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特許7399020摩擦部材及びそれを用いたクラッチディスク組立体
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  • 特許-摩擦部材及びそれを用いたクラッチディスク組立体 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-07
(45)【発行日】2023-12-15
(54)【発明の名称】摩擦部材及びそれを用いたクラッチディスク組立体
(51)【国際特許分類】
   F16D 13/62 20060101AFI20231208BHJP
   F16D 13/46 20060101ALI20231208BHJP
【FI】
F16D13/62 A
F16D13/46 A
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2020066010
(22)【出願日】2020-04-01
(65)【公開番号】P2021162117
(43)【公開日】2021-10-11
【審査請求日】2023-03-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000149033
【氏名又は名称】株式会社エクセディ
(74)【代理人】
【識別番号】110000202
【氏名又は名称】弁理士法人新樹グローバル・アイピー
(72)【発明者】
【氏名】今中 秀幸
(72)【発明者】
【氏名】坂倉 弘一
【審査官】倉田 和博
(56)【参考文献】
【文献】実開昭58-016435(JP,U)
【文献】特開昭63-280937(JP,A)
【文献】特公昭47-013807(JP,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16D 13/00-13/76
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
クラッチディスク組立体の外周部に固定される摩擦部材であって、
縁部にバーリング部を含む複数のパッド装着用孔を有するコアプレートと、
前記パッド装着用孔に固定された複数の焼結合金製パッドと、
前記コアプレートの両側面において、前記焼結合金製パッドが設けられた領域以外の領域に固定された摩擦フェーシングと、
を備えた摩擦部材。
【請求項2】
前記摩擦フェーシングは、円環状に形成され、複数の前記パッド装着用孔に対応する位置に複数の貫通孔を有し、
前記焼結合金製パッドは前記貫通孔を貫通している、
請求項1に記載の摩擦部材。
【請求項3】
前記コアプレートは、
環状の円板部と、
前記円板部の外周側に円周方向に並べて配置され、円周方向に波形に形成された複数のクッション部と、
を有し、
前記摩擦フェーシングは前記クッション部に固定されている、
請求項1又は2に記載の摩擦部材。
【請求項4】
前記焼結合金製パッドは、円柱形である、
請求項1から3のいずれかに記載の摩擦部材。
【請求項5】
前記焼結合金製パッドは、径方向に長い楕円柱状である、
請求項1から3のいずれかに記載の摩擦部材。
【請求項6】
前記焼結合金製パッドは、長軸が径方向に対して斜めに傾いている、
請求項5に記載の摩擦部材。
【請求項7】
複数の前記焼結合金製パッドは、
径方向の第1位置に配置された第1焼結合金製パッドと、
径方向の第2位置に配置された第2焼結合金製パッドと、
を有する、
請求項1から請求項6のいずれかに記載の摩擦部材。
【請求項8】
前記焼結合金製パッドの軸方向端面の角は曲面である、
請求項1から請求項7のいずれかに記載の摩擦部材。
【請求項9】
前記バーリング部は、先端部に複数の切欠きを有している、
請求項1から請求項8のいずれかに記載の摩擦部材。
【請求項10】
前記摩擦フェーシングは、樹脂、紙、コルク材のうちの少なくともいずれかを含む材料で形成されている、
請求項1から9のいずれかに記載の摩擦部材。
【請求項11】
被接触部材に接触可能に構成される請求項1から10のいずれか1項に記載の摩擦部材と、
前記被接触部材から前記摩擦部材に伝達されるトルク変動を減衰するダンパー部と、
を備えるクラッチディスク組立体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、摩擦部材及びそれを用いたクラッチディスク組立体、より詳細には、焼結合金製のパッドを備えた摩擦部材及びそれを用いたクラッチディスク組立体に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、クラッチディスク(摩擦部材)には大きいトルク伝達容量が望まれている。クラッチディスクのフェーシングとしては、通常、樹脂や紙、コルク材等が使用されるが、このような構造のフェーシング(以下、オルガニックフェーシングともいう)では厳しい使われ方によりフェーシング摩擦面が高温になった場合、トルクの伝達容量が十分でない。
【0003】
そこで、高温時に大きいトルク伝達容量を確保するために、セラミック粉末と金属粉末との混合物の焼結体(以下、焼結合金製パッドと記す)が使用されたクラッチディスクがある。このクラッチディスクは、一般に、鉄製の芯板に銅メッキを施し、さらにその上にセラミック粉末と金属粉末を配置し、これを加温(さらに加圧する場合もある)して形成される。
【0004】
しかしながら、焼結合金製パッドだけでは、発進時のフィーリングが悪いため、焼結合金製パッドとオルガニックフェーシングとを有するクラッチディスクが提供されている。
【0005】
このようなタイプのクラッチディスクでは、焼結合金製パッドと、オルガニックフェーシングと、が周方向に交互に隣接して配置されている。そして、焼結合金製パッドをクッショニングプレートに取り付けるために、焼結合金製パッドはファスナーで固定されている。
【0006】
このように、焼結合金製パッド及びオルガニックフェーシングを有するクラッチディスクでは、焼結合金製パッドを取り付けるために、メタル、カップ及びスクリーンのような部品が必要であり、さらに、オルガニックフェーシング部分には、芯板が必要である。
【0007】
実全昭62-183134号公報(特許文献1)には、焼結合金製パッドと、オルガニックフェーシングと、がドリブンプレートの円周方向に隣接して配置された構成が示されている。また、特許文献1には、オルガニックフェーシングとドリブンプレートとの間に補強板が設けられた構成が示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】実全昭62-183134号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献1のような従来の方法では、焼結合金製パッドを取り付けるための特別な部品や、オルガニックフェーシングとドリブンプレートとの間に補強板が必要である。そのため、構造が複雑である。
【0010】
本発明の課題は、簡易な構造の摩擦部材及びそれを用いたクラッチディスク組立体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
(1)本発明に係る摩擦部材は、クラッチディスク組立体の外周部に固定される摩擦部材である。この摩擦部材は、コアプレートと、複数の焼結合金製パッドと、摩擦フェーシングと、を備える。コアプレートは、複数のパッド装着用孔を有する。パッド装着用孔は、縁部にバーリング部を含む。焼結合金製パッドは、パッド装着用孔に固定されている。摩擦フェーシングは、コアプレートの両側面において、焼結合金製パッドが設けられた領域以外の領域に固定されている。
【0012】
ここでは、コアプレートが、縁部にバーリング部を含む複数の装着用孔を有し、焼結合金製パッドがパッド装着用孔に固定されている。そのため、焼結合金製パッドを別の部材を用いて固定する必要がない。その結果、簡易な構造の摩擦部材を得ることができる。
【0013】
(2)好ましくは、摩擦フェーシングは、円環状に形成される。摩擦フェーシングは、複数の前記パッド装着用孔に対応する位置に複数の貫通孔を有する。焼結合金製パッドは前記貫通孔を貫通している。
【0014】
ここでは、摩擦フェーシングが円環状である。そのため、摩擦フェーシングの強度を高めることができる。つまり、補強板のような芯板が不要である。その結果、この点からも、簡易な構造の摩擦部材を得ることができる。
【0015】
(3)好ましくは、コアプレートは、円板部と、複数のクッション部と、を有する。円板部は環状である。クッション部は、円板部の外周側に円周方向に並べて配置される。クッション部は、円周方向に波形に形成される。摩擦フェーシングは、クッション部に固定されている。
【0016】
(4)好ましくは、焼結合金製パッドは、円柱形である。
【0017】
(5)好ましくは、焼結合金製パッドは、径方向に長い楕円柱状である。
【0018】
この場合、焼結合金製パッドが接触する相手部材との半径方向の接触幅を広くすることができ、焼結合金製パッドによる半径方向の相手攻撃を分散し小さくできる。このため、焼結合金製パッドの当たる面と当たらない面の摩耗差を小さくすることができる。すなわち、フライホイールやプレッシャープレートにおいて、半径方向の段付き摩耗を抑制することができる。なお、この摩耗差による段付きは、切れ不良に影響する。
【0019】
(6)好ましくは、焼結合金製パッドは、長軸が径方向に対して斜めに傾いている。この場合は、径方向に十分な領域がない場合でも、楕円柱状の焼結合金製パッドを傾けて配置することによって、半径方向の接触幅を広くすることができ、焼結合金製パッドによる半径方向の相手攻撃を分散し小さくできる。このため、焼結合金製パッドの当たる面と当たらない面の摩耗差を小さくすることができる。すなわち、フライホイールやプレッシャープレートにおいて、半径方向の段付き摩耗を抑制することができる。なお、この摩耗差による段付きは、切れ不良に影響する。
【0020】
(7)好ましくは、複数の前記焼結合金製パッドは、第1焼結合金製パッドと、第2焼結合金製パッドと、を有する。第1焼結合金製パッドは、径方向の第1位置に配置される。第2焼結合金製パッドは、径方向の第2位置に配置される。この場合、段付き摩耗をさらに抑制することができる。
【0021】
(8)好ましくは、焼結合金製パッドの軸方向端面の角は曲面である。この場合、焼結合金製パッドの取付が容易になる。
【0022】
(9)好ましくは、バーリング部は、先端部に複数の切欠きを有している。この場合、バーリング部が弾性を有することになるので、焼結合金製パッドを装着しやすくなり、かつより確実に保持することができる。
【0023】
(10)好ましくは、摩擦フェーシングは、樹脂、紙、コルク材のうちの少なくともいずれかを含む材料で形成されている。この場合、発進時のフィーリングを高めることができる。
【0024】
(11)本発明の一実施形態に係るクラッチディスク組立体は、上記摩擦部材と、ダンパー部と、を備える。摩擦部材は、被接触部材に接触可能に構成される。ダンパー部は、被接触部材から摩擦部材に伝達されるトルク変動を減衰する。
【0025】
ここでは、コアプレートが、縁部にバーリング部を含む複数の装着用孔を有し、焼結合金製パッドがパッド装着用孔に固定されている。そのため、焼結合金製パッドを別の部材を用いて固定する必要がない。その結果、簡易な構造の摩擦部材を得ることができる。
【発明の効果】
【0026】
以上のような本発明では、簡易な構造の摩擦部材及びそれを用いたクラッチディスク組立体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】本発明の一実施形態による摩擦部材が採用されたクラッチディスク組立体の断面図。
図2】上半分は、摩擦フェーシングの正面図。下半分は、クッショニングプレートの正面図。
図3】クッショニングプレートの取付部、摩擦フェーシング、及び、焼結合金製パッドの断面図。
図4】本発明の他の実施形態によるクッショニングプレートの取付部、摩擦フェーシング、及び、焼結合金製パッドの断面図。
図5】本発明の他の実施形態による摩擦フェーシング、及び、クッショニングプレートの正面図。
図6】本発明のさらにその他の実施形態による摩擦フェーシング、及び、クッショニングプレートの正面図。
【発明を実施するための形態】
【0028】
図1に本発明の一実施形態による摩擦部材2が採用されたクラッチディスク組立体1を示している。クラッチディスク組立体1は、エンジンからのトルクをトランスミッションに伝達及び遮断するための装置である。図1においては、O-Oがクラッチディスク組立体1の回転軸線である。なお、以下の説明において、「軸方向」とは回転軸Oが延びる方向を示し、図1に示すように、図1の右側を「軸方向の第1側」とし、逆を「軸方向の第2側」とする。また、「径方向」とは、回転軸Oを中心とした円の半径方向を意味し、「円周方向」とは、回転軸Oを中心とした円の周方向を意味する。
【0029】
図1の左側にエンジン及びフライホイール(図示せず)が配置され、図1の右側にトランスミッション(図示せず)が配置されている。
【0030】
このクラッチディスク組立体1は、主に、摩擦部材2と、ダンパー部3と、から構成されている。
【0031】
[摩擦部材2]
摩擦部材2は、クラッチディスク組立体1の外周部に固定される。摩擦部材2は、クッショニングプレート21(コアプレートの一例)と、焼結合金製パッド22と、摩擦フェーシング23と、を備える。摩擦フェーシング23は、第1摩擦フェーシング23a及び第2摩擦フェーシング23bを有する。
【0032】
<クッショニングプレート21>
クッショニングプレート21は、コアプレートの一例である。クッショニングプレート21は、クラッチプレート35に固定される。クッショニングプレート21は、弾性変形可能に構成されている。クッショニングプレート21は、図2に示すように、円板部210と、複数のクッション部211と、を有している。
【0033】
円板部210は、ダンパー部3の外周部に、複数のリベットによって固定されている。円板部210は、環状である。
【0034】
複数のクッション部211は、円板部210の外周側に、円周方向に並べて配置される。クッション部211は、円板部210の外周部に円板部210と一体に形成されている。クッション部211は、円周方向に実質的に波型形状に形成されている。すなわち、クッション部211は、第1平坦部214及び第2平坦部215と、中間部216と、を有している。
【0035】
第1平坦部214には、プレッシャープレートに接触する第1摩擦フェーシング23aが、取り付けられる。第2平坦部215には、フライホイールに接触する第2摩擦フェーシング23bが、取り付けられる。第2平坦部215は、軸方向において第1平坦部214からオフセットして配置される。中間部216は、第2平坦部215と第1平坦部214との円周方向間に配置されている。
【0036】
ここで、図2及び図3に示すように、第2平坦部215には、複数のパッド装着用孔211aが形成されている。複数のパッド装着用孔211aは、円周方向に間隔を隔てて配置されている。パッド装着用孔211aは、第2平坦部215を軸方向に貫通している。パッド装着用孔211aは、縁部に複数のバーリング部211bを有する。バーリング部211bは、第2平坦部215に対して、軸方向第2側の面から第1側の面に向けてバーリング加工されて形成される。そのため、バーリング部211bは、第2平坦部215の軸方向第1側の面から、軸方向第1側に突出する。
【0037】
<焼結合金製パッド22>
図1図3を参照して、複数の焼結合金製パッド22は、パッド装着用孔211aに固定され、円周方向に間隔を隔てて配置されている。具体的には、焼結合金製パッド22は、パッド装着用孔211aのバーリング部211bに圧入されている。また、後述するように、焼結合金製パッド22は、第1摩擦フェーシング23a及び第2摩擦フェーシング23bに形成された第1貫通孔231a及び第2貫通孔231bを貫通している。複数の焼結合金製パッド22の径方向の位置は、同一である。すなわち、この実施形態では、複数の焼結合金製パッド22は、同じピッチ径の円周上に配置されている。
【0038】
焼結合金製パッド22は、円柱形である。焼結合金製パッド22の両端面の角は曲面である。
【0039】
焼結合金製パッド22の軸方向第1側の面は、プレッシャープレートに対向して配置される。焼結合金製パッド22の軸方向第1側の面は、プレッシャープレートに対して接触可能である。焼結合金製パッド22の軸方向第1側の面は、第1摩擦フェーシング23aの軸方向第1側の面と実質的に同一面上に形成される。例えば、摩擦部材2がプレッシャープレートによってフライホイール側に押圧された場合に、焼結合金製パッド22の軸方向第1側の面は、第1摩擦フェーシング23aの軸方向第1側の面とともに、プレッシャープレートに接触する。
【0040】
焼結合金製パッド22の軸方向第2側の面は、フライホイールに対向して配置される。焼結合金製パッド22の軸方向第2側の面は、フライホイールに対して接触可能である。焼結合金製パッド22の軸方向第2側の面は、第2摩擦フェーシング23bの軸方向第2側の面と実質的に同一面上に形成される。これにより、例えば、摩擦部材2がプレッシャープレートよってフライホイール側に押圧された場合に、各焼結合金製パッド22の軸方向第2側の面は、第2摩擦フェーシング23bの軸方向第2側の面とともに、フライホイールに接触する。
【0041】
上記の焼結合金製パッド22は、セラミックを含んでいる。焼結合金製パッド22は、耐摩耗性や耐熱性に優れている。メタリック材の主成分は銅粉であり、添加剤は錫、鉛、グラファイト等である。焼結合金製パッド22は、上記の材料を混入したものを加熱焼結して製造される。
【0042】
<摩擦フェーシング23>
摩擦フェーシング23は、図1及び図2に示すように、クッション部211の軸方向両側面において、焼結合金製パッド22が設けられた領域以外の領域に固定されている。より具体的には、第1摩擦フェーシング23aは、円環状であり、クッション部211の第1平坦部214にリベットにより固定される。第2摩擦フェーシング23bは、円環状であり、クッション部211の第2平坦部215にリベットにより固定される。
【0043】
第1摩擦フェーシング23aは、パッド装着用孔211aに対応する位置に形成された複数の第1貫通孔231aを有する。第1貫通孔231aは、円周方向に間隔を隔てて配置されている。第1貫通孔231aは、第1摩擦フェーシング23aを軸方向に貫通する。第1貫通孔231aの直径は、パッド装着用孔211aの直径と同じか、少しだけ大きい。
【0044】
第2摩擦フェーシング23bは、パッド装着用孔211aに対応する位置に形成された複数の第2貫通孔231bを有する。第2貫通孔231bは、円周方向に間隔を隔てて配置されている。第2貫通孔231bは、第2摩擦フェーシング23bを軸方向に貫通する。第2貫通孔231bの直径は、パッド装着用孔211aの直径と同じか、少しだけ大きい。
【0045】
また、第1摩擦フェーシング23a及び第2摩擦フェーシング23bは、径方向に延びる潤滑溝によって、複数の摩擦面に分割されている。そして、複数の摩擦面は、焼結合金製パッド22が設けられたパッド装着用孔211aを有する摩擦面23xと、パッド装着用孔211aが設けられていない摩擦面23yとが、円周方向に交互に並ぶように配置されている。
【0046】
摩擦フェーシング23は、樹脂、紙、コルク材のうちの少なくともいずれかを含む。
【0047】
[ダンパー部3]
ダンパー部3は、被接触部材から摩擦部材2に伝達されるトルクを出力側の部材に伝達するとともに、トルク変動を減衰する。ダンパー部3は、クラッチディスク組立体1の内周部分に配置される。ダンパー部3は、図1に示すように、主に、クラッチプレート35及びリティニングプレート36と、ハブフランジ37と、複数のトーションスプリング39と、ヒステリシストルク発生機構31と、を有している。
【0048】
クラッチプレート35及びリティニングプレート36は軸方向に間隔を開けて対向して配置されている。クラッチプレート35とリティニングプレート36とは、ストップピン34によって連結されており、互いに相対回転不能である。クラッチプレート35及びリティニングプレート36と、ハブフランジ37とは、ストップピン34によって規制された角度範囲内で相対回転自在である。トーションスプリング39はクラッチプレート35とリティニングプレート36との間に配置されており、これらのクラッチプレート35及びリティニングプレート36と、ハブフランジ37と、を回転方向に弾性的に連結する。
【0049】
ヒステリシストルク発生機構31は、クラッチプレート35及びリティニングプレート36と、ハブフランジ37と、の軸方向間に配置されている。
【0050】
以上のような構成によって、クラッチプレート35及びリティニングプレート36と、ハブフランジ37と、が相対回転した際に、ヒステリシストルクが発生する。
【0051】
このような構成のクラッチディスク組立体1では、クッショニングプレート21が、縁部にバーリング部211bを含む複数のパッド装着用孔211aを有し、焼結合金製パッド22がパッド装着用孔211aに固定されている。そのため、焼結合金製パッド22を別の部材を用いて固定する必要がない。その結果、簡易な構造の摩擦部材2を得ることができる。
【0052】
このような構成のクラッチディスク組立体1ではさらに、摩擦フェーシング23が円環状である。そのため、摩擦フェーシング23の強度を高めることができる。これにより、補強板のような芯板が不要である。その結果、この点からも、簡易な構造の摩擦部材2を得ることができる。
【0053】
焼結合金製パッド22の軸方向端面の角が曲面を有するので、焼結合金製パッド22の取付が容易になる。
【0054】
[他の実施形態]
本発明は以上のような実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲を逸脱することなく種々の変形又は修正が可能である。
【0055】
(a)上記実施形態では、コアプレートは、クッショニングプレート21であったが、特にこれに限定されない。コアプレートは、例えば、クッション性を有さないプレートであってもよい。
【0056】
(b)図4に示すように、バーリング部211bは、先端部に複数の切欠き211cを有してもよい。切欠き211cは、バーリング部211bの先端部の円周状に、間隔をあけて配置される。
【0057】
この場合、バーリング部211bが弾性を有するため、焼結合金製パッド22を圧入しやすく、かつより確実に抜け止めすることができる。
【0058】
(c)上記実施形態では、焼結合金製パッド22は円柱状であったが、特にこれに限定されない。図5に示すように、焼結合金製パッド22’は、楕円柱状であってもよい。このような楕円柱状の焼結合金製パッド22’では、焼結合金製パッド22’が接触する相手部材との接触面積を、円柱状のパッドに比較して広くすることができ、焼結合金製パッド22’の面圧を小さくすることができる。このため、焼結合金製パッド22’の摩耗を抑え、かつフライホイールやプレッシャープレートにおいて、同一円周の段付き摩耗を抑制することができる。
【0059】
なお、図5に示す実施形態では、焼結合金製パッド22’の長軸が径方向に対して傾いている。すなわち、焼結合金製パッド22’の長軸が、回転軸から放射状に延びる直線に対して傾いている。この場合は、摩擦フェーシングの径方向の幅が狭い場合であっても、焼結合金製パッドを長軸の長い楕円柱状とすることができる。これにより、半径方向の接触幅を広くすることができ、焼結合金製パッドによる半径方向の相手攻撃を分散し小さくできる。このため、焼結合金製パッドの当たる面と当たらない面の摩耗差を小さくすることができる。すなわち、フライホイールやプレッシャープレートにおいて、半径方向の段付き摩耗を抑制することができる。なお、この摩耗差による段付きは、切れ不良に影響する。
【0060】
(d)上記実施形態では、複数の焼結合金製パッド22は、すべて径方向において同一の位置に配置されていたが、焼結合金製パッドの配置は、これに限定されない。たとえば、図6に示すように、複数の焼結合金製パッドを、径方向の第1位置に配置された複数の第1焼結合金製パッド22aと、径方向の第2位置に配置された複数の第2焼結合金製パッド22bと、によって構成してもよい。この場合、段付き摩耗をさらに抑制することができる。
【0061】
(e)上記実施形態では、摩擦フェーシング23は、樹脂、紙、コルク材のうちの少なくともいずれかを含む材料であったが、特にこれに限定されない。摩擦フェーシング23は、有機質系の材料、例えば、繊維及び/又は合成樹脂と、硬質粒子と、黒鉛等の潤滑粒子等とから、構成されてもよい。また、摩擦フェーシング23は、無機質系の材料、例えば、銅・ニッケル・錫等の基材と、硬質粒子と、黒鉛等の潤滑粒子等とから、構成されていてもよい。
【0062】
(f)上記実施形態では、バーリング部211bは、第2平坦部215に対して、軸方向第2側の面から第1側の面に向けてバーリング加工されて形成された。しかしながら、特にこれに限定されない。バーリング部211bは、第2平坦部215に対して、軸方向第1側の面から第2側の面に向けてバーリング加工され形成されてもよい。
【符号の説明】
【0063】
1 クラッチディスク組立体
2 摩擦部材
3 ダンパー部
21 クッショニングプレート(コアプレートの一例)
22 焼結合金製パッド
22’ 焼結合金製パッド
23 摩擦フェーシング
23a 第1摩擦フェーシング
23b 第2摩擦フェーシング
23c 貫通孔
210 固定部
211 取付部
211a パッド装着用孔
211b バーリング部
211c 切欠き
図1
図2
図3
図4
図5
図6