(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-07
(45)【発行日】2023-12-15
(54)【発明の名称】W/O/W型乳化組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 8/06 20060101AFI20231208BHJP
A61K 8/891 20060101ALI20231208BHJP
A61K 8/894 20060101ALI20231208BHJP
A61K 8/34 20060101ALI20231208BHJP
A61K 8/44 20060101ALI20231208BHJP
A61K 8/36 20060101ALI20231208BHJP
A61K 8/81 20060101ALI20231208BHJP
A61K 8/39 20060101ALI20231208BHJP
A61Q 19/00 20060101ALI20231208BHJP
【FI】
A61K8/06
A61K8/891
A61K8/894
A61K8/34
A61K8/44
A61K8/36
A61K8/81
A61K8/39
A61Q19/00
(21)【出願番号】P 2019184117
(22)【出願日】2019-10-04
【審査請求日】2022-08-04
(73)【特許権者】
【識別番号】000001959
【氏名又は名称】株式会社 資生堂
(74)【代理人】
【識別番号】100092901
【氏名又は名称】岩橋 祐司
(74)【代理人】
【識別番号】100188260
【氏名又は名称】加藤 愼二
(72)【発明者】
【氏名】井上 東彦
(72)【発明者】
【氏名】北島 正樹
【審査官】駒木 亮一
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-033391(JP,A)
【文献】特開2002-275029(JP,A)
【文献】特開2002-187834(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00- 8/99
A61Q 1/00-90/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
Japio-GPG/FX
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内水相と、
前記内水相が分散されている油相と、
前記油相が分散されている外水相と、
を含む、W/O/W型乳化組成物であって、
前記内水相は、前記外水相よりも高浸透圧に調製する浸透圧調整剤を含み、前記浸透圧調整剤が、
アミノ酸、アミノ酸塩酸塩、アミノ酸1価金属塩、アミノ酸2価金属塩、又はアミノ酸エステルであるアミノ酸及びその誘導体、
L-アスコルビン酸、L-アスコルビン酸リン酸エステル、L-アスコルビン酸-2-硫酸エステル、又はL-アスコルビン酸-2-グルコシドであるL-アスコルビン酸及びその誘導体、食塩、並びにポリエチレングリコールから選択される一種又は二種以上であり、
前記油相は、総油相に対して0.7質量倍以上のシリコーン油と、主骨格がシリコーン骨格であり、側鎖に親水基を有するシリコーン系界面活性剤と、を含み、
前記外水相は、ポリオール及びアルキル変性カルボキシビニルポリマーを含み、
前記外水相に添加される前記ポリオールはグリセリン、1,3-ブチレングリコール、及びジプロピレングリコールから選択される二種以上であり、前記外水相における前記ポリオールの配合量が5~25質量%であることを特徴とするW/O/W型乳化組成物。
【請求項2】
請求項1記載のW/O/W型乳化組成物において、前記浸透圧調整剤はL-グルタミン酸ナトリウム、食塩、及びポリエチレングリコールから選択される一種又は二種以上であることを特徴とするW/O/W型乳化組成物。
【請求項3】
請求項1又は2記載のW/O/W型乳化組成物において、前記外水相に添加されるポリオールはグリセリン、1,3-ブチレングリコール、及びジプロピレングリコールの三種であることを特徴とするW/O/W型乳化組成物。
【請求項4】
請求項1から3のいずれかに記載のW/O/W型乳化組成物において、
前記外水相に添加される前記ポリオールの配合量が10~21質量%であることを特徴とするW/O/W型乳化組成物。
【請求項5】
請求項1から4のいずれかに記載のW/O/W型乳化組成物において、
前記シリコーン系界面活性剤が、PEG-9ポリジメチルシロキシエチルジメチコンであることを特徴とするW/O/W型乳化組成物。
【請求項6】
請求項1から5のいずれかに記載のW/O/W型乳化組成物において、
前記シリコーン系界面活性剤の配合量が、組成物全量中に0.1~7重量%であることを特徴とするW/O/W型乳化組成物。
【請求項7】
請求項1から6のいずれかに記載のW/O/W型乳化組成物において、
前記内水相が4-メトキシサリチル酸カリウム塩を含有することを特徴とするW/O/W型乳化組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はW/O/W型乳化組成物、特に外水相と内水相の浸透圧差により内水相を膨潤させて増粘するW/O/W型乳化組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば化粧品分野におけるクリームでは、高分子などの増粘剤、界面活性剤によるα-ゲル形成、或いは内相比を大きくするなどの手法により、系の増粘を図っている。
しかしながら、高分子増粘剤の添加は、べたつきが生じやすくなるなど使用性が悪化する場合があり、また水相中へのα-ゲル形成は比較的大量の界面活性剤が必要となり、さらにO/W型乳化組成物で内相(油相)比を上げれば、油量の増大によりみずみずしさが失われるなど、それぞれ欠点を有していた。
これに対し、特許文献1~3に示すようなW/O/W型乳化組成物は、製造時には内水相を少量としておき、W/O/W型乳化組成物を調製した後に浸透圧差により外水相より内水相に水分を移行させている。このため、比較的少量の油相により高内相(油相+内水相)比を得ることができ、高粘度でありながらみずみずしさが得られるとともに、肌への塗布時に内水相の放出に伴う独特の転相感が得られる。
一方、W/O/W型乳化組成物は、内水相に薬剤などを添加することにより、該薬剤を油相、外水相で被覆することとなり、耐酸化性等、安定性を向上させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2002-275029号公報
【文献】特開平11-33391号公報
【文献】特開2006-307031号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、浸透圧調整型のW/O/W型乳化組成物は、油相成分の選択性が高く、処方の自由度が低いという問題があった。特にシリコーン油を高配合すると、組成物の安定性が低下しやすくなる傾向があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は前記従来技術の課題に鑑みなされたものであり、その目的はシリコーンオイル高配合で、高粘度且つ安定性の高いW/O/W型乳化組成物を提供することにある。
【発明を実施するための形態】
【0006】
W/O/W型乳化組成物は、外水相中にW/O型エマルジョンを分散した構造をなす。
[浸透圧調整剤]
本発明では、内相をなすW/O型エマルジョンにおいて、最内相である水相中に浸透圧調整剤を含む。浸透圧調整剤としては、特に限定されるものでないが、比較的分子量の小さいポリオール、アミノ酸、L-アスコルビン酸、またはそれらの誘導体などの電解質が好ましく用いられる。
【0007】
ポリオールとしては、マルチトール、ソルビトール等の糖アルコール、ポリエチレングリコールなどが好ましい。
アミノ酸またはその誘導体としては、一般的な食品添加物、局方医薬品として知られているアミノ酸またはその塩の中から好適に選択される。例えば、L-アラニン、β-アラニン、L-アルギニン塩酸塩、L-アスパラギン酸1水和物、L-アスパラギン酸、L-チトルリン、L-グルタミン酸、L-グルタミン酸塩酸塩、L-グルタミン、グリシン、トリメチルグリシン、L-ヒスチジン、L-ヒスチジン塩酸塩1水和物、L-ハイドロキシプロリン、L-イソロイシン、L-ロイシン、L-リジン、L-リジン塩酸塩、L-オルニチン塩酸塩、L-プロリン、L-フェニルアラニン、L-セリン、L-スレオニン、L-トリプトファン、L-チロシン、L-バリン、L-ドーパー、およびL-αアミノ酪酸等が挙げられる。なかでも、グリシン、L-セリン、L-アラニン、L-プロリン、トリメチルグリシン等が好ましく用いられる。また、誘導体としては塩、エステル等が挙げられる。
【0008】
また、上記アミノ酸の金属塩として1価金属塩、すなわち、ナトリウム、カリウム、リチウムの塩、2価金属塩のカルシウム、マグネシウム塩なども用いることができる。なかでも、L-アスパラギン酸ナトリウム1水和物、L-アスパラギン酸カリウム2水和物、L-グルタミン酸ナトリウム1水和物、L-グルタミン酸カリウム1水和物等が好ましいものとして挙げられる。
【0009】
L-アスコルビン酸は一般にビタミンCといわれ、その誘導体としては、L-アスコルビン酸モノステアレート、L-アスコルビン酸モノパルミテート、L-アスコルビン酸モノオレート等のL-アスコルビン酸モノアルキルエステル類;L-アスコルビン酸モノリン酸エステル、L-アスコルビン酸-2-硫酸エステル等のLアスコルビン酸モノエステル類;L-アスコルビン酸ジステアレート、L-アスコルビン酸ジパルミテート、L-アスコルビン酸ジオレート等のL-アスコルビン酸ジアルキルエステル類;L-アスコルビン酸トリステアレート、L-アスコルビン酸トリパルミテート、L-アスコルビン酸トリオレート等のL-アスコルビン酸トリアルキルエステル類;L-アスコルビン酸トリリン酸エステル等のL-アスコルビン酸トリエステル類;L-アスコルビン酸2-グルコシド等のL-アスコルビン酸グルコシド類などが挙げられる。なかでも、L-アスコルビン酸、L-アスコルビン酸リン酸エステル、L-アスコルビン酸-2-硫酸エステル、L-アスコルビン酸2-グルコシド等が好ましく用いられる。
【0010】
電解質は、上記アミノ酸、L-アスコルビン酸、およびそれらの誘導体の中から1種または2種以上が好ましく用いられる。
これらの浸透圧調整剤の配合量は、本発明にかかる組成物全量中に0.01~5重量%が好ましく、特には0.1~3重量%である。配合量が少なすぎると使用感の向上がみられず、一方、配合量が多すぎると経時安定性が悪くなる場合がある。
【0011】
[油分]
本発明において、油相に含まれる油分は、シリコーン油を主成分とし、他に液体油脂、固体油脂、ロウ、炭化水素油、高級脂肪酸、高級アルコール、合成エステル油等を用い得るが、これらに限定されるものでない。
【0012】
シリコーン油としては、ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、メチルハイドロジェンポリシロキサン等の鎖状ポリシロキサンや、デカメチルポリシロキサン、ドデカメチルポリシロキサン、テトラメチルテトラハイドロジェンポリシロキサンなどの環状ポリシロキサン等が挙げられる。
【0013】
シリコーン油は、総油相に対し0.5質量倍以上、好ましくは0.7質量倍以上である。 その他に配合し得る液体油脂としては、例えば、アボガド油、ツバキ油、タートル油、マカデミアナッツ油、トウモロコシ油、ミンク油、オリーブ油、ナタネ油、卵黄油、ゴマ油、パーシック油、小麦胚芽油、サザンカ油、ヒマシ油、アマニ油、サフラワー油、綿実油、エノ油、大豆油、落花生油、茶実油、カヤ油、コメヌカ油、シナギリ油、日本キリ油、ホホバ油、胚芽油、トリグリセリン、トリオクタン酸グリセリン、トリイソパルミチン酸グリセリン等が挙げられる。
【0014】
固体油脂としては、カカオ脂、ヤシ油、馬脂、硬化ヤシ油、パーム油、牛脂、羊脂、硬化牛脂、パーム核油、豚脂、牛骨脂、モクロウ核油、硬化油、牛脚脂、モクロウ、硬化ヒマシ油等が挙げられる。
【0015】
ロウ類としては、ミツロウ、カンデリラロウ、綿ロウ、カルナウバロウ、ベイベリーロウ、イボタロウ、鯨ロウ、モンタンロウ、ヌカロウ、ラノリン、カポックロウ、酢酸ラノリン、液状ラノリン、サトウキビロウ、ラノリン脂肪酸イソプロピル、ラウリン酸ヘキシル、還元ラノリン、ジョジョバロウ、硬質ラノリン、セラックロウ、POEラノリンアルコールエーテル、POEラノリンアルコールアセテート、POEコレステロールエーテル、ラノリン脂肪酸ポリエチレングリコール、POE水素添加ラノリンアルコールエーテル等が挙げられる。
【0016】
炭化水素油としては、流動パラフィン、オゾケライト、スクワレン、プリスタン、パラフィン、セレシン、スクワレン、ワセリン、マイクロクリスタリンワックス等が挙げられる。
【0017】
高級脂肪酸としては、例えば、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン(ベヘニン)酸、12-ヒドロキシステアリン酸、ウンデシレン酸、トール酸等が挙げられる。
【0018】
高級アルコールとしては、例えば、セチルアルコール、ステアリルアルコール、ベヘニルアルコール、ミリスチルアルコール、セトステアリルアルコール等が挙げられる。
【0019】
合成エステル油としては、ミリスチン酸イソプロピル、オクタン酸セチル、ミリスチン酸オクチルドデシル、パルミチン酸イソプロピル、ステアリン酸ブチル、ラウリン酸ヘキシル、ミリスチン酸ミリスチル、オレイン酸デシル、ジメチルオクタン酸ヘキシルデシル、乳酸セチル、乳酸ミリスチル、酢酸ラノリン、ステアリン酸イソセチル、イソステアリン酸イソセチル、12-ヒドロキシステアリル酸コレステリル、ジ-2-エチルヘキシル酸エチレングリコール、ジペンタエリスリトール脂肪酸エステル、モノイソステアリン酸N-アルキルグリコール、ジカプリン酸ネオペンチルグリコール、リンゴ酸ジイソステアリル、ジ-2-ヘプチルウンデカン酸グリセリン、トリ-2-エチルヘキシル酸トリメチロールプロパン、トリイソステアリン酸トリメチロールプロパン、テトラ-2-エチルヘキシル酸ペンタンエリスリトール、トリ-2-エチルヘキシル酸グリセリン、トリイソステアリン酸トリメチロールプロパン、セチル2-エチルヘキサノエート、2-エチルヘキシルパルミテート、トリミリスチン酸グリセリン、トリ-2-ヘプチルウンデカン酸グリセライド、ヒマシ油脂肪酸メチルエステル、オレイン酸オイル、セトステアリルアルコール、アセトグリセライド、パルミチン酸2-ヘプチルウンデシル、アジピン酸ジイソブチル、N-ラウロイル-L-グルタミン酸-2-オクチルドデシルエステル、アジピン酸ジ-2-ヘプチルウンデシル、エチルラウレート、セバチン酸ジ-2-エチルヘキシル、ミリスチン酸2-ヘキシルデシル、パルミチン酸2-ヘキシルデシル、アジピン酸2-ヘキシルデシル、セバチン酸ジイソプロピル、コハク酸2-エチルヘキシル、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸アミル、クエン酸トリエチル等が挙げられる。
【0020】
[シリコーン系界面活性剤]
本発明において、まず前記内水相と油相とをシリコーン系界面活性剤により乳化して、W/O型エマルジョンを形成する。
【0021】
本発明において好適に用いられるシリコーン系界面活性剤としては、主骨格がシリコーン骨格であり、側鎖に親水基を有するシリコーン系界面活性剤が好ましい。
【0022】
本発明において、特に好適に用いられるシリコーン系界面活性剤としては、PEG-9ポリジメチルシロキシエチルジメチコンなどが例示される。
なお、本発明において、前記シリコーン系界面活性剤以外に、HLBが7以下の界面活性剤を補助的に用いることも可能である。
【0023】
HLB7以下の乳化剤としては、例えば、ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノオレート、ソルビタンモノイソステアレート、ソルビタントリステアレートなどのソルビタン脂肪酸エステル類;グリセロールモノステアレート、グリセロールモノステアレート、グリセロールモノオレートなどのグリセリン脂肪酸エステル類;POE(5)硬化ヒマシ油、POE(7.5)硬化ヒマシ油、POE(10)硬化ヒマシ油などのポリオキシエチレン硬化ヒマシ油;ジメチコンコポリオール、セチルジメチコンコポリオール、ジメチコンコポリオールクロスポリマーなどのポリエーテル変性シリコーン系界面活性剤;ポリオキシアルキレン化グリコール脂肪酸エステル系界面活性剤;ポリグリセリン脂肪酸エステル系界面活性剤;多価アルコールのポリヒドロキシステアリン酸エステル、ポリヒドロキシステアリルポリグリセリンや、ポリオキシエチレン化鎖および/またはポリオキシプロピレン化鎖を含む架橋型オルガノポリシロキサンエラストマーなどが挙げられる。
【0024】
なかでも、多価アルコールのポリヒドロキシステアリン酸エステルであるポリヒドロキシステアリルアルキレン化グリコール(例えば、ジポリヒドロキシステアリン酸ポリエチレングリコールである「アラセル P135」;ICI社製)、ポリヒドロキシステアリルポリグリセリン(「DEHYMULUS PGPH」;ヘンケル社製)、ポリエーテル変性シリコーン系界面活性剤であるジメチコンコポリオール(「シリコンSC 9450」;信越化学工業(株)製)、ポリオキシエチレン化鎖および/またはポリオキシプロピレン化鎖を含む架橋型オルガノポリシロキサンエラストマー(「KSG 21」;信越化学工業(株)製)等が好ましく用いられる。
【0025】
界面活性剤の配合量は、乳化組成物全量中に0.01~10重量%が好ましく、特には0.1~7重量%である。配合量が少なすぎると使用感の向上はみられず、一方、配合量が多すぎるとW/O/W型乳化物の形成が不安定な場合がある。
【0026】
[アルキル変性カルボキシビニルポリマー]
本発明のW/O/W型乳化組成物は、外水相に対し油相(W/O乳化物)を分散するため、外水相中にアルキル変性カルボキシビニルポリマーを含む。
【0027】
本発明に用いられるアルキル変性カルボキシビニルポリマーは、アクリル酸・メタクリル酸アルキル共重合体であり、乳化剤および増粘剤として作用するものである。アルキル変性カルボキシビニルポリマーは分子量50万~300万程度のものが好ましい。アルキル変性カルボキシビニルポリマーは、例えば、「CARBOPOL 1342」、「PEMULEN TR-1」、「PEMULEN TR-2」(以上、いずれもB. F. Goodrich社製)等として市販されており、これらを好適に用いることができる。
【0028】
アルキル変性カルボキシビニルポリマーの配合量は、本発明の組成物全量中に0.01~2重量%が好ましい。配合量が少なすぎると安定性が悪くなり、一方、配合量が多すぎるときしみ感、よれが生じる場合がある。
【0029】
[外水相に添加されるポリオール]
本発明は、特に耐凍結性を改善するため、外水相中にもポリオールを添加している。
ここで、ポリオールも浸透圧に影響を与えるため、外水相中のポリオールの選択は慎重に行われる必要があり、グリセリン、1,3-ブチレングリコール、ジプロピレングリコールを採用することが好ましい。
【0030】
これらの外相中に添加されるポリオールの配合量は、組成物中、5~25質量%であることが好ましい。5質量%未満であると、耐凍結性が低下する場合があり、25質量%を超えると内水相との浸透圧差が減少し、増粘性が低下する。
【0031】
[その他の成分]
本発明のW/O/W型乳化組成物には、必要に応じて、上記必須成分の他に、本発明の効果を損わない範囲で、通常化粧料等に配合される任意添加成分を配合してもよい。このような添加成分としては、例えばセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、クインスシード、カラギーナン、ペクチン、マンナン、カードラン、コンドロイチン硫酸、デンプン、ガラクタン、デルマタン硫酸、グリコーゲン、アラビアガム、ヘパラン硫酸、ヒアルロン酸、ヒアルロン酸ナトリウム、トラガントガム、ケラタン硫酸、コンドロイチン、キサンタンガム、ムコイチン硫酸、ヒドロキシエチルグアガム、カルボキシメチルグアガム、グアガム、デキストラン、ケラト硫酸、ローカストビーンガム、サクシノグルカン、カロニン酸、キチン、キトサン、カルボキシメチルキチン、寒天等の増粘剤;エタノール等の低級アルコール;ブチルヒドロキシトルエン、トコフェロール、フィチン等の酸化防止剤;安息香酸、サリチル酸、ソルビン酸、パラオキシ安息香酸アルキルエステル、ヘキサクロロフェン等の抗菌剤;パラアミノ安息香酸(以下「PABA」と略記)、PABAモノグリセリンエステル、N,N-ジプロポキシPABAエチルエステル、N,N-ジエトキシPABAエチルエステル、N,N-ジメチルPABAメチルエステル、N,N-ジメチルPABAエチルエステル、N,N-ジメチルPABAブチルエステル、N,N-ジメチルPABA2-エチルヘキシルエステル等の安息香酸系紫外線吸収剤;ホモメンチル-N-アセチルアントラニレート等のアントラニル酸系紫外線吸収剤;アミルサリシレート、メンチルサリシレート、ホモメンチルサリシレート、オクチルサリシレート、フェニルサリシレート、ベンジルサリシレート、p-イソプロパノールフェニルサリシレート等のサリチル酸系紫外線吸収剤;オクチルシンナメート、エチル-4-イソプロピルシンナメート、メチル-2,5-ジイソプロピルシンナメート、エチル-2,4-ジイソプロピルシンナメート、メチル-2,4-ジイソプロピルシンナメート、プロピル-p-メトキシシンナメート、イソプロピル-p-メトキシシンナメート、イソアミル-p-メトキシシンナメート、オクチル-p-メトキシシンナメート(2-エチルヘキシル-p-メトキシシンナメート)、2-エトキシエチル-p-メトキシシンナメート、シクロヘキシル-p-メトキシシンナメート、エチル-α-シアノ-β-フェニルシンナメート、2-エチルヘキシル-α-シアノ-β-フェニルシンナメート、グリセリルモノ-2-エチルヘキサノイル-ジパラメトキシシンナメート等のケイ皮酸系紫外線吸収剤;〔3-ビス(トリメチルシロキシ)メチルシリル-1-メチルプロピル〕-3,4,5-トリメトキシシンナメート、〔3-ビス(トリメチルシロキシ)メチルシリル-3-メチルプロピル〕-3,4,5-トリメトキシシンナメート、〔3-ビス(トリメチルシロキシ)メチルシリルプロピル〕-3,4,5-トリメトキシシンナメート、〔3-ビス(トリメチルシロキシ)メチルシリルブチル〕-3,4,5-トリメトキシシンナメート、〔3-トリス(トリメチルシロキシ)シリルブチル〕-3,4,5-トリメトキシシンナメート、〔3-トリス(トリメチルシロキシ)シリルブチル〕-3,4,5-トリメトキシシンナメート、〔3-トリス(トリメチルシロキシ)シリル-1-メチルプロピル〕-3,4-ジメトキシシンナメート等のシリコーン系ケイ皮酸紫外線吸収剤;2,4-ジヒドロキシベンゾフェノン、2,2’-ジヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン、2,2’-ジヒドロキシ-4,4’-ジメトキシベンゾフェノン、2,2’4,4’-テトラヒドロキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-メトキシ-4’-メチルベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン-5-スルホン酸塩、4-フェニルベンゾフェノン、2-エチルヘキシル-4’-フェニル-ベンゾフェノン-2-カルボキシレート、2-ヒドロキシ-4-n-オクトキシベンゾフェノン、4-ヒドロキシ-3-カルボキシベンゾフェノン等のベンゾフェノン系紫外線吸収剤;3-(4’-メチルベンジリデン)-d,l-カンファー、3-ベンジリデン-d,l-カンファー、ウロカニン酸エチルエステル、2-フェニル-5-メチルベンゾキサゾール、2,2’-ヒドロキシ-5-メチルフェニルベンゾトリアゾール、2-(2’-ヒドロキシ-5’-t-オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2’-ヒドロキシ-5’-メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、ジベンザラジン、ジアニソイルメタン、4-メトキシ-4’-t-ブチルジベンゾイルメタン、5-(3,3’ジメチル-2-ノルボルニリデン)-3-ペンタン-2-オン等の紫外線吸収剤;アシルサルコシン酸(例えばラウロイルサルコシンナトリウム)、グルタチオン、クエン酸、リンゴ酸、酒石酸、乳酸等の有機酸;ビタミンAおよびその誘導体、ビタミンB6塩酸塩、ビタミンB6トリパルミテート、ビタミンB6ジオクタノエート、ビタミンB2およびその誘導体、ビタミンB12、ビタミンB15およびその誘導体等のビタミンB類、α-トコフェロール、β-トコフェロール、γ-トコフェロール、ビタミンEアセテート等のビタミンE類、ビタミンD類、ビタミンH、パントテン酸、パンテチン、ニコチン酸アミド、ニコチン酸ベンジル等のビタミン類;γ-オリザノール、アラントイン、グリチルリチン酸(塩)、グリチルレチン酸およびその誘導体、トラネキサム酸およびその誘導体〔トラネキサム酸誘導体としては、トラネキサム酸の二量体(例えば、塩酸トランス-4-(トランス-アミノメチルシクロヘキサンカルボニル)アミノメチルシクロヘキサンカルボン酸、等)、トラネキサム酸とハイドロキノンのエステル体(例えば、トランス-4-アミノメチルシクロヘキサンカルボン酸4’-ヒドロキシフェニルエステル、等)、トラネキサム酸とゲンチシン酸のエステル体(例えば、2-(トランス-4-アミノメチルシクロヘキシルカルボニルオキシ)-5-ヒドロキシ安息香酸およびその塩、等)、トラネキサム酸のアミド体(例えば、トランス-4-アミノメチルシコロヘキサンカルボン酸メチルアミドおよびその塩、トランス-4-(P-メトキシビンゾイル)アミノメチルシクロヘキサンカルボン酸およびその塩、トランス-4-グアニジノメチルシクロヘキサンカルボン酸およびその塩、等)〕、ヒノキチオール、ビサボロール、ユーカルプトーン、チモール、イノシトール、サイコサポニン、ニンジンサポニン、ヘチマサポニン、ムクロジサポニン等のサポニン類、パントテニルエチルエーテル、エチニルエストラジオール、トラネキサム酸、アルブチン、セファランチン、プラセンタエキス等の各種薬剤;ギシギシ、クララ、コウホネ、オレンジ、セージ、ノコギリソウ、ゼニアオイ、センブリ、タイム、トウキ、トウヒ、バーチ、スギナ、ヘチマ、マロニエ、ユキノシタ、アルニカ、ユリ、ヨモギ、シャクヤク、アロエ、クチナシ、サワラ等の植物の抽出物;色素;多孔質および/または吸水性の粉末(例えば、トウモロコシやバレイショ等から得られるスターチ類、無水ケイ酸、タルク、カオリン、ケイ酸アルミニウムマグネシウム、アルギン酸カルシウム等の粉末);モノラウリン酸ソルビタン、モノパルミチン酸ソルビタン、セスキオレイン酸ソルビタン、トリオレイン酸ソルビタン、モノラウリン酸ポリオキシエチレンソルビタン、モノステアリン酸ポリオキセチレンソルビタン、ポリエチレングリコールモノオレート、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリグリコールジエーテル、ラウロイルジエタノールアマイド、脂肪酸イソプロパノールアマイド、マルチトールヒドロキシ脂肪酸エーテル、アルキル化多糖、アルキルグルコシド、シュガーエステル等の非イオン性活性剤;ステアリルトリメチルアンモニウムクロライド、塩化ベンザルコニウムラウリルアミンオキサイド等のカチオン性界面活性剤;パルミチン酸ナトリウム、ラウリン酸ナトリウム、ラウリル酸ナトリウム、ラウリル硫酸カリウム、アルキル硫酸トリエタノールアミンエーテル、ロート油、リニアドデシルベンゼン硫酸、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油マレイン酸、アシルメチルタウリン等のアニオン性界面活性剤;両性界面活性剤;中和剤;防腐剤;香料;顔料等が挙げられる。
【0032】
本発明のW/O/W型乳化組成物の製造方法は、特に限定されるものでなく、常法により製造することができる。例えば、ディスパー等の乳化機を用いて攪拌混合して製造されるW/O型エマルジョンを調製し、これと、アルキル変性カルボキシビニルポリマーを含む外水相とを混合・乳化することにより得られる。
【実施例】
【0033】
以下に本発明を実施例に基づいてさらに詳細に説明するが、本発明はこれによってなんら限定されるものでない。なお、配合量は重量%である。
まず実施例に先立ち、各実施例、比較例で採用した試験方法、評価方法について説明する。
【0034】
[使用感官能試験評価]
男女各30名(計60名)のパネルに、各実施例、比較例で得た各試料を実際に使用してもらい、みずみずしさにつき、それぞれ下記の基準に基づいて評価した。
【0035】
[使用感]
A:肌のみずみずしさを感じたパネルが30名以上
B:肌のみずみずしさを感じたパネルが10~29名
C:肌のみずみずしさを感じたパネルが5~9名
D:肌のみずみずしさを感じたパネルが4名以下
【0036】
[粘度測定]
粘度が50000mPa.s以上の場合には、東機産業社製Viscometer TVB-15(TVH)、ローターNo.7、10rpmで測定を行った。
また、粘度が50000mPa.s未満の場合には、東機産業社製Viscometer TVB-15(TVM)、ローターNo.4、12rpmで測定を行った。
【0037】
[相状態の確認]
光学顕微鏡にて、相状態の確認を行った。
【0038】
[安定性評価]
実施例、比較例で得た各試料を、それぞれ50mlのサンプル管(ガラス瓶)に充填し、-10℃、室温、50℃で、2週間放置後、肉眼および顕微鏡観察にて評価した。
(評価基準)
A: 全く分離しておらず、乳化粒子も安定である
B: 分離していないが、乳化粒子が一部壊れている
C: 分離していないが、乳化粒子が壊れている
D: 分離しており、乳化粒子も壊れている
【0039】
まず、本発明者らは、油相中の油分、油相及び内水相によるW/O調製時の界面活性剤について検討を行った。
結果を表1に示す。
【0040】
【表1】
表1に示す結果より明らかなように、油相中の油分についてシリコーン油を採用する(試験例1-1,1-2)と、その油種によってはW/O/W相を形成することが困難となる。これに対し、油分としてシリコーン油を採用するとともに、シリコーン系界面活性剤(PEG-9ポリジメチルシロキシエチルジメチコン)を用いると、W/O/W相が形成され、増粘も顕著となる。
このように、W/O/W相を形成するためには、単に乳化可能な油種、界面活性剤を採用するだけでは足りず、特にシリコーン油を用いてW/O/W相を形成するためには特定のシリコーン系界面活性剤を用いることが必要である。
【0041】
次に本発明者らは、浸透圧調整剤について検討を行った。結果を表2に示す。
【0042】
【表2】
前記表2より、浸透圧調整剤としては、L-グルタミン酸Na、食塩などの電解質のみならず、マルチトール、ソルビトールなどの糖アルコールに代表されるポリオールも良好に機能する。しかしながら、浸透圧はイオン濃度に依存するため、マルチトール、ソルビトールのような相対的に分子量が大きくかつ非電解質は比較的大量に配合する必要がある。
【0043】
さらに本発明者らは浸透圧調整剤としてγ-シクロデキストリンを用い、その配合量を変化させた。結果を表3に示す。
【0044】
【表3】
表3より明らかなように、内相中の浸透圧調整剤の濃度が高まれば、外水相との浸透圧差が大きくなることから、粘度が高くなる傾向にある。
【0045】
また、本発明者らは本発明組成物の低温安定性について検討を行った。結果を表4に示す。
【0046】
【表4】
本試験例においては、薬剤として4MSK(4-メトキシサリチル酸カリウム塩)1質量%を添加しているが、試験例4-1、4-2から明らかなように、外水相のポリオール量を増加させることにより、耐凍結性が向上する。ただし、外水相中のポリオール量を増加させると、内水相との浸透圧差が縮小するため、粘度の上昇が抑制されてしまう。
一方、試験例4-3,4-4を参照すると、油相中の界面活性剤量を増加させることで、耐凍結性、粘度ともに向上させることができる。
【0047】
次に本発明者らは、界面活性剤の種類を変更し、検討を行った。結果を表5に示す。
【0048】
【0049】
表6に本発明の処方例を示す。
【0050】