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特許7399129故障対応時間演算システム、及び、故障対応時間演算方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-07
(45)【発行日】2023-12-15
(54)【発明の名称】故障対応時間演算システム、及び、故障対応時間演算方法
(51)【国際特許分類】
   B66B 5/00 20060101AFI20231208BHJP
【FI】
B66B5/00 G
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2021044406
(22)【出願日】2021-03-18
(65)【公開番号】P2022143726
(43)【公開日】2022-10-03
【審査請求日】2023-01-31
(73)【特許権者】
【識別番号】000232955
【氏名又は名称】株式会社日立ビルシステム
(74)【代理人】
【識別番号】110000925
【氏名又は名称】弁理士法人信友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】五嶋 匡
(72)【発明者】
【氏名】厚沢 輝佳
(72)【発明者】
【氏名】野中 久典
(72)【発明者】
【氏名】柴 健一
【審査官】太田 義典
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-116377(JP,A)
【文献】特開平10-124477(JP,A)
【文献】特開2005-032069(JP,A)
【文献】特開2021-091537(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66B 5/00- 5/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
昇降機に発生した故障に関して、過去の故障日報に照合して、故障対応時間を算出する故障対応時間演算システムにおいて、
少なくとも故障状態、故障原因機器、原因調査時間、対策作業時間、及び、前記昇降機の識別番号を含む過去の故障日報が蓄積された故障日報管理部と、
少なくとも、昇降機の識別番号、機種、構成機器及び住所情報を含む、昇降機の仕様情報が蓄積された昇降機仕様管理部と、
昇降機の機種及び構成機器別の標準原因調査時間が蓄積された機器別標準原因調査時間管理部と、
昇降機の機種及び構成機器別の標準対策作業時間が蓄積された機器別標準対策作業時間管理部と、
前記故障日報管理部に蓄積された故障日報と、昇降機の故障状態とから、発生した故障の原因機器候補を確率付きで抽出する原因機器候補抽出部と、
前記原因機器候補抽出部で抽出された原因機器候補のうち、前記確率の合計が所定の値以上である原因機器候補を故障原因機器群とし、前記故障原因機器群に挙げられた各原因機器と前記機器別標準原因調査時間管理部とを照合して、前記各原因機器についての標準原因調査時間を抽出すると共に、前記各原因機器の標準原因調査時間の合計時間を原因調査時間として算出する、原因調査時間算出部と、
前記故障原因機器群に挙げられた各原因機器と前記機器別標準対策作業時間管理部とを照合して、前記各原因機器についての標準対策作業時間を抽出すると共に、前記各原因機器の標準対策作業時間の合計時間を対策作業時間として算出する、対策作業時間算出部と、
前記故障原因機器群の各原因機器の故障の対応に必要な部品が保管されている部品保管拠点の住所と、故障が発生した昇降機の住所と、外部から入力される交通情報とから、部品搬送時間を算出する部品搬送時間算出部と、
前記原因調査時間が部品搬送時間よりも短い場合には、部品搬送時間と対策作業時間との合計を故障対応時間とし、前記原因調査時間が前記部品搬送時間よりも長い場合には、前記原因調査時間と前記対策作業時間との合計を故障対応時間として算出する故障対応時間算出部と
を備える
故障対応時間演算システム。
【請求項2】
故障対応時間算出部で算出された故障対応時間に応じて、保守員の作業を支援する支援者の要否を判断する支援者要否判断部を備える
請求項1に記載の故障対応時間演算システム。
【請求項3】
さらに、少なくとも、昇降機の機種及び構成機器別の部品情報及び部品保管拠点毎の在庫情報が蓄積された部品情報管理部を備え、
原因機器候補抽出部で抽出された原因機器候補のうち、前記確率の合計が所定の値以上である原因機器候補を故障原因機器群とし、前記故障原因機器群に挙げられた各原因機器と前記部品情報管理部とを照合して、前記各原因機器の修理及び調整に必要な部品及び部品保管拠点を選定する出庫対象部品選定部を有する
請求項1に記載の故障対応時間演算システム。
【請求項4】
前記部品搬送時間算出部で、前記部品搬送時間が算出された後、前記部品を部品保管拠点から出庫する指示を出す自動出庫部を備える
請求項1又は3に記載の故障対応時間演算システム。
【請求項5】
昇降機に発生した故障に関して、少なくとも故障状態、故障原因機器、原因調査時間、対策作業時間、及び、前記昇降機の識別番号を含む過去の故障日報が蓄積された故障日報管理部と、
少なくとも、昇降機の識別番号、機種、構成機器及び住所情報を含む、昇降機の仕様情報が蓄積された昇降機仕様管理部と、
昇降機の機種及び構成機器別の標準原因調査時間が蓄積された機器別標準原因調査時間管理部と、
昇降機の機種及び構成機器別の標準対策作業時間が蓄積された機器別標準対策作業時間管理部と、を備える故障対応時間演算システムにおいて、
前記故障日報管理部に蓄積された故障日報と、故障した昇降機の故障状態とから、発生した故障の原因機器候補を確率付きで抽出し、
前記原因機器候補のうち、前記確率の合計が所定の値以上である原因機器候補を故障原因機器群とし、前記故障原因機器群に挙げられた各原因機器と前記機器別標準原因調査時間管理部とを照合して、前記各原因機器についての標準原因調査時間を抽出すると共に、前記各原因機器の標準原因調査時間の合計時間を原因調査時間として算出し、
前記故障原因機器群に挙げられた各原因機器と前記機器別標準対策作業時間管理部とを照合して、前記各原因機器についての標準対策作業時間を抽出すると共に、前記各原因機器の標準対策作業時間の合計時間を対策作業時間として算出し、
前記故障原因機器群の各原因機器の故障の対応に必要であると選定された出庫対象部品が保管されている部品保管拠点の住所と、故障が発生した昇降機の住所と、外部から入力される交通情報とから、出庫対象部品の搬送に要する部品搬送時間を算出し、
前記原因調査時間が部品搬送時間よりも短い場合には、部品搬送時間と対策作業時間との合計を故障対応時間とし、前記原因調査時間が前記部品搬送時間よりも長い場合には、前記原因調査時間と前記対策作業時間との合計を故障対応時間として算出する
故障対応時間演算方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、昇降機の故障対応時間演算システム、及び、故障対応時間演算方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、複数の機器で構成される昇降機の保全において、昇降機の構成機器に故障が発生した場合、故障状態や、昇降機自体が発報するエラーコードを元に、故障原因機器候補をリストアップして故障対応者に提示する技術が利用されている。この技術では、過去に発生したエラーコードや故障状態を蓄積した故障日報等の故障履歴データから現地の故障状態と類似度の高い同種の故障を抽出、集計し、故障原因である可能性が高い機器をリストアップすることで、故障の早期復旧を目指す。
【0003】
この種の故障復旧時間を効率化する技術の1つとして、故障対応出動時に、最適な保守員を選定して出動させる方法が開示されている(特許文献1)。特許文献1では、故障対応に出動させる複数の保守員候補それぞれの交通移動時間と、復旧に必要な交換部品の搬送時間と、現場での作業時間とを合計した総作業時間とをあらかじめ算出する。そして、総作業時間が最も小さい保守員を故障対応者に選定することとしている。
【0004】
なお、上述した交通移動時間は、保守員が携帯する端末の位置情報と故障発生昇降機の位置情報とを利用して算出される。また、交換部品の搬送時間は、現地の故障状態から推定した故障原因機器候補を元に交換が必要な部品を選択し、その部品についての近隣拠点の在庫情報及び交通情報から算出される。そして、作業時間は、保守員の故障復旧スキル情報及び過去の故障復旧実績をもとに算出される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2019-116377号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述した技術では、総作業時間は、保守員の交通移動時間と、部品の搬送時間と、現場での作業時間との合計時間とされている。しかしながら、実際には、部品の搬送時間と作業時間には重複する時間がある。例えば、部品が搬送されている間に、実際には現場で作業が開始されている場合がある。このため、保守員の交通移動時間と、部品の搬送時間と、作業時間との合計を総作業時間とした場合、この重複する時間が考慮されていないため、算出された総作業時間と実際の総作業時間との間にずれが発生する。その結果、例えば、保守員に対する支援手配等のバックアップ要否判断が不正確となる等、復旧効率が下がる懸念がある。
【0007】
そこで、本発明は、より正確な総作業時間(以下、故障対応時間と記す)の算出を可能とすることで、復旧効率の向上を図ることができる故障対応時間演算システム、及び、故障対応時間演算方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決し、本発明の目的を達成するため、本発明の故障対応時間演算システムは、故障日報管理部と、昇降機仕様管理部と、機器別標準原因調査時間管理部と、機器別標準対策作業時間管理部とを有する。また、本発明の故障対応時間演算システムは、原因機器候補抽出部と、原因調査時間算出部と、対策作業時間算出部と、部品搬送時間算出部と、故障対応時間算出部と、を備える。故障日報管理部には、少なくとも故障状態、故障原因機器、原因調査時間、対策作業時間、及び、昇降機の識別番号を含む過去の故障日報が蓄積されている。昇降機仕様管理部には、少なくとも、昇降機の識別番号、機種、構成機器及び住所情報を含む、昇降機の仕様情報が蓄積されている。機器別標準原因調査時間管理部には、昇降機の機種及び構成機器別の標準原因調査時間が蓄積されている。機器別標準対策作業時間管理部には、昇降機の機種及び構成機器別の標準対策作業時間が蓄積されている。原因機器候補抽出部は、故障日報管理部に蓄積された故障日報と、昇降機の故障状態とから、発生した故障の原因機器候補を確率付きで抽出する。原因調査時間算出部は、原因機器候補抽出部で抽出された原因機器候補のうち、確率の合計が所定の値以上である原因機器候補を故障原因機器群とし、故障原因機器群に挙げられた各原因機器と機器別標準原因調査時間管理部とを照合して、各原因機器についての標準原因調査時間を抽出すると共に、各原因機器の標準原因調査時間の合計時間を原因調査時間として算出する。対策作業時間算出部は、故障原因機器群に挙げられた各原因機器と機器別標準対策作業時間管理部とを照合して、各原因機器についての標準対策作業時間を抽出すると共に、各原因機器の標準対策作業時間の合計時間を対策作業時間として算出する。部品搬送時間算出部は、故障原因機器群の各原因機器の故障の対応に必要な部品が保管されている部品保管拠点の住所と、故障が発生した昇降機の住所と、外部から入力される交通情報とから、部品搬送時間を算出する。故障対応時間算出部は、原因調査時間が搬送時間よりも短い場合には、搬送時間と対策作業時間との合計を故障対応時間とし、原因調査時間が部品搬送時間よりも長い場合には、原因調査時間と対策作業時間との合計を故障対応時間として算出する。
【0009】
本発明の故障対応時間演算方法は、まず、故障日報管理部に蓄積された故障日報と、故障した昇降機の故障状態とから、発生した故障の原因機器候補を確率付きで抽出する。次に、原因機器候補のうち、確率の合計が所定の値以上である原因機器候補を故障原因機器群とし、故障原因機器群に挙げられた各原因機器についての標準原因調査時間を抽出すると共に、各原因機器の標準原因調査時間の合計時間を原因調査時間として算出する。次に、故障原因機器群に挙げられた各原因機器についての標準対策作業時間を抽出すると共に、各原因機器の標準対策作業時間の合計時間を対策作業時間として算出する。次に、故障原因機器群の各原因機器の故障の対応に必要であると選定された出庫対象部品が保管されている部品保管拠点の住所と、故障が発生した昇降機の住所と、外部から入力される交通情報とから、出庫対象部品の搬送に要する部品搬送時間を算出する。次に、原因調査時間が部品搬送時間よりも短い場合には、部品搬送時間と対策作業時間との合計を故障対応時間とし、原因調査時間が部品搬送時間よりも長い場合には、原因調査時間と対策作業時間との合計を故障対応時間として算出する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、より正確な故障対応時間を算出することができるので、昇降機の復旧効率の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の一実施形態に係る故障対応時間演算システムの構成図である。
図2】故障日報DBを構成する情報の構成例である。
図3】機器別標準原因調査時間DBを構成する情報の構成例である
図4】機器別標準対策作業時間DBを構成する情報の構成例である。
図5】部品情報DBを構成する情報の構成例である。
図6】原因機器候補抽出部で抽出される発生した故障の原因機器及びその確率の一例を示す図である。
図7】運搬手段選定部で選定される運搬手段の選定基準の一例を示した図である。
図8】交通状況提供システムが出力する運搬手段毎の移動距離及び渋滞情報の一例である。
図9】故障対応時間算出部における故障対応時間算出方法を示したフローである。
図10】故障対応情報送信部が保守員の携帯端末に送信する情報の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の一実施形態に係る昇降機の故障対応時間演算システム、及び故障対応時間演算方法の一例を、図面を参照しながら説明する。なお、本発明は以下の例に限定されるものではない。以下で説明する各図において、共通部分には同一の符号を付している。
【0013】
図1は、本実施形態に係る故障対応時間演算システムの構成図である。図1に示すように、故障対応時間演算システム100は、エレベーター等の昇降機1と、保守員4が携帯する携帯端末5と、監視センター2と、交通状況提供システム6とによって構成されている。
【0014】
昇降機1には、昇降機1の運転制御を司る制御盤11、及び、遠隔監視装置12が設けられている。遠隔監視装置12は、制御盤11のエラーコード出力端子に常時接続されており、少なくとも、昇降機1の故障発生時に、昇降機1の識別データ及び故障内容を示すエラーコードを含む異常信号を監視センター2に送信する。
【0015】
保守員4が携帯する携帯端末5は、保守員4が確認した昇降機1の仕様情報及び故障状態情報等を、監視センター2に送信する機能を有する。また、携帯端末5には、故障対応時間演算システム100によって生成された故障対応に関する故障対応情報を監視センター2から受信する機能を有する。
【0016】
監視センター2は、受信装置21と、情報管理部20と、情報処理部40とを有する。受信装置21は、昇降機1に装備される遠隔監視装置12と専用回線、インターネット回線、その他の有線伝送ライン、又は無線伝送ラインによって接続される。受信装置21は、遠隔監視装置12から送信されてくる昇降機1の識別番号、エラーコードを含む異常発報信号等の故障状態情報、並びに、昇降機1の仕様情報を受信する。また、受信装置21は、昇降機1がある建物の住人、又は、管理者からの電話によって伝送された情報、及び、現地に出動した保守員4によって確認された、昇降機1の故障状態情報及び仕様情報を、携帯端末5を通じて受信する機能も備える。
【0017】
情報管理部20は、昇降機仕様データベース(以下、DBと示す)23、故障日報DB22、機器別標準原因調査時間DB24、機器別標準対策作業時間DB25、部品情報DB26を有する。情報管理部20の各部の詳細については後で詳述する。
【0018】
情報処理部40は、類似故障日報検索部27、原因機器候補抽出部28、原因調査時間算出部29、対策作業時間算出部30、出庫対象部品選定部31、運搬手段選定部32、部品搬送時間算出部33、自動出庫部34、故障対応時間算出部35を備える。さらに、情報処理部40は、支援者要否判断部36、支援者手配部38、故障対応情報送信部37を備える。
【0019】
情報処理部40では、受信装置21で受信した昇降機1の仕様情報及び故障状態情報と、情報管理部20の各データベースとを照合し、原因調査時間、及び、対策作業時間を算出する。また、情報処理部40では、交通状況提供システム6から提供される交通情報をもとに、部品搬送時間を算出する。情報処理部40における各部の詳しい処理内容については、後で詳述する。
【0020】
交通状況提供システム6は、監視センター2とは別の外部の交通情報会社によって運営されており、住所又は携帯端末のGPSなどの位置情報をもとに、移動手段別の移動時間に関わる情報を、インターネット回線等を通じて監視センター2側に提供する。さらに、交通状況提供システム6は、移動手段別に、渋滞情報を加味した情報を監視センター2に提供する。
【0021】
次に、情報管理部20を構成する昇降機仕様DB23、故障日報DB22、機器別標準原因調査時間DB24、機器別標準対策作業時間DB25、部品情報DB26の各構成例について説明する。昇降機仕様DB23、故障日報DB22、機器別標準原因調査時間DB24、機器別標準対策作業時間DB25、部品情報DB26は、それぞれ、本発明の昇降機仕様管理部、故障日報管理部、機器別標準原因調査時間管理部、機器別標準対策作業時間管理部、部品情報管理部に相当する。
【0022】
昇降機仕様DB23は、保全対象の全昇降機の識別番号、機種、構成機器の仕様に関する情報が蓄積されたデータベースである。識別番号は、各昇降機に個別に付された固有の番号等であり、例えば“A1234”(図2参照)等のように記録されている。
【0023】
故障日報DB22は、少なくとも、故障した昇降機に関する故障状態、故障原因機器、原因調査時間、対策作業時間、識別番号を含む過去の故障日報が、故障発生日毎に蓄積されたデータベースである。図2は、故障日報DBを構成する情報の構成例である。図2に示すように、故障日報DB22は、例えば、「故障日報ナンバー」、「故障日時」、「機種」、「識別番号」、「エラーコード」、「原因機器」、「故障時状態」、「初動確認結果」、「原因調査時間」、「対策作業時間」、「交換部品名」、「故障対応者」の項目を有する。
【0024】
「故障日報ナンバー」の項目には、各故障日報に割り振られた番号が記録されている。「故障日時」の項目には、例えば“1999年12月24日14時30分”等の故障が発生した日時が記録される。「機種」の項目には、例えば“EL-2”等、故障した昇降機の機種名が記録される。「識別番号」の項目には、例えば“A12345”等、昇降機を識別するために付されている識別番号が記録される。「エラーコード」の項目には、例えば“TO1”等、故障した昇降機において発報されたエラーコードが記録される。エラーコードが発報されていない場合には、「エラーコード」の項目において、「なし」と記録される。
【0025】
「原因機器」の項目には、例えば“エンコーダ”等、故障の原因となった機器が記録される。「故障時状態」の項目には、故障時における昇降機の状態が記録されており、例えば、乗場階の位置と、乗りかごの停止位置との間に段差がある場合には“段差”と記録され、異常音が発生していた場合には、“異常音”と記録される。「初動確認結果」の項目には、故障時において、現場にいる保守員が確認した初動情報が記録されており、例えば、乗りかごが中間階に停止した場合には、“中間階停止”と記録され、電源が切れている場合には、”電源喪失“等と記録される。
【0026】
「原因調査時間」の項目には、保守員が現場で原因調査にかかった時間が記録され、例えば“10(分)”等と記録される。ここで、原因調査とは、故障状態から詳しい故障原因機器を調査すると共に、交換必要な部品等を調査する作業であり、部品交換や部品調整等の対策作業の前段に行われる作業である。
【0027】
「対策作業時間」の項目には、保守員が現場で部品交換等の対策作業にかかった時間が記録され、例えば“15(分)”等と記録される。ここで、対策作業とは、故障の原因となった原因機器における部品の交換や、調整等、昇降機を復旧するための作業であり、原因調査が行われた後に行われる作業である。
【0028】
「交換部品名」の項目には、“エンコーダA”等、交換した部品名が記録される。「故障対応者」の項目には、“保守員A”等、現場で故障した昇降機の復旧作業を行った保守員を特定可能な形式で記録される。
【0029】
このように、故障日報DB22に記録される各項目はカテゴライズされており、絞り込みや集計が可能な形で蓄積されている。これらの故障日報DB22は、故障対応を行った保守員がそれぞれの携帯端末から随時登録することができるものである。なお、本発明の「故障状態」は、エラーコードから認識可能な故障状態、又は/及び、保守員が確認した故障状態を指す。
【0030】
機器別標準原因調査時間DB24は、昇降機1の機種及び構成機器別の故障対応時の標準原因調査時間が格納されたデータベースである。図3は、機器別標準原因調査時間DB24を構成する情報の構成例である。図3に示すように、機器別標準原因調査時間DB24は、例えば、「機種」、「原因機器」、「標準原因調査時間」の項目を有する。「機種」、「原因機器」の項目については、故障日報DB22における「機種」、「原因機器」の項目と同じである。
【0031】
「標準原因調査時間」の項目には、昇降機1の機種及び故障の原因機器別にかかった故障対応時の標準的な原因調査時間が記録され、例えば“10(分)”と記録される。標準的な原因調査時間は、例えば、故障日報DB22に格納された機種別の原因機器毎に算出した平均値や中央値などであり、統計的に算出した値によって構成されている。
【0032】
機器別標準対策作業時間DB25は、昇降機1の機種及び構成機器別の故障対応時の標準対策作業時間が格納されたデータベースである。図4は、機器別標準対策作業時間DB25を構成する情報の構成例である。図4に示すように、機器別標準対策作業時間DB25は、例えば、「機種」、「原因機器」、「標準対策作業時間」の項目を有する。「機種」、「原因機器」の項目については、故障日報DB22における「機種」、「原因機器」の項目と同じである。
【0033】
「標準対策作業時間」の項目には、昇降機1の機種及び故障の原因機器別にかかった故障対応時の標準的な対策作業時間が記録され、例えば“15(分)”と記録される。標準的な対策作業時間は、例えば、故障日報DBに格納された機種別の原因機器毎に算出した平均値や中央値などであり、統計的に算出した値によって構成されている。また、標準的な対策作業時間は、予め作成された標準的な部品交換手順書に基づいて試算された時間で構成されてもよい。
【0034】
部品情報DB26は、昇降機1の機種及び構成機器別の部品情報、部品保管拠点毎の在庫情報が格納されたデータベースである。図5は、部品情報DB26を構成する情報の構成例である。図5に示すように、部品情報DBは、例えば、「機種」、「原因機器」、「重量」、「梱包サイズ」、「在庫情報」の項目を有する。「機種」、「原因機器」の項目については、故障日報DB22における「機種」、「原因機器」の項目と同じである。なお、図5における「原因機器」は、出庫対象部品である。部品情報DBは、昇降機1の識別情報から紐づけできる機種及び構成機器の情報と照合され、交換が必要な部品群の大きさや、どの拠点から故障した対象となる昇降機1に部品群を搬送するかの判定に用いられる。
【0035】
「重量」の項目には、出庫対象部品の重量が記録され、例えば、“0.3kg”等と記録される。「梱包サイズ」の項目には、出庫対象部品を運搬用に梱包したときのサイズが記録され、例えば、“15×15×5cm”等と記録される。「在庫情報」の項目には、各出庫対象部品の保管拠点(住所)及び、その保管拠点における保管数が記録され、例えば、“部品センター(A地区)1000個、支社(B地区)3個、営業所A(C地区)2個、営業所B(D地区)1個”等と記録されている。
【0036】
情報管理部20では、上述した各データベースが管理され、随時、更新されている。
【0037】
2.情報処理部の構成、及び、故障対応時間演算方法
次に、本実施形態における監視センター2の情報処理部40の各部の構成を、本実施形態の故障対応時間演算方法の説明と合わせて詳述する。なお、以下で説明する情報処理部40の各処理の内容は、例えばCPU(Central Processing Unit)を用いソフトウエア的に自動で実行されるものである。
【0038】
まず、昇降機1に故障が発生した場合、監視センター2の受信装置21は、昇降機1の識別番号や、故障状態等を含む故障情報を受信する。この故障情報は、昇降機1自体が発報するエラーコードの他、住人又は管理人からの電話からの情報、又は、現地に出動した保守員4の携帯端末5からの情報を含む。
【0039】
例えば、昇降機1に故障が発生すると、この故障が発生した現地に保守員4が出動し、その故障状態を確認する。保守員4は、携帯端末5を用いて、その故障が発生している昇降機の識別番号、機種等の仕様情報と、故障状態情報とを監視センター2に送信する。そして、監視センター2では受信装置21が、故障情報を受信した場合、類似故障日報検索部27に故障情報を入力する。
【0040】
一方、昇降機1自体が発報するエラーコードが受信装置21に入力される場合には、受信装置21は、そのエラーコードや、エラーコードを発報した昇降機1の識別番号を含む仕様情報を類似故障日報検索部27に入力する。また、住人又は管理人からの電話による故障情報を受信装置21が受けた場合にも、受信装置21は、故障情報及び昇降機1の識別番号を含む仕様情報を類似故障日報検索部27に入力する。
【0041】
類似故障日報検索部27は、故障した昇降機1の識別番号を昇降機仕様DB23と照合して、故障した昇降機1の機種及び構成機器の部品型式などの仕様を取得する。さらに、類似故障日報検索部27は、昇降機1の機種と、エラーコードや不具合事象などの故障状態情報とを検索条件として、故障日報DB22の中から、発生した故障に類似する故障(類似故障)を検索して抽出する。ここで、類似故障日報検索部27において、類似故障が無いと判断された場合には、過去の類似事例を故障原因調査に活用する意味がないと判断し、類似故障日報検索部27は、サポートセンター(図示を省略する)に通報する。サポートセンターに通報された場合には、専門技術者と現地の保守員4とが直接やり取りして故障原因を究明する。
【0042】
次に、原因機器候補抽出部28は、発生した故障状態と類似する故障状態が過去の故障日報の中にある場合には、抽出した故障日報を故障原因機器別に集計する。さらに、原因機器候補抽出部28は、抽出した類似故障日報件数を分母とし、集計した故障原因機器を分子として、故障原因機器別の割合を算出し、その割合を、発生した故障の原因機器である確率として出力する。すなわち、原因機器候補抽出部28は、発生した故障の原因機器候補を確率付きで抽出する。
【0043】
図6は、原因機器候補抽出部28で抽出される発生した故障の原因機器及びその確率の一例を示す図である。図6に示すように、原因機器候補抽出部28では、原因機器が「エンコーダ」である確率が「40%」、原因機器が「ポジテクタ」でる確率が「20%」等、原因機器毎に故障原因の確率が算出される。原因機器候補抽出部28で算出された結果は、原因調査時間算出部29、対策作業時間算出部30、及び、出庫対象部品選定部31に送られる。
【0044】
原因調査時間算出部29は、原因機器候補抽出部28が算出した確率付きの原因機器について、例えば、確率の高い順から加算して70%に到達するまでの複数の原因機器を、故障原因機器群として決定する。そして、原因調査時間算出部29は、故障原因機器群に挙げられた複数の原因機器について、機器別標準原因調査時間DB24と照合し、各原因機器についての標準原因調査時間を抽出してその合計時間を算出する。原因調査時間算出部29は、その合計時間を発生した故障の原因調査に要する原因調査時間として記憶する。
【0045】
一方、対策作業時間算出部30は、原因機器候補抽出部28が算出した確率付きの原因機器について、原因調査時間算出部29と同様に、確率の高い順から加算して70%に到達するまでの複数の原因機器を、故障原因機器群として決定する。そして、対策作業時間算出部30は、故障原因機器群に挙げられた原因機器について、機器別標準対策作業時間DB25と照合し、各原因機器についての標準対策作業時間を抽出してその合計時間を算出する。対策作業時間算出部30は、その合計時間を発生した故障の対策作業(部品交換、調整)に要する対策作業時間として記憶する。
【0046】
出庫対象部品選定部31は、原因機器候補抽出部28が算出した確率付きの原因機器について、原因調査時間算出部29及び対策作業時間算出部30と同様、確率の高い順から加算して70%に到達するまでの複数の原因機器を、故障原因機器群として決定する。そして、出庫対象部品選定部31は、故障原因機器群に挙げられた原因機器について、昇降機仕様DB23及び部品情報DB26と照合し、各原因機器の修理(交換)及び調整に必要となる可能性が高い候補部品を出庫対象部品として抽出する。そして、出庫対象部品選定部31は、出庫対象部品を記憶する。
【0047】
さらに、出庫対象部品選定部31は、選定した出庫対象部品について、部品情報DB26内で管理される出庫対象部品の部品型式及び部品の大きさと重量を記憶する。また、出庫対象部品選定部31は、各地にある部品保管拠点の在庫状況から出庫可能な部品保管拠点(住所)を選定して記憶する。出庫対象部品選定部31では、出庫可能な部品保管拠点が複数あれば、部品保管拠点の候補地として、複数の部品保管拠点を選定する。
【0048】
次に、運搬手段選定部32は、出庫対象部品選定部31によって選定された出庫対象部品について、各出庫対象部品の重量と大きさ(梱包サイズ)をもとに、自動で運搬手段の候補を選定して記憶する。図7は、運搬手段選定部32で選定される運搬手段の選定基準の一例を示した図である。例えば、出庫対象部品の総重量が10kg未満の場合には、運搬手段は、車、バイク又は自転車とし、10kg以上20kg未満の場合には、車又はバイクとし、20kg以上の場合には、車が選定される。また、梱包された出庫対象部品の大きさについても、30×30×30cm未満である場合には、車、バイク又は自転車、30×30×30cm以上50×50×50cm未満である場合には、車又はバイク、50×50×50cm以上である場合には、車が選定される。このように、運搬手段選定部32においても、各出庫対象部品の重量及び大きさに応じて、可能な運搬手段の候補が選定される。
【0049】
次に、部品搬送時間算出部33は、故障した昇降機1の住所と、出庫対象部品選定部31において選定された出庫対象部品の部品保管拠点の住所と、運搬手段選定部32において選定された運搬手段とを、外部の交通状況提供システム6に入力する。故障した昇降機1の住所については、昇降機仕様DB23に照合した得られた情報が部品搬送時間算出部33に記憶され、交通状況提供システム6に入力される。
【0050】
部品搬送時間算出部33は、出庫対象部品選定部31に選定された部品保管拠点が複数ある場合には、複数の部品保管拠点の候補地を交通状況提供システム6に入力する。同様に、運搬手段選定部32において、複数の運搬手段の候補が選定されている場合には、部品搬送時間算出部33は、複数の運搬手段を交通状況提供システム6に入力する。
【0051】
交通状況提供システム6は、入力された部品保管拠点の住所を出発点、故障した昇降機1の住所を到着地点とし、運搬手段毎に、移動時間と渋滞情報等の付帯情報を、部品搬送時間算出部33に入力する。
【0052】
図8は、交通状況提供システム6が出力する運搬手段毎の移動距離及び渋滞情報の一例である。交通状況提供システム6は、部品保管拠点地と故障した昇降機1との住所から移動距離を算出し、運搬手段毎に、移動距離及び渋滞情報を出力する。また、部品保管拠点の候補が複数ある場合についても、部品保管拠点毎に、移動距離及び渋滞情報を出力する。
【0053】
部品搬送時間算出部33は、交通状況提供システム6が出力した移動距離と渋滞情報等の付帯情報から、最も小さい移動時間で搬送可能となる部品保管拠点と、運搬手段との組み合わせを選定して記憶し、さらに、その移動時間を部品搬送時間として記憶する。そして、部品搬送時間算出部33は、選定した部品保管拠点、運搬手段及び部品搬送時間の情報を自動出庫部34に送信する。
【0054】
自動出庫部34は、部品搬送時間算出部33が選定した部品保管拠点と運搬手段とを指定し、出庫対象部品の出庫手配を自動で行う。自動出庫部34からの出庫手配は、例えば受信装置21から、選定された部品保管拠点に部品出庫の通知が送信されることによって行われる。これにより、自動出庫部34で指定された部品保管拠点から、所定の運搬手段で、出庫対象部品の搬送が開始される。
【0055】
次に、故障対応時間算出部35は、原因調査時間算出部29で算出された原因調査時間、対策作業時間算出部30で算出された対策作業時間、及び、部品搬送時間算出部33で算出された部品搬送時間から、故障対応時間を算出する。故障対応時間とは、故障した昇降機1について、原因調査を開始してから、対策作業(復旧作業)が完了するまでの総合時間である。
【0056】
図9は、故障対応時間算出部35における故障対応時間算出方法を示したフローである。図9に示すように、故障対応時間算出部35には、まず、原因調査時間算出部29で算出された原因調査時間が入力される(ステップS351)。ここでは、故障原因の確率合計が70%となる原因機器に対する原因調査時間が入力される。
【0057】
次に、故障対応時間算出部35に、対策作業時間算出部30で算出された対策作業時間が入力される(ステップS352)。ここでは、故障原因の確率合計が70%となる原因機器に対する対策作業時間が入力される。
【0058】
次に、故障対応時間算出部35に、部品搬送時間算出部33で算出された部品搬送時間が入力される(ステップS353)。ここでは、故障原因の確率合計が70%となる原因機器に対する候補部品の部品搬送時間が入力される。
【0059】
次に、故障対応時間算出部35は、原因調査時間と部品搬送時間とを比較する(ステップS354)。ステップS354において、「YES」と判断された場合、すなわち、原因調査時間が部品搬送時間よりも短いと判断された場合には、部品搬送時間と対策作業時間との合計を故障対応時間として算出する(ステップS356)。すなわち、この場合には、原因調査が完了した時点でも、部品の到着まで時間があることを考慮して、全体の故障対応時間が算出される。
【0060】
一方、ステップS356、「NO」と判断された場合、すなわち、原因調査時間が部品搬送時間よりも長いと判断された場合には、原因調査時間と対策作業時間との合計を故障対応時間として算出する(ステップS355)。すなわち、この場合には、原因調査の完了前に、必要な部品が現地に到着していることを考慮して、全体の故障対応時間が算出される。
【0061】
このように、故障対応時間算出部35では、原因調査時間と、対策作業時間と、部品搬送時間との重複部分の関係を考慮することで、正確な故障対応時間を算出することができる。そして、図9のようにして算出された故障対応時間は、支援者要否判断部36に入力される。
【0062】
支援者要否判断部36は、入力された故障対応時間をもとに、支援者手配の要否を判断する。支援者とは、現地で作業に当たる保守員の作業を支援する作業者を指す。支援者要否判断部36は、故障対応時間が、所定の時間、例えば3時間未満であった場合には、支援者は必要ないと判断する。支援者要否判断部36において、支援者が必要ないと判断された場合には、支援者の手配を行うことなく、故障対応情報送信部37に、各処理で抽出された各種情報を送信する。
【0063】
一方、支援者要否判断部36において、故障対応時間が、所定の時間、例えば3時間以上であった場合には、支援者が必要であると判定し、その判定結果を、支援者手配部38に送信する。
【0064】
支援者手配部38は、例えば、故障対応時間の長さ等に応じて、支援者の人数などを決定し、支援可能な保守員(図示を省略する)への支援手配を行う。その後、支援者手配部38は、手配した支援者の情報、及び、情報処理部40の各処理で抽出された各種情報を故障対応情報送信部37に送信する。
【0065】
故障対応情報送信部37は、情報処理部40で抽出し記憶された各種情報を、受信装置21を介して保守員4の携帯端末5に送信する。図10に、故障対応情報送信部37が保守員4の携帯端末5に送信する情報の一例を示す。故障対応情報送信部37からは、例えば、図10に示すように、故障原因機器候補群と、各機器が故障原因である確率と、出庫情報と、部品情報と、原因調査時間と、対策作業時間と、部品搬送時間(到着時間)と、支援者手配状況が送信される。保守員4は、携帯端末5に送信されてきた情報を元に、現場における作業を開始する。また、保守員4は、作業終了後、携帯端末5から故障日報を入力することで、故障日報DB22の更新を行うことができる。
【0066】
以上のように、本実施形態では、故障原因を特定するための原因調査時間と、故障原因機器に対して行う調整や部品交換等の対策作業時間とを分けて算出する。そして、原因調査時間、対策作業時間、及び、部品搬送時間との関係性に基づいて、原因調査の開始から、対策作業(復旧作業)完了までにかかる故障対応時間を算出する。これにより、原因調査時間と部品搬送時間とに重複部分がある場合には、この重複時間は故障対応時間に含まれないため、正確な故障対応時間を求めることができる。この結果、支援者手配などのバックアップ要否の判断を正確に行うことができ、昇降機1の復旧効率の向上を図ることができる。
【0067】
また、本実施形態では、故障の原因機器候補を確率付きで抽出し、確率の合計が所定の値以上である原因機器候補を故障原因機器群として、その故障原因機器群における原因調査時間、対策作業時間、部品搬送時間を推定して求めることができる。これにより、保守員4によって、現場での原因調査が開始される前に、予め、原因機器候補を保守員4に通知することができると共に、原因機器候補の部品の調整又は交換に必要な部品を推定して搬送を開始することができる。この結果、故障対応時間の短縮を図ることができる。
【0068】
本実施形態では、故障原因機器群を抽出する際、確率の高い順から加算して70%となる一つ以上の原因機器を、故障原因機器群とする例としたが、この割合は一例であり、適宜変更可能である。
【0069】
なお、本実施形態では、故障対応時間演算システム100は、エレベーター等の昇降機1と、保守員4が携帯する携帯端末5と、監視センター2と、交通状況提供システム6とによって構成されているがこの限りではない。本発明は、監視センター2内に構成される情報管理部20及び情報処理部40の構成を備え、情報処理部40における処理が実現可能な構成であればよい。
【0070】
上述した実施形態は、本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。例えば、実施形態の構成の一部を他の構成に置き換えることが可能であり、また、実施形態の構成について他の構成を加えることも可能である。また、実施形態の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
【符号の説明】
【0071】
1…昇降機、2…監視センター、4…保守員、5…携帯端末、6…交通状況提供システム、11…制御盤、12…遠隔監視装置、20…情報管理部、21…受信装置、23…昇降機仕様DB、22…故障日報DB、23…昇降機仕様DB、24…機器別標準原因調査時間DB、25…機器別標準対策作業時間DB、26…部品情報DB、27…類似故障日報検索部、28…原因機器候補抽出部、29…原因調査時間算出部、30…対策作業時間算出部、31…出庫対象部品選定部、32…運搬手段選定部、33…部品搬送時間算出部、34…自動出庫部、35…故障対応時間算出部、36…支援者要否判断部、37…故障対応情報送信部、38…支援者手配部、40…情報処理部、100…故障対応時間演算システム
図1
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図10