(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-07
(45)【発行日】2023-12-15
(54)【発明の名称】制御装置、プログラムおよび通信システム
(51)【国際特許分類】
G01S 5/14 20060101AFI20231208BHJP
E05B 49/00 20060101ALI20231208BHJP
B60R 25/24 20130101ALI20231208BHJP
【FI】
G01S5/14
E05B49/00 K
B60R25/24
(21)【出願番号】P 2020096800
(22)【出願日】2020-06-03
【審査請求日】2022-11-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000003551
【氏名又は名称】株式会社東海理化電機製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100140958
【氏名又は名称】伊藤 学
(74)【代理人】
【識別番号】100137888
【氏名又は名称】大山 夏子
(72)【発明者】
【氏名】河野 裕己
(72)【発明者】
【氏名】新田 繁則
(72)【発明者】
【氏名】古田 昌輝
(72)【発明者】
【氏名】大橋 洋介
【審査官】渡辺 慶人
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-026998(JP,A)
【文献】特開2012-167480(JP,A)
【文献】特開2018-136924(JP,A)
【文献】特開2020-026996(JP,A)
【文献】特開2019-004209(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0293009(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第102157021(CN,A)
【文献】独国特許出願公開第102017121834(DE,A1)
【文献】富岡 恒憲,技術・市場レポート 日本初の遠隔による縦列・並列駐車 Daimler社がSクラスに搭載,日経Automotive,日本,日経BP社,2017年10月11日,第80号,Pages: 28-29,ISSN: 1881-9362
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S 5/00 - 5/14
H04B 7/24 - 7/26
H04W 4/00 - 99/00
E05B 1/00 - 85/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の通信機および第2の通信機と通信を行う制御装置であって、
前記第1の通信機は、電波を通しにくい素材を含んだ第1の部材によって仕切られた第1のエリアと第2のエリアとの間を跨いで電波を直接受信することが困難な第1の位置に配置されており、
前記第2の通信機は、前記第1のエリアと前記第2のエリアとの間を跨いで電波を直接受信することが可能な第2の位置に配置されており、
前記制御装置は、
前記第1の通信機と端末との間の電波による第1の測距結果
が示す測距値が第1の閾値よりも小さいという条件および前記第2の通信機と前記端末との間の電波による第2の測距結果
が示す測距値が第2の閾値よりも小さいという条件が満たされるか否かによって、前記端末が存在する位置
が第3のエリア内であるか第4のエリア内であるかを判定する判定部を備える、
制御装置。
【請求項2】
前記制御装置は、前記端末が存在する位置に基づいて、所定の機械または装置の作動を制御する作動制御部を備える、
請求項
1に記載の制御装置。
【請求項3】
前記作動制御部は、前記所定の機械または装置として移動体の作動を制御する、
請求項
2に記載の制御装置。
【請求項4】
前記作動制御部は、前記端末が存在する位置が前記第3のエリア内であると判定された場合に、前記移動体のドアの施錠または解錠を許可する、
請求項
3に記載の制御装置。
【請求項5】
前記作動制御部は、前記端末が存在する位置が前記第4のエリア内であると判定された場合に、前記移動体のエンジンの始動を許可する、
請求項
3に記載の制御装置。
【請求項6】
前記作動制御部は、前記端末が存在する位置が前記第3のエリア内であると判定された場合に、前記移動体の移動を許可する、
請求項
3に記載の制御装置。
【請求項7】
前記第1の測距結果は、前記第1の通信機と前記端末との間の電波による複数の測距結果のうち、最小の測距値を示す測距結果であり、
前記第2の測距結果は、前記第2の通信機と前記端末との間の電波による複数の測距結果のうち、最小の測距値を示す測距結果である、
請求項1~
6のいずれか一項に記載の制御装置。
【請求項8】
前記第1の位置は、前記第2のエリア内において前記第1の部材によって前記第1のエリアから遮蔽される位置である、
請求項1~
7のいずれか一項に記載の制御装置。
【請求項9】
前記電波を通しにくい素材は、金属である、
請求項1~
8のいずれか一項に記載の制御装置。
【請求項10】
前記第2の位置は、前記第2のエリア内において前記第1の部材に含まれる素材よりも電波を通しやすい素材を含んだ第2の部材によって前記第1のエリアから遮蔽される位置である、
請求項1~
9のいずれか一項に記載の制御装置。
【請求項11】
前記電波を通しやすい素材は、ガラスである、
請求項
10に記載の制御装置。
【請求項12】
コンピュータを、
第1の通信機および第2の通信機と通信を行う制御装置であって、
前記第1の通信機は、電波を通しにくい素材を含んだ第1の部材によって仕切られた第1のエリアと第2のエリアとの間を跨いで電波を直接受信することが困難な第1の位置に配置されており、
前記第2の通信機は、前記第1のエリアと前記第2のエリアとの間を跨いで電波を直接受信することが可能な第2の位置に配置されており、
前記制御装置は、
前記第1の通信機と端末との間の電波による第1の測距結果
が示す測距値が第1の閾値よりも小さいという条件および前記第2の通信機と前記端末との間の電波による第2の測距結果
が示す測距値が第2の閾値よりも小さいという条件が満たされるか否かによって、前記端末が存在する位置
が第3のエリア内であるか第4のエリア内であるかを判定する判定部を備える、
制御装置として機能させるためのプログラム。
【請求項13】
電波を通しにくい素材を含んだ第1の部材によって仕切られた第1のエリアと第2のエリアとの間を跨いで電波を直接受信することが困難な第1の位置に配置された第1の通信機と、
前記第1のエリアと前記第2のエリアとの間を跨いで電波を直接受信することが可能な第2の位置に配置された第2の通信機と、
前記第1の通信機と端末との間の電波による第1の測距結果
が示す測距値が第1の閾値よりも小さいという条件および前記第2の通信機と前記端末との間の電波による第2の測距結果
が示す測距値が第2の閾値よりも小さいという条件が満たされるか否かによって、前記端末が存在する位置
が第3のエリア内であるか第4のエリア内であるかを判定する判定部を備える、制御装置と、
を備える、通信システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、制御装置、プログラムおよび通信システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ユーザによって使用される端末の位置を検出する技術が知られている。例えば、車両に搭載された通信機とユーザによって使用される端末との間で送受信される電波の伝播時間に基づいて、端末の位置を検出する技術が知られている(例えば、特許文献1参照)。かかる技術では、検出された端末の位置が条件を満たした場合に、車両の作動が許可される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、端末の位置を検出する一般的な技術では、端末の位置の検出精度が向上しないという問題があった。
そこで、本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、本発明の目的とするところは、端末の位置の検出精度を高めることを可能にした、新規かつ改良された技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、本発明のある観点によれば、第1の通信機および第2の通信機と通信を行う制御装置であって、前記第1の通信機は、電波を通しにくい素材を含んだ第1の部材によって仕切られた第1のエリアと第2のエリアとの間を跨いで電波を直接受信することが困難な第1の位置に配置されており、前記第2の通信機は、前記第1のエリアと前記第2のエリアとの間を跨いで電波を直接受信することが可能な第2の位置に配置されており、前記制御装置は、前記第1の通信機と端末との間の電波による第1の測距結果と、前記第2の通信機と前記端末との間の電波による第2の測距結果とに基づいて、前記端末が存在する位置を判定する判定部を備える、制御装置が提供される。
【0006】
また、上記課題を解決するために、本発明の別の観点によれば、コンピュータを、第1の通信機および第2の通信機と通信を行う制御装置であって、前記第1の通信機は、電波を通しにくい素材を含んだ第1の部材によって仕切られた第1のエリアと第2のエリアとの間を跨いで電波を直接受信することが困難な第1の位置に配置されており、前記第2の通信機は、前記第1のエリアと前記第2のエリアとの間を跨いで電波を直接受信することが可能な第2の位置に配置されており、前記制御装置は、前記第1の通信機と端末との間の電波による第1の測距結果と、前記第2の通信機と前記端末との間の電波による第2の測距結果とに基づいて、前記端末が存在する位置を判定する判定部を備える、制御装置として機能させるためのプログラムが提供される。
【0007】
また、上記課題を解決するために、本発明の別の観点によれば、電波を通しにくい素材を含んだ第1の部材によって仕切られた第1のエリアと第2のエリアとの間を跨いで電波を直接受信することが困難な第1の位置に配置された第1の通信機と、前記第1のエリアと前記第2のエリアとの間を跨いで電波を直接受信することが可能な第2の位置に配置された第2の通信機と、前記第1の通信機と端末との間の電波による第1の測距結果と、前記第2の通信機と前記端末との間の電波による第2の測距結果とに基づいて、前記端末が存在する位置を判定する判定部を備える、制御装置と、を備える、通信システムが提供される。
【発明の効果】
【0008】
以上説明したように本発明によれば、端末の位置の検出精度を高めることを可能にした技術が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】2つの通信機が車室内の天井に設けられた車両を上方から見た図である。
【
図2】2つの通信機が車室内の天井に設けられた車両を後方から見た図である。
【
図3】本発明の実施形態に係る通信システムの概要について説明するための図である。
【
図4】2つの通信機の設置の具体例について説明するための図である。
【
図5】2つの通信機の設置の具体例について説明するための図である。
【
図6】2つの通信機の設置の具体例について説明するための図である。
【
図7】本発明の実施形態に係る通信システムの構成例を示す図である。
【
図8】本発明の実施形態に係る通信システムの動作例を示すフローチャートである。
【
図9】本発明の実施形態に係る通信システムの動作例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0011】
<0.背景>
まず、本発明の実施形態の背景を説明する。近年、ユーザによって使用される端末の位置を検出する技術が知られている。例えば、車両に搭載された通信機とユーザによって使用される端末との間で送受信される電波の伝播時間に基づいて、端末の位置を検出する技術が知られている。さらに、車両に搭載された2つの通信機それぞれと端末との間で送受信される電波の伝播時間に基づいて、端末の位置を検出する技術が知られている。
【0012】
車両に2つの通信機が搭載される場合には、車両の内部に2つの通信機が搭載され得る。かかる一般的な技術について、
図1および
図2を参照しながら説明する。具体的に、
図1および
図2では、端末の位置が、車両の内部(車室内)および車両の外部(車室外)のいずれであるのかが判定される例について説明する。
【0013】
図1は、2つの通信機が車室内の天井に設けられた車両を上方から見た図である。また、
図2は、2つの通信機が車室内の天井に設けられた車両を後方から見た図である。
図1および
図2を参照すると、1つ目の通信機として通信機91が示されている。また、
図1を参照すると、2つ目の通信機として通信機92が示されている。通信機91および通信機92は、車両の天井に設けられている。また、
図1および
図2を参照すると、車両の外部は、車室外R1として示され、車両の内部は、車室内R2として示されている。
【0014】
ここで、
図2から把握されるように、通信機91および通信機92それぞれが設けられる車室内の天井は、車室外R1から車両の窓ガラス部分によって遮蔽される位置に該当し得る。このとき、車両の窓ガラス部分は、電波を通しやすい素材である。したがって、車室内の天井に設けられた通信機91および通信機92それぞれは、車両の窓ガラス部分を介して、車室外R1と車室内R2との間を跨いで電波を直接受信することが可能である。
【0015】
かかる事情があるために、通信機91と端末との間で送受信される電波の伝播時間に基づいて測定される距離が、車室外R1に端末が存在する場合と、車室内R2に端末が存在する場合とにおいて、同じになってしまうことがあり得る。通信機92と端末との間で送受信される電波の伝播時間に基づいて測定される距離も同様である。すなわち、通信機91および通信機92が車室内R2の天井に設けられる場合には、端末の位置が車室外R1および車室内R2のいずれであるのかを高精度に判定するのが困難である。
【0016】
そこで、車室内R2に3つ目の通信機を設け、3つの通信機それぞれと端末との間で送受信される電波の伝播時間に基づいて、端末の位置が車室外R1および車室内R2のいずれであるのかを判定することも想定される。これによって、車室内R2に2つの通信機が設けられる場合と比較して、端末の位置が車室外R1および車室内R2であるのかをより高精度に判定することが可能であると考えられる。しかし、3つ目の通信機を設けるためのコストが余計に掛かってしまう。
【0017】
そこで、本発明の実施形態では、コストを低減しつつ、端末の位置の検出精度を高めることを可能にする技術について主に提案する。
【0018】
<1.一実施形態>
以下、本発明の実施形態に係る通信システムについて説明する。まず、
図3を参照しながら、本発明の実施形態に係る通信システムの概要について説明する。
【0019】
<<1.1.概要>>
図3は、本発明の実施形態に係る通信システムの概要について説明するための図である。
図3を参照すると、ユーザによって使用される端末2が示されている。端末2は、ユーザによって保持されている。ユーザ(および端末2)は、車室外R1に存在している。また、
図3を参照すると、車両1が示されており、車室内R2も示されている。車室外R1と車室内R2とは、窓ガラス部分162によって仕切られている。また、車室外R1と車室内R2とは、車両1の側面のうち窓ガラス部分162よりも下に位置する部分(以下、「フレーム部分161」とも言う。)によって仕切られている。
【0020】
フレーム部分161は、電波を通しにくい素材を含んだ部材(第1の部材)の例に該当する。したがって、フレーム部分161は、電波を通しにくい素材を含んだ他の部材に置き換えられてもよい。また、電波を通しにくい素材の例として、典型的には金属が挙げられる。しかし、電波を通しにくい素材は、金属以外の素材に置き換えられてもよい。フレーム部分161に含まれる素材は、相対的には窓ガラス部分162に含まれる素材よりも電波を通しにくい素材である。
【0021】
窓ガラス部分162は、電波を通しやすい素材を含んだ部材(第2の部材)の例に該当する。したがって、窓ガラス部分162は、電波を通しやすい素材を含んだ他の部材に置き換えられてもよい。例えば、窓ガラス部分162は、開放されていてもよいし、車両1に元々設けられていなくてもよい(すなわち、空気に置き換えられてもよい)。また、電波を通しやすい素材の例として、典型的にはガラスが挙げられる。しかし、電波を通しやすい素材は、ガラス以外の素材に置き換えられてもよい。窓ガラス部分162に含まれる素材は、相対的にはフレーム部分161に含まれる素材よりも電波を通しやすい素材である。
【0022】
なお、車室外R1は、第1のエリアの例に該当し、車室内R2は、第2のエリアの例に該当する。すなわち、車室外R1および車室内R2は、電波を通しにくい素材を含んだ部材および電波を通しやすい素材によって仕切られる第1のエリアおよび第2のエリアの例に該当する。したがって、車室外R1および車室内R2は、電波を通しにくい素材を含んだ部材および電波を通しやすい素材を含んだ部材によって仕切られる他のエリアに置き換えられてもよい。
【0023】
本発明の実施形態においては、
図3に示されるように、少なくとも一つの通信機31が、車室外R1および車室内R2との間を跨いで電波を直接受信することが困難な位置(第1の位置)に配置される。より詳細に、車室外R1および車室内R2との間を跨いで電波を直接受信することが困難な位置は、車室内R2においてフレーム部分161によって車室外R1(特に、車室外R1のうち端末2が存在し得る程度に低い位置のエリア)から遮蔽される位置である。ここで、車室内R2においてフレーム部分161によって車室外R1から遮蔽される位置は、典型的には、
図3に示されるように、車室内R2の底面であってよいが、車室内R2の底面に限定されない。
【0024】
本発明の実施形態においては、このように少なくとも一つの通信機31が、車室外R1および車室内R2との間を跨いで電波を直接受信することが困難な位置に配置されるため、車室外R1に存在する端末2と通信機31との間の電波の伝播時間に基づく測距値が大きくなる。そのため、通信機31と端末2との間で送受信される電波の伝播時間に基づく測距値が、車室外R1に端末2が存在する場合と、車室内R2に端末2が存在する場合とにおいて、同じになってしまう可能性が低減され得る。すなわち、本発明の実施形態によれば、端末2の位置が高精度に判定され得る。
【0025】
なお、以下の説明では、端末2が存在する位置が、車室外R1および車室内R2のいずれであるのかを判定する場合を主に想定する。しかし、後にも説明するように、本発明の実施形態は、端末2が存在する位置が、車室外R1および車室内R2のいずれであるのかを判定する場合に限定されず、第3のエリア内および第4のエリア内のいずれであるかを判定する場合に広く適用され得る。
【0026】
また、以下の説明では、端末と通信機との間の測距値がより高精度に算出されることを考慮し、端末と通信機との間の電波の伝播時間に基づいて測距値が算出される場合を主に想定する。しかし、電波の伝播時間以外の値に基づいて測距値が算出されてもよい。例えば、端末と通信機とのうち一方から送信されて他方において受信された電波の強度(RSSI:Received Signal Strength Indicator)に基づいて測距値が算出されてもよい。すなわち、以下の説明において、電波の伝播時間に基づく測距値は、電波による測距値に置き換えられてもよい。
【0027】
<<1.2.通信機の設置の具体例>>
続いて、通信機の設置の具体例についてさらに詳細に説明する。
【0028】
図4~
図6は、2つの通信機の設置の具体例について説明するための図である。
図4~
図6に示されるように、本発明の実施形態では、(通信機31の例としての)第1の通信機34が、(フレーム部分161を介して)車室外R1および車室内R2との間を跨いで電波を直接受信することが困難な位置(
図4~
図6に示された例では、車室内R2の底面)に配置される。さらに、本発明の実施形態では、第2の通信機35が、(窓ガラス部分162を介して)車室外R1と車室内R2との間を跨いで電波を直接受信することが可能な位置(第2の位置)に配置される。
【0029】
より詳細に、車室外R1および車室内R2との間を跨いで電波を直接受信することが可能な位置は、車室内R2においてフレーム部分161によって車室外R1(特に、車室外R1のうち端末2が存在し得る程度に低い位置のエリア)から遮蔽されない位置であってよい。
【0030】
一例として、車室外R1および車室内R2との間を跨いで電波を直接受信することが可能な位置は、
図4~
図6に示されるように、車室内R2において窓ガラス部分162によって車室外R1(特に、車室外R1のうち端末2が存在し得る程度に低い位置のエリア)から遮蔽される位置である。ここで、車室内R2において窓ガラス部分162によって車室外R1から遮蔽される位置は、典型的には、
図4~
図6に示されるように、車室内R2の天井であってよいが、車室内R2の天井に限定されない。
【0031】
特に、
図4に示された例では、端末2が、車室内R2に存在している。このとき、第1の通信機34と端末2との間の電波の伝播時間に基づく測距値、および、第2の通信機35と端末2との間の電波の伝播時間に基づく測距値は、共に小さくなる。したがって、第1の通信機34と端末2との間の電波の伝播時間に基づく測距値が第1の閾値よりも小さいという条件、および、第2の通信機35と端末2との間の電波の伝播時間に基づく測距値が第2の閾値よりも小さいという条件が満たされれば、端末2が存在する位置が車室内R2であると判定することが可能である。なお、第1の閾値と第2の閾値とは、典型的には同じ値であることが想定されるが、同じ値でなくてもよい。
【0032】
一方、
図5に示された例では、端末2が、車室外R1のうち車両1に比較的近い位置に存在している。このとき、第2の通信機35と端末2との間の電波の伝播時間に基づく測距値は、小さくなるが、第1の通信機34と端末2との間の電波の伝播時間に基づく測距値は、大きくなってしまう(あるいは、測距結果が、通信不可を示してしまう)。したがって、第1の通信機34と端末2との間の電波の伝播時間に基づく測距値が第1の閾値よりも小さいという条件(または、第2の通信機35と端末2との間の電波の伝播時間に基づく測距値が第2の閾値よりも小さいという条件)が満たされない場合、端末2が存在する位置が車室外R1であると判定することが可能である。
【0033】
さらに、
図6に示された例では、端末2が、車室外R1のうち車両1から比較的遠い位置に存在している。このとき、第1の通信機34と端末2との間の電波による測距値、および、第2の通信機35と端末2との間の電波による測距値は、共に大きくなってしまう(あるいは、測距結果が、通信不可を示してしまう)。したがって、第1の通信機34と端末2との間の電波による測距値が第1の閾値以上であるという条件、および、第2の通信機35と端末2との間の電波による測距値が第2の閾値以上であるという条件の双方が満たされる場合、端末2が存在する位置が車室外R1であると判定することが可能である。
【0034】
<<1.3.構成例>>
続いて、
図7を用いて、本発明の実施形態に係る通信システムの構成例について説明する。
【0035】
図7は、本発明の実施形態に係る通信システムの構成例を示す図である。
図7に示されるように、本発明の実施形態に係る通信システムは、車両1および端末2を備える。なお、本発明の実施形態においては、端末2が電子キーである場合を主に想定する。しかし、端末2は、電子キーに限定されない。例えば、端末2は、電子キー以外の端末であってよく、スマートフォンであってもよいし、タブレット端末であってもよいし、携帯電話であってもよいし、他の電子機器であってもよい。
【0036】
(車両の構成)
続いて、車両1の構成について説明する。
図7に示されるように、車両1は、車載装置の例としてのドアロック装置6と、車載装置の例としてのエンジン7と、照合ECU(Electronic Control Unit)8と、ボディECU9と、エンジンECU10と、LF(Low Frequency)送信機13と、UHF(Ultra High
Frequency)受信機14と、第1の通信機34と、第2の通信機35とを備える。
【0037】
ドアロック装置6は、車両ドアの施解錠を制御する。エンジン7は、車両1のエンジンである。第1の通信機34および第2の通信機35については、後に詳細に説明する。照合ECU8は、エリア判定部42と、作動制御部43とを有する。エリア判定部42および作動制御部43については、後に詳細に説明する。ボディECU9は、車載電装品の電源を管理する。例えば、ボディECU9は、車両ドアの施解錠を切り替えるドアロック装置6を制御する。エンジンECU10は、エンジン7を制御する。
【0038】
照合ECU8、ボディECU9、および、エンジンECU10は、車両1の内部の通信線11を介して互いに接続されている。これらのECUは、それぞれ対応するプログラムを実行することにより各機能を発揮し得る。特に、照合ECU8は、プログラムの実行により、コンピュータを、エリア判定部42および作動制御部43を備える制御装置として機能させ得る。通信線11を介した通信に用いられるプロトコルは、例えばCAN(Controller Area Network)であってもよいし、LIN(Local
Interconnect Network)であってもよい。
【0039】
LF送信機13は、端末2へLF帯の電波を送信する。また、端末2によってLF帯の電波が受信され、端末2によってUHF帯の電波が送信されると、UHF受信機14は、端末2から送信されたUHF帯の電波を受信する。
【0040】
(端末の構成)
続いて、端末2の構成について説明する。端末2は、端末制御部20と、LF受信部21と、UHF送信部22と、UWB(Ultra Wide Band)送受信部33とを備える。端末制御部20は、端末2を制御する。端末制御部20は、応答処理部32を備える。応答処理部32については、後に詳細に説明する。
【0041】
LF受信部21は、車両1から送信されたLF電波を受信する。LF受信部21によって車両1から送信されたLF電波が受信されると、UHF送信部22は、車両1へUHF電波を送信する。UWB送受信部33については、後に詳細に説明する。
【0042】
(距離測定システム)
図7に示すように、本発明の実施形態に係る通信システムは、距離測定システム30を備える。以下、距離測定システム30について説明する。距離測定システム30は、端末2が備える、UWB送受信部33および応答処理部32と、車両1が備える、第1の通信機34、第2の通信機35、エリア判定部42および作動制御部43とによって主に実現される。
【0043】
UWB送受信部33は、第1の通信機34および第2の通信機35それぞれとの間で測距値を得るための通信(以下「測距通信」とも言う。)を実行する。また、第1の通信機34は、端末2との間で測距通信を実行する。同様に、第2の通信機35は、端末2との間で測距通信を実行する。
【0044】
第1の通信機34は、通信線36を介して照合ECU8に接続されている。第1の通信機34は、測距部38を備える。測距部38については、後に詳細に説明する。また、第2の通信機35は、通信線37を介して第1の通信機34と接続されている。第2の通信機35は、測距部39を備える。測距部39については、後に詳細に説明する。
【0045】
通信線36および通信線37を介した通信における通信プロトコルは、例えばLINであってもよいし、CANであってもよい。なお、通信線36には、UART(Universal Asynchronous
Receiver Transmitter)などの通信インターフェースが用いられていてもよい。また、第2の通信機35は、通信線を介して(第1の通信機34を介さずに直接的に)照合ECU8に接続されていてもよい。すなわち、第2の通信機35と照合ECU8とは、(第1の通信機34を介さずに直接的に)通信可能であってもよい。
【0046】
まず、車両1において、LF送信機13は、定期または不定期にウェイク信号をLF送信する。端末2において、LF受信部21によってウェイク信号が受信されると、端末制御部20は、待機状態から起動し、UHF送信部22によってアック信号がUHF送信される。車両1において、UHF受信機14によってウェイク信号に対するアック信号を端末2から受信すると、エリア判定部42によって測距通信の開始を求める要求(以下、「測距要求」とも言う。)が第1の通信機34および第2の通信機35それぞれに出力される。
【0047】
(測距通信)
続いて、測距通信について説明する。例えば、照合ECU8から測距要求が出力されると、第1の通信機34は、照合ECU8から測距要求の入力を受け付ける。第1の通信機34によって測距要求の入力を受け付けられると、第1の通信機34は、測距要求を第2の通信機35に出力する。第1の通信機34から測距要求が出力されると、第2の通信機35は、第1の通信機34から測距要求の入力を受け付ける。
【0048】
第1の通信機34は、測距要求の入力を受け付けると、端末2との間で測距通信を開始する。なお、本発明の実施形態においては、測距通信に使用される電波(測距用電波およびその応答電波)がUWB帯の電波である場合を主に想定する。そこで、以下では、測距通信に使用される電波を「UWB電波」と記載する場合がある。しかし、測距通信に使用される電波は、UWB帯の電波に限定されない。
【0049】
まず、測距通信においては、第1の通信機34は、UWB電波を送信する。端末2の応答処理部32は、第1の通信機34の測距部38からUWB送受信部33を介してUWB電波が受信されると、その応答としてUWB電波を、UWB送受信部33を介して返信する。そして、第1の通信機34は、端末2から送信されたUWB電波を受信する。このとき、第1の通信機34の測距部38は、第1の通信機34および端末2の間のUWB電波の伝播時間に基づいて測距値を算出する。
【0050】
より具体的には、第1の通信機34の測距部38は、TOF(Time Of Flight)方式を利用して、UWB電波の送信からその応答であるUWB電波の受信までの伝播時間を計算し、この伝播時間に基づいて第1の通信機34および端末2の間の測距結果(第1の測距結果)を得る。同様な方式により、第2の通信機35の測距部39は、測距要求の入力を受け付けると、第2の通信機35および端末2の間の測距結果(第2の測距結果)を得る。
【0051】
なお、本発明の実施形態では、第1の通信機34および第2の通信機35において伝播時間および測距値が計算される場合を主に想定する。しかし、端末2において伝播時間および測距値が計算されてもよい。このとき、端末2によってUWB電波が第1の通信機34および第2の通信機35それぞれに送信され、第1の通信機34および第2の通信機35それぞれがその応答であるUWB電波を端末2に返信してもよい。
【0052】
また、第1の通信機34および第2の通信機35それぞれは、1回ずつ測距を行ってもよい。かかる場合には、第1の通信機34および第2の通信機35それぞれによって得られた測距結果がそのまま照合ECU8に出力されてもよい。しかし、第1の通信機34および第2の通信機35それぞれによって得られる測距結果には、あまり精度の高くない測距結果も混ざっていることが想定される。
【0053】
そこで、第1の通信機34は、測距を複数回行い、複数の測距結果のうち最小の測距値を示す測距結果(以下、「Amin」とも表す。)を照合ECU8に出力してもよい。同様に、第2の通信機35は、測距を複数回行い、複数の測距結果のうち最小の測距値を示す測距結果(以下、「Bmin」とも表す。)を照合ECU8に出力してもよい。これによって、より高精度な測距結果が用いられるようになる。
【0054】
以下の説明では、第1の通信機34および第2の通信機35それぞれによって行われる測距の回数を、n(nは1以上の整数)回と表すことにする。
【0055】
なお、第1の通信機34において、複数の測距結果A1~Anの中から最小の測距値を示す測距結果Aminが検出され、測距結果Aminだけが第1の通信機34から照合ECU8に出力されてもよい。あるいは、複数の測距結果A1~Anが第1の通信機34から照合ECU8に出力され、照合ECU8が、複数の測距結果A1~Anの中から最小の測距値を示す測距結果Aminを検出してもよい。
【0056】
同様に、第2の通信機35において、複数の測距結果B1~Bnの中から最小の測距値を示す測距結果Bminが検出され、測距結果Bminだけが第2の通信機35から照合ECU8に出力されてもよい。あるいは、複数の測距結果B1~Bnが第2の通信機35から照合ECU8に出力され、照合ECU8が、複数の測距結果B1~Bnの中から最小の測距値を示す測距結果Bminを検出してもよい。
【0057】
(測距結果の判定)
照合ECU8は、第1の通信機34および端末2の間の測距結果の入力を受け付けるとともに、第2の通信機35および端末2の間の測距結果の入力を受け付ける。照合ECU8のエリア判定部42は、第1の通信機34と端末2との間の測距結果と、第2の通信機35と端末2との間の測距結果とに基づいて、端末2が存在する位置を判定する。これによって、端末2の位置の検出精度を向上させることが可能となる。
【0058】
より詳細に、エリア判定部42は、第1の通信機34および端末2の間の測距結果と、第2の通信機35および端末2の間の測距結果とに基づいて、端末2が存在する位置が(第3のエリア内の一例としての)車室外R1であるか(第4のエリア内の一例としての)車室内R2であるかを判定する。これによって、端末2が、車室外R1に存在するのか車室内R2に存在するのかが、高精度に検出され得る。
【0059】
例えば、エリア判定部42は、第1の通信機34および端末2の間の測距結果Aminが示す測距値が第1の閾値よりも小さいという条件、および、第2の通信機35および端末2の間の測距結果Bminが示す測距値が第2の閾値よりも小さいという条件が満たされるか否かによって、端末2が存在する位置が車室内R2であるか車室外R1であるかを判定する。
【0060】
これによって、第1の閾値および第2の閾値が適切に設定されていれば、端末2が、車室外R1に存在するのか車室内R2に存在するのかが、高精度に検出され得る。なお、上記したように、第1の閾値と第2の閾値とは、典型的には同じ値であることが想定されるが、同じ値でなくてもよい。
【0061】
例えば、エリア判定部42は、第1の通信機34および端末2の間の測距結果Aminが示す測距値が第1の閾値よりも小さいという条件、および、第2の通信機35および端末2の間の測距結果Bminが示す測距値が第2の閾値よりも小さいという条件が満たされる場合(
図4)、端末2が存在する位置が車室内R2であると判定する。
【0062】
あるいは、エリア判定部42は、第1の通信機34および端末2の間の測距結果Aminが示す測距値が第1の閾値よりも小さいという条件、および、第2の通信機35および端末2の間の測距結果Bminが示す測距値が第2の閾値よりも小さいという条件の少なくともいずれか一方が満たされない場合(
図5および
図6)、端末2が存在する位置が車室外R1であると判定する。
【0063】
(測距結果に基づく作動)
照合ECU8の作動制御部43は、エリア判定部42によって判定された端末2が存在する位置に基づいて、(移動体の例としての)車両1の作動を制御する。これによって、端末2に応じて車両1の作動が制御されるため、ユーザの利便性が向上する。なお、作動制御部43による作動制御の対象は、車両1に限定されない。作動制御部43は、エリア判定部42によって判定された端末2が存在する位置に基づいて、車両1以外の機械または装置の作動を制御してもよい。
【0064】
一例として、作動制御部43は、エリア判定部42によって、端末2が存在する位置が(第3のエリア内の例としての)車室外R1であると判定された場合に、車両1のドアの施錠または解錠を許可してもよい。より詳細に、作動制御部43は、エリア判定部42によって、端末2が存在する位置が車室外R1であると判定された場合に、ボディECU9によるドアロック装置6の施錠または解錠の作動を許可してもよい。これよって、例えば、ドア施錠時に車外ドアハンドルがタッチ操作されると、車両ドアが解錠され、ドア解錠時に車外ドアハンドルのロックボタンが押し操作されると、車両ドアが施錠される。
【0065】
他の一例として、作動制御部43は、エリア判定部42によって、端末2が存在する位置が(第4のエリア内の例としての)車室内R2であると判定された場合に、車両1のエンジンの始動を許可してもよい。より詳細に、作動制御部43は、エリア判定部42によって、端末2が存在する位置が車室内R2であると判定された場合に、車室内のエンジンスイッチ50による車両電源の遷移操作を許可してもよい。これによって、例えば、ブレーキペダルが踏み込まれながらエンジンスイッチ50が操作されると、エンジン7が始動する。
【0066】
<<1.4.動作例>>
続いて、
図8および
図9を用いて、本発明の実施形態に係る通信システムの動作例について説明する。
【0067】
図8および
図9は、本発明の実施形態に係る通信システムの動作例を示すフローチャートである。まず、車両1において、LF送信機13は、ウェイク信号をLF送信する。端末2において、LF受信部21によってウェイク信号が受信されると、端末制御部20は、待機状態から起動し、UHF送信部22によってアック信号がUHF送信される。車両1において、UHF受信機14によってウェイク信号に対するアック信号を端末2から受信すると、測距要求が第1の通信機34および第2の通信機35それぞれに出力される。
【0068】
照合ECU8から測距要求が出力されると、第1の通信機34は、照合ECU8から測距要求の入力を受け付ける。第1の通信機34によって測距要求の入力を受け付けられると、第1の通信機34は、測距要求を第2の通信機35に出力する。第1の通信機34から測距要求が出力されると、第2の通信機35は、第1の通信機34から測距要求の入力を受け付ける。
【0069】
図8に示されるように、第1の通信機34は、測距要求の入力を受け付けると、第1の通信機34の測距部38は、UWB電波の送信からその応答であるUWB電波の受信までの伝播時間を計算し、この伝播時間に基づいて第1の通信機34および端末2の間の測距結果(n回の実行によって測距結果A1~An)を得る(ステップS10)。同様に、第2の通信機35の測距部39は、測距要求の入力を受け付けると、第2の通信機35および端末2の間の測距結果(n回の実行によって測距結果B1~Bn)を得る(ステップS20)。
【0070】
第1の通信機34は、複数の測距結果A1~Anのうち最小の測距値を示す測距結果Aminを照合ECU8に出力する。同様に、第2の通信機35は、複数の測距結果B1~Bnのうち最小の測距値を示す測距結果Bminを照合ECU8に出力する。照合ECU8は、第1の通信機34および端末2の間の測距結果Aminの入力を受け付けるとともに、第2の通信機35および端末2の間の測距結果Bminの入力を受け付ける。
【0071】
続いて、エリア判定部42は、第1の通信機34および端末2の間の測距結果Aminと、第2の通信機35および端末2の間の測距結果Bminとに基づいて、端末2が存在する位置を判定する(ステップS30)。以下、ステップS30について、
図9を参照しながら詳細に説明する。
【0072】
図9に示されるように、エリア判定部42は、第1の通信機34および端末2の間の測距結果Aminが示す測距値が第1の閾値Th1よりも小さいという条件が満たされる場合には(ステップS31において「YES」)、ステップS32に動作を移行させる。一方、エリア判定部42は、第1の通信機34および端末2の間の測距結果Aminが示す測距値が第1の閾値Th1よりも小さいという条件が満たされない場合には(ステップS31において「NO」)、ステップS34に動作を移行させる。
【0073】
続いて、エリア判定部42は、第2の通信機35および端末2の間の測距結果Bminが示す測距値が第2の閾値Th2よりも小さいという条件が満たされる場合には(ステップS32において「YES」)、ステップS35に動作を移行させる。一方、エリア判定部42は、第2の通信機35および端末2の間の測距結果Bminが示す測距値が第2の閾値Th2よりも小さいという条件が満たされない場合には(ステップS32において「NO」)、ステップS34に動作を移行させる。
【0074】
エリア判定部42は、ステップS34に動作が移行された場合には、端末2が存在する位置が(第3のエリア内の例としての)車室外R1であると判定する(ステップS34)。一方、エリア判定部42は、ステップS35に動作が移行された場合には、端末2が存在する位置が(第4のエリア内の例としての)車室内R2であると判定する(ステップS35)。
【0075】
図8に戻って説明を続ける。作動制御部43は、エリア判定部42による判定結果に基づいて、車両1の作動を制御する(ステップS40)。より詳細に、作動制御部43は、エリア判定部42によって、端末2が存在する位置が車室外R1であると判定された場合に、ボディECU9によるドアロック装置6の施錠または解錠の作動を許可してもよい。他の一例として、作動制御部43は、エリア判定部42によって、端末2が存在する位置が車室内R2であると判定された場合に、車室内のエンジンスイッチ50による車両電源の遷移操作を許可してもよい。
【0076】
<<1.5.効果>>
上記の実施形態によれば、一つの通信機31が、車室外R1および車室内R2との間を跨いで電波を直接受信することが困難な位置に配置されるため、車室外R1に存在する端末2と通信機31との間の電波の伝播時間に基づく測距値が大きくなる。そのため、通信機31と端末2との間で送受信される電波の伝播時間に基づく測距値が、車室外R1に端末2が存在する場合と、車室内R2に端末2が存在する場合とにおいて、同じになってしまう可能性が低減され得る。すなわち、本発明の実施形態によれば、(必要な通信機の数が2つに抑えられるために)コストを低減しつつ、端末2の位置が高精度に判定され得る。
【0077】
より詳細に、(通信機31の例としての)第1の通信機34は、電波を通しにくい素材を含んだ第1の部材によって仕切られた(第1のエリアの例としての)車室内と(第2のエリアの例としての)車室外との間を跨いで電波を直接受信することが困難な第1の位置に配置されている。また、第2の通信機35は、車室内と車室外との間を跨いで電波を直接受信することが可能な第2の位置に配置されている。
【0078】
そして、(制御装置の例としての)照合ECU8は、第1の通信機34と端末2との間の電波による第1の測距結果と、第2の通信機35と端末2との間の電波による第2の測距結果とに基づいて、端末2が存在する位置を判定するエリア判定部42を備える。かかる構成によれば、端末2の位置が高精度に判定され得る。
【0079】
<<1.6.変形例>>
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明はかかる例に限定されない。本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0080】
例えば、本発明の実施形態は、以下のように変更して実施することができる。本発明の実施形態および以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
【0081】
(エリアに関する変形例)
上記例では、エリア判定部42が、第1の通信機34および端末2の間の測距結果と、第2の通信機35および端末2の間の測距結果とに基づいて、端末2が存在する位置が車室外R1であるか車室内R2であるかを判定する場合を主に説明した。しかし、端末2が存在すると判定されるエリアは、車室外R1および車室内R2に限定されない。すなわち、エリア判定部42は、第1の通信機34および端末2の間の測距結果と、第2の通信機35および端末2の間の測距結果とに基づいて、端末2が存在する位置が第3のエリア内であるか第4のエリア内であるかを判定してもよい。
【0082】
一例として、エリア判定部42は、第1の通信機34および端末2の間の測距結果と、第2の通信機35および端末2の間の測距結果とに基づいて、端末2が存在する位置が、車両1から所定の距離以内のエリア(第4のエリア)であるか、車両1から所定の距離よりも遠いエリア(第3のエリア)であるかを判定してもよい。かかる判定は、第1の通信機34と端末2との間の測距結果が示す測距値と比較される第1の閾値、および、第2の通信機35と端末2との間の測距結果が示す測距値と比較される第2の閾値それぞれを、(端末2の位置が車室外R1であるか車室内R2であるかを判定する場合よりも)大きくすることによって実現され得ると考えられる。
【0083】
(作動許可に関する変形例)
上記例では、作動制御部43が、エリア判定部42によって判定された端末2が存在する位置に基づいて、車両1の作動を制御する場合を主に説明した。特に、上記例では、端末2が存在する位置が車室外R1であると判定された場合に、車両1のドアの施錠または解錠を許可する場合を説明し、端末2が存在する位置が車室内R2であると判定された場合に、車両1のエンジンの始動を許可する場合を説明した。しかし、作動が許可される対象は、これらに限定されない。
【0084】
一例として、ユーザが車両1から離れた場所において端末2を操作することによって、車両1を移動させたり停止させたりすることが可能な技術(リモートパーキング)が知られている。リモートパーキングが利用される場合には、ユーザが車両1からある程度離れてから車両1の移動が許可されないと、ユーザと車両1とが意図せず衝突してしまうといった事態が生じ得る。したがって、作動制御部43は、エリア判定部42によって端末2が存在する位置が、(第3のエリアの例としての)車両1から所定の距離よりも遠いエリア内であると判定された場合に、車両1の移動を許可してもよい。
【0085】
より詳細に、端末2から送信されるリモート操作信号に基づいて、エンジン始動から停止までの駐車に関する動作を制御する各種のアクチュエータ(パーキングアクチュエータ)が車両1に設けられている。このとき、作動制御部43は、端末2が存在する位置が、車両1から所定の距離よりも遠いエリア内であると判定された場合に、端末2から送信されるリモート操作信号に基づくパーキングアクチュエータによる、ステアリングの自動操舵、自動走行または駐停車の制御を許可してもよい。
【0086】
(測距通信に関する変形例)
上記例では、測距通信の開始トリガが、第1の通信機34および第2の通信機35それぞれと端末2との間における、LF電波およびUHF電波の送受信である場合を主に説明した。しかし、測距通信の開始トリガは、かかる例に限定されない。例えば、測距通信の開始トリガは、車両ドアのドアノブへの操作が行われたことであってもよいし、エンジンスイッチ50の操作が行われたことであってもよい。
【0087】
上記例では、第1の通信機34の測距部38および第2の通信機35の測距部39それぞれによって、測距値が算出される場合を主に説明した。このとき、測距用電波は、第1の通信機34および第2の通信機35それぞれから端末2に送信される。しかし、測距値は、第1の通信機34および第2の通信機35以外によって算出されてもよい。例えば、測距値は、端末2によって算出されてもよい。このとき、測距用電波は、端末2から第1の通信機34および第2の通信機35それぞれに送信されればよい。
【0088】
上記例では、測距値が、第1の通信機34および第2の通信機35それぞれと端末2との間の電波の伝播時間から算出される場合を主に説明した。しかし、測距値を算出する手法は、かかる例に限定されない。例えば、第1の通信機34および第2の通信機35それぞれと端末2とのうち、一方から送信された電波を他方が受信した場合、当該他方が電波の受信強度(RSSI:Received Signal Strength Indicator)を測定し、この受信強度に基づいて測距値を算出してもよい。
【0089】
また、複数のチャネルそれぞれを使用して電波送信が行われてもよい。このとき、測距部38および測距部39それぞれは、複数のチャネルそれぞれを使用して行われた電波送信の結果(伝播時間または受信強度)に基づいて、測距値を算出してもよい。
【0090】
測距通信(測距用電波及びその応答電波)の方式は、UWB電波を使用した方式に限定されない。例えば、測距通信として、他の周波数の電波が使用されてもよい。一例として、測距通信として、ブルートゥース(登録商標)通信が使用されてもよい。
【0091】
(システムの各種変形例)
上記例では、ウェイク信号が車両1から端末2に送信される場合を主に説明した。しかし、ウェイク信号は、端末2から車両1に送信されてもよい。
【0092】
上記例では、端末2が電子キーである場合を主に説明した。しかし、端末2は電子キーである場合に限定されない。例えば、端末2は、車両1との無線通信が実行可能な高機能携帯電話であってもよい。
【0093】
車両1および端末2の間の各種通信に使用される電波の周波数および通信方式は、種々の態様に変更され得る。また、上記例では、端末2の通信相手が車両1である場合を主に説明した。しかし、端末2の通信相手は、車両1に限定されず、種々の機械または装置に変更可能である。
【符号の説明】
【0094】
1…車両、2…端末、6…ドアロック装置、7…エンジン、8…照合ECU、20…端末制御部、30…距離測定システム、32…応答処理部、34…第1の通信機、35…第2の通信機、38…測距部、39…測距部、42…エリア判定部、43…作動制御部、50…エンジンスイッチ、161…フレーム部分、162…窓ガラス部分。