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  • 特許-ポリイソシアネート組成物 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-07
(45)【発行日】2023-12-15
(54)【発明の名称】ポリイソシアネート組成物
(51)【国際特許分類】
   C08G 18/09 20060101AFI20231208BHJP
   C08G 18/28 20060101ALI20231208BHJP
   C08G 18/79 20060101ALI20231208BHJP
【FI】
C08G18/09 020
C08G18/28 015
C08G18/79 020
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2020055953
(22)【出願日】2020-03-26
(65)【公開番号】P2021155533
(43)【公開日】2021-10-07
【審査請求日】2022-12-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000005887
【氏名又は名称】三井化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103517
【弁理士】
【氏名又は名称】岡本 寛之
(74)【代理人】
【識別番号】100149607
【弁理士】
【氏名又は名称】宇田 新一
(72)【発明者】
【氏名】坂本 拡之
(72)【発明者】
【氏名】矢木 徹
(72)【発明者】
【氏名】宮嶋 敦浩
(72)【発明者】
【氏名】増井 昌和
(72)【発明者】
【氏名】山田 雅隆
(72)【発明者】
【氏名】高松 孝二
【審査官】宮内 弘剛
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-082076(JP,A)
【文献】国際公開第2015/060259(WO,A1)
【文献】特開2020-007450(JP,A)
【文献】特開2019-203061(JP,A)
【文献】特開2019-001868(JP,A)
【文献】特表2018-517013(JP,A)
【文献】特表2018-517012(JP,A)
【文献】国際公開第2018/181151(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G
C08K
C08L
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ペンタメチレンジイソシアネートと、炭素数8以上20未満の長鎖モノアルコールとの反応生成物を含み、イソシアヌレート基を含有するポリイソシアネート組成物であり、
前記ポリイソシアネート組成物は、3分子のペンタメチレンジイソシアネートを含有し、イソシアヌレート基を1つ含有するイソシアヌレート1核体を含み、
前記イソシアヌレート1核体の含有割合が、前記ポリイソシアネート組成物の総量に対して、5質量%以上35質量%以下であり、
前記ポリイソシアネート組成物は、1分子のペンタメチレンジイソシアネートと1分子の長鎖モノアルコールとからなるモノウレタン化合物を含み、
前記モノウレタン化合物の含有割合が、前記ポリイソシアネート組成物の総量に対して、10質量%以下である
ことを特徴とする、ポリイソシアネート組成物。
【請求項2】
前記ポリイソシアネート組成物は、
5分子のペンタメチレンジイソシアネートを含有し、イソシアヌレート基を2つ含有するイソシアヌレート2核体と、
7分子以上のペンタメチレンジイソシアネートを含有し、イソシアヌレート基を3つ含有するイソシアヌレート3核以上体と
を含み、
前記イソシアヌレート2核体の含有割合と、前記イソシアヌレート3核以上体の含有割合との総量が、前記ポリイソシアネート組成物の総量に対して、20質量%以下である
ことを特徴とする、請求項に記載のポリイソシアネート組成物。
【請求項3】
前記ポリイソシアネート組成物は、ペンタメチレンジイソシアネートのアロファネートを含み、
前記アロファネートは、2分子のペンタメチレンジイソシアネートを含み、アロファネート基を1つ含有するモノアロファネートと、3分子のペンタメチレンジイソシアネートを含み、アロファネート基を2つ含有するジアロファネートとを含み、
前記モノアロファネートの前記ポリイソシアネート組成物の総量に対する含有割合(モノアロファネート含有率)と、前記ジアロファネートの前記ポリイソシアネート組成物の総量に対する含有割合(ジアロファネート含有率)との総量(アロファネート含有率)に対する、
前記イソシアヌレート1核体の前記ポリイソシアネート組成物の総量に対する含有割合(イソシアヌレート1核体含有率)
の比(イソシアヌレート1核体含有率/アロファネート含有率)が、
0.40以上0.60以下であることを特徴とする、請求項1または2に記載のポリイソシアネート組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリイソシアネート組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリウレタン樹脂は、通常、ポリイソシアネートと活性水素基含有化合物との反応により製造されており、例えば、コーティング材料、接着材料、粘着材料、エラストマーなどとして、各種産業分野において広範に使用されている。
【0003】
ポリウレタン樹脂の製造に用いられるポリイソシアネートとしては、例えば、ジイソシアネート化合物と、炭素数10~50のモノアルコールとを、イソシアヌレート化触媒の存在下に反応させて得られる、イソシアヌレート環を有するポリイソシアネートが、提案されている。より具体的には、1,6-ヘキサメチレンジイソシアネートと、5-エチル-2-ノナールとを、イソシアヌレート化触媒の存在下で反応させたポリイソシアネートが、提案されている。また、このようなポリイソシアネートが、低極性溶剤(弱溶剤)に対する溶解性に優れることも、知られている(例えば、特許文献1(実施例1)参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平2-250872号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一方、特許文献1に記載のポリイソシアネートは、弱溶剤に対する溶解性が十分ではなく、近年、環境性の観点から、さらなる溶解性の向上が、要求される。
【0006】
これに対して、ヘキサメチレンジイソシアネートと反応するモノアルコールの種類などを選択し、弱溶剤に対する溶解性の向上を図ることも検討される。
【0007】
しかし、その場合には、十分な塗膜物性(耐久性など)を得られないという不具合がある。
【0008】
本発明は、弱溶剤に対する溶解性に優れ、物性に優れた塗膜を得られるポリイソシアネート組成物である。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明[1]は、ペンタメチレンジイソシアネートと、炭素数8以上20未満の長鎖モノアルコールとの反応生成物を含み、イソシアヌレート基を含有するポリイソシアネート組成物であり、前記ポリイソシアネート組成物は、3分子のペンタメチレンジイソシアネートを含有し、イソシアヌレート基を1つ含有するイソシアヌレート1核体を含み、前記イソシアヌレート1核体の含有割合が、前記ポリイソシアネート組成物の総量に対して、5質量%以上35質量%以下である、ポリイソシアネート組成物を含んでいる。
【0010】
本発明[2]は、前記ポリイソシアネート組成物は、1分子のペンタメチレンジイソシアネートと1分子の長鎖モノアルコールとからなるモノウレタン化合物を含み、前記モノウレタン化合物の含有割合が、前記ポリイソシアネート組成物の総量に対して、10質量%以下である、上記[1]に記載のポリイソシアネート組成物を含んでいる。
【0011】
本発明[3]は、前記ポリイソシアネート組成物は、5分子のペンタメチレンジイソシアネートを含有し、イソシアヌレート基を2つ含有するイソシアヌレート2核体と、7分子以上のペンタメチレンジイソシアネートを含有し、イソシアヌレート基を3つ含有するイソシアヌレート3核以上体とを含み、前記イソシアヌレート2核体の含有割合と、前記イソシアヌレート3核以上体の含有割合との総量が、前記ポリイソシアネート組成物の総量に対して、20質量%以下である、上記[1]または[2]に記載のポリイソシアネート組成物。
【0012】
本発明[4]は、前記ポリイソシアネート組成物は、ペンタメチレンジイソシアネートのアロファネートを含み、前記アロファネートは、2分子のペンタメチレンジイソシアネートを含み、アロファネート基を1つ含有するモノアロファネートと、3分子のペンタメチレンジイソシアネートを含み、アロファネート基を2つ含有するジアロファネートとを含み、前記モノアロファネートの前記ポリイソシアネート組成物の総量に対する含有割合(モノアロファネート含有率)と、前記ジアロファネートの前記ポリイソシアネート組成物の総量に対する含有割合(ジアロファネート含有率)との総量(アロファネート含有率)に対する、前記イソシアヌレート1核体の前記ポリイソシアネート組成物の総量に対する含有割合(イソシアヌレート1核体含有率)の比(イソシアヌレート1核体含有率/アロファネート含有率)が、0.40以上0.60以下である、上記[1]~[3]のいずれか一項に記載のポリイソシアネート組成物。
【発明の効果】
【0013】
本発明のポリイソシアネート組成物は、弱溶剤に対する溶解性に優れ、また、優れた物性を有する塗膜を形成できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図1は、本発明のポリイソシアネート組成物をゲルパーミエーションクロマトグラフ測定したときのクロマトグラムの一例である。
図2図2は、実施例1のポリイソシアネート組成物をゲルパーミエーションクロマトグラフ測定したときのクロマトグラムである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明のポリイソシアネート組成物は、ペンタメチレンジイソシアネート(後述)と、炭素数8以上20未満の長鎖モノアルコール(後述)との反応生成物を含み、イソシアヌレート基を含有している。
【0016】
すなわち、本発明のポリイソシアネート組成物は、ペンタメチレンジイソシアネート(後述)のイソシアヌレートを含んでいる。
【0017】
イソシアヌレートは、3つのイソシアネート基からなる対称イソシアヌレート基および/または非対称イソシアヌレート基(イミノオキサジアジンジオン基)を、分子中に1つ(1核)以上含有する変性体である。
【0018】
なお、対称イソシアヌレート基を含有する変性体(対称イソシアヌレート変性体)と、非対称イソシアヌレート基を含有する変性体(イミノオキサジアジンジオン変性体)とは、構造異性体である。そのため、対称イソシアヌレート変性体の生成時において、副生物としてイミノオキサジアジンジオン変性体が生じる場合があり、また、イミノオキサジアジンジオン変性体の生成時において、副生物として対称イソシアヌレート変性体が生じる場合がある。
【0019】
以下において、対称イソシアヌレート基または非対称イソシアヌレート基(イミノオキサジアジンジオン基)を、分子中に1つのみ含有する変性体を、「イソシアヌレート1核体」と称する。
【0020】
なお、イソシアヌレート1核体は、イソシアネート3分子体(3分子のイソシアネートからなる変性体)である。
【0021】
また、対称イソシアヌレート基または非対称イソシアヌレート基(イミノオキサジアジンジオン基)を、分子中に2つ(2核)以上含有する変性体を、「イソシアヌレート多核体」と称する。
【0022】
イソシアヌレート多核体としては、イソシアヌレートn核体(n:2以上の整数)が挙げられ、具体的には、イソシアヌレート2核体(イソシアネート5分子体(5分子のイソシアネートからなる変性体))、イソシアヌレート3核体(イソシアネート7分子体(7分子のイソシアネートからなる変性体))などが挙げられる。
【0023】
そして、ポリイソシアネート組成物は、ペンタメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート1核体を、後述する所定割合で含有する。
【0024】
また、ポリイソシアネート組成物は、好ましくは、上記イソシアヌレートとともに、ペンタメチレンジイソシアネートのアロファネートを含んでいる。
【0025】
アロファネートとは、分子中に1つ以上のアロファネート基を含有する変性体である。
【0026】
以下において、アロファネート基を、分子中に1つのみ含有する変性体を、「モノアロファネート」と称する。また、アロファネート基を、分子中に2つ含有する変性体を、「ジアロファネート」と称する。
【0027】
このようなポリイソシアネート組成物は、ペンタメチレンジイソシアネートと長鎖モノアルコールとを、後述の方法で反応させることにより、得ることができる。
【0028】
ペンタメチレンジイソシアネートとしては、1,2-ペンタメチレンジイソシアネート(1,2-ペンタンジイソシアネート)、1,3-ペンタメチレンジイソシアネート(1,3-ペンタンジイソシアネート)、1,4-ペンタメチレンジイソシアネート(1,4-ペンタンジイソシアネート)、1,5-ペンタメチレンジイソシアネート(1,5-ペンタンジイソシアネート)などのペンタメチレンジイソシアネート単量体が挙げられる。
【0029】
これらペンタメチレンジイソシアネートは、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0030】
ペンタメチレンジイソシアネートとして、好ましくは、1,5-ペンタメチレンジイソシアネート(1,5-ペンタンジイソシアネート)が挙げられる。
【0031】
長鎖モノアルコールとしては、炭素数8以上20未満の長鎖モノアルコールが挙げられる。すなわち、長鎖モノアルコールとしては、炭素数8以上19以下の長鎖モノアルコールが挙げられる。なお、以下において、炭素数8以上20未満の長鎖モノアルコールを、単に、長鎖モノアルコールと称する場合がある。
【0032】
長鎖モノアルコールとしては、例えば、炭素数8以上20未満の直鎖状モノアルコール、炭素数8以上20未満の分岐鎖状モノアルコールなどが挙げられる。
【0033】
炭素数8以上20未満の直鎖状モノアルコールとしては、例えば、n-オクタノール、n-ノナノール、n-デカノール、n-ウンデカノール、n-ドデカノール(ラウリルアルコール)、n-トリデカノール、n-テトラデカノール、n-ペンタデカノール、n-ヘプタデカノール、n-オクタデカノール(ステアリルアルコール)、n-ノナデカノールなどが挙げられる。これらは、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0034】
炭素数8以上20未満の分岐鎖状モノアルコールとしては、例えば、2-エチルヘキサノール、5-エチル-2-ノナノール、トリメチルノナノール、2-ヘキシルデカノール、2-エチルヘキシルデカノール、3,9-ジエチル-6-トリデカノール、2-イソヘプチルイソウンデカノール、2-オクチルドデカノールなどが挙げられる。これらは、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0035】
これら長鎖モノアルコールは、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0036】
長鎖モノアルコールの炭素数(2種類以上の長鎖モノアルコールが併用される場合、平均炭素数)は、弱溶剤に対する溶解性の観点から、上記の通り、8以上、好ましくは、9以上、より好ましくは、10以上、さらに好ましくは、11以上であり、塗膜物性の観点から、20未満、好ましくは、19以下、より好ましくは、18以下、さらに好ましくは、16以下、とりわけ好ましくは、14以下である。
【0037】
また、長鎖モノアルコールとして、好ましくは、直鎖状モノアルコールが挙げられる。
【0038】
長鎖モノアルコールとして、より好ましくは、炭素数8以上18以下の直鎖状モノアルコールが挙げられ、より好ましくは、炭素数10以上16以下の直鎖状モノアルコールが挙げられ、さらに好ましくは、炭素数11以上14以下の直鎖状モノアルコールが挙げられ、とりわけ好ましくは、炭素数12の直鎖状モノアルコール(すなわち、ラウリルアルコール)が挙げられる。
【0039】
本発明のポリイソシアネート組成物では、ペンタメチレンジイソシアネートと長鎖モノアルコールとの反応は、例えば、ウレタン化反応およびイソシアヌレート化反応を含む。
【0040】
より具体的には、ペンタメチレンジイソシアネートと長鎖モノアルコールとの反応において、好ましくは、まず、ペンタメチレンジイソシアネートと長鎖モノアルコールとをウレタン化反応させ、次いで、得られるウレタン化反応液を、イソシアヌレート化触媒の存在下でイソシアヌレート化反応させる。
【0041】
長鎖モノアルコールの配合割合は、ペンタメチレンジイソシアネート100質量部に対して、例えば、1質量部以上、好ましくは、5質量部以上であり、例えば、50質量部以下、好ましくは、20質量部以下である。
【0042】
また、長鎖モノアルコールのヒドロキシ基に対する、ペンタメチレンジイソシアネートのイソシアネート基の当量比(NCO/OH)が、例えば、1.5以上、好ましくは、2以上、より好ましくは、5以上、さらに好ましくは、10以上であり、例えば、100以下、好ましくは、50以下、より好ましくは、35以下、さらに好ましくは、25以下である
ウレタン化反応の反応条件としては、例えば、窒素ガスなどの不活性ガス雰囲気、常圧(大気圧)下において、例えば、室温(25℃)以上、好ましくは、40℃以上、例えば、100℃以下、好ましくは、90℃以下であり、混合時間は、例えば、30分以上、好ましくは、2時間以上、例えば、10時間以下、好ましくは、6時間以下である。
【0043】
また、上記ウレタン化反応においては、必要に応じて、例えば、アミン類や有機金属化合物などの公知のウレタン化触媒を、適宜の割合で添加してもよい。
【0044】
アミン類としては、例えば、トリエチルアミン、トリエチレンジアミン、ビス-(2-ジメチルアミノエチル)エーテル、N-メチルモルホリンなどの3級アミン類、例えば、テトラエチルヒドロキシルアンモニウムなどの4級アンモニウム塩、例えば、イミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾールなどのイミダゾール類などが挙げられる。
【0045】
有機金属化合物としては、例えば、酢酸錫、オクチル酸錫、オレイン酸錫、ラウリル酸錫、ジブチル錫ジアセテート、ジメチル錫ジラウレート、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫ジメルカプチド、ジブチル錫マレエート、ジブチル錫ジラウレート(ジラウリン酸ジブチル錫(IV))、ジブチル錫ジネオデカノエート、ジオクチル錫ジメルカプチド、ジオクチル錫ジラウリレート、ジブチル錫ジクロリドなどの有機錫系化合物、例えば、オクタン酸鉛、ナフテン酸鉛などの有機鉛化合物、例えば、ナフテン酸ニッケルなどの有機ニッケル化合物、例えば、ナフテン酸コバルトなどの有機コバルト化合物、例えば、オクテン酸銅などの有機銅化合物、例えば、オクチル酸ビスマス、ネオデカン酸ビスマスなどの有機ビスマス化合物などが挙げられる。
【0046】
さらに、ウレタン化触媒として、例えば、炭酸カリウム、酢酸カリウム、オクチル酸カリウムなどのカリウム塩が挙げられる。
【0047】
これらウレタン化触媒は、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0048】
これにより、ペンタメチレンジイソシアネートと長鎖モノアルコールとのウレタン化反応生成物を含む、ウレタン化反応液が得られる。
【0049】
次いで、この方法では、イソシアヌレート化触媒をウレタン化反応液に配合し、ペンタメチレンジイソシアネートに由来するイソシアネート基を、イソシアヌレート化反応させる。
【0050】
イソシアヌレート化触媒としては、イソシアヌレート化を活性化する触媒であれば、特に限定されず、例えば、トリエチルアミン、トリブチルアミン、トリエチレンジアミン、2級アミン共重合体(例えば、ジアルキルアミンなどの2級アミン、および、2級アミンと共重合可能な単量体(例えば、フェノール、ホルムアルデヒドなど)の重縮合物)などの3級アミン、例えば、2-ジメチルアミノメチルフェノール、2,4,6-トリス(ジメチルアミノメチル)フェノールなどのマンニッヒ塩基、例えば、テトラメチルアンモニウム、テトラエチルアンモニウム、テトラブチルアンモニウムなどのテトラアルキルアンモニウムのハイドロオキサイドやその有機弱酸塩、例えば、トリメチルベンジルアンモニウム、トリブチルベンジルアンモニウムなどのトリアルキルアリールアンモニウムのハイドロオキサイドやその有機弱酸塩、例えば、トリメチルヒドロキシプロピルアンモニウム(別名:N-(2-ヒドロキシプロピル)-N,N,N-トリメチルアンモニウム)、トリメチルヒドロキシエチルアンモニウム、トリエチルヒドロキシプロピルアンモニウム、トリエチルヒドロキシエチルアンモニウムなどのトリアルキルヒドロキシアルキルアンモニウムのハイドロオキサイドやその有機弱酸塩、例えば、酢酸、カプロン酸、オクチル酸、ミリスチン酸、ナフテン酸などのアルキルカルボン酸の金属塩(例えば、アルカリ金属塩、マグネシウム塩、スズ塩、亜鉛塩、鉛塩など)、例えば、アルミニウムアセチルアセトン、リチウムアセチルアセトンなどのようなβ-ジケトンの金属キレート化合物、例えば、塩化アルミニウム、三フッ化ホウ素などのフリーデル・クラフツ触媒、例えば、チタンテトラブチレート、トリブチルアンチモン酸化物などの種々の有機金属化合物、例えば、ヘキサメチルシラザンなどのアミノシリル基含有化合物、二フッ化水素テトラブチルホスホニウムなどのハロゲン置換有機リン化合物などが挙げられる。
【0051】
これらイソシアヌレート化触媒は、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0052】
イソシアヌレート化触媒として、製造効率の観点から、好ましくは、テトラアルキルアンモニウムのハイドロオキサイド、トリアルキルヒドロキシアルキルアンモニウムのハイドロオキサイドが挙げられ、より好ましくは、テトラアルキルアンモニウムのハイドロオキサイドが挙げられ、さらに好ましくは、テトラブチルアンモニウムのハイドロオキサイドが挙げられる。
【0053】
また、イソシアヌレート化触媒は、固形分100%として用いてもよく、また、イソシアヌレート化触媒を有機溶媒に溶解させた触媒溶液を使用してもよい。
【0054】
好ましくは、イソシアヌレート化触媒は、触媒溶液として使用される。
【0055】
触媒溶液において、有機溶媒としては、例えば、アルコール類(例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノールなど)、ケトン類(例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンなど)、ニトリル類(例えば、アセトニトリルなど)、アルキルエステル類(例えば、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソブチルなど)、グリコールエーテルエステル類(例えば、メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート、メチルカルビトールアセテート、エチルカルビトールアセテート、エチレングリコールエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート、3-メチル-3-メトキシブチルアセテート、エチル-3-エトキシプロピオネートなど)、エーテル類(例えば、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサンなど)、極性非プロトン類(例えば、N-メチルピロリドン、ジメチルホルムアミド、N,N’-ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、ヘキサメチルホスホニルアミドなど)などが挙げられる。有機溶媒は、単独使用または2種以上併用することができる。
【0056】
有機溶媒のなかでは、好ましくは、グリコールエーテルエステル類が挙げられ、さらに好ましくは、プロピレングリコールメチルエーテルアセテートが挙げられる。
【0057】
触媒溶液の固形分濃度(イソシアヌレート化触媒の含有割合)は、例えば、60.0質量%以下、好ましくは、50.0質量%以下である。
【0058】
イソシアヌレート化触媒(固形分換算)の添加割合は、ペンタメチレンジイソシアネート100質量部に対して、例えば、0.001質量部以上、好ましくは、0.005質量部以上であり、例えば、0.1質量部以下、好ましくは、0.05質量部以下である。
【0059】
なお、イソシアヌレート化触媒の添加方法は、一括添加であってもよく、分割添加であってもよい。
【0060】
ペンタメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート化反応の反応条件としては、例えば、窒素ガスなどの不活性ガス雰囲気、常圧(大気圧)下、反応開始温度が、例えば、室温(25)℃以上、好ましくは、50℃以上、より好ましくは、70℃以上であり、例えば、200℃以下、好ましくは、150℃以下、より好ましくは、100℃以下である。
【0061】
また、反応時間が、例えば、5分以上、好ましくは、10分以上であり、例えば、1時間以下、好ましくは、30分以下である。
【0062】
また、反応終了温度(到達温度)が、例えば、60℃以上、好ましくは、70℃以上、より好ましくは、80℃以上であり、例えば、250℃以下、好ましくは、200℃以下、より好ましくは、150℃以下、さらに好ましくは、130℃以下である。
【0063】
また、イソシアネート基の転化率(NCO転化率)は、例えば、2質量%以上、好ましくは、5質量%以上、より好ましくは、10質量%以上であり、また、例えば、30質量%以下、好ましくは、25質量%以下、より好ましくは、15質量%以下である。
【0064】
また、上記の反応では、必要により、公知の反応溶媒を適宜の割合で配合してもよい。
【0065】
そして、上記のイソシアヌレート化反応では、好ましくは、任意のタイミングで、触媒失活剤を添加し、反応を停止させる。触媒失活剤を添加するタイミングは、例えば、イソシアネート基の転化率が目標値(例えば、10%以上、好ましくは、20%以上、例えば、40%以下)に到達した時点などである。
【0066】
触媒失活剤としては、例えば、リン酸、モノクロロ酢酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、パラトルエンスルホン酸、オルトトルエンスルホン酸、ベンゾイルクロリド、p-トルエンスルホンアミド、o-トルエンスルホンアミドなどが挙げられる。触媒失活剤は、単独使用または2種類以上併用することができる。また、触媒失活剤の配合割合は、特に制限されず、目的および用途に応じて、適宜設定される。
【0067】
また、上記のイソシアヌレート化反応においては、必要に応じて、公知の添加剤を添加することができる。
【0068】
添加剤としては、例えば、酸化防止剤、助触媒(例えば、有機亜リン酸エステルなど)などが挙げられる。
【0069】
酸化防止剤としては、例えば、フェノール系酸化防止剤、ヒンダードフェノール系酸化防止剤が挙げられ、衛生性の観点から、好ましくは、ヒンダードフェノール系酸化防止剤が挙げられる。ヒンダードフェノール系酸化防止剤として、具体的には、例えば、2,6-ジ(tert-ブチル)-4-メチルフェノール、[3-[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロパノイルオキシ]-2,2-ビス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロパノイルオキシメチル]プロピル]3-(3,5-ジtert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロパノエート(イルガノックス1010、チバ・ジャパン社製、商品名)、オクタデシル3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオナート(イルガノックス1076、チバ・ジャパン社製、商品名)、3-(4-ヒドロキシ-3,5-ジイソプロピルフェニル)プロピオン酸オクチルエステル(イルガノックス1135、チバ・ジャパン社製、商品名)、ビス[3-(3-メチル-4-ヒドロキシ-5-tert-ブチルフェニル)プロピオン酸]エチレンビスオキシビスエチレン(イルガノックス245、チバ・ジャパン社製、商品名)などが挙げられる。
【0070】
これら酸化防止剤は、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0071】
酸化防止剤として、衛生性の観点から、好ましくは、BHTを除くヒンダードフェノール系酸化防止剤が挙げられ、より好ましくは、オクタデシル3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオナート(イルガノックス1076、チバ・ジャパン社製、商品名)が挙げられる。
【0072】
なお、添加剤の添加割合は、目的および用途に応じて、適宜設定される。
【0073】
また、添加剤を添加するタイミングは、特に制限されず、イソシアヌレート化反応前のペンタメチレンジイソシアネートまたは長鎖モノアルコールに添加してもよく、また、イソシアヌレート化反応中のイソシアヌレート反応液に添加してもよく、さらには、イソシアヌレート化反応後のイソシアヌレート反応液に添加してもよい。好ましくは、イソシアヌレート化反応前のペンタメチレンジイソシアネートに添加する。
【0074】
そして、この方法では、上記イソシアヌレート化反応の終了後、必要に応じて、得られる反応混合液から、未反応のペンタメチレンジイソシアネートモノマーおよび反応溶媒(さらに、必要に応じて、触媒、添加剤など)を、例えば、薄膜蒸留(スミス蒸留)などの蒸留や、抽出などの公知の方法で除去する。
【0075】
これにより、ペンタメチレンジイソシアネートのイソシアヌレートを得ることができる。
【0076】
また、上記イソシアヌレート化触媒は、アロファネート化触媒としても兼用される。
【0077】
すなわち、イソシアヌレート化触媒の存在下で、上記のイソシアヌレート化反応させることにより、上記のペンタメチレンジイソシアネートのイソシアヌレートとともに、ペンタメチレンジイソシアネートのアロファネートが生成する。
【0078】
そのため、上記の反応(イソシアヌレート化反応およびアロファネート化反応)によって、ペンタメチレンジイソシアネートのイソシアヌレートと、ペンタメチレンジイソシアネートのアロファネートとが得られる。
【0079】
その結果、ペンタメチレンジイソシアネートのイソシアヌレートと、ペンタメチレンジイソシアネートのアロファネートとを含むポリイソシアネート組成物が得られる。
【0080】
また、ポリイソシアネート組成物は、上記の方法の他、例えば、まず、ペンタメチレンジイソシアネートのみをイソシアヌレート化反応させ、その後、イソシアヌレート化反応生成物と長鎖モノアルコール(後述)とをウレタン化反応させることによっても、得ることができる。
【0081】
このような場合、ペンタメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート化における反応条件は、上記と同じである。そして、反応終了後、未反応のペンタメチレンジイソシアネートを、必要により、蒸留などの公知の除去方法により、除去する。その後、得られる反応生成物(イソシアヌレート化反応生成物)と、長鎖モノアルコールとを、上記と同じ条件で、ウレタン化反応させる。
【0082】
このような方法でも、ペンタメチレンジイソシアネートのイソシアヌレートと、ペンタメチレンジイソシアネートのアロファネートとを含むポリイソシアネート組成物が得られる。
【0083】
ポリイソシアネート組成物は、好ましくは、溶剤を含まず、固形分濃度は、例えば、例えば、95質量%以上、好ましくは、99質量%以上であり、例えば、100質量%以下である。
【0084】
また、ポリイソシアネート組成物(固形分(以下同じ))において、イソシアネートモノマー濃度(未反応のペンタメチレンジイソシアネートの濃度)が、例えば、5質量%以下、好ましくは、2質量%以下、より好ましくは、1質量%以下である。
【0085】
また、ポリイソシアネート組成物において、イソシアネート基濃度(固形分基準)は、例えば、10質量%以上、好ましくは、15質量%以上であり、例えば、30質量%以下、好ましくは、25質量%以下である。
【0086】
そして、得られるポリイソシアネート組成物は、上記したように、ペンタメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート1核体を含んでいる。
【0087】
イソシアヌレート1核体は、ペンタメチレンジイソシアネートの変性体であり、より具体的には、3分子のペンタメチレンジイソシアネートを含有し、イソシアヌレート基を1つ含有する。イソシアヌレート1核体は、好ましくは、3分子のペンタメチレンジイソシアネートからなる。
【0088】
イソシアヌレート1核体の含有割合(イソシアヌレート1核体含有率)は、ポリイソシアネート組成物の総量に対して、塗膜物性の観点から、5質量%以上、好ましくは、10質量%以上、より好ましくは、15質量%以上、さらに好ましくは、20質量%以上、とりわけ好ましくは、23質量%以上であり、弱溶剤に対する溶解性の観点から、35質量%以下、好ましくは、33質量%以下、より好ましくは、30質量%以下、さらに好ましくは、28質量%以下である。
【0089】
なお、イソシアヌレート1核体含有率は、図1が参照されるように、ポリイソシアネート組成物をゲルパーミエーションクロマトグラフにて測定(GPC測定)したときのクロマトグラムに基づいて、算出される。
【0090】
GPC測定において、GPC測定装置およびGPC測定方法は、特に制限されず、後述する各ピークの各面積率を算出できる分解能を有する装置および方法が、適宜採用される。
【0091】
また、各ピークの各面積率の算出方法は、特に制限されないが、通常、GPC測定で得られるクロマトグラムの各ピークを垂直分割し、垂直分割された各ピークの面積の比率を、面積百分率法によって算出する。
【0092】
そして、ポリイソシアネート組成物のGPC測定により得られるクロマトグラムにおいて、イソシアヌレート1核体に由来するピークを同定することにより、そのピークの面積率を、イソシアヌレート1核体含有率とする。
【0093】
この場合、イソシアヌレート1核体に由来するピークは、例えば、ポリスチレン換算分子量(平均分子量)に基づいて、同定される。この場合、ポリスチレン換算分子量(平均分子量)は、上記の反応に用いられる長鎖モノアルコールの炭素数によって異なる。
【0094】
例えば、長鎖モノアルコールの炭素数が8の場合、ポリスチレン換算分子量(数平均分子量)450以上500未満の範囲にピークトップを有するピークを、イソシアヌレート1核体に由来するピークであると同定する。
【0095】
また、例えば、長鎖モノアルコールの炭素数が12の場合、ポリスチレン換算分子量(数平均分子量)400以上500未満の範囲にピークトップを有するピークを、イソシアヌレート1核体に由来するピークであると同定する。
【0096】
また、例えば、長鎖モノアルコールの炭素数が18の場合、ポリスチレン換算分子量(数平均分子量)450以上550未満の範囲にピークトップを有するピークを、イソシアヌレート1核体に由来するピークであると同定する。
【0097】
さらに詳述すると、例えば、長鎖モノアルコールの炭素数が12の場合、ポリイソシアネート組成物において、ペンタメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート1核体含有率は、ポリイソシアネート組成物を、示差屈折計を装備したゲルパーミエーションクロマトグラフ(GPC)にて測定したときのクロマトグラムにおいて、ポリスチレン換算分子量(数平均分子量)400以上500未満の範囲にピークトップを有するピークの面積の、全ピークの面積に対する面積率(以下、Mn400-500面積率、または、イソシアヌレート1核体面積率と称する場合がある。)として、求めることができる。
【0098】
好ましくは、ポリイソシアネート組成物中のイソシアヌレート1核体含有率は、GPC測定したときのクロマトグラムにおいて、ポリスチレン換算分子量(数平均分子量)430以上470以下の範囲にピークトップを有するピークの面積の、全ピークの面積に対する面積率として、求めることができる。
【0099】
イソシアヌレート1核体面積率(例えば、Mn400-500面積率)は、塗膜物性の観点から、5%以上、好ましくは、10%以上、より好ましくは、15%以上、さらに好ましくは、20%以上、とりわけ好ましくは、23%以上であり、弱溶剤に対する溶解性の観点から、35%以下、好ましくは、33%以下、より好ましくは、30%以下、さらに好ましくは、28%以下である。
【0100】
なお、イソシアヌレート1核体含有率を示すピークは、通常、上記クロマトグラムにおいて、1つである。
【0101】
図1に、イソシアヌレート1核体含有率を示すピークを、ピーク6として示す。
【0102】
また、ポリイソシアネート組成物は、副生成物として、1分子のペンタメチレンジイソシアネートと1分子の長鎖モノアルコールとのウレタン化反応により得られ、末端にフリーのイソシアネート基を有する化合物(モノウレタン化合物)を含むことができる。
【0103】
換言すると、モノウレタン化合物は、ペンタメチレンジイソシアネートの変性体であり、1分子のペンタメチレンジイソシアネートと1分子の長鎖モノアルコールとからなる。
【0104】
ポリイソシアネート組成物が、モノウレタン化合物を含有する場合、モノウレタン化合物の含有割合(モノウレタン含有率)は、ポリイソシアネート組成物の総量に対して、弱溶剤に対する溶解性、および、塗膜物性の観点から、例えば、15質量%以下、好ましくは、10質量%以下、より好ましくは、5質量%以下、さらに好ましくは、3質量%以下、とりわけ好ましくは、2質量%以下であり、例えば、0質量%以上、好ましくは、0.1質量%以上、より好ましくは、0.5%質量以上である。
【0105】
なお、モノウレタン含有率は、上記と同様の方法により、ポリイソシアネート組成物をゲルパーミエーションクロマトグラフにて測定(GPC測定)したときのクロマトグラムに基づいて、算出される。
【0106】
この場合も、ポリスチレン換算分子量(平均分子量)は、上記の反応に用いられる長鎖モノアルコールの炭素数によって異なる。
【0107】
例えば、長鎖モノアルコールの炭素数が8の場合、ポリスチレン換算分子量(数平均分子量)200以上300未満の範囲にピークトップを有するピークを、モノウレタン化合物に由来するピークであると同定する。
【0108】
また、例えば、長鎖モノアルコールの炭素数が12の場合、ポリスチレン換算分子量(数平均分子量)300以上400未満の範囲にピークトップを有するピークを、モノウレタン化合物に由来するピークであると同定する。
【0109】
また、例えば、長鎖モノアルコールの炭素数が18の場合、ポリスチレン換算分子量(数平均分子量)400以上450未満の範囲にピークトップを有するピークを、モノウレタン化合物に由来するピークであると同定する。
【0110】
さらに詳述すると、例えば、長鎖モノアルコールの炭素数が12の場合、ポリイソシアネート組成物において、モノウレタン含有率は、ポリイソシアネート組成物を、示差屈折計を装備したゲルパーミエーションクロマトグラフにて測定したときのクロマトグラムにおいて、ポリスチレン換算分子量(数平均分子量)300以上400未満の範囲にピークトップを有するピークの面積の、全ピークの面積に対する面積率(以下、Mn300-400面積率、または、モノウレタン面積率と称する場合がある。)として、求めることができる。
【0111】
好ましくは、ポリイソシアネート組成物中のモノウレタン含有率は、GPC測定したときのクロマトグラムにおいて、ポリスチレン換算分子量(数平均分子量)320以上350以下の範囲にピークトップを有するピークの面積の、全ピークの面積に対する面積率として、求めることができる。
【0112】
モノウレタン面積率(例えば、Mn300-400面積率)は、弱溶剤に対する溶解性、および、塗膜物性の観点から、例えば、15%以下、好ましくは、10%以下、より好ましくは、5%以下、さらに好ましくは、3%以下、とりわけ好ましくは、2%以下であり、例えば、0%以上、好ましくは、0.1%以上、より好ましくは、0.5%以上である。
【0113】
すなわち、ポリイソシアネート組成物は、モノウレタン化合物を、含有していなくともよいが、好ましくは、上記下限以上の割合で、モノウレタン化合物を含有する。
【0114】
なお、モノウレタン含有率を示すピークは、通常、上記クロマトグラムにおいて、1つである。
【0115】
図1に、モノウレタン含有率を示すピークを、ピーク7として示す。
【0116】
さらに、ポリイソシアネート組成物は、好ましくは、ペンタメチレンジイソシアネートのアロファネートを含んでいる。
【0117】
ペンタメチレンジイソシアネートのアロファネートは、ペンタメチレンジイソシアネートの変性体であって、2分子以上のペンタメチレンジイソシアネートを含み、1つ以上のアロファネート基を含んでいる。
【0118】
好ましくは、ペンタメチレンジイソシアネートのアロファネートは、好ましくは、モノアロファネートと、ジアロファネートとを含む。
【0119】
モノアロファネートは、2分子のペンタメチレンジイソシアネートを含み、アロファネート基を1つ含有する。
【0120】
ポリイソシアネート組成物が、モノアロファネートを含有する場合、モノアロファネートの含有割合(モノアロファネート含有率)は、ポリイソシアネート組成物の総量に対して、弱溶剤に対する溶解性、および、塗膜物性の観点から、例えば、20質量%以上、好ましくは、40質量%以上であり、例えば、80質量%以下、好ましくは、60質量%以下である。
【0121】
なお、モノアロファネート含有率は、上記と同様の方法により、ポリイソシアネート組成物をゲルパーミエーションクロマトグラフにて測定(GPC測定)したときのクロマトグラムに基づいて、算出される。
【0122】
この場合も、ポリスチレン換算分子量(平均分子量)は、上記の反応に用いられる長鎖モノアルコールの炭素数によって異なる。
【0123】
例えば、長鎖モノアルコールの炭素数が8の場合、ポリスチレン換算分子量(数平均分子量)300以上450未満の範囲にピークトップを有するピークを、モノアロファネートに由来するピークであると同定する。
【0124】
また、例えば、長鎖モノアルコールの炭素数が12の場合、ポリスチレン換算分子量(数平均分子量)500以上730未満の範囲にピークトップを有するピークを、モノアロファネートに由来するピークであると同定する。
【0125】
また、例えば、長鎖モノアルコールの炭素数が18の場合、ポリスチレン換算分子量(数平均分子量)550以上730未満の範囲にピークトップを有するピークを、モノアロファネートに由来するピークであると同定する。
【0126】
さらに詳述すると、例えば、長鎖モノアルコールの炭素数が12の場合、ポリイソシアネート組成物において、ペンタメチレンジイソシアネートのモノアロファネート含有率は、ポリイソシアネート組成物を、示差屈折計を装備したゲルパーミエーションクロマトグラフにて測定したときのクロマトグラムにおいて、ポリスチレン換算分子量(数平均分子量)500以上700未満の範囲にピークトップを有するピークの面積の、全ピークの面積に対する面積率(以下、Mn500-700面積率、または、モノアロファネート面積率と称する場合がある。)として、求めることができる。
【0127】
好ましくは、ポリイソシアネート組成物中のモノアロファネート含有率は、GPC測定したときのクロマトグラムにおいて、ポリスチレン換算分子量(数平均分子量)550以上650以下の範囲にピークトップを有するピークの面積の、全ピークの面積に対する面積率として、求めることができる。
【0128】
モノアロファネート面積率(例えば、Mn500-700面積率)は、例えば、20%以上、好ましくは、40%以上であり、例えば、80%以下、好ましくは、60%以下である。
【0129】
なお、モノアロファネート含有率を示すピークは、通常、上記クロマトグラムにおいて、1つである。
【0130】
図1に、モノアロファネート含有率を示すピークを、ピーク5として示す。
【0131】
ジアロファネートは、2分子のペンタメチレンジイソシアネートを含み、アロファネート基を2つ含有する。
【0132】
ポリイソシアネート組成物が、ジアロファネートを含有する場合、ジアロファネートの含有割合(ジアロファネート含有率)は、ポリイソシアネート組成物の総量に対して、弱溶剤に対する溶解性、および、塗膜物性の観点から、例えば、2質量%以上、好ましくは、5質量%以上であり、例えば、20質量%以下、好ましくは、15質量%以下である。
【0133】
なお、ジアロファネート含有率は、上記と同様の方法により、ポリイソシアネート組成物をゲルパーミエーションクロマトグラフにて測定(GPC測定)したときのクロマトグラムに基づいて、算出される。
【0134】
この場合も、ポリスチレン換算分子量(平均分子量)は、上記の反応に用いられる長鎖モノアルコールの炭素数によって異なる。
【0135】
例えば、長鎖モノアルコールの炭素数が8の場合、ポリスチレン換算分子量(数平均分子量)500以上750未満の範囲にピークトップを有するピークを、ジアロファネートに由来するピークであると同定する。
【0136】
また、例えば、長鎖モノアルコールの炭素数が12の場合、ポリスチレン換算分子量(数平均分子量)830以上1000未満の範囲にピークトップを有するピークを、ジアロファネートに由来するピークであると同定する。
【0137】
また、例えば、長鎖モノアルコールの炭素数が18の場合、ポリスチレン換算分子量(数平均分子量)830以上1050未満の範囲にピークトップを有するピークを、ジアロファネートに由来するピークであると同定する。
【0138】
さらに詳述すると、例えば、長鎖モノアルコールの炭素数が12の場合、ポリイソシアネート組成物において、ペンタメチレンジイソシアネートのジアロファネート含有率は、ポリイソシアネート組成物を、示差屈折計を装備したゲルパーミエーションクロマトグラフにて測定したときのクロマトグラムにおいて、ポリスチレン換算分子量(数平均分子量)830以上1000未満の範囲にピークトップを有するピークの面積の、全ピークの面積に対する面積率(以下、Mn830-1000面積率、または、ジアロファネート面積率と称する場合がある。)として、求めることができる。
【0139】
好ましくは、ポリイソシアネート組成物中のジアロファネート含有率は、GPC測定したときのクロマトグラムにおいて、ポリスチレン換算分子量(数平均分子量)840以上980以下の範囲にピークトップを有するピークの面積の、全ピークの面積に対する面積率として、求めることができる。
【0140】
ジアロファネート面積率(例えば、Mn830-1000面積率)は、例えば、2%以上、好ましくは、5%以上であり、例えば、20%以下、好ましくは、15%以下である。
【0141】
なお、ジアロファネート含有率を示すピークは、通常、上記クロマトグラムにおいて、1つである。
【0142】
図1において、ジアロファネート含有率を示すピークを、ピーク3として示す。
【0143】
そして、モノアロファネートのポリイソシアネート組成物の総量に対する含有割合(モノアロファネート含有率)と、ジアロファネートのポリイソシアネート組成物の総量に対する含有割合(ジアロファネート含有率)との総量(アロファネート含有率)は、例えば、30質量%以上、好ましくは、40質量%以上、より好ましくは、50質量%以上であり、例えば、90質量%以下、好ましくは、80質量%以下、より好ましくは、60質量%以下である。
【0144】
なお、ポリイソシアネート組成物において、アロファネートの含有割合(含有率)は、上記のモノアロファネート面積率(例えば、Mn500-700面積率)と、上記のジアロファネート面積率(例えば、Mn830-1000面積率)との合計面積率(以下、アロファネート面積率と称する場合がある。)として、算出される。
【0145】
アロファネート面積率は、例えば、30%以上、好ましくは、40%以上、より好ましくは、50%以上であり、例えば、90%以下、好ましくは、80%以下、より好ましくは、60%以下である。
【0146】
また、ポリイソシアネート組成物は、ペンタメチレンジイソシアネートのイソシアヌレートとして、上記のイソシアヌレート1核体だけでなく、イソシアヌレート多核体を含むことができる。
【0147】
イソシアヌレート多核体は、上記したように、イソシアヌレートn核体(n:2以上の整数)であり、例えば、イソシアヌレート2核体(イソシアネート5分子体)、イソシアヌレート3核体(イソシアネート7分子体)などを含む。
【0148】
好ましくは、ポリイソシアネート組成物は、ペンタメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート2核体を含む。
【0149】
イソシアヌレート2核体は、ペンタメチレンジイソシアネートの変性体であり、5分子のペンタメチレンジイソシアネートを含有し、イソシアヌレート基を2つ含有する。
【0150】
ポリイソシアネート組成物が、イソシアヌレート2核体を含有する場合、イソシアヌレート2核体の含有割合(イソシアヌレート2核体含有率)は、ポリイソシアネート組成物の総量に対して、弱溶剤に対する溶解性、および、塗膜物性の観点から、例えば、0質量%以上、好ましくは、1質量%以上であり、例えば、15質量%以下、好ましくは、10質量%以下である。
【0151】
なお、イソシアヌレート2核体含有率は、上記と同様の方法により、ポリイソシアネート組成物をゲルパーミエーションクロマトグラフにて測定(GPC測定)したときのクロマトグラムに基づいて、算出される。
【0152】
この場合もい、ポリスチレン換算分子量(平均分子量)は、上記の反応に用いられる長鎖モノアルコールの炭素数によって異なる。
【0153】
例えば、長鎖モノアルコールの炭素数が8の場合、ポリスチレン換算分子量(数平均分子量)750以上800未満の範囲にピークトップを有するピークを、イソシアヌレート2核体に由来するピークであると同定する。
【0154】
また、例えば、長鎖モノアルコールの炭素数が12の場合、ポリスチレン換算分子量(数平均分子量)730以上830未満の範囲にピークトップを有するピークを、イソシアヌレート2核体に由来するピークであると同定する。
【0155】
また、例えば、長鎖モノアルコールの炭素数が18の場合、ポリスチレン換算分子量(数平均分子量)730以上830未満の範囲にピークトップを有するピークを、イソシアヌレート2核体に由来するピークであると同定する。
【0156】
さらに詳述すると、例えば、長鎖モノアルコールの炭素数が12の場合、ポリイソシアネート組成物において、ペンタメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート2核体含有率は、ポリイソシアネート組成物を、示差屈折計を装備したゲルパーミエーションクロマトグラフにて測定したときのクロマトグラムにおいて、ポリスチレン換算分子量(数平均分子量)730以上830未満の範囲にピークトップを有するピークの面積の、全ピークの面積に対する面積率(以下、Mn730-830面積率、または、イソシアヌレート2核体面積率と称する場合がある。)として、求めることができる。
【0157】
好ましくは、ポリイソシアネート組成物中のイソシアヌレート2核体含有率は、GPC測定したときのクロマトグラムにおいて、ポリスチレン換算分子量(数平均分子量)740以上820以下の範囲にピークトップを有するピークの面積の、全ピークの面積に対する面積率として、求めることができる。
【0158】
イソシアヌレート2核体面積率(例えば、Mn730-830面積率)は、例えば、1%以上、好ましくは、2%以上であり、例えば、15%以下、好ましくは、10%以下である。
【0159】
図1において、イソシアヌレート2核体含有率を示すピークを、ピーク4として示す。
【0160】
また、好ましくは、ポリイソシアネート組成物は、ペンタメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート3核以上体を含む。
【0161】
イソシアヌレート3核以上体は、ペンタメチレンジイソシアネートの変性体であり、7分子以上のペンタメチレンジイソシアネートを含有し、イソシアヌレート基を3つ以上含有する。
【0162】
ポリイソシアネート組成物が、イソシアヌレート3核以上体を含有する場合、イソシアヌレート3核以上体の含有割合(イソシアヌレート3核以上体含有率)は、ポリイソシアネート組成物の総量に対して、弱溶剤に対する溶解性、および、塗膜物性の観点から、例えば、0質量%以上、好ましくは、1質量%以上であり、例えば、20質量%以下、好ましくは、15質量%以下である。
【0163】
なお、イソシアヌレート3核以上体含有率は、上記と同様の方法により、ポリイソシアネート組成物をゲルパーミエーションクロマトグラフにて測定(GPC測定)したときのクロマトグラムに基づいて、算出される。
【0164】
この場合も、ポリスチレン換算分子量(平均分子量)は、上記の反応に用いられる長鎖モノアルコールの炭素数によって異なる。
【0165】
例えば、長鎖モノアルコールの炭素数が8の場合、ポリスチレン換算分子量(数平均分子量)800以上の範囲にピークトップを有するピークを、イソシアヌレート3核以上体に由来するピークであると同定する。
【0166】
また、例えば、長鎖モノアルコールの炭素数が12の場合、ポリスチレン換算分子量(数平均分子量)1000以上の範囲にピークトップを有するピークを、イソシアヌレート3核以上体に由来するピークであると同定する。
【0167】
また、例えば、長鎖モノアルコールの炭素数が18の場合、ポリスチレン換算分子量(数平均分子量)1050以上の範囲にピークトップを有するピークを、イソシアヌレート3核以上体に由来するピークであると同定する。
【0168】
さらに詳述すると、例えば、長鎖モノアルコールの炭素数が12の場合、ポリイソシアネート組成物において、ペンタメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート3核以上体含有率は、ポリイソシアネート組成物を、示差屈折計を装備したゲルパーミエーションクロマトグラフにて測定したときのクロマトグラムにおいて、ポリスチレン換算分子量(数平均分子量)1000以上の範囲にピークトップを有するピークの面積の、全ピークの面積に対する面積率(以下、Mn1000-面積率、または、イソシアヌレート3核以上体面積率と称する場合がある。)として、求めることができる。
【0169】
好ましくは、ポリイソシアネート組成物中のイソシアヌレート3核以上体含有率は、GPC測定したときのクロマトグラムにおいて、ポリスチレン換算分子量(数平均分子量)1050以上の範囲にピークトップを有するピークの面積の、全ピークの面積に対する面積率として、求めることができる。
【0170】
イソシアヌレート3核以上体面積率(例えば、Mn1000-面積率)は、例えば、1%以上、好ましくは、5%以上であり、例えば、20%以下、好ましくは、15%以下である。
【0171】
図1において、イソシアヌレート3核以上体含有率を示すピークを、ピーク1およびピーク2として示す。
【0172】
そして、イソシアヌレート2核体含有率と、イソシアヌレート3核以上体含有率との総量(すなわち、イソシアヌレート多核体の含有割合(イソシアヌレート多核体含有率))は、弱溶剤に対する溶解性、および、塗膜物性の観点から、例えば、30質量%以下、好ましくは、25質量%以下、より好ましくは、20質量%以下、さらに好ましくは、15質量%以下であり、例えば、0質量%以上、好ましくは、2質量%以上、より好ましくは、5質量%以上である。
【0173】
すなわち、ポリイソシアネート組成物は、イソシアヌレート多核体を、含有していなくともよいが、好ましくは、上記下限以上の割合で、イソシアヌレート多核体を含有する。
【0174】
なお、ポリイソシアネート組成物において、イソシアヌレート多核体の含有割合は、上記のイソシアヌレート2核体面積率(例えば、Mn730-830面積率)と、上記のイソシアヌレート3核以上体面積率(例えば、Mn1000-面積率)との合計面積率(以下、イソシアヌレート多面積率と称する場合がある。)として、算出される。
【0175】
イソシアヌレート多核体面積率は、例えば、30%以下、好ましくは、25%以下、より好ましくは、20%以下、さらに好ましくは、15%以下であり、例えば、0%以上、好ましくは、2%以上、より好ましくは、5%以上である。
【0176】
そして、上記のポリイソシアネート組成物において、アロファネート含有率(モノアロファネート含有率とジアロファネート含有率との総量)に対する、イソシアヌレート1核体含有率の比(イソシアヌレート1核体含有率/アロファネート含有率)は、塗膜物性の観点から、例えば、0.20以上、好ましくは、0.25以上、より好ましくは、0.30以上、さらに好ましくは、0.35以上、とりわけ好ましくは、0.40以上であり、弱溶剤に対する溶解性の観点から、例えば、0.80以下、好ましくは、0.70以下、より好ましくは、0.60以下、さらに好ましくは、0.50以下、とりわけ好ましくは、0.45以下である。
【0177】
なお、上記の比率は、ポリイソシアネート組成物を、示差屈折計を装備したゲルパーミエーションクロマトグラフにて測定したときのクロマトグラムにおける面積率の比としても示される。
【0178】
すなわち、上記のポリイソシアネート組成物において、アロファネート面積率に対する、イソシアヌレート1核体面積率の比(イソシアヌレート1核体面積率/アロファネート面積率)は、塗膜物性の観点から、例えば、0.20以上、好ましくは、0.25以上、より好ましくは、0.30以上、さらに好ましくは、0.35以上、とりわけ好ましくは、0.40以上であり、弱溶剤に対する溶解性の観点から、例えば、0.80以下、好ましくは、0.70以下、より好ましくは、0.60以下、さらに好ましくは、0.50以下、とりわけ好ましくは、0.45以下である。
【0179】
また、上記のポリイソシアネート組成物において、アロファネート含有率(モノアロファネート含有率とジアロファネート含有率との総量)に対する、イソシアヌレート多核体含有率の比(イソシアヌレート多核体含有率/アロファネート含有率)は、塗膜物性の観点から、例えば、0.03以上、好ましくは、0.05以上、より好ましくは、0.10以上、さらに好ましくは、0.15以上、とりわけ好ましくは、0.20以上であり、弱溶剤に対する溶解性の観点から、例えば、0.70以下、好ましくは、0.60以下、より好ましくは、0.50以下、さらに好ましくは、0.40以下、とりわけ好ましくは、0.30以下である。
【0180】
なお、上記の比率は、ポリイソシアネート組成物を、示差屈折計を装備したゲルパーミエーションクロマトグラフにて測定したときのクロマトグラムにおける面積率の比としても示される。
【0181】
すなわち、上記のポリイソシアネート組成物において、アロファネート面積率に対する、イソシアヌレート多核体面積率の比(イソシアヌレート多核体面積率/アロファネート面積率)は、塗膜物性の観点から、例えば、0.03以上、好ましくは、0.05以上、より好ましくは、0.10以上、さらに好ましくは、0.15以上、とりわけ好ましくは、0.20以上であり、弱溶剤に対する溶解性の観点から、例えば、0.70以下、好ましくは、0.60以下、より好ましくは、0.50以下、さらに好ましくは、0.40以下、とりわけ好ましくは、0.30以下である。
【0182】
また、上記のポリイソシアネート組成物において、アロファネート含有率(モノアロファネート含有率とジアロファネート含有率との総量)に対する、モノウレタン含有率の比(モノウレタン含有率/アロファネート含有率)は、塗膜物性、および、弱溶剤に対する溶解性の観点から、例えば、0.30以下、好ましくは、0.25以下、より好ましくは、0.20以下、さらに好ましくは、0.10以下、とりわけ好ましくは、0.05以下である。
【0183】
なお、上記の比率は、ポリイソシアネート組成物を、示差屈折計を装備したゲルパーミエーションクロマトグラフにて測定したときのクロマトグラムにおける面積率の比としても示される。
【0184】
すなわち、上記のポリイソシアネート組成物において、アロファネート面積率に対する、モノウレタン面積率の比(モノウレタン面積率/アロファネート面積率)は、塗膜物性、および、弱溶剤に対する溶解性の観点から、例えば、0.30以下、好ましくは、0.25以下、より好ましくは、0.20以下、さらに好ましくは、0.10以下、とりわけ好ましくは、0.05以下である。
【0185】
このようなポリイソシアネート組成物は、上記ペンタメチレンジイソシアネートと長鎖モノアルコールとの反応生成物において、イソシアヌレート1核体面積率が上記範囲であるため、弱溶剤に対する溶解性に優れ、環境性に優れる。
【0186】
弱溶剤は、とりわけ極性が低い溶剤であり、アニリン点が20℃以上の溶剤であると定義される。そのような弱溶剤としては、例えば、ミネラルスピリッツA(JXTGエネルギー社製 アニリン点44.5℃)、イプゾールTP(出光昭和シェル社製 アニリン点43℃)、T-SOL3040FLUID(JXTGエネルギー社製 アニリン点52℃)などの石油炭化水素系、例えば、ガムテレピンN(ヤスハラケミカル製 アニリン点27℃)メチルシクロヘキサン(アニリン点40℃)などのターペン油類などが挙げられる。これら弱溶剤は、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0187】
上記のポリイソシアネート組成物は、弱溶剤に対する溶解性に優れており、例えば、ポリイソシアネート組成物100質量部に対して、溶解可能な弱溶剤の量は、例えば、100質量部以上、好ましくは、500質量部以上であり、通常、10000質量部未満である。
【0188】
また、上記のポリイソシアネート組成物は、上記ペンタメチレンジイソシアネートと長鎖モノアルコールとの反応生成物において、イソシアヌレート1核体含有率が上記範囲であるため、優れた物性を有する塗膜を形成できる。
【0189】
なお、塗膜の物性としては、例えば、機械強度、耐久性(耐薬品性、耐光性など)などが挙げられる。
【0190】
そのため、上記ポリイソシアネート組成物は、例えば、塗料、接着剤、コーティング剤など、ポリウレタン樹脂を塗布する分野において、ポリウレタン樹脂の製造原料として、好適に用いられる。
【0191】
ポリウレタン樹脂の形態としては、特に制限されないが、好ましくは、2液硬化型ポリウレタンが挙げられる。2液硬化型ポリウレタンは、硬化剤と主剤とがそれぞれ独立したパッケージとして調製され、それらが使用時に配合されることによりポリウレタン樹脂(硬化塗膜など)を形成する樹脂組成物である。
【0192】
このような2液硬化型ポリウレタンにおける硬化剤(ポリイソシアネート成分)として、好ましくは、上記したポリイソシアネート組成物が用いられる。
【0193】
そして、ポリイソシアネート組成物は、必要により上記した弱溶剤などに溶解され、硬化剤として調製される。
【0194】
2液硬化型ポリウレタンの主剤は、例えば、ポリオール成分を含有する。
【0195】
ポリオール成分としては、例えば、アクリルポリオール、フッ素ポリオールなどが挙げられ、好ましくは、フッ素ポリオールが挙げられる。すなわち、上記のポリイソシアネート組成物は、弱溶剤に対する溶解性に優れるため、フッ素ポリオールの硬化剤として、好適に用いられる。
【0196】
アクリルポリオールとしては、例えば、1つ以上の水酸基を有する重合性単量体と、それに共重合可能な別の単量体とを共重合させることによって得られる共重合体が挙げられる。
【0197】
水酸基を有する重合性単量体としては、例えば、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2,2-ジヒドロキシメチルブチル(メタ)アクリレート、ポリヒドロキシアルキルマレエート、ポリヒドロキシアルキルフマレートなどが挙げられる。
【0198】
また、それらと共重合可能な別の単量体としては、例えば、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸アルキル(炭素数1~12)、マレイン酸、マレイン酸アルキル、フマル酸、フマル酸アルキル、イタコン酸、イタコン酸アルキル、スチレン、α-メチルスチレン、酢酸ビニル、(メタ)アクリロニトリル、3-(2-イソシアネート-2-プロピル)-α-メチルスチレン、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
【0199】
そして、アクリルポリオールは、それら単量体を適当な溶剤および重合開始剤の存在下において共重合させることによって得ることができる。
【0200】
フッ素ポリオールとしては、例えば、上記したアクリルポリオールの共重合において、共重合可能な別の単量体としてビニル基含有のフッ素化合物、例えば、テトラフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレンなどを用いて得られる共重合体などが挙げられる。
【0201】
また、フッ素ポリオールとして、例えば、特開2004-277716号公報に記載の塗料用含フッ素共重合体などを用いることもできる。
【0202】
なお、ポリオール成分は、必要により上記した有機溶媒などに溶解され、主剤として調製される。
【0203】
そして、2液硬化型ポリウレタンは、硬化剤および主剤を使用時に配合し、混合撹拌することにより、塗料(2液硬化型塗料)、接着剤(2液硬化型接着剤)などとして好適に用いられる。
【0204】
より具体的には、まず、上記主剤と上記硬化剤とをそれぞれ用意し、使用直前に主剤と硬化剤とを混合して、2液硬化型ポリウレタン樹脂(塗料、接着剤)を調製し、その2液硬化型ポリウレタン樹脂を、被塗物または被着物に塗布する。
【0205】
主剤および硬化剤の配合割合は、例えば、主剤(ポリオール成分)中の水酸基に対する、硬化剤(ポリイソシアネート組成物)中のイソシアネート基の当量比(NCO/OH)として、例えば、0.5~1.5、好ましくは、0.8~1.2となる割合である。
【0206】
そして、主剤および硬化剤の混合物は、例えば、スプレー塗装、エアスプレー塗装、はけ塗り、浸漬法、ロールコート法、フローコート法、ドライラミネート法、ウェットラミネート法、ダイレクトコート法などの任意の方法により、被着体に塗布される。
【0207】
被着物としては、特に制限されず、例えば、各種建材および各種積層フィルムが挙げられる。より具体的には、プラスチックフィルム、金属箔、金属蒸着フィルムなどの包装材料、FRP、鋼材などの土木材料などが挙げられる。
【0208】
そして、主剤および硬化剤の混合物が乾燥および硬化することにより、ポリウレタン樹脂(硬化塗膜、接着層など)が得られる。
【0209】
そのため、上記のポリウレタン樹脂およびポリイソシアネート組成物は、例えば、塗料、接着剤などの各種産業分野において、好適に用いられる。
【実施例
【0210】
次に、本発明を、製造例、実施例および比較例に基づいて説明するが、本発明は、下記の実施例によって限定されるものではない。なお、「部」および「%」は、特に言及がない限り、質量基準である。また、以下の記載において用いられる配合割合(含有割合)、物性値、パラメータなどの具体的数値は、上記の「発明を実施するための形態」において記載されている、それらに対応する配合割合(含有割合)、物性値、パラメータなど該当記載の上限値(「以下」、「未満」として定義されている数値)または下限値(「以上」、「超過」として定義されている数値)に代替することができる。
【0211】
1.GPC
サンプルをゲルパーミエーションクロマトグラフ(GPC)測定し、得られたクロマトグラム(チャート)における各ピークの面積の、全ピークの面積に対する面積率を求めた。
【0212】
そして、各ピークを、ピークトップのポリスチレン換算分子量に応じて同定し、各ピークの面積率から、各成分の含有率を算出した。
【0213】
なお、ポリイソシアネートの種類およびモノアルコールの炭素数と、ピークトップのポリスチレン換算分子量と、各成分の帰属とを、表1に示す。
【0214】
<GPC測定>
GPC測定においては、サンプルを約0.03g採取し、テトラヒドロフラン10mLを添加して溶解させた。そして、得られた溶液を、以下の条件でGPC測定した。
(1)分析装置 : Alliance(Waters)
(2)ポンプ : Alliance 2695(Waters)
(3)検出器 : 2414型示差屈折検出器(Waters)
(4)溶離液 : Tetrahydrofuran
(5)分離カラム :Plgel GUARD + Plgel 5μmMixed-C×3本(50×7.5mm,300×7.5mm)
メーカー ; Polymer Laboratories
品番 ; PL1110-6500
(6)測定温度 : 40℃
(7)流速 : 1mL/min
(8)サンプル注入量 : 100μL
(9)解析装置 : EMPOWERデータ処理装置(Waters)
・システム補正
(1)標準物質名 : Polystyrene
(2)検量線作成方法 : 分子量の異なるTOSOH社製 TSKstandard Polystyreneを用い、リテンションタイムと分子量のグラフを作成。
(3)注入量、注入濃度 : 100μL、 1mg/mL
なお、実施例1のポリイソシアネート組成物のゲルパーミエーションクロマトグラムを図2に示す。
【0215】
【表1】
【0216】
実施例1~7、参考例8~10および比較例1~10
表2~表4に示す原料および条件で、ポリイソシアネート組成物を得た。
【0217】
すなわち、撹拌機、温度計、還流管、および、窒素導入管を備えた4つ口フラスコに、表中に記載のポリイソシアネート100質量部と、オクタデシル3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオナート(イルガノックス1076、チバ・ジャパン社製、商品名)0.05質量部と、トリデシルホスファイト(JP-310 城北化学社製 商品名)0.05質量部とを仕込み、80℃に昇温した。
【0218】
次いで、上記の混合物に、表中に記載のモノアルコールを、水酸基に対するイソシアネート基の当量比(R(NCO/OH))が、表中の値となるように仕込み、80℃で3時間、ウレタン化反応させた。
【0219】
次いで、表中に記載の反応開始温度に昇温し、イソシアヌレート化触媒としてN-(2-ヒドロキシプロピル)-N,N,N-トリメチルアンモニウム-2-エチルヘキサノエート0.01質量部と溶剤プロピレングリコールメチルエーテルアセテート0.03質量部との混合溶液を、ウレタン化反応生成物に添加し、イソシアヌレート化およびアロファネート化反応させた。
【0220】
次いで、反応熱による発熱を利用し、表中に記載の反応終了温度に達した後、表中に記載のイソシアネート基転化率に達するように、o-トルエンスルホンアミドを0.01質量部添加して、反応を停止させた。
【0221】
そして、得られた反応液を、薄膜蒸留装置(真空度50Pa、温度150℃)に通液して未反応のイソシアネート(表中に記載のポリイソシアネート)を除去した。
【0222】
これにより、ポリイソシアネート組成物を得た。
【0223】
評価
(1)弱溶剤に対する溶解性
ポリイソシアネート組成物1gを、試験管に取り、弱溶剤としてのターペン油(ガムテレピンN ヤスハラケミカル製 商品名 アニリン点27℃)1gを加え、振とう機で30秒間攪拌し、濁りの有無を確認した。
【0224】
さらに、弱溶剤としてのターペン油(ガムテレピンN ヤスハラケミカル製 商品名 アニリン点27℃ )を1g加え、攪拌を繰り返し、濁らない状態を維持できる最大濃度を測定した。
【0225】
そして、濁らない状態を維持できる弱溶剤の最大濃度([弱溶剤の質量/ポリイソシアネート組成物の質量]×100)を、以下の基準で評価した。
【0226】
◎:2000%以上
〇:500%以上2000%未満
△:100%以上500%未満
×:100%未満
(2)塗膜物性
・硬化塗膜の作成
ポリイソシアネート組成物と、アクリルポリオール(オレスターQ-166 三井化学社製)とを、当量比1.0(NCO/OH=1.0)で混合し、固形分濃度50%になるようにシンナー(酢酸エチル:酢酸ブチル:プロピレングリコールメチルエーテルアセテート=1:1:1で混合したもの)を添加し、23℃、5分間混合し、次いで、10分間超音波処理することにより、脱泡して、コーティング剤を得た。
【0227】
得られたコーティング剤を、4milのアプリケーターによって、鋼板(SPCC鋼板、PBN-144処理品)に塗工し、80℃のオーブンで30分加熱し、30℃のオーブンで5日間養生し、硬化膜を得た。
【0228】
・耐溶剤性評価(ラビング試験)
上記の硬化膜を、ラビングテスタ(IMC-0717型 井本製作所社製)にセットし、荷重0.5kgの重りの先にメチルエチルケトンで湿らせた脱脂綿を設置しラビングを行った。塗膜が破れ、基材がむき出しになった回数ラビング往復回数で評価した。
【0229】
そして、以下の基準で、塗膜物性(耐溶剤性)を評価した。
【0230】
◎:100回以上
〇:80回以上100未満
△:20回以上80未満
×:20回未満
【0231】
【表2】
【0232】
【表3】
【0233】
【表4】
図1
図2