(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-07
(45)【発行日】2023-12-15
(54)【発明の名称】地熱タービン
(51)【国際特許分類】
F01D 9/02 20060101AFI20231208BHJP
F03G 4/00 20060101ALI20231208BHJP
【FI】
F01D9/02 102
F03G4/00 531
F03G4/00 551
(21)【出願番号】P 2020122019
(22)【出願日】2020-07-16
【審査請求日】2023-05-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000785
【氏名又は名称】SSIP弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼田 亮
(72)【発明者】
【氏名】谷口 直
(72)【発明者】
【氏名】小野 恭代
【審査官】松浦 久夫
(56)【参考文献】
【文献】特開平7-279610(JP,A)
【文献】実開平4-119303(JP,U)
【文献】特開2015-31174(JP,A)
【文献】特開2018-127985(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2020/0018172(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01D 9/02
F03G 4/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロータシャフトと、
前記ロータシャフトを収容するケーシングと、
前記ケーシングの内側に支持された少なくとも1つの静翼段と、
前記少なくとも1つの静翼段の蒸気流路を通過する蒸気を冷却するための少なくとも1つの冷却管であって、前記少なくとも1つの静翼段のスロート部よりも上流側に配置され、且つ、少なくとも一部が前記蒸気流路に露出している少なくとも1つの冷却管と、を備える
地熱タービン。
【請求項2】
前記少なくとも1つの冷却管は、前記少なくとも1つの静翼段の内の最上流に配置された初段静翼の蒸気流路を通過する蒸気を冷却するように構成された
請求項1に記載の地熱タービン。
【請求項3】
前記少なくとも1つの静翼段は、圧力面および負圧面を含む複数の翼本体部を含み、
前記少なくとも1つの冷却管は、前記複数の翼本体部のうちの少なくとも1つの翼本体部の前縁に支持された、
請求項1又は2に記載の地熱タービン。
【請求項4】
前記少なくとも1つの冷却管は、前記ロータシャフトの周方向に沿って延在する周方向延在管を含み、
前記周方向延在管は、前記複数の翼本体部の前縁の外面に取り付けられた、
請求項3に記載の地熱タービン。
【請求項5】
前記少なくとも1つの冷却管は、前記ロータシャフトの周方向に沿って延在する周方向延在管を含み、
前記周方向延在管は、前記複数の翼本体部のうちの少なくとも1つの翼本体部の前縁に形成された第1凹部に嵌め込まれた、
請求項3に記載の地熱タービン。
【請求項6】
前記少なくとも1つの冷却管は、前記ロータシャフトの径方向に沿って延在する径方向延在管を含み、
前記径方向延在管は、前記複数の翼本体部の前縁の外面に取り付けられた、
請求項3に記載の地熱タービン。
【請求項7】
前記少なくとも1つの冷却管は、前記ロータシャフトの径方向に沿って延在する径方向延在管を含み、
前記径方向延在管は、前記複数の翼本体部の前縁に形成された、前記径方向に沿って延在する第2凹部に嵌め込まれた、
請求項3に記載の地熱タービン。
【請求項8】
前記少なくとも1つの静翼段は、
圧力面および負圧面を含む複数の翼本体部と、
前記複数の翼本体部の各々の外周部を支持する外輪と、
前記複数の翼本体部の各々の内周部を支持する内輪と、を含み、
前記少なくとも1つの冷却管は、前記ロータシャフトの周方向に沿って延在する周方向延在管を含み、
前記周方向延在管は、前記外輪または前記内輪の少なくとも一方に形成された、前記周方向に沿って延在する溝部に配置された、
請求項1又は2に記載の地熱タービン。
【請求項9】
前記少なくとも1つの静翼段は、圧力面および負圧面を含む複数の翼本体部を含み、
前記地熱タービンは、前記翼本体部に取り付けられたペルチェ素子であって、前記翼本体部を通過する蒸気から熱を吸熱する吸熱部と、前記吸熱部が吸熱した熱を前記翼本体部に放熱する放熱部と、を含むペルチェ素子、をさらに備える、
請求項1乃至8の何れか1項に記載の地熱タービン。
【請求項10】
前記ペルチェ素子は、前記翼本体部の前記負圧面における前記スロート部よりも上流側に取り付けられた、
請求項9に記載の地熱タービン。
【請求項11】
前記少なくとも1つの静翼段は、
圧力面および負圧面を含む複数の翼本体部と、
前記複数の翼本体部の各々の外周部を支持する外輪と、
前記複数の翼本体部の各々の内周部を支持する内輪と、を含み、
前記複数の翼本体部の各々は、前縁の翼高さよりも後縁の翼高さの方が大きく形成されており、
前記外輪の内部には、前記周方向に沿って延在する少なくとも1つの外輪側冷却通路であって、前記ロータシャフトの軸方向において、少なくとも一部が前記翼本体部と重複する位置に配置される少なくとも1つの外輪側冷却通路を形成する外輪側冷却通路形成部が形成されており、
前記外輪側冷却通路形成部は、前記軸方向における下流端と前記ロータシャフトの軸線との距離R1が、前記軸方向における上流端と前記ロータシャフトの前記軸線との距離F1よりも大きい第1壁面を有する、
請求項1乃至10の何れか1項に記載の地熱タービン。
【請求項12】
前記少なくとも1つの静翼段は、
圧力面および負圧面を含む複数の翼本体部と、
前記複数の翼本体部の各々の外周部を支持する外輪と、
前記複数の翼本体部の各々の内周部を支持する内輪と、を含み、
前記複数の翼本体部の各々は、前縁の翼高さよりも後縁の翼高さの方が大きく形成されており、
前記内輪の内部には、前記周方向に沿って延在する少なくとも1つの内輪側冷却通路であって、前記ロータシャフトの軸方向において、少なくとも一部が前記翼本体部と重複する位置に配置される少なくとも1つの内輪側冷却通路を形成する内輪側冷却通路形成部が形成されており、
前記内輪側冷却通路形成部は、前記軸方向における下流端と前記ロータシャフトの軸線との距離R2が、前記軸方向における上流端と前記ロータシャフトの前記軸線との距離F2よりも小さい第2壁面を有する、
請求項1乃至11の何れか1項に記載の地熱タービン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、地熱タービンに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、地熱源(生産井)から得られた蒸気により地熱タービンを駆動して発電を行う地熱フラッシュ発電が利用されている。
【0003】
地熱源から噴出する高温の熱水は、カルシウムやシリカ等の物質を多く含むため、これらの物質がセパレータで除去しきれないミストとともに地熱タービンへ運ばれて地熱タービンの初段静翼に付着すると、初段静翼上に炭酸カルシウムや非晶質シリカなどのスケールが析出する。スケールが析出すると、初段静翼間の流路が狭くなり、地熱タービン(蒸気タービン)の性能低下を招く虞がある。
【0004】
特許文献1には、静翼段の翼本体部(プロファイル)の内部に冷却水通路を形成し、冷却水通路を流れる冷却水により、翼本体部を冷却して翼本体部の温度を下げることによって、スケールの付着を防止することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明者らの新たな知見によれば、翼本体部の壁面において発達する境界層を流れる蒸気を冷却することで、スケールの付着を効果的に抑制できる。なお、特許文献1のような、翼本体部(プロファイル)の内部に冷却水通路が形成された静翼段は、その構造が複雑なものになり、静翼段の製造費用の高額化を招く虞がある。
【0007】
上述した事情に鑑みて、本開示の少なくとも一実施形態の目的は、静翼段へのスケールの付着による蒸気流路の閉塞を抑制し、地熱タービンの効率低下を抑制できる地熱タービンを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示にかかる地熱タービンは、
ロータシャフトと、
前記ロータシャフトを収容するケーシングと、
前記ケーシングの内側に支持された少なくとも1つの静翼段と、
前記少なくとも1つの静翼段の蒸気流路を通過する蒸気を冷却するための少なくとも1つの冷却管であって、前記少なくとも1つの静翼段のスロート部よりも上流側に配置され、且つ、少なくとも一部が前記蒸気流路に露出している少なくとも1つの冷却管と、を備える。
【発明の効果】
【0009】
本開示の少なくとも一実施形態によれば、静翼段へのスケールの付着による蒸気流路の閉塞を抑制し、地熱タービンの効率低下を抑制できる地熱タービンが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本開示の一実施形態にかかる地熱タービンを備える地熱発電システムの構成の一例を概略的に示す概略構成図である。
【
図2】本開示の一実施形態にかかる地熱タービンの軸線に沿った断面を概略的に示す概略断面図である。
【
図3】第1の実施形態にかかる地熱タービンの初段静翼を軸方向における前方側から視た状態を概略的に示す概略図である。
【
図4】第1の実施形態にかかる地熱タービンの軸線に沿った断面を概略的に示す概略断面図である。
【
図5】第1の実施形態にかかる地熱タービンを説明するための説明図である。
【
図6】第1の実施形態の第1の変形例にかかる地熱タービンの軸線に沿った断面を概略的に示す概略断面図である。
【
図7】第1の実施形態の第1の変形例にかかる地熱タービンを説明するための説明図である。
【
図8】第1の実施形態の第2の変形例にかかる地熱タービンの軸線に沿った断面を概略的に示す概略断面図である。
【
図9】第1の実施形態の第2の変形例にかかる地熱タービンを説明するための説明図である。
【
図10】第2の実施形態にかかる地熱タービンの初段静翼を軸方向における前方側から視た状態を概略的に示す概略図である。
【
図11】第2の実施形態にかかる地熱タービンの軸線に沿った断面を概略的に示す概略断面図である。
【
図12】第2の実施形態にかかる地熱タービンを説明するための説明図である。
【
図13】第2の実施形態の第1の変形例にかかる地熱タービンを説明するための説明図である。
【
図14】第2の実施形態の第2の変形例にかかる地熱タービンの軸線に沿った断面を概略的に示す概略断面図である。
【
図15】第3の実施形態にかかる地熱タービンを説明するための説明図である。
【
図16】第4の実施形態にかかる地熱タービンの軸線に沿った断面を概略的に示す概略断面図である。
【
図17】第4の実施形態の変形例にかかる地熱タービンの軸線に沿った断面を概略的に示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、添付図面を参照して本開示の幾つかの実施形態について説明する。ただし、実施形態として記載されている又は図面に示されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は、本開示の範囲をこれに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。
例えば、「ある方向に」、「ある方向に沿って」、「平行」、「直交」、「中心」、「同心」或いは「同軸」等の相対的或いは絶対的な配置を表す表現は、厳密にそのような配置を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の角度や距離をもって相対的に変位している状態も表すものとする。
例えば、「同一」、「等しい」及び「均質」等の物事が等しい状態であることを表す表現は、厳密に等しい状態を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の差が存在している状態も表すものとする。
例えば、四角形状や円筒形状等の形状を表す表現は、幾何学的に厳密な意味での四角形状や円筒形状等の形状を表すのみならず、同じ効果が得られる範囲で、凹凸部や面取り部等を含む形状も表すものとする。
一方、一の構成要素を「備える」、「含む」、又は、「有する」という表現は、他の構成要素の存在を除外する排他的な表現ではない。
なお、同様の構成については同じ符号を付し説明を省略することがある。
【0012】
(地熱発電システム)
図1は、本開示の一実施形態にかかる地熱タービンを備える地熱発電システムの構成の一例を概略的に示す概略構成図である。
地熱発電システム10は、地下深部の熱源により高温高圧の熱水および蒸気を発生する生産井11と、生産井から得られた熱水と蒸気とを分離するセパレータ12と、セパレータ12において分離された熱水が戻される還元井13と、セパレータ12において分離された蒸気により駆動する地熱タービン(蒸気タービン)1と、地熱タービン1に接続された発電機14と、地熱タービン1を通過した蒸気を温水化する復水器15と、復水器15において生じた温水を冷却する冷却塔16と、を備える。
【0013】
(地熱タービン)
図2は、本開示の一実施形態にかかる地熱タービンの軸線に沿った断面を概略的に示す概略断面図である。
幾つかの実施形態にかかる地熱タービン1は、
図2に示されるように、ロータシャフト2と、ロータシャフト2を収容するケーシング3と、ケーシング3の内側に支持された少なくとも1つの静翼段4と、を少なくとも備える。図示される実施形態では、地熱タービン1は、ロータシャフト2の周りに設けられた少なくとも1つの動翼段5と、少なくとも1つの冷却管6と、をさらに備える。
【0014】
図示される実施形態では、少なくとも1つの静翼段4は、複数の静翼段4を含み、少なくとも1つの動翼段5は、複数の動翼段5を含む。複数の動翼段5の夫々は、ロータシャフト2の軸方向において、複数の静翼段4のうちの1つの静翼段4に対して、隙間を介して対向するように配置されている。
【0015】
以下、ロータシャフト2の軸方向X、すなわち地熱タービン1の軸方向(軸線LAの延在する方向、
図2中左右方向)、における初段の動翼段5(5A)に対して初段の静翼段4(4A)が位置する側(
図2中左側)を前方側XFと称し、上記前方側とは反対側(
図2中右側)を後方側XRと称することがある。例えば、初段の静翼段4Aは、初段の動翼段5Aよりも前方側(上流側)に配置されている。また、複数の静翼段4および複数の動翼段5を通過する蒸気は、軸方向における前方側から後方側に流れるため、上記前方側を上流側と称すことがあり、上記後方側を下流側と称すことがある。また、ロータシャフト2の径方向を単に径方向と称し、ロータシャフト2の周方向を単に周方向と称することがある。
【0016】
複数の静翼段4の夫々は、複数の翼本体部41と、複数の翼本体部41の各々の外周部を支持する外輪42と、複数の翼本体部41の各々の内周部を支持する内輪43と、を含む。
【0017】
ロータシャフト2は、不図示の軸受を介してケーシング3に回転可能に支持されており、軸線LA回りに回転可能となっている。図示される実施形態では、ロータシャフト2は、ロータシャフト2の軸線LAに沿って長手方向を有するシャフト部21と、シャフト部21の外面22から径方向における外側に円板状に突出する複数のディスク部23と、を含む。複数のディスク部23の夫々は、複数の動翼段5のうちの1つの動翼段5が外周に取り付けられる。
【0018】
ケーシング3は、複数の静翼段4のうちの1つの静翼段4の外輪42を各々が支持する複数の外輪支持部31を含む。複数の外輪支持部31や複数の静翼段4は、ロータシャフト2や複数の動翼段5の回転に連動せずに静止している。ケーシング3の内部には、初段静翼4A(初段静翼段)に蒸気を導入するための吸気室32が形成されている。吸気室32には、ケーシング3に形成された不図示の吸気口を通じて、上述したセパレータ12において分離された蒸気が導入される。吸気室32に導入された蒸気は、初段静翼4Aに軸方向における前方側から軸方向に沿って導かれる。ケーシング3の内部には、複数の静翼段4や複数の動翼段5を通過する蒸気が、軸方向における前方側から後方側に流れる蒸気流路44が形成されている。
【0019】
地熱タービン1は、軸方向における後方側に軸方向に沿って流れて複数の静翼段4および複数の動翼段5を通過する蒸気を作動流体とし、作動流体が有するエネルギーをロータシャフト2の回転エネルギーに変換するように構成されている。複数の静翼段4の夫々は、複数の翼本体部41がロータシャフト2の周方向に沿って互いに間隔を空けて配設されており、周方向において隣接する2つの翼本体部41の間に翼間流路44Aが形成されている。蒸気流路44は、翼間流路44Aを含む。複数の静翼段4の夫々は、蒸気が翼間流路44Aを通過する際に、蒸気を整流する。複数の動翼段5の夫々は、前段の静翼段4により整流された蒸気を受けて、蒸気から受ける力を回転力に変換し、ロータシャフト2を回転させる。ロータシャフト2の回転により、ロータシャフト2に機械的に接続された上述した発電機14が駆動して発電する。
【0020】
(冷却管)
図3は、第1の実施形態にかかる地熱タービンの初段静翼を軸方向における前方側から視た状態を概略的に示す概略図である。
図4は、第1の実施形態にかかる地熱タービンの軸線に沿った断面を概略的に示す概略断面図である。
図5は、第1の実施形態にかかる地熱タービンを説明するための説明図である。
図6は、第1の実施形態の第1の変形例にかかる地熱タービンの軸線に沿った断面を概略的に示す概略断面図である。
図7は、第1の実施形態の第1の変形例にかかる地熱タービンを説明するための説明図である。
図8は、第1の実施形態の第2の変形例にかかる地熱タービンの軸線に沿った断面を概略的に示す概略断面図である。
図9は、第1の実施形態の第2の変形例にかかる地熱タービンを説明するための説明図である。
【0021】
図10は、第2の実施形態にかかる地熱タービンの初段静翼を軸方向における前方側から視た状態を概略的に示す概略図である。
図11は、第2の実施形態にかかる地熱タービンの軸線に沿った断面を概略的に示す概略断面図である。
図12は、第2の実施形態にかかる地熱タービンを説明するための説明図である。
図13は、第2の実施形態の第1の変形例にかかる地熱タービンを説明するための説明図である。
図14は、第2の実施形態の第2の変形例にかかる地熱タービンの軸線に沿った断面を概略的に示す概略断面図である。
【0022】
幾つかの実施形態にかかる地熱タービン1は、
図2に示されるように、上述したロータシャフト2と、上述したケーシング3と、上述した少なくとも1つの静翼段4と、を備える。地熱タービン1は、
図2~
図14に示されるように、少なくとも1つの静翼段4の蒸気流路44を通過する蒸気を冷却するための少なくとも1つの冷却管6をさらに備える。少なくとも1つの冷却管6は、少なくとも1つの静翼段4のスロート部45よりも上流側に配置され、且つ、少なくとも一部が蒸気流路44に露出している。
【0023】
図5、
図7、
図9、
図12、
図13に示されるように、複数の翼本体部41の夫々は、前縁46と後縁47との間に延在する一面である圧力面48と、前縁46と後縁47との間に延在する他面である負圧面49と、を含む。圧力面48は、凹状に湾曲する面を含み、負圧面49は、凸状に湾曲する面を含む。周方向において互いに隣接する2つの翼本体部41のうちの、一方の翼本体部41の隣接側の圧力面48と、他方の翼本体部41の隣接側の負圧面49と、の間に上述した翼間流路44Aが形成されている。翼間流路44Aのうち、最も流路面積が小さい部分を、上述したスロート部45という。また、翼間流路44Aを蒸気が通過するため、翼本体部41の壁面40(圧力面48および負圧面49を含む)において、境界層BLが発達する。
【0024】
図示される実施形態では、例えば、
図3、
図10に示されるように、冷却管6は、蒸気を冷却するための冷却水が流通可能な冷却水流路60が内部に形成されている。地熱タービンは、
図3、
図10に示されるように、冷却水流路60に冷却水を導くための入口流路71が内部に形成された入口管72と、冷却水流路60から冷却水を排出するための出口流路73が内部に形成された出口管74と、をさらに備える。入口流路71は、その一方側に冷却水供給口75が接続され、その他方側に冷却水流路60が接続されている。出口流路73は、その一方側に冷却水排出口76が接続され、その他方側に冷却水流路60が接続されている。なお、他の幾つかの実施形態では、冷却管6は、冷却水以外の冷媒を流通させるように構成されていてもよい。また、入口流路71および出口流路73の冷却水流路60との接続形態は、図示例に限定されない。
【0025】
冷却水供給源77から冷却水供給口75に冷却水が供給される。冷却水供給口75を通じて入口流路71に送られた冷却水は、入口流路71、冷却水流路60および出口流路73を流れた後に、冷却水排出口76を通じてケーシング3の外部に排出される。冷却水流路60を流れる冷却水は、蒸気流路44を流れる蒸気よりも低温である。冷却水流路60を流れる冷却水に冷却管6を通じて、冷却管6に面する蒸気流路44を流れる蒸気の熱が伝達されることで、冷却管6に面する蒸気流路44を流れる蒸気が冷却される。
【0026】
上記の構成によれば、少なくとも1つの冷却管6は、静翼段4のスロート部45よりも上流側に配置され、且つ、少なくとも一部が蒸気流路44に露出している。このため、冷却管6によって、下流側において静翼段4の壁面40において発達する境界層BLに沿って流れる蒸気を、この蒸気の流れ方向における上流側(スロート部45よりも上流側)において冷却できる。冷却管6により冷却された蒸気は、境界層BLに沿って下流側に流れて、上記壁面40を冷却して上記壁面40の温度を下げる。上記壁面40の温度を下げることで、壁面40に付着した水分の蒸発を抑制して壁面40の湿潤状態を維持できるため、壁面40へのスケールの付着を抑制できる。静翼段4へのスケールの付着を抑制することで、蒸気流路44の閉塞を抑制できるため、地熱タービン1の効率低下を抑制できる。
【0027】
また、上記の構成によれば、静翼段4は、翼本体部41の内部に冷媒(例えば、冷却水)が流れる流路を有しないので、静翼段4の構造を簡単なものにでき、静翼段4を安価なものにすることができる。また、静翼段4は、翼本体部41の内部に冷媒が流れる流路を有しないので、上記流路に導入される冷媒が静翼段4とケーシング3(外輪支持部31)の接合部において漏洩するリスクがない。また、少なくとも1つの冷却管6は、静翼段4やケーシング3とは別部材であるため、静翼段4やケーシング3の熱変形の影響を受けにくい。
【0028】
幾つかの実施形態では、上述した少なくとも1つの冷却管6は、少なくとも1つの静翼段4のうちの最上流に配置された初段静翼4Aの蒸気流路44(翼間流路44A)を通過する蒸気を冷却するように構成されている。この場合には、初段静翼4Aは、蒸気流路44の上流側に位置するため、スケールが付着し易いが、この初段静翼4Aへのスケールの付着を抑制できる。
【0029】
幾つかの実施形態では、上述した少なくとも1つの静翼段4は、圧力面48および負圧面49を含む複数の翼本体部41を含む。
図4~
図7、
図11~
図14に示されるように、上述した少なくとも1つの冷却管6は、複数の翼本体部41のうちの少なくとも1つの翼本体部41の前縁46に支持されている。
【0030】
例えば
図5に示されるように、複数の翼本体部41のうちの1つの翼本体部41の、軸方向における前縁端461(前縁46)から後縁端471(後縁47)までの長さをLと定義し、軸方向における前縁端461(前縁46)から前縁46の下流端463までの長さをL1と定義する。図示される実施形態では、上記長さL1は、0.5Lよりも短い。好ましくは、上記長さL1は、0.4Lよりも短く、さらに好ましくは、上記長さL1は、0.3Lよりも短い。
【0031】
上記の構成によれば、冷却管6は、複数の翼本体部41のうちの少なくとも1つの翼本体部41の前縁46に支持されている。この場合には、冷却管6によって、下流側において上記境界層BLに沿って流れる蒸気を、上流側の翼本体部41の前縁46近傍において冷却できる。
【0032】
また、上記の構成によれば、冷却管6は、静翼段4の翼本体部41の前縁46に支持されているので、冷却管6を備える地熱タービン1は、冷却管6を支持するための部材を別途設ける必要がない簡単な構造であるため、冷却管6を備える地熱タービン1の高額化を抑制できる。
【0033】
幾つかの実施形態では、
図4、
図5に示されるように、上述した少なくとも1つの冷却管6は、ロータシャフト2の周方向に沿って延在する周方向延在管61を含み、周方向延在管61は、複数の翼本体部41の前縁46の外面462に取り付けられている。周方向延在管61は、溶接などにより前縁46の外面462取り付けられることで、前縁46に支持される。
【0034】
図示される実施形態では、周方向延在管61は、環状管61Aを含む。なお、環状管61Aは、ロータシャフト2の周方向の全周に亘り設けなくてもよく、周方向の一部が切り欠かれていてもよい。或る実施形態では、環状管61Aは、環状管61Aが配置された周方向角度の合計が300°以上になるように構成されている。
【0035】
上記の構成によれば、周方向延在管61により、周方向における周方向延在管61が延在する範囲に亘り、下流側において蒸気流路44を流れる蒸気を冷却でき、且つ静翼段4の壁面40へのスケールの付着を抑制できる。また、上記の構成によれば、周方向延在管61は、複数の翼本体部41の前縁46の外面462に取り付けられている。この場合には、静翼段4の翼本体部41の形状変更や追加工を要することなく周方向延在管61を設置できるため、周方向延在管61(冷却管6)の設置費用の高額化を抑制でき、ひいては地熱タービン1の高額化を抑制できる。
【0036】
幾つかの実施形態では、
図6、
図7に示されるように、上述した少なくとも1つの冷却管6は、ロータシャフト2の周方向に沿って延在する周方向延在管61を含み、周方向延在管61は、複数の翼本体部41のうちの少なくとも1つの翼本体部41の前縁46に形成された第1凹部91に嵌め込まれている。周方向延在管61は、第1凹部91に嵌め込まれることで、前縁46に支持される。
【0037】
図示される実施形態では、周方向延在管61は、上述した環状管61Aを含む。複数の翼本体部41の夫々の前縁46に第1凹部91が形成され、これらの第1凹部91に環状管61Aが嵌め込まれている。
【0038】
上記の構成によれば、周方向延在管61により、周方向における周方向延在管61が延在する範囲に亘り、下流側において蒸気流路44を流れる蒸気を冷却でき、且つ静翼段4の壁面40へのスケールの付着を抑制できる。また、上記の構成によれば、周方向延在管61は、翼本体部41の前縁46に形成された第1凹部91に嵌め込まれている。この場合には、静翼段4の翼本体部41に第1凹部91を設けることで、周方向延在管61を設置できるため、周方向延在管61(冷却管6)の設置費用の高額化を抑制でき、ひいては地熱タービン1の高額化を抑制できる。
【0039】
幾つかの実施形態では、
図8、
図9に示されるように、上述した少なくとも1つの冷却管6は、ロータシャフト2の周方向に沿って延在する周方向延在管61を含み、周方向延在管61は、複数の翼本体部41のうちの少なくとも1つの翼本体部41の圧力面48から負圧面49まで貫通する貫通孔92に嵌入されている。貫通孔92は、スロート部45よりも上流側に形成されている。周方向延在管61は、貫通孔92に嵌入されることで、翼本体部41に支持される。
【0040】
例えば
図4に示されるように、複数の翼本体部41のうちの1つの翼本体部41の、径方向における外輪42に接続される外輪側縁412から内輪43に接続される内輪側縁411までの最小翼高さをHと定義し、少なくとも1つの周方向延在管61の中心C1の内輪側縁411からの距離をH1と定義する。
【0041】
幾つかの実施形態では、少なくとも1つの周方向延在管61の上記距離H1は、0.6Hよりも大きい。好ましくは、上記距離H1は、0.7Hよりも大きい。さらに好ましくは、上記距離H1は、0.8Hよりも大きい。この場合には、周方向延在管61を静翼段4におけるスケールが付着し易い外輪42寄りに配置できるので、外輪42寄りも壁面40へのスケールの付着を抑制できる。これにより、蒸気流路44の閉塞を効果的に抑制できるため、地熱タービン1の効率低下を効果的に抑制できる。
【0042】
幾つかの実施形態では、少なくとも1つの周方向延在管61の上記距離H1は、0.4Hよりも小さい。好ましくは、上記距離H1は、0.3Hよりも小さい。さらに好ましくは、上記距離H1は、0.2Hよりも小さい。この場合には、周方向延在管61を静翼段4におけるスケールが付着し易い内輪43寄りに配置できるので、内輪43寄りの壁面40へのスケールの付着を抑制できる。これにより、蒸気流路44の閉塞を効果的に抑制できるため、地熱タービン1の効率低下を効果的に抑制できる。なお、蒸気流路44(翼間流路44A)の内輪43側を流れる蒸気の流速は、外輪42側を流れる蒸気の流速よりも遅いため、内輪43側の方が外輪42側に比べて、スケールが付着し易い傾向がある。
【0043】
幾つかの実施形態では、
図3、
図4、
図6、
図8に示されるように、上述した少なくとも1つの冷却管6は、複数の上述した環状管61Aを含む。複数の環状管61Aは、外側環状管61Bと、外側環状管61Bよりも径方向における内側に設けられた内側環状管61Cと、を含む。この場合には、外側環状管61Bおよび内側環状管61Cにより、径方向における内外に亘り、下流側において蒸気流路44を流れる蒸気を冷却でき、且つ静翼段4の壁面40へのスケールの付着を抑制できる。
【0044】
幾つかの実施形態では、
図10~
図12に示されるように、上述した少なくとも1つの冷却管6は、ロータシャフト2の径方向に沿って延在する径方向延在管62を含み、径方向延在管62は、複数の翼本体部41の前縁46の外面462に取り付けられている。径方向延在管62は、溶接などにより前縁46の外面462に取り付けられることで、前縁46に支持される。
【0045】
上記の構成によれば、径方向延在管62により、径方向における径方向延在管62が延在する範囲に亘り、下流側において蒸気流路44を流れる蒸気を冷却でき、且つ静翼段4の壁面40へのスケールの付着を抑制できる。また、径方向延在管62は、翼本体部41の前縁46の外面462に取り付けられる。この場合には、径方向延在管62が蒸気流路44を流れる蒸気の流れを阻害しないように配置されるので、冷却管6を設けることによる地熱タービン1の圧力損失の低下を抑制できる。
また、上記の構成によれば、径方向延在管62は、複数の翼本体部41の前縁46の外面462に取り付けられている。この場合には、静翼段4の翼本体部41の形状変更や追加工を要することなく径方向延在管62を設置できるため、径方向延在管62(冷却管6)の設置費用の高額化を抑制でき、ひいては地熱タービン1の高額化を抑制できる。
【0046】
幾つかの実施形態では、
図13に示されるように、上述した少なくとも1つの冷却管6は、ロータシャフト2の径方向に沿って延在する径方向延在管62を含み、径方向延在管62は、複数の翼本体部41の前縁46に形成された、径方向に沿って延在する第2凹部93に嵌め込まれた。
【0047】
上記の構成によれば、径方向延在管62により、径方向における径方向延在管62が延在する範囲に亘り、下流側において蒸気流路44を流れる蒸気を冷却でき、且つ静翼段4の壁面40へのスケールの付着を抑制できる。また、径方向延在管62は、翼本体部41の前縁46に形成された、径方向に沿って延在する第2凹部93に嵌め込まれている。この場合には、径方向延在管62が翼本体部41の前縁46の外面462に取り付けられる場合に比べて、径方向延在管62が蒸気流路44を流れる蒸気の流れを阻害しないように配置されるので、冷却管6を設けることによる地熱タービン1の圧力損失の低下を効果的に抑制できる。
また、上記の構成によれば、径方向延在管62は、翼本体部41の前縁46に形成された第2凹部93に嵌め込まれている。この場合には、静翼段4の翼本体部41に第2凹部93を設けることで、径方向延在管62を設置できるため、径方向延在管62(冷却管6)の設置費用の高額化を抑制でき、ひいては地熱タービン1の高額化を抑制できる。
【0048】
幾つかの実施形態では、
図10に示されるように、上述した少なくとも1つの冷却管6は、ロータシャフト2の径方向に沿って延在する複数の径方向延在管62と、複数の径方向延在管62のうちの周方向において互いに隣接する2つの径方向延在管62の径方向における内側の端部621同士を繋ぐ、ロータシャフト2の周方向に沿って延在する内側周方向延在管61D(61)と、複数の径方向延在管62のうちの周方向において互いに隣接する2つの径方向延在管62の径方向における外側の端部622同士を繋ぐ、ロータシャフト2の周方向に沿って延在する外側周方向延在管61E(61)と、を含む。外側周方向延在管61Eは、周方向において内側周方向延在管61Dとはずれた位置に設けられている。この場合には、冷却管6が軸方向における前方側から視て連続したU字配管になっているため、冷却管6の熱伸びを吸収することができる。これにより、冷却管6の熱による劣化を抑制できる。
【0049】
幾つかの実施形態では、
図14に示されるように、上述した少なくとも1つの静翼段4は、圧力面48および負圧面49を含む複数の翼本体部41と、複数の翼本体部41の各々の外周部を支持する外輪42と、複数の翼本体部41の各々の内周部を支持する内輪43と、を含む。上述した少なくとも1つの冷却管6は、ロータシャフト2の周方向に沿って延在する周方向延在管61を含み、周方向延在管61は、外輪42または内輪43の少なくとも一方に形成された、周方向に沿って延在する溝部94(外輪側溝部94A、内輪側溝部94B)に配置されている。なお、周方向延在管61は、溝部94内に挿入されていればよく、溝部94に嵌合していなくてもよい。また、周方向延在管61の少なくとも一部が溝部94よりも突出していても良いが、周方向延在管61は、溝部94よりも突出しない、すなわち、溝部94内に収容されることが好ましい。
【0050】
図示される実施形態では、
図14に示されるように、周方向延在管61は、上述した外側周方向延在管61Eと、上述した内側周方向延在管61Dと、を含む。外側周方向延在管61Eは、外輪42の翼本体部41に接続される面を含む壁面421に形成された外輪側溝部94Aに配置されている。内側周方向延在管61Dは、内輪43の翼本体部41に接続される面を含む壁面431に形成された内輪側溝部94Bに配置されている。
なお、他の幾つかの実施形態では、周方向延在管61は、上述した環状管61Aを含み、環状管61Aが外輪側溝部94Aおよび内輪側溝部94Bに配置されていてもよい。
【0051】
上記の構成によれば、周方向延在管61により、周方向における周方向延在管61が延在する範囲に亘り、下流側において蒸気流路44を流れる蒸気を冷却でき、且つ静翼段4の壁面40へのスケールの付着を抑制できる。周方向延在管61は、外輪42または内輪43の少なくとも一方に形成された、周方向に沿って延在する溝部94(外輪側溝部94A、内輪側溝部94B)に配置されているので、下流側において蒸気流路44の外輪42近傍又は内輪43近傍を流れる蒸気を冷却でき、静翼段4におけるスケールが付着し易い、外輪42寄り又は内輪43寄りの壁面40へのスケールの付着を抑制できる。これにより、蒸気流路44の閉塞を効果的に抑制できるため、地熱タービン1の効率低下を効果的に抑制できる。
また、上記の構成によれば、周方向延在管61は、外輪42または内輪43の少なくとも一方に形成された、周方向に沿って延在する溝部94(外輪側溝部94A、内輪側溝部94B)に配置されている。この場合には、周方向延在管61が蒸気流路44を流れる蒸気の流れを阻害しないように配置されるので、冷却管6を設けることによる地熱タービン1の圧力損失の低下を抑制できる。
【0052】
(ペルチェ素子)
図15は、第3の実施形態にかかる地熱タービンを説明するための説明図である。
幾つかの実施形態にかかる地熱タービン1は、
図2に示されるように、上述したロータシャフト2と、上述したケーシング3と、上述した少なくとも1つの静翼段4と、を備える。
図15に示されるように、少なくとも1つの静翼段4は、圧力面48および負圧面49を含む複数の翼本体部41を含む。地熱タービン1は、
図15に示されるように、翼本体部41に取り付けられたペルチェ素子95であって、翼本体部41を通過する蒸気から熱を吸熱する吸熱部951と、吸熱部951が吸熱した熱を翼本体部41に放熱する放熱部952と、を含むペルチェ素子95、をさらに備える。なお、本実施形態は、上述した幾つかの実施形態と組み合わせてもよいし、独立して実施してもよい。
【0053】
図示される実施形態では、ペルチェ素子95は、初段静翼4Aに取り付けられている。ペルチェ素子95は、電力源96に電線97を介して電気的に接続されており、電力源96から電圧(直流電圧)を印可されるように構成されている。ペルチェ素子95は、電力源96から電圧が印可されることで、吸熱部951および放熱部952が動作する。
図15に示される実施形態では、ペルチェ素子95は、径方向に沿って長手方向を有している。
【0054】
上記の構成によれば、翼本体部41に取り付けられたペルチェ素子95は、翼本体部41を通過する蒸気から熱を吸熱する吸熱部951を含む。このため、吸熱部951によって、下流側において静翼段4付近で発生する境界層BLに沿って流れる蒸気を、上流側において冷却できる。吸熱部951により冷却された蒸気は、境界層BLに沿って下流側に流れて、静翼段4の壁面40を冷却して壁面40の温度を下げる。静翼段4の壁面40の温度を下げることで、壁面40に付着した水分の蒸発を抑制して壁面40の湿潤状態を維持できるため、壁面40へのスケールの付着を抑制できる。静翼段4へのスケールの付着を抑制することで、蒸気流路44の閉塞を抑制できるため、地熱タービン1の効率低下を抑制できる。
【0055】
また、上記の構成によれば、ペルチェ素子95は、吸熱部951が吸熱した熱を翼本体部41に放熱する放熱部952を含むので、放熱部952からの放熱により翼本体部41が加熱される。放熱部952により翼本体部41を加熱することで、翼本体部41の内部の温度低下を抑制できるため、地熱タービン1の熱損失を抑制できる。これにより、吸熱部951における吸熱による地熱タービン1の効率低下を抑制できる。なお、翼本体部41の後縁47側では、吸熱部951により冷却の方が放熱部952による加熱に比べて影響が大きいため、静翼段4の壁面40を充分に冷却できる。また、地熱タービン1は、上述した冷却管6や翼本体部41の内部に形成された冷媒(例えば、冷却水)が流れる流路などを備えていなくても、蒸気流路44を流れる蒸気を冷却できる。これにより、地熱タービン1は、上記冷媒の漏洩リスクがなく、地熱タービン1の構造を簡単なものにできるため、地熱タービン1や地熱タービン1を備える地熱発電システム10の設置場所の自由度を高めることができる。
【0056】
幾つかの実施形態では、
図15に示されるように、上述したペルチェ素子95は、翼本体部41の負圧面49におけるスロート部45よりも上流側に取り付けられる。
【0057】
本発明者らの知見によれば、負圧面49は、圧力面48に比べてスケールが付着し易い傾向がある。上記の構成によれば、ペルチェ素子95は、翼本体部41の負圧面49におけるスロート部45よりも上流側に取り付けられるので、負圧面49付近で発生する境界層BLに沿って流れる蒸気を上流側において冷却できる。これにより、スケールが付着し易い負圧面49へのスケールの付着を抑制できる。
【0058】
(外輪側冷却通路)
図16は、第4の実施形態にかかる地熱タービンの軸線に沿った断面を概略的に示す概略断面図である。
図17は、第4の実施形態の変形例にかかる地熱タービンの軸線に沿った断面を概略的に示す概略断面図である。
幾つかの実施形態にかかる地熱タービン1は、
図2に示されるように、上述したロータシャフト2と、上述したケーシング3と、上述した少なくとも1つの静翼段4と、を備える。少なくとも1つの静翼段4は、圧力面48および負圧面49を含む複数の翼本体部41と、複数の翼本体部41の各々の外周部を支持する外輪42と、複数の翼本体部41の各々の内周部を支持する内輪43と、を含む。
図16、
図17に示されるように、複数の翼本体部41の各々は、前縁46(前縁端461)の翼高さH2よりも後縁47(後縁端471)の翼高さH3の方が大きく形成されている。
【0059】
図16、
図17に示されるように、上述した外輪42の内部には、周方向に沿って延在する少なくとも1つの外輪側冷却通路100であって、ロータシャフト2の軸方向において、少なくとも一部が翼本体部41と重複する位置に配置される少なくとも1つの外輪側冷却通路100を形成する外輪側冷却通路形成部101が形成されており、外輪側冷却通路形成部101は、軸方向における下流端104とロータシャフト2の軸線LAとの距離R1が、軸方向における上流端103とロータシャフト2の軸線LAとの距離F1よりも大きい第1壁面102を有する。なお、本実施形態は、上述した幾つかの実施形態と組み合わせてもよいし、独立して実施してもよい。
【0060】
翼本体部41の外輪側縁412および内輪側縁411の夫々は、
図16に示されるように、ロータシャフト2の軸線LAに沿った断面において、直線状に形成されていてもよいし、
図17に示されるように、ロータシャフト2の軸線LAに沿った断面において、湾曲形状を有していてもよい。図示される実施形態では、外輪側冷却通路100は、初段静翼4Aの外輪42に形成されている。
【0061】
不図示であるが、外輪側冷却通路100は、
図3、
図10に示されるような、入口流路71および出口流路73が接続されており、入口流路71から導入された冷却水が外輪側冷却通路100を流れた後に、出口流路73に排出されるようになっている。外輪側冷却通路100を流れる冷却水は、蒸気流路44を流れる蒸気よりも低温である。外輪側冷却通路100を流れる冷却水に外輪側冷却通路形成部101(外輪42)を通じて、蒸気流路44を流れる蒸気の熱が伝達されることで、蒸気流路44を流れる蒸気が冷却される。
【0062】
上記の構成によれば、少なくとも1つの外輪側冷却通路100は、ロータシャフト2の軸方向において、少なくとも一部が翼本体部41と重複する位置に配置される。少なくとも1つの外輪側冷却通路100を形成する外輪側冷却通路形成部101は、軸方向における下流端104とロータシャフト2の軸線LAとの距離R1が、軸方向における上流端103とロータシャフト2の軸線LAとの距離F1よりも大きい第1壁面102を有する。この場合には、外輪側冷却通路100を蒸気流路44の近くに設けることができるため、外輪側冷却通路100により、下流側において蒸気流路44の外輪42近傍を流れる蒸気を冷却でき、静翼段4におけるスケールが付着し易い、外輪42寄りの壁面40へのスケールの付着を抑制できる。これにより、蒸気流路44の閉塞を効果的に抑制できるため、地熱タービン1の効率低下を効果的に抑制できる。
【0063】
(内輪側冷却通路)
幾つかの実施形態にかかる地熱タービン1は、
図2に示されるように、上述したロータシャフト2と、上述したケーシング3と、上述した少なくとも1つの静翼段4と、を備える。少なくとも1つの静翼段4は、圧力面48および負圧面49を含む複数の翼本体部41と、複数の翼本体部41の各々の外周部を支持する外輪42と、複数の翼本体部41の各々の内周部を支持する内輪43と、を含む。
図16、
図17に示されるように、複数の翼本体部41の各々は、前縁46(前縁端461)の翼高さH2よりも後縁47(後縁端471)の翼高さH3の方が大きく形成されている。
【0064】
図16、
図17に示されるように、上述した内輪43の内部には、周方向に沿って延在する少なくとも1つの内輪側冷却通路105であって、ロータシャフト2の軸方向において、少なくとも一部が翼本体部41と重複する位置に配置される少なくとも1つの内輪側冷却通路105を形成する内輪側冷却通路形成部106が形成されており、内輪側冷却通路形成部106は、軸方向における下流端109とロータシャフト2の軸線LAとの距離R2が、軸方向における上流端108とロータシャフト2の軸線LAとの距離F2よりも小さい第2壁面107を有する。図示される実施形態では、内輪側冷却通路105は、初段静翼4Aの内輪43に形成されている。
【0065】
なお、本実施形態は、上述した幾つかの実施形態と組み合わせてもよいし、独立して実施してもよい。或る実施形態では、
図16、
図17に示されるように、上述した少なくとも1つの静翼段4は、外輪42の内部に少なくとも1つの外輪側冷却通路100を形成する外輪側冷却通路形成部101が形成され、且つ内輪43の内部に少なくとも1つの内輪側冷却通路105を形成する内輪側冷却通路形成部106が形成されている。
【0066】
不図示であるが、内輪側冷却通路105は、
図3、
図10に示されるような、入口流路71および出口流路73が接続されており、入口流路71から導入された冷却水が内輪側冷却通路105を流れた後に、出口流路73に排出されるようになっている。内輪側冷却通路105を流れる冷却水は、蒸気流路44を流れる蒸気よりも低温である。内輪側冷却通路105を流れる冷却水に内輪側冷却通路形成部106(内輪43)を通じて、蒸気流路44を流れる蒸気の熱が伝達されることで、蒸気流路44を流れる蒸気が冷却される。
【0067】
上記の構成によれば、少なくとも1つの内輪側冷却通路105は、ロータシャフト2の軸方向において、少なくとも一部が翼本体部41と重複する位置に配置される。少なくとも1つの内輪側冷却通路105を形成する内輪側冷却通路形成部106は、軸方向における下流端109とロータシャフト2の軸線LAとの距離R2が、軸方向における上流端108とロータシャフト2の軸線LAとの距離F2よりも小さい第2壁面107を有する。この場合には、内輪側冷却通路105を蒸気流路44の近くに設けることができるため、内輪側冷却通路105により、下流側において蒸気流路44の内輪43近傍を流れる蒸気を冷却でき、静翼段4におけるスケールが付着し易い、内輪43寄りの壁面40へのスケールの付着を抑制できる。これにより、蒸気流路44の閉塞を効果的に抑制できるため、地熱タービン1の効率低下を効果的に抑制できる。
【0068】
上述した幾つかの実施形態では、上述した地熱タービン1は、静翼段4を通過する蒸気の流れがチョークするように構成されていることが好ましい。図示される実施形態では、地熱タービン1は、
図2に示されるように、設計流量において、静翼段4(初段静翼4A)に導入される蒸気の圧力P1(入口圧力)の、該静翼段4(初段静翼4A)を通過後の蒸気の圧力P2(出口圧力)に対する圧力比P1/P2が、臨界圧力比よりも大きくなるように構成されている。
【0069】
上記の構成によれば、地熱タービン1は、設計流量において、圧力比P1/P2が、臨界圧力比よりも大きくなるように構成されている。この場合には、設計流量において静翼段4を通過する蒸気の流れがチョークするため、スロート部45における境界層BLの発達が抑制される。スロート部45における境界層BLの発達が抑制されることで、スロート部45よりも上流側の構造物(冷却管6やペルチェ素子95)による境界層拡大による地熱タービン1の効率低下を招き難くなる。
【0070】
また、上記の構成によれば、地熱タービン1は、設計流量において、圧力比P1/P2が、臨界圧力比よりも大きくなるように構成されている。この場合には、
図16、
図17に示されるような、複数の翼本体部41の各々が、前縁46(前縁端461)の翼高さH2よりも後縁47(後縁端471)の翼高さH3の方が大きく形成されている場合であっても、蒸気流れの壁面40からの剥離や二次流れの拡大による地熱タービン1の性能低下が抑制される。
【0071】
本開示は上述した実施形態に限定されることはなく、上述した実施形態に変形を加えた形態や、これらの形態を適宜組み合わせた形態も含む。
【0072】
上述した幾つかの実施形態に記載の内容は、例えば以下のように把握されるものである。
【0073】
1)本開示の少なくとも一実施形態にかかる地熱タービン(1)は、
ロータシャフト(2)と、
前記ロータシャフトを収容するケーシング(3)と、
前記ケーシングの内側に支持された少なくとも1つの静翼段(4)と、
前記少なくとも1つの静翼段の蒸気流路(44)を通過する蒸気を冷却するための少なくとも1つの冷却管(6)であって、前記少なくとも1つの静翼段のスロート部(45)よりも上流側に配置され、且つ、少なくとも一部が前記蒸気流路に露出している少なくとも1つの冷却管(6)と、を備える。
【0074】
上記1)の構成によれば、少なくとも1つの冷却管は、静翼段のスロート部よりも上流側に配置され、且つ、少なくとも一部が蒸気流路に露出している。このため、冷却管によって、下流側において静翼段の壁面(40)において発達する境界層(BL)に沿って流れる蒸気を、この蒸気の流れ方向における上流側(スロート部よりも上流側)において冷却できる。冷却管により冷却された蒸気は、境界層に沿って下流側に流れて、静翼段の壁面を冷却して壁面の温度を下げる。静翼段の壁面の温度を下げることで、壁面に付着した水分の蒸発を抑制して壁面の湿潤状態を維持できるため、壁面へのスケールの付着を抑制できる。静翼段へのスケールの付着を抑制することで、蒸気流路の閉塞を抑制できるため、地熱タービンの効率低下を抑制できる。
【0075】
また、上記1)の構成によれば、静翼段は、翼本体部の内部に冷媒(例えば、冷却水)が流れる流路を有しないので、静翼段の構造を簡単なものにでき、静翼段を安価なものにすることができる。また、静翼段は、翼本体部の内部に冷媒が流れる流路を有しないので、上記流路に導入される冷媒が静翼段とケーシングの接合部において漏洩するリスクがない。また、少なくとも1つの冷却管は、静翼段やケーシングとは別部材であるため、静翼段やケーシングの熱変形の影響を受けにくい。
【0076】
2)幾つかの実施形態では、上記1)に記載の地熱タービン(1)であって、
前記少なくとも1つの冷却管(6)は、前記少なくとも1つの静翼段(4)の内の最上流に配置された初段静翼(4A)の蒸気流路(44)を通過する蒸気を冷却するように構成された。
【0077】
上記2)の構成によれば、初段静翼は、蒸気流路の上流側に位置するため、スケールが付着し易いが、この初段静翼へのスケールの付着を抑制できる。
【0078】
3)幾つかの実施形態では、上記1)又は2)に記載の地熱タービン(2)であって、
前記少なくとも1つの静翼段(4)は、圧力面(48)および負圧面(49)を含む複数の翼本体部(41)を含み、
前記少なくとも1つの冷却管(6)は、前記複数の翼本体部のうちの少なくとも1つの翼本体部の前縁(47)に支持された。
【0079】
上記3)の構成によれば、冷却管は、複数の翼本体部のうちの少なくとも1つの翼本体部の前縁に支持されている。この場合には、冷却管によって、下流側において上記境界層に沿って流れる蒸気を、上流側の翼本体部の前縁近傍において冷却できる。
また、上記3)の構成によれば、冷却管は、静翼段の翼本体部の前縁に支持されているので、冷却管を備える地熱タービンは、冷却管を支持するための部材を別途設ける必要がない簡単な構造であるため、冷却管を備える地熱タービンの高額化を抑制できる。
【0080】
4)幾つかの実施形態では、上記3)に記載の地熱タービン(1)であって、
前記少なくとも1つの冷却管(6)は、前記ロータシャフト(2)の周方向に沿って延在する周方向延在管(61)を含み、
前記周方向延在管(61)は、前記複数の翼本体部(41)の前縁(46)の外面(462)に取り付けられた。
【0081】
上記4)の構成によれば、周方向延在管により、周方向における周方向延在管が延在する範囲に亘り、下流側において蒸気流路を流れる蒸気を冷却でき、且つ静翼段の壁面へのスケールの付着を抑制できる。
また、上記4)の構成によれば、周方向延在管は、複数の翼本体部の前縁の外面に取り付けられている。この場合には、静翼段の翼本体部の形状変更や追加工を要することなく周方向延在管を設置できるため、周方向延在管(冷却管)の設置費用の高額化を抑制でき、ひいては地熱タービンの高額化を抑制できる。
【0082】
5)幾つかの実施形態では、上記3)に記載の地熱タービン(1)であって、
前記少なくとも1つの冷却管(6)は、前記ロータシャフト(2)の周方向に沿って延在する周方向延在管(61)を含み、
前記周方向延在管(61)は、前記複数の翼本体部(41)のうちの少なくとも1つの翼本体部(41)の前縁(46)に形成された第1凹部(91)に嵌め込まれた。
【0083】
上記5)の構成によれば、周方向延在管により、周方向における周方向延在管が延在する範囲に亘り、下流側において蒸気流路を流れる蒸気を冷却でき、且つ静翼段の壁面へのスケールの付着を抑制できる。
また、上記5)の構成によれば、周方向延在管は、翼本体部の前縁に形成された第1凹部に嵌め込まれている。この場合には、静翼段の翼本体部に第1凹部を設けることで、周方向延在管を設置できるため、周方向延在管(冷却管)の設置費用の高額化を抑制でき、ひいては地熱タービンの高額化を抑制できる。
【0084】
6)幾つかの実施形態では、上記3)に記載の地熱タービン(1)であって、
前記少なくとも1つの冷却管(6)は、前記ロータシャフト(2)の径方向に沿って延在する径方向延在管(62)を含み、
前記径方向延在管(62)は、前記複数の翼本体部(41)の前縁(46)の外面(462)に取り付けられた。
【0085】
上記6)の構成によれば、径方向延在管により、径方向における径方向延在管が延在する範囲に亘り、下流側において蒸気流路を流れる蒸気を冷却でき、且つ静翼段の壁面へのスケールの付着を抑制できる。また、径方向延在管は、翼本体部の前縁の外面に取り付けられる。この場合には、径方向延在管が蒸気流路を流れる蒸気の流れを阻害しないように配置されるので、冷却管を設けることによる地熱タービンの圧力損失の低下を抑制できる。
また、上記6)の構成によれば、径方向延在管は、複数の翼本体部の前縁の外面に取り付けられている。この場合には、静翼段の翼本体部の形状変更や追加工を要することなく径方向延在管を設置できるため、径方向延在管(冷却管)の設置費用の高額化を抑制でき、ひいては地熱タービンの高額化を抑制できる。
【0086】
7)幾つかの実施形態では、上記3)に記載の地熱タービン(1)であって、
前記少なくとも1つの冷却管(6)は、前記ロータシャフト(2)の径方向に沿って延在する径方向延在管(62)を含み、
前記径方向延在管(62)は、前記複数の翼本体部(41)の前縁(46)に形成された、前記径方向に沿って延在する第2凹部(93)に嵌め込まれた。
【0087】
上記7)の構成によれば、径方向延在管により、径方向における径方向延在管が延在する範囲に亘り、下流側において蒸気流路を流れる蒸気を冷却でき、且つ静翼段の壁面へのスケールの付着を抑制できる。また、径方向延在管は、翼本体部の前縁に形成された、径方向に沿って延在する第2凹部に嵌め込まれている。この場合には、径方向延在管が翼本体部の前縁の外面に取り付けられる場合に比べて、径方向延在管が蒸気流路を流れる蒸気の流れを阻害しないように配置されるので、冷却管を設けることによる地熱タービンの圧力損失の低下を効果的に抑制できる。
また、上記7)の構成によれば、径方向延在管は、翼本体部の前縁に形成された第2凹部に嵌め込まれている。この場合には、静翼段の翼本体部に第2凹部を設けることで、径方向延在管を設置できるため、径方向延在管(冷却管)の設置費用の高額化を抑制でき、ひいては地熱タービンの高額化を抑制できる。
【0088】
8)幾つかの実施形態では、上記1)又は2)に記載の地熱タービン(1)であって、
前記少なくとも1つの静翼段(4)は、
圧力面(48)および負圧面(49)を含む複数の翼本体部(41)と、
前記複数の翼本体部(41)の各々の外周部を支持する外輪(42)と、
前記複数の翼本体部(41)の各々の内周部を支持する内輪(43)と、を含み、
前記少なくとも1つの冷却管(6)は、前記ロータシャフト(2)の周方向に沿って延在する周方向延在管(61)を含み、
前記周方向延在管(61)は、前記外輪(42)または前記内輪(43)の少なくとも一方に形成された、前記周方向に沿って延在する溝部(94、外輪側溝部94A、内輪側溝部94B)に配置された。
【0089】
上記8)の構成によれば、周方向延在管により、周方向における周方向延在管が延在する範囲に亘り、下流側において蒸気流路を流れる蒸気を冷却でき、且つ静翼段の壁面へのスケールの付着を抑制できる。周方向延在管は、外輪または内輪の少なくとも一方に形成された、周方向に沿って延在する溝部に配置されているので、下流側において蒸気流路の外輪近傍又は内輪近傍を流れる蒸気を冷却でき、静翼段におけるスケールが付着し易い、外輪寄り又は内輪寄りの壁面へのスケールの付着を抑制できる。これにより、蒸気流路の閉塞を効果的に抑制できるため、地熱タービンの効率低下を効果的に抑制できる。
また、上記8)の構成によれば、周方向延在管は、外輪または内輪の少なくとも一方に形成された、周方向に沿って延在する溝部に配置されている。この場合には、周方向延在管が蒸気流路を流れる蒸気の流れを阻害しないように配置されるので、冷却管を設けることによる地熱タービンの圧力損失の低下を抑制できる。
【0090】
9)幾つかの実施形態では、上記1)~8)の何れか1項に記載の地熱タービン(1)であって、
前記少なくとも1つの静翼段(4)は、圧力面(48)および負圧面(49)を含む複数の翼本体部(41)を含み、
前記地熱タービン(1)は、前記翼本体部(41)に取り付けられたペルチェ素子(95)であって、前記翼本体部(41)を通過する蒸気から熱を吸熱する吸熱部(951)と、前記吸熱部(951)が吸熱した熱を前記翼本体部(41)に放熱する放熱部(952)と、を含むペルチェ素子(95)、をさらに備える。
【0091】
上記9)の構成によれば、翼本体部に取り付けられたペルチェ素子は、翼本体部を通過する蒸気から熱を吸熱する吸熱部を含む。このため、吸熱部によって、下流側において静翼段付近で発生する境界層に沿って流れる蒸気を、上流側において冷却できる。吸熱部により冷却された蒸気は、境界層に沿って下流側に流れて、静翼段の壁面を冷却して壁面の温度を下げる。静翼段の壁面の温度を下げることで、壁面に付着した水分の蒸発を抑制して壁面の湿潤状態を維持できるため、壁面へのスケールの付着を抑制できる。静翼段へのスケールの付着を抑制することで、蒸気流路の閉塞を抑制できるため、地熱タービンの効率低下を抑制できる。
【0092】
また、上記9)の構成によれば、上記ペルチェ素子は、吸熱部が吸熱した熱を翼本体部に放熱する放熱部を含むので、放熱部からの放熱により翼本体部が加熱される。放熱部により翼本体部を加熱することで、翼本体部の内部の温度低下を抑制できるため、地熱タービンの熱損失を抑制できる。これにより、吸熱部における吸熱による地熱タービンの効率低下を抑制できる。なお、翼本体部の後縁側では、吸熱部により冷却の方が放熱部による加熱に比べて影響が大きいため、静翼段の壁面を充分に冷却できる。また、上記地熱タービンは、上述した冷却管や翼本体部の内部に形成された冷媒(例えば、冷却水)が流れる流路などを備えていなくても、蒸気流路を流れる蒸気を冷却できる。これにより、地熱タービンは、上記冷媒の漏洩リスクがなく、地熱タービンの構造を簡単なものにできるため、地熱タービンや地熱タービンを備える地熱発電プラントの設置場所の自由度を高めることができる。
【0093】
10)幾つかの実施形態では、上記9)に記載の地熱タービン(1)であって、
前記ペルチェ素子(95)は、前記翼本体部(41)の前記負圧面(49)における前記スロート部(45)よりも上流側に取り付けられた。
【0094】
本発明者らの知見によれば、負圧面は、正圧面に比べてスケールが付着し易い傾向がある。上記10)の構成によれば、ペルチェ素子は、翼本体部の負圧面におけるスロート部よりも上流側に取り付けられるので、負圧面付近で発生する境界層に沿って流れる蒸気を上流側において冷却できる。これにより、スケールが付着し易い負圧面へのスケールの付着を抑制できる。
【0095】
11)幾つかの実施形態では、上記1)~10)の何れか1項に記載の地熱タービン(1)であって、
前記少なくとも1つの静翼段(4)は、
圧力面(48)および負圧面(49)を含む複数の翼本体部(41)と、
前記複数の翼本体部(41)の各々の外周部を支持する外輪(42)と、
前記複数の翼本体部(41)の各々の内周部を支持する内輪(43)と、を含み、
前記複数の翼本体部(41)の各々は、前縁(46)の翼高さ(H2)よりも後縁(47)の翼高さ(H3)の方が大きく形成されており、
前記外輪(42)の内部には、前記周方向に沿って延在する少なくとも1つの外輪側冷却通路(100)であって、前記ロータシャフト(2)の軸方向において、少なくとも一部が前記翼本体部(41)と重複する位置に配置される少なくとも1つの外輪側冷却通路(100)を形成する外輪側冷却通路形成部(101)が形成されており、
前記外輪側冷却通路形成部(101)は、前記軸方向における下流端(104)と前記ロータシャフト(2)の軸線(LA)との距離R1が、前記軸方向における上流端(103)と前記ロータシャフト(2)の前記軸線(LA)との距離F1よりも大きい第1壁面(102)を有する。
【0096】
上記11)の構成によれば、少なくとも1つの外輪側冷却通路は、ロータシャフトの軸方向において、少なくとも一部が翼本体部と重複する位置に配置される。少なくとも1つの外輪側冷却通路を形成する外輪側冷却通路形成部は、軸方向における下流端とロータシャフトの軸線との距離R1が、軸方向における上流端とロータシャフトの軸線との距離F1よりも大きい第1壁面を有する。この場合には、外輪側冷却通路を蒸気流路の近くに設けることができるため、外輪側冷却通路により、下流側において蒸気流路の外輪近傍を流れる蒸気を冷却でき、静翼段におけるスケールが付着し易い、外輪寄りの壁面へのスケールの付着を抑制できる。これにより、蒸気流路の閉塞を効果的に抑制できるため、地熱タービンの効率低下を効果的に抑制できる。
【0097】
12)幾つかの実施形態では、上記1)~11)の何れか1項に記載の地熱タービン(1)であって、
前記少なくとも1つの静翼段(4)は、
圧力面(48)および負圧面(49)を含む複数の翼本体部(41)と、
前記複数の翼本体部(41)の各々の外周部を支持する外輪(42)と、
前記複数の翼本体部(41)の各々の内周部を支持する内輪(43)と、を含み、
前記複数の翼本体部(41)の各々は、前縁(46)の翼高さ(H2)よりも後縁(47)の翼高さ(H3)の方が大きく形成されており、
前記内輪(43)の内部には、前記周方向に沿って延在する少なくとも1つの内輪側冷却通路(105)であって、前記ロータシャフト(2)の軸方向において、少なくとも一部が前記翼本体部(41)と重複する位置に配置される少なくとも1つの内輪側冷却通路(105)を形成する内輪側冷却通路形成部(106)が形成されており、
前記内輪側冷却通路形成部(106)は、前記軸方向における下流端(109)と前記ロータシャフト(2)の軸線(LA)との距離R2が、前記軸方向における上流端(108)と前記ロータシャフト(2)の前記軸線(LA)との距離F2よりも小さい第2壁面(107)を有する。
【0098】
上記12)の構成によれば、少なくとも1つの内輪側冷却通路は、ロータシャフトの軸方向において、少なくとも一部が翼本体部と重複する位置に配置される。少なくとも1つの内輪側冷却通路を形成する内輪側冷却通路形成部は、軸方向における下流端とロータシャフトの軸線との距離R2が、軸方向における上流端とロータシャフトの軸線との距離F2よりも小さい第2壁面を有する。この場合には、内輪側冷却通路を蒸気流路の近くに設けることができるため、内輪側冷却通路により、下流側において蒸気流路の内輪近傍を流れる蒸気を冷却でき、静翼段におけるスケールが付着し易い、内輪寄りの壁面へのスケールの付着を抑制できる。これにより、蒸気流路の閉塞を効果的に抑制できるため、地熱タービンの効率低下を効果的に抑制できる。
【符号の説明】
【0099】
1 地熱タービン
2 ロータシャフト
21 シャフト部
22 外面
23 ディスク部
3 ケーシング
31 外輪支持部
32 吸気室
4 静翼段
4A 初段静翼
40 壁面
41 翼本体部
42 外輪
43 内輪
44 蒸気流路
44A 翼間流路
45 スロート部
46 前縁
47 後縁
48 圧力面
49 負圧面
5,5A 動翼段
6 冷却管
60 冷却水流路
61 周方向延在管
62 径方向延在管
10 地熱発電システム
11 生産井
12 セパレータ
13 還元井
14 発電機
15 復水器
16 冷却塔
71 入口流路
72 入口管
73 出口流路
74 出口管
75 冷却水供給口
76 冷却水排出口
77 冷却水供給源
91 第1凹部
92 貫通孔
93 第2凹部
94 溝部
94A 外輪側溝部
94B 内輪側溝部
95 ペルチェ素子
951 吸熱部
952 放熱部
96 電力源
97 電線
100 外輪側冷却通路
101 外輪側冷却通路形成部
102 第1壁面
105 内輪側冷却通路
106 内輪側冷却通路形成部
107 第2壁面
BL 境界層
LA 軸線
P1,P2 圧力
X 軸方向
XF (軸方向の)前方側
XR (軸方向の)後方側