。より好ましくは、ダブルスタンスの比率(DSR)を0.2以上0.3以下になるように安定距離Ldsを設定することができる。
【0077】
図7は本発明の一実施例によるダブルスタンス制御による上体角度変化を示す図である。
【0078】
図7をもっと参照すると、左側はダブルスタンス制御が含まれないように歩行制御を行った場合(DSR=0)の歩行時の上体角度変化を示すものであり、右側はダブルスタンス制御を含む場合(DSR=0.4)の歩行時の上体角度変化を示すものである。
【0079】
これらを互いに比較すると、ロボットは上体を下げるか伸ばす動作によってロボットの歩行時の安定的な歩行を具現することができる。左側と右側に示したロボットの上体角度変化を見れば、ダブルスタンス制御を含む場合、ロボットの上体角度変化が相対的に減少したことを確認することができる。
【0080】
具体的な数値を比較しても、ロボットの上体角度の最大値と最小値間の差が全ての実施例で相対的に減少したことを確認することができる。すなわち、ダブルスタンス制御を含むことによりロボットの歩行安全性が向上してロボットの上体の動きが減少する効果を確認することができる。
【0081】
図2をまた参照すると、本発明の一実施例によるロボットの歩行制御方法は、両側下肢骨格に対応する複数のリンクから構成されたリンク装置100を含むロボットの歩行命令を受ける段階(S100)、歩行命令を受けた場合、一側の下肢骨格が移動するようにリンク装置100にトルクを提供してロボットの歩行を具現する段階(S200)、及び移動する下肢骨格が変更されるうちに両側下肢骨格の底端部が同時に接地したダブルスタンス状態で両側下肢骨格の底端部を歩行方向の反対方向に所定の安定距離だけ仮想で移動させるように駆動装置のトルクを制御することによりダブルスタンス状態で推進力を生成する段階(S300)を含む。
【0082】
ロボットの歩行命令を受ける段階(S100)では、別に備えられたクラッチに位置するコントローラーを介して着用者から歩行命令を受けることができる。特に、座った姿勢の場合にはコントローラーを介して受けた命令入力によって立ち上がった姿勢に変換されることができ、さらに立ち上がった姿勢でコントローラーを介して受けた命令入力によって歩行するように制御されることができる。
【0083】
ロボットの歩行を具現する段階(S200)では、両側下肢骨格のいずれか一つを歩行方向に移動するようにリンク装置100にトルクを提供することができる。特に、他の下肢骨格は地面に固定した状態で両側下肢骨格のいずれか一つを歩行方向にスイングするように移動することができる。
【0084】
特に、ロボットの歩行を具現する段階(S200)では、両側下肢骨格の底端部で測定された荷重に基づいて移動させるように制御する一側下肢骨格を選択することができる。
【0085】
具体的に、ロボットの両側下肢骨格の底端部には荷重を測定する足力センサー(Foot force sensor)がそれぞれ位置することができ、足力センサーはそれぞれの端部に複数が備えられ、それらの和を各下肢骨格の荷重として算出することができる。左側下肢骨格の荷重と右側下肢骨格の荷重を比較して相対的に荷重が小さい下肢骨格を選択して歩行方向に移動させることができる。反対に、相対的に荷重が大きい下肢骨格は地面に固定させることができる。
【0086】
ダブルスタンス状態で推進力を生成する段階(S300)では、一側下肢骨格がスイング制御によって移動して地面に全く着地した状態で、移動する下肢骨格が変更されるうちに両側下肢骨格の底端部が同時に接地した状態でダブルスタンス制御を行うことができる。
【0087】
ダブルスタンス制御では、両側下肢骨格の底端部を歩行方向の反対方向に所定の安定距離Ldsだけ仮想で移動させるように制御することができる。
【0088】
特に、ダブルスタンス状態で推進力を生成する段階(S300)では、リンク装置100にトルクが提供されれば、両側下肢骨格の底端部が同時に地面に固定された状態で両側下肢骨格に含まれたそれぞれのリンクが回転して歩行方向に推進されることができる。
【0089】
すなわち、胴体装置200に位置する歩行制御器300を中心に両側下肢骨格の底端部を移動させるように制御するが、実際には両側下肢骨格の底端部が同時に地面に固定された状態で両側下肢骨格に含まれたそれぞれのリンクが回転して胴体装置200が歩行方向に推進されることができる。
【0090】
ダブルスタンス状態で推進力を生成する段階(S300)では、両側下肢骨格の底端部での安定距離Ldsの和が、両側下肢骨格が交互に移動する歩幅Lstepの0.1以上0.4以下の比率となるように、安定距離Ldsを設定することができる。
【0091】
図8は本発明の一実施例によるロボットの歩行制御軌跡を示す図である。
【0092】
図8を参照すると、ダブルスタンス状態で推進力を生成する段階(S300)では、両側下肢骨格の底端部を制御する複数のコントロールポイントの位置がベジェ曲線で連結されるように両側下肢骨格の底端部を所定の安定距離Ldsだけ移動させる軌跡を決定することができる。
【0093】
特に、図示のように、胴体装置200の位置を固定点として両側下肢骨格の底端部を制御する軌跡を示すものであり、軌跡の始点と終点を均一な間隔で12地点を連結してベジェ曲線を示したものである。
【0094】
これにより、両側下肢骨格の底端部が自然に連結される連結動作を行うことができる。
【0095】
リンク装置100は、両側こむら、両側内もも及び両側骨盤にそれぞれ対応する複数のリンクを含み、ダブルスタンス状態で推進力を生成する段階(S300)では、こむらと内ももにそれぞれ対応するリンク間の膝関節及び内ももと骨盤にそれぞれ対応するリンク間の股関節でそれぞれのリンクが回転するようにトルクを制御することができる。
【0096】
ダブルスタンス状態で推進力を生成する段階(S300)の後、他側下肢骨格が移動するようにリンク装置100にトルクを提供して両側下肢骨格を交互に移動させることによりロボットの歩行を具現する段階(S400)をさらに含むことができる。
【0097】
両側下肢骨格を交互に移動させることによりロボットの歩行を具現する段階(S400)では、以前にスイングを制御した一側下肢骨格の反対側の他側下肢骨格をスイング制御して歩行を具現することができる。
【0098】
具体的に、両側下肢骨格を交互に移動させることによりロボットの歩行を具現する段階(S400)では、歩幅Lstepに相当する距離だけ両側下肢骨格を交互に移動させることができ、ダブルスタンス状態で推進力を生成する段階(S300)では、歩幅Lstepより相対的に小さな距離だけ一側下肢骨格を移動させることができる。
本発明の特定の実施形態に関連して図示及び説明したが、以下の特許請求の範囲によって提供される本発明の技術的思想を逸脱することなく、本発明に多様な改良及び変化を加え得るのは、当業分野における通常の知識を有する者にとって自明のことである。
【符号の説明】
【0099】
100 リンク装置
200 胴体装置
300 歩行制御器
400 駆動装置