(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-07
(45)【発行日】2023-12-15
(54)【発明の名称】リチウムイオン電池用樹脂集電体
(51)【国際特許分類】
H01M 4/66 20060101AFI20231208BHJP
【FI】
H01M4/66 A
(21)【出願番号】P 2019192883
(22)【出願日】2019-10-23
【審査請求日】2022-10-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000002288
【氏名又は名称】三洋化成工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000001339
【氏名又は名称】グンゼ株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】519100310
【氏名又は名称】APB株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】弁理士法人WisePlus
(72)【発明者】
【氏名】草野 亮介
(72)【発明者】
【氏名】工藤 峻
(72)【発明者】
【氏名】都藤 靖泰
(72)【発明者】
【氏名】大西 一彰
(72)【発明者】
【氏名】礒 健大
(72)【発明者】
【氏名】堀江 英明
【審査官】佐溝 茂良
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/005116(WO,A1)
【文献】特開2019-169272(JP,A)
【文献】特開2019-153587(JP,A)
【文献】特開2019-139914(JP,A)
【文献】特開2016-186917(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/64-4/84
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
マトリックス樹脂、導電性フィラー及び導電性フィラー用分散剤を含む導電性樹脂層を有するリチウムイオン電池用樹脂集電体であって、
前記導電性フィラー用分散剤が、ブロック(A1)とブロック(A2)とを有する共重合体であり、
前記ブロック(A1)が、エチレン及びプロピレンを必須構成単量体とするブロックであり、
前記ブロック(A2)が、カルボキシル基を有するエチレン性不飽和モノマー(a)を必須構成単量体とするブロックであり、
前記導電性フィラー用分散剤の酸価が15~55mgKOH/gであり、
前記導電性フィラー用分散剤の融点が120~145℃であるリチウムイオン電池用樹脂集電体。
【請求項2】
前記導電性フィラー用分散剤の重量平均分子量が、20,000~60,000である請求項1に記載のリチウムイオン電池用樹脂集電体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リチウムイオン電池用樹脂集電体に関する。
【背景技術】
【0002】
リチウムイオン電池は、高電圧、高エネルギー密度という特徴を持つことから、近年様々な用途に多用されている。
リチウムイオン電池においては、従来、集電体として金属箔(金属集電箔)が用いられてきた。近年、金属箔に代わって金属粉が添加された樹脂から構成される、いわゆる樹脂集電体が提案されている(例えば、特許文献1参照)。このような樹脂集電体は、金属集電箔と比較して軽量であり、電池の単位重量あたりの出力向上が期待される。
【0003】
しかしながら、従来の樹脂集電体では導電性フィラーの分散性が不十分であり、充放電特性といった電池としての性能が低下する等の課題があった。この課題に対して、樹脂集電体を構成するマトリックス樹脂、導電性フィラー及び導電性フィラー用分散剤の最適化の努力がなされてきた(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2012-150896号公報
【文献】国際公開第2015/005116号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
樹脂集電体には、電気抵抗値が低く、出来るだけ薄い性質が求められている。しかし、特許文献2等に記載の樹脂集電体用材料は、薄膜化するとピンホール等の欠陥が生じやすい。そのため、ピンホールの無い薄い樹脂集電体を得るためには、未だ改善の余地があると言える。
本発明は、電気抵抗値が低く、かつ薄膜成形性に優れたリチウムイオン電池用樹脂集電体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、これらの課題を解決するべく鋭意検討した結果、本発明に到達した。すなわち本発明は、マトリックス樹脂、導電性フィラー及び導電性フィラー用分散剤を含む導電性樹脂層を有するリチウムイオン電池用樹脂集電体であって、前記導電性フィラー用分散剤が、ブロック(A1)とブロック(A2)とを有する共重合体であり、前記ブロック(A1)が、エチレン及びプロピレンを必須構成単量体とするブロックであり、前記ブロック(A2)が、カルボキシル基を有するエチレン性不飽和モノマー(a)を必須構成単量体とするブロックであり、前記導電性フィラー用分散剤の酸価が15~55mgKOH/gであり、前記導電性フィラー用分散剤の融点が120~145℃であるリチウムイオン電池用樹脂集電体である。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、電気抵抗値が低く、かつ薄膜成形性に優れたリチウムイオン電池用樹脂集電体を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明は、マトリックス樹脂、導電性フィラー及び導電性フィラー用分散剤を含む導電性樹脂層を有するリチウムイオン電池用樹脂集電体であって、前記導電性フィラー用分散剤が、ブロック(A1)とブロック(A2)とを有する共重合体であり、前記ブロック(A1)が、エチレン及びプロピレンを必須構成単量体とするブロックであり、前記ブロック(A2)が、カルボキシル基を有するエチレン性不飽和モノマー(a)を必須構成単量体とするブロックであり、前記導電性フィラー用分散剤の酸価が15~55mgKOH/gであり、前記導電性フィラー用分散剤の融点が120~145℃であるリチウムイオン電池用樹脂集電体である。
【0009】
本発明のリチウムイオン電池用樹脂集電体は、マトリックス樹脂、導電性フィラー及び導電性フィラー用分散剤を含む導電性樹脂層を有する。なお、本発明でいうマトリックス樹脂は、導電性樹脂層の基材となる樹脂を指す。
【0010】
(マトリックス樹脂)
前記マトリックス樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン、ポリシクロオレフィン、ポリエチレンテレフタレート、ポリエーテルニトリル、ポリテトラフルオロエチレン、スチレンブタジエンゴム、ポリアクリロニトリル、ポリメチルアクリレート、ポリメチルメタクリレート、ポリフッ化ビニリデン、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂又はこれらの混合物等が挙げられる。
電気的安定性の観点から、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン及びポリシクロオレフィンが好ましく、さらに好ましくはポリエチレン、ポリプロピレン及びポリメチルペンテンである。
【0011】
前記マトリックス樹脂の含有量は、樹脂強度の観点から、前記導電性樹脂層の重量を基準として、20~98重量%が好ましく、さらに好ましくは40~95重量%であり、特に好ましくは60~92重量%である。
【0012】
(導電性フィラー)
前記導電性フィラーとしては、導電性を有する材料であれば特に制限はなく、具体的には、金属[ニッケル、アルミニウム、ステンレス(SUS)、銀、銅及びチタン等]、カーボン[グラファイト及びカーボンブラック(アセチレンブラック、ケッチェンブラック、ファーネスブラック、チャンネルブラック、サーマルランプブラック等)等]、及びこれらの混合物等が挙げられるが、これらに限定されるわけではない。
これらの導電性フィラーは1種単独で用いられてもよいし、2種以上併用してもよい。
また、これらの合金又は金属酸化物が用いられてもよい。
前記導電性フィラーとしては、電気的安定性の観点から、好ましくはニッケル、アルミニウム、ステンレス、カーボン、銀、銅、チタン及びこれらの混合物であり、さらに好ましくはニッケル、銀、アルミニウム、ステンレス及びカーボンであり、特に好ましくはニッケル及びカーボンである。またこれらの導電性フィラーは、粒子系セラミック材料や樹脂材料の周りに導電性材料(前記した導電性フィラーのうち金属のもの)をめっき等でコーティングしたものでもよい。
【0013】
前記導電性フィラーの形状(形態)は、粒子形態に限られず、粒子形態以外の形態であってもよく、カーボンナノチューブなど、いわゆるフィラー系導電性樹脂組成物として実用化されている形態であってもよい。
【0014】
前記導電性フィラーの平均粒子径は、特に限定されるものではないが、電池の電気特性の観点から、0.01~10μm程度であることが好ましい。なお、本明細書中において、「粒子径」とは、導電性フィラーの輪郭線上の任意の2点間の距離のうち、最大の距離Lを意味する。「平均粒子径」の値としては、走査型電子顕微鏡(SEM)や透過型電子顕微鏡(TEM)などの観察手段を用い、数~数十視野中に観察される粒子の粒子径の平均値として算出される値を採用するものとする。
【0015】
前記導電性フィラーの含有量は、導電性フィラーの分散性の観点から、前記導電性樹脂層の重量を基準として、1~79重量%が好ましく、さらに好ましくは2~30重量%、特に好ましくは5~25重量%である。
【0016】
(導電性フィラー用分散剤)
前記導電性樹脂層は、前記マトリックス樹脂、前記導電性フィラー及び導電性フィラー用分散剤を含む。前記導電性フィラー用分散剤は前記マトリックス樹脂中に前記導電性フィラーを分散させるものである。
前記導電性フィラー用分散剤は、ブロック(A1)とブロック(A2)とを有する共重合体であり、前記ブロック(A1)が、エチレン及びプロピレンを必須構成単量体とするブロックであり、前記ブロック(A2)が、カルボキシル基を有するエチレン性不飽和モノマー(a)を必須構成単量体とするブロックである。
【0017】
前記ブロック(A1)は、エチレン及びプロピレンを必須構成単量体とするブロックである。具体的には、エチレンとプロピレンとを共重合したブロック、エチレン及びプロピレンと炭素数4~30のα-オレフィン及び/又は他の単量体とを共重合したブロック等が挙げられる。
前記α-オレフィンとしては、例えば、1-ブテン、1-ペンテン、3-メチル-1-ブテン、1-ヘキセン、4-メチル-1-ペンテン、3-メチル-1-ペンテン、1-ヘプテン、1-オクテン、1-ノネン、1-デセン、1-ドデセン、1-テトラデセン、1-ヘキサデセン、1-オクタデセン、1-エイコセン、1-テトラコセン、1-トリアコンテン等が挙げられる。
前記他の単量体としては、例えば、オレフィンとの反応性を有する炭素数4~30であってオレフィンを除く不飽和単量体(酢酸ビニル等)等が挙げられる。
【0018】
前記ブロック(A1)は、例えば、従来のオレフィン重合体を製造する方法(例えばバルク法、溶液法、スラリー法及び気相法等)で製造したオレフィン重合体(A’1)(例えば、エチレンとプロピレンの共重合体)に、熱減成反応等で二重結合を導入したものであることが好ましい。
【0019】
前記熱減成法には、前記オレフィン重合体(A’1)を窒素通気下で、(1)有機過酸化物(ジクミルパーオキサイド、ジ-t-ブチルパーオキサイド等)不存在下、300~450℃で0.5~10時間、連続的又は非連続的に熱減成する方法、及び(2)有機過酸化物存在下、180~300℃で0.5~10時間、連続的又は非連続的に熱減成する方法等が含まれる。
これらの前記(1)、(2)の方法のうち好ましいのは、前記ブロック(A1)の分子末端及び/又はポリマー鎖中の二重結合数のより多いものが得やすい(1)の方法である。
【0020】
前記ブロック(A1)の分子末端及び/又はポリマー鎖中の二重結合数は、前記導電性フィラー用分散剤の酸価を好適に調整する観点から、好ましくは0.4~2.0であり、さらに好ましくは0.8~2.0であり、特に好ましくは1.2~2.0である。
前記ブロック(A1)における二重結合数の測定は、1H-NMR(核磁気共鳴)分光法のスペクトルから求めることができる。すなわち、前記測定で得られたスペクトル中のピークを帰属し、4.5~6.0ppmにおける二重結合由来の積分値と、0.5~2.0ppmにおける飽和炭化水素基由来のピークの積分値との比率から算出する。後述の実施例における二重結合数の測定は当該方法に従った。
【0021】
前記ブロック(A1)の重量平均分子量[以下、Mwと略記する。測定は後述するゲルパーミエイションクロマトグラフィー(GPC)法による。]は、13,000~58,000が好ましく、さらに好ましくは15,000~50,000である。
【0022】
本明細書において、GPCによるMwの測定条件は以下のとおりである。
装置:高温ゲルパーミエイションクロマトグラフ[「Alliance GPC V2000」、Waters(株)製]
溶媒:オルトジクロロベンゼン
基準物質:ポリスチレン
サンプル濃度:3mg/ml
カラム固定相:PLgel 10μm、MIXED-B 2本直列[ポリマーラボラトリーズ(株)製]
カラム温度:135℃
なお、後述の実施例におけるMwの測定は当該方法に従った。
【0023】
前記ブロック(A2)は、カルボキシル基を有するエチレン性不飽和モノマー(a)を必須構成単量体とするブロックである。
前記エチレン性不飽和モノマー(a)としては、不飽和モノカルボン酸[炭素数3~15、例えば、(メタ)アクリル酸、クロトン酸及び桂皮酸等]、不飽和ジカルボン酸[脂肪族化合物(炭素数4~24、例えばマレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸及びメサコン酸)、芳香族化合物(炭素数10~24、例えばジカルボキシスチレン)及び脂環式化合物(炭素数8~24、例えばジカルボキシシクロヘキセン及びジカルボキシシクロヘプテン)、並びに、これらの酸無水物等]、3価~4価又はそれ以上のポリカルボン酸[脂肪族化合物(炭素数6~24、例えばアコニット酸)及び脂環式(炭素数7~24、例えばトリカルボキシシクロペンテン、トリカルボキシシクロヘキセン及びトリカルボキシシクロオクテン)等]、多価カルボン酸の部分アルキル(炭素数1~18)エステル(マレイン酸モノメチルエステル、フマル酸モノエチルエステル、イタコン酸モノ-t-ブチルエステル、メサコン酸モノデシルエステル、ジカルボキシシクロヘプテンジドデシルエステル等)及びその塩(アルカリ金属塩及びアンモニウム塩)等が挙げられる。
なかでも、反応性の観点から、不飽和ジカルボン酸(又はその酸無水物)が好ましく、さらに好ましくは不飽和ジカルボン酸の酸無水物であり、特に好ましくは無水マレイン酸である。
【0024】
前記ブロック(A2)を構成する、前記エチレン性不飽和モノマー(a)の割合は、前記導電性フィラーの分散性の観点から、前記ブロック(A2)の重量を基準として、50~100重量%が好ましく、さらに好ましくは60~100重量%であり、特に好ましくは70~100重量%である。
【0025】
前記ブロック(A2)中のカルボキシル基の合計モル濃度は、前記導電性フィラーの分散性の観点から、0.0001~0.03モル/gが好ましく、さらに好ましくは0.001~0.028モル/gであり、特に好ましくは0.01~0.025モル/gである。
前記ブロック(A2)中の前記カルボキシル基の合計モル濃度は、前記導電性フィラー用分散剤を製造する際の前記エチレン性不飽和モノマー(a)の仕込み量から、下記数式により算出することができる。
合計モル濃度=Σ{(エチレン性不飽和モノマー(a)の仕込み量)/(エチレン性不飽和モノマー(a)の分子量)}/{エチレン性不飽和モノマー(a)の合計仕込み量}
なお、前記カルボキシル基の合計モル濃度の算出にあたっては、2個以上のカルボキシル基を有するエチレン性不飽和モノマー(a)を用いる場合は、前記エチレン性不飽和モノマー(a)の仕込み量に官能基の数をかけた値を「エチレン性不飽和モノマー(a)の仕込み量」として算出する。
【0026】
前記導電性フィラー用分散剤中のカルボキシル基の合計モル濃度は、導電性フィラーの分散性の観点から、0.00005~0.015モル/gが好ましく、さらに好ましくは0.0005~0.014モル/gである。
前記導電性フィラー用分散剤中のカルボキシル基の合計モル濃度は、前記導電性フィラー用分散剤について13C-NMR及びIR(赤外分光)を測定し、モル濃度の分かっている試料を用いて求めた検量線に当てはめることで算出できる。
また、前記導電性フィラー用分散剤中のカルボキシル基の合計モル濃度は、前記導電性フィラー用分散剤を製造する際の仕込み量から、下記数式により算出することもできる。
合計モル濃度=Σ{(エチレン性不飽和モノマー(a)の仕込み量)/(エチレン性不飽和モノマー(a)の分子量)}/(導電性フィラー用分散剤を構成するモノマーの合計仕込み量)
なお、前記カルボキシル基の合計モル濃度の算出にあたっては、2個以上のカルボキシル基を有するエチレン性不飽和モノマー(a)を用いる場合は、前記エチレン性不飽和モノマー(a)の仕込み量にカルボキシル基の数をかけた値を「エチレン性不飽和モノマー(a)の仕込み量」として算出する。
【0027】
前記導電性フィラー用分散剤は、前記ブロック(A1)と前記ブロック(A2)とを有する共重合体であるが、前記導電性フィラーの分散性の観点から、重量比{ブロック(A1)/ブロック(A2)}が好ましくは50/50~99/1であり、さらに好ましくは60/40~98/2であり、特に好ましくは70/30~95/5である。
【0028】
前記導電性フィラー用分散剤の製造方法としては、例えば、上述した熱減成反応等で二重結合を導入したブロック(A1)に、前記ブロック(A2)を付加する方法等が挙げられる。
【0029】
前記導電性フィラー用分散剤は、例えば、前記ブロック(A1)と前記ブロック(A2)とをラジカル発生源[ラジカル開始剤(b)、熱、光等]の存在下で反応させることにより得られる。ここでいう反応とは、前記ブロック(A1)が有する二重結合への前記ブロック(A2)の付加反応を指す。反応の有無は、反応前後の混合物{ブロック(A1)とブロック(A2)との混合物}が有する二重結合の数の減少で判断する。
前記二重結合数の測定は、1H-NMR(核磁気共鳴)分光法のスペクトルから求めることができる。すなわち、前記測定で得られたスペクトル中のピークを帰属し、前記混合物の4.5~6.0ppmにおける二重結合由来の積分値及び前記混合物由来の積分値から、前記混合物の二重結合数と前記混合物の炭素数の相対値を求め、前記混合物の炭素1,000個当たりの該分子末端及び/又はポリマー鎖中の二重結合数を算出する。後述の実施例における分散剤を製造する際の反応の有無も同方法に従って確認した。
【0030】
前記ラジカル開始剤(b)としては、アゾ化合物[アゾビスイソブチロニトリル、アゾビスイソバレロニトリル等]、過酸化物〔単官能(分子内にパーオキシド基を1個有するもの)(ベンゾイルパーオキシド、ジ-t-ブチルパーオキシド、ラウロイルパーオキシド、ジクミルパーオキシド等)および多官能(分子内にパーオキシド基を2個以上有するもの)[2,2-ビス(4,4-ジ-t-ブチルパーオキシシクロヘキシル)プロパン、ジ-t-ブチルパーオキシヘキサヒドロテレフタレート、ジアリルパーオキシジカーボネート等]〕等が挙げられる。
これらのうち前記ブロック(A1)と前記ブロック(A2)との反応性の観点からラジカル開始剤(b)として好ましいのは、過酸化物、さらに好ましいのは単官能過酸化物、とくに好ましいのはジ-t-ブチルパーオキシド、ラウロイルパーオキシド、ジクミルパーオキシドである。
【0031】
前記ラジカル開始剤(b)の使用量は、反応性及び副反応抑制の観点から、前記ブロック(A1)と前記ブロック(A2)の合計重量に基づいて好ましくは0.05~10重量%、さらに好ましくは0.2~5重量%、とくに好ましくは0.5~3重量%である。
【0032】
前記導電性フィラー用分散剤の酸価は、15~55mgKOH/gである。前記導電性フィラー用分散剤の酸価が15mgKOH/g未満であると前記マトリックス樹脂中の前記導電性フィラーの分散性が悪化して樹脂集電体の電気抵抗が大きくなり、前記導電性フィラー用分散剤の酸価が55mgKOH/gを超えると樹脂集電体の薄膜成形性が悪化する傾向がある。
前記分散剤の酸価は、35~55mgKOH/gであることが好ましい。
【0033】
前記導電性フィラー用分散剤の酸価は、JIS K 0070に準じて以下の(i)~(iii)の手順で測定して得られる値である。
(i)100℃に温度調整したキシレン100gに前記導電性フィラー用分散剤1gを溶解させる。
(ii)フェノールフタレインを指示薬として、0.1mol/L水酸化カリウムエタノール溶液[商品名「0.1mol/Lエタノール性水酸化カリウム溶液」、富士フイルム和光純薬(株)製]で中和滴定を行う。
(iii)中和滴定に要した水酸化カリウム量をmgに換算して酸価(単位:mgKOH/g)を算出する。
なお、前記測定では1個の酸無水物基は1個のカルボキシル基と等価になる結果が得られる。後述の実施例における酸価は当該方法に従った。
【0034】
前記導電性フィラー用分散剤の酸価を前記範囲にする方法としては、前記導電性フィラー用分散剤中の前記エチレン性不飽和モノマー(a)の重量割合をコントロールすることで酸価を調整することができる。
【0035】
前記導電性フィラー用分散剤の融点は120~145℃である。前記導電性フィラー用分散剤の融点が120℃未満又は145℃を超えると、前記マトリックス樹脂との粘度差が大きくなり過ぎるため前記導電性フィラーの分散性が悪化する。
前記導電性フィラーの分散性の観点から、前記導電性フィラー用分散剤の融点は135~145℃であることが好ましく、140~145℃であることがより好ましい。
なお、本発明において融点とはDSC(示差走査熱量測定)を用い、JIS K 7122(転移熱測定法)に準じて測定される融解ピーク温度を意味する。DSCに用いる装置としては、DSC2910[商品名、ティー・エイ・インスツルメント(株)製]等が挙げられる。後述の実施例における融点は当該方法、機器を用いて測定した。
【0036】
前記導電性フィラー用分散剤の融点を前記範囲にする方法としては、前記熱減成法(1)の方法において加熱温度、加熱時間を調整すればよい。加熱温度は高いほど、加熱時間は長いほど、前記分散剤の融点は低くなる傾向にある。
【0037】
前記導電性フィラー用分散剤の重量平均分子量[以下、Mwと略記する。測定は後述するゲルパーミエイションクロマトグラフィー(GPC)法による。]は、20,000~60,000であることが好ましい。前記導電性フィラー用分散剤のMwが前記範囲であると樹脂集電体の機械的強度が良化する。
前記導電性フィラー用分散剤のMwは、さらに好ましくは20,000~50,000であり、特に好ましくは25,000~40,000である。
【0038】
本発明におけるGPCによるMwの測定条件は以下のとおりである。
装置:高温ゲルパーミエイションクロマトグラフ[「Alliance GPC V2000」、Waters(株)製]
溶媒:オルトジクロロベンゼン
基準物質:ポリスチレン
サンプル濃度:3mg/ml
カラム固定相:PLgel 10μm、MIXED-B 2本直列[ポリマーラボラトリーズ(株)製]
カラム温度:135℃
【0039】
前記導電性フィラー用分散剤のMwを前記範囲にする方法としては、前記熱減成法(1)の方法において加熱温度、加熱時間を調整すればよい。加熱温度は高いほど、加熱時間は長いほど、前記分散剤Mwは小さくなる傾向にある。
【0040】
前記導電性フィラー用分散剤の含有量は、前記導電性樹脂層の重量を基準として0.1~10重量%含有することが好ましく、より好ましくは1~7重量%、特に好ましくは3~5重量%である。前記導電性フィラー用分散剤の含有量が、前記導電性樹脂層の重量を基準として0.1~10重量%であると樹脂集電体の機械的強度が良化する。
【0041】
(リチウムイオン電池用樹脂集電体)
本発明のリチウムイオン電池用樹脂集電体は、例えば、以下の方法で製造することができる。
まず、マトリックス樹脂、導電性フィラー、導電性フィラー用分散剤及び、必要に応じてその他の成分を混合することにより、樹脂集電体用材料を得る。
混合の方法としては、導電性フィラーのマスターバッチを得てから、さらにマトリックス樹脂と混合する方法、マトリックス樹脂、導電性炭素フィラー、導電性フィラー用分散剤及び、必要に応じてその他の成分のマスターバッチを用いる方法、及び、全ての原料を一括して混合する方法等があり、その混合にはペレット状又は粉体状の成分を適切な公知の混合機、例えばニーダー、インターナルミキサー、バンバリーミキサー及びロールを用いることができる。
【0042】
混合時の各成分の添加順序には特に限定はない。得られた混合物は、さらにペレタイザーなどによりペレット化又は粉末化してもよい。
【0043】
得られた樹脂集電体用材料を例えばフィルム状に成形することにより、本発明のリチウムイオン電池用樹脂集電体が有する導電性樹脂層が得られる。フィルム状に成形する方法としては、Tダイ法、インフレーション法及びカレンダー法等の公知のフィルム成形法が挙げられる。なお、導電性樹脂層は、フィルム成形以外の成形方法によっても得ることができる。
【0044】
本発明のリチウムイオン電池用樹脂集電体としては、前記導電性樹脂層をそのまま集電体として使用することもできるし、他の導電性樹脂層や金属層と積層して使用してもよい。
前記金属層を構成する材料としては、銅、アルミニウム、チタン、ステンレス鋼、ニッケル及びこれらの合金等の金属材料等が挙げられる。また、前記導電性樹脂層の表面に金属めっき処理、蒸着処理、スパッタリング処理等によって導電膜を形成して集電体として供することもできる。
【実施例】
【0045】
次に本発明を実施例によって具体的に説明するが、本発明の主旨を逸脱しない限り本発明は実施例に限定されるものではない。なお、特記しない限り部は重量部、%は重量%を意味する。
【0046】
<製造例1:ブロック(A1-1)の製造>
反応容器に、プロピレン、エチレンを構成単位とするメタロセン触媒を使用したポリオレフィン(A0-1)[商品名「ウィンテックWFX6」、日本ポリプロ(株)製]100部を仕込み、気相部分に工業用窒素(純度99.999体積%)を通気しながら、マントルヒーターにて加熱溶融し、攪拌しながら360℃で18分間熱減成を行い、ブロック(A1-1)を得た。ブロック(A1-1)の炭素1000個当たりの分子末端の二重結合数は0.4個、Mwは50,000であった。
【0047】
<製造例2:ブロック(A1-2)の製造>
反応容器に、プロピレン、エチレンを構成単位とするチーグラナッタ触媒を使用したポリオレフィン(A0-2)[商品名「サンアロマーPM854X」、サンアロマー(株)製]100部を仕込み、気相部分に工業用窒素(純度99.999%)を通気しながら、マントルヒーターにて加熱溶融し、攪拌しながら360℃で37分間熱減成を行い、ブロック(A1-2)を得た。ブロック(A1-2)の炭素1000個当たりの分子末端の二重結合数は2.0個、Mwは15,000であった。
【0048】
<製造例3:ブロック(A1-3)の製造>
反応容器に、プロピレン、エチレンを構成単位とするチーグラナッタ触媒を使用したポリオレフィン(A0-3)[商品名「サンアロマーPZA-20A」、サンアロマー(株)製]100部を仕込み、気相部分に工業用窒素(純度99.999%)を通気しながら、マントルヒーターにて加熱溶融し、攪拌しながら360℃で30分間熱減成を行い、ブロック(A1-3)を得た。ブロック(A1-3)の炭素1000個当たりの分子末端の二重結合数は1.2個、Mwは15,000であった。
【0049】
<製造例4:ブロック(A1-4)の製造>
反応容器に、プロピレン、エチレンを構成単位とするメタロセン触媒を使用したポリオレフィン(A0-4)[商品名「バーシファイ3000」、ダウケミカル(株)製]100部を仕込み、気相部分に工業用窒素(純度99.999%)を通気しながら、マントルヒーターにて加熱溶融し、攪拌しながら360℃で37分間熱減成を行い、ブロック(A1-4)を得た。ブロック(A1-4)の炭素1000個当たりの分子末端の二重結合数は2.0個、Mwは16,000であった。
【0050】
<製造例5:ブロック(A1-5)の製造>
反応容器に、前記ポリオレフィン(A0-2)100部を仕込み、気相部分に工業用窒素(純度99.999%)を通気しながら、マントルヒーターにて加熱溶融し、攪拌しながら360℃で26分間熱減成を行い、ブロック(A1-5)を得た。ブロック(A1-5)の炭素1000個当たりの分子末端の二重結合数は0.8個、Mwは40,000であった。
【0051】
<製造例6:ブロック(A1-6)の製造>
反応容器に、前記ポリオレフィン(A0-1)100部を仕込み、気相部分に工業用窒素(純度99.999%)を通気しながら、マントルヒーターにて加熱溶融し、攪拌しながら360℃で15分間熱減成を行い、ブロック(A1-6)を得た。ブロック(A1-6)の炭素1000個当たりの分子末端の二重結合数は0.2個、Mwは64,000であった。
【0052】
<製造例7:ブロック(A1-7)の製造>
反応容器に、前記ポリオレフィン(A0-3)100部を仕込み、気相部分に工業用窒素(純度99.999%)を通気しながら、マントルヒーターにて加熱溶融し、攪拌しながら360℃で39分間熱減成を行い、ブロック(A1-7)を得た。ブロック(A1-7)の炭素1000個当たりの分子末端の二重結合数は2.2個、Mwは8,000であった。
【0053】
<製造例8:ブロック(A1-8)の製造>
反応容器に、前記ポリオレフィン(A0-2)100部を仕込み、気相部分に工業用窒素(純度99.999%)を通気しながら、マントルヒーターにて加熱溶融し、攪拌しながら360℃で15分間熱減成を行い、ブロック(A1-8)を得た。ブロック(A1-8)の炭素1000個当たりの分子末端の二重結合数は0.2個、Mwは60,000であった。
【0054】
<製造例9:導電性フィラー用分散剤(1)の製造>
反応容器にブロック(A1-1)100部と、ブロック(A2)として無水マレイン酸3部を仕込み、工業用窒素(純度99.999%)通気下、200℃まで加熱昇温して10時間攪拌を続けた。その後、減圧下(1.5kPa、以下同じ)で未反応の無水マレイン酸を留去して、導電性フィラー用分散剤(1)を得た。導電性フィラー用分散剤(1)の酸価は15mgKOH/g、融点は120℃、Mwは52,000であった。
【0055】
<製造例10:導電性フィラー用分散剤(2)の製造>
製造例9のブロック(A1-1)をブロック(A1-2)に、無水マレイン酸の仕込み量を3部から11部に変更した以外は製造例9と同じ操作を行い、導電性フィラー用分散剤(2)を得た。導電性フィラー用分散剤(2)の酸価は55mgKOH/g、融点は145℃、Mwは28,000であった。
【0056】
<製造例11:導電性フィラー用分散剤(3)の製造>
製造例9のブロック(A1-1)をブロック(A1-3)に、無水マレイン酸の仕込み量を3部から6.9部に変更した以外は製造例9と同じ操作を行い、導電性フィラー用分散剤(3)を得た。導電性フィラー用分散剤(3)の酸価は35mgKOH/g、融点は135℃、Mwは32,000であった。
【0057】
<比較製造例1:導電性フィラー用分散剤(4)の製造>
製造例9のブロック(A1-1)をブロック(A1-4)に、無水マレイン酸の仕込み量を3部から11部に変更した以外は製造例9と同じ操作を行い、導電性フィラー用分散剤(4)を得た。導電性フィラー用分散剤(4)の酸価は55mgKOH/g、融点は115℃、Mwは30,000であった。
【0058】
<比較製造例2:導電性フィラー用分散剤(5)の製造>
製造例9のブロック(A1-1)をブロック(A1-5)に、無水マレイン酸の仕込み量を3部から5.1部に変更した以外は製造例9と同じ操作を行い、導電性フィラー用分散剤(5)を得た。導電性フィラー用分散剤(5)の酸価は26mgKOH/g、融点は150℃、Mwは45,000であった。
【0059】
<比較製造例3:導電性フィラー用分散剤(6)の製造>
製造例9のブロック(A1-1)をブロック(A1-6)に、無水マレイン酸の仕込み量を3部から2.3部に変更した以外は製造例9と同じ操作を行い、導電性フィラー用分散剤(6)を得た。導電性フィラー用分散剤(6)の酸価は11mgKOH/g、融点は124℃、Mwは70,000であった。
【0060】
<比較製造例4:導電性フィラー用分散剤(7)の製造>
製造例9のブロック(A1-1)をブロック(A1-7)に、無水マレイン酸の仕込み量を3部から12.1部に変更した以外は製造例9と同じ操作を行い、導電性フィラー用分散剤(7)を得た。導電性フィラー用分散剤(7)の酸価は60mgKOH/g、融点は135℃、Mwは28,000であった。
【0061】
<比較製造例5:導電性フィラー用分散剤(8)の製造>
製造例9のブロック(A1-1)をブロック(A1-8)に、無水マレイン酸の仕込み量を3部から2.3部に変更した以外は製造例9と同じ操作を行い、導電性フィラー用分散剤(8)を得た。導電性フィラー用分散剤(8)の酸価は11mgKOH/g、融点は150℃、Mwは65,000であった。
【0062】
【0063】
<実施例1>
2軸押出機にて、マトリックス樹脂としてポリプロピレン[商品名「サンアロマーPC684S」、サンアロマー(株)製]70部、導電性フィラーとしてファーネスブラック[商品名「#3030B」、三菱ケミカル(株)製]25部、導電性フィラー用分散剤(1)5部を180℃、100rpm、滞留時間5分の条件で溶融混錬して正極用樹脂集電体材料を得た。得られた正極用樹脂集電体材料を、熱プレス機により圧延して導電性樹脂層を形成し、これを正極用樹脂集電体(W-1)とした。
【0064】
<実施例2、3及び比較例1~5>
表2に記載の組成に変更した他は実施例1と同様にして、正極用樹脂集電体材料を得て、熱プレス機により圧延して導電性樹脂層をそれぞれ形成し、これらを正極用樹脂集電体(W-2)、(W-3)及び(RW-1)~(RW-5)とした。
【0065】
<実施例4>
2軸押出機にて、マトリックス樹脂としてポリプロピレン[商品名「サンアロマーPC684S」、サンアロマー(株)製]32部、導電性フィラーとしてニッケル粒子[Type255、ヴァーレ・ジャパン(株)製]65部、導電性フィラー用分散剤(1)3部を180℃、100rpm、滞留時間5分の条件で溶融混錬して負極用樹脂集電体材料を得た。得られた負極用樹脂集電体材料を、熱プレス機により圧延して導電性樹脂層をそれぞれ形成し、これを負極用樹脂集電体(Z-1)とした。
【0066】
<実施例5、6及び比較例6、7>
表3に記載の組成に変更した他は実施例4と同様にして、負極用樹脂集電体材料を得て、熱プレス機により圧延して導電性樹脂層をそれぞれ形成し、これらを負極用樹脂集電体(Z-2)、(Z-3)及び(RZ-1)、(RZ-2)とした。
【0067】
[薄膜成形性評価]
実施例1~6及び比較例1~7で得られた樹脂集電体材料を用いて、実施例1~6及び比較例1~7における熱プレスでの圧延条件を変えて膜厚調整を行った。下記ピンホール試験の結果、ピンホールがなく、最も薄く製造できた樹脂集電体の膜厚を薄膜成形性の指標とした。結果は表2及び3に記載した。
【0068】
<膜厚測定>
実施例1~6及び比較例1~7で得られた樹脂集電体の膜厚は、マイクロメーター[ミツトヨ製]を用いて、各サンプル5か所測定し、その平均値をそのサンプルの膜厚とした。結果は表2及び3に記載した。
【0069】
<ピンホール試験>
SUS製の容器にメタノールを厚さ1~2mm程度入れたものを準備し、そこに10cm×20cmに裁断した実施例1~6及び比較例1~7で得られた樹脂集電体を浮かせて、樹脂集電体が沈まないように注意しながら樹脂集電体の上面を軽くたたき、樹脂集電体の表面にメタノールが染み出てこないかを目視で確認した。1か所でもメタノールが染み出てきたらピンホールがあるとみなした。
【0070】
前記のピンホール試験においてピンホールがなく、最も薄く製造できた樹脂集電体の膜厚が50μm以下であった場合は◎(優)、50μmを超えてかつ80μm以下であった場合を○(良)、80μmを超えてかつ90μm以下であった場合を△(可)、90μmを超えた場合を×(不良)とした。結果は表2及び3に記載した。
【0071】
[電気抵抗性評価]
前記薄膜成形性評価で得られた最も薄く製造できた樹脂集電体のそれぞれについて、電気抵抗性の指標として貫通抵抗値を測定した。貫通抵抗値は電池材料のバルク(厚み方向)の電気抵抗性の指標となる。結果は表2及び3に記載した。
【0072】
<貫通抵抗値測定>
貫通抵抗値の測定は以下の通り行った。
前記薄膜成形性評価で得られた最も薄く製造できた樹脂集電体を3cm×10cm程度の短冊に裁断し、電気抵抗測定器[IMC-0240型、井元製作所(株)]及び抵抗器[RM3548、HIOKI製]を用いて各樹脂集電体の抵抗値を測定した。
電気抵抗測定器に2.16kgの荷重をかけた状態での樹脂集電体の抵抗値を測定し、2.16kgの荷重をかけてから60秒後の値をその樹脂集電体の抵抗値とした。下記の式に示すように、抵抗測定時の冶具の接触表面の面積(3.14cm2)をかけた値を貫通抵抗値とした。結果は表2及び3に記載した。
貫通抵抗値(Ω・cm2)=抵抗値(Ω)×3.14(cm2)
【0073】
<貫通抵抗値評価>
前記貫通抵抗値の測定で得られた貫通抵抗値が3.0Ω/cm2以下であった場合を◎(優)、3.0Ω/cm2を超えてかつ8.0Ω/cm2以下であった場合を〇(良)、8.0Ω/cm2を超えてかつ16.0Ω/cm2以下であった場合を△(可)、16.0Ω/cm2を超えた場合を×(不良)とした。結果は表2及び3に記載した。
【0074】
【0075】
【0076】
実施例1~6で得られたリチウムイオン電池用樹脂集電体は、電気抵抗値が低く、かつ、薄膜成形性に優れることが確認された。
一方で、比較例1、2、5及び7で得られたリチウムイオン電池用樹脂集電体の結果から、導電性フィラー用分散剤の融点が120℃未満又は145℃を超えると電気抵抗性評価が悪化することが確認された。
また、比較例3~5、6及び7で得られたリチウムイオン電池用樹脂集電体の結果から、導電性フィラー用分散剤の酸価が15mgKOH/g未満であると電気抵抗性評価が悪化し、55mgKOH/gを超えると薄膜成形性評価が悪化することが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0077】
本発明のリチウムイオン電池用樹脂集電体は、特に、携帯電話、パーソナルコンピューター及びハイブリッド自動車、電気自動車用に用いられるリチウムイオン電池用の集電体として有用である。