(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-07
(45)【発行日】2023-12-15
(54)【発明の名称】印刷圧力制御装置および印刷圧力制御方法
(51)【国際特許分類】
B41F 15/08 20060101AFI20231208BHJP
B41F 15/40 20060101ALI20231208BHJP
H05K 3/34 20060101ALI20231208BHJP
【FI】
B41F15/08 303E
B41F15/40 B
H05K3/34 505D
(21)【出願番号】P 2020033612
(22)【出願日】2020-02-28
【審査請求日】2023-01-30
(73)【特許権者】
【識別番号】000237271
【氏名又は名称】株式会社FUJI
(74)【代理人】
【識別番号】110000604
【氏名又は名称】弁理士法人 共立特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】水越 剛
【審査官】高松 大治
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2014/147812(WO,A1)
【文献】特開平11-348232(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0313772(US,A1)
【文献】特開平04-332646(JP,A)
【文献】特開2010-214679(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41F 15/08
B41F 15/40
H05K 3/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
スキージがマスクを複数回摺動して前記マスクを介して基板にはんだを印刷するはんだ印刷機において前記スキージが摺動するときに前記マスクに付与する圧力である印刷圧力を制御する印刷圧力制御装置であって、
前記スキージの複数回の摺動のうちの少なくとも一部である複数回の対象摺動の各々において前記スキージの摺動に伴って順に測定する前記印刷圧力の複数の測定位置が前記複数回の対象摺動において異なるように摺動回ごとに前記複数の測定位置を設定する測定位置設定部と、
前記測定位置設定部によって摺動回ごとに設定された前記複数の測定位置において圧力センサに前記印刷圧力を測定させる印刷圧力測定部と、
前記印刷圧力測定部によって測定された今回の摺動回までの前記印刷圧力の測定値および前記印刷圧力の目標値に基づいて次回の摺動回における前記印刷圧力の指令値を設定する指令値設定部と、
を備える印刷圧力制御装置。
【請求項2】
今回の摺動回までに前記測定位置設定部によって測定位置が設定されていない未設定領域の前記印刷圧力を、今回の摺動回までに前記圧力センサによって測定された前記印刷圧力の測定値に基づいて補間する補間部を備える請求項1に記載の印刷圧力制御装置。
【請求項3】
前記印刷圧力測定部は、前記基板に部品が装着されている基板製品を生産する前の前処理であって前記はんだを練り合わせる練り合わせ処理が前記はんだ印刷機において行われているときに、前記印刷圧力を測定させる請求項1または請求項2に記載の印刷圧力制御装置。
【請求項4】
前記印刷圧力測定部は、前記基板に部品が装着されている基板製品を生産する際の印刷処理が前記はんだ印刷機において行われているときに、前記印刷圧力を測定させる請求項1~請求項3のいずれか一項に記載の印刷圧力制御装置。
【請求項5】
前記測定位置設定部は、一回目の摺動において前記印刷圧力を測定する前記複数の測定位置である第一測定位置を一定間隔で設定し、前記第一測定位置に対して所定距離、前記印刷圧力の測定位置を移動させて二回目以降の摺動において測定する前記印刷圧力の測定位置を設定する請求項1~請求項4のいずれか一項に記載の印刷圧力制御装置。
【請求項6】
前記測定位置設定部は、前記第一測定位置において前記スキージの摺動方向に隣り合う二つの測定位置の間の離間距離に摺動回数が増加するほど減少する係数を乗じて、二回目以降の少なくとも一回の摺動における前記所定距離を設定する請求項5に記載の印刷圧力制御装置。
【請求項7】
前記測定位置設定部は、所定の摺動回までに前記印刷圧力が測定された複数の測定位置のうちの所定数の測定位置が、前記基板の印刷領域に設定されるように、二回目以降の少なくとも一回の摺動における前記所定距離を設定する請求項5または請求項6に記載の印刷圧力制御装置。
【請求項8】
前記測定位置設定部は、所定の摺動回までに前記印刷圧力が測定された複数の測定位置のうちの所定数の測定位置が、前記スキージが最初にまたは最後に前記マスクと接する前記マスクの外縁部または前記マスクの切り欠き部に設定されるように、二回目以降の少なくとも一回の摺動における前記所定距離を設定する請求項5~請求項7のいずれか一項に記載の印刷圧力制御装置。
【請求項9】
前記指令値設定部は、前記印刷圧力測定部によって測定された今回の摺動回までの前記印刷圧力の測定値と前記印刷圧力の目標値との差分を打ち消すように前記印刷圧力をフィードバック制御して、次回の摺動回における前記印刷圧力の指令値を設定する請求項1~請求項8のいずれか一項に記載の印刷圧力制御装置。
【請求項10】
前記フィードバック制御は、比例制御、積分制御および微分制御のうちの少なくとも前記比例制御である請求項9に記載の印刷圧力制御装置。
【請求項11】
前記スキージの移動速度と前記印刷圧力の測定結果とを関連付けて記憶装置に記憶させる記憶部を備える請求項1~請求項10のいずれか一項に記載の印刷圧力制御装置。
【請求項12】
前記測定位置設定部によって所定の摺動回まで前記印刷圧力の測定位置が設定されたときに、前記測定位置設定部に対して、当該摺動回までの摺動において前記印刷圧力が測定された測定位置を、前記印刷圧力の測定位置として再び設定させる再設定部を備える請求項1~請求項11のいずれか一項に記載の印刷圧力制御装置。
【請求項13】
スキージがマスクを複数回摺動して前記マスクを介して基板にはんだを印刷するはんだ印刷機において前記スキージが摺動するときに前記マスクに付与する圧力である印刷圧力を制御する印刷圧力制御方法であって、
前記スキージの複数回の摺動のうちの少なくとも一部である複数回の対象摺動の各々において前記スキージの摺動に伴って順に測定する前記印刷圧力の複数の測定位置が前記複数回の対象摺動において異なるように摺動回ごとに前記複数の測定位置を設定する測定位置設定工程と、
前記測定位置設定工程によって摺動回ごとに設定された前記複数の測定位置において圧力センサに前記印刷圧力を測定させる印刷圧力測定工程と、
前記印刷圧力測定工程によって測定された今回の摺動回までの前記印刷圧力の測定値および前記印刷圧力の目標値に基づいて次回の摺動回における前記印刷圧力の指令値を設定する指令値設定工程と、
を備える印刷圧力制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書は、印刷圧力制御装置および印刷圧力制御方法に関する技術を開示する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載のスクリーン印刷機は、印圧センサと、データ補正部と、印刷制御部とを備えている。印圧センサは、押圧力に応じて回路基板がスキージから受ける印刷圧力を測定する。データ補正部は、印刷範囲の少なくとも一部の領域におけるスキージの位置と指令値の関係を示す制御データを、上記領域の全域に亘って測定された印刷圧力と予め設定されている印刷圧力の目標値とに基づいて補正する。印刷制御部は、補正された制御データに基づいてスクリーン印刷を制御する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1には、印刷圧力を測定する測定位置の設定方法について明示されていない。例えば、スキージの一回の摺動において、印刷圧力の測定数(測定位置の数)を増加させようとするほど、印刷圧力のサンプリング周期を短くする必要があり、印刷圧力を制御する制御装置などが高コスト化する可能性がある。
【0005】
このような事情に鑑みて、本明細書は、印刷圧力を測定する測定位置を適切に設定して、設定された測定位置の印刷圧力の測定値に基づいて印刷圧力を制御可能な印刷圧力制御装置および印刷圧力制御方法を開示する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本明細書は、スキージがマスクを複数回摺動して前記マスクを介して基板にはんだを印刷するはんだ印刷機において前記スキージが摺動するときに前記マスクに付与する圧力である印刷圧力を制御する印刷圧力制御装置を開示する。前記印刷圧力制御装置は、測定位置設定部と、印刷圧力測定部と、指令値設定部とを備える。前記測定位置設定部は、前記スキージの複数回の摺動のうちの少なくとも一部である複数回の対象摺動の各々において前記スキージの摺動に伴って順に測定する前記印刷圧力の複数の測定位置が前記複数回の対象摺動において異なるように摺動回ごとに前記複数の測定位置を設定する。前記印刷圧力測定部は、前記測定位置設定部によって摺動回ごとに設定された前記複数の測定位置において圧力センサに前記印刷圧力を測定させる。前記指令値設定部は、前記印刷圧力測定部によって測定された今回の摺動回までの前記印刷圧力の測定値および前記印刷圧力の目標値に基づいて次回の摺動回における前記印刷圧力の指令値を設定する。
【0007】
また、本明細書は、スキージがマスクを複数回摺動して前記マスクを介して基板にはんだを印刷するはんだ印刷機において前記スキージが摺動するときに前記マスクに付与する圧力である印刷圧力を制御する印刷圧力制御方法を開示する。前記印刷圧力制御方法は、測定位置設定工程と、印刷圧力測定工程と、指令値設定工程とを備える。前記測定位置設定工程は、前記スキージの複数回の摺動のうちの少なくとも一部である複数回の対象摺動の各々において前記スキージの摺動に伴って順に測定する前記印刷圧力の複数の測定位置が前記複数回の対象摺動において異なるように摺動回ごとに前記複数の測定位置を設定する。前記印刷圧力測定工程は、前記測定位置設定工程によって摺動回ごとに設定された前記複数の測定位置において圧力センサに前記印刷圧力を測定させる。前記指令値設定工程は、前記印刷圧力測定工程によって測定された今回の摺動回までの前記印刷圧力の測定値および前記印刷圧力の目標値に基づいて次回の摺動回における前記印刷圧力の指令値を設定する。
【発明の効果】
【0008】
上記の印刷圧力制御装置によれば、測定位置設定部を備えるので、印刷圧力の複数の測定位置が複数回の対象摺動において異なるように摺動回ごとに複数の測定位置を設定することができる。また、上記の印刷圧力制御装置によれば、印刷圧力測定部および指令値設定部を備えるので、測定位置設定部によって設定された測定位置の印刷圧力の測定値に基づいて印刷圧力を制御することができる。印刷圧力制御装置について上述されていることは、印刷圧力制御方法についても同様に言える。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図2】印刷圧力制御装置の制御ブロックの一例を示すブロック図である。
【
図3】印刷圧力制御装置による制御手順の一例を示すフローチャートである。
【
図4】印刷圧力を測定して印刷圧力の測定値に基づいて印刷圧力を制御する制御システムの一例を示す系統図である。
【
図5】印刷圧力の測定位置の設定例を示す模式図である。
【
図6】印刷圧力とスキージの位置の関係の一例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
1.実施形態
1-1.はんだ印刷機1の構成例
本実施形態のはんだ印刷機1は、スキージ34によって、はんだ80をマスク70に沿って移動させて基板90に印刷処理を実行する。はんだ印刷機1は、基板90に所定の対基板作業を行って基板製品を生産する対基板作業機に含まれる。はんだ印刷機1は、印刷検査機、部品装着機、リフロー炉および外観検査機などの対基板作業機と共に、基板生産ラインを構成している。
【0011】
図1に示すように、はんだ印刷機1は、基板搬送装置10と、マスク支持装置20と、スキージ移動装置30と、表示装置40と、制御装置50とを備えている。本明細書では、基板90の搬送方向(
図1の紙面に垂直な方向)をX軸方向とし、水平面においてX軸に直交するはんだ印刷機1の前後方向(
図1の紙面において左右方向)をY軸方向とし、X軸およびY軸に直交する鉛直方向(
図1の紙面において上下方向)をZ軸方向とする。
【0012】
基板搬送装置10は、印刷対象の基板90を搬送する。基板90は、回路基板であり、電子回路、電気回路、磁気回路などが形成される。基板搬送装置10は、はんだ印刷機1の基台2に設けられる。基板搬送装置10は、例えば、X軸方向に延びるベルトコンベアによって、パレット上に配置された基板90を搬送する。基板搬送装置10は、はんだ印刷機1に搬入された基板90を保持する基板保持部11を備えている。基板保持部11は、マスク70の下面側の所定の位置において、マスク70の下面に基板90の上面を密着させた状態で基板90を保持する。
【0013】
マスク支持装置20は、基板搬送装置10の上方に配置される。マスク支持装置20は、一対のクランプ部材(
図1では、一のクランプ部材が図示されている。)によって、マスク70を支持する。一対のクランプ部材は、正面方向視のはんだ印刷機1の左側および右側に配置され、Y軸方向に沿って延びるように形成されている。なお、
図1は、はんだ印刷機1をY軸方向に沿って切断した一部断面図であり、側面方向視のはんだ印刷機1の内部と、マスク70および基板90の断面とが模式的に示されている。マスク70には、基板90の配線パターンに対応した位置において貫通する開口部71が形成されている。マスク70は、例えば、外周縁に設けられた枠部材を介して、マスク支持装置20に支持される。
【0014】
スキージ移動装置30は、スキージ34をマスク70と垂直な方向(Z軸方向)に昇降させると共に、スキージ34をマスク70の上面においてY軸方向に移動させる。スキージ移動装置30は、ヘッド駆動装置31と、スキージヘッド32と、一対の昇降装置33,33と、一対のスキージ34,34とを備えている。ヘッド駆動装置31は、はんだ印刷機1の上部に配置されている。ヘッド駆動装置31は、例えば、送りねじ機構などの直動機構によって、スキージヘッド32をY軸方向に移動させることができる。
【0015】
スキージヘッド32は、ヘッド駆動装置31の直動機構を構成する移動体にクランプして固定される。スキージヘッド32は、一対の昇降装置33,33を保持する。一対の昇降装置33,33の各々は、スキージ34を保持し、互いに独立して駆動することができる。一対の昇降装置33,33の各々は、例えば、サーボモータ、エアーシリンダなどのアクチュエータを駆動させて、保持するスキージ34を昇降させる。
【0016】
一対のスキージ34,34は、マスク70の上面を摺動して、マスク70の上面に供給されたはんだ80をマスク70に沿って移動させる。はんだ80は、クリームはんだ(はんだペースト)を用いることができる。はんだ80がマスク70の開口部71から基板90に刷り込まれて、マスク70の下面側に配置された基板90に、はんだ80が印刷される。本実施形態では、一対のスキージ34,34の各々は、印刷方向(Y軸方向)に直交するX軸方向に沿って延びるように形成されている板状部材である。
【0017】
一対のスキージ34,34のうちの前側(
図1の紙面左側)のスキージ34は、前側から後側に向かってはんだ80を移動させる印刷処理に用いられ、はんだ印刷機1の前側から後側に向かう方向を進行方向とする。一対のスキージ34,34のうちの後側(
図1の紙面右側)のスキージ34は、後側から前側に向かってはんだ80を移動させる印刷処理に用いられ、はんだ印刷機1の後側から前側に向かう方向を進行方向とする。また、いずれのスキージ34においても、進行方向と反対の方向を後退方向とする。
【0018】
一対のスキージ34,34の各々は、進行側に位置する前面部が下方を向くように傾斜して昇降装置33に保持されている。換言すれば、一対のスキージ34,34の各々は、後退側に位置する背面部が上方を向くように傾斜して昇降装置33に保持されている。一対のスキージ34,34の各々の傾斜角度は、昇降装置33の下部に設けられている調整機構によって調整される。
【0019】
表示装置40は、はんだ印刷機1の作業状況を表示することができる。また、表示装置40は、タッチパネルにより構成されており、はんだ印刷機1の使用者による種々の操作を受け付ける入力装置としても機能する。
【0020】
制御装置50は、公知の演算装置および記憶装置を備えており、制御回路が構成されている。制御装置50は、ネットワークを介して管理装置と通信可能に接続されており、各種データを送受信することができる。制御装置50は、生産プログラム、各種センサによって検出された検出結果などに基づいて、基板搬送装置10、マスク支持装置20、スキージ移動装置30および表示装置40を駆動制御する。
【0021】
図2に示すように、制御装置50は、制御ブロックとして捉えると、測定位置設定部51と、印刷圧力測定部52と、指令値設定部53と、補間部54と、記憶部55と、再設定部56と、印刷制御部57とを備えている。また、制御装置50には、記憶装置50mが設けられている。測定位置設定部51、印刷圧力測定部52、指令値設定部53、補間部54、記憶部55および再設定部56についての説明は、後記されている。
【0022】
印刷制御部57は、例えば、スキージ移動装置30を駆動制御する。印刷制御部57は、記憶装置50mに記憶されている各種情報およびはんだ印刷機1に設けられている各種センサの検出結果を取得する。記憶装置50mは、例えば、ハードディスク装置などの磁気記憶装置、フラッシュメモリなどの半導体素子を使用した記憶装置などを用いることができる。記憶装置50mには、はんだ印刷機1を駆動させる生産プログラムなどが記憶される。
【0023】
印刷制御部57は、上記の各種情報および検出結果などに基づいて、スキージ移動装置30に制御信号を送出する。これにより、スキージヘッド32に保持されている一対のスキージ34,34の印刷方向(Y軸方向)の位置および高さ(Z軸方向の位置)、並びに、移動速度および傾斜角度が制御される。
【0024】
1-2.練り合わせ処理および印刷処理の一例
基板搬送装置10によって基板90が搬入され、基板90がマスク70の下面側の所定位置に配置されると、練り合わせ処理および印刷処理が実行される。具体的には、印刷処理の開始時には、マスク70の上面に、はんだ80が供給される。
図1に示すように、はんだ80は、練り合わせ処理によって、はんだロール81が形成される。
【0025】
はんだロール81は、一対のスキージ34,34が交互に進行方向に移動して、ペースト状のクリームはんだが練り合わされて形成される。はんだロール81は、スキージ34の長さ方向(X軸方向)に延伸し、且つ、印刷方向(Y軸方向)の幅が概ね均一となった状態のはんだ80である。以下の説明では、はんだロール81は、適宜、はんだ80として記載されている。
【0026】
印刷制御部57は、最初に準備工程を実行する。一対のスキージ34,34のうちの一方のスキージ34を第一スキージとする。また、一対のスキージ34,34のうちの他方のスキージ34を第二スキージとする。第一スキージは、準備工程において、マスク70の上方に退避した所定の位置(高さ)に位置決めされる。さらに、第一スキージは、はんだロール81のY軸方向位置よりも後退側となる所定の位置に位置決めされる。
【0027】
次に、印刷制御部57は、スキージ下降工程を実行して、第一スキージの下端部がマスク70に接触する印刷位置(高さ)まで第一スキージを下降させる。これにより、第一スキージがマスク70に所定の圧力をもって接触する状態となる。続いて、印刷制御部57は、ヘッド駆動装置31を駆動制御して、印刷工程を実行する。
【0028】
印刷制御部57は、印刷工程において、上記の印刷位置(高さ)を維持した状態で、第一スキージを進行方向に移動させる。そして、マスク70の上面に供給されたはんだロール81は、第一スキージの移動に伴ってマスク70に沿って移動される。このとき、はんだロール81がマスク70の開口部71から基板90に刷り込まれて、マスク70の下面側に配置された基板90の上面に、はんだ80が印刷される。
【0029】
印刷制御部57は、第一スキージが所定の印刷範囲を通過した後に、昇降装置33を駆動制御して、スキージ上昇工程を実行する。スキージ上昇工程において、第一スキージは、はんだロール81から離間される。このとき、印刷制御部57は、所定の移動軌跡に沿って所定の移動速度で、第一スキージを上昇させる。上記の移動軌跡および移動速度は、例えば、使用中のはんだロール81の物性などに基づいて設定される。次に、印刷制御部57は、第一スキージから第二スキージに切り替えて、スキージヘッド32がY軸方向に往復されるように、上記の印刷処理を繰り返す。このように、本実施形態のはんだ印刷機1は、スキージ34がマスク70を複数回摺動して、マスク70を介して基板90にはんだ80を印刷する。
【0030】
1-3.印刷圧力制御装置100の構成例
印刷圧力制御装置100は、測定位置設定部51と、印刷圧力測定部52と、指令値設定部53とを備える。印刷圧力制御装置100は、補間部54、記憶部55および再設定部56のうちの少なくとも一つを備えることもできる。
図2に示すように、本実施形態の印刷圧力制御装置100は、測定位置設定部51と、印刷圧力測定部52と、指令値設定部53と、補間部54と、記憶部55と、再設定部56とを備えている。
【0031】
また、本実施形態の印刷圧力制御装置100は、
図3に示すフローチャートに従って、制御を実行する。測定位置設定部51は、ステップS11に示す処理を行う。印刷圧力測定部52は、ステップS12に示す処理を行う。指令値設定部53は、ステップS14に示す処理を行う。補間部54は、ステップS13に示す処理を行う。記憶部55は、ステップS15に示す処理を行う。再設定部56は、ステップS16に示す判断およびステップS17に示す処理を行う。
【0032】
さらに、印刷圧力制御装置100は、ステップS18に示す判断を行い、練り合わせ処理が終了するまで、ステップS12~ステップS17に示す処理および判断を繰り返す。印刷圧力制御装置100は、印刷処理が終了するまで、ステップS12~ステップS17に示す処理および判断を繰り返すこともできる。なお、印刷圧力制御装置100は、種々の制御装置に設けることができる。本実施形態の印刷圧力制御装置100は、はんだ印刷機1の制御装置50に設けられている。印刷圧力制御装置100は、はんだ印刷機1を含む複数の対基板作業機を管理する管理装置に設けることもできる。印刷圧力制御装置100は、クラウド上に形成することもできる。
【0033】
1-3-1.制御システム60の構成例
印刷圧力制御装置100は、スキージ34がマスク70を複数回摺動してマスク70を介して基板90にはんだ80を印刷するはんだ印刷機1において、スキージ34が摺動するときにマスク70に付与する圧力である印刷圧力を制御する。
図4は、印刷圧力を測定して印刷圧力の測定値に基づいて印刷圧力を制御する制御システム60の一例を示している。
【0034】
本実施形態の制御システム60は、圧力センサ61と、信号変換装置62と、制御装置50と、ドライバ装置63と、一対の昇降装置33,33とを備えている。同図では、一の昇降装置33が図示されており、本明細書では、一の昇降装置33および一のスキージ34について説明されているが、他の昇降装置33およびスキージ34についても同様である。
【0035】
圧力センサ61は、印刷圧力を測定することができれば良く、種々の形態をとり得る。圧力センサ61は、例えば、公知のロードセルを用いることができる。ロードセルは、歪み、光、弦振動、静電容量、インダクタンスなどを検出して、被検出体に生じる力または被検出体が受ける力を測定することができる。本実施形態の圧力センサ61は、一対の昇降装置33,33の各々においてスキージ34を昇降させるピストンロッドに設けられている。圧力センサ61は、ピストンロッドに生じる応力に比例して歪む起歪体と歪みゲージを備えるロードセルが用いられており、スキージ34が摺動するときにマスク70に付与する力(印刷圧力)の反力を測定することができる。
【0036】
信号変換装置62には、圧力センサ61から出力された電圧(ピストンロッドに生じる応力に比例する電圧)が入力される。信号変換装置62は、入力された電圧(アナログ信号)を所定のサンプリング周期で取得して、デジタル信号に変換する。信号変換装置62によってデジタル信号に変換された印刷圧力の測定情報(印刷圧力の測定値)は、制御装置50に送信される。
【0037】
制御装置50には、印刷圧力制御装置100が設けられており、印刷圧力の測定値に基づいて印刷圧力を制御する。印刷圧力制御装置100による制御の詳細は、後記されている。ドライバ装置63は、印刷圧力制御装置100によって設定された印刷圧力の指令値に基づいて、一対の昇降装置33,33の各々のピストンロッドを昇降させる駆動装置の駆動信号を生成する。例えば、
図4に示すように、ピストンロッドを昇降させる駆動装置が電動機33aを含む場合、ドライバ装置63は、電動機33aを回転駆動させる駆動信号を生成する。
【0038】
電動機33aは、例えば、公知のサーボモータを用いることができる。この場合、ドライバ装置63は、公知のサーボアンプを用いることができる。
図4に示す駆動装置は、送りねじ機構33bによって、ピストンロッドをZ軸方向に移動(昇降)させて、ピストンロッドの先端部に設けられているスキージ34を昇降させる。具体的には、電動機33aが所定回転方向に回転すると、スキージ34がマスク70に近づく方向(
図4の紙面においてZ軸方向の下方向)に移動して、印刷圧力は、移動前と比べて高くなる。逆に、電動機33aが所定回転方向と反対方向に回転すると、スキージ34がマスク70から離れる方向(
図4の紙面においてZ軸方向の上方向)に移動して、印刷圧力は、移動前と比べて低くなる。
【0039】
1-3-2.測定位置設定部51
例えば、スキージ34の一回の摺動において、印刷圧力の測定数(測定位置の数)を増加させようとするほど、印刷圧力のサンプリング周期を短くする必要があり、印刷圧力を制御する制御装置50などが高コスト化する可能性がある。また、スキージ34の一回の摺動において、印刷圧力の測定数(測定位置の数)を増加させようとするほど、信号変換装置62と制御装置50との間の通信を高速にする必要があり、印刷圧力を制御する制御装置50などが高コスト化する可能性がある。
【0040】
そこで、本実施形態の印刷圧力制御装置100は、測定位置設定部51を備えている。測定位置設定部51は、スキージ34の複数回の摺動のうちの少なくとも一部である複数回の対象摺動の各々においてスキージ34の摺動に伴って順に測定する印刷圧力の複数の測定位置が複数回の対象摺動において異なるように摺動回ごとに複数の測定位置を設定する(
図3に示すステップS11)。対象摺動は、練り合わせ処理における全部の摺動であっても良く、練り合わせ処理における一部の摺動であっても良い。また、対象摺動は、印刷処理における全部の摺動であっても良く、印刷処理における一部の摺動であっても良い。
【0041】
測定位置設定部51は、印刷圧力の複数の測定位置が複数回の対象摺動において異なるように、印刷圧力の測定位置を設定することができれば良く、種々の形態をとり得る。測定位置設定部51は、一回目の摺動において印刷圧力を測定する複数の測定位置である第一測定位置P1を一定間隔で設定し、第一測定位置P1に対して所定距離PL0、印刷圧力の測定位置を移動させて二回目以降の摺動において測定する印刷圧力の測定位置を設定することができる。
【0042】
図5は、印刷圧力の測定位置の設定例を示している。同図は、マスク70の平面図であり、第一測定位置P1および第二測定位置P2の設定例が模式的に示されている。第一測定位置P1は、実線で示されており、印刷方向(Y軸方向)において、一定の離間距離CL0で設定されている。第二測定位置P2は、二回目の摺動において印刷圧力を測定する複数の測定位置であり、同図では、破線で示されている。第二測定位置P2は、第一測定位置P1に対して所定距離PL0、印刷圧力の測定位置を移動させた位置に設定されている。例えば、同図の所定距離PL0は、離間距離CL0の二分の一(1/2)に設定されている。
【0043】
測定位置設定部51は、三回目以降の摺動において測定する印刷圧力の測定位置についても、同様に設定することができる。例えば、測定位置設定部51は、三回目の摺動において測定する印刷圧力の測定位置についての所定距離PL0を、離間距離CL0の四分の一(1/4)に設定することができる。測定位置設定部51は、四回目の摺動において測定する印刷圧力の測定位置についての所定距離PL0を、離間距離CL0の八分の一(1/8)に設定することができる。
【0044】
このように、測定位置設定部51は、第一測定位置P1においてスキージ34の摺動方向に隣り合う二つの測定位置の間の離間距離CL0に摺動回数が増加するほど減少する係数を乗じて、二回目以降の少なくとも一回の摺動における所定距離PL0を設定することができる。上記の例では、係数は、摺動回数Nを用いて、1/2N-1で表すことができる。なお、上記係数は、任意に設定することができる。例えば、上記係数は、摺動回数に反比例する係数であっても良い。この場合、上記係数は、摺動回数Nを用いて、1/Nで表すことができる。いずれの場合も、測定位置設定部51は、複数回の対象摺動において異なる摺動回ごとの測定位置を容易に設定することができる。
【0045】
図6は、印刷圧力とスキージ34の位置の関係の一例を示している。同図の横軸は、スキージ34の位置を示し、縦軸は、印刷圧力を示している。直線L11は、印刷圧力の目標値P0_gの一例を示し、曲線L12は、圧力センサ61によって測定される印刷圧力の一例を示している。なお、同図では、スキージ34とマスク70の位置関係を分かり易くするために、一対のクランプ部材20cによって支持されているマスク70の平面図が合わせて図示されている。
【0046】
直線L11および曲線L12に示す例では、印刷圧力の測定値は、全体的に印刷圧力の目標値P0_gより小さくなっている。スキージ34が同図の紙面左側から右側に移動して、マスク70の紙面左側の外縁部BP0に到達すると、印刷圧力の測定値は、瞬間的に大きくなっている。スキージ34がマスク70を摺動する際、スキージ34の接触部位が増加するので、印刷圧力の測定値は、スキージ34がマスク70に到達する前と比べて大きくなっている。
【0047】
スキージ34がマスク70の切り欠き部NA0に到達すると、スキージ34の接触部位が減少し、印刷圧力の測定値は、スキージ34が切り欠き部NA0に到達する前と比べて小さくなっている。スキージ34が切り欠き部NA0を通過すると、切り欠き部NA0に到達する前の状態に戻り、印刷圧力の測定値は、増加してスキージ34が切り欠き部NA0に到達する前の状態に戻っている。そして、スキージ34がマスク70の紙面右側の外縁部BP0に到達すると、印刷圧力の測定値は、一旦、増加した後に減少して、その後一定になっている。
【0048】
このように、印刷圧力は、マスク70の部位によって変動する。そこで、測定位置設定部51は、所定の摺動回までに印刷圧力が測定された複数の測定位置のうちの所定数の測定位置が、基板90の印刷領域PA0に設定されるように、二回目以降の少なくとも一回の摺動における所定距離PL0を設定することもできる。印刷領域PA0は、基板90において部品が装着される領域をいう。
【0049】
例えば、摺動回数が10回であり100個の測定位置が設定される場合、95個の測定位置が、基板90の印刷領域PA0に設定されるように、所定距離PL0を設定することができる。具体的には、第一測定位置P1に対して所定距離PL0、印刷圧力の測定位置を移動させると、印刷圧力の測定位置がマスク70の切り欠き部NA0に設定される場合を想定する。この場合、測定位置設定部51は、所定距離PL0を変更(増加または減少)して、測定位置を基板90の印刷領域PA0に設定することができる。これにより、測定位置設定部51は、印刷品質に影響を与え易い基板90の印刷領域PA0に所定数の測定位置を設定することができる。
【0050】
測定位置設定部51は、所定の摺動回までに印刷圧力が測定された複数の測定位置のうちの所定数の測定位置が、スキージ34が最初にまたは最後にマスク70と接するマスク70の外縁部BP0またはマスク70の切り欠き部NA0に設定されるように、二回目以降の少なくとも一回の摺動における所定距離PL0を設定することもできる。測定位置設定部51は、所定数の測定位置を基板90の印刷領域PA0に設定する場合と同様にして、所定数(上記の例では、例えば、5個)の測定位置を上記の外縁部BP0または切り欠き部NA0に設定することができる。これにより、測定位置設定部51は、印刷圧力が変動し易い領域に所定数の測定位置を設定することができる。
【0051】
1-3-3.印刷圧力測定部52
印刷圧力測定部52は、測定位置設定部51によって摺動回ごとに設定された複数の測定位置において圧力センサ61に印刷圧力を測定させる(
図3に示すステップS12)。
【0052】
既述したように、
図1に示すヘッド駆動装置31は、例えば、送りねじ機構などの直動機構によって、スキージヘッド32をY軸方向に移動させることができる。直動機構には、エンコーダなどの位置検出器が設けられている。印刷圧力測定部52は、位置検出器によって検出されたスキージヘッド32の位置に基づいて、印刷方向(Y軸方向)のスキージ34の位置を知得することができる。印刷圧力測定部52は、測定位置にスキージ34が到達したときに取得されデジタル信号に変換された印刷圧力の測定情報から、測定位置設定部51によって摺動回ごとに設定された複数の測定位置における印刷圧力の測定値を取得することができる。
【0053】
印刷圧力測定部52は、基板90に部品が装着されている基板製品を生産する前の前処理であってはんだ80を練り合わせる練り合わせ処理がはんだ印刷機1において行われているときに、圧力センサ61に印刷圧力を測定させることができる。これにより、印刷圧力制御装置100は、基板製品を生産する際の印刷処理が行われる前に、印刷圧力の測定値と印刷圧力の目標値との関係を取得することができる。また、印刷圧力制御装置100は、基板製品を生産する際の印刷処理において摺動回が少ないときに、練り合わせ処理において取得した上記関係を用いて印刷圧力を制御することができるので、印刷処理の早期の段階から印刷品質を確保することができる。
【0054】
また、印刷圧力測定部52は、基板90に部品が装着されている基板製品を生産する際の印刷処理がはんだ印刷機1において行われているときに、圧力センサ61に印刷圧力を測定させることもできる。この場合、印刷圧力制御装置100は、基板製品を生産する際の印刷処理が行われているときに、印刷圧力の測定値と印刷圧力の目標値との関係を取得することができる。よって、印刷圧力制御装置100は、例えば、基板製品の生産と共にはんだ量が減少して上記関係が変動しても、はんだ量に合わせて印刷圧力を制御することができる。なお、印刷圧力測定部52は、練り合わせ処理がはんだ印刷機1において行われているときに、圧力センサ61に印刷圧力を測定させ、印刷処理がはんだ印刷機1において行われているときに、圧力センサ61に印刷圧力を測定させることもできる。
【0055】
1-3-4.指令値設定部53
指令値設定部53は、印刷圧力測定部52によって測定された今回の摺動回までの印刷圧力の測定値および印刷圧力の目標値に基づいて次回の摺動回における印刷圧力の指令値を設定する(
図3に示すステップS14)。
【0056】
指令値設定部53は、印刷圧力測定部52によって測定された今回の摺動回までの印刷圧力の測定値と印刷圧力の目標値との差分を打ち消すように印刷圧力をフィードバック制御して、次回の摺動回における印刷圧力の指令値を設定することができる。また、フィードバック制御は、比例制御、積分制御および微分制御のうちの少なくとも比例制御を用いることができる。
【0057】
図7は、指令値設定部53の構成例を示している。同図に示すように、指令値設定部53は、減算器53aと、フィードバック制御部53bとを備えている。減算器53aには、印刷圧力の目標値P0_gと、今回の摺動回までに測定された印刷圧力の測定値P0_sとが入力される。減算器53aは、印刷圧力の目標値P0_gから印刷圧力の測定値P0_sを減じて印刷圧力の偏差ΔP0を出力する。フィードバック制御部53bには、印刷圧力の偏差ΔP0が入力される。フィードバック制御部53bは、比例制御、積分制御および微分制御のうちの少なくとも比例制御を行い、印刷圧力の指令値P0_refを出力する。
【0058】
例えば、比例制御の制御ゲイン(比例ゲイン)が1に設定される場合を想定する。この場合、フィードバック制御部53bは、印刷圧力の目標値P0_gより印刷圧力の測定値P0_sが小さく印刷圧力の偏差ΔP0が正極性のときに、印刷圧力の不足分である偏差ΔP0を印刷圧力の目標値P0_gに加算した印刷圧力の指令値P0_refを設定して印刷圧力を高くする。逆に、フィードバック制御部53bは、印刷圧力の目標値P0_gより印刷圧力の測定値P0_sが大きく印刷圧力の偏差ΔP0が負極性のときに、印刷圧力の過剰分である偏差ΔP0を印刷圧力の目標値P0_gから減じた印刷圧力の指令値P0_refを設定して印刷圧力を低くする。
【0059】
制御ゲインは、例えば、ゼロから1の間に設定される。比例ゲインを大きくする程、偏差ΔP0を短時間に低減することができる。また、積分制御の制御ゲイン(積分ゲイン)を大きくする程、偏差ΔP0によるオフセット(定常偏差)を短時間に解消することができる。さらに、微分制御の制御ゲイン(微分ゲイン)を大きくする程、偏差ΔP0の振動を短時間に収束することができ、外乱に対して強くなる。これらの制御ゲインは、シミュレーション、実機による調整などによって予め取得しておくと良い。
【0060】
図7に示すように、ドライバ装置63には、次回の摺動回における印刷圧力の指令値P0_refが入力される。ドライバ装置63は、印刷圧力の指令値P0_refに基づいて、昇降装置33のピストンロッドを昇降させる駆動装置の駆動信号を生成する。ピストンロッドがZ軸方向に移動(昇降)することにより、ピストンロッドの先端部に設けられているスキージ34が昇降して、今回の摺動回と比べて、印刷圧力が増減される。
【0061】
図8は、印刷圧力の制御例を示している。同図の横軸は、時刻を示している。上段の図の縦軸は、スキージ34の水平方向の移動速度を示している。中段の図の縦軸は、スキージ34の垂直方向の移動速度を示している。下段の図の縦軸は、印刷圧力の測定値を示している。折れ線L21は、スキージ34の水平方向の移動速度の経時変化の一例を示している。折れ線L22は、スキージ34の垂直方向の移動速度の経時変化の一例を示している。下段の図の黒点は、印刷圧力の測定値の取得例を示している。
【0062】
折れ線L22に示すように、既述したスキージ下降工程においてスキージ34の下端部がマスク70に接触すると、スキージ34の垂直方向に瞬間的に移動速度が生じる。スキージ34が進行方向に移動すると、折れ線L21に示すように、スキージ34の水平方向の移動速度が増加(加速)する。その後、スキージ34の水平方向の移動速度は、一定になり、減少(減速)してスキージ34の一回の摺動が終了する。折れ線L22に示すように、既述したスキージ上昇工程においてスキージ34が上昇すると、スキージ34の垂直方向(スキージ下降工程の場合と反対方向)に瞬間的に移動速度が生じる。上述したことは、二回目の摺動についても同様に言える。
【0063】
印刷圧力の測定値PP1は、一回目の摺動において測定された印刷圧力の測定値の一例である。測定値PP1は、他の測定値と比べて、印刷圧力の目標値P0_gとの偏差ΔP0が大きい。印刷圧力の測定値PP2は、二回目の摺動において測定された印刷圧力の測定値の一例である。測定値PP2は、指令値設定部53によって設定された印刷圧力の指令値P0_refに基づいて印刷圧力が制御されて、測定値PP1と比べて、偏差ΔP0が小さくなっている。なお、折れ線L22に示すように、同図では、スキージ34の垂直方向の移動速度の変動によって、印刷圧力が制御されたことが模式的に示されている。
【0064】
1-3-5.補間部54
摺動回が少ないほど、圧力センサ61によって測定された印刷圧力の測定値が少なくなり、スキージ34の摺動方向に隣り合う二つの測定位置の間における印刷圧力の指令値P0_refが適切に設定されない可能性がある。例えば、スキージ34の摺動方向において一の測定位置から次の測定位置までの間は、一の測定位置における印刷圧力の指令値P0_refが設定される。そこで、本実施形態の印刷圧力制御装置100は、補間部54を備えている。
【0065】
補間部54は、今回の摺動回までに測定位置設定部51によって測定位置が設定されていない未設定領域の印刷圧力を、今回の摺動回までに圧力センサ61によって測定された印刷圧力の測定値に基づいて補間する(
図3に示すステップS13)。補間された印刷圧力の測定値は、今回の摺動回までに測定された印刷圧力の測定値P0_sと共に、
図7に示す減算器53aに入力される。
【0066】
補間部54は、未設定領域の印刷圧力を補間することができれば良く、種々の形態をとり得る。例えば、補間部54は、今回の摺動回までに測定された印刷圧力の測定値を直線で近似して、未設定領域の印刷圧力を補間することができる。また、補間部54は、今回の摺動回までに測定された印刷圧力の測定値を曲線(例えば、二次曲線、三次曲線など)で近似して、未設定領域の印刷圧力を補間することもできる。これにより、指令値設定部53は、測定位置が設定されていない未設定領域の印刷圧力の指令値P0_refを設定することができる。
【0067】
1-3-6.記憶部55
印刷処理においてスキージ34の移動速度と印刷圧力は、密接に関連している。そのため、スキージ34の移動速度と印刷圧力の関係を知得したいという要請がある。そこで、本実施形態の印刷圧力制御装置100は、記憶部55を備えている。記憶部55は、スキージ34の移動速度と印刷圧力の測定結果とを関連付けて記憶装置50mに記憶させる(
図3に示すステップS15)。スキージ34の移動速度は、スキージ34が進行方向に移動するときの速度をいう。
【0068】
これにより、はんだ印刷機1の利用者は、スキージ34の移動速度と印刷圧力の関係を知得することができる。なお、記憶部55は、スキージ34の移動速度と印刷圧力の測定結果に加えて、印刷に関する種々の情報を関連付けて記憶装置50mに記憶させることもできる。例えば、印刷に関する情報には、基板90を特定する情報、はんだ80を特定する情報、マスク70を特定する情報などが含まれる。
【0069】
1-3-7.再設定部56
例えば、圧力センサ61によって測定された印刷圧力の測定値には、外乱(ノイズ)が含まれる可能性がある。同一の測定位置において印刷圧力が一回のみ測定される場合、指令値設定部53は、外乱を含む印刷圧力の測定値に基づいて、印刷圧力の指令値を設定し続ける可能性がある。そこで、本実施形態の印刷圧力制御装置100は、再設定部56を備えている。
【0070】
再設定部56は、測定位置設定部51によって所定の摺動回まで印刷圧力の測定位置が設定されたときに、測定位置設定部51に対して、当該摺動回までの摺動において印刷圧力が測定された測定位置を、印刷圧力の測定位置として再び設定させる。具体的には、再設定部56は、所定の摺動回まで印刷圧力の測定位置が設定されたか否かを判断する(
図3に示すステップS16)。測定位置の再設定を行う摺動回は、任意に設定することができる。
【0071】
所定の摺動回まで印刷圧力の測定位置が設定された場合(ステップS16でYesの場合)、再設定部56は、測定位置設定部51に対して、当該摺動回までの摺動において印刷圧力が測定された測定位置を、印刷圧力の測定位置として再び設定させる(ステップS17)。仮に、過去に設定された測定位置において測定された印刷圧力の測定値に外乱(ノイズ)が含まれていても、同一の測定位置について印刷圧力の測定位置が再度設定されて、印刷圧力が再度測定される。よって、印刷圧力制御装置100は、印刷圧力の測定値に含まれる外乱の影響を軽減することができる。なお、所定の摺動回まで印刷圧力の測定位置が設定されていない場合(ステップS16でNoの場合)、ステップS17に示す処理は行われずに、印刷圧力の制御は、ステップS18に示す判断に進む。
【0072】
2.その他
圧力センサ61は、基板保持部11の側に設けることもできる。例えば、圧力センサ61は、基板90を保持するバックアップピンに設けることもできる。圧力センサ61は、基板90を保持するバックアップテーブルに設けることもできる。また、昇降装置33がエアーシリンダを駆動させて保持するスキージ34を昇降させる場合、印刷圧力制御装置100は、エアーシリンダのエアー圧を制御して、印刷圧力を制御することもできる。
【0073】
3.印刷圧力制御方法
印刷圧力制御装置100について既述されていることは、印刷圧力制御方法についても同様に言える。具体的には、印刷圧力制御方法は、測定位置設定工程と、印刷圧力測定工程と、指令値設定工程とを備える。測定位置設定工程は、測定位置設定部51が行う制御に相当する。印刷圧力測定工程は、印刷圧力測定部52が行う制御に相当する。指令値設定工程は、指令値設定部53が行う制御に相当する。印刷圧力制御方法は、補間工程、記憶工程および再設定工程のうちの少なくとも一つを備えることもできる。補間工程は、補間部54が行う制御に相当する。記憶工程は、記憶部55が行う制御に相当する。再設定工程は、再設定部56が行う制御に相当する。
【0074】
4.実施形態の効果の一例
印刷圧力制御装置100によれば、測定位置設定部51を備えるので、印刷圧力の複数の測定位置が複数回の対象摺動において異なるように摺動回ごとに複数の測定位置を設定することができる。また、印刷圧力制御装置100によれば、印刷圧力測定部52および指令値設定部53を備えるので、測定位置設定部51によって設定された測定位置の印刷圧力の測定値に基づいて印刷圧力を制御することができる。印刷圧力制御装置100について上述されていることは、印刷圧力制御方法についても同様に言える。
【符号の説明】
【0075】
1:はんだ印刷機、34:スキージ、51:測定位置設定部、
52:印刷圧力測定部、53:指令値設定部、54:補間部、
55:記憶部、56:再設定部、50m:記憶装置、
61:圧力センサ、70:マスク、80:はんだ、90:基板、
100:印刷圧力制御装置、P1:第一測定位置、
PL0:所定距離、CL0:離間距離、PA0:印刷領域、
BP0:外縁部、NA0:切り欠き部。