(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-07
(45)【発行日】2023-12-15
(54)【発明の名称】ギヤモータ、ギヤモータのシリーズ
(51)【国際特許分類】
F16H 1/32 20060101AFI20231208BHJP
F16D 1/06 20060101ALI20231208BHJP
F16D 1/033 20060101ALI20231208BHJP
H02K 7/00 20060101ALI20231208BHJP
H02K 7/116 20060101ALI20231208BHJP
【FI】
F16H1/32 A
F16D1/06 244
F16D1/033
H02K7/00 A
H02K7/116
(21)【出願番号】P 2020128833
(22)【出願日】2020-07-30
【審査請求日】2023-03-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000002107
【氏名又は名称】住友重機械工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090033
【氏名又は名称】荒船 博司
(74)【代理人】
【識別番号】100093045
【氏名又は名称】荒船 良男
(72)【発明者】
【氏名】山本 章
(72)【発明者】
【氏名】田村 光拡
【審査官】畔津 圭介
(56)【参考文献】
【文献】特開平04-046242(JP,A)
【文献】特開2014-119110(JP,A)
【文献】実開昭62-161026(JP,U)
【文献】特開2001-187945(JP,A)
【文献】特開2019-173845(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 1/32
F16D 1/06
F16D 1/033
H02K 7/00
H02K 7/116
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ホロー構造の減速機入力軸を有する減速機とモータとを連結したギヤモータであって、
モータ出力軸と前記減速機入力軸とを連結するためのカップリング部材を有し、
前記モータ出力軸は、前記減速機入力軸のホロー部を貫通し、軸方向のうち前記モータが配置されたモータ側とは反対側の反モータ側で前記カップリング部材を介して前記減速機入力軸に連結され、
前記カップリング部材は、前記減速機入力軸の反モータ側の端面にボルトにより固定されるとともに、前記モータ出力軸を固定する固定手段を有する、
ギヤモータ。
【請求項2】
前記カップリング部材は、カップリング中空部を有し、
前記モータ出力軸は、前記カップリング中空部に挿通されて固定される、
請求項1に記載のギヤモータ。
【請求項3】
前記減速機は、外歯歯車と、前記外歯歯車のモータ側に配置される第1キャリヤと、前記外歯歯車の反モータ側に配置される第2キャリヤと、を有し、
前記減速機入力軸は、前記第1キャリヤに配置された第1軸受と、前記第2キャリヤに配置された第2軸受と、により支持される、
請求項1又は請求項2に記載のギヤモータ。
【請求項4】
前記減速機は、外歯歯車と、前記外歯歯車の反モータ側に配置される第2キャリヤと、を有し、
前記カップリング部材の少なくとも一部は、前記第2キャリヤの反モータ側の軸方向端面よりも反モータ側に位置している、
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のギヤモータ。
【請求項5】
前記第2キャリヤと前記減速機入力軸との間に配置されるシール部材を有する、
請求項3又は請求項4に記載のギヤモータ。
【請求項6】
ホロー構造の減速機入力軸を有する第1減速機とモータを連結した第1ギヤモータを有する第1シリーズと、
外径に対する前記減速機入力軸のホロー径の割合が前記第1減速機よりも小さい第2減速機とモータを連結した第2ギヤモータを有する第2シリーズと、
を含むギヤモータのシリーズであって、
前記第1シリーズは、外径の異なる複数の第1減速機の各々とモータを連結した複数の第1ギヤモータを含み、
前記第2シリーズは、外径の異なる複数の第2減速機の各々とモータを連結した複数の第2ギヤモータを含み、
前記第1ギヤモータは、前記モータのモータ出力軸が、前記減速機入力軸のホロー部を貫通し、軸方向のうち前記モータが配置されたモータ側とは反対側の反モータ側で第1カップリング部材を介して前記減速機入力軸に連結され、
前記第2ギヤモータは、前記モータのモータ出力軸が、前記減速機入力軸のホロー部を貫通し、軸方向のうち前記モータが配置されたモータ側とは反対側の反モータ側で第2カップリング部材を介して前記減速機入力軸に連結され、
前記第1カップリング部材及び前記第2カップリング部材は、前記減速機入力軸の反モータ側の端面にボルトにより固定されるとともに、前記モータ出力軸を固定する固定手段を有し、
前記第1カップリング部材および第2カップリング部材は、モータ出力軸と減速機入力軸を連結している状態における形状である最終形状と、最終形状に至る前の途中形状と、を有し、
特定の第1減速機とモータを連結する特定第1カップリング部材の途中形状と、前記特定の第1減速機よりも外径の大きい特定の第2減速機とモータを連結する特定第2カップリング部材の途中形状とが、同じである、
ギヤモータのシリーズ。
【請求項7】
前記特定第1カップリング部材及び前記特定第2カップリング部材は、
前記ボルトを挿通するボルト孔が設けられる前の途中形状が等しい、
請求項6に記載のギヤモータのシリーズ。
【請求項8】
前記特定第1カップリング部材及び前記特定第2カップリング部材は、
最終形状において、前記ボルト孔の数が異なる、
請求項7に記載のギヤモータのシリーズ。
【請求項9】
前記ボルト孔の数は、減速機の減速比に応じて異なる、
請求項8に記載のギヤモータのシリーズ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ギヤモータ及びそのシリーズに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、減速機とモータとを連結して構成されるギヤモータにおいては、一般に、減速機とモータがその軸方向の中間部分に配置されたカップリング部材で連結されていた(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、減速機とモータを単純にその中間に配置したカップリング部材で連結すると、全長が軸方向に長くなってしまう。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、減速機とモータを軸方向にコンパクトに連結することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、ホロー構造の減速機入力軸を有する減速機とモータとを連結したギヤモータであって、
モータ出力軸と前記減速機入力軸とを連結するためのカップリング部材を有し、
前記モータ出力軸は、前記減速機入力軸のホロー部を貫通し、軸方向のうち前記モータが配置されたモータ側とは反対側の反モータ側で前記カップリング部材を介して前記減速機入力軸に連結され、
前記カップリング部材は、前記減速機入力軸の反モータ側の端面にボルトにより固定されるとともに、前記モータ出力軸を固定する固定手段を有する構成とした。
【0006】
また、本発明は、
ホロー構造の減速機入力軸を有する第1減速機とモータを連結した第1ギヤモータを有する第1シリーズと、
外径に対する前記減速機入力軸のホロー径の割合が前記第1減速機よりも小さい第2減速機とモータを連結した第2ギヤモータを有する第2シリーズと、
を含むギヤモータのシリーズであって、
前記第1シリーズは、外径の異なる複数の第1減速機の各々とモータを連結した複数の第1ギヤモータを含み、
前記第2シリーズは、外径の異なる複数の第2減速機の各々とモータを連結した複数の第2ギヤモータを含み、
前記第1ギヤモータは、前記モータのモータ出力軸が、前記減速機入力軸のホロー部を貫通し、軸方向のうち前記モータが配置されたモータ側とは反対側の反モータ側で第1カップリング部材を介して前記減速機入力軸に連結され、
前記第2ギヤモータは、前記モータのモータ出力軸が、前記減速機入力軸のホロー部を貫通し、軸方向のうち前記モータが配置されたモータ側とは反対側の反モータ側で第2カップリング部材を介して前記減速機入力軸に連結され、
前記第1カップリング部材及び前記第2カップリング部材は、前記減速機入力軸の反モータ側の端面にボルトにより固定されるとともに、前記モータ出力軸を固定する固定手段を有し、
前記第1カップリング部材および第2カップリング部材は、モータ出力軸と減速機入力軸を連結している状態における形状である最終形状と、最終形状に至る前の途中形状と、を有し、
特定の第1減速機とモータを連結する特定第1カップリング部材の途中形状と、前記特定の第1減速機よりも外径の大きい特定の第2減速機とモータを連結する特定第2カップリング部材の途中形状とが、同じである構成とした。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、減速機とモータを軸方向にコンパクトに連結することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】実施形態に係る第1ギヤモータを示す断面図である。
【
図2】(a)実施形態に係る第1ギヤモータのカップリング部材を軸方向から見た図であり、(b)(a)のII-II線での断面図である。
【
図3】実施形態に係る第2ギヤモータを示す断面図である。
【
図4】実施形態に係るギヤモータのシリーズ体系の一例を示す図である。
【
図5】実施形態に係るギヤモータのシリーズ体系の他の例を示す図である。
【
図6】(a)実施形態に係る第2ギヤモータのカップリング部材を軸方向から見た図であり、(b)(a)のVI-VI線での断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0010】
本実施形態に係るギヤモータのシリーズは、第1減速機と第1モータを連結した第1ギヤモータを有する第1シリーズと、第2減速機と第2モータを連結した第2ギヤモータを有する第2シリーズと、を含むギヤモータの製品群である(
図4等参照)。第1減速機及び第2減速機は、いずれもホロー構造の入力軸を有する偏心揺動型減速装置であり、外径に対する入力軸のホロー径の割合が、第2減速機の方が第1減速機よりも小さい。
以下の説明では、第1シリーズに100番台の符号を、第2シリーズに200番台の符号を付して、これら両シリーズを識別するものとする。
【0011】
[第1ギヤモータの構成]
まず、本実施形態に係る第1ギヤモータ100の構成について説明する。
図1は、第1ギヤモータ100を示す断面図である。
この図に示すように、第1ギヤモータ100は、第1減速機110と第1モータ140とが、第1カップリング部材150で連結されて構成される。
【0012】
第1減速機110は、出力軸112、減速部113、並びに、これらの周囲を覆うハウジング(ケーシング)115を備える。出力軸112は、本発明に係る第2キャリヤの一例であり、被駆動部材Eに固定される。
なお、以下の説明では、回転軸Axに沿った方向を「軸方向」、回転軸Axに垂直な方向を「径方向」、回転軸Axを中心とする回転方向を「周方向」という。また、軸方向のうち、モータ140が配置される側(図中の右側)を「モータ側」といい、モータ側とは反対側(図中の左側)を「反モータ側」という。
【0013】
減速部113は、偏心体軸121と、偏心体軸121に設けられた複数(2個)の偏心体121a、121bと、偏心体121a、121bの回転により揺動する複数(2個)の外歯歯車122A、122Bとを備える。外歯歯車122A、122Bは、中心からオフセットされた位置に周方向に離間して設けられた複数の内ピン孔と、偏心体軸121を通す中央の貫通孔とを有する。
偏心体軸121は、ホロー構造(中空構造)を有する入力軸(減速機入力軸)である。偏心体軸121は、そのホロー部(孔部)121dにモータ140の出力軸144がモータ側から挿通され、反モータ側で第1カップリング部材150を介して当該出力軸144と連結される。偏心体軸121の反モータ側の端面には、第1カップリング部材150が締結される複数のネジ(雌ネジ)穴121eが形成されている。なお、
図1では、ホロー部121dが反モータ側の端部とそれ以外の部分とで段付き状に形成されているが、当該段付きを排除して一様なホロー径(内径)としてもよい。
【0014】
また、減速部113は、ハウジング115の内周部に設けられた内歯歯車115gと、外歯歯車122A、122Bの内ピン孔に通される内ピン112cと、内ピン112cのモータ側の一端を保持するキャリヤ体(第1キャリヤ)124とを備える。内歯歯車115gは、内歯となる複数の外ピン116を有し、外歯歯車122A、122Bと内接噛合する。内ピン112cは、外歯歯車122A、122Bの反モータ側に配置される出力軸112からピン状に膨出するように設けられ、外歯歯車122A、122Bのモータ側に配置されるキャリヤ体124と出力軸112とを連結する。
【0015】
さらに、減速部113は、偏心体軸用軸受126a、126bと、偏心体軸受127a、127bと、主軸受128a、128bとを備える。偏心体軸用軸受126aは偏心体軸121とキャリヤ体124との間に配置され、偏心体軸用軸受126bは偏心体軸121と出力軸112との間に配置されて、偏心体軸121を回転自在に支持する。偏心体軸121及びキャリヤ体124の間と、偏心体軸121及び出力軸112の間とには、潤滑剤を第1減速機110の内部に封入するオイルシール(シール部材)129a、129bが設けられている。偏心体軸受127a、127bは、偏心体121a、121bと外歯歯車122A、122Bとの間にそれぞれ配置されて、互いを相対回転可能にする。ハウジング115は、主軸受128a、128bを介してキャリヤ体124と出力軸112とを回転自在に支持する。
【0016】
第1モータ140は、第1減速機110のモータ側に配置されている。第1モータ140のハウジング141の反モータ側にはフランジ142が設けられ、当該フランジ142が第1減速機110のハウジング115に固定されている。
第1モータ140の出力軸(モータ出力軸)144は、偏心体軸121のホロー部121d内を軸方向に沿ってモータ側から反モータ側に挿通(貫通)され、反モータ側で第1カップリング部材150により偏心体軸121と連結されている。
【0017】
[カップリング部材]
図2(a)は、第1カップリング部材150を軸方向に見た図であり、
図2(b)は、(a)のII-II線での断面図である。
図2(a)、(b)に示すように、第1カップリング部材150は、軸方向に沿った中空部を有する略円筒状に形成され、フランジ部151と、クランプ部152とを有する。
【0018】
フランジ部151は、略円環状に形成されている。
フランジ部151の内径側部分には、モータ側に突出する突出部151aが設けられている。突出部151aの外周面は、第1減速機110の偏心体軸121の内周面に嵌合するインローとなっている。フランジ部151の径方向中間部分には、軸方向に貫通する複数の貫通孔(ボルト孔)151bが周上等配で形成されている。なお、貫通孔151bの配置は等配でなくてもよい。
フランジ部151の突出部151aを第1減速機110の偏心体軸121に反モータ側から嵌合させ、フランジ部151の複数の貫通孔151bに挿通させた第1ボルト153を偏心体軸121のネジ穴121eに締結することにより、フランジ部151(第1カップリング部材150)と偏心体軸121(第1減速機110)とが固定される。
【0019】
クランプ部152は、フランジ部151と同芯の略円環状に形成され、フランジ部151の反モータ側に配置されている。クランプ部152の内径は、フランジ部151の内径よりも小さく、第1モータ140の出力軸144の外径に対応したサイズに形成されている。
クランプ部152のうち、当該クランプ部152を軸方向に見て略半分に分ける境界線Lよりも一方側(
図2(a)の右側)の部分は、フランジ部151と一体的な連結部152aとなっている。
一方、クランプ部152のうち、境界線Lよりも他方側(
図2(a)の左側)の部分は、フランジ部151との間に軸方向の隙間G1を有するとともに、境界線Lと略直交する径方向の隙間G2により二分された円弧状(部分円筒状)の2つのアーム部152bとなっている。これにより、各アーム部152bは、連結部152a側の基端部が固定され、隙間G2側の先端部が自由端となっている。2つのアーム部152bには、隙間G2を介して対向する先端部に、互いに対応する貫通孔152cとネジ穴152dとが形成されている。
【0020】
クランプ部152の内径側に第1モータ140の出力軸144をモータ側から挿通させた状態で、2つのアーム部152bの貫通孔152cとネジ穴152dに第2ボルト154を挿通して当該2つのアーム部152bを締結することにより、2つのアーム部152bで出力軸144をクランプするようにしてクランプ部152(第1カップリング部材150)と当該出力軸144とが固定される。
【0021】
このような構成により、第1カップリング部材150を介して第1減速機110の偏心体軸121と第1モータ140の出力軸144とが連結される。すなわち、第1カップリング部材150は、第1減速機110よりも反モータ側に配置されて、モータ側から偏心体軸121のホロー部121dに貫通された第1モータ140の出力軸144と偏心体軸121とを連結している。
これにより、減速機とモータとをその軸方向の中間に配置したカップリング部材で連結していた従来に比べ、減速機とモータを軸方向にコンパクトに連結できる。このとき、第1カップリング部材150や第1モータ140の出力軸144は第1減速機110よりも反モータ側に突出するものの、これらは第1減速機110の出力軸112に取り付けられる被駆動部材Eの内側に配置されるため(
図1参照)、実質的にコンパクト化を阻害しない。
なお、第1カップリング部材150は、その少なくとも一部が、第1減速機110の出力軸112の反モータ側の端面よりも反モータ側に位置していればよい。
【0022】
偏心体軸121と出力軸144とが第1カップリング部材150で連結されることにより、第1モータ140の回転出力が第1減速機110に入力される。
第1モータ140の出力軸144からトルクが入力されて偏心体軸121が回転すると、偏心体121a、121bが外歯歯車122A、122Bの内側で回転し、これにより外歯歯車122A、122Bが互いに異なる位相で揺動する。外歯歯車122A、122Bは、揺動により偏心体軸121の軸心から最も離れた外歯が内歯歯車115gと噛合し、この噛合位置は揺動に伴って周方向に変化する。具体的には、偏心体軸121が一回転するごとに、内歯歯車115gと外歯歯車122A、122Bとの噛合位置が周方向に一周する。外歯歯車122A、122Bと内歯歯車115gとには歯数差があり、内歯歯車115gとの噛合位置が一周するごとに外歯歯車122A、122Bは上記の歯数差分だけ自転する。この自転が、内ピン112cを介して出力軸112に伝達される。これにより、偏心体軸121の回転運動が減速され、出力軸112に連結された被駆動部材Eから取り出される。
【0023】
[第2ギヤモータの構成]
続いて、本実施形態に係る第2ギヤモータ200の構成について説明する。
図3は、第2ギヤモータ200を示す断面図である。
この図に示すように、第2ギヤモータ200は、第2減速機210と第2モータ240とが、第2カップリング部材250で連結されて構成される。
第2ギヤモータ200は、第2減速機210に関する以下の点が第1ギヤモータ100と異なり、それ以外の基本的な構造については第1ギヤモータ100と共通している。そこで、第2ギヤモータ200のうち、以下に述べる相違点を除き、第1ギヤモータ100と構造が共通する要素については、第1ギヤモータ100と百の位の数字のみを異ならせた(「2」にした)符号を付して詳細な説明を省略する。なお、第2モータ240は、第1モータ140と同じでも異なってもよい。
【0024】
第2減速機210は、第1減速機110と異なり、3個の偏心体221a、221b、221cと、3個の外歯歯車222A、222B、222Cと、3個の偏心体軸受227a、227b、227cとを備える。つまり、第2減速機210は、3列の歯車列で回転運動を伝えるので、当該歯車列が2列の第1減速機110よりも、大きなトルクを伝達できる。
【0025】
また、第2減速機210は、外径D21に対する偏心体軸221のホロー径D22の割合(D22/D21)が、第1減速機110の当該割合(D12/D11;
図1参照)よりも小さい。ここで、減速機(110、210)の外径(D11、D12)とは、減速機のケーシング(115、215)の最大外径(直径)のことである。本実施形態のように、偏心揺動型減速機の場合には、内歯歯車が設けられるケーシングの最大外径のことである。また、入力軸(121、221)のホロー径とは、ホロー部の最大内径(直径)のことである。
【0026】
[ギヤモータのシリーズ体系]
続いて、本実施形態に係るギヤモータのシリーズ体系について説明する。
図4は、本実施形態に係るギヤモータのシリーズ体系の一例を示す図である。
本実施形態に係るギヤモータのシリーズは、専ら減速機の特徴(枠番や減速比)に応じて体系立てられており、各減速機には当該特徴に対応したモータが適宜組み合わせられる。具体的には、
図4に示すように、本実施形態に係るギヤモータのシリーズは、複数の第1ギヤモータ100を含む第1シリーズS1と、複数の第2ギヤモータ200を含む第2シリーズS2とから構成される。
【0027】
第1シリーズS1及び第2シリーズS2の各々では、減速機の伝達トルクの大小に対応して設定される減速機の枠番が複数規定され、本実施形態では大中小の3つの枠番がラインナップされている。ここでは、便宜上、小枠番に「S」、中枠番に「M」、大枠番に「L」の識別符号を末尾に付して区別することとする。
【0028】
ここで、減速機の「枠番」とは、「同一の減速比で、減速機の出力トルク、ピークトルク、あるいは定格トルク等の各種伝達トルクの概念のうちのいずれか一つに着目したときの大小区分」を意味している。すなわち、減速比が同一ならば、着目した特定の伝達トルクの種類に関わらず、枠番の異なる減速機は、同じ傾向の大小関係があり、この傾向は減速機の大きさ(寸法)の大小関係とも一致している(大小関係の逆転はない)。
【0029】
なお、本実施形態においては、「ギヤモータのシリーズ」を、「同一の系列と謳われてラインナップされている減速機の一群であって、動力伝達に係る各部材の形状が基本的に相似形とされている減速機構を有し、伝達トルク(定格トルク、許容トルク等の概念を含む)及び減速比が互いに異なっている減速機の一群に、モータを組み合わせたもの」と捉えている。
【0030】
したがって、本実施形態では、減速機構の基本的構成自体が相似形となっていない減速機同士を含むギヤモータは、同一のシリーズに属するギヤモータの概念に含まない。
また、例えば、旧シリーズに属する減速機とその改良型の新シリーズに属する減速機のように、「同一の系列と謳われてラインナップされていない(経時的に別系列の)減速機同士を含むギヤモータ」は、本実施形態に係る同一のシリーズに属するギヤモータの概念に含まない。これは、旧シリーズと改良型の新シリーズの間においては、形状が同一または類似の部材が使用されることもあるが、シリーズ全体の伝達トルク増強等のために、シリーズに含まれる減速機に共通した構造上の改変が加えられるからである。
逆に、一部の減速機、例えば特定の枠番における特定の減速機だけ軸受の種類、オイルシールの種類、あるいはボルトの連結構造等が異なったり、他の一部の部材のみ形状が完全な相似形となっていなかったりすることがあるが、この場合は、「同一の系列と謳われてラインナップされている減速機の一群」である限り、本実施形態では、同一のシリーズの概念に含まれる。
【0031】
本実施形態に係るギヤモータのシリーズでは、第1シリーズS1のうち小枠番の第1ギヤモータ100Sの第1カップリング部材150Sと、第2シリーズS2のうち中枠番の第2ギヤモータ200Mの第2カップリング部材250Mとが、共通(形状及び寸法が同一)している。ここで、「共通(形状及び寸法が同一)」とは、後述の点を除き、基本的な形状及び寸法が同一に設計されているということであり、製造誤差等に起因する微差は存在する。
つまり、第1シリーズS1のうち外径の小さい小枠番の第1減速機110Sと、第2シリーズS2のうち、第1減速機110よりも外径に対するホロー径の割合が小さい第2減速機210の中でより外径の大きい中枠番の第2減速機210Mとは、偏心体軸の内外径の大きさが同程度である。また、小枠番の第1モータ140Sと中枠番の第2モータ240Mとは、出力軸の大きさが共通している。
そのため、小枠番の第1ギヤモータ100Sと中枠番の第2ギヤモータ200Mとで、減速機及びモータとカップリング部材との連結構造を共通化でき、これらを連結するカップリング部材を共用化できる。これにより、ギヤモータのシリーズ全体として部品点数を減らし、低コスト化を図ることができる。
【0032】
なお、カップリング部材は、第1ギヤモータ100のものと第2ギヤモータ200のものとで、互いの少なくとも一部が同一の形状(又は構造)を有していればよい。ここで、「カップリング部材の少なくとも一部が同一の形状を有する」とは、すなわち、第1ギヤモータ100の第1カップリング部材150と第2ギヤモータ200の第2カップリング部材250とで、それぞれの製造工程のうち途中までの少なくとも一部の工程が共通することを意味する。この場合、第1カップリング部材150と第2カップリング部材250とで内容の異なる工程は、最終工程に近いもの(例えばフランジ部151の貫通孔151bの加工工程など)であることが望ましい。換言すれば、モータ出力軸と減速機入力軸を連結している状態におけるカップリング部材の形状を最終形状とし、最終形状に至る前の形状を途中形状としたときに、第1カップリング部材150Sと第2カップリング部材250Mは、少なくとも途中形状が同じである(最終形状が同じであってもよい)。
例えば、第1シリーズS1及び第2シリーズS2の各々では、
図5に示すように、枠番毎に複数(例えば、高低2段階)の減速比の減速機が用意されている場合がある。ここでは、便宜上、低減速比に「L」、高減速比に「H」の識別符号を末尾に付す。この場合、同じ枠番の減速機でも減速比に応じて伝達トルクが変わるため、カップリング部材を共用できる(同一の形状を有する)小枠番の第1ギヤモータ100Sと中枠番の第2ギヤモータ200Mとで、カップリング部材の締結力を変える必要が生じる。具体的には、中枠番の第2ギヤモータ200Mのうち高減速比の第2ギヤモータ200MHには、小枠番の第1ギヤモータ100Sと全く同じ(最終形状が同じ)第1カップリング部材150Sを使用できるものの、低減速比の第2ギヤモータ200MLには、モータの容量アップに伴う伝達トルクの上昇により、
図6に示すように、小枠番の第1ギヤモータ100Sの第1カップリング部材150S(
図2参照)よりも偏心体軸221に固定する第1ボルト253の本数を増やした第2カップリング部材250MLを用いる。このとき、対応する偏心体軸221のネジ穴221eも増やす必要があるのは勿論である。また、モータの出力軸244を固定するクランプ部252の第2ボルト254のサイズを大きくする場合もある。
このように、枠番毎に複数の減速比の減速機が用意されている場合でも、減速比に応じて連結用のボルトの本数等を変えるだけで、カップリング部材の本体部分は共用化できる。つまり、第1カップリング部材150Sと第2カップリング部材250MLは、ボルト孔151b、251bを形成する前の途中形状は同じである一方、ボルト孔151b、251bを形成した後の最終形状は異なっている。
【0033】
[本実施形態の技術的効果]
以上のように、本実施形態によれば、第1モータ140の出力軸144は、第1減速機110の偏心体軸121のホロー部121dを貫通し、モータ側とは反対側の反モータ側で第1カップリング部材150を介して偏心体軸121に連結される。
これにより、減速機とモータとがその中間に配置されたカップリング部材で連結されていた従来に比べ、減速機とモータを軸方向にコンパクトに連結することができる。
【0034】
また、本実施形態によれば、小枠番の第1減速機110Sとモータを連結する第1カップリング部材150Sの少なくとも一部が、当該第1減速機110Sよりも外径の大きい中枠番の第2減速機210Mとモータを連結する第2カップリング部材250Mと同一の形状を有する。
これにより、第1シリーズS1と第2シリーズS2とでカップリング部材を共用化し、ギヤモータのシリーズ全体として部品点数を減らして低コスト化を図ることができる。
【0035】
[その他]
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記の実施形態に限られない。
例えば、上記実施形態では、カップリング部材がクランプ部によりモータの出力軸を固定することとした。しかし、カップリング部材がモータ出力軸を固定する固定手段(固定構造)は、トルク伝達が可能な構造であればクランプ構造(摩擦連結)に限定されず、例えば圧入やボルト連結でもよいし、スプライン連結でもよく、キーとキー溝を篏合させたキー連結であってもよい。この場合、クランプ部に代えてカップリング部材に設けるキー連結部は、偏心体軸のホロー部の内側に配置してもよい。また、固定手段は、モータ出力軸とカップリング部材を一体的に回転可能に連結する構造であればよく、リジッドに両者を固定する構造だけでなく、遊びを有する連結構造であってもよい。
【0036】
また、上記実施形態では、減速機として偏心揺動型減速装置を例に挙げて説明した。しかし、本発明に係る減速機は、ホロー構造の減速機入力軸を有するものであればよく、撓み噛合い式減速装置や単純遊星減速装置などであってもよい。
また、本発明に係るモータは、出力軸を減速機入力軸のホロー部に貫通できるものであればよい。
その他、上記実施形態で示した細部は、発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【符号の説明】
【0037】
100 第1ギヤモータ
110 第1減速機
112 出力軸(第2キャリヤ)
115g 内歯歯車
121 偏心体軸(減速機入力軸)
121d ホロー部
121e ネジ穴
124 キャリヤ体(第1キャリヤ)
126a 偏心体軸用軸受(第1軸受)
126b 偏心体軸用軸受(第2軸受)
129a オイルシール(シール部材)
129b オイルシール(シール部材)
140 第1モータ
144 出力軸(モータ出力軸)
150 第1カップリング部材
151 フランジ部
152 クランプ部
153 第1ボルト
154 第2ボルト
200 第2ギヤモータ
210 第2減速機
221 偏心体軸(減速機入力軸)
221e ネジ穴
240 第2モータ
244 出力軸(モータ出力軸)
250 第2カップリング部材
252 クランプ部
253 第1ボルト
254 第2ボルト
Ax 回転軸
E 被駆動部材
S1 第1シリーズ
S2 第2シリーズ