(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-07
(45)【発行日】2023-12-15
(54)【発明の名称】運転支援方法及び運転支援装置
(51)【国際特許分類】
G08G 1/16 20060101AFI20231208BHJP
B60W 30/16 20200101ALI20231208BHJP
B60W 40/04 20060101ALI20231208BHJP
【FI】
G08G1/16 E
B60W30/16
B60W40/04
(21)【出願番号】P 2020058427
(22)【出願日】2020-03-27
【審査請求日】2022-11-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】507308902
【氏名又は名称】ルノー エス.ア.エス.
【氏名又は名称原語表記】RENAULT S.A.S.
【住所又は居所原語表記】122-122 bis, avenue du General Leclerc, 92100 Boulogne-Billancourt, France
(74)【代理人】
【識別番号】240000327
【氏名又は名称】弁護士法人クレオ国際法律特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山口 翔太郎
【審査官】白石 剛史
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-090063(JP,A)
【文献】特開2005-165643(JP,A)
【文献】特開2004-118608(JP,A)
【文献】特開2003-039979(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08G 1/16
B60W 30/16
B60W 40/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自車の前方に停止している先行車を検出した場合、前記先行車から所定の車間距離だけ離れた位置で停止する制御を行うコントローラによる運転支援方法であって、
前記自車が前記先行車の後方位置に停止しているとき、前記自車の後方の所定距離範囲に、前記自車
と前記先行車が走行する
自車線の車線領域と
前記自車と前記先行車以外の車両が走行する
車線領域とが交差する交差領域が存在するか否かを判定し、
前記交差領域が存在すると判定された場合、前記自車の周囲に存在する周囲車両の予測経路を導出し、
前記導出した前記予測経路が前記自車の後方に向かう経路になる周囲車両を後続車として特定し、
停止状態である前記自車の後方に前記後続車が進入してきたとの想定による前記後続車の予測停止領域を算出し、
前記予測停止領域が
、前記自車と前記先行車と前記後続車以外の車両であって対向車を含む他車の走行領域にはみ出すか否かを判定し、
前記後続車の予測停止領域が
前記他車の走行領域にはみ出すと判定されると、前記自車と前記先行車との車間距離を詰める制御を行う
ことを特徴とする運転支援方法。
【請求項2】
請求項1に記載された運転支援方法において、
前記予測停止領域が
前記他車の走行領域にはみ出すと判定された場合であって、かつ、前記自車と前記先行車との車間距離を詰める制御を実施した後の前記後続車の予測停止領域としての新予測停止領域が前記他車の走行領域にはみ出さすか否かを判定し、
前記新予測停止領域が前記他車の走行領域にはみ出さないと判定されると、前記自車と前記先行車との車間距離を詰める制御を行う
ことを特徴とする運転支援方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載された運転支援方法において、
前記予測停止領域が
前記他車の走行領域にはみ出すと判定されると、前記後続車の後方に後々続車が存在し、かつ、前記後々続車の予測経路が前記後続車の予測経路と異なる方向であるか否かを判定し、
前記予測停止領域が
前記他車の走行領域にはみ出すと判定された場合、前記後続車の後方に後々続車が存在し、かつ、前記後々続車の予測経路が前記後続車の予測経路と異なる方向であると判定されると、前記自車と前記先行車との車間距離を詰める制御を行う
ことを特徴とする運転支援方法。
【請求項4】
請求項1から3までの何れか一項に記載された運転支援方法において、
前記自車の周囲に存在する周囲車両の予測経路を、前記周囲車両の方向指示器の点灯状態に基づいて導出し、
前記方向指示器の点灯状態に基づいて導出した予測経路が、前記自車の後方に向かう経路になる周囲車両を前記後続車として特定する
ことを特徴とする運転支援方法。
【請求項5】
請求項1から3までの何れか一項に記載された運転支援方法において、
前記自車の周囲に存在する周囲車両の予測経路を、前記周囲車両が存在する車線に対する寄せ幅に基づいて導出し、
前記車線に対する寄せ幅に基づいて導出した予測経路が、前記自車の後方に向かう経路になる周囲車両を前記後続車として特定する
ことを特徴とする運転支援方法。
【請求項6】
請求項1から3までの何れか一項に記載された運転支援方法において、
前記自車の周囲に存在する周囲車両の予測経路を、前記周囲車両が存在する車線に対するヨー角に基づいて導出し、
前記車線に対するヨー角に基づいて導出した予測経路が、前記自車の後方に向かう経路になる周囲車両を前記後続車として特定する
ことを特徴とする運転支援方法。
【請求項7】
請求項1から3までの何れか一項に記載された運転支援方法において、
前記自車の周囲に存在する周囲車両の予測経路を、前記周囲車両が選択可能な経路先の車両有無と前記周囲車両の停止時間に基づいて導出し、
前記周囲車両が選択可能な経路先の車両有無と前記周囲車両の停止時間に基づいて導出した予測経路が、前記自車の後方に向かう経路になる周囲車両を前記後続車として特定する
ことを特徴とする運転支援方法。
【請求項8】
請求項1から3までの何れか一項に記載された運転支援方法において、
前記自車の周囲に存在する周囲車両の予測経路を、
1. 前記周囲車両の方向指示器の点灯状態
2. 前記周囲車両が存在する車線に対する寄せ幅
3. 前記周囲車両が存在する車線に対するヨー角
4. 前記周囲車両が選択可能な経路先の車両有無と前記周囲車両の停止時間
のうち、二以上の組み合わせに基づいて導出し、
前記二以上の組み合わせに基づいて導出した予測経路が、前記自車の後方に向かう経路になる周囲車両を前記後続車として特定する
ことを特徴とする運転支援方法。
【請求項9】
自車の前方に停止している先行車を検出した場合、前記先行車から所定の車間距離だけ離れた位置で停止する制御を行うコントローラを備える運転支援装置であって、
前記コントローラは、
前記自車が前記先行車の後方位置に停止しているとき、前記自車の後方の所定距離範囲に、前記自車
と前記先行車が走行する
自車線の車線領域と
前記自車と前記先行車以外の車両が走行する
車線領域とが交差する交差領域が存在するか否かを判定する交差領域判定部と、
前記交差領域が存在すると判定された場合、前記自車の周囲に存在する周囲車両の予測経路を導出する周囲車両経路予測部と、
前記導出した前記予測経路が前記自車の後方に向かう経路になる周囲車両を後続車として特定する後続車特定部と、
停止状態である前記自車の後方に前記後続車が進入してきたとの想定による前記後続車の予測停止領域を算出する後続車停止領域算出部と、
前記予測停止領域が
、前記自車と前記先行車と前記後続車以外の車両であって対向車を含む他車の走行領域にはみ出すか否かを判定する車線はみ出し判定部と、
前記後続車の予測停止領域が
前記他車の走行領域にはみ出すと判定されると、前記自車と前記先行車との車間距離を詰める制御を行う車両制御部と、を有する
ことを特徴とする運転支援装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、交差点付近で停止している自車に向かって後続車が進入するシーンにおける運転支援方法及び運転支援装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両の運転を支援する運転支援装置であって、車両の進行方向前方に存在する信号機の点灯情報を取得する点灯情報取得部と、車両の進行方向前方を車両に先行して走行する先行車両の走行情報を取得する走行情報取得部と、点灯情報及び走行情報に基づいて先行車両における速度伝播を予測し、予測結果に基づいて点灯情報を取得した信号機を車両が通過できるか否かを推定する推定部と、を備える装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示された先行技術では、先行車の走行情報と信号機の点灯情報により車両の前方状況を予測し、前方状況予測が信号機通過予測であると車両を進行させている。このため、停止している自車の後方に存在する後続車での前方状況予測が信号機通過予測であると、後続車は信号機通過予測に基づいて自車に向かって発進する。しかし、後続車による前方状況予測が外れて渋滞が継続し、自車の後方に進入してきた後続車が自車線外にはみ出した位置に停止すると、停止した後続車が他車の通行を妨げてしまう、という課題がある。
【0005】
本開示は、上記課題に着目してなされたもので、交差点付近で先行車の後方に停止している自車に向かって後続車が進入するシーンにおいて、後続車の進入スペースを確保することで、他車の通行を阻害する位置での後続車の停止を防止することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本開示は、自車の前方に停止している先行車を検出した場合、先行車から所定の車間距離だけ離れた位置で停止する制御を行うコントローラによる運転支援方法である。自車が先行車の後方位置に停止しているとき、自車の後方の所定距離範囲に、自車と先行車が走行する自車線の車線領域と自車と先行車以外の車両が走行する車線領域とが交差する交差領域が存在するか否かを判定する。交差領域が存在すると判定された場合、自車の周囲に存在する周囲車両の予測経路を導出する。導出した予測経路が自車の後方に向かう経路になる周囲車両を後続車として特定する。停止状態である自車の後方に後続車が進入してきたとの想定による後続車の予測停止領域を算出する。予測停止領域が、自車と先行車と後続車以外の車両であって対向車を含む他車の走行領域にはみ出すか否かを判定する。後続車の予測停止領域が他車の走行領域にはみ出すと判定されると、自車と先行車との車間距離を詰める制御を行う。
【発明の効果】
【0007】
上記課題解決手段を採用したため、交差点付近で先行車の後方に停止している自車に向かって後続車が進入するシーンにおいて、後続車の進入スペースを確保することで、他車の通行を阻害する位置での後続車の停止を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】実施例1の運転支援方法及び運転支援装置が適用された自動運転車両の全体システム構成及び周囲環境予測部の詳細構成を示すブロック構成図である。
【
図2】周囲車両経路予測部において周囲車両の予測経路導出例(a)~(d)を示す説明図である。
【
図3】後々続車判定部において後続車の予測経路と異なる方向の予測経路による後々続車が存在する場合の後々続車判定例を示す説明図である。
【
図4】はみ出し解消予測部において新予測停止領域が他車の走行領域にはみ出さない場合のはみ出し解消予測例を示す説明図である。
【
図5】周囲環境予測部及び車両制御部にて実行される交差点付近で先行車の後方に自車が停止しているときに後続車が自車の後方へ向かって進入するシーンでの運転支援処理の流れを示すフローチャートである。
【
図6】背景技術により丁字路で自車が停止しているときに後続車が自車の後方へ向かって進入するシーンを示す課題説明図である。
【
図7】丁字路付近で自車が停止しているときに後続車が自車の後方へ向かって右折進入するシーン1での運転支援作用を示す作用説明図である。
【
図8】十字路を抜けた位置で自車が停止しているときに後続車が自車の後方に向かって直進進入するシーン2での運転支援作用を示す作用説明図である。
【
図9】十字路を抜けた位置で自車が停止しているときに後続車が自車の後方に向かって直進進入する一方で後々続車が左折により抜けるシーン3での運転支援作用を示す作用説明図である。
【
図10】十字路を抜けた位置で自車が停止しているときに後続車が自車の後方に向かって左折進入する一方で後々続車が直進して抜けるシーン4での運転支援作用を示す作用説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本開示による運転支援方法及び運転支援装置を実施するための形態を、図面に示す実施例1に基づいて説明する。
【実施例1】
【0010】
実施例1における運転支援方法及び運転支援装置は、自動運転モードを選択すると目標経路が生成され、生成された目標経路に沿って走行するように速度及び舵角による車両運動が制御される自動運転車両(運転支援車両の一例)に適用したものである。以下、実施例1の構成を、「全体システム構成」、「周囲環境予測部の詳細構成」、「後続車進入時における運転支援処理構成」に分けて説明する。
【0011】
[全体システム構成(
図1)]
自動運転車両(自車)は、
図1に示すように、物体検出装置1、物体検出統合・追跡部2、自車位置推定装置3、地図記憶装置4、地図内自車位置推定部5、自車経路生成部6、周囲環境予測部7、車両制御部8を自動運転システムとして搭載している。
【0012】
物体検出装置1は、レーザレーダ、ミリ波レーダ、ライダー、カメラなどの物体を検出する車載センサを用い、自車の周囲に存在する物体(例えば、他車、バイク、歩行者、障害物など)の位置、姿勢、大きさ、速度などを検出する。検出結果は、例えば、自車を空中から眺める天頂図において、物体の2次元位置、姿勢、大きさ、速度などを表現する。
【0013】
物体検出統合・追跡部2は、物体検出装置1から得られた物体検出結果に基づいて、各物体に対して一つの2次元位置、姿勢、大きさ、速度などを出力する。即ち、複数の車載センサから得られた複数の物体位置、姿勢、大きさ、速度結果を基に、センサフュージョンなどによって各車載センサの誤差特性なども考慮した上で最も物体位置などの誤差が少なくなるような合理的な一つの2次元位置等を算出する。さらに、異なる時刻に出力された物体位置、姿勢、大きさ、速度などに対して、異なる時刻間における物体の同一性検証(対応付け)を行い、かつ、その対応付けを基に、物体の速度情報を推定する。
【0014】
自車位置推定装置3は、GPS(「Global Positioning System」の略)やオドメトリなど絶対位置を計測するセンサにより自車の絶対位置、即ち、ある基準点に対する自車の位置、姿勢、速度などを計測する。
【0015】
地図記憶装置4は、道路形状や走行車線の情報を含む高精度地図情報を保持しており、高精度地図情報から車線の絶対位置や車線の接続関係、相対位置関係などの自車や他車などが走行する道路に関する道路地図情報を取得する。
【0016】
地図内自車位置推定部5は、自車位置推定装置3により得られた自車の絶対位置と、地図記憶装置4により得られた自車周辺の道路地図情報とに基づいて、道路地図内における自車の位置を推定する。即ち、自車がどの車線をどちら向きに走行しているかなどを取得する。
【0017】
自車経路生成部6は、ドライバが目的地を入力すると、現在地から目的地までを最短距離で結ぶ経路生成則や現在地から目的地までを最短所要時間で結ぶ経路生成則などに基づいて、自車の走行予定経路になる目標経路や目標速度プロファイルを生成する。自車の目標経路や目標速度プロファイルは、自車の属する車線に沿うなどのように交通規則にのっとりながら、さらに他車の走行軌道を基に他車との干渉を回避し、かつ、他車の挙動により自車が急減速、急ハンドルとならないよう滑らかな軌跡により生成する。
【0018】
周囲環境予測部7は、物体検出統合・追跡部2で得られた物体位置情報と、地図内自車位置推定部5で得られた自車の地図内での自車位置情報を基に、自車の周辺に存在する物体の動作とその影響を予測する。なお、周囲環境予測部7の詳細構成は後述する。
【0019】
車両制御部8は、基本制御として、自車経路生成部6において生成された目標経路と目標速度プロファイルに沿う自車の走行速度及び舵角となるように、駆動アクチュエータや制動アクチュエータや舵角アクチュエータへ制御指令を出力する車両運動制御を行う。この基本制御に加え、周囲環境予測部7において自車の周辺に存在する物体の動作が、自車の基本制御を維持できないと予測されるシーンに遭遇すると、各シーンに対応するシーン対応制御を行う。シーン対応制御では、各シーンにおいて目標経路に沿う自動運転走行を維持するのに必要とされる自車の停止・待機・発進の制御や必要に応じた目標経路の修正などの制御が基本制御に加えられる。このシーン対応制御には、自車の前方に停止している先行車を検出した場合、先行車から予め定めた所定の車間距離(例えば2m)だけ離れた位置で自車を停止させる制御が含まれる。そして、交差点付近で先行車の後方に停止している自車に向かって後続車が進入するシーンにおいて、所定の周囲環境予測条件が成立すると、自車と先行車との車間距離を所定の周囲環境予測条件が成立していない時の車間距離(例えば上記2m)よりも小さい、予め定めた車間距離(例えば1m)に変更する事によって自車が先行車との車間距離を詰め、後続車が自車の後方に進入することが可能なスペースを確保する制御が行われる。
【0020】
[周囲環境予測部の詳細構成(
図1~
図4)]
周囲環境予測部7は、交差点付近で先行車の後方に停止している自車に向かって後続車が進入するシーンを対象とし、後続車が自車の後方に向かって進入するときの自車の挙動を決めるため、自車周囲の環境とその影響を予測する。この周囲環境予測部7は、
図1に示すように、物体情報・地図情報取得部71、交差領域判定部72、周囲車両経路予測部73、後続車特定部74、後続車停止領域算出部75、車線はみ出し判定部76、後々続車判定部77、はみ出し解消予測部78、を有する。そして、自車周囲の環境とその影響予測に基づいて、自車Aの挙動を制御する車両制御部8を有する。
【0021】
以下、自車をA、先行車をB、先々行車から前方の車列群をB’、後続車をC、後々続車をC’、対向車をD、他車をEという。また、自車Aの目標経路をTL、後続車Cの予測経路をCL、後々続車C’の予測経路をCL’、対向車Dの予測経路をDL、他車Eの予測経路をELという。また、先行車Bとの車間距離をX、車間領域をXA、後続車Cの予測停止領域をCA、後続車Cの新予測停止領域をCA’、交差領域をCP、自車線をAT、後続車走行車線をCT、対向車走行車線をDT、他車走行車線をET、信号機をTSという。
【0022】
物体情報・地図情報取得部71は、自車Aの周囲に存在する物体情報と自車Aの周囲の地図情報を取得する。ここで、「自車Aの周囲に存在する物体情報」とは、地図上の位置が推定された自車Aを中心とする周囲の地図領域内に存在する先行車B、車列群B’、後続車C、後々続車C’、対向車D、他車Eなどをいう。
【0023】
交差領域判定部72は、自車Aが先行車Bの後方位置に停止しているとき、自車Aの後方の所定距離範囲に、自車Aが走行する走行領域と他車Eが走行する走行領域とが交差する交差領域CPが存在するか否かを判定する。ここで、「自車Aの後方の所定距離範囲」とは、自車Aを中心として所定距離(例えば、30m~100m程度)を半径とする円を描いたとき、例えば、自車Aの後方側半円領域の範囲をいう。「自車Aが走行する走行領域」とは、自車Aと先行車B、又は、自車Aと先行車Bと車列群B’が走行する自車線ATの車線領域をいう。「他車Eが走行する走行領域」とは、自車A以外の車両が走行する車線領域をいう。「交差領域CP」とは、丁字路や十字路などのように、2以上の走行領域が交差する領域をいう。
【0024】
周囲車両経路予測部73は、交差領域CPが存在すると判定された場合、自車Aの周囲に存在する周囲車両(先行車B、車列群B’、後続車C、後々続車C’、対向車D、他車Eなど)の予測経路を導出する。
【0025】
ここで、実施例1では、自車Aの周囲に存在する周囲車両の予測経路を、
1. 周囲車両のウインカ(方向指示器を意味し、以下ではウインカと記載)の点灯状態
2. 周囲車両が存在する車線に対する寄せ幅
3. 周囲車両が存在する車線に対するヨー角
4. 周囲車両が選択可能な経路先の車両有無と周囲車両の停止時間
のうち、二以上の組み合わせに基づいて導出する。
【0026】
周囲車両が後続車Cである場合の具体例について
図2に基づいて説明する。後続車Cのウインカ(方向指示器)のうち、
図2に示すように、右ウインカ9が点灯状態であると、後続車Cの予測経路CLは、停止位置から右折する経路であると導出する。後続車Cが存在する後続車走行車線CTに対する寄せ幅が、
図2に示すように、後続車走行車線CTの中央位置より右側に寄っていると、後続車Cの予測経路CLは、停止位置から右折する経路であると導出する。後続車Cが存在する後続車走行車線CTに対する後続車Cのヨー角β(車線平行軸と車両の前後軸がなす角度)が、
図2に示すように、車線平行軸から右方向に傾いた角度であると、後続車Cの予測経路CLは、停止位置から右折する経路であると導出する。後続車Cが十字路に存在し、
図2に示すように、後続車Cが選択可能な経路先として車両なしの直進経路と車両なしの左折経路があるにもかかわらず、後続車Cが直進も左折もすることなく停止線位置に所定時間以上停止していると、後続車Cの予測経路CLは、停止位置から右折する経路であると導出する。
【0027】
後続車特定部74は、周囲車両の予測経路が導出されると、導出した予測経路が自車Aの後方に向かう経路になる周囲車両を後続車Cとして特定する。即ち、上記1.~4.に示す予測経路導出条件のうち、単独又は二以上の組み合わせに基づいて導出した予測経路が、自車Aの後方に向かう経路になる周囲車両を、後続車Cとして特定する。
【0028】
以下、単独の予測経路導出手法を用いたとき、後続車Cの特定について説明する。
自車Aの周囲に存在する周囲車両の予測経路を、周囲車両のウインカ点灯状態に基づいて導出した場合、導出した予測経路が自車Aの後方に向かう経路になる周囲車両を後続車Cとして特定する。自車Aの周囲に存在する周囲車両の予測経路を、周囲車両が存在する車線に対する寄せ幅に基づいて導出した場合、導出した予測経路が自車Aの後方に向かう経路になる周囲車両を、後続車Cとして特定する。自車Aの周囲に存在する周囲車両の予測経路を、周囲車両が存在する車線に対するヨー角βに基づいて導出した場合、導出した予測経路が自車Aの後方に向かう経路になる周囲車両を、後続車Cとして特定する。自車Aの周囲に存在する周囲車両の予測経路を、周囲車両が選択可能な経路先の車両有無と周囲車両の停止時間に基づいて導出した場合、導出した予測経路が自車Aの後方に向かう経路になる周囲車両を、後続車Cとして特定する。
【0029】
後続車停止領域算出部75は、後続車Cが特定されると、停止状態である自車Aの後方に後続車Cが進入してきたとの想定による後続車Cの予測停止領域CAを算出する。ここで、「後続車Cの予測停止領域CA」は、例えば、
図4に示すように、停止状態である自車Aの後方に向かい、後続車Cが対向車走行車線DTを横切って進入してきたと想定した場合、後続車Cが自車Aと干渉しないで停止するときの後続車占有領域をいう。つまり、自車Aと後続車Cの道路地図上での位置、及び、後続車Cの予測経路CLが特定され、後続車Cの車幅及び車長による車両大きさが明らかであれば、道路地図上に後続車Cの予測停止領域CAを描くことができる。
【0030】
車線はみ出し判定部76は、後続車Cの予測停止領域CAが算出されると、予測停止領域CAが他車E(対向車Dを含む)の走行領域にはみ出すか否かを判定する。例えば、
図4に示す丁字路例の場合、後続車Cの予測停止領域CAが、自車線ATと対向車走行車線DTを分ける白線を跨いでいる。よって、
図4に示す丁字路例の場合は、後続車Cの予測停止領域CAが対向車Dの走行領域である対向車走行車線DTにはみ出すと判定されることになる。
【0031】
後々続車判定部77は、後続車Cの予測停止領域CAが他車E(対向車Dを含む)の走行領域にはみ出すと判定されると、後続車Cの後方に後々続車C’が存在し、かつ、後々続車C’の予測経路CL’が後続車Cの予測経路CLと異なる方向であるか否かを判定する。例えば、
図3に示す十字路の場合、後続車Cの後方に後々続車C’が存在している。しかし、後続車Cの予測経路CLは自車Aの後方に向かう直進経路であるのに対し、後々続車C’の予測経路CL’は、左ウインカ10の点灯により交差領域CPを左折して後続車Cと分かれる左折経路である。よって、
図3に示す十字路例の場合は、後々続車C’の予測経路CL’が後続車Cの予測経路CLと異なる方向であると判定されることになる。
【0032】
はみ出し解消予測部78は、後続車Cの予測停止領域CAが他車E(対向車Dを含む)の走行領域にはみ出すと判定されると、新たに予測される後続車Cの新予測停止領域CA’が他車Eの走行領域にはみ出さなくなるか否かを判定する。ここで、「後続車Cの新予測停止領域CA’」とは、自車Aが先行車Bとの車間距離Xを詰めたとの想定により、予測停止領域CAとは別に新たに予測される後続車Cの停止領域をいう。例えば、
図4に示す丁字路例の場合、後続車Cの予測停止領域CAは、自車線ATと対向車走行車線DTを分ける白線を跨いでいる。しかし、自車Aが先行車Bとの車間距離Xを詰めたとの想定により新たに予測される後続車Cの新予測停止領域CA’は、自車線ATの車線内の位置に描かれる。よって、
図4に示す丁字路例の場合は、新たに予測される後続車Cの新予測停止領域CA’が他車Eの走行領域にはみ出さないと判定されることになる。
【0033】
車両制御部8は、周囲環境予測部7において、後続車Cの予測停止領域CAが他車E(対向車Dを含む)の走行領域にはみ出すと判定されると、自車Aと先行車Bとの車間距離Xを詰める制御を行う。そして、後続車Cの予測停止領域CAが他車E(対向車Dを含む)の走行領域にはみ出さないと判定されると、自車Aは停止を継続する制御を行うことを基本制御とする。ここで、「自車Aと先行車Bとの車間距離Xを詰める制御」とは、車間領域XAによる範囲内で自車Aを先行車Bに向かって少し前方移動させ、自車Aと先行車Bとの車間距離Xを通常時よりも減少させる制御のことをいう。なお、停止状態の自車Aの前端と先行車Bの後端との間に車間領域XAが存在し、車間領域XAが自車Aの前方移動を許容する。例えば、通常時の車間距離Xを3mとした場合、自車Aを2mだけ前方移動させると、自車Aの後方に2m分の余裕スペースが生まれる。
【0034】
この基本制御に加え、周囲環境予測部7のはみ出し解消予測部78において、後続車Cのみが存在する場合、後続車Cの新予測停止領域CA’が他車E(対向車Dを含む)の走行領域にはみ出さないか否かを判定する。そして、車両制御部8は、新予測停止領域CA’が他車E(対向車Dを含む)の走行領域にはみ出さないと判定される状況である場合に限り、自車Aと先行車Bとの車間距離Xを詰める制御を行う。よって、後続車Cの予測停止領域CAが他車E(対向車Dを含む)の走行領域にはみ出すと判定された場合であっても、新予測停止領域CA’が他車E(対向車Dを含む)の走行領域にはみ出すと判定されると、自車Aは停止を継続する制御を行う。
【0035】
さらに、周囲環境予測部7の後々続車判定部77において、後続車Cの後方に後々続車C’が存在する場合、後々続車C’の予測経路CL’が後続車Cの予測経路CLと異なる方向であるか否かを判定する。そして、車両制御部8は、後々続車C’の予測経路CL’が後続車Cの予測経路CLと異なる方向であると判定される状況である場合に限り、自車Aと先行車Bとの車間距離Xを詰める制御を行う。よって、後続車Cの予測停止領域CAが他車E(対向車Dを含む)の走行領域にはみ出すと判定された場合であっても、後々続車C’の予測経路CL’が後続車Cの予測経路CLと同じ方向であると判定されると、自車Aは停止を継続する制御を行う。
【0036】
[後続車進入時における運転支援処理構成(
図5)]
図5は、周囲環境予測部7及び車両制御部8にて実行される交差点付近で先行車Bの後方に自車Aが停止しているときに後続車Cが自車Aの後方へ向かって進入するシーンでの運転支援処理の流れを示す。以下、
図5の各ステップについて説明する。
図5の処理は、所定の制御周期により繰り返し実行される。
【0037】
ステップS1では、スタート、或いは、S3でのNOであるとの判定に続き、そのときの物体情報・地図情報を取得し、ステップS2へ進む。
【0038】
ステップS2では、S1での物体情報・地図情報の取得に続き、自車A・周囲車両(先行車B、車列群B’、後続車C、後々続車C’、対向車D、他車Eなど)の地図内車線を特定し、ステップS3へ進む。
【0039】
ステップS3では、S2での自車・周囲車両の地図内車線の特定に続き、自車Aが先行車Bから所定距離(シーン対応制御で設定された車間距離X)だけ離れた位置に停止しているか否かを判定する。YES(自車Aが先行車Bから所定距離に停止している)の場合はステップS4へ進み、NO(自車Aが先行車Bから所定距離に停止していない)の場合はステップS1へ戻る。
【0040】
ステップS4では、S3での自車Aが先行車Bから所定距離に停止しているとの判定に続き、自車Aの後方に交差領域CP(例えば、丁字路や十字路など)が存在しているか否かを判断する。YES(自車Aの後方に交差領域CPが存在している)の場合はステップS5へ進み、NO(自車Aの後方に交差領域CPが存在していない)の場合はステップS13へ進む。
【0041】
ステップS5では、S4での自車Aの後方に交差領域CPが存在しているとの判定に続き、周囲車両(先行車B、車列群B’、後続車C、後々続車C’、対向車D、他車Eなど)の予測経路を導出し、ステップS6へ進む。
【0042】
ステップS6では、S5での周囲車両の予測経路導出に続き、導出した予測経路が自車Aの後方に向かう経路になる周囲車両を後続車Cとして特定し、ステップS7へ進む。
【0043】
ステップS7では、S6での後続車Cの特定に続き、停止状態である自車Aの後方に後続車Cが進入してきたとの想定に基づいて後続車Cの予測停止領域CAを算出し、ステップS8へ進む。
【0044】
ステップS8では、S7での後続車Cの予測停止領域CAの算出に続き、算出された後続車Cの予測停止領域CAが他車E(対向車Dを含む)の走行領域にはみ出すか否かを判定する。YES(予測停止領域CAが他車Eの走行領域にはみ出す)の場合はステップS9へ進み、NO(予測停止領域CAが他車Eの走行領域にはみ出さない)の場合はステップS13へ進む。
【0045】
ステップS9では、S8での予測停止領域CAが他車Eの走行領域にはみ出すとの判定に続き、後続車Cの後方に後々続車C’が存在せず、後続車Cのみが存在するか否かを判定する。YES(後続車Cのみが存在する)の場合はステップS10へ進み、NO(後続車Cと後々続車C’が存在する)の場合はステップS11へ進む。
【0046】
ステップS10では、S9での後続車Cのみが存在するとの判定に続き、自車Aと先行車Bとの車間距離Xを詰めたとの想定に基づいて、新たに予測される後続車Cの新予測停止領域CA’が他車E(対向車Dを含む)の走行領域にはみ出さないか否かを判定する。YES(新予測停止領域CA’が他車Eの走行領域にはみ出さない)の場合はステップS12へ進み、NO(新予測停止領域CA’が他車Eの走行領域にはみ出す)の場合はステップS13へ進む。
【0047】
ステップS11では、S9での後続車Cと後々続車C’が存在するとの判定に続き、後続車Cの予測経路CLと後々続車C’の予測経路CL’の予測経路方向が異なるか否かを判定する。YES(予測経路CLと予測経路CL’の方向が異なる)の場合はステップS12へ進み、NO(予測経路CLと予測経路CL’の方向が同じ)の場合はステップS13へ進む。
【0048】
ステップS12では、S10又はS11でのYESとの判定に続き、自車Aは、自車Aと先行車Bとの車間距離Xを詰める制御を行い、エンドへ進む。
【0049】
ステップS13では、S4又はS8又はS10又はS11でのNOとの判定に続き、自車Aは、自車Aと先行車Bとの車間距離Xを詰める制御を行なわずに停止を継続し、エンドへ進む。
【0050】
次に、後続車進入シーンでの運転支援技術について説明する。そして、実施例1の作用を、「後続車進入時における運転支援処理作用」、「後続車進入シーン毎の運転支援作用」に分けて説明する。
【0051】
[後続車進入シーンでの運転支援技術について(
図6、
図7)]
後続車進入シーンでの背景技術としては、先行車の走行情報と信号機の点灯情報により車両の前方状況を予測し、前方状況予測が信号機通過予測であると車両を進行させる技術が提案されている(特開2012-56347号公報を参照)。
【0052】
しかし、提案されている技術の場合、停止している自車の後方に存在する後続車での前方状況予測が信号機通過予測であると、後続車は信号機通過予測に基づいて自車に向かって発進することになる。しかし、後続車による前方状況予測が外れて渋滞が継続し、自車の後方に進入してきた後続車が自車線外にはみ出した位置に停止すると、停止した後続車が他車の通行を妨げてしまう、という課題がある。
【0053】
例えば、
図6の上部に示すように、赤の信号機TSに近い先頭車両からの車列B’と先行車Bと交差点付近の自車A(最後尾車両)までが渋滞列を作って停止している状況とする。この状況で信号機TSが赤から青に切り替わり、自車Aの右側後方に存在する後続車Cでの前方状況予測が信号機通過予測になると、後続車Cは信号機通過予測に基づいて自車Aに向かって発進する。しかし、例えば、信号機TSより先の自車線ATも渋滞していて信号機TSが青に切り替わっても先頭車両が発進できないと、後続車Cによる前方状況予測が外れて渋滞列が継続してしまう。このように渋滞列が継続すると、停止している自車Aの後方に進入してきた後続車Cは、自車線ATから対向車走行車線DTまではみ出した
図6の上部に示す位置に停止することになるおそれがある。よって、後続車Cが
図6の上部に示す位置に停止することになった場合、対向車走行車線DTを対向車Dが後続車Cに向かって走行してくると、停止した後続車Cが他車の通行を妨げてしまう。特に、
図6の下部に示すように、停止した後続車Cが対向車Dの通行を阻止するはみ出しであると、対向車Dは、後続車Cの手前位置で停止せざるを得ないばかりでなく、自車Aと後続車Cが再発進して対向車Dが通過できる状況になるまで立ち往生してしまう。よって、立ち往生している対向車Dの後方から対向車走行車線DT上を複数台の車両が走行してくると、対向車Dを含めた複数台の車両が後続車Cの手前位置で停止することになり、対向車走行車線DTを走行する車両の交通流を滞らせる原因になる。
【0054】
上記背景技術に対してその解決手法を検証した結果、
(A) 自車Aの前方に停止している先行車Bを検出すると、先行車Bから所定の車間距離Xだけ離れた位置で自車Aを停止する制御が行われると、自車Aと先行車Bとの間に車間領域XAが介在する。この車間領域XAは、自車Aの停止位置を先行車B側に詰めた位置に変更することが可能なスペース余裕代になる。特に、自動運転車両の場合は、緊急時において咄嗟のマニュアル介入操作にも対応できるようにすることを考慮し、先行車Bとの車間距離Xを十分に確保している。
(B) 停止状態である自車Aの後方に後続車Cが進入してくると予測されるとき、スペース余裕代になっている車間領域XAを利用して自車Aを少し前進させ、自車Aの停止位置を変更すると、自車Aの前方移動分により自車Aの後方スペースが拡大する。そして、拡大した自車Aの後方スペースは、そのまま後続車Cが進入するときの進入スペースを拡大することに繋がる。
という点に着目した。
【0055】
上記着目点に基づく本開示は、自車Aの前方に停止している先行車Bを検出した場合、先行車Bから所定の車間距離Xだけ離れた位置で停止する制御を行うことを前提とする運転支援方法である。自車Aが先行車Bの後方位置に停止しているとき、自車Aの後方の所定距離範囲に、自車Aが走行する走行領域と他車Eが走行する走行領域とが交差する交差領域CPが存在するか否かを判定する。交差領域CPが存在すると判定された場合、自車Aの周囲に存在する周囲車両の予測経路を導出する。導出した予測経路が自車Aの後方に向かう経路になる周囲車両を後続車Cとして特定する。停止状態である自車Aの後方に後続車Cが進入してきたとの想定による後続車Cの予測停止領域CAを算出する。予測停止領域CAが他車Eの走行領域にはみ出すか否かを判定する。後続車Cの予測停止領域CAが他車Eの走行領域にはみ出すと判定されると、自車Aと先行車Bとの車間距離Xを詰める制御を行う、という課題解決手段を採用した。
【0056】
ここで、背景技術と本開示技術を対比するため、丁字路付近(交差領域CP)で自車Aが停止しているときに後続車Cが自車Aの後方へ向かって右折進入するシーン1での運転支援作用を、
図7に基づいて説明する。
【0057】
まず、
図7の上部に示すように、赤の信号機TSに近い先頭車両からの最後尾の自車Aまでが渋滞列を作って停止している状況で、自車Aの右側後方に存在する車両が右ウインカ9を点灯したとする。この場合、自車Aの右側後方に存在する車両に対して導出した予測経路CLが右折により自車Aの後方に向かう経路になることで、この車両が後続車Cとして特定される。後続車Cが特定されると、停止状態である自車Aの後方に後続車Cが右折進入してきたとの想定による後続車Cの予測停止領域CAが算出される。後続車Cの予測停止領域CAが算出されると、予測停止領域CAが対向車Dの走行領域にはみ出すか否かが判定される。
【0058】
そして、後続車Cの予測停止領域CAが対向車Dの走行領域(対向車走行車線DT)にはみ出すと判定されると、
図7の下部に示すように、自車Aと先行車Bとの車間距離Xを詰める制御が行われる。つまり、自車Aの後方に後続車Cが入る空きスペースを確保する譲歩制御として自車Aが少し前進することで、自車Aと先行車Bとの車間距離Xが詰められる。よって、自車Aの後方に進入してきた後続車Cは、
図7の下部に示すように、対向車走行車線DTまではみ出すことなく、自車線ATの範囲内の位置に停止することができる。
【0059】
このように、後続車Cの予測停止領域CAが対向車Dの走行領域にはみ出すと判定されると、自車Aと先行車Bとの車間距離Xを詰めることで、自車Aの後方に後続車Cが右折して入る空きスペースが確保され、後続車Cのスムーズな進入が実現されることになる。このため、丁字路付近で先行車Bの後方に停止している自車Aに向かって後続車Cが進入するシーン1において、後続車Cの進入スペースを確保することで、対向車Dの通行を阻害する位置での後続車Cの停止を防止することができる。
【0060】
ちなみに、
図6に示す丁字路シーンであって、自車Aの先行車Bが発進してから後続車Cが自車Aの後方に進入する場合について説明する。この場合、先行車Bが発進してから自車Aが発進するのに2秒要し、その後、後続車Cが発進するのに2秒要し、さらに後続車Cが対向車走行車線DTから自車線ATに移動するのに2秒要すると、対向車Dは後続車Cの手前位置で6秒待たされる。
【0061】
これに対し、
図7に示す丁字路シーンであって、本開示の解決手段により後続車Cの右ウインカ9を検出したらその時点で自車Aは前に進む場合について説明する。この場合、自車Aが発進してから後続車Cが発進すると、後続車Cは対向車走行車線DTにはみ出すことなく、自車Aの後方に進入することができる。このため、対向車Dが後続車Cの手前位置で待機する待ち時間は0秒(対向車Dの停止なし)となる。
【0062】
[後続車進入時における運転支援処理作用(
図5)]
自車Aが先行車Bから所定距離(シーン対応制御により設定された車間距離X)に停止しているが、自車Aの後方に交差領域CPが存在しない場合、
図5のフローチャートにおいて、S1→S2→S3→S4→S13→エンドへと進む。S13では、S4での自車Aの後方に交差領域CPが存在しないとの判定に基づいて、自車Aは停止が継続される。
【0063】
一方、自車Aが先行車Bから所定距離に停止し、かつ、自車Aの後方に交差領域CPが存在する場合、
図5のフローチャートにおいて、S1→S2→S3→S4→S5→S6→S7→S8へと進む。S5では、S4での自車Aの後方に交差領域CPが存在しているとの判定に基づき、周囲車両(先行車B、車列群B’、後続車C、後々続車C’、対向車D、他車Eなど)の予測経路が導出される。S6では、S5での周囲車両の予測経路導出に続いて、導出した予測経路が自車Aの後方に向かう経路になる周囲車両が後続車Cとして特定される。S7では、S6での後続車Cの特定に続いて、停止状態である自車Aの後方に後続車Cが進入してきたとの想定に基づいて後続車Cの予測停止領域CAが算出される。S8では、S7での後続車Cの予測停止領域CAの算出に続き、後続車Cの予測停止領域CAが他車E(対向車Dを含む)の走行領域にはみ出すか否かが判定される。
【0064】
S8において予測停止領域CAが他車Eの走行領域にはみ出さないと判定されると、S8からS13→エンドへと進む。S13では、自車Aが車間距離Xを詰めなくても他車Eの走行領域にはみ出さないとの判定に基づいて、自車Aは停止が継続される。
【0065】
一方、S8において予測停止領域CAが他車Eの走行領域にはみ出すと判定されると、S9での後々続車存在有無条件、S10での新たなはみ出し条件、S11での後続車Cと後々続車C’の予測経路方向条件により、自車Aの挙動が下記の(a)~(d)に分かれる。
【0066】
(a) 後続車Cのみが存在し、かつ、新予測停止領域CA’が他車Eの走行領域にはみ出さないと判定されると、S8からS9→S10→S12→エンドへ進む。S12では、後続車Cの新予測停止領域CA’が他車Eの走行領域にはみ出さないとの判定に基づいて、自車Aと先行車Bとの車間距離Xを詰める自車制御が行われる。これは、後続車Cが他車Eの走行領域を妨げることなく、前方へ進むことができるようになる場合に限り、自車Aの車間距離Xを減少させることで、無駄な自車制御を無くすことを意図している。即ち、車間距離Xを詰める自車制御は、自車Aにとってシーン対応制御の例外になるため、例外となる自車挙動はできる限り回避したいという技術思想に基づく。
【0067】
(b) 後続車Cのみが存在し、かつ、新予測停止領域CA’が他車Eの走行領域にはみ出すと判定されると、S8からS9→S10→S13→エンドへ進む。S13では、後続車Cの新予測停止領域CA’が他車Eの走行領域にはみ出すとの判定に基づいて、自車Aは停止が継続される。これは、自車Aの車間距離Xを減少させる自車制御を実行しても、自車Aの停止を継続したときと同様に、自車Aの後方に進入してきた後続車Cが他車Eの走行領域を妨げることになる。このため、何れを選択しても同じ結果になるなら、自車Aの停止継続を選択することで、無駄な自車制御を減少させることを意図している。
【0068】
(c) 後続車Cと後々続車C’が存在し、かつ、後続車Cの予測経路CLと後々続車C’の予測経路CL’の予測経路方向が異なると判定されると、S8からS9→S11→S12→エンドへ進む。S12では、予測経路CLと予測経路CL’の予測経路方向が異なるとの判定に基づいて、自車Aと先行車Bとの車間距離Xを詰める自車制御が行われる。これは、後続車Cと後々続車C’が存在し、かつ、予測経路方向が異なる場合、後続車Cが前方へ進むことで、後続車Cにより進路を妨げられていた後々続車C’も前方に進めるようにし、滞りのない交通流を確保することを意図している。
【0069】
(d) 後続車Cと後々続車C’が存在し、かつ、後続車Cの予測経路CLと後々続車C’の予測経路CL’の予測経路方向が同じと判定されると、S8からS9→S11→S13→エンドへ進む。S13では、予測経路CLと予測経路CL’の予測経路方向が同じであるとの判定に基づいて、自車Aは停止が継続される。これは、自車Aの車間距離Xを減少させる自車制御を実行しても、自車Aの停止を継続したときと同様に、自車Aの後方に進入してきた後続車Cと後々続車C’が他車Eの走行領域を妨げることになる。このため、何れを選択しても同じ結果になるなら、自車Aの停止継続を選択することで、無駄な自車制御を減少させることを意図している。
【0070】
[後続車進入シーン毎の運転支援作用(
図8~
図10)]
次に、十字路(交差領域CP)を抜けた位置で自車Aが停止しているときに後続車Cが自車Aの後方に向かって直進進入するシーン2での運転支援作用を、
図8に基づいて説明する。
【0071】
まず、
図8に示すように、十字路(交差領域CP)を抜けた位置で自車Aが停止しているとき、十字路(交差領域CP)を挟んで自車Aの後方位置にウインカを消灯にしたままで自車線ATの中央位置に停止している車両が存在したとする。この場合、自車Aの後方位置に停止している車両に対して導出した予測経路CLが自車Aの後方に向かう直進経路になることで、この車両が後続車Cとして特定される。後続車Cが特定されると、停止状態である自車Aの後方に後続車Cが進入してきたとの想定による後続車Cの予測停止領域CAが算出される。後続車Cの予測停止領域CAが算出されると、予測停止領域CAが他車Eの走行領域にはみ出すか否かが判定される。
【0072】
そして、後続車Cの予測停止領域CAが他車Eの走行領域(他車走行車線ET)にはみ出すと判定されると、自車Aと先行車Bとの車間距離Xを詰める制御が行われる。つまり、自車Aの後方に後続車Cが入る空きスペースを確保する譲歩制御として自車Aが少し前進することで、自車Aと先行車Bとの車間距離Xが詰められる。よって、自車Aの後方に進入してきた後続車Cは、他車走行車線ETまではみ出すことなく、自車線ATの範囲内の位置に停止することができる。
【0073】
このように、後続車Cの予測停止領域CAが他車Eの走行領域にはみ出すと判定されると、自車Aと先行車Bとの車間距離Xを詰めることで、自車Aの後方に後続車Cが入る空きスペースが確保され、後続車Cのスムーズな進入が実現されることになる。このため、十字路を抜けた位置で先行車Bの後方に停止している自車Aに向かって後続車Cが直進進入するシーンにおいて、後続車Cの進入スペースを確保することで、他車Eの通行を阻害する位置での後続車Cの停止を防止することができる。
【0074】
次に、十字路(交差領域CP)を抜けた位置で自車Aが停止しているときに後続車Cが自車Aの後方に向かって直進進入する一方で後々続車C’が左折により抜けるシーン3での運転支援作用を、
図9に基づいて説明する。
【0075】
まず、
図9に示すように、十字路(交差領域CP)を抜けた位置で自車Aが停止しているとき、十字路(交差領域CP)を挟んで自車Aの後方位置にウインカを消灯にしたままで自車線ATの中央位置に停止している車両が存在したとする。さらに、この車両の後方に左ウインカ10を点灯している車両が存在したとする。この場合、自車Aの後方位置に停止している車両に対して導出した予測経路CLが自車Aの後方に向かう直進経路になることで、この車両が後続車Cとして特定される。後続車Cが特定されると、停止状態である自車Aの後方に後続車Cが進入してきたとの想定による後続車Cの予測停止領域CAが算出される。後続車Cの予測停止領域CAが算出されると、予測停止領域CAが他車Eの走行領域にはみ出すか否かが判定される。加えて、後続車Cの後方に予測経路CL’の方向が左折方向である後々続車C’が存在することで、後続車Cの予測経路CLの方向(直進)と後々続車C’の予測経路CL’の方向(左折)が異なるか否かが判定される。
【0076】
そして、後続車Cの予測停止領域CAが他車Eの走行領域(他車走行車線ET)にはみ出すと判定され、かつ、後続車Cの予測経路CLと後々続車C’の予測経路CL’の方向が異なると判定されると、自車Aと先行車Bとの車間距離Xを詰める制御が行われる。つまり、自車Aの後方に後続車Cが入る空きスペースを確保する譲歩制御として自車Aが少し前進することで、自車Aと先行車Bとの車間距離Xが詰められる。よって、自車Aの後方に直進進入してきた後続車Cは、他車走行車線ETまではみ出すことなく、自車線ATの範囲内の位置に停止することができる。そして、後々続車C’は、後続車Cの前進により前方に走行スペースが確保されると、十字路から左折して他車走行車線ETを走り抜けることができる。
【0077】
このように、後続車Cの予測停止領域CAが他車Eの走行領域にはみ出すと判定され、後続車Cと後々続車C’の予測経路CL,CL’の方向が異なると判定されると、自車Aと先行車Bとの車間距離Xを詰める制御が行われる。よって、自車Aの後方に後続車Cが入る空きスペースが確保され、後続車Cのスムーズな直進進入が実現されるのに加えて、後々続車C’の左折走行が併せて確保されることになる。このため、十字路を抜けた位置で先行車Bの後方に停止している自車Aに向かって後続車Cが直進進入し、後々続車C’が左折走行するシーンにおいて、後続車Cの進入スペースを確保することで、他車Eの通行を阻害する位置での後続車Cの停止を防止できる。加えて、後続車Cにより進路を妨げられていた後々続車C’のスムーズな左折走行を確保することができる。
【0078】
次に、十字路(交差領域CP)を抜けた位置で自車Aが停止しているときに後続車Cが自車Aの後方に向かって左折進入する一方で後々続車C’が直進して抜けるシーン4での運転支援作用を、
図10に基づいて説明する。
【0079】
まず、
図10に示すように、十字路(交差領域CP)を抜けた位置で自車Aが停止しているとき、十字路(交差領域CP)を挟んで自車Aの左側後方位置に左ウインカ10を点灯し、後続車走行車線CTの左側に寄った位置に停止している車両が存在したとする。さらに、この車両の後方にウインカを消灯し、後続車走行車線CTの右側に寄った位置に停止している車両が存在したとする。この場合、自車Aの左側後方位置に停止している車両に対して導出した予測経路CLが自車Aの後方に向かう左折経路になることで、この車両が後続車Cとして特定される。後続車Cが特定されると、停止状態である自車Aの後方に後続車Cが進入してきたとの想定による後続車Cの予測停止領域CAが算出される。後続車Cの予測停止領域CAが算出されると、予測停止領域CAが他車Eの走行領域にはみ出すか否かが判定される。加えて、後続車Cの後方に予測経路CL’の方向が直進方向である後々続車C’が存在することで、後続車Cの予測経路CLの方向(左折)と後々続車C’の予測経路CL’の方向(直進)が異なるか否かが判定される。
【0080】
そして、後続車Cの予測停止領域CAが他車Eの走行領域(他車走行車線ET)にはみ出すと判定され、かつ、後続車Cの予測経路CLと後々続車C’の予測経路CL’の方向が異なると判定されると、自車Aと先行車Bとの車間距離Xを詰める制御が行われる。つまり、自車Aの後方に後続車Cが入る空きスペースを確保する譲歩制御として自車Aが少し前進することで、自車Aと先行車Bとの車間距離Xが詰められる。よって、自車Aの後方に左折進入してきた後続車Cは、後続車走行車線CTまではみ出すことなく、自車線ATの範囲内の位置に停止することができる。そして、後々続車C’は、後続車Cの前進により前方に走行スペースが確保されると、十字路の後続車走行車線CTを直進走行により走り抜けることができる。
【0081】
このように、後続車Cの予測停止領域CAが他車Eの走行領域にはみ出すと判定され、後続車Cと後々続車C’の予測経路CL,CL’の方向が異なると判定されると、自車Aと先行車Bとの車間距離Xを詰める制御が行われる。よって、自車Aの後方に後続車Cが入る空きスペースが確保され、後続車Cのスムーズな左折進入が実現されるのに加えて、後々続車C’の直進走行が併せて確保されることになる。このため、十字路を抜けた位置で先行車Bの後方に停止している自車Aに向かって後続車Cが左折進入し、後々続車C’が直進走行するシーンにおいて、後続車Cの進入スペースを確保することで、他車Eの通行を阻害する位置での後続車Cの停止を防止できる。加えて、後続車Cにより進路を妨げられていた後々続車C’のスムーズな直進走行を確保することができる。
【0082】
以上説明したように、実施例1の自動運転車両における運転支援方法及び運転支援装置にあっては、下記に列挙する効果を奏する。
【0083】
(1) 自車Aの前方に停止している先行車Bを検出した場合、先行車Bから所定の車間距離Xだけ離れた位置で停止する制御を行うコントローラ(自動運転制御システム)による運転支援方法であって、
自車Aが先行車Bの後方位置に停止しているとき、自車Aの後方の所定距離範囲に、自車Aが走行する走行領域と他車Eが走行する走行領域とが交差する交差領域CPが存在するか否かを判定し、
交差領域CPが存在すると判定された場合、自車Aの周囲に存在する周囲車両の予測経路を導出し、
導出した予測経路が自車Aの後方に向かう経路になる周囲車両を後続車Cとして特定し、
停止状態である自車Aの後方に後続車Cが進入してきたとの想定による後続車Cの予測停止領域CAを算出し、
予測停止領域CAが他車Eの走行領域にはみ出すか否かを判定し、
後続車Cの予測停止領域CAが他車Eの走行領域にはみ出すと判定されると、自車Aと先行車Bとの車間距離Xを詰める制御を行う(
図7)。
このため、交差点付近で先行車Bの後方に停止している自車Aに向かって後続車Cが進入するシーンにおいて、後続車Cの進入スペースを確保することで、他車Eの通行を阻害する位置での後続車Cの停止を防止する運転支援方法を提供することができる。即ち、算出した予測停止領域CAが他車Eの走行領域にはみ出す場合は、自車Aは先行車Bとの車間距離Xを減少させることとなるので、後続車Cの停止領域がそれに伴い前方へ移動することとなる。よって、他車Eの走行領域へのはみ出しが小さくなり、後続車Cが前方へ進むことができるようになる。
【0084】
(2) 予測停止領域CAが他車Eの走行領域にはみ出すと判定された場合であって、かつ、自車Aと先行車Bとの車間距離Xを詰める制御を実施した後の後続車Cの予測停止領域CAとしての新予測停止領域CA’が他車Eの走行領域にはみ出すか否かを判定し、
新予測停止領域CA’が他車Eの走行領域にはみ出さないと判定されると、自車Aと先行車Bとの車間距離Xを詰める制御を行う(
図4)。
このため、後続車Cが他車Eの走行領域を妨げることなく前方へ進むことができるようになる場合にのみ自車Aの車間距離Xが減少されることで、自車Aの前方移動による車間距離Xを詰める制御を必要最小限に抑えることができる。
【0085】
(3) 予測停止領域CAが他車Eの走行領域にはみ出すと判定されると、後続車Cの後方に後々続車C’が存在し、かつ、後々続車C’の予測経路CL’が後続車Cの予測経路CLと異なる方向であるか否かを判定し、
予測停止領域CAが他車Eの走行領域にはみ出すと判定された場合、後続車Cの後方に後々続車C’が存在し、かつ、後々続車C’の予測経路CL’が後続車Cの予測経路CLと異なる方向であると判定されると、自車Aと先行車Bとの車間距離Xを詰める制御を行う(
図3)。
このため、後続車Cの後方に後々続車C’が存在し、かつ、予測経路CL、CL’が異なる方向である場合、自車Aの車間距離Xを詰める制御に伴って後続車Cが前方へ進むことで、後続車Cにより進路を妨げられていた後々続車C’も前方へ進むことができる。
【0086】
(4) 自車Aの周囲に存在する周囲車両の予測経路を、周囲車両の方向指示器(ウインカ)の点灯状態に基づいて導出し、
方向指示器(ウインカ)の点灯状態に基づいて導出した予測経路が、自車Aの後方に向かう経路になる周囲車両を後続車Cとして特定する(
図2)。
このため、方向指示器(ウインカ)の点灯状態によりあらわれる直進意図・右折意図・左折意図を周囲車両の経路予測に反映させることで、周囲車両の中から後続車Cを精度よく特定することができる。
【0087】
(5) 自車Aの周囲に存在する周囲車両の予測経路を、周囲車両が存在する車線に対する寄せ幅に基づいて導出し、
車線に対する寄せ幅に基づいて導出した予測経路が、自車Aの後方に向かう経路になる周囲車両を後続車Cとして特定する(
図2)。
このため、車体を車線左側に寄せている左折意図や車体を車線右側に寄せている右折意図を周囲車両の経路予測に反映させることで、周囲車両の中から後続車Cを精度よく特定することができる。
【0088】
(6) 自車Aの周囲に存在する周囲車両の予測経路を、周囲車両が存在する車線に対するヨー角βに基づいて導出し、
車線に対するヨー角βに基づいて導出した予測経路が、自車Aの後方に向かう経路になる周囲車両を後続車Cとして特定する(
図2)。
このため、車体を車線平行軸から左側に傾けている左折意図や車体を車線平行軸から右側に傾けている右折意図を周囲車両の経路予測に反映させることで、周囲車両の中から後続車Cを精度よく特定することができる。
【0089】
(7) 自車Aの周囲に存在する周囲車両の予測経路を、周囲車両が選択可能な経路先の車両有無と周囲車両の停止時間に基づいて導出し、
周囲車両が選択可能な経路先の車両有無と周囲車両の停止時間に基づいて導出した予測経路が、自車Aの後方に向かう経路になる周囲車両を後続車Cとして特定する(
図2)。
このため、周囲車両が選択可能な経路先の車両有無と周囲車両の停止時間を周囲車両の経路予測に反映させることで、周囲車両の中から後続車Cを精度よく特定することができる。即ち、周囲車両の進行方向に他車が存在しない(進もうとすれば進める)にもかかわらず、周囲車両が停止を続けている場合、周囲車両は他車が存在しない進行方向への進行意図がないということを予測することができる。
【0090】
(8) 自車Aの周囲に存在する周囲車両の予測経路を、
1. 周囲車両の方向指示器(ウインカ)の点灯状態
2. 周囲車両が存在する車線に対する寄せ幅
3. 周囲車両が存在する車線に対するヨー角β
4. 周囲車両が選択可能な経路先の車両有無と周囲車両の停止時間
のうち、二以上の組み合わせに基づいて導出し、
二以上の組み合わせに基づいて導出した予測経路が、自車Aの後方に向かう経路になる周囲車両を後続車Cとして特定する(
図2)。
このため、複数の経路予測条件を周囲車両の経路予測に反映させることで、一つの経路予測条件により周囲車両の中から後続車Cを特定する場合に比べ、より精度良く後続車Cを特定することができる。
【0091】
(9) 自車Aの前方に停止している先行車Bを検出した場合、先行車Bから所定の車間距離Xだけ離れた位置で停止する制御を行うコントローラ(自動運転制御システム)を備える運転支援装置であって、
コントローラ(自動運転制御システム)は、
自車Aが先行車Bの後方位置に停止しているとき、自車Aの後方の所定距離範囲に、自車Aが走行する走行領域と他車Eが走行する走行領域とが交差する交差領域CPが存在するか否かを判定する交差領域判定部72と、
交差領域CPが存在すると判定された場合、自車Aの周囲に存在する周囲車両の予測経路を導出する周囲車両経路予測部73と、
導出した予測経路が自車Aの後方に向かう経路になる周囲車両を後続車Cとして特定する後続車特定部74と、
停止状態である自車Aの後方に後続車Cが進入してきたとの想定による後続車Cの予測停止領域CAを算出する後続車停止領域算出部75と、
予測停止領域CAが他車Eの走行領域にはみ出すか否かを判定する車線はみ出し判定部76と、
後続車Cの予測停止領域CAが他車Eの走行領域にはみ出すと判定されると、自車Aと先行車Bとの車間距離Xを詰める制御を行う車両制御部8と、を有する(
図1)。
このため、交差点付近で先行車Bの後方に停止している自車Aに向かって後続車Cが進入するシーンにおいて、後続車Cの進入スペースを確保することで、他車Eの通行を阻害する位置での後続車Cの停止を防止する運転支援装置を提供することができる。
【0092】
以上、本開示の運転支援方法及び運転支援装置を、実施例1に基づき説明してきた。しかし、具体的な構成については、この実施例1に限られるものではなく、特許請求の範囲の各請求項に係る発明の要旨を逸脱しない限り、設計の変更や追加などは許容される。
【0093】
実施例1では、予測停止領域CAが他車Eの走行領域にはみ出すと判定され、かつ、新たに予測される後続車Cの新予測停止領域CA’が他車Eの走行領域にはみ出すと判定されると、自車Aは停止を継続する例を示した。このように、自車が停止を継続することで後続車Cが自車Aの後方に進入してくると他車Eの走行領域を妨げることが予測される場合、例えば、車々間通信などにより自車Aから後続車Cへの情報伝達が可能であると、後続車Cに対して停止線位置での停止継続情報を送信するようにしても良い。
【0094】
実施例1では、自車経路生成部6として、ドライバが目的地を入力すると、自車の現在地から目的地までを結ぶ走行予定経路としての目標経路TLや目標速度プロファイルを予め生成する例を示した。しかし、自車経路としては、目標経路を予め生成しない場合においても、自車の現在地から目的地までを結ぶ道路単位の走行ルートを決めると、周囲物体挙動予測などに基づいて、車線単位の走行予定経路を算出により求めるようにしても良い。さらに、例えば、自車が先行車追従の運転支援車両の場合、特定された先行車毎に自車の走行予定経路を算出により求めるようにしても良い。
【0095】
実施例1では、本開示の運転支援方法及び運転支援装置を、目標経路に沿って走行するように車両運動が制御される自動運転車両に適用する例を示した。しかし、本開示の運転支援方法及び運転支援装置は、自動運転車両に限らず、オートクルーズ機能やレーンキープ機能などを備え、少なくともステアリング操作/アクセル操作/ブレーキ操作の何れか一つの運転操作を支援する運転支援車両に対しても適用することができる。また、本開示の運転支援方法及び運転支援装置を適用する車両としては、エンジン車、ハイブリッド車、電気自動車、等のあらゆる種類の車両に適用することができる。
【符号の説明】
【0096】
1 物体検出装置
2 物体検出統合・追跡部
3 自車位置推定装置
4 地図記憶装置
5 地図内自車位置推定部
6 自車経路生成部
7 周囲環境予測部
71 物体情報・地図情報取得部
72 交差領域判定部
73 周囲車両経路予測部
74 後続車特定部
75 後続車停止領域算出部
76 車線はみ出し判定部
77 後々続車判定部
78 はみ出し解消予測部
8 車両制御部
A 自車
B 先行車
B’ 車列群
C 後続車
C’ 後々続車
D 対向車
E 他車
TL 自車Aの目標経路
CL 後続車Cの予測経路
CL’ 後々続車C’の予測経路
DL 対向車Dの予測経路
EL 他車Eの予測経路
X 車間距離
XA 車間領域
CA 後続車Cの予測停止領域
CA’ 後続車Cの新予測停止領域
CP 交差領域
AT 自車線
CT 後続車走行車線
DT 対向車走行車線
ET 他車走行車線
TS 信号機