IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 三菱電機株式会社の特許一覧

特許7398985燃料電池システムおよび燃料電池システムの運用方法
<>
  • 特許-燃料電池システムおよび燃料電池システムの運用方法 図1
  • 特許-燃料電池システムおよび燃料電池システムの運用方法 図2
  • 特許-燃料電池システムおよび燃料電池システムの運用方法 図3
  • 特許-燃料電池システムおよび燃料電池システムの運用方法 図4
  • 特許-燃料電池システムおよび燃料電池システムの運用方法 図5
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-07
(45)【発行日】2023-12-15
(54)【発明の名称】燃料電池システムおよび燃料電池システムの運用方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 8/04225 20160101AFI20231208BHJP
   H01M 8/0612 20160101ALI20231208BHJP
   H01M 8/065 20160101ALI20231208BHJP
   H01M 8/0432 20160101ALI20231208BHJP
   H01M 8/04302 20160101ALI20231208BHJP
   H01M 8/04746 20160101ALI20231208BHJP
   H01M 8/043 20160101ALI20231208BHJP
   H01M 8/04955 20160101ALI20231208BHJP
   H01M 8/04 20160101ALI20231208BHJP
   H01M 8/18 20060101ALI20231208BHJP
   H01M 8/12 20160101ALN20231208BHJP
【FI】
H01M8/04225
H01M8/0612
H01M8/065
H01M8/0432
H01M8/04302
H01M8/04746
H01M8/043
H01M8/04955
H01M8/04 Z
H01M8/18
H01M8/12 101
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020040845
(22)【出願日】2020-03-10
(65)【公開番号】P2021144793
(43)【公開日】2021-09-24
【審査請求日】2022-12-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002941
【氏名又は名称】弁理士法人ぱるも特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】笠嶋 慶純
(72)【発明者】
【氏名】吉瀬 万希子
【審査官】橋本 敏行
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-217968(JP,A)
【文献】特開2003-346861(JP,A)
【文献】特開2001-068138(JP,A)
【文献】特開2013-218802(JP,A)
【文献】国際公開第2008/136087(WO,A1)
【文献】米国特許第05510202(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 8/00-8/2495
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料ガスと酸化剤ガスを電気化学反応させることにより発電する燃料電池システムであって、
外部から供給される燃料ガスを改質反応により水素を含む燃料ガスに改質する改質反応器と、
水素を含む燃料ガスと酸化剤ガスとを用い、電気化学反応を起こすアノードとカソードを有する燃料電池部と、
前記改質反応を起こすための水蒸気を発生させる気化器と、
前記アノードから排出される排ガスに含まれる水蒸気を凝縮する凝縮器と、
前記凝縮器から供給される水と水素化金属とを反応させて水素を発生させる水素発生装置と、
前記燃料電池部および前記改質反応器の温度を測定する温度センサとを備え、
前記水素発生装置の水素の排出側は前記改質反応器を介して前記燃料電池部の前記アノードに接続され、
前記水素発生装置の水素の排出側と水の供給側にはそれぞれ遮断弁が設けられ、かつ、前記温度センサで検出される温度に応じて前記遮断弁の開閉を制御する制御装置を備え、
前記制御装置は、前記温度センサの検出出力に基づき、システム起動時には前記遮断弁を開いて前記水素発生装置で発生された水素を前記アノードに供給し、システム定常時には前記遮断弁を閉じて前記改質反応器で改質された水素を含む燃料ガスを前記アノードに供給する一方、前記改質反応器に対して外部から燃料ガスが供給されなくなった場合には、前記遮断弁を開放して前記凝縮器からの水を前記水素発生装置に供給して水素を生成し、生成した水素の最小限を前記改質反応器を介して前記燃料電池部に供給して運転を停止するものである、燃料電池システム。
【請求項2】
燃料ガスと酸化剤ガスを電気化学反応させることにより発電する燃料電池システムであって、
外部から供給される燃料ガスを改質反応により水素を含む燃料ガスに改質する改質反応器と、
水素を含む燃料ガスと酸化剤ガスとを用い、電気化学反応を起こすアノードとカソードを有する燃料電池部と、
前記改質反応を起こすための水蒸気を発生させる気化器と、
前記アノードから排出される排ガスに含まれる水蒸気を凝縮する凝縮器と、
前記凝縮器から供給される水と水素化金属とを反応させて水素を発生させる水素発生装置と、
前記燃料電池部および前記改質反応器の温度を測定する温度センサとを備え、
前記水素発生装置の水素の排出側は前記改質反応器を介して前記燃料電池部の前記アノードに接続され、
前記水素発生装置の水素の排出側と水の供給側にはそれぞれ遮断弁が設けられ、かつ、前記温度センサで検出される温度に応じて前記遮断弁の開閉を制御する制御装置を備え、
さらに、前記アノードから排気される水素および前記アノードにおける燃料電池反応により生じる熱を共に熱交換する熱交換器を設けるとともに、
前記制御装置は、前記温度センサの検出出力に基づき、システム起動時には前記遮断弁を開いて前記水素発生装置で発生された水素を前記アノードに供給し、システム定常時には前記遮断弁を閉じて前記改質反応器で改質された水素を含む燃料ガスを前記アノードに供給する一方、前記水素発生装置に対して、前記アノードから排気される水素および前記熱交換器で得られる熱を共に供給して水素生成時の逆反応を起こすことで反応生成物から水素化金属を再生するものである、燃料電池システム。
【請求項3】
燃料ガスと酸化剤ガスを電気化学反応させることにより発電する燃料電池システムの運用方法であって、
外部から供給される燃料ガスを改質反応により水素を含む燃料ガスに改質する改質反応器と、
水素を含む燃料ガスと酸化剤ガスとを用い、電気化学反応を起こすアノードとカソードを有する燃料電池部と、
前記改質反応を起こすための水蒸気を発生させる気化器と、
前記アノードから排出される排ガスに含まれる水蒸気を凝縮する凝縮器と、
前記凝縮器から供給される水と水素化金属とを反応させて水素を発生させる水素発生装置と、
前記燃料電池部および前記改質反応器の温度を測定する温度センサとを備え、
前記水素発生装置の水素の排出側は前記改質反応器を介して前記燃料電池部の前記アノードに接続され、
前記水素発生装置の水素の排出側と水の供給側にはそれぞれ遮断弁が設けられ、かつ、前記温度センサで検出される温度に応じて前記遮断弁の開閉を制御する制御装置を備え、
前記制御装置は、前記温度センサの検出出力に基づき、システム起動時には前記遮断弁を開いて前記水素発生装置で発生された水素を前記アノードに供給し、システム定常時には前記遮断弁を閉じて前記改質反応器で改質された水素を含む燃料ガスを前記アノードに供給する燃料電池システムを用い、
前記改質反応器に対して外部から燃料ガスが供給されなくなった場合には、前記水素発生装置で生成する水素を用いて最小限の水素を流して運転を停止する、燃料電池システムの運用方法。
【請求項4】
燃料ガスと酸化剤ガスを電気化学反応させることにより発電する燃料電池システムの運用方法であって、
外部から供給される燃料ガスを改質反応により水素を含む燃料ガスに改質する改質反応器と、
水素を含む燃料ガスと酸化剤ガスとを用い、電気化学反応を起こすアノードとカソードを有する燃料電池部と、
前記改質反応を起こすための水蒸気を発生させる気化器と、
前記アノードから排出される排ガスに含まれる水蒸気を凝縮する凝縮器と、
前記凝縮器から供給される水と水素化金属とを反応させて水素を発生させる水素発生装置と、
前記燃料電池部および前記改質反応器の温度を測定する温度センサとを備え、
前記水素発生装置の水素の排出側は前記改質反応器を介して前記燃料電池部の前記アノードに接続され、
前記水素発生装置の水素の排出側と水の供給側にはそれぞれ遮断弁が設けられ、かつ、前記温度センサで検出される温度に応じて前記遮断弁の開閉を制御する制御装置を備え、
さらに、前記アノードから排気される水素および前記アノードにおける燃料電池反応により生じる熱を共に熱交換する熱交換器を設けるとともに、
前記制御装置は、前記温度センサの検出出力に基づき、システム起動時には前記遮断弁を開いて前記水素発生装置で発生された水素を前記アノードに供給し、システム定常時には前記遮断弁を閉じて前記改質反応器で改質された水素を含む燃料ガスを前記アノードに供給する燃料電池システムを用い、
前記水素発生装置に対して、前記アノードから排気される水素および前記アノードにおける燃料電池反応により生じる熱を共に供給して水素生成時の逆反応を起こすことで反応生成物から水素化金属を再生する、燃料電池システムの運用方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、燃料電池システムおよび燃料電池システムの運用方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
燃料電池、例えば固体酸化物形燃料電池は、電解質を挟んで、電気的に負極となる燃料極(以下アノードと称す))と電気的に正極となる空気極(以下、カソードと称す)を配置し、高温状態(例えば700℃から1000℃)において、アノードに水素などを含む燃料ガスを、カソードに空気などの酸化剤ガスをそれぞれ供給することで、カソードから生じた酸素イオンが電解質を通してアノードに達し、アノードの触媒上で水素と酸素イオンとが電気化学反応することで、化学エネルギーを電気エネルギーに変換して起電力を得る発電装置である。
ここで、一般的に、アノード、カソード、および電解質を持つ燃料電池部の最小発電単位がセルと呼ばれ、そのセルをシステムに必要となる発電容量まで複数積層したものがセルスタックと呼ばれる。
【0003】
固体酸化物形燃料電池のアノードの構成材には、金属として例えばニッケル(Ni)が含まれており、起電力が発生する状態においてアノードが水素などの燃料ガスにより還元雰囲気になっている必要がある。その理由は、アノードが還元雰囲気に保たれていないと、燃料電池部の表面においてNiが酸化されて酸化ニッケル(NiO)になる、または、カソードからアノードに酸素イオンが授受され、電解質とアノードの界面でNiが酸化されてNiOになる。NiOが形成されることにより、体積膨張が生じ、セルが破損または劣化する可能性がある。このように、燃料電池部で起電力が発生する温度域(アノードが活性化状態になる温度域、例えば300℃から400℃)では、アノードを還元雰囲気にしておく必要がある。
【0004】
燃料電池部内を還元雰囲気に保つためにアノードに供給する燃料ガスとして、直接的に水素ガスを用いる方法があるが、水素ガスの外部供給、ボンベの追設などの管理の難しさから、これに代えて、化学反応により生成した水素を用いる方式が主流である。
【0005】
このような化学反応により水素を生成する方法としては、改質反応器を用いて所定の燃料ガス(例えば都市ガス)から改質反応により水素を生成する方式、あるいは、水素化金属と水とを反応させて水素を生成する方式がある。
【0006】
化学反応により水素を生成するために用いる上記の水素化金属は、アルカリ金属と水素の化合物、または錯金属と水素の化合物であり、加水分解または熱分解により水素を生成する性質を持つ。具体的には、水素化金属としてLiH、BeH、NaH、MgH、KH、CaH、RbH、SrHなどが知られている。水素化金属、例えばCaHは、次式により水と反応し、加水分解により水素を生成する。
CaH+2HO→Ca(OH)+2H (1)
【0007】
ところで、下記の特許文献1に記載の従来技術では、燃料ガスを改質反応器で改質して水素を発生させ、アノード内を還元雰囲気にした上でシステムを起動する方法が提案されている。
【0008】
また、通常の燃料電池発電時は、アノードに改質反応器からの水素が導入されるので、常に還元状態が維持されるが、起動時の昇温時に改質反応器の昇温が不十分でアノードに水素が供給されない場合、あるいは、緊急停止時に燃料ガスの供給が停止することでアノードが酸化雰囲気にさらされる可能性があり、起動停止時のアノード酸化対策も重要である。この問題への対応策として、下記の特許文献1、2が提案されている。
【0009】
特許文献1では、燃料電池の起動時に、未だ改質反応器が水素生成に必要な温度に昇温される前に気化器からの水蒸気をアノードに供給し、空気を水蒸気に置換することにより酸化を防止する方法が提案されている。また、下記の特許文献2では、燃料電池の停止時に、還元ガス(水素)を用いて高温状態でのアノードを還元ガスでパージする方法が提案されている。いずれも、起動時あるいは停止時のアノード酸化防止を目的とした提案である。ただし、特許文献2はボンベを追設する方式である。
【0010】
また、下記の特許文献3、4に記載の従来技術では、燃料電池アノードに直接的に水素ガスを供給して発電するシステムとして、水素化金属を用いた化学反応により水素素を発生させて燃料とする技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【文献】特開2009-283188号公報
【文献】特開2018-186004号公報
【文献】特開2006-298670号公報
【文献】特開2009-099534号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
ところで、燃料電池システムにおいて、改質反応器のみを用いてアノードに供給する水素を含む燃料ガスを生成する場合には、次の課題がある。
【0013】
すなわち、システム停止中のアノード内の雰囲気である。燃料電池システムの運転中は、燃料ガスが通るアノードを含む経路は、水素を主成分とする燃料ガスで満たされている。しかし、燃料電池システムを停止させる際は、燃料電池の劣化防止などの対策上、窒素、空気、水蒸気などでパージする。窒素でパージする場合には、窒素の外部供給。またはボンベを追設する必要があり追加費用、管理の手間が発生する。このため、一般的には水蒸気でパージしてから降温後に空気でパージするか、空気でパージする方法が採用される。しかし、何れの場合も空気でパージすることで、システムの停止中はアノード内が酸化雰囲気になる。
【0014】
次に、停止状態からの起動を考える。燃料電池部は、例えば300℃以上になれば、起電力が発生する状態になるものの、その際に改質反応器から水素を含む燃料ガスが供給されてアノード内が酸化雰囲気から還元雰囲気になっていないと、前述のように、アノードにおいてNiの酸化が起こり、燃料電池部の劣化が起こる可能性がある。したがって、システムの停止状態から定常運転に移行する際には、アノード系内は還元雰囲気に置換されている必要がある。
【0015】
前述の特許文献1においては、燃料ガスを改質反応器で改質し、アノード系内を還元雰囲気にした上でシステムを起動する技術が開示されているが、改質反応器で改質反応により水素を発生させる上では、水蒸気を必要とするため、事前に気化器等を加熱して水蒸気を発生させるとともに、改質反応を起こす部分も高温にして始めて改質反応により水素を得ることができる。
【0016】
すなわち、改質反応器に封入した改質触媒は、燃料ガスに対して炭素析出が起こる温度域(例えば200℃から400℃)が存在し、触媒の劣化につながるので、システム起動時には炭素析出が起こる温度域を速やかに通過させて昇温し、改質反応を起こして水素を発生する温度域(例えば400℃以上)に到達させることが好ましい。
【0017】
しかし、実際には、改質反応器には熱容量があるので、所定温度まで短時間の内に昇温するのは容易ではない。したがって、改質反応器を用いてアノード内を還元雰囲気にした状態で、燃料電池部で起電力を発生させる状態にするまでには時間を要し、燃料電池システムを速やかに起動するのが難しいという課題がある。
【0018】
一方、燃料電池システムにおいて、水素化金属のみを用いてアノードに供給する水素を含む燃料ガスを生成する場合には、次の課題がある。
【0019】
すなわち、先の特許文献3、4では、水素化金属を用いて水素を発生させて燃料電池を稼働するものであるが、システム起動時にアノード内を還元することを意図したものではなく、しかも、水素化金属は、稼働時間が長くなるほどその必要量が多くなるため、定常的に運用する場合には、水素化金属の補充等が必要になり経済的でないという課題がある。
【0020】
本願は、上記のような課題を解決するための技術を開示するものであり、システム起動時には、燃料電池部のアノード内を速やかに還元雰囲気に置換して燃料電池部の破損および劣化を防止するとともに、システムを定常運転する場合には、改質反応器を用いて所定の燃料ガスを改質反応させて水素を発生させることで、システム運用の低コスト化を図ることができる燃料電池システム、および燃料電池システムの運用方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0021】
本願に開示される燃料電池システムは、燃料ガスと酸化剤ガスを電気化学反応させることにより発電する燃料電池システムであって、外部から供給される燃料ガスを改質反応により水素を含む燃料ガスに改質する改質反応器と、水素を含む燃料ガスと酸化剤ガスとを用い、電気化学反応を起こすアノードとカソードを有する燃料電池部と、
前記改質反応を起こすための水蒸気を発生させる気化器と、前記アノードから排出される排ガスに含まれる水蒸気を凝縮する凝縮器と、前記凝縮器から供給される水と水素化金属とを反応させて水素を発生させる水素発生装置と、前記燃料電池部および前記改質反応器の温度を測定する温度センサとを備え、前記水素発生装置の水素の排出側は前記改質反応器を介して前記燃料電池部の前記アノードに接続され、前記水素発生装置の水素の排出側と水の供給側にはそれぞれ遮断弁が設けられ、かつ、前記温度センサで検出される温度に応じて前記遮断弁の開閉を制御する制御装置を備え、前記制御装置は、前記温度センサの検出出力に基づき、システム起動時には前記遮断弁を開いて前記水素発生装置で発生された水素を前記アノードに供給し、システム定常時には前記遮断弁を閉じて前記改質反応器で改質された水素を含む燃料ガスを前記アノードに供給する一方、前記改質反応器に対して外部から燃料ガスが供給されなくなった場合には、前記遮断弁を開放して前記凝縮器からの水を前記水素発生装置に供給して水素を生成し、生成した水素の最小限を前記改質反応器を介して前記燃料電池部に供給して運転を停止するものである
【0022】
また、本願に開示される燃料電池システムは、燃料ガスと酸化剤ガスを電気化学反応させることにより発電する燃料電池システムであって、外部から供給される燃料ガスを改質反応により水素を含む燃料ガスに改質する改質反応器と、水素を含む燃料ガスと酸化剤ガスとを用い、電気化学反応を起こすアノードとカソードを有する燃料電池部と、前記改質反応を起こすための水蒸気を発生させる気化器と、前記アノードから排出される排ガスに含まれる水蒸気を凝縮する凝縮器と、前記凝縮器から供給される水と水素化金属とを反応させて水素を発生させる水素発生装置と、前記燃料電池部および前記改質反応器の温度を測定する温度センサとを備え、前記水素発生装置の水素の排出側は前記改質反応器を介して前燃料電池部の前記アノードに接続され、前記水素発生装置の水素の排出側と水の供給側にはそれぞれ遮断弁が設けられ、かつ、前記温度センサで検出される温度に応じて前記遮断弁の開閉を制御する制御装置を備え、
さらに、前記アノードから排気される水素および前記アノードにおける燃料電池反応により生じる熱を共に熱交換する熱交換器を設けるとともに、前記制御装置は、前記温度センサの検出出力に基づき、システム起動時には前記遮断弁を開いて前記水素発生装置で発生された水素を前記アノードに供給し、システム定常時には前記遮断弁を閉じて前記改質反応器で改質された水素を含む燃料ガスを前記アノードに供給する一方、前記水素発生装置に対して、前記アノードから排気される水素および前記熱交換器で得られる熱を共に供給して水素生成時の逆反応を起こすことで反応生成物から水素化金属を再生するものである。
【0023】
また、本願に開示される燃料電池システムの運用方法は、
外部から供給される燃料ガスを改質反応により水素を含む燃料ガスに改質する改質反応器と、
水素を含む燃料ガスと酸化剤ガスとを用い、電気化学反応を起こすアノードとカソードを有する燃料電池部と、
前記改質反応を起こすための水蒸気を発生させる気化器と、
前記アノードから排出される排ガスに含まれる水蒸気を凝縮する凝縮器と、
前記凝縮器から供給される水と水素化金属とを反応させて水素を発生させる水素発生装置と、
前記燃料電池部および前記改質反応器の温度を測定する温度センサとを備え、
前記水素発生装置の水素の排出側は前記改質反応器を介して前記燃料電池部の前記アノードに接続され、
前記水素発生装置の水素の排出側と水の供給側にはそれぞれ遮断弁が設けられ、かつ、前記温度センサで検出される温度に応じて前記遮断弁の開閉を制御する制御装置を備え、
前記制御装置は、前記温度センサの検出出力に基づき、システム起動時には前記遮断弁を開いて前記水素発生装置で発生された水素を前記アノードに供給し、システム定常時には前記遮断弁を閉じて前記改質反応器で改質された水素を含む燃料ガスを前記アノードに供給する燃料電池システムを用い、
前記改質反応器に対して外部から燃料ガスが供給されなくなった場合には、前記水素発生装置で生成する水素を用いて最小限の水素を流して運転を停止する。
【0025】
また、本願に開示される燃料電池システムの運用方法は、
外部から供給される燃料ガスを改質反応により水素を含む燃料ガスに改質する改質反応器と、
水素を含む燃料ガスと酸化剤ガスとを用い、電気化学反応を起こすアノードとカソードを有する燃料電池部と、
前記改質反応を起こすための水蒸気を発生させる気化器と、
前記アノードから排出される排ガスに含まれる水蒸気を凝縮する凝縮器と、
前記凝縮器から供給される水と水素化金属とを反応させて水素を発生させる水素発生装置と、
前記燃料電池部および前記改質反応器の温度を測定する温度センサとを備え、
前記水素発生装置の水素の排出側は前記改質反応器を介して前記燃料電池部の前記アノードに接続され、
前記水素発生装置の水素の排出側と水の供給側にはそれぞれ遮断弁が設けられ、かつ、前記温度センサで検出される温度に応じて前記遮断弁の開閉を制御する制御装置を備え、
さらに、前記アノードから排気される水素および前記アノードにおける燃料電池反応により生じる熱を共に熱交換する熱交換器を設けるとともに、
前記制御装置は、前記温度センサの検出出力に基づき、システム起動時には前記遮断弁を開いて前記水素発生装置で発生された水素を前記アノードに供給し、システム定常時には前記遮断弁を閉じて前記改質反応器で改質された水素を含む燃料ガスを前記アノードに供給する燃料電池システムを用い、
前記水素発生装置に対して、前記アノードから排気される水素および前記アノードにおける燃料電池反応により生じる熱を共に供給して水素生成時の逆反応を起こすことで反応生成物から水素化金属を再生する。
【発明の効果】
【0026】
本願に開示される燃料電池システムによれば、アノード内を速やかに還元雰囲気に置換してシステムを短時間で起動できると共にシステム運用の低コスト化を図ることができる。
【0027】
本願に開示される燃料電池システムおよびその運用方法によれば、セルの破損および劣化を確実に防止することができるとともに、改質反応器に対して外部から燃料ガスが供給されなくなった場合でも、システムを支障なく停止することができる。
【0029】
本願に開示される燃料電池システムおよびその運用方法によれば、水素化金属の容量に制限があっても、長期にわたって使用を継続できる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】本願の実施の形態1の燃料電池システムを示す構成図である。
図2図1の燃料電池システムの運用方法を示すフローチャートである。
図3】本願の実施の形態2、3の燃料電池システムを示す構成図である。
図4】本願の実施の形態4の燃料電池システムを示す構成図である。
図5】本願の実施の形態5の燃料電池システムを示す構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
実施の形態1.
図1は実施の形態1の燃料電池システムを示す構成図である。
この実施の形態1による燃料電池システムの最大の特徴は、燃料ガスを改質反応により水素を生成する改質反応器20、および水素化金属32を用いて水素を発生させる水素発生装置31が併設されており、システム運用に際して両者20、31を切り替えて使用できるようにしていることである。
【0032】
具体的な構成として、この燃料電池システムは、電気化学反応を起こすアノード11とカソード12を有する燃料電池部10、外部から供給される燃料ガスを改質反応により水素を含む燃料ガスに改質する改質反応器20、アノード11から排出される排ガスに含まれる水蒸気を凝縮する凝縮器23、この凝縮器23で凝縮して得られる水を貯めるタンク22、およびタンク22から供給される水から改質反応器20において改質反応を起こすために必要な水蒸気を発生させる気化器21を備えている。
【0033】
ここに、上記の燃料電池部10は、ここでは固体酸化物形燃料電池であって、固体酸化物電解質を挟んで、電気的に負極となるアノード11および電気的に正極となるカソード12を有する。そして、アノード11に水素を含む燃料ガスを、また、カソード12に空気などの酸化剤ガスをそれぞれ供給することで、カソード12から生じた酸素イオンが固体酸化物電解質を通してアノード11に達し、このアノード11の触媒上で水素と酸素イオンとが電気化学反応することで、化学エネルギーを電気エネルギーに変換して起電力が発生される。
【0034】
また、上記の改質反応器20は、その内部に改質触媒(例えば、Ni、Pt、Rnなど)が封入されており、この改質触媒の作用によって、外部から供給される燃料ガス(例えば都市ガス、天然ガスなど)と水蒸気により水素を生成する改質反応を起こす。
【0035】
さらに、この実施の形態1では、タンク22から送られる水と内部に包含された水素化金属32を反応させて水素を発生させる水素発生装置31を備えている。この水素発生装置31の内部に包含されている水素化金属32として、例えば、LiH、BeH、NaH、MgH、KH、CaH、RbH、SrHなどが適用される。そして、この水素発生装置31の水素の排出側と水の供給側の前後の出入口にはそれぞれの通路を遮断または開放する遮断弁33、34が設けられている。
【0036】
また、この実施の形態1では、燃料電池部10および改質反応器20には、その温度を測定する温度センサ41、42がそれぞれ設けられるとともに、各々の温度センサ41、42で検出される温度に応じて遮断弁33、34の開閉を制御する制御装置51を備えている。
【0037】
なお、符合35は外部からの燃料ガスの供給を遮断する遮断弁である。また、ここでは燃料電池システムの内、改質反応器20、燃料電池部10のアノード11、凝縮器23、タンク22、および気化器21を経て再び改質反応器20に至る経路を、便宜上、アノード系経路と称する。
【0038】
次に、この実施の形態1における燃料電池システムを運用する場合の動作について、図2に示すフローチャートを参照して説明する。なお、図2中、符号Sは各処理ステップを意味する。
【0039】
燃料電池システムの停止時には、アノード系経路内にある改質反応器20、アノード11、凝縮器23、タンク22の内部は、空気、あるいは水蒸気など酸化剤ガスが混入しており、アノード11の表面は酸化雰囲気にさらされている。なお、アノード系経路内の空気、あるいは水蒸気は、常圧、常温で存在しているものとする。また、このとき、改質反応器20および燃料電池部10は、昇温されていないので、制御装置51により、遮断弁33、34、35は閉じられている。
【0040】
燃料電池システムの起動が開始されると(S1)、先ず、制御装置51により、改質反応器20および燃料電池部10を図示しないヒータなどの昇温手段により昇温を開始するとともに(S2)、水素発生装置31の前後の遮断弁33、34を共に開放して、タンク22から水を水素発生装置31に供給する。そして、供給した水と水素発生装置31に封入した水素化金属とを反応させて水素を発生させ、生成された水素を遮断弁34、および改質反応器20を経由して燃料電池部10のアノード11に供給し、アノード11を含むアノード系経路内を還元雰囲気に置換する(S3)。このようにしてアノード系経路内を還元雰囲気に置換した状態を保ち、改質反応器20および燃料電池部10の昇温を継続する(S4)。
【0041】
ここで、いま、アノード系経路内に存在する空気を全て水素に置換するとした場合の容量を、例えば5リットルと想定する。そして、この容量5リットルの水素を発生するのに必要となる水素化金属32(例えば水素化カルシウムの場合)の体積は、その3倍を要するものと想定すると、水素化カルシウムは標準状態において約14.1グラム、水は約12.1グラムが必要となる。水素化カルシウムの密度を約1.7グラム毎cmとすると、約8.3cm分の体積になる。
【0042】
次に、改質反応器20と燃料電池部10の昇温過程について説明する。
改質反応器20は、燃料ガスを燃焼させ直接昇温させることができる仕様であることが多く、一方、燃料電池部10は、加熱した酸化剤ガスおよび燃料ガスを流すことにより、熱交換で昇温させる。そのため、一般的に改質反応器20と燃料電池部10の昇温速度を比較すると、改質反応器20は燃料電池部10よりも早く昇温させることができる。
【0043】
改質反応器20での改質反応は、例えば400℃程度から反応が進むのに対し、燃料電池部10で生じる起電力は、例えば300℃程度から燃料電池反応が起こって起電力が発生する。起電力が発生している場合には、燃料電池部10において、アノード11では水素が、カソード12では酸素が消費されることになる。もし、燃料電池部10で燃料電池反応が起こる状態でアノード11の水素が不足した場合には、カソード12から酸素イオンがアノード11に移動した際、電極境界付近のアノード11に含まれるNiが酸化されることになる。
【0044】
そこで、上記のような不具合発生を防止するため、制御装置51は、燃料電池部10および改質反応器20の温度を温度センサ41、42でそれぞれ検出し、その検出出力に基づいて遮断弁33、34、35の開閉を制御する。
【0045】
すなわち、制御装置51は、先ず、改質反応器20の温度TRを検出し、この温度TRが予め設定されたしきい値TRs(例えば400℃)以上になっているかどうかを判定する(S5)。改質反応器20の温度TRがしきい値TRs以下(TR<TRs)の場合には、改質反応器20での改質反応が起こる温度域に未だ到達していないので、遮断弁35を閉じたままとし、外部からの燃料ガスの供給を遮断する。
【0046】
続いて、制御装置51は、燃料電池部10の温度TFを検出し、この温度TFが予め設定されたしきい値TFs(例えば300℃)以上になっているかどうかを判定する(S6)。燃料電池部10の温度TFがしきい値TFs未満(TF<TFs)の場合には、燃料電池部10での燃料電池反応が起こる温度域に未だ到達していないので、燃料電池部10の昇温を継続する。
【0047】
一方、先のS6で、燃料電池部10の温度TFが予め設定されたしきい値TFs以上(TF≧TFs)になっておれば、燃料電池部10で燃料電池反応が起こって起電力が発生する状態になっているものの、改質反応器20の温度TRは、未だしきい値TRs未満(TR<TRs)であるので、改質反応器20から水素を含む燃料ガスを供給可能な温度域ではない。したがって、そのままではアノード11の水素が不足してアノード11に含まれるNiが酸化される恐れがある。そのため、制御装置51は、遮断弁33、34を開いた状態を保ち、水素発生装置31から継続して水素を発生させて遮断弁34および改質反応器20を経由して燃料電池部10のアノード11に供給し、アノード11を含むアノード系経路内を還元雰囲気に保持する(S7)。
【0048】
一方、先のS5で改質反応器20の温度TRが予め設定されたしきい値TRs以上(TR≧TRs)になっている場合、改質反応器20は、改質反応を起こして燃料電池部10を還元雰囲気に保持できる温度域に到達しており、かつ、前述のように燃料電池部10の温度TFも予め設定されたしきい値TFsの温度以上になっていて、燃料電池反応による起電力が発生できると考えられる。このため、制御装置51は、遮断弁35を開き、外部からの燃料ガスを改質反応器20に供給して改質反応を開始するとともに(S8)、遮断弁33、34を共に閉じて水素発生装置31からの水素供給を停止して(S9)、定常運転を開始する(S10)。
【0049】
この定常運転では、改質反応器20により外部から供給される燃料ガスが改質反応により、水素を含む燃料ガスに改質され、この改質反応された燃料ガスが燃料電池部10のアノード11に供給され、また、カソード12には酸化剤ガス(例えば空気)が供給される。このように、アノード11内は還元雰囲気になっているので、アノード11のNiが酸化されることなく燃料電池反応により起電力が発生される。
【0050】
このような定常運転では、燃料電池部10のアノード11からは燃料電池反応に寄与した残りの燃料ガスおよび燃料電池反応により生じた水蒸気が排出される。そして、アノード11から排出される排気ガスの内、水蒸気は凝縮器23で凝縮されて水が生成され後、タンク22に蓄積され、他の残りの排気ガスは外部に排出される。続いて、タンク22に蓄積された水は、気化器21により水蒸気に変化されて改質反応器20に供給されて改質反応に利用される。なお、凝縮器23において凝縮されて脱水された排出ガスに含まれる水素は、改質反応器20に戻してリサイクルするようにしてもよい。
【0051】
定常運転の終了条件が満たされる場合には(S11)、燃料電池システムの運転を停止する(S12)。
【0052】
以上のように、この実施の形態1では、システム起動時には、水素発生装置31を用いて水素を発生させて、燃料電池部10のアノード11内を速やかに還元雰囲気に置換する。これにより、システムを短時間で起動できると共に、アノードの還元を目的とした水素の発生により、燃料電池部10のセルの破損および劣化を防止できる。一方、システムを定常運転する場合には、水素発生装置31からの水素発生を停止し、改質反応器20を用いて外部から供給される燃料ガスを改質反応させて水素を発生させることで、アノード11内の還元雰囲気を保ちつつ燃料電池反応よる起電力を発生させるので、システム運用の低コスト化を図ることができる。
【0053】
実施の形態2.
上記実施の形態1では、水素発生装置31をシステム起動時におけるアノード系内の還元を行う目的にのみ使用したが、図3に示すように、外部から燃料電池システムに供給される燃料ガスが災害、事故などの要因で遮断された場合、制御装置51は、遮断弁35を閉じる。一方、遮断弁33、34を共に開放し、タンク22の水を水素発生装置31に供給して水素化金属32との加水分解反応で水素を発生させ、生成した水素ガスを、改質反応器20を経由して燃料電池部10のアノード11に対して燃料ガスとして供給しながら、アノード11の劣化を回避しつつシステムを支障なく停止させる。
【0054】
システムが定常運転をしているとき、改質反応器20は600℃で、また燃料電池部10は700℃から1000℃の状態で運転されている。一般的に改質反応器20はステンレス等の材質が使用され、燃料電池部10のセルスタックはセラミックス系の材料が使用されている。したがって、改質反応器20の方が燃料電池部10よりも熱容量が小さいため、外部からの燃料ガスの供給が途絶えて定常運転を停止した場合には、改質反応器20の方が燃料電池部10よりも温度低下が早い。そのため、改質反応器20の温度TRが改質反応の起こるしきい値TRs未満(TR<TRs)であるが、燃料電池部10の温度TFが起電力を発生するしきい値TFs以上(TF≧TFs)である状態が発生する可能性がある。
【0055】
その際、アノード系経路が還元雰囲気を保っていなければ、アノード11の劣化が発生する可能性があるため、水素発生装置31から水素を供給することで、アノード11の劣化を回避しつつ、システムを何ら支障なく停止させることができる。
【0056】
実施の形態3.
上記の実施の形態2では、水素発生装置31を用いてシステムを支障なく停止できる手段を提案した。この実施の形態3では、図3に示すように、外部から燃料電池システムに供給される燃料ガスが災害、事故などの不慮の要因で遮断された場合には、制御装置51は、遮断弁35を閉じる。一方、遮断弁33、34を開放し、タンク22の水を水素発生装置31に供給して水素化金属32との加水分解反応で水素を発生させ、生成した水素ガスを改質反応器20を経由して燃料電池部10のアノード11に対して燃料ガスとして供給する。
【0057】
その際、システムが定常運転している状態で、外部から燃料電池システムに供給される燃料ガスが途絶えると、遮断弁35が閉じられて改質反応器20が停止されて、水素発生装置31からの水素ガスの供給に切り替えられるが、その場合は、燃料電池部10による燃料電池反応による自己発熱により、燃料電池反応に必要な熱が供給される。一方、システム停止状態から水素発生装置31からの水素ガスの供給に切り替える場合には、燃料電池部10には昇温手段を設ける必要がある。
【0058】
なお、水素発生装置31は、システム起動時に燃料電池部10のアノード11を還元雰囲気に保つのが主目的であるので、水素発生装置31の水素化金属は、燃料電池システムを定常運転するための水素を供給できるだけの容量を内包していない。したがって、水素発生装置31は、外部からの燃料ガスの供給が災害、事故などの要因で遮断されるなどの非常時などの事態に限定的に使用されるのが好ましく、システムが正常状態に復帰すれば、遮断弁33、34が共に閉じられるとともに、遮断弁35が開かれて外部からの燃料ガスが改質反応器20に供給される。
【0059】
以上のように、この実施の形態3では、改質反応器20に対して外部から燃料ガスが供給されなくなった場合でも、水素発生装置31で生成する水素を燃料電池部10に燃料ガスとして供給して起電力を発生できるので、システム運用を支障なく継続できる。
【0060】
実施の形態4.
上記実施の形態1では、システム起動時に水素発生装置31を用いてアノード系経路を還元雰囲気に置換する場合について説明したが、この実施の形態4では、図4に示すように、加水分解した水素化金属を再生する技術について説明する。
【0061】
この実施の形態4における燃料電池システムでは、実施の形態1(図1)の構成に対して、カソード12からの排気ガスと凝縮器23で得られる水素ガスとを熱交換する熱交換器24を設けている。
【0062】
そして、定常運転時に、制御装置51により遮断弁34を開き、燃料電池部10のアノード11および凝縮器23、熱交換器24を通過して得られる加熱された水素ガスを水素発生装置31に供給する。
【0063】
すなわち、アノード11を通過した排気ガスには、水素ガスおよび水蒸気が含まれるが、水蒸気は凝縮器23で水に凝縮されるため、凝縮器23で脱水した後の排気ガスに含まれる水素ガスの温度も下がっている。したがって、凝縮器23を通過して得られた水素ガスを熱交換器24に導き、この熱交換器24でカソード12からの高温の排気ガスと熱交換することで、水素ガスの再加熱を行う。そして、昇温された水素ガスを水素発生装置31に供給することで、反応式(1)に例示した水素化金属と水の反応で生じた反応生成物に対する逆反応が生じて水素化金属が再生される。
【0064】
ここに、反応式(1)に例示した水素化金属と水の加水分解反応は発熱反応であるが、その逆反応は吸熱反応の可逆反応である。したがって、熱交換器24で水素を昇温して高温の水素を水素発生装置31に供給することで、加水分解した水素化金属32の再生が可能となる。
【0065】
特に、固体酸化物形燃料電池の場合には、アノード11からの排気ガスの温度は、600℃以上を見込むことができるため、水素発生装置31において水素化金属32を生成する逆反応に必要な熱はヒータ等で外部から供給する必要がない。また、高温のカソード12からの排気ガスを利用することにより、水素発生装置31の経済性の向上を図ることができる。
【0066】
以上のように、この実施の形態4では、アノード11から排気される水素およびアノード11における燃料電池反応により生じる熱を共に水素発生装置31に供給して水素化金属32を再生できる。このため、水素化金属32の容量に制限があっても、長期にわたって使用を継続できる。
【0067】
実施の形態5.
上記実施の形態4では、水素発生装置31において水素化金属32を再生するために、凝縮器23で脱水した後の排気ガスに含まれる水素ガスの再加熱を、熱交換器24でカソード12からの排気ガスと熱交換することで実現した。
【0068】
これに対して、この実施の形態5では、図5に示すように、アノード11からの排気ガスと凝縮器23で脱水した後の排気ガスに含まれる水素ガスとを熱交換する熱交換器25を設けている。
【0069】
これにより、アノード11からの排気ガスで、凝縮器23で脱水した後の排気ガスに含まれる水素ガスを熱交換器25で熱交換して昇温し、昇温した水素ガスを水素発生装置31に供給する。その結果、実施の形態4の場合と同様、前述の反応式(1)に例示した水素化金属32と水の反応の逆反応が生じて水素化金属32が再生される。
【0070】
以上のように、この実施の形態5では、実施の形態4と同様に、アノード11から排気される水素およびアノード11における燃料電池反応により生じる熱を共に水素発生装置31に供給して水素化金属32を再生でき、水素化金属32の容量に制限があっても、長期にわたって使用を継続できる。更に、凝縮器23で必要な熱交換量が減るため、凝縮器23の縮小化による経済性向上を図ることができる。
なお、本願は、様々な例示的な実施の形態1~5が記載されているが、複数の実施の形態に記載された様々な特徴、態様、および機能は、特定の実施の形態の適用に限られるものではなく、単独で、または様々な組み合わせで実施の形態に適用可能である。
【0071】
従って、例示されていない無数の変形例が、本願に開示される技術の範囲内において想定される。例えば、少なくとも一つの構成要素を変形する場合、追加する場合、または省略する場合、(さらには、少なくとも一つの構成要素を抽出し、他の実施の形態の構成要素と組み合わせる場合)が含まれものとする。
【符号の説明】
【0072】
10 燃料電池部、11 アノード、12 カソード、20 改質反応器、
21 気化器、22 タンク、23 凝縮器、24,25 熱交換器、
31 水素発生装置、32 水素化金属、33,34 遮断弁、
41,42 温度センサ、51 制御装置。
図1
図2
図3
図4
図5