(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-07
(45)【発行日】2023-12-15
(54)【発明の名称】家禽部位を処理するための方法及びシステム
(51)【国際特許分類】
A22C 21/00 20060101AFI20231208BHJP
G05B 19/418 20060101ALI20231208BHJP
B26D 7/30 20060101ALI20231208BHJP
B26D 5/26 20060101ALI20231208BHJP
B26D 3/28 20060101ALI20231208BHJP
G01N 21/17 20060101ALI20231208BHJP
【FI】
A22C21/00 Z
G05B19/418 Z
B26D7/30
B26D5/26 B
B26D3/28 610F
B26D3/28 610G
G01N21/17 A
(21)【出願番号】P 2020570906
(86)(22)【出願日】2019-06-19
(86)【国際出願番号】 GB2019051718
(87)【国際公開番号】W WO2019243812
(87)【国際公開日】2019-12-26
【審査請求日】2022-06-13
(32)【優先日】2018-06-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】506315310
【氏名又は名称】イシダ ヨーロッパ リミテッド
【氏名又は名称原語表記】ISHIDA EUROPE LIMITED
(74)【代理人】
【識別番号】100111187
【氏名又は名称】加藤 秀忠
(74)【代理人】
【識別番号】100181021
【氏名又は名称】西尾 剛輝
(74)【代理人】
【識別番号】100175617
【氏名又は名称】三崎 正輝
(74)【代理人】
【識別番号】100159916
【氏名又は名称】石川 貴之
(72)【発明者】
【氏名】ニールセン,ウルリッヒ カーリン
【審査官】柳本 幸雄
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2007/022782(WO,A2)
【文献】国際公開第2016/139611(WO,A2)
【文献】特表2017-526340(JP,A)
【文献】特開2013-046636(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第107993203(CN,A)
【文献】国際公開第98/035797(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0210023(US,A1)
【文献】欧州特許出願公開第03045882(EP,A1)
【文献】米国特許出願公開第2004/0134319(US,A1)
【文献】米国特許第08643851(US,B2)
【文献】米国特許出願公開第2009/0137195(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A22C 5/00-29/04
G05B 19/418
B26D 7/30
B26D 5/26
B26D 3/28
G01N 21/17
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
食品部位を処理する方法であって、
制御ユニットにおいて
食品切断部位の目標重量を決定する工程と、
検査ユニットを用いて
食品部位を検査して前記
食品部位の質量分布を決定し、前記質量分布を前記制御ユニットに提供する工程と、
前記制御ユニットを用いて前記目標重量と前記質量分布とに基づいて前記
食品部位の切断計画を算出する工程と、
機械式グリッパを用いて、前記
食品部位を
ピックアップ位置で把持し前記切断計画を実行するために前記
食品部位を配置する工程と、
前記切断計画に応じて切断ユニットにより前記
食品部位を切断し、前記目標重量に応じて
食品切断部位を製造する工程と、
前記機械式グリッパを用いて、前記ピックアップ位置から離れた排出位置で前記食品切断部位を排出する工程と、
を備える方法。
【請求項2】
食品部位の1バッチを形成する工程を備え、前記目標重量は、目標バッチ重量と現在不完全なバッチの重量とに基づいて決定される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記目標重量は、前記1バッチ内の
食品部位目標数と、前記現在不完全なバッチ内の
食品部位の数とに基づいて決定される、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記目標重量が、前記
食品部位の重量および/または前記
食品部位より上流に位置する一以上の
食品部位の重量に基づいて決定される、請求項2または請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記制御ユニットにおいて、後続の
食品切断部位の新たな目標重量を決定する工程をさらに含み、前記新たな目標重量は、少なくとも前記目標バッチ重量と現在不完全なバッチの更新後の重量とに基づいて、必要に応じて前記バッチの
食品部位の目標数と前記現在不完全なバッチの更新後の
食品部位の数とに基づいて、さらに必要に応じて後続の
食品部位の重量および/または前記後続の
食品部位より上流に位置する一以上の
食品部位の重量に基づいて決定される、請求項2から4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
前記目標重量の決定は、目標最小切れ端部重量と、目標最大切れ端部重量と、目標切り端部重量とのうちの一以上に基づいて行われる、
請求項1から5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
前記目標重量の決定は、最小および/または最大
食品切断部位重量に基づいて行われる、
請求項1から6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
前記検査ユニットが計量ユニットを含み、前記
食品部位を検査する工程が、前記
食品部位を前記計量ユニットで計量することを含む、
請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記検査ユニットが画像化ユニットを含み、前記
食品部位を検査する工程が、前記
食品部位を前記画像化ユニットで画像化して前記
食品部位の体積分布を決定することを含む、
請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記検査ユニットが走査ユニットを含み、前記
食品部位を検査する工程が、前記
食品部位を前記走査ユニットで走査することを含み、前記走査ユニットは好ましくは超音波ユニットまたはX線ユニットである、
請求項1から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記
食品部位を検査して前記
食品部位の所定の解剖学的領域を特定し、前記質量分布と前記所定の解剖学的領域とに基づいて前記切断計画を算出する工程をさらに含む、
請求項1から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記切断計画を算出する工程が、前記目標重量を満たす
食品切断部位を製造する前記所定の解剖学的領域内の切断線を識別することを含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記
食品部位を検査して前記
食品部位の主軸を特定する工程をさらに備え、前記切断計画を算出する工程が前記主軸に対する切断線を算出することを含む、
請求項1から12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記主軸に対して切断線を算出することが、前記主軸に対して略鋭角を規定する切断線を算出することを含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記主軸に対して切断線を算出することが、前記主軸に平行な平面を略規定する切断線を算出することを含む、請求項13に記載の方法。
【請求項16】
前記
食品部位を検査して前記
食品部位内の異物の存在と位置とを特定する工程をさらに備え、前記切断計画を算出する工程がさらに前記異物の位置に基づき、必要に応じて、前記目標重量を決定する工程が前記異物の存在に基づく、
請求項1から15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記切断計画を実行するために前記
食品部位を配置する工程が、前記切断ユニットに対して前記
食品部位を移動させることを含む、
請求項1から16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
運搬ユニットを使用して前記
食品部位を前記機械式グリッパへと運搬する工程をさらに備える、
請求項1から17のいずれかに記載の方法。
【請求項19】
前記
食品部位を把持する工程が、前記
食品部位を前記運搬ユニットから持ち上げる工程を備える、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記
食品部位を前記機械式グリッパで把持しながら前記
食品部位を切断する工程をさらに備える、請求項1から19のいずれかに記載の方法。
【請求項21】
前記機械式グリッパが計量ユニットを備え、前記切断計画の実行後に、前記
食品切断部位を前記機械式グリッパで計量する工程をさらに備える、
請求項1から20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
前記切断ユニットが所定の切断方向に沿って切断するように構成され、
機械式グリッパを用いて、前記食品部位をピックアップ位置で把持し前記切断計画を実行するために前記食品部位を配置する工程は、前記切断ユニットが前記
食品部位を前記切断計画に応じて切断できるように前記
食品部位を前記所定の切断方向に対して配置することを含む、
請求項1から21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
前記方法が、
食品部位の1バッチを形成する工程を備え、前記排出位置は、前記
食品部位の1バッチのためのパッケージである、
請求項1から22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
前記切断ユニットが切断刃を含み、前記刃が好ましくは単一の切断面で切断するように構成される、
請求項1から23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
複数の目標重量を決定する工程を備え、各目標重量は、履行すべき各注文に関連しており、前記複数の目標重量のうち前記検査後の
食品部位に最もよく対応する一つを選択する工程をさらに備え、前記切断計画の算出は、前記選択された目標重量と、前記検査後の
食品部位の質量分布とに基づく、
請求項1から24のいずれかに記載の方法。
【請求項26】
前記複数の目標重量のうち前記検査後の
食品部位に最もよく対応する一つを選択する工程が、推定切れ端部重量、異物の存在および/または位置、前記
食品部位の上流に位置する一以上の
食品部位の重量、履行すべき一以上の注文について予測される更新されたバッチ重量、履行すべき一以上の注文について1バッチにおける予測される更新された
食品部位の数、および各種注文の総数のうちの一以上に基づく、請求項
25に記載の方法。
【請求項27】
食品部位を処理するためのシステムであって、
食品切断部位目標重量を決定し、前記目標重量と
食品部位の質量分布とに基づいて前記
食品部位の切断計画を算出するよう構成した制御ユニットと、
食品部位を検査して前記
食品部位の前記質量分布を決定し、前記質量分布を前記制御ユニットに提供するよう構成した検査ユニットと、
前記
食品部位を把持し、前記切断計画を実行するために前記
食品部位を配置するよう構成した機械式グリッパと、
前記切断計画に応じて前記
食品部位を切断して
食品切断部位の前記目標重量に応じた
食品切断部位を製造するよう構成した切断ユニットと、を備え
、
前記機械式グリッパはピックアップ位置で前記食品部位を把持し、かつ、前記ピックアップ位置から離れた排出位置で前記食品切断部位を排出するように構成されている、
システム。
【請求項28】
請求項
27に記載の
食品部位を処理するためのシステムであって、請求項1から
26のいずれかに記載の方法を行うよう構成した前記システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、家禽部位特に鶏胸肉を処理する方法、およびこのような家禽部位を処理するためのシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
鶏胸肉等の家禽部位は、特定の注文要件をより良く履行するために、切断またはトリミング(即ち切断して丁度よい大きさにする)することによって処理されるのが一般的である。切断及びトリミングは、家禽部位が特に重量要件を満たすように行うのが一般的である。たとえば、当技術分野における特定要件として、各家禽切断部位が一回の食事分に対応する重量を有することが挙げられる。さらに、家禽部位をトリミングして、脂肪や骨片等の異物を取り除くことが処理に含まれる場合もある。その他の特定の場合として、たとえば750グラムの重さの鶏胸肉を1バッチとして、1バッチ分の家禽部位についての注文の一部を履行するよう適した大きさに各部位を切り落とす場合がある。
【0003】
人件費を削減し、部位の切断精度を高め、切れ端部による製品の無駄を減らし、過大製品による過剰な製品の提供を最小限に抑え、処理速度を上げるために、各家禽部位処理用の多くの自動システムが開発されてきた。通常、家禽部位を所望の重量にトリミングする最も効率的な方法は、その家禽部位に固有の切れ目を入れることであったが、このような固有の切断計画に応じる一般的な方法は、任意の所望の切断線に沿って切断するための複雑なロボットアームを用いたものであった。たとえば、WO2015/198062A1には家禽部位をトリミングするための既知のシステムが記載されている。このシステムでは、ウォータージェットを備えた複雑なロボット切断アームを使用して、異物を除去するために各家禽部位をトリミングしている。しかしながらこのようなロボットアームは非常に高価であるため、家禽部位を処理するのに効率の良い方法であるこのような方法を幅広く採用する際の妨げとなっている。したがって、本発明の目的は、高価で複雑なロボット切断アームを用いずに家禽部位を処理するための改善された方法を、特定ユーザの用途に応じた個々の家禽部位の切断計画に関するこの方法の利点を維持しながら提供することである。
【発明の概要】
【0004】
本発明の第1の態様によれば、家禽部位を処理する方法であって、以下の工程を含む方法が提供される。制御ユニットにおいて家禽切断部位の目標重量を決定する工程と、検査ユニットを用いた家禽部位の検査により家禽部位の質量分布を決定し質量分布を制御ユニットに提供する工程と、制御ユニットを用いて目標重量と質量分布とに基づいて家禽部位の切断計画を算出する工程と、機械式グリッパを用いて家禽部位を把持し切断計画を実行するために家禽部位を配置する工程と、切断計画に応じて切断ユニットにより家禽部位を切断し目標重量に応じて家禽切断部位を製造する工程と、を備える。機械式グリッパを使用して家禽部位を把持し、切断計画を実行するために家禽部位を切断ユニットに対して配置することにより、家禽部位の処理の費用効果を最も効率的にできることがわかった。そのような機械式グリッパを使用して切断前に家禽部位を配置することにより、より複雑な切断計画を比較的単純な切断ユニットによって実行可能である。
【0005】
本方法は家禽部位の処理を対象としているが、さらに魚の部位および肉の部位等の他の種類の食品部位にもこの方法が適用できると想定される。
【0006】
目標重量は、160グラム等の単一の値であっても、150~160グラム等の範囲であってもよい。いくつかの単純な状況では、家禽切断部位ごとの目標重量が、各家禽部位に固定の単一の値であるかもしれない。しかしながらほとんどの場合、目標重量の決定にはいくつかの要因が寄与しており、これらについて以下に説明する。但し、切断計画を算出する前の任意の段階で目標重量を決定してもよく、実際いくつかの実施形態では、質量分布等の検査データが目標重量を決定するために使用される要因の一つである。同様に、目標重量を決定する前に、機械式グリッパが既に家禽部位を受け取っていてもよい。
【0007】
さらに、この段階で、上述の作業を実行するために機械式グリッパと切断ユニットとは制御ユニットによって通常制御されている。
【0008】
一般的な家禽部位の注文の種類として1バッチ分の家禽部位があり、各バッチが目標重量を有する。たとえば、規定の重量でパッケージに入った鶏胸肉ささみ(fillets)の各バッチを購入するのが一般的である。バッチ重量要件に効率的に応じるために、この方法が、家禽部位の1バッチを形成する工程を備えることが好ましく、目標重量は、目標バッチ重量と現在不完全なバッチの重量とに基づいて決定される。目標バッチ重量は通常、特定の注文に関連付けられた重量となる。たとえば、注文の例として、鶏胸肉ささみ1000バッチの注文で、各バッチの重量が750グラムである。この場合、目標バッチ重量は750グラムである。この場合も、740~760グラム等の重量範囲である目標バッチ重量によってバッチ重量の許容誤差に対応してもよい。現在不完全なバッチの重量は、現在準備中のバッチの重量であってよい。この値は、あるバッチにまだ部位が割り当てられていない場合には0グラムであってもよく、目標バッチ重量より小さいゼロ以外の値であってもよい。たとえば、特定バッチの現在不完全な重量が590グラムで目標バッチ重量が750グラムの場合、このバッチを完成させるための目標重量を160グラムと決定してもよい。この場合この方法は、家禽部位を検査する前にバッチを完成させるのに必要な重量として目標重量を計算し、この目標重量を達成するために必要な切断計画を算出する工程を備える。
【0009】
注文によっては、家禽部位の1バッチとして特定数の家禽部位を要求する場合がある。たとえば、注文が1000バッチで、各バッチが鶏胸肉部位を四つ有し、バッチ総重量が750グラムであるとする。この場合、1バッチ内の家禽部位目標数と現在不完全なバッチ内の家禽部位の数とに基づいて、目標重量を決定することが好ましい。この場合も、家禽部位の目標数が範囲であってもよく、たとえば3~5個の家禽部位等であってよい。目標重量の決定に家禽部位の目標数を含めることにより、受け入れた家禽部位によって完成されずに不完全な家禽部位のバッチが製造されてしまうのを防ぐことができる。
【0010】
目標重量は、家禽部位の重量および/または家禽部位より上流に位置する一以上の家禽部位の重量に基づいて決定されることが好ましい。目標重量を決定する際に受け入れる家禽部位の重量を考慮することにより、たとえば、非常に大きな家禽部位を小さな家禽切断部位を製造するのに使用して、低価値の家禽切れ端部が大量に生産されるのを防ぐことができる。さらに、上流の家禽部位の重量を目標重量の決定の際に考慮することにより、受け入れる家禽部位の重量の変動がシステムにおいてより考慮されるようになり、受け入れる家禽をより効率的に使用可能となる。たとえば、この方法によって上流の家禽部位が比較的小さい場合にこれを考慮して、現在処理中の家禽部位の目標重量を増やせるので、受け入れた小さな家禽部位を特定のバッチに入れることができる。
【0011】
これまでの記載は、単一の家禽部位の単一の目標重量の決定に注目してきた。一方、その後に受け入れる各家禽部位についてこの方法を繰り返す場合が想定される。たとえば、この方法が、後続の家禽切断部位の目標重量を決定する工程を含んでもよい。この新たな目標重量は、少なくとも目標バッチ重量と現在不完全なバッチの更新後の重量とに基づいて、必要に応じてバッチの家禽部位の目標数と現在不完全なバッチの更新後の家禽部位の数とに基づいて、さらに必要に応じて後続の家禽部位の重量および/または後続の家禽部位より上流に位置する一以上の家禽部位の重量に基づいて決定される。たとえば、現在不完全なバッチの更新後の重量は、現在不完全なバッチの前回の重量に前回の目標重量を加えることによって決定してもよい。あるいは、不完全なバッチを計量して、現在不完全なバッチの重量を更新してもよい。あるいは、切断後及びバッチに加える前に各家禽切断部位を計量して部位の正確な重量を確認し、バッチの現行総重量を維持してもよい。
【0012】
いくつかの実施形態では、目標最小切れ端部重量と、目標最大切れ端部重量と、目標切り端部重量とのうちの一つに基づいて目標重量が決定される。切れ端部とは家禽部位の一部であり、通常は分割した家禽部位のより小さな部分であり、ナゲットや加工食品等の二次製品に使用される。切れ端部は一般に家禽切断部位よりも価値が低いものの、切断計画の一部として形成されたものである。したがって、切れ端部が目標最大重量を超えないようにすることが通常望ましい。一方、場合によっては、特定の重量以下の切れ端部の用途が制限され、その価値がさらに低下したり、切れ端を完全に廃棄したりしなければならないことがある。したがって、いくつかの実施形態では、好ましい切れ端部製品に使用可能な切れ端部とするために目標最小切れ端部重量を備える。但し、切れ端部を使用できない場合、たとえば、切れ端部に骨片がある場合等には目標最小切れ端部重量は無視してもよい。いくつかの特定の場合において、特定の重量を有する切れ端部とすることが望ましい場合があり、これを目標重量の決定の際に考慮してもよい。たとえば、切れ端部を鶏肉片として使用可能であって、同じような重量の鶏肉片をまとめて一緒に販売できる場合にはより価値が高くなる。目標重量を決定する際に切れ端部の価値を考慮することにより、家禽部位から抽出される全体的な価値を最大にすることができ、費用効果が向上する。
【0013】
制御ユニットが、異なる種類の注文を単に優先する場合があり、たとえば、切れ端部から作られた鶏肉片の注文よりも家禽切断部位の注文を優先する場合がある一方、いくつかの実施形態では、家禽切断部位や様々な大きさの切れ端部とその価値とを関連付けた価値データを制御ユニットに提供する。その場合、目標重量の決定は、さらに価値データにも基づいてもよい。たとえば、家禽切断部位のバッチ注文は、家禽1キログラムあたり4ポンドの価値であるのに対し、切れ端部を使用した鶏肉片の注文は1キログラムあたり2ポンドの価値であって、切れ端部を使用した加工食品の注文は家禽1キログラム当たり1ポンドの値である。受け入れる家禽部位から最大の価値を抽出するために、これらの値を考慮して目標重量を決定してもよい。
【0014】
家禽部位を検査するいくつかの方法がある。いくつかの実施形態において、検査ユニットは計量ユニットを含み、家禽部位を検査する工程が、家禽部位を計量ユニットで計量することを含む。非常に単純な実施形態では、計量ユニットによって決定された重量と鶏胸肉部位の典型的なモデルとを組み合わせて使用して、家禽部位の質量分布を推定してもよい。ただし、ほとんどの場合、重量を画像化手段と組み合わせて使用するが、これについて以下に説明する。
【0015】
この方法が画像化ユニットを備えた検査ユニットを備えてもよく、家禽部位の検査は、家禽部位の体積分布を決定するために画像化ユニットを用いて家禽部位を画像化することを含む。いくつかの単純化された場合において、質量分布を得るために、処理中の種類の家禽部位の平均質量密度とこの体積分布とを併せて使用してもよい。ただし、このような実施形態の場合、先に詳述したような計量ユニットと組み合わせることが好ましい。
【0016】
特に、上述のような計量ユニットと画像化ユニットの組み合わせによってより正確な質量分布が得られ、これにより切断計画の精度が改善される。
【0017】
さらに好ましい実施形態において、検査ユニットが超音波ユニットまたはX線ユニット等の走査ユニットを含み、家禽部位を検査する工程において、家禽部位を走査ユニットで走査する。すなわち、家禽部位の質量分布を直接測定することができる走査ユニットを備えることが好ましい。たとえば、前述のように、X線ユニットを使用して家禽部位を表す質量マップを生成してもよい。このような走査ユニットによって通常質量分布の精度がさらに高まるので、より正確な切断計画の算出が可能となる。たとえば、このような走査ユニットは通常、家禽部位全体の質量密度の変動に対応するが、これについては切断計画において説明する。
【0018】
上述のことから明らかなように、検査ユニットは、検査データセットをそれぞれ収集するいくつかの個別のユニットを備えてもよく、実際、上述の計量、画像化、および走査ユニットを互いに組み合わせて使用してもよい。検査ユニットがさらに、血斑を検査するためのカメラ等、他の種類の検査データを収集するための他のデバイスを備えてもよい。
【0019】
特に鶏胸肉等の家禽部位では、特定の種類の家禽部位の解剖学的構造に合わせて切断計画を調整することが一般的に好ましい。たとえば、鶏胸肉の場合、外観が維持されるように、鶏胸肉のより厚い端部であって鶏胸肉の内向き表面に近い位置で切れ端部を作成することが好ましい。したがって、家禽部位を検査する工程が、家禽部位の所定の解剖学的領域を特定し、質量分布と所定の解剖学的領域とに基づいて切断計画を算出する工程を含むことが好ましい。たとえば、切断計画を算出する工程が、目標重量を満たす家禽切断部位を製造する所定の解剖学的領域内の切断線を識別することを含む。この場合、鶏胸肉のささみの例を使用すると、所定の解剖学的領域は、鶏胸肉のささみのより厚い端部であり、鶏胸肉のささみの内側に面する側に近接する領域であってよい。ここで、切断線とは、家禽部位によって規定される二次元領域を意味し、これによって家禽部位を二つに分割する。この領域は平面であっても、より複雑な形状であってもよい。
【0020】
特に鶏胸肉に関して切断計画により確実に外観を維持する別の手段として、家禽部位の主軸(major axis)を特定するために家禽部位を検査することを含み、切断計画を算出する工程は、主軸に対して切断線を算出することを含む。たとえば、切断計画には、主軸に対して所定の角度範囲を有する切断線が必要となる場合がある。特に、主軸に対して切断線を算出する工程が、主軸に対して略鋭角を規定する切断線を算出することを含む。
【0021】
別の実施形態において、主軸に対して切断線を算出する工程が、主軸に平行な平面を略規定する切断線を算出することを含む。これは、たとえば、鶏胸肉の内向き表面から一定の厚さでトリミングするために使用することができる。これは、高価値の切れ端部製品を実現しつつ家禽部位の重量を減らす方法の一つである。たとえば、このような配置で切断することによって、鶏胸肉の外向きの外観を維持し、たとえば、シュニッツェル等の切れ端部製品に使用できる切れ端部を実現可能である。
【0022】
いくつかの好適な実施形態において、この方法は、家禽部位を検査して家禽部位内の骨片等の異物の存在と位置とを特定する工程をさらに備え、切断計画を算出する工程がさらに異物の位置に基づく。すなわち、家禽切断部位に異物がないようにするために、切断計画の要件として切れ端部に異物を含めるようにしてもよい。さらに、目標重量の決定は、異物の存在に基づいてもよい。たとえば、制御ユニットは、価値の損失を最小限に抑えながら、切れ端部の大きさを最小化して異物を含む切れ端部を廃棄物として破棄することができることを目的としてもよい。一方、かなりの大きさの切れ端部が出た場合は、切れ端部をさらに処理して異物を除去して切れ端部の使用可能な部分を回収するか、この大きな切れ端部を廃棄してしまって使用可能な家禽切れ端部の価値を上げることができないかのいずれかとなってしまい、いずれの場合も費用効果が低くなる。
【0023】
一般的に、機械式グリッパを用いて切断計画を実行するために家禽部位を配置する工程は、家禽部位を切断ユニットに対して移動させることを含む。たとえば、機械式グリッパは、家禽部位を切断ユニットに運び家禽部位を必要な位置に配置するか、または必要に応じて家禽部位の向きを切断ユニットが切断計画を実行できるような向きにする。
【0024】
いくつかの実施形態では、この方法は、運搬ユニットを使用して家禽部位を機械式グリッパへと運搬することをさらに含み、好ましくは、機械式グリッパを使用して家禽部位を運搬ユニットから持ち上げることをさらに含む。特に切断中に家禽部位を持ち上げると、切断ユニットによるコンベヤユニットの損傷を防ぐことができる。あるいは、切断計画を実行するために家禽部位を配置する工程が、家禽部位を運搬ユニット上に移動させる又はその向きを変える工程を備え、運搬ユニットをその後使用して家禽部位を切断ユニットへと搬送する。これらの実施形態では、家禽部位が切断ユニットに到着したときに切断計画の実行を可能にする位置となるように、機械式グリッパが家禽部位を配置してもよい。
【0025】
好ましくは、この方法が、家禽部位を機械式グリッパで把持しながら家禽部位を切断する工程をさらに備える。これにより、機械式グリッパによる切断中の家禽部位の移動が抑制されるため、切断計画の実行精度が向上する。
【0026】
多くの実施形態において、切断ユニットに関するコストを最小化するために、ある所定の切断方向に沿って切断するように切断ユニットを構成し、家禽部位を配置する工程は、切断ユニットが家禽部位を切断計画に応じて切断できるように家禽部位をこの所定の切断方向に対して配置することを含む。
【0027】
好ましくは、機械式グリッパを家禽切断部位の選別および運搬手段の一部としてさらに使用する。たとえば、この方法が、機械式グリッパを使用してピックアップ位置で家禽部位を把持する工程を備えることが好ましく、機械式グリッパを使用してピックアップ位置とは別の排出位置に家禽切断部位を排出することを含む。特に、この方法が、家禽部位の1バッチを形成する工程を備える場合、排出位置は、家禽部位の1バッチ用のパッケージであることが好ましい。すなわち、機械式グリッパは、バッチ内の家禽切断部位をそれぞれのパッケージに配置するという追加の機能を果たしてもよい。これにより、家禽部位の各バッチを分類および梱包するために別個のロボットアームが必要ないため、この方法を実施するシステムのコストをさらに削減することができる。たとえば、機械式グリッパは、家禽部位を受け取って、切断計画の実行中に家禽部位を保持してもよい。それにより、機械式グリッパが保持している家禽切断部位から切れ端部を分離することができる。その後機械式グリッパは、家禽切断部位を家禽部位1バッチ用のパッケージに直接移してもよい。
【0028】
いくつかの実施形態において、機械式グリッパが計量ユニットを備え、切断計画の実行後に、家禽切断部位を機械式グリッパで計量する工程をこの方法がさらに備える。この実施形態によれば、切断計画が許容可能な程度の精度で実行されたことを機械式グリッパによって確認することができる。この実施形態によれば、制御ユニットが進行中のバッチの重量を高精度で推測することが可能になるので、機械式グリッパを使用した上述のバッチの形成と組み合わせる場合に特に好ましい。
【0029】
この方法は、切断ユニットが低コストの切断ユニットであり、したがって、好ましくは切断ユニットが切断刃を備え、さらに好ましくは刃が単一の切断面で切断するように構成される場合に最も費用効果を高く実施することができる。ここでも、機械式グリッパを比較的単純な切断ユニットと組み合わせて使用するが、機械式グリッパは家禽部位の移動と方向付けを行い、切断ユニットによる切断計画を実行可能とする。
【0030】
上述した本発明の態様は、複雑な切断装置を必要としないで家禽部位を配置するために機械式グリッパを利用するよう設計されているが、上述の様々な好ましい特徴によって、機械式グリッパを使用しない別の状況でもこの方法を実施することが望ましい独自の利点が導入されることが理解されよう。たとえば、比較方法において、機械式グリッパの介入なしに切断計画を算出し、切断計画を実行する工程を備えてもよい。この場合でも、上述のように家禽切断部位をバッチで配置する等のために、切断計画の実行後に機械式グリッパを使用してもよい。
【0031】
本システムについて、目標重量が単一の注文に関して決定される状況、すなわち、システムが家禽切断部位の単一注文を一度に処理する状況に関して説明してきた。ただし、通常このようなシステムは、同時に履行することを目的とした複数の注文を有する。これは、同じタイプの複数の注文、複数の異なる注文、またはこれら二つの注文を組み合わせたものであるかもしれない。たとえば、300グラムの重さの二つの鶏胸肉のささみのバッチの注文があり、処理中の二つのバッチがあって、そのうちの一つの処理中の重量が160グラムで、もう一つの処理中の重量が155グラムであるかもしれない。あるいは、またはさらに、2種類の注文をシステムが有し、たとえば300グラムの重さの二つの鶏胸肉のささみのバッチの注文と150グラムの重さの単一の胸肉のささみの注文であるかもしれない。このような状況では、最も高い価値が得られるように家禽部位をある注文に割り当てることが望ましい。したがって、この方法が複数の目標重量を決定する工程を備え、各目標重量は、履行すべき各注文に関連しており、複数の目標重量のうち検査した家禽部位に最もよく対応する一つを選択する工程をさらに備え、切断計画の算出は、選択された目標重量と、検査した家禽部位の質量分布とに基づくことが好ましい。ここで、システムは、それぞれの目標重量を決定することにより、各注文に応じた家禽部位の割り当てと処理とを効果的にシミュレーションする。システムは、各注文に応じて家禽部位を処理することによって得られる合計価値を推定して、注文が履行された際に最も価値の高い注文を選択してもよい。あるいは、システムは、過剰な商品提供を最低限にする注文、すなわち、対応する注文によって必要とされる重量を超える量が最も少ないと予想される家禽切断部位となる注文を単に選択してもよい。
【0032】
処理中の家禽部位についてどの目標重量を選択するかについて、他の要因が影響を与える場合もある。好ましくは、複数の目標重量のうち検査した家禽部位に最もよく対応する一つを選択する工程が、推定切れ端部重量、異物の存在および/または位置、家禽部位の上流に位置する一以上の家禽部位の重量、履行すべき一以上の注文について予測される(即ち、目標バッチ重量と比較した)更新後のバッチ重量、および履行すべき一以上の注文について1バッチにおける予測される(即ち、完成したバッチの目標部位数と比較した)更新後の家禽部位の数、のうちの一以上に基づく。この決定に影響を与える可能性のある他の要因として、履行すべき各種類の注文の総数、および最後の家禽部位が各種類の注文に割り当てられてからの時間を含んでもよい。たとえば、300グラムの鶏胸肉の二つのささみのバッチの注文が1000、150グラムの単一の胸肉のささみの注文が100である場合に、履行すべき注文の数が多いことを理由に、二つの鶏胸肉のささみのバッチを選択することにシステムが重点を置く場合がある。あるいは、たとえば直近5つの家禽部位が150グラムの重さの単一の胸肉のささみの注文に割り当てられた場合、システムはこの偏りに対処するために二つの鶏胸肉のささみのバッチに重点を置き始める場合がある。
【0033】
本発明の第2の態様によれば、家禽切断部位目標重量を決定し、目標重量と家禽部位の質量分布とに基づいて家禽部位の切断計画を算出するよう構成した制御ユニットと、家禽部位を検査して家禽部位の質量分布を決定し、質量分布を前記制御ユニットに提供するよう構成した検査ユニットと、家禽部位を把持し、切断計画を実行するために家禽部位を配置するよう構成した機械式グリッパと、切断計画に応じて家禽部位を切断して家禽切断部位の目標重量に応じた家禽切断部位を製造するよう構成した切断ユニットと、を備えるシステムが提供される。
【0034】
本発明の第1の態様に関して上述した様々な利点が、本発明の第2の態様にも等しく適用される。
【0035】
本発明の第3の態様によれば、コンピュータによって実行されると、コンピュータに以下のステップを実行させるコンピュータ実行可能指令を含むコンピュータ可読媒体が提供される。家禽切断部位の目標重量を決定する工程と、目標重量と家禽部位の受領した質量分布とに基づいて家禽部位の切断計画を算出する工程と、家禽部位を把持し切断計画を実行するために家禽部位を配置するよう機械式グリッパに指示する工程と、切断計画に応じて家禽部位を切断して目標重量に応じた家禽切断部位を製造するよう切断ユニットに指示する工程と、を備える。この場合も、本発明のこの態様は、本発明の第1の態様の方法を実施するために制御ユニットが実行する指令に対応する。上述の全ての好ましい特徴が、本発明のこの態様にも等しく適用される。
【図面の簡単な説明】
【0036】
本発明について、以下の図面を参照しながら説明する。
【
図1】本発明の一実施形態に係る家禽部位を処理するためのシステムの概略図
【
図2A】
図1のシステムでの使用に適した機械式グリッパを示す図
【
図2B】
図1のシステムでの使用に適した機械式グリッパを示す図
【
図3A】
図1のシステムでの使用に適した切断ユニットを示す図
【
図3B】
図1のシステムでの使用に適した切断ユニットを示す図
【
図3C】
図1のシステムでの使用に適した切断ユニットを示す図
【
図4】
図1のシステムによって実現される方法を示すフローチャート
【
図5A】処理中の二つの異なる段階での本発明の一実施形態に係る家禽部位を処理するためのシステムを示す概略図
【
図5B】処理中の二つの異なる段階での本発明の一実施形態に係る家禽
【発明を実施するための形態】
【0037】
本発明の第一実施形態について、
図1~
図4を参照しながら以下に説明する。
【0038】
図1は、本発明の方法を実行するためのシステムの概略図である。システム1は、本実施形態においては鶏胸肉のささみである切断前の家禽部位10を搬送する一連のコンベヤ20と、家禽処理システムの通過(past)検査ユニット100、機械式グリッパ200、および切断ユニット300を備える。これらについては以下により詳細に記載する。
【0039】
コンベヤは、システムのすべての要素を操作する制御システム50に接続される(図示せず)。
図4に示すように、この方法を実行する際、まずステップS100で制御ユニット50に注文データを入力する。最も単純な状況では、注文データは単に、家禽切断部位の一定の目標重量を含んでもよいが、より一般的には、いくつかの要素が含まれる。たとえば、注文データには、さまざまな種類の最終製品の注文が含まれる場合があり、単一の鶏胸肉のささみ、それぞれが指定された重量の指定された数の鶏胸肉のささみのバッチ、および切れ端部の注文等を含む。単一の胸肉ささみに関連する注文データは、目標重量範囲を含んでもよく、たとえば、最小および/または最大の家禽切断部位の重量、および目標、最小および/または最大の切れ端部の重量等である。バッチ注文には、各バッチの目標重量および/または各バッチに含まれる家禽切断部位の数または範囲を含んでもよい。バッチ注文の例として、700グラムの四つの胸肉のささみであって、個々の部位が200グラムを超えたり150グラム未満になったりすることがないようにする。注文データは、切れ端部を使用することで履行する注文に関するデータをさらに含んでもよい。たとえば、チキンナゲット等の高価値の切れ端部製品には、目標最小切れ端部重量または目標重量が必要となる場合がある。切れ端部が大きすぎる場合には目標重量を満たすようにトリミングして小さくすることができるが、このような追加の処理により、切れ端部の費用対効果が低下し、家禽部位から得られる全体的な価値が低下するので、最大切れ端部重量もデータに含めてもよい。注文データは、より高価値な注文には不適切である切れ端部を使用する加工食品の注文等、価値の低い切れ端部の注文データをさらに含んでもよい。
【0040】
家禽部位10が家禽処理システム1内に入ると、最初にコンベヤ20によって検査ユニット100に運ばれる。本実施形態の検査ユニットは、X線ユニットを備え、さらに、計量ユニットおよび/またはカメラ等の画像化ユニットを含んでもよい。ステップS200において、検査ユニット100の要素によって検査データを収集する。本実施形態において検査データは、少なくともX線ユニットが生成する鶏胸肉のささみの質量分布を備え、鶏胸肉の質量を直接図式化することが可能である。検査データがさらに、骨片または血斑等の異物の詳細を含み、異物の存在、位置、大きさおよび形状に関するデータを提供してもよい。検査データがさらに、X線ユニットよりも正確な手段によって測定された重量、およびコンベヤ20上の部位10のうち登録位置に関するデータを含んでもよい。
【0041】
ステップS300において、検査ユニット100は、検査データを制御ユニット50に渡す。次にステップS400で、制御ユニットは、検査データおよび注文データを使用して家禽部位の目標重量を決定する。たとえば、注文データは、700グラムの四つの胸肉のささみであって、個々の部位が200グラムを超えたり150グラム未満になったりすることがないような注文を含み、さらに、各鶏肉片の重量が15~20グラムの間であるような注文を含んでもよい。家禽部位10が212グラムの質量を有すると決定される場合、制御システムは、17グラムの切れ端部を有する195グラムの目標重量と確認し、家禽切断部位の両方の要素を使用して高価値の注文を満たすことができる。
【0042】
目標重量の決定に続いて、ステップS500で制御ユニットは、目標重量および質量分布を使用して切断計画を決定する。本実施形態では、切断ユニットは、以下でより詳細に説明するように、コンベヤに対して一定の角度の平面に沿って切断する。なお、機械式グリッパによって切断の前に家禽部位を配置することができるので、制御ユニットは、家禽部位を切断するために切断面が配置され得る家禽部位に沿ったいくつかの異なる位置を評価することができる。制御ユニットは、目標重量基準を満たす切れ目の位置を特定する。
【0043】
家禽部位10は、
図2A、
図2Bにより詳細に示される機械式グリッパ200へと運ばれる。機械式グリッパ200は、主支柱202と、この支柱202の両側に配置された二つのピストン203とを備える。支柱202の下端部には、対向する噛合い要素(jaw elements)201a、201bを備える一対の把持噛合い部が配置され、噛合い要素を閉じた位置にすると、その間に細長いV字形のチャネルが形成される。各噛合い要素201a、201bは、V字形のチャネルを開いた状態と閉じた状態とに噛合い部の下端が移動可能であるように、支柱に近接した上端でヒンジにより固定される。グリッパは、支柱202の上端で輸送ユニット(図示せず)に接続される。輸送ユニットは、グリッパ200全体を支柱の中心軸の周りで回転させることができ、それにより、機械式グリッパが360°回転する。輸送ユニットはさらに、機械式グリッパを昇降させると共に、グリッパを並進運動させることができる。これにより、制御システム50は、V字型チャネルの長さが家禽部位10の主軸と一直線上に並ぶようにグリッパを配置することができる。グリッパはさらに、所定の位置に下降して噛合い部201a、201bを閉じ、家禽部位を把持および収集することができる。グリッパはさらに移動および回転して、コンベヤ表面に対する家禽部位の位置および向きを変更することができ、それにより、
図4のステップS600を実行する。
【0044】
次に、コンベヤ20は、配置された家禽部位10を、
図3A~
図3Cに示す切断ユニット300に搬送する。切断ユニット300は、支持フレーム301を備える。回転切断ユニットが支持フレーム301によってコンベヤ20上に保持される。回転切断ユニットは、モータ302と、回転切断刃303とを備える。モータは、回転切断刃303を、コンベヤの横方向寸法に対して45°の固定角度で保持する。コンベヤ20にはコンベヤの長さ方向に沿って延びる溝部21があり、回転切断刃303が溝の内部に延出する。したがって、溝部は、家禽部位を刃によって完全に切断可能としながら、刃によるコンベヤの損傷を防止する。
図3Cは、ステップS700において切断ユニット300が切断する過程における家禽部位10を示す図である。家禽部位は、コンベヤ20によって鶏胸肉10が静止切断刃を越えて移動する際に、刃が鶏胸肉のより厚い側の端部に45°の角度で切れ目を入れるように配置されている。鶏胸肉のより厚い側の端部に45°の角度で切り込みを入れて、外側に面する側よりも鶏胸肉の内側に面する側が切れ端部により多く含まれるようにする。この切り込みの配置により、胸肉の外側に面する表面を検査する際に、切断鶏胸肉のささみ略全体を確実に見えるようにすることができる。
【0045】
切断されると、注文データが更新されて一つの家禽切断部位が製造されたことが反映される。家禽切断部位11と切れ端部12とは、梱包等のその後の処理のために下流に運ばれる。後続の家禽部位を検査する場合、この方法をステップS200から開始して繰り返す。
図4では、新しい家禽部位の検査がステップS800の後になって行われる場合を示しているが、実際には方法は継続的に実行し、第1の家禽部位が処理されている間に新しい家禽部位が通常検査される。
【0046】
第二実施形態について、
図4~
図6を参照しながら以下に説明する。
【0047】
図5Aは、本発明の方法を実行するための別のシステムの概略図である。システム1は、ここでも鶏胸肉のささみである切断前の家禽部位10を搬送する一連のコンベヤ20と、家禽処理システムの通過検査ユニット100、一体型把持・切断ユニット250を備える。これらについては以下により詳細に記載する。最終コンベヤ20がトレイ15を保持する様子が示されており、トレイ15内に家禽処理システムによって1バッチ分の家禽部位が形成される。
【0048】
この実施形態でも、システムは制御ユニット50を備え、ステップS100で制御ユニット50に注文データが入力される。この実施形態では、システム1によって家禽切断部位の各バッチを形成する。したがって、注文データは、たとえば、総重量が300グラムであって各ささみが125グラム以上175グラム以下の重量を有する二つの切断鶏胸肉のささみの注文を含む。上述したように、注文データには、切れ端部の製品が履行すべきデータをさらに含んでもよい。
【0049】
家禽部位10が家禽処理システム1内に入ると、最初にコンベヤ20によって検査ユニット100に運ばれる。検査ユニットは、X線ユニット、計量ユニットおよびカメラを備える。ステップS200において、検査ユニット100の各要素によって検査データを収集する。本実施形態において、検査データは、X線ユニットにより生成した質量分布と、計量ユニットによる重量と、カメラによる画像データとを含む。
【0050】
ステップS300において、検査ユニット100は、検査データを制御ユニット50に渡す。次にステップS400で、制御ユニットは、検査データおよび注文データを使用して家禽部位の目標重量を決定する。この場合、検査データには、骨片13が該当家禽部位10に含まれていることを示すデータと、家禽部位の重量が184グラムであることを示すデータとが含まれる。ステップS400において、制御ユニットは、骨片の存在を認識する。骨片13を含む切れ端部は、廃棄されるか使用可能な部位を回収するためにさらなる処理を必要とするので、制御ユニットは、切れ端部の大きさを最小化して無駄な家禽の量を減らすように構成される。したがって、制御ユニット50は、注文を履行するために使用される家禽の量を最大化するように、目標重量を170~175グラムと決定し、9~14グラムの切れ端部を残すようにする。
【0051】
目標重量の決定に続いて、ステップS500で制御ユニット50は、目標重量、質量分布、及び異物の位置を利用して切断計画を決定する。本実施形態においても、切断ユニットは一定の角度の平面に沿って切断するので、制御ユニット50は、目標重量基準を満たし且つ骨片13が切れ端部12に含まれるように質量分布に基づいて切り込みの位置を特定する。
【0052】
次に、家禽部位10は、
図6により詳細に示される一体型把持・切断ユニット250に運ばれる。一体型把持・切断ユニット250は、主支柱252と、支柱252の両側に配置された二つのピストン253とを備える。支柱252の下端部には、対向する噛合い要素251a、251bを備える一対の把持噛合い部が配置され、噛合い要素を閉じた位置にすると、その間に細長いV字形のチャネルが形成され、チャネルの前端部及び噛合い部251a、251bの下縁部には面取り(bevelled)縁部がある。これらについては以下により詳細に説明する。各噛合い要素251a、251bは、V字形のチャネルを開いた状態と閉じた状態とに噛合い部の下端が移動可能であるように、支柱に近接した上端でヒンジにより固定される。グリッパは、支柱252の上端で輸送ユニット(図示せず)に接続される。輸送ユニットは、把持・切断ユニット250全体を支柱252の中心軸の周りで回転させることができ、それにより、機械式グリッパが360°回転する。輸送ユニットはさらに、機械式グリッパを昇降させることができる。最後に、輸送ユニットは、
図5Aに示されるピックアップ位置と
図5bに示される排出位置との間の軌道に沿って機械式グリッパを動かすことができる。ピックアップ位置は、切断する家禽部位を収集する位置である。排出位置については、以下でより詳細に説明する。
【0053】
把持・切断ユニット250はさらに切断ユニット350を備える。切断ユニットは、支柱252からアクチュエータ352まで延びる支持部材351を備える。アクチュエータは、噛合い部251a、251bが形成するV字型チャネルの長軸に対して45°の角度で配置された切断刃353に作用する。切断刃353が延びた位置にある場合、面取り縁部で噛合い部251a、251bの縁に沿って延在する。アクチュエータ352は、切断刃353をギロチンのような動きで動作させて面取り縁部に沿って刃を上下させる。刃353のこの動きによって、噛合い部251a、251bに保持された家禽部位の前端に45°の角度で切り込みがなされ、それによって家禽部位の切れ端部が形成される。
【0054】
上述の把持・切断ユニット250は、ステップS600でまず家禽部位を把持してこの家禽部位を配置し、家禽部位をコンベヤから持ち上げる。その後、切断刃353のギロチンのような動きによってステップS700が実行され、切断計画に応じて家禽部位が切断される。骨片13を含む切り端部は、下のコンベヤ20に落ちる。把持・切断ユニット250が、重量の測定を可能とする噛合い部要素251a、251bと連結している場合、グリッパによって次に家禽切断部位の正確な重量を決定し、この情報を制御ユニットに提供してもよい。
【0055】
図5Bに示すように、次に把持・切断ユニット250は、輸送ユニットによって、トレイ15が配置された別のコンベヤ20に移動する。
図5Bでは、家禽部位がシステム内に進入していく各コンベヤの下流にトレイ15が配置されている状態を示しているが、これは単に分かりやすく図示したものである。一般的にトレイ15は、平行なコンベヤライン上に配置され、その後の処理のために切れ端部を下流のコンベヤに沿って流すことができる。把持・切断ユニット250は、家禽切断部位11をトレイ15に排出して、進行中のバッチが170~175グラムの重量の一つの家禽切断部位11を有すると反映するよう注文データを更新する。切断後に重量を測った場合、注文データの更新に使用する重量がより正確となる場合がある。
【0056】
次に、後続の家禽部位の処理のためにステップS200に戻る。制御ユニットは検査データを使用し、125~130グラムの家禽切断部位が必要であることを反映した更新注文データに基づいて、後続の家禽切断部位の目標重量を決定する。
【0057】
図5A、
図5Bの実施形態の代替例において、検査ユニット100と把持ユニット250との間にバッファゾーンを備えてもよく、これにより、制御ユニットは、受け入れた複数の家禽部位に関する検査データを収集することができる。たとえば、そのようなシステムが上述のような動作状態にある場合、すなわち、総重量が300グラムであり、各ささみの重量が125グラム以上であって175グラム以下であるような二つの切断鶏胸肉のささみのバッチの注文の場合、制御ユニットはこのバッファゾーンを使用して注文をより適切に処理してもよい。たとえば、制御ユニットが、184グラムの重量を有する第1の家禽部位と、200グラムの重量を有する第2の家禽部位とを認識する場合を想定する。これに基づいて、制御ユニットは、第1の家禽部位を、たとえば140グラムに切り落として、200グラムの重量の第2の家禽部位で形成すべき切れ端部の大きさを減らすよう決定し、双方の切れ端部を大幅な追加処理なしで高価値の切れ端部製品に使用できるようにしてもよい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0058】