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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-07
(45)【発行日】2023-12-15
(54)【発明の名称】作業車のマフラ装置及び作業車
(51)【国際特許分類】
   B60K 13/04 20060101AFI20231208BHJP
   F01N 13/08 20100101ALI20231208BHJP
【FI】
B60K13/04 D
F01N13/08 Z
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020077970
(22)【出願日】2020-04-27
(65)【公開番号】P2021172238
(43)【公開日】2021-11-01
【審査請求日】2022-06-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000001052
【氏名又は名称】株式会社クボタ
(74)【代理人】
【識別番号】100162031
【弁理士】
【氏名又は名称】長田 豊彦
(74)【代理人】
【識別番号】100175721
【弁理士】
【氏名又は名称】高木 秀文
(72)【発明者】
【氏名】保屋野 史士
(72)【発明者】
【氏名】齊喜 範明
(72)【発明者】
【氏名】小宮 勇人
(72)【発明者】
【氏名】武岡 達
【審査官】宇佐美 琴
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-200038(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2016-0128717(KR,A)
【文献】特開2020-001496(JP,A)
【文献】韓国公開実用新案第20-2010-0002174(KR,U)
【文献】特開2010-195339(JP,A)
【文献】特開平05-214930(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0169070(US,A1)
【文献】特開2010-150947(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60K 11/00-15/10
F01N 1/00- 1/24,
5/00- 5/04,
13/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
屈曲部を有するマフラパイプと、
前記屈曲部に沿うように前記マフラパイプに取り付けられた補強部材と、
前記補強部材によって支持され、前記屈曲部を外側から覆うカバー部材と、
を具備し、
前記補強部材は、
記カバー部材の外側に配置されており、
正面視において、当該補強部材の全体が前記マフラパイプと重複する位置に設けられる、
作業車のマフラ装置。
【請求項2】
前記補強部材は、
前記マフラパイプのうち、前記屈曲部の一端側に隣接する第一隣接部と、前記屈曲部の他端側に隣接する第二隣接部と、を接続するように取り付けられる、
請求項1に記載の作業車のマフラ装置。
【請求項3】
前記補強部材は、
前記屈曲部に対して固定されない、
請求項2に記載の作業車のマフラ装置。
【請求項4】
前記補強部材は、
前記屈曲部を挟むように一対設けられる、
請求項1から請求項3までのいずれか一項に記載の作業車のマフラ装置。
【請求項5】
前記マフラパイプに設けられ、前記補強部材が取り付けられる取付部をさらに具備し、
前記取付部は、
前記マフラパイプに対する溶接代を拡張するための第一拡張部材を介して前記マフラパイプに溶接されている、
請求項1から請求項4までのいずれか一項に記載の作業車のマフラ装置。
【請求項6】
前記マフラパイプを支持する支持部をさらに具備し、
前記支持部は、
前記マフラパイプに対する溶接代を拡張するための第二拡張部材を介して前記マフラパイプに溶接されている、
請求項1から請求項5までのいずれか一項に記載の作業車のマフラ装置。
【請求項7】
請求項1から請求項6までのいずれか一項に記載のマフラ装置を具備する作業車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排気ガスを外部に排出するマフラ装置及び作業車の技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、排気ガスを外部に排出するマフラ装置及び作業車の技術は公知となっている。例えば、特許文献1に記載の如くである。
【0003】
特許文献1に記載されるマフラ装置は、選択触媒還元装置から作業車(トラクタ)の左右外側へ突出する外部第一管部と、当該外部第一管部から上方へ延出する外部第二管部と、が形成された排気管(マフラパイプ)を具備する。外部第二管部は、操作席とフロントピラーとを結ぶ線上に配置されている。これによって、外部第二管部が運転者の視界を遮るのを抑制することができる。
【0004】
排気管は、例えばトラクタ走行時に振動する。特許文献1に記載される排気管は、基端部側(外側第一管部側)がエンジンに支持されているだけで、先端側(外側第二管部側)が特に支持されておらず、振動が大きくなるおそれがあった。このため、排気管の強度を向上できる技術が求められていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2014-189184号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、以上の如き状況を鑑みてなされたものであり、その解決しようとする課題は、マフラパイプの強度を向上させることが可能な作業車のマフラ装置及び作業車を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0008】
即ち、請求項1においては、屈曲部を有するマフラパイプと、前記屈曲部に沿うように前記マフラパイプに取り付けられた補強部材と、前記補強部材によって支持され、前記屈曲部を外側から覆うカバー部材と、を具備し、前記補強部材は、前記カバー部材の外側に配置されており、正面視において、当該補強部材の全体が前記マフラパイプと重複する位置に設けられるものである。
【0009】
請求項2においては、前記補強部材は、前記マフラパイプのうち、前記屈曲部の一端側に隣接する第一隣接部と、前記屈曲部の他端側に隣接する第二隣接部と、を接続するように取り付けられるものである。
【0010】
請求項3においては、前記補強部材は、前記屈曲部に対して固定されないものである。
【0011】
請求項4においては、前記補強部材は、前記屈曲部を挟むように一対設けられるものである。
【0014】
請求項においては、前記マフラパイプに設けられ、前記補強部材が取り付けられる取付部をさらに具備し、前記取付部は、前記マフラパイプに対する溶接代を拡張するための第一拡張部材を介して前記マフラパイプに溶接されているものである。
【0015】
請求項においては、前記マフラパイプを支持する支持部をさらに具備し、前記支持部は、前記マフラパイプに対する溶接代を拡張するための第二拡張部材を介して前記マフラパイプに溶接されているものである。
【0016】
請求項においては、請求項1から請求項までのいずれか一項に記載のマフラ装置を具備する作業車である。
【発明の効果】
【0017】
本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。
【0018】
請求項1においては、マフラパイプの強度を向上させることができる。また、運転者の視認性を向上させることができる。
【0019】
請求項2においては、マフラパイプの強度をより効果的に向上させることができる。
【0020】
請求項3においては、マフラパイプの強度をより効果的に向上させることができる。
【0021】
請求項4においては、マフラパイプの強度をより効果的に向上させることができる。
【0024】
請求項においては、補強部材が取り付けられる取付部の破損の発生を抑制することができる。
【0025】
請求項においては、支持部とマフラパイプとの固定部分の破損の発生を抑制することができる。
【0026】
請求項においては、マフラパイプの強度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】本発明の一実施形態に係るトラクタを示した側面図。
図2】マフラ装置を示した斜視図。
図3】同じく、正面図。
図4】同じく、背面図。
図5】マフラパイプ、マフラカバー及び補強部材の分解斜視図。
図6図5の下部を示した拡大分解斜視図。
図7】(a)マフラパイプを示した側面図。(b)同じく、正面図。
図8】(a)図7(a)におけるA-A断面図。(b)第一拡張部材の溶接部分を示した正面図。
図9】(a)補強部材を示した斜視図。(b)同じく、正面図。(c)同じく、側面図。
図10】右前方から支持部を見た図。
図11】右後方から支持部を見た図。
図12】マフラパイプ、第二拡張部材、取付部材及び前後の載置部を示した側面図。
図13】変形例に係る補強部材を示した正面図。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下では、図中の矢印U、矢印D、矢印F、矢印B、矢印L及び矢印Rで示した方向を、それぞれ上方向、下方向、前方向、後方向、左方向及び右方向と定義して説明を行う。
【0029】
まず、図1を用いて本発明の一実施形態に係るトラクタ1の全体構成について説明する。
【0030】
トラクタ1は、主として機体フレーム2、エンジン3、マフラ装置20、ボンネット4、トランスミッションケース5、前輪6、後輪7、フェンダ8、昇降装置9、キャビン10、座席11及びステアリングホイール12等を具備する。
【0031】
機体フレーム2は、複数の板材を適宜組み合わせて形成される枠状の部材である。機体フレーム2は、平面視略矩形状に形成される。機体フレーム2は、その長手方向を前後方向に向けてトラクタ1の前部に配置される。機体フレーム2の後部にはエンジン3が固定される。エンジン3の上方には、エンジン3の排気ガスを排出するマフラ装置20が配置される。エンジン3及びマフラ装置20の一部(後述するDPF30(図2参照)等)はボンネット4に覆われる。エンジン3の後部には、トランスミッションケース5が固定される。
【0032】
機体フレーム2の前部は、フロントアクスル機構(不図示)を介して左右一対の前輪6に支持される。トランスミッションケース5の後部は、リアアクスル機構(不図示)を介して左右一対の後輪7に支持される。左右一対の後輪7は、概ね上方からフェンダ8によって覆われる。
【0033】
トランスミッションケース5の後部には、昇降装置9が設けられる。昇降装置9には、各種の作業装置(例えば、耕運機等)を装着することができる。昇降装置9は油圧シリンダ等のアクチュエータによって、装着された作業装置を昇降させることができる。当該昇降装置9には、図示せぬPTO軸を介してエンジン3の動力を伝達することができる。
【0034】
エンジン3の動力は、トランスミッションケース5に収容された変速装置(不図示)で変速された後、前記フロントアクスル機構を経て前輪6に伝達可能とされると共に、前記リアアクスル機構を経て後輪7に伝達可能とされる。エンジン3の動力によって前輪6及び後輪7が回転駆動され、トラクタ1は走行することができる。またエンジン3の動力によって、昇降装置9に装着された作業装置を駆動させることができる。
【0035】
エンジン3の後方にはキャビン10が設けられる。キャビン10の内部には、運転者が搭乗する居住空間が形成される。キャビン10の略中央には、運転者が着座するための座席11が配置される。キャビン10の前部には、前輪6の切れ角を調節するためのステアリングホイール12が配置される。
【0036】
次に、図1から図12を用いてマフラ装置20の構成について説明する。
【0037】
マフラ装置20は、エンジン3の排気ガスを排出するためのものである。マフラ装置20は、DPF30、SCR40、マフラパイプ50、ボス部60、第一拡張部材70、マフラカバー80、補強部材90、支持部100及び第二拡張部材110を具備する。
【0038】
図2から図4に示すDPF(Diesel Particulate Filter)30は、エンジン3から排出される排気ガス中のPMを捕集するためのものである。DPF30は、略筒状のケース(筐体)内にPMを捕集するフィルタ等を設けて構成される。DPF30は、前端部に接続された接続菅31を介して後述するSCR40と接続される。
【0039】
SCR(Selective Catalytic Reduction)40は、排気ガス中の窒素酸化物を浄化するためのものである。SCR40は、筒状のケース(筐体)内に触媒等を設けて構成される。SCR40は、DPF30の右方に配置される。SCR40には、DPF30を通過した排気ガスが接続菅31を介して導入される。DPF30及びSCR40は、エンジン3及びトランスミッションケース5に載置されたフレームA1に支持され、図1に示すエンジン3の上方に配置される。
【0040】
マフラパイプ50は、SCR40を通過した排気ガスを外部へ排出するためのものである。図5及び図7に示すように、マフラパイプ50は、軸線方向を上下方向に向けた筒状部材の下部を左方へ曲げたような正面視略L字状に形成される。なお、図7においては、説明の便宜上、後述するマフラカバー80及び補強部材90の記載を省略している。マフラパイプ50は、SCR40と接続され、ボンネット4(図1参照)の外部へと延設される。マフラパイプ50は、正面視略L字状に形成された内管50aの中途部に第一外管50b及び第二外管50cが適宜外嵌された構造(二重管構造)となっている。第二外管50cは、前後方向に2分割された管がリブ50dで互いに固定されることで構成される。マフラパイプ50は、第一直線部51、屈曲部52、第二直線部53及び先端部54を具備する。
【0041】
図6及び図7に示すように、第一直線部51は、マフラパイプ50の下部に形成された略直線状の部分である。第一直線部51は、略左右方向へ延びるように形成される。第一直線部51の左端部は、SCR40に接続される。こうして、第一直線部51は、マフラパイプ50のうち、最もSCR40に近い側(排気ガスの流通方向における上流側)に配置される。
【0042】
屈曲部52は、所定の方向に屈曲するように形成された部分である。屈曲部52は、第一直線部51の右端部から略上方へ向けて屈曲するような正面視略円弧状に形成される。屈曲部52は、曲率が一定となるように形成される。屈曲部52は、第一直線部51と後述する第二直線部53とを接続する。
【0043】
図5及び図7に示すように、第二直線部53は、屈曲部52から延出する略直線状の部分である。第二直線部53は、屈曲部52から略上方へ延びるように形成される。より詳細には、第二直線部53は、上方向に向かうにつれてやや左後方へ延びるように形成される。
【0044】
先端部54は、マフラパイプ50のうち、最もSCR40から遠い側(下流側)に配置される部分である。先端部54は、第二直線部53の上端部と接続される。先端部54は、右前方を向いて開口しており、当該開口部分から排気ガスが外部へと排出される。
る。
【0045】
ボス部60は、マフラカバー80及び補強部材90をマフラパイプ50に取り付けるためのものである。なお、本実施形態においては、図7に示すように、マフラパイプ50に設けられた第一ボス部61から第四ボス部64を総称して「ボス部60」と記載している。ボス部60は、円筒状に形成される。以下、第一ボス部61から第四ボス部64について説明する。
【0046】
図5及び図7に示すように、第一ボス部61は、マフラカバー80の第一カバー81を取り付けるためのものである。第一ボス部61は、溶接によりマフラパイプ50の第一直線部51に固定される。第一ボス部61は、第一直線部51の前側及び後側にそれぞれ設けられる。
【0047】
図6及び図7に示すように、第二ボス部62は、第一カバー81及び補強部材90を取り付けるためのものである。第二ボス部62は、溶接によりマフラパイプ50の第一直線部51の右端部(第一ボス部61よりも右方)に固定される。第二ボス部62は、第一直線部51を挟んで前後一対設けられる。
【0048】
第三ボス部63は、マフラカバー80の第三カバー83及び補強部材90を取り付けるためのものである。第三ボス部63は、後述する第一拡張部材70を介してマフラパイプ50の第二直線部53の下端部に固定される。第三ボス部63は、第二直線部53を挟んで前後一対設けられる。
【0049】
図5及び図7に示すように、第四ボス部64は、第三カバー83を取り付けるためのものである。第四ボス部64は、溶接によりマフラパイプ50の第二直線部53(第三ボス部63よりも高い位置)に固定される。第四ボス部64は、互いに間隔をあけて上下に複数配置される。第四ボス部64は、第二直線部53の前側及び後側にそれぞれ設けられる。
【0050】
第一拡張部材70は、第三ボス部63のマフラパイプ50に対する溶接代を拡張するためのものである。図8に示すように、第一拡張部材70は、板面を前後に向けた板状部材の左部及び右部を曲げることで、マフラパイプ50の外周に沿うような形状に形成される。第一拡張部材70は、第二直線部53を挟んで前後一対設けられる。第一拡張部材70は、第三ボス部63をマフラパイプ50に接触させた場合よりも、マフラパイプ50に対して広い範囲で接触可能に構成される。第一拡張部材70は、左部、左右中央部及び右部がマフラパイプ50に接触する。
【0051】
第一拡張部材70のマフラパイプ50との接触部分は、溶接によりマフラパイプ50の第二直線部53に固定される(図8(b)に黒塗りで示す溶接部分C参照)。こうして、マフラパイプ50に対して広い範囲で接触可能な第一拡張部材70をマフラパイプ50に溶接することで、第三ボス部63をマフラパイプ50に直接溶接する場合よりも、溶接代を多くする(拡張する)ことができる。
【0052】
また、第一拡張部材70の左右中央部には、第三ボス部63が挿通される。第三ボス部63は、マフラパイプ50と当接される。第三ボス部63は、溶接により第一拡張部材70に固定される。このように、第三ボス部63を筒状のマフラパイプ50ではなく、板状の第一拡張部材70に溶接することで、第三ボス部63の溶接代を多くする(マフラパイプ50に直接溶接する場合の溶接代よりも多くする)ことができる。
【0053】
図2及び図5に示すように、マフラカバー80は、マフラパイプ50を外側から覆うものである。マフラカバー80は、第一カバー81、第二カバー82及び第三カバー83を具備する。
【0054】
第一カバー81は、マフラパイプ50のうち、第一直線部51を覆うものである。図5及び図6に示すように、第一カバー81は、第一直線部51の形状に沿うように形成される。第一カバー81は、開口部を下方に向けた略U字状の断面形状に形成される。第一カバー81は、ボルトB1により第一ボス部61に取り付けられると共に、ボルトB2により第二ボス部62に取り付けられる。こうして、第一カバー81は、第一直線部51に固定される。
【0055】
第二カバー82は、マフラパイプ50のうち、屈曲部52を覆うものである。第二カバー82は、屈曲部52の形状に沿うように形成される。第二カバー82は、屈曲部52を挟んで前後に一対設けられる。前後の第二カバー82は、開口部を屈曲部52側に向けた略半円状の断面形状に形成される。第二カバー82は、ボルトB5により補強部材90に固定される。
【0056】
図2及び図5に示すように、第三カバー83は、マフラパイプ50のうち、第二直線部53を覆うものである。第三カバー83は、第二直線部53の形状に沿うように形成される。第三カバー83は、第二直線部53を挟んで左右に一対設けられる。左右の第三カバー83は、開口部を第二直線部53側に向けた略半円状の断面形状に形成される。図3から図5に示すように、左右の第三カバー83は、ボルトB4により、互いに固定されると共に第四ボス部64に取り付けられる。また、第三カバー83の下部は、ボルトB3により後述する補強部材90と共に第三ボス部63に取り付けられる。こうして、第三カバー83は、第二直線部53に固定される。
【0057】
補強部材90は、マフラパイプ50を補強するためのものである。図5及び図9に示すように、補強部材90は、板面を略前後方向に向けた板状部材によって構成される。補強部材90は、マフラパイプ50の屈曲部52の形状に沿うように(屈曲部52と同様に屈曲するように)形成される。図3及び図4に示すように、補強部材90は、全体が正面視においてマフラパイプ50及びマフラカバー80と重複するように配置される。補強部材90は、マフラパイプ50を挟んで前後一対設けられる。図6及び図9に示すように、補強部材90は、第一直線部91、屈曲部92及び第二直線部93を具備する。
【0058】
第一直線部91は、補強部材90の左下部に形成された略直線状の部分である。第一直線部91は、マフラパイプ50の第一直線部51が延びる方向に対して略平行に延びるように形成される。第一直線部91は、貫通孔91aを具備する。貫通孔91aは、第一直線部91を前後に貫通する孔である。貫通孔91aは、第一直線部91の左端部に形成される。
【0059】
屈曲部92は、第一直線部91と後述する第二直線部93とを接続する部分である。屈曲部92は、マフラパイプ50の屈曲部52の形状に沿うような正面視略円弧状に形成される。より詳細には、屈曲部92は、屈曲部52と同じ曲率で屈曲するように形成される。屈曲部92は、貫通孔92aを具備する。貫通孔92aは、屈曲部92を前後に貫通する孔である。貫通孔92aは、互いに間隔をあけて2つ形成される。
【0060】
第二直線部93は、屈曲部92から略上方へ延出する略直線状の部分である。第二直線部93は、マフラパイプ50の第二直線部53が延びる方向に対して略平行に延びるように形成される。第二直線部93は、貫通孔93aを具備する。貫通孔93aは、第二直線部93を前後に貫通する孔である。貫通孔93aは、長手方向を略上下方向に向けた長孔状に形成される。貫通孔93aは、第二直線部93の上端部に形成される。
【0061】
図6に示すように、補強部材90は、マフラパイプ50(屈曲部52)の前側及び後側に配置される。補強部材90は、貫通孔91aに挿通されるボルトB2により第二ボス部62(第一直線部51)に取り付けられる。また、補強部材90は、貫通孔93aに挿通されるボルトB3により第三ボス部63(第二直線部53)に取り付けられる。こうして、補強部材90は、第一直線部51及び第二直線部53を接続するように取り付けられる。この際、補強部材90は、ボルトB2・B3により第一カバー81及び第三カバー83と共締めされる。
【0062】
また、補強部材90の屈曲部92には、貫通孔92aに挿通されるボルトB5により第二カバー82が固定される。当該第二カバー82は、補強部材90を介してマフラパイプ50に取り付けられる。
【0063】
図2図3及び図10に示すように、支持部100は、マフラパイプ50を支持するものである。なお、図10及び後述する図11においては、説明の便宜上、DPF30、SCR40、マフラカバー80及び補強部材90の記載を省略している。支持部100は、マフラパイプ50の第一直線部51を下方から支持する。支持部100は、前側支持部101、後側支持部102及び取付部材103を具備する。
【0064】
図10から図12に示すように、前側支持部101は、第一直線部51の下方を一方側(前側)から支持するものである。前側支持部101は、前側固定部101a、前側接続部101b及び前側載置部101cを具備する。
【0065】
前側固定部101aは、前側支持部101を車体に固定するためのものである。前側固定部101aは、略板状に形成され、SCR40等を支持するフレームA1に固定される。
【0066】
前側接続部101bは、前側固定部101a及び後述する前側載置部101cを接続するものである。前側接続部101bは、略棒状に形成され、左端部が前側固定部101aに固定されると共に右端部が前側載置部101cに固定される。
【0067】
前側載置部101cは、後述する取付部材103が載置されるものである。前側載置部101cは、2つの面(底面と、底面の前端部から上方に向けて立設する側面と)を有する略L字状に形成される。前側載置部101cは、第二ボス部62の下方に配置される。
【0068】
後側支持部102は、第一直線部51の下方を他方側(後側)から支持するものである。後側支持部102は、前側支持部101の後方に配置される。後側支持部102は、後側固定部102a、後側接続部102b及び後側載置部102cを具備する。
【0069】
後側固定部102aは、後側支持部102を車体に固定するためのものである。後側固定部102aは、略板状に形成され、フレームA1に固定される。
【0070】
後側接続部102bは、後側固定部102a及び後述する後側載置部102cを接続するものである。後側接続部102bは、略左右方向へ延びる2本の棒状部材を互いに固定することで1本の棒状に構成される。後側接続部102bは、一端部が後側固定部102aに固定されると共に他端部が後側載置部102cに固定される。
【0071】
後側載置部102cは、取付部材103が載置されるものである。後側載置部102cは、2つの面(底面と、底面の後端部から上方に向けて立設する側面と)を有する略L字状の部材である。後側載置部102cは、前側載置部101cの後方に配置される。
【0072】
取付部材103は、支持部100をマフラパイプ50に取り付けるためのものである。取付部材103は、開口部を略上方へ向けた側面視略U字状に形成される。取付部材103の右端部には、板面を左右方向へ向けた板状部材103aが固定される。取付部材103は、ボルトによって前後の載置部101c・102cに固定される。
【0073】
第二拡張部材110は、取付部材103のマフラパイプ50に対する溶接代を拡張するためのものである。第二拡張部材110は、板状部材を曲げることで、板面がマフラパイプ50の外周に沿うように形成される。第二拡張部材110は、マフラパイプ50を挟んで前後一対設けられる。第二拡張部材110は、取付部材103をマフラパイプ50に接触させた場合よりも、マフラパイプ50に対して広い範囲で接触可能に構成される。第二拡張部材110は、板面の略全域がマフラパイプ50に接触する。
【0074】
第二拡張部材110のマフラパイプ50との接触部分は、溶接によりマフラパイプ50に固定される。この際、第二拡張部材110の外縁部が第一直線部51に適宜溶接される。こうして、マフラパイプ50に対して広い範囲で接触可能な第二拡張部材110をマフラパイプ50に溶接することで、取付部材103をマフラパイプ50に直接溶接する場合よりも、溶接代を多くする(拡張する)ことができる。
【0075】
上述の如く構成されたマフラ装置20においてマフラパイプ50は、例えばトラクタ1の走行時に振動する。当該振動により、マフラパイプ50の屈曲部52には応力が集まり易い。本実施形態においては、図6に示すように、補強部材90をマフラパイプ50に取り付けることで、屈曲部52を補強することができる。これにより、屈曲部52の強度を向上させることができるため、マフラパイプ50の振動を抑制することができる。また、振動によるマフラパイプ50の破損の発生を抑制できる。
【0076】
また、上述の如く、屈曲部52に応力が集まり易いため、例えば、ボス部が屈曲部52に設けられた場合、当該ボス部が応力の影響で破損する可能性がある。そこで、本実施形態では、第二カバー82を屈曲部52に固定するのではなく、補強部材90に固定している。これにより、屈曲部52に第二カバー82を固定するためのボス部を設ける必要がなくなり、当該ボス部が破損するのを未然に防止することができる。
【0077】
また、補強部材90を屈曲部52に固定するのではなく、第一直線部51(第二ボス部62)及び第二直線部53(第三ボス部63)に固定している。これにより、屈曲部52に補強部材90を固定するためのボス部を設ける必要がなくなり、当該ボス部が破損するのを未然に防止することができる。
【0078】
ここで、マフラパイプ50は、略左右方向へ延びる第一直線部51から略上方へ向けて屈曲しているため、左右方向へ比較的大きく振動する。そこで、本実施形態においては、振動が大きな左右方向に対して断面係数が大きくなるように補強部材90を配置している。具体的には、厚み方向が略前後方向を向くように、補強部材90を配置している。これにより、マフラパイプ50が左右に揺れた場合に、補強部材90が変形し難くなるため、マフラパイプ50が左右に振動するのを効果的に抑制することができる。
【0079】
また、本実施形態のマフラ装置20においては、支持部100により、マフラパイプ50の振動を受けることができる。これにより、マフラパイプ50の振動を抑制し、マフラパイプ50に応力が作用するのを抑制することができる。特に、本実施形態においては、2つの支持部(前側支持部101及び後側支持部102)によりマフラパイプ50の振動を受けることができるため、マフラパイプ50の振動を効果的に抑制することができる。
【0080】
また、本実施形態において補強部材90は、第一カバー81及び第三カバー83と共締めされることにより、マフラパイプ50に取り付けられている。これにより、第一カバー81及び第三カバー83を固定するためのボス部(第二ボス部62及び第三ボス部63)を、補強部材90を固定するためのボス部としても用いることができる。このため、ボス部60の設置個数が増えるのを防止してコストの削減を図ることができる。また、既存のマフラ装置20(補強部材90を具備しないマフラ装置)に補強部材90を容易に後付けすることができる。
【0081】
以上の如く、本実施形態に係るトラクタ1(作業車)のマフラ装置20は、屈曲部52を有するマフラパイプ50と、前記屈曲部52に沿うように前記マフラパイプ50に取り付けられた補強部材90と、を具備するものである。
【0082】
このように構成することにより、比較的応力が集中し易い屈曲部52を補強部材90で補強して、マフラパイプ50の強度を向上させることができる。
【0083】
また、前記補強部材90は、前記マフラパイプ50のうち、前記屈曲部52の一端側に隣接する第一直線部51(第一隣接部)と、前記屈曲部52の他端側に隣接する第二直線部53(第二隣接部)と、を接続するように取り付けられるものである。
【0084】
このように構成することにより、比較的応力が集中し易い屈曲部52を跨ぐように補強部材90を設け、屈曲部52に加わる応力を効果的に低減させることができる。このため、マフラパイプ50の強度をより効果的に向上させることができる。
【0085】
また、前記補強部材90は、前記屈曲部52に対して固定されないものである。
【0086】
このように構成することにより、補強部材90と屈曲部52との固定部分の破損を未然に防止することができるため、マフラパイプ50の強度をより効果的に向上させることができる。
【0087】
また、前記補強部材90は、前記屈曲部52を挟むように一対設けられるものである。
【0088】
このように構成することにより、一対の補強部材90によってマフラパイプ50の強度を略均一に向上させることができ、応力の集中を抑制することができる。このため、マフラパイプ50の強度をより効果的に向上させることができる。
【0089】
また、前記補強部材90は、正面視において、前記マフラパイプ50と重複する位置に設けられるものである。
【0090】
このように構成することにより、補強部材90がマフラパイプ50からはみ出して運転者の視界を遮るのを防止することができるため、トラクタ1の運転者の視認性を向上させることができる。また、補強部材90とマフラパイプ50との間に藁等が挟まるのを抑制することができる。
【0091】
また、前記補強部材90によって支持され、前記屈曲部52を外側から覆うカバー部材(第二カバー82)をさらに具備するものである。
【0092】
このように構成することにより、第二カバー82を比較的応力が集中し易い屈曲部52に対して取り付ける必要がなくなるため、当該第二カバー82と屈曲部52との固定部分の破損を未然に防止することができる。このため、マフラパイプ50の強度をより効果的に向上させることができる。
【0093】
また、前記マフラパイプ50に設けられ、前記補強部材90が取り付けられる第三ボス部63(取付部)をさらに具備し、前記第三ボス部63は、前記マフラパイプ50に対する溶接代を拡張するための第一拡張部材70を介して前記マフラパイプ50に溶接されているものである。
【0094】
このように構成することにより、第三ボス部63をマフラパイプ50に対して強固に固定することができるため、第三ボス部63の破損の発生を抑制することができる。
【0095】
また、前記マフラパイプ50を支持する支持部100をさらに具備し、前記支持部100は、前記マフラパイプ50に対する溶接代を拡張するための第二拡張部材110を介して前記マフラパイプ50に溶接されているものである。
【0096】
このように構成することにより、支持部100をマフラパイプ50に対して強固に固定することができるため、支持部100とマフラパイプ50との固定部分の破損の発生を抑制することができる。
【0097】
また、以上の如く、本実施形態に係るトラクタ1(作業車)は前記マフラ装置20を具備するものである。
【0098】
このように構成することにより、マフラパイプ50の強度を向上させることができる。
【0099】
なお、本実施形態に係るトラクタ1は、本発明に係る作業車の実施の一形態である。
また、本実施形態に係る第一直線部51は、本発明に係る第一隣接部の実施の一形態である。
また、本実施形態に係る第二直線部53は、本発明に係る第二隣接部の実施の一形態である。
また、本実施形態に係る第二カバー82は、本発明に係るカバー部材の実施の一形態である。
また、本実施形態に係る第三ボス部63は、本発明に係る取付部の実施の一形態である。
【0100】
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明は上記構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された発明の範囲内で種々の変更が可能である。
【0101】
例えば、本実施形態に係る作業車はトラクタ1であるものとしたが、本発明に係る作業車の種類はこれに限定されるものでない。本発明に係る作業車は、その他の農業車両、建設車両、産業車両等であってもよい。
【0102】
また、補強部材90は、マフラパイプ50の前側及び後側にそれぞれ設けられるものとしたが、補強部材90の配置はこれに限定されるものではない。補強部材90は、例えば、マフラパイプ50の左側や右側に設けられるものであってもよい。
【0103】
また、補強部材90は、板状に形成されるものとしたが、これに限定されるものではなく、任意の形状とすることができる。補強部材90は、例えば、棒状に形成されるものであってもよい。
【0104】
また、補強部材90は、厚み及び枚数を適宜調整してもよい。また、補強部材90は、複数枚重ねて設けられていてもよい。これにより、マフラパイプ50の強度を調整することができる。
【0105】
また、補強部材90は、全体が正面視でマフラパイプ50と重複するように配置されるものとしたが、正面視におけるマフラパイプ50との位置関係はこれに限定されるものではなく、マフラパイプ50に対して一部が重複しないものであってもよい。
【0106】
また、補強部材90の屈曲部92は、マフラパイプ50の屈曲部52と同じ曲率であるものとしたが、これに限定されるものではない。屈曲部92は、屈曲部52と概ね同じ方向に屈曲する(屈曲部52の形状に沿う)ように形成されていればよく、必ずしも屈曲部52と同じ曲率である必要はない。
【0107】
また、補強部材90は、第一直線部51及び第二直線部53に取り付けられるものとしたが、補強部材90のマフラパイプ50に対する取付位置はこれに限定されるものではなく、任意の位置に取り付けられていてもよい。補強部材90は、例えば、屈曲部52に取り付けられるものであってもよい。
【0108】
また、本実施形態においては、マフラパイプ50に補強部材90を取り付けることで屈曲部52を補強するものとしたが、これに限定されるものではない。例えば、補強部材90を別途設けるのではなく、図7に示すリブ50dを高くする(突出幅を大きくする)ことで屈曲部52を補強してもよい。図13に示すリブ150dは、図7に示すリブ50dを高くしたもの(補強部材の変形例)である。リブ150dは、第一直線部51の右端部から屈曲部52の上端部までに亘るように形成される。図13に示す変形例においては、リブ150dが本発明に係る補強部材となる。なお、図13においては、説明の便宜上、マフラカバー80の記載を省略している。変形例では屈曲部52の内側のリブ150dを補強部材として用いた例を示したが、これは一例であり、例えば屈曲部52の外側のリブ50dも同様に補強部材として用いることも可能である。
【0109】
また、マフラパイプ50の屈曲部52は、第一直線部51から上方へ曲がるように形成されるものとしたが、屈曲部52の形状はこれに限定されるものではなく、任意の方向に向けて屈曲するようなものであればよい。また、本実施形態において、屈曲部52の曲率は、一定であるものとしたが、これに限定されるものではなく、曲率が一定でなくてもよい。
【0110】
また、マフラパイプ50は、屈曲部52と隣接する部分が直線状(第一直線部51及び第二直線部53)であるものとしたが、これに限定されるものではなく、曲線状に形成されていてもよい。
【0111】
また、第二カバー82は、補強部材90に固定されるものとしたが、これに限定されるものではなく、例えば、マフラパイプ50に固定されるものであってもよい。
【0112】
また、第三ボス部63は、第一拡張部材70を介してマフラパイプ50に固定されるものとしたが、これに限定されるものではなく、例えば、マフラパイプ50に直接固定されるものであってもよい。
【0113】
また、取付部材103は、第二拡張部材110を介してマフラパイプ50に固定されるものとしたが、これに限定されるものではなく、例えば、マフラパイプ50に直接固定されるものであってもよい。
【0114】
また、支持部100は、前側支持部101及び後側支持部102を具備するものとしたが、これに限定されるものではなく、例えば、前側支持部101又は後側支持部102のいずれか一方のみを具備するものであってもよい。
【符号の説明】
【0115】
1 トラクタ(作業車)
20 マフラ装置
50 マフラパイプ
52 屈曲部
90 補強部材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13