(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-07
(45)【発行日】2023-12-15
(54)【発明の名称】ドアクロージャ装置
(51)【国際特許分類】
B60J 5/00 20060101AFI20231208BHJP
E05B 79/00 20140101ALI20231208BHJP
E05B 79/20 20140101ALI20231208BHJP
E05B 81/20 20140101ALI20231208BHJP
【FI】
B60J5/00 M
E05B79/00
E05B79/20
E05B81/20 B
B60J5/00 C
(21)【出願番号】P 2020153114
(22)【出願日】2020-09-11
【審査請求日】2022-07-21
(73)【特許権者】
【識別番号】390000996
【氏名又は名称】株式会社ハイレックスコーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】110001896
【氏名又は名称】弁理士法人朝日奈特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】安永 賢一
【審査官】上谷 公治
(56)【参考文献】
【文献】実公平05-000523(JP,Y2)
【文献】特開平08-118953(JP,A)
【文献】実開昭58-190589(JP,U)
【文献】特開2001-311338(JP,A)
【文献】特開2012-193511(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60J 5/00
E05B 79/00
E05B 79/20
E05B 81/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
建設機械のキャブの側部に設けられたドアに取り付けられるドアクロージャ装置であって、
前記ドアは透光性を有する透明な窓部材を有しており、ドア枠は前記窓部材を取り囲むように構成され、前記窓部材は、少なくとも前記ドアの上下方向の中央部よりも下方となる下方領域に設けられており、
前記ドアクロージャ装置は、
ラッチを有し、前記
建設機械の車体に設けられた固定部に前記ラッチが係合することによって前記ドアをロックするロック装置と、
前記ロック装置を駆動する駆動部と、
前記ロック装置と前記駆動部との間に配索されたケーブルと
を備え、
前記ロック装置のラッチは、前記ドアが開放した状態で前記車体の固定部に係合していないアンラッチ状態と、前記ドアが完全に閉鎖されていない状態で前記固定部に係合しているハーフラッチ状態と、前記ドアが完全に閉鎖された状態で前記ラッチが前記固定部に係合しているフルラッチ状態との間で動作可能であり、
前記駆動部は、前記ラッチを前記ハーフラッチ状態から前記フルラッチ状態へと動作させるために前記ケーブルを駆動するように構成され、
前記ロック装置は、
前記ドア枠のうち、前記ドアの上下方向および前記ドアの厚さ方向の両方に垂直な水平方向で一端側に配置され、
前記駆動部は、前記ドア枠のうち、前記水平方向で他端側に配置され
、
前記ロック装置が、前記ドア枠の一端側において前記ドアの上下方向で中央部に配置されており、前記駆動部が、前記ドア枠の他端側において前記ドアの上下方向で下端部に配置され、
前記ケーブルは、前記ロック装置の下方のスペースにおいて、前記窓部材の形状に応じて前記ドア枠に配索されている、ドアクロージャ装置。
【請求項2】
前記ドアは、前記キャブの後方側に設けられたヒンジを中心に旋回するように構成され、
前記ロック装置は、前記水平方向で一端側となる前記ドア枠の前方側に設けられ、
前記駆動部は、前記水平方向で他端側となる前記ドア枠の後方側に設けられている、請求項1に記載のドアクロージャ装置。
【請求項3】
前記ドアが、前記キャブの外側から前記ロック装置のロックを解除するためのアウターハンドルと、前記キャブの内側から前記ロック装置のロックを解除するためのインナーハンドルとを備え、
前記アウターハンドルが前記ドア枠の前方側の下端に設けられ、
前記インナーハンドルが前記ロック装置の上部に設けられている、請求項
1または2に記載のドアクロージャ装置。
【請求項4】
前記駆動部が、モータと、前記モータの駆動力によって回転する出力ギヤと、前記出力ギヤと噛み合う駆動ギヤと、前記駆動ギヤに前記駆動ギヤの回転軸と同軸となるように固定され、前記ケーブルの一端が取り付けられるプーリとを備えている、請求項1~
3のいずれか1項に記載のドアクロージャ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はドアクロージャ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両等の乗り物に設けられるドアには、外部を視認することができるように窓ガラスが設けられている。トラックやバス、建設機械等の重機の場合、事故の発生を防ぐために、車両(無限軌道を有する装軌車両等を含む)の外部の視認性を高める必要がある。そのため、ドアのうち窓ガラスによって視認可能な領域をできるだけ大きくすることが望まれている。
【0003】
一方、大型の車両などでは、ドアが重い場合や、車両の室内の気密性が高い場合、ドアを完全に閉鎖することが困難となる。そのため、ドアがいわゆる半ドア状態のときに、ドアを全閉状態とするドアクロージャ装置をドアに取り付けることが望まれている。
【0004】
特許文献1には、ドアクロージャ装置が開示されている。特許文献1に開示されているように、ドアクロージャ装置は、ロックユニットとロックユニットに隣接して配置されたアクチュエータユニットとを備えている。ロックユニットは、アクチュエータユニットにケーブルを介して接続されている。ロックユニットは、車体に設けられたストライカに係合するラッチを有している。ドアが全閉状態に近いが完全には閉鎖されていない状態が検知されると、アクチュエータユニットが作動して、アクチュエータユニットのケーブルの操作によって、ロックユニットのラッチが間接的に操作されて、ドアを全閉状態まで移動させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上述したドアクロージャ装置のロックユニットおよびアクチュエータユニットは、上述したようにドアパネル内で隣接して設けられており、非常にスペースを要する。通常の乗用車のように、ドアの上半分が窓ガラスとなり下半分がドアパネルである場合には、ドアパネル内の任意のスペースに設ければよい。しかし、例えばドアの上半分だけでなく、下半分にも窓ガラスが設けられる場合、従来のドアクロージャ装置を設けると、ドアクロージャ装置を設置するために、まとまった領域が必要となる。そのため、窓ガラスによる視認領域がドアクロージャ装置の設置に必要な分だけ小さくなってしまい、窓ガラスを介した外部の視認性が悪くなる。
【0007】
そこで、ドアクロージャ装置を設けても、車両の内部からの視認領域を確保することが容易となる、ドアクロージャ装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のドアクロージャ装置は、車体に対して開閉可能なドアに取り付けられるドアクロージャ装置であって、前記ドアクロージャ装置は、ラッチを有し、前記車体に設けられた固定部に前記ラッチが係合することによって前記ドアをロックするロック装置と、前記ロック装置を駆動する駆動部と、前記ロック装置と前記駆動部との間に配索されたケーブルとを備え、前記ロック装置のラッチは、前記ドアが開放した状態で前記車体の固定部に係合していないアンラッチ状態と、前記ドアが完全に閉鎖されていない状態で前記固定部に係合しているハーフラッチ状態と、前記ドアが完全に閉鎖された状態で前記ラッチが前記固定部に係合しているフルラッチ状態との間で動作可能であり、前記駆動部は、前記ラッチを前記ハーフラッチ状態から前記フルラッチ状態へと動作させるために前記ケーブルを駆動するように構成され、前記ロック装置は、ドア枠のうち、前記ドアの上下方向および前記ドアの厚さ方向の両方に垂直な水平方向で一端側に配置され、前記駆動部は、前記ドア枠のうち、前記水平方向で他端側に配置されている。
【発明の効果】
【0009】
本発明のドアクロージャ装置によれば、車両の内部からの視認領域を確保することが容易となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の一実施形態のドアクロージャ装置が適用された建設機械を示す全体図である。
【
図2】
図1の建設機械のドアの周囲を示す拡大図である。
【
図3】
図2に示されるドアを車体内部側から見た図である。
【
図4A】本発明の一実施形態のドアクロージャ装置に設けられたロック装置のハーフラッチ状態を示す概略図である。
【
図4B】本発明の一実施形態のドアクロージャ装置に設けられたロック装置のフルラッチ状態を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照し、本発明の一実施形態のドアクロージャ装置を説明する。なお、以下に示す実施形態はあくまで一例であり、本発明のドアクロージャ装置は、以下の実施形態に限定されるものではない。
【0012】
図1および
図2に示されるように、本実施形態のドアクロージャ装置1は、車体Bに対して開閉可能なドアDに取り付けられている。
図2および
図3に示されるように、ドアクロージャ装置1は、ラッチ21(
図4Aおよび
図4B参照)を有し、車体Bに設けられた固定部S(
図4Aおよび
図4B参照)にラッチ21が係合することによってドアDをロックするロック装置2と、ロック装置2を駆動する駆動部3と、ロック装置2と駆動部3との間に配索されたケーブル4とを備えている。
【0013】
ドアクロージャ装置1は、車両のドアDが完全に閉鎖されていない、いわゆる半ドア状態のときに、ドアDを全閉状態とするように動作する。ドアクロージャ装置1が適用される車両は特に限定されないが、例えば、建設機械等の重機、トラックやバスなどの車両とすることができる。なお、車両という用語は、タイヤを有する車両以外に、無限軌道を有する装軌車両等を含む。以下、ドアクロージャ装置1が設けられた建設機械CMを例にあげて、ドアクロージャ装置1を説明する。なお、建設機械CMの構造は、図示するものに限定されず、様々な構造とすることができる。
【0014】
図1には、ドアクロージャ装置1が適用される建設機械CMの一例が示されている。
図1に示される建設機械CMは、いわゆる油圧ショベルである。本実施形態では、建設機械CMは、クローラ式の下部走行体Lと、下部走行体L上に旋回自在に搭載された上部旋回体Uとを備えている。上部旋回体Uには、掘削作業等を行うためのアタッチメントAが取り付けられている。なお、本明細書において、車両(建設機械CM)の上下の方向(鉛直方向)を上下方向D1と呼び、ドアDが閉鎖された状態における、車両(建設機械CM)のドアDの厚さ方向を厚さ方向D2(
図4Aおよび
図4B参照)と呼び、車両(建設機械CM)の上下方向D1およびドアDの厚さ方向D2の両方に垂直な方向を水平方向D3と呼ぶ。なお、本実施形態では、ドアDの厚さ方向D2は、車両(建設機械CM)の幅方向(左右方向)でもあり、水平方向D3は、車両(建設機械CM)の前後方向でもある。
【0015】
建設機械CMは、
図1に示されるように、運転席となるキャブCを有している。キャブCは、本実施形態では、外部環境と隔離された室内空間を有している。キャブCは、オペレータ等の乗員が着座する座席ST(
図2参照)を有している。キャブCは、前方および両側部に透光性を有する透明な窓部材Wを有している。本実施形態では、建設機械CMのキャブCの側部には、
図1および
図2に示されるように、開閉可能なドアDが設けられており、ドアクロージャ装置1はドアDに取り付けられている。本実施形態では、ドアDは、キャブCの後方側に設けられたヒンジHを中心に旋回するように構成されている。ドアDは、キャブCの前方側に設けられた固定部Sに、ラッチ21が係合することによって、閉鎖状態で維持される(
図4B参照)。固定部Sは、車体Bのうち、ドアDが閉鎖された状態でドアDに設けられたロック装置2の位置に対向する位置に設けられる。具体的には、固定部Sは、後述する前方枠部FR3の中央部に対向する位置に設けられている。固定部Sは、本実施形態では、車体Bに設けられたストライカ(以下、ストライカSという)である。ストライカSは、車両の分野において周知であるため、詳細な説明はしないが、ラッチ21が係合可能な略U字状の部材である。
【0016】
図2に示されるように、ドアDは透光性を有する透明な窓部材Wを有しており、ドア枠FRは窓部材Wを取り囲むように構成されている。窓部材Wを構成する材料は、透光性を有する透明な材料から構成されていれば、特に限定されず、ガラス製であっても、樹脂製であってもよい。本実施形態では、窓部材Wは、ドアDの上下方向D1の中央部よりも上方となる上方領域に設けられた上部窓部材W1(以下、単に窓部材W1と呼ぶ)と、ドアDの上下方向D1の中央部よりも下方となる下方領域に設けられた下部窓部材W2(以下、単に窓部材W2と呼ぶ)とを有している。このように窓部材Wの面積を大きくすることで、乗員の視野を広く確保することができ、建設機械CMを動作させる際の事故などを抑制することができる。特に、下方領域に設けられた窓部材W2は、キャブCの座席STに乗員が着座した状態で、下部走行体Lの周囲の視認性を高めている。
【0017】
本実施形態では、上方領域に設けられた窓部材W1と下方領域に設けられた窓部材W2とは、ドア枠FRのうち、中央枠部FR1によって分断されている。上方領域に設けられた窓部材W1は、中央枠部FR1、上方枠部FR2、前方枠部FR3および後方枠部FR4によって取り囲まれている。下方領域に設けられた窓部材W2は、中央枠部FR1、下方枠部FR5、前方枠部FR3および後方枠部FR4によって取り囲まれている。なお、本実施形態では、窓部材W1は、ドア枠FRに対して水平方向(前後方向)D3にスライドして開閉可能に構成され、窓部材W2は、開放しないようにドア枠FRに固定されている。しかし、窓部材W1、W2は、開閉可能であっても、開閉不可であってもよい。なお、本実施形態ではドア枠FRに窓部材Wが設けられているが、ドア枠FRは、窓部材Wを有しないドア枠であってもよい。
【0018】
ドアDは、
図2および
図3に示されるように、キャブCの外側からロック装置2のロックを解除するためのアウターハンドルHD1と、キャブCの内側からロック装置2のロックを解除するためのインナーハンドルHD2とを備えている。本実施形態では、アウターハンドルHD1は、ドア枠FRの前方側の下端に設けられている。具体的には、アウターハンドルHD1は、
図2に示されるように、ドアDの外面において、ドアDの前方枠部FR3の下端(前方枠部FR3と下方枠部FR5との交差領域)に設けられている。インナーハンドルHD2は、
図2および
図3に示されるように、ロック装置2の上部に設けられている。具体的には、インナーハンドルHD2は、ドアDの内面において、前方枠部FR3の中央部に設けられたロック装置2の上部に隣接する位置となる、中央枠部FR1と前方枠部FR3との交差領域に設けられている。
【0019】
本実施形態では、アウターハンドルHD1またはインナーハンドルHD2が操作されると、ラッチ21とストライカSとの係合が解除されるように、アウターハンドルHD1およびインナーハンドルHD2と、ロック装置2とが接続されている。詳細は後述するが、アウターハンドルHD1またはインナーハンドルHD2が操作されると、ロック装置2の保持部24が操作されて、ラッチ21とストライカSとのロック状態の解除が可能となり、ドアDが開放可能となる。
【0020】
本実施形態では、アウターハンドルHD1は、後述するように、ラッチ21とストライカSとのロック状態を解除するために、保持部24を直接または間接的に操作する、ロック解除用ケーブル(図示せず)に、アウターハンドル用ケーブル51を介して接続されている。同様に、インナーハンドルHD2は、ロック解除用ケーブルに、インナーハンドル用ケーブル52を介して接続されている。これにより、アウターハンドルHD1またはインナーハンドルHD2が操作されると、アウターハンドル用ケーブル51またはインナーハンドル用ケーブル52を介してロック解除用ケーブルが操作される。具体的には、アウターハンドル用ケーブル51またはインナーハンドル用ケーブル52が操作されて、ロック解除用ケーブルが操作されると、ロック解除用ケーブルの操作力が保持部24に伝達される。ロック解除用ケーブルの操作力が保持部24に伝達されると、保持部24がラッチ21の移動を許容するロック解除位置(
図4Bの二点鎖線参照)まで移動する。これにより、保持部24とラッチ21との間の係合が解除され、ラッチ21が回転可能となる。この状態で、ドアDを開放させる方向に力を加えると、ラッチ21が回転して、ラッチ21とストライカSとの間の係合が解除されたアンラッチ状態となり、ドアDが開放する。
【0021】
本実施形態では、アウターハンドル用ケーブル51およびインナーハンドル用ケーブル52は、コントロールケーブルのインナーケーブルである。本実施形態では、アウターハンドル用ケーブル51およびインナーハンドル用ケーブル52は、アウターケーシングOC1、OC2に収容され、所定の配索経路に沿って配索されている。アウターハンドル用ケーブル51は、前方枠部FR3の下端部から前方枠部FR3の中央部に設けられたロック装置2に向かって配索されている。インナーハンドル用ケーブル52は、中央枠部FR1と前方枠部FR3との交差領域に位置するインナーハンドルHD2から、前方枠部FR3の上下方向D1で中央部(中央枠部FR1よりわずかに下方)において、インナーハンドルHD2の下方に隣接して位置するロック装置2に向かって配索されている。
【0022】
次に、ロック装置2を駆動する駆動部3について説明する。
【0023】
駆動部3は、ケーブル4を介してロック装置2を操作するための駆動力を生じさせる。具体的には、駆動部3は、後述するように、ラッチ21をハーフラッチ状態(
図4A参照)からフルラッチ状態(
図4B参照)へと動作させるためにケーブル4を駆動するように構成されている。本実施形態では、駆動部3は、
図3に示されるように、モータ31と、モータ31に接続され、ケーブル4に駆動力を伝達するための伝動部材32とを備えている。モータ31は、図示しない給電線から供給された電力により駆動され、伝動部材32を介してケーブル4に駆動力を伝達する。伝動部材32は、モータ31とケーブル4の間に設けられ、モータ31の駆動力をケーブル4に伝達し、ケーブル4を操作する。
【0024】
駆動部3の構造は、ケーブル4を介してロック装置2を操作する駆動力を生じさせることができれば、特に限定されない。本実施形態では、
図3に示されるように、駆動部3は、モータ31と、モータ31の駆動力によって回転する出力ギヤ321と、出力ギヤ321と噛み合う駆動ギヤ322と、駆動ギヤ322に駆動ギヤ322の回転軸と同軸となるように固定され、ケーブル4の一端4aが取り付けられるプーリ323とを備えている。
【0025】
出力ギヤ321は、図示しない減速機構を介して、モータ31と接続され、モータ31の駆動力によって回転する。本実施形態では、出力ギヤ321は、ドアDの厚さ方向(車両の幅方向)D2に延びる回転軸周りに回転する。出力ギヤ321は、駆動ギヤ322と比較して小径のギヤである。出力ギヤ321は外周に歯が形成された薄い円盤状に形成されている。
【0026】
駆動ギヤ322は出力ギヤ321と噛み合って回転し、プーリ323を回転させる。本実施形態では、駆動ギヤ322は、ドアDの厚さ方向(車両の幅方向)D2に延びる回転軸周りに回転する。駆動ギヤ322は、出力ギヤ321と比較して大径のギヤである。駆動ギヤ322は外周に歯が形成された薄い円盤状に形成されている。
【0027】
プーリ323は、駆動ギヤ322の回転によって回転し、プーリ323に取り付けられたケーブル4に操作力を加える。プーリ323は、薄い円盤状に形成され、外周にケーブル4が巻回される巻回溝を有し、ケーブル4の一端4aが取り付けられる取付部を有している。本実施形態では、プーリ323は、駆動ギヤ322と一体に回転するように、駆動ギヤ322の一方の端面に固定されている。プーリ323は、駆動ギヤ322よりも小径かつ出力ギヤ321よりも大径となる大きさを有している。
【0028】
本実施形態では、上述したように、駆動ギヤ322とプーリ323とが同軸となるように重なって配置されていることにより、駆動部3を駆動ギヤ322(またはプーリ323)の径方向でコンパクトにすることができる。そのため、後述するように、駆動部3がドアDに設けられたときに、駆動部3の設置領域が大きくならず、乗員の視認領域が狭くならない。
【0029】
ケーブル4は、ロック装置2と駆動部3との間に配索され、駆動部3の駆動力をロック装置2に伝達する。ケーブル4の一端4aは駆動部3に連結され、ケーブル4の他端4b(
図4Aおよび
図4B参照)はロック装置2に連結されている。より具体的には、ケーブル4の一端4aは、駆動部3のプーリ323に係合し、ケーブル4の他端4bは、ロック装置2のラッチ操作部23に係合している。本実施形態では、ケーブル4は、コントロールケーブルのインナーケーブルであり、ロック装置2と駆動部3との間でアウターケーシングOC3に収容されて、所定の配索経路に沿って配索されている。
【0030】
次に、ロック装置2について説明する。
【0031】
ロック装置2は、
図4Aおよび
図4Bに示されるように、ラッチ21を有し、車体Bに設けられた固定部Sにラッチ21を係合することによってドアDをロックする。ロック装置2は、ドアDがいわゆる半ドア状態のときに、ドアDが完全に閉鎖された全閉状態とするように動作する。ロック装置2のラッチ21は、ドアDが開放した状態で車体Bの固定部Sに係合していないアンラッチ状態と、ドアDが完全に閉鎖されていない状態で固定部Sに係合しているハーフラッチ状態(
図4A参照)と、ドアDが完全に閉鎖された状態でラッチ21が固定部Sに係合しているフルラッチ状態(
図4B参照)との間で動作可能である。
【0032】
ロック装置2の構造は、固定部Sにラッチ21を係合することによってドアDをロックすることができれば、特に限定されない。本実施形態では、ロック装置2は、
図4Aおよび
図4Bに示されるように、ドアDに取り付けられるハウジング22(
図2参照)と、ハウジング22内に設けられたラッチ21と、ケーブル4の操作によって動作してラッチ21をハーフラッチ状態からフルラッチ状態へと移動させるラッチ操作部23と、ラッチ21をフルラッチ状態で保持する保持部24とを備えている。
【0033】
ハウジング22は、ラッチ21、ラッチ操作部23、保持部24など、ロック装置2の構成部品を収容している。ハウジング22は、ドアDの水平方向(前後方向)D3で、ヒンジHが設けられた縁とは反対側の縁に設けられている。具体的には、ハウジング22は、ドアDの前方側の前方枠部FR3のうち、上下方向D1で中央部に取り付けられている。ハウジング22は、ドアDが閉鎖状態にあるときに、車体Bに設けられたストライカSの位置に対応する位置にラッチ21が位置するように設けられている。ハウジング22は、
図4Aおよび
図4Bに示されるように、ストライカSの一部を収容可能な開口部OPを有している。
【0034】
ラッチ21は、
図4Aおよび
図4Bに示されるように、車体Bの固定部(ストライカ)Sと係合する。ラッチ21は、上述したように、アンラッチ状態、ハーフラッチ状態およびフルラッチ状態の間で動作可能である。本実施形態では、ラッチ21は、ドアDの閉鎖時に水平方向(前後方向)D3(
図4Aおよび
図4Bにおける紙面奥行方向)に延びる軸X1周りに回転可能に設けられ、アンラッチ状態、ハーフラッチ状態およびフルラッチ状態の間を回転して移動する。本実施形態では、ラッチ21は、アンラッチ状態となる方向(
図4Aおよび
図4Bにおける時計方向)へ図示しない付勢部材によって付勢されている。
【0035】
本実施形態では、ラッチ21は、ストライカSと係合する係合溝21aを有している。さらに、ラッチ21は、後述するように、ラッチ操作部23と当接可能な第1当接部21bと、ハーフラッチ状態において保持部24と当接可能な第2当接部21cと、フルラッチ状態において保持部24と当接可能な第3当接部21dとを有している。
【0036】
ラッチ操作部23は、ケーブル4によって動作して、ラッチ21をハーフラッチ状態からフルラッチ状態へと移動させる。なお、ラッチ操作部23がケーブル4によって操作される前の状態(
図4Aに示される状態)を、ラッチ操作部23の初期位置と呼ぶ。また、ラッチ操作部23がケーブル4によって操作され、ラッチ21をフルラッチ状態まで移動させたときの状態を、ラッチ操作部23の操作位置(
図4Bに示される状態)と呼ぶ。ラッチ操作部23は、
図4Aおよび
図4Bに示されるように、ケーブル4の他端4bが接続される接続部23aを有しており、駆動部3の駆動力がケーブル4を介してラッチ操作部23に伝達されて、初期位置から操作位置へと所定の方向に移動する。ラッチ操作部23が所定の方向に移動することにより、ラッチ操作部23と当接して押圧されるラッチ21が移動する。
【0037】
本実施形態では、ラッチ操作部23は、ドアDの閉鎖時に水平方向(前後方向)D3(
図4Aおよび
図4Bにおける紙面奥行方向)に延びる軸X2周りに回転可能に設けられている。駆動部3によってケーブル4が操作されると、ラッチ操作部23は、ラッチ21をハーフラッチ状態からフルラッチ状態へと移動させるように回転する。ラッチ操作部23は、ラッチ21と当接してラッチ21を押圧する押圧部23bを有している。後述するように、押圧部23bがラッチ21の第1当接部21bに当接して第1当接部21bを押圧すると、ラッチ21がハーフラッチ状態からフルラッチ状態へと移動する。なお、本実施形態では、ラッチ操作部23は、初期位置へ向かって(本実施形態では、
図4Aおよび
図4Bにおける反時計方向へ)移動するように、図示しない付勢部材によって付勢されている。
【0038】
保持部24は、ラッチ21と係合して、ラッチ21が固定部(ストライカ)Sと係合した状態(ハーフラッチ状態およびフルラッチ状態)を保持する。保持部24は、ラッチ21と係合して、ラッチ21がアンラッチ状態となる方向へ移動することを規制するロック位置(
図4Aおよび
図4Bにおける実線の位置)と、ラッチ21と係合せずに、ラッチ21がアンラッチ状態となる方向への移動を許容するロック解除位置(
図4Bの二点鎖線参照)との間を移動するように構成されている。本実施形態では、保持部24は、ドアDの閉鎖時に水平方向(前後方向)D3に延びる軸X3周りに回転可能に設けられている。保持部24は、ロック位置に向かって(
図4Aおよび
図4Bにおける反時計方向に)回転するように、図示しない付勢部材によって付勢されている。
【0039】
また、保持部24は、アウターハンドルHD1またはインナーハンドルHD2が操作されたときに、ロック解除位置へと移動するように構成されている。本実施形態では、保持部24は、アウターハンドル用ケーブル51と、アウターハンドル用ケーブル51の操作に応じて動作する図示しない連動機構とによって、アウターハンドルHD1に接続されている。なお、連動機構の構造は特に限定されないが、例えば、連動機構は、上述したロック解除用ケーブルと、ロック解除用ケーブルによって作動し、保持部24を回転させるように保持部24に接続された伝動部材とすることができる。また、保持部24は、インナーハンドル用ケーブル52と、インナーハンドル用ケーブル52の操作に応じて動作する上述した連動機構とによって、インナーハンドルHD2に接続されている。アウターハンドル用ケーブル51とインナーハンドル用ケーブル52とは、同じ連動機構に接続されていてもよい。この場合、アウターハンドルHD1またはインナーハンドルHD2のいずれかを操作することにより、保持部24がロック解除位置に移動して、ラッチ21と固定部(ストライカ)Sとの間の係合状態の保持が解除される。
【0040】
つぎに、ロック装置2の動作について
図4Aおよび
図4Bを用いて説明する。なお、
図4Aおよび
図4Bにおいて、図の左側が車内側であり、図の右側が車外側である。
【0041】
まず、ドアDが開放された状態からドアDが閉鎖される場合について説明する。ドアDが開放された状態から、ドアDが閉鎖される際、例えば、ドアDに加える力が不十分な場合や、車室(本実施形態ではキャブC)の気密性が高い場合に、ドアDが完全に閉鎖されない半ドア状態、すなわち
図4Aに示されるハーフラッチ状態となりやすい。半ドア状態(ハーフラッチ状態)になったドアDにおいては、
図4Aに示されるように、ロック装置2のラッチ21と車体BのストライカSとは係合しているが、ドアDは完全には閉鎖されていない。この際、例えば、図示しないラッチ21の回転位置など、ラッチ21がハーフラッチ状態であることを検出する検知部(センサなど)によって、ラッチ21がハーフラッチ状態であることが検知されると、駆動部3が駆動される。
【0042】
駆動部3が駆動されると、
図4Aに示される状態からケーブル4が引き操作され、ケーブル4の他端4bが接続されたラッチ操作部23が時計方向に回転する。ラッチ操作部23が回転すると、ラッチ操作部23の押圧部23bがラッチ21の第1当接部21bに当接した後、第1当接部21bを押圧する。これにより、ラッチ21が
図4Aにおいて反時計方向に回転する。ラッチ21が回転すると、ラッチ21の係合溝21aに入っているストライカSを押圧する力を加える。ストライカSは車体Bに固定されており動かないため、ラッチ21およびハウジング22の全体が、
図4Aに示される状態から左側に移動する。これにより、
図4Bに示されるようにラッチ21はフルラッチ状態となり、ドアDが完全に閉鎖される方向に移動して、ドアDが閉鎖される。そして、この状態において、保持部24がラッチ21の第3当接部21dに当接して、ラッチ21がハーフラッチ状態およびアンラッチ状態となる方向への移動が規制され、ドアDの開放が規制され、ドアDが閉鎖状態でロックされる。
【0043】
ドアDを開放する場合は、アウターハンドルHD1またはインナーハンドルHD2を操作する。アウターハンドルHD1またはインナーハンドルHD2が操作されると、アウターハンドル用ケーブル51またはインナーハンドル用ケーブル52が操作されて、これらと間接的に接続された保持部24が
図4Bにおいて二点鎖線で示したロック解除位置に移動する。これにより、ラッチ21がアンラッチ状態となるように移動可能となり、ドアDの開放が可能となる。
【0044】
上述したように、ロック装置2を設けることにより、ドアDが半ドア状態(ハーフラッチ状態)となることが抑制される。ただし、ロック装置2を作動させるためには、ロック装置2だけでなく、ロック装置2を駆動する駆動部3が必要となる。ロック装置2と駆動部3とを隣接した位置に設ける場合、ドアDにおいて、まとまった大きな専有面積が必要となる。そのため、ロック装置2と駆動部3とが隣接して配置された場合、窓部材Wの設置領域に影響を及ぼし、窓部材Wを介した車室内からの視界が制限される可能性がある。
【0045】
本実施形態では、ロック装置2は、
図2および
図3に示されるように、ドア枠FRのうち、ドアDの上下方向D1およびドアDの厚さ方向D2の両方に垂直な水平方向D3で一端側に配置され、駆動部3は、ドア枠FRのうち、水平方向D3で他端側に配置されている。これにより、ロック装置2および駆動部3は、水平方向D3の一端側と他端側とに分散されて、隣接しない位置に配置される。したがって、ロック装置2と駆動部3とが密集して設置領域が1箇所に偏らない。これにより、車両の内部からの視認領域を確保することが容易となる。本実施形態では、ロック装置2の周辺に、窓部材Wを配置できないまとまったスペースが不要となり、水平方向D3に離間したロック装置2と駆動部3との間に、大きな視認領域を有する窓部材Wを設けることが可能となる。よって、ドアクロージャ装置1を設けても、車両の内部からの、窓部材Wを介した視認領域を確保することが容易となる。
【0046】
なお、ロック装置2の位置はドア枠FRの水平方向D3の一端側において、固定部Sの位置に対応した位置に設けられていれば、特に限定されない。また、駆動部3の位置も、ドア枠FRのうち、水平方向D3で他端側、すなわち、水平方向D3でロック装置2の反対側に設けられていれば、特に限定されない。ロック装置2および駆動部3の上下方向D1の位置は、互いに同じ高さで設けられていてもよいし、異なる高さで設けられていてもよい。
【0047】
本実施形態では、ロック装置2は、
図2および
図3に示されるように、ドア枠FRの水平方向D3の一端側において上下方向D1で中央部に配置されており、駆動部3は、ドア枠FRの水平方向D3の他端側において上下方向D1で下端部に配置されている。この場合、ロック装置2と駆動部3とが上下方向D1で異なる位置かつ水平方向D3で反対側に配置される。したがって、ドア枠FRの一端側(前方枠部FR3)の中央部より下の領域には(ケーブル4やアウターハンドル用ケーブル51の配索領域を除き)、窓部材Wを配置可能なスペースを有している。また、ドア枠FRの他端側(後方枠部FR4)の下端部から上の領域には、窓部材Wを配置可能なスペースを有している。そのため、
図3に示されるように、ドア枠FRの下方領域に設けられる窓部材W2は、窓部材W2の上下方向D1の中央部において、水平方向(前後方向)D3に長く形成することができる。したがって、窓部材W2を介した視認領域を広げることできる。
【0048】
また、本実施形態では、ドアクロージャ装置1は、建設機械CMのキャブCの側部に設けられたドアDに取り付けられ、ドアDはキャブCの後方側に設けられたヒンジHを中心に旋回する。そして、ロック装置2は、
図2および
図3に示されるように、水平方向D3で一端側となるドア枠FRの前方側(前方枠部FR3)に設けられ、駆動部3は、水平方向D3で他端側となるドア枠FRの後方側(後方枠部FR4)に設けられている。キャブCの座席STから見て斜め前方かつ下方の視界の確保は、建設機械CMの操作時の事故などを防ぐうえで非常に重要となるが、ドアDの後方側が回転軸となる旋回式のドアDを有する建設機械CMにおいては、必然的にロック装置2がドアDの前方側に位置することになる。
【0049】
本実施形態では、所定の設置領域が必要な駆動部3が、建設機械CMの後方側に位置しているため、建設機械CMの前方枠部FR3を幅広にする必要がなく、前方枠部FR3を細くすることができる。したがって、キャブC内から窓部材W2を介して斜め下方を確認するときの視認領域が狭くなりにくい。そのため、本実施形態では、ロック装置2が設けられていない従来の建設機械とほぼ同等の、斜め前方かつ下方の良好な視認領域の確保が可能となり、安全性が向上する。
【0050】
また、本実施形態では、
図2および
図3に示されるように、アウターハンドルHD1がドア枠FRの前方側の下端に設けられ、インナーハンドルHD2がロック装置2の上部に隣接して設けられている。本実施形態では、インナーハンドルHD2は、ロック装置2の上部に隣接して設けられ、細長いインナーハンドル用ケーブル52によってロック装置2と接続されている。また、ロック装置2とアウターハンドルHD1との間には、上下方向D1で所定のスペースが設けられ、そして、本実施形態では、そのスペース内には、細長いアウターハンドル用ケーブル51が通るだけである。したがって、ロック装置2の下方のスペースは、細長く、湾曲して配索可能なケーブル(ケーブル4、アウターハンドル用ケーブル51)が通っているだけである。よって、ロック装置2の下方には大きなスペースが必要なく、窓部材W2の形状に応じて、ケーブル4およびアウターハンドル用ケーブル51を湾曲して配索することで、窓部材W2を最大化することができる。
【0051】
また、本実施形態の駆動部3は、上述したように、円盤状の駆動ギヤ322と円盤状のプーリ323とが同軸となるように固定され、駆動部3は、駆動ギヤ322の回転軸がドアDの厚さ方向D2に延びるように取り付けられている。この場合、駆動ギヤ322とプーリ323とが同軸に配置されることで、駆動部3を上下方向D1および水平方向(前後方向)D3でコンパクトにすることができる。したがって、駆動部3の設置領域を小さくすることができ、窓部材W2の設置領域を広く確保することができ、視認領域を広く確保することができる。
【符号の説明】
【0052】
1 ドアクロージャ装置
2 ロック装置
21 ラッチ
21a 係合溝
21b 第1当接部
21c 第2当接部
21d 第3当接部
22 ハウジング
23 ラッチ操作部
23a 接続部
23b 押圧部
24 保持部
3 駆動部
31 モータ
32 伝動部材
321 出力ギヤ
322 駆動ギヤ
323 プーリ
4 ケーブル
4a ケーブルの一端
4b ケーブルの他端
51 アウターハンドル用ケーブル
52 インナーハンドル用ケーブル
A アタッチメント
B 車体
C キャブ
CM 建設機械
D ドア
D1 上下方向
D2 厚さ方向(幅方向)
D3 水平方向(前後方向)
FR ドア枠
FR1 中央枠部
FR2 上方枠部
FR3 前方枠部
FR4 後方枠部
FR5 下方枠部
H ヒンジ
HD1 アウターハンドル
HD2 インナーハンドル
L 下部走行体
OC1、OC2、OC3 アウターケーシング
OP 開口部
S 固定部(ストライカ)
ST 座席
U 上部旋回体
W、W1、W2 窓部材
X1、X2、X3 軸