(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-07
(45)【発行日】2023-12-15
(54)【発明の名称】コンバイン
(51)【国際特許分類】
A01D 41/127 20060101AFI20231208BHJP
A01F 12/32 20060101ALI20231208BHJP
A01F 12/52 20060101ALI20231208BHJP
A01D 41/12 20060101ALI20231208BHJP
A01D 69/00 20060101ALI20231208BHJP
【FI】
A01D41/127
A01F12/32 C
A01F12/52 A
A01D41/127 110
A01D41/12 B
A01D69/00 302G
A01D69/00 302L
A01D69/00 302H
(21)【出願番号】P 2020109764
(22)【出願日】2020-06-25
【審査請求日】2022-06-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000001052
【氏名又は名称】株式会社クボタ
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】林 壮太郎
(72)【発明者】
【氏名】堀 高範
(72)【発明者】
【氏名】堀内 真幸
(72)【発明者】
【氏名】山岡 京介
(72)【発明者】
【氏名】奥平 淳人
【審査官】竹中 靖典
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-028017(JP,A)
【文献】特開2020-031607(JP,A)
【文献】特開2019-170280(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01F 12/18 - 12/28
12/52
A01D 41/00 -41/127
41/133-41/16
47/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
作物を脱穀する
1つの脱穀部と、前記脱穀部の下方に
おいて前後範囲に亘って設けられ、前記脱穀部から漏下してきた脱穀処理物を選別処理する
1つの選別部と、
前記選別部の下方において設けられ、前記選別部によって選別された選別処理物のうちの一番物を回収する一番物回収部と、
前記選別部の下方において設けられ、前記脱穀処理物の搬送方向における下流側において、前記選別処理物のうちの二番物を回収する二番物回収部と、前記二番物回収部により回収された前記二番物を前記選別部に還元する二番物還元装置と、を有する脱穀装置を備え、
前記一番物の回収量を一番物回収量として測定する一番物センサと、
前記二番物の還元量を二番物還元量として測定する二番物センサと、
前記一番物回収量に対する前記二番物還元量の比率に応じて、前記選別部において前記脱穀処理物が詰まっているか否かを判定する判定部と、
を備えるコンバイン。
【請求項2】
前記選別部は、揺動選別装置を備え、
前記揺動選別装置は、脱穀処理物の搬送方向に沿って並べられた複数のチャフリップを有するとともに前記複数のチャフリップの姿勢を変更することで漏下開度を変更可能なチャフシーブを備え、
前記チャフシーブは、前記比率が大きい程、前記漏下開度が大きくされる請求項1に記載のコンバイン。
【請求項3】
前記揺動選別装置は、前記チャフシーブの下方に設けられたグレンシーブを備え、
前記判定部は、前記漏下開度が大きくされた場合であっても、前記比率が小さくならないときは前記グレンシーブにおいて前記脱穀処理物が詰まっていると判定する請求項2に記載のコンバイン。
【請求項4】
機体の走行制御を行う走行制御ユニットを備え、
前記走行制御ユニットは、前記漏下開度が大きくされた場合であっても、前記比率が小さくならないときは、前記機体の走行速度を低減させる請求項2又は3に記載のコンバイン。
【請求項5】
前記走行制御ユニットは、前記漏下開度が大きくされてから予め設定された時間が経過するまでに前記比率が小さくならないときは、前記機体を停車させる請求項4に記載のコンバイン。
【請求項6】
前記漏下開度が大きくされた場合であっても、前記比率が小さくならないときに報知する報知部を備える請求項2から5のいずれか一項に記載のコンバイン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圃場の植立穀稈を刈り取り、脱穀装置によって刈取穀稈の脱穀選別処理を行うコンバインに関する。
【背景技術】
【0002】
コンバインは、植立穀稈を刈り取り、刈取穀稈を脱穀選別処理し、得られた穀粒(選別処理物)を、穀粒タンクに搬送して貯留する。適切に刈取穀稈が脱穀されないと、穀粒に損傷が生じる。また、適切に選別が行われないと、選別処理物に穀粒以外の夾雑物等の異物が混入する。その結果、適切な品質の穀粒を取得することができない。
【0003】
そのため、例えば、特許文献1に記載のコンバインでは、穀粒タンク内部に一時貯留部を備え、その一時貯留部に貯留された選別処理物を撮影するカメラを備え、撮影画像を解析して得られた穀粒の選別精度(異物の混入等)に基づいて、脱穀装置等の各種設定を調整したりする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載のコンバインでは、搬送装置によって穀粒タンクに搬送されてきて貯留部内に投擲された選別処理物を、穀粒タンクの後部(投擲部から離れた位置)に支持された一時貯留部において撮像した撮像画像に基づいて脱穀装置等の各種設定を調整する。このため、例えば、脱穀装置により脱穀された脱穀処理物のうちの少なくとも一部が脱穀装置に詰まって滞留することにより、一時貯留部に搬送されない脱穀処理物がある場合には適切に上記設定をすることができない。
【0006】
そこで、脱穀装置に滞留する脱穀処理物が存在するか否か、すなわち脱穀装置において脱穀処理物が詰まっているか否かを判定することが可能なコンバインが求められる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係るコンバインの特徴構成は、作物を脱穀する1つの脱穀部と、前記脱穀部の下方において前後範囲に亘って設けられ、前記脱穀部から漏下してきた脱穀処理物を選別処理する1つの選別部と、前記選別部の下方において設けられ、前記選別部によって選別された選別処理物のうちの一番物を回収する一番物回収部と、前記選別部の下方において設けられ、前記脱穀処理物の搬送方向における下流側において、前記選別処理物のうちの二番物を回収する二番物回収部と、前記二番物回収部により回収された前記二番物を前記選別部に還元する二番物還元装置と、を有する脱穀装置を備え、前記一番物の回収量を一番物回収量として測定する一番物センサと、前記二番物の還元量を二番物還元量として測定する二番物センサと、前記一番物回収量に対する前記二番物還元量の比率に応じて、前記選別部において前記脱穀処理物が詰まっているか否かを判定する判定部と、を備えている点にある。
【0008】
このような特徴構成とすれば、一番物回収量に対する二番物還元量の比率に基づいて、選別部において脱穀処理物が詰まっているか否かを容易に判定することができる。したがって、脱穀装置に滞留する脱穀処理物が存在するか否かを容易に判定することが可能となる。
【0009】
また、前記選別部は、揺動選別装置を備え、前記揺動選別装置は、脱穀処理物の搬送方向に沿って並べられた複数のチャフリップを有するとともに前記複数のチャフリップの姿勢を変更することで漏下開度を変更可能なチャフシーブを備え、前記チャフシーブは、前記比率が大きい程、前記漏下開度が大きくされるであると好適である。
【0010】
このような構成とすれば、一番物回収量に対する二番物還元量の比率が大きい程、チャフシーブの漏下開度を大きくするので、一番物回収部への搬送を促進し、二番物還元装置による選別部への還元を抑制することが可能となる。したがって、本構成によれば、揺動選別装置の動作を制御し、脱穀制御をより適切に行うことができる。
【0011】
また、前記揺動選別装置は、前記チャフシーブの下方に設けられたグレンシーブを備え、前記判定部は、前記漏下開度が大きくされた場合であっても、前記比率が小さくならないときは前記グレンシーブにおいて前記脱穀処理物が詰まっていると判定すると好適である。
【0012】
本来、チャフシーブの漏下開度を大きくした場合には、一番物回収量に対する二番物還元量の比率は小さくなるはずである。このため、本構成であれば、当該比率に基づいて脱穀処理物がグレンシーブに詰まっていることを判定することで、脱穀装置に滞留する脱穀処理物が存在するか否かを容易に判定することが可能となる。
【0013】
また、機体の走行制御を行う走行制御ユニットを備え、前記走行制御ユニットは、前記漏下開度が大きくされた場合であっても、前記比率が小さくならないときは、前記機体の走行速度を低減させると好適である。
【0014】
このような構成とすれば、コンバインが刈り取る作物の量を低減することができるので、脱穀装置に搬送される作物の量も低減することが可能となる。したがって、脱穀装置に留まる脱穀処理物の脱穀処理を優先させることが可能となる。
【0015】
また、前記走行制御ユニットは、前記漏下開度が大きくされてから予め設定された時間が経過するまでに前記比率が小さくならないときは、前記機体を停車させると好適である。
【0016】
このような構成とすれば、更に脱穀装置に搬送される作物の量を低減することができる。したがって、脱穀装置に留まる脱穀処理物の脱穀処理を最優先させることが可能となる。
【0017】
また、前記漏下開度が大きくされた場合であっても、前記比率が小さくならないときに報知する報知部を備えると好適である。
【0018】
このような構成とすれば、一番物回収量に対する二番物還元量の比率が小さくないこと、すなわち、選別部において脱穀処理物が詰まっていることを周囲に明示することが可能となる。したがって、オペレータが所定の処置を行う等の対応が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図4】穀粒タンク、揚穀装置、及び脱穀装置の正面図である。
【
図6】二番物センサ及び二番物排出口の配置図である。
【
図7】二番物センサ及び二番物排出口の配置図である。
【
図8】二番物センサ及び二番物排出口の配置図である。
【
図10】詰まり判定に係る機能部を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明に係るコンバインは、作物から脱穀された脱穀処理物が脱穀装置内において詰まっているか否かを判定することができるように構成される。以下、本実施形態のコンバインについて、普通型コンバインを例に挙げて説明する。
【0021】
図1はコンバインの右側面図であり、
図2はコンバインの平面図である。ここで、理解を容易にするために、本実施形態では、特に断りがない限り、「前」(
図1に示す矢印Fの方向)は機体前後方向(走行方向)における前方を意味し、「後」(
図1に示す矢印Bの方向)は機体前後方向(走行方向)における後方を意味するものとする。また、「上」(
図1に示す矢印Uの方向)及び「下」(
図1に示す矢印Dの方向)は、機体の鉛直方向(垂直方向)での位置関係であり、地上高さにおける関係を示すものとする。さらに、左右方向または横方向は、機体前後方向に直交する機体横断方向(機体幅方向)、すなわち、「左」(
図2に示す矢印Lの方向)及び「右」(
図2に示す矢印Rの方向)は、夫々、機体の左方向及び右方向を意味するものとする。
【0022】
コンバインには、クローラ式の走行装置3(「走行制御ユニット」に相当)と、走行装置3によって支持された機体フレーム2(「機体」に相当)と、圃場の作物(稲、麦、大豆、菜種などの各種作物)を刈り取る刈取部4と、フィーダ11と、脱穀装置1と、穀粒タンク12と、穀粒排出装置14とが備えられている。
【0023】
刈取部4は、作物を掻き込む掻き込みリール5と、圃場の作物を切断するバリカン型の切断装置6と、刈り取られた作物をフィーダ11まで横送りするオーガ7とを備える。刈取部4によって刈り取られた作物は、フィーダ11によって脱穀装置1に搬送され、脱穀装置1によって脱穀選別処理される。脱穀装置1によって脱穀選別処理された選別処理物は、穀粒タンク12に貯留され、適宜、穀粒排出装置14によって機外に排出される。
【0024】
刈取部4の右後方に、フィーダ11と横並び状態で、運転部9が備えられている。運転部9は、キャビン10によって覆われている。運転部9の下方にはエンジンルームERが備えられ、エンジンルームERにはエンジンEや、特に図示はしないが、冷却ファンやラジエータ等が収容されている。エンジンEの動力は、不図示の動力伝達機構によって、走行装置3や、刈取部4、脱穀装置1等の作業装置に伝達される。
【0025】
次に、
図3に示される脱穀装置1の縦断左側面図を用いて、脱穀装置1の構成を説明する。脱穀装置1は機体フレーム2に設けられ、扱胴22によって作物を脱穀する脱穀部41と、脱穀処理物を揺動選別処理する選別部42とを備える。脱穀部41は、脱穀装置1における上部領域に配置され、脱穀部41の下方に、受網23が設けられ、選別部42は、受網23の下方に設けられている。選別部42は、受網23から漏下してきた脱穀処理物を、回収すべき穀粒を含む選別処理物と、排藁等の排出物とに選別する。
【0026】
脱穀部41は、脱穀装置1の左右の側壁と、天板53と、受網23とに囲われた扱室21を備える。扱室21には、回転によって作物を脱穀処理する扱胴22と、複数の送塵弁53aとが備えられている。フィーダ11によって搬送された作物は、扱室21に投入され、扱胴22によって脱穀処理される。扱胴22によって連れ回される作物は、送塵弁53aの送り作用によって後方に向けて移送される。
【0027】
送塵弁53aはプレート状であり、天板53の内面(下面)に前後方向に沿って所定の間隔で設けられる。送塵弁53aは、平面視で回転軸心Xに対して傾斜する姿勢で設けられる。そのため、それぞれの送塵弁53aは、扱室21において扱胴22と共に回転する刈取穀稈を後側に移動させる力を作用させる。また、送塵弁53aは、回転軸心Xに対する傾斜角度を調整することができる。扱胴22内を作物が後方に送られる速度は、送塵弁53aの傾斜角度により決まる。また、作物が脱穀される脱穀効率は、作物が扱胴22内を送られる速度にも影響される。その結果、作物が脱穀される処理能力は、様々な手段を用いて調整することができるが、送塵弁53aの傾斜角度を変更することを1つの手段として調整することができる。特に図示はしないが、送塵弁53aの傾斜姿勢を変更制御可能な送塵弁制御機構が備えられており、送塵弁53aの傾斜角度を自動的に変更することができる。
【0028】
脱穀装置1は、一番物回収部26と、二番物回収部27と、二番物還元装置32とを備える。選別部42は、シーブケース33を有する揺動選別装置24と唐箕19とを備える。
【0029】
唐箕19は、選別部42の前部領域の下部領域に設けられ、揺動選別装置24の前側から後方に向かって、処理物の搬送方向に沿って選別風を発生させる。選別風は、比較的比重の軽い排藁等をシーブケース33の後側に向けて送り出す作用を有する。また、揺動選別装置24においては、揺動駆動機構43によってシーブケース33が揺動することにより、シーブケース33の内部の脱穀処理物が後方に移送されながら揺動選別処理が行われる。このような理由から、以下の説明では、揺動選別装置24において、処理物の搬送方向の上流側が前端あるいは前側と称され、下流側が後端あるいは後側と称される。なお、唐箕19の選別風は強度(風量、風速)を変更することができる。選別風を強くすると、脱穀処理物を後方に送り出し易くなり、選別速度が高くなる。逆に、選別風を弱くすると、脱穀処理物が長くシーブケース33内に留まり、選別精度が高くなる。そのため、唐箕19の選別風は強度を変更することにより、揺動選別装置24の選別効率(選別精度や選別速度)を調整することができる。特に図示はしないが、唐箕19の選別風の強度を変更制御可能な唐箕制御機構が備えられており、唐箕19の選別風の強度を自動的に変更することができる。
【0030】
シーブケース33の前半部分には、第一チャフシーブ38が備えられ、シーブケース33の後半部分には、第二チャフシーブ39が備えられている。一般的な構成であるため特に説明はしないが、シーブケース33には、第一チャフシーブ38等以外に、グレンパンやグレンシーブ40が備えられている。受網23を漏下した脱穀処理物は、第一チャフシーブ38や第二チャフシーブ39に落下する。脱穀処理物のほとんどは、受網23から第一チャフシーブ38を含むシーブケース33の前半部分に対して漏下してきて、シーブケース33の前半部分によって粗選別及び精選別される。一部の脱穀処理物は、受網23から第二チャフシーブ39に対して漏下してきたり、第一チャフシーブ38において漏下せずに第二チャフシーブ39まで移送されてきたりして、第二チャフシーブ39において漏下選別される。
【0031】
第一チャフシーブ38の下方には、上記グレンシーブ40が備えられている。すなわち、揺動選別装置24は、第一チャフシーブ38の下方に設けられたグレンシーブ40を備えている。グレンシーブ40は、パンチングメタルや網体等の多孔部材によって構成され、第一チャフシーブ38から漏下してきた脱穀処理物を受け止めて漏下選別する。
【0032】
シーブケース33の前半部分の下方に、スクリュー式の一番物回収部26が備えられ、シーブケース33の後半部分の下方に、スクリュー式の二番物回収部27が備えられている。シーブケース33の前半部分によって選別処理されて漏下してきた一番物、すなわち、選別部42によって選別された選別処理物のうちの一番物は、一番物回収部26によって回収されて、穀粒タンク12の側(機体左右方向右側)に向けて搬送される。シーブケース33の後半部分(第二チャフシーブ39)によって選別処理されて漏下してきた二番物(一般的に選別処理精度が低く、切藁などの比率が高い)、すなわち、選別処理物のうちの二番物は、二番物回収部27によって回収される。二番物は、脱穀処理物のうち、選別処理物として選別されなかった脱穀処理物が相当する。二番物回収部27によって回収された二番物は、二番物還元装置32によって選別部42の前部に還元され、シーブケース33によって再選別される。
【0033】
第一チャフシーブ38には、脱穀処理物の移送(搬送)方向(前後方向)に沿って並んで設けられた複数の板状のチャフリップが備えられている。各チャフリップは、後端側ほど斜め上方に向かう傾斜姿勢で配置されている。チャフリップの傾斜角度は可変であり、傾斜角度を急にするほど、隣り合うチャフリップ同士の間隔が広がり、脱穀処理物が漏下し易くなる。すなわち、複数のチャフリップの姿勢を変更することで漏下開度を変更可能に構成されている。そのため、チャフリップの傾斜角度を調整することにより、揺動選別装置24の選別効率(選別精度や選別速度)を調整することができる。チャフリップの傾斜姿勢を変更制御可能なリップ制御機構が備えられており、チャフリップの傾斜角度を自動的に変更することができる。
【0034】
第二チャフシーブ39も、第一チャフシーブ38と同様の構成である。第二チャフシーブ39のチャフリップの傾斜姿勢を変更制御可能な角度制御機構も備えられており、チャフリップの傾斜角度を自動的に変更することができる。
【0035】
図4は穀粒タンク12、揚穀装置29、及び脱穀装置1の正面図であり、
図5は揚穀装置29の縦断右側面図である。
図4及び
図5に示すように、一番物回収部26によって回収された選別処理物を穀粒タンク12に搬送する揚穀装置29が備えられている。揚穀装置29は、脱穀装置1と穀粒タンク12との間に配置され、上下方向に沿った姿勢で立設されている。揚穀装置29は、バケット式のコンベアによって構成されている。揚穀装置29によって揚送された選別処理物は、揚穀装置29の上端部において、横送り搬送装置30に受け渡される。横送り搬送装置30は、スクリュー式に構成され、穀粒タンク12の前部左側の壁部から穀粒タンク12の内部に突っ込まれている。横送り搬送装置30のタンク内部側の端部に、穀粒放出装置30Aが備えられている。穀粒放出装置30Aは、板状の放出回転体30Bを備えており、スクリュー部分と一体回転する。選別処理物は、横送り搬送装置30によって横送りされ、最終的に、穀粒放出装置30Aの投擲口30Cから穀粒タンク12内に投擲される。
【0036】
揚穀装置29においては、
図4及び
図5に示すように、駆動スプロケット29Aと従動スプロケット29Bとにわたって巻き掛けられた無端回動チェーン29Cの外周側に複数のバケット31が一定間隔で取り付けられている。揚穀装置29は、選別処理物が収納されたバケット31が上昇する送り経路29Dと、選別処理物を横送り搬送装置30に排出した後のバケット31が下降する戻り経路29Eとを備える。送り経路29Dと戻り経路29Eとは、送り経路29Dが後側になるように、穀粒タンク12の左側壁12bに沿って並んで配置される。
【0037】
一番物センサ60は、一番物の回収量を一番物回収量として測定する(
図10参照)。一番物センサ60は、選別処理物が一番物回収部26から穀粒タンク12まで搬送される搬送経路におけるいずれかの位置、具体的には一番物回収部26から選別処理物が穀粒タンク12に投擲される投擲口30Cまでのいずれかの位置において、選別処理物の量を測定するように配置される。一番物センサ60は、例えば物理的な接触式のセンサを用いて選別処理物の量を検出するように構成することが可能である。あるいは、圃場のマップを示すマップ情報に一番物の回収量を関連付けて生成したマップセンサによる結果を用いても良いし、例えば一番物回収部26から投擲口30Cまでのいずれかの位置にカメラを設け、当該カメラで一番物回収部26における一番物を撮像した撮像画像、脱穀装置1の扱胴22から下方に落下する穀粒を写した撮像画像、脱穀装置1のシーブケース33から下方に落下する穀粒を写した撮像画像、穀粒タンク12に投入される穀粒を写した撮像画像、バケット31により搬送される穀粒を写した撮像画像等に基づいて一番物の回収量を測定(推定)しても良い。また、一番物回収部26のスクリューの負荷(トルク等)を利用して一番物の回収量を測定(推定)しても良い。
【0038】
上述したように、二番物は二番物還元装置32により揺動選別装置24の前部である上流側に還元される。具体的には、二番物還元装置32の二番物排出口32Aは、円弧状の受網23における径方向外側の位置(受網23の側方であって、二番物が受網23を通らない位置)に設けられ、この位置において二番物が排出される。脱穀装置1には、このように還元される二番物の還元量を二番物還元量として測定する二番物センサ70が備えられている。
図6-
図9には、このような二番物排出口32Aの配置形態が示される。
【0039】
本実施形態では、
図6に示されるように、二番物排出口32Aは受網23側に向けて設けられる。
図7及び
図8に示されるように、二番物排出口32Aの近傍には、二番物還元装置32を構成するスクリューと共に回転する回転羽根32Bが設けられ、二番物還元装置32により搬送された二番物は、脱穀部41の側壁50に形成された挿通孔を通して回転羽根32Bにより二番物排出口32Aから径方向外側に放出され(
図8の破線矢印で示されるように排出される)。
【0040】
二番物排出口32Aには、放出された二番物を揺動選別装置24の処理物移送方向上手側に向けて案内する案内部32Cが設けられる。案内部32Cは、二番物排出口32Aに対向する内周面を有する筒状の一部を呈する形状で構成される。換言すると、帯板を円弧状に曲げた形状となっている。このような案内部32Cの内周面により、回転羽根32Bにより放出された二番物の排出方向が規制される。
【0041】
図7及び
図8に示すように、二番物センサ70は、脱穀部41における側壁50の内部側部分に支持される。二番物センサ70は、二番物還元装置32における回転羽根32Bにより放出された二番物に接触して還元される二番物の還元量を測定するように構成されている。二番物センサ70は、二番物還元装置32により放出される二番物の放出延長上に位置して放出された二番物が接触することにより揺動する揺動アーム72と、揺動アーム72の揺動角に基づいて還元量を測定する計測部73と、計測部73及び揺動アーム72を支持する支持フレーム74と、二番物センサ70の上方を覆うカバー体75とを備えている。
【0042】
計測部73は、ケースにポテンショメータが内装され、支持フレーム74の内方側箇所に対してボルトによる締結固定されている。計測部73は、回転軸76が支持フレーム74を挿通して外方側(側壁50側)に突出して設けられ、回転軸76に一体回動可能に揺動アーム72が取り付けられている。揺動アーム72は、回転軸76から下方に向けて延びており、案内部32Cにより二番物が案内される案内経路内に位置する状態で備えられている。揺動アーム72は回転軸76の軸芯周りで揺動可能に支持されている。
【0043】
カバー体75は、揺動アーム72、計測部73、及び支持フレーム74の夫々の上方を覆うように構成されている。このカバー体75により、受網23を通して漏下する脱穀処理物のうち細かな塵埃が揺動アーム72や計測部73に降りかかって計測動作を阻害することを防止できる。
【0044】
図9に示されるように、揺動アーム72は回転軸76よりも上方に延出する延出部を有し、延出部とバネ受け部77とにわたってコイルバネ78が張設される。揺動アーム72は、コイルバネ78の引っ張り付勢力により二番物排出口32Aに近づくように揺動付勢されている。揺動アーム72は、上端部が係止部79に接当して、バネ付勢力に抗して下向き待機姿勢で位置保持される。
【0045】
二番物排出口32Aを通して回転羽根32Bによって放出された二番物が揺動アーム72に接触すると、その押圧力により揺動アーム72がコイルバネ78の付勢力に抗して二番物排出口32Aから離間する方向に揺動する。この時の揺動角度が計測部73によって計測され、その計測結果に基づいて二番物の還元量が算定される。具体的には、揺動角度と還元量との関係を示すマップや式を計測部73に記憶しておき、当該マップや式に基づいて還元量を算定すると好適である。
【0046】
図10は、一番物センサ60による測定結果及び二番物センサ70による測定結果を用いた、選別部42における脱穀処理物の詰まり判定に係る機能部を示すブロック図である。
図10に示されるように、一番物センサ60による測定結果、及び二番物センサ70による測定結果は、判定部80に伝達される。判定部80は、一番物回収量に対する二番物還元量の比率に応じて、選別部42において脱穀処理物が詰まっているか否かを判定する。一番物回収量とは、一番物センサ60の測定結果により示される一番物の回収量である。二番物還元量とは、二番物センサ70の測定結果により示される二番物の還元量である。一番物回収量に対する二番物還元量の比率とは、二番物の還元量を一番物の回収量で除した値である。ここで、一番物回収量及び二番物還元量は、一番物センサ60に及び二番物センサ70の構成上、常に一定の値からなる測定結果が得られるわけでない。そこで、判定部80は、一番物回収量及び二番物還元量の夫々の所定時間における平均値を算定して上記比率を求めても良いし、所定にタイミングで得られた一番物回収量及び二番物還元量の瞬時値を用いて上記比率を求めても良い。
【0047】
ここで、二番物還元量が多すぎると二番物還元装置32の処理能力を超えることがある。そこで、二番物還元量が多くなる程、すなわち、一番物回収量に対する二番物還元量の比率が大きい程、第一チャフシーブ38の漏下開度が大きくされる。これにより、第一チャフシーブ38から一番物回収部26へ漏下する処理物の量が増大し、二番物還元装置32に到達する処理物の量が減るので、二番物還元量を低減することが可能となる。
【0048】
しかしながら、第一チャフシーブ38の漏下開度が大きくされた場合であっても、一番物回収量に対する二番物還元量の比率が小さくならないときがある。この原因として第一チャフシーブ38から漏下した脱穀処理物がグレンシーブ40に詰まって一番物回収部26に漏下していないということが考えられる。係る場合、判定部80はグレンシーブ40おいて脱穀処理物が詰まっていると判定する。このように、本実施形態のコンバインでは、一番物回収量に対する二番物還元量の比率に応じてグレンシーブ40において脱穀処理物が詰まっているか否かを判定することが可能である。
【0049】
また、グレンシーブ40での脱穀処理物の詰まりを解消するために、脱穀装置1に供給される作物の量を減らすことが考えられる。走行速度を低減すれば、脱穀装置1に供給される作物の量が減り、グレンシーブ40における脱穀処理物の詰まりを解消できる。そこで、第一チャフシーブ38の漏下開度が大きくされた場合であっても、一番物回収量に対する二番物還元量の比率が小さくならないときは、走行装置3は、機体フレーム2の走行速度を低減させると良い。
【0050】
更に、第一チャフシーブ38の漏下開度が大きくされてから予め設定された時間が経過するまでに、一番物回収量に対する二番物還元量の比率が小さくならないときや、機体フレーム2の走行速度が低減されてから予め設定された時間が経過するまでに、一番物回収量に対する二番物還元量の比率が小さくならないときは、走行装置3は、機体フレーム2を停止させると好適である。これにより、脱穀装置1への作物の供給を、一旦、中断することができるので、脱穀装置1における脱穀処理及び選別処理に係る負荷を低減することが可能となる。したがって、現在、脱穀装置1内における作物に対する処理を行い、グレンシーブ40における脱穀処理物が詰まっている状態を解消することが可能となる。
【0051】
また、第一チャフシーブ38の漏下開度が大きくされた場合であっても、一番物回収量に対する二番物還元量の比率が小さくならないときは、報知部91が報知するように構成することも可能である。これにより、グレンシーブ40において脱穀処理物が詰まっている状態であることをオペレータや周囲に知らしめることが可能となる。
【0052】
〔その他の実施形態〕
上記実施形態では、判定部80は、一番物回収量に対する二番物還元量の比率が大きい程、漏下開度が大きくされた場合であっても、当該比率が小さくならないときはグレンシーブ40において脱穀処理物が詰まっていると判定するとして説明したが、判定部80は、一番物回収量に対する二番物還元量の比率が大きい程、漏下開度が大きくされた場合であっても、当該比率が小さくならないとき以外においても、グレンシーブ40において脱穀処理物が詰まっているか否かを判定しても良い。
【0053】
上記実施形態では、走行装置3は、チャフシーブの漏下開度が大きくされた場合であっても、一番物回収量に対する二番物還元量の比率が小さくならないときは、機体フレーム2の走行速度を低減させるとして説明したが、走行装置3は一番物回収量に対する二番物還元量の比率が小さくならないときに、機体フレーム2の走行速度を低減させないように構成することも可能である。
【0054】
上記実施形態では、走行装置3は、チャフシーブの漏下開度が大きくされてから予め設定された時間が経過するまでに一番物回収量に対する二番物還元量の比率が小さくならないときは、機体フレーム2を停車させるとして説明したが、走行装置3はチャフシーブの漏下開度が大きくされてから予め設定された距離を走行するまでに一番物回収量に対する二番物還元量の比率が小さくならないときは、機体フレーム2を停車させるように構成しても良い。
【0055】
上記実施形態では、走行装置3は、チャフシーブの漏下開度が大きくされてから予め設定された時間が経過するまでに一番物回収量に対する二番物還元量の比率が小さくならないときは、機体フレーム2を停車させるとして説明したが、走行装置3は機体フレーム2を停車させないように構成することも可能である。
【0056】
上記実施形態では、チャフシーブの漏下開度が大きくされた場合であっても、一番物回収量に対する二番物還元量の比率が小さくならないときに報知する報知部91を備えるとして説明したが、報知部91を備えずに構成することも可能である。
【0057】
上記実施形態では、コンバインが普通型コンバインである場合の例を挙げて説明したが、コンバインは自脱型コンバインであっても良い。
【産業上の利用可能性】
【0058】
本発明は、圃場の植立穀稈を刈り取り、脱穀装置によって刈取穀稈の脱穀選別処理を行うコンバインに用いることが可能である。
【符号の説明】
【0059】
1:脱穀装置
2:機体フレーム(機体)
3:走行制御ユニット(走行装置)
24:揺動選別装置
26:一番物回収部
27:二番物回収部
32:二番物還元装置
38:第一チャフシーブ(チャフシーブ)
40:グレンシーブ
41:脱穀部
42:選別部
60:一番物センサ
70:二番物センサ
80:判定部
91:報知部