(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-07
(45)【発行日】2023-12-15
(54)【発明の名称】画像表示パネルの製造方法
(51)【国際特許分類】
G02F 1/13 20060101AFI20231208BHJP
G02F 1/1333 20060101ALI20231208BHJP
【FI】
G02F1/13 101
G02F1/1333 500
(21)【出願番号】P 2020166081
(22)【出願日】2020-09-30
【審査請求日】2023-01-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000166948
【氏名又は名称】シチズンファインデバイス株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000001960
【氏名又は名称】シチズン時計株式会社
(72)【発明者】
【氏名】村杉 潤一郎
【審査官】近藤 幸浩
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-120738(JP,A)
【文献】特開2008-184358(JP,A)
【文献】特開2014-048405(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02F 1/13
G02F 1/1333
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板の表面に
斜面を有する溝を形成する工程と、
前記溝の最下点を避けた位置に設けられた前記
斜面に応力を加えることにより、
前記斜面から前記最下点の真下へ向かって斜めに前記基板の内部にクラックを伸展させて前記基板を分断する工程と、
を有することを特徴とする画像表示パネルの製造方法。
【請求項2】
前記溝は、V形状の断面を有
し、前記V形状を形成する二つの斜面のうち何れか一方のみの斜面に前記応力を加えることを特徴とする請求項1に記載の画像表示パネルの製造方法。
【請求項3】
前記基板は、互いに貼り合わされた第一基板と第二基板とで構成され、前記第一基板と前記第二基板のうち一方には、前記溝が形成され、他方には、前記溝と近接する電極端子が形成され、前記溝の前記
二つの斜面のうち前記電極端子と近接する
斜面に前記応力を加えることを特徴とする請求項
2に記載の画像表示パネルの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像表示パネルの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
液晶パネルなどの画像表示パネルは、例えば、シリコンウェハーとガラスウェハーとを接着剤を挟んで貼り合わせた後にそれら二つのウェハーを複数の個片に分断することにより作成される。
【0003】
ウェハーの分断工程では、主にダイサー、スクライバー等が用いられる。これらを用いてウェハーを分断する際には、例えば、ダイサーのブレードを回転させ、純水で冷却と切削屑の洗い流しを行いながらウェハーの表面を切断してV形状の断面を有する溝を形成した後、溝の最下点にスクライブホイールの先端を押し当てて外力を加えることにより、溝の最下点から基板の内部にクラック(亀裂)を伸展させてウェハーを分断する。(例えば、特許文献1参照)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
図3(a)~(c)は、それぞれ、従来技術における画像表示パネルの製造方法の一例を示す上面図、A-A断面図、A-A断面図の一部拡大図である。
図3に示す従来技術における画像表示パネルの製造方法では、ウェハー状態の第一基板2と第二基板3とを画素領域4を囲むように配置された接着剤を挟んで貼り合わせた後、ダイサーを用いて第一基板2をx方向とy方向へ格子状に切断して分断し、次に、ダイサーを用いて第二基板3の表面をx方向とy方向へ格子状に切断してV形状の断面を有する溝6を形成し、次に、溝6の最下点にスクライブホイール8の先端を押し当てながらスクライブホイール8をx方向とy方向へ移動させて第二基板3に外力を加えることにより、溝6の最下点から真下へ向かって第二基板3の内部にクラックC
1を伸展させて第二基板3を格子状に分断している。
【0006】
しかし、この製造方法では、スクライブホイール8により第二基板3を分断した際に、溝6の最下点から真下へクラックC1が伸展せずに、溝6の最下点から右側へ斜めにクラックC2が伸展する、あるいは、溝6の最下点から左側へ斜めにクラックC3が伸展することがあり、第二基板3の安定した断面形状が得られなかった。特に左側へクラックC3が伸展すると、第二基板3の断面が左側へ突出し、第一基板2の電極端子7に近接することがあった。第二基板3の断面が電極端子7に近接すると、第二基板3の断面が電極端子7に接続されるワイヤーやFPCと干渉してしまう恐れがある。この問題は、第二基板3の安定した断面形状が得られないことにより生じる問題の一例に過ぎず、第一基板2に電極端子7が設けられていない場合などのその他の場合にも何らかの問題が生じることがある。
【0007】
本発明は、以上の問題に鑑みてなされたものであり、基板の安定した断面形状を得ることが可能な画像表示パネルの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
基板の表面に溝を形成する工程と、前記溝の最下点を避けた位置に設けられた前記溝の内面に応力を加えることにより、前記基板の内部にクラックを伸展させて前記基板を分断する工程と、を有する画像表示パネルの製造方法とする。
【0009】
前記溝は、V形状の断面を有する画像表示パネルの製造方法であっても良い。
【0010】
前記基板は、互いに貼り合わされた第一基板と第二基板とで構成され、前記第一基板と前記第二基板のうち一方には、前記溝が形成され、他方には、前記溝と近接する電極端子が形成され、前記溝の前記内面のうち前記電極端子と近接する内面に前記応力を加える画像表示パネルの製造方法であっても良い。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、基板の安定した断面形状を得ることが可能な画像表示パネルの製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1(a)】本発明における画像表示装置の一実施例を示す上面図
【
図1(b)】本発明における画像表示装置の一実施例を示すA-A断面図
【
図2(a)】本発明における画像表示パネルの製造方法の一実施例を示す上面図
【
図2(b)】本発明における画像表示パネルの製造方法の一実施例を示すA-A断面図
【
図2(c)】本発明における画像表示パネルの製造方法の一実施例を示すA-A断面図の一部拡大図
【
図3(a)】従来技術における液晶表示パネルの製造方法の一例を示す上面図
【
図3(b)】従来技術における液晶表示パネルの製造方法の一例を示すA-A断面図
【
図3(c)】従来技術における液晶表示パネルの製造方法の一例を示すA-A断面図の一部拡大図
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1(a)、(b)は、それぞれ、本発明における画像表示装置の一実施例を示す上面図、A-A断面図である。この実施例における画像表示装置1は、画像表示パネル5と、回路基板9とを備えている。画像表示パネル1は、反射電極などの画素電極が形成された画素領域4を有するシリコン基板から成る第一基板2と、それに相対する表面にITO電極などの対向電極が形成されたガラス基板から成る第二基板3とを、所定の位置および間隔で、画素領域4を囲むように配置された接着剤を挟んで貼り合せることで形成された第一基板2と第二基板3との間の隙間に液晶が封入された液晶表示パネルである。
【0014】
画像表示パネル1は、回路基板9の上面に粘着テープを介して搭載されている。第一基板2の上面に設けられた電極端子7と回路基板9の上面に設けられた電極端子10とはワイヤー11で電気的に接続され、そこを介して液晶の駆動電圧が画素領域4に供給される。ワイヤー11とその周囲は、シリコン系樹脂などで構成される保護樹脂12で覆われて保護されている。第二基板3の下面に設けられた対向電極と回路基板9の上面に設けられた別の電極端子とは導電性接着剤13で電気的に接続され、そこを介して液晶の駆動電圧が対向電極に供給される。
【0015】
図2(a)~(c)は、それぞれ、本発明における画像表示パネルの製造方法の一実施例を示す上面図、A-A断面図、A-A断面図の一部拡大図である。画像表示パネル1を作成する際には、ウェハー状態の第一基板2と第二基板3とを画素領域4を囲むように配置された接着剤を挟んで貼り合わせた後、ダイサーを用いて第一基板2をx方向とy方向へ格子状に切断して分断し、次に、ダイサーを用いて第二基板3の表面をx方向とy方向へ格子状に切断してV形状の断面を有する溝6を形成する。この時、溝6の内面には、最下点よりも左側に位置する第一の斜面6aと、最下点よりも右側に位置する第二の斜面6bとが形成される。ここで、「右側」は、x方向又はy方向へ向かって右側であることを意味し、「左側」は、x方向又はy方向へ向かって左側であることを意味する。
【0016】
次に、溝6の最下点から左側へ僅かにずれた位置の第一の斜面6aにスクライブホイール8の先端を押し当てながらスクライブホイール8をx方向とy方向へ移動させて第二基板3に外力を加えることにより、溝6の第一の斜面6aから最下点の真下へ向かって斜めに第二基板3の内部にクラックC4を伸展させて第二基板3を格子状に分断する。
【0017】
クラックは、第二基板2の厚さが最も小さい溝6の最下点の真下へ向かって伸展する傾向があるため、スクライブホイール8の先端を溝6の最下点を避けた所定の位置に押し当てることにより、クラックが伸展する方向、即ち、第二基板3の断面形状を制御することができる。なお、溝6の第二の斜面6bにスクライブホイール9を押し当てると、電極端子7に近づく方向へクラックは伸展する。
【0018】
この実施例では、電極端子7から遠ざかる方向へクラックC4が伸展するため、第二基板3の断面が電極端子7の近傍にまで突出することは無く、電極端子7に接続されるワイヤー11と第二基板3の断面との干渉が防止される。また、クラックC4の左側に位置する第二基板3の端部は、隣接する画像表示パネル5の導電性接着剤13が塗布される部位であり、クラックC4が右側へ伸展することで右側へ拡張されるため、導電性接着剤13の塗布領域が広がり、電気的接続の信頼性向上に繋がる。
【0019】
なお、この実施例では、x方向とy方向の両方について
図2(c)に示すクラックC
4による分断方法を適用しているが、y方向については
図3(c)に示す従来技術と同様のクラックC
1~C
3による分断方法を適用しても良い。また、クラックC
4による分断方法は、分断領域の一部のみに選択的に適用しても良い。また、第一基板2に対してクラックC
4による分断方法を適用しても良い。また、第一基板2と第二基板3は、互いに貼り合わされる前にそれぞれ分断されても良い。
【0020】
本発明は、この実施例に限定されず、その他種々の形態を取り得る。例えば、本発明は、基板の表面に形成された溝(溝6)の断面が半円形状や階段形状である場合などにも適用することが可能である。また、本発明は、基板の表面に形成された溝(溝6)の内面にブレードの先端を衝突させた際に衝撃により基板の内部にクラックを進展させて基板を分断する場合などにも適用することが可能である。また、本発明は、画像表示パネルが有機ELパネルである場合などにも適用することが可能である。
【符号の説明】
【0021】
1 液晶表示装置
2 第一基板
3 第二基板
4 画素領域
5 液晶パネル
6 溝
6a 第一の斜面
6b 第二の斜面
7 電極端子
8 スクライブホイール
9 回路基板
10 電極端子
11 ワイヤー
12 保護樹脂
13 導電性接着剤
C1~C4 クラック