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▶ メモリアル スローン−ケタリング キャンサー センターの特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-07
(45)【発行日】2023-12-15
(54)【発明の名称】がんにおけるマクロピノサイトーシス
(51)【国際特許分類】
   A61K 49/00 20060101AFI20231208BHJP
   A61K 31/436 20060101ALI20231208BHJP
   A61K 38/38 20060101ALI20231208BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20231208BHJP
   A61P 35/04 20060101ALI20231208BHJP
【FI】
A61K49/00
A61K31/436
A61K38/38
A61P35/00
A61P35/04
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2021100209
(22)【出願日】2021-06-16
(62)【分割の表示】P 2017559038の分割
【原出願日】2016-05-13
(65)【公開番号】P2021143195
(43)【公開日】2021-09-24
【審査請求日】2021-07-16
(31)【優先権主張番号】62/161,219
(32)【優先日】2015-05-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】500213834
【氏名又は名称】メモリアル スローン-ケタリング キャンサー センター
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(72)【発明者】
【氏名】クレイグ ビー. トンプソン
(72)【発明者】
【氏名】ウィルヘルム パーム
【審査官】大島 彰公
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2014/0057905(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2013/0003028(US,A1)
【文献】Cell Res., 23(4):508-23,2013年,doi: 10.1038/cr.2013.11
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K、A61P
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
がんの検出のための組成物であって、前記組成物は、
(a)がん細胞によるマクロピノサイトーシスのための基質へとコンジュゲートさせた蛍光標識を含むイメージング剤であって前記マクロピノサイトーシスのための基質は可溶性タンパク質を含み、前記蛍光標識が、前記イメージング剤が分解されると検出可能なシグナルを生成するイメージング剤と、
(b)ラパマイシンエベロリムス、テムシロリムス、ウミロリムス、ゾタロリムス、およびデフォロリムスからなる群より選択されるmTORC1阻害剤と、
(c)必須アミノ酸を欠く培地と
含み、前記がんが発がん性のRas活性を呈する、組成物。
【請求項2】
発がん性のRas活性が、遺伝子突然変異により引き起こされる、構成的に活性なRasを含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記遺伝子突然変異が、突然変異したRasタンパク質を含む、請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
前記遺伝子突然変異が、Ras抑制性タンパク質の発現または活性の低下を結果としてもたらす、請求項2に記載の組成物。
【請求項5】
前記がんが固形腫瘍を含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
前記がんが、線維形成性および/または乏血管性である微小環境内にある、請求項1~5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
前記がんが転移性細胞を含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項8】
前記がんが膵臓がんである、請求項1~7のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項9】
前記がんが、対象においてin vivoで検出される、請求項1~8のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項10】
前記可溶性タンパク質がアルブミンタンパク質である、請求項1~9のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項11】
記イメージング剤が、分解されると蛍光を発する自己消光アルブミンタンパク質である、請求項1~1のいずれか一項に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願情報)
本出願は、(2015年5月13日に出願された)米国仮特許出願第62/161,2
19号に基づく優先権および利益を主張しており、その全体の内容は本明細書中に参考と
して援用される。
【0002】
(政府支援)
本発明は、米国国立がん研究所によって授与されたP01 CA104838の下、政
府支援でなされた。米国政府は本発明において特定の権利を有する。
【背景技術】
【0003】
(背景)
増殖および分裂するために、細胞は、エネルギーの産生と、高分子の合成とを支援する
、栄養物質の供給を要求する。哺乳動物細胞は多様なバイオエナジェティックス基質によ
り取り囲まれているが、優先的に、グルコースおよびアミノ酸など、低分子量の栄養物質
を代謝する。しかし、タンパク質は、体液のうちで、最も豊富な有機成分であり、それら
を合わせたアミノ酸含量は、ヒト血漿中の単量体アミノ酸の量を、何桁か超える。細胞に
アクセス可能な場合、細胞外タンパク質は、代替的な栄養物質として機能する潜在的可能
性を有する。
【0004】
成長因子によるシグナル伝達経路は、細胞周期の進行を刺激し、また、栄養物質の取込
み、および同化的代謝も促進する。がん細胞は、異常な成長因子によるシグナル伝達を利
用して、同化的代謝の調節異常を支援することが可能であり、これは、栄養物質が枯渇し
た微小環境内の生存を容易としうる。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
(要旨)
本開示は、他の事柄にもまして、ある特定のがん細胞の、それらの局所的微小環境に対
する代謝的適応が、それらを毒素療法に対して脆弱にすることについて教示する。
【0006】
本開示はさらに、がんを処置するようにデザインされたある特定の治療的モダリティー
が、実のところ、ある特定の細胞の増殖を促進する効果を及ぼしうることについても教示
する。こうして、本開示は、このような治療的モダリティーに関する問題の源泉を識別し
、多様な解決をさらに提供する。
【0007】
一部の実施形態では、本開示は、mTORC1阻害剤による処置に感受性の場合もあり
、そうでない場合もある腫瘍を識別するための技術を提供する。
【0008】
一部の実施形態では、本開示は、腫瘍を特徴づけ、腫瘍を処置するのに適切な治療レジ
メンを決定し、任意選択で、このようなレジメンを実効するための技術を提供する。
【0009】
一部の実施形態では、本開示は、Rasタンパク質の発がん性の活性化を特徴とするが
んを患う対象へと、(i)mTORC阻害療法と、(ii)毒素療法とを含む治療レジメ
ンを投与するステップを含む方法を提供する。
【0010】
一部の実施形態では、mTORC阻害療法を、毒素療法の前に投与する。一部の実施形
態では、mTORC阻害療法は、mTORC1阻害剤を含む。
【0011】
一部の実施形態では、がんは、固形腫瘍を含む。一部の実施形態では、がんは、転移性
細胞を含む。一部の実施形態では、がんは、線維形成性および/または乏血管性である微
小環境内にある。一部の実施形態では、がんは、栄養物質が低量であるかまたは栄養物質
が枯渇した微小環境内にある。
【0012】
一部の実施形態では、がんは、膵臓がんである。
【0013】
一部の実施形態では、発がん性の活性化Rasタンパク質は、K-Ras、H-Ras
、N-Ras、およびこれらの組合せからなる群から選択される。一部の実施形態では、
Rasタンパク質は、K-Rasである。
【0014】
一部の実施形態では、mTORC1阻害剤は、ラパマイシン/シロリムス、エベロリム
ス、テムシロリムス、ウミロリムス、ゾタロリムス、デフォロリムス、ウォルトマンニン
、TOP-216、TAFA93、CCI-779、ABT578、SAR543、アス
コマイシン、FK506、AP23573、AP23464、AP23841、KU-0
063794、INK-128、EX2044、EX3855、EX7518、AZD-
8055、AZD-2014、Palomid 529、Pp-242、OSI-027
、およびこれらの組合せからなる群から選択される。
【0015】
一部の実施形態では、毒素療法は、シクロホスファミド、クロランブシル、シスプラチ
ン、ブスルファン、メルファラン、カルムスチン、ストレプトゾトシン、トリエチレンメ
ラミン、マイトマイシンC、メトトレキサート、エトポシド、6-メルカプトプリン、6
-チオグアニン(thiocguanine)、シタラビン、5-フルオロウラシル、ダカルバジン、
アクチノマイシンD、ドキソルビシン、ダウノルビシン、ブレオマイシン、ミトラマイシ
ン、ビンクリスチン、ビンブラスチン、パクリタキセル、パクリタキセル誘導体、細胞増
殖抑制剤、デキサメタゾン、プレドニゾン、ヒドロキシウレア、アスパラギナーゼ、ロイ
コボリン、アミホスチン、ダクチノマイシン、メクロレタミン、ストレプトゾシン、シク
ロホスファミド、ロムスチン、リポソーマルドキソルビシン、ゲムシタビン、リポソーマ
ルダウノルビシン、プロカルバジン、マイトマイシン、ドセタキセル、アルデスロイキン
、カルボプラチン、オキサリプラチン、クラドリビン、カンプトテシン、CPT11(イ
リノテカン)、10-ヒドロキシ7-エチル-カンプトテシン(SN38)、フロクスウ
リジン、フルダラビン、イホスファミド、イダルビシン、メスナ、インターフェロンベー
タ、インターフェロンアルファ、ミトキサントロン、トポテカン、ロイプロリド、メゲス
トロール、メルファラン、メルカプトプリン、プリカマイシン、ミトタン、ペガスパルガ
ーゼ、ペントスタチン、ピポブロマン、プリカマイシン、タモキシフェン、テニポシド、
テストラクトン、チオグアニン、チオテパ、ウラシルマスタード、ビノレルビン、クロラ
ンブシル、およびこれらの組合せからなる群から選択される。
【0016】
一部の実施形態では、毒素を、マクロピノサイトーシス基質へとコンジュゲートさせる
。一部の実施形態では、マクロピノサイトーシス基質は、可溶性タンパク質である。一部
の実施形態では、可溶性タンパク質は、アルブミンである。
【0017】
一部の実施形態では、毒素療法を、低用量で投与する。
【0018】
一部の実施形態では、治療レジメンは、リソソーム阻害療法を含まない。一部の実施形
態では、治療レジメンは、Ras阻害療法を含まない。
【0019】
一部の実施形態では、本開示は、単剤療法としてのmTORC1阻害剤による処置に好
適に応答する可能性が高いがんを識別するための方法を提供する。一部の実施形態では、
方法は、がんに由来する試料を、Rasの発がん性の活性化についてアッセイするステッ
プを含み、この場合、試料は、低度の発がん性のRas活性を有するか、または発がん性
のRas活性を有さないと決定される。
【0020】
一部の実施形態では、本開示は、単剤療法としてのmTORC1阻害剤による処置に好
適に応答しない可能性が高いがんを識別するための方法を提供する。一部の実施形態では
、方法は、がんに由来する試料を、Rasの発がん性の活性化についてアッセイするステ
ップを含み、この場合、試料は、発がん性のRas活性を有すると決定される。
【0021】
一部の実施形態では、Rasの発がん性の活性化は、遺伝子突然変異により引き起こさ
れる、構成的に活性なRasを含む。一部の実施形態では、遺伝子突然変異は、突然変異
したRasタンパク質を含む。一部の実施形態では、遺伝子突然変異は、Ras抑制性タ
ンパク質の発現または活性の低下を結果としてもたらす。
【0022】
一部の実施形態では、Rasの発がん性の活性化を、対立遺伝子特異的ポリメラーゼ連
鎖反応(PCR)、PCRおよびサンガージデオキシシークエンシング、PCRおよびパ
イロシークエンシング、PCRおよび質量分析(MS)、PCRおよび一塩基伸長、マル
チプレックスライゲーション依存型プローブ増幅(MLPA)、または蛍光in sit
uハイブリダイゼーション(FISH)により検出する。
【0023】
本開示はまた、がんを検出するための組成物も提供する。一部の実施形態では、がんを
検出するための組成物は、がん細胞によるマクロピノサイトーシスのための基質へとコン
ジュゲートさせたイメージング剤を含む。
【0024】
一部の実施形態では、組成物はさらに、mTORC1阻害剤も含む。
【0025】
一部の実施形態では、がんを、in vivoの対象において検出する。
【0026】
一部の実施形態では、イメージング剤は、金属性である。一部の実施形態では、イメー
ジング剤は、放射性標識されている。
【0027】
一部の実施形態では、マイクロピノサイトーシスのための基質は、可溶性タンパク質を
含む。一部の実施形態では、可溶性タンパク質は、アルブミンである。
【0028】
一部の実施形態では、検出されるがんは、発がん性のRas活性を呈する。
【0029】
一部の実施形態では、本開示は、対象におけるがんを検出するための方法を提供する。
一部の実施形態では、方法は、(i)対象へと、mTORC1阻害剤を投与するステップ
と;(ii)対象へと、検出用シグナルを誘発することが可能なイメージング剤を投与す
るステップと;(iii)イメージング剤により誘発されたシグナルを検出するステップ
とを含む。
【0030】
一部の実施形態では、イメージング剤を、がん細胞によるマクロピノサイトーシスのた
めの基質へとコンジュゲートさせる。一部の実施形態では、イメージング剤を、可溶性タ
ンパク質へとコンジュゲートさせる。一部の実施形態では、可溶性タンパク質は、アルブ
ミンである。
【0031】
一部の実施形態では、mTORC1阻害剤を、イメージング剤の前に投与する。一部の
実施形態では、mTORC1阻害剤を、対象へと、イメージング剤の少なくとも1、3、
5、12、または24時間前に投与する。
【0032】
以下の図は、例示だけを目的として明示されるものであり、限定的であることを意図す
るものではない。
【図面の簡単な説明】
【0033】
図1A図1A~Cは、生理学的レベルの細胞外タンパク質が、野生型細胞およびK-Ras突然変異細胞に対して、栄養上の利益をもたらすことを示す図である。図1Aは、表示の異なる栄養物質[グルコース、非必須アミノ酸(NEAA)、グルタミン、必須アミノ酸(EAA)、ロイシン]を欠く培地±3%のアルブミン中の培養の3日目における、野生型MEFおよびヘテロ接合性のK-RasG12D MEFの細胞数についての、例示的なグラフを示す図である。点線は、開始時の細胞数を指し示す。#検出限界を下回る。p<0.05、**p<0.01、***p<0.001である。図1Bは、ロイシン非含有培地±3%のアルブミン中の、野生型MEFおよびK-RasG12D MEFについての例示的な増殖曲線を示す図である。図1Cは、ロイシン非含有培地±3%のアルブミン中の、ミリストイル化Akt1(myr-Akt1)を発現する野生型MEFについての例示的な増殖曲線を示す図である。データは、平均値±STDEV(n=3)として表す。
図1BC図1A~Cは、生理学的レベルの細胞外タンパク質が、野生型細胞およびK-Ras突然変異細胞に対して、栄養上の利益をもたらすことを示す図である。図1Aは、表示の異なる栄養物質[グルコース、非必須アミノ酸(NEAA)、グルタミン、必須アミノ酸(EAA)、ロイシン]を欠く培地±3%のアルブミン中の培養の3日目における、野生型MEFおよびヘテロ接合性のK-RasG12D MEFの細胞数についての、例示的なグラフを示す図である。点線は、開始時の細胞数を指し示す。#検出限界を下回る。p<0.05、**p<0.01、***p<0.001である。図1Bは、ロイシン非含有培地±3%のアルブミン中の、野生型MEFおよびK-RasG12D MEFについての例示的な増殖曲線を示す図である。図1Cは、ロイシン非含有培地±3%のアルブミン中の、ミリストイル化Akt1(myr-Akt1)を発現する野生型MEFについての例示的な増殖曲線を示す図である。データは、平均値±STDEV(n=3)として表す。
【0034】
図2ABCD図2A~Dは、例示的な増殖曲線を示す図である。図2Aは、EAA非含有培地±3%のアルブミン中の、野生型MEFおよびK-RasG12D MEFについての増殖曲線を示す図である。図2Bは、ロイシン非含有培地±3%のアルブミン中の、対照またはPTEN shRNAを発現する野生型MEFについての増殖曲線を示す図である。図2Cおよび2Dは、ロイシン非含有培地±3%のアルブミン中で増殖させた、空ベクターもしくはK-RasG12Vをトランスフェクトされた野生型MEF(2C)、または空ベクターもしくはH-RasG12Vをトランスフェクトされた野生型MEF(2D)についての増殖曲線を示す図である。図2Eおよび2Fは、ロイシン非含有培地±3%のアルブミン中の、K-RASG12V(2E)またはH-RasG12V(2F)をトランスフェクトされた、野生型MEFおよびUlk1/2二重ノックアウト(DKO)MEFについての増殖曲線を示す図である。構成的に活性なRas変異体の発現は、50ng/mlのドキシサイクリンにより誘導した。データは、平均値±STDEV(n=3)として表す。
図2EF図2A~Dは、例示的な増殖曲線を示す図である。図2Aは、EAA非含有培地±3%のアルブミン中の、野生型MEFおよびK-RasG12D MEFについての増殖曲線を示す図である。図2Bは、ロイシン非含有培地±3%のアルブミン中の、対照またはPTEN shRNAを発現する野生型MEFについての増殖曲線を示す図である。図2Cおよび2Dは、ロイシン非含有培地±3%のアルブミン中で増殖させた、空ベクターもしくはK-RasG12Vをトランスフェクトされた野生型MEF(2C)、または空ベクターもしくはH-RasG12Vをトランスフェクトされた野生型MEF(2D)についての増殖曲線を示す図である。図2Eおよび2Fは、ロイシン非含有培地±3%のアルブミン中の、K-RASG12V(2E)またはH-RasG12V(2F)をトランスフェクトされた、野生型MEFおよびUlk1/2二重ノックアウト(DKO)MEFについての増殖曲線を示す図である。構成的に活性なRas変異体の発現は、50ng/mlのドキシサイクリンにより誘導した。データは、平均値±STDEV(n=3)として表す。
【0035】
図3ABC図3A~Eは、細胞外タンパク質のマクロピノサイトーシスと、リソソームにおける分解とが、EAA飢餓の間における、Ras突然変異細胞の増殖を支援することを示す図である。図3Aは、完全培地中に5%のレベルでEAAを含有するアミノ酸欠損培地±3%のアルブミン中の、野生型MEFおよびK-RasG12D MEFについての例示的な増殖曲線を示す図である。図3Bは、5%のEAAを含有するアミノ酸欠損培地であって、表示の濃度のアルブミンを補充したアミノ酸欠損培地中の、K-RasG12D MEFについての例示的な増殖曲線を示す図である。図3Cは、蛍光標識されたBSAおよびDQ-BSAにより評価される、K-RasG12D MEF内の、アルブミンの取込みおよび細胞内分解を示す図である。プロテアーゼ阻害剤:2μMのペプスタチンA、2μMのE-64、10μMのロイペプチンである。スケールバー=10μmである。図3Dは、ロイシン非含有培地±3%のアルブミンおよび(3C)のようなプロテアーゼ阻害剤中の、K-RasG12D MEFについての例示的な増殖曲線を示す図である。図3Eは、ロイシン非含有培地±3%のアルブミンおよび25μMのEIPA中の培養の3日目における、K-RasG12D MEFの細胞数についての例示的なグラフを示す図である。点線は、開始時の細胞数を指し示す。***p<0.001である。データは、平均値±STDEV(n=3)として表す。
図3DE図3A~Eは、細胞外タンパク質のマクロピノサイトーシスと、リソソームにおける分解とが、EAA飢餓の間における、Ras突然変異細胞の増殖を支援することを示す図である。図3Aは、完全培地中に5%のレベルでEAAを含有するアミノ酸欠損培地±3%のアルブミン中の、野生型MEFおよびK-RasG12D MEFについての例示的な増殖曲線を示す図である。図3Bは、5%のEAAを含有するアミノ酸欠損培地であって、表示の濃度のアルブミンを補充したアミノ酸欠損培地中の、K-RasG12D MEFについての例示的な増殖曲線を示す図である。図3Cは、蛍光標識されたBSAおよびDQ-BSAにより評価される、K-RasG12D MEF内の、アルブミンの取込みおよび細胞内分解を示す図である。プロテアーゼ阻害剤:2μMのペプスタチンA、2μMのE-64、10μMのロイペプチンである。スケールバー=10μmである。図3Dは、ロイシン非含有培地±3%のアルブミンおよび(3C)のようなプロテアーゼ阻害剤中の、K-RasG12D MEFについての例示的な増殖曲線を示す図である。図3Eは、ロイシン非含有培地±3%のアルブミンおよび25μMのEIPA中の培養の3日目における、K-RasG12D MEFの細胞数についての例示的なグラフを示す図である。点線は、開始時の細胞数を指し示す。***p<0.001である。データは、平均値±STDEV(n=3)として表す。
【0036】
図4AB図4Aおよび4Bは、例示的な増殖曲線を示す図である。図4Aは、完全培地中に5%のレベルでEAAを含有するアミノ酸欠損培地であって、表示の濃度のアルブミンを補充したアミノ酸欠損培地中の、野生型MEFについての増殖曲線を示す図である。図4Bは、ロイシン非含有培地±3%のアルブミンおよび20μMのクロロキン中の、K-RasG12D MEFについての増殖曲線を示す図である。データは、平均値±STDEV(n=3)として表す。図4Cは、K-RasG12D突然変異の、細胞外高分子の取込みに対する影響を示す図である。野生型MEFおよびK-RasG12D MEFを、16時間にわたり血清飢餓下に置き、次いで、蛍光標識されたデキストランと共にインキュベートし、細胞内デキストランを、30分間にわたる取込みの後で定量化した。データは、平均値±STDEV(各視野の細胞を>10個とする視野のn=7)として明示する。P値は、対応のない両側t検定を使用して計算した。***p<0.001である。
図4C図4Aおよび4Bは、例示的な増殖曲線を示す図である。図4Aは、完全培地中に5%のレベルでEAAを含有するアミノ酸欠損培地であって、表示の濃度のアルブミンを補充したアミノ酸欠損培地中の、野生型MEFについての増殖曲線を示す図である。図4Bは、ロイシン非含有培地±3%のアルブミンおよび20μMのクロロキン中の、K-RasG12D MEFについての増殖曲線を示す図である。データは、平均値±STDEV(n=3)として表す。図4Cは、K-RasG12D突然変異の、細胞外高分子の取込みに対する影響を示す図である。野生型MEFおよびK-RasG12D MEFを、16時間にわたり血清飢餓下に置き、次いで、蛍光標識されたデキストランと共にインキュベートし、細胞内デキストランを、30分間にわたる取込みの後で定量化した。データは、平均値±STDEV(各視野の細胞を>10個とする視野のn=7)として明示する。P値は、対応のない両側t検定を使用して計算した。***p<0.001である。
【0037】
図5ABC図5A~Fは、内在化タンパク質のリソソーム分解が、mTORC1経路を活性化させることを示す図である。図Aは、ウェスタンブロット法(WB)により解析される、野生型MEF内のmTORC1の活性化と、K-RasG12D MEF内のmTORC1の活性化との比較を示す図である。MEFを、1時間にわたりEAA飢餓下に置き、次いで、EAAもしくは3%のアルブミンを含有する培地中、または新鮮のEAA非含有培地中で、4時間にわたり静置した。図5Bは、WBにより解析される、EAA飢餓の1時間後における、3%のアルブミンを伴う刺激による、K-RasG12D MEF内のmTORC1の活性化の、例示的な時間経過を示す図である。図5C~Fは、WBにより解析される、mTORC1の、アルブミンに依存する活性化に対する、リソソーム機能またはマクロピノサイトーシスの阻害の例示的な影響を示す図である。K-RasG12D MEFを、1時間にわたりEAA飢餓下に置き、次いで、EAAもしくは3%のアルブミンを含有する培地中、または新鮮なEAA非含有培地中で、3時間にわたり静置した。飢餓の開始時に、バフィロマイシンA1(5C)、リソソームプロテアーゼ阻害剤(10μMのペプスタチンA、20μMのE-64)(5D)、EIPA(Na+/H+交換阻害剤)(5E)またはIPA-3(PAK1阻害剤)(5F)を添加した。
図5DEF図5A~Fは、内在化タンパク質のリソソーム分解が、mTORC1経路を活性化させることを示す図である。図Aは、ウェスタンブロット法(WB)により解析される、野生型MEF内のmTORC1の活性化と、K-RasG12D MEF内のmTORC1の活性化との比較を示す図である。MEFを、1時間にわたりEAA飢餓下に置き、次いで、EAAもしくは3%のアルブミンを含有する培地中、または新鮮のEAA非含有培地中で、4時間にわたり静置した。図5Bは、WBにより解析される、EAA飢餓の1時間後における、3%のアルブミンを伴う刺激による、K-RasG12D MEF内のmTORC1の活性化の、例示的な時間経過を示す図である。図5C~Fは、WBにより解析される、mTORC1の、アルブミンに依存する活性化に対する、リソソーム機能またはマクロピノサイトーシスの阻害の例示的な影響を示す図である。K-RasG12D MEFを、1時間にわたりEAA飢餓下に置き、次いで、EAAもしくは3%のアルブミンを含有する培地中、または新鮮なEAA非含有培地中で、3時間にわたり静置した。飢餓の開始時に、バフィロマイシンA1(5C)、リソソームプロテアーゼ阻害剤(10μMのペプスタチンA、20μMのE-64)(5D)、EIPA(Na+/H+交換阻害剤)(5E)またはIPA-3(PAK1阻害剤)(5F)を添加した。
【0038】
図6ABC図6は、細胞外タンパク質が、mTORC1経路を活性化させうることを示す図である。図6Aは、S6キナーゼ1のmTORC1特異的リン酸化に対するウェスタンブロット法により解析される、異なる濃度のアルブミンで刺激したときの、野生型MEF内およびK-RasG12D MEF内の、mTORC1の活性化を示す図である。必要な場合、500nMのトリン1を、EAA飢餓の開始時に添加した。図6Bは、ウェスタンブロット法により解析される、空ベクターをトランスフェクトされた野生型MEF内、またはH-RasG12Vをトランスフェクトされた野生型MEF内の、EAAおよびアルブミンによるmTORC1の活性化の比較を示す図である。図6Cは、ウェスタンブロット法により解析される、対照またはPTEN shRNAをトランスフェクトされた野生型MEF内の、EAAおよびアルブミンによるmTORC1の活性化の比較を示す図である。図6Dは、ウェスタンブロット法により解析される、野生型MEF内の、アルブミンによるmTORC1の活性化の時間経過を示す図である。図6Eは、ウェスタンブロット法により解析される、mTORC1の、アルブミンに依存する活性化に対する、リソソーム機能の撹乱の影響を示す図である。クロロキンを、飢餓の開始時に、表示の濃度で添加した。図6Fおよび6Gは、ウェスタンブロット法により解析される、mTORC1の、アルブミンに依存する活性化に対する、マクロピノサイトーシス阻害の例示的な影響を示す図である。;表示の濃度のサイトカラシンD(アクチン脱重合化阻害剤)(6F)またはジャスプラキノリド(アクチン重合化阻害剤)(6G)を、飢餓の開始時に添加した。全ての実験において、細胞を、1時間にわたるEAA飢餓下に置くことにより、mTORC1を不活化させた。次いで、細胞を、EAAもしくはアルブミンを含有する培地中、または新鮮のEAA非含有培地中で、3~4時間にわたり静置することにより、mTORC1の再活性化をモニタリングした。
図6DEFG図6は、細胞外タンパク質が、mTORC1経路を活性化させうることを示す図である。図6Aは、S6キナーゼ1のmTORC1特異的リン酸化に対するウェスタンブロット法により解析される、異なる濃度のアルブミンで刺激したときの、野生型MEF内およびK-RasG12D MEF内の、mTORC1の活性化を示す図である。必要な場合、500nMのトリン1を、EAA飢餓の開始時に添加した。図6Bは、ウェスタンブロット法により解析される、空ベクターをトランスフェクトされた野生型MEF内、またはH-RasG12Vをトランスフェクトされた野生型MEF内の、EAAおよびアルブミンによるmTORC1の活性化の比較を示す図である。図6Cは、ウェスタンブロット法により解析される、対照またはPTEN shRNAをトランスフェクトされた野生型MEF内の、EAAおよびアルブミンによるmTORC1の活性化の比較を示す図である。図6Dは、ウェスタンブロット法により解析される、野生型MEF内の、アルブミンによるmTORC1の活性化の時間経過を示す図である。図6Eは、ウェスタンブロット法により解析される、mTORC1の、アルブミンに依存する活性化に対する、リソソーム機能の撹乱の影響を示す図である。クロロキンを、飢餓の開始時に、表示の濃度で添加した。図6Fおよび6Gは、ウェスタンブロット法により解析される、mTORC1の、アルブミンに依存する活性化に対する、マクロピノサイトーシス阻害の例示的な影響を示す図である。;表示の濃度のサイトカラシンD(アクチン脱重合化阻害剤)(6F)またはジャスプラキノリド(アクチン重合化阻害剤)(6G)を、飢餓の開始時に添加した。全ての実験において、細胞を、1時間にわたるEAA飢餓下に置くことにより、mTORC1を不活化させた。次いで、細胞を、EAAもしくはアルブミンを含有する培地中、または新鮮のEAA非含有培地中で、3~4時間にわたり静置することにより、mTORC1の再活性化をモニタリングした。
【0039】
図7AB図7A~Cは、内在化タンパク質のリソソーム分解が、リソソームへのmTORの動員を誘導することを示す図である。図7Aは、mTORおよびリソソームマーカーであるLAMP2に対する免疫蛍光法により解析される、細胞外タンパク質またはEAAによる、リソソームへのmTORの動員についての例示的な画像を示す図である。K-RasG12D MEFを、1時間にわたりEAA飢餓下に置き、次いで、EAAもしくは3%のアルブミンを含有する培地中、または新鮮のEAA非含有培地中で、2時間にわたり静置した。図7Bは、(A)のように処理および解析される、K-RasG12 MEF内の、細胞外タンパク質による、リソソームへのmTORの動員に対する、リソソームにおけるタンパク質分解の阻害の帰結についての例示的な画像を示す図である。200nMのバフィロマイシンA1を、EAA飢餓の開始時に添加した。図7Cは、(A)のように処理および解析される、K-RasG12D MEF内の、リソソームへのmTORの動員に対する、RagA/Bノックダウンの帰結についての例示的な画像を示す図である。スケールバー=10μmである。
図7C図7A~Cは、内在化タンパク質のリソソーム分解が、リソソームへのmTORの動員を誘導することを示す図である。図7Aは、mTORおよびリソソームマーカーであるLAMP2に対する免疫蛍光法により解析される、細胞外タンパク質またはEAAによる、リソソームへのmTORの動員についての例示的な画像を示す図である。K-RasG12D MEFを、1時間にわたりEAA飢餓下に置き、次いで、EAAもしくは3%のアルブミンを含有する培地中、または新鮮のEAA非含有培地中で、2時間にわたり静置した。図7Bは、(A)のように処理および解析される、K-RasG12D MEF内の、細胞外タンパク質による、リソソームへのmTORの動員に対する、リソソームにおけるタンパク質分解の阻害の帰結についての例示的な画像を示す図である。200nMのバフィロマイシンA1を、EAA飢餓の開始時に添加した。図7Cは、(A)のように処理および解析される、K-RasG12D MEF内の、リソソームへのmTORの動員に対する、RagA/Bノックダウンの帰結についての例示的な画像を示す図である。スケールバー=10μmである。
【0040】
図8図8は、Rag GTPアーゼが、細胞外に由来するタンパク質による、mTORC1の活性化を媒介することを示す図である。例示的なウェスタンブロットは、mTORC1の、アルブミンに依存する活性化に対する、RagA/Bノックダウンの帰結を示す。対照またはRagA/B shRNAを発現するK-RasG12D MEFを、1時間にわたるEAA飢餓にかけ、次いで、EAAもしくは3%のアルブミンを含有する培地中、または新鮮EAA非含有培地中で、3時間にわたり静置した。
【0041】
図9A図9A~Eは、mTORC1シグナル伝達が、細胞外タンパク質に依存する増殖に対する、負の調節因子であることを示す図である。図9Aは、ロイシン含有培地またはロイシン非含有培地+3%のアルブミンおよび以下の阻害剤:MEK1/2(1μMのPD0325901、50μMのPD98059)、PI3キナーゼ(25μMのLY294002、2μMのウォルトマンニン)、チロシンキナーゼ(50μMのゲニステイン)、mTOR(50nMのラパマイシン、250nMのトリン1)、mTOR/PI3キナーゼ(0.5μMのBEZ235、0.5μMのGDC0980)中の培養の3日目における、K-RasG12D MEFの細胞数についてのグラフを示す図である。点線は、開始時の細胞数を指し示す。図9Bは、ロイシン非含有培地+3%のアルブミン(albumim)中で、1日間にわたり培養されたK-RasG12D MEF内の、mTOR経路活性、PI3キナーゼ経路活性、およびMAPキナーゼ経路活性についての例示的なウェスタンブロットを示す図である。阻害剤は、(A)の通りであった。図9Cは、ロイシン非含有培地±3%のアルブミンおよび表示の濃度のトリン1中の、K-RasG12 MEFについての例示的な増殖曲線を示す図である。図9Dは、ロイシン非含有培地±3%のアルブミン中の、Raptorに対するshRNA、Rictorに対するshRNAを発現するK-RasG12D MEF、または対照についての例示的な増殖曲線を示す図である。図9Eは、ロイシン非含有培地±3%のアルブミン中の培養の4日目における、Raptorに対するshRNA、Rictorに対するshRNAを発現するK-RasG12D MEF、または対照についての明視野画像を示す図である。スケールバー=50μmである。データは、平均値±STDEV(n=3)として表す。
図9BC図9A~Eは、mTORC1シグナル伝達が、細胞外タンパク質に依存する増殖に対する、負の調節因子であることを示す図である。図9Aは、ロイシン含有培地またはロイシン非含有培地+3%のアルブミンおよび以下の阻害剤:MEK1/2(1μMのPD0325901、50μMのPD98059)、PI3キナーゼ(25μMのLY294002、2μMのウォルトマンニン)、チロシンキナーゼ(50μMのゲニステイン)、mTOR(50nMのラパマイシン、250nMのトリン1)、mTOR/PI3キナーゼ(0.5μMのBEZ235、0.5μMのGDC0980)中の培養の3日目における、K-RasG12D MEFの細胞数についてのグラフを示す図である。点線は、開始時の細胞数を指し示す。図9Bは、ロイシン非含有培地+3%のアルブミン(albumim)中で、1日間にわたり培養されたK-RasG12D MEF内の、mTOR経路活性、PI3キナーゼ経路活性、およびMAPキナーゼ経路活性についての例示的なウェスタンブロットを示す図である。阻害剤は、(A)の通りであった。図9Cは、ロイシン非含有培地±3%のアルブミンおよび表示の濃度のトリン1中の、K-RasG1 2D MEFについての例示的な増殖曲線を示す図である。図9Dは、ロイシン非含有培地±3%のアルブミン中の、Raptorに対するshRNA、Rictorに対するshRNAを発現するK-RasG12D MEF、または対照についての例示的な増殖曲線を示す図である。図9Eは、ロイシン非含有培地±3%のアルブミン中の培養の4日目における、Raptorに対するshRNA、Rictorに対するshRNAを発現するK-RasG12D MEF、または対照についての明視野画像を示す図である。スケールバー=50μmである。データは、平均値±STDEV(n=3)として表す。
図9DE図9A~Eは、mTORC1シグナル伝達が、細胞外タンパク質に依存する増殖に対する、負の調節因子であることを示す図である。図9Aは、ロイシン含有培地またはロイシン非含有培地+3%のアルブミンおよび以下の阻害剤:MEK1/2(1μMのPD0325901、50μMのPD98059)、PI3キナーゼ(25μMのLY294002、2μMのウォルトマンニン)、チロシンキナーゼ(50μMのゲニステイン)、mTOR(50nMのラパマイシン、250nMのトリン1)、mTOR/PI3キナーゼ(0.5μMのBEZ235、0.5μMのGDC0980)中の培養の3日目における、K-RasG12D MEFの細胞数についてのグラフを示す図である。点線は、開始時の細胞数を指し示す。図9Bは、ロイシン非含有培地+3%のアルブミン(albumim)中で、1日間にわたり培養されたK-RasG12D MEF内の、mTOR経路活性、PI3キナーゼ経路活性、およびMAPキナーゼ経路活性についての例示的なウェスタンブロットを示す図である。阻害剤は、(A)の通りであった。図9Cは、ロイシン非含有培地±3%のアルブミンおよび表示の濃度のトリン1中の、K-RasG1 2D MEFについての例示的な増殖曲線を示す図である。図9Dは、ロイシン非含有培地±3%のアルブミン中の、Raptorに対するshRNA、Rictorに対するshRNAを発現するK-RasG12D MEF、または対照についての例示的な増殖曲線を示す図である。図9Eは、ロイシン非含有培地±3%のアルブミン中の培養の4日目における、Raptorに対するshRNA、Rictorに対するshRNAを発現するK-RasG12D MEF、または対照についての明視野画像を示す図である。スケールバー=50μmである。データは、平均値±STDEV(n=3)として表す。
【0042】
図10AB図10A~Cは、mTORの阻害が、必須アミノ酸欠乏の間における、アルブミンに依存する細胞増殖を促進することを示す図である。図10Aは、ロイシン非含有培地±3%のアルブミンおよび25nMのラパマイシンまたは250nMのトリン1中の、K-RasG12D MEFについての例示的な増殖曲線を示す図である。図10Bは、ロイシン含有培地またはロイシン非含有培地+3%のアルブミンおよび表示の濃度のトリン1中の培養の3日目における、K-RasG12D MEF集団の倍加を示す図である。図10Cは、3%のアルブミンを補充した完全培地±250nMのトリン1中の培養の3日目、または3%のアルブミンを補充したロイシン非含有培地±250nMのトリン1中の培養の4日目における、K-Ras突然変異体の腫瘍細胞株(KRPC、MiaPaCa-2、A549)の細胞数の倍数変化を示す図である。点線は、開始時の細胞数を指し示す。P値は、対応のない両側t検定を使用して計算した。***p<0.001である。図10Dは、イソロイシン、リジン、またはアルギニンを欠く培地±3%のアルブミンおよび250nMのトリン1中の、K-RasG12D MEFについての増殖曲線を示す図である。図10Eは、ウェスタンブロット法により解析される、mTORC1経路活性およびmTORC2経路活性に対する、K-RasG12D MEF内の、shRNAにより媒介されるRaptorまたはRictorの枯渇の例示的な効果を示す図である。被験条件下では、細胞は、それらの培地中に豊富なグルコースを供給されており、したがって、同化的増殖時におけるタンパク質合成とは対照的に、脂質のためにロイシンを利用する可能性は低い。細胞を14C-ロイシンで標識したところ、タンパク質による標識の組込みの、脂質による標識の組込みに対する比が、対照細胞:364±69、トリン-1処理細胞:203±27、Raptor欠損細胞:87±3であったことは、これと符合する。データは、平均値±STDEV(n=3)として表す。
図10C図10A~Cは、mTORの阻害が、必須アミノ酸欠乏の間における、アルブミンに依存する細胞増殖を促進することを示す図である。図10Aは、ロイシン非含有培地±3%のアルブミンおよび25nMのラパマイシンまたは250nMのトリン1中の、K-RasG12D MEFについての例示的な増殖曲線を示す図である。図10Bは、ロイシン含有培地またはロイシン非含有培地+3%のアルブミンおよび表示の濃度のトリン1中の培養の3日目における、K-RasG12D MEF集団の倍加を示す図である。図10Cは、3%のアルブミンを補充した完全培地±250nMのトリン1中の培養の3日目、または3%のアルブミンを補充したロイシン非含有培地±250nMのトリン1中の培養の4日目における、K-Ras突然変異体の腫瘍細胞株(KRPC、MiaPaCa-2、A549)の細胞数の倍数変化を示す図である。点線は、開始時の細胞数を指し示す。P値は、対応のない両側t検定を使用して計算した。***p<0.001である。図10Dは、イソロイシン、リジン、またはアルギニンを欠く培地±3%のアルブミンおよび250nMのトリン1中の、K-RasG12D MEFについての増殖曲線を示す図である。図10Eは、ウェスタンブロット法により解析される、mTORC1経路活性およびmTORC2経路活性に対する、K-RasG12D MEF内の、shRNAにより媒介されるRaptorまたはRictorの枯渇の例示的な効果を示す図である。被験条件下では、細胞は、それらの培地中に豊富なグルコースを供給されており、したがって、同化的増殖時におけるタンパク質合成とは対照的に、脂質のためにロイシンを利用する可能性は低い。細胞を14C-ロイシンで標識したところ、タンパク質による標識の組込みの、脂質による標識の組込みに対する比が、対照細胞:364±69、トリン-1処理細胞:203±27、Raptor欠損細胞:87±3であったことは、これと符合する。データは、平均値±STDEV(n=3)として表す。
図10DE図10A~Cは、mTORの阻害が、必須アミノ酸欠乏の間における、アルブミンに依存する細胞増殖を促進することを示す図である。図10Aは、ロイシン非含有培地±3%のアルブミンおよび25nMのラパマイシンまたは250nMのトリン1中の、K-RasG12D MEFについての例示的な増殖曲線を示す図である。図10Bは、ロイシン含有培地またはロイシン非含有培地+3%のアルブミンおよび表示の濃度のトリン1中の培養の3日目における、K-RasG12D MEF集団の倍加を示す図である。図10Cは、3%のアルブミンを補充した完全培地±250nMのトリン1中の培養の3日目、または3%のアルブミンを補充したロイシン非含有培地±250nMのトリン1中の培養の4日目における、K-Ras突然変異体の腫瘍細胞株(KRPC、MiaPaCa-2、A549)の細胞数の倍数変化を示す図である。点線は、開始時の細胞数を指し示す。P値は、対応のない両側t検定を使用して計算した。***p<0.001である。図10Dは、イソロイシン、リジン、またはアルギニンを欠く培地±3%のアルブミンおよび250nMのトリン1中の、K-RasG12D MEFについての増殖曲線を示す図である。図10Eは、ウェスタンブロット法により解析される、mTORC1経路活性およびmTORC2経路活性に対する、K-RasG12D MEF内の、shRNAにより媒介されるRaptorまたはRictorの枯渇の例示的な効果を示す図である。被験条件下では、細胞は、それらの培地中に豊富なグルコースを供給されており、したがって、同化的増殖時におけるタンパク質合成とは対照的に、脂質のためにロイシンを利用する可能性は低い。細胞を14C-ロイシンで標識したところ、タンパク質による標識の組込みの、脂質による標識の組込みに対する比が、対照細胞:364±69、トリン-1処理細胞:203±27、Raptor欠損細胞:87±3であったことは、これと符合する。データは、平均値±STDEV(n=3)として表す。
【0043】
図11AB図11A~Dは、mTORC1が、内在化タンパク質のリソソーム分解を抑制することを示す図である。図11Aは、250nMのトリン1の存在下または非存在下における、K-RasG12D MEF内のリソソームDQ-BSAの分解についての、例示的な時間経過を示す図である。図11Bは、(A)で示した細胞についての、DQ-BSA蛍光の定量化を示す図である。図11Cは、250nMのトリン1の存在下または非存在下の、DQ-BSA取込みの6時間後における、野生型MEF内およびK-RasG12D MEF内の、リソソームDQ-BSAの分解を示す図である。図11Dは、(C)で示した細胞についての、DQ-BSA蛍光の定量化を示す図である。データは、平均値±STDEV(各視野の細胞を>20個とする視野のn≧5)として表す。p<0.05、***p<0.001である。スケールバー=20μmである。
図11CD図11A~Dは、mTORC1が、内在化タンパク質のリソソーム分解を抑制することを示す図である。図11Aは、250nMのトリン1の存在下または非存在下における、K-RasG12D MEF内のリソソームDQ-BSAの分解についての、例示的な時間経過を示す図である。図11Bは、(A)で示した細胞についての、DQ-BSA蛍光の定量化を示す図である。図11Cは、250nMのトリン1の存在下または非存在下の、DQ-BSA取込みの6時間後における、野生型MEF内およびK-RasG12D MEF内の、リソソームDQ-BSAの分解を示す図である。図11Dは、(C)で示した細胞についての、DQ-BSA蛍光の定量化を示す図である。データは、平均値±STDEV(各視野の細胞を>20個とする視野のn≧5)として表す。p<0.05、***p<0.001である。スケールバー=20μmである。
【0044】
図12AB図12A~Dは、mTORC1に調節される、内在化タンパク質の異化が、エンドサイトーシスまたは遺伝子発現の変化に依存しないことを示す図である。図12Aは、細胞外高分子の取込みに対する、mTORの阻害の例示的な影響を示す図である。K-RasG12D MEFを、250nMのトリン1で、1時間にわたり前処理し、次いで、蛍光標識されたデキストランまたはアルブミンと共にインキュベートした。細胞内デキストランまたは細胞内アルブミンを、30分間にわたる取込みの後で定量化した。データは、平均値±STDEV(各視野の細胞を>10個とする視野のn=6)として表す。P値は、対応のない両側t検定を使用して計算した。n.s.:有意でない。図12Bは、K-RasG12D MEFによる細胞外デキストランの取込みに対する、shRNAにより媒介されるRaptorの枯渇の例示的な影響を示す図である。蛍光標識されたデキストランの取込みを、30分間にわたる取込みの後で定量化した。データは、平均値±STDEV(各視野の細胞を>10個とする視野のn=8)として表す。P値は、対応のない両側t検定を使用して計算した。n.s.:有意でない。図12Cは、デキストラン取込みの例示的な時間経過を示す図である。K-RasG12D MEFを、250nMのトリン1で、1時間にわたり前処理し、次いで、蛍光標識されたデキストランと共に、表示の時間にわたりインキュベートした。データは、平均値±STDEV(各視野の細胞を>10個とする視野のn=8)として表す。図12Dは、K-RasG12D MEF内の、リソソームにおける内在化DQ-BSAの分解に対する、shRNAにより媒介されるRaptorまたはRictorの枯渇の例示的な影響を示す図である。細胞1個当たりの平均蛍光強度は、DQ-BSA取込みの6時間後に決定した。データは、平均値±STDEV(各視野の細胞を>15個とする視野のn=7)として表す。P値は、対応のない両側t検定を使用して計算した。***p<0.001、n.s.:有意でない。図12Eは、リソソーム内在化DQ-BSAの分解に対する、クロロキンおよびリソソームプロテアーゼ阻害剤の例示的な影響を示す図である。K-RasG12D MEFを、250nMのトリン1および20μMのクロロキンまたはプロテアーゼ阻害剤(2μMのペプスタチンA、2μMのE-64、10μMのロイペプチン)で、1時間にわたり前処理した。次いで、細胞を、DQ-BSAおよび表示の阻害剤と共に、6時間にわたりインキュベートした。スケールバー=20μmである。DQ-BSA蛍光の強度を、平均値±STDEV(各視野の細胞を>20個とする視野のn=7)として表す。P値は、対応のない両側t検定を使用して計算した。***p<0.001である。図12Fは、リソソームDQ-BSAの分解に対する、トリン1処理の時間依存性を示す図である。K-RasG12D MEFを、250nMのトリン1で、表示の時間にわたり前処理し、次いで、DQ-BSAおよびトリン1と共にインキュベートした。スケールバー=20μmである。DQ-BSA蛍光の強度の定量化を、平均値±STDEV(各視野の細胞を>30個とする視野のn=5)として表す。図12Gは、トリン(tori)1により誘導されるDQ-BSA分解に対する転写阻害の影響を示す図である。K-RasG12D MEFを、5μg/mlのアクチノマイシンDまたは1μMのトリプトリドで、30分間にわたりにわたり前処理した。次いで、細胞を、DQ-BSAおよび表示の阻害剤と共に、6時間にわたりインキュベートした。DQ-BSA蛍光の強度を、平均値±STDEV(各視野の細胞を>30個とする視野のn=6)として表す。P値は、対応のない両側t検定を使用して計算した。n.s.:有意でない。図12Hは、250nMのトリン1の存在下(左パネル)または非存在下(右パネル)における、K-RasG12Vを発現するUlk1/2野生型MEFおよびUlk1/2二重ノックアウト(DKO)MEF内の、DQ-BSA蛍光の定量化を示す図である。データは、平均値±STDEV(各視野の細胞を>20個とする視野のn=5)として表す。図12Iは、3%のアルブミンを補充したロイシン非含有培地±250nMのトリン1中の、K-RasG12Vを発現するUlk1/2 DKO MEFについての増殖曲線を示す図である。構成的に活性なRasの発現は、50ng/mlのドキシサイクリンにより誘導した。データは、平均値±STDEV(n=3)として表す。
図12CD図12A~Dは、mTORC1に調節される、内在化タンパク質の異化が、エンドサイトーシスまたは遺伝子発現の変化に依存しないことを示す図である。図12Aは、細胞外高分子の取込みに対する、mTORの阻害の例示的な影響を示す図である。K-RasG12D MEFを、250nMのトリン1で、1時間にわたり前処理し、次いで、蛍光標識されたデキストランまたはアルブミンと共にインキュベートした。細胞内デキストランまたは細胞内アルブミンを、30分間にわたる取込みの後で定量化した。データは、平均値±STDEV(各視野の細胞を>10個とする視野のn=6)として表す。P値は、対応のない両側t検定を使用して計算した。n.s.:有意でない。図12Bは、K-RasG12D MEFによる細胞外デキストランの取込みに対する、shRNAにより媒介されるRaptorの枯渇の例示的な影響を示す図である。蛍光標識されたデキストランの取込みを、30分間にわたる取込みの後で定量化した。データは、平均値±STDEV(各視野の細胞を>10個とする視野のn=8)として表す。P値は、対応のない両側t検定を使用して計算した。n.s.:有意でない。図12Cは、デキストラン取込みの例示的な時間経過を示す図である。K-RasG12D MEFを、250nMのトリン1で、1時間にわたり前処理し、次いで、蛍光標識されたデキストランと共に、表示の時間にわたりインキュベートした。データは、平均値±STDEV(各視野の細胞を>10個とする視野のn=8)として表す。図12Dは、K-RasG12D MEF内の、リソソームにおける内在化DQ-BSAの分解に対する、shRNAにより媒介されるRaptorまたはRictorの枯渇の例示的な影響を示す図である。細胞1個当たりの平均蛍光強度は、DQ-BSA取込みの6時間後に決定した。データは、平均値±STDEV(各視野の細胞を>15個とする視野のn=7)として表す。P値は、対応のない両側t検定を使用して計算した。***p<0.001、n.s.:有意でない。図12Eは、リソソーム内在化DQ-BSAの分解に対する、クロロキンおよびリソソームプロテアーゼ阻害剤の例示的な影響を示す図である。K-RasG12D MEFを、250nMのトリン1および20μMのクロロキンまたはプロテアーゼ阻害剤(2μMのペプスタチンA、2μMのE-64、10μMのロイペプチン)で、1時間にわたり前処理した。次いで、細胞を、DQ-BSAおよび表示の阻害剤と共に、6時間にわたりインキュベートした。スケールバー=20μmである。DQ-BSA蛍光の強度を、平均値±STDEV(各視野の細胞を>20個とする視野のn=7)として表す。P値は、対応のない両側t検定を使用して計算した。***p<0.001である。図12Fは、リソソームDQ-BSAの分解に対する、トリン1処理の時間依存性を示す図である。K-RasG12D MEFを、250nMのトリン1で、表示の時間にわたり前処理し、次いで、DQ-BSAおよびトリン1と共にインキュベートした。スケールバー=20μmである。DQ-BSA蛍光の強度の定量化を、平均値±STDEV(各視野の細胞を>30個とする視野のn=5)として表す。図12Gは、トリン(tori)1により誘導されるDQ-BSA分解に対する転写阻害の影響を示す図である。K-RasG12D MEFを、5μg/mlのアクチノマイシンDまたは1μMのトリプトリドで、30分間にわたりにわたり前処理した。次いで、細胞を、DQ-BSAおよび表示の阻害剤と共に、6時間にわたりインキュベートした。DQ-BSA蛍光の強度を、平均値±STDEV(各視野の細胞を>30個とする視野のn=6)として表す。P値は、対応のない両側t検定を使用して計算した。n.s.:有意でない。図12Hは、250nMのトリン1の存在下(左パネル)または非存在下(右パネル)における、K-RasG12Vを発現するUlk1/2野生型MEFおよびUlk1/2二重ノックアウト(DKO)MEF内の、DQ-BSA蛍光の定量化を示す図である。データは、平均値±STDEV(各視野の細胞を>20個とする視野のn=5)として表す。図12Iは、3%のアルブミンを補充したロイシン非含有培地±250nMのトリン1中の、K-RasG12Vを発現するUlk1/2 DKO MEFについての増殖曲線を示す図である。構成的に活性なRasの発現は、50ng/mlのドキシサイクリンにより誘導した。データは、平均値±STDEV(n=3)として表す。
図12E図12A~Dは、mTORC1に調節される、内在化タンパク質の異化が、エンドサイトーシスまたは遺伝子発現の変化に依存しないことを示す図である。図12Aは、細胞外高分子の取込みに対する、mTORの阻害の例示的な影響を示す図である。K-RasG12D MEFを、250nMのトリン1で、1時間にわたり前処理し、次いで、蛍光標識されたデキストランまたはアルブミンと共にインキュベートした。細胞内デキストランまたは細胞内アルブミンを、30分間にわたる取込みの後で定量化した。データは、平均値±STDEV(各視野の細胞を>10個とする視野のn=6)として表す。P値は、対応のない両側t検定を使用して計算した。n.s.:有意でない。図12Bは、K-RasG12D MEFによる細胞外デキストランの取込みに対する、shRNAにより媒介されるRaptorの枯渇の例示的な影響を示す図である。蛍光標識されたデキストランの取込みを、30分間にわたる取込みの後で定量化した。データは、平均値±STDEV(各視野の細胞を>10個とする視野のn=8)として表す。P値は、対応のない両側t検定を使用して計算した。n.s.:有意でない。図12Cは、デキストラン取込みの例示的な時間経過を示す図である。K-RasG12D MEFを、250nMのトリン1で、1時間にわたり前処理し、次いで、蛍光標識されたデキストランと共に、表示の時間にわたりインキュベートした。データは、平均値±STDEV(各視野の細胞を>10個とする視野のn=8)として表す。図12Dは、K-RasG12D MEF内の、リソソームにおける内在化DQ-BSAの分解に対する、shRNAにより媒介されるRaptorまたはRictorの枯渇の例示的な影響を示す図である。細胞1個当たりの平均蛍光強度は、DQ-BSA取込みの6時間後に決定した。データは、平均値±STDEV(各視野の細胞を>15個とする視野のn=7)として表す。P値は、対応のない両側t検定を使用して計算した。***p<0.001、n.s.:有意でない。図12Eは、リソソーム内在化DQ-BSAの分解に対する、クロロキンおよびリソソームプロテアーゼ阻害剤の例示的な影響を示す図である。K-RasG12D MEFを、250nMのトリン1および20μMのクロロキンまたはプロテアーゼ阻害剤(2μMのペプスタチンA、2μMのE-64、10μMのロイペプチン)で、1時間にわたり前処理した。次いで、細胞を、DQ-BSAおよび表示の阻害剤と共に、6時間にわたりインキュベートした。スケールバー=20μmである。DQ-BSA蛍光の強度を、平均値±STDEV(各視野の細胞を>20個とする視野のn=7)として表す。P値は、対応のない両側t検定を使用して計算した。***p<0.001である。図12Fは、リソソームDQ-BSAの分解に対する、トリン1処理の時間依存性を示す図である。K-RasG12D MEFを、250nMのトリン1で、表示の時間にわたり前処理し、次いで、DQ-BSAおよびトリン1と共にインキュベートした。スケールバー=20μmである。DQ-BSA蛍光の強度の定量化を、平均値±STDEV(各視野の細胞を>30個とする視野のn=5)として表す。図12Gは、トリン(tori)1により誘導されるDQ-BSA分解に対する転写阻害の影響を示す図である。K-RasG12D MEFを、5μg/mlのアクチノマイシンDまたは1μMのトリプトリドで、30分間にわたりにわたり前処理した。次いで、細胞を、DQ-BSAおよび表示の阻害剤と共に、6時間にわたりインキュベートした。DQ-BSA蛍光の強度を、平均値±STDEV(各視野の細胞を>30個とする視野のn=6)として表す。P値は、対応のない両側t検定を使用して計算した。n.s.:有意でない。図12Hは、250nMのトリン1の存在下(左パネル)または非存在下(右パネル)における、K-RasG12Vを発現するUlk1/2野生型MEFおよびUlk1/2二重ノックアウト(DKO)MEF内の、DQ-BSA蛍光の定量化を示す図である。データは、平均値±STDEV(各視野の細胞を>20個とする視野のn=5)として表す。図12Iは、3%のアルブミンを補充したロイシン非含有培地±250nMのトリン1中の、K-RasG12Vを発現するUlk1/2 DKO MEFについての増殖曲線を示す図である。構成的に活性なRasの発現は、50ng/mlのドキシサイクリンにより誘導した。データは、平均値±STDEV(n=3)として表す。
図12FG図12A~Dは、mTORC1に調節される、内在化タンパク質の異化が、エンドサイトーシスまたは遺伝子発現の変化に依存しないことを示す図である。図12Aは、細胞外高分子の取込みに対する、mTORの阻害の例示的な影響を示す図である。K-RasG12D MEFを、250nMのトリン1で、1時間にわたり前処理し、次いで、蛍光標識されたデキストランまたはアルブミンと共にインキュベートした。細胞内デキストランまたは細胞内アルブミンを、30分間にわたる取込みの後で定量化した。データは、平均値±STDEV(各視野の細胞を>10個とする視野のn=6)として表す。P値は、対応のない両側t検定を使用して計算した。n.s.:有意でない。図12Bは、K-RasG12D MEFによる細胞外デキストランの取込みに対する、shRNAにより媒介されるRaptorの枯渇の例示的な影響を示す図である。蛍光標識されたデキストランの取込みを、30分間にわたる取込みの後で定量化した。データは、平均値±STDEV(各視野の細胞を>10個とする視野のn=8)として表す。P値は、対応のない両側t検定を使用して計算した。n.s.:有意でない。図12Cは、デキストラン取込みの例示的な時間経過を示す図である。K-RasG12D MEFを、250nMのトリン1で、1時間にわたり前処理し、次いで、蛍光標識されたデキストランと共に、表示の時間にわたりインキュベートした。データは、平均値±STDEV(各視野の細胞を>10個とする視野のn=8)として表す。図12Dは、K-RasG12D MEF内の、リソソームにおける内在化DQ-BSAの分解に対する、shRNAにより媒介されるRaptorまたはRictorの枯渇の例示的な影響を示す図である。細胞1個当たりの平均蛍光強度は、DQ-BSA取込みの6時間後に決定した。データは、平均値±STDEV(各視野の細胞を>15個とする視野のn=7)として表す。P値は、対応のない両側t検定を使用して計算した。***p<0.001、n.s.:有意でない。図12Eは、リソソーム内在化DQ-BSAの分解に対する、クロロキンおよびリソソームプロテアーゼ阻害剤の例示的な影響を示す図である。K-RasG12D MEFを、250nMのトリン1および20μMのクロロキンまたはプロテアーゼ阻害剤(2μMのペプスタチンA、2μMのE-64、10μMのロイペプチン)で、1時間にわたり前処理した。次いで、細胞を、DQ-BSAおよび表示の阻害剤と共に、6時間にわたりインキュベートした。スケールバー=20μmである。DQ-BSA蛍光の強度を、平均値±STDEV(各視野の細胞を>20個とする視野のn=7)として表す。P値は、対応のない両側t検定を使用して計算した。***p<0.001である。図12Fは、リソソームDQ-BSAの分解に対する、トリン1処理の時間依存性を示す図である。K-RasG12D MEFを、250nMのトリン1で、表示の時間にわたり前処理し、次いで、DQ-BSAおよびトリン1と共にインキュベートした。スケールバー=20μmである。DQ-BSA蛍光の強度の定量化を、平均値±STDEV(各視野の細胞を>30個とする視野のn=5)として表す。図12Gは、トリン(tori)1により誘導されるDQ-BSA分解に対する転写阻害の影響を示す図である。K-RasG12D MEFを、5μg/mlのアクチノマイシンDまたは1μMのトリプトリドで、30分間にわたりにわたり前処理した。次いで、細胞を、DQ-BSAおよび表示の阻害剤と共に、6時間にわたりインキュベートした。DQ-BSA蛍光の強度を、平均値±STDEV(各視野の細胞を>30個とする視野のn=6)として表す。P値は、対応のない両側t検定を使用して計算した。n.s.:有意でない。図12Hは、250nMのトリン1の存在下(左パネル)または非存在下(右パネル)における、K-RasG12Vを発現するUlk1/2野生型MEFおよびUlk1/2二重ノックアウト(DKO)MEF内の、DQ-BSA蛍光の定量化を示す図である。データは、平均値±STDEV(各視野の細胞を>20個とする視野のn=5)として表す。図12Iは、3%のアルブミンを補充したロイシン非含有培地±250nMのトリン1中の、K-RasG12Vを発現するUlk1/2 DKO MEFについての増殖曲線を示す図である。構成的に活性なRasの発現は、50ng/mlのドキシサイクリンにより誘導した。データは、平均値±STDEV(n=3)として表す。
図12HI図12A~Dは、mTORC1に調節される、内在化タンパク質の異化が、エンドサイトーシスまたは遺伝子発現の変化に依存しないことを示す図である。図12Aは、細胞外高分子の取込みに対する、mTORの阻害の例示的な影響を示す図である。K-RasG12D MEFを、250nMのトリン1で、1時間にわたり前処理し、次いで、蛍光標識されたデキストランまたはアルブミンと共にインキュベートした。細胞内デキストランまたは細胞内アルブミンを、30分間にわたる取込みの後で定量化した。データは、平均値±STDEV(各視野の細胞を>10個とする視野のn=6)として表す。P値は、対応のない両側t検定を使用して計算した。n.s.:有意でない。図12Bは、K-RasG12D MEFによる細胞外デキストランの取込みに対する、shRNAにより媒介されるRaptorの枯渇の例示的な影響を示す図である。蛍光標識されたデキストランの取込みを、30分間にわたる取込みの後で定量化した。データは、平均値±STDEV(各視野の細胞を>10個とする視野のn=8)として表す。P値は、対応のない両側t検定を使用して計算した。n.s.:有意でない。図12Cは、デキストラン取込みの例示的な時間経過を示す図である。K-RasG12D MEFを、250nMのトリン1で、1時間にわたり前処理し、次いで、蛍光標識されたデキストランと共に、表示の時間にわたりインキュベートした。データは、平均値±STDEV(各視野の細胞を>10個とする視野のn=8)として表す。図12Dは、K-RasG12D MEF内の、リソソームにおける内在化DQ-BSAの分解に対する、shRNAにより媒介されるRaptorまたはRictorの枯渇の例示的な影響を示す図である。細胞1個当たりの平均蛍光強度は、DQ-BSA取込みの6時間後に決定した。データは、平均値±STDEV(各視野の細胞を>15個とする視野のn=7)として表す。P値は、対応のない両側t検定を使用して計算した。***p<0.001、n.s.:有意でない。図12Eは、リソソーム内在化DQ-BSAの分解に対する、クロロキンおよびリソソームプロテアーゼ阻害剤の例示的な影響を示す図である。K-RasG12D MEFを、250nMのトリン1および20μMのクロロキンまたはプロテアーゼ阻害剤(2μMのペプスタチンA、2μMのE-64、10μMのロイペプチン)で、1時間にわたり前処理した。次いで、細胞を、DQ-BSAおよび表示の阻害剤と共に、6時間にわたりインキュベートした。スケールバー=20μmである。DQ-BSA蛍光の強度を、平均値±STDEV(各視野の細胞を>20個とする視野のn=7)として表す。P値は、対応のない両側t検定を使用して計算した。***p<0.001である。図12Fは、リソソームDQ-BSAの分解に対する、トリン1処理の時間依存性を示す図である。K-RasG12D MEFを、250nMのトリン1で、表示の時間にわたり前処理し、次いで、DQ-BSAおよびトリン1と共にインキュベートした。スケールバー=20μmである。DQ-BSA蛍光の強度の定量化を、平均値±STDEV(各視野の細胞を>30個とする視野のn=5)として表す。図12Gは、トリン(tori)1により誘導されるDQ-BSA分解に対する転写阻害の影響を示す図である。K-RasG12D MEFを、5μg/mlのアクチノマイシンDまたは1μMのトリプトリドで、30分間にわたりにわたり前処理した。次いで、細胞を、DQ-BSAおよび表示の阻害剤と共に、6時間にわたりインキュベートした。DQ-BSA蛍光の強度を、平均値±STDEV(各視野の細胞を>30個とする視野のn=6)として表す。P値は、対応のない両側t検定を使用して計算した。n.s.:有意でない。図12Hは、250nMのトリン1の存在下(左パネル)または非存在下(右パネル)における、K-RasG12Vを発現するUlk1/2野生型MEFおよびUlk1/2二重ノックアウト(DKO)MEF内の、DQ-BSA蛍光の定量化を示す図である。データは、平均値±STDEV(各視野の細胞を>20個とする視野のn=5)として表す。図12Iは、3%のアルブミンを補充したロイシン非含有培地±250nMのトリン1中の、K-RasG12Vを発現するUlk1/2 DKO MEFについての増殖曲線を示す図である。構成的に活性なRasの発現は、50ng/mlのドキシサイクリンにより誘導した。データは、平均値±STDEV(n=3)として表す。
【0045】
図13AB図13A~Gは、mTORC1シグナル伝達が、栄養物質に富む条件下および栄養物質枯渇条件下で、細胞増殖に対する拮抗影響を及ぼすことを示す図である。図13Aおよび13Bは、3%のアルブミンおよび表示量のEAAを含有する培地中の培養の3日目における、±250nMのトリン1を伴うK-RasG12D MEF(13A)、およびRaptor shRNAまたは対照shRNAを発現するK-Ras 12D MEF(13B)の細胞数についての例示的なグラフを示す図である。図13Cは、Ki-67に対する免疫組織化学により解析される、対照KPCマウスおよびラパマイシン処理KPCマウスにおける膵臓腫瘍細胞の増殖を示す図である。スケールバー=400μmであり;各々の引き伸ばし(blow-ups)におけるスケールバー=50μmである。図13Dは、(C)で示した、外部および内部の腫瘍領域における、Ki-67陽性腫瘍細胞を定量化する例示的なグラフを示す図である。図13Eは、3d高解像度超音波により定量化される、対照KPCマウスおよびラパマイシン処理KPCマウスにおける、膵臓腫瘍の容量増大についての例示的なグラフを示す図である。図13Fは、ロイシン含有培地またはロイシン非含有培地±3%のアルブミン中の、Raptor KO MEFについての例示的な増殖曲線を示す図である。図13Gは、3%のアルブミンおよび表示量のEAAを含有する培地中の培養の3日目における、Raptor shRNAまたは対照shRNAを発現する野生型MEFの細胞数についての例示的なグラフを示す図である。図13A、13B、13F、および13Gにおけるデータは、平均値±STDEV(n=3)として表す。点線は、開始時の細胞数を指し示す。図13Dおよび13Eにおけるデータは、平均値±SEM(n=5)として表す。p<0.05、**p<0.01、***p<0.001である。
図13C図13A~Gは、mTORC1シグナル伝達が、栄養物質に富む条件下および栄養物質枯渇条件下で、細胞増殖に対する拮抗影響を及ぼすことを示す図である。図13Aおよび13Bは、3%のアルブミンおよび表示量のEAAを含有する培地中の培養の3日目における、±250nMのトリン1を伴うK-RasG12D MEF(13A)、およびRaptor shRNAまたは対照shRNAを発現するK-RasG1 2D MEF(13B)の細胞数についての例示的なグラフを示す図である。図13Cは、Ki-67に対する免疫組織化学により解析される、対照KPCマウスおよびラパマイシン処理KPCマウスにおける膵臓腫瘍細胞の増殖を示す図である。スケールバー=400μmであり;各々の引き伸ばし(blow-ups)におけるスケールバー=50μmである。図13Dは、(C)で示した、外部および内部の腫瘍領域における、Ki-67陽性腫瘍細胞を定量化する例示的なグラフを示す図である。図13Eは、3d高解像度超音波により定量化される、対照KPCマウスおよびラパマイシン処理KPCマウスにおける、膵臓腫瘍の容量増大についての例示的なグラフを示す図である。図13Fは、ロイシン含有培地またはロイシン非含有培地±3%のアルブミン中の、Raptor KO MEFについての例示的な増殖曲線を示す図である。図13Gは、3%のアルブミンおよび表示量のEAAを含有する培地中の培養の3日目における、Raptor shRNAまたは対照shRNAを発現する野生型MEFの細胞数についての例示的なグラフを示す図である。図13A、13B、13F、および13Gにおけるデータは、平均値±STDEV(n=3)として表す。点線は、開始時の細胞数を指し示す。図13Dおよび13Eにおけるデータは、平均値±SEM(n=5)として表す。p<0.05、**p<0.01、***p<0.001である。
図13DEFG図13A~Gは、mTORC1シグナル伝達が、栄養物質に富む条件下および栄養物質枯渇条件下で、細胞増殖に対する拮抗影響を及ぼすことを示す図である。図13Aおよび13Bは、3%のアルブミンおよび表示量のEAAを含有する培地中の培養の3日目における、±250nMのトリン1を伴うK-RasG12D MEF(13A)、およびRaptor shRNAまたは対照shRNAを発現するK-RasG12D MEF(13B)の細胞数についての例示的なグラフを示す図である。図13Cは、Ki-67に対する免疫組織化学により解析される、対照KPCマウスおよびラパマイシン処理KPCマウスにおける膵臓腫瘍細胞の増殖を示す図である。スケールバー=400μmであり;各々の引き伸ばし(blow-ups)におけるスケールバー=50μmである。図13Dは、(C)で示した、外部および内部の腫瘍領域における、Ki-67陽性腫瘍細胞を定量化する例示的なグラフを示す図である。図13Eは、3d高解像度超音波により定量化される、対照KPCマウスおよびラパマイシン処理KPCマウスにおける、膵臓腫瘍の容量増大についての例示的なグラフを示す図である。図13Fは、ロイシン含有培地またはロイシン非含有培地±3%のアルブミン中の、Raptor KO MEFについての例示的な増殖曲線を示す図である。図13Gは、3%のアルブミンおよび表示量のEAAを含有する培地中の培養の3日目における、Raptor shRNAまたは対照shRNAを発現する野生型MEFの細胞数についての例示的なグラフを示す図である。図13A、13B、13F、および13Gにおけるデータは、平均値±STDEV(n=3)として表す。点線は、開始時の細胞数を指し示す。図13Dおよび13Eにおけるデータは、平均値±SEM(n=5)として表す。p<0.05、**p<0.01、***p<0.001である。
【0046】
図14A図14A~Dは、mTORC1の阻害が、栄養物質欠乏の間における細胞増殖を促進することを示す図である。図14Aは、Ki-67、CD31、およびphosphor-S6に対する免疫組織化学により解析される、内側の無血管腫瘍領域、および外側の血管化腫瘍領域における、膵臓腫瘍細胞の例示的な増殖を示す図である。スケールバー=50μmである。図14Bは、ウェスタンブロット法により解析される、mTORC1経路活性およびmTORC2経路活性に対する、野生型MEF内の、shRNAにより媒介されるRaptorまたはRictorの枯渇の例示的な影響を示す図である。図14Cは、ロイシン非含有培地±3%のアルブミン中の、Raptor shRNAまたは対照shRNAを発現する野生型MEFについての例示的な増殖曲線を示す図である。図14Dは、ロイシン非含有培地±3%のアルブミンおよび25nMのラパマイシンまたは250nMのトリン1中の、野生型MEFについての例示的な増殖曲線を示す図である。図14Eは、ウェスタンブロット法により解析される、Cre誘導の4日後における、mTORC1経路活性およびmTORC2経路活性に対する、誘導的KO MEF内の、RaptorまたはRictorの遺伝子欠失の影響を示す図である。図14Fは、ロイシン含有培地またはロイシン非含有培地±アルブミン中の、Rictor KO MEFについての例示的な増殖曲線を示す図である。データは、平均値±STDEV(n=3)として表す。
図14BCD図14A~Dは、mTORC1の阻害が、栄養物質欠乏の間における細胞増殖を促進することを示す図である。図14Aは、Ki-67、CD31、およびphosphor-S6に対する免疫組織化学により解析される、内側の無血管腫瘍領域、および外側の血管化腫瘍領域における、膵臓腫瘍細胞の例示的な増殖を示す図である。スケールバー=50μmである。図14Bは、ウェスタンブロット法により解析される、mTORC1経路活性およびmTORC2経路活性に対する、野生型MEF内の、shRNAにより媒介されるRaptorまたはRictorの枯渇の例示的な影響を示す図である。図14Cは、ロイシン非含有培地±3%のアルブミン中の、Raptor shRNAまたは対照shRNAを発現する野生型MEFについての例示的な増殖曲線を示す図である。図14Dは、ロイシン非含有培地±3%のアルブミンおよび25nMのラパマイシンまたは250nMのトリン1中の、野生型MEFについての例示的な増殖曲線を示す図である。図14Eは、ウェスタンブロット法により解析される、Cre誘導の4日後における、mTORC1経路活性およびmTORC2経路活性に対する、誘導的KO MEF内の、RaptorまたはRictorの遺伝子欠失の影響を示す図である。図14Fは、ロイシン含有培地またはロイシン非含有培地±アルブミン中の、Rictor KO MEFについての例示的な増殖曲線を示す図である。データは、平均値±STDEV(n=3)として表す。
図14EF図14A~Dは、mTORC1の阻害が、栄養物質欠乏の間における細胞増殖を促進することを示す図である。図14Aは、Ki-67、CD31、およびphosphor-S6に対する免疫組織化学により解析される、内側の無血管腫瘍領域、および外側の血管化腫瘍領域における、膵臓腫瘍細胞の例示的な増殖を示す図である。スケールバー=50μmである。図14Bは、ウェスタンブロット法により解析される、mTORC1経路活性およびmTORC2経路活性に対する、野生型MEF内の、shRNAにより媒介されるRaptorまたはRictorの枯渇の例示的な影響を示す図である。図14Cは、ロイシン非含有培地±3%のアルブミン中の、Raptor shRNAまたは対照shRNAを発現する野生型MEFについての例示的な増殖曲線を示す図である。図14Dは、ロイシン非含有培地±3%のアルブミンおよび25nMのラパマイシンまたは250nMのトリン1中の、野生型MEFについての例示的な増殖曲線を示す図である。図14Eは、ウェスタンブロット法により解析される、Cre誘導の4日後における、mTORC1経路活性およびmTORC2経路活性に対する、誘導的KO MEF内の、RaptorまたはRictorの遺伝子欠失の影響を示す図である。図14Fは、ロイシン含有培地またはロイシン非含有培地±アルブミン中の、Rictor KO MEFについての例示的な増殖曲線を示す図である。データは、平均値±STDEV(n=3)として表す。
【発明を実施するための形態】
【0047】
(定義)
そうでないことが指し示されない限りにおいて、本明細書で使用される用語は、本開示
の理解を容易とするために、当業者が一般に理解する意味と同じ意味を有し、一部の用語
は、本明細書では、以下の定義に従う意味を有するように使用される。
【0048】
本発明をよりたやすく理解するために、ある特定の用語を、まず以下で定義する。以下
の用語および他の用語についてのさらなる定義は、本明細書の全体で明示される。
【0049】
本出願では、文脈からそうでないことが明らかとならない限りにおいて、(i)「ある
」という用語は、「少なくとも1つの」を意味するように理解することができ;(ii)
「または」という用語は、「および/または」を意味するように理解することができ;(
iii)「~を含むこと(comprising)」および「~を含むこと(inclu
ding)」という用語は、それら自体により明示されるのであれ、1または複数のさら
なる構成要素またはステップと併せて明示されるのであれ、列挙される構成要素またはス
テップを包含するように理解することができ;(iv)「約(about)」および「約
(approximately)」という用語は、当業者により理解されるであろう標準
的なばらつきを許容するように理解することができ;(v)範囲を提供する場合、終点を
含む。
【0050】
活性化剤:本明細書で使用される「活性化剤」または活性化因子という用語は、その存
在またはレベルが、作用物質の非存在下で(または異なるレベルの作用物質と共に)観察
されるレベルまたは活性と比較した、標的のレベルまたは活性の上昇と相関する作用物質
を指す。一部の実施形態では、活性化剤とは、その存在またはレベルが、特定の基準レベ
ルまたは基準活性(例えば、公知の活性化剤、例えば、陽性対照の存在など、適切な基準
条件下で観察されるレベルまたは活性)と同等であるかまたはこれを超える、標的のレベ
ルまたは活性と相関する作用物質である。
【0051】
投与:本明細書で使用される「投与」という用語は、組成物の、対象への投与を指す。
投与は、任意の適切な経路を介する投与でありうる。例えば、一部の実施形態では、投与
は、気管支内投与(気管支内点滴による投与を含む)、口腔内投与、腸内投与、真皮内投
与、動脈内投与、皮内投与、胃内投与、髄内投与、筋内投与、鼻腔内投与、腹腔内投与、
髄腔内投与、静脈内投与、脳室内投与、経粘膜投与、経鼻投与、経口投与、直腸内投与、
皮下投与、舌下投与、局所投与、気管投与(気管内点滴による投与を含む)、経皮投与、
膣内投与、および硝子体内投与でありうる。
【0052】
作用物質:本明細書で使用される「作用物質」という用語は、化合物、または任意の化
学クラスの実体であって、例えば、ポリペプチド、核酸、糖、脂質、低分子、金属、もし
くはこれらの組合せを含む実体を指す場合がある。文脈から明らかとなる通り、一部の実
施形態では、作用物質は、細胞もしくは生物、またはこれらの画分、抽出物、もしくは構
成要素でありうるかまたはこれらを含みうる。一部の実施形態では、作用物質は、それが
、自然において見出され、かつ/または自然から得られるという点で、天然の生成物であ
るかまたはこれを含む。一部の実施形態では、作用物質は、それが、人為の作用を介して
デザイン、操作、および/もしくは作製され、かつ/または自然において見出されないと
いう点で、1または複数の人工の実体であるかまたはこれらを含む。一部の実施形態では
、作用物質は、単離形態または純粋形態で利用することができ;一部の実施形態では、作
用物質は、粗製の形態で利用することができる。
【0053】
アミノ酸:本明細書で、その最も広い意味において使用される「アミノ酸」という用語
は、ポリペプチド鎖へと組み込まれうる、任意の化合物および/または物質を指す。一部
の実施形態では、アミノ酸は、H2N-C(H)(R)-COOHという一般構造を有す
る。一部の実施形態では、アミノ酸は、天然に存在するアミノ酸である。一部の実施形態
では、アミノ酸は、合成アミノ酸であり;一部の実施形態では、アミノ酸は、d-アミノ
酸であり;一部の実施形態では、アミノ酸は、l-アミノ酸である。「標準アミノ酸」と
は、天然に存在するペプチド内で一般に見出される、20の標準l-アミノ酸のうちのい
ずれかを指す。「非標準アミノ酸」とは、合成により調製されるのか、天然の供給源から
得られるのかに関わらず、標準アミノ酸以外の任意のアミノ酸を指す。本明細書で使用さ
れる「合成アミノ酸」は、化学修飾されたアミノ酸であって、塩、アミノ酸の誘導体(ア
ミドなど)、および/または置換を含むがこれらに限定されないアミノ酸を包含する。ペ
プチド内のカルボキシ末端および/またはアミノ末端のアミノ酸を含むアミノ酸は、メチ
ル化、アミド化、アセチル化、保護基、および/または、それらの活性に有害な影響を及
ぼさずに、ペプチドの循環半減期を変化させうる、他の化学基による置換により修飾する
ことができる。アミノ酸は、ジスルフィド結合に参与しうる。アミノ酸は、1または複数
の化学的実体(例えば、メチル基、アセテート基、アセチル基、ホスフェート基、ホルミ
ル部分、イソプレノイド基、スルフェート基、ポリエチレングリコール部分、脂質部分、
炭水化物部分、ビオチン部分など)との会合など、1または複数の翻訳後修飾を含みうる
。「アミノ酸」という用語は、「アミノ酸残基」と互換的に使用され、遊離アミノ酸を指
す場合もあり、かつ/またはペプチドのアミノ酸残基を指す場合もある。「アミノ酸」と
いう用語が、遊離アミノ酸を指すのか、ペプチドの残基を指すのかは、用語が使用される
文脈から明らかであろう。
【0054】
類似体:本明細書で使用される「類似体」という用語は、1または複数の特定の構造的
特徴、元素、構成要素、または部分を、基準物質と共有する物質を指す。「類似体」は、
基準物質との顕著な構造的類似性であって、例えば、コア構造またはコンセンサス構造を
共有するが、また、ある特定の個別の様態では異なりもする類似性を示すことが典型的で
ある。一部の実施形態では、類似体とは、基準物質を化学的に操作することにより、基準
物質から作出しうる物質である。一部の実施形態では、類似体とは、基準物質を作出する
合成工程と実質的に同様の(例えば、これと複数のステップを共有する)合成工程を実施
することにより作出しうる物質である。一部の実施形態では、類似体は、基準物質を作出
するのに使用される合成工程と異なる合成工程を実施することにより作出されるかまたは
作出することができる。
【0055】
動物:本明細書で使用される「動物」という用語は、動物界の任意のメンバーを指す。
一部の実施形態では、「動物」とは、いずれかの性別であり、任意の発生段階にあるヒト
を指す。一部の実施形態では、「動物」とは、任意の発生段階にある非ヒト動物を指す。
ある特定の実施形態では、非ヒト動物は、哺乳動物(例えば、齧歯動物、マウス、ラット
、ウサギ、サル、イヌ、ネコ、ヒツジ、ウシ、霊長動物、および/またはブタ)である。
一部の実施形態では、動物は、哺乳動物、鳥類、爬虫類、両生類、魚類、昆虫、および/
または蠕虫を含むがこれらに限定されない。一部の実施形態では、動物は、トランスジェ
ニック動物、遺伝子操作動物、および/またはクローンでありうる。
【0056】
アンタゴニスト:本明細書で使用される「アンタゴニスト」という用語は、i)別の作
用物質の効果を阻害するか、低下させるか、または低減する作用物質、例えば、受容体を
不活化させる作用物質;および/あるいはii)1または複数の生物学的事象、例えば、
1もしくは複数の受容体の活性化、または1もしくは複数の生物学的経路の刺激を阻害す
るか、低下させるか、低減するか、または遅延させる作用物質を指す。特定の実施形態で
は、アンタゴニストは、1または複数の受容体チロシンキナーゼの活性化および/または
活性を阻害する。アンタゴニストは、任意の化学クラスの作用物質であって、例えば、低
分子、ポリペプチド、核酸、炭水化物、脂質、金属、および/または適当な阻害活性を示
す他の任意の実体を含む作用物質でありうるか、またはこれを含みうる。アンタゴニスト
は、直接的アンタゴニスト(この場合、アンタゴニストは、その影響を、受容体に直接及
ぼす)の場合もあり、間接的アンタゴニスト(この場合、アンタゴニストは、その影響を
、受容体への結合以外;例えば、受容体の発現または翻訳を変更すること;受容体が直接
活性化させるシグナル伝達経路を変更すること;受容体のアゴニストの発現、翻訳、また
は活性を変更することにより及ぼす)の場合もある。
【0057】
およそ:目的の1または複数の値に適用される場合に本明細書で使用される「およそ」
または「約」という用語は、陳述される基準値と同様の値を指す。ある特定の実施形態で
は、「およそ」または「約」という用語は、そうでないことが陳述されるか、またはそう
でないことが文脈から明らかでない限りにおいて(このような数が可能な値の100%を
超える場合を除き)、陳述される基準値に対していずれの方向(陳述される基準を超える
方向またはこれ未満の方向)においても、25%、20%、19%、18%、17%、1
6%、15%、14%、13%、12%、11%、10%、9%、8%、7%、6%、5
%、4%、3%、2%、1%、またはこれ未満に収まる値の範囲を指す。
【0058】
と関連/会合した:本明細書でこの用語が使用される場合、一方の存在、レベル、およ
び/または形態が、他方の存在、レベル、および/または形態と相関する場合に、2つの
事象または実体は、互いと「関連」する。例えば、特定の実体(例えば、ポリペプチド)
は、その存在、レベル、および/または形態が、疾患、障害、または状態の発生率および
/または感受性と相関する(例えば、関連する集団にわたり)場合に、特定の疾患、障害
、または状態と関連すると考えられる。一部の実施形態では、2つまたはこれを超える実
体は、それらが依然として互いと物理的な近接下にあるように、直接的または間接的に相
互作用する場合、互いと物理的に「会合」している。一部の実施形態では、互いと物理的
に会合している、2つまたはこれを超える実体は、互いと共有結合によって連結されてお
り;一部の実施形態では、互いと物理的に会合している、2つまたはこれを超える実体は
、互いと共有結合によって連結されていないが、例えば、水素結合、ファンデルワールス
相互作用、疎水性相互作用、磁気、およびこれらの組合せにより、共有結合的によらず会
合している。
【0059】
生物学的に活性の:本明細書で使用される「生物学的に活性の」という語句は、生体系
(例えば、細胞培養物、生物など)内で活性を有する、任意の物質の特徴を指す。例えば
、生物へと投与されると、この生物に対して生物学的効果を及ぼす物質は、生物学的に活
性であると考えられる。タンパク質またはポリペプチドが、生物学的に活性である、特定
の実施形態では、このタンパク質またはポリペプチドの部分であって、タンパク質または
ポリペプチドの少なくとも1つの生物学的活性を共有する部分を、「生物学的活性」部分
と称することが典型的である。
【0060】
がん:本明細書では、「がん」、「悪性腫瘍」、「新生物」、「腫瘍」、および「癌腫
」という用語を、相対的に異常な(abnormal)増殖、制御不能の増殖、および/
または自律的増殖を呈し、その結果、細胞増殖の制御の顕著な喪失を特徴とする、異常な
(aberrant)増殖表現型を呈する細胞を指すよう、互換的に使用する。一般的に
、本出願における、検出または処置のための目的の細胞は、前がん性(例えば、良性)細
胞、悪性細胞、前転移性細胞、転移性細胞、および非転移性細胞を含む。本開示の教示は
、任意かつ全てのがんに関連しうる。ごく少数の、非限定的例を挙げれば、一部の実施形
態では、本開示の教示を、例えば、白血病、リンパ腫(ホジキンリンパ腫および非ホジキ
ンリンパ腫)、骨髄腫、および骨髄増殖性障害を含む造血器がん;固形組織の肉腫、黒色
腫、腺腫、癌腫;口腔、咽頭、喉頭、および肺の扁平細胞がん;肝臓がん;前立腺がん、
子宮頸がん、膀胱がん、子宮がん、および子宮内膜がんなどの尿生殖器がん;ならびに腎
細胞癌、骨がん、膵臓がん、皮膚がん、皮膚黒色腫または眼内黒色腫、内分泌系のがん、
甲状腺がん、副甲状腺がん、頭頸部がん、乳がん、消化器がん、および神経系がん、乳頭
腫などの良性病変など、1または複数のがんに適用する。
【0061】
組合せ療法:本明細書で使用される「組合せ療法」という用語は、対象が、少なくとも
2つの作用物質へと、同時に曝露されるように、疾患を処置するための、2つまたはこれ
を超える異なる医薬品を、重複するレジメンで投与する状況を指す。一部の実施形態では
、異なる作用物質を、同時に投与する。一部の実施形態では、1つの作用物質の投与が、
少なくとも1つの他の作用物質の投与と重複する。一部の実施形態では、異なる作用物質
を、作用物質が、対象において、共時的な生物学的活性を有するように、逐次的に投与す
る。
【0062】
同等な:本明細書で使用される「同等な」という用語は、観察される差違または類似性
に基づき、結論を妥当な形で引き出しうるように、互いと同一ではありえないが、それら
の間の比較を許容する程度に十分に類似する、2つまたはこれを超える作用物質、実体、
状況(situation)、条件のセットなどを指す。当業者は、文脈により、所与の
任意の状況(circumstance)において、2つまたはこれを超えるこのような
作用物質、実体、状況、条件のセットなどが、同等であると考えられるには、どの程度の
同一性が要求されるのかを理解し得る。
【0063】
検出実体:本明細書で使用される「検出実体」という用語は、検出可能な、任意の元素
、分子、官能基、化合物、断片、または部分を指す。一部の実施形態では、検出実体を、
単独で提供または利用する。一部の実施形態では、検出実体を、別の作用物質と会合させ
て(例えば、別の作用物質へと接合させて)、提供および/または利用する。検出実体の
例は、多様なリガンド、放射性核種(例えば、3H、14C、18F、19F、32P、
35S、135I、125I、123I、64Cu、187Re、111In、90Y、
99mTc、177Lu、89Zrなど)、蛍光色素(具体的な例示的蛍光の色素につい
ては、下記を参照されたい)、化学発光剤(例えば、アクリジニウムエステル、安定化型
ジオキセタンなど)、生物発光剤、スペクトル分解型無機蛍光半導体ナノ結晶(すなわち
、量子ドット)、金属ナノ粒子(例えば、金、銀、銅、白金など)、ナノクラスター、常
磁性金属イオン、酵素(酵素の具体的な例については、下記を参照されたい)、比色標識
(例えば、色素、金コロイドなど)、ビオチン、ジゴキシゲニン(dioxigenin)、ハプテ
ン、および抗血清またはモノクローナル抗体が利用可能なタンパク質を含むがこれらに限
定されない。
【0064】
誘導体:本明細書で使用される「誘導体」という用語は、基準物質の構造的類似体を指
す。すなわち、「誘導体」とは、基準物質との顕著な構造的類似性を示す物質、例えば、
コア構造またはコンセンサス構造を共有するが、また、ある特定の個別の様態では異なり
もする物質である。一部の実施形態では、誘導体とは、化学的操作により、基準物質から
作出しうる物質である。一部の実施形態では、誘導体とは、基準物質を作出する合成工程
と実質的に同様の(例えば、これと複数のステップを共有する)合成工程を実施すること
により作出しうる物質である。
【0065】
決定する:当業者は、「決定すること」を、当業者に利用可能な様々な技法であって、
例えば、本明細書で明示的に言及される具体的な技法を含む技法のうちのいずれかを利用
するか、またはその使用を介して達しうることを察知する。一部の実施形態では、決定す
ることは、物理的試料の操作を伴う。一部の実施形態では、決定することは、データまた
は情報の考慮および/または操作、例えば、関連する解析を実施するように適応させた、
コンピュータまたは他の演算処理装置を利用することを伴う。一部の実施形態では、決定
することは、供給源から関連する情報および/または材料を受け取ることを伴う。一部の
実施形態では、決定することは、試料または実体の1または複数の特徴を、同等な基準と
比較することを伴う。
【0066】
診断情報:本明細書で使用される、診断情報または診断における使用のための情報とは
、患者が疾患もしくは状態を有するのかどうかを決定し、かつ/あるいは疾患または状態
を、表現型による類別、あるいは疾患もしくは状態の予後診断に関して重要性を有するか
、または疾患もしくは状態の処置(処置一般または任意の特定の処置)に応答する可能性
が高い任意の類別へと分類するときに有用な任意の情報である。同様に、診断とは、任意
の種類の診断情報であって、対象が、疾患もしくは状態(がんなど)を有する可能性が高
いのかどうか、対象において顕在化される、疾患もしくは状態の様相、病期分類、もしく
は特徴、腫瘍の性格もしくは分類に関する情報、予後診断に関する情報、および/または
適切な処置の選択に有用な情報を含むがこれらに限定されない診断情報を提供することを
指す。処置の選択は、特定の治療剤(例えば、化学療法剤)または手術、放射線など、他
の処置モダリティーなどの選定、治療を中断するのか、実施するのかについての選定、投
与レジメン(例えば、特定の治療剤または治療剤の組合せの、1または複数の投与頻度ま
たは用量レベル)に関する選定などを含みうる。
【0067】
剤形:本明細書で使用される「剤形」および「単位剤形」という用語は、対象へと投与
される、治療用組成物の、物理的に個別の単位を指す。各単位は、所定量の活性材料(例
えば、抗受容体チロシンキナーゼ抗体などの治療剤)を含有する。一部の実施形態では、
所定量とは、投与レジメンにおける用量として投与された場合の、所望の治療効果と相関
している量である。当業者は、特定の対象へと投与される治療用組成物または治療剤の総
量を決定するのは、1または複数の主治医であり、複数の剤形の投与を伴いうることを察
知する。
【0068】
投与レジメン:本明細書でこの用語が使用される場合の「投与レジメン」(または「治
療レジメン」)は、典型的には、期間を隔てて、対象へと個別に投与される、単位用量(
典型的には、1つを超える)のセットである。一部の実施形態では、所与の治療剤は、推
奨される投与レジメンであって、1回または複数回の投与を伴いうる投与レジメンを有す
る。一部の実施形態では、投与レジメンは、その各々を、互いから、同じ長さの期間で隔
てた複数回の投与を含み;一部の実施形態では、投与レジメンは、複数回の投与と、個別
の投与を隔てる、少なくとも2つの異なる期間とを含む。一部の実施形態では、投与レジ
メンは、患者の集団にわたり投与された場合の、所望の治療転帰であるか、またはこれと
相関している。
【0069】
機能的:本明細書で使用される「機能的」生体分子とは、それを特徴づける特性および
/または活性を呈する形態にある生体分子である。生体分子は、2つの機能(すなわち、
二機能性)を有する場合もあり、多くの機能(すなわち、多機能性)を有する場合もある
【0070】
阻害療法:本明細書で使用される「阻害療法」とは、特定の標的実体の活性または機能
を防止するか、低減するか、抑制するか、遮断するか、転導するか、または他の形でアン
タゴナイズする作用物質の投与を指す。本明細書で使用される「Ras阻害療法」とは、
Rasシグナル伝達経路内の、Rasの発現、結合、または活性を阻害する作用物質の投
与を指す。本明細書で使用される「リソソーム阻害療法」とは、リソソームの活性を防止
するか、低減するか、抑制するか、遮断するか、転導するか、または他の形でアンタゴナ
イズする作用物質の投与を指す。一部の実施形態では、リソソームの阻害は、タンパク質
の、リソソームへの取込みを阻害することにより果たす。一部の実施形態では、リソソー
ムの阻害は、1または複数のリソソーム酵素をアンタゴナイズすることにより果たす。
【0071】
異性体:当技術分野で公知の通り、多くの化学的実体(特に、多くの有機分子および/
または多くの低分子)は、様々な構造異性体形態および/または光学異性体形態で存在し
うる。一部の実施形態では、文脈から当業者に明らかになる通り、本明細書における、特
定の化合物構造の描示またはこれへの言及は、その全ての構造異性体および/または光学
異性体を包含することを意図する。一部の実施形態では、文脈から当業者に明らかになる
通り、本明細書における、特定の化合物構造の描示またはこれへの言及は、描示または言
及された異性体形態だけを包含することを意図する。一部の実施形態では、様々な異性体
形態で存在しうる化学的実体を含む組成物は、複数のこのような形態を含み;一部の実施
形態では、このような組成物は、単一の形態だけを含む。例えば、一部の実施形態では、
様々な光学異性体(例えば、立体異性体、ジアステレオマーなど)として存在しうる化学
的実体を含む組成物は、このような光学異性体のラセミ集団を含み;一部の実施形態では
、このような組成物は、単一の光学異性体だけを含み、かつ/または併せて光学活性を保
持する、複数の光学異性体を含む。
【0072】
低用量:本明細書で使用される「低用量」または「低投与量」とは、作用物質または化
合物の量であって、所与の治療適応のために投与または処方されることが典型的な量未満
である量を指す。一部の実施形態では、細胞傷害剤の低用量とは、がんの処置について、
規制機関により承認されている量より低量の有効用量である。一部の実施形態では、細胞
傷害剤の低用量とは、基準用量より1桁または複数桁低度の用量を指す。一部の実施形態
では、低用量とは、基準用量の2分の1、3分の1、4分の1、5分の1、または6分の
1の用量を指す。一部の実施形態では、低用量の細胞傷害剤の投与は、有効性を減殺せず
に、所望されない副作用の低減または消失を結果としてもたらす。
【0073】
マーカー:本明細書で使用されるマーカーとは、その存在またはレベルが、特定の腫瘍
またはその転移性疾患に特徴的な作用物質を指す。例えば、一部の実施形態では、その用
語は、特定の腫瘍、腫瘍サブクラス、腫瘍の病期などに特徴的な遺伝子発現産物を指す。
代替的にまたは加えて、一部の実施形態では、特定のマーカーの存在またはレベルは、例
えば、特定のクラスの腫瘍に特徴的でありうる、特定のシグナル伝達経路の活性(または
活性レベル)と相関する。マーカーの有無についての統計学的有意性は、特定のマーカー
に応じて変動しうる。一部の実施形態では、マーカーの検出は、腫瘍が特定のサブクラス
の腫瘍である確率の高さをそれが反映する点で、高度に特異的である。このような特異度
は、感度を代償として成立しうる(すなわち、腫瘍が、マーカーを発現することが予測さ
れる腫瘍である場合であってもなお、否定的な結果は生じうる)。逆に、高感度のマーカ
ーは、低感度のマーカーほど特異的でない可能性がある。本発明に従う有用なマーカーは
、特定のサブクラスの腫瘍を、100%の確度で識別する必要はない。
【0074】
代謝物:本明細書で使用される「代謝物」とは、エネルギーを創出または使用する身体
の中の物理的または化学的な過程であって、食物および栄養物質の消化、尿および糞便を
介する排泄物の消失、呼吸、血液の循環、および温度の調節などの過程において産生また
は使用される任意の物質を指す。「代謝物前駆体」という用語は、代謝物がそこから作ら
れる化合物を指す。「代謝産物」という用語は、代謝経路の一部をなす任意の物質(例え
ば、代謝物、代謝物前駆体)を指す。
【0075】
モジュレーター:「モジュレーター」という用語は、目的の活性を観察する系内のその
存在が、この活性のレベルおよび/または性格の変化であって、モジュレーターが非存在
である以外は同等な条件下で観察されるレベルおよび/または性格と比較した変化と相関
する実体を指すのに使用する。一部の実施形態では、モジュレーターは、その存在下では
、活性を、モジュレーターが非存在である以外は同等な条件下で観察される活性と比較し
て増大させるという意味で、活性化因子である。一部の実施形態では、モジュレーターは
、その存在下では、活性を、モジュレーターが非存在である以外は同等な条件と比較して
低減するという意味で、阻害剤である。一部の実施形態では、モジュレーターは、その活
性が目的の活性である標的実体と直接的に相互作用する。一部の実施形態では、モジュレ
ーターは、その活性が目的の活性である標的実体と間接的に(すなわち、標的実体と相互
作用する中間的な作用物質と直接的に)相互作用する。一部の実施形態では、モジュレー
ターは、目的の標的実体のレベルに影響を及ぼし;代替的にまたは加えて、一部の実施形
態では、モジュレーターは、標的実体のレベルに影響を及ぼさずに、目的の標的実体の活
性に影響を及ぼす。一部の実施形態では、モジュレーターは、観察された活性の差違が、
観察されたレベルの差違により完全に説明されたり、これと比例したりしないように、目
的の標的実体のレベルおよび活性の両方に影響を及ぼす。
【0076】
突然変異体:本明細書で使用される「突然変異体」という用語は、基準実体との、顕著
な構造的同一性を示すが、基準実体と比較した、1または複数の化学的部分の存在または
レベルにおいて、基準実体と構造的に異なる実体を指す。多くの実施形態では、突然変異
体はまた、その基準実体と、機能的にも異なる。一般に、特定の実体が、基準実体の「突
然変異体」であると適正に考えられるのかどうかは、その基準実体との、構造的同一性の
程度に基づく。当業者に察知されるであろう通り、任意の生物学的基準実体または化学的
基準実体は、ある特定の特徴的構造エレメントを有する。突然変異体とは、定義により、
1または複数のこのような特徴的構造エレメントを共有する、顕著に異なる化学的実体で
ある。ごく少数の例を示せば、低分子は、低分子の突然変異体が、コアの構造エレメント
と、特徴的ペンダント部分とを共有するが、他のペンダント部分および/またはコア内に
存在する結合の種類(二重結合と対比される一重結合、Z結合と対比されるE結合など)
が異なる突然変異体であるように、特徴的なコアの構造エレメント(例えば、大員環のコ
ア)および/または1もしくは複数の特徴的ペンダント部分を有することが可能であり、
ポリペプチドは、直線上もしくは三次元空間内の、互いに対する指定位置を有し、かつ/
または特定の生物学的機能に寄与する複数のアミノ酸を含む特徴的配列エレメントを有す
ることが可能であり、核酸は、直線上もしくは三次元空間内の、互いに対する指定位置を
有する複数のヌクレオチド残基を含む、特徴的配列エレメントを有しうる。例えば、突然
変異体ポリペプチドは、アミノ酸配列の1もしくは複数の差違、ならびに/またはポリペ
プチド骨格へと共有結合的に接合させた化学的部分(例えば、炭水化物、脂質など)の1
もしくは複数の差違の結果として、基準ポリペプチドと異なりうる。一部の実施形態では
、突然変異体ポリペプチドは、基準ポリペプチドとの全体的な配列同一性であって、少な
くとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、9
4%、95%、96%、97%、または99%である配列同一性を示す。代替的にまたは
加えて、一部の実施形態では、突然変異体ポリペプチドは、少なくとも1つの特徴的配列
エレメントを、基準ポリペプチドと共有しない。一部の実施形態では、基準ポリペプチド
は、1または複数の生物学的活性を有する。一部の実施形態では、突然変異体ポリペプチ
ドは、基準ポリペプチドの生物学的活性のうちの1または複数を共有する。一部の実施形
態では、突然変異体ポリペプチドは、基準ポリペプチドの生物学的活性のうちの1または
複数を欠く。一部の実施形態では、突然変異体ポリペプチドは、1または複数の生物学的
活性のレベルの、基準ポリペプチドと比較した低減を示す。
【0077】
栄養物質が枯渇した:本明細書で使用される「栄養物質が枯渇した」という語句は、1
または複数の必須アミノ酸の遊離レベルが、細胞外空間において低度であるかまたは実質
的に非存在である細胞の微小環境を指す。
【0078】
医薬組成物:本明細書で使用される「医薬組成物」という用語は、1または複数の薬学
的に許容される担体と併せて製剤化された活性作用物質を指す。一部の実施形態では、活
性作用物質は、関連する集団へと投与されると所定の治療効果を達成する統計学的に有意
な確率を示す治療レジメンにおいて、投与に適切な単位投与量で存在する。一部の実施形
態では、医薬組成物は、以下:例えば、飲薬(水溶液もしくは非水溶液または懸濁液)、
錠剤、例えば、口腔内吸収、舌下吸収、および全身吸収にターゲティングされた錠剤、ボ
ーラス、粉末、顆粒、舌へと適用するためのペーストとしての経口投与;例えば、滅菌溶
液もしくは滅菌懸濁液、または持続放出製剤としての非経口投与、例えば、皮下注射、筋
内注射、静脈内注射、または硬膜外注射;例えば、皮膚、肺、または口腔へと適用される
、クリーム、軟膏、もしくは制御放出パッチ、またはスプレーとしての局所適用;例えば
、ペッサリー、クリーム、またはフォームとしての、膣内適用または直腸内適用;舌下適
用;眼内適用;経皮適用;あるいは鼻腔内適用、肺内適用、および他の粘膜表面への適用
に適応させた固体形態または液体形態を含む、固体形態または液体形態における投与のた
めに特化して製剤化することができる。
【0079】
薬学的に許容される:本明細書で使用される「薬学的に許容される」という用語は、穏
当な医学的判断の範囲内で、過剰な毒性、刺激、アレルギー反応、または他の問題もしく
は合併症を伴わずに、ヒトおよび動物の組織と接触させる使用に適し、妥当な有益性/危
険性比に見合った物質を指す。
【0080】
前駆細胞:本明細書で使用される「前駆細胞」という用語は、それが分化を介して生じ
させうる細胞と比べて、より大きな発生の潜在的可能性、すなわち、より始原性の(例え
ば、発生の経路または進行に沿ってより早期の段階にある)細胞表現型を有する細胞を指
す。前駆細胞は、顕著または極めて高度な増殖性の潜在的可能性を有することが多い。前
駆細胞は、発生の経路と、細胞が発生および分化する環境とに応じて、複数の顕著に異な
る細胞であって、発生の潜在的可能性が低度の細胞、すなわち、複数の分化細胞型を生じ
させる場合もあり、単一の分化細胞型を生じさせる場合もある。
【0081】
予後診断情報および予測情報:本明細書で使用される、予後診断情報および予測情報と
いう用語は、処置の非存在下または存在下における、疾患または状態の経過の任意の側面
を指し示すのに使用しうる、任意の情報を指すように互換的に使用される。このような情
報は、患者の平均余命、患者が、所与の量の時間(例えば、6カ月間、1年間、5年間な
ど)にわたり生存する可能性、患者が、疾患から治癒する可能性、患者の疾患が、特定の
治療に応答する(この場合、応答は、様々な方式のうちのいずれかで規定することができ
る)可能性を含むがこれらに限定されない。予後診断情報および予測情報は、診断情報に
ついての広範な類別に含まれる。
【0082】
純粋:本明細書で使用される作用物質または実体は、それが他の成分を実質的に含まな
い場合に「純粋」である。例えば、約90%を超えて特定の作用物質または実体を含有す
る調製物は、純粋な調製物と考えられることが典型的である。一部の実施形態では、作用
物質または実体は、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくと
も94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%
、または少なくとも99%純粋である。
【0083】
基準:本明細書では、「基準」という用語は、それらに対して、目的の作用物質または
値を比較する、標準または対照の、作用物質または値について記載するのに使用されるこ
とが多い。一部の実施形態では、目的の作用物質または値についての試験または決定と実
質的に同時に、基準作用物質または基準値について調べ、かつ/または決定する。一部の
実施形態では、基準作用物質または基準値は、任意選択で、有形のメディアに具体化され
る、通時的基準である。当業者により理解されるであろう通り、基準作用物質または基準
値は、目的の作用物質または値を決定するかまたは特徴づけるのに利用される条件と同等
な条件下で、決定するかまたは特徴づけることが典型的である。
【0084】
応答:本明細書で使用される、処置に対する応答とは、対象の状態の任意の有益な変更
であって、処置の結果として生じるか、または処置と相関する変更を指す場合がある。こ
のような変更は、状態の安定化(例えば、処置の非存在下で生起するであろう増悪の防止
)、状態の症状の改善(amelioration)、および/または状態の治癒の見込
みの改善(improvement)などを含みうる。処置に対する応答とは、対象の応
答を指す場合もあり、腫瘍の応答を指す場合もある。腫瘍の応答または対象の応答は、臨
床的基準および客観的基準を含む、多種多様な基準に従い測定することができる。応答を
評価するための技法は、臨床検査、ポジトロン断層法、胸部X線CT走査、MRI、超音
波、内視鏡法、腹腔鏡法、対象から得られる試料中の、腫瘍マーカーの存在またはレベル
、細胞診、および/または組織学を含むがこれらに限定されない。これらの技法の多くは
、腫瘍のサイズを決定するか、または他の形で総腫瘍負荷を決定しようと試みる。処置に
対する応答を評価するための方法およびガイドラインについては、Therasseら、「New g
uidelines to evaluate the response to treatment in solid tumors」、Euro
pean Organization for Research and Treatment of Cancer、National Cancer
Institute of the United States、National Cancer Institute of Canada、J
. Natl. Cancer Inst.、2000年、92巻(3号):205~216頁において論
じられている。正確な応答基準は、腫瘍および/または患者の群を比較する場合に、比較
される群を、応答率を決定するための同じ基準または同等な基準に基づき評価することを
条件として、任意の適切な形で選択することができる。当業者は、適切な基準を選択する
ことが可能であろう。
【0085】
危険性:文脈から理解されるであろう通り、疾患、障害、または状態の「危険性」とは
、特定の個体が、疾患、障害、または状態を発症する可能性の程度である。一部の実施形
態では、危険性は、百分率として表される。一部の実施形態では、危険性は、0、1、2
、3、4、5、6、7、8、9、10から100%までである。一部の実施形態では、危
険性は、基準試料または基準試料の群と関連する危険性と比べた危険性として表される。
一部の実施形態では、基準試料または基準試料の群は、疾患、障害、または状態について
公知の危険性を有する。一部の実施形態では、基準試料または基準試料の群は、特定の個
体と同等な個体に由来する。一部の実施形態では、相対危険性は、0、1、2、3、4、
5、6、7、8、9、10、またはこれを超える。
【0086】
試料:本明細書で使用される、対象から得られる試料は、以下:細胞(複数可)、組織
の一部、血液、血清、腹水、尿、唾液、および他の体液、分泌物、または排出物のうちの
いずれかまたは全てを含むがこれらに限定されない。「試料」という用語はまた、このよ
うな試料を処理することにより導出される任意の材料も含む。導出された試料は、試料か
ら抽出されるか、または試料を、増幅もしくはmRNAの逆転写などの技法にかけること
により得られる、ヌクレオチド分子またはポリペプチドを含みうる。
【0087】
低分子:本明細書で使用される「低分子」という用語は、低分子量の有機化合物および
/または無機化合物を意味する。一般的に、「低分子」とは、サイズが約5キロダルトン
(kD)未満の分子である。一部の実施形態では、低分子は、約4kD、3kD、約2k
D、または約1kD未満である。一部の実施形態では、低分子は、約800ダルトン(D
)、約600D、約500D、約400D、約300D、約200D、または約100D
未満である。一部の実施形態では、低分子は、1モル当たり約2000g未満、1モル当
たり約1500g未満、1モル当たり約1000g未満、1モル当たり約800g未満、
または1モル当たり約500g未満である。一部の実施形態では、低分子は、ポリマーで
はない。一部の実施形態では、低分子は、ポリマー部分を含まない。一部の実施形態では
、低分子は、タンパク質またはポリペプチドではない(例えば、オリゴペプチドまたはペ
プチドではない)。一部の実施形態では、低分子は、ポリヌクレオチドではない(例えば
、オリゴヌクレオチドではない)。一部の実施形態では、低分子は、多糖ではない。一部
の実施形態では、低分子は、多糖を含まない(例えば、糖タンパク質、プロテオグリカン
、糖脂質などではない)。一部の実施形態では、低分子は、脂質ではない。一部の実施形
態では、低分子は、モジュレーティング剤である。一部の実施形態では、低分子は、生物
学的に活性である。一部の実施形態では、低分子は、検出可能である(例えば、少なくと
も1つの検出用部分を含む)。一部の実施形態では、低分子は、治療用である。
【0088】
特異的:活性を有する作用物質または実体に言及して、本明細書で使用される場合の「
特異的」という用語を、当業者は、作用物質または実体が、潜在的な標的または状態を区
別することを意味すると理解する。例えば、作用物質は、競合する代替的な標的の存在下
で、その標的と優先的に結合する場合に、この標的に「特異的に」結合するという。一部
の実施形態では、作用物質または実体は、その標的への結合条件下で、競合する代替的な
標的に、検出可能な形で結合しない。一部の実施形態では、作用物質または実体は、競合
する代替的な標的と比較して、高オン速度で、低オフ速度で、その標的に対するアフィニ
ティーを増大させて、解離を低下させて、かつ/または安定性を増大させて結合する。
【0089】
対象:「対象」とは、哺乳動物(例えば、一部の実施形態では、出生前のヒト形態を含
むヒト)を意味する。一部の実施形態では、対象は、対象となる疾患、障害、または状態
を患っている。一部の実施形態では、対象は、疾患、障害、または状態に対して感受性で
ある。一部の実施形態では、対象は、疾患、障害、または状態の1または複数の症状また
は特徴を示す。一部の実施形態では、対象は、疾患、障害、または状態の症状または特徴
を示さない。一部の実施形態では、対象は、疾患、障害、または状態に対する感受性また
はこれらの危険性に特徴的な、1または複数の特徴を伴う者である。対象は、疾患を診断
または処置するための医療提供者を訪れる人を指す、患者でありうる。一部の実施形態で
は、対象は、治療が投与される個体である。
【0090】
実質的に:本明細書で使用される「実質的に」という用語は、目的の特徴または特性の
、全てまたはほぼ全ての広がりまたは程度を呈示する定性的条件を指す。生物学的技術分
野の当業者は、生物学的現象および化学的現象が、仮にそうなるとしても、完結に至り、
かつ/もしくは完全性へと進行するか、または絶対的な結果を達成もしくは回避すること
はまれであることを理解するであろう。したがって、本明細書では、「実質的に」という
用語を、多くの生物学的現象および化学的現象に固有の完全性の潜在的欠如を捕捉するの
に使用する。
【0091】
患うこと:疾患、障害、または状態「を患う」個体は、疾患、障害、または状態の1ま
たは複数の症状または特徴を伴い、かつ/またはこれらを呈するかもしくは呈したと診断
されている。
【0092】
感受性:疾患、障害、または状態に「感受性」の個体は、疾患、障害、または状態を発
症する危険性がある。一部の実施形態では、このような個体は、対象となる疾患、障害、
および/または状態の発症の危険性の増大と統計学的に相関する、1または複数の感受性
因子を有することが公知である。一部の実施形態では、疾患、障害、または状態に感受性
の個体は、疾患、障害、または状態の症状を示さない。一部の実施形態では、疾患、障害
、または状態に感受性の個体は、疾患、障害、および/または状態を伴うと診断されてい
ない。一部の実施形態では、疾患、障害、または状態に感受性の個体は、疾患、障害、ま
たは状態の発症と関連する条件へと曝露された個体である。一部の実施形態では、疾患、
障害、および/または状態を発症する危険性は、集団ベースの危険性(例えば、アレルギ
ーを患う個体の家族構成員など)である。
【0093】
症状は低減されている:本発明によると、特定の疾患、障害、または状態の1または複
数の症状の大きさ(例えば、強度、重症度など)および/または頻度が低減されている場
合に、「症状は低減されている」。明確さを目的として述べると、特定の症状の発症の遅
延は、この症状の頻度の低減の一形態と考えられる。例えば、小型の腫瘍を伴う多くのが
ん患者は、症状を有さない。本発明を、症状が消失する症例だけに限定することは意図さ
れていない。本発明は具体的に、1または複数の症状が、完全に消失するわけではないが
、低減される(そして、対象の状態が、これにより「改善」される)ような処置を想定す
る。
【0094】
治療剤:本明細書で使用される「治療剤」という語句は、対象へと投与されると、治療
効果を及ぼし、かつ/または所望の生物学的効果および/もしくは薬理学的効果を誘発す
る、任意の作用物質を指す。
【0095】
治療有効量:本明細書で使用される「治療有効量」という用語は、任意の医学的処置に
適用可能である、妥当な有益性/危険性比で、処置される対象に対して治療効果を付与す
る治療用タンパク質の量を指す。治療効果は、客観的(すなわち、一部の試験またはマー
カーにより測定可能)な場合もあり、主観的な(すなわち、対象が、効果についての徴候
を示すか、またはこれを感じる)場合もある。特に、「治療有効量」とは、治療用タンパ
ク質または治療用組成物の量であって、疾患と関連する症状を改善し、疾患の発症を防止
するかもしくは遅延させ、かつ/または疾患の症状の重症度もしくは頻度もまた低下させ
ることなどにより、所望の疾患もしくは状態を、処置、改善、もしくは防止するか、また
は検出可能な治療的効果もしくは予防的効果を呈するのに有効な量を指す。治療有効量は
一般に、複数の単位用量を含みうる投与レジメンにより投与する。任意の特定の治療的タ
ンパク質では、治療有効量(および/または有効な投与レジメン内の適切な単位用量)は
、例えば、投与経路、他の医作用物質との組合せに応じて変動しうる。任意の特定の患者
に特異的な治療有効量(および/または単位用量)はまた、処置される障害および障害の
重症度;利用される特異的な医作用物質の活性;利用される特異的な組成物;患者の年齢
、体重、全般的な健康、性別、および食餌;利用される特異的な融合タンパク質の、投与
回数、投与経路、および/または排出速度もしくは代謝速度;処置の持続期間;医療技術
分野で周知の同様の因子を含む様々な因子にも依存しうる。
【0096】
毒素療法:本明細書で使用される「毒素療法」という語句は、細胞傷害剤によるがんの
処置を指す。一部の実施形態では、細胞傷害剤は、低分子、タンパク質、ポリペプチド、
抗体、ウイルス、またはこれらの組合せを含む。
【0097】
処置:本明細書で使用される「処置」という用語(「~を処置する」または「~を処置
すること」もまた使用される)は、特定の疾患、障害、および/または状態(例えば、が
ん)を、部分的もしくは完全に緩和し、改善し、和らげ、阻害し、これらの発症を遅延さ
せ、これらの重症度を低減し、かつ/またはこれらの1もしくは複数の症状、特徴、およ
び/もしくは原因の発生率を低減する物質の任意の投与を指す。このような処置は、対象
となる疾患、障害、および/もしくは状態の徴候を呈さない対象、ならびに/または疾患
、障害、および/もしくは状態の早期徴候だけを呈する対象の処置でありうる。代替的に
または加えて、このような処置は、対象となる疾患、障害、および/または状態の、1ま
たは複数の確立された徴候を呈する対象の処置でありうる。一部の実施形態では、処置は
、対象となる疾患、障害、および/または状態を患うと診断された対象の処置でありうる
。一部の実施形態では、処置は、対象となる疾患、障害、および/または状態の発生の危
険性の増大と統計学的に相関する、1または複数の感受性因子を有することが公知である
対象の処置でありうる。
【0098】
単位用量:本明細書で使用される「単位用量」という表現は、単一用量として、または
物理的に個別の単位の医薬組成物により投与される量を指す。多くの実施形態では、単位
用量は、所定量の活性作用物質を含有する。一部の実施形態では、単位用量は、作用物質
の単一用量の全体を含有する。一部の実施形態では、1つを超える単位用量を投与して、
全単一用量を達成する。一部の実施形態では、意図される効果を達成するために、複数の
単位用量の投与が要求されるか、または要求されることが予測される。単位用量は、例え
ば、所定量の、1または複数の治療剤を含有する液体(例えば、許容される担体)の容量
の場合もあり、固体形態にある、1または複数の治療剤の所定量の場合もあり、所定量の
、1または複数の治療剤を含有する、持続放出製剤または薬物送達デバイスなどの場合も
ある。単位用量は、治療剤と代替的に、またはこれに加えて、様々な成分のうちのいずれ
かを含む製剤中に存在しうることが察知されるであろう。例えば、許容される担体(例え
ば、薬学的に許容される担体)、希釈剤、安定化剤、緩衝液、保存剤なども、以下に記載
される通りに、含まれる場合がある。多くの実施形態では、当業者は、特定の治療剤の、
毎日の適切な全投与量は、単位用量の部分または複数の単位用量を含むことが可能であり
、例えば、主治医により、穏当な医学的判断の範囲内で決定されうることを察知するであ
ろう。一部の実施形態では、任意の特定の対象または生物に特異的な有効用量レベルは、
処置される障害および障害の重症度;利用される特異的な活性化合物の活性;利用される
特異的な組成物;対象の年齢、体重、全般的な健康、性別、および食餌;利用される特異
的な活性化合物の、投与回数および排出速度;処置の持続期間;利用される特異的な化合
物と組み合わせて、または同時に使用される薬物またはさらなる治療;および医療技術分
野で周知の同様の因子を含む様々な因子に依存しうる。
【0099】
(特定の実施形態についての詳細な記載)
mTORC1およびmTORC1の阻害
キナーゼであるmTORC1(mammalian target of rapam
ycin complex 1)とは、細胞内の栄養物質レベルを、成長因子によるシグ
ナル伝達からの入力と連携させて、同化的代謝および増殖を刺激する中心的調節因子であ
る(MaおよびBlenis、2009年;ShimobayashiおよびHall、2014年;Zoncuら、2
011年b)。mTORC1は、mTOR自体、Raptor(regulatory-
associated protein of mTOR)、MLST8(mammal
ian lethal with SEC13 protein 8)、PRAS40、
およびDEPTORから構成される。mTORC1活性は厳密に、mTORC1の、リソ
ソーム膜への動員を誘導する、十分なレベルの細胞内アミノ酸に依存する(Haraら、19
98年;Sancakら、2010年)。ここで、mTORC1は、成長因子によるシグナル伝
達からのさらなる入力によっても活性化しうる。活性化したmTORC1は、バイオマス
の発生を協奏的に増強する、複数の標的をリン酸化させる。例えば、S6キナーゼ(S6
K)および4E結合性タンパク質(4E-BP)のリン酸化を介して、mTORC1は、
5’キャップ依存的なタンパク質翻訳を増大させる(MaおよびBlenis、2009年)。逆
に、Unc51様キナーゼ1/2(Ulk1/2)の阻害を介して、mTORC1は、オ
ートファジーを抑制し、これにより、細胞内物質の分解を防止する(HeおよびKlionsky、
2009年;Mizushima、2010年)。これらの手段により、mTORC1は、好適な
成長シグナル、ならびに豊富な栄養物質供給をもたらす環境に応答して、細胞成長を促進
する。
【0100】
本発明は、mTORC1が、哺乳動物細胞が増殖を支援するアミノ酸の供給源として、
細胞外タンパク質を利用する能力を抑制するという知見を包含する。マクロピノサイトー
シスが構成的に活性化されたRas突然変異細胞内であってもなお、mTORC1は、環
境から内在化させたタンパク質の分解を妨げる。mTORC1の阻害は、in vitr
oにおけるアミノ酸の欠乏の間、およびin vivoにおける乏血管性腫瘍領域内のい
ずれにおいても、リソソームにおける細胞外タンパク質の異化を増大させ、細胞の増殖を
促進する。こうして、mTORC1の活性は、細胞外タンパク質の、栄養物質としての利
用を防止することにより、細胞の成長を、遊離アミノ酸の供給とカップリングさせる。
【0101】
アミノ酸は、リソソーム膜へのその動員を誘導することにより、mTORC1活性を調
節し、この影響を及ぼすには、アミノ酸は、リソソームの内腔内に存在しなければならな
いことが提唱されている(Zoncuら、2011年a)。この機構は、リソソームが、細胞
内のアミノ酸センシングにおいて、中心的役割を果たすことを指し示す。後生動物細胞の
リソソームに対応する酵母液胞は、アミノ酸貯蔵部位として機能し、証拠は、哺乳動物の
リソソームもまた、高レベルのアミノ酸を含有することを示唆する(Zoncuら、2011
年b)。したがって、リソソーム膜におけるmTORC1の調節は、細胞が、細胞内アミ
ノ酸のプールを計量することを可能としうるであろう。本開示は、エンドサイトーシスさ
れたタンパク質の、リソソームにおける分解が、それらの単量体形態で環境から移入され
たアミノ酸と同じステップで、mTORC1経路を調節し;いずれの栄養物質も、mTO
RC1の、リソソーム膜への、Ragに依存する動員を誘導し、これが、成長因子による
シグナル伝達を介して、その後続の活性化を可能とする(Kimら、2008年;Sancakら
、2008年)ことを実証する。同様に、オートファジーを介して輸送された細胞内タン
パク質の、リソソームにおける異化も、mTORC1の、この細胞小器官への動員をもた
らす(Yuら、2010年)。リソソームにおけるmTORC1活性の調節は、エンドサイ
トーシスまたはオートファジーを介して輸送されたタンパク質から回収されるアミノ酸を
、細胞がモニタリングすることを可能とする、高感度の機構を構成する。逆に、リソソー
ム膜において活性化すると、mTORC1は、これらの膜トラフィッキング経路による、
リソソームへのカーゴ輸送の調節因子として機能するように、良好に配置されうる。とり
わけ、近年のホスホプロテイノミクススクリーンは、エンドソームへとトラフィッキング
するタンパク質を、特徴づけられていないmTORC1基質の主要なクラスとして識別し
ている(Hsuら、2011年;Yuら、2011年)。
【0102】
mTORC1の阻害剤は、第1世代の阻害剤または第2世代の阻害剤として類別するこ
とができる。第1世代の阻害剤は、例えば、ラパマイシンと、ラパマイシンの類似体とを
含む。ラパマイシンは、最初のmTORC1の阻害剤のうちの1つであったが、細胞質ゾ
ルのFKBP12に結合して、足場分子として作用し、FKBP12が、mTORC1上
のFBP調節領域にドッキングすることを可能とする。ラパマイシンは、それほど水溶性
ではなく、それほど安定的でもないので、可溶性および安定性を改善するように、ラパロ
グと呼ばれるラパマイシン類似体が開発された。近年、mTORC1阻害剤は、腎細胞癌
腫、マントル細胞リンパ腫、および膵臓がんなどのがんに対する処置について承認されて
いる。
【0103】
第2世代のmTORC1阻害剤は、第1世代の阻害剤の、細胞への投与時における、上
流のシグナル伝達に関する問題を克服するようにデザインされた。第1世代のmTORC
1の阻害剤の1つの欠点は、リン酸化を介して、インスリンRTKを阻害しうる、リン酸
化S6Kからの負のフィードバックループである。この負のフィードバックループの活性
が減殺されれば、mTORC1の上流の調節因子の活性がより大きくなる。また、ラパマ
イシンに対して耐性であるmTORC2も、Aktを活性化することにより、mTORC
1の上流において作用しうる。したがって、mTORC1の上流におけるシグナル伝達は
、ラパマイシンおよびラパログを介するその阻害時にも活性を維持しうる。
【0104】
第2世代の阻害剤は、mTORコアタンパク質自体のキナーゼドメイン上のATP結合
性モチーフに結合し、両方のmTOR複合体の活性を消失させることが可能である。加え
て、mTORタンパク質およびPI3Kタンパク質はいずれも、キナーゼの、同じホスフ
ァチジルイノシトール3キナーゼ関連キナーゼ(PIKK)ファミリー内のタンパク質で
あるので、一部の第2世代の阻害剤は、mTOR複合体ならびにPI3Kに対する二重阻
害であって、mTORC1の上流において作用する二重阻害を及ぼす。
【0105】
例示的なmTORC1阻害剤は、ラパマイシン/シロリムス、エベロリムス、テムシロ
リムス、ウミロリムス、ゾタロリムス、デフォロリムス、ウォルトマンニン、TOP-2
16、TAFA93、CCI-779、ABT578、SAR543、アスコマイシン、
FK506、AP23573、AP23464、AP23841、KU-0063794
、INK-128、EX2044、EX3855、EX7518、AZD-8055、A
ZD-2014、Palomid 529、Pp-242、OSI-027などを含むが
これらに限定されない。
【0106】
本開示は、mTOR阻害剤の、がん治療剤としての有効性の不可解な欠如に光を投げか
ける。最近の数年間では、がん処置において、mTORC1経路をターゲティングしよう
と、多大な努力がなされている。これらの研究は、ヒト腫瘍は、一般に、その上流の活性
化因子であるPI3キナーゼ経路内およびRas経路内の突然変異のために、mTORC
1活性の上昇を示すことが多いという観察により動機付けられている(ManningおよびCan
tley、2007年;Pylayeva-Guptaら、2011年;Zoncuら、2011年b)。しかし
、近年の臨床試験は、様々な固形腫瘍における、ラパマイシン類似体(ラパログ)の有効
性が、限定的に過ぎないことを示した(FrumanおよびRommel、2014年;Rodonら、2
013年)。本開示は、mTOR阻害剤の、がん処置における、内因性の弱点を明らかに
する。細胞外に由来するタンパク質の異化を増強することにより、mTOR阻害剤は、細
胞に接近可能な栄養物質の範囲を増大させて、生存を支援し、増殖を維持する。これは、
栄養物質枯渇腫瘍の微小環境内、または腫瘍細胞が新規の代謝的ニッチに適応しなければ
ならない転移時において特に重要でありうる。
【0107】
マクロピノサイトーシス
マクロピノサイトーシスとは、進化において保存された、エンドサイトーシスの非選択
的形態であって、Ras GTPアーゼにより誘発されうる非選択的形態である(Bar-Sa
giおよびFeramisco、1986年;MercerおよびHelenius、2009年)。マクロピノサ
イトーシスは、単細胞のアメーバ様真核生物が、細胞外高分子により生存することを可能
とするが、それが、後生動物細胞の栄養物質獲得において機能するのかどうかは、十分に
理解されていない(Amyereら、2002年)。発がん性のK-Rasシグナル伝達が、マ
クロピノサイトーシスを促進することにより、増殖するがん細胞の、外因性グルタミン供
給への依存性を低減しうることが近年になって示された(Commissoら、2013年)。こ
れは、細胞外タンパク質の異化が、哺乳動物細胞がミトコンドリアバイオエナジェティッ
クスを維持しアポトーシスを抑制することを可能とするアナプレロティック基質をもたら
しうることを示唆する。
【0108】
本開示は、mTORの阻害が、特に、Rasタンパク質の発がん性の活性化を特徴とす
るがんにおけるマクロピノサイトーシスにより細胞外から取り込まれた物質の、リソソー
ムにおける分解/異化を容易としうることを実証する。本開示はさらに、Rasタンパク
質の発がん性の活性化を特徴とするがんが、毒素と組み合わせたmTORC1阻害剤によ
る処置に対して選択的に脆弱でありうることも示す。
【0109】
がんのターゲティング
後生生物の細胞は、外部の鍵因子により、栄養物質の取込みに関与するように命令を受
ける。成長因子によるシグナル伝達経路は、細胞周期の進行を刺激するだけでなく、栄養
物質の取込みも促進し、同化的代謝も誘発し、これにより、細胞の塊を増大させるのに十
分な、高分子の合成のための構成単位の利用可能性を確保する(Thompson、2011年)
。この原理は、形質転換細胞に特徴的な、同化的代謝の調節異常を支援するように、構成
的に活性化させた成長因子によるシグナル伝達に依拠するがん細胞により利用されている
(Vander Heidenら、2009年)。いくつかの成長因子により方向づけられるシグナル
伝達経路は、代謝物トランスポーターの発現または表面への提示を増大させることにより
、低分子量の栄養物質の、細胞による取込みを増強する。例えば、PI3キナーゼ/Ak
tシグナル伝達経路およびRasシグナル伝達経路のいずれも、グルコースの取込みを増
強する(ManningおよびCantley、2007年;Pylayeva-Guptaら、2011年;Yunら、
2009年)。
【0110】
本開示は特に、Rasの発がん性の活性化を特徴とするがんに関し、この場合、がん細
胞は、低酸素環境内および/または栄養物質枯渇環境内に存在する。一部の実施形態では
、がん細胞は、腫瘍サイズに起因する、低酸素環境内および/または栄養物質枯渇環境内
に存在する。一部の実施形態では、がん細胞は、周囲の血管系の欠如(乏血管性)に起因
する、低酸素環境内および/または栄養物質枯渇環境内に存在する。一部の実施形態では
、がん細胞は、転移性細胞である。一部の実施形態では、腫瘍細胞は、膵臓がん細胞であ
る。一部の実施形態では、がん細胞は、Rasの発がん性の活性化を特徴とし、この場合
、Rasの発がん性の活性化は、遺伝子突然変異により引き起こされる、構成的に活性な
Rasを含む。一部の実施形態では、Rasは、KRas、HRas、NRas、および
これらの組合せからなる群から選択される。一部の実施形態では、がん細胞は、K-Ra
sの発がん性の活性化を特徴とする。
【0111】
がんの処置
本開示は特に、Rasの発がん性の活性化を特徴とするがんの処置に関する。一部の実
施形態では、Rasの発がん性の活性化を特徴とするがんの処置は、対象へと、mTOR
C阻害療法と、毒素療法とを含む治療レジメンを投与するステップを含む。一部の実施形
態では、mTORC阻害療法を、毒素療法の前に投与する。一部の実施形態では、mTO
RC阻害療法は、mTORC1阻害剤を含む。
【0112】
一部の実施形態では、がん治療は、Rasの発がん性の活性化を特徴とするがん細胞の
リソソーム内に蓄積するが、リソソームには毒性でない毒素を含む。一部の実施形態では
、がん治療は、リソソーム活性を阻害しない。一部の実施形態では、がん治療は、Ras
の活性化を阻害しない。
【0113】
一部の実施形態では、がん治療は、毒素療法を含み、この場合、毒素は、シクロホスフ
ァミド、クロランブシル、シスプラチン、ブスルファン、メルファラン、カルムスチン、
ストレプトゾトシン、トリエチレンメラミン、マイトマイシンC、メトトレキサート、エ
トポシド、6-メルカプトプリン、6-チオグアニン、シタラビン、5-フルオロウラシ
ル、ダカルバジン、アクチノマイシンD、ドキソルビシン、ダウノルビシン、ブレオマイ
シン、ミトラマイシン、ビンクリスチン、ビンブラスチン、パクリタキセル、パクリタキ
セル誘導体、細胞増殖抑制剤、デキサメタゾン、プレドニゾン、ヒドロキシウレア、アス
パラギナーゼ、ロイコボリン、アミホスチン、ダクチノマイシン、メクロレタミン、スト
レプトゾシン、シクロホスファミド、ロムスチン、リポソーマルドキソルビシン、ゲムシ
タビン、リポソーマルダウノルビシン、プロカルバジン、マイトマイシン、ドセタキセル
、アルデスロイキン、カルボプラチン、オキサリプラチン、クラドリビン、カンプトテシ
ン、CPT11(イリノテカン)、10-ヒドロキシ7-エチル-カンプトテシン(SN
38)、フロクスウリジン、フルダラビン、イホスファミド、イダルビシン、メスナ、イ
ンターフェロンベータ、インターフェロンアルファ、ミトキサントロン、トポテカン、ロ
イプロリド、メゲストロール、メルファラン、メルカプトプリン、プリカマイシン、ミト
タン、ペガスパルガーゼ、ペントスタチン、ピポブロマン、プリカマイシン、タモキシフ
ェン、テニポシド、テストラクトン、チオグアニン、チオテパ、ウラシルマスタード、ビ
ノレルビン、クロランブシル、およびこれらの組合せからなる群から選択される。一部の
実施形態では、毒素療法を、低用量で投与する。
【0114】
本開示はまた、がんの特徴に応じた、がん患者に適切な治療レジメンを決定することに
も関する。一部の実施形態では、がんを、単剤療法としてのmTORC1阻害剤による処
置に好適に応答する可能性が高いがん、例えば、低度の発がん性のRas活性を伴うか、
または発がん性のRas活性を伴わないがんとして識別する。一部の実施形態では、がん
を、単剤療法としてのmTORC1阻害剤による処置に好適に応答しない可能性が高いが
ん、例えば、発がん性のRas活性を伴うがんとして識別する。
【0115】
一部の実施形態では、発がん性のRas活性を伴うがんを、mTORC1阻害剤および
毒素による処置に対して感受性であると識別する。一部の実施形態では、発がん性のRa
s活性を伴うがんを、mTORC1阻害剤と組み合わせた、低用量の毒素に対して選択的
に脆弱であると識別する。
【0116】
腫瘍細胞の識別および/または特徴づけ
本開示は、栄養物質および/または他の物質を、細胞外空間から取り込む、マクロピノ
サイトーシスを利用するがん細胞を識別することに関する。本開示はまた、がんの検出に
適する組成物にも関する。一部の実施形態では、がんの検出に適する組成物は、がん細胞
によるマクロピノサイトーシスのための基質へとコンジュゲートさせたイメージング剤を
含む。一部の実施形態では、本発明に適する組成物はさらに、mTORC1阻害剤も含む
。一部の実施形態では、がんを、in vivoの対象において検出する。一部の実施形
態では、イメージング剤は、金属性である。一部の実施形態では、イメージング剤は、放
射性標識されている。
【0117】
一部の実施形態では、mTORC1阻害剤および毒素を含む治療レジメンを、対象へと
投与して、イメージング剤により、マイクロピノサイトーシスを利用するがんであると識
別されたがんを処置する。
【実施例
【0118】
(例証)
(試薬)
抗体は、Abcam製(ab13524 LAMP2);Cell Signalin
g製(型番:2215 phospho-S240/244 S6、型番:2217 S
6、型番:2280 Raptor、型番:2708 S6K1、型番:2855 ph
ospho-T37/46 4E-BP1、型番:2920 Akt、型番:2983
mTOR、型番:4060 phospho-S473 Akt、型番:4377 ph
ospho-T389 S6K1、型番:4856 phospho-S235/236
S6、型番:6888 phospho-S757 Ulk1、型番:9101 ph
ospho-T202/Y204 Erk1/2、型番:9107 Erk1/2、型番
:9476 Rictor、型番:9552 PTEN、型番:11817 phosp
ho-S476 Grb10)、Dianova製(DIA---310 CD31)、
Santa Cruz製(sc-1026 Grb10)、Vector Labora
tories製(VP-K451 Ki-67)であった。二次抗体は、Life Te
chnologies製(Alexa Fluor 488 anti-rabbit、
Alexa Fluor 555 anti-rat)、GE Healthcare製
(HRP-linked anti-rabbit、HRP-linked anti-
mouse)、Vector Labs製(VectaStain ABC Kit)で
あった。Alexa Fluor 647-BSA、Alexa Fluor 488、
10kDa Dextran、DQ Green BSA、Hoechst 33342
、LysoTracker Red and Prolong Antifade+DA
PIは、Life Technologies製であった。
【0119】
阻害剤は、EMD Chemicals製(ラパマイシン)、Millipore製(
ジャスプラキノリド)、Pfizer製(Rapamune)、Selleck製(BE
Z235、GDC0980)、Sigma製(バフィロマイシンA1、クロロキン、サイ
トカラシンD、EIPA、ゲニステイン、IPA-3、ロイペプチン、E-64、ペプス
タチン A、ウォルトマンニン)、Stemgent製(PD0325901)、Toc
ris Bioscience製(PD98059、トリン1)であった。非必須アミノ
酸(M7145)、必須アミノ酸(M5550)、およびウシ血清アルブミン(A147
0)は、Sigma製であった。
【0120】
(細胞株、shRNA構築物およびcDNA構築物の安定的なトランスフェクション)
アデノウイルス5-サイトメガロウイルス-Cre(Iowa Gene Trans
fer Core)の感染により、Creを、SV40ラージT不死化Lox-Stop
-Lox-K-RasG12D MEFおよび野生型対照MEF(Tuvesonら、2004
年)へと導入した。2mlの培養培地中の細胞200,000個に、懸濁液中で、細胞1
個当たり1,000pfuのアデノウイルスCreを感染させ、6ウェルプレートに播種
した。6時間後に感染を繰り返し、12時間後に、培地を、ウイルス非含有培地で置きか
えた。K-RasG12Dの発現をもたらす、転写終結配列の切出しの成功は、PCRに
より確認した。
【0121】
誘導的発現のために、K-RasG12V cDNAおよびH-RasG12V cD
NAを、レトロウイルスベクターであるpTRE-Tight(Clonetech)の
改変形(Zuberら、2011年)へとサブクローニングした。cDNAの発現は、50n
g/mlのドキシサイクリン(Sigma)の、培養培地への添加により誘導した。Sr
cミリストイル化配列を含有するマウスAkt-1(myr-Akt)であって、レトロ
ウイルスベクターであるMIGR1内のN末端へと融合させたmyr-Aktについては
、既に記載されている(EdingerおよびThompson、2002年)。Lipofectam
in 2000 Transfection Reagent(Life Techno
logies)を使用して、プラスミドを、プラスミドをパッケージングするレトロウイ
ルスと共に、HEK293T細胞へと共トランスフェクトし、16時間後に新鮮培地を添
加し、48時間後にウイルス上清を回収した。SV40ラージT不死化野生型MEFに、
ウイルス上清および4μg/mlのポリブレンにより感染させ、ハイグロマイシン(pT
RE-tightベースの構築物の場合)またはGFP発現細胞の蛍光支援分取(MIG
R1ベースの構築物の場合)で選択した。
【0122】
shRNAにより媒介されるノックダウンは、以下のレンチウイルスヘアピンまたはレ
トロウイルスヘアピン:RagA TRCN0000077493、TRCN00000
77496、RagB TRCN0000102655、TRCN0000102657
(RNAi Consortium shRNA Library);Raptor A
ddgeneプラスミド213390、Rictor Addgeneプラスミド213
41(Thoreenら、2009年);PTEN(Fellmannら、2011年)を発現させるこ
とにより誘導した。Lipofectamin 2000 Transfection
Reagent(Life Technologies)を使用して、プラスミドを、レ
ンチウイルスまたはプラスミドをパッケージングするレトロウイルスと共に、HEK29
3T細胞へと共トランスフェクトし、16時間後に新鮮培地を添加し、48時間後にウイ
ルス上清を回収した。標的細胞に、ウイルス上清および10μg/mlのポリブレンを添
加することにより感染させた。感染の24時間後、細胞を、ピューロマイシンにより選択
し、選択の2~3日後に、実験を行った。
【0123】
(ウェスタンブロット法)
細胞を、氷冷PBSですすぎ、氷冷トリプシン(0.05%)を伴うインキュベーショ
ンにより、培養プレートから引き剥がした。トリプシンを、氷冷血清で不活化させ、細胞
をペレット化させ、氷冷PBSですすいだ。細胞を、氷冷溶解緩衝液[50mMのHEP
ES、pH7.4、40mMのNaCl2、2mMのEDTA、1mMのオルトバナジン
酸Na、50mMのNaF、10mMのピロリン酸Na、10mMのグリセロリン酸Na
、1%Triton X-100、1倍濃度のHaltプロテアーゼ/ホスファターゼ阻
害剤カクテル(Thermo Scientific)]中で、15分間にわたり溶解さ
せ、可溶性の溶解物画分を、16,000gで10分間にわたる遠心分離により単離した
。タンパク質濃度を、Pierce BCA Protein Assay(Therm
o Scientific)により決定し、等量のタンパク質を、標準的なプロトコール
に従いSDSゲル電気泳動およびウェスタンブロット法により解析した。
【0124】
(蛍光顕微鏡法)
免疫染色のために、細胞を、氷冷PBSですすぎ、PBS中に4%のホルムアルデヒド
で、15分間にわたり固定し、PBS中に0.05%のTriton X-100で透過
化させた。PBSによるすすぎの後、細胞を、PBG(PBS中に0.5%のBSA、0
.2%の冷水用魚類ゼラチン)で、30分間にわたりブロッキングし、PBG中の一次抗
体と共に、1.5時間にわたりインキュベートし、PBG+4%の通常のヤギ血清で、2
回にわたり洗浄し、次いで、PBG+4%のNGS中の二次抗体と共に、45分間にわた
りインキュベートした。PBSで3回にわたる洗浄の後、細胞を、Prolong An
tifade+DAPIと共に、顕微鏡スライド上にマウントし、Leica TCS
SP5-IIを使用してイメージングした。
【0125】
ライブイメージングのために、培地に、0.3mg/mlのDQ Green BSA
を補充した。イメージングの1時間前に、50nMのLysoTracker Redお
よび0.2μg/mlのHoechstを添加した。細胞を、DQ-BSAおよびトリン
1を添加した直後、またはインキュベーションの5~6時間後に、Zeiss LSM
5 LIVEを使用してイメージングした。
【0126】
(免疫組織化学)
組織は、10%の中性緩衝ホルマリン中で、24時間にわたり固定し、70%のエタノ
ールへと移した。標準的なプロトコールを使用して、パラフィン包埋組織を切片化し、免
疫組織化学のために加工した。Perkin Elmer Panoramic Sca
nnerを使用して、画像を収集した。増殖指数は、各試料について、6つのランダムに
選び出された視野であって、外部および内部/CD-31陰性の各腫瘍領域の視野内の、
Ki-67陽性腫瘍細胞の画分を定量化することにより決定した。
【0127】
(タンパク質および脂質の14C-ロイシンによる標識付け)
細胞を、0.5μCi(0.4%)のL-[14C(U)]-ロイシン(Perkin
Elmer)を含有する完全培地中で、24時間にわたり培養した。ブライト-ダイヤ
ー法(BlighおよびDyer、1959年)に本質的に従い、全脂質画分および全タンパク質
画分を単離した。タンパク質ペレットを、6Mのグアニジン塩酸塩中に再可溶化させ、次
いで、シンチレーション液へと移した。有機相に溶存させた脂質を、シンチレーションバ
イアルへと移し、溶媒を蒸発させた後で、シンチレーション液中に再懸濁させた。タンパ
ク質および脂質の14C-ロイシン含量は、シンチレーションカウンティングにより定量
化した。
【0128】
(細胞培養実験および栄養物質飢餓実験)
細胞培養実験は、10%の透析FBS(分子量カットオフ10,000;Gemini
Biosystems)、100U/mLのペニシリン、100μg/mLのストレプ
トマイシン、5mMのグルコース、および2mMのグルタミンを伴うDMEM/F12中
、37℃および5%のCO2で実施した。増殖アッセイのために、MEFを、完全培地中
に播種し、5時間後、短時間にわたりすすぎ、次いで、表示の飢餓培地中で培養した。E
AA滴定実験のために、1倍濃度のMEMアミノ酸溶液(M5550、Sigma)を、
表示の百分率として、EAAを補充した。がん細胞株を、飢餓の前に、完全培地中で、1
日間にわたり培養した。Trypan Blue除外法により評価される通り、生細胞が
>95%である接着細胞の数は、Multisizer 4 Coulter Coun
ter(Beckman)を使用して決定した。mTOR活性化/局在化実験のために、
細胞をすすぎ、次いで、EAA飢餓培地(グルタミンを除く全てのアミノ酸を欠くDME
M/F12)中、1時間にわたりインキュベートし、その後、EAA(1倍濃度のMEM
アミノ酸溶液)、アルブミン(そうでないことが陳述されない限り、3%)、または新鮮
EAA非含有飢餓培地を補充した培地中で、表示の期間にわたり静置した。
【0129】
(マウス株およびラパマイシン処理)
KPCマウスモデル(LSL-K-RasG12D/+;LSL-Trp53R172
H/+;Pdx-1-Cre)については、既に記載されている(Hingoraniら、200
5年)。KPCマウスは、100%の浸透率で、進行性および転移性のPDAを発症し、
ヒトPDAの組織病理学的特徴および臨床的特徴を再現している。マウスは、12時間の
明期/12時間の暗期で飼育した。全ての手順は、Institutional Ani
mal Care and Use Committee at CSHLに従い行った
。超音波(Vevo software、Visualsonics)により決定される
通り、同等なサイズ(直径7~9mm、n=5)の腫瘍が確立されたKPCマウスを、5
mg/kgのRapamune(Pfizer)または生理食塩液(媒体対照)を伴う経
口強制投与により、毎日8日間にわたり処置した。最終回のRapamune投与は、終
了時点の4時間前に施した。腫瘍容量は、処置の4日目および7日目に撮影した3d超音
波画像から測定した。
【0130】
(統計学的解析)
P値は、培養細胞の増殖実験および蛍光顕微鏡法実験のためには、対応のない両側t検
定を使用して計算し、マウスの腫瘍を解析するためには、マン-ホイットニーノンパラメ
トリックt検定を使用して計算した。
【0131】
(細胞外タンパク質に対する、Rasにより方向づけられるマクロピノサイトーシスは
、必須アミノ酸飢餓時における、細胞の生存率および増殖を維持しうる)
K-Rasシグナル伝達の活性化が、細胞外タンパク質を代謝する細胞の能力を変更す
るのかどうかについて探索するため、本発明者らは、野生型K-Ras対立遺伝子または
構成的に活性なK-RasG12D対立遺伝子を有する不死化マウス胚性線維芽細胞(M
EF)を比較した。アルブミンは、血漿中および間質液中の主要なタンパク質であり、そ
のレベルは、2~5%の範囲にわたる。したがって、細胞外液の、タンパク質に富む組成
を模倣するために、培養培地に、10%の透析ウシ胎仔血清±3%のアルブミンを補充し
た。グルコース非含有培地中に入れたところ、野生型MEFおよびK-RasG12D
MEFのいずれも、3%のアルブミンの存在に関わらず、増殖を停止させた(図1A)。
細胞を、非必須アミノ酸(NEAA)飢餓にかけたところ、アルブミンの補充は、生存率
をわずかに改善した。細胞を、単一のNEAAであるグルタミンを欠く培地に入れたとこ
ろ、アルブミンの補充は、わずかな程度ではあるが、K-RasG12D MEFの細胞
数の増大を可能とした。
【0132】
上記の結果とは対照的に、3%のアルブミンの添加は、全ての必須アミノ酸(EAA)
を欠く培地中で、細胞の生存の目覚ましいレスキューを引き起こした(図1A図2A
。アルブミンおよび哺乳動物のプロテオームのいずれにおいても最も豊富なアミノ酸であ
る、単一のEAAであるロイシンについて飢餓させたところ、生存率は、アルブミンの補
充により、完全に回復した(図1A)。K-RasG12D MEFは、3%のアルブミ
ンを含有するロイシン非含有培地中の増殖を維持することが可能であり、細胞数は、連続
数日間にわたり増大した(図1B)。増殖する細胞は、タンパク質合成を支援するのに、
外因性供給源からロイシンを獲得しなければならないため、これらの結果は、K-Ras
G12D MEFが、ロイシンを、細胞外タンパク質から導出しうることを示唆する。し
かし、アミノ酸欠損培地へのアルブミンの補充が維持しうるのは、アミノ酸が豊富な培地
と比較して限定的な細胞増殖だけである(図1A)。
【0133】
Ras以外に、PI3キナーゼ/Aktシグナル伝達は、栄養物質の取込みに関与する
ように細胞に命令する、第2の鍵となる経路である(ManningおよびCantley、2007年
)。しかし、ミリストイル化Akt1 shRNAまたはPTEN shRNAの発現は
、ロイシン非含有培地へのアルブミンの補充に対する細胞の応答を改善しなかった(図1
C、図2B)。これに対し、構成的に活性なK-RasG12VまたはH-RasG12
の発現の誘導が、これらの条件下における増殖を支援したこと(図2C、D)は、本発
明者らが、内因性K-RasG12D対立遺伝子を有するMEF内で観察したことと符合
する。構成的に活性化させたRasシグナル伝達が、タンパク質に富むが、アミノ酸を欠
損する培地中で、中程度レベルの増殖を維持する能力は、Ras GTPアーゼが、マク
ロピノサイトーシスを増強する共通の能力と符合する。
【0134】
発がん性のRasシグナル伝達が、それにより飢餓時における細胞の生存率を維持する
と提起されている1つの機構は、細胞内高分子の異化から栄養物質を回収するオートファ
ジーの増大(Pylayeva-Guptaら、2011年)である。細胞外タンパク質を、栄養物質供
給源として利用する細胞増殖におけるオートファジーの役割について検討するため、オー
トファジー誘発性キナーゼであるUlk1/2についての要件を決定した。野生型MEF
およびK-RasG12VまたはH-RasG12Vを発現するUlk1/2二重ノック
アウト(DKO)MEFは、3%のアルブミンを、外因性アミノ酸供給源として添加した
ところ、ロイシン非含有培地中の増殖を維持することができた(図2E、F)。Ulk1
/2の喪失は、細胞外タンパク質に依存する細胞増殖を損わなかった。それどころか、U
lk1/2 DKO MEFは、野生型対照より顕著に高速度で増殖した。したがって、
オートファジー誘発性キナーゼであるUlk1/2は、細胞外タンパク質の栄養物質とし
ての利用に必ずしも必要ではないだけでなく、Ulk1/2に依存するオートファジーの
喪失は、実際に、Ras突然変異細胞がこれらの栄養条件下で増殖する能力を改善してい
る。
【0135】
次に、アルブミンが、低減量の全EAAを含有する培地中の細胞増殖を支援するのかど
うかについて査定した。EAAを、完全培地中に存在するレベルの5%で供給したところ
、野生型MEFおよびK-RasG12D MEFは増殖を停止し、時間経過と共に、生
存率を低下させた(図3A)。3%のアルブミンの添加は、野生型MEFの生存を改善し
たが、それらの増殖は支援しなかった。これに対し、アルブミンの補充は、K-Ras
12D MEFの増殖の顕著な増大を引き起こした。
【0136】
10%の透析血清中にもたらされたタンパク質は、EAA飢餓時の細胞増殖を促進する
のに十分ではなかったので、これらの条件下における増殖に要求されるアルブミンの濃度
を決定した。低EAA培地中で培養された野生型MEFは、アルブミンレベルの上昇(1
~3%)に応答して、生存率の改善を示した(図4A)。K-RasG12D MEFは
、少なくとも1%のアルブミンを添加したところ、増殖を維持し、それらの増殖速度は、
アルブミン濃度を3%へと上昇させるにつれて、徐々に増大した(図3B)。したがって
、アルブミンは、EAA欠損培地中の細胞の生存および増殖を支援するには、生理学的レ
ベルで供給しなければならない。これは、細胞の培養において一般に使用される、タンパ
ク質に乏しい培地処方が、MEFが、EAA飢餓時に増殖するのに十分ではないのはなぜ
なのかを説明しうる。
【0137】
細胞が、細胞外タンパク質からロイシンを、どのようにして導出するのかを特徴づける
ために、構成的に蛍光発光性のアルブミンを使用して、細胞へのアルブミンの取込みにつ
いて探索し、分解されると蛍光を発する自己消光アルブミン(DQ-BSA)を使用して
、細胞内のアルブミンのタンパク質分解について探索した(Reisら、1998年)。標識
取込みの1.5時間後に、K-RasG12D MEFは、アルブミンおよびDQ-BS
Aの両方でマーキングされた、複数の細胞内構造を示した(図3C)。リソソームプロテ
アーゼ阻害剤を添加したところ、アルブミンの内在化は撹乱されなかったが、DQ-BS
A蛍光の大幅な減少が引き起こされた。次いで、リソソームにおけるアルブミンの分解が
、ロイシン飢餓時の増殖を支援するのに要求されるのかどうかを決定した。実際、リソソ
ームプロテアーゼ阻害剤またはリソソーム酸性化阻害剤であるクロロキンは、3%のアル
ブミンを含有するロイシン非含有培地中のK-RasG12D MEFの増殖を抑制した
図3D、4B)。Ras GTPアーゼは、マクロピノサイトーシスによる、細胞への
高分子の取込みを促進しうる(Bar-SagiおよびFeramisco、1986年)。一貫して、K
-RasG12D MEFは、野生型対照より高度なマクロピノサイトーシス活性を示し
た(図4C)。このエンドサイトーシス経路が、アルブミンに依存する増殖に寄与するの
かどうかについて探索するため、細胞を、マクロピノサイトーシス経路は遮断するが、他
のエンドサイトーシス経路は遮断しない(Westら、1989年)、Na/H交換阻害
剤であるEIPAで処理した。ロイシン非含有培地+3%のアルブミン中の細胞増殖は、
EIPA処理により大幅に減少したが、遊離ロイシンを、培養培地へと添加したところ、
回復した(図3E)。まとめると、これらのデータは、細胞外タンパク質の、マクロピノ
サイトーシスによる取込みと、リソソームにおける分解とが、EAA飢餓時の栄養的利益
をもたらしうることを示す。
【0138】
(細胞外タンパク質の異化は、mTORC1のリソソームへの動員および活性化を誘導
する)
細胞は、アミノ酸レベルを、成長因子によるシグナル伝達からの入力と統合して、細胞
増殖を促進する、mTORC1経路を介して、EAAを感知しうる(MaおよびBlenis、2
009年;ShimobayashiおよびHall、2014年)。細胞を、EAA非含有培地中に入れ
ると、mTORC1が、下流の標的をリン酸化する能力が抑制される。細胞外にもたらさ
れるタンパク質の異化が、EAAの非存在下で、mTORC1活性を回復させるのかどう
かについて調べるため、MEFを、1時間にわたるEAA飢餓下に置くことにより、mT
ORC1を不活化させた。次いで、EAAまたは異なる濃度のアルブミンを含有する新鮮
培地を添加し、mTORC1の再活性化を、リン酸化S6K1に対するウェスタンブロッ
ト法により評価した。EAA非含有培地に、1~3%のアルブミンを補充したところ、野
生型MEFおよびK-RasG12D MEFのいずれにおいても、S6K1リン酸化の
、濃度依存的な増大が引き起こされたが、これは、mTOR阻害剤であるトリン1により
完全に抑制された(図6A)。したがって、生理学的レベルのアルブミンは、mTORC
1経路を活性化させうる。野生型MEFおよびK-RasG12D MEFは、EAAに
応答して、同等なmTORC1の活性化を呈したが、3%のアルブミンを添加したところ
、高mTORC1活性を示したのは、K-RasG12D MEFであった(図5A)。
同様に、H-RasG12Vの発現も、アルブミンに応答して、mTORC1活性を増大
させた(図6B)。逆に、sh-RNAにより媒介されるPTENの枯渇を介するPI3
キナーゼ/Aktシグナル伝達の上昇は、EAAによるmTORC1の活性化を増大させ
たが、アルブミンによるmTORC1の活性化は増大させなかった(図6C)。これらの
データは、Rasシグナル伝達が、経路の成長因子に調節される分枝ではなく、アミノ酸
を感知する分枝を介し、アルブミン刺激に応答して、mTORC1の活性化を増強するこ
とを示唆する。
【0139】
細胞外にもたらされるEAAは、膜貫通トランスポーターを介して、細胞により急速に
取り込まれ、数分以内にmTORC1を活性化させる(Nicklinら、2009年)。細胞
外タンパク質による、mTORC1経路活性化の反応速度について検討するため、アルブ
ミン刺激に応答したmTORC1の再活性化を、時間経過と共に追跡した。EAAの再添
加は、S6K1、Grb10、およびUlk1など、mTORC1の標的のほか、S6K
の標的である、リボソームタンパク質のS6の急速なリン酸化を引き起こした(図3B
6D)(Kangら、2013年;Nicklinら、2009年)。これに対し、アルブミンに応
答して、これらのタンパク質の、mTORC1に依存するリン酸化が再開されたのは、2
時間後に過ぎず、最高レベルに達したのは、4時間後であった。したがって、細胞外タン
パク質は、EAAより緩徐にmTORC1経路を活性化させることから、これらの栄養物
質によるmTORC1の活性化には、顕著に異なる細胞過程が関与していることが示唆さ
れる。
【0140】
次いで、マクロピノサイトーシスと、リソソームにおけるタンパク質分解とが、細胞外
タンパク質によるmTORC1の活性化に要求されるのかどうかを決定した。リソソーム
酸性化阻害剤である、バフィロマイシンA1およびクロロキンは、EAAによるmTOR
C1の活性化を撹乱しなかった(図5C、6E)。これに対し、低濃度のいずれの阻害剤
でもなお、mTORC1の、アルブミンに依存する活性化を、大幅に抑制した。同様に、
プロテアーゼ阻害剤も、アルブミンによる刺激に応答する、mTORC1の活性化を遮断
した(図5D)。マクロピノサイトーシスが関与することを確立するために、マクロピノ
サイトーシスの薬理学的阻害剤であって、Na/H交換阻害剤であるEIPA、Pa
k1阻害剤であるIPA-3、ならびにアクチン阻害剤である、ジャスプラキノリドおよ
びサイトカラシンD(MercerおよびHelenius、2009年)を含む阻害剤の効果について
探索した。これらの阻害剤の全ては、アルブミンの添加によるmTORC1の活性化を大
幅に低減したが、EAAの再添加によるmTORC1の活性化は低減しなかった(図5E
、F;6F、G)。
【0141】
アミノ酸は、リソソーム膜へのその移動を誘導することにより、mTORC1へとシグ
ナルを伝達するが、そこで、mTORC1は、成長因子によるシグナル伝達からのさらな
る入力により活性化しうる(Sancakら、2010年)。細胞外タンパク質も同様に、リソ
ソームへのその動員を誘導することにより、mTORC1を調節するのかどうかを決定す
るために、K-RasG12D MEFを、1時間にわたるEAA飢餓にかけ、EAAま
たは3%のアルブミンを再供給し、mTORキナーゼの細胞内局在化を、免疫蛍光法でモ
ニタリングした。mTORは、EAA飢餓細胞内の細胞質全体に分布した。アルブミンを
添加したところ、mTORは、リソソーム膜タンパク質であるLAMP2によりマーキン
グされた点状構造であって、遊離EAAの再添加時に観察されるパターンと同様の点状構
造へと局在化した(図7A)。リソソームにおけるタンパク質分解を、バフィロマイシン
A1で阻害したところ、アルブミンに応答する、mTORの、リソソーム膜への移動が完
全に遮断されたが、EAAに応答する、mTORの、リソソーム膜への移動は遮断されな
かった(図7B)。
【0142】
EAAは、リソソームと会合するRagGTPアーゼを要求する機構を介して、mTO
RC1の、リソソーム膜への移動を誘導する(Kimら、2008年;Sancakら、2008
年)。これに対し、グルタミンは、Ragに依存しない機構により、mTORC1を活性
化させうる(Jewellら、2015年)。リソソームにおけるアルブミンのタンパク質分解
を介するmTORC1の活性化が、Rag GTPアーゼに依存したのかどうかについて
探索するため、shRNAにより媒介されるRagAおよびRagBのノックダウンの帰
結を決定した。RagA/Bの枯渇は、培地が、アルブミンを含有したのか、EAAを含
有したのかに関わらず、mTORの、細胞質ゾル全体への拡散性の局在化を結果としても
たらした(図7C)。一貫して、RagA/Bノックダウン細胞内では、アルブミンも、
EAAも、mTORC1に依存するS6K1のリン酸化を誘導しえなかった(図8)。し
たがって、細胞外タンパク質およびEAAのいずれも、Rag依存性機構を介して、mT
ORC1を活性化させる。
【0143】
(mTORC1は、栄養物質としての細胞外タンパク質に依拠する細胞増殖を抑制する

細胞外タンパク質をアミノ酸供給源として利用する細胞の能力に寄与する、Rasの下
流のシグナル伝達経路について検討するため、MEK1/2、PI3キナーゼ、チロシン
キナーゼに対する阻害剤およびmTOR阻害剤の、3%のアルブミンを加えたロイシン非
含有培地中でのK-RasG12D MEFの増殖に対する効果を決定した。驚くべきこ
とに、mTORの阻害は、アルブミンを補充したロイシン非含有培地中の細胞増殖を遅延
させなかった。それどころか、mTOR/PI3キナーゼ二重阻害剤を含む、mTOR阻
害剤の各々は、これらの条件下で増殖を増強した(図9A、左パネル、図10A)が、m
TORシグナル伝達活性は、効果的に遮断した(図9B)。これに対し、MAPキナーゼ
、PI3キナーゼ、またはチロシンキナーゼによるシグナル伝達に対する阻害は、ロイシ
ン非含有培地中の細胞増殖を、わずかに減少させた(図9A、左パネル)。これらのキナ
ーゼ阻害剤の効果は、ロイシン含有培地中では異なり、この場合、mTORの阻害は、細
胞増殖の抑制として特に効果的であった(図9A、右パネル)。次に、mTOR阻害剤の
、細胞増殖に対する濃度依存的な効果について検討した。トリン1の濃度を、50から3
00nMへと上昇させることにより、ロイシン非含有培地+3%のアルブミン中の細胞増
殖が徐々に改善されたことから、細胞が、アルブミンを、ロイシンの供給源として使用す
る場合、増殖は、mTORシグナル伝達活性と逆相関することが示唆される(図9C)。
これに対し、遊離ロイシンが細胞外にもたらされた場合、細胞の増殖は、顕著に高度とな
ったが、用量を増大させるトリン1により低下した(図10B)。同様に、トリン1によ
る処理は、活性化Ras突然変異を有するいくつかの癌細胞株を、ロイシン非含有培地+
3%のアルブミン中で増殖するように誘導する一方で、ロイシン含有培地中のそれらの増
殖は、大幅に減少させた(図10C)。アルブミンは、全てのタンパク質原性アミノ酸の
混合物をもたらすので、アルブミンが、他の単一のEAA(イソロイシン、リジン、また
はアルギニン)を欠く培地中の細胞の生存/増殖を支援するのかどうかについてもまた検
討した。実際、生理学的レベルのアルブミンは、細胞の生存率をレスキューし、mTOR
シグナル伝達の、トリン1による阻害は、細胞が、これらのEAAを欠く培地中で頑健に
増殖するように誘導した(図10D)。
【0144】
mTORキナーゼは、2つの顕著に異なる複合体:栄養物質および成長因子によるシグ
ナル伝達に応答して、増殖を調節するmTORC1と、PI-3キナーゼによるシグナル
伝達経路の構成要素である、mTORC2とにおいて存在する(ShimobayashiおよびHall
、2014年)。アルブミンに依存する増殖の調節におけるそれらの役割について精査す
るため、必須のmTORC1構成要素であるRaptor、または必須のmTORC2構
成要素であるRictorを、shRNAにより媒介されるノックダウンにより、K-R
asG12D MEF内で枯渇させた(図10E)。Rictorのノックダウンは、3
%のアルブミンの存在に関わらず、ロイシン欠乏の間における細胞増殖を増強しなかった
図9D、E)。これに対し、Raptorのノックダウンは、アルブミンを補充したロ
イシン非含有培地中のK-RasG12D MEFの増殖の劇的な増大を引き起こし、細
胞はほぼ、1日当たり1回の集団の倍加を経た。したがって、mTORC1は、アミノ酸
供給源としての細胞外タンパク質に依拠する細胞増殖の負の調節因子である。
【0145】
(mTORC1の阻害は、リソソームにおける内在化したアルブミンの分解を増強する

細胞外タンパク質からのロイシンの回収は、ロイシン非含有培地中の細胞増殖について
の律速段階を構成すると考えられた。これは、mTORC1が、細胞外タンパク質のアミ
ノ酸内容物への細胞の接近を制限し、考えられるところでは、それらのエンドサイトーシ
スまたはリソソームにおける分解を遮断することにより、細胞外タンパク質に依存する増
殖を抑制することを示唆した。これらの可能性を識別するため、まず、mTORC1の阻
害が、細胞外高分子の内在化を増大させるのかどうかについて調べた。しかし、トリン1
のノックダウンも、Raptorのノックダウンも、蛍光標識されたデキストランまたは
アルブミンの、細胞への取込みを上昇させなかったことから、mTORC1シグナル伝達
は、細胞外高分子のバルクの内在化を阻害しないことが指し示される(図12A~C)。
次に、mTORC1の阻害が、リソソームにおける内在化タンパク質の分解に影響を及ぼ
すのかどうかについて検討した。K-RasG12D MEFを、DQ-BSAとリソソ
ームをマーキングするためのLysoTracker±トリン1とを含有する培地中に入
れ、リソソームにおけるDQ-BSAのタンパク質分解により発生する蛍光シグナルを、
時間経過と共に追跡した。mTORの阻害は、DQ-BSAの分解の増強を示す、DQ-
BSAの蛍光の消光解除の劇的な増大を引き起こした(図11A、B)。同様に、Rap
torのノックダウンによる、mTORC1の阻害も、細胞内のDQ-BSA蛍光を増大
させた(図12D)。リソソームにおけるタンパク質分解の、クロロキンまたはリソソー
ムプロテアーゼ阻害剤による遮断は、トリン1処理細胞内のDQ-BSA分解を無効化さ
せた(図12E)。したがって、mTORC1は、環境から取り込まれたタンパク質の、
リソソームにおける分解を、負に調節する。
【0146】
Rasシグナル伝達およびmTORC1シグナル伝達が、リソソームにおける内在化タ
ンパク質の分解を、どのようにして調節したのかについてさらに探索するため、mTOR
C1の阻害の効果と、K-Rasの活性化の効果とを比較した。野生型MEFにおける、
mTORC1の、トリン1による阻害は、DQ-BSA蛍光の顕著な増大を引き起こした
図11C、D)。同様に、構成的に活性なK-RasG12D突然変異を有するMEF
は、野生型MEFより高度なDQ-BSA分解を示した。トリン1処理の、構成的なK-
Rasの活性化との組合せは、相乗作用的効果がもたらされ、いずれかの操作単独のほぼ
4倍を超えて、DQ-BSAのタンパク質分解を増大させた。したがって、K-Rasは
、細胞外タンパク質を取り込み、分解する細胞の能力を増強する。これに対し、mTOR
C1は、リソソームにおけるそれらの分解を特異的に制限する。
【0147】
mTORC1シグナル伝達が内在化タンパク質の分解を妨げうる、1つの機構は、エン
ドサイトーシスまたはリソソームの生合成に関与する遺伝子の発現を抑制することである
(ShimobayashiおよびHall、2014年)。mTORC1の阻害が、転写の変化の二次効
果によるDQ-BSA分解を増強するのかどうかについて取り組むため、mTORC1阻
害剤が、それらの効果を及ぼすときの時間枠を決定した。K-RasG12D MEFの
、トリン1による、6時間または16時間にわたる前処理は、DQ-BSA分解の速度を
増大させなかった(図12F)。さらに、転写を、アクチノマイシンDまたはトリプトリ
ドにより遮断しても、トリン1に誘導されるDQ-BSA蛍光の増大は、影響を受けなか
った(図12G)。したがって、リソソームにおける内在化タンパク質の分解は、mTO
RC1の阻害に対する、細胞内の即時的応答である。細胞内構成要素の、オートファジー
による貪食および分解は、栄養物質が豊富な条件下では、オートファジー誘発性キナーゼ
であるUlk1/2の阻害を介して、mTORC1により抑制される(HeおよびKlionsky
、2009年;Mizushima、2010年)。エンドサイトーシスと、オートファジーとは
、いずれも、高分子をリソソームへと輸送する、小胞のトラフィッキング経路であるので
、Ulk1/2欠失の、DQ-BSAタンパク質分解に対する帰結について検討した。U
lk1/2野生型MEFと、K-RasG12Vを発現するUlk1/2 DKO ME
Fとは、DQ-BSAを、同様の速度で分解し、トリン1処理に対して、DQ-BSAタ
ンパク質分解の同等な増大により応答した(図12H)。さらに、トリン1は、3%のア
ルブミンを含有するロイシン非含有培地中の、Ulk1/2 DKO MEFの増殖も増
強した(図12I)。したがって、mTORC1は、リソソームにおける細胞外タンパク
質の分解を、そのオートファジーの調節とは顕著に異なる機構により抑制する。
【0148】
(mTORC1シグナル伝達は、細胞によるアミノ酸の供給源に応じて、細胞増殖に対
して、反対の効果を及ぼしうる)
多くの異なる系において、アミノ酸が、細胞外において豊富である場合、mTORC1
は、増殖を促進することが示されてきたが、上記のデータは、mTORC1が、細胞外タ
ンパク質の異化に依拠する細胞増殖を抑制しうることを指し示した。このため、量を減少
させたEAAを含有するが、代替的なEAA供給源としての、3%のアルブミンで補充さ
れた培地中の、K-RasG12D MEFの増殖に対する、mTORC1の阻害の影響
の探索を行うことになった。EAAが、細胞外において豊富である場合、トリン1処理ま
たはRaptorノックダウンは、細胞増殖を大幅に減少させた(図13A、B)。しか
し、対照細胞の増殖が、EAAレベルの低下と共に急速に降下したのに対し、トリン1で
処理した細胞またはRaptor shRNAを発現する細胞は、EAA濃度の10倍の
範囲にわたり、増殖のわずかな低減を示すに過ぎなかった。EAA濃度を低度としたとき
も、トリン1処理またはRaptorノックダウンは、細胞増殖を顕著に改善した。これ
らの結果は、mTORC1シグナル伝達が、アミノ酸に富む培地中のK-RasG12D
MEFの増殖は刺激するが、細胞外タンパク質が必須アミノ酸の供給源として要求され
る条件下では、K-RasG12D MEFの増殖を制限することを示唆する。
【0149】
(ラパマイシンは、in vivoにおいて、K-Rasに誘導される膵臓腫瘍の増殖
を増強する)
mTORC1の阻害が、in vivoにおいて、K-Ras突然変異細胞の増殖を促
進しうるのかどうかを決定するため、膵臓特異的な突然変異体K-Rasおよびp53(
KPC)の内因性対立遺伝子を発現する遺伝子操作マウスモデルを使用して、mTORC
1の阻害の、膵菅腺癌(PDA)の発症に対する効果について検討した(Hingoraniら、
2005年)。ヒトでは、K-Rasは、膵臓がんの大部分において突然変異するが、K
PCマウスの腫瘍細胞が、マクロピノサイトーシスを介して、高分子量のデキストランを
内在化することが示されたことから、KPCマウスの腫瘍細胞は、細胞外タンパク質に接
近する潜在的可能性を有することが指し示されることは、これと符合する(Commissoら、
2013年)。さらに、膵臓がんの腫瘍微小環境は、乏血管性であり、かつ、高度に栄養
物質枯渇性であり(Kamphorstら、2015年)、これは、この文脈では、細胞外タンパ
ク質が、重要な代替的栄養物質供給源として機能しうる可能性を高める。
【0150】
同等なサイズの腫瘍が確立されたKPCマウスを、ラパマイシンで、8日間にわたり処
理し、腫瘍組織のKi-67染色により、細胞増殖について検討した。mTORC1の阻
害は、アミノ酸飢餓時に特異的に、培養細胞内の細胞増殖を増強したため、内皮マーカー
であるCD31について陰性である、内側の乏血管性腫瘍領域内の、腫瘍細胞の増殖に対
するラパマイシンの効果について検討した。実際、ラパマイシン処理は、mTORC1の
下流の標的であるリン酸化S6の非存在にも関わらず、これらの腫瘍領域内のKi-67
陽性細胞の数の、目覚ましい増大を引き起こした(図13C、D;14A)。これに対し
、ラパマイシンは、phospho-S6を共時的に減少させながら、外側の血管化腫瘍
領域内のKi-67陽性細胞の画分を減少させた。これらのデータは、膵臓がん細胞が、
in vivoにおいて、それらがある腫瘍微小環境に応じて、ラパマイシンに応答する
(ラパマイシンは、外側の血管化領域では、細胞増殖を減少させるが、内側の乏血管性領
域では、増殖を増強する)ことを指し示す。これらの知見は、mTORC1が、栄養物質
飢餓時に、細胞増殖の抑制因子として機能しうるという考えを裏打ちする。驚くべきこと
に、ラパマイシン処理は、KPCマウスにおける腫瘍増殖を、顕著に加速化させた(図1
3E)。
【0151】
(mTORC1シグナル伝達の遺伝子除去は、細胞外タンパク質に依存する増殖を、R
as形質転換とは独立に誘導しうる)
最後に、細胞外タンパク質の、アミノ酸供給源としての利用であって、細胞増殖を支援
する利用の抑制における、mTORC1の役割が、Ras形質転換細胞に制限されるのか
どうかを決定するため、野生型Ras対立遺伝子を有する細胞内の、mTORC1の阻害
の帰結について探索した。Raptor shRNAを発現する野生型MEF、またはm
TOR阻害剤で処理した野生型MEFは、3%のアルブミンを補充したロイシン非含有培
地中で頑健に増殖することができた(図14B~D)。mTORシグナル伝達を、より厳
密に遮断するため、RaptorまたはRictorを、条件付け対立遺伝子を有するM
EFから遺伝子除去した(図14E)(Cybulskiら、2012年)。Raptorノック
アウト細胞は、野生型対照と比較して、栄養物質が豊富な培地中の細胞増殖の大幅な減少
を示す一方で、ロイシン非含有培地+3%のアルブミン中の増殖は維持することができた
図13F)。これに対し、Rictorの欠失は、ロイシン含有培地中の細胞増殖をわ
ずかに減少させるに過ぎず、アルブミン補充培地中のロイシン欠乏細胞の増殖を結果とし
てもたらさなかった(図14F)。また、量を減少させたEAAのほか、代替的なEAA
供給源としての3%のアルブミンを含有する培地中の、対照またはRaptor shR
NAを発現する野生型MEFの増殖についても検討した。Raptorノックダウンは、
EAAが豊富な条件下における細胞増殖を損った(図13G)。しかし、EAAレベルを
低減したところ、対照細胞と、Raptorノックダウン細胞との細胞増殖の差違は減殺
され、EAAレベルを低度としたところ、Raptorノックダウンは、増殖を増強した
【0152】
(mTORC1は、細胞外タンパク質の、栄養物質としての利用を抑制する)
上記の結果は、哺乳動物細胞内では、mTORC1シグナル伝達が、環境から取り込ま
れたタンパク質のリソソームにおける異化を抑制することを裏付ける。当然の帰結として
、mTORC1の阻害は、例えば、EAAを欠乏された培養細胞内、または乏血管性腫瘍
領域内にある膵臓がん細胞内の栄養物質としての細胞外タンパク質に依拠する細胞増殖を
増強する。mTORC1経路は、栄養物質に富む条件下において、翻訳の増強を部分的に
介する、細胞増殖の強力な刺激因子であることが公知である(MaおよびBlenis、2009
年;ShimobayashiおよびHall、2014年)。しかし、mTORC1が、正味のタンパク
質合成を促進する能力は、アミノ酸の外因性供給源を厳密に要求する。本研究は、細胞外
タンパク質からのアミノ酸の回収を制限することにより、mTORC1は、細胞増殖を、
細胞外における遊離アミノ酸の利用可能性とカップリングさせることを指し示す。これは
、タンパク質の生合成が、翻訳の効率ではなく、アミノ酸の獲得により制約される条件下
における増殖を、mTORC1の阻害が促進しうることを示唆する。したがって、mTO
RC1が、細胞増殖を刺激するのか、抑制するのかは、細胞のアミノ酸供給源に依存しう
る。
【0153】
かつての研究は、mTORC1の阻害が、細胞外EAAの供給源の非存在下における細
胞の生存を支援しうることを示した。細胞外タンパク質の非存在下で、細胞からロイシン
を欠乏すると、これに続くmTORC1の不活化により、オートファジー誘発キナーゼで
あるUlk1/2の抑制解除がもたらされ、これは、後続のリソソームへの輸送のための
細胞内構成要素を貪食するオートファゴソームの形成を誘発する(HeおよびKlionsky、2
009年;Mizushima、2010年)。この機構を介して、オートファジーは、ロイシン
欠乏の間における、細胞の生存を支援する。しかし、細胞内タンパク質の異化では、細胞
増殖(growthおよびproliferation)に要求されるロイシン(または
他のEAA)の正味の獲得をもたらすことができない。むしろ、オートファジーによる細
胞内タンパク質の分解は、細胞が、限定的な栄養物質欠乏期における細胞の生存を維持す
るのに適応的なタンパク質合成に関与するのに十分なEAAを補償する。本明細書で明示
される研究は、哺乳動物細胞が、細胞外タンパク質を、細胞の生存率の維持を可能とする
EAAの供給源として利用しうることを裏付ける。細胞が、Ras内の突然変異の活性化
および/またはmTORC1の抑制の結果として、十分な量の細胞外タンパク質を異化す
る場合、細胞は、正味のタンパク質合成を支援して、バイオマスを増大させ、増殖するこ
とさえも可能である。本明細書で明示されるデータは、Ulk1/2が、Ras突然変異
細胞の、細胞外タンパク質に依存する増殖にとって、可欠であることを裏付ける。実際、
Ulk1/2の遺伝子欠失は、mTORC1の阻害時における細胞増殖を増強する。これ
は、mTORC1の阻害の結果としての、オートファジーを介する細胞内構成要素の分解
が、アミノ酸欠乏細胞が、細胞外タンパク質を取り込み、分解することにより増殖しうる
速度に対して、律速的でありうることを示唆する。
【0154】
アミノ酸は、リソソーム膜へのその動員を誘導することにより、mTORC1活性を調
節する(Sancakら、2010年)。本研究は、エンドサイトーシスされたタンパク質の、
リソソームにおける分解が、それらの単量体形態で環境から移入されたアミノ酸と同じス
テップで、mTORC1経路を調節し;いずれの栄養物質も、mTORC1の、リソソー
ム膜への、Ragに依存する動員を誘導し、これが、成長因子によるシグナル伝達を介し
て、その後続の活性化を可能とすることを裏付ける。同様に、オートファジーを介して輸
送された細胞内タンパク質の、リソソームにおける異化も、mTORC1の、この細胞小
器官への動員をもたらす(Yuら、2010年)。まとめると、これらのデータは、リソソ
ームにおけるmTORC1活性の調節が、エンドサイトーシスまたはオートファジーを介
して輸送されたタンパク質から回収されるアミノ酸を、細胞がモニタリングすることを可
能とする、高感度の機構を構成することを示唆する。逆に、リソソーム膜において活性化
すると、mTORC1は、これらの膜トラフィッキング経路による、リソソームへのカー
ゴ輸送の調節因子として機能するように、良好に配置されうる。とりわけ、エンドソーム
へのトラフィッキングを調節するタンパク質が近年、mTORC1基質の新規のクラスと
して出現している(Hsuら、2011年;Kimら、2015年;Yuら、2011年)。
【0155】
(mTOR阻害剤の、治療剤としての使用についての含意)
本結果はまた、mTOR阻害剤の、がん治療剤としての有効性の不可解な欠如にも光を
投げかけうる。最近の数年間にわたり、がん処置において、mTORC1経路をターゲテ
ィングしようと、多大な努力がなされている。これらの研究は、ヒト腫瘍は、一般に、そ
の上流の活性化因子であるPI3キナーゼ経路内の突然変異のために、mTORC1活性
の上昇を示すことが多いという観察により動機付けられている(ManningおよびCantley、
2007年)。しかし、近年の臨床試験は、様々な固形腫瘍における、ラパマイシン類似
体(ラパログ)の有効性が、限定的に過ぎないことを示した。本研究は、mTOR阻害剤
の、がん処置における、内因性の弱点を明らかにする。細胞外に由来するタンパク質の異
化を増強することにより、mTOR阻害剤は、代替的な栄養物質としての細胞外タンパク
質の使用を増加させて、生存を支援し、増殖を維持する。これは、栄養物質枯渇腫瘍の微
小環境内、または腫瘍細胞が新規の代謝的ニッチに適応しなければならない転移時におい
て特に重要でありうる。これらの知見は、mTOR阻害剤の増殖促進効果が、Rasによ
り方向づけられるマクロピノサイトーシスなどのエンドサイトーシス経路を介して、がん
細胞が十分な細胞外タンパク質を取り込む能力と相関することを予測する。一貫して、K
PCマウスの、ラパマイシンによる処理は、乏血管性腫瘍領域内に棲息する膵臓がん細胞
の増殖を増大させ、正味の腫瘍増殖を加速化させる。これは、K-Rasが主要な駆動性
がん遺伝子である膵臓がん(Javleら、2010年)、またはRas抑制因子であるNF
1内の突然変異により引き起こされる神経線維腫症など、Rasシグナル伝達における活
性化突然変異を伴う様々な腫瘍型の処置における、mTOR阻害剤の不奏効を説明しうる
【0156】
ラパログの限定的な奏効についての、1つの現行の説明は、ラパログが、PI3キナー
ゼ/Aktシグナル伝達のフィードバック抑制を緩和するということである。これは、m
TORキナーゼをターゲティングすることにより、mTORC1と、Akt活性化因子で
あるmTORC2とを阻害する、mTOR活性部位阻害剤のほか、mTOR/PI3キナ
ーゼ二重阻害剤の開発ももたらした。これらの阻害剤の、がん治療における有効性は、現
在探索されつつあるが、上記のデータは、培養細胞内では、異なるクラスのmTOR阻害
剤が、細胞外タンパク質の、栄養物質としての利用の促進という落とし穴を共有すること
を示す。しかし、本発明者らの研究は、mTOR阻害剤を、細胞外タンパク質の取込みま
たはリソソームにおける分解を遮断する阻害剤と組み合わせる代替的な手法により、より
大きな有効性を達成しうることを示唆する。mTORC1シグナル伝達の、腫瘍発生にお
ける役割を査定する場合、がんゲノムシークエンシングの試みからの洞察を考慮すること
もまた有意義でありうる。mTORキナーゼ内の突然変異、または構成的な経路の活性化
を引き起こす、直接的な経路調節因子を示すことが見出されたがんは、比較的少数である
。これに対し、上流のPI3キナーゼ/Akt経路内の突然変異は、ヒトのがんにおいて
一般的である(ManningおよびCantley、2007年)。考えられるところでは、これは、
がん細胞が、栄養物質に富む条件下では、mTORC1活性を増大させる一方で、アミノ
酸によるその調節を無効化しないことを可能とし、したがって、腫瘍細胞が、栄養物質の
欠乏に適応することを可能とする。
【0157】
(真核細胞内の栄養物質獲得の戦略としての、細胞外高分子のマクロピノサイトーシス

本研究は、哺乳動物細胞が、EAAの供給源としての細胞外タンパク質を採取して、生
存および増殖を維持しうることを裏付ける。これらのデータは、Rasにより方向づけら
れたタンパク質のマクロピノサイトーシスが、形質転換細胞の、細胞外グルタミン供給へ
の依存性を緩和しうることを示す近年の研究(Commissoら、2013年)を裏打ちし、拡
張する。Rasにより誘導される、細胞外タンパク質のマクロピノサイトーシスは、Di
ctyostelium discoideumなど、単細胞のアメーバ様真核生物の増
殖を維持することが既に認識されている(Amyereら、2002年)。まとめると、これら
の知見は、マイクロピノサイトーシスが、真核細胞内の栄養物質獲得の、進化的に古形の
戦略を構成することを指し示す。興味深いことに、後生動物細胞内のマクロピノサイトー
シスは、成長因子によるシグナル伝達の制御下にあり、マイクロピノサイトーシスの誘導
は、血清による刺激に対する、多様な哺乳動物細胞型の即時的な応答である(Amyereら、
2002年;MercerおよびHelenius、2009年)。これは、成長因子が、細胞に、グル
コースおよびアミノ酸など、低分子量の栄養物質だけでなく、細胞外高分子もまた取り込
むように命令しうることを示唆する。しかし、成長因子によるシグナル伝達と、アミノ酸
とからの協奏的入力は、mTORC1の活性化を結果としてもたらすが、これは、環境か
ら内在化させたタンパク質の異化を制限する。したがって、mTORC1は、細胞外に由
来するタンパク質の分解を防止しながら、遊離アミノ酸を利用する同化的細胞内代謝を誘
発する。考えられるところでは、この機構は、単量体アミノ酸が利用可能である限りにお
いて、体液中に含有されるタンパク質の無用な代謝回転を防止する。
参考文献
【化1】

【化2】

【化3】

【化4】
【0158】
同等物
当業者は、規定の実験だけを使用して、本明細書で記載される本発明の具体的な実施形
態の多くの同等物を認識または確認することが可能であろう。本発明の範囲は、上記の記
載に限定されることを意図するものではなく、以下の特許請求の範囲で明示される通りで
ある。
特定の実施形態では、例えば以下の項目が提供される。
(項目1)
Rasタンパク質の発がん性の活性化を特徴とするがんを患う対象へと、
(i)mTORC阻害療法と、
(ii)毒素療法と
を含む治療レジメンを投与するステップを含む方法。
(項目2)
mTORC阻害療法を、前記毒素療法の前に投与する、項目1に記載の方法。
(項目3)
前記mTORC阻害療法が、mTORC1阻害剤を含む、項目1に記載の方法。
(項目4)
前記がんが、固形腫瘍を含む、項目1に記載の方法。
(項目5)
前記がんが、線維形成性および/または乏血管性である微小環境内に棲息する、項目1
から4のいずれかに記載の方法。
(項目6)
前記がんが、転移性細胞を含む、項目1から5のいずれかに記載の方法。
(項目7)
前記がんが、膵臓がんである、項目1から6のいずれかに記載の方法。
(項目8)
前記Rasタンパク質が、K-Ras、H-Ras、N-Ras、およびこれらの組合
せからなる群から選択される、項目1から7のいずれかに記載の方法。
(項目9)
前記mTORC1阻害剤が、ラパマイシン/シロリムス、エベロリムス、テムシロリム
ス、ウミロリムス、ゾタロリムス、デフォロリムス、ウォルトマンニン、TOP-216
、TAFA93、CCI-779、ABT578、SAR543、アスコマイシン、FK
506、AP23573、AP23464、AP23841、KU-0063794、I
NK-128、EX2044、EX3855、EX7518、AZD-8055、AZD
-2014、Palomid 529、Pp-242、OSI-027、およびこれらの
組合せからなる群から選択される、項目2から8のいずれかに記載の方法。
(項目10)
前記毒素療法が、シクロホスファミド、クロランブシル、シスプラチン、ブスルファン
、メルファラン、カルムスチン、ストレプトゾトシン、トリエチレンメラミン、マイトマ
イシンC、メトトレキサート、エトポシド、6-メルカプトプリン、6-チオグアニン、
シタラビン、5-フルオロウラシル、ダカルバジン、アクチノマイシンD、ドキソルビシ
ン、ダウノルビシン、ブレオマイシン、ミトラマイシン、ビンクリスチン、ビンブラスチ
ン、パクリタキセル、パクリタキセル誘導体、細胞増殖抑制剤、デキサメタゾン、プレド
ニゾン、ヒドロキシウレア、アスパラギナーゼ、ロイコボリン、アミホスチン、ダクチノ
マイシン、メクロレタミン、ストレプトゾシン、シクロホスファミド、ロムスチン、リポ
ソーマルドキソルビシン、ゲムシタビン、リポソーマルダウノルビシン、プロカルバジン
、マイトマイシン、ドセタキセル、アルデスロイキン、カルボプラチン、オキサリプラチ
ン、クラドリビン、カンプトテシン、CPT11(イリノテカン)、10-ヒドロキシ7
-エチル-カンプトテシン(SN38)、フロクスウリジン、フルダラビン、イホスファ
ミド、イダルビシン、メスナ、インターフェロンベータ、インターフェロンアルファ、ミ
トキサントロン、トポテカン、ロイプロリド、メゲストロール、メルファラン、メルカプ
トプリン、プリカマイシン、ミトタン、ペガスパルガーゼ、ペントスタチン、ピポブロマ
ン、プリカマイシン、タモキシフェン、テニポシド、テストラクトン、チオグアニン、チ
オテパ、ウラシルマスタード、ビノレルビン、クロランブシル、およびこれらの組合せか
らなる群から選択される、項目1から9のいずれかに記載の方法。
(項目11)
前記毒素療法を、低用量で投与する、項目10に記載の方法。
(項目12)
毒素を、可溶性タンパク質へとコンジュゲートさせる、項目1から10のいずれかに記
載の方法。
(項目13)
前記可溶性タンパク質が、アルブミンである、項目12に記載の方法。
(項目14)
前記治療レジメンが、リソソーム阻害療法を含まない、項目1から13のいずれかに記
載の方法。
(項目15)
前記治療レジメンが、Ras阻害療法を含まない、項目1から14のいずれかに記載の
方法。
(項目16)
単剤療法としてのmTORC1阻害剤による処置に好適に応答する可能性が高いがんを
識別するための方法であって、前記がんに由来する試料を、Rasの発がん性の活性化に
ついてアッセイするステップを含み、前記試料が、低度の発がん性のRas活性を有する
か、または発がん性のRas活性を有さないと決定される方法。
(項目17)
単剤療法としてのmTORC1阻害剤による処置に好適に応答しない可能性が高いがん
を識別するための方法であって、前記がんに由来する試料を、Rasの発がん性の活性化
についてアッセイするステップを含み、前記試料が、発がん性のRas活性を有すると決
定される方法。
(項目18)
Rasの発がん性の活性化が、遺伝子突然変異により引き起こされる、構成的に活性な
Rasを含む、項目17に記載の方法。
(項目19)
前記遺伝子突然変異が、突然変異したRasタンパク質を含む、項目18に記載の方法

(項目20)
前記遺伝子突然変異が、Ras抑制性タンパク質の発現または活性の低下を結果として
もたらす、項目18に記載の方法。
(項目21)
Rasの発がん性の活性化を、対立遺伝子特異的ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)、P
CRおよびサンガージデオキシシークエンシング、PCRおよびパイロシークエンシング
、PCRおよび質量分析(MS)、PCRおよび一塩基伸長、マルチプレックスライゲー
ション依存型プローブ増幅(MLPA)、または蛍光in situハイブリダイゼーシ
ョン(FISH)により検出する、項目17から20のいずれかに記載の方法。
(項目22)
がんを検出するための組成物であって、がん細胞によるマクロピノサイトーシスのため
の基質へとコンジュゲートさせたイメージング剤を含む組成物。
(項目23)
mTORC1阻害剤をさらに含む、項目22に記載の組成物。
(項目24)
前記がんを、in vivoの対象において検出する、項目22から23のいずれかに
記載の組成物。
(項目25)
前記イメージング剤が、金属性である、項目22から24のいずれかに記載の組成物。
(項目26)
前記イメージング剤が、放射性標識されている、項目22から24のいずれかに記載の
組成物。
(項目27)
マクロピノサイトーシスのための前記基質が、可溶性タンパク質を含む、項目22から
26のいずれかに記載の組成物。
(項目28)
前記可溶性タンパク質が、アルブミンである、項目27に記載の組成物。
(項目29)
前記がんが、発がん性のRas活性を呈する、項目22に記載の組成物。
(項目30)
対象におけるがんを検出するための方法であって、
(i)前記対象へと、mTORC1阻害剤を投与するステップと;
(ii)前記対象へと、検出用シグナルを誘発することが可能なイメージング剤を投
与するステップと;
(iii)前記イメージング剤により誘発された前記シグナルを検出するステップと
を含む方法。
(項目31)
前記イメージング剤を、がん細胞によるマクロピノサイトーシスのための基質へとコン
ジュゲートさせる、項目30に記載の方法。
(項目32)
前記イメージング剤を、可溶性タンパク質へとコンジュゲートさせる、項目31に記載
の方法。
(項目33)
前記可溶性タンパク質が、アルブミンである、項目32に記載の方法。
(項目34)
前記mTORC1阻害剤を、前記イメージング剤の前に投与する、項目30から33の
いずれかに記載の方法。
(項目35)
前記mTORC1阻害剤を、前記対象へと、前記イメージング剤の少なくとも1、3、
5、12、または24時間前に投与する、項目30に記載の方法。
図1A
図1BC
図2ABCD
図2EF
図3ABC
図3DE
図4AB
図4C
図5ABC
図5DEF
図6ABC
図6DEFG
図7AB
図7C
図8
図9A
図9BC
図9DE
図10AB
図10C
図10DE
図11AB
図11CD
図12AB
図12CD
図12E
図12FG
図12HI
図13AB
図13C
図13DEFG
図14A
図14BCD
図14EF