IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ コーニング インコーポレイテッドの特許一覧

特許7399121高強度のスキンを有するセラミックハニカム体およびその製造方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-07
(45)【発行日】2023-12-15
(54)【発明の名称】高強度のスキンを有するセラミックハニカム体およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C04B 38/00 20060101AFI20231208BHJP
   C04B 41/87 20060101ALI20231208BHJP
【FI】
C04B38/00 303Z
C04B41/87 A
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020572511
(86)(22)【出願日】2019-06-19
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-10-21
(86)【国際出願番号】 US2019037916
(87)【国際公開番号】W WO2020005663
(87)【国際公開日】2020-01-02
【審査請求日】2022-06-15
(31)【優先権主張番号】62/692,143
(32)【優先日】2018-06-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】397068274
【氏名又は名称】コーニング インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100073184
【弁理士】
【氏名又は名称】柳田 征史
(74)【代理人】
【識別番号】100123652
【弁理士】
【氏名又は名称】坂野 博行
(74)【代理人】
【識別番号】100175042
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 秀明
(72)【発明者】
【氏名】ディヴェンス-ダッチャー,アドリアーネ マリー
(72)【発明者】
【氏名】テペシュ,パトリック デイヴィッド
(72)【発明者】
【氏名】ヴィレーノ,エリザベス マリー
【審査官】有田 恭子
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-069218(JP,A)
【文献】国際公開第2013/054793(WO,A1)
【文献】国際公開第2007/086183(WO,A1)
【文献】特表2017-515773(JP,A)
【文献】国際公開第2008/078748(WO,A1)
【文献】特開2004-075523(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C04B 38/00,38/06,41/85,41/87
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
セラミックハニカム体において、
交差壁のマトリックスを含むハニカム構造体と、
前記交差壁のマトリックスの外周に隣接して配置されたスキンであって、前記スキン中に分布したガラス相を含むスキンと
を含み、
ある量の結晶性チタニアが前記スキン中に分布している、セラミックハニカム体。
【請求項2】
前記ガラス相が、1体積%以上のピーク百分率を含む、請求項1記載のセラミックハニカム体。
【請求項3】
前記スキン中の前記ガラス相が、0.5%体積%~5体積%の範囲の平均濃度を含む、請求項1記載のセラミックハニカム体。
【請求項4】
前記セラミックハニカム体の前記スキンが、第1の平均気孔率を含み、前記セラミックハニカム体の前記マトリックスの内部部分が、第2の平均気孔率を含み、前記第1の平均気孔率が、前記第2の平均気孔率よりも小さい、請求項1記載のセラミックハニカム体。
【発明の詳細な説明】
【関連出願】
【0001】
本願は、米国特許法第119条のもと、2018年6月29日に出願された米国仮特許出願第62/692,143号明細書の優先権を主張し、その内容全体を参照により本明細書に援用するものとする。
【技術分野】
【0002】
本開示は、増加したアイソスタティック強度を有するセラミックハニカム体およびそのようなセラミックハニカム体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0003】
ハニカム構造体を備えたセラミックハニカム体は、自動車の排気後処理システムなどの用途で使用されてきた。例えば、セラミックハニカム体は、触媒コンバータ用の、または目封止されている場合はパティキュレートフィルタ用の基材を形成することができる。
【0004】
ハニカム形状のセラミック体は、無機材料を、液体ビヒクル、押出助剤および任意選択的に細孔形成剤と混合して、可塑化されたバッチ混合物を形成し、このバッチ混合物の押出によりバッチ混合物をハニカムグリーン体へと成形することによりハニカムグリーン体を製造し、それからこのハニカムグリーン体を乾燥させて炉内で焼成し、焼成されたセラミックハニカム体を製造することにより製造されてきた。ハニカム体は、周囲スキンを含み得る。セラミックハニカム構造体のチャネルのうちのいくつかを目封止することにより、目封止されたハニカム体を形成することができる。
【0005】
セラミックハニカム体をハウジング(例えば、缶)と組み合わせることで、例えば車両の排気後処理システムでの使用に適したアセンブリを形成することができる。
【発明の概要】
【0006】
増加したアイソスタティック強度を有するセラミックハニカム体が本明細書に開示されている。
【0007】
本開示のいくつかの例示的な実施形態では、スキンにおいて第1の平均気孔率を含み、かつマトリックスの内部部分においてスキンの第1の平均気孔率よりも大きい第2の平均気孔率を含むセラミックハニカム体が開示されている。
【0008】
本開示のいくつかの例示的な実施形態では、あるセラミックハニカム体が提供される。交差壁のマトリックスを有するハニカム構造体と、このマトリックスの外周領域に隣接したスキンとを含むグリーンハニカム体から始まって、少なくともスキンが、焼結助剤を含むスラリーまたは溶液でコーティングされる。その後、コーティングされたグリーンハニカム体は焼成され、それにより、スキンにおいて第1の平均気孔率を含み、かつマトリックスの内部部分においてスキンの第1の平均気孔率よりも大きい第2の平均気孔率を含むセラミックハニカム体が得られる。
【0009】
本開示のいくつかの例示的な実施形態では、あるセラミックハニカム体が提供される。このセラミックハニカム体は、交差壁のマトリックスを有するハニカム構造体と、このマトリックスの外周領域に隣接したスキンとを含み、少なくともセラミックスキンが、焼結助剤を含むスラリーまたは溶液でコーティングされている。その後、コーティングされたセラミックハニカム体は再焼成され、それにより、セラミックスキンの第1の平均気孔率と、マトリックスの内部部分の第2の平均気孔率とを含むセラミックハニカム体が得られ、第2の平均気孔率は、第1の平均気孔率よりも大きい。
【0010】
さらに、本開示のいくつかの例示的な実施形態では、ガラス相を含むセラミックハニカム体が提供される。このセラミックハニカム体は、交差壁のマトリックスを有するハニカム構造体と、交差壁のマトリックスの外周に隣接して配置されたスキンと、スキン中に分布したガラス相とを含む。特定の実施形態では、スキンは、内側部分および外側部分を有し、ガラス相は、スキンの外側部分では第1の平均体積百分率で分布しており、内側部分では第2の平均体積百分率で分布しており、第2の平均体積百分率は、第1の平均体積百分率よりも小さい。特定の実施形態では、ガラス相は、スキン中の層として形成されている。
【0011】
本開示のさらなる例示的な実施形態では、あるセラミックハニカム体が提供される。このセラミックハニカム体は、交差壁のマトリックスを有するハニカム構造体と、交差壁のマトリックスの外周に隣接して配置されたスキンとを含み、スキンは、内側部分および外側部分を有する。結晶性チタニア(ルチル)相は、スキンの外側部分では第1の体積百分率で分布しており、結晶性チタニア(ルチル)相は、スキンの内側部分では第2の体積百分率で分布しており、第2の体積百分率は、第1の体積百分率よりも小さい。
【0012】
本開示のこれらの実施形態および他の実施形態に従って、多くの他の特徴および態様が提供される。実施形態のさらなる特徴および態様は、以下の詳細な説明、特許請求の範囲、および添付の図面からより完全に明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0013】
下記の添付の図面は、例示を目的としたものであり、必ずしも縮尺どおりに描かれているわけではない。これらの図面は、決して本開示の範囲を制限することを意図するものではない。本明細書および図面全体で、等しい要素を示すために等しい数字が使用される。
図1A】第1の平均気孔率を有する外側部分と、第1の平均気孔率よりも大きい第2の平均気孔率を有する内部部分とを有する本開示による例示的なセラミックハニカム体の斜視図を概略的に示す。
図1B】第1の平均気孔率を有する外側部分と、第1の平均気孔率よりも大きい第2の平均気孔率を有する内部部分とを有する本開示による例示的なセラミックハニカム体の端部平面図を概略的に示す。
図1C】第1の平均気孔率を有する外側部分と、第1の平均気孔率よりも大きい第2の平均気孔率を有する内部部分と、外側部分と内部部分との間に配置されたハロー部分(halo portion)とを有する本開示による例示的なセラミックハニカム構造体の斜視図を概略的に示す。
図1D】第1の平均気孔率を有する外側部分と、第1の気孔率よりも大きい第2の平均気孔率を有する内部部分と、外側部分と内部部分との間に配置されたハロー部分とを有する本開示による例示的なセラミックハニカム構造体の部分的な端面図を概略的に示す。
図1E】第1の平均気孔率を有する外側部分と、第1の平均気孔率よりも大きい第2の平均気孔率を有する内部部分と、外側部分と内部部分との間に配置されたハロー部分とを有する本開示による例示的なセラミックハニカム構造体の端面図を概略的に示す。
図2A】第1の平均気孔率を有する外側部分と、第1の平均気孔率よりも大きい第2の平均気孔率を有する内部部分とを有する本開示によるセラミックハニカム体の例示的な製造方法のフローチャートを示す。
図2B】スキン中にガラス相を有する本開示によるセラミックハニカム体の例示的な製造方法のフローチャートを示す。
図3】第1の平均気孔率を有する外側部分と、第1の平均気孔率よりも大きい第2の平均気孔率を有する内側部分とを有する本開示によるセラミックハニカム体の代替的な例示的な製造方法のフローチャートを示す。
図4】焼結助剤を含むスキンコーティングを塗布せずに製造された既知のセラミックハニカム体のスキンの相分布図を示す。
図5】焼結助剤を含むスキンコーティングを塗布して製造された本開示によるセラミックハニカム体のスキンの相分布図を示す。
図6】焼結助剤を含むスキンコーティングを塗布して製造された本開示によるセラミックハニカム体のスキンの厚さにわたる距離に対する、スキン中のガラス相の頻度のヒストグラムプロットを示す。
図7】焼結助剤を含むスキンコーティングを塗布して製造された本開示によるセラミックハニカム体の、また焼結助剤を含むスキンコーティングを塗布せずに製造されたセラミックハニカム体の、スキンの厚さにわたる距離に対する、スキン中のルチル相の頻度のヒストグラムプロットを示す。
図8】焼結助剤を含むスキンコーティングを塗布して製造された本開示によるセラミックハニカム体の水平方向のスタンピング強度の改善(%)に対するスキンの気孔率の減少(%)のプロットを示す。
図9】焼結助剤を含むスキンコーティングを塗布して製造された本開示によるセラミックハニカム体の、また焼結助剤を含むスキンコーティングを塗布せずに製造されたセラミックハニカム体の、バルクおよび表面の相組成(質量%)を示す。
図10】焼結助剤を含むスキンコーティングを塗布せずに製造されたセラミックハニカム体のスキン表面の一部の顕微鏡写真を示す。
図11】焼結助剤を含むスキンコーティングを塗布して製造された本開示によるセラミックハニカム体のスキン表面の一部の顕微鏡写真を示す。
図12】焼結助剤を含むスキンコーティングを塗布して製造された本開示によるセラミックハニカム体の、また焼結助剤を含むスキンコーティングを塗布せずに製造されたセラミックハニカム体の、様々な部分(スキン、ハロー、ミッド、および中心部)の気孔率(%)のプロットを示す。
図13】焼結助剤を含む1つ以上のスキンコーティングを様々に適用(ワンコート、ツーコート、室温および加熱コーティング)して製造された本開示によるセラミックハニカム体の様々な部分(スキン、ハロー、マトリックス)の気孔率(%)のプロットを示す。
【発明を実施するための形態】
【0014】
これより、添付の図面に示されている本開示の例示的な実施形態を詳細に参照する。本開示が完全に理解されるように、実施形態を説明する際に、多くの具体的な詳細が記載される。しかしながら、これらの具体的な詳細の一部または全てがなくても本開示の実施形態が実施可能であることは、当業者には明らかであろう。他の例では、本開示の実施形態が不明瞭にならないように、周知の特徴および/またはプロセスステップは、詳細には説明されていない。本明細書に記載の様々な実施形態の特徴は、特に明記しない限り、互いに組み合わされてもよい。
【0015】
様々な実施形態を構成するものとして本明細書に記載されている材料、構成要素、およびアセンブリは、例示的なものであって、限定的なものではないことを意図している。本明細書に記載の材料および構成要素と同じまたは実質的に同様の機能を果たすことができる多くの適切な材料および構成要素は、本開示の実施形態の範囲内に包含されることが意図されている。
【0016】
本開示による様々な実施形態は、自動車の排気ガスの加工および処理に使用するのに適したセラミックハニカム構造体を備えたセラミックハニカム体に関する。セラミックハニカム体は、触媒コンバータにおける使用のために構成され得て、すなわち、これは、その中に1つ以上の触媒材料を含むセラミック微粒子材料のウォッシュコートを堆積させるための基材として使用され得る。例えば、使用される触媒材料は、白金、パラジウム、ロジウム、組み合わせなどの1つ以上の金属を含み得る。これらの1つ以上の金属は、内燃機関の排気(例えば、自動車エンジンまたはディーゼルエンジン)からの排気流などの排気流の様々な構成要素間の少なくとも1つの反応を触媒することができる。ニッケルおよびマンガンなどの他の金属を添加して、ウォッシュコートによる硫黄の吸収を抑えることができる。触媒される反応としては、例えば、一酸化炭素から二酸化炭素への酸化を挙げることができる。他の触媒される反応としては、硫黄(SOx)の還元が挙げられる。近年の三元触媒コンバータは、窒素酸化物(NOx)を還元して窒素および酸素にすることもできる。さらに、セラミックハニカム体を含む触媒コンバータは、炭化水素から二酸化炭素および水への酸化を促進することができる。
【0017】
内燃機関から生じる排気ガスの処理は、高表面積基材に担持された触媒を使用することにより向上させることができる。ディーゼルエンジンおよび一部のガソリン直噴エンジンの場合、触媒を担持させたまたは触媒を担持させていない目封止セラミックハニカム体を、微粒子を除去するためのパティキュレートフィルタにおいて使用することができる。これらの用途における目封止セラミックハニカム体および高表面積フロースルーセラミックハニカム触媒担体は、耐火性であり得て、耐熱衝撃性であり得て、広範囲のpO条件下で安定であり得て、触媒系に対して非反応性であり得て、かつ排気ガス流に対して低い抵抗を呈し得る。本明細書で「セラミックハニカム体」と称されるそのようなセラミックハニカム触媒担体および目封止ハニカム体(例えば、目封止ウォールフローハニカム体)は、これらの用途で使用され得る。
【0018】
セラミックハニカム体は、適切な程度に多孔質である材料(例えば、多孔質セラミック)の交差した壁マトリックスを有するハニカム構造体を備えている。1つ以上の触媒材料が、無機微粒子のウォッシュコートおよび液体ビヒクルに懸濁され、次いで、コーティングなどによりハニカム体の壁に塗布され得る。その後、コーティングされたセラミックハニカム体は、さらに加工され、緩衝材料で包まれ、キャニングプロセスにより缶(またはハウジング)に収容され得る。
【0019】
このキャニングプロセスの一部として、セラミックハニカム体およびそのハニカム構造体に、かなりのアイソスタティック(ISO)圧縮応力がかかり得る。セラミックハニカム体では、これらのISO応力により、場合によって、多孔質壁およびそのスキンが破壊されるおそれがある。したがって、セラミックハニカム体により大きなISO強度をもたらす製造方法は、例えば、取り扱い、試験および/またはキャニング中の壁およびスキンの破壊がより少なくなるという点で、特定の利点を提供し得る。
【0020】
本開示の1つ以上の実施形態によると、セラミックハニカム体は、増加したISO強度を伴って提供される。ISO強度は、従来どおりに製造された同等のセラミックハニカム体のISO強度と比較して、10%以上、20%以上、30%以上、または40%以上も増加し得る。さらに、水平スタンピング強度(HS)を改善することができる。
【0021】
そのような改善されたセラミックハニカム体は、セラミックハニカム体にかかるキャニング圧力およびISO応力による破壊が少なくなり得る。特定の実施形態では、この改善された強度は、セラミックハニカム体のスキン中にガラス相が形成(例えば、分布)されることによるものであり得る。特定の実施形態では、スキンの外側部分は、その中にガラス相を含む。さらに、特定の実施形態では、ガラス相は、スキン中の層として示され得る。特に、ガラス相は、スキンの内側部分よりもスキンの外側部分により顕著に形成され得る。
【0022】
一方法実施形態では、グリーン体を、バッチ混合物、例えば、セラミック源もしくはセラミック前駆体源またはその双方を含み得るセラミック形成材料と、液体ビヒクルと、レオロジー調整剤と、任意選択的な細孔形成剤材料などとを含むセラミック形成バッチ組成物から形成することができる。焼成時に、セラミック形成バッチ混合物は、焼結により変換されて、多孔質セラミック材料、例えば、排気後処理の目的に適した多孔質セラミックハニカム体になる。セラミック材料は、例えば、コーディエライト、チタン酸アルミニウム、チタン酸アルミニウム・チタン酸マグネシウム固溶体、アルミナ、ムライト、長石、炭化ケイ素、窒化ケイ素および類似物、ならびにそれらの組み合わせなどの任意の適切な結晶構造を含み得る。
【0023】
セラミック形成バッチ混合物を押出ダイから押し出してグリーンハニカム体にする押出法によりグリーンハニカム体を初期成形し、これを乾燥させ、焼成して、向上した強度を有するハニカム構造体を備えたセラミックハニカム体を形成することができる。押出は、水撃ポンプ押出プレス(hydraulic ram extrusion press)、二段式脱気シングルオーガー押出機(two stage de-airing single auger extruder)、または排出端に押出ダイが取り付けられた二軸押出機を使用して実施され得る。押出中にハニカム体上にスキンが形成され得る。他の適切な押出機が使用されてもよい。
【0024】
そのようなグリーンハニカム体の製造に使用されるハニカム押出ダイは、例えばスキン形成マスクと組み合わされた壁形成ダイ本体を含む多要素アセンブリであり得る。例えば、米国特許第4,349,329号明細書および同第4,298,328号明細書には、スキン形成マスクを備えた適切なダイ構造体が開示されている。他の適切なダイが使用されてもよい。ダイ本体には、ダイ面に形成された排出スロットのアレイに繋がりこれと交差するバッチフィードホールを組み込むことができ、これを通じて、バッチ混合物が押し出される。押出プロセスにより、中央のハニカム構造体を形成する交差壁の相互接続マトリックスが形成される。押出ダイのスキン形成領域にマスクを用いて、マトリックスの外周部分にスキンを形成することができる。スキンは、壁より厚くてもよい。マスクは、カラー形状などの環状の周辺構造体であり得て、グリーンハニカム体のスキンの周囲形状を画定する。グリーンハニカム体のスキンの周辺層は、バッチ混合物をダイに通して押し出すことにより、中央のハニカム構造体と同時に形成することができる。
【0025】
押出物と称される押し出されるハニカム体を、ログとして押し出して切断することで、エンジン製造業者の仕様を満たすのに適切な長さを有するグリーンハニカム体を作製することができる。あるいは、グリーンハニカム体は、ハニカムセグメントの形態であってもよく、これを焼成して他のセグメントと一緒に接合すると、最終的なセラミックハニカム体を形成することができる。これらのハニカムセグメントおよび得られるハニカム体は、任意の適切なサイズまたは形状を有し得る。
【0026】
清浄空気規制がより厳しくなるにつれて、自動車排気ガス処理用のセラミックハニカム体は、それに応じて、より薄い壁およびより高い気孔率を有するように変化してきた。より薄い壁およびより高い気孔率を有するセラミックハニカム製品が提供されると、排気ガスの処理に関してそれらの機能が改善され得るが、これらの変化はまた、セラミックハニカム体の機械的強度を低下させるおそれがある。この機械的強度の低下は、セラミックハニカム体が、例えば、取り扱い、加工およびキャニング中のISO応力に耐える能力を低下させるおそれがある。
【0027】
これまで、ハローなどの特徴(すなわち、内壁よりも厚い、スキンに直接隣接した外壁を放射状に形成すること)が、セラミックハニカム構造体の強度を向上させるために使用されてきた。さらに、チャネルの角への丸み付けを使用することにより、ISO強度を向上させることもできる。さらに、外壁の歪みをより厳密に制御することにより、適切な機械的強度の達成を促進することができる。しかしながら、これらの特徴を用いたとしても、より高い気孔率のハニカム体は、製造プロセス(例えば、キャニング中)に使用される静水圧に耐えるのに、および/または亀裂なく自動車の排気処理用途で正常に機能するのに困難な場合があり得る。
【0028】
本発明者らは、最小圧力で生じる静水圧による破壊が、従来のセラミックハニカム体のスキンまたはその非常に近傍で起こることを見出した。本発明者らは、そのようなセラミックハニカム体のスキン、また場合によってこのスキンに直接隣接した壁の平均アイソスタティック強度を増加させることにより、そのような静水圧により誘発される亀裂を低減すること、または防止することも可能であることを見出した。
【0029】
セラミックハニカム構造体のアイソスタティック強度を向上させるために、スキン、および場合によってこのスキンに直接隣接した壁を、その気孔率の低減により強化することができる。本開示による様々な実施形態は、スキンにおいて第1の平均気孔率を有し得て、かつセラミックハニカム構造体の内部(例えば、中間)部分全体にわたり第2の平均気孔率を有し得て、第1の平均気孔率は、セラミックハニカム構造体の内部部分の第2の平均気孔率よりも小さくなり得る。スキンに直接隣接した壁領域もまた、内部部分と比較して減少した気孔率を有し得る。例えば、スキンの平均気孔率は、内部部分の平均気孔率よりも約1%以上の差で小さくなり得る。特定の実施形態では、スキンに直接隣接した壁領域の平均気孔率は、内部部分の平均気孔率よりも小さくなり得る。他の実施形態では、セラミックハニカム体は、スキンとセラミック体のマトリックスの内部部分との間の平均気孔率の差が3%以下であり得て、例えば、スキンの平均気孔率の差は、セラミックハニカム体の内部部分の平均気孔率の3%未満であり得る。さらなる別の実施形態では、スキンとセラミック体のマトリックスの内部部分との間の平均気孔率の差は5%以下であり、例えば、セラミックハニカム体において、スキンの気孔率が、セラミックハニカム構造体の内部部分の平均気孔率の5%以下であり得る。しかしながら、特定の実施形態では、より高度の低減(例えば、5%超)は、望ましくないか、または必要とされない場合があり、熱衝撃性能の制限、すなわち亀裂を理由に回避され得る。本明細書で使用される平均気孔率とは、水銀圧入法により測定される平均バルク気孔率を意味する。図12は、焼結助剤を含むスキンコーティングの塗布を含むハニカム体の様々な部分の相対的な気孔率を、コーティングなしのものと比較して示す。ここから分かるように、スキンの気孔率は、内部部分(ミッドコア(Mid Core)または中心部)と比較して、またスキンとミッドコアとの間のミッドミッド(Mid Mid)部分と比較して、さらにはハロー領域(ハロー)、すなわち周囲を強化または厚くした周囲マトリックス壁を有する環状領域と比較して、大幅に低下し得る。
【0030】
図8は、スキンの気孔率(体積%)の減少に対する水平スタンピング(HS)強度への影響を示す。水平スタンピング(HS)とは、破壊が起こるまでハニカム体に対して側面に荷重をかけて実施される試験である。例えば、平均気孔率%が1%だけ減少するというわずかな変化(すなわち、差)が、HS強度を、5%以上、または8%以上も増加させ得る。スキンの気孔率が2%低下すると、HS強度は15%以上増加し得る。
【0031】
特定の実施形態では、セラミックハニカム体のスキンの気孔率、および場合によってこのスキンに直接隣接した壁領域の気孔率の減少が、スキン領域におけるISO強度の増加に寄与する要素となり得る。特定の実施形態では、スキン領域におけるISO強度の増加に寄与する別の要素は、ガラス相をスキンへと、さらには任意選択的にスキンに直接隣接した壁領域へと導入することであり得る。特定の実施形態では、かなりのガラス相層がスキン中に存在する。特定の実施形態では、ガラス層はスキンの外側部分に存在する。
【0032】
ISO強度の増加は、スキンの気孔率を減少させることにより与えることができ、したがって、セラミックハニカム構造体が静水圧下で破壊される際の圧力を増加させることができる。さらに、ガラス相がスキン中に形成されると、スキンのISO強度、ひいてはセラミックハニカム体のISO強度をさらに向上させることができる。セラミックハニカム体が破壊される際の閾値圧力を増加させることにより、製造収率を有利に増加させることができる。
【0033】
スキンにおいて、また特定の実施形態ではこのスキンに直接隣接した壁部分において気孔率の低減を達成し、かつ/またはガラス相を形成するために、焼結助剤が少なくともハニカム体のスキンに塗布される。続いて、ハニカム体は、焼成サイクルにかけられる。特定の実施形態では、焼結助剤がグリーンハニカム体に塗布され得る。他の実施形態では、焼結助剤が、予め焼成されたセラミックハニカム体に塗布されてもよく、焼結助剤が塗布されたセラミックハニカム体は、再焼成される。焼成(または再焼成)中に、スキンおよび特定の実施形態ではこのスキンに直接隣接した壁部分は、壁の内部部分よりも多く焼結される。これにより、スキンの気孔率が低下し、かつ/またはスキン中にガラス相が形成され、また特定の実施形態では、スキンの厚さ、気孔率、コーティング組成および/またはコーティング法に応じて、場合によってこのスキンに直接隣接した壁部分にこれが該当する。
【0034】
得られるセラミックハニカム体は、スキンにおいて、また場合によってこのスキンに直接隣接した壁領域において、壁の内部部分とは異なる化学的性質および相組成を含む。本開示による様々な方法で、実質的にスキンのひび割れまたは損傷なく、スキンにおいて内壁よりも小さい気孔率を有するセラミックハニカム体を提供することができる。さらに、高添加量の焼結助剤をスキンに充填することで、セラミックハニカム体の内部部分の内壁全体にわたり存在する材料よりも相対的に多くの材料がスキンにおいて添加されることにより、気孔率を減少させることができる。
【0035】
スキンにおいて、また場合によってこのスキンに直接隣接した壁領域において気孔率を減少させ、かつ/またはガラス相を導入することにより、スキン領域のISO強度が著しく増加する。これにより、セラミックハニカム構造体が静水圧下で破壊される際の圧力を増加させることができる。本明細書に開示されるコーティング法および焼成サイクルによりもたらされるこれらの利点は、チタン酸アルミニウム-長石セラミックハニカム体、コーディエライトセラミックハニカム体、チタン酸アルミニウム-コーディエライトハニカム体、および他のセラミックハニカム体を含むがこれらに限定されない様々なセラミックハニカム体に当てはまる。
【0036】
低多孔性のスキン、およびガラス相、特にガラス相層を含むスキンのさらなる潜在的な利点は、触媒含有コーティングの表面にじみ(bleed through)の防止、セラミックハニカム体のより良好な耐チップ性、および/またはより良好なハンドリングレスポンス(handling response)を含み得る。
【0037】
図1Aおよび図1Bは、本開示の特定の実施形態による例示的なセラミックハニカム体100を示す。セラミックハニカム体100は、第1の端部105Aから第2の端部105Bまで長手方向に延在するチャネル104を形成する複数の交差壁102のマトリックスを含むハニカム構造体を備えている。特定の実施形態では、チャネル104は、直交交差壁102(図示されている)により形成され得る。スキン106は、交差壁102のマトリックスの外周領域上に配置され得る。横断面における長方形(例えば、正方形)の断面チャネル形状が示されている。しかしながら、長方形(非正方形)、六角形、八角形、ひし形、三角形、およびそれらの組み合わせなど、横断面における他の断面チャネル形状が使用されてもよい。
【0038】
図1C図1Eは、本開示の特定の実施形態による例示的なセラミックハニカム体110を示す。セラミックハニカム体110は、これが、ハニカム体100の長手方向の長さに沿って延在するチャネル104を形成する複数の交差壁102(例えば、直交交差)からなるマトリックスと、交差壁102の外周領域上に配置されたスキン106とを有するという点で、セラミックハニカム体100と同様である。しかしながら、セラミックハニカム体110は、スキン106とマトリックスの内部部分112との間に配置されかつスキン106に直接隣接して位置するハロー領域108をさらに含む。ハロー領域108は、ハロー領域108の内部に配置されたマトリックスの内部部分112において横方向の厚さが薄壁102Bよりも厚くなり得る厚壁102Aの環状領域であり得る。ハロー領域108は、例えば、スキン106の内側表面から内側に数チャネル幅(例えば、1~3チャネル幅)にわたり延在し得る。さらに、ハロー領域108は、その中のチャネル104において角の丸みを含み得る。
【0039】
例示的なセラミックハニカム体100,110は円筒形構造体として示されているが、本開示の代替的な実施形態は、楕円形、レーストラック形、長円形、正方形、長方形(非正方形)、六角形、八角形、くさび形またはパイ形、三角形または三葉形などの他の適切な任意の断面形状で実施され得る。
【0040】
例示的なグリーン焼結助剤法(Green Sintering Aid Methods)
様々な例示的な実施形態で、例えば焼結助剤のスラリーまたは溶解液として提供される流体配合物が、グリーンハニカム体のスキンに塗布され得る。その後、焼結助剤が塗布されたグリーンハニカム体が焼成される。そのような方法実施形態は、本明細書では、グリーン焼結助剤法と称される。調製された流体配合物は、水などであるがこれに限定されない溶媒を含む。特定の実施形態では、焼結助剤粒子が懸濁または部分的もしくは完全に溶解されるように、酸、塩基または分散剤が溶媒中に供給されてもよい。
【0041】
様々な例示的な実施形態で、流体配合物は、塗装により、または流体配合物を含む浅皿などの中でグリーンハニカム構造体を転がすことにより、または(例えば、端部を密封して)浸漬することにより、または噴霧により、またはグリーンハニカム体の少なくともスキンへの公称的に均一に分布したコーティングを達成する他の適切な任意の方法により、グリーンハニカム体に塗布することができる。特定の実施形態では、グリーンハニカム体のスキンのすぐ下にありかつこれに直接隣接した壁領域もまた、流体配合物の塗布を受けることができる。例えば、図1Eに示されるように、ハロー領域108は、スキン106に加えて、流体配合物のコーティングを受けることができる。次に、グリーンハニカム体は、所定の範囲内のバルク特性(例えば、気孔率および中央細孔径)を有する公称的に亀裂のないセラミックハニカム体を製造する焼成サイクルに従って焼成される。
【0042】
例示的な一実施形態では、コロイド状シリカを含む流体配合物が焼結助剤として使用される。例えば、特定の実施形態では、HO中で40重量%のシリカ懸濁液が調製され、焼結助剤として使用される。この例では、HO中でコロイド状シリカ40重量%のシリカ懸濁液(例えば、LUDOX(登録商標)AS-40、米国ミズーリ州セントルイスのSigma-Aldrich製)が、7:3(LUDOX AS-40:HO)の比率で水と混合される。代替的な実施形態では、溶媒系中のシリカの重量%は、2重量%~60重量%の範囲にあるか、またはさらにはそれ以上であり得る。シリカの所望の量は、特定の用途に基づくことができ、ハニカム体の初期の気孔率、スキンおよび壁の厚さ、ならびに本体のセラミック組成に依存し得る。特定の実施形態では、溶媒系中のシリカの重量%は、例えば、チタン酸アルミニウムとコーディエライト前駆体無機微粒子材料との混合物を有するグリーン体において、20重量%~40重量%の範囲にあり得る。他の実施形態では、例えば、グリーンハニカム体がコーディエライトまたはコーディエライト前駆体無機微粒子材料から形成されている場合、溶媒中のシリカは、より少なくてもよく、例えば、2重量%~20重量%の範囲にあり得る。この流体配合物を、グリーンハニカム体に、塗装、噴霧、回転塗布、浸漬するか、または他の方法で塗布して、スキン106および場合によってこのスキン106に直接隣接した局在的な壁部分(例えば、壁102B)、例えばハロー領域108をコーティングすることができる。様々な実施形態で、押し出されたグリーンログ(green log)は、ログから切り取られた個々の断片ではなく、コーティングされたグリーンハニカム体であり得る。すなわち、本明細書に記載のコーティングプロセスは、個々の切断片を含むグリーンハニカム体に、または個々の切断片を形成するグリーンハニカムログを含むグリーンハニカム体に適用され得る。
【0043】
流体配合物がグリーンハニカム体に塗布される場合、グリーンハニカム体は、室温であってもよいし、任意選択的に室温より高い高温であってもよい。例えば、グリーンハニカム構造体は、例えば、乾燥機内で50℃超に加熱され得るか、または特定の実施形態では約100℃にも加熱され得て、次いで、乾燥機からのその取り出し後に、高温のまま、流体配合物における塗装または他の適切な塗布法によりコーティングされ得る。特定の実施形態では、焼結助剤を含む流体配合物をグリーンハニカム体に塗布することは、乾燥前に行われ得る。他の実施形態では、コーティングの塗布後、ただし乾燥前に、プラスチックラップまたは他の適切な防湿材がグリーンハニカム体に適用され得る。防湿材は乾燥中に存在する。グリーンハニカム体を防湿材で包むと、グリーンハニカム体が乾燥されるときに、焼結助剤がスキンにおいて内側に移動するのを防止することができる。特定の実施形態では、本方法は、乾燥後に流体配合物の第2のコーティングをグリーンハニカム体に塗布するステップを含み得る。第2のコーティングは、グリーンハニカム体のスキンにさらなる量の焼結助剤を加えるのに有用であり得る。本方法は、流体配合物の第2のコーティングを塗布した後にグリーンハニカム体を乾燥させるステップを含み得る。その後、コーティングされたハニカム体は、従来の炉内で、1,330℃~1,430℃の間のトップソーク温度(top soak temperature)で約10時間~約30時間の時間にわたり焼成にかけられる。
【0044】
特定の実施形態では、グリーンハニカム構造体の端部105A,105B、したがってチャネル104は、コーティング前に遮断される。遮断は、任意の適切なマスクにより達成され得る。このようにして、流体配合物によりグリーンハニカム構造体の内部部分112がコーティングされることが、かなり、またはさらには完全に防止される。
【0045】
様々な実施形態で、交差壁102のマトリックスを有するハニカム構造体と、このマトリックスの周囲に配置されたスキン106と、スキン106上の焼結助剤を含む流体配合物のコーティングとを含むグリーンハニカム体が、炉に入れられ得る。本明細書に記載の様々な実施形態を実施するために、特別な装置または炉の設計は必要ない。
【0046】
ハニカム体を製造するグリーン焼結助剤法の例示的な一例において、また図2Aを参照すると、方法200は、ステップ202において、内部部分(例えば、内部部分112)を有する交差壁(例えば、壁102)のマトリックスを有するハニカム構造体を備え、かつこのマトリックスの少なくとも一部の外周上に配置されたスキン(例えば、スキン106)を有するグリーンハニカム体を提供することを含む。方法200は、ステップ204において、焼結助剤を含む流体配合物を提供すること、およびステップ206において、流体配合物のコーティングをグリーンハニカム体のスキン(例えば、スキン106)に塗布することをさらに含む。流体配合物は、本明細書に記載されるように調製することにより提供され得る。
【0047】
方法200は、ステップ208において、コーティングを塗布した後にグリーンハニカム体を焼成して、内部部分(例えば、内部部分112)と、マトリックスの少なくとも一部の外周上に配置されたスキン(例えば、スキン106)とを有するセラミックハニカム体(例えば、セラミックハニカム体100,110)を提供することをさらに含む。セラミックハニカム体(例えば、セラミックハニカム体100,110)のスキン(例えば、スキン106)は、第1の平均気孔率を含み得て、かつセラミックハニカム体(例えば、セラミックハニカム体100,110)のマトリックスの内部部分(例えば、内部部分112)は、第2の平均気孔率を含み得て、第1の平均気孔率は、第2の平均気孔率よりも小さい。焼成後に、ステップ210において、セラミックハニカム体(例えば、セラミックハニカム体100,110)は、炉から取り出される。結果として、特定の実施形態では、第1の平均気孔率は、第2の平均気孔率よりも、1体積%以上、2体積%以上、3体積%以上、4体積%以上小さくなり得て、特定の実施形態では、1体積%~5体積%の範囲にあり得る。
【0048】
ハニカム体を製造するグリーン焼結助剤法の例示的な別の例において、また図2Bを参照すると、方法250は、ステップ202において、内部部分(例えば、内部部分112)を有する交差壁(例えば、壁102)のマトリックスを有するハニカム構造体を備え、かつこのマトリックスの少なくとも一部の外周上に配置されたスキン(例えば、スキン106)を有するグリーンハニカム体を提供することを含む。方法250は、ステップ204において、焼結助剤を含む流体配合物を提供すること、およびステップ206において、流体配合物のコーティングをグリーンハニカム体のスキン(例えば、スキン106)に塗布することをさらに含む。方法250は、ステップ208において、コーティングを塗布した後にグリーンハニカム体を焼成して、内部部分(例えば、内部部分112)と、マトリックスの少なくとも一部の外周上に配置されたスキン(例えば、スキン106)とを有するセラミックハニカム体(例えば、セラミックハニカム体100,110)を提供することをさらに含み、セラミックハニカム体は、スキン(例えば、スキン106)中に形成されたガラス相を含む(図5のガラス相514を参照)。特定の実施形態では、ガラス相514は、スキンの定められた領域に形成されたガラス層を含む。他の実施形態では、ガラス相は、ハロー領域108などの、スキンに直接隣接した壁内に形成され得る。方法250によると、焼成後に、セラミックハニカム体(例えば、セラミックハニカム体)は、ステップ210において、炉から取り出される。
【0049】
ハニカム体を製造するグリーン焼結助剤法における焼成サイクルは、(例えば、内部部分112における)セラミックハニカム体100,110の所望の相組成を生じさせるために使用される任意の適切な焼成サイクルであり得る。例えば、炉の焼成サイクルは、約10時間~約30時間の範囲の時間にわたり約1,330℃~1,430℃の間で保持されるピークを含み得る。形成されることが意図されたセラミック組成物のための他の適切な焼成サイクルが使用されてもよい。
【0050】
図9は、スキンコーティングを含むセラミックハニカム体100,110のスキン106のバルクにおける固体の様々な相の相質量(質量%)を、スキンコーティングを含まない同様のセラミックハニカム体(AT)と比較して示す。この材料は、高気孔率(約59%の気孔率)のチタン酸アルミニウム含有配合物であった。同様に、スキンコーティングを含むセラミックハニカム体100,110のスキン106の表面上の固体の様々な相の相質量(質量%)が、スキンコーティングを含まない同様のセラミックハニカム体と比較して示されている。
【0051】
図10および図11は、スキンコーティングを含むセラミックハニカム体100,110のスキン表面の表面顕微鏡写真(図11)を、スキンコーティングを含まない同様のセラミックハニカム体(図10)と比較して示す。ここから分かるように、ルチル相の塊状物522は、コーティングされていない実施形態(図10)よりも、スキンコーティングを含むハニカム体100のスキン表面516上において、はるかにより多く存在する。さらに、AT相の塊状物は、コーティングされていないハニカム体よりも、スキンコーティングを含むハニカム体100のスキン106の表面上において、はるかにより少なく存在する。さらに、CeTi相の塊状物は、コーティングされていないハニカム体よりも、スキンコーティングを含むハニカム体100のスキン106の表面上において、はるかにより少なく存在する(実質的に0)。
【0052】
例示的な焼成焼結助剤法(Fired Sintering Aid Method)
様々な例示的な実施形態で、流体配合物、例えば、焼結助剤のスラリーまたは溶解液が、(グリーンハニカム体とは対照的に)セラミックハニカム体、例えばそのスキン106に塗布され得て、焼結助剤が塗布されたセラミックハニカム体は、第2の焼成にかけられる。そのような実施形態は、本明細書では「焼成焼結助剤法」と称される。
【0053】
様々な例示的な実施形態で、流体配合物は、塗装により、またはセラミックハニカム体を流体配合物の浅皿の中で転がすことにより、またはセラミックハニカム体を流体配合物のバットに浸漬することにより、または噴霧により、またはセラミックハニカム体100,110の少なくともスキンへの公称的に均一に分布したコーティングを達成する他の適切な任意の方法により、セラミックハニカム体に塗布することができる。特定の実施形態では、セラミックハニカム体100,110のスキン106のすぐ下の壁102もまた、流体配合物の塗布を受けることができる。例えば、スキン106に直接隣接した最初の数個のセル(例えば、1~3個のセル)の壁102が、配合物を受けることができる。特定の実施形態では、ハロー領域108は、例えば、スキン106とともに、ハロー領域108に塗布された配合物を有し得る。
【0054】
次に、セラミックハニカム体は、公称的に亀裂のないセラミックハニカム体を製造する焼成サイクルに従って再焼成される。例示的な一実施形態では、コーティングされたセラミックハニカム体100,110は、特定の実施形態では、約0.5時間~4時間の範囲の時間にわたり約1,200℃~1,450℃(例えば、約1,355℃)のピーク温度で炉内に保持される。セラミックハニカム体の最初の焼成サイクルの温度に基づいて、他の適切な焼成サイクルが使用されてもよい。この例では、セラミックハニカム体が予め焼成されているので、精密な温度制御の使用を回避することができる。
【0055】
例示的な一実施形態では、コロイド状シリカを含む、HO中で40重量%のシリカ懸濁液が、焼結助剤として使用され得る。この例では、コロイド状シリカを含む、HO中で40重量%のシリカ懸濁液(例えば、LUDOX(登録商標)AS-40、米国ミズーリ州セントルイスのSigma-Aldrich製)が、7:3の比率で水と混合される。代替的な実施形態では、懸濁液中のシリカの重量%は、5重量%~75重量%の範囲にあるか、またはさらにはそれ以上であり得る。この流体配合物を、セラミックハニカム体に、塗装、噴霧、回転塗布、浸漬するか、または他の方法で塗布することができる。流体配合物がセラミックハニカム体に塗布される際、セラミックハニカム体は、室温であってもよいし、室温より高い温度であってもよい。例えば、セラミックハニカム体は、例えば、乾燥機内で50℃超(例えば、約100℃)に加熱され、その後、乾燥機からのその取り出し直後に、塗装または他の適切な塗布法により高温のままコーティングされ得る。特定の実施形態では、セラミックハニカム体の端部は、コーティング前に遮断(マスキング)され得る。このようにして、流体配合物によりセラミックハニカム体の内部部分がコーティングされることが、かなり、またはさらには完全に防止される。
【0056】
様々な実施形態で、交差壁102のマトリックスを有するハニカム構造体と、このマトリックスの周囲に配置されたスキン106と、スキン106上の焼結助剤を含む流体配合物のコーティングとを含むセラミックハニカム体が、炉に入れられ得る。本開示による様々な実施形態を実施するために、特別な炉の設計は必要ない。本明細書で使用される場合、「炉」とは、任意のキルン、トンネルキルン、加熱された容器もしくはチャンバ、またはハニカム体を焼結してセラミックハニカム体を形成することができるように構成された他の加熱装置もしくは機器を意味する。
【0057】
セラミックハニカム体を製造する焼成焼結助剤法の例示的な一例において、また図3を参照すると、方法300は、ステップ302において、グリーンハニカム体、すなわち、交差壁(例えば、壁102)のマトリックスを有するハニカム構造体と、このマトリックスの外周に隣接して配置されたスキン(例えば、スキン106)とを含むグリーンハニカム体を押し出すことを含む。方法300は、ステップ304において、グリーンハニカム体の第1の焼成を実施してセラミックハニカム体を製造し、続いて、ステップ306において、焼結助剤を含む流体配合物の第1のコーティングをセラミックハニカム体のスキンに塗布することを含む。これに続いて、ステップ308において、第1のコーティングを塗布した後にセラミックハニカム体の第2の焼成(再焼成)が行われる。
【0058】
方法300の特定の実施形態では、焼結助剤は、5.0マイクロメートル以下であるか、約2.0マイクロメートル未満であるか、またはさらには約1.0マイクロメートル未満である中央粒径(D50)を呈する材料の粒子を含み、特定の実施形態では、好ましくは、0.01マイクロメートル~1.0マイクロメートルの中央粒径を有する非常に小さい粒子を含む。焼結助剤の材料は、シリカ源、ナトリウム源、カルシウム源、ホウ素源、アルミナ源、リン源、イットリウム源、酸化セリウム、酸化ケイ素、希土類化合物、および前述のものの様々な組み合わせからなる群から選択される。カリウム、マグネシウム、ストロンチウム、バリウム、リチウムの酸化物または塩、および遷移金属元素の様々な塩(例えば、塩化鉄)が使用されてもよい。
【0059】
グリーンハニカム体およびセラミックハニカム体の双方の他の例示的な実施形態では、焼結助剤は、溶媒系に完全に溶解されていてもよい。さらに、特定の実施形態では、約10nmの中央粒径(D50)と同じ程度小さくてもよいが、これに限定されることはない。グリーンハニカム構造体およびセラミックハニカム構造体の双方に用いるために使用されるさらなる他の例示的な実施形態では、焼結助剤は、約10nm~5.0マイクロメートルの範囲、または特定の実施形態では約10nm~1.0マイクロメートルの範囲の中央粒径D50を呈する懸濁粒子を含み得る。
【0060】
いくつかの例示的な実施形態では、第2の焼成サイクルは、焼結助剤を含む流体配合物でセラミックハニカム体をコーティングした後に、セラミックハニカム構造体を炉内に配置し、セラミックハニカム体を、約0.5時間~約4時間、またはさらには0.5時間~2時間にわたり約1,200℃~約1,450℃のピーク温度で炉内に保持することを含む。特定の実施形態では、焼結助剤を含む流体配合物でセラミックハニカム体をコーティングした後に、ただしコーティングされたセラミックハニカム構造体を炉内に配置する前に、コーティングされたセラミックハニカム構造体が乾燥される。他の実施形態では、コーティングされたセラミックハニカム体は、炉内に配置される前に乾燥されない。
【0061】
図13は、気孔率の減少に対する、焼結助剤を含む流体配合物の単一コート、焼結助剤を含む流体配合物のツーコート、および焼結助剤を含む流体配合物の加熱塗布の効果を示す。ここから分かるように、焼結助剤を含む流体配合物の複数コートの塗布を使用すると、単一コートの塗布と比較して、スキン106の気孔率をさらに減少させることができる。同様に、焼結助剤を含む流体配合物の加熱コーティング塗布を使用すると、加熱式でない塗布と比較して、スキン106の気孔率をさらに減少させることができる。
【0062】
例示的なセラミックハニカム体
様々な実施形態に関して先に記載したように、高い気孔率(P%>40%であるか、またはさらにはP%>50%であるか、またはさらにはP%>55%である)のハニカム体100,110の強度を増加させるために、焼結助剤を含む流体配合物がグリーンハニカム体に塗布され、次いで、コーティングされたグリーンハニカム体が焼成される。いくつかの例示的な実施形態では、このように製造された焼成セラミックハニカム体100は、チタン酸アルミニウム含有ハニカム体であり、かつ約62%のチタン酸アルミニウム/チタン酸マグネシウムと、約29%のコーディエライトと、残りの他の相(場合によって、例えば、ムライト、アルミナ、コランダム、および他の少量相などを含む)とからの相組成を含む。本発明者らは、特定の実施形態で、スキン106の気孔率の減少が想定よりも少ないことを見出した。しかしながら、このことを考慮しても、セラミックハニカム体100のISO強度が25%~40%増加したことにより示されるように、焼成後のコーティングされたハニカム体100の強度は非常に高いことが見出された。また、本開示により作製されたセラミックハニカム体100が熱衝撃試験に合格する能力が、このISO強度の増加によって低下することはなかった。さらに、熱衝撃試験の結果から、上記のコーティングおよび焼成法の結果、熱膨張係数もさほど悪化しなかったことが分かった。
【0063】
図5を参照すると、本開示により製造されたセラミックハニカム体100,110のスキン106の外側表面516およびバルク内部部分(内側部分518および外側部分520)の分析は、スキン106の中およびその上にガラス相514が存在することを示す。さらに、スキン106は、特に外側表面516に隣接した外側部分520において、高ルチル相522を含む。スキン106の厚さにわたる距離に対する、スキン106中のガラス相の相分布のヒストグラムプロット(図6)およびスキン106中のルチル相のヒストグラムプロット(図7)を示す図6および図7も参照されたい。
【0064】
図4から分かるように、これは、図5の実施形態と同じバッチ配合物を有するセラミックハニカム体であるが、これは、焼結助剤を含む配合物でコーティングされていなかった。図4図5との比較から、スキン106のバルク部分が、従来のスキンとは異なる相組成を含むことが分かる。本発明者らは、ガラス相514を含むスキン106が、スキン106中のガラス含有層として形成され得ることをさらに発見した。ガラス相514を含むガラス含有層は、スキン106の大部分にわたりある程度まで延在し得るが、図示されている例示的な実施形態(例えば、図5)では、スキン106の外側部分520に集中し得る。例えば、図示されるように、ガラス相514の大部分(例えば、75体積%超)は、スキン106の内側表面517から470μm~780μmの間に存在する。ガラス相514のピーク値は、スキン106の固体体積(空隙を除く)の1%~約20%以上を占める。
【0065】
したがって、図示される実施形態では、ガラス相514は、スキン106の外側部分520、すなわち厚さ870μmを有するスキン106の外側400μmに主に存在する。このガラス相514は、少なくとも部分的に、本明細書に記載の焼結助剤を含むコーティングで製造されたセラミックハニカム体100,110のより高い強度の理由であると考えられている。すなわち、ガラス相514は、本明細書に記載のコーティング法なしで製造されたセラミックハニカム体と比較して、セラミックハニカム体100,110の周りにより堅い外被を形成し得る。さらに、ガラス相514がスキン中に存在しても、目立つほどの熱膨張の問題、すなわち熱膨張係数の不一致が生じない。
【0066】
スキン106中のアモルファスの非結晶相であるガラス相514の体積百分率は、電子後方散乱回折(EBSD)およびエネルギー分散型分光法(EDS)の組み合わせにより決定した。画像分析を使用して、EBSDマップからスキン106の厚さにわたる相変異を抽出した。シリカガラスの相分布は、SEM-EDSマップから抽出した。次に、ImageJおよびMatlabを使用して、以下のとおり、画像を加工処理してデータを収集した。EDSを使用して、コーディエライト、ムライトおよびガラスを含むシリカ含有相を発見した。ガラス相をコーディエライトおよびムライトから分離するために、強度を分析した。最も強度の高い領域がガラス相として識別された。これは、EBSDマップを比較することにより検証した。EBSDは、材料の結晶相のみを示す。アモルファスガラスであるので、このガラス相はEBSDプロットには表示されない。これにより、高強度シリカ相および固体アモルファス相が実際に同じであること、したがってガラス相であることが確認できた。図4および図5に示されるプロットは、スキン106の内側表面517からスキン106の外側表面516まで相が積み重ねられた分布である。図4および図5は、空隙を含まず、したがって、固相の体積百分率のみをプロットしている。
【0067】
より詳細には、図4および図5はそれぞれ、本明細書に記載の焼結助剤を含むコーティングなしで製造された既知の第1のセラミックハニカム体のスキン106の相分布、および本明細書に記載の焼結助剤を含むコーティングを用いて製造された第2のセラミックハニカム体100のスキン106の相分布を示す。以下の表1は、コーティングされていない第1のスキンのスキン106および本開示の実施形態による焼成されたスキン106中に存在する特定の相の平均体積%を示す。
【0068】
【表1】
【0069】
本開示の様々な実施形態は、同様のものであるがコーティングされていないセラミックハニカム体と比較して増加したISO強度を有するセラミックハニカム体100,110を提供する。チタン酸アルミニウム含有ハニカム体およびコーディエライト含有ハニカム体のどちらにも同様に利点が生じる。以下に説明するように、本明細書に開示される方法により得られた様々なセラミックハニカム体100,110は、同様のものであるがコーティングされていないセラミックハニカム体と比較して、増加した量のガラス相514を、スキン106中およびそのスキン表面516上に有し得て、また増加した量のルチル相(結晶性チタニア)522を、スキン106中およびスキン表面516上に有し得る。
【0070】
図4には、コーティングされていないセラミックハニカム体が、スキン中に存在するガラス相を有しないことが示されており、それに対して、図5には、スキン106中にガラス相514を含むコーティングされたセラミックハニカム体の相分布が示されている。
【0071】
図4図5とを比較すると、ガラス相514の量および分布の双方が、実質的にガラス相を含有しないコーティングされていないセラミックハニカム体のものとは著しく異なることがさらに証明される。例えば、図5に示されるように、スキン106のおよそ中間の厚さ521から外側表面516に位置する、セラミックハニカム体100,110のスキン106の外側部分520は、ガラス相514の大部分の割合(50体積%超)を含む。この例のガラス相514は、約1%のピーク%~約20%のピーク%の量にある。
【0072】
再び図1A図1Eおよび図5を参照すると、本開示によるいくつかの例示的な実施形態では、交差壁102のマトリックスを有するハニカム構造体と、このマトリックスの外周に配置されたスキン106とを含むセラミックハニカム体100,110が提供される。スキン106は、内側部分518および外側部分520、ならびにスキン106中に分布したガラス相514を含む。ガラス相514は、例えば、0.5体積%~5体積%の範囲にあるか、またはさらにはそれ以上である平均濃度で形成され得る。ガラス相514はまた、スキン106の少なくとも一部の外側表面516上に配置されていてもよい。いくつかの例示的な実施形態では、スキンは、500μm~2,000μmの範囲、特定の実施形態では約870μmの厚さを有する。
【0073】
さらに、図4は、コーティングされていないセラミックハニカム構造体が、実質的に均一な分布のルチル(すなわち、結晶性チタニア)を有することを示し、その一方で、図5は、コーティングされたセラミックハニカム構造体が、スキン106の内側表面517から約740μmからスキン106の外側表面516までに集中したルチル相522を有することを示す。結晶性チタニアは多面(large-faceted)であり得る。
【0074】
図5および図7にさらに示されるように、本開示によるいくつかの例示的な実施形態では、セラミックハニカム体100には、スキン106の半径方向の厚さ全体にわたり形成される様々な量の結晶性チタニア相522(例えば、ルチル)が形成されている。特に、結晶性のチタニア相522(体積%)は、スキン106の内側表面517上またはその近傍と比較して、スキン106の外側表面516上またはその近傍により多く形成されている。
【0075】
より詳細には、セラミックハニカム体100は、交差壁102のマトリックスを有するハニカム構造体と、このマトリックスの外周に配置されてかつ内側表面517から外側表面516まで半径方向および円周方向に延在するスキン106とを含む。スキン106は、内側部分518および外側部分520を含み、かつスキン106の外側部分520に分布した、第1の平均体積百分率(体積%)の第1の量の結晶性チタニア相522と、スキン106の内側部分518内に第2の平均体積百分率(体積%)で分布した第2の平均量の結晶性チタニア522とをさらに含み、第2の平均体積百分率は、第1の平均体積百分率よりも小さい。例えば、内側部分518内の第2のピーク体積百分率(体積%)は、外側部分520内の第2のピーク体積百分率(体積%)よりも、少なくとも5%小さいか、少なくとも10%小さいか、またはさらには少なくとも15%小さく、かつ1%~15%の範囲にあるか、またはさらにはそれ以上であり得る。いくつかの例示的な実施形態では、スキン106は、500μm~2,000μmの範囲の厚さを有し、特定の実施形態では約870μmの厚さを有する。
【0076】
本開示によるいくつかの例示的な実施形態では、交差壁102のマトリックスと、このマトリックスの外周に配置されたスキン106とを有するセラミックハニカム体100,110が提供される。スキン106は、平均50体積%超のチタン酸アルミニウム(擬板チタン石相519)を含み得る。図4および図5において、「PB」は、擬板チタン石相519を指すことに留意されたい。
【0077】
図5は、スキン106の外側部分520およびスキン表面520の内側部分520が、異なる相構成および組成を含むことをさらに示す。本開示の実施形態によると、特に、内側表面517から中央部521までの内側部分518に相当するスキン106の前半の厚さと、中央部521から外側表面516までの外側部分520に相当するスキン106の後半の厚さとを比較すると、特定の相が外側部分520においてより多くなっている。
【0078】
例えば、結晶性チタニア相(ルチル)522の体積%は、平均体積%およびピーク体積%の双方について、内側部分518よりも外側部分520においてより大きい。同様に、アルミナ(Al)相526の体積%は、平均体積%およびピーク体積%の双方について、内側部分518よりも外側部分520においてより大きい。さらに、ムライト相(3Al2SiO)528の体積%は、平均体積%およびピーク体積%の双方について、内側部分518よりも外側部分520においてより大きい。
【0079】
そのような実施形態により、従来のセラミックハニカム体よりも大きなISO強度を有するセラミックハニカム体100,110が提供される。さらなる実施形態では、交差壁102のマトリックスは、ハロー部分108、すなわち、マトリックスの内側部分に位置する壁の残りの部分よりも厚い、スキン106に直接隣接した壁102Bの一部を含み得る。ハロー部分108は、特定の実施形態でも同様にコーティングされ得て、強度をさらに向上させることが可能なガラス相をその中に含み得る。
【0080】
本明細書で使用される「公称」という用語は、所望の値よりも大きいおよび/または小さい値の範囲と一緒に、構成要素、製品またはプロセスの特性、測定値、重量または他のパラメータの所望または目標の値を指す。値の範囲は、通常、製造プロセスまたは公差のわずかな変動によるものである。
【0081】
第1、第2などの用語は、様々な要素、構成要素、領域、部分または区分を説明するために使用され得るが、これらの要素、構成要素、領域、部分または区分は、これらの用語により限定されるべきではない。これらの用語は、ある要素、構成要素、領域、部分または区分を、別の要素、構成要素、領域、部分または区分から区別するために使用され得る。例えば、上記で論じた第1の要素、構成要素、領域、部分または区分は、本開示の教示から逸脱することなく、第2の要素、構成要素、領域、部分または区分と称することができる。
【0082】
本開示の実施形態は例示的な形態で開示されているが、特許請求の範囲およびそれらの均等物に記載されているように、本開示の範囲から逸脱することなく、多くの修正、追加および削除を行うことができる。
【0083】
以下、本発明の好ましい実施形態を項分け記載する。
【0084】
実施形態1
ハニカムの製造方法において、
流体配合物の第1のコーティングをグリーンハニカム構造体のスキンに塗布するステップであって、前記流体配合物が、焼結助剤を含み、グリーンハニカム体が、内部部分を有する交差壁のマトリックスと、前記マトリックスの少なくとも一部の外周上に配置された前記スキンとを含む、ステップと、
前記第1のコーティングを塗布した後に前記グリーンハニカム体を焼成し、セラミックハニカム体を提供するステップと
を含み、
焼成後に、前記セラミックハニカム体の前記スキンが、第1の平均気孔率を含み、前記セラミックハニカム体の前記マトリックスの前記内部部分が、第2の平均気孔率を含み、前記第1の平均気孔率が、前記第2の平均気孔率よりも小さい、
ハニカムの製造方法。
【0085】
実施形態2
前記焼結助剤を含む前記流体配合物を、スラリーで搬送する、実施形態1記載のハニカムの製造方法。
【0086】
実施形態3
前記焼結助剤を含む前記流体配合物が、コロイド状シリカを含む、実施形態1記載のハニカムの製造方法。
【0087】
実施形態4
前記流体配合物を提供するステップが、
コロイド状シリカが水に入った第1の量の懸濁液と第2の量の水とを混合するステップ
をさらに含む、実施形態3記載のハニカムの製造方法。
【0088】
実施形態5
前記焼結助剤を含む前記流体配合物が、
溶媒、ならびに
ナトリウム源、カルシウム源、ホウ素源、アルミニウム源、リン源、イットリウム源、酸化セリウム、酸化ケイ素、希土類化合物、酸化カリウム、酸化マグネシウム、酸化ストロンチウム、酸化バリウム、酸化リチウム、カリウム塩、マグネシウム塩、ストロンチウム塩、バリウム塩、リチウム塩、および遷移金属元素からなる群から選択される材料
をさらに含む、実施形態1記載のハニカムの製造方法。
【0089】
実施形態6
前記流体配合物を前記グリーンハニカム体の前記スキンに塗布するステップが、
前記流体配合物における塗装、回転塗布、浸漬および/または噴霧のうちの1つ以上
を含む、実施形態1記載のハニカムの製造方法。
【0090】
実施形態7
前記流体配合物を前記グリーンハニカム体の前記スキンに塗布するステップが、
前記グリーンハニカム体を50℃超に加熱した後に前記液体配合物を高温のグリーンハニカム体に塗布するステップ
を含む、実施形態1記載のハニカムの製造方法。
【0091】
実施形態8
前記流体配合物の第1のコーティングを塗布した後に前記グリーンハニカム体を乾燥させるステップ
をさらに含む、実施形態1記載のハニカムの製造方法。
【0092】
実施形態9
前記第1のコーティングを塗布した後でかつ乾燥前に、プラスチックラップを前記グリーンハニカム体に適用するステップ
をさらに含む、実施形態8記載のハニカムの製造方法。
【0093】
実施形態10
乾燥後に、前記流体配合物の第2のコーティングを前記グリーンハニカム構造体に塗布するステップ
をさらに含む、実施形態8記載のハニカムの製造方法。
【0094】
実施形態11
焼成が、
前記流体配合物の前記第1のコーティングを塗布した後に前記グリーンハニカム体を炉に入れるステップ
を含む、実施形態1記載のハニカムの製造方法。
【0095】
実施形態12
前記流体配合物の前記第1のコーティングを塗布した後に前記グリーンハニカム体を乾燥させるステップと、
前記流体配合物の第2のコーティングを前記グリーンハニカム体の前記スキンに塗布するステップと、
前記流体配合物の前記第2のコーティングを塗布した後に前記グリーンハニカム構造体を乾燥させるステップと
をさらに含み、
前記流体配合物の前記焼結助剤が、ナトリウム源、カルシウム源、ホウ素源、アルミニウム源、リン源、イットリウム源、酸化セリウム、酸化ケイ素、希土類化合物、酸化カリウム、酸化マグネシウム、酸化ストロンチウム、酸化バリウム、酸化リチウム、カリウム塩、マグネシウム塩、ストロンチウム塩、バリウム塩、リチウム塩、および遷移金属元素からなる群から選択される材料である、
実施形態1記載のハニカムの製造方法。
【0096】
実施形態13
前記流体配合物の前記焼結助剤が、
0.01マイクロメートル~2.0マイクロメートルの範囲の平均粒径を有する粒子
を含む、実施形態12記載のハニカムの製造方法。
【0097】
実施形態14
ハニカムの製造方法において、
交差壁のマトリックスを有するハニカム構造体と、前記マトリックスの外周に隣接して配置されたスキンとを含むグリーンハニカム体を押し出すステップと、
グリーンハニカム構造体の第1の焼成を実施してセラミックハニカム体を製造するステップと、
焼結助剤を含む流体配合物の第1のコーティングを前記セラミックハニカム体の前記スキンに塗布するステップと、
前記第1のコーティングを塗布した後に前記セラミックハニカム体の第2の焼成を実施するステップと
を含み、
前記焼結助剤が、0.01マイクロメートル~5.0マイクロメートルの範囲の平均粒径を有する材料の粒子を含み、前記材料が、ナトリウム源、カルシウム源、ホウ素源、イットリウム源、酸化セリウム、酸化ケイ素、および希土類化合物からなる群から選択される、
ハニカムの製造方法。
【0098】
実施形態15
前記材料と溶媒とを混合することにより前記流体配合物を調製するステップ
をさらに含み、
前記焼結助剤が、2マイクロメートル未満の平均粒径を有する前記材料の前記粒子をさらに含む、
実施形態14記載の方法。
【0099】
実施形態16
前記溶媒が酸を含む、実施形態15記載の方法。
【0100】
実施形態17
前記第2の焼成が、1/2時間~4時間の範囲である、実施形態14記載の方法。
【0101】
実施形態18
セラミックハニカム体において、
交差壁のマトリックスを含むハニカム構造体と、
前記交差壁のマトリックスの外周に隣接して配置されたスキンであって、前記スキン中に分布したガラス相を含むスキンと
を含む、セラミックハニカム体。
【0102】
実施形態19
前記ガラス相が、1体積%以上のピーク百分率を含む、実施形態18記載のセラミックハニカム体。
【0103】
実施形態20
前記ガラス相が、5体積%以上のピーク百分率を含む、実施形態18記載のセラミックハニカム体。
【0104】
実施形態21
前記ガラス相が、10体積%以上のピーク百分率を含む、実施形態18記載のセラミックハニカム体。
【0105】
実施形態22
前記ガラス相が、15体積%以上のピーク百分率を含む、実施形態18記載のセラミックハニカム体。
【0106】
実施形態23
前記ガラス相が、1体積%~20体積%のピーク百分率を含む、実施形態18記載のセラミックハニカム体。
【0107】
実施形態24
前記スキン中の前記ガラス相が、0.5%体積%~5体積%の範囲の平均濃度を含む、実施形態18記載のセラミックハニカム体。
【0108】
実施形態25
前記スキンが、内側部分および外側部分を含み、前記ガラス相が、前記外側部分では第1の平均体積百分率で分布しており、前記内側部分では第2の平均体積百分率で分布しており、前記第2の平均体積百分率が、前記第1の平均体積百分率よりも小さい、実施形態18記載のセラミックハニカム体。
【0109】
実施形態26
前記セラミックハニカム体の前記スキンが、第1の平均気孔率を含み、前記セラミックハニカム体の前記マトリックスの内部部分が、第2の平均気孔率を含み、前記第1の平均気孔率が、前記第2の平均気孔率よりも小さい、実施形態18記載のセラミックハニカム体。
【0110】
実施形態27
ある量の結晶性チタニアが前記スキン中に分布している、実施形態18記載のセラミックハニカム体。
【0111】
実施形態28
前記スキンが、内側部分および外側部分を有し、結晶性チタニアが、前記外側部分では第1の平均体積百分率で分布しており、前記内側部分では第2の平均体積百分率で分布しており、前記第2の平均体積百分率が、前記第1の平均体積百分率よりも小さい、実施形態18記載のセラミックハニカム体。
【0112】
実施形態29
セラミックハニカム体において、
交差壁のマトリックスを含むハニカム構造体と、
前記交差壁のマトリックスの外周に隣接して配置されたスキンであって、内側部分および外側部分を有するスキンと、
前記スキン中に分布したある量の結晶性チタニアであって、前記外側部分では第1の平均体積百分率で分布しており、前記内側部分では第2の平均体積百分率で分布しており、前記第2の平均体積百分率が、前記第1の平均体積百分率よりも小さい、結晶性チタニアと
を含む、セラミックハニカム体。
【0113】
実施形態30
前記スキンがガラス相を含む、実施形態29記載のセラミックハニカム体。
【0114】
実施形態31
焼成後に、前記セラミックハニカム体の前記スキンがガラス相を含む、実施形態1記載の方法。
【0115】
実施形態32
焼成後に、前記セラミックハニカム体の前記スキンがある量の結晶性チタニアを含む、実施形態1記載の方法。
図1A
図1B
図1C
図1D
図1E
図2A
図2B
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10-11】
図12
図13