(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-07
(45)【発行日】2023-12-15
(54)【発明の名称】積層剥離容器
(51)【国際特許分類】
B65D 1/02 20060101AFI20231208BHJP
B65D 65/40 20060101ALI20231208BHJP
【FI】
B65D1/02 111
B65D65/40 D
(21)【出願番号】P 2020117612
(22)【出願日】2020-07-08
【審査請求日】2023-04-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000162113
【氏名又は名称】共同印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100123593
【氏名又は名称】関根 宣夫
(74)【代理人】
【氏名又は名称】胡田 尚則
(72)【発明者】
【氏名】成田 有輝
(72)【発明者】
【氏名】山本 光
(72)【発明者】
【氏名】富岡 恭史
【審査官】森本 哲也
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-179822(JP,A)
【文献】特開2015-127246(JP,A)
【文献】特開2005-047172(JP,A)
【文献】特開2011-073753(JP,A)
【文献】特開2018-202629(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 1/02
B65D 65/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外殻と、前記外殻の内側に積層配置された内袋と、を備え、内容物の減少に伴って前記内袋が前記外殻から剥離して収縮する積層剥離容器であって、
前記外殻は、単層又は積層体からなり、
前記内袋は、積層体からなり、
前記外殻の最内層は、環状オレフィン系重合体を含有する環状ポリオレフィン層であり、
前記内袋の最外層は、ナイロン樹脂を含むナイロン層であり、
前記ナイロン層と隣接する層は、エチレン-ビニルアルコール共重合体を含有するEVOH層である、積層剥離容器。
【請求項2】
前記環状ポリオレフィン層における前記環状オレフィン系重合体の含有率は、10質量%以上100質量%以下である、請求項1に記載の積層剥離容器。
【請求項3】
前記エチレン-ビニルアルコール共重合体のエチレン含量は、27モル%以上50モル%以下である、請求項1又は2に記載の積層剥離容器。
【請求項4】
前記内容物が、医薬品、医薬部外品、化粧品、洗剤、食品、調味料、及び塗料からなる群より選ばれる、請求項1~3のいずれか1項に記載の積層剥離容器。
【請求項5】
請求項1~3のいずれか1項に記載の積層剥離容器と、前記内容物と、を含む、内容物入り積層剥離容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層剥離容器に関する。更に詳しくは、外殻と、外殻の内側に積層配置された内袋と、を備え、内容物の減少に伴って内袋が外殻から剥離して収縮する積層剥離容器に関する。
【背景技術】
【0002】
医薬品、医薬部外品、化粧品、洗剤、食品等を収納する容器として、外容器を形成している外殻と、この外殻の内側に収められ、減容変形自在の内容器を形成している内袋とを備え、外殻と内袋との間に外気の導入を可能にすることで、内袋が外殻から剥離する二重容器が知られている(特許文献1、2参照)。
【0003】
このような二重容器は、使用の際に内容物を吐出すると、吐出容積に応じて内容器のみが減容し、内容器に空気が導入しない態様となっている。これにより、内容器内に残存する未使用の内容物と、空気との直接の接触を回避することができ、内容物の酸化劣化を防ぐことができる。
【0004】
ここで、特許文献1に記載された二重容器は、外殻の最内層をポリプロピレン(PP)の層とし、内袋の最外層をエチレン-ビニルアルコール共重合体(EVOH)の層としており、これらが積層配置された構造を有している。そして、内袋の最外層を構成するEVOHにより、内容物の減少に伴って外殻と内袋との間に導入される空気に含まれる、酸素に対するバリア性を付与している。
【0005】
更に、特許文献2に記載された二重容器においては、内袋に充填された内容物に含まれる水分が、内袋の最外層となっているEVOH層に到達することによって、EVOH層の酸素バリア性が低下することに注目し、内袋となる積層体を構成する層の厚みの比を規定することが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2016-101966号公報
【文献】特開2016-179822号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記の特許文献1及び特許文献2においては、使用に際して外殻と内袋との間に導入される空気における酸素や、容器に充填された内容物に含まれる水分については認識されているものの、容器の外側に存在している外気からの水分の侵入については、認識されていない。
【0008】
内容物の減少に伴い内袋が外殻から剥離する二重容器には、使用時に内袋が外殻から剥離しやすい状態にしておく目的で、製造後、外殻から内袋を剥離する操作が実施される。そして、この操作により、二重容器の外殻と内袋との間には、空気層が形成されることとなる。
【0009】
このような二重容器においては、容器の外側に外気が存在しているため、水分のような外気中の成分が容器の外殻を透過して、外殻と内袋との間に存在する空気層に侵入可能な状態となっている。このため、消費者が使用するまでの期間を含めて、内容物が充填された内袋は常に、外殻を透過した水分等と接触することとなる。
【0010】
特に、近年のプラスチック製品における環境負荷低減への対応として、プラスチックの使用量を削減する動向が高まる中で、二重容器においても、外殻及び内袋の薄肉化が進むことが予測される。そして、容器の薄肉化が進めば、外気中の水分等が外殻を透過する程度は更に大きくなる。
【0011】
本発明者らは、外殻と内袋との間の空気層におけるこのような水分だけでなく、容器の外側に存在している外気の侵入が、内袋の酸素バリア性を低下させているという問題を見出した。
【0012】
また、上記の通り二重容器は、製造後、外殻から内袋を剥離する操作を実施する。さらに、使用時には内容物の減容により、内袋にはシワが入る。そして、剥離操作の際にかかる張力や、内容物の減容に伴うシワが原因となり、内袋の最外層であるEVOH層には、ピンホールが発生する場合があった。
【0013】
EVOH層にピンホールが生じると、EVOH層で被覆されていない隣接層が露出し、露出箇所を通して内袋を酸素が透過するため、内容物の酸化劣化が進んでしまう。
【0014】
本発明は、上記の背景に鑑みてなされたものであり、外殻と、外殻の内側に積層配置された内袋と、を備える積層剥離容器において、容器の外側に存在している外気の侵入を抑制し、内袋の酸素バリア性の低下を高いレベルで抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意検討を行った。そして、積層剥離容器を構成する外殻に水蒸気バリア性を付与すれば、外殻と内袋との間に形成される空気層への水分の侵入を抑制することができ、その結果、内袋を構成するEVOH層と水分との接触を抑制することができ、EVOH層の酸素バリア性の低下を効果的に抑制できると考えた。さらに、内袋のEVOH層の外側に、EVOHを被覆するための層を設ければ、EVOH層を保護することが可能となり、EVOH層のピンホール発生を抑制できると考えた。すなわち、本発明は、以下のとおりである。
【0016】
《態様1》
外殻と、前記外殻の内側に積層配置された内袋と、を備え、内容物の減少に伴って前記内袋が前記外殻から剥離して収縮する積層剥離容器であって、
前記外殻は、単層又は積層体からなり、
前記内袋は、積層体からなり、
前記外殻の最内層は、環状オレフィン系重合体を含有する環状ポリオレフィン層であり、
前記内袋の最外層は、ナイロン樹脂を含むナイロン層であり、
前記ナイロン層と隣接する層は、エチレン-ビニルアルコール共重合体を含有するEVOH層である、積層剥離容器。
《態様2》
前記環状ポリオレフィン層における前記環状オレフィン系重合体の含有率は、10質量%以上100質量%以下である、態様1に記載の積層剥離容器。
《態様3》
前記エチレン-ビニルアルコール共重合体のエチレン含量は、27モル%以上50モル%以下である、態様1又は2に記載の積層剥離容器。
《態様4》
前記内容物が、医薬品、医薬部外品、化粧品、洗剤、食品、調味料、及び塗料からなる群より選ばれる、態様1~3のいずれか一態様に記載の積層剥離容器。
《態様5》
態様1~3のいずれか一態様に記載の積層剥離容器と、前記内容物と、を含む、内容物入り積層剥離容器。
【発明の効果】
【0017】
本発明の積層剥離容器は、内袋を構成するエチレン-ビニルアルコール共重合体(EVOH)の酸素バリア性の低下を、高いレベルで抑制することができる。具体的には、本発明の積層剥離容器によれば、使用時と、内容物が充填された後から消費者が使用するまでの期間の双方において、高い酸素バリア性を維持することができ、その結果、内袋に充填された内容物の酸化劣化を、より高いレベルで防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の積層剥離容器の一実施形態を示す概略断面図である。
【
図2】従来の積層剥離容器における各種気体の透過状況を示す概略図である。
【
図3】本発明の一実施形態に係る積層剥離容器における各種気体の透過状況を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
《積層剥離容器》
本発明の積層剥離容器は、外殻と、外殻の内側に積層配置された内袋と、を備え、内容物の減少に伴って内袋が外殻から剥離して収縮する容器である。そして、外殻は、単層又は積層体からなり、内袋は、積層体からなっており、外殻の最内層は、環状オレフィン系重合体を含有する環状ポリオレフィン層であり、内袋の最外層は、ナイロン樹脂を含むナイロン層であり、前記ナイロン層と隣接する層は、エチレン-ビニルアルコール共重合体を含有するEVOH層である。
【0020】
本発明の積層剥離容器は、上記の構成を有することにより、内袋を構成するエチレン-ビニルアルコール共重合体(EVOH)のバリア性の低下を、高いレベルで抑制することができ、使用時と、内容物が充填された後から消費者が使用するまでの期間の双方において、高いバリア性を維持し、内袋に充填された内容物の酸化劣化を、より高いレベルで防止することができる。
【0021】
<積層剥離容器の構成>
以下に、図面を参照しながら、本発明の積層剥離容器の構成について説明する。
図1に、本発明の積層剥離容器の一実施形態に係る概略断面図を示す。
【0022】
図1に示される本発明の積層剥離容器の一実施形態に係る積層剥離容器100は、外殻10と、外殻10の内側に積層配置された内袋20と、を備えており、内容物の減少に伴って内袋20が外殻10から剥離して収縮する。外殻10は、最外層11と最内層12とからなる積層体であり、内袋20は、最外層21、バリア層22、中間層23、及び最内層24からなる積層体である。そして、外殻10の最内層12は、環状オレフィン系重合体を含有する環状ポリオレフィン層であり、内袋20の最外層21は、ナイロン樹脂を含むナイロン層であり、最外層21に隣接するバリア層22は、エチレン-ビニルアルコール共重合体を含有するEVOH層である。
【0023】
<積層剥離容器の作用>
積層剥離容器における各種気体の透過状況を、
図2及び
図3を用いて説明する。
図2は、従来の積層剥離容器における各種気体の透過状況を示す概略図であり、
図3は、本発明の一実施形態に係る積層剥離容器における各種気体の透過状況を示す概略図である。
【0024】
図2に示される従来の積層剥離容器200は、外殻210と、外殻210の内側に積層配置された内袋220と、を備えており、内容物の減少に伴って内袋220が外殻210から剥離して収縮する。外殻210は、最外層211と最内層212とからなる積層体であり、内袋220は、最外層221、中間層222、及び最内層223からなる積層体である。
【0025】
そして、従来の積層剥離容器200においては、内袋220の最外層221は、エチレン-ビニルアルコール共重合体を含有するEVOH層となっており、外殻210となる積層体を構成する最外層211と最内層212はいずれも、環状オレフィン系重合体を含有する環状ポリオレフィン層ではない。外殻210を構成する最外層211と最内層212は、例えば、低密度ポリエチレン(LDPE)からなる層と、ポリプロピレン(PP)からなる層等のポリオレフィンを材料とする層となっていることが一般的である。
【0026】
このような構成の外殻210を有する従来の積層剥離容器200においては、容器の外側に外気が存在しているため、外気中の水分(H2O)は、積層剥離容器200の外殻210を透過して、外殻210と内袋220との間に存在する空気層に容易に侵入し、内袋220の最外層221となっているEVOH層に到達する。
【0027】
ここで、EVOHの酸素透過度は、周囲の湿度に依存することが知られており、一般的には、相対湿度30%~40%程度で最小となり、それよりも湿度が高くなると急激に増加し、相対湿度80%では10倍程度にもなりうる。
【0028】
そして、従来の積層剥離容器200においては、外殻210と内袋220との間に存在する空気層に、外気中の水分(H2O)が侵入して内袋220の最外層221であるEVOH層と接触することから、EVOH層の酸素バリア性を低下させてしまう。その結果、外殻210と内袋220との間の空気層に含まれる酸素(O2)は、内袋220の積層体を通過して、内袋220の最内層223の内側に充填された内容物にまで到達し、内容物の酸化劣化を引き起こす。
【0029】
また、従来の積層剥離容器200においては、内袋220の最外層221がバリア層を兼ねるEVOH層となっているため、容器製造後に、外殻から内袋を剥離する操作を実施する際にかかる張力によって、最外層221であるEVOH層にはピンホール230が発生する場合があった。また、使用時においても、内容物の減容により内袋に入るシワによって、最外層221であるEVOH層にはピンホール230が発生する場合があった。
【0030】
そして、最外層221であるEVOH層にピンホール230が生じると、EVOH層に隣接する中間層222が露出し、中間層222の露出箇所を通して内袋を酸素が容易に透過するため、内容物の酸化劣化が進むこととなっていた。
【0031】
一方で、
図3に示される本発明の一実施形態に係る積層剥離容器300は、外殻310と、外殻310の内側に積層配置された内袋320と、を備えており、内容物の減少に伴って内袋320が外殻310から剥離して収縮する。外殻310は、最外層311と最内層312とからなる積層体であり、内袋320は、最外層321、バリア層322、中間層323、及び最内層324からなる積層体である。
【0032】
そして、外殻310の最内層312は、環状オレフィン系重合体を含有する環状ポリオレフィン層であり、内袋320の最外層321は、ナイロン樹脂を含むナイロン層であり、ナイロン層と隣接するバリア層322は、エチレン-ビニルアルコール共重合体を含有するEVOH層となっている。
【0033】
本発明の一実施形態に係る積層剥離容器300においては、容器の外側の外気に含まれる水分(H2O)は、外殻310の最内層312である環状オレフィン層によって遮蔽され、外殻を透過することが困難となる。このため、外気に含まれる水分は、外殻310と内袋320との間に存在する空気層に侵入困難となる。
【0034】
また、内袋320の最外層321はナイロン層であり、ナイロン樹脂は吸湿性を有する樹脂であることから、外殻を透過した僅かな水分についても、内袋320の最外層321にて吸収させることが可能となる。
【0035】
したがって、本発明の一実施形態に係る積層剥離容器300においては、外殻310の最内層312である環状オレフィン層と、内袋320の最外層321であるナイロン層との両者によって、内袋320のバリア性を発揮するバリア層322であるEVOH層は、外気に含まれる水分との接触を極めて高いレベルで回避することができる。
【0036】
また、本発明の一実施形態に係る積層剥離容器300においては、内袋320のバリア層322であるEVOH層の表面に、最外層321であるナイロン層が配置されているため、EVOH層はナイロン層によって保護されている。このため、製造後に外殻から内袋を剥離する際にかかる張力や、使用時における内容物の減容に伴う内袋のシワが原因となる、ピンホールの発生を抑制することができる。
【0037】
さらに、内袋320の最外層321であるナイロン層は、外殻310の最内層312である環状ポリオレフィン層に対して、良好な剥離性を有する。また、内袋320の最外層321であるナイロン層は、その内側に隣接しているEVOH層との接着性が良好である。このため、本発明の一実施形態に係る積層剥離容器300は、外殻310と内袋320との間の剥離を良好に実施することができる。
【0038】
その結果、本発明の一実施形態に係る積層剥離容器300においては、内袋320のバリア層322であるEVOH層の酸素バリア性は維持され、外殻210と内袋220との間の空気層に含まれる酸素(O2)は、内袋320のバリア層322のEVOH層によって効果的に遮蔽され、内袋320の最内層324の内側に充填された内容物の酸化劣化を抑制することができる。
【0039】
<外殻>
本発明の積層剥離容器を構成する外殻は、単層又は積層体からなる。そして、外殻の最内層は、環状オレフィン系重合体を含有する環状ポリオレフィン層である。
【0040】
本発明の積層剥離容器においては、環状オレフィン系重合体を含有する環状ポリオレフィン層が外殻に備えられることにより、外殻は水蒸気バリア性を有する。その結果、外殻と内袋との間に形成される空気層への水分の侵入を抑制することができ、内袋のバリア性を発揮するEVOH層の酸素バリア性の低下を抑制することができる。
【0041】
図1に示される本発明の積層剥離容器の一実施形態に係る積層剥離容器100においては、外殻10は、最外層11と最内層12とからなる積層体であり、外殻10の最内層12は、環状オレフィン系重合体を含有する環状ポリオレフィン層となっている。
【0042】
(環状オレフィン系重合体)
本発明の積層剥離容器を構成する外殻において、最内層となる環状ポリオレフィン層は、環状オレフィン系重合体を含有する。本発明に用いられる環状オレフィン系重合体は、環状オレフィンがモノマーとして用いられた重合体であり、重合体の主鎖又は側鎖に飽和炭化水素環構造を有する。
【0043】
本発明の環状ポリオレフィン層に含まれる環状オレフィン系重合体としては、少なくとも1種の環状オレフィンと、環状オレフィン以外の少なくとも1種のビニル化合物とをモノマーとする、共重合体であることが好ましい。
【0044】
また、本発明の環状ポリオレフィン層に含まれる環状オレフィン系共重合体は、環状オレフィンの少なくとも1種と、環状オレフィン以外のビニル化合物の少なくとも1種とをモノマーとして用いた、付加重合による環状オレフィン系ランダム共重合体(COC)であっても、縮合環骨格に二重結合を有する化合物の少なくとも1種と、該化合物以外の不飽和化合物の少なくとも1種とをモノマーとして用いた、開環重合による環状オレフィン開環重合体又はその水素添加物(COP)であってもよい。
【0045】
環状ポリオレフィン層に含まれる環状オレフィン系重合体が、付加重合による環状オレフィン系ランダム共重合体(COC)である場合には、モノマーとなる環状オレフィンとしては特に限定されるものではないが、例えば、シクロブテン、3-メチルシクロブテン、3,4-ジイソプロペニルシクロブテン、シクロペンテン、1-メチルシクロペンテン、3-メチルシクロペンテン、シクロヘキセン、シクロオクテン、1-メチルシクロオクテン、5-メチルシクロオクテン、シクロオクタテトラエン、シクロドデセン等の単環シクロオレフィンや、テトラシクロドデセンやノルボルネン等の多環シクロオレフィン、及びこれらの誘導体が挙げられる。
【0046】
また、環状オレフィン系ランダム共重合体(COC)のコモノマーとなる、環状オレフィン以外のビニル化合物としては、特に限定されるものではないが、例えば、エチレン、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-ペンテン、4-メチル-1-ペンテン、3-メチル-1-ペンテン、1-ヘキセン、1-ヘプテン、1-オクテン、1-ノネン、及び1-デセン等のα-オレフィン、シクロペンタジエン、1,3-シクロヘキサジエン、1,4-シクロヘキサジエン等の単環ジエンや、不飽和結合を2個有するノルボルネン環等を有する多環ジエン、ブタジエンやイソプレン等の直鎖又は分岐のジエン等を挙げることができる。
【0047】
本発明に用いうる環状オレフィン系ランダム共重合体(COC)としては、環状オレフィンに由来する構造単位の割合が、15~60モル%であることが好ましく、25~50モル%の範囲であることが更に好ましい。
【0048】
環状ポリオレフィン層に含まれる環状オレフィン系重合体が、開環重合による環状オレフィン開環重合体又はその水素添加物(COP)である場合には、モノマーとなる縮合環骨格に二重結合を有する化合物としては、メタセンス重合触媒によって重合し得るものであれば特に限定されるものではないが、例えば、テトラシクロドデセン、ノルボルネン、もしくはこれらの誘導体等のノルボルネン系骨格を有する化合物が挙げられる。
【0049】
また、環状オレフィン開環重合体(COP)のコモノマーとなる、縮合環骨格に二重結合を有する化合物以外の不飽和化合物としては、メタセンス重合触媒によって重合し得るものであれば特に限定されるものではないが、例えば、上記した環状オレフィン系ランダム共重合体(COC)のモノマーとなる環状オレフィンや、環状ジエン、主鎖に炭素-炭素二重結合を有する単量体、並びにこれらの誘導体等を挙げることができる。
【0050】
なお、環状オレフィン開環重合体(COP)体は、主鎖に炭素-炭素の二重結合(C=C)を有している。そして、水素添加を実施すると、主鎖の二重結合が炭素-炭素の単結合(C-C)となった水素添加物を得ることができる。本発明においては、耐熱性、耐候性等の観点からは、少なくとも主鎖の炭素-炭素二重結合が水素添加された重合体を用いることが好ましい。
【0051】
本発明に用いうる環状オレフィン開環重合体又はその水素添加物(COP)としては、水素化反応に供することを考慮すると、縮合環骨格に二重結合を有する化合物に由来する構造単位の割合が、80質量%以上であることが好ましい。
【0052】
(環状ポリオレフィン層の配置)
本発明の積層剥離容器において、環状オレフィン系重合体を含有する環状ポリオレフィン層は、外殻の最内層となっている。すなわち、環状ポリオレフィン層は、内袋に隣接する層となっている。
【0053】
ここで、本発明の積層剥離容器を構成する外殻は、単層であっても、積層体であってもよい。したがって、外殻が単層の場合には、当該層が環状ポリオレフィン層となり、環状ポリオレフィン層が外殻そのものとなる。外殻が積層体である場合には、外殻を構成する層の最内層が、環状ポリオレフィン層となる。
【0054】
本発明においては、環状ポリオレフィン層が外殻の最内層であることで、外殻に水蒸気バリア性が付与されることに加えて、内袋の最外層となっているナイロン樹脂を含むナイロン層との剥離性を向上させることができる。
【0055】
積層剥離容器は、内容物の減少に伴い内袋が外殻から剥離する態様となっており、使用時に内袋が外殻から剥離しやすい状態にしておく目的で、製造後、外殻から内袋を剥離する操作が実施される。本発明の積層剥離容器の外殻において、環状ポリオレフィン層が最内層となっていれば、内袋の最外層となっているナイロン層との剥離性が向上するため、剥離時の内袋へのピンホール発生を抑制することができる。
【0056】
図1に示される本発明の積層剥離容器の一実施形態に係る積層剥離容器100においては、外殻10は、最外層11と最内層12とからなる積層体であり、外殻10の最内層12は、環状オレフィン系重合体を含有する環状ポリオレフィン層となっている。
【0057】
(環状ポリオレフィン層の組成)
環状ポリオレフィン層における環状オレフィン系重合体の含有率は、10質量%以上100質量%以下であることが好ましく、30質量%以上70質量%以下であることが更に好ましい。
【0058】
環状オレフィン系重合体の含有率が上記の範囲内であれば、本発明の積層剥離容器の外殻に十分な水蒸気バリア性を付与することができ、内袋に充填された内容物の酸化劣化を、高いレベルで抑制することができる。
【0059】
本発明の積層剥離容器において、環状ポリオレフィン層を構成し、環状オレフィン系重合体とブレンドされて用いられる樹脂等としては、ブロー成形が可能であり、復元自在な可撓性を有するものであれば、特に限定されるものではない。例えば、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、中密度ポリエチレン樹脂(MDPE)、高密度ポリエチレン樹脂(HDPE)、ポリプロピレン樹脂(PP)、エチレン-プロピレン共重合体等のポリオレフィン樹脂等が挙げられる。なお、本発明の環状ポリオレフィン層において、環状オレフィン系重合体とブレンドされて用いられる樹脂等は、1種のみならず2種以上であってもよい。
【0060】
中では、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、中密度ポリエチレン樹脂(MDPE)、高密度ポリエチレン樹脂(HDPE)が好ましく、環状オレフィン系重合体との相溶性が高いことから、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)が特に好ましい。
【0061】
また、環状ポリオレフィン層には、必要に応じて、機能性等を付与するための添加剤等が配合されていてもよい。
【0062】
(その他の層)
本発明の積層剥離容器を構成する外殻が積層体である場合には、最内層となる環状ポリオレフィン層以外の層は、特に限定されるものではない。外殻を構成するその他の層としては、例えば、ブロー成形が可能であり、復元自在な可撓性を有する合成樹脂等からなる層や、層間に配置されて接着の役割を果たす接着層等が挙げられる。
【0063】
その材料としては、例えば、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、中密度ポリエチレン樹脂(MDPE)、高密度ポリエチレン樹脂(HDPE)、ポリプロピレン樹脂(PP)、エチレン-プロピレン共重合体等のポリオレフィン樹脂等が挙げられる。また、外殻を構成する環状ポリオレフィン層以外の層を構成する樹脂等は、1種のみならず、2種以上がブレンドされていてもよい。
【0064】
本発明の積層剥離容器を構成する環状ポリオレフィン層が、環状オレフィン系重合体と他の樹脂等とのブレンド層である場合には、外殻において環状ポリオレフィン層に隣接する層は、当該ブレンドされた樹脂等と同一か、同種のもので構成することが好ましい。当該構成とすることにより、外殻における環状ポリオレフィン層と隣接層との間の、層間剥離(デラミネーション)を抑制することができる。
【0065】
更に、環状ポリオレフィン層以外の層には、必要に応じて、機能性等を付与するための添加剤等が配合されていてもよい。
【0066】
<内袋>
本発明の積層剥離容器を構成する内袋は、積層体からなる。そして、内袋の最外層は、ナイロン樹脂を含むナイロン層であり、ナイロン層と隣接する層は、エチレン-ビニルアルコール共重合体を含有するEVOH層である。
【0067】
図1に示される本発明の積層剥離容器の一実施形態に係る積層剥離容器100においては、内袋20は、最外層21、バリア層22、中間層23、及び最内層24からなる4層の積層体であり、内袋20の最外層21は、ナイロン樹脂を含むナイロン層であり、最外層21に隣接するバリア層22は、エチレン-ビニルアルコール共重合体を含有するEVOH層となっている。そして、EVOH層の内側に、中間層23、及び最内層24が積層配置されている。
【0068】
エチレン-ビニルアルコール共重合体(EVOH)は、優れた酸素バリア性を有することから、本発明の積層剥離容器においては、内袋のバリア層としてEVOH層を備えることにより、内袋に充填された内容物と酸素との接触を遮断することができ、内容物の酸化劣化を抑制することができる。
【0069】
また、本発明の積層剥離容器の内袋は、バリア層となるEVOH層の外側に、内袋の最外層としてナイロン樹脂を含むナイロン層を配置することを特徴とする。ナイロン樹脂は極性を有する樹脂であるため、隣接する層となる外殻の最内層となる環状ポリオレフィン層とは、積層剥離容器をブロー成形する際の相溶性が低くなる。このため、内袋の最外層がナイロン層であり、外殻の最外層が環状ポリオレフィン層であることにより、外殻と内袋との間の剥離性が高いものとなる。
【0070】
また、バリア層であるEVOH層の表面に、最外層としてナイロン層が隣接配置されていることで、EVOH層はナイロン層によって保護されている。このため、製造後に外殻から内袋を剥離する際にかかる張力や、使用時における内容物の減容に伴う内袋のシワが原因となる、EVOH層へのピンホールの発生を抑制することができる。その結果、EVOH層のバリア性を、維持することが可能となる。
【0071】
さらに、ナイロン樹脂は吸湿性を有する樹脂であることから、外殻を透過した僅かな水分についても、内袋の最外層にて吸収させることが可能となる。その結果、EVOH層が水分と接触することを回避することができ、EVOH層のバリア性を高いレベルで維持することが可能となる。
【0072】
(ナイロン樹脂)
内袋の最外層となるナイロン層は、ナイロン樹脂を含む。ナイロン樹脂は、アミド結合によってモノマーが結合した脂肪族骨格を含むポリアミドであり、本発明においては、ωアミノ酸の重縮合反応で合成されたものであっても、ジアミンとジカルボン酸の共縮重合反応で合成されたものであっても、いずれであってもよい。
【0073】
(ナイロン層の配置)
本発明の積層剥離容器の内袋において、ナイロン層は、最外層に配置される。そして、ナイロン層と隣接するように、後記するEVOH層が配置される。
【0074】
本発明においては、ナイロン層が内袋の最外層に配置されることで、EVOH層へのピンホール発生を抑制することができる。
【0075】
また、ナイロン樹脂が有する吸湿性により、積層剥離容器の外側から外殻と内袋との間の空気層に水分が侵入した場合であっても、当該水分を吸収することができる。
【0076】
(エチレン-ビニルアルコール共重合体(EVOH))
内袋のバリア層となるEVOH層は、エチレン-ビニルアルコール共重合体(EVOH)を含む。エチレン-ビニルアルコール共重合体(EVOH)は、エチレンと酢酸ビニルとの共重合体の加水分解により得られる樹脂である。
【0077】
本発明に用いうるエチレン-ビニルアルコール共重合体(EVOH)は、酸素バリア性を確保する観点から、エチレン含量が、例えば、27モル%以上、30モル%以上、33モル%以上、34モル%以上、35モル%以上、又は36モル%以上であってよく、一方で、を成形する際の製膜性(成形性)、及び得られる内袋の柔軟性を確保する観点から、例えば、50モル%以下、48モル%以下、46モル%以下、45モル%以下、44モル%以下、43モル%以下、42モル%以下、又は40%以下であってよい。エチレン-ビニルアルコール共重合体のエチレン含量は、典型的には、27モル%以上50モル%以下であることが好ましく、33モル%以上46モル%以下であることが更に好ましく、又は35モル%以上42モル%以下であることが特に好ましい。
【0078】
(EVOH層の配置)
本発明の積層剥離容器において、EVOH層は、内袋の最外層となるナイロン層と隣接するように配置される。すなわち、本発明の内袋においては、EVOH層は外表面には露出しておらず、ナイロン層によって保護されている。
【0079】
内袋は、積層体となっているが、2層の積層体である場合には、内袋の最外層となるナイロン層と、それに隣接するように配置されるEVOH層のみで、内袋が形成されることとなり、EVOH層は内袋の最内層となる。内袋が3層以上の積層体となる場合には、EVOH層の内側に他の層が積層される。
【0080】
(EVOH層の組成)
EVOH層におけるEVOHの含有率は、10質量%以上100質量%以下であることが好ましく、70質量%以上100質量%以下であることが更に好ましい。
【0081】
EVOH層におけるEVOHの含有率が上記の範囲内であれば、本発明の積層剥離容器の内袋に十分な酸素バリア性を付与することができ、内袋に充填された内容物の酸化劣化を抑制することができる。
【0082】
本発明の積層剥離容器において、EVOH層を構成し、EVOHとブレンドされて用いられる樹脂等としては、ブロー成形が可能であり、薄く設計することで減容変形が自在となるものであれば、特に限定されるものではない。例えば、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、中密度ポリエチレン樹脂(MDPE)、高密度ポリエチレン樹脂(HDPE)、ポリプロピレン樹脂(PP)、エチレン-プロピレン共重合体等のポリオレフィン樹脂や、ナイロン等のポリアミド樹脂等が挙げられる。なお、本発明のEVOH層において、EVOHとブレンドされて用いられる樹脂等は、1種のみならず2種以上であってもよい。
【0083】
中では、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、中密度ポリエチレン樹脂(MDPE)、高密度ポリエチレン樹脂(HDPE)が好ましく、EVOHとの相溶性が高いことから、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)が特に好ましい。
【0084】
また、EVOH層には、必要に応じて、機能性等を付与するための添加剤等が配合されていてもよい。
【0085】
(その他の層)
本発明の積層剥離容器の内袋となる積層体は、最外層がナイロン層であり、ナイロン層に隣接する層がEVOH層となっていれば、その他の層は特に限定されるものではない。内袋を構成するその他の層としては、例えば、ブロー成形が可能であり、薄く設計することで減容変形が自在となる合成樹脂等からなる層や、層間に配置されて接着の役割を果たす接着層等が挙げられる。
【0086】
その材料としては、例えば、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、中密度ポリエチレン樹脂(MDPE)、高密度ポリエチレン樹脂(HDPE)、ポリプロピレン樹脂(PP)、エチレン-プロピレン共重合体等のポリオレフィン樹脂等が挙げられる。
【0087】
また、内袋には、最外層となるナイロン層以外に、ナイロン樹脂を材料とする第2のナイロン層が存在していてもよいし、最外層のナイロン層に隣接するEVOH層以外に、EVOHを材料とする第2のEVOH層が存在していてもよい。
【0088】
なお、その他の層を構成する材料は、1種のみならず、2種以上がブレンドされたものであってもよい。更に、内袋を構成するその他の層には、必要に応じて、機能性等を付与するための添加剤等が配合されていてもよい。
【0089】
本発明の積層剥離容器を構成する内袋においては、内容物を充填する空間を形成する最内層として、耐内容物性を有する樹脂が用いられることが好ましい。耐内容物性を有する樹脂としては、例えば、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)等が挙げられる。
【0090】
《積層剥離容器の製造方法》
本発明の積層剥離容器の製造方法は、特に限定されるものではなく、積層容器を形成することのできる方法であればよい。なかでは、外殻と内袋との一体成形が可能となることから、本発明の積層剥離容器は、ブロー成形により製造されることが好ましい。
【0091】
ブロー成形により積層剥離容器を製造する方法としては、特に限定されるものではない。例えば、以下の方法で、本発明の積層剥離容器を製造することができる。
【0092】
積層剥離容器の外殻及び内袋となる積層体の各層を構成する、樹脂又は樹脂組成物を準備する。準備した樹脂又は樹脂組成物を溶融し、外殻の最外層から内袋の最内層までが順番に配置された溶融状態の積層パリソンを押出成形する。続いて、溶融状態の積層パリソンをブロー成形用の分割金型にセットし、分割金型を閉じ、積層剥離容器本体の口部となる開口部にブローノズルを挿入する。型締めを行った状態で、分割金型のキャビティー内にエアーを吹き込み、外殻と内袋とが積層されたブロー成形品を成形する。成形後、分割金型を開いて、ブロー成形品を取り出す。
【0093】
本発明の積層剥離容器は、例えば上記のブロー成形で製造した状態そのままの、外殻及び内袋が剥離されておらず接触した状態の容器であってもよいし、使用時に内袋が外殻から剥離しやすい状態にしておく目的で、製造後、外殻と内袋との間に空気を挿入する操作を実施して、外殻と内袋との間に空気層を形成した状態の容器であってもよい。
【0094】
《積層剥離容器の内容物》
本発明の積層剥離容器に充填される内容物は、ジェルやゲル、更にはペースト等を含む液体物であれば、特に限定されるものではない。液状物としては、例えば、医薬品、医薬部外品、化粧品、洗剤、食品、塗料等が挙げられる。
【0095】
医薬品及び医薬部外品としては、例えば、注射薬、点滴薬、輸液薬、灌流薬、煎剤等が挙げられる。化粧品としては、例えば、シャンプー、コンディショナー、整髪料(例えば、ヘアウォーター、ヘアリキッド、グリース等)等が挙げられる。洗剤としては、例えば、中性洗剤、アルカリ性洗剤、及び酸性洗剤が挙げられる。食品としては、例えば、飲料、食用油、スープ、クリーム、液体調味料(例えば、醤油、酢、麺つゆ、割下、みりん、ウスターソース、ケチャップ、タバスコ、甘味料等)等が挙げられる。塗料としては、例えば、ペンキ、ニス、オイルステイン等が挙げられる。
【0096】
なお、本発明においては、ジェル状やゲル状、又はペースト状の内容物であってもよい。ジェル状やゲル状、又はペースト状の内容物としては、例えば、歯磨き粉、ワサビ、ゼリー、ジャム、味噌等が挙げられる。
【0097】
《内容物入り積層剥離容器》
本発明の内容物入り積層剥離容器は、本発明の積層剥離容器と、積層剥離容器を構成する内袋に充填された内容物と、を含む。
【実施例】
【0098】
以下、実施例及び比較例等により、本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0099】
<参考例1~6>
表1に示す材料及び厚みにて、外層と内層の2層の積層体からなる外殻を設計し、それぞれの水蒸気透過度について、理論値を算出した。結果を、表1に示す。なお、外層は、直鎖状低密度ポリエチレン(エボリュー(登録商標)SP2320、三井化学株式会社)とし、内層は、環状オレフィン共重合体(COC)(TOPAS(登録商標)8007F-600、ポリプラスチック株式会社)と、直鎖状低密度ポリエチレン(エボリュー(登録商標)SP2320、三井化学株式会社)とからなる、組成を異ならせた環状ポリオレフィン層とした。
【0100】
<参考例7>
表1に示す材料及び厚みにて、外層の1層のみからなる外殻を設計し、水蒸気透過度の理論値を算出した。結果を、表1に示す。用いた樹脂は、直鎖状低密度ポリエチレン(エボリュー(登録商標)SP2320、三井化学株式会社)である。
【0101】
【0102】
参考例1~7より、外殻を構成する積層体層の1層を、環状オレフィン共重合体(COC)を含む環状オレフィン層とすれば、水蒸気透過度が低くなり、ボトル内部に侵入する水分量を抑制できことが判る。
【0103】
<実施例1>
外層が、直鎖状低密度ポリエチレン(ミラソン(登録商標)B319、三井ダウポリケミカル株式会社)であり、内層が、環状オレフィン共重合体(COC)(TOPAS(登録商標)8007F-600、ポリプラスチック株式会社)と直鎖状低密度ポリエチレン(ハーモレックス(登録商標)NF325N、日本ポリエチレン株式会社)とからなる環状ポリオレフィン層である、2層からなる積層体の外殻と、最外層がナイロン樹脂(1022B、宇部興産株式会社)からなる層であり、バリア層がエチレン-ビニルアルコール共重合体(EVOH)(エバール(登録商標)F171B、株式会社クラレ)からなる層であり、中間層が接着層となる変性ポリオレフィン(アドマー(登録商標)NB508、三井化学株式会社)からなる層であり、最内層が直鎖状低密度ポリエチレン(ミラソン(登録商標)401PC、三井ダウポリケミカル株式会社)である、4層からなる積層体の内袋と、が積層された構成となるように、6層の溶融パリソンを作製した。続いて、ブロー成型機にて、高さが約150mm、直径が約40mm、内容積が約140mLとなる円筒形のボトルを成形した。なお、表2に示す各層の厚みは、ボトルの胴部分について、12箇所を測定した平均値である。
【0104】
<比較例1>
内袋に、ナイロン樹脂(1022B、宇部興産株式会社)からなる層を形成せず、エチレン-ビニルアルコール共重合体(EVOH)(エバール(登録商標)F171B、株式会社クラレ)からなるバリア層が最外層となる3層からなる内袋とした以外は、実施例1と同様にして、内容積が約140mLとなるボトルを成形した。
【0105】
<耐屈曲性試験>
ゲルボフレックステスター(恒温槽付きゲルボフレックステスターBE-1006、テスター産業株式会社)を用いて、ASTM F392に準拠した耐屈曲性試験を行った。試験環境は、23℃、50%RHとした。
【0106】
作製した各ボトルの内袋から、12cm×12cmの大きさのサンプルを切り出し、210mm×290mm×12μmのPETフィルムに貼り合わせて、試験サンプルを作製した。続いて、177.8mmの間隔を空けて配置された一対のマンドレル(直径90mm)に、試験サンプルの長辺を巻き付けることによって、サンプルの両端を一対のマンドレルA及びBに固定した。
【0107】
次に、マンドレルAを固定したまま、マンドレルBを捻りながら徐々に近づけていき、捻り角度が440度で水平移動距離が8.89cmになった時点で、捻りを停止した。その後、マンドレルBの水平移動を継続して、捻りを停止した後の水平移動距離が6.35cmになった時点で、水平移動を停止した。その後、上記の操作と逆の操作を実施して、マンドレルBを最初の状態に復帰させた。この操作を1サイクルとして500サイクル繰り返し、500サイクル実施後のクラックの個数を調べた。結果を表2に示す。
【0108】
【符号の説明】
【0109】
100、200、300 積層剥離容器
10、210、310 外殻
11、211、311 最外層
12、212、312 最内層
20、220、320 内袋
21、221、321 最外層
22、322 バリア層
23、222、323 中間層
24、223、324 最内層
230 ピンホール