(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-07
(45)【発行日】2023-12-15
(54)【発明の名称】燃料電池装置、制御プログラムおよび燃料電池装置の制御方法
(51)【国際特許分類】
H01M 8/04664 20160101AFI20231208BHJP
H01M 8/04 20160101ALI20231208BHJP
【FI】
H01M8/04664
H01M8/04 Z
(21)【出願番号】P 2019188098
(22)【出願日】2019-10-11
【審査請求日】2022-09-30
(31)【優先権主張番号】P 2018228518
(32)【優先日】2018-12-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000220262
【氏名又は名称】東京瓦斯株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000006633
【氏名又は名称】京セラ株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000109026
【氏名又は名称】ダイニチ工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100075557
【氏名又は名称】西教 圭一郎
(72)【発明者】
【氏名】香田 淳也
(72)【発明者】
【氏名】白石 晋平
(72)【発明者】
【氏名】小林 和明
(72)【発明者】
【氏名】五十嵐 英隆
【審査官】大内 俊彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-243005(JP,A)
【文献】特開2015-191765(JP,A)
【文献】特開2011-249185(JP,A)
【文献】特開2012-212559(JP,A)
【文献】特開2010-238428(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 8/00-8/2495
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料電池と、
該燃料電池の運転に用いられる水を貯留するタンクと、
該タンクに外部から水を補給する補水装置と、
外部から補給される水を浄化する浄化装置と、
前記燃料電池の発電運転を制御する制御装置と、を備え、
該制御装置は、
所定の第一条件が満たされた場合に前記浄化装置が破過したと判定する破過判定制御と、
該破過判定制御に先んじて、所定の第二条件が満たされた場合に前記浄化装置の破過が
近いと判定する破過予知制御と、を実行可能である
とともに、
前記浄化装置の破過が近いことの情報を外部に発報する第一発報制御と、
前記浄化装置の破過および前記浄化装置の破過が近いこと以外の、メンテナンスが必要となる他の異常が発生した場合に、該他の異常の情報を外部に発報する第二発報制御と、を実行可能であり、
前記第二発報制御が実行された場合に前記第一発報制御を実行する、燃料電池装置。
【請求項2】
燃料電池と、
該燃料電池の運転に用いられる水を貯留するタンクと、
該タンクに外部から水を補給する補水装置と、
外部から補給される水を浄化する浄化装置と、
前記燃料電池の発電運転を制御する制御装置と、を備え、
該制御装置は、
所定の第一条件が満たされた場合に前記浄化装置が破過したと判定する破過判定制御と、
該破過判定制御に先んじて、所定の第二条件が満たされた場合に前記浄化装置の破過が近いと判定する破過予知制御と、を実行可能であるとともに、
前記第一条件は、前記浄化装置により浄化された水の導電率が所定の第一値以上となった場合であり、
前記第二条件は、前記浄化装置を経由した外部から補給される水の総量を示す積算値が所定の第二値となった場合である
、燃料電池装置。
【請求項3】
燃料電池と、
該燃料電池の運転に用いられる水を貯留するタンクと、
該タンクに外部から水を補給する補水装置と、
外部から補給される水を浄化する浄化装置と、
前記燃料電池の発電運転を制御する制御装置と、を備え、
該制御装置は、
所定の第一条件が満たされた場合に前記浄化装置が破過したと判定する破過判定制御と、
該破過判定制御に先んじて、所定の第二条件が満たされた場合に前記浄化装置の破過が近いと判定する破過予知制御と、を実行可能であるとともに、
前記浄化装置の破過が近いことの情報を外部に発報する第一発報制御と、
前記浄化装置の破過および前記浄化装置の破過が近いこと以外の、メンテナンスが必要となる他の異常が発生した場合に、該他の異常の情報を外部に発報する第二発報制御と、を実行可能であり、
前記第二発報制御が実行された場合に前記第一発報制御を実行し、
且つ前記第一条件は、前記浄化装置により浄化された水の導電率が所定の第一値以上となった場合であり、
前記第二条件は、前記浄化装置を経由した外部から補給される水の総量を示す積算値が所定の第二値となった場合である、燃料電池装置。
【請求項4】
燃料電池と、
該燃料電池の運転に用いられる水を貯留するタンクと、
該タンクに外部から水を補給する補水装置と、
外部から補給される水を浄化する浄化装置と、
前記燃料電池の発電運転を制御する制御装置と、を備え、
該制御装置は、
所定の第一条件が満たされた場合に前記浄化装置が破過したと判定する破過判定制御と、
該破過判定制御に先んじて、所定の第二条件が満たされた場合に前記浄化装置の破過が近いと判定する破過予知制御と、を実行可能であるとともに、
前記補水装置は、弁を備えており、
前記第一条件は、前記浄化装置により浄化された水の導電率が所定の第一値以上となった場合であり、
前記第二条件は、前記弁の開閉動作回数が、所定の回数より大きい場合である
、燃料電池装置。
【請求項5】
燃料電池と、
該燃料電池の運転に用いられる水を貯留するタンクと、
該タンクに外部から水を補給する補水装置と、
外部から補給される水を浄化する浄化装置と、
前記燃料電池の発電運転を制御する制御装置と、を備え、
該制御装置は、
所定の第一条件が満たされた場合に前記浄化装置が破過したと判定する破過判定制御と、
該破過判定制御に先んじて、所定の第二条件が満たされた場合に前記浄化装置の破過が近いと判定する破過予知制御と、を実行可能であるとともに、
前記浄化装置の破過が近いことの情報を外部に発報する第一発報制御と、
前記浄化装置の破過および前記浄化装置の破過が近いこと以外の、メンテナンスが必要となる他の異常が発生した場合に、該他の異常の情報を外部に発報する第二発報制御と、を実行可能であり、
前記第二発報制御が実行された場合に前記第一発報制御を実行し、
且つ前記補水装置は、弁を備えており、
前記第一条件は、前記浄化装置により浄化された水の導電率が所定の第一値以上となった場合であり、
前記第二条件は、前記弁の開閉動作回数が、所定の回数より大きい場合である、燃料電池装置。
【請求項6】
燃料電池を備える燃料電池装置を制御する制御装置に、
補水装置を用いて燃料電池装置内のタンクに外部の水を補給する補水制御ステップと、
外部から補給される水を浄化する浄化装置の破過を判定する破過判定制御ステップと、
前記浄化装置の破過が近いと判定する破過予知制御ステップと、
を実行させる制御プログラムであって、
所定の第一条件が満たされて前記破過判定制御ステップが実行される前に所定の第二条件が満たされた場合、
該破過判定制御ステップの実行に先んじて、前記破過予知制御ステップを実行する
ととともに、
前記浄化装置の破過が近いことの情報を外部に発報する第一発報制御ステップと、
前記浄化装置の破過および前記浄化装置の破過が近いこと以外の、メンテナンスが必要となる他の異常が発生した場合に、該他の異常の情報を外部に発報する第二発報制御ステップと、を実行可能であり、
前記第二発報制御ステップが実行された場合に前記第一発報制御ステップを実行する、制御プログラム。
【請求項7】
燃料電池と、
該燃料電池の運転に用いられる水を貯留するタンクと、
該タンクに外部から水を補給する補水装置と、
外部から補給される水を浄化する浄化装置と、
前記燃料電池の発電運転を制御する制御装置と、を備え、
該制御装置は、所定の第一条件が満たされて、前記浄化装置が破過したと判定される破過判定制御ステップが実行される前に、所定の第二条件が満たされた場合、
該破過判定制御ステップの実行に先んじて、前記浄化装置の破過が近いと判定する破過予知制御ステップを実行する
とともに、
前記浄化装置の破過が近いことの情報を外部に発報する第一発報制御ステップと、
前記浄化装置の破過および前記浄化装置の破過が近いこと以外の、メンテナンスが必要となる他の異常が発生した場合に、該他の異常の情報を外部に発報する第二発報制御ステップと、を実行可能であり、
前記第二発報制御ステップが実行された場合に前記第一発報制御ステップを実行する、燃料電池装置の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池装置、制御プログラムおよび燃料電池装置の制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
燃料電池装置は、燃料電池から排出される燃焼排ガスに含まれる水蒸気が凝縮した凝縮水を、イオン交換樹脂等により浄化処理して水タンクに貯留し、貯留された水を、天然ガス等の原燃料を水蒸気改質する改質器に、改質水として供給している。
【0003】
このような、改質水の貯水量の制御に関し、特許文献1には、前述の水タンクの水位が低下して水量が不足する場合、水道水等の外部の水を、外部水浄化処理用のイオン交換樹脂(以下、浄化装置という)で浄化した後、水タンクに給水(以下、補水という)する燃料電池装置が、開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、前述のように、イオン交換樹脂を浄化装置として用いる燃料電池装置においては、この補水用のイオン交換樹脂が、樹脂を通過する水の処理量(累積通水量)に応じて浄化能力の低下が進み、最終的には、イオン交換樹脂がその浄化機能を失う、いわゆるイオン交換樹脂の「破過」状態に至る。
【0006】
このような破過が発生した場合、燃料電池装置は、イオン交換樹脂の交換等のメンテナンスが完了するまで、燃料電池を再起動することができない。そのため、メンテナンス実施までの待ち時間や、メンテナンスの遅れ等により、燃料電池の停止時間が延びて、稼働時間に占める発電運転時間の割合が低下してしまう場合があった。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の燃料電池装置は、燃料電池と、該燃料電池の運転に用いられる水を貯留するタンクと、該タンクに外部から水を補給する補水装置と、外部から補給される水を浄化する浄化装置と、前記燃料電池の発電運転を制御する制御装置と、を備える。
該制御装置は、所定の第一条件が満たされた場合に前記浄化装置が破過したと判定する破過判定制御と、該破過判定制御に先んじて、所定の第二条件が満たされた場合に前記浄化装置の破過が近いと判定する破過予知制御と、を実行可能であるとともに、前記浄化装置の破過が近いことの情報を外部に発報する第一発報制御と、前記浄化装置の破過および前記浄化装置の破過が近いこと以外の、メンテナンスが必要となる他の異常が発生した場合に、該他の異常の情報を外部に発報する第二発報制御と、を実行可能であり、前記第二発報制御が実行された場合に前記第一発報制御を実行する。
また、該制御装置は、所定の第一条件が満たされた場合に前記浄化装置が破過したと判定する破過判定制御と、該破過判定制御に先んじて、所定の第二条件が満たされた場合に前記浄化装置の破過が近いと判定する破過予知制御と、を実行可能であるとともに、前記第一条件は、前記浄化装置により浄化された水の導電率が所定の第一値以上となった場合であり、前記第二条件は、前記浄化装置を経由した外部から補給される水の総量を示す積算値が所定の第二値となった場合である。
また、該制御装置は、所定の第一条件が満たされた場合に前記浄化装置が破過したと判定する破過判定制御と、該破過判定制御に先んじて、所定の第二条件が満たされた場合に前記浄化装置の破過が近いと判定する破過予知制御と、を実行可能であるとともに、
前記浄化装置の破過が近いことの情報を外部に発報する第一発報制御と、前記浄化装置の破過および前記浄化装置の破過が近いこと以外の、メンテナンスが必要となる他の異常が発生した場合に、該他の異常の情報を外部に発報する第二発報制御と、を実行可能であり、
前記第二発報制御が実行された場合に前記第一発報制御を実行し、且つ前記第一条件は、前記浄化装置により浄化された水の導電率が所定の第一値以上となった場合であり、前記第二条件は、前記浄化装置を経由した外部から補給される水の総量を示す積算値が所定の第二値となった場合である。
また、該制御装置は、所定の第一条件が満たされた場合に前記浄化装置が破過したと判定する破過判定制御と、該破過判定制御に先んじて、所定の第二条件が満たされた場合に前記浄化装置の破過が近いと判定する破過予知制御と、を実行可能であるとともに、前記補水装置は、弁を備えており、前記第一条件は、前記浄化装置により浄化された水の導電率が所定の第一値以上となった場合であり、前記第二条件は、前記弁の開閉動作回数が、所定の回数より大きい場合である、
また、該制御装置は、所定の第一条件が満たされた場合に前記浄化装置が破過したと判定する破過判定制御と、該破過判定制御に先んじて、所定の第二条件が満たされた場合に前記浄化装置の破過が近いと判定する破過予知制御と、を実行可能であるとともに、前記浄化装置の破過が近いことの情報を外部に発報する第一発報制御と、前記浄化装置の破過および前記浄化装置の破過が近いこと以外の、メンテナンスが必要となる他の異常が発生した場合に、該他の異常の情報を外部に発報する第二発報制御と、を実行可能であり、前記第二発報制御が実行された場合に前記第一発報制御を実行し、且つ前記補水装置は、弁を備えており、前記第一条件は、前記浄化装置により浄化された水の導電率が所定の第一値以上となった場合であり、前記第二条件は、前記弁の開閉動作回数が、所定の回数より大きい場合である。
【0008】
また、本開示の制御プログラムは、燃料電池を備える燃料電池装置を制御する制御装置に、補水装置を用いて燃料電池装置内のタンクに外部の水を補給する補水制御ステップと、外部から補給される水を浄化する浄化装置の破過を判定する破過判定制御ステップと、前記浄化装置の破過が近いと判定する破過予知制御ステップと、を実行させる制御プログラムである。前記制御プログラムは、所定の第一条件が満たされて前記破過判定制御ステップが実行される前に所定の第二条件が満たされた場合、該破過判定制御ステップの実行に先んじて、前記破過予知制御ステップを実行するとともに、所定の第一条件が満たされて前記破過判定制御ステップが実行される前に所定の第二条件が満たされた場合、該破過判定制御ステップの実行に先んじて、前記破過予知制御ステップを実行ととともに、前記浄化装置の破過が近いことの情報を外部に発報する第一発報制御ステップと、前記浄化装置の破過および前記浄化装置の破過が近いこと以外の、メンテナンスが必要となる他の異常が発生した場合に、該他の異常の情報を外部に発報する第二発報制御ステップと、を実行可能であり、前記第二発報制御ステップが実行された場合に前記第一発報制御ステップを実行する。
【0009】
また、本開示の燃料電池装置の制御方法は、燃料電池と、該燃料電池の運転に用いられる水を貯留するタンクと、該タンクに外部から水を補給する補水装置と、外部から補給される水を浄化する浄化装置と、前記燃料電池の発電運転を制御する制御装置と、を備える。該制御装置は、所定の第一条件が満たされて、前記浄化装置が破過したと判定される破過判定制御ステップが実行される前に、所定の第二条件が満たされた場合、該破過判定制御ステップの実行に先んじて、前記浄化装置の破過が近いと判定する破過予知制御ステップを実行するとともに、前記浄化装置の破過が近いことの情報を外部に発報する第一発報制御ステップと、前記浄化装置の破過および前記浄化装置の破過が近いこと以外の、メンテナンスが必要となる他の異常が発生した場合に、該他の異常の情報を外部に発報する第二発報制御ステップと、を実行可能であり、前記第二発報制御ステップが実行された場合に前記第一発報制御ステップを実行する。
【発明の効果】
【0010】
本開示の燃料電池装置、制御プログラムおよび燃料電池装置の制御方法は、効率よく、燃料電池装置のメンテナンスおよび発電運転を行なうことができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】実施形態の燃料電池装置の概略構成図である。
【
図2】実施形態の燃料電池装置におけるイオン交換樹脂の破過制御のフロー図である。
【
図3】他の実施形態の燃料電池装置におけるイオン交換樹脂の破過制御のフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を用いて実施形態の燃料電池装置について説明する。
まず、
図1は、実施形態の燃料電池装置の概略構成を説明する図である。なお、
図1は、燃料電池装置100の構成のうち、改質水タンク3周り以外の構成の記載を省略している。
【0013】
実施形態の燃料電池装置100は、天然ガス,LPガス等の原燃料と空気とを使用して発電を行なう燃料電池モジュール1の稼動による電力供給と、熱交換器11および図示を省略した、ラジエータ、熱媒循環ポンプ、貯湯タンク等からなる排熱回収システムを備える。なお、燃料電池装置は、温水の供給を行なわない、いわゆるモノジェネレーションシステムとしてもよい。
【0014】
また、燃料電池装置100は、前述の燃料電池モジュール1等の他、補機として、改質水タンク2、制御装置6、制御装置6に搭載された記憶装置7、制御装置6に連係する操作パネル等の表示装置8を備える。
【0015】
補水の制御に関連するセンサとしては、運転停止の是非を判断するための低水位(下限水位)位置に配置された水検知器WL2(第2水位センサ)、および、水検知器WL2よりも高い位置に配置された水検知器WL1(第1水位センサ)と、補水の水質を測定するための水質測定装置である電気伝導率計WC1と、を少なくとも備える。
【0016】
その他、燃料電池装置100は、凝縮水と排ガスを分離する気液分離器12と、凝縮水および改質水に関連する流路として、凝縮水を改質水タンクに回収する凝縮水流路C、改質水ポンプP1を含む改質水流路R、電磁開閉式の止水弁V1を含む水補給流路G、排水流路D等を備えている。
【0017】
上述のような構成の燃料電池装置100においては、燃料電池モジュール1に隣接して配置された熱交換器11で、燃料電池モジュール1より排出された排ガスと、熱交換器11内を流れる水等の熱媒または冷媒との間で熱交換が行なわれ、排ガスに含まれる水分が結露して凝縮水が生じる。
【0018】
生じた凝縮水は、気液分離器12により分離され、凝縮水流路Cを経由して回収され、改質水タンク2に貯留される。水分が取り除かれた排ガスは、排ガス流路(図示省略)を介して、燃料電池装置の外に排気される。
【0019】
凝縮水を浄化して貯留する改質水タンク2は、浄化処理用途の第1改質水タンク3と、貯留用途の第2改質水タンク4と、で構成される。これら第1改質水タンク3と第2改質水タンク4との間は、下部の通水管3aで連通している。
【0020】
凝縮水を回収および精製して改質水を作製する第1改質水タンク3の中には、熱交換器11から回収された凝縮水を浄化処理するための凝縮水用イオン交換樹脂が充填された第1のイオン交換樹脂容器31と、改質水の不足時に、外部から補給される水道水等(以下、外部水)を浄化するための補水用イオン交換樹脂が充填された第2のイオン交換樹脂容器32とが、配設されている。この第2のイオン交換樹脂容器32が、本開示における「浄化装置」に相当する。なお、第2のイオン交換樹脂容器32は、第1改質水タンク3の外に配設してもよい。
【0021】
また、本実施形態の燃料電池装置100においては、改質水タンク2内の改質水が不足する場合、水道水などの外部水が、浄化装置である、第2のイオン交換樹脂容器32内の補水用イオン交換樹脂を介して浄化された後、補水として改質水タンク2内に導入される。補水が行なわれる条件およびその制御等については、後記で説明する。
【0022】
上述の補水に用いる、本開示の「補水装置」として、実施形態の燃料電池装置100では、改質水タンク2およびそのうちの第1改質水タンク3に外部から水を補給するための、電磁開閉式の止水弁V1を含む水補給流路Gが配設されている。これら止水弁V1および水補給流路Gは、本実施形態の補水装置5の一部を構成する。
【0023】
水補給流路Gの下流側の末端である端部は、第1改質水タンク3の下部に設けられた外部水受水口3bに接続されている。外部水受水口3bから流入した外部水は、タンク内部に配設された延設管3cを介して、第2のイオン交換樹脂容器32の底部に設けられた外部水導入口32bから、イオン交換樹脂が充填された第2のイオン交換樹脂容器32内に導入される。
【0024】
外部水は、この補水用のイオン交換樹脂を通過する間に、水道水等に含まれる不純物が除去され、導電率1μS/cm程度の脱イオン水、すなわち浄化処理された水である補水が、精製される。
【0025】
なお、
図1中の電気伝導率計WC
1は、前述の補水用イオン交換樹脂が破過していないか否かを判定する、破過検知装置の一例である。電気伝導率計WC
1は、浄化処理された後の脱イオン水である補水の導電率を測定できるように、補水が滞留する、第2のイオン交換樹脂容器32の上部に配設されている。
【0026】
そして、浄化処理された補水は、第2のイオン交換樹脂容器32の上部側面に設けられた浄化水流出口32aから流出して、第1改質水タンク3内の貯水部に流下して、第1改質水タンク3および第2改質水タンク4に、改質水として貯留される。
【0027】
そして、燃料電池装置100は、以下に詳細に述べるように、種々の機能を実行するための制御および処理能力を提供するために、少なくとも1つのプロセッサを含む制御装置6を備える。
【0028】
種々の実施形態によれば、少なくとも1つのプロセッサは、単一の集積回路として、または、複数の通信可能に接続された集積回路および/もしくはディスクリート回路として、実行されてもよい。少なくとも1つのプロセッサは、種々の既知の技術にしたがって実行されることが可能である。
【0029】
1つの実施形態において、プロセッサは、たとえば、関連するメモリに記憶された指示を実行することによって1以上のデータ計算手続または処理を実行するように構成された、1以上の回路またはユニットを含む。他の実施形態において、プロセッサは、1以上のデータ計算手続きまたは処理を実行するように構成された、ファームウェア、たとえばディスクリートロジックコンポーネントであってもよい。
【0030】
種々の実施形態によれば、プロセッサは、1以上のプロセッサ、コントローラ、マイクロプロセッサ、マイクロコントローラ、特定用途向け集積回路、デジタル信号処理部、プログラマブルロジックデバイス、フィールドプログラマブルゲートアレイ、または、これらのデバイスもしくは構成の任意の組み合わせ、または、他の既知のデバイスおよび構成の組み合わせ、を含み、以下に説明される機能を実行してもよい。
【0031】
制御装置6は、記憶装置7と、表示装置8と、燃料電池モジュール1と、改質水供給装置と、補水装置、および、図示していないパワーコンディショナ、原燃料供給装置、酸素含有ガス供給装置等、さらに、水位検出装置や水質測定装置などの各種センサ、と接続され、これらの各機能部をはじめとして、燃料電池装置100の全体を制御および管理する。
【0032】
制御装置6は、記憶装置7に記憶されているプログラムを取得して、このプログラムを実行することにより、燃料電池装置100の各部にかかる、種々の機能を実現する。また、表示装置8は、制御装置6からの指示信号に基づいて、指定された必要な情報および警報または警告等を、可視化する。なお、表示装置8は、警報または警告等を音で知らせるための発音・発報機能を備えていてもよい。
【0033】
制御装置6から、他の機能部または装置に制御信号または各種の情報などを送信する場合、制御装置6と他の機能部とは、有線または無線により接続されていればよい。制御装置6が行なう本実施形態に特徴的な制御については、後記で説明する。
【0034】
なお、本実施形態において、制御装置6は特に、先に述べた外部水の、改質水貯留部への補水操作、および、浄化装置(イオン交換樹脂)の破過の判定を制御する。
【0035】
記憶装置7は、プログラムおよびデータを記憶できる。記憶装置7は、処理結果を一時的に記憶する作業領域としても利用してもよい。記憶装置7は、記録媒体を含む。記録媒体は、半導体記憶媒体、および磁気記憶媒体等の任意の非一時的(non-transitory)な記憶媒体を含んでよい。
【0036】
また、記憶装置7は、複数の種類の記憶媒体を含んでいてもよい。記憶装置7は、メモリカード、光ディスク、または光磁気ディスク等の可搬の記憶媒体と、記憶の読み取り装置との組合せを含んでいてもよい。記憶装置7は、RAM(Random Access
Memory)等の一時的な記憶領域として利用される記憶デバイスを含んでいてもよい。
【0037】
上記構成の燃料電池装置100における、改質水が不足する場合の補水制御、および、その補水制御の途中で浄化装置の破過が発生した場合の制御は、つぎのように行なわれる。
【0038】
まず、
図2および
図3に示す一連の制御フローは、浄化処理済凝縮水である、改質水タンク2内の改質水の貯水量が、予め定められた水量(水位)を下回った場合、すなわち、改質水タンク2に配設された、運転停止の是非を判断するための低水位よりも高い位置に配置された水検知器WL
1(
図1参照)が、水の存在を示す水検出信号を発信しなくなった場合に、「スタート」する。
【0039】
なお、制御フローは、燃料電池装置100の制御装置6が備える記憶装置7に記憶された制御プログラムに従って実行されるものである。コンピュータ等を含む記憶装置7には、フローのスタート時に、補水用のイオン交換樹脂の破過が近いことを表すコンピュータフラグ「Fa」(以降、CPフラグ)と、補水用のイオン交換樹脂が破過したことを表すCPフラグ「Fw」とが、設定されるものとする。
【0040】
また、制御装置6は、プログラムが実行可能か否かを判断するために、
図2のフローチャートのステップ7〔S7〕および
図3のフローチャートのステップ15〔S15〕に記載の「第一条件」、すなわち、第2のイオン交換樹脂容器32の上部に配設された電気伝導率計WC
1により測定された導電率(E)が、第一値(E1=60μS)を既に上回っていないか否かを、フローがスタートする前に予め確認してもよい。
【0041】
図2に示す、本実施形態の燃料電池装置100の制御装置6による燃料電池の制御方法および制御プログラムの実施は、改質水タンク2に配設された水検知器WL
1からの水検出信号が途切れた時点で〔スタート〕する。なお、以下の説明では、各ステップを「S」と省略して呼称する。たとえば、ステップ1,ステップ2・・・は、それぞれ、〔S1〕,〔S2〕・・・と称する。図中も同じである。
【0042】
フローがスタートすると、制御装置6は、まず、〔S1〕として、外部水導入用の、水補給流路Gに配設された電磁開閉式の止水弁V1を開けて、外部水である水道水を第2のイオン交換樹脂容器32に導入し、補水を開始する。以降、外部水を「水道水」とする。
【0043】
水道水を供給する補水は、第1時間(T1)の間行なわれ〔S1〕、第1時間T1経過後、電磁開閉式の止水弁V1が、制御装置6の指示により閉じられる〔S2〕。なお、第1時間T1とは、数秒~数十秒の時間である。この例では、たとえば3.5秒である。
【0044】
つぎに、制御装置6は、〔S3〕において、止水弁V1を閉じた後、前述のように止水弁V1が開いていた時間、すなわちこの例では第1時間T1を、記憶装置7に記憶する。そして、既に記憶されている、以前の弁V1の「開」時間と合計・積算して、累積値である累積開弁時間(OT)を算出し、記録する。
【0045】
この場合、得られた累積開弁時間OTは、浄化装置(イオン交換樹脂)を経由した外部から補給される水の総量を示す積算値(V)である。
【0046】
ついで、制御装置6は、本開示における「第二条件」を用いて、「浄化装置の破過が近いか否か」の判定を行なう、破過予知制御を実行する。なお、本実施形態において、第二条件としては、累積開弁時間OTとして記録されている「浄化装置(イオン交換樹脂)を経由した外部から補給される水(補水)の総量を示す積算値(V)が、所定の第二値(V2)以上となったか否か」が設定されている。また、第二値V2としては、たとえば、「2.0時間」が設定されている。
【0047】
すなわち、制御装置6は、〔S4〕の分岐判断(破過予知制御)において、前記得られた、補水の積算総量Vと、予め定められた第二値V2とを比較して、積算総量Vが第二値V2となった場合、すなわち「第二値V2以上」の[Yes]の場合、〔S5〕において、前述の補水用のイオン交換樹脂の破過が近いことを表すCPフラグFaを、非を表す「0」から是を表す「1」に書き換える。なお、CPフラグFaが既に「1」になっている場合は、「1」を維持する。
【0048】
一方、〔S4〕の分岐判断において、積算総量Vが第二値V2となっていない場合、すなわち「第二値V2未満」の[No]の場合は、フローチャートにおける〔S9〕に移行し、改質水タンク3に配設された水検知器WL1からの水検出信号の有無を確認して、補水の継続の要否を判断する。
【0049】
なお、上記「破過予知」の条件および値は、「第二条件」および「第二値」としているが、これらの「第二」との語句は、各条件および値の優先順や重要度を表すものではない。後記の破過判定条件を最初に、「第一条件」および「第一値」と規定したことに続いて、2番目に規定したという意味である。第二条件は「破過予知の条件」と読み替えてもよい。
【0050】
また、〔S4〕での判断が[No]の場合に移行する〔S9〕においては、このフローのスタート条件と同様に、改質水タンク2に配設された第一水位センサから、水検出信号が送られてきていなければ、〔S1〕に戻って、止水弁V1を第1時間T1の間開け、補水を繰返すループを行なう。
【0051】
〔S9〕において、改質水タンク2に配設された第一水位センサが水を検知して信号を発信して[Yes]おり、改質水タンク2内の貯水量が回復したことが確認されれば、制御装置6は、外部水(水道水)の補給を終了する〔S10〕。なお、以降、〔S6〕,〔S7〕から〔S9〕に移行した場合も、同様の制御であるため、以下では〔S9〕での制御および〔S10〕について説明は省略する。
【0052】
そして、
図2のフローチャートには記載していないが、〔S5〕において「1」に書き換えられたCPフラグFaは、この後、浄化装置(イオン交換樹脂)の破過または寿命が近づいていることの、表示または音、合成音声などを用いた外部への連絡、通報、信号伝達等の発信または発報(第一発報)の制御に利用される。
【0053】
具体的には、浄化装置(イオン交換樹脂)の破過または寿命に関連する異常以外の、メンテナンスが必要となる「他の異常」が発生し、管理者もしくはユーザ等へのメンテナンスの要請等の通報または発報(第二発報)が必要になった場合に、制御装置6は、そのメンテナンスの要請の情報(「他の異常」の内容)に併せて、前述の「浄化装置(補水用のイオン交換樹脂)の破過が近い」ことの情報を、同時または同じようなタイミングで、外部に伝達するようになっている。これは、本開示における「第一発報制御」の一例である。
【0054】
前述の「他の異常」の具体例としては、たとえば燃料電池モジュール本体の温度異常、発電量の低下、失火等の機器異常や、外気温の上昇または低下、原燃料となる都市ガスの圧力低下、空気の圧送流量の低下、水道圧の低下、貯湯タンクの水位低下等の動作環境・条件の変化、あるいは、燃料電池の運転を補助する各補機の動作異常などがあげられる。
【0055】
このように、浄化装置の破過が近いことの情報が、浄化装置の破過(破過判定制御の実行)または「他の異常」が発生した機器あるいは補機等のメンテナンス作業に先んじて、第一発報として発報されていると、そのメンテナンス作業の前に、予め、交換用の新たな補水用イオン交換樹脂を準備したり、メンテナンス作業の行動予定に、補水用イオン交換樹脂の交換作業を組み込んだりすることが可能になる。
【0056】
したがって、補水用のイオン交換樹脂を交換するのみのメンテナンス作業が、他のメンテナンス作業に連動することなく、それのみのメンテナンスが単独で発生することが、未然に防がれている。
【0057】
また、「他の異常」に依るメンテナンス時に、改質水タンク2内の水を排水(水抜き)することもある。この場合、燃料電池の運転再開前に、この改質水タンク2内に、外部水(水道水)を、所定量まで補水(水張り)する必要がある。この水張り工程の最中に、前述の補水用のイオン交換樹脂が破過することも考えられる。
【0058】
その場合も、前述のように、CPフラグFaが「1」で、「補水用のイオン交換樹脂の破過が近い」ことの情報が、第一発報として既に発報されていれば、水張り作業に先んじて、補水用のイオン交換樹脂を交換しておくことにより、このイオン交換樹脂の破過およびその破過による発報や補水の緊急停止等が、改質水タンク2の水張りの工程中に発生するのを、予防することができる。
【0059】
なお、破過予知制御および「第二条件」における「破過が近い」との判定は、累積開弁時間OTと、予め設定された水道水の時間当たりの流量との積を演算して求めた総量を、判断基準(判定要素)としてもよい。
【0060】
また、たとえば、外部水である水道水の、第2のイオン交換樹脂容器32への時間あたり流入量を計測するフローメーター、あるいは、量水計等を備える場合、それらのセンサから得られる値である水量を積算して、この累積水量の値を判断基準としてもよい。
【0061】
つぎに、フローチャートの〔S5〕において、CPフラグFaの書き換えおよび第一発報の完了した制御装置6は、〔S6〕において、浄化装置(イオン交換樹脂)を経由した水道水(補水)の総量を示す積算値Vが、所定の第三値(V3)以上となったか否か、すなわち、補水の積算総量Vが、イオン交換樹脂が破過したと推定される第三値V3を超えたか否か、の判定を行なう。なお、この条件は、本開示において第三の条件であり、第三値V3としては、たとえば、「2.3時間」が設定される。
【0062】
〔S6〕の分岐判断において、補水の積算総量Vと、予め定められた第三値V3とを比較して、積算総量Vが第三値V3以上の[Yes]である場合、制御装置6は、イオン交換樹脂の「破過」の最終判断である〔S7〕に進む。
【0063】
また、〔S6〕の分岐判断において、積算総量Vが第三値V3未満の[No]の場合、制御装置6の制御は、〔S4〕で[No]の場合と同様、〔S9〕に移行して、改質水タンク3に配設された第一水位センサからの水検出信号の有無を確認し、補水の継続の要否を判断する(詳細は前述のため省略)。
【0064】
ついで、先の〔S6〕において、補水の積算総量Vが第三値V3以上[Yes]であった場合、制御装置6は、先に述べたように、〔S7〕において、補水用のイオン交換樹脂の「破過」の判定、すなわち、本開示における「第一条件」を用いて、「浄化装置が破過したか否か」を判定する、破過判定制御を実行する。
【0065】
なお、本実施形態において、第一条件としては、「浄化装置(イオン交換樹脂)により浄化された水の導電率(E)が所定の第一値(E1)以上となったか否か」が設定されている。また、第一値E1としては、たとえば、60μSが設定される。
【0066】
制御装置6は、〔S7〕の分岐判断(破過判定制御)において、得られた導電率の値Eと、予め定められた第一値E1とを比較して、導電率Eが第一値E1以上の[Yes]の場合、〔S8〕において、先に述べた補水用のイオン交換樹脂が破過したことを表すCPフラグFwを、非を表す「0」から是を表す「1」に書き換える。その後、
図2に示す一連の制御フローと、燃料電池の制御方法および制御プログラムの実行を停止する〔エンド〕。
【0067】
ここで、イオン交換樹脂が最終的に破過したことを表すCPフラグFwが「1」となっている場合、破過したイオン交換樹脂のメンテナンスが完了するまで、外部水導入用止水栓の電磁弁を開けて補水することはない。ただし、このように補水がされずに発電運転が継続される場合、回収される凝縮水の量が増えなければ改質水タンク2の水位は徐々に低下していくことになる。
【0068】
そして、低水位位置の水検知器WL2からの水検出信号が途絶えれば、制御装置6は、改質水タンク2内の改質水の貯水量が危険レベルにまで低下していると判断する。改質水タンク2内の水位が低水位以下となった場合には、一度発電運転を停止させてメンテナンスを施す必要がある。
【0069】
そこで、制御装置6は、発電運転の停止に伴って、改質水タンク2内の水位が低水位以下となったことの情報およびイオン交換樹脂が破過していることの情報を、たとえば表示装置8等を通じて外部に発報する。なお、手動でのメンテナンスが完了するまでは、発電運転を再開することができない。
【0070】
一方、「他の異常」の発生および前述の第一発報がなされ、イオン交換樹脂が破過する前にメンテナンスを完了できれば、イオン交換樹脂の破過が原因で改質水タンク2内の改質水の貯水量が危険レベルにまで低下し、発電運転が停止されることを抑制できる。
【0071】
したがって、実施形態の燃料電池装置100では、このような、イオン交換樹脂が最終的な「破過」に至り、燃料電池が長時間停止するような事態を抑制できる。その結果、実施形態の燃料電池装置100は、イオン交換樹脂の破過を原因とする燃料電池の稼動率の低下を、抑えることができる。
【0072】
なお、本実施形態においては、〔S1〕において外部水導入用止水栓の電磁弁を第1時間(T1)開いたのち〔S2〕において止水弁の電磁弁を閉じた後に、破過予知制御や、破過判定制御を実行している。しかしながら、他の実施形態として、外部水導入用止水栓の電磁弁を第1時間(T1)開いている間、常時破過予知制御や、破過判定制御を実行するように構成してもよい。
【0073】
図3に示す、他の実施形態の燃料電池装置100の制御装置6による燃料電池の制御方法および制御プログラムの実施は、改質水タンク2に配設された水検知器WL
1からの水検出信号が途切れた時点で〔スタート〕する。フローがスタートすると、制御装置6は、まず、〔S11〕として、外部水導入用の、水補給流路Gに配設された電磁開閉式の止水弁V1を開閉して、水道水を第2のイオン交換樹脂容器32に導入し、補水を開始する。
【0074】
水道水を供給する補水は、電磁開閉式の止水弁V1が、制御装置6の指示により所定時間開いた後、所定時間閉じる開閉動作を繰り返すことで行われる。止水弁V1の開時間は、たとえば3.5秒であり、閉時間は、たとえば12秒である。
【0075】
制御装置6は、本開示における「第二条件」を用いて、「浄化装置の破過が近いか否か」の判定を行なう、破過予知制御を実行する。なお、本実施形態において、第二条件としては、「止水弁V1の開閉動作が、所定の第一回数(N1)より大きいか否か」が設定されている。また、第一回数としては、たとえば、「500回」が設定されている。
【0076】
すなわち、制御装置6は、〔S12〕の分岐判断(破過予知制御)において、止水弁V1の開閉動作回数Nと、予め定められた第一回数N1とを比較して、開閉動作回数Nが第一回数より大きい[Yes]の場合、〔S13〕において、前述の補水用のイオン交換樹脂の破過が近いことを表すCPフラグFaを、非を表す「0」から是を表す「1」に書き換える。なお、CPフラグFaが既に「1」になっている場合は、「1」を維持する。
【0077】
また、〔S12〕での判断が[No]の場合に移行する〔S17〕においては、このフローのスタート条件と同様に、改質水タンク2に配設された第一水位センサから、水検出信号が送られてきていなければ、〔S11〕に戻って、止水弁V1を開閉して、補水を繰返すループを行なう。
【0078】
〔S17〕において、改質水タンク2に配設された第一水位センサが水を検知して信号を発信して[Yes]おり、改質水タンク2内の貯水量が回復したことが確認されれば、制御装置6は、外部水(水道水)の補給を終了する〔S18〕。なお、以降、〔S14〕,〔S15〕から〔S17〕に移行した場合も、同様の制御であるため、以下では〔S17〕での制御および〔S18〕について説明は省略する。
【0079】
そして、
図3のフローチャートには記載していないが、〔S13〕において「1」に書き換えられたCPフラグFaは、この後、浄化装置(イオン交換樹脂)の破過または寿命が近づいていることの、表示または音、合成音声などを用いた外部への連絡、通報、信号伝達等の発信または発報(第一発報)の制御に利用される。
【0080】
つぎに、フローチャートの〔S13〕において、CPフラグFaの書き換えおよび第一発報の完了した制御装置6は、〔S14〕において、止水弁V1の開閉動作回数Nが、予め定められた第二回数N2より大きくなったか否か、すなわち、開閉動作回数Nが、イオン交換樹脂が破過したと推定される第二回数N2より大きいか否か、の判定を行なう。なお、この条件は、本開示において第三の条件であり、第二回数N2としては、たとえば、「600回」が設定される。
【0081】
〔S14〕の分岐判断において、開閉動作回数Nと、予め定められた第二回数N2とを比較して、開閉動作回数Nが第二回数N2より大きい[Yes]である場合、制御装置6は、イオン交換樹脂の「破過」の最終判断である〔S15〕に進む。
【0082】
また、〔S14〕の分岐判断において、開閉動作回数Nが第二回数N2以下の[No]の場合、制御装置6の制御は、〔S12〕で[No]の場合と同様、〔S17〕に移行して、改質水タンク3に配設された第一水位センサからの水検出信号の有無を確認し、補水の継続の要否を判断する(詳細は前述のため省略)。
【0083】
ついで、先の〔S14〕において、止水弁V1の開閉動作回数Nが第二回数N2より大きい[Yes]であった場合、制御装置6は、先に述べたように、〔S15〕において、補水用のイオン交換樹脂の「破過」の判定、すなわち、本開示における「第一条件」を用いて、「浄化装置が破過したか否か」を判定する、破過判定制御を実行する。
【0084】
制御装置6は、〔S15〕の分岐判断(破過判定制御)において、得られた導電率の値Eと、予め定められた第一値E1とを比較して、導電率Eが第一値E1を超える「第一値E1以上」の[Yes]の場合、〔S16〕において、先に述べた補水用のイオン交換樹脂が破過したことを表すCPフラグFwを、非を表す「0」から是を表す「1」に書き換える。その後、
図3に示す一連の制御フローと、燃料電池の制御方法および制御プログラムの実行を停止する〔エンド〕。
【0085】
以上、詳述したように、本実施形態の燃料電池装置および、その制御プログラム、制御方法は、燃料電池装置100が備える制御装置6が、所定の第一条件が満たされた場合に浄化装置(補水用のイオン交換樹脂)が破過したと判定する破過判定制御と、所定の第二条件が満たされた場合に前記浄化装置の破過が近いと判定する破過予知制御と、前記浄化装置の破過が近いことの情報を外部に発報する第一発報制御と、前記浄化装置の破過および前記浄化装置の破過が近いこと以外の、メンテナンスが必要となる他の異常が発生した場合に、他の異常の情報を外部に発報する第二発報制御と、を実行可能であり、前記第二発報制御が実行された場合に、前記第一発報制御を実行する構成を有しているため、イオン交換樹脂の交換やメンテナンスのために燃料電池が停止する時間を、低減することができる。また、メンテナンスの作業時間や待ち時間を低減し、手間を簡略化したり省いたりすることができる。
【0086】
その結果、燃料電池の稼働時間に占める発電運転時間の割合が増え、稼働率が向上する。したがって、本実施形態の燃料電池装置の制御は、燃料電池を、効率よく運転することができる。
【符号の説明】
【0087】
1 燃料電池モジュール
2 改質水タンク
3 第1改質水タンク
32 第2のイオン交換樹脂容器(浄化装置)
4 第2改質水タンク
5 補水装置
6 制御装置
7 記憶装置
100 燃料電池装置
【0088】
V1 止水弁
G 水補給流路
WC1 電気伝導率計
WL1 水検知器(第1水位センサ)
WL2 水検知器(第2水位センサ)