(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-07
(45)【発行日】2023-12-15
(54)【発明の名称】自動車用機器の水路構造、その製造方法、自動車用機器の水路構造を有する回転電機、およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
H02K 9/19 20060101AFI20231208BHJP
H02K 11/33 20160101ALI20231208BHJP
F28F 9/26 20060101ALI20231208BHJP
【FI】
H02K9/19 Z
H02K11/33
F28F9/26
(21)【出願番号】P 2020010532
(22)【出願日】2020-01-27
【審査請求日】2022-09-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002941
【氏名又は名称】弁理士法人ぱるも特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】深瀬 達也
(72)【発明者】
【氏名】田原 潤
(72)【発明者】
【氏名】石崎 光範
(72)【発明者】
【氏名】加藤 政紀
(72)【発明者】
【氏名】金丸 将大
【審査官】服部 俊樹
(56)【参考文献】
【文献】特許第6589680(JP,B2)
【文献】特開平11-190491(JP,A)
【文献】特表2016-522729(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 9/19
H02K 11/33
F28F 9/26
H05K 7/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車用機器を冷却する冷却液の流路が内部に形成された冷却器と、
先端部分が前記冷却器の継手挿入部に挿入された継手部材であって前記冷却器と非接触に配設されるフランジ部を有する継手部材と、
を備えるとともに、
前記冷却器の表面と前記フランジ部とが対向した部分に構成された空隙に、前記継手挿入部のかじりを防止する、かじり防止部材が挿入され配置されていることを特徴とする自動車用機器の水路構造。
【請求項2】
前記冷却器の外側に、前記継手部材を外力から保護する変形防止壁を備えたことを特徴とする
請求項1に記載の自動車用機器の水路構造。
【請求項3】
自動車用機器を冷却する冷却液の流路が内部に形成された冷却器と、
先端部分が前記冷却器の継手挿入部に挿入された継手部材であって前記冷却器と非接触に配設されるフランジ部を有する継手部材と、
を備えるとともに、
前記継手挿入部は、前記継手部材を冷却器に接続した際に、前記継手部材と嵌合する嵌合部と、前記嵌合部と前記冷却器の表面との間に位置する部分であって接着剤を充填する接着剤たまり部と、を備え、当該接着剤たまり部に接着剤が充填され、
前記嵌合部もしくは前記嵌合部と前記接着剤たまり部との間に、かじり防止用座ぐり穴を有することを特徴とする自動車用機器の水路構造。
【請求項4】
自動車用機器を冷却する冷却液の流路が内部に形成された冷却器と、先端部分が前記冷却器の継手挿入部に挿入された継手部材であって前記冷却器と非接触に配設されるフランジ部を有する継手部材と、を備えた自動車用機器の水路構造の製造方法であって、
前記フランジ部の冷却器に面する側に、予め2個以上に分割された、かじり防止治具を配置し、
前記フランジ部の冷却器に面する側とは反対側の面に設置した圧入治具に荷重を付加することにより、前記かじり防止治具を介して前記継手部材を前記冷却器に対して位置決めした状態で挿入した後、
前記継手部材の挿入方向に対して垂直方向に、前記分割された、かじり防止治具を引き離して取り除くことにより空隙を構成することを特徴とする自動車用機器の水路構造の製造方法。
【請求項5】
自動車用機器を冷却する冷却液の流路が内部に形成された冷却器と、先端部分が前記冷却器の継手挿入部に挿入された継手部材であって前記冷却器と非接触に配設されるフランジ部を有する継手部材と、を備えた自動車用機器の水路構造の製造方法であって、
前記フランジ部の冷却器に面する側にかじり防止治具を配置し、
前記継手挿入部の流路面、もしくは前記継手部材の挿入部の外表面に接着剤を塗布し、
前記フランジ部の冷却器に面する側の反対側の面に圧入治具で荷重を付加し、
予め2個以上に分割されたかじり防止治具により、前記継手部材を冷却器に対して位置決めされた状態で挿入した後、
前記継手部材の挿入方向に対して垂直方向に、前記分割された、かじり防止治具を引き離して取り除くことにより空隙を構成することを特徴とする自動車用機器の水路構造の製造方法。
【請求項6】
自動車用機器を冷却する冷却液の流路が内部に形成された冷却器と、
先端部分が前記冷却器の継手挿入部に挿入された継手部材であって前記冷却器と非接触に配設されるフランジ部を有する継手部材と、
を備えるとともに、
前記継手挿入部は、前記継手部材を冷却器に接続した際に、前記継手部材と嵌合する嵌合部と、前記嵌合部と前記冷却器の表面との間に位置する部分であって接着剤を充填する接着剤たまり部と、を備え、当該接着剤たまり部に接着剤が充填され、前記嵌合部もしくは前記接着剤たまり部との間に、かじり防止用座ぐり穴を有する自動車用機器の水路構造の製造方法であって、
前記継手挿入部に継手が挿入される際に、前記かじり防止用座ぐり穴に前記フランジ部を挿入することにより、前記継手挿入部に対して前記継手部材を位置決めされた状態で挿入する、
ことを特徴とする自動車用機器の水路構造の製造方法。
【請求項7】
自動車用機器を冷却する冷却液の流路が内部に形成された冷却器と、
先端部分が前記冷却器の継手挿入部に挿入された継手部材であって前記冷却器と非接触に配設されるフランジ部を有する継手部材と、
を備えるとともに、
前記継手挿入部は、前記継手部材を冷却器に接続した際に、前記継手部材と嵌合する嵌合部と、前記嵌合部と前記冷却器の表面との間に位置する部分であって接着剤を充填する接着剤たまり部と、を備え、当該接着剤たまり部に接着剤が充填され、前記嵌合部もしくは前記接着剤たまり部との間に、かじり防止用座ぐり穴を有する自動車用機器の水路構造の製造方法であって、
前記継手挿入部に継手が挿入される際に、前記かじり防止用座ぐり穴に前記フランジ部を挿入し、
前記継手挿入部に対して前記継手部材を位置決めされた状態で挿入することで、前記かじり防止用座ぐり穴まで満たされるように接着剤を充填することを特徴とする自動車用機器の水路構造の製造方法。
【請求項8】
請求項1から
3のいずれか1項に記載の自動車用機器の水路構造を有する回転電機であって、
スイッチング可能なパワー半導体素子で構成されたインバータ回路と、インバータ回路を制御する制御器と、を有する制御装置、
を備えたことを特徴とする自動車用機器の水路構造を有する回転電機。
【請求項9】
請求項
8に記載の自動車用機器の水路構造を有する回転電機の製造方法であって、
前記自動車用機器の水路構造が有する冷却器の表面に前記回転電機のハウジングを取り付けた後、
前記表面の反対側の面に前記制御装置を取り付ける、
ことを特徴とする自動車用機器の水路構造を有する回転電機の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、自動車用機器の水路構造、その製造方法、自動車用機器の水路構造を有する回転電機、およびその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、地球温暖化を背景とした輸送機器への燃費改善要求が高まっている。この要求を実現するため、自動車用の機器、特にパワートレイン(駆動装置)に関するモーター、インバータ、これらを一体化した制御装置一体型回転電機などに対して、高出力化が求められている。モーターを動作させるために必要不可決なインバータの電力変換回路で生じる発熱が、高出力化にもともなって増大している。電力変換回路の温度を許容値以下に収めるため、従来空冷式の冷却方式を採用していた自動車用機器も冷却効率が高い液冷式の採用が増加している。しかしながら、液冷式が高い冷却効率を備える反面、製品の大型化、製品重量の増加、液漏れ対策、生産プロセスの複雑化などの様々な課題がある。
【0003】
特に、自動車用のインバータ装置、あるいは、このインバータ装置を使った制御装置一体型回転電機などに液冷式を用いる場合、液冷構造部に対して過酷な環境負荷が作用する。例えば、機器が置かれる使用温度が、氷点下を大幅に下回る気温の地域での使用、あるいは、連続的な通電状態における100℃を大幅に上回るような環境での使用などがある。このため、機器が置かれる、このような幅広い温度変化に対応可能な製品を供給する必要がある。
また、自動車用機器においては、自動車から供給される冷却液を使用するが、この場合においては、エンジン、あるいは、そのほかの機器を冷却する冷却液は、両者を連通させた経路で供給される。このため、100℃を超える冷却液が供給されることもあり、このような場合であっても、液冷構造に液漏れなどを生じることがないように機器を製造する必要がある。
さらに、近年自動車自体の燃費向上要求の高まりから、自動車の小型化、軽量化が進んでいる。これを受けて自動車に搭載する機器も小型化、軽量化に対応する必要があり、液冷構造を備える機器においても、これに対応する必要がある。加えて、エンジンルームなどに配置される機器では、エンジンからの振動、発熱を受ける。さらに、これらの機器が、エンジンルームなど、外部と密閉されていない環境に配置される場合、タイヤからの水はね、雨水、塩水などの腐食性液体が、これらの機器に降りかかる場合も考えられる。最近、このような過酷な環境下でも、これらの機器が安定して動作するように様々な取組がなされている。
【0004】
例えば、特許文献1(特許第6589680号)に、冷却液の流通路を添えなるモーターのハウジングに、嵌合固定された接続部材を有し、接続部材を嫌気性接着剤により形成された気泡樹脂を充填する構造を備える回転電機が示されている。特許文献1によれば、接続部材の嵌合部近傍に気泡を内包する接着剤を配置することによって、温度が変化した際に生じる熱応力による接着剤の剥離を防止することができると説明されている。嵌合部近傍に配置する接着剤が気泡を内包することで、温度変化に起因するハウジングと接続部材間の熱膨張係数の差によって生じる、ハウジングと接続部材の円筒の径方向の隙間の広がりによって、接着剤が伸びやすくなっていることで、熱応力が緩和されて接着剤の剥離が生じにくいとされている。このようにして、外部からの腐食性液体の侵入を防止し、良好な耐食効果を得ようとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に示された従来の回転電機では、嫌気性接着剤から形成された気泡樹脂という特殊な材料を用いることが前提であり、接着剤のコストが高くなる。さらに、気泡すなわち接着剤に内包された空間は、接着剤が変形した際の応力集中部になることは言うまでもないことである。加えて、一般に嫌気性接着剤を構成する材料は、弾性率が高く割れやすい。このことから特許文献1に示された気泡樹脂が許容できる温度変化に起因した変形量は限定的となる。これより、前述したような氷点下を大きく下回るような環境、あるいは100℃を大きく上回るような使用状態すべてに対して、対応する必要がある場合、安定した耐食効果を発揮できるようにすることは困難と考えられる。さらに、接続部材の熱膨張係数がハウジングの熱膨張係数よりも小さい場合、温度増加した際にハウジングの膨張量がより大きくなるため、接続部材のフランジ部がハウジングに加圧され、接続部材を引き抜く方向に熱応力が生じる。上記特許文献1には、これを回避するための回避策が示されておらず、前述の広い温度範囲に対応することができない要因となる。
【0007】
本願は、上記のような課題を解決するための技術を開示するものであり、自動車用機器に大きな温度変化が生じる場合においても、冷却器と継手部材の接続部、あるいは接続部に配置する防水用部材に、破壊に至るような応力、あるいはひずみが生じるのを回避することが可能となり、冷却液の液漏れ防止に対する高い信頼性を備える自動車用機器の水路構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本願に開示される自動車用機器の水路構造は、
自動車用機器を冷却する冷却液の流路が内部に形成された冷却器と、
先端部分が前記冷却器の継手挿入部に挿入された継手部材であって前記冷却器と非接触に配設されるフランジ部を有する継手部材と、
を備えるとともに、
前記冷却器の表面と前記フランジ部とが対向した部分に構成された空隙に、前記継手挿入部のかじりを防止する、かじり防止部材が挿入され配置されていることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0009】
本願に開示される自動車用機器の水路構造によれば、自動車用機器に大きな温度変化が生じる場合においても、冷却器と継手部材のフランジ部との間に空隙が構成されているため、冷却器と継手部材の接続部、あるいは接続部に配置する防水用部材に、破壊に至るような応力、あるいはひずみが生じるのを回避することが可能となり、冷却液の液漏れ防止に対する高い信頼性を備える自動車用機器の水路構造の提供が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】実施の形態1による自動車用機器の水路構造の外観斜視図である。
【
図2】実施の形態1による自動車用機器の水路構造を説明するための断面図である。
【
図3】実施の形態1による自動車用機器の水路構造の製造方法を説明するための図である。
【
図4】実施の形態1による自動車用機器の水路構造の製造方法を説明するための別の図である。
【
図5】実施の形態2による自動車用機器の水路構造の断面模式図である。
【
図6】実施の形態2による自動車用機器の水路構造の製造方法を説明するための図である。
【
図7】実施の形態3による自動車用機器の水路構造の断面模式図である。
【
図8】実施の形態4による自動車用機器の水路構造の断面模式図である。
【
図9】実施の形態5による自動車用機器の水路構造の製造方法を説明するための図である。
【
図10】実施の形態5による自動車用機器の水路構造の断面模式図である。
【
図11】実施の形態6による自動車用機器の水路構造の斜視図である。
【
図12】実施の形態7による自動車用機器の水路構造を有する回転電機の構成を示す断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
実施の形態1.
以下、この実施の形態1に係る自動車用機器の水路構造について、図に基づいて説明する。
図1に、実施の形態1による自動車用機器の水路構造の外観模式図を示す。
図2に、実施の形態1による自動車用機器の水路構造の断面模式図を示す。
【0012】
本実施の形態の自動車用機器の水路構造は、冷却液の流路を有する液冷式の冷却器と、冷却器の外表面および冷却器内部の流路を接続する貫通穴を有する継手挿入部と、冷却器の流路および冷却液を冷却器の外部から供給するための(図示しない)外部流路を接続する管状の継手部材と、継手部材の一部に形成された管径方向に張り出したフランジ部と、を備える。さらに、冷却器の継手挿入部に継手部材との嵌合部を備え、継手部材と継手挿入部において、継手部材の挿入側の先端部分に近い側から順に、嵌合部、フランジ部が配置されている冷却器と、フランジ部の対向する面同士の距離が、継手部材に対する冷却器の相対的な膨張量よりも大きくなるように構成されている。
【0013】
例えば、継手部材を鉄系の合金、冷却器をアルミ系の合金で構成する場合、鉄系合金の1度K(ケルビン)当たりの線膨張率を12×10-6(以下「×10-6」はPPMと略記する)、アルミ系合金の線膨張率を23PPMとする。この場合、継手部材に対して冷却器の線膨張率が大きいため、冷却器が、嵌合部の端部よりもフランジ部側に膨張するように変形する。このとき、空隙がない、もしくは、冷却器とフランジ部間の空隙を構成する、対向する面同士の距離が、この冷却器の継手部材に対する相対的な膨張量よりも小さいと、冷却器の膨張によってフランジ部に接触し、結果としてフランジ部が押圧されて熱応力が生じる。この結果、温度変化が生じる度に、この熱応力が生じ、繰り返し応力によって、嵌合部の固定強度が低下する。空隙のサイズを、空隙を構成する継手部材と冷却器の2つの膨張量よりも大きく設定することで、この熱応力が生じることを回避できる。
【0014】
自動車の使用環境が、氷点下を大幅に下回る気温の地域、あるいは、連続的な通電状態における100℃を大幅に上回る気温の地域の場合がある。このため、自動車用機器がこのような幅広い温度変化にさらされても故障したり、動作の安定性が損なわれたりすることがないように構成されている必要がある。また、自動車用機器において冷却液が自動車から供給されるものを使用するため、エンジン、あるいはその他の機器を冷却する冷却液を通す経路で供給される。このため、100℃を超える冷却液の供給となることもあり、この場合であっても自動車用機器の水路構造に液漏れなどを生じることがないように機器を製造する必要がある。
【0015】
温度変化が生じた際に、冷却器と継手部材を構成する部材がそれぞれ異なる部材の場合、熱膨張係数差によって熱応力が生じる。例えば、冷却器にアルミ合金を、継手部材に鉄合金を使用した場合、冷却器の継手挿入部に継手部材を挿入すると、あらかじめ貫通穴状の継手挿入部の穴径と、継手部材の挿入部の外形との相対的な寸法が締まりばめになるように、継手挿入部の貫通穴の内径を継手部材の挿入部の外形よりも小さく設定する。この状態で継手部材を挿入すると冷却器を構成するアルミ合金により、継手部材を構成する鉄合金が締め付けられることで固定された圧入状態となり、自動車用機器の水路構造が形成される。この自動車用機器の水路構造の温度が上昇すると、アルミ合金の方が鉄合金よりも熱膨張係数が大きいため、鉄合金よりも膨張量が大きい。この結果、圧入状態となっている嵌合部が、アルミ合金で形成された継手挿入部の穴径の増加の方が、鉄合金で形成された継手部材の外形の増加分よりも大きくなり、締め付け力が低下する。これに関しては、あらかじめ使用する温度範囲を決め、最大の温度に達した時でも構成上必要な強度を確保できるように、継手挿入部の穴径と継手部材の外形の組み合わせを設定すればよい。
【0016】
この自動車用機器の水路構造の温度が上昇した場合に、継手部材の挿入方向の膨張を想定しておく必要がある。前述の通り、継手部材よりも冷却器の方が、膨張量が大きいため、本構成のようなフランジ部をそなえる継手部材を使用する場合、フランジ部と冷却器が接触もしくは、各部材の表面性状、あるいは部材形状の干渉などで偶然できるような極めて近い位置に配置される場合、冷却器のアルミ合金が膨張する力でフランジ部に圧力がかかる。これにより、過酷な温度変化が負荷される自動車用のインバータ装置において、温度変化が生じるたびに発生する繰り返しの応力が嵌合部に作用し、冷却器もしくは継手部材に金属疲労が進む。この結果、冷却器もしくは継手部材にクラックが生じる、もしくは嵌合部の固定強度が低下して自動車用機器の水路構造の破壊、あるいは変形の原因となる。
【0017】
これに対して本構成では、継手部材と継手挿入部に継手部材の挿入側の端部に近い側から順に、嵌合部、フランジ部が配置され、冷却器とフランジ部の対向する面同士の(空隙となっている部分の)距離が継手部材に対する冷却器の相対的な膨張量よりも大きくなるように構成されている。
この結果、温度が変化した際に継手部材のフランジ部を冷却器が押圧する作用が生じることがない。従って、冷却器もしくは継手部材にクラックが生じることはなく、嵌合部の固定強度が低下して自動車用機器の水路構造の破壊、あるいは変形の原因となることもない。
【0018】
ここで、
図2に示すように、継手部材、冷却器ともに冷却液の流路101を有し(図中の矢印付きの点線を参照)、冷却器の外表面と流路を接続するように貫通穴状の継手挿入部を備える。継手挿入部に継手部材を挿入することで、自動車から冷却液を供給する外部流路と冷却器の流路が接続される。
図1および
図2には、継手を挿入した状態を一か所のみ記載しているが、冷却器の継手挿入部が少なくとも2か所以上配置されている。これにより、1個目の継手部材と2個目以降の継手部材が自動車の外部流路と冷却器とを接続する連通した流路を形成する。冷却器を構成する部材は、本実施の形態ではアルミ合金を示したが、銅合金、あるいは鉄合金も使用できる。
例えば、継手部材を鉄系の合金、冷却器をアルミ系の合金で構成する場合、鉄系合金の線膨張率が12PPM、アルミ系合金の線膨張率が23PPMとなる。この組み合わせの場合、線膨張率の差が11PPMとなり、線膨張率の和は35PPMとなる。
【0019】
継手部材が、円管状の部材であり、冷却器の継手挿入部へ挿入することで嵌合部、フランジ部を形成し、外部流路との接続部を備える。継手部材の挿入側の端部から順に嵌合部、フランジ部の順に形成される。フランジ部は、円管状の円の中心部を通る長手方向の中心線に対して交差する方向の径方向に、凸状に形成された突出部である。この突出部は、継手部材の壁面を曲げ加工することで形成する方法、あるいは予め凸状に形成する方法がある。成型方法は、金型を用いた成型加工、板金加工、鋳造、機械加工、放電加工、レーザー加工などを用いる。継手部材の表面は、必要に応じてメッキ処理を行う。メッキ処理は、あらかじめめっきされた材料を前述の加工方法で成形する方法と、成形した後にメッキ処理する方法が選択できる。また、継手部材1のフランジ部よりも外部水路と接続する側の一部に管が曲がった状態に成形されたベント部11を設けることもできる。近年自動車自体の燃費向上要求の高まりから、自動車の小型・軽量化が進んでいる。これを受けて自動車に搭載する機器も小型・軽量化に対応する必要があり、自動車用機器の水路構造を備える機器においてもこれに対応する必要がある。ベント部を設けた継手部材を使用することで、ベント部がないものを使用する場合よりも自動車用機器の水路構造の小型化が可能となる。
【0020】
この構成を備えるため、冷却器と継手部材の接続部に破壊に至るような繰り返しの熱応力が生じるのを回避し、冷却器もしくは継手部材にクラックが生じることはなく、嵌合部の固定強度が低下して自動車用機器の水路構造の破壊、あるいは変形するのを回避できる。また、ベント部11を備える継手部材を挿入することで小型の自動車用機器の水路構造を実現できる。
【0021】
次に、自動車用機器の水路構造の製造方法を説明する。
図3、
図4に、実施の形態1による自動車用機器の水路構造とその製造方法の断面模式図を示す。製造方法を工程1から工程4の4つに分けて以下説明する。まず、
図3には、自動車用機器の水路構造の製造方法のうち、工程1と工程2を示す。次に、
図4には、自動車用機器の水路構造の製造方法のうち、工程3と工程4を示す。
【0022】
図3の工程1に示したように、継手部材のフランジ部の冷却器側にかじり防止治具5を配置する。次に、工程2において、フランジ部12の冷却器と対抗する面の反対側の面に設置した圧入治具で工程2の下側の図において矢印で示した方向に荷重を付加し、かじり防止治具が、継手部材を継手挿入部に対して位置決めした状態で挿入する。さらに、
図4の工程3において、かじり防止治具5があらかじめ2個以上に分割されて設置されており、継手部材の挿入方向に対して垂直方向に、分割されたかじり防止治具を互いに引き離すことで、かじり防止治具を取り除き、冷却器と継手部材のフランジの間(のフランジの軸方向)に空隙を構成する(工程4参照)。
【0023】
圧入治具で、継手部材の円管状の円の中心をつないだ中心線を中心とした径方向の突出部であるフランジ部の圧入側と反対側の面を押すことで継手部材を継手挿入部に挿入する。この際、かじり防止治具5があらかじめフランジ部の圧入治具が加圧する側の反対の面に配置されており、圧入治具4により、かじり防止治具5が冷却器に接触するまで押しつけることで挿入が完了する。なお、かじり防止治具5がない場合に、空隙を生じさせようとすると、圧入治具を加圧する装置に挿入量をコントロールする機能を付加する必要があり、装置が複雑になり装置コスト、プロセス時間の増加につながり非経済的である。
【0024】
ここで、かじり防止治具5は、継手部材1を冷却器2の継手挿入部21に対して位置決めさせる機能を備える。かじり防止治具の中心部に、継手部材1の外形との空隙を極力、小さくした貫通穴を備え、この穴に継手部材を入れた状態で冷却器2の継手挿入部21に継手部材1を挿入することで、継手挿入部21に設けた穴に対して、継手部材を位置決め精度よく、挿入することができる。
この結果、冷却器2の嵌合部212で、継手部材1の挿入により、冷却器2を構成する材料を削ってしまう現象、すなわち、かじりの発生を防止できる。これにより、かじりが発生しているかじり部分を伝って、冷却液が漏れることを防止できため、液漏れ防止性能が向上する。さらに、かじり防止治具が少なくとも2個以上に分割できるようになっているため、継手部材を挿入した後に、挿入した方向に対して逆方向にかじり防止治具をスライドして取り除くことで、空隙を形成でき生産効率が高まる。
【0025】
以上のように自動車用機器の水路構造を構成することにより、小型、軽量で、かつ、冷却液の液漏れに対する高い信頼性と、高い生産性を備える自動車用機器の水路構造およびその製造方法の提供が可能となる。
【0026】
実施の形態2.
次に、実施の形態2の自動車用機器の水路構造を図に基づいて説明する。
図5に、この自動車用機器の水路構造の断面模式図を示す。
図6に、実施の形態2による自動車用機器の水路構造の製造方法を説明するための自動車用機器の水路構造の断面図による製造の工程を示す。
【0027】
本実施の形態2の自動車用機器の水路構造の構成においては、実施の形態1の自動車用機器の水路構造の構成に加えて、
図5に示すように、冷却器の嵌合部(
図5の符号212参照)と継手部材1のフランジ部12との間の冷却部の表面部分に、接着剤たまり部211を備え、接着剤たまり部211に接着剤が充填されている。
【0028】
ここで、冷却器とフランジ部の対向する面同士の距離が、継手部材と冷却器の材質から定まる膨張量よりも大きくなるように構成され、結果として、冷却器とフランジ部の対向する面間には空隙13が生じている。例えば、仮に、継手部材を鉄系の合金、冷却器をアルミ系の合金で構成する場合、鉄系合金の線膨張率が12PPM、アルミ系合金の線膨張率が23PPMとする。ここで、フランジ部表面と冷却器表面の間の空隙の距離(相対距離)が0.2mmで温度変化が150K(ケルビン)の場合を以下、具体的に検討する。
【0029】
膨張量を評価する基準長さを20mmと仮定すると、冷却器のフランジ部方向への膨張量が23PPM×20mm×150Kで求められ、継手部材の膨張量が12PPM×20mm×150Kで求められ、この2つの膨張量の和は0.105mmとなる。冷却器とフランジ部の対向する面同士の相対距離が0.2mmであったことから、冷却器と継手部材の2つの膨張量による寸法変化量より、空隙の距離を大きく設定しているため、フランジ部を押し上げる原因となる熱応力が生じることを回避できる。この結果、嵌合部および接着剤が損傷することを防止でき、固定強度が低下しない。
【0030】
エンジンルームなどに配置される機器では、エンジンからの振動、発熱を受ける。また、エンジン冷却液などを用いる場合、エンジン、あるいはそのほかの自動車用機器など複数の機器に冷却液を供給するため、流路の内部に高い圧力が発生する。この圧力が高い場合、
図5に示すような接着剤たまり部211を設け、接着剤を接着剤たまり部に充填する。この際、実施の形態1で説明したように、冷却器とフランジ部の間に形成された空隙により、応力、あるいはひずみの発生の抑制が図られているため、温度変化による接着剤の剥がれなどに対する耐性が高くなるという効果がある。
【0031】
ここで、接着剤には、シリコーン系接着剤、エポキシ系接着剤、アクリル系接着剤が使用できる。また、嫌気性接着剤も使用できる。これらは、流路内部の圧力の大きさ、あるいは冷却器と継手部材の表面材質、表面性状に応じて選択することができる。また、本実施の形態における自動車用機器の水路構造を説明する図としては断面図を採用したが、本実施の形態の自動車用機器の水路構造は、継手部材の円筒の中心をつないだ中心線を起点とした回転方向全周に同じ形状を備えている。
【0032】
次に、実施の形態2における自動車用機器の水路構造の製造方法について、
図6を用いて説明する。まず、
図6の工程1に示したように、継手部材のフランジ部の冷却器側にかじり防止治具5を配置し、継手挿入部の内側、もしくは継手部材の挿入部の外表面に形成された接着剤塗布領域31に接着剤を塗布する。次に、工程2に示したように、フランジ部12の冷却器と対向する面の反対側の面(
図6におけるフランジ部の上面)に圧入治具で荷重を付加し、かじり防止治具が継手部材を継手部材挿入部に対して位置決めされた状態で挿入する。次に、工程3に示したように、予め2個以上に分割された、かじり防止治具5を、継手部材の挿入方向に対して垂直方向(
図6において水平方向)に互いに引き離すことで、かじり防止治具5を取り除くことにより、冷却器とフランジ部の間に空隙が形成される。
【0033】
さらに、実施の形態2の自動車用機器の水路構造の製造方法においては、実施の形態1に対して、接着剤の塗布工程を追加する。接着剤の塗布は、継手挿入部の内面もしくは継手部材の円筒部の表面のどちらか、もしくは両方に塗布する。嵌合部、接着剤たまり部の両方に接着剤が供給されるように、継手部材の挿入される部分の長手方向の長さの全周に接着剤を塗布する。これにより、小型、軽量で、かつ、冷却液の液漏れに対する高い信頼性と、高い生産性を備える自動車用機器の水路構造および製造方法の供給が可能となる。さらに、継手部材の耐震性、固定強度も向上できる。
【0034】
なお、一般に、自動車用機器の水路構造においては、フランジ部が冷却器と接触、もしくは非常に近くまで接近した状態となっている。このため、前述の温度変化による冷却器の構成部材の膨張によるフランジ部の押上げ現象により、継手挿入部に応力、あるいはひずみが生じていた。さらに、フランジ部が冷却器との微小な隙間を形成しており、そこに接着剤が侵入するような形状になると、フランジ部と冷却器に挟まれた接着剤が押しつぶされることになり、非常に大きな応力、あるいはひずみが生じる結果となっている。これにより、押しつぶされる接着剤と接続した他の部分に配置された接着剤に引張方向の応力、あるいはひずみが発生し、接着剤の剥離の原因となっている。
【0035】
一方、本実施の形態では、熱応力による冷却器の膨張によって冷却器とフランジ部との干渉による応力、あるいはひずみの発生を回避できるように空隙を意図的に生じさせているため、接着剤にも大きな応力、あるいはひずみが生じることがない。
【0036】
実施の形態3.
次に、実施の形態3の自動車用機器の水路構造について、図に基づいて説明する。
図7に、実施の形態3による自動車用機器の水路構造の断面模式図を示す。
【0037】
本構成では、実施の形態2に加えて、接着剤3が、冷却器とフランジ部との対向面の間に生じた空隙の一部もしくはすべてのスペースに充填された構成を有する。
【0038】
この構成により、継手部材の固定強度、耐震性が向上する。さらに、エンジンルームなどの外部と密閉されていない環境に配置される場合、タイヤからの水はね、雨水、塩水などの腐食性液体が降りかかる場合も考えられる。これらの液体などが継手挿入部に降りかかった際に、上記空隙部分に停滞、堆積することを防止できるため、耐食性が向上する。
また、冷却器の膨張によって、冷却器とフランジ部とが干渉しないよう、空隙を生じさせているため、この空隙部分に充填された接着剤が押しつぶされることがなく、接着剤の剥離を防ぐことができる。
【0039】
実施の形態4.
次に、実施の形態4の自動車用機器の水路構造について、図に基づいて説明する。
図8に、実施の形態4による自動車用機器の水路構造の断面模式図を示す。
【0040】
本構成では、実施の形態2に加えて、冷却器とフランジ部との対向面の間に生じている空隙の一部もしくはすべての部分に、かじり防止部材6が配置される構成を備える。
この構成にすることで、かじり防止治具5の代わりにかじり防止部材6を用いることになり、製造時にかじり防止治具を取り外すプロセスが不要となり、生産性がさらに向上する。また、かじり防止部材を、ゴム弾性を備える材料、あるいは樹脂成型品などの、比較的弾性率が低い材料で構成することで、実施の形態3と同様の耐食性を向上するとともに、温度変化に起因した継手部材の押上げ現象による、継手挿入部、継手部材、接着剤の応力、もしくはひずみの発生を回避できる。
【0041】
この結果、冷却器と継手部材の接続部、あるいは接続部に配置する防水用部材に破壊に至るような応力、あるいはひずみが生じるのを回避するととみに、小型、軽量で、かつ、冷却液の液漏れに対する高い信頼性と、高い生産性を備える自動車用機器の水路構造および製造方法の供給が可能となる。
【0042】
実施の形態5.
次に、実施の形態5の自動車用機器の水路構造について、図に基づいて説明する。
図9に、実施の形態5による自動車用機器の水路構造の断面図とその製造工程を示す。
【0043】
本構成では、実施の形態1もしくは2に加えて、
図9に示すように、冷却器2の継手挿入部21が空隙部分と嵌合部、もしくは空隙部分と接着剤たまり部との間にかじり防止用座ぐり穴7を備え、継手挿入部に継手部材1が挿入される際に、かじり防止用座ぐり穴にフランジ部12が挿入され、圧入治具をフランジ部に当接することで、継手挿入部に対して継手部材が位置決めされた状態で冷却器2に挿入される構成を備える。
【0044】
これにより、前述のかじり防止治具、あるいはかじり防止部材の配置が不要になるため、低コスト化が図れる。さらに、圧入治具が冷却器に接するまで押し切ることで自動的に空隙が形成される寸法にかじり防止用座ぐり穴を形成するため、さらに簡便なプロセスでかじりを防止しつつ、継手挿入部の応力、あるいはひずみの発生を回避できる。
【0045】
また、
図10に示すように、冷却器の継手挿入部21に継手部材1が挿入される際に、かじり防止用座ぐり穴7にフランジ部12が挿入されることで、継手挿入部21に対して継手部材1が位置決めされた状態で挿入され、接着剤3がかじり防止用座ぐり穴7まで満たされるように接着剤が配置される構成を備える。
【0046】
これにより、小型、軽量で、かつ、冷却液の液漏れに対する高い信頼性と、高い生産性を備える自動車用機器の水路構造および製造方法の供給が可能となる。同時に、外部から降りかかる腐食性液体の滞留、あるいは堆積を防止できるため、耐食性が向上する。また、耐震性も向上する。
【0047】
実施の形態6.
次に、実施の形態6の自動車用機器の水路構造について、図に基づいて説明する。
図11に、実施の形態6による自動車用機器の水路構造の斜視図を示す。
【0048】
本構成では、実施の形態1から5に加えて、冷却器に継手挿入部の近傍に継手部材の外部水路と接続する側の先端の近傍までを覆うように設けられた継手部材を外力から保護する変形防止壁8を備える構成を備える。
【0049】
変形防止壁8が、継手部材を保護するように設けられており、ベント部11を有する継手部材の回転方向に外力が作用しても、継手挿入部が変形することがない。この結果、小型、軽量で、かつ、冷却液の液漏れに対する高い信頼性と、高い生産性を備える自動車用機器の水路構造および製造方法の供給が可能となる。
【0050】
実施の形態7.
次に、実施の形態7の水路構造を有する回転電機について説明する。
図12に実施の形態7による水路構造を有する回転電機の構成を示す断面模式図を示す。本構成では、制御装置300が、スイッチング可能なパワー半導体素子で構成されたインバータ回路301と、このインバータ回路を制御する制御器302を備え、制御装置の一部とモーター200が接続されている水路構造を有する回転電機において、実施の形態1から6の構成のいずれか、もしくは、その組み合わせによる自動車用機器の水路構造を有することを特徴とした回転電機を構成する。
【0051】
上記制御装置は、インバータ回路301と制御器302を少なくとも備える。この際、インバータ回路301が(図示しない)パワー回路を備え、電力変換動作をすることで発熱を伴う。この制御装置を備えた回転電機は、近年の高出力化の要求に対応するために、大電流化が進んでおり、電力変換による発熱量もその分大きい。さらに、制御装置がモーターのハウジング201などに一体化されて構成されている。このような構成では、モーターの発熱、振動などを制御装置も受けることになる。また、エンジンに取り付けられる制御装置を備えた回転電機の場合、環境温度も高温になる。本実施の形態の自動車用機器の水路構造を、その使用される温度環境、振動、外部からの腐食性液体の負荷などの点で、厳しい環境にさらされると言える制御装置を備えた回転電機に用いることで、高出力、小型、軽量で、かつ冷却液の液漏れに対する高い信頼性と、高い生産性を実現することが可能となる。
【0052】
また、冷却器2を制御装置300とモーターなどに代表される回転電機の間に配置する。冷却器2を制御装置と回転電機の間に配置する場合、制御装置と回転電機の両方の熱量が冷却器に流入することになり、水路構造を有する回転電機の出力、あるいは効率を向上できる。この際、冷却器に流入する熱量が大きくなることに加え、自動車が停止した際に外気温度まで温度が低下するため、大きい温度変化が冷却器自体、あるいは冷却器周りに接続される接続部材等に作用する。
【0053】
この場合でも、本実施の形態の制御装置一体型回転電機を用いることで、温度変化による冷却器の継手部材に対する相対的な膨張によって、継手部材が押し上げられ、嵌合部もしくは嵌合部と接着剤に熱応力が生じることを防止できる。また、自動車の急発進時、あるいは、急加速時、自動車が事故で衝突した時など、自動車に発生する大きな加速度が冷却構造に作用する場合に、継手部材と冷却器の嵌合部、もしくは嵌合部と接着剤に応力が生じることを回避できるため、故障を回避できるほか、故障を回避するため、追加の部材を配置する必要がなくなる。
【0054】
本願は、様々な例示的な実施の形態及び実施例が記載されているが、1つ、または複数の実施の形態に記載された様々な特徴、態様、及び機能は特定の実施の形態の適用に限られるのではなく、単独で、または様々な組み合わせで実施の形態に適用可能である。
従って、例示されていない無数の変形例が、本願明細書に開示される技術の範囲内において想定される。例えば、少なくとも1つの構成要素を変形する場合、追加する場合または省略する場合、さらには、少なくとも1つの構成要素を抽出し、他の実施の形態の構成要素と組み合わせる場合が含まれるものとする。
【符号の説明】
【0055】
1 継手部材、2 冷却器、3 接着剤、4 圧入治具、5 かじり防止治具、6 かじり防止部材、7 かじり防止用座ぐり穴、8 変形防止壁、11 ベント部、12 フランジ部、13 空隙、21 継手挿入部、31 接着剤塗布領域、101 冷却液の流路、 200 モーター、201 ハウジング、211 接着剤たまり部、212 嵌合部、300 制御装置、301 インバータ回路、302 制御器