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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-07
(45)【発行日】2023-12-15
(54)【発明の名称】ハードコート層形成用樹脂組成物
(51)【国際特許分類】
   C09D 4/02 20060101AFI20231208BHJP
   C09D 163/00 20060101ALI20231208BHJP
   C09D 4/06 20060101ALI20231208BHJP
   B32B 27/38 20060101ALI20231208BHJP
【FI】
C09D4/02
C09D163/00
C09D4/06
B32B27/38
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019567122
(86)(22)【出願日】2019-01-23
(86)【国際出願番号】 JP2019002130
(87)【国際公開番号】W WO2019146659
(87)【国際公開日】2019-08-01
【審査請求日】2021-11-17
(31)【優先権主張番号】P 2018009929
(32)【優先日】2018-01-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2018211263
(32)【優先日】2018-11-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002901
【氏名又は名称】株式会社ダイセル
(74)【代理人】
【識別番号】110002239
【氏名又は名称】弁理士法人G-chemical
(72)【発明者】
【氏名】江川 智哉
(72)【発明者】
【氏名】堀内 淳平
【審査官】川嶋 宏毅
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-141732(JP,A)
【文献】特開2003-291239(JP,A)
【文献】特開2005-111756(JP,A)
【文献】特開2016-166307(JP,A)
【文献】特開2003-252954(JP,A)
【文献】特開平11-258790(JP,A)
【文献】特開2017-179099(JP,A)
【文献】特開2007-045899(JP,A)
【文献】特開2015-117382(JP,A)
【文献】特開2007-217704(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D 1/00-10/00,
101/00-201/10
B32B 1/00-43/00
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記成分(A)~(D)を含有するハードコート層形成用樹脂組成物であって、
成分(A)の含有量が、樹脂組成物に含まれる硬化性化合物全量の40~75重量%であり、
成分(B)の含有量が、樹脂組成物に含まれる硬化性化合物全量の25~60重量%であり、
成分(A)と成分(B)の含有量の重量比(成分(A)/成分(B))が40/60~75/25であるハードコート層形成用樹脂組成物。
成分(A):下記式(a-1)
【化1】

(n1は3以上の整数を示す。X1は置換基を有していてもよい連結基を示す。)
で表される化合物であって、下記式(a-4)
【化2】

[式中のn5、n6、n7、及びn8は、それぞれ同一又は異なって1~30の整数を示す]
で表される化合物を含む
成分(B):ペンタエリスリトールトリアクリレート及びペンタエリスリトールテトラアクリレートの混合物
成分(C):光カチオン重合開始剤
成分(D):光ラジカル重合開始剤
【請求項2】
請求項に記載のハードコート層形成用樹脂組成物の硬化物からなるハードコート層を備えたハードコートフィルム。
【請求項3】
請求項に記載のハードコート層形成用樹脂組成物の硬化物からなるハードコート層を備えた電子機器。
【請求項4】
請求項に記載のハードコート層形成用樹脂組成物の硬化物からなるハードコート層を備えた成型品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハードコート層形成用樹脂組成物、その硬化物からなるハードコート層を備えたハードコートフィルム、電子機器、及び成型品に関する。本願は、2018年1月24日に日本に出願した特願2018-009929号、及び2018年11月9日に日本に出願した特願2018-211263号の優先権を主張し、その内容をここに援用する。
【背景技術】
【0002】
液晶テレビ、液晶モニター、ノートパソコン、モバイルディスプレイ、タブレットPC、スマートフォン等の電子機器のタッチパネルやディスプレイには、高い表面硬度と耐擦傷性とを有するハードコート層を備えたハードコートフィルムが貼り合わされており、それにより画面の傷付き防止、画面への指紋付着防止、画面に付着した汚れの拭き取り容易化といった効果が付与される。また、レンズやセンサーには、表面の傷付きの防止や性能の維持を目的に、ハードコート層が設けられている。その他、自動車の内装部品、外装部品、電装部品、フロントガラス等にも、外観維持や透過率の低下を防止するために、ハードコート層の付与が検討されている。そして、近年、ハードコート層の耐擦傷性や表面硬度をより一層高めることが求められている。
【0003】
ハードコート層の耐擦傷性を向上する方法として、樹脂にアルミナ、シリカ、酸化チタン等の無機粒子を配合する方法、いわゆる、有機-無機ハイブリッドと呼ばれる方法が知られている(特許文献1~3等)。
【0004】
また、ハードコート層の表面硬度を向上する手段として広く用いられているのが、ハードコート層を形成する樹脂の多官能化である。特許文献4には、3官能以上のラジカル重合性化合物と2官能の脂環エポキシ化合物とを含む樹脂組成物が記載されている。特許文献5には、多官能ウレタン(メタ)アクリレートと(メタ)アクリル系共重合樹脂を含む樹脂組成物が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特公平2-60696号公報
【文献】特開2005-76005号公報
【文献】特開2003-34761号公報
【文献】特開平8-73771号公報
【文献】特開2006-316249公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、樹脂に無機粒子を配合する方法や、樹脂を多官能化する方法は、ハードコート層の耐擦傷性や表面硬度が向上する一方で、硬度の向上に伴って硬化物が脆くなるという欠点があった。また、硬化物と基材との熱膨張係数の差が大きくなり、ハードコート層に熱衝撃が加えられた場合やハードコート層を膜厚化した場合に、硬化収縮の応力によってハードコート層にクラックが生じやすくなることが明らかになった。また、3官能以上のラジカル重合性化合物と2官能のエポキシ化合物とを含む組成物の硬化物は耐擦傷性と耐クラック性の両立が困難であることが明らかになった(例えば、本願の比較例1及び2)。また、多官能ウレタン(メタ)アクリレートと(メタ)アクリル系共重合樹脂を含む組成物の硬化物はカール性が大きいことから、フィルムにコートを施す場合には、両面をコートするか、厚みのある基材を使用する必要があった。さらに、コート層がフィルムの曲げに追随できず、その結果、クラックが生じる(耐屈曲性が不十分である)という欠点や、コート層が厚くなると熱衝撃が加えられた場合にクラックを生じる(耐クラック性が不十分である)といった欠点があることが明らかになった。
【0007】
従って、本発明の目的は、高い硬度を有するだけでなく、耐擦傷性、耐屈曲性、及び耐クラック性にも優れる硬化物を形成可能なハードコート層形成用樹脂組成物を提供することにある。
本発明の他の目的は、高い硬度を有するだけでなく、耐擦傷性、耐屈曲性、及び耐クラック性にも優れるハードコート層を備えた、ハードコートフィルム、電子機器、並びに成型品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は上記課題を解決するため鋭意検討した結果、3官能以上の脂環エポキシ化合物、多官能(メタ)アクリル化合物、光カチオン重合開始剤、及び光ラジカル重合開始剤を含有する樹脂組成物に活性エネルギー線を照射すると、高い硬度を有するだけでなく、耐擦傷性、耐屈曲性、及び耐クラック性にも優れる硬化物が得られることを見いだした。本発明はこれらの知見に基づいて完成させたものである。
【0009】
すなわち、本発明は、下記成分(A)~(D)を含有するハードコート層形成用樹脂組成物を提供する。
成分(A):3官能以上の脂環エポキシ化合物及び/又は3官能以上のオキセタン化合物
成分(B):多官能(メタ)アクリル化合物
成分(C):光カチオン重合開始剤
成分(D):光ラジカル重合開始剤
【0010】
本発明の成分(A)の含有量は、樹脂組成物に含まれる硬化性化合物全量の1~75重量%であることが好ましい。
【0011】
本発明の成分(A)は、3官能以上の脂環エポキシ化合物として、下記式(a-3)
【化1】

[式中のn3、及びn4は、それぞれ同一又は異なって1~30の整数を示す]
で表される化合物、式(a-4)
【化2】

[式中のn5、n6、n7、及びn8は、それぞれ同一又は異なって1~30の整数を示す]
で表される化合物、及び下記式(a')
【化3】

[式中、Rはp価のアルコールの構造式からp個の水酸基(-OH)を除いた基(p価の有機基)であり、p、nはそれぞれ自然数を示す]
で表される化合物からなる群より選択される少なくとも1つを含むことが好ましい。
【0012】
本発明は、また、前記ハードコート層形成用樹脂組成物の硬化物からなるハードコート層を備えたハードコートフィルムを提供する。
【0013】
本発明は、また、前記ハードコート層形成用樹脂組成物の硬化物からなるハードコート層を備えた電子機器を提供する。
【0014】
本発明は、また、前記ハードコート層形成用樹脂組成物の硬化物からなるハードコート層を備えた成型品を提供する。
【発明の効果】
【0015】
本発明のハードコート層形成用樹脂組成物は上記構成を有するため、活性エネルギー線を照射することにより、高い硬度を有するだけでなく、耐擦傷性、耐屈曲性、及び耐クラック性にも優れるハードコート層を形成することができる。
そして、本発明のハードコート層形成用樹脂組成物を使用すれば、高い硬度を有するだけでなく、耐擦傷性、耐屈曲性、及び耐クラック性にも優れるハードコート層を備えたハードコートフィルムや成型品や電子機器を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明のハードコート層形成用樹脂組成物(以下、単に「樹脂組成物」と称する場合がある)は、硬化性化合物として下記成分(A)、(B)を含有し、さらに重合開始剤として下記成分(C)、(D)を含有する。成分(A):3官能以上の脂環エポキシ化合物及び/又は3官能以上のオキセタン化合物、成分(B):多官能(メタ)アクリル化合物、成分(C):光カチオン重合開始剤、成分(D):光ラジカル重合開始剤
【0017】
なお、本明細書において「(メタ)アクリル」は、アクリル及び/又はメタクリル(アクリル及びメタクリルの何れか一方又は両方)を意味し、(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロイルについても同様である。
【0018】
[成分(A)]
本発明における成分(A)は、3官能以上の脂環エポキシ化合物及び/又は3官能以上のオキセタン化合物である。ただし、成分(A)には後述の成分(E)(分子内に2以上のエポキシ基を有するシロキサン化合物)に該当するものは含まれない。
【0019】
3官能以上の脂環エポキシ化合物とは、官能基としてのエポキシ基を1分子内に3個以上有するとともに、脂環(脂肪族環)を有する化合物を意味する。3官能以上の脂環エポキシ化合物はエポキシ基以外の官能基を有していてもよい。エポキシ基以外の官能基としては、例えば、エポキシ基を除くカチオン重合性基やラジカル重合性基等の反応性官能基や、アルキル基等の非反応性官能基が挙げられる。
【0020】
3官能以上の脂環エポキシ化合物としては、例えば、(i)脂環を構成する隣接する2つの炭素原子と酸素原子とで構成されるエポキシ基(脂環式エポキシ基)を3個以上有する化合物、(ii)脂環に直接単結合で結合したエポキシ基を3個以上有する化合物等が挙げられる。
【0021】
上記の(i)脂環を構成する隣接する2つの炭素原子と酸素原子とで構成されるエポキシ基(脂環式エポキシ基)を3個以上有する化合物としては、例えば、下記式(a-1)で表される化合物及び下記式(a-2)で表される化合物が挙げられる。
【化4】
【0022】
式(a-1)及び式(a-2)中、n1は3以上の整数を示す。n2は1以上の整数を示す。X1、X2、X3は置換基を有していてもよい連結基(1以上の原子を有する二価の基)を示す。なお、式(a-2)におけるX2、X3は同一であってもよいし異なっていてもよい。また、n2が2以上の場合、n2個のX2はそれぞれ同一であってもよいし異なっていてもよい。
【0023】
n1は3以上の整数であれば特に限定されないが、例えば、3~15であることが好ましく、より好ましくは3~9、さらに好ましくは3~8、特に好ましくは3~6である。n2は1以上の整数であれば特に限定されないが、例えば、1~10であることが好ましく、より好ましくは1~6、さらに好ましくは1~4である。n1、n2が上記範囲内であることにより得られる樹脂組成物が塗工性に優れる傾向がある。
【0024】
連結基が有していてもよい置換基としては、例えば、炭素数1~6のアルキル基、炭素数6~10のアリール基、ヒドロキシ基、アミノ基、ニトロ基、シアノ基、及びハロゲン原子等が挙げられる。上記炭素数1~6のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、s-ブチル基、t-ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基等の直鎖状又は分岐鎖状アルキル基を挙げることができる。上記炭素数6~10のアリール基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基等を挙げることができる。
【0025】
連結基としては、例えば、二価の炭化水素基、カルボニル基、エーテル結合、エステル結合、カーボネート結合、アミド結合、これらが複数個連結した基等が挙げられ、二価の炭化水素基及びエステル結合を含む基が好ましく挙げられる。二価の炭化水素基としては、直鎖状又は分岐鎖状のアルキレン基、二価の脂環式炭化水素基等が挙げられる。直鎖状又は分岐鎖状のアルキレン基としては、例えば、メチレン基、メチルメチレン基、ジメチルメチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、トリメチレン基等の炭素数1~18(好ましくは2~12、より好ましくは3~6)の直鎖状又は分岐鎖状のアルキレン基が挙げられる。二価の脂環式炭化水素基としては、例えば、1,2-シクロペンチレン基、1,3-シクロペンチレン基、シクロペンチリデン基、1,2-シクロヘキシレン基、1,3-シクロヘキシレン基、1,4-シクロヘキシレン基、シクロヘキシリデン基等の炭素数3~18(好ましくは4~12、より好ましくは5~6)のシクロアルキレン基(シクロアルキリデン基を含む)が挙げられる。
【0026】
なお、式(a-1)及び式(a-2)におけるシクロヘキサン環(シクロヘキセンオキシド基)を構成する炭素原子の1以上には、アルキル基(例えば、炭素数1~6のアルキル基)等の置換基が結合していてもよい。
【0027】
式(a-1)及び式(a-2)で表される化合物の代表的な例としては、下記式(a-3)及び式(a-4)で表される化合物(式中のn3~n8は、それぞれ同一又は異なって、1~30の整数、好ましくは1~20、より好ましくは1~10を示す)等が挙げられる。具体的な製品としては、ブタンテトラカルボン酸テトラ(3,4-エポキシシクロヘキシルメチル)修飾ε-カプロラクトン等の脂環エポキシ化合物(例えば、商品名「エポリードGT401」、(株)ダイセル製)等が挙げられる。
【0028】
【化5】
【0029】
【化6】
【0030】
(ii)脂環に直接単結合で結合したエポキシ基を3個以上有する化合物としては、例えば、下記式(a')で表される化合物等が挙げられる。
【化7】
【0031】
式(a')中、Rはp価のアルコールの構造式からp個の水酸基(-OH)を除いた基(p価の有機基)であり、p、nはそれぞれ自然数を表す。p価のアルコール[R-(OH)p]としては、2,2-ビス(ヒドロキシメチル)-1-ブタノール等の多価アルコール(好ましくは、炭素数1~15の多価アルコール)等が挙げられる。pは1~6が好ましく、nは1~30が好ましい。pが2以上の場合、それぞれの角括弧(外側の括弧)内の基におけるnは同一でもよく異なっていてもよい。なお、p、nは、角括弧(外側の括弧)内の基が3個以上となる様な条件を満たす。式(a')で表される化合物としては、具体的には、2,2-ビス(ヒドロキシメチル)-1-ブタノールの1,2-エポキシ-4-(2-オキシラニル)シクロヘキサン付加物(例えば、商品名「EHPE3150」、(株)ダイセル製)等が挙げられる。
【0032】
3官能以上のオキセタン化合物とは、官能基としてのオキセタニル基を1分子内に3個以上有する化合物を意味する。3官能以上のオキセタン化合物はオキセタニル基以外の官能基を有していてもよい。オキセタニル基以外の官能基としては、例えば、オキセタニル基を除くカチオン重合性基やラジカル重合性基等の反応性官能基や、アルキル基等の非反応性官能基が挙げられる。ただし、3官能以上のオキセタン化合物には3官能以上の脂環エポキシ化合物に該当するものは含まれない。
【0033】
3官能以上のオキセタン化合物としては、例えば、ノボラック樹脂類、ポリ(p-ヒドロキシスチレン)、カリックスアレーン類、カリックスレゾルシンアレーン類、又はシルセスキオキサン等の水酸基を3以上有する樹脂をオキセタン化した化合物、オキセタニル基を有する不飽和モノマー(例えば、オキセタニル基含有(メタ)アクリレート)を構成単位として含む樹脂等が挙げられる。3官能以上のオキセタン化合物としては、具体的には、アロンオキセタン PNOX-1009、OX-SC(東亞合成(株)社製)等が挙げられる。
【0034】
[成分(B)]
本発明における成分(B)は多官能(メタ)アクリル化合物であり、1分子内に(メタ)アクリロイル基を2個以上有するラジカル硬化性化合物である。ただし、成分(A)に該当する化合物は除く。
【0035】
多官能(メタ)アクリル化合物の分子量[多官能(メタ)アクリル化合物がオリゴマー又はポリマーである場合は重量平均分子量(GPCによる、ポリスチレン換算)]は特に限定されないが、例えば、5000未満であり、好ましくは2000~100、より好ましくは1000~200、特に好ましくは500~250である。分子量が上記範囲内にあることにより得られる樹脂組成物が塗工性に優れる傾向がある。
【0036】
多官能(メタ)アクリル化合物が分子内に有する(メタ)アクリロイル基の数(総数)は2個以上であれば特に限定されないが、その下限は、好ましくは3個、より好ましくは4個である。また、その上限は、例えば15個、好ましくは12個、より好ましくは10個である。
【0037】
多官能(メタ)アクリル化合物としては、例えば、脂肪族(メタ)アクリレート、脂環式(メタ)アクリレート、及び芳香族(メタ)アクリレート等が挙げられる。本発明においては、中でも、硬化物の非着色性の観点から脂肪族(メタ)アクリレート(例えば、直鎖状又は分岐鎖状脂肪族(メタ)アクリレート)が好ましい。
【0038】
具体的には、多官能(メタ)アクリル化合物としては、例えば、2-ヒドロキシ-3-(メタ)アクリロイルオキシプロピル(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9-ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、1,10-デカンジオールジ(メタ)アクリレート、9,9-ビス[4-(2-(メタ)アクリロイルオキシエトキシ)フェニル]フルオレン、2,2-ビス[4-((メタ)アクリロイルオキシジエトキシ)フェニル]プロパン、及びこれらの誘導体等の二官能(メタ)アクリレート;エトキシ化イソシアヌル酸トリ(メタ)アクリレート、ε-カプロラクトン変性トリス(2-(メタ)アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート、グリセリントリ(メタ)アクリレート、エトキシ化グリセリントリ(メタ)アクリレート、プロポキシ化グリセリントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンの3モルエチレンオキサイド付加物のトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンの3モルプロピレンオキサイド付加物のトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンの6モルエチレンオキサイド付加物のトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンの6モルプロピレンオキサイド付加物のトリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、エトキシ化ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールポリ(メタ)アクリレート(例えば、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールのカプロラクトン付加物のヘキサ(メタ)アクリレート等)、及びこれらの誘導体、ポリエステル(メタ)アクリレート、ポリエーテル(メタ)アクリレート、アクリル(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、ポリアルカジエン(メタ)アクリレート(例えば、ポリブタジエン(メタ)アクリレート等)、メラミン(メタ)アクリレート、ポリアセタール(メタ)アクリレート等の3官能以上の多官能(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0039】
多官能(メタ)アクリル化合物としては市販品を使用することができ、例えば、ペンタエリスリトール(トリ/テトラ)アクリレート(ペンタエリスリトールトリアクリレート及びペンタエリスリトールテトラアクリレートの混合物、製品名「PETIA」、ダイセル・オルネクス(株)社製)が挙げられる。
【0040】
[成分(C)]
本発明における成分(C)は光カチオン重合開始剤である。光カチオン重合開始剤は、光の照射によって酸を発生して、樹脂組成物中のカチオン重合性基の硬化反応を開始させる化合物であり、光を吸収するカチオン部と酸の発生源となるアニオン部からなる。
【0041】
光カチオン重合開始剤としては、例えば、ジアゾニウム塩系化合物、ヨードニウム塩系化合物、スルホニウム塩系化合物、ホスホニウム塩系化合物、セレニウム塩系化合物、オキソニウム塩系化合物、アンモニウム塩系化合物、臭素塩系化合物等が挙げられる。
【0042】
その中でも、スルホニウム塩系化合物を使用することが、硬化性に優れた硬化物を形成することができる点で好ましい。スルホニウム塩系化合物のカチオン部としては、例えば、(4-ヒドロキシフェニル)メチルベンジルスルホニウムイオン、トリフェニルスルホニウムイオン、ジフェニル[4-(フェニルチオ)フェニル]スルホニウムイオン、4-(4-ビフェニリルチオ)フェニル-4-ビフェニリルフェニルスルホニウムイオン、トリ-p-トリルスルホニウムイオン等のアリールスルホニウムイオン(特に、トリアリールスルホニウムイオン)が挙げられる。
【0043】
光カチオン重合開始剤のアニオン部としては、例えば、[(Y)sB(Phf)4-s-(式中、Yはフェニル基又はビフェニリル基を示す。Phfは水素原子の少なくとも1つが、パーフルオロアルキル基、パーフルオロアルコキシ基、及びハロゲン原子から選択される少なくとも1種で置換されたフェニル基を示す。sは0~3の整数である)、BF4 -、[(Rf)tPF6-t-(式中、Rfは水素原子の80%以上がフッ素原子で置換されたアルキル基を示す。tは0~5の整数を示す)、AsF6 -、SbF6 -、SbF5OH-等が挙げられる。
【0044】
光カチオン重合開始剤としては、例えば、(4-ヒドロキシフェニル)メチルベンジルスルホニウム テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、4-(4-ビフェニリルチオ)フェニル-4-ビフェニリルフェニルスルホニウム テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、4-(フェニルチオ)フェニルジフェニルスルホニウム フェニルトリス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、[4-(4-ビフェニリルチオ)フェニル]-4-ビフェニリルフェニルスルホニウム フェニルトリス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、ジフェニル[4-(フェニルチオ)フェニル]スルホニウム トリス(ペンタフルオロエチル)トリフルオロホスフェート、ジフェニル[4-(フェニルチオ)フェニル]スルホニウム テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、ジフェニル[4-(フェニルチオ)フェニル]スルホニウム ヘキサフルオロホスフェート、4-(4-ビフェニリルチオ)フェニル-4-ビフェニリルフェニルスルホニウム トリス(ペンタフルオロエチル)トリフルオロホスフェート、ビス[4-(ジフェニルスルホニオ)フェニル]スルフィド フェニルトリス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、[4-(2-チオキサントニルチオ)フェニル]フェニル-2-チオキサントニルスルホニウム フェニルトリス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、4-(フェニルチオ)フェニルジフェニルスルホニウム ヘキサフルオロアンチモネート、商品名「サイラキュアUVI-6970」、「サイラキュアUVI-6974」、「サイラキュアUVI-6990」、「サイラキュアUVI-950」(以上、米国ユニオンカーバイド社製)、「Irgacure250」、「Irgacure261」、「Irgacure264」(以上、BASF社製)、「CG-24-61」(チバガイギー社製)、「オプトマーSP-150」、「オプトマーSP-151」、「オプトマーSP-170」、「オプトマーSP-171」(以上、(株)ADEKA製)、「DAICAT II」((株)ダイセル製)、「UVAC1590」、「UVAC1591」(以上、ダイセル・サイテック(株)製)、「CI-2064」、「CI-2639」、「CI-2624」、「CI-2481」、「CI-2734」、「CI-2855」、「CI-2823」、「CI-2758」、「CIT-1682」(以上、日本曹達(株)製)、「PI-2074」(ローディア社製、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート トリルクミルヨードニウム塩)、「FFC509」(3M社製)、「BBI-102」、「BBI-101」、「BBI-103」、「MPI-103」、「TPS-103」、「MDS-103」、「DTS-103」、「NAT-103」、「NDS-103」(以上、ミドリ化学(株)製)、「CD-1010」、「CD-1011」、「CD-1012」(以上、米国、Sartomer社製)、「CPI-100P」、「CPI-101A」(以上、サンアプロ(株)製)等の市販品を使用できる。
【0045】
[成分(D)]
本発明における成分(D)は光ラジカル重合開始剤である。光ラジカル重合開始剤は、光の照射によってラジカルを発生して、樹脂組成物中のラジカル重合性基の硬化反応を開始させる化合物であり、例えば、ベンゾフェノン、アセトフェノンベンジル、ベンジルジメチルケトン、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ジメトキシアセトフェノン、ジメトキシフェニルアセトフェノン、ジエトキシアセトフェノン、ジフェニルジサルファイト、オルトベンゾイル安息香酸メチル、4-ジメチルアミノ安息香酸エチル(日本化薬(株)製、商品名「カヤキュアEPA」等)、2,4-ジエチルチオキサンソン(日本化薬(株)製、商品名「カヤキュアDETX」等)、2-メチル-1-[4-(メチル)フェニル]-2-モルホリノプロパノン-1(BASF社製、商品名「Irgacure907」等)、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(BASF社製、商品名「Irgacure184」等)、2-ジメチルアミノ-2-(4-モルホリノ)ベンゾイル-1-フェニルプロパン等の2-アミノ-2-ベンゾイル-1-フェニルアルカン化合物、テトラ(t-ブチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、ベンジル、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニル-プロパン-1-オン、4,4’-ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン等のアミノベンゼン誘導体、2,2’-ビス(2-クロロフェニル)-4,5,4’,5’-テトラフェニル-1,2’-ビイミダゾ-ル(保土谷化学(株)製、商品名「B-CIM」等)等のイミダゾール化合物、2,6-ビス(トリクロロメチル)-4-(4-メトキシナフタレン-1-イル)-1,3,5-トリアジン等のハロメチル化トリアジン化合物、2-トリクロロメチル-5-(2-ベンゾフラン2-イル-エテニル)-1,3,4-オキサジアゾール等のハロメチルオキサジアゾール化合物等が挙げられる。
【0046】
[成分(E)]
本発明の樹脂組成物は、成分(E)として、分子内に2以上のエポキシ基を有するシロキサン化合物を含んでいてもよい。前記シロキサン化合物は、分子内に2以上のエポキシ基を有するとともに、シロキサン結合(-Si-O-Si-)により構成された骨格を有する化合物である。前記シロキサン化合物におけるシロキサン骨格(Si-O-Si骨格)としては、特に限定されないが、例えば、環状シロキサン骨格;直鎖状のシリコーンや、かご型やラダー型のポリシルセスキオキサン等のポリシロキサン骨格等が挙げられる。中でも、シロキサン骨格としては、硬化物の耐クラック性の向上の観点から、環状シロキサン骨格、直鎖状シリコーン骨格が好ましい。すなわち、前記シロキサン化合物としては、分子内に2以上のエポキシ基を有する環状シロキサン、分子内に2以上のエポキシ基を有する直鎖状シリコーンが好ましい。
【0047】
前記シロキサン化合物が分子内に2以上のエポキシ基を有する環状シロキサンである場合、当該シロキサン環を形成するSi-O単位の数(シロキサン環を形成するケイ素原子の数に等しい)は、特に限定されないが、硬化物の耐クラック性の向上の観点から、2~12が好ましく、より好ましくは4~8である。
【0048】
前記シロキサン化合物の重量平均分子量は、特に限定されないが、硬化物の耐クラック性の向上の観点から、100~3000が好ましく、より好ましくは180~2000である。なお、前記シロキサン化合物の重量平均分子量は、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)法により測定される標準ポリスチレン換算の分子量から算出される。
【0049】
前記シロキサン化合物が分子内に有するエポキシ基の数は、2以上であればよく、特に限定されないが、硬化物の耐クラック性の向上の観点から、2~4つ(2つ、3つ、又は4つ)が好ましい。
【0050】
前記シロキサン化合物のエポキシ当量は、特に限定されないが、硬化物の耐クラック性の向上の観点から、180~2000が好ましく、より好ましくは180~1500、さらに好ましくは180~1000である。なお、エポキシ当量は、JIS K7236に準じて測定される値である。
【0051】
前記シロキサン化合物が有するエポキシ基は、特に限定されないが、硬化物の耐クラック性の向上の観点から、脂環式エポキシ基であることが好ましく、中でも、シクロヘキセンオキシド基であることが特に好ましい。
【0052】
前記シロキサン化合物としては、例えば、下記式(e)で表されるシロキサン化合物等が挙げられる。
【化8】
【0053】
式(e)中、Raは、同一又は異なって、エポキシ基を含有する基、又はアルキル基を示す。ただし、式(e)におけるRaの少なくとも2つ(例えば2~4つ)はエポキシ基を含有する基である。前記エポキシ基を含有する基は、エポキシ基(オキシラン環)を少なくとも1つ含む基であり、例えば、アルケニル基等の炭素-炭素不飽和二重結合を有する直鎖又は分岐鎖状の脂肪族炭化水素基が有する少なくとも1つの二重結合がエポキシ化された基や、炭素-炭素不飽和二重結合を有する環状の脂肪族炭化水素基(例えば、シクロアルケニル基;シクロヘキセニルエチル基等のシクロアルケニルアルキル基等)が有する少なくとも1つの二重結合がエポキシ化された基等が挙げられる。より具体的には、例えば、1,2-エポキシエチル基(エポキシ基)、1,2-エポキシプロピル基、2,3-エポキシプロピル基(グリシジル基)、2,3-エポキシ-2-メチルプロピル基(メチルグリシジル基)、3,4-エポキシブチル基、3-グリシジルオキシプロピル基、3,4-エポキシシクロヘキシルメチル基、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチル基等が挙げられる。中でも、炭素-炭素不飽和二重結合を有する環状の脂肪族炭化水素基が有する少なくとも1つの二重結合がエポキシ化された基が好ましい。アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、ヘキシル基、オクチル基、イソオクチル基、デシル基、ドデシル基等の炭素数1~20の直鎖又は分岐鎖状のアルキル基等が挙げられる。中でも、炭素数1~10の直鎖又は分岐鎖状のアルキル基が好ましい。
【0054】
式(e)中、mは、2~12の整数を示す。特に、硬化物の耐クラック性の向上の観点から、mとしては、4~8が好ましく、より好ましくは4又は5である。
【0055】
前記シロキサン化合物としては、より具体的には、例えば、2,4-ジ[2-(3-{オキサビシクロ[4.1.0]ヘプチル})エチル]-2,4,6,6,8,8-ヘキサメチル-シクロテトラシロキサン、4,8-ジ[2-(3-{オキサビシクロ[4.1.0]ヘプチル})エチル]-2,2,4,6,6,8-ヘキサメチル-シクロテトラシロキサン、2,4-ジ[2-(3-{オキサビシクロ[4.1.0]ヘプチル})エチル]-6,8-ジプロピル-2,4,6,8-テトラメチル-シクロテトラシロキサン、4,8-ジ[2-(3-{オキサビシクロ[4.1.0]ヘプチル})エチル]-2,6-ジプロピル-2,4,6,8-テトラメチル-シクロテトラシロキサン、2,4,8-トリ[2-(3-{オキサビシクロ[4.1.0]ヘプチル})エチル]-2,4,6,6,8-ペンタメチル-シクロテトラシロキサン、2,4,8-トリ[2-(3-{オキサビシクロ[4.1.0]ヘプチル})エチル]-6-プロピル-2,4,6,8-テトラメチル-シクロテトラシロキサン、2,4,6,8-テトラ[2-(3-{オキサビシクロ[4.1.0]ヘプチル})エチル]-2,4,6,8-テトラメチル-シクロテトラシロキサン、分子内に2以上のエポキシ基を有するシルセスキオキサン等が挙げられる。さらに具体的には、例えば、下記式で表される分子内に2以上のエポキシ基を有する環状シロキサン等が挙げられる。
【化9】
【0056】
また、前記シロキサン化合物としては、例えば、特開2008-248169号公報に記載の脂環式エポキシ基含有シリコーン樹脂や、特開2008-19422号公報に記載の1分子中に少なくとも2つのエポキシ官能性基を有するオルガノポリシルセスキオキサン樹脂等を用いることもできる。
【0057】
なお、本発明の樹脂組成物において前記シロキサン化合物は、1種を単独で使用することもできるし、2種以上を組み合わせて使用することもできる。
【0058】
前記シロキサン化合物は、例えば、分子内に2以上のエポキシ基を有する環状シロキサンである商品名「X-40-2678」、「X-40-2670」、「X-40-2720」(以上、信越化学工業(株)製)等の市販品を入手可能である。また、前記シロキサン化合物は、公知乃至慣用の方法により製造することができる。
【0059】
[その他の成分]
本発明の樹脂組成物は、本発明の効果を損なわない範囲内で、上記成分以外にも他の成分を含有してもよい。例えば、成分(A)、(B)、(E)以外の硬化性化合物(以下、「その他の硬化性化合物」と称することがある)を含んでいてもよい。また、成分(C)、(D)以外の各種添加剤(以下、「その他の添加剤」と称することがある)を含有していてもよい。
【0060】
その他の硬化性化合物としては、例えば、単官能又は2官能の脂環エポキシ化合物、脂環エポキシ化合物以外のエポキシ化合物、単官能(メタ)アクリル化合物等が挙げられる。単官能又は2官能の脂環エポキシ化合物としては、例えば、下記式(f)で表される化合物が挙げられる。
【化10】
【0061】
式(f)中、X4は連結基(1以上の原子を有する二価の基)を示す。連結基としては、例えば、二価の炭化水素基、カルボニル基、エーテル結合、エステル結合、カーボネート結合、アミド結合、これらが複数個連結した基等が挙げられる。なお、式(f)におけるシクロヘキサン環(シクロヘキセンオキシド基)を構成する炭素原子の1以上には、アルキル基(例えば、炭素数1~6のアルキル基)等の置換基が結合していてもよい。
【0062】
二価の炭化水素基としては、直鎖状又は分岐鎖状のアルキレン基、二価の脂環式炭化水素基等が挙げられる。直鎖状又は分岐鎖状のアルキレン基としては、例えば、メチレン基、メチルメチレン基、ジメチルメチレン基、エチレン基、プロピレン基、トリメチレン基等の炭素数1~18の直鎖状又は分岐鎖状のアルキレン基が挙げられる。二価の脂環式炭化水素基としては、例えば、1,2-シクロペンチレン基、1,3-シクロペンチレン基、シクロペンチリデン基、1,2-シクロヘキシレン基、1,3-シクロヘキシレン基、1,4-シクロヘキシレン基、シクロヘキシリデン基等の炭素数3~18のシクロアルキレン基(シクロアルキリデン基を含む)が挙げられる。
【0063】
式(f)で表される化合物の代表的な例としては、(3,4,3’,4’-ジエポキシ)ビシクロヘキシル、ビス(3,4-エポキシシクロヘキシルメチル)エーテル、1,2-エポキシ-1,2-ビス(3,4-エポキシシクロヘキサン-1-イル)エタン、2,2-ビス(3,4-エポキシシクロヘキサン-1-イル)プロパン、1,2-ビス(3,4-エポキシシクロヘキサン-1-イル)エタンや、下記式(f-1)~(f-8)で表される化合物等が挙げられる。下記式(f-5)中のLは炭素数1~8のアルキレン基であり、中でも、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、イソプロピレン基等の炭素数1~3の直鎖状又は分岐鎖状のアルキレン基が好ましい。下記式(f-5)、(f-7)中のn9、n10は、それぞれ1~30の整数を示す。
【0064】
【化11】
【0065】
その他の添加剤としては、例えば、多価アルコール、硬化助剤、オルガノシロキサン化合物、金属酸化物粒子、ゴム粒子、消泡剤、シランカップリング剤、充填剤、可塑剤、レベリング剤、帯電防止剤、離型剤、界面活性剤、難燃剤、着色剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、イオン吸着体、蛍光体等が挙げられる。
【0066】
また、本発明の樹脂組成物は、塗工条件に応じて溶剤を適宜追加することができる。溶剤としては、例えば、酢酸ブチル、メチルエチルケトン、1-メトキシ-2-プロピルアセテート等が挙げられる。これらは1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0067】
本発明の樹脂組成物は、上記の各成分を、必要に応じて加熱した状態で、撹拌・混合することにより調製することができる。撹拌・混合には、例えば、ディゾルバー、ホモジナイザー等の各種ミキサー、ニーダー、ロール、ビーズミル、自公転式撹拌装置等の公知乃至慣用の撹拌・混合手段を使用できる。また、撹拌・混合後、真空下にて脱泡してもよい。なお、本発明の樹脂組成物は、各成分が予め混合されたものをそのまま使用する1液系の組成物であってもよく、2以上に分割された成分(各成分は2以上の成分の混合物であってもよい)を使用前に所定の割合で混合して使用する多液系(例えば、2液系)の組成物であってもよい。
【0068】
本発明の樹脂組成物は成分(A)として3官能以上の脂環エポキシ化合物及び/又は3官能以上のオキセタン化合物を1種又は2種以上含有する。成分(A)の含有量は特に限定されないが、本発明の樹脂組成物に含まれる硬化性化合物全量の、例えば1~75重量%である。その上限は、好ましくは70重量%、より好ましくは60重量%、さらに好ましくは50重量%、特に好ましくは40重量%、最も好ましくは35重量%である。下限は、好ましくは3重量%、より好ましくは5重量%、さらに好ましくは10重量%、特に好ましくは20重量%、最も好ましくは30重量%である。成分(A)の含有量が上記範囲内にあることで、耐擦傷性、耐屈曲性、及び耐クラック性が優れる傾向がある。なお、耐屈曲性及び耐クラック性の向上の観点からは、成分(A)の含有量は、例えば、樹脂組成物に含まれる硬化性化合物全量の10~75重量%が好ましく、より好ましくは20~75重量%、さらに好ましくは30~75重量%である。
【0069】
本発明の樹脂組成物は成分(B)として多官能(メタ)アクリル化合物を1種又は2種以上含有する。成分(B)の含有量は特に限定されないが、本発明の樹脂組成物に含まれる硬化性化合物全量の、例えば25~99重量%である。その上限は、好ましくは97重量%、より好ましくは95重量%、さらに好ましくは90重量%、特に好ましくは80重量%、最も好ましくは70重量%である。下限は、好ましくは30重量%、より好ましくは40重量%、さらに好ましくは50重量%、特に好ましくは60重量%、最も好ましくは65重量%である。成分(B)の含有量が上記範囲内にあることで、耐擦傷性、耐屈曲性、及び耐クラック性が優れる傾向がある。なお、耐屈曲性及び耐クラック性の向上の観点からは、成分(B)の含有量は、例えば、樹脂組成物に含まれる硬化性化合物全量の25~90重量%が好ましく、より好ましくは25~80重量%、さらに好ましくは25~70重量%である。
【0070】
本発明の樹脂組成物における成分(A)と成分(B)の含有量は特に限定されないが、本発明の樹脂組成物に含まれる硬化性化合物全量の、例えば50~100重量%である。その上限は、好ましくは99重量%、より好ましくは95重量%、特に好ましくは90重量%である。下限は、好ましくは60重量%、より好ましくは70量%、特に好ましくは80重量%である。
【0071】
本発明の樹脂組成物における成分(A)と成分(B)の含有量の比(成分(A)/成分(B))は特に限定されないが、例えば1/99~75/25である。その上限は、好ましくは70/30、より好ましくは60/40、さらに好ましくは50/50、特に好ましくは40/60である。下限は、好ましくは3/97、より好ましくは5/95、さらに好ましくは10/90、特に好ましくは20/80、最も好ましくは30/70である。
【0072】
成分(A)、(B)の含有量又はその比を上記範囲に制御することにより、耐擦傷性を維持しつつ、耐屈曲性、耐クラック性が向上するという効果が得られる。
【0073】
本発明の樹脂組成物は成分(C)として光カチオン重合開始剤を1種又は2種以上含有する。成分(C)の含有量は、本発明の樹脂組成物に含まれる硬化性化合物100重量部に対して、例えば0.05~5重量部である。成分(C)の含有量が上記範囲を下回ると、硬化不良を引き起こす恐れがある。一方、成分(C)の含有量が上記範囲を上回ると、硬化物が着色しやすくなる傾向がある。
【0074】
本発明の樹脂組成物は成分(D)として光ラジカル重合開始剤を1種又は2種以上含有する。成分(D)の含有量は、本発明の樹脂組成物に含まれる硬化性化合物100重量部に対して、例えば1~10重量部である。成分(D)の含有量が上記範囲を下回ると、硬化不良を引き起こす恐れがある。一方、成分(D)の含有量が上記範囲を上回ると、硬化物が着色しやすくなる傾向がある。
【0075】
本発明の樹脂組成物が成分(E)として分子内に2以上のエポキシ基を有するシロキサン化合物を含む場合、その含有量は特に限定されないが、本発明の樹脂組成物に含まれる硬化性化合物全量の、例えば0.1~30重量%が好ましく、より好ましくは0.5~20重量%、さらに好ましくは1.0~10重量%である。前記シロキサン化合物の含有量を上記範囲に制御することにより、硬化物の耐クラック性が向上する傾向がある。
【0076】
その他の硬化性化合物(例えば、式(f)で表される化合物)の含有量は用途に応じて適宜設定することができるが、本発明の樹脂組成物に含まれる硬化性化合物全量に対して、例えば50重量%以下、好ましくは30重量%以下、より好ましくは20重量%以下、特に好ましくは10重量%以下である。
【0077】
その他の添加剤の含有量は用途に応じて適宜設定することができるが、本発明の樹脂組成物に含まれる硬化性化合物100重量部に対して、例えば40重量部以下、好ましくは20重量部以下、より好ましくは10重量部以下、特に好ましくは5重量部以下である。
【0078】
本発明の樹脂組成物は、塗布後、紫外線又は電子線等の活性エネルギー線を照射することにより極めて短時間で硬化させることができ、高い硬度を有し、耐擦傷性、耐クラック性に優れる硬化物が得られる。紫外線照射を行う時の光源としては、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、カーボンアーク灯、キセノン灯、メタルハライド灯等が用いられる。照射時間は、光源の種類、光源と塗布面との距離、その他の条件により異なるが、長くとも数十秒であり、通常は数秒である。通常、ランプ出力80~300W/cm程度の照射源が用いられる。UV照射量は50~3000mJ/cm2程度である。電子線照射の場合は、50~1000KeVの範囲のエネルギーを持つ電子線を用い、2~5Mradの照射量とすることが好ましい。活性エネルギー線照射後は、必要に応じて加熱(ポストキュア)を行って硬化の促進を図ってもよい。
【0079】
本発明の樹脂組成物の硬化物は耐擦傷性に優れ、実施例に記載の耐擦傷性の評価試験により傷が生じるまでの摩擦回数は、例えば300回以上、好ましくは500回以上、特に好ましくは1000回以上である。
【0080】
本発明の樹脂組成物の硬化物は高い硬度を有し、鉛筆硬度は例えば2H以上である。
【0081】
本発明の樹脂組成物の硬化物は透明性に優れ、波長450nmの光の光線透過率(厚み20μm換算)は、例えば80%以上である。なお、光線透過率は、例えば、分光光度計(例えば、商品名「UV-2400」、(株)島津製作所製)を使用して測定することができる。
【0082】
<ハードコートフィルム>
本発明のハードコートフィルムは、少なくとも1部に、本発明の樹脂組成物の硬化物からなるハードコート層を1層又は2層以上備えることを特徴とする。
【0083】
本発明のハードコートフィルムとしては、少なくとも1層の基材層と少なくとも1層のハードコート層とを有する積層体が好ましい。基材層を形成する基材としては、例えば、TAC(三酢酸セルロース)やPET(ポリエチレンテレフタレート)等のプラスチックフィルムを好適に使用することができる。
【0084】
本発明のハードコートフィルムは、例えば、基材の少なくとも一方の面に、本発明のハードコート層形成用樹脂組成物を塗布し、硬化させることにより製造することができる。
【0085】
ハードコート層の厚みとしては、例えば3~50μm程度である。また、ハードコートフィルム全体の厚みとしては、例えば30~300μm程度である。
【0086】
本発明のハードコートフィルムは、高い硬度を有し、耐擦傷性、耐クラック性に優れる。そのため、液晶テレビ、液晶モニター、ノートパソコン、モバイルディスプレイ、タブレットPC、スマートフォン等の電子機器のタッチパネルやディスプレイに貼付して保護する用途に好適に使用することができる。すなわち、本発明のハードコートフィルムは、電子機器のタッチパネルやディスプレイの保護用フィルムとして好適に使用することができる。
【0087】
<電子機器>
本発明の電子機器は、電子機器の表面の少なくとも1部に、本発明の樹脂組成物の硬化物からなるハードコート層を備えることを特徴とする。
【0088】
本発明の電子機器には、例えば、液晶テレビ、液晶モニター、ノートパソコン、モバイルディスプレイ、タブレットPC、スマートフォン等が含まれる。
【0089】
本発明の電子機器は、例えば、電子機器の表面に本発明の樹脂組成物を直接塗布し、硬化させることによって、若しくは、電子機器の表面に上記ハードコートフィルムを貼付することによって製造することができる。
【0090】
本発明の電子機器は、タッチパネルやディスプレイが、本発明の樹脂組成物の硬化物からなるハードコート層であって、表面硬度と耐擦傷性に優れたハードコート層で保護された構成を有するため、傷や汚れが付きにくく、高い品質を長期に亘って維持することができる。
【0091】
<成型品>
本発明の成型品は、成型品表面の少なくとも1部に、本発明の樹脂組成物の硬化物からなるハードコート層を備えることを特徴とする。
【0092】
本発明の成型品には、例えば、レンズ、センサー、ガラス代替樹脂(若しくは、樹脂ウィンドウ)、自動車部品(例えば、メーターパネル等の内装部品や、ドアハンドル、ルーフレール等の外装部品、ヘッドランプレンズ等の電装部品)等が挙げられる。
【0093】
本発明の成型品は、例えば、成型品の表面に本発明の樹脂組成物を直接塗布し、硬化させることによって、若しくは、成型品の表面に上記ハードコートフィルムを貼付することによって製造することができる。
【0094】
本発明の成型品は、本発明の樹脂組成物の硬化物からなるハードコート層であって、表面硬度と耐擦傷性に優れたハードコート層を有するため、傷や汚れが付きにくく、高い品質を長期に亘って維持することができる。
【実施例
【0095】
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。なお、実施例1~4は参考例として記載するものである。
【0096】
[樹脂組成物の調製]
表1に示す配合割合(単位:重量部)で各成分を混合し、自公転式撹拌装置(商品名「あわとり練太郎AR-250」、(株)シンキー製)を使用して撹拌・脱泡して樹脂組成物を得た。
【0097】
[ハードコートフィルムの作製]
1mm厚のポリカーボネート基材上に、上記で得られた樹脂組成物を乾燥後の膜厚が25μmとなるようにバーコーターにより塗布して塗膜を形成した。その後、塗膜を80℃で1分間乾燥させた後、窒素置換した密閉容器内に入れた状態で紫外線を照射し(照射量は表1に示す)、さらに、ポストキュア(温度、時間は表1に示す)を行って硬化塗膜を形成した。このようにして得られた「PC基材/硬化物(硬化塗膜)」の構成を有する積層体(ハードコートフィルム(1))を得た。
次に、ポリカーボネート基材を100μm厚のPET基材に変更し、塗膜の膜厚を15μmに変更した以外は上記と同様にして得られた「PET基材/硬化物(硬化塗膜)」の構成を有する積層体(ハードコートフィルム(2))を得た。
さらに、ポリカーボネート基材の厚みを5mmに変更し、塗膜の膜厚を40μmに変更した以外は上記と同様にして得られた「PC基材/硬化物(硬化塗膜)」の構成を有する積層体(ハードコートフィルム(3))を得た。
なお、比較例3においてはポストキュアを行わずに硬化塗膜を形成した。
【0098】
[鉛筆硬度(1)]
鉛筆硬度の評価は、JIS K5600に準拠して行った。
まず、ある硬さの鉛筆で鉛筆硬度評価用試料の硬化塗膜表面を引掻き、傷が付かなかった場合は、1つ上の硬さの鉛筆で引掻くという作業を行った。傷が付くのを確認できた場合、その1つ下の硬さの鉛筆でもう一度引掻き、傷が付くか否かを確認した。傷が付かないのが確認できた場合は、さらにもう一度1段階上の硬さの鉛筆を用いて傷が付くか否かを確認し、2回以上の再現性が確認できれば、傷が付かない最も硬い鉛筆の硬度を試料の鉛筆硬度とした。評価条件は以下の通りである。
評価用試料:ハードコートフィルム(1)
評価用鉛筆:三菱鉛筆(株)製「鉛筆硬度試験用鉛筆」
荷重:750gf
引掻き距離:50mm以上
引掻き角度:45°
測定環境:23℃、50%RH
【0099】
[鉛筆硬度(2)]
評価用試料をハードコートフィルム(1)からハードコートフィルム(2)に変更したこと以外は鉛筆硬度(1)と同様の方法により、鉛筆硬度を評価した。
【0100】
[耐擦傷性]
ハードコートフィルム(1)の硬化塗膜表面を♯0000のスチールウールを用いて、荷重500g/cm2にて摩擦し、傷が生じるまでの摩擦回数から耐擦傷性を評価した。
【0101】
[耐屈曲性(1)]
JIS K5600-5-1(耐屈曲性(円筒形マンドレル法))に準じ、直径5mmのマンドレルに、ハードコートフィルム(2)のコート面が内側となるように10回屈曲し、クラックが生じるか否かを目視で観察し、以下の基準で評価した。
◎:クラックが生じない
〇:1~2本の微小クラックが生じた
△:3~5本のクラックが生じた
×:6本以上のクラックが生じた
【0102】
[耐屈曲性(2)]
ハードコートフィルム(2)のコート面が外側となるように屈曲したこと以外は、耐屈曲性(1)と同様にして評価した。
【0103】
[耐屈曲性(3)]
マンドレルの直径を1mmとしたこと以外は耐屈曲性(1)と同様にして耐屈曲性を評価した。
【0104】
[耐屈曲性(4)]
マンドレルの直径を1mmとし、さらに、ハードコートフィルム(2)のコート面が外側となるように屈曲したこと以外は、耐屈曲性(1)と同様にして評価した。
【0105】
[耐クラック性]
ハードコートフィルム(3)を-40℃の雰囲気下に30分曝露し、続いて、100℃の雰囲気下に30分曝露することを1サイクルとした熱衝撃を、熱衝撃試験機を用いて200サイクル分与えた。その後、ハードコートフィルム(3)の硬化塗膜表面のクラックの有無をデジタルマイクロスコープ(商品名「VHX-900」、(株)キーエンス製)を使用して観察し、下記基準で耐クラック性を評価した。
○:クラックなし
×:クラックあり
【0106】
【表1】
【0107】
以上の結果、実施例1~6では、高い硬度を有するだけでなく、耐擦傷性、耐屈曲性、及び耐クラック性にも優れる硬化物が得られた。その中でも、実施例5及び6は極めて高い耐屈曲性を示すことが明らかになった。
【0108】
なお、表中の略号を以下に説明する。
[成分(A)]
エポリード GT-401:ブタンテトラカルボン酸テトラ(3,4-エポキシシクロヘキシルメチル)修飾ε-カプロラクトン、分子量:789、ダイセル(株)製
EHPE3150:2,2-ビス(ヒドロキシメチル)-1-ブタノールの1,2-エポキシ-4-(2-オキシラニル)シクロヘキサン付加物、ダイセル(株)製
[その他の硬化性化合物]
(3,4,3’,4’-ジエポキシ)ビシクロヘキシル、分子量:194、ダイセル(株)製
[成分(B)]
PETIA:ペンタエリスリトールトリアクリレートとペンタエリスリトールテトラアクリレートの混合物、分子量:298/352、ダイセル・オルネクス(株)製
[成分(C)]
CPI-210S:ジフェニル[4-(フェニルチオ)フェニル]スルホニウム トリス(ペンタフルオロエチル)トリフルオロホスフェート、サンアプロ(株)製
[成分(D)]
Irgacure 184:1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、BASF社製
【0109】
以上のまとめとして、本発明の構成及びそのバリエーションを以下に付記しておく。
[1] 下記成分(A)~(D)を含有するハードコート層形成用樹脂組成物。
成分(A):3官能以上の脂環エポキシ化合物及び/又は3官能以上のオキセタン化合物
成分(B):多官能(メタ)アクリル化合物
成分(C):光カチオン重合開始剤
成分(D):光ラジカル重合開始剤
[2] 成分(A)の含有量が、樹脂組成物に含まれる硬化性化合物全量の1~75重量%であり、その上限は、好ましくは70重量%、より好ましくは60重量%、さらに好ましくは50重量%、特に好ましくは40重量%、最も好ましくは35重量%であり、下限は、好ましくは3重量%、より好ましくは5重量%、さらに好ましくは10重量%、特に好ましくは20重量%、最も好ましくは30重量%である、[1]に記載のハードコート層形成用樹脂組成物。
[3] 成分(A)が、3官能以上の脂環エポキシ化合物として、式(a-3)[式中のn3、及びn4は、それぞれ同一又は異なって1~30の整数を示す]で表される化合物、式(a-4)[式中のn5、n6、n7、及びn8は、それぞれ同一又は異なって1~30の整数を示す]で表される化合物、及び下記式(a’)[式中、Rはp価のアルコールの構造式からp個の水酸基(-OH)を除いた基(p価の有機基)であり、p、nはそれぞれ自然数を示す]で表される化合物からなる群より選択される少なくとも1つを含む[1]又は[2]に記載のハードコート層形成用樹脂組成物。
[4] 多官能(メタ)アクリル化合物の分子内に有する(メタ)アクリロイル基の数(総数)が、2個以上であり、下限が、好ましくは3個、より好ましくは4個であり、上限が、15個、好ましくは12個、より好ましくは10個である[1]~[3]の何れか1つに記載のハードコート層形成用樹脂組成物。
[5] 成分(B)が、多官能(メタ)アクリル化合物として、脂肪族(メタ)アクリレート、脂環式(メタ)アクリレート、及び芳香族(メタ)アクリレートからなる群より選択される少なくとも1つを含む[1]~[4]の何れか1つに記載のハードコート層形成用樹脂組成物。
[6] 多官能(メタ)アクリル化合物の分子内に有する(メタ)アクリロイル基の数(総数)が2個以上であり、下限が、好ましくは3個、より好ましくは4個であり、上限が、15個、好ましくは12個、より好ましくは10個である[1]~[5]の何れか1つに記載のハードコート層形成用樹脂組成物。
[7] さらに、成分(E)として、分子内に2以上のエポキシ基を有するシロキサン化合物を含む[1]~[6]の何れか1つに記載のハードコート層形成用樹脂組成物。
[8] 成分(B)の含有量が、樹脂組成物に含まれる硬化性化合物全量の25~99重量%であり、その上限が、好ましくは97重量%、より好ましくは95重量%、さらに好ましくは90重量%、特に好ましくは80重量%、最も好ましくは70重量%であり、下限は、好ましくは30重量%、より好ましくは40重量%、さらに好ましくは50重量%、特に好ましくは60重量%、最も好ましくは65重量%である[1]~[7]の何れか1つに記載のハードコート層形成用樹脂組成物。
[9] 成分(A)と成分(B)の含有量が、樹脂組成物に含まれる硬化性化合物全量の50~100重量%であり、その上限が、好ましくは99重量%、より好ましくは95重量%、特に好ましくは90重量%であり、下限は、好ましくは60重量%、より好ましくは70量%、特に好ましくは80重量%である[1]~[8]の何れか1つに記載のハードコート層形成用樹脂組成物。
[10] 成分(A)と成分(B)の含有量の比(成分(A)/成分(B))が、1/99~75/25であり、その上限が、好ましくは70/30、より好ましくは60/40、さらに好ましくは50/50、特に好ましくは40/60であり、下限が、好ましくは3/97、より好ましくは5/95、さらに好ましくは10/90、特に好ましくは20/80、最も好ましくは30/70である[1]~[9]の何れか1つに記載のハードコート層形成用樹脂組成物。
[11] 成分(C)の含有量が、樹脂組成物に含まれる硬化性化合物100重量部に対して0.05~5重量部である[1]~[10]の何れか1つに記載のハードコート層形成用樹脂組成物。
[12] 成分(D)の含有量が、樹脂組成物に含まれる硬化性化合物100重量部に対して1~10重量部である[1]~[11]の何れか1つに記載のハードコート層形成用樹脂組成物。
[13] [1]~[12]の何れか1つに記載のハードコート層形成用樹脂組成物の硬化物からなるハードコート層を備えたハードコートフィルム。
[14] [1]~[12]の何れか1つに記載のハードコート層形成用樹脂組成物の硬化物からなるハードコート層を備えた電子機器。
[15] [1]~[12]の何れか1つに記載のハードコート層形成用樹脂組成物の硬化物からなるハードコート層を備えた成型品。
【産業上の利用可能性】
【0110】
本発明のハードコート層形成用樹脂組成物は上記構成を有するため、活性エネルギー線を照射することにより、高い硬度を有するだけでなく、耐擦傷性、耐屈曲性、及び耐クラック性にも優れるハードコート層を形成することができる。そして、本発明のハードコート層形成用樹脂組成物を使用すれば、高い硬度を有するだけでなく、耐擦傷性、耐屈曲性、及び耐クラック性にも優れるハードコート層を備えたハードコートフィルムや成型品や電子機器を提供することができる。