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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-07
(45)【発行日】2023-12-15
(54)【発明の名称】補修部材挿入ガイド部材
(51)【国際特許分類】
   B01D 65/10 20060101AFI20231208BHJP
   B01D 63/02 20060101ALI20231208BHJP
【FI】
B01D65/10
B01D63/02
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2020188050
(22)【出願日】2020-11-11
(65)【公開番号】P2022077271
(43)【公開日】2022-05-23
【審査請求日】2023-02-22
(73)【特許権者】
【識別番号】309007911
【氏名又は名称】サントリーホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】中村 啓人
【審査官】石岡 隆
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-138123(JP,A)
【文献】特開2001-341081(JP,A)
【文献】特開2017-104869(JP,A)
【文献】登録実用新案第3118496(JP,U)
【文献】実公昭50-038067(JP,Y1)
【文献】特開2016-155096(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D53/22、61/00-71/82
C02F1/44
B25C1/00-13/00
A61M1/00-1/38、60/00-60/90
B25D1/00-17/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体中の不純物を取り除くクロスフロー濾過において使用される中空糸膜のメンテナンス用の補修部材を前記中空糸膜の端部開口に挿入する補修部材挿入治具の一部が挿通する貫通孔部と、
当該貫通孔部を形成した長尺状のガイド部材本体と、を備え、
前記貫通孔部は、作業者が把持する把持部および前記補修部材を保持する保持部を備えた前記補修部材挿入治具の前記保持部のみが挿通し、かつ、前記保持部が近接あるいは接触した状態で挿通できる内径を有し、
前記ガイド部材本体は、前記保持部が前記補修部材を保持した状態で前記貫通孔部に挿通したときに、前記補修部材の一部が出現し、かつ、前記保持部が前記貫通孔部から出現しない長さ寸法、を有する補修部材挿入ガイド部材。
【請求項2】
前記ガイド部材本体は透明または半透明の材料で構成してある請求項1に記載の補修部材挿入ガイド部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体中の不純物を取り除くクロスフロー濾過において使用される中空糸膜のメンテナンス用の補修部材を中空糸膜の端部開口に挿入する際に使用する補修部材挿入ガイド部材に関する。
【背景技術】
【0002】
ビール等の発酵麦芽飲料は、麦汁に酵母を添加して発酵させた後、酵母や澱(オリ)などの不純物を取り除く濾過工程を経て製造される。特許文献1には、発酵麦芽飲料の製造に際し、濾過工程においてクロスフロー濾過方式を適用したことが開示してある。
【0003】
特許文献2には、クロスフロー濾過に用いる好適な高分子多孔質膜として、中空糸膜を使用したことが記載してある。
【0004】
当該クロスフロー濾過は、ポンプによる原液循環による液流を用いて、膜表面に対して平行な液流を作りながら濾過することで、原液に含まれる不純物を除去することができる。
【0005】
クロスフロー濾過においては、多数の中空糸膜を束ねた膜モジュールを形成し、複数の膜モジュールで構成したクラスターを使用することで、比較的低い流圧で大量の発酵麦芽飲料の濾過を行っていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2020-110089号公報
【文献】国際公開第2009/054495号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
発酵麦芽飲料のクロスフロー濾過を行う場合、中空糸膜の態様は、例えばポリエーテルスルホン(PES:孔径0.65μm)などの樹脂製であり、個々の中空糸膜のサイズは直径数ミリメートル程度、長さ120cm程度であり、ストロー状に製造されたものを使用していた。このような中空糸膜の多数本(約2700本)を束ねて、例えば直径160mm程度の膜モジュールを形成していた。
【0008】
クロスフロー濾過を行うクラスターにおいて、中空糸膜の破断などの不具合が発生すれば、濾過不良となってクロスフロー濾過済み液に不純物が混入する虞がある。そのため、当該クラスターにおいて中空糸膜の不具合の有無を調べる検査を定期的に行う必要がある。当該検査は、目視や、中空糸膜を湿潤させた状態で二次側からのエアーによる加圧を行って気泡の有無を確認する、などによって行われる。
【0009】
当該検査によって、少なくとも一部の中空糸膜に不具合が存在することが判明した場合、膜モジュールの交換や、損傷した中空糸膜に通液しないように該当する個々の中空糸膜の濾過前の一次側端の開口を補修ピン(補修部材)等で塞ぐメンテナンス、などを行っていた。
【0010】
当該補修部材は、例えばポリエーテルスルホン(PES)などの樹脂製であり、中空糸膜の端部開口に挿入できるように個々の中空糸膜と同等の直径(数ミリメートル程度)を有し、長さ数センチメートル程度の細長い棒状の態様であるものを使用していた。
【0011】
当該補修部材を使用したメンテナンスを行う場合は、膜モジュールのうち不具合が存在する中空糸膜のみの開口に、補修部材を専用の治具(補修部材挿入治具)を使用して挿入していた。この補修部材挿入治具は、作業者が把持する把持部および補修部材を保持する保持部を備え、当該保持部の先端において保持部の軸心方向に補修部材の一端を挿入保持した状態で、補修部材の他端を不具合が存在する中空糸膜の開口に挿入できるように構成してあった。
【0012】
補修部材は、保持部の先端部に挿入保持されていない寸法だけ中空糸膜の内部に挿入するか、或いは、補修部材が中空糸膜の内部に確実に挿入された(抜け難い)と判断した時点で挿入動作を終了していた。このとき補修部材は、当該補修部材の外表面が中空糸膜の内表面との摩擦力によって中空糸膜の内部に保持された状態で、その一端が中空糸膜からはみ出た状態となっており、このはみ出た部分を作業者がニッパーなどで切断していた。
【0013】
補修部材挿入治具を使用してメンテナンスを行う場合、補修部材の挿入角度が安定しないなどによって補修部材の挿入時に当該補修部材の折れ曲がりや、中空糸膜の開口付近の割れ破損などが発生する虞があった。そのため、作業者はこのような補修部材の折れ曲がり等が発生しないように慎重に挿入動作を行う必要があり、当該挿入動作に時間を要していた。また、例えば補修部材の折れ曲がりが発生すると、曲がった位置から補修部材を中空糸膜に挿入し難くなってそれ以上の挿入動作を行えなくなるため、補修部材を使用したメンテナンスを確実に行えなくなる。
【0014】
また、メンテナンス後にクロスフロー濾過を再開したとき、仮に中空糸膜の開口に挿入した補修部材の長さが短い場合(補修部材の挿入長さ不足)などにより、クロスフロー濾過中に補修部材が抜ける虞があった。
【0015】
従って、本発明の目的は、クロスフロー濾過で使用する中空糸膜の開口に挿入する補修部材を中空糸膜に迅速かつ確実に挿入し易くできる補修部材挿入ガイド部材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記目的を達成するための本発明に係る補修部材挿入ガイド部材の特徴構成は、液体中の不純物を取り除くクロスフロー濾過において使用される中空糸膜のメンテナンス用の補修部材を前記中空糸膜の端部開口に挿入する補修部材挿入治具の一部が挿通する貫通孔部と、当該貫通孔部を形成した長尺状のガイド部材本体と、を備え、前記貫通孔部は、作業者が把持する把持部および前記補修部材を保持する保持部を備えた前記補修部材挿入治具の前記保持部のみが挿通し、かつ、前記保持部が近接あるいは接触した状態で挿通できる内径を有し、前記ガイド部材本体は、前記保持部が前記補修部材を保持した状態で前記貫通孔部に挿通したときに、前記補修部材の一部が出現し、かつ、前記保持部が前記貫通孔部から出現しない長さ寸法、を有した点にある。
【0017】
本構成によれば、補修部材挿入治具(保持部)の一部が貫通孔部に挿通した状態で補修部材を中空糸膜に挿入する際に、補修部材挿入治具を中空糸膜の側へ移動させる挿入動作を行えば、貫通孔部を形成した長尺状のガイド部材本体は、その長さの分だけ補修部材および補修部材挿入治具を中空糸膜の内部に向かう挿入方向にガイドすることができる。
【0018】
貫通孔部は、補修部材挿入治具の保持部のみが挿通するため、保持部の先端において補修部材の一端を保持した状態で、貫通孔部に保持部を挿通させることができ、貫通孔部に把持部は挿通させない態様とすることができる。これにより、補修部材挿入治具が中空糸膜の側へ移動する挿入動作の際に、当該把持部が補修部材挿入ガイド部材に接触したときに、補修部材挿入治具が中空糸膜側へ移動する挿入動作を停止させることができる。このように挿入動作を停止させることができるように構成することで、補修部材が中空糸膜の内部に挿入される長さを規定することができる
【0019】
また、貫通孔部は、保持部が近接あるいは接触した状態で挿通できる内径を有するため、例えばガイド部材本体の貫通孔部を、該当する中空糸膜の開口に一致するように(予め)配置すれば、補修部材挿入治具、補修部材および中空糸膜を直線状に配置できることができ、この状態で挿入動作を行えば、補修部材を中空糸膜の内部(長さ方向)に真っ直ぐに挿入することができる。
【0020】
また、ガイド部材本体は、保持部が補修部材を保持した状態で貫通孔部に挿通したときに、補修部材の一部が出現し、かつ、保持部が前記貫通孔部から出現しない長さ寸法、を有するため、ガイド部材本体から補修部材のみが出現した状態とすることができる。従って、この状態で補修部材挿入治具が中空糸膜の側へ移動する挿入動作を行えば、ガイド部材本体の他端側から出現した長さの補修部材を中空糸膜の内部に挿入することができる。そのため、中空糸膜の内部に挿入する補修部材の長さを明確に規定することができる。
【0021】
このように、本構成によれば、挿入動作の際に、補修部材挿入ガイド部材は補修部材および補修部材挿入治具を中空糸膜の内部(長さ方向)に向かう挿入方向にガイドすることができるため、補修部材の挿入角度を安定させることができ、補修部材が折れ曲がり難い状態、および、中空糸膜の端部開口付近の割れ破損などが発生し難い状態で挿入動作を行うことができる。
【0022】
従って、本構成によれば、補修部材を不具合が発生した中空糸膜に迅速かつ確実に挿入することができる。
【0023】
本発明に係る補修部材挿入ガイド部材の更なる特徴構成は、前記ガイド部材本体を透明または半透明の材料で構成した点にある。
【0024】
本構成によれば、補修部材挿入治具(保持部)の先端において補修部材の一端を保持した状態で、これらをガイド部材本体(貫通孔部)に挿通させたとき、当該ガイド部材本体が透明または半透明の材料で構成してあるため、ガイド部材本体の内部を挿通する補修部材、補修部材挿入治具(保持部)および中空糸膜の端部開口を確実に認識することができる。そのため、作業者が挿入動作を行い易くなる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】実施形態の補修部材挿入ガイド部材および補修部材挿入治具を示す図である。
図2】補修部材挿入ガイド部材および補修部材を保持する補修部材挿入治具を示す図である。
図3】補修部材挿入ガイド部材の一端側から補修部材および補修部材挿入治具を挿入させる場合の概略図である。
図4】補修部材挿入ガイド部材の一端側から補修部材および補修部材挿入治具を挿入させる場合の概略図である。
図5】補修部材を中空糸膜に挿入する際に、補修部材挿入治具を中空糸膜の側へ移動させる挿入動作を行う場合の概略図である。
図6】補修部材を中空糸膜に挿入する際に、補修部材挿入治具を中空糸膜の側へ移動させる挿入動作を行う場合の概略図である。
図7】クロスフロー濾過における膜モジュールの概略図である。
図8】複数の貫通孔部を形成したガイド部材本体の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
図1,2に示したように、本発明の補修部材挿入ガイド部材10は、液体中の不純物を取り除くクロスフロー濾過において使用される中空糸膜30のメンテナンス用の補修部材40を中空糸膜30の端部開口30aに挿入する補修部材挿入治具20の一部が挿通する貫通孔部11と、貫通孔部11を形成した長尺状のガイド部材本体12と、を備える。
【0027】
貫通孔部11は、作業者が把持する把持部21および補修部材40を保持する保持部22を備えた補修部材挿入治具20の保持部22のみが挿通し、かつ、保持部22が近接あるいは接触した状態で挿通できる内径を有する。
【0028】
ガイド部材本体12は、保持部22が補修部材40を保持した状態で貫通孔部11に挿通したときに、補修部材40の一部が出現し、かつ、保持部22が貫通孔部11から出現しない長さ寸法、を有する。
【0029】
クロスフロー濾過は、ポンプによる原液循環による液流を用いて、膜表面に対して平行な液流れを作りながら濾過する濾過方式であり、液体中の不純物を取り除く等の用途で汎用される。当該液体は、例えば飲料の製造過程で産したものとすることができるが、これに限定されるものではない。当該飲料は、例えば発泡酒等の発酵麦芽飲料等とすることができる。
【0030】
クロスフロー濾過においては、多数の中空糸膜30を束ねた膜モジュール31を形成し(図7)、複数の膜モジュール31で構成したクラスターを使用する。クロスフロー濾過を行うクラスターにおいて、中空糸膜30の破断などの不具合が発生すれば、濾過不良となってクロスフロー濾過済み液に不純物が混入する虞があるため、不具合が存在することが判明した個々の中空糸膜30に対して、例えばその一次側端の開口を補修部材40等で塞ぐメンテナンスを行う。
【0031】
本発明の補修部材挿入ガイド部材10は、補修部材40を中空糸膜30に挿入する際に、補修部材挿入治具20と共に使用する。本実施形態の補修部材挿入治具20は、作業者が把持する把持部21および補修部材40を保持する保持部22を備える場合について説明する。当該保持部22は、例えば補修部材40を保持部22の軸心Z方向に保持することができる態様であれば特に限定されるものではないが、例えば、保持部22の先端部22aに補修部材40の一端40aを挿入保持できる孔部22bを形成するのがよい。このとき、補修部材40の一端40aは小径に構成して、保持部22の孔部22bに挿入保持し易くするとよい。
【0032】
補修部材挿入ガイド部材10は、補修部材挿入治具20の一部が挿通する貫通孔部11と、貫通孔部11を形成した長尺状のガイド部材本体12と、を備える。
【0033】
貫通孔部11はガイド部材本体12が貫通する孔部である。補修部材挿入治具20が保持部22において補修部材40を保持する状態において、ガイド部材本体12の一端側12aから補修部材40および補修部材挿入治具20の一部を挿入させたとき、ガイド部材本体12の他端側12bから補修部材40の一部が出現する(図3,4)。
【0034】
即ち、補修部材挿入治具20(保持部22)の一部が貫通孔部11に挿通した状態で補修部材40を中空糸膜30に挿入する際に、補修部材挿入治具20を中空糸膜30の側へ移動させる挿入動作を行えば、貫通孔部11を形成した長尺状のガイド部材本体12は、その長さの分だけ補修部材40および保持部22を中空糸膜30の内部に向かう挿入方向にガイドすることができる(図5,6)。
【0035】
本実施形態では、貫通孔部11は補修部材挿入治具20における保持部22のみが挿通する場合について説明する。このとき、例えば把持部21は保持部22より大径に形成する等のように構成し、貫通孔部11に把持部21は挿通させない態様とすることができる。これにより、補修部材挿入治具20が中空糸膜30の側へ移動する挿入動作の際に、当該把持部21の保持部22側の端部21aがガイド部材本体12の一端側12aに接触したときに、補修部材挿入治具20が中空糸膜30側へ移動する挿入動作を停止させることができる。
【0036】
このように挿入動作を停止させることができるように構成することで、補修部材40が中空糸膜30の内部に挿入される長さを規定することができる。
【0037】
貫通孔部11は、保持部22が近接あるいは接触した状態で挿通できる内径を有するため、例えばガイド部材本体12の他端側12bに開口する貫通孔部11を、該当する中空糸膜30の端部開口30aに一致するように(予め)配置すれば、補修部材挿入治具20(保持部22)、補修部材40および中空糸膜30を直線状に配置できることができ、この状態で挿入動作を行えば、ガイド部材本体12の他端側12bから出現した補修部材40の他端40bを中空糸膜30の内部(長さ方向)に真っ直ぐに挿入することができる。
【0038】
貫通孔部11の具体的な内径は、補修部材挿入治具20の一部(保持部22のみ)が容易に挿通できるように、貫通孔部11に挿通する補修部材挿入治具20の部分(保持部22のみ)の外径より少し大きくなるように構成し、補修部材挿入治具20が中空糸膜30側へ移動する挿入動作をガイドできる程度のサイズとするのがよい。
【0039】
例えば、保持部22の外径を例えば5.5mmとした場合、貫通孔部11の内径は6mm程度とするのがよいが、これに限定されるものではない。例えば貫通孔部11に保持部22を挿通させたときにある程度のクリアランスが形成されるように、保持部22の外径および貫通孔部11の内径の比率を、例えば1:1.1~1.3とするように構成してもよい。
【0040】
本実施形態においては、補修部材40は、中空糸膜30の上流の端部開口30aに挿入するだけでなく、下流の端部開口に挿入する場合について説明する。しかし、このような態様に限定されるものではなく、上流の端部開口および下流の端部開口の何れか一方に挿入してもよい。
【0041】
ガイド部材本体12は、貫通孔部11を形成した長尺状の態様としてある。ガイド部材本体12の具体的な長さ寸法は、保持部22の長さや、保持部22において補修部材40を保持する状態の長さ、を考慮して規定するとよい。
【0042】
即ち、ガイド部材本体12の長さ寸法は、補修部材挿入治具20が中空糸膜30側へ移動する挿入動作をガイドすることができる程度の寸法とするのがよいが、その上限は、少なくとも、保持部22において補修部材40を保持する状態の長さ(保持長さ:保持部22の基部22cから補修部材40の他端40b)を超えないようにする必要がある。
【0043】
具体的には、ガイド部材本体12は、保持部22が補修部材40を保持した状態で貫通孔部11に挿通したときに、補修部材40の一部が出現し、かつ、保持部22が貫通孔部11から出現しない長さ寸法、を有する。
【0044】
本構成では、保持部22の先端において補修部材40の一端40aを挿入保持した状態でこれらを貫通孔部11に挿通させたとき、ガイド部材本体12の他端側12bから補修部材40のみが出現した状態とすることができる。従って、この状態で補修部材挿入治具20が中空糸膜30の側へ移動する挿入動作を行えば、ガイド部材本体12の他端側12bから出現した長さの補修部材40を中空糸膜30の内部に挿入することができる。そのため、中空糸膜30の内部に挿入する補修部材40の長さを明確に規定することができる。
【0045】
また、補修部材40を中空糸膜30に挿入する長さを当該補修部材40の例えば5~7割程度とすれば、この挿入長さの分がガイド部材本体12の他端側12bから出現する状態とするのがよい。この場合、ガイド部材本体12の長さ寸法は、前記保持長さから前記挿入長さを引いた寸法とするのがよい。
【0046】
本実施形態では、ガイド部材本体12の長さ寸法は保持部22の長さ寸法と略等しく構成した場合について説明する。例えば、保持部22の長さ寸法を例えば91mmとした場合、ガイド部材本体12の長さ寸法は90~91mm程度とするのがよいが、これに限定されるものではない。例えばガイド部材本体12の長さ寸法および保持部22の長さ寸法の比率を、1:1.0~1.2とするように構成してもよい。
【0047】
ガイド部材本体12は長尺状の態様とするが、その外形は特に限定されるものではなく、円柱状や角柱状等の形状とすればよい。例えば当該外形を円柱状とした場合、その直径は特に限定されるものではなく、例えば30~50mm程度とすればよい。
【0048】
ガイド部材本体12には、複数の貫通孔部11を形成してもよい(図8)。本構成では、補修部材40を中空糸膜30に挿入する際に、複数の貫通孔部11のうちの何れの貫通孔部11を使用するか、作業者が選択することができる。例えば、膜モジュール31の外周付近の中空糸膜30に補修部材40を挿入する場合などにおいて、複数の貫通孔部11のうち、前記中空糸膜30と位置合わせをし易い貫通孔部11を選択して挿入動作を行うとよい。
【0049】
このように、本発明では、挿入動作の際に、補修部材挿入ガイド部材10は補修部材40および補修部材挿入治具20(保持部22)を中空糸膜30の内部(長さ方向)に向かう挿入方向にガイドすることができるため、補修部材40の挿入角度を安定させることができ、補修部材40が折れ曲がり難い状態、および、中空糸膜30の端部開口30a付近の割れ破損などが発生し難い状態で挿入動作を行うことができる。
【0050】
従って、本発明の補修部材挿入ガイド部材10によれば、補修部材挿入治具20(保持部22)の先端において補修部材40の一端40aを(挿入)保持した状態で、貫通孔部11に補修部材挿入治具20(保持部22)および補修部材40を挿入すれば、補修部材40の他端40bを不具合が発生した中空糸膜30の端部開口30aに迅速かつ確実に挿入することができる。
【0051】
ガイド部材本体12を構成する材料は特に限定されるものではないが、透明または半透明の材料で構成するのがよい。具体的には、アクリル樹脂等の材料を使用することができる。
【0052】
本構成では、保持部22の先端において補修部材40の一端40aを挿入保持した状態で、これらをガイド部材本体12(貫通孔部11)に挿通させたとき、当該ガイド部材本体12が透明または半透明の材料で構成してあるため、ガイド部材本体12の内部を挿通する補修部材40、保持部22および中空糸膜30の端部開口30aを確実に認識することができる。そのため、作業者が挿入動作を行い易くなる。
【0053】
本実施形態における中空糸膜30は、ポリエーテルスルホン(PES:孔径0.65μm)などの樹脂製であり、個々の中空糸膜30のサイズは内径1.5mm程度、長さ120cm程度であり、ストロー状を呈する態様について説明するが、材料およびサイズともに上記の態様に限定されるものではない。
【0054】
また、本実施形態における補修部材40は、ポリエーテルスルホン(PES)などの樹脂製であり、中空糸膜30の端部開口30aから挿入できるように個々の中空糸膜30の内径と同等の直径(1.5mm程度)を有し、長さ数センチ程度の細長い棒状の態様である態様について説明するが、材料およびサイズともに上記の態様に限定されるものではない。
【0055】
例えば、補修部材40の長さ寸法を44mmとした場合、保持部22の先端部22aに形成した孔部22bに補修部材40の一端40aを12mm程度挿入して挿入保持し、保持部22の先端部22aに挿入されていない32mmの補修部材40を中空糸膜30の内部に挿入することができる。
【実施例
【0056】
不具合が存在することが判明した個々の中空糸膜30に対して、例えばその一次側の端部開口30aを補修部材40で塞ぐメンテナンスを以下の手順で行った。
【0057】
まず、中空糸膜30の不具合の有無を確認するため、クロスフロー濾過を行うクラスターにおいて、膜モジュール5本単位で不良膜モジュールを検知するクラスターテストを行った。このとき不合格となったクラスターにおいて、モジュールテストを実施し、5本の中から不良膜モジュールを特定する。膜モジュール1本ごとに、目視や、中空糸膜30を湿潤させた状態で二次側からのエアーによる加圧を行って気泡の有無を確認する、などの検査を行った。気泡の発生により不具合が存在することが確認された中空糸膜30に対して、補修部材挿入治具20および補修部材挿入ガイド部材10を使用して、補修部材40を中空糸膜30に挿入するメンテナンスを行った。
【0058】
補修部材挿入治具20における保持部22の先端部22a(孔部22b)に、補修部材40の一端40aを挿入して保持部22の軸心Z方向に補修部材40を挿入保持した。この状態で、補修部材挿入ガイド部材10における貫通孔部11において、ガイド部材本体12の一端側12aから補修部材40および保持部22をこの順に挿入した(図3,4)。
【0059】
貫通孔部11におけるガイド部材本体12の他端側12bから出現した補修部材40の他端40bを、不具合が発生した中空糸膜30の端部開口30aに軽く挿入した。この際、ガイド部材本体12の他端側12bに開口する貫通孔部11を、当該中空糸膜30の端部開口30aに一致するように保持部22に沿ってスライドさせることによって配置した(図5)。このとき、保持部22、補修部材40および中空糸膜30を直線状に配置できる状態となり、この状態で補修部材挿入治具20を中空糸膜30側へ移動させる挿入動作を行った(図6)。即ち、補修部材40および補修部材挿入治具20(保持部22)はガイド部材本体12(貫通孔部11)によって中空糸膜30の内部に向かう挿入方向にガイドされ、補修部材40を中空糸膜30の内部に真っ直ぐに挿入することができた。
【0060】
当該挿入動作の際に、把持部21の保持部22側の端部21aがガイド部材本体12の一端側12aに接触し、補修部材挿入治具20が中空糸膜30側へ移動する挿入動作が停止した。このとき、既に所望量の補修部材40が中空糸膜30の内部に挿入されているため、補修部材挿入治具20および補修部材挿入ガイド部材10を除去した。当該除去後、中空糸膜30よりはみ出た補修部材40の一端40a側を、作業者がニッパーなどで切断した。
【0061】
上記のメンテナンス後にクロスフロー濾過を再開したが、所望量の補修部材40が中空糸膜30の内部に挿入されているため、挿入された補修部材40は抜け難い状態で濾過を行うことができた。
【産業上の利用可能性】
【0062】
本発明の補修部材挿入ガイド部材は、液体中の不純物を取り除くクロスフロー濾過において使用される中空糸膜のメンテナンス用の補修部材を中空糸膜の端部開口に挿入する際に利用できる。
【符号の説明】
【0063】
10 補修部材挿入ガイド部材
11 貫通孔部
12 ガイド部材本体
20 補修部材挿入治具
21 把持部
22 保持部
30 中空糸膜
40 補修部材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8