(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-07
(45)【発行日】2023-12-15
(54)【発明の名称】内視鏡先端枠および内視鏡
(51)【国際特許分類】
A61B 1/00 20060101AFI20231208BHJP
A61B 1/018 20060101ALI20231208BHJP
G02B 23/24 20060101ALI20231208BHJP
【FI】
A61B1/00 715
A61B1/018 513
G02B23/24 A
(21)【出願番号】P 2020013746
(22)【出願日】2020-01-30
【審査請求日】2023-01-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000000376
【氏名又は名称】オリンパス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大塚 正輝
【審査官】亀澤 智博
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2013/054753(WO,A1)
【文献】特開2016-055103(JP,A)
【文献】国際公開第2014/064401(WO,A1)
【文献】特開2012-024545(JP,A)
【文献】特開2004-261408(JP,A)
【文献】特開平09-105871(JP,A)
【文献】実開昭58-054805(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 1/00 - 1/32
G02B 23/24 -23/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の貫通穴を有し、有色樹脂で成形された一次成形品である保持部と、
前記第1の貫通穴と同心円の第2の貫通穴を有し、透明樹脂で前記保持部と重ねて成形された二次成形品である先端部と、から構成され、
前記第1の貫通穴の径は、前記第2の貫通穴の径よりも大きい内視鏡先端枠。
【請求項2】
前記先端部は、前記保持部の外周の少なくとも一部を覆う被覆部を有する請求項1に記載の内視鏡先端枠。
【請求項3】
前記第1の貫通穴と前記第2の貫通穴は、チャンネルチューブ組み付け穴である請求項1に記載の内視鏡先端枠。
【請求項4】
前記第1の貫通穴と前記第2の貫通穴との段差部は、チャンネルチューブ当接面である請求項3に記載の内視鏡先端枠。
【請求項5】
請求項1に記載の内視鏡先端枠を備える内視鏡。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内視鏡先端枠および内視鏡に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、二色成形品は、組立コストの低減と審美性の向上を目的として電気製品で多く用いられている。しかしながら、一次成形体と一次成形体に対して二次成形材料の射出により成形される二次成形体との間には、射出の時間差に伴う温度差が存在するため、二次成形材料の射出による一次成形体の表面の溶着が不充分である場合がある。
【0003】
このような問題に対して、例えば特許文献1では、一次成形材料の溶融樹脂温度を高く設定することにより、一次成形体の表面のスキン層を極薄化して一次形成帯と二次成形体との溶着接合強度を向上する方法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の方法は、成形樹脂材料が結晶性樹脂材料に限定されるものであり、非晶性樹脂に応用することはできない。また、成型時の離形応力や製品の使用の際に加わる応力は、二色樹脂境界部の端部に高く作用するため、二色樹脂境界部の端部での接合強度の安定性および信頼性の観点では、上記方法でも十分といえるものではない。特に、一次成形体と二次成形体に同心円の貫通穴を有する内視鏡先端枠では、パーティングラインである貫通穴内部の二色樹脂境界部の端部に大きなせん断応力が加わるため、高い接合強度が必要とされる。
【0006】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、二色樹脂境界部の接合強度、および外観品質に優れる内視鏡先端枠および内視鏡を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係る内視鏡先端枠は、第1の貫通穴を有し、有色樹脂で成形された一次成形品である保持部と、前記第1の貫通穴と同心円の第2の貫通穴を有し、透明樹脂で前記保持部と重ねて成形された二次成形品である先端部と、から構成され、前記第1の貫通穴の径は、前記第2の貫通穴の径よりも大きい。
【0008】
また、本発明に係る内視鏡先端枠は、上記発明において、前記先端部は、前記一次成形品の外周の少なくとも一部を覆う被覆部を有する。
【0009】
また、本発明に係る内視鏡先端枠は、上記発明において、前記第1の貫通穴と前記第2の貫通穴は、チャンネルチューブ組み付け穴である。
【0010】
また、本発明に係る内視鏡先端枠は、上記発明において、前記第1の貫通穴と前記第2の貫通穴との段差部は、チャンネルチューブ当接面である。
【0011】
また、本発明に係る内視鏡は、上記に記載の内視鏡先端枠を備える。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、内視鏡先端枠の貫通穴内部の二色樹脂境界部に大きなせん断応力や引張応力が加わった際にも、樹脂境界部の界面剥離を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】
図1は、本発明の実施の形態に係る内視鏡システムの全体構成を模式的に示す図である。
【
図2】
図2は、
図1の内視鏡システムで使用する内視鏡先端枠の(a)は正面図、(b)は(a)のAA’線での断面図、(c)背面図である。
【
図3】
図3は、
図2の内視鏡先端枠にチャンネルチューブを組み付けた場合の断面図である。
【
図4】
図4は、
図2の内視鏡先端枠を成形する二色成形金型の構成を示す断面図であり、一次成形キャビティに一次成形樹脂を充填する前の型締め状態を示す図である。
【
図5】
図5は、
図4の二色成形金型の一次成形キャビティに一次成形樹脂を充填した際の状態を示す断面図である。
【
図6】
図6は、
図5の二色成形金型の型開き時の状態を示す断面図である。
【
図7】
図7は、
図6の二色成形金型の可動型を二次成形金型側に移動させ、型締めした状態を示す断面図である。
【
図8】
図8は、
図7の二色成形金型の二次成形キャビティに二次成形樹脂を充填した際の状態を示す断面図である。
【
図9】
図9は、
図8の二色成形金型の型開き後、二色成形品を金型から離型後の状態を示す断面図である。
【
図10】
図10は、二色成形金型において形成される一次成形キャビティを示す断面図であり、
図4のA部拡大図である。
【
図11】
図11は、二色成形金型において形成される二次成形キャビティを示す断面図であり、
図7のB部拡大図である。
【
図12】
図12は、二色成形金型の二次成形キャビティに二次成形樹脂を充填した際の(a)断面図であり、(b)は(a)のC部拡大図である。
【
図13】
図13は、従来の二色成形金型の二次成形キャビティに二次成形樹脂を充填した際の拡大断面図である。
【
図14】
図14は、従来の二色成形金型の二次成形キャビティに二次成形樹脂を充填した際の拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明に係る内視鏡先端枠、および内視鏡先端枠を備える内視鏡システムの実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、本発明は以下の実施の形態に限定されるものではなく、以下の実施の形態における構成要素には、当業者が置換可能かつ容易なもの、あるいは実質的に同一のものも含まれる。
【0015】
[実施の形態]
図1は、本発明の実施の形態にかかる内視鏡システム1の全体構成を模式的に示す図である。
図1に示すように、本実施の形態にかかる内視鏡システム1は、被検体内に導入され、被検体の体内を撮像して被検体内の画像信号を生成する内視鏡2と、内視鏡2が撮像した画像信号に所定の画像処理を施すとともに内視鏡システム1の各部を制御する情報処理装置3と、内視鏡2の照明光を生成する光源装置4と、情報処理装置3による画像処理後の画像信号を画像表示する表示装置5と、を備える。
【0016】
内視鏡2は、被検体内に挿入される挿入部6と、挿入部6の基端部側であって術者が把持する操作部7と、操作部7から延伸する可撓性のユニバーサルコード8と、を備える。
【0017】
挿入部6は、照明ファイバからなるライトガイド、電気ケーブルまたは光ファイバ等を用いて実現される。挿入部6は、撮像装置を内蔵した先端部6aと、後述する湾曲管を備え、湾曲自在な湾曲部6bと、湾曲部6bの基端部側に設けられた可撓性を有する可撓管部6cと、を有する。先端部6aには、照明レンズを経由して被検体内を照明する照明部、被検体内を撮像する観察部、処置具用チャンネルを連通する開口部が設けられている。後述する内視鏡先端枠は、先端部6aに配置される。
【0018】
操作部7は、湾曲部6bを上下方向および左右方向に湾曲させる湾曲ノブ7aと、被検体の体腔内に生体鉗子、レーザメス等の処置具が挿入される処置具挿入部7bと、情報処理装置3、光源装置4、送気装置、送水装置、送ガス装置および湾曲管等の周辺機器の操作を行う複数のスイッチ部7cと、を有する。処置具挿入部7bから挿入された処置具は、内部に設けられた処置具用チャンネルを経て挿入部6先端の開口部から表出する。
【0019】
ユニバーサルコード8は、照明ファイバからなるライトガイド、ケーブル等を用いて構成される。ユニバーサルコード8は、基端で分岐しており、分岐した一方の端部がコネクタ8aであり、他方の基端がコネクタ8bである。コネクタ8aは、情報処理装置3のコネクタに対して着脱自在である。コネクタ8bは、光源装置4に対して着脱自在である。ユニバーサルコード8は、光源装置4から出射された照明光を、コネクタ8b、および照明ファイバからなるライトガイドを経由して先端部6aに伝播する。また、ユニバーサルコード8は、後述する撮像装置が撮像した画像信号を、ケーブルおよびコネクタ8aを経由して情報処理装置3に伝送する。
【0020】
情報処理装置3は、コネクタ8aから出力される画像信号に所定の画像処理を施すとともに、内視鏡システム1全体を制御する。
【0021】
光源装置4は、光を発する光源や、集光レンズ等を用いて構成される。光源装置4は、情報処理装置3の制御のもと、光源から光を発し、コネクタ8bおよびユニバーサルコード8の照明ファイバからなるライトガイドを経由して接続された内視鏡2へ、被写体である被検体内に対する照明光として供給する。
【0022】
表示装置5は、液晶または有機EL(Electro Luminescence)を用いた表示ディスプレイ等を用いて構成される。表示装置5は、映像ケーブル5aを経由して情報処理装置3によって所定の画像処理が施された画像を含む各種情報を表示する。これにより、術者は、表示装置5が表示する画像(体内画像)を見ながら内視鏡2を操作することにより、被検体内の所望の位置の観察および症状を判定することができる。
【0023】
次に、内視鏡2の先端部6aに配置される内視鏡先端枠10の構造について図面を参照して説明する。
図2は、
図1の内視鏡システム1で使用する内視鏡先端枠10の(a)は正面図、(b)は(a)のAA’線での断面図、(c)背面図である。
【0024】
内視鏡先端枠10は、有色樹脂で成形された一次成形品である保持部20と、透明樹脂で保持部20と重ねて成形された二次成形品である先端部30と、を有する。
【0025】
保持部20は、
図2(c)に示すように、貫通穴21、22、23を有する。貫通穴21は、観察部を保持し、貫通穴22は照明部を保持し、貫通穴23は処置具チャンネル用のチャンネルチューブを保持する。保持部20は、照明部が照射する照明光の迷光を防止するために有色樹脂で形成されている。本明細書では、貫通穴23が第1の貫通穴として機能する。
【0026】
先端部30は、
図2(a)に示すように、貫通穴31、33を有する。先端部30には、照明部を保持する貫通穴22に対応する位置に貫通穴は形成されていない。先端部30は、照明部から照射される光を透過する透明樹脂で形成されている。照射部から被検体に照射され、反射した光は、貫通穴31を介して観察部に入射する。本明細書では、貫通穴33が第2の貫通穴として機能する。貫通穴23と貫通穴33は、処置具を挿通する処置具チャンネルである。
【0027】
内視鏡先端枠10において、貫通穴23と貫通穴33は同心円であるが、貫通穴23の径D1は、貫通穴33の径D2よりも大きく形成されている。貫通穴23の径D1を貫通穴23の径D2よりも大きくすることにより、貫通穴23と貫通穴33の樹脂境界部の剥離を効果的に防止することができる。一方、観察部への反射光の入射の確実性を考慮して、貫通穴21と貫通穴31は同一径、かつ同心円に形成されているが、貫通穴21の径を貫通穴31の径よりも大きくして、貫通穴21と貫通穴31の樹脂境界部の接合強度を向上することもできる。
【0028】
先端部30は、保持部20の外周を覆う被覆部34を有する。被覆部34は、保持部20の先端側の外周を全周に渡って覆っているが、先端側の外周の一部を覆うものであってもよい。被覆部34は、保持部20の外周と面一である。被覆部34を設けることにより、内視鏡先端枠10の外周側の樹脂境界部の位置は、パーティングラインと異なる位置となり、離形の際に外周側の樹脂境界部に加わるせん断応力が小さくなり、樹脂境界部の剥離を防止することができる。また、保持部20と先端部30の接合面積が大きくなるため、接合強度も向上する。さらに、保持部20の外径D3は、先端部30の外径D4より小さく形成されている。保持部20の外径D3を、先端部30の外径D4より小さくすることにより、保持部20および被覆部34の外周に外装部材が装着された際に外形の凹凸を少なくすることができる。
【0029】
図3は、
図2の内視鏡先端枠10にチャンネルチューブ40を組み付けた場合の断面図である。処置具チャンネルを構成する貫通穴23および貫通穴33において、貫通穴23の径D1は、貫通穴33の径D2よりも大きく形成されている。貫通穴23と貫通穴33の間に、段差部35が形成される。この段差部35は、処置具を挿通するチャンネルチューブ40の当接面として機能する。処置具を容易に挿通するために、段差部35の幅((D1-D2)/2)は、チャンネルチューブの肉厚と略等しいことが好ましい。
【0030】
次に、内視鏡先端枠10を製造する二色成形金型100について図を参照して説明する。
図4は、
図2の内視鏡先端枠10を成形する二色成形金型100の構成を示す断面図である。なお、同図は、二色成形金型100の型締め時の状態を示している。
【0031】
二色成形金型100は図示しない二色成形機の一次射出ノズルおよび二次射出ノズルの位置に合わせて、当該二色成形機に取り付けられている。二色成形金型100は、一次成形金型200と、二次成形金型300と、を備えている。一次成形金型200は、固定一次型201と、固定一次型201に対してパーティングライン(以下、「P.L.」という)を挟んで対向して配置された可動型202と、を備えている。二次成形金型300は、固定二次型301と、固定二次型301に対してP.L.を挟んで対向して配置された可動ダミー型302と、を備えている。
【0032】
可動型202および可動ダミー型302は、可動プラテン101に支持されており、可動プラテン101によって固定一次型201および固定二次型301に対して開閉方向に移動可能に構成されている。また、可動型202および可動ダミー型302は、可動プラテン101が回転軸102周りに回動することにより、各々の位置を変更可能に構成されている。すなわち、可動プラテン101が回転軸102周りに180°回動することにより、可動型202は固定一次型201と対向する位置から固定二次型301と対向する位置へと移動し、可動ダミー型302は固定二次型301と対向する位置から固定一次型201と対向する位置へと移動する。
【0033】
固定一次型201は、主に、取付板211と、落下板212と、固定一次側型板213と、複数のガイドピン214と、を備えている。固定一次型201には、一次スプルー215と、ランナー216と、二次スプルー217と、ゲート218と、が形成されている。
【0034】
可動型202は、主に、可動側型板221と、受け板222と、スペーサーブロック223と、取付板224と、複数の締結ボルト225と、突出し板226と、エジェクターピン227と、コアピン228と、を備えている。また、可動側型板221には、固定一次側型板213と対向する面に、可動入子229を介して一次スライド入子230が設けられ、一次スライド入子230の固定一次側型板213と対向する側に凹部230aが形成されている。この凹部230aは、一次成形キャビティ220を形成する。
【0035】
コアピン228は、一次スライド入子230の凹部230aに配置されており、筒状の一次成形キャビティ220を形成する。また、コアピン228は、二色成形品の成形工程(一次成形工程および二次成形工程)を通して、可動側型板221に対して相対位置を維持するように、受け板222に組み込まれている。
【0036】
固定二次型301は、主に、取付板311と、落下板312と、固定二次側型板313と、複数のガイドピン314と、を備えている。固定二次型301には、一次スプルー315と、ランナー316と、二次スプルー317と、ゲート318と、が形成されている。また、固定二次側型板313には、可動ダミー型302と対向する面に二次固定入子319が設けられ、二次固定入子319の可動ダミー型302と対向する側に凹部319aが形成されている。また、ボス部319bが二次固定入子319の凹部319aに配置されており、凹部319aは、筒状の二次成形キャビティ320(
図11参照)を形成する。
【0037】
可動ダミー型302は、主に、可動ダミー側型板321と、受け板322と、スペーサーブロック323と、取付板324と、複数の締結ボルト325と、を備えている。
【0038】
以下、二色成形金型100を利用した内視鏡先端枠の製造方法について、
図5~
図9を参照しながら説明する。二色成形品である内視鏡先端枠の製造方法では、一次成形工程と、二次成形工程とを実施する。
【0039】
(一次成形工程)
まず、
図5に示すように、二色成形金型100を型締めした状態で、固定一次型201の一次スプルー215、ランナー216、二次スプルー217およびゲート218を通じて、固定一次側型板213、エジェクターピン227、コアピン228、可動入子229および一次スライド入子230によって形成される一次成形キャビティ220に有色の一次成形樹脂r1を充填する。この一次成形樹脂r1としては、例えばPC(ポリカーボネート)に不透明な着色をした着色樹脂を用いることができる。また、一次成形キャビティ220の詳細については後記する(
図10参照)。
【0040】
続いて、
図6に示すように、二色成形金型100の型開きを行う。これにより、一次成形キャビティ220に充填された一次成形樹脂r1は、可動型202のコアピン228に保持される一次成形品である保持部20と、固定一次型201に保持される一次成形ランナー部231とに分離される。なお、固定一次型201から離型された保持部20は、貫通穴を有する筒状に形成される。
【0041】
続いて、
図7に示すように、可動プラテン101を回転軸102周りに180°回動させることにより、コアピン228によって保持部20を保持している可動型202と可動ダミー型302との位置を入れ替えた後、型締めを行う。なお、ここでは図示を簡略化するため、可動側型板221に取り付けられている一次スライド入子230を二次スライド入子330と交換して示す。これにより、二次固定入子319の凹部313aと、保持部20および二次スライド入子330との間で、二次成形キャビティ320が形成される。この二次成形キャビティ320の詳細については後記する(
図11参照)。
【0042】
(二次成形工程)
続いて、
図8に示すように、二色成形金型100を型締めした状態で、固定二次型301の一次スプルー315、ランナー316、二次スプルー317およびゲート318を通じて、二次成形キャビティ320に透明色の二次成形樹脂r2を充填する。この二次成形樹脂r2としては、例えばPC(ポリカーボネート)等の透明樹脂を用いることができる。
【0043】
続いて、
図9に示すように、二色成形金型100の型開きを行う。これにより、二次成形キャビティ320に充填された二次成形樹脂r2は、可動型202のコアピン228に保持される一次成形品である保持部20および二次成形品である先端部30からなる内視鏡先端枠10と、固定二次型301に保持される二次成形ランナー部331とに分離される。
【0044】
また、可動型202のコアピン228に保持された内視鏡先端枠10は、突出し板226がP.L.方向に移動し、突出し板226に組み込まれたエジェクターピン227によって押されることにより、可動型202から離型される。なお、可動型202から離型された先端部30は、貫通穴を有する透明に形成される。
【0045】
以下、二色成形金型100に形成される一次成形キャビティ220および二次成形キャビティ320と、前記した製造方法によって製造される内視鏡先端枠10について、
図10~
図14を参照しながら説明する。
【0046】
(一次成形キャビティ)
図10は、
図4のA部拡大図であり、一次成形工程における型締め時の一次成形キャビティ220の断面形状を示している。一次成形キャビティ220は、一次スライド入子230の凹部230aと、固定一次側型板213と、エジェクターピン227と、コアピン228とで形成される。コアピン228の先端面は、固定一次側型板213と当接しており、一次成形キャビティ220のP.L.側端面とコアピン228の先端面は同一面となっている。これにより金型開閉方向に貫通穴を有する保持部20の形状が規定される。
【0047】
凹部230aは、所定の径を有する円柱状に形成されており、一次成形樹脂r1の流入口であるゲート218と連通している。また、凹部230aの外周状には、被覆部34を設ける段差部が形成されている。
【0048】
(二次成形キャビティ)
図11は、
図7のB部拡大図であり、二次成形工程における型締め時の二次成形キャビティ320の断面形状を示している。二次成形キャビティ320は、保持部20の一次成形離形面と、二次スライド入子330と、コアピン228と、二次固定入子319の凹部319aとで形成される。
【0049】
保持部20は、貫通穴23を有し、貫通穴23の中心にコアピン228が挿通されている。二次固定入子319の凹部319a内に配置されているボス部319bの先端面全面とコアピン228の先端面は当接する。ボス部319bにより、先端部30の貫通穴33が形成される。本実施の形態では、ボス部319bの径は、コアピン228の径より小さい。
【0050】
図12は、二色成形金型100の二次成形キャビティ320に二次成形樹脂r2を充填した際の図である。二次成形樹脂r2は、二次スライド入子330と保持部20の間にゲート318から供給される。
図12(a)、(b)に示すように、凹部319a内では、二次成形樹脂r2は、保持部20上を流れて、貫通穴内の二色樹脂境界部の端部25上を通過し、ボス部319bとコアピン228の当接部の外縁まで充填される。本実施の形態では、二色樹脂境界部の端部25上を溶融した二次成形樹脂r2が通過するため、二色樹脂境界部の端部25においても溶融した二次成形樹脂r2が流れることになる。これにより、二色樹脂境界部の端部25近傍の保持部20の表面を再溶融して二次成形品である先端部30と十分に溶着するため、型開き時に発生する、ボス部319bの外周面が先端部30の貫通穴内面を型開き方向に引っ張る力(ボス部離形抵抗)による二色樹脂境界部の一次成形樹脂r1と二次成形樹脂r2との剥離を抑制することができ、成形品である内視鏡先端枠10は、成形不良のない高い外観品質を得ることができる。
【0051】
一方、
図13および
図14は、従来の二色成形金型の二次成形キャビティ320に二次成形樹脂を充填した際の拡大断面図である。
図13は、保持部20と先端部30の貫通孔の径が同一の場合であり、
図14は、保持部20の貫通孔の径が、先端部30の貫通穴の径より小さい場合を示している。
図13および
図14の場合、二色樹脂境界部の端部25は、二次成形樹脂r2の充填末端部となるため、二色樹脂境界部の端部25において、保持部20の表面の再溶融が起こり難く、保持部20と先端部30とが十分に溶着しない。このような場合、ボス部離形抵抗により二色樹脂境界部の一次成形樹脂r1と二次成形樹脂r2の剥離が生じやすくなり、高い外観品質の内視鏡先端枠を得ることができない。
【0052】
以上説明したように、本実施の形態に係る内視鏡先端枠10は、処置具チャンネルを構成する一次成形品である保持部20の貫通穴23の径を、二次成形品である先端部30の貫通穴33の径よりも大きくしている。これにより、保持部20の表面上を先端部30を構成する二次成形樹脂r2が溶融した状態で通過し、貫通穴内部の二色樹脂強化部の端部25で保持部20が再溶融して先端部30と十分に溶着するため、樹脂界面での剥離を抑制でき、外嵌品質に優れる内視鏡先端枠10を得ることができる。
【0053】
以上、本発明に係る内視鏡先端枠、および内視鏡先端枠を備える内視鏡について、発明を実施するための形態により具体的に説明したが、本発明の趣旨はこれらの記載に限定されるものではなく、請求の範囲の記載に基づいて広く解釈されなければならない。また、これらの記載に基づいて種々変更、改変等したものも本発明の趣旨に含まれることはいうまでもない。
【符号の説明】
【0054】
1 内視鏡システム
2 内視鏡
3 情報処理装置
4 光源装置
5 表示装置
6 挿入部
6a 先端部
6b 湾曲部
6c 可撓管部
7 操作部
7a 湾曲ノブ
7b 処置具挿入部
7c スイッチ部
8 ユニバーサルコード
8a、8b コネクタ
10 内視鏡先端枠
20 保持部
21、22、23、31、33 貫通穴
30 先端部
34 被覆部
40 チャンネルチューブ
100 二色成形金型
101 可動プラテン
102 回転軸
200 一次成形金型
201 固定一次型
202 可動型
211 取付板
212 落下板
213 固定一次側型板
214 ガイドピン
215、315 一次スプルー
216、316 ランナー
217、317 二次スプルー
218、318 ゲート
221 可動側型板
222 受け板
223 スペーサーブロック
224 取付板
225 締結ボルト
226 突出し板
227 エジェクターピン
228 コアピン
229 可動入子
230 一次スライド入子
230a、319a 凹部
300 二次成形金型
301 固定二次型
302 可動ダミー型
311 取付板
312 落下板
313 固定二次側型板
314 ガイドピン
319 二次固定入子
319b ボス部
321 可動ダミー側型板
322 受け板
323 スペーサーブロック
324 取付板
325 締結ボルト
330 二次スライド入子
r1 一次成形樹脂
r2 二次成形樹脂