(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-07
(45)【発行日】2023-12-15
(54)【発明の名称】加圧製品およびそれを用いた吐出装置
(51)【国際特許分類】
B65D 83/44 20060101AFI20231208BHJP
B65D 83/14 20060101ALI20231208BHJP
B65D 83/20 20060101ALI20231208BHJP
B65D 77/04 20060101ALI20231208BHJP
B05B 9/04 20060101ALI20231208BHJP
【FI】
B65D83/44 ZAB
B65D83/14 220
B65D83/20
B65D83/14
B65D77/04 B
B05B9/04
(21)【出願番号】P 2019232156
(22)【出願日】2019-12-23
【審査請求日】2022-11-18
(73)【特許権者】
【識別番号】391021031
【氏名又は名称】株式会社ダイゾー
(74)【代理人】
【識別番号】100100044
【氏名又は名称】秋山 重夫
(74)【代理人】
【識別番号】100205888
【氏名又は名称】北川 孝之助
(72)【発明者】
【氏名】菅原 信也
(72)【発明者】
【氏名】片岡 公雄
(72)【発明者】
【氏名】宮本 英俊
【審査官】米村 耕一
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-251710(JP,A)
【文献】特開2019-006457(JP,A)
【文献】特開2016-033038(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0139810(US,A1)
【文献】米国特許第04446991(US,A)
【文献】独国実用新案第20108328(DE,U1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 83/14-83/62
B65D 77/04
B05B 9/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部容器およびその内部に収容される内部容器からなる容器本体と、容器本体の上端開口を閉じる蓋体と、内部容器内に充填された原液と、外部容器と内部容器の間に充填された加圧剤とからなり、
前記外部容器および内部容器が、熱可塑性樹脂製で、それぞれ首部を有し、
前記蓋体が、内部容器の首部の上端開口に挿入されるカップ状の封止部と、その封止部の上端から外向きに延び、前記外部容器および内部容器の首部の上端面に超音波溶着されるフランジとを有し、
前記封止部の外周および内部容器の首部のうちいずれか一方または両方に、環状に当接してシール作用を行う嵌合部が設けられている、
加圧製品。
【請求項2】
前記内部容器の首部が、下に向かって縮径するテーパ部を有する、
請求項1記載の加圧製品。
【請求項3】
前記封止部の外周に、内部容器のテーパ部と略同一テーパ角度のテーパ面が設けられており、そのテーパ面の途中または下端の角に前記嵌合部が設けられている請求項2記載の加圧製品。
【請求項4】
前記封止部の下部に、前記テーパ面より緩い角度の先端テーパ面が設けられており、前記テーパ面と先端テーパ面の境界が前記嵌合部となっている、請求項3記載の加圧製品。
【請求項5】
前記嵌合部が、環状の突起または環状の角である、請求項1~3のいずれかに記載の加圧製品。
【請求項6】
前記テーパ部の下部に円筒部が設けられており、前記封止部の下部に、円筒部の内径と同一もしくはそれよりも大きい外径を有する筒部が設けられており、前記円筒部と筒部が嵌合して前記嵌合部となっている、請求項2記載の加圧製品。
【請求項7】
前記封止部の外周に嵌合部が設けられ、前記内部容器の首部にその嵌合部と当接して変形する変形部が設けられている、請求項1~6のいずれかに記載の加圧製品。
【請求項8】
前記蓋体が、バルブを有する吐出部材が気密に嵌合する嵌合筒部を有し、その嵌合筒部の底部に、吐出部材の挿入によって開封される被開封部が設けられている、請求項1~7のいずれかに記載の加圧製品。
【請求項9】
請求項1~8のいずれかに記載の加圧製品と、前記容器本体の上端に着脱自在に装着され、加圧製品の蓋体と液密および気密に当接し、前記内部容器内の原液の吐出/停止を操作するバルブを備えた吐出部材とからなる、吐出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内部容器内に原液を充填し、外部容器と内部容器の間に加圧剤を充填し、蓋体で密閉した加圧製品およびその加圧製品を用いた吐出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、原液と加圧剤とが充填された容器に対して、バルブを備える吐出部材を取り付けてなる吐出装置が記載されている。この吐出装置では、吐出部材が容器に対して着脱可能とされている。具体的には、吐出部材が、バルブと、このバルブを覆うキャップとを備えており、キャップを容器の首部外周に設けられたネジに螺合することで、吐出部材が容器に取り付けられている。そのため、原液を全て吐出し終えた後に容器から吐出部材を取り外し、新たな容器に付け替えるといった吐出部材の再利用が可能となっている。
【0003】
また、特許文献1の
図7aおよび段落[0066]には、容器本体に原液を入れた後、容器本体の口部をバルブを受け入れるカップ状のハウジング部で閉じ、容器本体の首部に形成したスリットを介して加圧剤を充填すると同時にハウジング部のフランジ部を容器本体の首部の段部に溶着などによって気密に固定することが開示されている。
【0004】
特許文献2には、容器本体とバルブのハウジングとの間に線シールを介在させ、ハウジングを容器本体に固定するための固定蓋を容器本体の首部の上面に超音波溶着する技術が開示されている。このものは内容物が溶着部に浸透することを線シールによって長期間安定して抑制できる。
【0005】
特許文献3には、容器本体と、その中に収容される内袋と、内袋の首部を介して容器本体の首部と嵌合し、内袋内の原液を吐出するバルブを備えたマウンティングカップを有する二重エアゾール製品が開示されている。内袋の首部には縮径部(くびれ)が設けられ、マウンティングカップの下部と嵌合している。さらにマウンティングカップの外周突起の下端の角部と容器本体との間に内袋を挟着し、シールしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】国際公開第2015/080252号
【文献】特開2018-177265号公報
【文献】特許第5560035号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1の吐出装置では、容器本体の開口部の段部にハウジング部のフランジ部を溶着などで固定することが記載されている。この吐出装置は、容器本体に原液および加圧剤を充填した後、加圧下でフランジ部を溶着するが、原液を充填するための内部容器がなく、溶着部となるフランジ部と原液の間には加圧剤が充填される空間があるため、超音波により溶着しても溶着部は原液の霧化による影響を受けにくい。
【0008】
特許文献2の吐出容器も、容器本体に原液を充填した後でハウジングを装着し、固定部材を容器本体に溶着している。この吐出容器も原液を充填するための内部容器がなく、溶着部は原液の霧化による影響を受けにくい。
【0009】
特許文献3の内袋は柔軟であり、容器本体は金属製であるので、角部と容器本体とで内袋を挟着することにより、シール作用が得られる。しかし実際には金属製のカバーを内側に塑性変形させることで内袋を狭着させており、金属材料を使用せずにシールすることは難しい。
【0010】
本発明は、内部容器内に原液を充填し、外部容器と内部容器の間に加圧剤を充填し、外部容器と内部容器を蓋体で閉じ、それらを超音波溶着する二重加圧容器における、内部容器と蓋体の間のシール性を高め、原液の溶着部への浸透を抑制すると共に、加圧剤の内部容器内への侵入を抑制することを技術課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の加圧製品11aは、外部容器13およびその内部に収容される内部容器14からなる容器本体16と、容器本体16の上端開口を閉じる蓋体15と、内部容器14内(Sc)に充填された原液Cと、外部容器13と内部容器14の間(Sp)に充填された加圧剤Pとからなり、前記外部容器13および内部容器14が、熱可塑性樹脂製で、それぞれ首部13d、14dを有し、前記蓋体15が、内部容器14の首部14dの上端開口に挿入されるカップ状の封止部15aと、その封止部15aの上端から外向きに延び、前記外部容器13および内部容器14の首部13d、14dの上端面13f、14eに超音波溶着されるフランジ15bとを有し、前記封止部15aの外周および内部容器14の首部14dのうちいずれか一方または両方に、環状に当接してシール作用を行う嵌合部15p、15p1が設けられていることを特徴としている。
【0012】
このような加圧製品11aにおいては、前記内部容器14の首部14dが、下に向かって縮径するテーパ部14a2を有することが好ましい。また、前記封止部15aの外周に、内部容器14のテーパ部14d2と略同一テーパ角度のテーパ面15a8が設けられており、そのテーパ面15a8の途中または下端の角に前記嵌合部(15p、15p1)が設けられているものが好ましい。さらに前記封止部15aの下部に、前記テーパ面15a8より緩い角度の先端テーパ面15a7が設けられており、前記テーパ面15a8と先端テーパ面15a7の境界15pが前記嵌合部となっているものが好ましい。前記嵌合部(15p、15p1)が環状の突起15p1または環状の角であるものが好ましい。前記テーパ部14a2の下部に円筒部14a3を有し、前記封止部15aの下部に、円筒部14a3の内径と同一もしくはそれよりも大きい外径を有する筒部15a9が設けられており、前記円筒部14a3と筒部15a9が嵌合して前記嵌合部となっているものが好ましい。前記封止部15aの外周に嵌合部(15p、15p1)が設けられ、前記内部容器14の首部14dにその嵌合部(15p、15p1)と当接して変形する変形部が設けられているものが好ましい。また、前記蓋体15が、バルブ21を有する吐出部材12が気密に嵌合する嵌合筒部15a1を有し、その嵌合筒部15a1の底部15cに、吐出部材12の挿入によって開封される被開封部(閉鎖部15d)が設けられているものが好ましい。
【0013】
本発明の吐出装置10は、前記いずれかの加圧製品11aと、前記容器本体16の上端に着脱自在に装着され、加圧製品11aの蓋体15と液密および気密に当接し、前記内部容器14内の原液Cの吐出/停止を操作するバルブ21を備えた吐出部材12とからなることを特徴としている。
【発明の効果】
【0014】
本発明の加圧製品は、原液が充填されている内部容器に蓋体を装着することにより、蓋体および内部容器のいずれか一方または両方に形成された嵌合部が相手の部材と当接してシール作用が奏される。そのため、外部容器と内部容器の隙間に加圧剤を充填するとき、加圧剤の内部容器への流れ込みが抑制される。また、その後の超音波溶着のときの振動によって内部容器内の原液が霧化しても、原液の蒸気が嵌合部で遮られて内部容器の首部の上端面への付着を防止して溶着の邪魔にならず、溶着後は原液が溶着部に浸透して溶着部が劣化することを抑制する。さらに超音波溶着時に溶けた樹脂がはみ出し、それが冷えることで固体化し樹脂片となるが、嵌合部により内部容器内への落下が防止されるので、樹脂片がバルブを詰まらせることがない。
【0015】
このような加圧製品において、前記内部容器の首部が、下に向かって縮径するテーパ部を有する場合は、蓋体を容器本体に装着するとき、蓋体の封止部が内部容器のテーパ部にガイドされながら挿入されるため、蓋体の位置が安定し、外部容器と内部容器の両方の首部の上端面と超音波溶着しやすい。また、蓋体を押圧することによりシール作用が高くなる。さらに、テーパ部との嵌合部は溶着部から離れた位置に形成されるため、溶着時および溶着後の溶着部への浸透を防止しやすい。
【0016】
また、前記封止部の外周に、内部容器のテーパ部と略同一テーパ角度のテーパ面が設けられており、そのテーパ面の途中または下端の角に前記嵌合部が設けられている場合は、蓋体を内部容器に挿入するとき、テーパ面同士がガイド作用を奏するので、一層スムーズに挿入できる。また、嵌合部により蓋体が保持され、その後の押圧により嵌合部によるシールが強くなる。
【0017】
前記封止部の下部に、前記テーパ面より緩い角度の先端テーパ面が設けられており、前記テーパ面と先端テーパ面の境界が前記嵌合部となっている場合は、蓋体を容器本体に一層正確に同心状に装着することができ、シールの形成が一層確実である。また、前記嵌合部が環状の突起または環状の角である場合は、相手部材に強く線状に当接するので、より確実なシール作用が奏される。
【0018】
前記テーパ部の下部に円筒部が設けられており、前記封止部の下部に、円筒部の内径と同一もしくはそれよりも大きい外径を有する筒部が設けられており、前記円筒部と筒部が嵌合して前記嵌合部となっている場合は、筒部を円筒部に装着しやすく、蓋体を押圧しなくてもシール作用が奏される。そのため、製造工程が簡略化される。
【0019】
前記封止部の外周に嵌合部が設けられ、前記内部容器の首部にその嵌合部と当接して変形する変形部が設けられている場合は、嵌合部が内部容器の首部を変形させながら強く当接し、あるいは噛み込む。そのため、シール作用が一層確実に奏される。
【0020】
前記蓋体が、バルブを有する吐出部材が気密に嵌合する嵌合筒部を有し、その嵌合筒部の底部に、吐出部材の挿入によって開封される被開封部が設けられている場合は、吐出部材が蓋体に挿入されて被開封部を開封するとき、吐出部材と嵌合筒部とが気密に嵌合するので、外部に原液が漏れにくい。
【0021】
本発明の吐出装置は、前述の加圧製品を備えているので、前述の効果を奏することができる。原液を吐出した後は、新たな加圧製品に交換することにより、吐出部材を再利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】
図1Aは吐出装置を示す断面図、
図1Bは吐出装置で用いる容器本体の断面図である。
【
図2】
図2Aは蓋体と容器本体の要部断面図、
図2Bは蓋体を容器本体に装着した状態の要部断面図である。
【
図4】
図4Aは吐出装置の開封前の要部断面図、
図4Bは開封後の要部断面図である。
【
図5】
図5Aは他の実施形態に関わる蓋体の溶着前の加圧製品を示す要部断面図、
図5Bは溶着後の加圧製品を示す要部断面図である。
【
図6】
図6Aはさらに他の実施形態に関わる蓋体の溶着前の加圧製品を示す要部断面図、
図6Bは溶着後の加圧製品を示す要部断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
図1Aに示す吐出装置10は、二重加圧容器(容器)11と、吐出部材12と、二重加圧容器11に充填された原液(内容物)Cおよび加圧剤Pとからなる。二重加圧容器11に原液Cと加圧剤Pを充填したものが加圧製品11aである。加圧製品11aと吐出部材12は組み立て前のセット品として(
図1A参照)、あるいは半分組み立てた未開封の状態(
図4A参照)で販売される。加圧製品11aは吐出部材12と共に販売されるほか、交換用として単独でも販売される。従って、加圧製品11aは、吐出部材12を取り付けるまで(吐出部材12によって開封されるまで)は、充填された原液Cや加圧剤Pが漏れ出さないよう密閉されている。吐出部材12についても単独で販売されることがある。
【0024】
前記二重加圧容器11は、外部容器13と、その内部に収容されている可撓性を有する内部容器14と、外部容器13と内部容器14を封止する蓋体(封盤)15とからなる。バルブやポンプは備えていない。外部容器13と内部容器14を組み合わせたものは容器本体16である(
図1B参照)。内部容器14の内部は原液Cを充填する原液収容室Scであり、外部容器13と内部容器14の隙間の空間は加圧剤Pを充填する加圧剤収容室Spである。それらは蓋体15によって封止されている。すなわち、この二重加圧容器11は、原液Cと噴射剤Pを分離して収容し、原液Cのみ吐出できるようにしており、それにより圧縮ガスなどの加圧剤Pの漏出を防止できる。
【0025】
図1Bに示すように、外部容器13は底部13aと、円筒状の胴部13bと、肩部13cと、円筒状の首部13dとからなる。首部13dの外周には雄ねじ13eが形成されている。この実施形態では、外部容器13の底部13aが、下向きに突出する環状の接地面13a1と、その中央に設けられる上向きに突出するドーム部13a2とを備えている。それにより、耐圧性が向上し、落下時などの耐衝撃性も向上する。そのため、単品での流通や宅配便による配送時にも安全である。また、接地面13a1を有するので、平坦な台などの上にそのまま安定して載置することができる。ただし球面状の底面としてもよい。
【0026】
図2Aに示すように、外部容器13の首部13dの上端面13fは蓋体15を固着できるように略平坦にしている。その上端面13fには、超音波溶着のときに蓋体15との当接圧を高くして溶解しやすくし、蓋体15と一体にするための溶着部をつくる環状突起13gが形成されている。蓋体15側に環状突起を設けてもよく、両方に設けてもよい。外部容器13の首部13dの外周に、搬送時や溶着時に吊り持ちする環状のサポート部13d1が設けられている。
【0027】
図1Bに戻って、内部容器14も外部容器13と同様に、底部14a、胴部14b、肩部14cおよび首部14dからなる。内部容器14の底部14aにも下向きに突出する環状のくぼみ部14a1と、その中央に設けられる上向きに突出するドーム部14a2が形成されている。内部容器14の首部14dの円筒状の上部14d1の外面は外部容器13の首部13dの内面との間にわずかな隙間を有している。内部容器14の首部14dの内面は滑らかな円筒面である。内部容器14の底部14aは外部容器13の底部13aと当接しており、加圧剤を充填するときや蓋体15を固着するときなど、内部容器14が下がらないように支持される。
【0028】
図2Aに示すように、内部容器14の首部14dの上端面14eは外部容器13の上端面13fより突出しており、その突出している部位に外部容器13の上端面13fと係合するフランジ14fが形成されている。フランジ14fの厚さ(半径方向の寸法)は、外部容器13の首部13dの厚さの1/3~1/2程度である。そのため、フランジ14fを外部容器13の首部13dの上端面13fに係合させたとき、外部容器13の首部13dの上端面13fは外側の部分が覆われずに残る。前記外部容器13の上端の環状突起13gは、その外側の部分に設けられている。内部容器14の首部14dの上端面14eにも、超音波溶着のときに蓋体15との当接圧を高くして蓋体15との溶着部をつくるための環状突起14gが形成されている。
【0029】
内部容器14の首部14dは、後述する封止部15aの外周面とほぼ密接する形状にされており、円筒状の上部14d1と、それより下に向かって細くなるテーパ部14d2と、その下端から下に延びる円筒部14d3とからなる。円筒部14d3の下端は肩部14cに連続している。すなわち、内部容器14の首部14dのテーパ部14d2、円筒部14d3および肩部14cの上部は、くびれ部を形成している。テーパ部14d2は他の部位に比して薄肉にされている。蓋体15を嵌入したとき、蓋体15の周囲に設けた嵌合部(境界15p)がテーパ部14d2に環状に当接して線状のシールを形成しやすくするためである(
図2B参照)。テーパ部14d2や円筒部14d3と外部容器13の首部13dの内面との間には隙間がある。そのため、テーパ部14d2は弾性変形しやすい。
【0030】
内部容器14のフランジ14fの下面には、半径方向に延びる加圧剤充填用の横溝14hが等間隔で4カ所に形成されている。さらに内部容器14の首部14dの上部14d1の外周面には、その横溝14hと連通する縦溝14iが形成されている。縦溝14iは横溝14hからテーパ部14d2の上端まで延びており、加圧剤Pを加圧剤収容室Sp内に充填しやすくする。テーパ部14d3では外部容器13の首部13dの内面との間に隙間があるので縦溝14iは不要である。
【0031】
外部容器13および内部容器14はいずれもポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリエチレン、ポリプロピレンなどの熱可塑性樹脂製である。これらは、たとえば外部容器用のプリフォームの中に内部容器用のプリフォームを入れ、首部13d、14dの下端より下側を同時にブロー成形することにより製造することができる。とくに所定形状のプリフォームをインジェクション成形し、ついでブロー成形するインジェクション・ブロー成形法が好ましい。インジェクション・ブロー成形の場合は、首部13d、14dは延伸されないので厚く、強度が高い。そして肩部13c、14cから胴部13b、14bにかけては、延伸して薄くするが、内部容器14は可撓性や柔軟性が得られる肉厚(たとえば0.1~0.3mm)になるように、一方で外部容器13は耐圧性を有する肉厚(たとえば0.4~1mm)になるように成形する。
【0032】
前記蓋体15は
図2Aに示すように、内部容器14の首部14d内に挿入される有底筒状の封止部15aと、その上端に連続する環状のフランジ15bとからなる。封止部15aは下方まで延びており、その封止部15aの内側に嵌合筒部15a1が同心状に設けられている。嵌合筒部15a1は封止部15aの底部15cの中央部から上向きに立ち上がり、上端で開口している。そして封止部15aの上部15a2は略円筒状であり、下部15a3は下に向かって細くなるテーパ状である。ただし上部15a2から下部15a3にかけて円筒状であってもよい。
【0033】
前述のテーパ状の下部15a3の下端15a4と嵌合筒部15a1の下端とが連結部15a6で繋がっている。また、嵌合筒部15a1は、下端よりいくらか上を閉じる底部15cには、前記吐出部材12によって開封される閉鎖部(被開封部)15dが設けられている。ただし連結部15a6と閉鎖部15dは同じ高さであってもよい。連結部15a6および底部15cは、全体としてカップ状の封止部15aの底部と見ることもできる。
【0034】
この実施形態では下部15a3の下端近辺の外周面に、下部15a3のテーパ角度より緩いテーパ角度のテーパ面15a7が設けられている。緩い角度のテーパ面15a7に代えて湾曲面ないし碗状部を設けてもよい。下部15a3の急な角度のテーパ面15a8と下端のテーパ面15a7との境界15pは、
図2Bのように蓋体15を内部容器14の首部14dに嵌入したとき、首部14dのテーパ部14d2の内面に強く当接される環状の嵌合部を構成している。この境界15pの嵌合部により、内部容器14と蓋体15との間に線シールが形成される。
【0035】
このように蓋体15を容器本体16に被せた際に線シールを形成するようにすれば、加圧剤Pを充填する際に内部容器14内への混入を防止することができ、また蓋体15を溶着する際の超音波振動によって原液Cが霧化されてもテーパ状の下部15a3と内部容器の首部のテーパ部14d2との隙間から溶着部側への流出が防止されて、溶着が阻害されない。なお、テーパ角度が変化する嵌合部15pの代わりにテーパ状の下部15a3の外周面を球面形状にして首部のテーパ部14d2と当接させて線シール15aを形成することもできる。
【0036】
前記閉鎖部15dの上面には、周囲に比して厚肉にされた受圧部15d1が設けられている。閉鎖部15dおよび受圧部15d1は通常は平面視円形である。ただし矩形など、他の形状を採用することもできる。
【0037】
閉鎖部15dの周囲は環状溝などの破断容易な薄肉部(破断部、弱め線)15fで囲まれている。受圧部15d1は閉鎖部15dの上面の略全体に設けられ、薄肉部15fは底部15cの上面に形成されている。なお、薄肉部15fは下面に形成してもよい。薄肉部15fはたとえばV溝からなる。薄肉部15fは破断した際に閉鎖部15dが落下しないように一部設けずに不連続にしているが、受圧部15d1の外周全体に連続してもよい。
【0038】
封止部15aの外周面は、内部容器14の首部14dの内面との間で、蓋体15を内部容器の首部14dに装着する際に内部容器14内の空気を排出することができ、かつ、内部容器14内の原液Cを液封できる嵌合状態であることが好ましい。
【0039】
嵌合筒部15a1の内周面は、基本的には、閉鎖部15dを開封する際にバルブ21のシール部材28と密接して原液Cが漏出しないように滑らかな円筒面にすることが好ましい。下に向かって縮径されるテーパ状としてもよい。ただ、嵌合筒部15a1の上部には、上下方向に延びる凹溝15nが設けられている。この凹溝15nは、原液Cが残っているにも関わらず使用者が誤って吐出部材12を取り外そうとしたとき、シールを一部解除して微量の原液Cを漏らし、使用者に注意を促すための一部解除機構を構成するものである。
【0040】
嵌合筒部15a1の底部15cを嵌合筒部15a1の下端より少し上に設けているのは、底部15cの剛性を高めて薄肉部15fの破断を容易にするためである。また、蓋体15の上面に当接される超音波溶着のホーンHからの振動が封止部15aの下端から原液C側に流れ易くなるためである。それにより弱め線15fの溶解や貫通などが防止される。嵌合筒部15a1の径を封止部15aの上部の径より小さくしているのは、嵌合筒部15a1の内面の成形精度を高めるためと、吐出部材12のシール部材28で囲まれる内圧を受ける面積を小さくして吐出部材12に加わる上向きの力を弱くするためである。さらに下向きに突出するバルブ保持部18aを収容するスペースを確保するためである。嵌合筒部15a1の下端は円筒状でもよいが、嵌合筒部15a1の下端と底部15cの間に気体が溜まらないように横溝で連通させてもよい。
【0041】
蓋体15のフランジ15bは、封止部15aの上端から半径方向外向きに拡がる環状円板部17と、その環状円板部17の外縁から下向きに延びる外筒部17aとからなる。環状円板部17の下面は内部容器14の首部14dの上端面14eと当接して溶着部を形成し、シールする部位で、外筒部17aの下面は外部容器13の首部13dの上端面13fと当接して溶着部を形成し、シールする部位である。また、蓋体15の上面外周には切り欠き15hを設けている。この切り欠き15hは、蓋体15の上面にホーンを押し当てて超音波溶着をするとき、外部容器13の首部上端の環状突起13gにホーンの振動が集中しやすくするものである。
【0042】
蓋体15の材料は外部容器13や内部容器14との熱接合性が高い熱可塑性樹脂が用いられ、溶着強度を高くするため、外部容器13や内部容器14と同じ材料を用いることが好ましい。
図1Aあるいは
図2Bに示すように、蓋体15で原液収容室Scと加圧剤収容室Spを封止すると共に、内部容器14または外部容器13のいずれか、あるいは両方に固着することにより、内容物(原液C、加圧剤P)を長期間安全に、漏れないように保管しておくことができる。薄肉部15fは未開封では充分なシール機能があり、かつ、容易に破断できる形状とする。
【0043】
原液Cとしては、洗顔剤、洗浄剤、入浴剤、保湿剤、クレンジング剤、日焼け止め、化粧水、シェービング剤、脱毛剤、制汗剤、殺菌消毒剤、害虫忌避剤などの皮膚用品、トリートメント剤、スタイリング剤、染毛剤などの頭髪用品などの人体用品、ホイップクリーム、オリーブオイルなどの食品、消臭剤、芳香剤、洗浄剤、殺虫剤、防虫剤、花粉除去剤、殺菌剤などの家庭用品、潤滑剤などの工業用品などである。但し、これらの用途に限られるわけではない。
【0044】
加圧剤Pとしては窒素ガス、圧縮空気、炭酸ガスなどの圧縮ガスが好ましい。加圧剤により二重加圧容器11内の圧力を0.1~0.5MPa(25℃、ゲージ圧)、とくに炭酸飲料と同程度の圧力0.3~0.5MPa(25℃、ゲージ圧)にするのが好ましい。また、外部容器13の容量は30~500mlであることが好ましい。内部容器(原液収容室Sc)14の容量は20~300ml程度が好ましい。加圧剤収容室Spの容量は10~200ml程度が好ましい。
【0045】
上記のように構成される外部容器13、内部容器14および蓋体15を用いて加圧製品11aを製造するには、まず外部容器13に内部容器14を収容し、内部容器14に原液Cを充填し、容器本体16に蓋体15を被せる。この状態では、嵌合部(境界15p)と内部容器14の首部14dのテーパ部(下部15a3)の内面とが当接し、保持される。この状態からホーンHで蓋体15を押し込むことにより、
図2のように内部容器のテーパ部14d2が押し拡げられように変形し、嵌合部15pとの間でシール作用を奏する。変形する部位が変形部である。
【0046】
この状態では、蓋体15のフランジ15bの外筒部17aの下面と外部容器13の首部の上端面13fとの間に隙間があるが、さらに蓋体15を押し込むと蓋体15の環状円板部17の下面や外筒部17aの下面が外部容器13や内部容器14の環状突起13g、14gと当接し、ホーンHにかかる荷重が急激に高くなる。この荷重の変化を感知すると、外部容器13の上端面13fと蓋体15の外筒部17aの下面との隙間から加圧剤Pを注入し、内部容器14の横溝14hおよび縦溝14iを経由して加圧剤収容室Sp内に充填する。なお、外筒部17aの下面と環状突起14gとが当接しても気密状態ではなく、また加圧剤Pは高圧で注入されるため加圧剤収容室Spに充填される。一方、内部容器14と蓋体15との間は、嵌合部(境界15p)と内部容器14の首部14dの内面の当接によってシールされているため、前述のように加圧剤Pが内部容器14に入り込むことを防ぐことができる。
【0047】
加圧剤収容室Spが所定の圧力になると、ホーンHにかかる荷重を感知して、ホーンHから超音波振動を発振しながら蓋体15をさらに押し下げる。このとき、超音波振動により環状突起13gと14gが溶解して、蓋体15と外部容器13および内部容器14が溶着する。この溶着のとき、蓋体15の嵌合部(境界15p)は内部容器14の首部14dの下部14d2の内面に食い込むようにして、シール作用が奏される。それにより、前述したように、超音波振動により霧化した原液Cが上昇して溶着を妨げるおそれがない。また、溶着後は、容器11を上下逆にしても、原液Cが嵌合部(境界15p)によって遮られるので、溶着部に浸透することが避けられる。なお、超音波振動を発振するときの蓋体15の押しつけ力によっては、嵌合部(境界15p)と内部容器14の首部14dの内面とが軽く溶着し、シール性が一層高まることが期待される。
【0048】
このようにして蓋体15のフランジ15bは、原液Cや加圧剤Pの充填後、超音波溶着によって外部容器13の首部13dの上端面13fおよび内部容器14の首部14dの上端面14eに溶着され、封止される。この実施形態では、内部容器14の上端面14eに環状突起14gが形成され、外部容器13の上端面13fにも環状突起13gが形成されているので、溶着後のシールが確実である。
【0049】
上記のように、二重加圧容器11は部品数が少なく、バルブなどの作動部がないので、安価に製造することができる。そして二重加圧容器11の圧力が低く、炭酸飲料などと同程度であるので、消費者が持ち運んだり、流通業者が配送したりするときに安全である。また、万一、外部容器13にひびが入っても、加圧剤Pが漏れるだけで内部容器14内の原液Cは漏れない。そのため一層安全である。
【0050】
また、この加圧製品11aは外部容器13と内部容器14が合成樹脂製であり、内部容器14は加圧剤Pで囲まれ、さらに外部容器13で囲まれているので、加圧製品11aの弾力性が高く、落としても割れにくい。また、閉鎖部15dが内部にあるので、誤って閉鎖部15dが破断されるおそれが少なく、一層安全である。
【0051】
前記吐出部材12は、外部容器13の首部13dの雄ねじ13eと螺合するキャップ(装着部)20と、そのキャップ20に覆われたバルブ21と、バルブ21のステム22に装着される、吐出用ノズルを備えた操作ボタン(アクチュエータ、
図1Aの符号23)とからなる。
図3Aに示すように、キャップ20は有底筒状で、内周面に雌ねじが形成された、いわゆるネジキャップである。キャップ20とバルブ21とは一体化されており、バルブ21は、キャップ20の締め具合に連動して嵌合筒部15a1内を移動する。すなわち、キャップ20を締めれば、バルブ21は嵌合筒部15a1内に押し込まれ、キャップ20を緩めれば、バルブ21は嵌合筒部15a1から抜き出される方向に移動する。キャップ20の上底20aの中央には、ステム22を通し、操作ボタン23の基部を通す開口20bが形成されている。操作ボタン23を装着していないキャップ20とバルブ21とは、バルブユニットないしバルブアッセンブリとして扱われる。
【0052】
バルブ21は、有底筒状のハウジング24と、その内部に上下移動自在に収容される前述のステム22と、そのステム22を上向きに付勢するバネ25と、ステムラバー26と、ハウジング24の上部を保持する筒状のバルブ保持部18aを備えたバルブホルダ18とからなり、原液Cの吐出通路を構成する。ステム22と、バネ25と、ステムラバー26とで、原液Cの吐出状態と非吐出状態とを切り替えるバルブ機構が構成され、ハウジング24と、バルブホルダ18とでこのバルブ機構を収容する収容空間を構成している。
【0053】
この実施形態では、ハウジング24の下端に、下向きに突出する円柱状の開封部27が設けられており、ハウジング24の下部外周にOリングなどのシール部材28が装着されている。このシール部材28は、開封時および開封後に蓋体15の嵌合筒部15a1の内周面とハウジング24の間をシールするものである。このシール部材28は、上下方向において間隔がほぼ等しい嵌合筒部15a1の内面とハウジング24の外面との間で圧縮されているため、多少上下方向に移動したとしてもシールを維持することができる。開封部27の底面27aは、受圧部15d1の上面と当接するように平坦にされている。
【0054】
この実施形態では、開封部27の径は受圧部15d1よりいくらか小さい。また、薄肉部15fで囲む範囲の径よりいくらか小さい。それにより破断時は開封部27の底面27aが底部15cの薄肉部15fより外周部分に当接して受圧部15d1の押し込みを妨げたりすることがない(
図4B参照)。また、破断した後は、開封部27の底面27aを開封により形成した開口より下方に突出させることができ、原液Cの通路の確保が容易になる(
図4B参照)。円柱状の開封部27とハウジング24の下面24aの間には複数枚の補強板27dが放射状に設けられている。補強板27dの数は3~5枚であることが好ましい。補強板27dは側面視で略三角形であり、その下端は開封部27の下端までは達しておらず、開封部27の下端近辺は円柱状のままである。
【0055】
ハウジング24には、ハウジング24の内部と内部容器14内の原液収容室Scとを連通する通路として、ハウジング24の底板24bを上下に貫通する縦孔24cが設けられている。縦孔24cは隣接する補強板27dの間に形成されている。そのため補強板27dは内容物の吐出を妨げない。縦孔24cは補強板27dと同じ数だけ形成されている。ただし1~2つなど、それより少なくてもよい。縦孔24cの平面形状は、例えば略扇状とすることができる。縦孔24cは複数個設けるのが好ましい。それにより仮に1個の縦孔24cが塞がっても他の縦孔24cで連通できる。
【0056】
開封部27の底面27aの高さ方向の位置は、キャップ20を外部容器13の雄ねじ13eに1~2回程度螺合させたときに受圧部15d1と当接する位置である。したがって出荷時、流通時にはキャップ20を緩く螺合させて閉鎖部15dを破断せず、シール状態のまま吐出部材12と二重加圧容器11とを仮に結合させておくことができる(
図4A参照)。
【0057】
バルブホルダ18は、バルブ保持部18aと、バルブ保持部18aの上端から内側に延びる環状のラバー押さえ18bと、外側に拡がるフランジ18cとを備えており、ラバー押さえ18bの中央にステム22を通す孔18dが形成されている。
【0058】
使用者が購入した吐出装置10を使用する場合、まずキャップ20を外部容器の雄ねじ13eにねじ込む。それによりキャップ20全体およびバルブ21が下降し、開封部27の底面27aが閉鎖部15dを押し下げる。それにより薄肉部15fが破断され、加圧製品11aが開封される。閉鎖部15dは、一部が底部15cと繋がったままとなる(
図4B参照)か、もしくは嵌合筒部15a1からちぎり取られ、底部15cから分離されて脱落する。そして開封部27が嵌合筒部15a1の底部15cを突き破り、ハウジング24内と内部容器14内である原液収容室Scとを連通させる(
図4B参照)。脱落した閉鎖部15dは、内部容器14の底に落ち込む。
【0059】
なお、キャップ20は外部容器13に螺着されるため、キャップ20の操作量に対するバルブ21の降下量は小さい。そのため開封部27の底面27aは閉鎖部15dの受圧部15d1を徐々に押圧する。蓋体15は合成樹脂製であるため、徐々に押圧されるとその伸張性により閉鎖部15dは伸びやすく破断されにくい。しかしこの実施形態では、閉鎖部15dが環状の薄肉部15fで囲まれており、受圧部15d1が突出しているため、薄肉部15fへの応力集中が増大しスムーズに破断することができる。また、開封部27の底面27aは平坦であるので、開封操作により変形しにくく、吐出部材12を繰り返し使用することができる。
【0060】
閉鎖部15dは、蓋体15の中心軸上に設けられた、上部に厚く略円形の受圧部15d1を有し、さらに開封部27の円形の底面27aと当接しているので、底面27aにより加圧されると、閉鎖部15dはまっすぐ押し込まれ、薄肉部15fに沿って破断する。ただし受圧部15d1または開封部27の底面27aを傾斜させ、薄肉部15fが一方から他方に向かって順に破断されていくようにしてもよい。
【0061】
閉鎖部15dが破られたとき、底部15cの開口の内周と開封部27の外周の隙間から原液Cが漏れる場合がある。しかし、閉鎖部15dよりも下流において、嵌合筒部15a1とハウジング24の間はシール部材28でシールされているので、原液Cは嵌合筒部15a1内に留まり、外部に漏れることがない。また、破断時の反力および破断後の内圧がハウジング24を押し上げるように作用するが、キャップ20と外部容器13とが螺合しており、キャップ20の上底20aとバルブホルダ18が二重で支えているため、吐出部材12の飛び出しが抑制される。この状態は、キャップ20によってバルブ21が取り付けられているといえる。また、キャップ20の上底20aの変形が抑制される。
【0062】
吐出部材12を装着した後、使用者がステム22に取り付けた操作ボタン23を押すと、ステム22が下降してステムラバー26が撓み、ステム孔が開く。原液収容室Sc内の原液Cは内部容器14を介して加圧剤Pによって加圧されているので、開封部27、ハウジング24、ステム22および操作ボタン23を経由して外部に吐出される。操作ボタン23から指を離すとステム22が上昇し、吐出が停止する。加圧剤Pを充填している加圧剤収容室Spは蓋体15によって閉じられており、外部や原液収容室Scと連通していないので、吐出操作によって加圧剤Pは外部に漏れることはない。
【0063】
原液Cを全量吐出した後は、キャップ20を回し、吐出部材12を加圧製品11aから取り外す。そして取り外した吐出部材12は新しい加圧製品11aに取り付ける。原液Cが全量吐出された加圧製品11aは加圧剤収容室Spに加圧剤Pが残っているが、この加圧剤Pは内部容器14を透過して蓋体15の開封された閉鎖部15dから徐々に外部に放出される。加圧剤Pが外部に放出されると加圧容器11は容易に変形するため消費者にわかりやすく、加圧容器11を安全にリサイクルすることができる。また、加圧容器11は蓋体15と容器本体16とを単一素材にすることができるため、リサイクルする際には分別しなくてもよく、リサイクルしやすい。
【0064】
図1A、
図3Bの二重加圧容器11は、内部容器14の首部14dにテーパ部14d2および円筒部14d3からなるくびれ部を形成し、そのくびれ部が蓋体15の封止部15aと密接しているので、内部容器14に原液Cを充填したとき、気相部Gp(ヘッドスペース)が小さくなる。したがって、消費者が使用を開始する際に気相部Gpで圧縮されている気体により原液Cが勢いよく吐出されて飛び散る、また吐出時に原液Cに気体が混じり、原液Cが不連続で吐出されるなどの問題が生じにくく、吐出がスムーズになる。特に、原液中にノルマルブタン、イソペンタン、1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペンなどの沸点が-5~35℃である発泡剤を含有した後発泡性ゲル組成物もしくは後発泡性クリーム組成物を充填した場合であっても、気相部Gpが小さいことにより充填直後の発泡を防止して、ゲル状やクリーム状に吐出することができる。
【0065】
図1Aの二重加圧容器11においては、内部容器14の首部14dおよび蓋体15の封止部15aの下部15a3をストレートの円筒状とすることもできる。しかし内部容器14の首部14dにくびれ部を設け、蓋体15の封止部15aの下部15a3をテーパ状にするほうが、気相部Gpの径および容積を小さくすることができるので好ましい。
【0066】
つぎに
図5A、
図5Bを参照して本発明の他の実施形態を説明する。
図2Aの二重加圧容器の11の蓋体15では、封止部15aのテーパ面と先端テーパ面の境界15pを嵌合部としているが、
図5A、
図5に示す加圧製品11aでは、蓋体15のテーパ面の途中に設けた環状段部15p1によって嵌合部を構成している。この環状段部15p1は、断面三角形状で、垂直(円筒面)に近い上面と、水平面に近い下面とを有する。この二重加圧容器では、容器本体16に蓋体15を設置すると、環状段部15p1が首部14dの内周面と線で当接し、保持される(
図5A参照)。そしてこの環状段部15p1の当接線は細いため、超音波振動により先端が溶けやすく、軽度の溶着部Yができる(
図5B参照)。そのため、原液Cが容器の溶着部Yに浸透するのを一層防止することができる。
【0067】
なお、溶着前は、環状段部15p1があるため、テーパ面同士は密着していない。しかし内部容器14の首部14dのテーパ部14d2が薄肉にされているため、テーパ部14d2が弾性変形し、強く当接している。変形する部位が変形部である。そしてテーパ面同士の間に隙間が空いているが、溶着が進むに従って環状段部15p1の先端が溶融し、密閉性が高くなる。
【0068】
図6A、
図6Bに示す加圧製品11aでは、内部容器14の首部14dの円筒部14d3をまっすぐな筒状とし、また、蓋体15の封止部15aの下部の外面を筒状にしている。そしてこの筒状にした蓋体15の下部(以下、筒部15a9という)の外径を首部14dの円筒部14d3の内径と同じかそれよりもやや大きくしている。この蓋体15を容器本体16に被せると筒部15a9がテーパ部14d2により円筒部14d3に案内され、さらに蓋体15を押し込むとテーパ部14d2が下方向にわずかに伸びて筒部15a9が円筒部14d3と強く嵌合する。この嵌合した部位は強いシール作用を奏するため、ホーンで蓋体15を押圧しながら加圧剤Pを充填しなくても加圧剤Pが内部容器14内に混入することがない。これにより、蓋体装着後のガス充填工程、溶着工程が簡略化され、ホーンへの負担が小さくなる。
【0069】
図6A、
図6Bでは、内部容器14の首部14dにテーパ部14d2を設けているが、直接シール作用を奏しないので、テーパ部14d2を省略して全体をストレートにすることができる。また、蓋体15の封止部15aの外面のテーパ面についても、テーパ面を省略して円筒状にすることができる。ただし円筒部14d3と筒部15a9の嵌合のときに弾力的に伸びて嵌合を強くするなど、シール作用に間接的に寄与するので、設けるほうが好ましい。
【0070】
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明はこれらの実施形態に限定されるものではなく、発明の範囲内で種々の変形を行うことができる。たとえば前記実施形態では、蓋体15は内部容器14と外部容器13の両方に溶着していたが、いずれか一方に固着し、他方とは単にOリングなどで封止(シール)するだけでもよい。また、前記実施形態では、内部容器14と外部容器13を同時にブロー成形して製造するとしているが、別々に製造し、その後、内部容器を外部容器の内部に収容するようにしてもよく、成形した外部容器の中で、内部容器をブロー成形してもよい。前記実施形態では円柱状の開封部27を用いているが、角柱状など、棒状であればよい。
【0071】
また、
図5A、
図5Bの実施形態では、蓋体15の封止部15aの外周面に環状段部を設けているが、これとは逆に、内部容器14の首部14dの内面に形成した環状段部によって線状シールを与える嵌合部を構成することもできる。この環状段部においても、水平に近い上面と、垂直に近い下面とを有する断面三角形状とすることができる。このものも
図5A、
図5Bの加圧容器11aと実質的に同一で、同一の作用効果、すなわちシール作用により、加圧剤の内部容器内への混入防止、霧化した原液の溶着個所への浸透の防止の効果などを奏する。
【0072】
前記実施形態では内部容器14の首部14dに下に向かって縮径するテーパ部14d2が設けられているが、テーパ部がない円筒状(ストレート)の首部とすることもできる。また、段部などで段階的に縮径する円筒状の首部とすることもできる。蓋体の封止部の外周面についても、内部容器の首部の内周面との間で線状のシールを形成する嵌合部が得られるのであれば、テーパ部がない円筒状とすることもでき、段階的に縮径する形状にすることもできる。さらに、首部14の円筒状の上部14d1と蓋体15の封止部15aの上部15a2との間で嵌合部を設けてもよい。この場合、内部容器14の首部14dの形状に関係なく嵌合部を設けることができる。また、この嵌合部は
図6の嵌合部と併用することもできる。
【符号の説明】
【0073】
10 吐出装置
11 二重加圧容器
11a 加圧製品
12 吐出部材
C 原液
P 加圧剤
13 外部容器
13a 底部
13a1 接地面
13a2 ドーム部
13b 胴部
13c 肩部
13d 首部
13d1 サポート部
13e 雄ねじ
13f 首部の上端面
13g 環状突起
14 内部容器
Sc 原液収容室
Sp 加圧剤収容室
14a 底部
14a1 くぼみ部
14a2 ドーム部
14b 胴部
14c 肩部
14d 首部
14d1 円筒状の上部
14d2 テーパ部
14d3 円筒部
14e 上端面
14f フランジ
14g 環状突起
14h 横溝
14i 縦溝
15 蓋体
15a 封止部
15a1 嵌合筒部
15a2 封止部の上部
15a3 (テーパ状の)封止部の下部
15a4 下端
15a6 連結部
15a7 緩い角度のテーパ面
15a8 テーパ面
15a9 筒部
15b フランジ
15c 底部
15d 閉鎖部(被開封部)
15d1 受圧部
15f 薄肉部(破断部)
15h 切り欠き
15n 凹溝
15p 境界(嵌合部)
15p1 環状段部(嵌合部)
16 容器本体
17 環状円板部
17a 外筒部
18 バルブホルダ
18a バルブ保持部
18b ラバー押さえ
18c フランジ
18d (ステムを通す)孔
20 キャップ(装着部)
20a 上底
20b 開口
21 バルブ
22 ステム
23 操作ボタン
24 ハウジング
24a (ハウジングの)下面
24b (ハウジングの)底板
24c 縦孔
25 バネ
26 ステムラバー
27 開封部
27a (開封部の)底面
27d 補強板
28 シール部材
Gp 気相部