(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-07
(45)【発行日】2023-12-15
(54)【発明の名称】エポキシ樹脂系塗料組成物、積層塗膜および塗膜の補修方法
(51)【国際特許分類】
C09D 163/00 20060101AFI20231208BHJP
C09D 7/63 20180101ALI20231208BHJP
B05D 7/04 20060101ALI20231208BHJP
B05D 7/24 20060101ALI20231208BHJP
B05D 3/00 20060101ALI20231208BHJP
B05D 1/36 20060101ALI20231208BHJP
B32B 27/38 20060101ALI20231208BHJP
B32B 27/30 20060101ALI20231208BHJP
【FI】
C09D163/00
C09D7/63
B05D7/04
B05D7/24 302P
B05D3/00 D
B05D1/36 Z
B05D7/24 301U
B32B27/38
B32B27/30 A
(21)【出願番号】P 2019217032
(22)【出願日】2019-11-29
【審査請求日】2022-10-25
(73)【特許権者】
【識別番号】390033628
【氏名又は名称】中国塗料株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001070
【氏名又は名称】弁理士法人エスエス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】児玉 真尚
【審査官】小久保 敦規
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-047558(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D 1/00 - 10/00
C09D 101/00 - 201/10
C08G 59/00 - 59/72
B32B 1/00 - 43/00
B05D 1/00 - 7/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性樹脂を含む塗膜上に塗装され、
下記要件(1)を満たし、かつ、
脂肪族系または脂環式ジグリシジルエーテル(C)
、アミン硬化剤(B)、および、前記脂肪族系または脂環式ジグリシジルエーテル(C)以外のエポキシ化合物(A)を含有
し、
前記エポキシ化合物(A)の含有量に対する前記脂肪族系または脂環式ジグリシジルエーテル(C)の含有量の比が0.4~1.2である、エポキシ樹脂系塗料組成物。
要件(1):前記エポキシ樹脂系塗料組成物から形成した乾燥膜厚150μmの塗膜の20℃における貯蔵弾性率が1,200MPa以上6,000MPa以下である
【請求項2】
溶剤の含有量が0~10質量%である、請求項
1に記載のエポキシ樹脂系塗料組成物。
【請求項3】
前記熱可塑性樹脂が(メタ)アクリル系樹脂である、請求項1
または2に記載のエポキシ樹脂系塗料組成物。
【請求項4】
熱可塑性樹脂を含む塗膜と、
請求項1~
3のいずれか1項に記載のエポキシ樹脂系塗料組成物から形成された塗膜と
を有する、積層塗膜。
【請求項5】
熱可塑性樹脂を含む塗膜上に、請求項1~
3のいずれか1項に記載のエポキシ樹脂系塗料組成物から塗膜を形成する工程を含む、塗膜の補修方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エポキシ樹脂系塗料組成物、積層塗膜および塗膜の補修方法に関する。
【背景技術】
【0002】
船舶や橋梁等の基材には、上塗り塗膜として、(メタ)アクリル系樹脂を代表とする熱可塑性樹脂を含む塗膜が形成されている。しかしながら、このような熱可塑性樹脂を含む塗膜、特に(メタ)アクリル系樹脂塗膜は、フクレやクラックなどの塗膜劣化(塗膜欠陥)が発生しやすいという問題があった。
【0003】
このため、熱可塑性樹脂を含む塗膜に欠陥が生じた場合、通常、補修することが要求される。この補修の際に、該基材上に存在している塗膜(以下「旧塗膜」ともいう。)を除去せず、そのまま新たに上塗り塗料を塗り直すことができれば、旧塗膜の除去に要する工程や費用等を大幅に削減できるため、このような補修方法が望まれている。
【0004】
しかしながら、熱可塑性樹脂を含む旧塗膜に新たに上塗り塗料を塗り直すと、新たに形成した塗膜に、フクレ、クラック、リフティング(しわ)、中膿みなどの塗膜欠陥が生じやすく、基材に、所望の機能を付与することができないため、従来は、劣化した塗膜部分を取り除き、新たに上塗り塗料を塗り直すという補修方法が専ら行われていた。
また、旧塗膜上に、該旧塗膜を構成する樹脂と異なる樹脂系の塗膜を形成すること(以下「異種塗膜への塗り替え」ともいう。)が求められる場合もあるが、この場合は、該異種塗膜に特に塗膜欠陥が生じやすいため、従来は、旧塗膜を全て除去し、新たに上塗り塗料を塗り直すという補修方法しか行われていなかった。
【0005】
このような問題に対し、特許文献1には、塩化ゴム系塗料やビニル系塗料からなる旧塗膜を全面剥離しなくても、クラック等が生じない塗膜を形成することが可能な旧塗膜の補修方法として、旧塗膜の表面に、伸び率が所定の範囲にある2つの層を塗装する方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載の塗料等の従来の塗料を、熱可塑性樹脂を含む塗膜、特に(メタ)アクリル系樹脂塗膜上に形成した場合には、形成される塗膜に、フクレ、クラック、リフティング(しわ)、中膿みなどの塗膜欠陥が発生しやすく、該塗膜欠陥を十分に抑制できないことが分かった。
【0008】
本発明は、前記課題に鑑みてなされたものであり、熱可塑性樹脂を含む塗膜上に、フクレ、クラック、リフティング(しわ)および中膿みなどの塗膜欠陥の発生が抑制された塗膜を形成可能なエポキシ樹脂系塗料組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは前記課題を解決すべく鋭意検討した。その結果、下記構成例によれば、前記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。本発明の構成例は、以下の通りである。
【0010】
[1] 熱可塑性樹脂を含む塗膜上に塗装され、下記要件(1)を満たし、かつ、脂肪族系または脂環式ジグリシジルエーテル(C)を含有する、エポキシ樹脂系塗料組成物。
要件(1):前記エポキシ樹脂系塗料組成物から形成した乾燥膜厚150μmの塗膜の20℃における貯蔵弾性率が1,200MPa以上6,000MPa以下である
【0011】
[2] アミン硬化剤(B)、および、前記脂肪族系または脂環式ジグリシジルエーテル(C)以外のエポキシ化合物(A)を含有する、[1]に記載のエポキシ樹脂系塗料組成物。
【0012】
[3] 熱可塑性樹脂を含む塗膜上に塗装され、脂肪族系または脂環式ジグリシジルエーテル(C)、アミン硬化剤(B)、および、前記脂肪族系または脂環式ジグリシジルエーテル(C)以外のエポキシ化合物(A)を含有し、かつ、エポキシ化合物(A)の含有量に対する脂肪族系または脂環式ジグリシジルエーテル(C)の含有量の比が0.4~1.2である、エポキシ樹脂系塗料組成物。
【0013】
[4] 溶剤の含有量が0~10質量%である、[1]~[3]のいずれかに記載のエポキシ樹脂系塗料組成物。
【0014】
[5] 前記熱可塑性樹脂が(メタ)アクリル系樹脂である、[1]~[4]のいずれかに記載のエポキシ樹脂系塗料組成物。
【0015】
[6] 熱可塑性樹脂を含む塗膜と、
[1]~[5]のいずれかに記載のエポキシ樹脂系塗料組成物から形成された塗膜と
を有する、積層塗膜。
【0016】
[7] 熱可塑性樹脂を含む塗膜上に、[1]~[5]のいずれかに記載のエポキシ樹脂系塗料組成物から塗膜を形成する工程を含む、塗膜の補修方法。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、フクレ、クラック、リフティング(しわ)および中膿みなどの塗膜欠陥の発生が抑制された、特に、冷熱サイクル後であってもこのような塗膜欠陥の発生が抑制された塗膜を、熱可塑性樹脂を含む塗膜上、特に(メタ)アクリル系樹脂塗膜上に形成することができる。また、本発明によれば、基材上に形成された塗膜を形成する樹脂系と異なる異種塗膜への塗り替えが可能となる。
つまり、本発明によれば、基材上に形成された塗膜を除去することなく、従来より工程や費用等を大幅に削減しながら、塗膜欠陥が抑制された塗膜(異種塗膜を含む)を形成することができる。従って、本発明によれば、従来より工程や費用等を大幅に削減しながらも、基材上に形成された塗膜を補修することができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
≪エポキシ樹脂系塗料組成物≫
本発明に係るエポキシ樹脂系塗料組成物(以下「本組成物」ともいう。)は、熱可塑性樹脂を含む塗膜上に塗装され、
(I)下記要件(1)を満たし、かつ、脂肪族系または脂環式ジグリシジルエーテル(C)を含有する組成物、または、
(II)下記要件(2)を満たす組成物
であり、下記要件(1)および(2)を満たすことが好ましい。
要件(1):前記エポキシ樹脂系塗料組成物から形成した乾燥膜厚150μmの塗膜の20℃における貯蔵弾性率が1,200MPa以上6,000MPa以下である
要件(2):前記エポキシ樹脂系塗料組成物が、脂肪族系または脂環式ジグリシジルエーテル(C)、アミン硬化剤(B)、および、前記脂肪族系または脂環式ジグリシジルエーテル(C)以外のエポキシ化合物(A)を含有し、かつ、エポキシ化合物(A)の含有量に対する脂肪族系または脂環式ジグリシジルエーテル(C)の含有量の比が0.4~1.2である
なお、以下、前記(I)を満たす本組成物を「本組成物1」ともいい、前記(II)を満たす本組成物を「本組成物2」ともいう。
【0019】
以下、本組成物が塗装される前記「熱可塑性樹脂を含む塗膜」を「旧塗膜」ともいい、本組成物から形成される塗膜を「本塗膜」ともいう。
なお、本発明における「旧塗膜」とは、本組成物が塗装される対象であり、本組成物が塗装される前に基材上に存在している塗膜のことをいう。該旧塗膜には、塗膜が形成されてからの経年や使用等により塗膜劣化(塗膜欠陥)が生じた劣化塗膜のみならず、塗膜劣化が生じていない塗膜も含まれる。後者の場合、例えば、間違えて熱可塑性樹脂を含む塗膜を形成してしまい、その補修のために本組成物を塗装する場合が挙げられる。
【0020】
本組成物によれば、旧塗膜上に本塗膜が積層された積層塗膜が得られる。該積層塗膜は、該積層塗膜が形成される基材に応じて、本塗膜をトップコートとしてもよく、本塗膜上に、さらに1層または2層以上の他の塗膜(以下「上塗り塗膜」ともいう。)を形成してもよい。
以下、本塗膜をトップコートとする場合には、旧塗膜と本塗膜の積層体を、前記上塗り塗膜をさらに形成する場合には、旧塗膜と本塗膜と上塗り塗膜との積層体を、「本積層塗膜」ともいう。
【0021】
本組成物1から形成した塗膜の20℃における貯蔵弾性率は、1,200~6,000MPaであり、本組成物2から形成した塗膜の20℃における貯蔵弾性率は、好ましくは7,000MPa以下、より好ましくは6,000MPa以下であり、好ましくは1,200MPa以上である。
本組成物から形成した塗膜の20℃における貯蔵弾性率は、さらに好ましくは5,000MPa以下、特に好ましくは4,800MPa以下である。該貯蔵弾性率の下限は特に制限されないが、より好ましくは1,500MPa以上、さらに好ましくは1,800MPa以上である。
本塗膜の貯蔵弾性率が前記範囲にあると、フクレ、クラック、リフティング(しわ)および中膿みなどの塗膜欠陥の発生が抑制された本積層塗膜を容易に得ることができる。また、旧塗膜がフクレやクラック等を有する劣化塗膜であっても、フクレやクラック等の発生が抑制された本積層塗膜を形成することができる。
本塗膜の貯蔵弾性率が前記範囲を下回ると、フクレ、クラック、リフティング(しわ)および中膿みなどの塗膜欠陥の発生を抑えきれない傾向にあり、本塗膜の貯蔵弾性率が前記範囲を上回ると、硬くて脆い塗膜になる傾向にある。
前記貯蔵弾性率は、具体的には後述する実施例に記載の方法で測定できる。
前記貯蔵弾性率は、例えば、組成物中のエポキシ化合物(A)と脂肪族系または脂環式ジグリシジルエーテル(C)との量を調整することで制御することができる。
【0022】
本組成物は、1成分型の組成物であってもよいが、2成分型以上の組成物であることが好ましい。特に本組成物2の場合、通常、エポキシ化合物(A)を含有する主剤成分と、アミン硬化剤(B)を含有する硬化剤成分とを含む2成分型以上の組成物である。また、必要により、主剤成分および硬化剤成分以外のその他の成分を含む3成分型以上の組成物としてもよい。
これら主剤成分、硬化剤成分およびその他の成分は、通常、それぞれ別個の容器にて保存、貯蔵、運搬等され、使用直前に混合して用いられる。
【0023】
<熱可塑性樹脂を含む塗膜>
前記熱可塑性樹脂を含む塗膜(旧塗膜)とは、熱可塑性樹脂を含有する塗膜のことをいい、船舶や橋梁等の基材に形成されている上塗り塗膜と同様の塗膜のことをいう。熱可塑性樹脂を含む塗膜が含有する熱可塑性樹脂の割合は、特に限定されないが、50質量%以上であることが好ましい。
前記旧塗膜は、2層以上の積層体であってもよい。
【0024】
この旧塗膜における熱可塑性樹脂としては特に制限されず、船舶や橋梁等の基材に用いられてきた従来公知の熱可塑性樹脂が挙げられる。該熱可塑性樹脂としては、具体的には、例えば、ポリエステル系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、スチレン系樹脂、塩化ビニル系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、塩素化ポリオレフィン、合成ゴムが挙げられる。
なお、本発明における「(メタ)アクリル」は、アクリル、メタクリル、または、アクリルとメタクリルとの両方を包括する概念である。
【0025】
これらの中でも、(メタ)アクリル系樹脂を含む塗料から形成された旧塗膜(以下「アクリル旧塗膜」ともいう。)を除去することなく、フクレ、クラック、リフティング(しわ)および中膿みなどの塗膜欠陥の発生が抑制された本積層塗膜、特に異種塗膜を形成することは、従来容易ではなかったため、本発明の効果がより発揮される等の点から、前記旧塗膜、特に本組成物の塗装対象となる表面旧塗膜としては、アクリル旧塗膜が好ましい。
【0026】
前記アクリル旧塗膜を形成する(メタ)アクリル樹脂系塗料組成物としては特に制限されず、例えば、特開2016-180051号公報、特開2018-44162号公報、特開2019-56064号公報等の記載に基づいて調製した塗料組成物であってもよく、中国塗料(株)製の、アクリシリーズ等の市販品であってもよい。
【0027】
前記旧塗膜の厚みは特に制限されない。また、前記旧塗膜が2層以上の積層体である場合には、旧塗膜の厚みは、それぞれの層の和である。
【0028】
<エポキシ化合物(A)>
エポキシ化合物(A)としては、前記グリシジルエーテル(C)および後述のシランカップリング剤以外のエポキシ基を有する化合物であれば特に制限されないが、例えば、分子内に2個以上のエポキシ基を含むポリマーまたはオリゴマー、そのエポキシ基の開環反応によって生成するポリマーまたはオリゴマーが挙げられる。
エポキシ化合物(A)は、1種単独で用いてもよく、2種以上を用いてもよい。
【0029】
エポキシ化合物(A)としては、例えば、ビスフェノール型エポキシ樹脂、グリシジルエーテル型エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、クレゾール型エポキシ樹脂、アルキルフェノール型エポキシ樹脂、ダイマー酸変性エポキシ樹脂、脂肪族エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、エポキシ化油系エポキシ樹脂が挙げられる。
これらの中でも、旧塗膜に対する密着性に優れ、さらに防食性を有する本塗膜を容易に得ることができる等の点から、ビスフェノール型エポキシ樹脂およびアルキルフェノール型エポキシ樹脂が好ましく、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、アルキルフェノール型エポキシ樹脂がより好ましく、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂が特に好ましい。
【0030】
エポキシ化合物(A)としては、具体的には、例えば、エピクロルヒドリン-ビスフェノールAエポキシ樹脂(ビスフェノールAジグリシジルエーテルタイプ);エピクロルヒドリン-ビスフェノールADエポキシ樹脂;エピクロルヒドリン-ビスフェノールFエポキシ樹脂;エポキシノボラック樹脂;3,4-エポキシフェノキシ-3',4'-エポキシフェニルカルボキシメタン等から得られる脂環式エポキシ樹脂;エピクロルヒドリン-ビスフェノールAエポキシ樹脂中のベンゼン環に結合している水素原子の少なくとも1つが臭素原子で置換された臭素化エポキシ樹脂;エピクロルヒドリンと脂肪族2価アルコールとから得られる脂肪族エポキシ樹脂;エピクロルヒドリンとトリ(ヒドロキシフェニル)メタンとから得られる多官能性エポキシ樹脂が挙げられる。
【0031】
前記ビスフェノール型エポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA型、ビスフェノールF型のエポキシ樹脂を始め、ダイマー酸変性、ポリサルファイド変性等の変性ビスフェノール型エポキシ樹脂、これらのエポキシ樹脂の水添物が挙げられる。
【0032】
前記ビスフェノールA型エポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールAジグリシジルエーテル、ビスフェノールA(ポリ)プロピレンオキシドジグリシジルエーテル、ビスフェノールA(ポリ)エチレンオキシドジグリシジルエーテル、水添ビスフェノールAジグリシジルエーテル、水添ビスフェノールA(ポリ)プロピレンオキシドジグリシジルエーテル、水添ビスフェノールA(ポリ)エチレンオキシドジグリシジルエーテル等のビスフェノールA型ジグリシジルエーテル類などの縮重合物が挙げられる。
【0033】
エポキシ化合物(A)は、ハイソリッド型の塗料組成物を容易に調製することができ、さらに、旧塗膜に対する密着性に優れる本塗膜を容易に形成できる等の点から、常温(15~25℃の温度、以下同様。)で液状または半固形状のものが好ましく、液状のものがより好ましく、JIS K 7233に基づいて、25℃において測定した粘度が1,000mPa・sを超え20,000mPa・s以下のものが特に好ましい。
【0034】
エポキシ化合物(A)のエポキシ当量は、旧塗膜に対する密着性に優れ、さらに防食性を有する本塗膜を容易に得ることができる等の点から、好ましくは150~1,000、より好ましくは150~800、特に好ましくは150~700である。
該エポキシ当量は、JIS K 7236:2001に基づいて算出される。
【0035】
エポキシ化合物(A)は、従来公知の方法で合成して得たものを用いてもよく、市販品を用いてもよい。
該市販品としては、常温で液状のものとして、「E-028」(大竹明新化学(株)製、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、エポキシ当量180~190、固形分100%)、「jER807」(三菱ケミカル(株)製、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、エポキシ当量160~175、固形分100%)、「E-028-90X」(大竹明新化学(株)製、ビスフェノールA型エポキシ樹脂のキシレン溶液(828タイプエポキシ樹脂溶液、エポキシ当量200~210、固形分90%)、「HP-820」(DIC(株)製、アルキルフェノール型エポキシ樹脂、エポキシ当量150~200、固形分100%)等が挙げられ、常温で半固形状のものとして、「jER834」(三菱ケミカル(株)製、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、エポキシ当量230~270、固形分100%)、「E-834-85X」(大竹明新化学(株)製、ビスフェノールA型エポキシ樹脂のキシレン溶液(834タイプエポキシ樹脂溶液、エポキシ当量270~320、固形分85%)等が挙げられ、常温で固形状のものとして、「jER1001」(三菱ケミカル(株)製、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、エポキシ当量450~500、固形分100%)、「E-001-75」(大竹明新化学(株)製、ビスフェノールA型エポキシ樹脂のキシレン溶液(1001タイプエポキシ樹脂溶液)、エポキシ当量600~660、固形分75%)等が挙げられる。
【0036】
本組成物の固形分(溶剤以外の成分)100質量%に対するエポキシ化合物(A)の含有量は、旧塗膜に対する密着性に優れ、さらに防食性を有する本塗膜を容易に得ることができる等の点から、好ましくは5~40質量%、より好ましくは10~30質量%である。
また、本組成物が主剤成分と硬化剤成分とからなる2成分型の塗料組成物である場合、エポキシ化合物(A)は主剤成分に含まれ、該主剤成分の固形分100質量%中のエポキシ化合物(A)の含有量は、前記と同様の理由から、好ましくは5~80質量%、より好ましくは5~50質量%である。
【0037】
<アミン硬化剤(B)>
アミン硬化剤(B)としては3級アミン(3級アミノ基のみを有するアミン化合物)を除くアミン化合物であれば特に制限されないが、脂肪族系、脂環式、芳香族系、複素環系アミン硬化剤などのアミン化合物が好ましい。なお、これらアミン化合物は、アミノ基が結合している炭素の種類により区別され、例えば、脂肪族系アミン硬化剤とは、脂肪族炭素に結合したアミノ基を少なくとも1つ有する化合物のことをいう。
アミン硬化剤(B)は、1種単独で用いてもよく、2種以上を用いてもよい。
【0038】
前記脂肪族系アミン硬化剤としては、例えば、アルキレンポリアミン、ポリアルキレンポリアミン、アルキルアミノアルキルアミンが挙げられる。
【0039】
前記アルキレンポリアミンとしては、例えば、式:「H2N-R1-NH2」(R1は、炭素数1~12の二価の炭化水素基である。)で表される化合物が挙げられ、具体的には、メチレンジアミン、エチレンジアミン、1,2-ジアミノプロパン、1,3-ジアミノプロパン、1,4-ジアミノブタン、1,5-ジアミノペンタン、1,6-ジアミノヘキサン、1,7-ジアミノヘプタン、1,8-ジアミノオクタン、1,9-ジアミノノナン、1,10-ジアミノデカン、トリメチルヘキサメチレンジアミン等が挙げられる。
【0040】
前記ポリアルキレンポリアミンとしては、例えば、式:「H2N-(CmH2mNH)nH」(mは1~10の整数である。nは2~10の整数であり、好ましくは2~6の整数である。)で表される化合物が挙げられ、具体的には、ジエチレントリアミン、ジプロピレントリアミン、トリエチレンテトラミン、トリプロピレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、テトラプロピレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミン、ノナエチレンデカミン、ビス(ヘキサメチレン)トリアミン、トリエチレン-ビス(トリメチレン)ヘキサミン等が挙げられる。
【0041】
これら以外の脂肪族系アミン硬化剤としては、テトラ(アミノメチル)メタン、テトラキス(2-アミノエチルアミノメチル)メタン、1,3-ビス(2'-アミノエチルアミノ)プロパン、トリス(2-アミノエチル)アミン、ビス(シアノエチル)ジエチレントリアミン、ポリオキシアルキレンポリアミン(特に、ジエチレングリコールビス(3-アミノプロピル)エーテル)、ビス(アミノメチル)シクロヘキサン(1,3-BAC)、イソホロンジアミン、メンセンジアミン(MDA)、o-キシリレンジアミン、m-キシリレンジアミン(MXDA)、p-キシリレンジアミン、ビス(アミノメチル)ナフタレン、ビス(アミノエチル)ナフタレン、1,4-ビス(3-アミノプロピル)ピペラジン、1-(2'-アミノエチルピペラジン)、1-[2'-(2''-アミノエチルアミノ)エチル]ピペラジン等が挙げられる。
【0042】
前記脂環式アミン硬化剤としては、具体的には、シクロヘキサンジアミン、ジアミノジシクロヘキシルメタン(特に、4,4'-メチレンビスシクロヘキシルアミン(PACM))、4,4'-イソプロピリデンビスシクロヘキシルアミン、ノルボルナンジアミン、2,4-ジ(4-アミノシクロヘキシルメチル)アニリン等が挙げられる。
【0043】
前記芳香族系アミン硬化剤としては、ビス(アミノアルキル)ベンゼン、ビス(アミノアルキル)ナフタレン、ベンゼン環に結合した2個以上の1級アミノ基を有する芳香族ポリアミン化合物等が挙げられる。
この芳香族系アミン硬化剤として、より具体的には、フェニレンジアミン、ナフタレンジアミン、ジアミノジフェニルメタン、2,2-ビス(4-アミノフェニル)プロパン、4,4'-ジアミノジフェニルエーテル、4,4'-ジアミノベンゾフェノン、4,4'-ジアミノジフェニルスルホン、3,3'-ジメチル-4,4'-ジアミノジフェニルメタン、ジアミノジエチルフェニルメタン、2,4'-ジアミノビフェニル、2,3'-ジメチル-4,4'-ジアミノビフェニル、3,3'-ジメトキシ-4,4'-ジアミノビフェニル等が挙げられる。
【0044】
前記複素環系アミン硬化剤としては、1,4-ジアザシクロヘプタン、1,11-ジアザシクロエイコサン、1,15-ジアザシクロオクタコサン等が挙げられる。
【0045】
アミン硬化剤(B)としては、さらに、前述したアミン硬化剤の変性物、例えば、ポリアミドアミン等の脂肪酸変性物、エポキシ化合物とのアミンアダクト、マンニッヒ変性物(例:フェナルカミン、フェナルカマイド)、マイケル付加物、ケチミン、アルジミンが挙げられる。
【0046】
アミン硬化剤(B)としては、脂肪族系または脂環式アミン硬化剤、脂肪族系または脂環式アミンのエポキシアダクト、および、脂肪族系または脂環式アミンのマンニッヒ変性物が好ましく、脂肪族系または脂環式アミンのエポキシアダクトおよび脂肪族系または脂環式アミンのマンニッヒ変性物がより好ましく、脂肪族系または脂環式アミンのエポキシアダクトが特に好ましい。
さらに、これらの脂肪族系または脂環式アミンとしては、脂環、特にシクロヘキサン環を有するアミンが好ましい。
アミン硬化剤(B)として、これらのアミン硬化剤を用いると、耐油性および耐薬品性に優れ、さらには、旧塗膜に対する密着性に優れ、防食性および耐水性に優れる本塗膜を容易に得ることができる。
【0047】
前記エポキシアダクトは、例えば、脂肪族系または脂環式アミン硬化剤、脂肪族系または脂環式アミン硬化剤の脂肪酸変性物、脂肪族系または脂環式アミン硬化剤のマンニッヒ変性物等のアミン化合物1種または2種以上と、ビスフェノールA型エポキシ樹脂等のエポキシ樹脂1種または2種以上とを反応させることで得られる。
前記アミン化合物100質量部に対するエポキシ樹脂の使用量は、好ましくは5~800質量部、より好ましくは100~800質量部、特に好ましくは300~800質量部である。
【0048】
該エポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールAジグリシジルエーテル;ビスフェノールFジグリシジルエーテル;スチレンオキシド;シクロヘキセンオキシド;フェノール、クレゾール、t-ブチルフェノール等の(アルキル)フェノールや、ブタノール、2-エチルヘキサノール、炭素数8~14のアルコール等のグリシジルエーテル;アルキルグリシジルエーテル(例:Epodil 759[Evonik社製])が挙げられる。
【0049】
アミン硬化剤(B)は、従来公知の方法で合成して得てもよく、市販品でもよい。
該市販品としては、例えば、脂肪族系アミンのエポキシアダクトである「PH-836」(PTIジャパン(株)製)、脂肪族系アミンの分離型エポキシアダクトである「AD-71」(大竹明新化学(株)製)、脂環式アミンのエポキシ樹脂アダクト変性物である「Ancamine 2143」(EVONIK社製)、ポリアミドアミン(脂肪族系ポリアミンとダイマー酸との脱水縮合物)である「PA-66S」(大竹明新化学(株)製)、フェナルカミン(脂肪族系ポリアミンとホルマリン、カルダノールとの脱水縮合物)である「Cardolite CM-5055」(カードライト社製)が挙げられる。
【0050】
アミン硬化剤(B)の活性水素当量は、防食性により優れる本塗膜を容易に得ることができる等の点から、好ましくは50以上、より好ましくは100以上であり、好ましくは1,000以下、より好ましくは500以下である。
【0051】
防食性、塗膜強度および乾燥性に優れる本塗膜を容易に得ることができる等の点から、アミン硬化剤(B)は、下記式(1)で算出される反応比が、好ましくは0.3以上、より好ましくは0.4以上となるような量、好ましくは1.0以下、より好ましくは0.9以下となるような量で用いることが望ましい。
【0052】
反応比={(アミン硬化剤(B)の配合量/アミン硬化剤(B)の活性水素当量)+(エポキシ化合物(A)に対して反応性を有する成分の配合量/エポキシ化合物(A)に対して反応性を有する成分の官能基当量)}/{(エポキシ化合物(A)の配合量/エポキシ化合物(A)のエポキシ当量)+(アミン硬化剤(B)に対して反応性を有する成分の配合量/アミン硬化剤(B)に対して反応性を有する成分の官能基当量)} ・・・(1)
【0053】
ここで、前記式(1)における「アミン硬化剤(B)に対して反応性を有する成分」としては、例えば、後述する脂肪族系または脂環式ジグリシジルエーテル(C)およびシランカップリング剤が挙げられ、また、「エポキシ化合物(A)に対して反応性を有する成分」としては、例えば、後述するシランカップリング剤が挙げられる。前記各成分の「官能基当量」とは、これらの成分1molの質量からその中に含まれる官能基のmol数を除して得られた1mol官能基あたりの質量(g)を意味する。
後述のシランカップリング剤としては、反応性基としてアミノ基やエポキシ基を有するシランカップリング剤を使用することができるため、反応性基の種類によって、該シランカップリング剤がエポキシ化合物(A)に対して反応性を有するのか、アミン硬化剤(B)に対して反応性を有するのかを判断し、反応比を算出する必要がある。
【0054】
本組成物が主剤成分と硬化剤成分とからなる2成分型の組成物である場合、アミン硬化剤(B)は硬化剤成分に含まれる。この硬化剤成分の、E型粘度計で測定した25℃における粘度は、取扱い性、塗装作業性により優れる本組成物となる等の点から、好ましくは100,000mPa・s以下であり、より好ましくは50~10,000mPa・sである。
【0055】
<脂肪族系または脂環式ジグリシジルエーテル(C)>
脂肪族系または脂環式ジグリシジルエーテル(C)としては特に制限されず、従来公知の化合物を用いることができる。
本組成物は、ジグリシジルエーテルを用いることを特徴とするため、前記効果を奏する。一方、ジグリシジルエーテルを用いず、モノグリシジルエーテルのみを用いる場合、得られた組成物は旧塗膜を溶解しやすくなるため、リフティングなどの塗膜欠陥が発生しやすく、トリグリシジルエーテルのみを用いる場合、得られた組成物の粘度が高くなりやすくなるため、塗装し難い組成物になる傾向にあることが分かった。
また、前記ジグリシジルエーテル(C)は、ジグリシジルエーテル部分の構造が重要であるため、脂肪族系や脂環式であれば、いずれも前記課題を解決することができる。なお、芳香族系は得られる組成物の粘度が高くなることや、得られる塗膜の硬度が高くなる傾向にある。
前記ジグリシジルエーテル(C)は、1種単独で用いてもよく、2種以上を用いてもよい。
【0056】
塗装作業性に優れる本組成物を容易に得ることができる等の点から、前記ジグリシジルエーテル(C)の粘度は、好ましくは1,000mPa・s以下、より好ましくは500mPa・s以下、さらに好ましくは100mPa・s以下である。
以下、ジグリシジルエーテル(C)における粘度は、JIS K 7233に基づいて、25℃において測定した粘度のことをいう。
【0057】
脂肪族系ジグリシジルエーテル(C)としては、具体的には、例えば、1,4-ブタンジオールジグリシジルエーテル(粘度:13mPa・s)、1,6-ヘキサンジオールジグリシジルエーテル(Gly-O-(CH2)6-O-Gly、Gly:グリシジル基)(粘度:17mPa・s)、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル(Gly-O-CH2-C(CH3)2-CH2-O-Gly、Gly:同上)(粘度:14mPa・s)、プロピレングリコールジグリシジルエーテル(粘度:25mPa・s)、トリプロピレングリコールジグリシジルエーテル(粘度:30mPa・s)、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル(粘度:75mPa・s)、ポリグリコールジグリシジルエーテル(粘度:35mPa・s)、グリセリンジグリシジルエーテル(粘度:150mPa・s)が挙げられる。
【0058】
脂環式ジグリシジルエーテル(C)としては、具体的には、例えば、シクロヘキサンジメタノールジグリシジルエーテル(粘度:60mPa・s)が挙げられる。
【0059】
前記ジグリシジルエーテル(C)としては、フクレ、クラック、リフティング(しわ)および中膿みなどの塗膜欠陥の発生が抑制された、特に、冷熱サイクル後であってもこのような塗膜欠陥の発生が抑制された本積層塗膜を容易に形成することができる等の点から、脂肪族系ジグリシジルエーテルであることが好ましい。
また、前記ジグリシジルエーテル(C)のエポキシ当量は、好ましくは100~300、より好ましくは120~220である。
【0060】
本組成物の固形分100質量%に対する前記ジグリシジルエーテル(C)の含有量は、貯蔵弾性率が前記範囲にある本塗膜を容易に得ることができ、前記塗膜欠陥の発生が抑制された本積層塗膜を容易に形成することができる等の点から、好ましくは1~30質量%、より好ましくは5~20質量%である。
【0061】
本組成物1中のエポキシ化合物(A)の含有量に対する前記ジグリシジルエーテル(C)の含有量の比(C/A)は、好ましくは0.1~1.5である、より好ましくは0.2~1.5、さらに好ましくは0.4~1.2、特に好ましくは0.5~1.0である。また、本組成物2中の該含有量の比(C/A)は、0.4~1.2であり、好ましくは0.5~1.0である。
該含有量の比(C/A)が前記範囲にあると、貯蔵弾性率が前記範囲にある本塗膜を容易に得ることができ、前記塗膜欠陥の発生が抑制された本積層塗膜を容易に形成することができる。
【0062】
<添加剤>
本組成物は、必要に応じて、シランカップリング剤、顔料、タレ止め剤(沈降防止剤)、消泡剤、3級アミンなどの硬化促進剤、可塑剤、レベリング剤、無機脱水剤、紫外線安定剤、紫外線吸収剤、老化防止剤、分散剤、防汚剤、溶剤等の添加剤を、本発明の目的を損なわない範囲で含有してもよい。
これらの添加剤は、従来公知のものが挙げられる。
前記添加剤はそれぞれ、1種単独で用いてもよく、2種以上を用いてもよい。
【0063】
[シランカップリング剤]
シランカップリング剤を用いることで、得られる本塗膜の旧塗膜への密着性をさらに向上させることができるのみならず、得られる本塗膜の耐塩水性等の防食性をも向上させることができる。
【0064】
シランカップリング剤としては特に制限されず、従来公知の化合物を用いることができるが、同一分子内に少なくとも2つの官能基を有し、旧塗膜に対する密着性の向上、本組成物の粘度の低下等に寄与できる化合物であることが好ましく、例えば、式:「X-SiMenY3-n」[nは0または1、Xは有機質との反応が可能な反応性基(例:アミノ基、ビニル基、エポキシ基、メルカプト基、ハロゲン基、炭化水素基の一部がこれらの基で置換された基、または炭化水素基の一部がエーテル結合等で置換された基の一部がこれらの基で置換された基。)を示し、Meはメチル基であり、Yは加水分解性基(例:メトキシ基、エトキシ基などのアルコキシ基)を示す。]で表される化合物であることがより好ましい。
【0065】
シランカップリング剤としては、反応性基としてエポキシ基またはアミノ基を有する化合物が好ましく、具体的には、「KBM-403」(γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、信越化学工業(株)製)、「サイラエースS-510」(JNC(株)製)、「KBM-603」(3-(2-アミノエチルアミノ)プロピルトリメトキシシラン、信越化学工業(株)製)等が挙げられる。
【0066】
本組成物がシランカップリング剤を含有する場合、旧塗膜に対する密着性により優れる本塗膜を容易に得ることができる等の点から、本組成物の固形分100質量%に対するシランカップリング剤の含有量は、好ましくは0.2~3質量%、より好ましくは0.5~2質量%である。
【0067】
[顔料]
本組成物は顔料を含むことが好ましい。
該顔料としては特に制限されず、従来公知の顔料を用いることができ、具体的には、体質顔料、着色顔料、防錆顔料等が挙げられる。
【0068】
前記体質顔料としては特に限定されないが、例えば、酸化亜鉛、シリカ、タルク、マイカ、クレー、ベントナイト、カリ長石、ウォラストナイト、ガラスフレーク、炭酸カルシウム、カオリン、アルミナホワイト、ホワイトカーボン、水酸化アルミニウム、炭酸マグネシウム、硫酸バリウム(例;バライト粉)が挙げられる。これらの中でも、タルク、シリカ、マイカ、クレー、炭酸カルシウム、カオリン、硫酸バリウム、カリ長石が好ましい。
【0069】
前記着色顔料としては特に限定されないが、例えば、カーボンブラック、二酸化チタン、弁柄、酸化鉄、水酸化鉄、群青等の無機顔料、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン等の有機顔料が挙げられる。
【0070】
前記防錆顔料としては特に限定されないが、例えば、亜鉛粉末、亜鉛合金粉末、リン酸亜鉛系化合物、リン酸カルシウム系化合物、リン酸アルミニウム系化合物、リン酸マグネシウム系化合物、亜リン酸亜鉛系化合物、亜リン酸カルシウム系化合物、亜リン酸アルミニウム系化合物、亜リン酸ストロンチウム系化合物、トリポリリン酸アルミニウム系化合物、トリポリリン酸亜鉛系化合物、モリブデン酸亜鉛系化合物、モリブデン酸アルミニウム系化合物、シアナミド亜鉛系化合物、ホウ酸塩化合物、ニトロ化合物、複合酸化物が挙げられる。
【0071】
本組成物が顔料を含有する場合、貯蔵弾性率が前記範囲にある本塗膜を容易に得ることができ、前記塗膜欠陥の発生が抑制された本積層塗膜を容易に形成することができる等の点から、本組成物の固形分100質量%に対する顔料の含有量は、好ましくは10~60質量%、より好ましくは20~60質量%である。
また、同様の理由から、本組成物中の顔料体積濃度(PVC)は、好ましくは10~50%、より好ましくは10~40%である。
【0072】
前記PVCは、本組成物中のすべての顔料の合計の体積濃度のことをいい、具体的には下記式(2)より求めることができる。
PVC[%]=本組成物中の全ての顔料の体積の合計×100/本組成物中の固形分の体積 ・・・(2)
【0073】
前記本組成物中の固形分の体積は、本組成物の固形分の質量および真密度から算出することができる。前記固形分の質量および真密度は、測定値でも、用いる原料から算出した値でも構わない。
【0074】
前記顔料の体積は、用いた顔料の質量および真密度から算出することができる。前記顔料の質量および真密度は、測定値でも、用いる原料から算出した値でも構わない。測定値としては、例えば、本組成物の固形分より顔料と他の成分とを分離し、分離された顔料の質量および真密度を測定することで算出することができる。
【0075】
[タレ止め剤(沈降防止剤)]
本組成物は、耐タレ性に優れる本組成物を得ることができる等の点から、タレ止め剤(沈降防止剤)を含有してもよい。
前記タレ止め剤としては、Al、Ca、Znのステアレート塩、レシチン塩、アルキルスルホン酸塩などの有機粘土系ワックス、ポリエチレンワックス、アマイドワックス、水添ヒマシ油ワックス、酸化ポリエチレン系ワックス等が挙げられる。
【0076】
本組成物がタレ止め剤を含有する場合、耐タレ性に優れる本組成物を得ることができる等の点から、本組成物の固形分100質量%に対するタレ止め剤の含有量は、好ましくは0.1~2質量%、より好ましくは0.5~1.5質量%である。
【0077】
[消泡剤]
本組成物は、気泡の発生を抑制し、得られる本積層塗膜の外観を良好にすることができる等の点から、消泡剤を含むことが好ましい。
前記消泡剤としては、例えば、ポリマー系、アクリル系、シリコーン系、ミネラルオイル系、オレフィン系などの従来公知の各種消泡剤を使用することができるが、中でも、ポリマー系やオレフィン系の消泡剤が好ましい。
【0078】
このような消泡剤としては、ビックケミー・ジャパン(株)製の「BYK-1788」、「BYK-1790」、「BYK-1794」;AFCONA ADDITIVE社製の「AFCONA-2290」、ExxonMobil Chemical Company製の「SpectraSyn 40」、「SpectraSyn Elite150」、「SpectraSyn Elite65」等の商品が挙げられる。
【0079】
本組成物が消泡剤を含有する場合、本組成物の固形分100質量%に対する消泡剤の含有量は、好ましくは0.01~4質量%、より好ましくは0.05~2質量%である。
【0080】
[溶剤]
前記溶剤は特に制限されないが、本組成物の塗装方法や塗装作業性に応じて適宜選択して用いることができるが、本組成物は、可能な限り溶剤を含まないことが好ましい。
【0081】
前記溶剤として、例えば、キシレン、トルエン、MIBK(メチルイソブチルケトン)、1-メトキシ-2-プロパノール、MEK(メチルエチルケトン)、酢酸ブチル、n-ブタノール、IBA(イソブチルアルコール)、IPA(イソプロピルアルコール)、ミネラルスピリット、ベンジルアルコールが挙げられる。
【0082】
前記塗膜欠陥の発生が抑制された本積層塗膜を容易に形成することができる等の点から、本組成物100質量%に対する溶剤の含有量は、好ましくは0~10質量%、より好ましくは0~5質量%、特に好ましくは0~3質量%である。
【0083】
溶剤の含有量が前記範囲にあると、溶剤による塗装環境や塗装作業者等への悪影響を抑制することができ、かつ、フクレ、クラック、リフティング(しわ)および中膿みなどの塗膜欠陥の発生がより抑制された本積層塗膜を容易に得ることができる。特に、本組成物が塗装される表面旧塗膜がアクリル旧塗膜である場合、アクリル樹脂は通常耐溶剤性に劣るため、このようなアクリル旧塗膜上に一般的な溶剤系塗料を塗装すると、旧塗膜が溶け、形成される本積層塗膜には、フクレ、クラック、リフティング(しわ)および中膿みなどの塗膜欠陥が発生しやすいことがわかった。一方、溶剤の含有量が前記範囲にあると、アクリル旧塗膜上に塗装する場合であっても、フクレ、クラック、リフティング(しわ)および中膿みなどの塗膜欠陥の発生がより抑制された本積層塗膜を容易に得ることができる。
【0084】
≪積層塗膜≫
本発明に係る積層塗膜は、前記旧塗膜と本塗膜とを有し、通常、基材と、旧塗膜と、本塗膜とがこの順で積層された積層体であり、必要により、さらに、本塗膜の旧塗膜とは反対側に上塗り塗膜を有する。
また、該積層塗膜は、基材と旧塗膜との間に、基材の防食性や、溶接性、せん断性等の点から、必要により、従来公知の一次防錆塗料(ショッププライマー)等や、その他プライマー等を塗布し乾燥(硬化)させた他の膜を有していてもよい。
これら積層塗膜に含まれ得る、旧塗膜、本塗膜、上塗り塗膜および他の膜は、それぞれ1層でもよく、2層以上でもよい。
【0085】
前記積層塗膜は、旧塗膜上に本組成物から塗膜を形成する工程を含む方法、具体的には、旧塗膜上に本組成物を塗装し、乾燥(硬化)させる工程を含む方法で製造することが好ましい。この積層塗膜の製造方法は、塗膜の補修方法、具体的には、旧塗膜の補修方法であるともいえる。
本発明によれば、旧塗膜を除去することなく、その旧塗膜上に塗膜欠陥の発生が抑制された本塗膜を形成できるため、工程や費用等を大幅に削減できる等の点から、旧塗膜を除去することなく、本塗膜を形成すればよい。なお、旧塗膜の厚みが過度に厚い場合には、該旧塗膜の一部を除去してもよい。
【0086】
前記基材としては、特に制限されないが、鉄鋼、非鉄金属(亜鉛、アルミニウム等)、ステンレスなどからなる基材が好ましく、これらからなる船舶、陸上構造物、橋梁等の構造物、特に、船舶がより好ましい。
【0087】
また、前記基材としては、錆、油脂、水分、塵埃、スライム、塩分などを除去するため、また、得られる本塗膜の密着性を向上させるために、必要により前記基材表面を処理(例えば、ブラスト処理(ISO8501-1 Sa2 1/2)、摩擦法、脱脂による油分・粉塵を除去する処理)等したものでもよい。
【0088】
本組成物を旧塗膜上に塗布する方法としては特に制限されず、従来公知の方法を制限なく使用可能であるが、作業性および生産性等に優れ、大面積の基材に対しても容易に塗装でき、本発明の効果がより発揮できる等の点から、スプレー塗装が好ましい。
【0089】
前記スプレー塗装の条件は、形成したい本塗膜の厚みに応じて適宜調整すればよいが、エアレススプレー時には、例えば、1次(空気)圧:0.4~0.8MPa程度、2次(塗料)圧:10~26MPa程度、ガン移動速度50~120cm/秒程度に塗装条件を設定すればよい。
【0090】
前記本塗膜の膜厚は、所望の用途に応じて適宜選択すればよいが、好ましくは50~1,000μm、より好ましくは100~500μmである。
【0091】
このような膜厚の本塗膜を形成する際は、1回の塗装(1回塗り)で、所望の厚みの本塗膜を形成してもよいし、2回(必要によりそれ以上)の塗装で、所望の厚みの本塗膜を形成してもよい。
【0092】
前記本組成物を乾燥(硬化)させる方法としては特に制限されず、乾燥(硬化)時間を短縮させるために5~60℃程度の加熱により本組成物を乾燥(硬化)させてもよいが、通常は、常温、大気下で1~14日程度放置することで、本組成物を乾燥(硬化)させる。
【0093】
前記上塗り塗膜を形成する上塗り塗料としては特に制限されず、基材に応じて、また基材の用途に応じて従来公知の上塗り塗料から適宜選択し、その塗料に応じた従来公知の方法で塗膜を形成すればよい。
本塗膜は、旧塗膜との密着性に優れるのみならず、その上に形成される上塗り塗膜との密着性にも優れ、このように形成された本積層塗膜に、フクレ、クラック、リフティング(しわ)および中膿みなどの塗膜欠陥が発生することを抑制できる。
従って、本塗膜上に形成する上塗り塗膜の種類の選択性が制限されず、旧塗膜を構成する樹脂と異なる樹脂系の異種塗膜への塗り替えも容易に行うことができる。
【実施例】
【0094】
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらによって限定されない。
【0095】
[実施例1~5および比較例1~3]
容器に、表1の主剤の欄に記載の各原材料を、表1に記載の量(質量部)で加え、ハイスピードディスパーにて撹拌し、均一に分散させることで、主剤成分を調製した。
下記試験における塗装直前に、得られた主剤成分と表1の硬化剤の欄に記載の原材料とを、表1に記載の混合比率(質量比)で混合することで、エポキシ樹脂系塗料組成物を調製した。
なお、比較例2では、予め、容器に、表1の硬化剤の欄に記載の各原材料を、表1に記載の量(質量部)で加え、ハイスピードディスパーにて撹拌し、均一に分散させた後、主剤成分と混合した。
表1に記載の各成分の詳細は表2に示すとおりである。
【0096】
【0097】
【0098】
<貯蔵弾性率>
剥離紙上に、前記実施例および比較例で得られたエポキシ樹脂系塗料組成物を、得られる塗膜の乾燥膜厚が150μmとなるように塗装し、常温で3日乾燥させた。その後、剥離紙から剥離した長辺が40mm、短辺が8mmの長方形の塗膜を作製し、該塗膜を用い、DMA Q800(ティー・エイ・インスツルメント・ジャパン(株)製)を用いて20℃における貯蔵弾性率を測定した。測定条件は、振動振幅を15.0μm、静荷重を0.1000N、ForceTrackを125.0%、最小振動荷重を0.0100Nとした。結果を表3に示す。
【0099】
<耐フクレ性試験>
150mm×70mm×1.6mm(厚み)のブラスト鋼板上に、エポキシ樹脂系防食塗料であるバンノー500(中国塗料(株)製)を、得られる塗膜の乾燥膜厚が180μmになるよう塗装し、常温で1日乾燥させることで、防食塗膜付鋼板を作製した。
【0100】
作製した防食塗膜付鋼板の防食塗膜上に、アクリル樹脂系上塗り塗料であるアクリ700上塗J(中国塗料(株)製)を、得られる塗膜の乾燥膜厚が160μmになるよう塗装し、常温で1日乾燥させることで、上塗り塗膜1付鋼板を作製した。
【0101】
得られた上塗り塗膜1付鋼板の上塗り塗膜1上に、アクリ700上塗Jを、得られる塗膜の乾燥膜厚が160μmになるよう塗装し、常温で1日乾燥させることで、上塗り塗膜2付鋼板を作製し、さらに、該上塗り塗膜2上に、アクリ700上塗Jを、得られる塗膜の乾燥膜厚が160μmになるよう塗装し、常温で1日乾燥させることで、上塗り塗膜3付鋼板を作製した。得られた上塗り塗膜3付鋼板を6ヶ月間屋外暴露することで、上塗り塗膜3にフクレを発生させた。
【0102】
前記屋外暴露後の上塗り塗膜3付鋼板の上塗り塗膜3上に、前記実施例および比較例で得られたエポキシ樹脂系塗料組成物を、得られる塗膜の乾燥膜厚が150μmとなるように塗装し、常温で3日乾燥させることで、エポキシ上塗り塗膜付鋼板を作製した。
作製したエポキシ上塗り塗膜付鋼板を60℃まで昇温し、以下の冷熱サイクル(12時間)を120サイクル(合計60日間)行った後、常温環境下に保持して常温まで冷却した。
冷熱サイクル:60℃で2時間保持→1時間かけて32℃まで冷却→1時間かけて5℃まで冷却→1時間かけて-20℃まで冷却→-20℃で2時間保持→1時間かけて0℃まで加熱→1時間かけて20℃まで加熱→20℃で1時間保持→1時間かけて40℃まで加熱→1時間かけて60℃まで加熱
【0103】
得られた冷熱サイクル後のエポキシ上塗り塗膜付鋼板の外観を目視にて確認し、塗膜面にフクレがない場合を○、塗膜面にフクレが生じた場合を×として評価した。結果を表3に示す。
【0104】
<耐クラック性試験>
前記耐フクレ性試験と同様にして作製した防食塗膜付鋼板に、アクリル樹脂系上塗り塗料であるアクリ700上塗ST(中国塗料(株)製)を、得られる塗膜の乾燥膜厚が160μmになるよう塗装し、常温で3日乾燥させることで、上塗り塗膜1付鋼板を作製した。
【0105】
次いで、前記上塗り塗膜1付鋼板に対し、以下の促進劣化試験を行った。
UVランプ(東芝ライテック(株)製、製品番号:FL40S.BLB)を用いて、紫外線強度が3.2mW/cm2になるように、前記上塗り塗膜1に紫外線を2日照射した後、JIS K5600-7-1に準拠して、塩水を2日噴霧した。その後、上塗り塗膜1付鋼板を、60℃まで昇温し、以下の冷熱サイクル(12時間)を6サイクル(合計3日間)行った後、常温環境下に保持して常温まで冷却した。
冷熱サイクル:60℃で2時間保持→1時間かけて32℃まで冷却→1時間かけて5℃まで冷却→1時間かけて-20℃まで冷却→-20℃で2時間保持→1時間かけて0℃まで加熱→1時間かけて20℃まで加熱→20℃で1時間保持→1時間かけて40℃まで加熱→1時間かけて60℃まで加熱
【0106】
促進劣化試験後の上塗り塗膜1付鋼板の上塗り塗膜1上に、アクリ700上塗STを、得られる塗膜の乾燥膜厚が160μmになるよう塗装し、常温で3日乾燥させることで、上塗り塗膜2付鋼板を作製し、前記と同様の促進劣化試験を行った。さらに、促進劣化試験後の上塗り塗膜2付鋼板の上塗り塗膜2上に、アクリ700上塗STを、得られる塗膜の乾燥膜厚が160μmになるよう塗装し、常温で3日乾燥させることで、上塗り塗膜3付鋼板を作製し、前記と同様の促進劣化試験を行った。
【0107】
例えば、フェリーなどの船舶の外表面(デッキ、上部構造部等の部位)は、エポキシ樹脂系防食塗膜が形成された基材上に、アクリル樹脂系上塗り塗膜を形成している。そして、通常、約1年に1回程度、形成されたアクリル樹脂系上塗り塗膜上に、さらに、アクリル樹脂系上塗り塗膜を塗り重ねている。
前記促進劣化試験後の上塗り塗膜1付鋼板は、新造船から1年経過後の船舶に対応し、前記促進劣化試験後の上塗り塗膜3付鋼板は、新造船から3年経過後の船舶に対応する。
【0108】
前記促進劣化試験後の上塗り塗膜3付鋼板の上塗り塗膜3上に、アクリル樹脂系上塗り塗料であるアクリ800上塗(中国塗料(株)製)を、得られる塗膜の乾燥膜厚が40μmになるよう塗装し、常温で3日乾燥させた後、前記と同様の促進劣化試験を3サイクル(合計21日間)行うことで、上塗り塗膜4付鋼板を作成した。
【0109】
作製した上塗り塗膜4付鋼板の上塗り塗膜上に、前記実施例および比較例で得られたエポキシ樹脂系塗料組成物を、得られる塗膜の乾燥膜厚が150μmとなるように塗装し、常温で1日乾燥させることで、エポキシ上塗り塗膜付鋼板を作製した。
【0110】
得られたエポキシ上塗り塗膜付鋼板のエポキシ上塗り塗膜上に、アクリ800上塗を、得られる塗膜の乾燥膜厚が40μmになるよう塗装し、常温で3日乾燥させることで、上塗り塗膜5付鋼板を作製した。
【0111】
作製した上塗り塗膜5付鋼板を用いて、前記促進劣化試験を8サイクル(合計56日間)行った後、上塗り塗膜5付鋼板の外観を目視にて確認し、塗膜面にクラックがない場合を○、塗膜面にクラックが生じた場合を×として評価した。結果を表3に示す。
【0112】
<耐リフティング性試験>
前記耐フクレ性試験と同様にして作製した防食塗膜付鋼板の防食塗膜上に、アクリ700上塗STを、得られる塗膜の乾燥膜厚が160μmになるよう塗装し、常温で1日乾燥させることで、上塗り塗膜1付鋼板を作製した。
【0113】
得られた上塗り塗膜1付鋼板の上塗り塗膜1上に、アクリル樹脂系上塗り塗料であるアクリ700上塗JMS(中国塗料(株)製)を、得られる塗膜の乾燥膜厚が40μmになるよう塗装し、60℃で1日乾燥させることで、上塗り塗膜2付鋼板を作製した。
【0114】
前記上塗り塗膜2付鋼板の上塗り塗膜2上に、前記実施例および比較例で得られたエポキシ樹脂系塗料組成物を、得られる塗膜の乾燥膜厚が150μmとなるように塗装し、常温で1日乾燥させることで、エポキシ上塗り塗膜付鋼板を作製した。
【0115】
得られたエポキシ上塗り塗膜付鋼板のエポキシ上塗り塗膜上に、アクリ700上塗STを、得られる塗膜の乾燥膜厚が40μmになるよう塗装し、常温で1日乾燥させることで、上塗り塗膜3付鋼板を作製した。
【0116】
得られた上塗り塗膜3付鋼板の外観を目視にて確認し、塗膜面にリフティング(しわ)がない場合を○、塗膜面にリフティングが生じた場合を×として評価した。結果を表3に示す。
【0117】
<異種上塗り試験>
前記耐クラック性試験と同様にして作製した上塗り塗膜3付鋼板に、前記実施例および比較例で得られたエポキシ樹脂系塗料組成物を、得られる塗膜の乾燥膜厚が150μmとなるように塗装し、常温で1日乾燥させることで、エポキシ上塗り塗膜付鋼板を作製した。
【0118】
作製したエポキシ上塗り塗膜付鋼板に、ウレタン樹脂系上塗り塗料であるユニマリン(中国塗料(株)製)を、得られる塗膜の乾燥膜厚が40μmになるよう塗装し、常温で3日乾燥させることで、上塗り塗膜4付鋼板を作製した。
【0119】
作製した上塗り塗膜4付鋼板を、60℃まで昇温し、以下の冷熱サイクル(12時間)を120サイクル(合計60日間)行った後、常温環境下に保持して常温まで冷却した。
冷熱サイクル:60℃で2時間保持→1時間かけて32℃まで冷却→1時間かけて5℃まで冷却→1時間かけて-20℃まで冷却→-20℃で2時間保持→1時間かけて0℃まで加熱→1時間かけて20℃まで加熱→20℃で1時間保持→1時間かけて40℃まで加熱→1時間かけて60℃まで加熱
【0120】
得られた冷熱サイクル後の上塗り塗膜4付鋼板の外観を目視にて確認し、塗膜面にフクレ、クラックおよびリフティングがない場合を○、塗膜面にフクレ、クラックおよびリフティングのいずれかが生じた場合を×として評価した。結果を表3に示す。
【0121】