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特許7399005飛翔体、非破壊検査装置および飛翔体の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-07
(45)【発行日】2023-12-15
(54)【発明の名称】飛翔体、非破壊検査装置および飛翔体の製造方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 29/12 20060101AFI20231208BHJP
   G01N 29/04 20060101ALI20231208BHJP
【FI】
G01N29/12
G01N29/04
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2020056221
(22)【出願日】2020-03-26
(65)【公開番号】P2021156697
(43)【公開日】2021-10-07
【審査請求日】2022-10-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000006633
【氏名又は名称】京セラ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003029
【氏名又は名称】弁理士法人ブナ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】落合 ひとみ
(72)【発明者】
【氏名】坂東 ちなみ
(72)【発明者】
【氏名】古舘 憲一
【審査官】横尾 雅一
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-174131(JP,A)
【文献】特開2015-113614(JP,A)
【文献】特開2013-209283(JP,A)
【文献】特開2004-020430(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0074830(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 29/00 - G01N 29/52
G01B 17/00 - G01B 17/08
G01H 1/00 - G01H 17/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンクリートの構造物の欠陥検査に用いられる、球状、弾丸状または円柱状の飛翔体であって、粉末状の鉄、酸化アルミニウム、酸化珪素、酸化鉄、酸化マグネシウム、含水珪酸マグネシウム、炭化チタン、窒化チタン、炭窒化チタンおよびフェライトの少なくともいずれかを主成分とし、副成分が熱硬化性樹脂である複合体からなる、飛翔体。
【請求項2】
前記熱硬化性樹脂は、前記複合体の内部で網目状に連結している、請求項1に記載の飛翔体。
【請求項3】
前記複合体は、表層部が内部よりも緻密質である、請求項1または2に記載の飛翔体。
【請求項4】
前記複合体に含まれる気孔の円相当径の尖度Kuは、20以上30以下である、請求項1~3のいずれかに記載の飛翔体。
【請求項5】
前記複合体は球状体からなり、該球状体の径方向の外方に向かって伸びる鍔部および前記径方向の内方に向かって凹む凹設部の少なくともいずれかを複数備えている、請求項1~4のいずれかに記載の飛翔体。
【請求項6】
前記鍔部および前記凹設部は互いに平行に位置する、請求項5に記載の飛翔体。
【請求項7】
前記球状体は、該球状体の中央部に位置する中央鍔部と、該中央鍔部を対称として、その両側に側方鍔部または側方凹設部とを備えている、請求項6に記載の飛翔体。
【請求項8】
前記複合体は弾丸状体からなり、該弾丸状体の軸方向に対して、傾斜する溝を外周面に複数備えている、請求項1~4のいずれかに記載の飛翔体。
【請求項9】
前記複合体は弾丸状体からなり、該弾丸状体の進行方向とは反対の後端部に十字状の羽根を備えている、請求項1~4のいずれかまたは請求項8に記載の飛翔体。
【請求項10】
前記複合体の少なくとも表層部が着色されてなる、請求項1~9のいずれかに記載の飛翔体。
【請求項11】
前記複合体は、少なくとも閉気孔内に液状のマーキング剤を収容してなる、請求項1~10のいずれかに記載の飛翔体。
【請求項12】
請求項1~11のいずれかの飛翔体と、該飛翔体を装填するノズルと、圧縮空気を用いて前記ノズルの内部から前記構造物に向けて前記飛翔体を発射し、前記飛翔体が前記構造物に衝突して生じる弾性波の波形を収録するセンサーと、を備えてなる、非破壊検査装置。
【請求項13】
請求項1~11のいずれかに記載の飛翔体の製造方法であって、乾式加圧成形装置または射出成形装置を用いて成形体を得る工程と、前記成形体を熱処理して複合体を得る工程と、前記複合体をバレル研磨する工程と、を備えてなる、飛翔体の製造方法。
【請求項14】
前記乾式加圧成形装置は、第1椀状曲面と、該第1椀状曲面に接続する第1傾斜面とを有する円柱状の第1上パンチと、該第1上パンチの外周側に、凹状の第1環状曲面と、該第1環状曲面の一方の端部に接続する第2傾斜面と、前記第1環状曲面の他方の端部に接続する下向面とを有する円筒状の第2上パンチと、を有する上パンチセットと、該上パンチセットと上下対称に配置され、第2椀状曲面と、該第2椀状曲面に接続する第3傾斜面とを有する円柱状の第1下パンチと、第1下パンチの外周側に、凹状の第2環状曲面と、
該第2環状曲面の一方の端部に接続する第4傾斜面と、前記第2環状曲面の他方の端部に接続する上向面とを有する円筒状の第2下パンチと、を有する下パンチセットとを備え、前記第1上パンチの第1椀状曲面、前記第2上パンチの第1環状曲面、前記第1下パンチの第2椀状曲面および前記第2下パンチの第2環状曲面によって囲まれる球状内部空間に成形用粉体を充填した後、該成形用粉体を加圧する、請求項13に記載の飛翔体の製造方法。
【請求項15】
前記乾式加圧成形装置は、第1椀状曲面と、該第1椀状曲面に接続する第1環状平面とを有する円柱状の第1上パンチと、該第1上パンチの外周側に、凹状の第1環状曲面と、該第1環状曲面に接続する第2環状平面とを有する円筒状の第2上パンチと、を有する上パンチセットと、該上パンチセットと上下対称に配置され、第2椀状曲面と、該第2椀状曲面に接続する第3環状平面とを有する円柱状の第1下パンチと、第1下パンチの外周側に、凹状の第2環状曲面と、該第2環状曲面に接続する第3環状平面とを有する円筒状の第2下パンチと、を有する下パンチセットとを備え、前記第1上パンチの第1椀状曲面、前記第2上パンチの第1環状曲面、前記第1下パンチの第2椀状曲面および前記第2下パンチの第2環状曲面によって囲まれる球状内部空間に成形用粉体を充填した後、該成形用粉体を加圧する、請求項13に記載の飛翔体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、飛翔体、非破壊検査装置および飛翔体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、コンクリート製の橋、トンネル等の構造物では、経年劣化、浸食等に起因するコンクリートの剥落事故が社会問題となっている。そのため、構造物の欠陥を精度よく評価する装置の開発が求められている。
【0003】
例えば、特許文献1では、圧縮空気を利用して飛翔体を飛ばすためのノズルを備え、ノズルの先端と弾性波を入力するコンクリートの構造物の表面との間を一定距離とし、ノズルの軸心が弾性波を入力する構造物の表面に対して一定の角度となるように設置できる治具を備えた弾性波入力装置が提案されている。そして、飛翔体は、アルミニウムやチタンからなることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2003-83942号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、飛翔体がアルミニウムやチタンからなる場合、構造物への衝突後、河床や海底に落下すると、金属であるが故に、河床や海底の堆積物と同化することができず、汚染源として残り、環境への負荷が大きいという問題があった。
【0006】
また、金属は破壊靭性が大きいため、構造物に衝突しても粉々に破砕されず、サイズの大きな汚染源として残りやすいという問題もあった。
【0007】
本発明は、上記課題を解決すべく案出されたものであり、コンクリートの構造物に衝突して破砕した後、粉々になりやすく、しかも環境に負荷を与えにくい飛翔体、非破壊検査装置および飛翔体の製造方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の飛翔体は、コンクリートの構造物の欠陥検査に用いられる、球状、弾丸状または円柱状の飛翔体であって、粉末状の鉄、酸化アルミニウム、酸化珪素、酸化鉄、酸化マグネシウム、含水珪酸マグネシウム、炭化チタン、窒化チタン、炭窒化チタンおよびフェライトの少なくともいずれかを主成分とし、副成分が熱硬化性樹脂である複合体からなる。
【0009】
本発明の非破壊検査装置は、上記構成の飛翔体と、該飛翔体を装填するノズルと、圧縮空気を用いて前記ノズルの内部から前記構造物に向けて前記飛翔体を発射し、前記飛翔体が前記構造物に衝突して生じる弾性波の波形を収録するセンサーと、を備えてなる。
【0010】
本発明の飛翔体の製造方法は、乾式加圧成形装置または射出成形装置を用いて成形体を得る工程と、前記成形体を焼成して焼結体を得る工程と、前記焼結体をバレル研磨する工程と、を備えてなる。
【発明の効果】
【0011】
本開示の飛翔体は、コンクリートの構造物に衝突して破砕した後、粉々になりやすく、しかも環境に負荷を与えにくい。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本開示の飛翔体を装填した非破壊検査装置の一例を示す模式図である。
図2図1に示す非破壊検査装置に装填可能な飛翔体の一例を示す、(a)は断面図であり、(b)は(a)のA部を拡大した断面図であり、(c)は(a)のB部を拡大した断面図である。
図3図1に示す非破壊検査装置に装填可能な飛翔体の他の例を示す、(a)は断面図であり、(b)は(a)のC部を拡大した断面図であり、(c)は(a)のD部を拡大した断面図である。
図4】本開示の飛翔体を形成する複合体を研磨して得られる観察面を光学顕微鏡で撮影した写真である。
図5図1に示す非破壊検査装置に装填可能な飛翔体の他の例を示す、(a)は正面図であり、(b)は底面図である。
図6図1に示す非破壊検査装置に装填可能な飛翔体の他の例を示す、(a)は正面図であり、(b)は底面図である。
図7図1に示す飛翔体を得るために用いる乾式加圧成形装置の要部の一例を示す、(a)は断面図であり、(b)は(a)のE部を拡大した断面図である。
図8図2に示す飛翔体を得るために用いる乾式加圧成形装置の要部の一例を示す、(a)は断面図であり、(b)は(a)のF部を拡大した断面図である。
図9】本開示の飛翔体を得るために用いる混錬機および射出成形装置に装着された成形型の一例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態について詳細に説明する。ただし、本明細書の全図において、混同を生じない限り、同一部分には同一符号を付し、その説明を適時省略する。
【0014】
図1は本開示の飛翔体を装填した非破壊検査装置の一例を示す模式図である。
【0015】
図1に示す非破壊検査装置40は、コンクリートの構造物32の欠陥を評価するための装置であり、構造物32の欠陥検査に用いられる飛翔体10と、飛翔体10を装填するノズル31と、圧縮空気を用いてノズル31の内部から構造物32に向けて飛翔体10を発射し、飛翔体10が構造物32に衝突して生じる弾性波の波形を収録するセンサー33と、を備えてなる。
【0016】
図1に示すように、ノズル31は、アーム34に所定間隔毎に複数装着されている。図1に示す例では、ノズル31は、アーム34に6個装着されているが、例えば、4個~8個であってもよい。アーム34は長尺状であって、例えば、長さが1.5m~2.5mであり、ノズル31は0.3m~0.4mの間隔毎にアーム34に取付けられている。アーム34は、圧縮空気を供給するための円筒状の支持部材35によって支持されている。また、アーム34は、配管36を挿入するための内部空間34aを有しており、圧縮空気は支持部材35および配管36を通してノズル31に供給される。配管36の各ノズル31への接続部には、電磁バルブ37が取り付けられ、電磁バルブ37を遠隔操作することにより、ノズル31への圧縮空気の供給を開始したり、停止したりする。電磁バルブ37を操作するリード線(図示しない)は、内部空間34aに収納されている。
【0017】
電磁バルブ37を開くと、飛翔体10はノズル31から構造物32に向かって発射され、構造物32に弾性波を入力する。
【0018】
図1に示す構造の場合、ノズル31がアーム34に複数装着されているので、例えば、左端のノズル31から右端のノズル31に向かって順次所定の時間差毎に飛翔体10を発射して、構造物32に弾性波を入力することができる。
【0019】
センサー33は、弾性波の波形を収録するものであり、例えば、接触式の加速度計、非接触式のレーザー変位計等を用いることができる。
【0020】
センサー33には、微弱なアナログ信号を増幅する増幅器、アナログ信号をデジタル信号へ変換するA/Dコンバーター、波形をデジタル信号として記録する波形記録装置(いずれも図示しない)等が接続される。
【0021】
図2は、図1に示す非破壊検査装置に装填可能な飛翔体の一例を示す、(a)は断面図であり、(b)は(a)のA部を拡大した断面図であり、(c)は(a)のB部を拡大した断面図である。
【0022】
図3は、図1に示す非破壊検査装置に装填可能な飛翔体の他の例を示す、(a)は断面図であり、(b)は(a)のC部を拡大した断面図であり、(c)は(a)のD部を拡大した断面図である。
【0023】
図2、3に示す飛翔体10A、10Bは、いずれも球状であって、粉末状の鉄、酸化アルミニウム、酸化珪素、酸化鉄、酸化マグネシウム、含水珪酸マグネシウム(タルク)、炭化チタン、窒化チタン、炭窒化チタンおよびフェライトの少なくともいずれかを主成分とし、副成分が熱硬化性樹脂である複合体からなる。飛翔体10A、10Bは、直径が、例えば、8mm以上12mm以下である。
【0024】
飛翔体は、球状以外、弾丸状または円柱状であってもよい。
【0025】
飛翔体10A、10Bは上記複合体からなると、飛翔体10A、10Bが構造物32に衝突、破砕すると、粉末状の主成分は、粉々になりやすく、しかも主成分に対して、副成分である熱硬化性樹脂による拘束力が働くので、散乱しにくくなる。また、熱硬化性樹脂は、飛翔体の成形工程では、主成分同士を結合させるように働くので、成形体の保形性を向上させることができる。
【0026】
熱硬化性樹脂は、例えば、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、ユリア樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポリイミド樹脂、フラン樹脂、ポリブタジエン樹脂、アイオノマー樹脂、EEA樹脂、AAS樹脂(ASA樹脂)、AS樹脂、ACS樹脂、エチレン酢ビコポリマー、エチレンビニルアルコール共重合樹脂、ABS樹脂、塩化ビニル樹脂、塩素化ポリエチレン樹脂、酢酸繊維素樹脂、フッ素樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリアミド樹脂6,66、ポリアミド樹脂11,12、ポリアリレート樹脂、熱可塑性ポリウレタンエラストマー、液晶ポリマー、ポリエーテルエーテルケトン、ポリサルフォン樹脂、ポリエーテルサルフォン樹脂、高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリブタジエン樹脂、ポリプロピレン樹脂、メタクリル樹脂、メチルペンテンポリマー、MMA樹脂、ビニルエステル樹脂、光硬化型樹脂等である。また、ワックスやグリセリンを含んでいてもよい。
【0027】
ワックスは、脂肪酸エステル、脂肪酸アミド、フタル酸エステル、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス、カルナバワックス、モンタン系ワックス、ウレタン化ワックス、無水マレイン酸変性ワック
スおよびポリグリコール系化合物の少なくともいずれかである。
【0028】
そして、複合体を構成する成分はX線回折装置を用いて同定する。各成分の含有量は、X線回折装置により得られたスペクトルを、リートベルト法を用いて解析することにより求めればよい。本開示における主成分とは、複合体を構成する成分の合計100質量%のうち、50質量%を超える成分のことである。複合体を構成しない成分、例えば、不可避の金属不純物の含有量は、蛍光X線分析装置またはICP発光分光分析装置を用いて求めればよい。
【0029】
熱硬化性樹脂は、複合体の内部で網目状に連結しているとよい。
【0030】
熱硬化性樹脂が、複合体の内部で網目状に連結していると、飛翔体10A、10Bの内部まで主成分が分散した状態になるので、粉末状の主成分は、さらに粉々になりやすく、河床や海底の堆積物に同化しやすくなる。
【0031】
複合体は、表層部が内部よりも緻密質であってもよい。
【0032】
表層部が内部よりも緻密質であると、表層部の機械的強度が高くなるので、飛翔体10A、10Bのノズル31への装填が容易となる。
【0033】
ここで、飛翔体が球状である場合、表層部とは、飛翔体の直径に対して球面10aから中心に向かって深さ方向で10%以内の領域をいい、内部とは、表層部を除く領域をいう。
【0034】
表層部および内部のそれぞれの相対密度は、アルキメデス法に準拠して求めればよい。
【0035】
表層部および内部の各相対密度の差は、例えば、2%以上である。
【0036】
図4は、本開示の飛翔体を形成する複合体を研磨して得られる観察面を光学顕微鏡で撮影した写真である。
【0037】
図4に示すように、複合体は、気孔17を複数有し、分散している。
【0038】
例えば、複合体に含まれる気孔17の円相当径の平均値は、1μm以上4μm以下であり、気孔17の面積占有率は8%以上16%以下である。
【0039】
気孔17の円相当径の尖度Kuは、20以上30以下であってもよい。
【0040】
気孔17の円相当径の尖度Kuがこの範囲であると、気孔17の直径のばらつきが相当抑制されるので、機械的強度の局部的に低い部分が減少し、ノズル31への装填がさらに容易となる。
【0041】
気孔17の円相当径の平均値、面積占有率および尖度Kuは、以下の方法で求めることができる。
【0042】
先ず、JIS R 6010:2000で定める粒度がP320、P600の耐水研磨紙で複合体を順次研磨する。
【0043】
耐水研磨紙による研磨が終了した後、平均粒径が9μmのダイヤモンド砥粒を含むスラリー、その後、平均粒径が3μmのダイヤモンド砥粒を含むスラリーを用いて研磨する。
これらの研磨が終了した後、平均粒径が0.05μmのアルミナ砥粒を含むスラリー用いて研磨することにより、観察面を得る。なお、複合体は、予め樹脂埋めした後、研磨してもよい。
【0044】
観察面を100倍~200倍の倍率で観察し、平均的な範囲を選択して、例えば、面積が0.354mm(横方向の長さが687μm、縦方向の長さが515μm)となる範囲をCCDカメラで撮影して、観察像を得る。
【0045】
この観察像を画像解析ソフト(例えば、三谷商事(株)製、Win ROOF)を用いて解析することによって、各気孔17の円相当径を求めることができる。
【0046】
解析にするに当たり、気孔17の円相当径の閾値は、0.868μmとし、0.868μm未満の円相当径は、平均値、面積占有率および尖度の対象とはしない。
【0047】
ここで、尖度Kuとは、分布のピークと裾が正規分布からどれだけ異なっているかを示す指標(統計量)であり、尖度Ku>0である場合、鋭いピークと長く太い裾を有する分布となり、尖度Ku=0である場合、正規分布となり、尖度Ku<0である場合、分布は丸みがかったピークと短く細い尾を有する分布となる。
【0048】
なお、気孔17の円相当径の尖度Kuは、Excel(登録商標、Microsoft Corporation)に備えられている関数KURTを用いて求めればよい。
【0049】
複合体の少なくとも表層部は着色されていてもよい。
【0050】
表層部が着色されていると、飛翔体10A、10Bの衝撃により構造物32にマーキングされたことが識別しやすくなるため、構造物32に対する次回以降の目標を定めやすくなる。
【0051】
複合体は、少なくとも閉気孔内に液状のマーキング剤を収容していてもよい。
【0052】
閉気孔内に液状のマーキング剤が収容されていると、マーキングの識別をさらに容易にし、誤認識を抑制することができる。
【0053】
マーキング剤は、例えば、メチルブルー、メチルレッド、メチルオレンジ、メチルイエロー、メチルバイオレット等である。
【0054】
図2に示す飛翔体10Aは球状体からなり、球状体の径方向の外方に向かって伸びる鍔部11および径方向の内方に向かって凹む凹設部12を備えている。凹設部12は、外周面12dが凹状に湾曲する第1凹設部12aと、第1凹設部12aに接続し、外周面12eが傾斜する平面状の第2凹設部12bと、第2凹設部12bに接続し、外周面12fが凹状に湾曲する第3凹設部12cと、からなる。
【0055】
飛翔体10Aは、球状体の径方向の外方に向かって伸びる鍔部11および径方向の内方に向かって凹む凹設部12g、12h少なくともいずれかを複数備えているとよい。
【0056】
このような構成であると、クラックの発生起点となりやすい、鍔部11の環状面11cと側面11dとの交差部11eが存在したり、球面10aと第1凹設部12aの外周面12dとの間に位置する第1境界面13aおよび球面10aと第3凹設部12cの外周面12fとの間に位置する第2境界面13bが形成されたりするので、破砕片の微細化が容易となる。
【0057】
また、鍔部11および凹設部12g、12hは互いに平行に位置しているとよい。
【0058】
このような構成であると、飛翔体10Aの直進性が高くなるので、命中精度が向上する。
【0059】
図3に示す飛翔体10Bは球状体からなり、球状体の中央部に位置する中央鍔部11aと、中央鍔部11aを対称として、その両側に側方鍔部11bとを備えている。
【0060】
このような構成であると、クラックの発生起点となりやすい、中央鍔部11aの環状面11cと側面11dとの第1交差部11eや側方鍔部11bの環状面11fと側面11gとの第2交差部11hが存在するので、破砕片の微細化が容易となる。
【0061】
なお、飛翔体10Bは、側方鍔部11bを備えているが、側方鍔部11bを側方凹設部に代えてもよい。
【0062】
図2、3に示す飛翔体10A、10Bは、いずれも鍔部11を備える球状体であるが、飛翔体は回転楕円体であっても、真球体であってもよい。
【0063】
図5、6は、図1に示す非破壊検査装置に装填可能な飛翔体の他の例を示す、(a)は正面図であり、(b)は底面図である。
【0064】
図5に示す飛翔体10Cは、円柱状の基部13aと、基部13aに接続し、先端側に向かって細くなる先端部13bとを備える弾丸状体からなり、弾丸状体の軸方向に対して、傾斜する溝15を外周面13cに複数備えている。
【0065】
飛翔体10Cの軸に対する傾斜角度は、例えば、10°以上30°以下である。
【0066】
図6に示す飛翔体10Dは、円柱状の基部14aと、基部14aに接続し、先端側に向かって細くなる先端部14bとを備える弾丸状体からなり、弾丸状体の進行方向とは反対の後端部に十字状の羽根16を備えている。
【0067】
飛翔体が円柱状または弾丸状である場合、表層部とは、基部13a、14aの直径に対して外周面13c、14cから中心に向かって深さ方向で10%以内の領域をいい、内部とは、表層部を除く領域をいう。
【0068】
飛翔体が図2、3、5、6に示す構造であれば、いずれも直進性は高くなるので、飛翔体の命中精度が向上する。
【0069】
次に、本開示の飛翔体の製造方法の一例について説明する。
【0070】
まず、鉄、酸化アルミニウム、酸化珪素、酸化鉄、炭化チタン、窒化チタン、炭窒化チタンおよびフェライトの少なくともいずれかの粉末と熱硬化性樹脂とを混合した後、噴霧乾燥して顆粒を得る。この顆粒は成形用粉体であり、顆粒から、図7~9に示す成形装置によって成形体を得る。以下、図を用いて詳細に説明する。
【0071】
図7は、図1に示す飛翔体を得るために用いる乾式加圧成形装置の要部の一例を示す、(a)は断面図であり、(b)は(a)のE部を拡大した断面図である。
【0072】
乾式加圧成形装置40は、第1椀状曲面41aと、第1椀状曲面41aに接続する第1
傾斜面41bとを有する円柱状の第1上パンチ41と、第1上パンチ41の外周側に、凹状の第1環状曲面42aと、第1環状曲面42aの一方の端部に接続する第2傾斜面42b、第1環状曲面の他方の端部に接続する下向面42cとを有する円筒状の第2上パンチ42と、を有する上パンチセット43と、上パンチセット43と上下対称に配置され、第2椀状曲面44aと、第2椀状曲面44aに接続する第3傾斜面(図示しない)とを有する円柱状の第1下パンチ44と、第1下パンチ44の外周側に、凹状の第2環状曲面45aと、第2環状曲面45aの一方の端部に接続する第4傾斜面(図示しない)と、第2環状曲面45aの他方の端部に接続する上向面45cとを有する円筒状の第2下パンチ45と、を有する下パンチセット46とを備えている。第1上パンチ51の第1椀状曲面41a、第2上パンチ42の第1環状曲面42a、第1下パンチ44の第2椀状曲面44aおよび第2下パンチ45の第2環状曲面45aによって囲まれる球状内部空間47に成形用粉体48を充填した後、成形用粉体48を加圧して成形体を得る。乾式加圧成形装置40を用いると、球状体の径方向の外方に向かって伸びる鍔部および径方向の内方に向かって凹む複数の凹設部を備える成形体を得ることができる。
【0073】
図8は、図2に示す飛翔体を得るために用いる乾式加圧成形装置の要部の他の例を示す、(a)は断面図であり、(b)は(a)のF部を拡大した断面図である。
【0074】
乾式加圧成形装置50は、第1椀状曲面51aと、第1椀状曲面51aに接続する第1環状平面51bとを有する円柱状の第1上パンチ51と、第1上パンチ51の外周側に、凹状の第1環状曲面52aと、第1環状曲面52aに接続する第2環状平面52bとを有する円筒状の第2上パンチ52と、を有する上パンチセット53と、上パンチセット53と上下対称に配置され、第2椀状曲面54aと、第2椀状曲面54aに接続する第3環状平面(図示しない)とを有する円柱状の第1下パンチ54と、第1下パンチ54の外周側に、凹状の第2環状曲面55aと、第2環状曲面55aに接続する第4環状平面55bと第4環状平面55bとを有する円筒状の第2下パンチ55と、を有する下パンチセット56とを備えている。第1上パンチ51の第1椀状曲面51a、第2上パンチ52の第1環状曲面52a、第1下パンチ54の第2椀状曲面54aおよび第2下パンチ55の第2環状曲面55aによって囲まれる球状内部空間57に成形用粉体58を充填した後、成形用粉体58を加圧して成形体を得る。乾式加圧成形装置50を用いると、球状体の中央部に位置する中央鍔部と、中央鍔部を対称として、その両側に側方鍔部とを備える成形体を得ることができる。
【0075】
乾式加圧成形装置40、50を用いた場合、加圧による成形圧は、例えば、24.5MPa以上34.5MPa以下である。
【0076】
ここで、複合体の表層部が内部よりも緻密質である飛翔体を得るには、成形圧は、24.5MPa以上30MPa以下とすればよい。 図9は、本開示の飛翔体を得るために用いる混錬機および射出成形装置に装着された成形型の一例を示す模式図である。
【0077】
まず、鉄、酸化アルミニウム、酸化珪素、酸化鉄、炭化チタン、窒化チタン、炭窒化チタンおよびフェライトの少なくともいずれかの粉末と熱硬化性樹脂とを混錬機60を用いて混錬する。混練機60は、バッチ式混練機、連続式混練機いずれでもよい。混練することによって得られるペレット61は射出成形装置(図示しない)の供給口71から上型72aと下型72bとを備える成形型72の球状内部空間73に向かって供給され、球状の成形体に成形される。なお、成形型72の内部には、成形型72内で発生したガスを外部に排出するガス抜き部(図示しない)が形成されているとよい。
【0078】
上述した成形装置で得られた成形体は、必要に応じて、液状のマーキング剤を含浸させた後、例えば、130℃~170℃で3時間~6時間熱処理して複合体とすることができ
る。
【0079】
複合体に含まれる気孔の円相当径の尖度Kuが20以上30以下である飛翔体を得るには、150℃~170℃で3時間~6時間熱処理すればよい。
【0080】
そして、複合体をバレル研磨することによって、複合体の球面に残ったバリが除去され、本開示の飛翔体を得ることができる。
【符号の説明】
【0081】
10A~10D 飛翔体
11 鍔部
12 凹設部
13a 基部
13b 先端部
14a 基部
14b 先端部
15 溝
16 羽根
17 気孔
31 ノズル
32 構造物
33 センサー
34 アーム
35 支持部材
36 配管
40 乾式加圧成形装置
41 第1上パンチ
42 第2上パンチ
43 上パンチセット
44 第1下パンチ
45 第2下パンチ
46 下パンチセット
47 球状内部空間
48 成形用紛体
50 乾式加圧成形装置
51 第1上パンチ
52 第2上パンチ
53 上パンチセット
54 第1下パンチ
55 第2下パンチ
56 下パンチセット
57 球状内部空間
58 成形用紛体
60 混練機
61 ペレット
71 供給口
72 成形型
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9