(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-07
(45)【発行日】2023-12-15
(54)【発明の名称】制御弁、取得装置、取得方法及び取得プログラム
(51)【国際特許分類】
F15B 9/08 20060101AFI20231208BHJP
G05B 23/02 20060101ALI20231208BHJP
【FI】
F15B9/08 G
G05B23/02 Z
(21)【出願番号】P 2020065179
(22)【出願日】2020-03-31
【審査請求日】2023-03-01
(73)【特許権者】
【識別番号】503405689
【氏名又は名称】ナブテスコ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【氏名又は名称】森下 賢樹
(72)【発明者】
【氏名】岡本 武史
【審査官】所村 陽一
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-148402(JP,A)
【文献】特開2018-124183(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F15B 9/08
G05B 23/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体を入力する第1ポート
と、前記第1ポートから入力された前記流体をアクチュエータに供給する第2ポート
と、前記アクチュエータへ供給した前記流体を排出する第3ポート
と、パイロットスプールと、を有するパイロットバルブであって、前記パイロットスプールは、前記第2ポートを閉じる位置と、前記第1ポートと前記第2ポートとを連通する位置と、前記第2ポートと前記第3ポートとを連通する位置と、に移動可能である、前記パイロットバルブと、
前
記パイロットスプールを駆動する駆動制御部と、
前記パイロットスプールを駆動させたとき、前記パイロットスプールの実位置と、当該実位置における前記アクチュエータに流れる前記流体の流量に関係する流量関係パラメータの値と、を取得する第1取得部と、
前記実位置と該実位置における流量関係パラメータの値とに基づいて、前記第1ポートと前記第2ポートとが連通したときの前記パイロットスプールの実位置である第1位置と、前記第3ポートと前記第2ポートとが連通したときの前記パイロットスプールの実位置である第2位置と、前記第1位置と前記第2位置との間の第1距離と、のうちの少なくとも1つの値を取得する第2取得部と、
を備える、制御弁。
【請求項2】
前記アクチュエータは、前記パイロットバルブから供給される前記流体によって移動するスプールであるメインスプールを有するメインバルブであり、
前記流量関係パラメータは、前記メインスプールの移動速度である、請求項1に記載の制御弁。
【請求項3】
前記アクチュエータは、前記パイロットバルブから供給される前記流体によって移動するスプールであるメインスプールを有するメインバルブであり、
前記流量関係パラメータは、前記メインバルブに供給される前記流体の流量である、請求項1に記載の制御弁。
【請求項4】
前記流量関係パラメータは、前記パイロットスプールを駆動するソレノイドに流れる駆動電流又は前記ソレノイドにかかる駆動電圧である、請求項1に記載の制御弁。
【請求項5】
前記少なくとも1つの値と基準値との比較に基づいて、前記パイロットスプールの状態を推定する推定部をさらに備える、請求項1乃至4のいずれか1項に記載の制御弁。
【請求項6】
前記少なくとも1つの値は、前記第1距離であり、
前記基準値は、前記パイロットスプールについて最初に取得された前記第1距離である、請求項5に記載の制御弁。
【請求項7】
前記アクチュエータは、前記パイロットバルブから供給される前記流体によって移動するスプールであるメインスプールを有するメインバルブであり、
前記パイロットバルブ及び前記メインバルブは、前記パイロットスプールの位置に応じて燃料供給量が制御されるエンジンが有する複数の気筒のそれぞれに設けられ、
前記少なくとも1つの値は、前記第1距離であり、
前記基準値は、他の気筒に設けられた前記パイロットバルブにおいて取得された前記第1距離に基づいて設定される、請求項5に記載の制御弁。
【請求項8】
前記少なくとも1つの値は、前記第1距離であり、
前記第2取得部は、第1の時点で前記第1距離を取得し、前記第1の時点よりも後の第2の時点で前記第1距離を取得し、
前記基準値は、前記第1の時点から前記第2の時点までの前記パイロットスプールの駆動時間と、前記第1の時点で取得した前記第1距離と前記第2の時点で取得した前記第1距離との比較とに基づいて設定される、請求項5に記載の制御弁。
【請求項9】
前記少なくとも1つの値は、前記第1位置と前記第2位置とを含み、
前記第2取得部は、前記第2ポートが遮断され、前記アクチュエータに前記流体が供給されないときの前記パイロットスプールの位置である中立位置と前記第1位置との間の第2距離と、前記中立位置と前記第2位置との間の第3距離とをさらに取得し、
前記推定部は、前記第2距離と前記第3距離との比較に基づいて、前記パイロットスプールの状態を推定する、請求項5に記載の制御弁。
【請求項10】
前記少なくとも1つの値は、前記第1距離であり、
前記第2取得部は、第1の時点で前記第1距離を取得し、前記第1の時点よりも後の第2の時点で前記第1距離を取得し、
前記推定部は、前記第1の時点で取得された第1距離と、前記第2の時点で取得された第1距離との比較に基づいて、前記流体の清浄度を推定する清浄度推定部をさらに含む、請求項5に記載の制御弁。
【請求項11】
前記パイロットスプールが駆動された時間の累積値である累積駆動時間を計測する計測部をさらに含み、
前記清浄度推定部は、前記累積駆動時間に基づいて、前記流体の清浄度を推定する、請求項10に記載の制御弁。
【請求項12】
前記少なくとも1つの値に関する情報を外部に出力する出力部をさらに備える、請求項5から11のいずれかに記載の制御弁。
【請求項13】
前記出力部は、前記第1距離が前記基準値以下である場合に、前記パイロットバルブの交換を推奨する旨を報知する報知部を含む、請求項12に記載の制御弁。
【請求項14】
前記第1取得部は、所定条件が満たされる場合、前記実位置と前記流量関係パラメータの値とを取得する、請求項1から13のいずれか1項に記載の制御弁。
【請求項15】
前記所定条件は、前記パイロットバルブ又は前記アクチュエータの固着防止動作が実行されることを含む、請求項14に記載の制御弁。
【請求項16】
前記所定条件は、前記パイロットスプールの位置に応じて燃料が供給されるエンジンが停止していることを含む、請求項14に記載の制御弁。
【請求項17】
前記アクチュエータは、前記パイロットバルブから供給される前記流体によって移動するスプールであるメインスプールを有するメインバルブであり、
前記所定条件は、前記エンジンに前記燃料が供給されない位置に、前記メインスプールが所定時間以上留まっていることを含む、請求項16に記載の制御弁。
【請求項18】
流体を入力する第1ポート
と、前記第1ポートから入力された前記流体をメインバルブに供給する第2ポート
と、前記メインバルブへ供給した前記流体を排出する第3ポート
と、パイロットスプールと、を有するパイロットバルブであって、前記パイロットスプールは、前記第2ポートを閉じる位置と、前記第1ポートと前記第2ポートとを連通する位置と、前記第2ポートと前記第3ポートとを連通する位置と、に移動可能である、前記パイロットバルブと、
前
記パイロットスプールを駆動する駆動制御部と、
前記パイロットスプールを駆動させたとき、前記パイロットスプールの実位置と、当該実位置における前記メインバルブが有するスプールであるメインスプールの移動速度と、を取得する第1取得部と、
前記実位置と該実位置における前記メインスプールの移動速度とに基づいて、前記第1ポートと前記第2ポートとが連通したときの前記パイロットスプールの位置である第1位置と前記第3ポートと前記第2ポートとが連通したときの前記パイロットスプールの位置である第2位置との間の距離を取得する第2取得部と、
前記距離と基準値との比較に基づいて、前記パイロットスプールの状態を推定する推定部と、
を備える、制御弁。
【請求項19】
流体を入力する第1ポート
と、前記第1ポートから入力された前記流体をアクチュエータに供給する第2ポート
と、前記アクチュエータへ供給した前記流体を排出する第3ポート
と、パイロットスプールと、を有するパイロットバルブの
前記パイロットスプールを駆動する駆動制御部
であって、前記パイロットスプールは、前記第2ポートを閉じる位置と、前記第1ポートと前記第2ポートとを連通する位置と、前記第2ポートと前記第3ポートとを連通する位置と、に移動可能である、前記駆動制御部と、
前記パイロットスプールを駆動させたとき、前記パイロットスプールの実位置と、当該実位置における前記アクチュエータに流れる前記流体の流量に関係する流量関係パラメータの値と、を取得する第1取得部と、
前記実位置と該実位置における流量関係パラメータの値とに基づいて、前記第1ポートと前記第2ポートとが連通したときの前記パイロットスプールの位置である第1位置と、前記第3ポートと前記第2ポートとが連通したときの前記パイロットスプールの位置である第2位置と、前記第1位置と前記第2位置との間の第1距離と、のうちの少なくとも1つの値を取得する第2取得部と、
を備える、取得装置。
【請求項20】
流体を入力する第1ポート
と、前記第1ポートから入力された前記流体をアクチュエータに供給する第2ポート
と、前記アクチュエータへ供給した前記流体を排出する第3ポート
と、パイロットスプールと、を有するパイロットバルブの
前記パイロットスプールを駆動するステップ
であって、前記パイロットスプールは、前記第2ポートを閉じる位置と、前記第1ポートと前記第2ポートとを連通する位置と、前記第2ポートと前記第3ポートとを連通する位置と、に移動可能である、ステップと、
前記パイロットスプールを駆動させたとき、前記パイロットスプールの実位置と、当該実位置における前記アクチュエータに流れる前記流体の流量に関係する流量関係パラメータの値と、を取得するステップと、
前記実位置と該実位置における流量関係パラメータの値とに基づいて、前記第1ポートと前記第2ポートとが連通したときの前記パイロットスプールの位置である第1位置と、前記第3ポートと前記第2ポートとが連通したときの前記パイロットスプールの位置である第2位置と、前記第1位置と前記第2位置との間の第1距離と、のうちの少なくとも1つの値を取得するステップと、
を含む、取得方法。
【請求項21】
コンピュータを、
流体を入力する第1ポート
と、前記第1ポートから入力された前記流体をアクチュエータに供給する第2ポート
と、前記アクチュエータへ供給した前記流体を排出する第3ポート
と、パイロットスプールと、を有するパイロットバルブの
前記パイロットスプールを駆動する駆動制御部
であって、前記パイロットスプールは、前記第2ポートを閉じる位置と、前記第1ポートと前記第2ポートとを連通する位置と、前記第2ポートと前記第3ポートとを連通する位置と、に移動可能である、前記駆動制御部と、
前記パイロットスプールを駆動させたとき、前記パイロットスプールの実位置と、当該実位置における前記アクチュエータに流れる前記流体の流量に関係する流量関係パラメータの値と、を取得する第1取得部と、
前記実位置と該実位置における流量関係パラメータの値とに基づいて、前記第1ポートと前記第2ポートとが連通したときの前記パイロットスプールの位置である第1位置と、前記第3ポートと前記第2ポートとが連通したときの前記パイロットスプールの位置である第2位置と、前記第1位置と前記第2位置との間の第1距離と、のうちの少なくとも1つの値を取得する第2取得部と、
として機能させるための取得プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、制御弁、取得装置、取得方法及び取得プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、油圧サーボ弁の故障を自動的に診断する方法が開示される。特許文献1に記載方法では、サーボ弁のスプール位置の指令値と実際のスプール位置との偏差とを比較することにより、サーボ弁が故障したか否かを判断している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明者らは、パイロットバルブのスプールの位置を制御することによりアクチュエータに供給される流体の流量を制御する制御弁について以下の認識を得た。このような制御弁では、パイロットバルブの駆動に応じてそのスプールの摩耗や変形等が生じる。摩耗や変形が進行した場合、故障や不具合が生じる場合がある。その結果、この制御弁を用いるエンジン等が正常に動作しなくなる。これを抑制するためには、制御弁に故障や不具合が発生する前に、その制御弁の修理や交換等を行うことが重要である。このような観点から、制御弁の修理や交換等の時期を的確に判断するために、このような処置を行うべきか否かを判断するための情報が求められる。
【0005】
本発明は、こうした課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、制御弁の修理や交換等の時期を的確に判断するための情報を算出する技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のある態様の制御弁は、流体を入力する第1ポート、前記第1ポートから入力された前記流体をアクチュエータに供給する第2ポート、及び前記アクチュエータへ供給した前記流体を排出する第3ポート、の連通状態をスプールの実位置に応じて変えるパイロットバルブと、前記パイロットバルブのスプールであるパイロットスプールを駆動する駆動制御部と、前記パイロットスプールを駆動させたとき、前記パイロットスプールの実位置と、当該実位置における前記アクチュエータに流れる前記流体の流量に関係する流量関係パラメータの値と、を取得する第1取得部と、前記実位置と該実位置における流量関係パラメータの値とに基づいて、前記第1ポートと前記第2ポートとが連通したときの前記パイロットスプールの実位置である第1位置と、前記第3ポートと前記第2ポートとが連通したときの前記パイロットスプールの実位置である第2位置と、前記第1位置と前記第2位置との間の第1距離と、のうちの少なくとも1つの値を取得する第2取得部と、を備える。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、パイロットスプール12の第2ポートの開口幅に対する相対的な大きさを把握できるため、制御弁の修理や交換等の時期を的確に判断することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】油圧サーボバルブのバルブ制御装置の周辺の構成を概略的に示す図である。
【
図2】油圧サーボバルブの構成を概略的に示す図である。
【
図3】
図3(a)~(c)は、パイロットスプールの弁体の位置とポートの開閉状態を模式的に示す模式図である。
【
図4】バルブ制御装置を概略的に示す構成図である。
【
図5】
図5(a)~(c)は、中立位置におけるパイロットスプールの弁体及び第2ポートの状態を示す図である。
【
図6】
図6(a)~(c)は、それぞれ、
図5(a)~(c)の弁体の位置とメインバルブに供給される作動油の流量との相関関係を示す図である。
【
図7】
図7(a)~(c)は、それぞれ、パイロットスプールの弁体の幅が第2のポートの開口幅よりも小さい場合に、弁体12aの位置に対する作動油の流量の変化量が増大する原理を説明するための図である。
【
図8】バルブ制御装置の動作を示すフローチャートである。
【
図9】パイロットスプールの弁体の位置とメインスプールの移動速度との相関関係を示す図である。
【
図10】バルブ制御装置を概略的に示す構成図である。
【
図11】作動油の清浄度と第1距離との関係を説明するための図である。
【
図12】バルブ制御装置の動作を示すフローチャートである。
【
図13】バルブ制御装置を概略的に示す構成図である。
【
図14】バルブ制御装置の動作を示すフローチャートである。
【
図15】バルブ制御装置を概略的に示す構成図である。
【
図16】バルブ制御装置の動作を示すフローチャートである。
【
図17】第1距離の減少度合いに基づく基準値の設定方法を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、実施形態及び変形例では、同一又は同等の構成要素、部材には、同一の符号を付し、適宜重複した説明は省略する。また、各図面における部材の寸法は、理解を容易にするために適宜拡大、縮小して示される。また、各図面において実施形態を説明する上で重要ではない部材の一部は省略して表示する。
【0010】
[第1実施形態]
図1を参照する。バルブ制御装置100は、任意の制御弁を制御するために利用可能であるが、本実施形態では、船舶に搭載されたエンジン80に用いられる油圧サーボバルブ1を制御する。油圧サーボバルブ1は制御弁の一例である。
【0011】
船舶に搭載されたエンジン80は、複数の気筒81を備える。油圧サーボバルブ1は、複数の気筒81のそれぞれに対応して設けられ、それぞれの気筒81における燃料の噴射や排気などを制御する。
【0012】
エンジン制御装置90は、船舶の航行を制御するための図示しないコントロールパネルから入力されるエンジン出力Hs(
図4参照)に基づいて、後述する指令信号をバルブ制御装置100に送信する。エンジン制御装置90が実行する具体的な制御については後述する。
【0013】
バルブ制御装置100は、エンジン制御装置90からの指令信号に応じて、後述する各パイロットバルブのスプールの位置を制御する。バルブ制御装置100が実行する具体的な制御については後述する。
【0014】
図2を参照する。油圧サーボバルブ1は、作動油(流体)48を供給することによりアクチュエータの動作を制御するパイロットバルブ10と、アクチュエータの一例であるメインバルブ20と、を備える。パイロットバルブ10及びメインバルブ20は、入力信号に対して出力流体の圧力又は流量を比例的に制御する比例制御弁である。この場合、弁は制御量に比例して動作するので、安定したフィードバック制御を実現できる。
【0015】
パイロットバルブ10は、パイロットスプール12を有する。パイロットスプール12は、バルブ制御装置100の指令に基づいて移動しその位置が変化する。パイロットバルブ10は、パイロットスプール12の位置に応じてメインバルブ20に供給される作動油48の流量を変化させる。
【0016】
メインバルブ20は、メインスプール22を有する。メインスプール22は、パイロットバルブ10からの作動油48の送出状態に応じて移動しその位置が変化する。メインバルブ20は、メインスプール22の位置に応じてエンジン80に燃料を噴射する噴射弁やエンジン80内の空気を排気する排気弁などを駆動するために設けられた別のアクチュエータへ供給する作動油48の流量を変化させる。別の例では、メインバルブ20は、メインスプール22の移動により噴射弁や排気弁などを直接駆動してもよい。
【0017】
メインバルブ20の油圧系統は、作動油48を貯留するドレインタンク44と、ドレインタンク44の作動油48を加圧して送出する油圧ポンプ42とを含む。油圧ポンプ42から送出された作動油48は、メインバルブ20内のポンプ側配管部28pを通じて、メインバルブ20の内部とパイロットバルブ10とに供給される。パイロットバルブ10とメインバルブ20の内部から排出される作動油48は、メインバルブ20内のタンク側配管部28tを通じてドレインタンク44に戻される。
【0018】
パイロットバルブ10は、第1位置センサ14sと、スリーブ16と、スプール駆動部18とを含む。パイロットスプール12は、中空のスリーブ16内を移動可能な複数の弁体12p、12a、12tを有する。スプール駆動部18は、パイロットスプール12を第1方向(
図2のパイロットスプール12の長手方向)に沿って進退させるソレノイド(不図示)を含む。スプール駆動部18は、バルブ制御装置100からの指令に基づいてパイロットスプール12を移動させて弁体12p、12a、12tの位置を制御する。この例では、3つの弁体12p、12a、12tは、後述する3つの第1ポート16p、第2ポート16a及び第3ポート16tをそれぞれ開閉可能な位置に配置される。3つの弁体12p、12a、12tは、その位置に応じて3つのポート16p、16a及び16tの連通状態を変化させる。本実施形態の弁体12aの第1方向の幅(以下、幅という)は、その摩耗による形状の経時変化を想定して、第2ポート16aの幅よりも大きく設計される。
【0019】
スリーブ16は、第1方向に延びてパイロットスプール12を収容する。スリーブ16は、第1ポート16pと、第2ポート16aと、第3ポート16tとを含む。第1ポート16pは、メインバルブ20のポンプ側配管部28pに接続され、油圧ポンプ42から加圧された作動油48の供給を受ける。第1ポート16pは、油圧ポンプ42から作動油48を入力する。第2ポート16aは、メインバルブ20の作動油受入部28aに接続される。第2ポート16aは、第1ポート16pから入力された作動油48をメインバルブ20に供給する。第3ポート16tは、タンク側配管部28tに接続され、パイロットバルブ10に流れた作動油48をタンク側配管部28tを通じてドレインタンク44に排出する。第3ポート16tは、メインバルブ20へ供給した作動油48を排出する。
【0020】
第1位置センサ14sは、パイロットスプール12の位置を検知し、その検知結果(以下、「実位置PVx」という)をバルブ制御装置100に出力する。
【0021】
メインバルブ20は、メインスプール22と、メインスプール22の位置を取得する第2位置センサ24sとを含む。メインスプール22は、パイロットバルブ10から作動油受入部28aに供給された作動油48の圧力に基づいて移動し、エンジンへの燃料供給量を変化させる。つまり、エンジンへの燃料供給量は、メインスプール22の位置に応じて変化する。
【0022】
第2位置センサ24sは、メインスプール22の位置を検知し、その検知結果(以下、「実位置MVx」という)をエンジン制御装置90及びバルブ制御装置100に出力する。
【0023】
図3(a)~(c)を用いて、パイロットバルブ10の各弁体の位置と当該位置に対するポートの開閉状態とを説明する。
図3(a)は、弁体12a、12pが第2ポート16aと第1ポート16pとを連通させる第1領域内に位置する状態を示す。この状態では、第2ポート16aは、第1ポート16pからの作動油48を作動油受入部28aに供給する(以下、「供給モード」という)。供給モードでは、メインバルブ20の作動油受入部28aには油圧ポンプ42から第1ポート16pを介して作動油48が供給される。この動作により、例えば、メインバルブ20のメインスプール22が、エンジン80への燃料供給量を増やす方向(
図2では第1方向とは反対方向)に移動する。
【0024】
図3(b)は、弁体12aが第2ポート16aを遮断して第1ポート16p及び第3ポート16tをそれぞれ第2ポート16aと連通させない中立領域内に位置する状態を示す(以下、中立領域内の位置を「中立位置」ともいう)。中立位置は、パイロットスプール12がその進退方向に移動するときの原点となる位置である。この状態では、第2ポート16aは遮断され、作動油受入部28aに対して作動油48の供給も回収もしない(以下、「中立モード」という)。中立モードでは、メインバルブ20の作動油受入部28aの油圧は、弁体12aが中立領域に位置する直前の状態で維持される。この動作により、例えば、メインバルブ20のメインスプール22が直前の位置で停止し、エンジン80への燃料供給量が直前の状態に保たれる。
【0025】
図3(c)は、弁体12a、12tが第2ポート16aと第3ポート16tとを連通させる第2領域内に位置する状態を示す。この状態では、第2ポート16aは、作動油受入部28aから作動油48を回収してタンク側配管部28tに戻す(以下、「回収モード」という)。回収モードでは、メインバルブ20の作動油受入部28aの作動油48が第2ポート16a、第3ポート16tおよびタンク側配管部28tを通じてドレインタンク44に回収される。この動作により、例えば、メインバルブ20のメインスプール22が、エンジン80への燃料供給量を減らす方向に移動する。
【0026】
バルブ制御装置100を説明する。
図4に示す各機能ブロックは、ハードウェア的には、コンピュータのCPUをはじめとする電子素子や機械部品などで実現でき、ソフトウェア的にはコンピュータプログラムなどによって実現される。しかし、ここでは、それらの連携によって実現される機能ブロックが描かれる。したがって、これらの機能ブロックはハードウェア、ソフトウェアの組合せによっていろいろなかたちで実現できることは、当業者には理解される。
【0027】
図4に示すように、バルブ制御装置100は、複数の機能ブロックを集約した情報処理部30と、記憶部50とを含む。情報処理部30は、第1取得部31と、指令取得部32と、相関データ生成部33と、第2取得部34と、推定部35と、出力部36と、駆動制御部37と、無線通信部38と、を含む。記憶部50は、後述する相関データ51を含む各種データを記憶する。本実施形態では、情報処理部30と記憶部50とは一体的なモジュールとして構成されている。
【0028】
第1取得部31は、パイロットバルブ10に設けられた第1位置センサ14sから、パイロットスプール12の実位置PVxを取得する。第1取得部31は、メインバルブ20に設けられた第2位置センサ24sから、メインスプール22の実位置MVxを取得する。
【0029】
第1取得部31は、実位置PVx毎に、メインバルブ20に流れる作動油48の流量に関係する流量関係パラメータの値を取得する。本実施形態の流量関係パラメータは、第1方向についてのメインスプール22の移動速度(以下、移動速度という)である。移動速度は、メインバルブ20に流れる作動油48の流量に比例して変化するため、メインバルブ20に流れる作動油48の流量に関係する。本実施形態の第1取得部31は、実位置PVx毎に、第1取得部31で取得されたメインスプール22の実位置MVxの変位に基づいて移動速度を取得する。具体的には、第1取得部31は、パイロットスプール12が実位置PVxに位置するときに第2ポート16aから流れる作動油48によって移動するメインスプール22の移動速度を取得する。
【0030】
指令取得部32は、エンジン制御装置90からパイロットスプール12の目標位置PVsを示す指令信号を取得する。指令取得部32は、目標位置PVsを記憶部50に記憶する。
【0031】
相関データ生成部33は、相関データ51を生成する。相関データ51は、パイロットスプール12をその進退方向に移動させたときに第1取得部31で取得された各実位置PVxと各実位置PVxについて取得された流量関係パラメータの値との相関関係を示す。
【0032】
第2取得部34は、相関データ51に基づいて、パイロットスプール12の第1位置と第2位置との間の第1距離を算出することにより、第1距離を取得する。第1及び第2位置並びに第1距離については後述する。
【0033】
推定部35は、第2取得部34によって算出された第1距離に基づいて、パイロットスプール12の状態を推定する。
【0034】
出力部36は、パイロットスプール12の状態の推定結果を外部に出力する。出力部36は、例えば、無線通信部38を介してリモートコントローラ40に推定結果を出力し、リモートコントローラ40のディスプレイ等に推定結果を表示させる。
【0035】
駆動制御部37は、パイロットスプール12を駆動させることにより、パイロットスプール12の動作を制御する。具体的には、駆動制御部37は、パイロットスプール12の目標位置PVsと、第1取得部31で取得された実位置PVxとの偏差に基づいて所定の演算処理を行う。駆動制御部37は、演算結果に基づいて、パイロットスプール12の駆動信号を生成する。この生成した駆動信号はスプール駆動部18によって取得される。スプール駆動部18は、駆動信号に基づいてパイロットスプール12を駆動する。本実施形態の駆動制御部37は、演算結果に基づいてPID制御を含むフィードバック制御を行う。
【0036】
無線通信部38は、外部と無線通信を行う。例えば、無線通信部38は、バルブ制御装置100を外部から遠隔操作するためのリモートコントローラ40と無線通信を行う。
【0037】
次に、エンジン制御装置90及びバルブ制御装置100のフィードバック制御における各動作について説明する。
【0038】
まず、エンジン制御装置90の動作について説明する。エンジン制御装置90は、目的のエンジン出力Hsに対応するメインスプール22の目標位置MVsを特定する。エンジン制御装置90は、特定したメインスプール22の目標位置MVsと、フィードバック情報として受信したメインスプール22の実位置MVxとの偏差に応じて、パイロットスプール12の目標位置PVsを算出する。エンジン制御装置90は、算出したパイロットスプール12の目標位置PVsを示す指令信号をバルブ制御装置100に送信する。このように、エンジン制御装置90は、メインスプール22の目標位置MVsと実位置MVxとの偏差に基づいて、パイロットスプール12の位置のフィードバック制御を行う。その結果、メインスプール22の実位置MVxが、目標位置MVsに追従するように制御される。
【0039】
次に、バルブ制御装置100の動作について説明する。指令取得部32は、エンジン制御装置90から目標位置PVsを示す指令信号を取得する。第1取得部31は、指令信号の取得に応答して、パイロットスプール12の実位置PVxを取得する。次に、駆動制御部37は、取得した実位置PVxと目標位置PVsとの偏差を算出する。次に、駆動制御部37は、この算出した偏差に基づいて、パイロットスプール12の位置のフィードバック制御を行う。その結果、パイロットスプール12の実位置PVxが、パイロットスプール12の目標位置PVsに追従するように制御される。
【0040】
ところで、パイロットスプール12は、中空のスリーブ16内でその進退方向に移動を繰り返すように駆動される。そのため、パイロットスプール12が長時間駆動されると、パイロットスプール12と中空のスリーブ16の内壁との摩擦力により、パイロットスプール12に摩耗が生じる。このパイロットスプールの摩耗は、後述する
図5(b)、
図5(a)、
図5(c)の順に進行する。また、この摩耗が進行すると、作動油48にパイロットスプール12の金属粉等の異物が混入する場合がある。その結果、この作動油48中の異物がパイロットスプール12を削ってしまうなど、パイロットスプール12が変形することもある。
【0041】
以上のように、パイロットスプール12では、その駆動により摩耗や変形が生じる。パイロットスプール12の摩耗や変形の進行は、油圧サーボバルブ1に故障や不具合が発生する要因となる。油圧サーボバルブ1に故障や不具合が生じると、油圧サーボバルブ1が燃料を供給するエンジン80が正常に動作しなくなる。
【0042】
ここで、船舶は、洋上を航行するため、搭載された油圧サーボバルブ1に故障や不具合などが発生したとしても即座に対処できるとは限らない。そのため、油圧サーボバルブ1の故障や不具合によりエンジン80が正常に動作しなくなって動作不能な状態に陥る前に、油圧サーボバルブ1の修理や交換等の処置を講じておくことが非常に重要である。そのためには、パイロットバルブ10の状態を正確に把握することが望ましい。
【0043】
一方で、パイロットスプール12(特に、第2ポート16aを開閉する弁体12a)の形状は、パイロットスプール12の位置に対するメインバルブ20に供給される作動油48の流量の相関関係に影響を与える。
【0044】
以下、この相関関係について、
図5(a)~(c)乃至
図7(a)~(c)を用いて説明する。
図5(a)~(c)では、第1方向について、弁体12aの中心が第2ポート16aの開口の中心と一致する位置にある。以下、このときの弁体12aの位置を「基準位置」という。また、
図6(a)~(c)中、横軸は弁体12aの中心の位置を示し、縦軸は第2ポート16aを介してメインスプール22に流れる作動油48の流量を示す。
図6(a)~(c)中の横軸の原点は、弁体12aが基準位置にあることを示す。
【0045】
図5(a)の例では、弁体12aの幅が第2ポート16aの開口幅と等しい。ここでの「幅」とは、第1方向についての幅を示すものとする。この場合、基準位置では弁体12aによって第2ポート16aが遮断され、第2ポート16aでは作動油48が流れない。一方で、弁体12aが基準位置から少しでも移動すると、第2ポート16aが他のポートと連通し、第2ポート16aに作動油48が流れるようになる。その結果、
図6(a)に示すように、メインバルブ20に供給される作動油48の流量は、弁体12aの位置に比例して変化する。
【0046】
一方で、
図5(b)の例では、弁体12aの幅が第2ポート16aの開口幅よりも大きい。この場合、弁体12aが基準位置から移動してもすぐには第2ポート16aが他のポートと連通しない。その結果、弁体12gによって第2ポート16aが遮断された状態が継続する。そのため、
図6(b)に示すように、基準位置を中心とした広い位置範囲でメインバルブ20に供給される作動油48の流量が0となる。弁体12aの移動により第2ポート16aが他のポートと連通すると、
図6(b)に示すように、メインバルブ20に供給される作動油48の流量は、弁体12aの位置に比例して変化するようになる。
【0047】
また、
図5(c)の例では、弁体12aの幅が第2ポート16aの開口幅よりも小さい。この場合、弁体12aが基準位置にある場合であっても、弁体12aと第2ポート16aとの間に隙間が生じて第2ポート16aが僅かに開口する。特に、
図5(c)のように第1方向について弁体12aの両側に隙間がある場合、片側に隙間がある場合と比べ第2ポート16aに流れる流体の流量は増大する。その結果、
図6(c)に示すように、弁体12aの両側に隙間が生じる基準位置付近では、弁体12aの位置に対する作動油48の流量の変化量が他と比べて増大する。
【0048】
作動油48の流量の変化量が増大する理由について、
図7(a)~(c)を用いて説明する。作動油48の流量は、弁体12aと第2ポート16aの間の隙間の断面積によって決まる。この隙間の断面積は、隙間の幅によって変動する。
図7(a)に示すように、弁体12aと第2ポート16aの両側に例えば幅1mmの隙間がある中立位置では、第1方向側の隙間から幅1mmの隙間に対応する流量の作動油48が第2ポート16aから排出される。一方で、反対側の隙間から幅1mmの隙間に対応する同じ流量の作動油48が第2ポート16aに供給される。そのため、第2ポート16aに流れる作動油48の流量は0となる。
【0049】
図7(a)の中立位置から第1方向に0.5mmだけ弁体12aが移動した場合について説明する(
図7(b))。この場合、第1方向側の隙間から幅0.5mmの隙間に対応する流量の作動油48が第2ポート16aからメインスプールに供給される。一方で、反対側の隙間から幅1.5mmの隙間に対応する同じ流量の作動油48がメインスプールから第2ポート16aを介してドレインタンクに排出される。そのため、移動前後で第2ポート16aに流れる作動油48の流量は幅1.0mmの隙間に対応する流量分だけ増加する。
【0050】
弁体12aについて第1方向とは反対側に隙間がある状態から第1方向に0.5mmだけ弁体12aが移動した場合について説明する(
図7(c))。この場合、移動前後でこの反対側の隙間から流れる作動油48の流量は、幅0.5mm分の隙間に対応する流量分だけ増加する。
【0051】
本発明者らは、このようなパイロットスプール12の形状の変化によって上記の相関関係が変化することを利用して、パイロットスプール12の状態を推定できることを見出した。以下、これについて詳細に説明する。
【0052】
図8を用いて、本実施形態のバルブ制御装置100の動作を説明する。
図8は、パイロットバルブ10の状態を推定する動作S10を示すフローチャートである。
【0053】
まず、駆動制御部37は、所定条件が満たされたか否かを判定する。本実施形態の所定条件は、試験動作を行うようにパイロットバルブ10及びメインバルブ20を動作させる試験動作指示が入力された場合である。本実施形態の試験動作指示は、エンジン制御装置90からの指令信号に含まれる。
【0054】
試験動作について説明する。エンジンが動作している状態で試験を行うと、動作状況によって検知データ(PVx、MVx)の誤差が大きくなる。このため、本実施形態では、試験動作は、メインバルブ20が制御するエンジンが停止しているときの動作である。この場合、エンジンが停止しているので検知データの誤差を抑制できる。
【0055】
本実施形態の試験動作は、メインバルブ20又はパイロットバルブ10の固着防止動作を含む。固着防止動作は、流体の固化による可動部の固着を防止するための動作である。本実施形態の固着防止動作では、バルブが開閉を繰り返すように、スプールが周期的に往復運動する。この場合、固着防止動作を兼用するので推定動作の簡素化を図れる。固着防止動作は、ディザ動作と称されることがある。
【0056】
所定条件が満たされない場合(S11のN)、動作S10は終了する。所定条件が満たされた場合(S11のY)、動作S10はS12に進む。
【0057】
駆動制御部37は、試験動作を開始させるように、スプール駆動部18に駆動信号を出力する(S12)。
【0058】
次に、第1取得部31は、試験動作中の実位置PVx及び移動速度を取得する(S13)。このステップでは、第1取得部31は、この試験動作の開始から終了までの間に、実位置PVx及び移動速度を時系列的に取得する。第1取得部31は、時系列的に取得した実位置PVx及び移動速度を記憶部50に記憶する。第1取得部31は、第1位置センサ14sから実位置PVxを取得する。また、第1取得部31は、第2位置センサ24sから取得した実位置MVxに基づいて移動速度を取得する。試験動作が終了すると、動作S10はS14に進む。
【0059】
次に、相関データ生成部33は、試験動作中に時系列的に取得した実位置PVx及び移動速度に基づいて、相関データ51を生成する(S14)。
図9に示すように、本実施形態の相関データ51は、各実位置PVxと各実位置PVxについて取得された移動速度との相関関係を示す。相関データ生成部33は、生成した相関データ51を記憶部50に記憶する。
【0060】
次に、第2取得部34は、生成した相関データ51に基づいて、第1位置と第2位置との間の第1距離を算出する(S15)。本実施形態では、第2取得部34は、相関データ51において移動速度が所定の低値域内の速度になったときの実位置PVxを第1位置として特定する。また、第2取得部34は、相関データ51において移動速度が所定の低値域内の速度ではなくなったときの実位置PVxを第2位置として特定する。第1位置は、第1ポート16pと第2ポート16aとが連通したときのパイロットスプール12の位置である。第2位置は、第2ポート16aと第3ポート16tとが連通したときのパイロットスプール12の位置である。第2取得部34は、第1位置と第2位置との差分を算出することにより、第1距離を算出する。
【0061】
図9を用いて、第1及び第2位置並びに第1距離について説明する。
図9に示すように、所定の低値域は、速度が0m/sを含む所定の低速度範囲である。相関データ生成部33は、相関データにおいて、移動速度が所定の低値域内の速度であるパイロットスプール12の位置のうち、最小値を第1位置とし、最大値を第2位置として取得する。所定の低値域は、移動速度を算出するための実位置MVxの検知誤差を考慮して、0m/sを基準に適宜定められる。第2取得部34は、第1及び第2位置並びに第1距離を記憶部50に記憶する。
【0062】
次に、推定部35は、算出された第1距離に基づいて、パイロットスプール12の状態を推定する(S16)。このステップでは、推定部35は、第1距離と基準値との比較に基づいて、パイロットスプール12の摩耗度合いを推定する。本実施形態の基準値は、パイロットスプール12について最初に取得された第1距離の初期値である。この場合、推定部35は、S14で算出された第1距離とパイロットスプール12について最初に取得された第1距離との差分を算出する。推定部35は、算出した差分を出力部36に出力する。
【0063】
次に、出力部36は、パイロットスプール12の状態の推定結果を出力する(S17)。本実施形態では、出力部36は、推定部35により算出された差分をパイロットスプール12の摩耗度合いの推定結果として出力する。この推定結果は、記憶部50に記憶される。本実施形態の出力部36は、この推定結果を無線通信部38を介してリモートコントローラ40に出力する。その結果、リモートコントローラ40のディスプレイに推定結果が表示される。
【0064】
その後、動作S10が終了する。
【0065】
なお、油圧サーボバルブ1の出荷時においては、事前の実験又はシミュレーションにより作成された相関データが記憶部50に予め記憶されている。以下の変形例で述べるような、相関データに用いられるパラメータの他の例としての流量及び駆動電流の場合も同様である。
【0066】
本実施形態によると、第1距離を算出することにより、パイロットスプール12の幅について第2ポート16aの開口幅に対する相対的な大きさを把握できる。そのため、パイロットスプール12の状態を正確に把握することが可能となる。その結果、将来の航行において油圧サーボバルブに故障や不具合が生じる可能性や油圧サーボバルブの寿命などを、パイロットスプール12の状態から的確に予測することが可能となる。これにより、パイロットバルブ10の修理や交換などの適切な措置を迅速に講じることが可能となる。
【0067】
本実施形態では、第1距離と比較される基準値は、パイロットスプール12において最初に取得された第1距離である。この構成によると、油圧サーボバルブ1の使用を開始したときからのパイロットスプール12の摩耗を正確に推定できる。
【0068】
本実施形態では、第1取得部31は、所定条件が満たされる場合、実位置PVxと流量関係パラメータの値とを取得する。この構成によると、必要なときに(所定条件が満たされた場合)のみ実位置PVxと流量関係パラメータの値とを取得できるため、省エネルギー化を図ることができる。
【0069】
<変形例>
本実施形態の流量関係パラメータは、移動速度としたが、これに限定されない。流量関係パラメータは、メインバルブ20に供給される作動油48の流量であってもよい。この場合、例えば、メインバルブ20に供給される作動油48の流量を算出する流量計を用いてもよいし、求めた移動速度とそのときの弁体12aと第2ポート16aとの位置関係によって決まる第2ポート16aの開口面積から流量を算出してもよい。この構成によると、パイロットスプール12の位置とその位置のときにメインバルブ20に実際に供給される作動油48の流量との相関関係に基づいて目標位置が補正される。そのため、パイロットスプール12の形状に応じてメインバルブ20をより正確に制御できる。
【0070】
流量関係パラメータは、パイロットスプール12を駆動する駆動電流としてもよい。この場合、パイロットバルブ10に、スプール駆動部18のソレノイドのコイルに流れる駆動電流の値を検知して検知結果を情報処理部30に送信する電流センサが設けられればよい。
【0071】
本実施形態の所定条件は、エンジン制御装置90からの指令信号に含まれる試験動作指示が入力された場合としたが、これに限定されない。例えば、バルブ制御装置100の操作ボタンなどの操作入力部(不図示)を介して、試験動作指示を含む操作入力がユーザによって入力された場合であってもよい。また、所定条件は、前回の算出から1日、1週間、1月などの所定の期間を経過した場合としてもよい。
【0072】
所定条件は、パイロットスプール12の位置に応じて燃料が供給される対象のエンジン80が停止している場合としてもよい。例えば、メインスプール22の実位置MVxに基づいて、メインスプール22がエンジン80に燃料を供給できない所定の範囲内の位置に所定時間以上留まっていると判定された場合、エンジン80が停止していると判定される。エンジン80が動作している状態で検知データ(PVx、MVx)を取得すると、エンジン制御の応答遅れなど動作状況によっては検知データの誤差が大きくなる。エンジンが停止している状態を所定条件とすることにより、検知データの誤差を抑制でき、精度の高い相関データの作成が可能となる。
【0073】
本実施形態の基準値は、パイロットスプール12について最初に取得された第1距離の初期値としたが、これに限定されない。基準値は、他の気筒81に対応する油圧サーボバルブ1のパイロットスプール12について同じタイミングで算出された第1距離に基づいて設定されてもよい。例えば、基準値は、他の気筒81に対応する油圧サーボバルブ1のパイロットバルブ10について同じタイミングで算出された第1距離の平均値であってもよい。この場合、対象のパイロットスプール12の幅について他の気筒81に対応する油圧サーボバルブ1のパイロットスプール12の幅に対する相対的な大きさを把握できる。その結果、対象のパイロットスプール12の状態を正確に推定できる。
【0074】
また、基準値は、第2ポート16aの開口幅と等しい値など、目的や用途に応じて適宜定められてもよい。
【0075】
本実施形態の推定部35は、第1距離と基準値とを比較することによりパイロットスプール12の摩耗度合いを推定したが、これに限定されない。
図9に示すように、中立位置と第1位置との間の距離を第2距離とし、中立位置と第2位置との間の距離を第3距離とする。この場合、第2取得部34は、第1位置と第2位置を取得し、中立位置、第1位置及び第2位置に基づいて第2距離及び第3距離を取得する。推定部35は、第2距離と第3距離との比較に基づいて、パイロットスプール12の偏摩耗の度合いを推定してもよい。パイロットスプール12の偏摩耗が生じると、パイロットスプール12の中立位置がずれてしまう。パイロットスプール12の中立位置がずれていると、メインバルブ20への作動油48の供給及び回収を正常に制御することができなくなり、エンジン80などの制御対象が動作不良を起こす場合がある。本実施形態によると、パイロットスプール12の状態としてパイロットスプール12の偏摩耗の度合いを正確に把握できる。そのため、中立位置に対するずれを的確に補正できるようになるため、パイロットスプール12の動作を安定化させることができる。
【0076】
本実施形態の推定部35は、第1距離と基準値との差分を算出することにより、パイロットスプール12の状態を推定したが、これに限定されない。例えば、推定部35は、所定の推定基準を用いてパイロットスプール12の状態を推定してもよい。推定基準は、第1距離とパイロットバルブの状態を示すデータとを対応付けたテーブルまたはプログラムなどであってもよい。推定基準は、第1距離とパイロットスプール12の状態を示すデータとの対応関係をモデル化した推定モデルであってもよい。このような推定基準として推定モデルを用いる場合、推定モデルは、第1距離を入力変数とし、パイロットスプール12の状態を示すデータを算出するための数式であってもよい。この場合、推定モデルは、多変量解析、重回帰分析、主成分分析などの統計学的手法により作成されてもよい。また、推定モデルは、第1距離を入力層に入力すると、パイロットスプール12の状態を示すデータを出力層から出力するニューラルネットワークなどであってもよい。推定基準は、事前の実験又はシミュレーションにより作成される。推定基準は、記憶部50に予め記憶される。
【0077】
本実施形態では、推定部35は、第1距離に基づいて、パイロットスプール12の状態を推定したが、これに限定されない。推定部35は、第1位置と、第2位置と、第1距離と、のうちの少なくとも1つの値に基づいて、パイロットスプール12の状態を推定してもよい。この場合、基準値は、第1位置と、第2位置と、第1距離との各々について定められる。例えば、推定部35は、第1位置と第1位置について定められた基準値との差分に基づいて、パイロットスプール12の状態を推定してもよい。この場合、基準値は、パイロットスプール12について最初に特定された第1位置であってもよい。第2位置も第1位置と同様にこの推定に用いられてもよい。また、第2取得部34は、第1位置と、第2位置と、第1距離と、のうちの少なくとも1つの値を取得すればよい。
【0078】
また、本実施形態では、出力部36は、パイロットスプール12の状態の推定結果を出力したが、第1位置と、第2位置と、第1距離とのうちの少なくとも1つの値を出力してもよい。すなわち、出力部36は、パイロットスプール12の状態の推定結果及び少なくとも1つの値の少なくとも一方を含む、少なくとも1つの値に関する情報を外部に出力してもよい。
【0079】
本実施形態では、出力部36は、無線通信部38を介して推定結果をリモートコントローラ40に出力する例を示したが、これに限定されない。例えば、出力部36は、パイロットバルブ10やバルブ制御装置100等に設けられた不図示のディスプレイに推定結果を表示してもよい。
【0080】
本実施形態では、情報処理部30と記憶部50とが一体的に構成される例を示したが、これらは別々に構成されてもよい。
【0081】
次に、本発明の第2~第7実施形態を説明する。第2~第7実施形態の図面及び説明では、第1実施形態と同一又は同等の構成要素、部材には、同一の符号を付する。第1実施形態と重複する説明を適宜省略する。
【0082】
[第2実施形態]
第2実施形態のバルブ制御装置100を説明する。第1実施形態では、パイロットスプール12の状態が推定される例を示したが、本発明はこれに限定されない。第2実施形態は作動油48の清浄度を推定する点で第1実施形態と異なり、他の構成は第1実施形態と同様である。以下、第1の実施形態との相違点を説明する。
【0083】
上述したように、パイロットスプール12の駆動によりパイロットスプール12の摩耗が進行すると、作動油48にパイロットスプール12の金属粉等の異物が混入する場合がある。この異物の混入により、作動油48に混入した異物の数、量、大きさなどを示す作動油48の清浄度が低下する。作動油48の清浄度が低下すると、パイロットスプール12とスリーブ16との間の摩擦力が増大し、パイロットスプール12の速度または加速度が低下する。その結果、パイロットスプール12の動作が阻害され、またメインバルブ20に供給される作動油48の圧力が低下する。それにより、エンジン80などの制御対象が動作不良を起こす場合がある。また、パイロットスプール12に異物が噛み込む可能性が増大する。
【0084】
本実施形態では、上述した所定条件が満たされる毎に、第2取得部34は第1距離を繰り返し取得する。具体的には、第2取得部34は、第1の時点で第1距離を取得し、第1の時点よりも後の第2の時点で第1距離を取得する。後述する清浄度推定部61は、第1距離の減少度合いに基づいて、作動油48の清浄度を推定する。これにより、作動油48の清浄度を正確に把握できる。その結果、将来の航行において油圧サーボバルブ1に故障や不具合が生じる可能性や油圧サーボバルブの寿命などを、推定した作動油48の清浄度から的確に予測することが可能となる。そのため、油圧サーボバルブ1や制御対象の動作を良好に維持することができるとともに、異物の噛み込みを防止することができる。
【0085】
図10を用いて、本実施形態のバルブ制御装置100について説明する。
図10に示すように、本実施形態の推定部35は、作動油48の清浄度を推定する清浄度推定部61を含む。また、本実施形態の記憶部50は、推定基準52を記憶している。本実施形態の推定基準52については後述する。
【0086】
図11を用いて第1距離の減少度合いについて説明する。パイロットスプール12は、その駆動により次第に摩耗していき、弁体12aの幅は徐々に小さくなる。作動油48の清浄度が低い(作動油48に対する異物の混入等が多い)場合、弁体12aが作動油48中の異物によって削られ易くなるため、弁体12aの幅の減少量は多くなる。一方、作動油48の清浄度が高い(作動油48に対する異物の混入等が少ない)場合、弁体12aが作動油48中の異物によって削られにくくなるため、弁体12aの幅の減少量は少なくなる。そのため、
図11に示すように、作動油48の清浄度が高い場合には、作動油48の清浄度が低い場合と比較して、第1距離の減少度合いが小さくなる。本実施形態では、その第1距離の減少度合いを用いて、作動油48の清浄度が推定される。
【0087】
図12を用いて、本実施形態のバルブ制御装置100の動作を説明する。
図12は、作動油48の清浄度を推定する動作S20を示すフローチャートである。
図12のS21~S25、S28は、
図8のS11~S15、S17と同様であるため、その説明を省略する。
【0088】
S25の後、清浄度推定部61は、異なる時点で算出された第1距離に基づいて、第1距離の減少度合いを算出する(S26)。本実施形態では、清浄度推定部61は、記憶部50に記憶された前回の第1距離に対する今回算出された第1距離の減少量を第1距離の減少度合いとして算出する。なお、1回目の算出の場合には、清浄度推定部61は、例えば、パイロットスプール12について出荷時に算出された第1距離の初期値に対する1回目に算出された第1距離の減少度合いを算出する。
【0089】
次に、清浄度推定部61は、算出した第1距離の減少度合いに基づいて、推定基準52を用いて作動油48の清浄度を推定する(S27)。本実施形態の推定基準52は、第1距離の減少度合いと作動油48の清浄度とを対応付けたデータテーブルである。推定基準52は、例えば第1距離の減少度合い毎に作動油48の清浄度を算出する事前の実験又はシミュレーションの結果に基づいて作成される。例えば、作動油48の清浄度は、油圧サーボバルブ1において使用された作動油48の清浄度を一般的な液中微粒子計測装置などによって算出される。作動油48の清浄度は、例えば、重量法、顕微鏡法、光散乱法、光遮断法、電気抵抗法、音響法、ダイナミック光散乱法などによって算出されてもよい。
【0090】
S27では、清浄度推定部61は、推定基準52としてのデータテーブルから、算出した第1距離に対応する作動油48の清浄度を抽出する。清浄度推定部61は、この抽出した作動油48の清浄度を推定結果として出力部36に出力する。
【0091】
本実施形態は、作動油48の清浄度を推定したが、これに限定されず、作動油以外の流体の清浄度を推定してもよい。
【0092】
[第3実施形態]
第2実施形態では、算出毎の第1距離の減少度合いに基づいて作動油48の清浄度を推定する例を示したが、これに限定されない。第3実施形態は、後述する累積駆動時間にさらに基づいて作動油48の清浄度を推定する点で第2実施形態と異なり、他の構成は同様である。以下、第2実施形態との相違点を説明する。
【0093】
図13に示すように、バルブ制御装置100は、パイロットスプール12の累積駆動時間を計測する時間計測部62をさらに含む。累積駆動時間は、パイロットスプール12が最初に駆動されたときから現在までにパイロットスプール12が駆動された時間の累積値を示す。
【0094】
本実施形態の駆動制御部37は、指令信号に基づいてパイロットスプール12の駆動信号をスプール駆動部18に出力する際に、時間計測部62にこの駆動信号を出力する。時間計測部62は、駆動制御部37からの駆動信号に基づいて、パイロットスプール12の駆動の開始から終了までの時間を累積的に計数する。時間計測部62は、その累積的に計数した時間を累積駆動時間53として、記憶部50に記憶する。
【0095】
図14を用いて、本実施形態のバルブ制御装置100の動作を説明する。
図14のS31~S35、S40は、
図12のS21~S25、S28と同様であるため、その説明を省略する。
【0096】
S35の後、清浄度推定部61は、第1距離に基づいて、第1距離の減少度合いを算出する(S36)。本実施形態では、推定部35は、パイロットスプール12について最初に取得された第1距離の初期値に対するS35で取得された第1距離の減少度合いを算出する。
【0097】
次に、清浄度推定部61は、累積駆動時間53を取得する(S37)。このステップでは、清浄度推定部61は、記憶部50から累積駆動時間53を読み出して取得する。
【0098】
次に、清浄度推定部61は、第1距離の減少度合い及び累積駆動時間53に基づいて、第1距離の経時的な減少度合いを算出する(S38)。このステップでは、清浄度推定部61は、S36で算出した第1距離の減少度合いを累積駆動時間53で除算することにより、第1距離の経時的な減少度合いを算出する。
【0099】
次に、清浄度推定部61は、算出した第1距離の経時的な減少度合いに基づいて、推定基準52を用いて作動油48の清浄度を推定する(S39)。本実施形態の推定基準52は、第1距離の経時的な減少度合いと作動油48の清浄度とを対応付けたデータテーブルである。S39の後、S40を経て、動作S30は終了する。
【0100】
上述したように、パイロットスプール12は、その駆動により次第に摩耗していき、弁体12aの幅は徐々に小さくなる。すなわち、第1距離はその駆動時間に比例して小さくなる。そのため、作動油48の清浄度も、その駆動時間により変化する。
【0101】
本実施形態によると、累積駆動時間を考慮するため、より正確に作動油48の清浄度を把握できる。その結果、パイロットスプール12の寿命をより正確に予測できる。
【0102】
[第4実施形態]
第4実施形態は、パイロットバルブ10の交換を推奨する旨を報知する点で第1実施形態と異なり、他の構成は同様である。以下、第1実施形態との相違点を説明する。
【0103】
図15に示すように、出力部36は、算出された第1距離が基準値以下である場合、パイロットバルブ10の交換を推奨する旨を報知する報知部63を含む。
【0104】
図16を用いて、本実施形態のバルブ制御装置100の動作を説明する。
図16のS51~S55は、第1実施形態のS11~S15と同様であるため、その説明を省略する。
【0105】
S55の後、推定部35は、第2取得部34で算出された第1距離が基準値以下であるかどうかを判定する(S56)。この基準値は、第1実施形態で説明した基準値と同様である。
【0106】
基準値よりも大きい場合(S56のN)、動作S50はS57に進む。基準値以下である場合(S56のY)、動作S50はS58に進む。
【0107】
S57及びS58では、推定部35は、第1距離と基準値との比較に基づいて、パイロットスプール12の状態を推定する。S57及びS58は、S16と同様である。S57の後、推定部35は推定結果を出力部36に出力し、動作S50はS59に進む。S58の後、推定部35は推定結果及び報知指示を出力部36に出力し、動作S50はS60に進む。
【0108】
S59及びS60では、出力部36は、パイロットスプール12の状態の推定結果を出力する。S59及びS60は、S17と同様である。S59の後、動作S50は終了する。S60の後、動作S50はS61に進む。
【0109】
S61では、報知部63は、パイロットバルブ10の交換を推奨する旨を報知する。例えば、報知部63は、無線通信部38を介して報知信号をリモートコントローラ40に出力し、リモートコントローラ40のディスプレイにパイロットバルブ10の交換を推奨する旨を表示させる。報知部63は、リモートコントローラ40に上記推奨する旨の音声を発生させてもよい。S61の後、動作S50は終了する。
【0110】
本実施形態によると、算出された第1距離が基準値以下である場合、パイロットバルブ10の交換を推奨する旨が報知される。そのため、適切な交換時期にパイロットバルブ10を交換することが可能となる。
【0111】
また、基準値は、第1の時点から第2の時点までの第1距離の経時的な減少度合いに基づいて設定されてもよい。例えば、基準値は、上述の第1の時点から上述の第2の時点までのパイロットスプール12の駆動時間と、第1の時点で取得された第1距離と第2の時点で取得された第1距離との比較とに基づいて設定されてもよい。具体的には、基準値は、第1の時点から第2の時点までの駆動時間と対する、第1の時点から第2の時点までに算出された各第1距離の近似曲線の傾きの絶対値に基づいて定められてもよい。この近似曲線は、第1の時点から第2の時点までの第1距離の経時的な減少度合いに対応する。
【0112】
例えば、報知部63は、
図17(a)及び(b)に示すように、第1距離の近似曲線の傾きの絶対値が大きいほど、この基準値を相対的に大きく設定し、この絶対値が小さいほど、この基準値を相対的に小さく設定してもよい。報知部63は、算出毎の第1距離の近似曲線の傾きとこの基準値とを対応付けた基準値のデータテーブルから、得られた近似曲線の傾きに対応する基準値を抽出する。この場合、基準値のデータテーブルは、記憶部50に予め記憶される。報知部63は、この抽出した基準値をS46の判定用の基準値として設定する。これにより、パイロットスプール12の状態が変化しやすいほど、早期に交換の報知がなされる。そのため、油圧サーボバルブ1に故障や不具合が生じる前に、パイロットバルブ10の修理や交換などの適切な措置を迅速に講じやすくなる。この場合、例えば、上記時間計測部62がさらに設けられればよい。また、この場合、基準値は、上記の近似曲線に限定されず、例えば、第1の時点から第2の時点までの駆動時間と対する、第1の時点で取得された第1距離と第2の時点で取得された第1距離との傾き等に基づいて設定されてもよい。上記第1実施形態においても、このように設定された基準値が用いられてもよい。
【0113】
[第5実施形態]
第5実施形態は、第1距離の取得方法である。本発明の方法は各種の油圧サーボバルブによって実現されるが、本実施形態では油圧サーボバルブ1によって実現される。
【0114】
本発明の方法は、流体(例えば、作動油48)を入力する第1ポート16p、第1ポート16pから入力された作動油48をアクチュエータ(例えばメインバルブ20)に供給する第2ポート16a、及びアクチュエータへ供給した流体を排出する第3ポート16t、の連通状態をスプールの位置に応じて変えるパイロットバルブ10のスプールであるパイロットスプール12を駆動するステップと、パイロットスプール12を駆動させたとき、パイロットスプール12の実位置PVxと、当該実位置PVxにおけるアクチュエータに流れる流体の流量に関係する流量関係パラメータ(例えば、移動速度)の値と、を取得するステップと、実位置PVxと該実位置PVxにおける流量関係パラメータの値とに基づいて、第1ポート16pと第2ポート16aとが連通したときのパイロットスプール12の位置である第1位置と、第3ポート16tと第2ポート16aとが連通したときのパイロットスプール12の位置である第2位置と、第1位置と第2位置との間の第1距離と、のうちの少なくとも1つの値を取得するステップと、を含む。
【0115】
第5実施形態の構成によれば、第1実施形態と同様の作用及び効果を奏する。
【0116】
[第6実施形態]
第6実施形態は、第1距離の取得プログラムである。本発明の取得プログラムは、各種の油圧サーボバルブによって実現されるが、本実施形態では、油圧サーボバルブ1によって実現される。
【0117】
本発明のコンピュータプログラムは、コンピュータを、流体(例えば、作動油48)を入力する第1ポート16p、第1ポート16pから入力された作動油48をアクチュエータ(例えばメインバルブ20)に供給する第2ポート16a、及びアクチュエータへ供給した流体を排出する第3ポート16t、の連通状態をスプールの位置に応じて変えるパイロットバルブ10のスプールであるパイロットスプール12を駆動する駆動制御部37と、パイロットスプール12を駆動させたとき、パイロットスプール12の実位置PVxと、当該実位置PVxにおけるアクチュエータに流れる流体の流量に関係する流量関係パラメータ(例えば、移動速度)の値と、を取得する第1取得部31と、実位置PVxと該実位置PVxにおける流量関係パラメータの値とに基づいて、第1ポート16pと第2ポート16aとが連通したときのパイロットスプール12の位置である第1位置と、第3ポート16tと第2ポート16aとが連通したときのパイロットスプール12の位置である第2位置と、第1位置と第2位置との間の第1距離と、のうちの少なくとも1つの値を取得する第2取得部34と、として機能させる。
【0118】
コンピュータプログラムは、これらの機能はバルブ制御装置100の機能ブロックに対応する複数のモジュールが実装されたアプリケーションプログラムとしてバルブ制御装置100のストレージ(例えば記憶部50)にインストールされてもよい。コンピュータプログラムはバルブ制御装置100のプロセッサ(例えばCPU)のメインメモリに読み出しされて実行されてもよい。
【0119】
第6実施形態の構成によれば、第1実施形態と同様の作用及び効果を奏する。
【0120】
以上、本発明の実施形態の例について詳細に説明した。上述した実施形態は、いずれも本発明を実施するにあたっての具体例を示したものにすぎない。実施形態の内容は、本発明の技術的範囲を限定するものではなく、請求の範囲に規定された発明の思想を逸脱しない範囲において、構成要素の変更、追加、削除などの多くの設計変更が可能である。上述した各実施形態および変形例の任意の組み合わせもまた本発明の実施形態として有用である。組み合わせによって生じる新たな実施形態は、組み合わされる実施形態および変形例それぞれの効果をあわせもつ。
【符号の説明】
【0121】
10 パイロットバルブ、 20 メインバルブ、 31 第1取得部、 32 指令取得部、 33 相関データ生成部、 34 第2取得部、 35 推定部、 36 出力部、 40 リモートコントローラ、 82 エンジン制御装置、 100 バルブ制御装置。