(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-07
(45)【発行日】2023-12-15
(54)【発明の名称】加熱調理器
(51)【国際特許分類】
A47J 27/00 20060101AFI20231208BHJP
【FI】
A47J27/00 109P
A47J27/00 109R
A47J27/00 109G
(21)【出願番号】P 2019222730
(22)【出願日】2019-12-10
【審査請求日】2022-11-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000176866
【氏名又は名称】三菱電機ホーム機器株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001461
【氏名又は名称】弁理士法人きさ特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】逸見 憲一
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 ちひろ
(72)【発明者】
【氏名】内田 毅
【審査官】高橋 武大
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-076078(JP,A)
【文献】特開平08-252166(JP,A)
【文献】特開2002-272609(JP,A)
【文献】特開平09-298850(JP,A)
【文献】特開2004-016416(JP,A)
【文献】特開2014-116124(JP,A)
【文献】特開平11-111442(JP,A)
【文献】特開平09-224833(JP,A)
【文献】特開2009-041854(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47J 27/00-27/64
F24C 15/00-15/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
調理器本体と、
前記調理器本体に設置され、被加熱物が収容される鍋状容器と、
前記鍋状容器を加熱する加熱部と、
前記加熱部を動作させる充電自在の蓄電池と、
前記蓄電池の残電力量を検出する電力検出部と、
前記加熱部の動作を制御する制御部と、を備え、
前記制御部は、
前記電力検出部によって検出された前記残電力量において調理される前記被加熱物の量を報知する報知手段と、
前記蓄電池の残電力量と、前記残電力量において調理される前記被加熱物の量との関係を示す被加熱物量テーブルを記憶する記憶手段と、
前記電力検出部によって検出された残電力量に基づいて、前記加熱部の動作を制御する加熱手段と、を有
し、
前記報知手段は、
前記記憶手段が記憶する前記被加熱物量テーブルに基づいて、前記電力検出部によって検出された前記残電力量において調理される前記被加熱物の量を報知するものであり、
前記記憶手段は、
前記蓄電池の残電力量と、複数の調理工程において使用される電力量との関係を示す電力テーブルを記憶するものであり、
前記加熱手段は、
前記記憶手段が記憶する前記電力テーブルに基づいて、複数の前記調理工程に前記残電力量を使用する優先順位を設けて前記加熱部の動作を制御する
加熱調理器。
【請求項2】
前記制御部は、
外部電源から電力が供給されているかを判定する判定手段と、
前記判定手段によって前記外部電源から電力が遮断されていると判定された場合、前記加熱部の動作を前記蓄電池の電力によって実施するように切り替える電力切替手段と、を更に有する
請求項
1記載の加熱調理器。
【請求項3】
前記被加熱物の量を表示する表示部を更に備え、
前記報知手段は、
前記残電力量において調理される前記被加熱物の量を、前記表示部に表示させる
請求項1
又は2記載の加熱調理器。
【請求項4】
前記制御部は、
複数の前記調理工程のうち吸水工程の時間を基準時間よりも長くする
請求項
1~3のいずれか1項に記載の加熱調理器。
【請求項5】
前記制御部は、
加熱調理後、前記蓄電池を充電する充電モードを有する
請求項1~
4のいずれか1項に記載の加熱調理器。
【請求項6】
前記蓄電池は、
前記調理器本体に着脱自在に取り付けられている
請求項1~
5のいずれか1項に記載の加熱調理器。
【請求項7】
前記蓄電池は、
外部電源によって充電される
請求項1~
6のいずれか1項に記載の加熱調理器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被加熱物が収容される鍋状容器を備える加熱調理器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、米等の食品である被加熱物が収容された鍋状容器が調理器本体に設置されて、被加熱物を加熱調理する加熱調理器が知られている。加熱調理器を使用するユーザは、被加熱物が米である場合、美味しい米飯が炊けることを第1に所望する。ここで、停電等の非常時において、加熱調理器への電力の供給が遮断されると、炊飯中に加熱調理器が停止してしまい、その結果、食に適さない米ができあがるおそれがある。美味しい米飯を炊飯することを目的として、非常時においても加熱調理器への電力供給が継続されることが望まれている。特許文献1には、商用電源とは別に宅外に設けられた蓄電池から電力が供給される炊飯器が開示されている。特許文献1の炊飯器は、通常、商用電源から電力が供給されているが、電力抑制指令信号を受信している場合、蓄電池から電力が供給される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に開示された炊飯器は、蓄電池の残電力量を用いて所望の調理を行うことができるかが判断されていない。この場合、炊飯器が電力抑制指令信号を受信して蓄電池から電力が供給されると、炊飯器の使用電力量が、蓄電池の残電力量を上回るおそれがある。このため、加熱調理器による調理が途中で中断するおそれがある。
【0005】
本発明は、上記のような課題を解決するためになされたもので、蓄電池から電力が供給されていても、調理が途中で中断することを抑制する加熱調理器を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る加熱調理器は、調理器本体と、調理器本体に設置され、被加熱物が収容される鍋状容器と、鍋状容器を加熱する加熱部と、加熱部を動作させる充電自在の蓄電池と、蓄電池の残電力量を検出する電力検出部と、加熱部の動作を制御する制御部と、を備え、制御部は、電力検出部によって検出された残電力量において調理される被加熱物の量を報知する報知手段と、蓄電池の残電力量と、残電力量において調理される被加熱物の量との関係を示す被加熱物量テーブルを記憶する記憶手段と、電力検出部によって検出された残電力量に基づいて、加熱部の動作を制御する加熱手段と、を有し、報知手段は、記憶手段が記憶する被加熱物量テーブルに基づいて、電力検出部によって検出された残電力量において調理される被加熱物の量を報知するものであり、記憶手段は、蓄電池の残電力量と、複数の調理工程において使用される電力量との関係を示す電力テーブルを記憶するものであり、加熱手段は、記憶手段が記憶する電力テーブルに基づいて、複数の調理工程に残電力量を使用する優先順位を設けて加熱部の動作を制御する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、蓄電池の残電力量において調理される被加熱物の量を報知する。このため、ユーザは、蓄電池の残電力量において調理を完遂する条件を選択することができる。従って、蓄電池から電力が供給されていても、調理が途中で中断することを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】実施の形態1に係る加熱調理器100を示す側面図である。
【
図2】実施の形態1に係る加熱調理器100の調理工程を示すタイミングチャートである。
【
図3】実施の形態1に係る加熱調理器100の被加熱物量テーブルを示す図である。
【
図4】実施の形態1に係る加熱調理器100の電力テーブルを示す図である。
【
図5】実施の形態1に係る加熱調理器100の表示部15を示す図である。
【
図6】実施の形態1に係る加熱調理器100の調理工程毎の電力量を示すグラフである。
【
図7】実施の形態1に係る加熱調理器100の調理工程毎の電力量を示すグラフである。
【
図8】実施の形態1に係る加熱調理器100の調理工程毎の電力量を示すグラフである。
【
図9】実施の形態1に係る加熱調理器100の調理工程毎の電力量を示すグラフである。
【
図10】実施の形態1に係る加熱調理器100の制御部20の動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明に係る加熱調理器の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、本発明は、以下に説明する実施の形態によって限定されるものではない。また、
図1を含め、以下の図面では各構成部材の大きさの関係が実際のものとは異なる場合がある。また、以下の説明において、本発明の理解を容易にするために方向を表す用語を適宜用いるが、これは本発明を説明するためのものであって、これらの用語は本発明を限定するものではない。方向を表す用語としては、例えば、「上」、「下」、「右」、「左」、「前」又は「後」等が挙げられる。
【0010】
実施の形態1.
図1は、実施の形態1に係る加熱調理器100を示す側面図である。
図1に示すように、加熱調理器100は、例えば米200aを炊く炊飯器である。加熱調理器100は、調理器本体1と、容器カバー2と、加熱部3と、ヒンジ部6と、鍋状容器5と、断熱材17と、蓋体10と、カートリッジ14と、表示部15とを備えている。また、加熱調理器100は、蓄電池18と、鍋底温度検出部4と、炊飯量検出部8と、内部温度検出部16と、電力検出部7と、制御部20とを備えている。なお、加熱調理器100は、炊飯器以外の調理器としてもよい。
【0011】
(調理器本体1)
調理器本体1は、有底筒状をなしており、加熱調理器100の外郭を構成している。なお、調理器本体1に、加熱調理器100を運搬するためのハンドル(図示せず)が設けられてもよい。ハンドルは、蓋体10を跨ぐような形状とし、その両端部が、調理器本体1の上部且つ側部に軸支される。そして、ハンドルは、回転方向が蓋体10の回転方向と一致するように構成される。これにより、ユーザが加熱調理器100を運搬する際に、ハンドルの軸支点の直上で把手されるようにハンドルを回転させ、このハンドルだけを握持して、加熱調理器100を運搬することができる。
【0012】
(容器カバー2)
容器カバー2は、調理器本体1の内壁を覆うものであり、調理器本体1の内壁に沿って、有底筒状に形成されている。容器カバー2の内部に鍋状容器5が着脱自在に収容される。容器カバー2の底部の中央部には、底孔部2aが設けられており、底孔部2aには、鍋底温度検出部4及び炊飯量検出部8が設けられている。容器カバー2の上端部は、外側に延びるフランジ状の肩部1aとなっている。
【0013】
(加熱部3)
加熱部3は、例えば加熱コイルであり、制御部20によって通電が制御されて、鍋状容器5を加熱するものである。なお、加熱部3は、加熱コイルのほかに、シースヒータ等の電気ヒータとしてもよい。また、
図1では、加熱部3が、調理器本体1における鍋状容器5の底面と対向する位置に設けられているが、これに加え、鍋状容器5の側面に沿った位置に設けられてもよい。
【0014】
(ヒンジ部6)
ヒンジ部6は、調理器本体1の上端縁部に設けられており、調理器本体1に対し蓋体10を開閉自在に支持するものである。
【0015】
(鍋状容器5)
鍋状容器5は、調理器本体1に設置され、米200a及び水201といった被加熱物200が収容されるものである。鍋状容器5は、例えば、加熱部3における誘導加熱により発熱する磁性体金属を含む材料で構成されており、有底円筒形状をなしている。鍋状容器5は、羽釜形状をなしており、外周側面の全周には、外側に突出する鍔部5aが設けられている。鍋状容器5の鍔部5aが容器カバー2の肩部1aに載置されることによって、鍋状容器5が容器カバー2内に収容され、容器カバー2と鍋状容器5との間は閉空間となる。
【0016】
この状態で、加熱部3が動作すると、閉空間によって断熱されるため、鍋状容器5の鍔部5aより下方に位置する部分の温度と、収容されている米200aの温度とが低下し難くなる。従って、被加熱物200を効率的に加熱することができる。なお、鍋状容器5に、樹脂製の把手部(図示せず)が設けられてもよい。これにより、ユーザが調理直後の熱い鍋状容器5を食卓に移動させるとき、ミトン等を使用しなくとも、素手で鍋状容器5を移動させることができる。
【0017】
(断熱材17)
断熱材17は、調理器本体1と容器カバー2との間の空間において、容器カバー2の肩部1aの下方に配置されている。これにより、加熱調理器100において、容器カバー2と鍋状容器5の鍔部5aより下方に位置する部分との間の空間の断熱性が向上する。
【0018】
(蓋体10)
蓋体10は、調理器本体1の開口を塞ぐものであり、外蓋11と内蓋12とを有している。外蓋11は、蓋体10の上部及び側部を構成するものであり、外蓋11には、着脱自在のカートリッジ14が設けられている。外蓋11の上面には、表示部15が設けられている。内蓋12は、外蓋11の下面、即ち、鍋状容器5に対向する面に係止材13を介して着脱自在に設けられており、例えばステンレス等の金属で構成されている。内蓋12の周縁部には、蓋パッキン9が形成されている。蓋パッキン9は、鍋状容器5の上端周縁部との密閉性を確保するシール材である。内蓋12には、内部温度検出部16が挿入される孔部12aと、鍋状容器5内で発生した蒸気が通過する蒸気口12bとが形成されている。なお、外蓋11には、内蓋12の孔部12aに挿入された内部温度検出部16の外周の隙間を塞ぐパッキン11aが設けられている。
【0019】
(カートリッジ14)
カートリッジ14は、鍋状容器5からの吹き零れを緩和するものであり、蒸気取入口14aと蒸気排出口14bとが形成されている。蒸気取入口14aは、カートリッジ14の下部において内蓋12の蒸気口12bに対向する位置に形成されており、蒸気取入口14aには、炊飯中に発生する蒸気圧に応じて上下動する弁(図示せず)が設けられている。蒸気排出口14bは、カートリッジ14の上部に形成されている。鍋状容器5内で発生した蒸気は、蒸気口12bを通過して蒸気取入口14aからカートリッジ14内に進入し、カートリッジ14内を通過して蒸気排出口14bからカートリッジ14の外部に流出する。これにより、万が一、鍋状容器5内から被加熱物200が吹き零れてこようとしても、カートリッジ14によって、その吹き零れを緩和することができる。
【0020】
(表示部15)
表示部15は、例えば外蓋11の上部に設けられており、ユーザからの操作入力を受け付ける操作機能と、操作入力に関する情報及び加熱調理器100の動作状態等を表示する表示機能とを併せもった操作表示部である。表示部15は、文字、記号又は図等を用いて操作入力に関する情報及び加熱調理器100の動作状態等を表示する表示パネルである。表示部15において操作設定可能な項目としては、例えば、炊飯の開始、炊飯の取り消し、炊飯予約及び炊飯メニューが挙げられる。
【0021】
炊飯メニューの具体例としては、白米炊飯又は玄米炊飯等の米の種類に関するもの、標準炊飯又は早炊き炊飯等の炊飯時間に関するもの、かため又はやわらかさ等の炊き上がりの米飯の硬さに関するもの等が挙げられる。表示部15が表示する項目としては、例えば、炊飯中又は予約待機中等の加熱調理器100の状態、設定されている炊飯メニューの内容、炊き上がりの予定時刻、現在時刻、炊飯する米200aの量である被加熱物200の量等が挙げられる。なお、本実施の形態1の表示部15は一例であり、構成を適宜変更することが可能である。
【0022】
(蓄電池18)
蓄電池18は、例えば調理器本体1の背面に着脱自在に取り付けられており、電力が供給されることにより充電自在なリチウムイオンバッテリ等によって構成されている。蓄電池18は、制御部20と電気的に接続されている。なお、蓄電池18は、加熱調理器100に備え付けされた構成に限らず、外付け可能な構成としてもよい。例えば、蓄電池18は、商用電源等の外部電源19によって充電されるものであり、充電された蓄電池18が加熱調理器100に外付けされてもよい。
【0023】
(鍋底温度検出部4)
鍋底温度検出部4は、例えばサーミスタで構成されており、前述の如く、容器カバー2の底孔部2aに挿入されて、鍋状容器5の底面に取り付けられる。これにより、鍋底温度検出部4は、鍋状容器5の鍋底温度を検知する。鍋底温度検出部4は、バネ等の弾性部材(図示せず)によって上方に付勢されており、容器カバー2に収容された鍋状容器5の底面に接している。鍋底温度検出部4によって検出された鍋状容器5の温度に関する情報は、制御部20に出力される。なお、鍋底温度検出部4の具体的な構成は、サーミスタに限定されず、鍋状容器5に接触して温度を検知する接触式温度検出部としてもよい。また、そのほかに、鍋底温度検出部4は、鍋状容器5の温度を非接触で検知する非接触式温度検出部、例えば赤外線検出部等としてもよい。
【0024】
(炊飯量検出部8)
炊飯量検出部8は、例えば重量センサで構成されており、鍋状容器5内に収容された米量又は水量のいずれか一方を計測して鍋状容器5に収容された炊飯合数を検出する。炊飯量検出部8は、検出された炊飯合数の情報を制御部20に送信する。
【0025】
(内部温度検出部16)
内部温度検出部16は、外蓋11の下面に取り付けられており、鍋状容器5内の温度を検知するものである。内部温度検出部16の一部は、内蓋12の孔部12aに挿入されており、内部温度検出部16は、孔部12aを介して鍋状容器5内の温度を検出する。内部温度検出部16は、例えばサーミスタで構成されており、内部温度検出部16によって検出された鍋状容器5内の温度に関する情報は、制御部20に出力される。
【0026】
(電力検出部7)
電力検出部7は、蓄電池18の残電力量を検出するものである。
【0027】
(時間計測部26)
時間計測部26は、制御部20からの指示信号に基づいて、経過時間をカウントする。時間計測部26によって計測された時間は、制御部20に出力される。時間計測部26は、調理を実施する時間の計測等に用いられる。
【0028】
(制御部20)
制御部20は、専用のハードウェア又は記憶装置に格納されるプログラムを実行するCPU(Central Processing Unit、中央処理装置、処理装置、演算装置、マイクロプロセッサ、マイクロコンピュータ又はプロセッサともいう)で構成される。制御部20が専用のハードウェアである場合、制御部20は、例えば、単一回路、複合回路、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field-Programmable Gate Array)、又は、これらを組み合わせたものが該当する。制御部20が実現する各機能部のそれぞれを、個別のハードウェアで実現してもよいし、各機能部を一つのハードウェアで実現してもよい。
【0029】
制御部20がCPUの場合、制御部20が実行する各機能は、ソフトウェア、ファームウェア、又はソフトウェアとファームウェアとの組み合わせにより実現される。ソフトウェア及びファームウェアはプログラムとして記述される。CPUは、プログラムを読み出して実行することにより、各機能を実現する。なお、制御部20の機能の一部を専用のハードウェアで実現し、一部をソフトウェア又はファームウェアで実現するようにしてもよい。
【0030】
制御部20は、鍋底温度検出部4、表示部15及び内部温度検出部16からの出力信号に基づいて、加熱コイルである加熱部3に通電する高周波電流を制御する。制御部20は、ユーザが表示部15を操作して指示を入力すると、入力された炊飯メニュー及び炊飯する米200aの量に適合する炊飯プログラムに基づいて、加熱部3を動作させて炊飯工程を実行する。そのほかに、制御部20は、加熱調理器100の動作を全般的に制御する。また、制御部20は、炊飯量検出部8によって検出された炊飯合数が、ユーザが設定した炊飯合数と一致するか否かを判定する。
【0031】
(調理工程)
図2は、実施の形態1に係る加熱調理器100の調理工程を示すタイミングチャートである。
図2の上図において、横軸は時間を示し、縦軸は温度を示す。
図2の下図において、横軸は時間を示し、縦軸は加熱部3の電力を示す。太線は、鍋底温度検出部4によって検出された鍋状容器底面温度を示し、細線は、内部温度検出部16によって検出された鍋状容器上部温度を示す。破線は、被加熱物温度を示す。次に、加熱調理器100の調理工程について説明する。
図2に示すように、加熱調理器100の調理工程は、吸水工程、昇温工程、沸騰維持工程、ドライアップ工程及び蒸らし工程を有している。吸水工程は、鍋状容器5内の米200aの内部にまで吸水されることを促す工程である。昇温工程は、吸水工程後から鍋状容器5内の水201が沸騰するまでの工程である。内部温度検出部16によって検出された鍋状容器5の上部の温度が、所定の温度閾値T1に達した場合、制御部20は、水201が沸騰したと判断する。
【0032】
沸騰維持工程は、鍋状容器5内の水201が沸騰した場合に行われる工程である。沸騰状態を維持する工程であり、米200aの芯がない状態になるために必要な量の水分を吸収し、米200aのデンプンの糊化が促進される。沸騰維持工程は、第1沸騰維持工程と第2沸騰維持工程とを有する。第1沸騰維持工程は、昇温工程において鍋状容器5内の水201が沸騰した状態から更に沸騰が進み、鍋状容器5内に沸騰気泡が分布する状態に変化する工程である。第1沸騰維持工程は、鍋状容器5内の水201が沸騰することによって発生する蒸気の量が最も多い工程である。第2沸騰維持工程は、第1沸騰維持工程よりも電力の通電率が下がって沸騰状態を維持する工程である。第2沸騰維持工程は、鍋状容器5内の水201が米200aに吸収されて、鍋状容器5内に残存する水201が減少する工程である。
【0033】
ドライアップ工程は、第2沸騰維持工程後に行われ、鍋状容器5内に残った余分な水分が蒸発する工程である。蒸らし工程は、調理工程の最終工程であり、鍋状容器5内の米200aを蒸らすことによって、米粒の中心部にまで糊化が進行して、米粒内の水分の分布を均一化する工程である。
【0034】
制御部20は、記憶手段21と、報知手段22と、判定手段23と、電力切替手段24と、加熱手段25とを有している。なお、加熱調理器100は、鍋状容器5内の水201の量を検出する水量検出部を備えていてもよい。この場合、制御部20は、鍋底温度検出部4、表示部15、内部温度検出部16及び水量検出部からの出力信号に基づいて、加熱部3の動作を制御する。ここで、制御部20は、通常、外部電源19から供給される電力を用いて加熱部3の動作を制御するものの、外部電源19からの電力供給が遮断された場合、蓄電池18から供給される電力を用いて加熱部3の動作を制御する。
【0035】
(記憶手段21)
図3は、実施の形態1に係る加熱調理器100の被加熱物量テーブルを示す図である。記憶手段21は、蓄電池18の残電力量と、残電力量において調理される被加熱物200の量との関係を示す被加熱物量テーブルを記憶する。
図3に示すように、被加熱物量テーブルは、残電力量毎に調理可能な被加熱物200の量を示すものである。被加熱物量テーブルにおいて、残電力量が多いほど、調理可能な被加熱物200の量が、1合、2合、3合・・・5.5合というように増加する。なお、記憶手段21は、ハードディスクとして構成されてもよいし、データを一時的に記憶することができるランダムアクセスメモリ(RAM)等の揮発性記憶装置として構成されてもよい。また、記憶手段21は、データを長期的に記憶することができるフラッシュメモリ等の不揮発性記憶装置として構成されてもよい。
【0036】
図4は、実施の形態1に係る加熱調理器100の電力テーブルを示す図である。記憶手段21は、蓄電池18の残電力量と、複数の調理工程において使用される電力量との関係を示す電力テーブルを記憶する。
図4に示すように、電力テーブルは、被加熱物200の量毎に、吸水工程、昇温工程、沸騰維持工程、ドライアップ工程及び蒸らし工程の最小電力量を示す。
【0037】
また、記憶手段21は、例えば米量と水量との合計量を区分けし、区分けされた範囲毎に、炊飯合数として記憶する。ここで、記憶手段21は、蓄電池18の残電力量に応じて炊飯可能な炊飯合数の電力量を記憶してもよい。電力量の範囲における最小電力量は、炊飯前の生米を可食化することができる最小電力量とする。炊飯前の生米を可食化することができる最小電力量は、例えば、加熱部3による加熱温度を98℃として20分加熱した場合の電力量である。
【0038】
(報知手段22)
図5は、実施の形態1に係る加熱調理器100の表示部15を示す図である。報知手段22は、電力検出部7によって検出された残電力量において調理される被加熱物200の量を報知する。具体的には、報知手段22は、記憶手段21が記憶する被加熱物量テーブルに基づいて、電力検出部7によって検出された残電力量において調理される被加熱物200の量を報知する。
図5に示すように、報知手段22は、残電力量において調理される被加熱物200の量を、表示部15に表示させる。具体的には、報知手段22は、蓄電池18の残電力量において炊飯可能な炊飯合数を、文字、記号又は図等を用いて表示部15に表示させる。本実施の形態1では、報知手段22は、調理に関する情報を表示部15に表示させているが、これに限らず、調理に関する情報をスピーカー(図示せず)等に発声させてもよい。
【0039】
(判定手段23)
判定手段23は、外部電源19から電力が供給されているかを判定するものである。
【0040】
(電力切替手段24)
電力切替手段24は、判定手段23によって外部電源19から供給される電力が遮断されていると判定された場合、加熱部3の動作を蓄電池18の電力によって実施するように切り替える。一方、電力切替手段24は、判定手段23によって外部電源19から電力が供給されていると判定された場合、加熱部3の動作を外部電源19の電力によって実施するように切り替える。
【0041】
(加熱手段25)
加熱手段25は、電力切替手段24によって蓄電池18から電力が供給されるように切り替えられている場合、電力検出部7によって検出された残電力量に基づいて、加熱部3の動作を制御する。また、加熱手段25は、電力切替手段24によって外部電源19から電力が供給されるように切り替えられている場合、外部電源19からの電力によって加熱部3の動作を制御する。
【0042】
図6は、実施の形態1に係る加熱調理器100の調理工程毎の電力量を示すグラフである。
図6において、横軸は時間を示し、縦軸は電力を示す。次に、外部電源19から電力が供給されている場合の制御について説明する。外部電源19からの電力供給が遮断されずに常に通電されている場合、制御部20は、予めプログラムされた通常動作を実行する。
図6に示すように、吸水工程における電力を基準として、昇温工程における電力は吸水工程における電力に比べて大きい。
【0043】
沸騰維持工程における電力は、昇温工程における電力より小さく吸水工程における電力より大きい。ドライアップ工程における電力は、沸騰維持工程における電力より大きく昇温工程における電力より小さい。蒸らし工程における電力は、全ての調理工程のなかで最も小さい。なお、蓄電池18内の残電力量が十分にあり、
図5に示す通常動作を実行するだけの電力量を蓄電池18内の残電力量で賄うことができる場合、制御部20は、蓄電池18の残電力量を用いて
図6に示す動作を実行する。即ち、この場合、制御部20は、蓄電池18の電力を用いていても、外部電源19の電力を用いる場合と同様の動作を実行する。
【0044】
図7は、実施の形態1に係る加熱調理器100の調理工程毎の電力量を示すグラフである。
図7において、横軸は時間を示し、縦軸は電力を示す。次に、蓄電池18内の残電力量が炊飯合数における最低電力量である場合の制御について例示する。
図7に示すように、制御部20は、米200aに水201を吸収する吸水工程において電力を消費しない。次に、制御部20は、昇温工程及び炊飯維持工程において、設定された炊飯合数における最低電力量を用いる。その後、制御部20は、ドライアップ工程及び蒸らし工程において、電力を消費せずに余熱を利用する。
【0045】
図8は、実施の形態1に係る加熱調理器100の調理工程毎の電力量を示すグラフである。
図8において、横軸は時間を示し、縦軸は電力を示す。次に、吸水工程の時間を長くする場合の制御について例示する。
図8に示すように、制御部20は、複数の調理工程のうち吸水工程の時間を基準時間よりも長くする。吸水工程は、鍋状容器5を加熱して水温を上昇させることによって米200aへの水201の吸収を促進する工程である。ここで、米200aへの水201の吸収を促進する効果は、加熱せずとも、米200aを水201に浸けおく時間を延長することによっても、得られる。このように、制御部20は、蓄電池18内の残電力量が極めて少なく、最低電力量で炊飯を行う場合、
図8に示すように吸水工程の時間を延長してもよい。
【0046】
図9は、実施の形態1に係る加熱調理器100の調理工程毎の電力量を示すグラフである。
図9において、横軸は時間を示し、縦軸は電力を示す。次に、蓄電池18内の残電力量が炊飯合数における最低電力量ではなく、
図7の場合よりも多い場合について説明する。
図9に示すように、加熱手段25は、記憶手段21が記憶する電力テーブルに基づいて、複数の調理工程に残電力量を使用する優先順位を設けて加熱部3の動作を制御する。残電力量を使用する優先順位は、例えば、昇温工程、沸騰維持工程、ドライアップ工程、吸水工程、蒸らし工程の順である。なお、昇温工程と沸騰維持工程とで使用される電力量の合計を最小電力量としてもよい。
【0047】
なお、吸水工程の途中で外部電源19からの電力供給が遮断された場合も、制御部20は、蓄電池18内の残電力量と、優先順位とに基づいて、炊飯動作を実行する。ここで、制御部20は、外部電源19からの電力供給が行われている間に既に完了している調理工程を、優先順位から除外する。ここで、設定された炊飯量において、蓄電池18が最低電力量の状態で炊飯されている場合について説明する。このとき、沸騰維持工程が終了したのち、外部電源19からの電源供給が遮断された場合、制御部20は、既に外部電源19によって吸水工程、昇温工程及び沸騰維持工程が完了していることを考慮して、蓄電池18の残電力をドライアップ工程に使用する。
【0048】
以上説明したように、加熱手段25は、記憶手段21が記憶する電力テーブルに基づいて、複数の調理工程に残電力量を使用する優先順位を設けて加熱部3の動作を制御する。即ち、制御部20は、外部電源19からの電力供給が遮断された場合、蓄電池18の残電力量を、炊飯合数に応じて、優先順位を付ける。制御部20は、生米を食することができるように、蓄電池18の残電力量を優先順位付けして各調理工程に振り分けることによって、蓄電池18の残電力量に応じた適切な制御を実行する。従って、炊飯中に外部電源19からの電力供給が遮断されても、炊飯が中止することを抑制することができる。
【0049】
なお、制御部20は、加熱調理後、蓄電池18を充電する充電モードを有している。制御部20は、充電モードがオンされているかを判定する。ここで、充電モードとは、蓄電池18を外部電源19から供給された電力によって充電するモードであり、ユーザが適宜設定する。
【0050】
(制御部20の動作)
図10は、実施の形態1に係る加熱調理器100の制御部20の動作を示すフローチャートである。次に、制御部20の動作について説明する。
図10に示すように、加熱調理器100に電力が供給されたのち、ユーザによって、炊飯条件が設定される(ステップST1)。ユーザによって炊飯条件が設定される際、外部電源19からの電力供給が遮断された場合における蓄電池18からの電力供給に基づく設定を行うか否かがユーザによって選択される(ステップST2)。ユーザによって蓄電池18からの電力供給に基づく設定が行われる場合(ステップST2のYES)、電力検出部7は、蓄電池18の残電力量を検出する(ステップST3)。
【0051】
そして、報知手段22は、記憶手段21が記憶する被加熱物量テーブルに基づいて、電力検出部7によって検出された残電力量において調理される被加熱物200の量である炊飯可能合数を、文字、記号又は図等を用いて表示部15に表示させる(ステップST4)。このとき、ユーザによって、炊飯合数が設定される(ステップST5)。ユーザが炊飯合数を設定するまで、ステップST4を維持する。
【0052】
ユーザが炊飯合数を設定したのち、炊飯量検出部8は、鍋状容器5内に収容された米量又は水量のいずれか一方を計測して鍋状容器5に収容された炊飯合数を検出する。制御部20は、炊飯量検出部8によって検出された炊飯合数が、ユーザが設定した炊飯合数と一致するか否かを判定する(ステップST6)。なお、ステップST2において、ユーザが蓄電池18からの電力供給に基づく設定を行わない場合(ステップST2のNO)、ステップST6に移行する。検出された炊飯合数が設定された炊飯合数と一致しない場合(ステップST6のNO)、ステップST4に戻る。一方、検出された炊飯合数が設定された炊飯合数と一致する場合(ステップST6のYES)、炊飯開始の準備が行われる(ステップST7)。
【0053】
炊飯が開始されると、判定手段23は、外部電源19から電力が供給されているかを判定する(ステップST8)。判定手段23によって外部電源19から電力が供給されていると判定された場合(ステップST8のNO)、電力切替手段24は、加熱部3の動作を外部電源19の電力によって実施するように切り替える。この場合、加熱手段25は、外部電源19の電力によって、加熱部3の動作を制御する。一方、判定手段23によって停電等で外部電源19から電力が遮断されていると判定された場合(ステップST8のYES)、電力切替手段24は、加熱部3の動作を蓄電池18の電力によって実施するように切り替える(ステップST9)。この場合、加熱手段25は、電力検出部7によって検出された残電力量に基づいて、加熱部3の動作を制御する。
【0054】
炊飯が終了すると、制御部20は、充電モードがオンされているかを判定する(ステップST10)。充電モードがオンされている場合(ステップST10のYES)、充電モードに移行し(ステップST11)、例えば次炊飯時等において充電モードがオフされる(ステップST12)まで、充電モードを維持する。その後、制御が終了する。制御部20は、充電モードがオフされている場合(ステップST10のNO)、制御が終了する。
【0055】
本実施の形態1によれば、蓄電池18の残電力量において調理される被加熱物200の量を報知する。具体的には、本実施の形態1は、蓄電池18の残電力量と残電力量において調理される被加熱物200の量との関係を示す被加熱物量テーブルに基づいて、残電力量において調理される被加熱物200の量を報知する。このため、ユーザは、蓄電池18の残電力量において調理を完遂する条件を選択することができる。従って、蓄電池18から電力が供給されていても、調理が途中で中断することを抑制することができる。
【0056】
また、加熱調理器100が炊飯器である場合、炊飯量に応じて使用電力量も変わるため、調理工程毎に使用される電力量を把握しておく必要がある。本実施の形態1は、記憶手段21は、蓄電池18の残電力量と、複数の調理工程において使用される電力量との関係を示す電力テーブルを記憶する。そして、加熱手段25は、記憶手段21が記憶する電力テーブルに基づいて、複数の調理工程に残電力量を使用する優先順位を設けて加熱部3の動作を制御する。このため、加熱調理器100は、蓄電池18の残電力量が少なくても、美味な米飯を炊くことができる。
【符号の説明】
【0057】
1 調理器本体、1a 肩部、2 容器カバー、2a 底孔部、3 加熱部、4 鍋底温度検出部、5 鍋状容器、5a 鍔部、6 ヒンジ部、7 電力検出部、8 炊飯量検出部、9 蓋パッキン、10 蓋体、11 外蓋、11a パッキン、12 内蓋、12a 孔部、12b 蒸気口、13 係止材、14 カートリッジ、14a 蒸気取入口、14b 蒸気排出口、15 表示部、16 内部温度検出部、17 断熱材、18 蓄電池、19 外部電源、20 制御部、21 記憶手段、22 報知手段、23 判定手段、24 電力切替手段、25 加熱手段、26 時間計測部、100 加熱調理器、200 被加熱物、200a 米、201 水。