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特許7399136スキューミラー、その使用方法及び製造方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-07
(45)【発行日】2023-12-15
(54)【発明の名称】スキューミラー、その使用方法及び製造方法
(51)【国際特許分類】
   G02B 5/18 20060101AFI20231208BHJP
   G02B 5/32 20060101ALI20231208BHJP
   G02B 5/00 20060101ALI20231208BHJP
【FI】
G02B5/18
G02B5/32
G02B5/00 Z
【請求項の数】 6
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021115091
(22)【出願日】2021-07-12
(62)【分割の表示】P 2018510345の分割
【原出願日】2016-08-24
(65)【公開番号】P2021182140
(43)【公開日】2021-11-25
【審査請求日】2021-08-10
(31)【優先権主張番号】62/209,290
(32)【優先日】2015-08-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/318,917
(32)【優先日】2016-04-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】15/174,938
(32)【優先日】2016-06-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】514057592
【氏名又は名称】アコニア ホログラフィックス、エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100067013
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 文昭
(74)【代理人】
【識別番号】100086771
【弁理士】
【氏名又は名称】西島 孝喜
(74)【代理人】
【識別番号】100139712
【弁理士】
【氏名又は名称】那須 威夫
(74)【代理人】
【識別番号】100210239
【弁理士】
【氏名又は名称】富永 真太郎
(72)【発明者】
【氏名】マーク アイレス
(72)【発明者】
【氏名】ケネス アンダーソン
(72)【発明者】
【氏名】アダム アーネス
(72)【発明者】
【氏名】フリソー シュロッタウ
【審査官】池田 博一
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2005/093493(WO,A1)
【文献】国際公開第2011/062036(WO,A1)
【文献】中国特許出願公開第104777535(CN,A)
【文献】特開平11-265139(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2008/0013180(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2004/0100699(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2002/0141065(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2005/0179968(US,A1)
【文献】独国特許出願公開第102005018750(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 5/18
G02B 5/32
G02B 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
格子媒体内に存在する格子構造を具える装置であって、
前記格子構造は第1の入射光を反射するように構成され、この第1の入射光は前記格子媒体の特定の部位に入射されるとともに第1の波長と格子媒体の表面法線に対する第1の内部入射角とを有し、
前記第1の入射光は第1の反射光として主として前記格子媒体により反射され、この第1の反射光は前記第1の波長と前記表面法線に対する第1の内部反射角とを有し、
前記第1の入射光及び前記第1の反射光は前記表面法線に対する第1の反射軸角を有する第1の反射軸により二等分され、
前記格子構造は更に第2の入射光を反射するように構成され、この第2の入射光は前記格子媒体の前記特定の部位に入射されるとともに第2の波長と前記表面法線に対する第2の内部入射角とを有し、
前記第2の入射光は第2の反射光として主として前記格子媒体により反射され、この第2の反射光は前記第2の波長と前記表面法線に対する第2の内部反射角とを有し、
前記第2の入射光及び前記第2の反射光は前記表面法線に対する第2の反射軸角を有する第2の反射軸により二等分され、
前記第1の内部入射角は前記第2の内部入射角と同じであり、
前記第1の反射軸角は少なくとも2.0度の差で前記表面法線から相違し、
前記第1の波長は少なくとも0.030のウェーブフラクションの差で前記第2の波長から相違し、
前記第1の反射軸角は0.10度以下の差で前記第2の反射軸角から相違するようになっており、
前記格子構造は、各々が対応する格子ベクトルKGを有する少なくとも9個のホログラムを具え、各格子ベクトルKGは、K空間において、絶対値|ΔKG|を有する対応する差分値ΔKGの差で前記少なくとも9個のホログラムの隣接格子ベクトルKGから分離され、
前記少なくとも9個のホログラムの各々は前記少なくとも9個のホログラムの全ての他のホログラムに部分的且つ空間的に重なっており、
前記格子媒体は少なくとも70μmの厚さとし、
前記少なくとも9個のホログラムにわたる前記絶対値|ΔKG|は、1メートル当り5.0×103ラジアンと1.0×107ラジアンとの間の平均値(rad/m)を有する、
装置。
【請求項2】
請求項1に記載の装置において、前記第1の反射軸角は0.025度以下の差で前記第2の反射軸角から相違するようになっている装置。
【請求項3】
請求項2に記載の装置において、前記第1の波長は少なくとも0.036のウェーブフラクションの差で前記第2の波長から相違するようになっている装置。
【請求項4】
請求項1に記載の装置において、前記第1の入射光は少なくとも1.0度の差で前記第1の反射軸からオフセットされるようになっている装置。
【請求項5】
請求項1に記載の装置において、
前記格子媒体は少なくとも200μmの厚さとした
装置。
【請求項6】
スキューミラーで光を照射するステップを具えるスキューミラー使用方法において、
前記スキューミラーは、格子媒体内に格子構造が存在している当該格子媒体を具えており、
この格子媒体は少なくとも70μmの厚さであり、
前記光は第1の入射光を含み、この第1の入射光は前記格子媒体の特定の部位に入射させるとともに第1の波長と格子媒体の表面法線に対する第1の内部入射角とを有しており、
前記第1の入射光は第1の反射光として主として前記格子媒体により反射され、この第1の反射光は前記第1の波長と前記表面法線に対する第1の内部反射角とを有しており、 前記第1の入射光及び前記第1の反射光は前記表面法線に対する第1の反射軸角を有する第1の反射軸により二等分され、
前記光は更に第2の入射光を含み、この第2の入射光は前記格子媒体の前記特定の部位に入射されるとともに第2の波長と前記表面法線に対する第2の内部入射角とを有しており、
前記第2の入射光は第2の反射光として主として前記格子媒体により反射され、この第2の反射光は前記第2の波長と前記表面法線に対する第2の内部反射角とを有しており、 前記第2の入射光及び前記第2の反射光は前記表面法線に対する第2の反射軸角を有する第2の反射軸により二等分され、
前記第1の反射軸角は少なくとも2.0度の差で前記表面法線から相違され、
前記第1の波長は少なくとも0.030のウェーブフラクションの差で前記第2の波長から相違され、
前記第1の反射軸角は0.10度以下の差で前記第2の反射軸角から相違されるようにし、
前記格子構造は、各々が対応する格子ベクトルKGを有する少なくとも9個のホログラムを具え、各格子ベクトルKGは、K空間において、絶対値|ΔKG|を有する対応する差分値ΔKGの差で前記少なくとも9個のホログラムの隣接格子ベクトルKGから分離され、
前記少なくとも9個のホログラムの各々は前記少なくとも9個のホログラムの全ての他のホログラムに部分的且つ空間的に重なるようにし、
前記少なくとも9個のホログラムにわたる前記絶対値|ΔKG|は、1メートル当り5.0×103ラジアンと1.0×107ラジアンとの間の平均値(rad/m)を有する、
スキューミラー使用方法。
【発明の詳細な説明】
【関連出願の相互参照】
【0001】
本出願は、“SKEW MIRRORS, METHODS OF USE, AND METHODS OF MANUFACTURE”と題して2016年6月6日に出願された米国特許仮出願番号15/174,938及び“MULTIWAVELENGTH DIFFRACTION GRATING MIRRORS, METHODS OF USE, AND METHODS OF MANUFACTURE ”と題して2015年8月24日に出願された米国特許仮出願番号62/209,290の優先権を主張するものであり、これらの双方の出願は、参照することによりその全体がここに導入されるものである。
【技術分野】
【0002】
本発明は、スキューミラー、その使用方法及び製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0003】
従来の誘電体ミラーは、表面(代表的にガラス)に誘電率が互いに相違する材料の層をコーティングすることにより製造されている。これらの材料の層は代表的に、層の境界からのフレネル反射が強化されて正味の反射率を大きくするように配列されている。この条件が比較的広い特定の範囲の波長及び入射角に亘って得られるようにすることにより広帯域の誘電体ミラーを設計することができる。しかし、これらの層は表面上に堆積される為、誘電体ミラーの反射軸が必然的に表面法線と一致する、すなわち反射軸がミラーの表面に対し垂直となる。反射軸に対するこの制約の為に、誘電体ミラーはある種の目的に対しては完全に不十分なものとなる。更に、ガラスの誘電体ミラーは比較的重くなる傾向にあり、これらミラーは比較的軽量の反射構成要素を必要とする適用分野にとって最適より下位なもの又は不適切のものとなる。
【0004】
上述したこととは逆に、従来の格子構造は、この格子構造が存在する媒体の表面法線とは異なる反射軸を中心とする光の反射を達成することができる。しかし、ある所定の入射角に対しては、従来の格子構造に対する反射角は、代表的に入射光の波長に対し共変動(co-vary)する。従って、光を反射させるために従来の格子構造を用いることにより、反射軸を表面法線と一致させる必要がある誘電体ミラーにおける固有の制約を回避する。しかし、一定の反射軸を必要とする場合には、従来の格子構造は代表的に所定の入射角に対して単一波長又は極めて狭い範囲の波長に限定される。同様に、一定の反射軸を中心とする特定の波長の光の反射を達成するためには、従来の格子構造は単一の入射角又は極めて狭い範囲の入射角に限定される。従って、従来の格子構造は、入射光の何れかの重要な範囲の波長又は角度に亘って一定の反射軸を有しない。
【0005】
従って、表面法線に制約されない反射軸を中心とする光の反射を達成するとともに、所定の入射角に対するその反射角が複数の波長で実質的に一定である比較的簡単な装置に対する条件は、反射性の格子構造又は誘電体ミラーを具える現在得られる反射性装置によっては満足されない。従って、このような反射性装置に対して必要性があるものであり、このような必要性は頭部装着型のディスプレイ装置において緊急性があるものである。
【0006】
以下の図面に関する説明では、図面は主として説明の目的のものであり、ここに開示する本発明の範囲を限定するものではないことを当業者は理解するであろう。これらの図面は、必ずしも実際のものに正比例して描いていない。例えば、ここに開示した本発明の主題の種々の方向を図面中に誇張して又は拡大して示して種々の特徴を容易に理解しうるようにした。図面中、同様な参照符号は一般に同様な特徴部(例えば、機能的に同様な又は構造的に同様な、或いはこれらの双方の素子)を参照するものである。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1A図1Aは、格子媒体に記録されたホログラムを示す断面図である。
図1B図1Bは、正弦波ホログラムをk空間表現で示す断面図である。
図2A図2Aは、単一の正弦波ホログラムをk空間表現で示す断面図である。
図2B図2Bは、単一の正弦波ホログラムをk空間表現で示す断面図である。
図3図3は、本発明の一実施例による実空間におけるスキューミラーの反射特性を示す断面実図である。
図4A図4Aは、本発明の一実施例によるスキューミラーをk空間表現で示す断面図である。
図4B図4Bは、本発明の一実施例によるスキューミラーをk空間表現で示す断面図である。
図5A図5Aは、本発明の一実施例によるスキューミラーをk空間表現で示す断面図である。
図5B図5Bは、本発明の一実施例によるスキューミラーをk空間表現で示す断面図である。
図6A図6Aは、本発明の一実施例によるスキューミラーの反射特性を示す断面図である。
図6B図6Bは、本発明の一実施例によるスキューミラーをk空間表現で示す断面図である。
図6C図6Cは、本発明の一実施例によるスキューミラーをk空間表現で示す断面図である。
図6D図6Dは、本発明の一実施例によるスキューミラーをk空間表現で示す断面図である。
図7A図7Aは、本発明の一実施例によるスキューミラーをk空間表現で示す断面図である。
図7B図7Bは、本発明の一実施例によるスキューミラーをk空間表現で示す断面図である。
図8A図8Aは、本発明の一実施例によるスキューミラーの反射特性を示す断面図である。
図8B図8Bは、本発明の一実施例によるスキューミラーの反射特性を示す断面図である。
図8C図8Cは、本発明の一実施例によるスキューミラーの反射特性を示す断面図である。
図9A図9Aは、本発明の一実施例によるスキューミラーの反射特性を示す断面図である。
図9B図9Bは、本発明の一実施例によるスキューミラーの反射特性を示す断面図である。
図10A図10Aは、本発明の一実施例によるスキューミラーをk空間表現で示す断面図である。
図10B図10Bは、本発明の一実施例によるスキューミラーの反射特性を示す断面図である。
図11A図11Aは、本発明の一実施例によるスキューミラーの反射特性を示す断面図である。
図11B図11Bは、本発明の一実施例によるスキューミラーの反射特性を示す断面図である。
図12A図12Aは、本発明の一実施例によるスキューミラーの反射特性を示す断面図である。
図12B図12Bは、本発明の一実施例によるスキューミラーの反射特性を示す断面図である。
図13図13は、本発明の一実施例によるスキューミラーを形成するシステムを示す断面図である。
図14図14は、本発明の一実施例によるスキューミラーを形成する方法を示す断面図である。
図15図15は、本発明の一実施例によるスキューミラーの反射特性を示す平面図である。
図16A図16Aは、本発明の一実施例によるスキューミラーを形成するシステムを示す断面図である。
図16B図16Bは、本発明の一実施例によるスキューミラーを形成するシステムを示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明の実施例には、体積ホログラム又はその他の格子構造を内部に有する格子媒体を具える反射装置が含まれる。格子媒体は、その内部に格子構造を有する為、反射軸と称される軸を中心とする光の回折を達成させ、その回折角(以後反射角と称する)が所定の入射角で格子媒体に入射される複数の波長の光に対し1°よりも少ない角度で変化するようにした物理的特性を有している。ある実施例では、上述した現象が複数の入射角に対し観察されるようにする。
【0009】
同様に、本発明の実施例は代表的に、所定の波長の入射光に対する入射角の範囲に亘って実質的に一定の反射軸を有するようにする(すなわち、これらの反射軸が1.0度よりも小さい角度しか変化しない反射軸角を有するようにする)ものであり、この現象は種々の波長での入射光に対しても観察されるようにしうる。ある実施例では、反射軸が複数の入射角の組と複数の波長の組とのあらゆる組合せに対して実質的に一定に維持されるようにする。
【0010】
本発明のある実施例では、格子構造が、記録ビームと称される光ビーム間の干渉により発生されるホログラムを有するようにする。代表的には、格子構造が複数のホログラムを有するようにするが、必ずしもこのようにする必要はない。複数のホログラムは、これら複数のホログラム間で変化する角度(角度多重化)で格子媒体に入射される記録ビームを用いるか、又はこれら複数のホログラム間で変化する波長(波長多重化)の記録ビームを用いるか、或いはこれらの双方の記録ビームを用いることにより記録することができる。
本発明のある実施例では、格子媒体への入射角がホログラムを記録している間に変化するか、又は波長がホログラムを記録している間に変化するか、或いはこれらの双方の変化が達成される2つの記録ビームを用いて記録したホログラムを格子構造が有するようにする。本発明の実施例は更に、反射軸が格子媒体の表面法線と少なくとも1.0度、又は少なくとも2.0度、又は少なくとも4.0度、又は少なくとも9.0度だけ相違する装置を有するようにする。
[ホログラフィに対するk空間形式]
【0011】
【0012】
【0013】
図1Aは、第2の記録ビーム115と第1の記録ビーム114とを用いて格子媒体110にホログラム105を記録する実空間表現を示している。格子媒体は代表的に、干渉パターンをホログラムとして記録するように構成された記録層を有している。図1Aでは、記録層に対する基板又は保護層として作用しうる追加の層のような、この記録層以外の格子媒体構成要素が省略されている。第2の記録ビーム115と第1の記録ビーム114とは互いに逆方向に伝搬している。第2の記録ビーム115と第1の記録ビーム114との各々は代表的に、互いに同じ波長を有する平面波ビームであり、第1の記録ビーム114は代表的に、符号化された情報を包含せず、この情報は第2の記録ビーム内にも存在しない。従って、信号ビーム及び基準ビームと称しうる第1及び第2の記録ビームは代表的に、これらが記録媒体110に入射される角度を除いて互いに実質的に同一である。
【0014】
【0015】
【0016】
【0017】
【0018】
代表的には、記録に用いられる記録ビームの1つにプローブビームが類似している場合に、畳み込み効果により記録中に相互相関を反転させるとともに、ホログラムを記録するのに用いられる他の記録ビームには回折ビームが実質的に類似する。記録に用いられる記録ビームとは異なるk空間分布をプローブビームが有する場合には、ホログラムは、このホログラムを記録するのに用いられるビームとは実質的に相違する回折ビームを生ぜしめることができる。代表的に記録ビームが互いに干渉性である際には、プローブビーム(及び回折ビーム)はそれほど制約されないことにも注意すべきである。多波長のプローブビームは、それぞれ異なるk空間半径とした式(4)に応じた複数の単一波長のビームを互いに重ね合わせたものとして解析することができる。
【0019】
図2A及び2Bはそれぞれ、図1A及び1Bに示すホログラムを照射(照明)することにより発生されたブラッグ整合及びブラッグ不整合を再構成した場合を示す。ブラッグ整合及びブラッグ不整合の双方の場合、ホログラムはこのホログラムを記録するのに用いられた記録ビームよりも短い波長を有するプローブビームで照射される。この短い波長は長い波ベクトルに対応する。従って、プローブk球体172は記録k球体170の半径よりも大きい半径を有する。プローブk球体172及び記録k球体170の双方共図2A及び2Bに示してある。
【0020】
【0021】
図2Aは、ホログラムによるプローブビームの(反射と称することのできる)ミラー状の回折のk空間表現を示しており、この場合kz軸に対するプローブビームの入射角はkz
軸に対する回折ビームの反射角に等しい。図2Bはブラッグ不整合の場合のk空間表現を表しており、この場合
として表すことのできるk空間偏光密度分布180はプローブk球体172上に位置せず、従って、プローブビームの有効な回折は生じない。図2Bに示すブラッグ不整合の場合のこの非回折のk空間分布180は、図2Aに示すブラッグ整合の場合の回折ビームのk空間分布175に幾分類似するが、k空間分布180は回折ビームのk空間分布と称するべきではない。その理由は、プローブビームの有効な回折が生じない為である。
【0022】
ブラッグ整合の場合とブラッグ不整合の場合とを比較するに、ホログラムは、ミラー状の回折が仮にあったとしてもこれを所定のプローブ波長に対し極めて小さい範囲の入射角に亘って生ぜしめるにすぎないこと明らかである。当業者は、この範囲はホログラムを過変調させるか又は極めて薄肉の記録層を用いることにより幾分広げることができるが、これらのステップは依然としてより広範囲の波長及び角度に亘るミラー状の特性をもたらさないようにしうることを認識するであろう。又、これらのステップは不所望な色分光(分散)をもたらすおそれがある。
[k空間におけるスキューミラーの実施例]
【0023】
図1A、1B、2A及び2Bは、単一の正弦波格子により構成された反射ホログラムを表している。図示するように、このホログラムは狭帯域の波長及び入射角においてミラー状の反射率を呈する。このようなホログラムの特定の特性は、周知のコゲルニック(Kogelnik)の結合波理論を適用することにより決定することができる。これとは相違し、本発明の実施例によれば、複数の格子を具えるより一層複雑な格子構造を生ぜしめることにより比較的広い範囲の波長及び角度に亘る新規なミラー状の反射率を提示する。
【0024】
図3は、単一の正弦波格子のブラッグ選択性を示す幾何学的線図である。格子媒体310は、単一波長λ0 の入射光324を主反射光327として反射する厚さdの単一の正弦波格子を包含している。ブラッグ整合状態では、入射光324が角度θi で当り、角度θr で反射光327として反射するものであり、これらの双方の角度はz軸に対して測定した。又、入射光324及び反射光327は反射軸338を規定しており、入射角度θi 及び反射角度θr の角度量はこの反射軸を中心として等しい。従って、反射軸338は入射光324及び反射光327の角度の二等分線である。
【0025】
当業者にとって知られているように、図3の正弦波格子は、角度及び波長の双方のブラッグ選択性を呈している。入射光324が非ブラッグ整合の角度θi +Δθi で当る場合には、回折効率はブラッグ整合回折効率に比べて低下するおそれがある。正弦波格子の選択性は、次式(5)により与えられるその角度ブラッグ選択性ΔθB により特徴付けすることができる。
【数1】
当業者は、弱く回折する正弦波格子では角度θi +Δθi が角度回折効率のプロットにおける最初のヌルポイントを表すことを認識するであろう。従って、入射角がΔθB の数倍よりも多くブラッグ整合角θi から外れると回折が著しく低下するおそれがある点で、量ΔθB は正弦波格子の角度幅を表すものと言うことができる。同様に、弱く回折する正弦波格子の場合、当業者は、入射角がΔθB の数倍よりも多く変化する単色入射光の場合反射軸がかなり変化することを予期するであろう。
【0026】
上述したこととは相違し、本発明によるスキューミラーは、入射角がΔθB の多数倍変化する入射光に対し比較的安定な回折及び実質的に一定の反射軸を呈する。本発明のあるスキューミラーの実施例は、20×ΔθB の入射角の入射光範囲に亘って実質的に一定の反射軸を呈する。本発明の実施例では、20×ΔθB の入射角の入射光範囲に亘る反射軸角は、0.250度未満、又は0.10度未満、又は0.025度未満しか変化しない。
【0027】
同様に、正弦波格子は、次式(6)により与えられるその波長ブラッグ選択性ΔλB により特徴付けすることができる。
【数2】
当業者は、弱く回折する正弦波格子では波長λ0 +ΔλB が波長回折効率のプロットにおける最初のヌルポイントを表すことを認識するであろう。従って、入射波長がΔλB の数倍よりも多くブラッグ整合波長λ0 から外れると有効な回折が生じない点で、量ΔλB は正弦波格子の波長幅を表すものと言うことができる。又、当業者は、式(5)及び(6)をそれぞれ角度及び波長のみを変化させるのに適用することと、角度及び波長の双方を同時に変化させることにより他のブラッグ整合状態が得られるようにしうることとを認識するであろう。
【0028】
格子はその回折角度応答によって特徴付けることもできる。正弦波格子の場合、この回折角度応答は次式(7)により表すことができる。
【数3】
この回折角度応答は、入射角Δθi における僅かな変化に応答する反射角Δθr における変化を表す。これとは相違して、真のミラーは次式(8)により表される角度応答を有する。
【数4】
実質的に式(7)により特徴付けられる回折角度応答を有する装置は格子状の反射特性を呈すると言うことができ、一方実質的に式(8)により特徴付けられる回折角度応答を有する装置はミラー状の反射特性を有すると言える。格子状の反射特性を呈する装置は、反射軸が装置の表面に対し垂直(この場合cosθr =cosθi である)でない限り、入射角に応じて変化する反射軸を必然的に呈するようにもなる。従って、表面法線に制約されない反射軸を中心として光を反射する比較的簡単な装置であって、その様々な角度ブラッグ選択性に及ぶ入射角に対する反射角がその様々な波長ブラッグ選択性に及ぶ波長で一定となるこの装置に対する条件は、単一の正弦波格子によっては満足させることができない。
【0029】
図3は、反射構造とした装置の幾何学的形態を示す。前述した解析は、透過構造における装置の幾何学的形態や、一方又は双方のビームが装置内の全内部反射により案内される装置の幾何学的形態にも適用されることを当業者は認識するであろう。
【0030】
図4A及び4Bは、本発明の一実施例によるk空間におけるスキューミラーの動作を示す。図4Aは、格子媒体内に記録されているとともに本発明の一実施例による多波長のミラー状の回折を生じるように構成されたホログラムに対する2つの
のk空間分布488を示す。図4A及び4Bにおける赤色のk球体490、緑色のk球体492及び青色のk球体493は、それぞれ可視スペクトルの赤色、緑色及び青色の領域にある光の波長に対応するk球体を表す。
【0031】
【0032】
【0033】
本発明の実施例では、図4Aに示すように、
のk空間分布488において原点付近にギャップを呈しているが、必ずしもこのようにする必要はない。このギャップの存在は極めて高いΔθ(すなわち、入射及び反射の双方のグレージング(grazing )角)で性能を制限する可能性がある。
【0034】
本発明の一実施例によれば、スキューミラーの
のk空間分布をkx 、ky 及びkz 軸に対して任意の角度に回転させることができる。本発明のある実施例では、
のk空間分布が実空間における関連の反射面に対し垂直とならないようにする。換言すれば、スキューミラーの実施例の反射軸表面法線と一致させることに制約されない。
【0035】
図5A及び5Bは、k空間におけるスキューミラーを示す。これらの図5A及び5Bは、全ての分布及びベクトルを、原点を中心としてほぼ45°だけ回転されていることを除いて、それぞれ図4A及び4Bと同一である。図4Bの説明に続いて説明するに、図5Bのスキューミラーも、回折を生じる全てのプローブビームの波長及び角度に対しミラー状の回析を生じること明らかである。回折は、ラインセグメント状の
のk空間分布488により規定された反射軸461に対してミラー状になっている。すなわち、反射軸461に対する入射角481の大きさが反射軸461に対する反射角482の大きさに等しい。図5Bはこのような場合の1つを示している。
【0036】
図6Aは、実空間におけるスキューミラーの動作を示す。スキューミラー610は、スキューミラーの表面612に対し垂直であるz軸に対して測定した角度-13°にある反射軸638を特徴としている。このスキューミラー610は、z軸に対して測定した内部入射角-26°とした入射光624で照射されている。主反射光627は、z軸に対して測定した内部反射角180°で反射されている。
【0037】
図6Bは、k空間における図6Aのスキューミラー610を示す。ラインセグメント状の
のk空間分布688は原点を通過しているとともにz軸に対し-13°の角度を有しており、この角度は反射軸638の角度に等しい。記録用のk球体670は、405nmの書込み波長に対応するk球体である。図6B及び6Dにおける赤色のk球体690、緑色のk球体692及び青色のk球体693は、それぞれ可視スペクトルの赤色、緑色及び青色の領域にある光の波長に対応するk球体を表す。
【0038】
【0039】
【0040】
k空間においてスキューミラーの特性を記述する際にここで代表的に用いる用語のプローブビームは、実空間においてスキューミラーの反射特性を記述する際にここで代表的に用いる用語の入射光に類似していることを当業者は認識するであろう。同様に、k空間においてスキューミラー特性を記述する際にここで代表的に用いる用語の回折ビームは、実空間においてスキューミラーの特性を記述する際にここで代表的に用いる用語の主反射光に類似している。従って、実空間においてスキューミラーの反射特性を記述する場合、入射光をホログラム(又はその他の格子構造)により主反射光として反射させると述べるのが代表的であるが、プローブビームをホログラムにより回折させて回折ビームを生ぜしめると述べることは本質的に同じことを言っているものである。同様に、k空間においてスキューミラーの反射特性を記述する場合、プローブビームをホログラム(又はその他の格子構造)により回折させて回折ビームを生ぜしめると述べるのが代表的であるが、入射光を格子構造により反射させて主反射光を生ぜしめると述べることは本発明の実施例の文脈において同じ意味を有するものである。
【0041】
図6Dに示すように、プローブビーム波ベクトル678及び回折ビーム波ベクトル677は、ラインセグメント状の偏光密度分布680を底辺とした実質的に二等辺の三角形の脚部を必ず形成するものである。この三角形の等しい角度は、反射軸638に対して測定した入射角608及び反射角609と必ず一致するものである。従って、スキューミラー610は、反射軸638を中心として実質的にミラー状のように光を反射させる。
【0042】
図6Dの二等辺三角形の構造は、図6Cに示すように
のk空間分布688が原点を通過するラインの断片(セグメント)に実質的に類似する際には、いつでも得られる。従って、偏光密度分布680は二等辺三角形の直線底辺に実質的に類似しており、回折する如何なる長さの如何なる入射内部波ベクトルに対しても反射軸638を中心とするミラー状の反射をもたらす。本発明のある実施例では、格子媒体による分光により、同じ方向であるが長さの異なる内部波ベクトルを生ぜしめ、これらをスネルの法則に従って外部媒体内で異なる方向に屈折させるようにしうる。同様に、分光により、同じ方向で長さの異なる外部波ベクトルを生ぜしめこれらを内部格子媒体内で異なる方向に屈折させるようにしうる。従って、スキューミラーにおいて分光の影響を最小にすることを望む場合には、ラインセグメントの
のk空間分布688に曲線を与えるか、ないしは別の方法で原点を通過するラインから反らすようにすることが望ましい。このような手段により、ある測定基準に従って外部屈折を伴う反射における正味の角分光を低減させることができる。有効な格子媒体の分光は代表的に極めて小さい為、原点を通過する直線からの反れを少なくすることができる。
【0043】
図7Aは、k空間内での図6Aのスキューミラーによる緑色の入射光の反射を示している。波ベクトル778Aを有する入射光は、z軸に対して測定した-35°の内部伝搬角で照射させている。波ベクトル777Aを有する主反射光は、z軸に対して測定した-171°の内部伝搬角で反射されている。入射角708A及び反射角709Aの大きさは双方共、反射軸638に対して測定した22度に実質的に等しく、従って、反射軸638を中心とするミラー状の反射を構成する。偏光密度分布780Aも図7Aに示してある。
【0044】
図7Bは、k空間内での図10Aのスキューミラーによる赤色の入射光の反射を示している。プローブビーム波ベクトル778Bを有する入射光は、z軸に対して測定した-35°の内部伝搬角で照射させている。回折ビーム波ベクトル777Bを有する主反射光は、z軸に対して測定した-171°の内部伝搬角で反射されている。入射角708B及び反射角709Bの大きさは双方共、反射軸638に対して測定した22°に実質的に等しく、従って、反射軸638を中心とするミラー状の反射を構成する。偏光密度分布780Bも図7Bに示してある。
【0045】
図7A及び7Bは、入射角と反射角とを同じにした緑色及び赤色の反射を示し、スキューミラーの無彩色反射特性を表している。図6A~6Dと図7A及び7Bとの幾何学的構造は、特に図示していない角度及び波長を含む反射を生じる全ての角度/波長の組合せでミラー状の反射を生じることを当業者は認識するであろう。
[スキューミラーの光学特性]
【0046】
本発明のスキューミラーの実施例によれば、内部伝搬角に対してミラー状の反射を達成するものであり、関連する境界においてスネルの法則を用いて外角を決定する必要がある。この理由で、スキューミラーにより、収差、分光及びフィールド歪みの何れか又は任意の組合せを外部波面に導入する可能性がある。本発明のある実施例では、補償用の光学要素を用いることにより収差、分光及びフィールド歪みの何れか又は任意の組合せを軽減させることができる。本発明のある実施例では、補償用の光学要素に対称関係にした他のスキューミラーを含めることができる。
【0047】
比較的肉薄であるスキューミラーによれば、細い軸上へのビームの投射に比例して反射ビームにおける角度分解能を低下させる可能性がある。ある場合には、この影響を緩和させるために、記録層の厚さを増大させるのが有利となりうる。
[スキューミラーの反射率]
【0048】
本発明の実施例のスキューミラーは完全に又は部分的に反射性とすることができる。本発明の実施例のスキューミラーでは、比較的広い波長帯域幅及び角度範囲を達成するために比較的高いダイナミックレンジを必要としうる。本発明の一実施例では、405nmでの105°から650nmでの20°まで及ぶ角度範囲を有するスキューミラーが、200μmの記録層内に183個の個々のホログラムを必要とするようにしうる。この構成は、0.03の最大屈折率変調を有する最新式の感光性記録媒体を用いることによりほぼ7.5%の反射率を有するようになる。本発明のある実施例では、記録媒体の厚さを増大させることにより反射率の増大をもたらさないようにしうる。その理由は、回折選択性も厚さとともに増大する為である。
[スキューミラーの適用]
【0049】
一例ではz方向の厚さを有するスラブ状のホログラムを説明したが、前述した説明は内部波長及び内部伝搬角に関連するものである。本発明の範囲内では多くの他の構造が可能である。ここでは数例の代表的な実施例を示しているが、これらに限定されることを意味するものではない。
【0050】
図8Aは、格子媒体内に格子構造805を具えるとともに、反射軸861であってこれを中心として入射光を屈折させる当該反射軸を有するスキュー窓と称される実施例を示している。スキュー窓はスキューミラーの透過性の類似体である。図8Bは、外光を導波路894内に又は導波路894から外部に結合させるのにスキューミラーを用いているスキューカプラの実施例を示している。スキューミラーは透過性とすることもできる。図8Cは、光路を曲げるか、又はイメージ(像)を反転させるか、或いはこれらの双方を達成しうるスキュープリズムの実施例を示す。
【0051】
図9Aは、2つのスキューカップラを有するスラブ導波路994より成る瞳リレーの実施例を示しており、これらのスキューカップラの各々は、格子媒体の表面法線とは異なる反射軸961を有する格子媒体910を具えている。この装置は、均一の1:1のマッピングで入力光を出力光にリレーするように構成されている為、導波路994を介してイメージをアイセンサ又はその他のセンサにイメージを無限遠で送信することができる。このような構成は、種々の適用の中で頭部装着ディスプレイ(HMD)に対し有用とすることができる。逆方向では、場合により視標追跡の目的で眼のイメージをリレーするようにしうる。図9Bは、大きな暗いビーム(large dim beam)の明るい小さいビームへの変換、又はその逆の変換、或いはその双方の変換を達成しうるコンセントレータ/ディフューザとして用いられるスキューミラー900を示している。
【0052】
図10A及び10Bは、スキューミラーの角度フィルタの実施例を示している。図10Aでは、
のk空間1088の分布を、図8Aに示す分布に比べてより一層高い遮断低周波(すなわち、より一層大きなセンターギャップ)を有するように示してある。従って、スキューミラーは、Et におけるθ角度成分を送信している間に狭帯域の入射ビームEinc の低θ(すなわち、垂直に近い入射)角成分のみを反射ビームEr 内に反射させる。当業者は、本発明の一実施例によるラインセグメント状の
の分布の振幅及び位相の双方又は何れか一方を変調することにより任意の円対称の伝達関数を実現しうることを容易に理解しうるであろう。1つ以上の媒体内に記憶した複数のスキューミラーを伴う構成において、スキューミラーにより角度フィルタリングを達成することもできる。これらの構成は円対称にすることに制約されないようにすることができ、且つあるレベルの無彩色処理を達成することができる。
[第1の実施例のスキューミラー]
【0053】
第1の実施例のスキューミラーの本発明の態様は、集合的に表面法線に対して+13.73度の平均反射軸角を有する反射軸を中心として、532nmの波長を有する入射光及び513nmの波長を有する入射光を反射させるように構成したミラーを有する。更なる本発明の態様では、-4.660度~+1.933度の範囲の内部入射角でスキューミラーに入射される532nmの光に対する平均反射軸角(+13.759度)は、532nmの入射光と同じ入射角でスキューミラーに入射される513nmの光に対する平均反射軸角(+13.693度)と0.066度だけ相違するようにする。従って、反射軸は532nmから513nmの波長範囲、すなわち-4.660度から+1.933度までの(表面法線に対する)内部入射角に対して得られる条件に対し実質的に一定となる。
【0054】
第1の実施例のスキューミラー1100を図11A及び11Bに示す。この第1の実施例のスキューミラー1100は、格子媒体1110内に存在する(図11A及び11Bに斜線のハッチラインで示す)格子構造1105を具えている。図面を明瞭とする為に、光、軸及び角度を表す図形要素に近接する格子媒体1110内の領域では、斜線のハッチラインを省略してある。しかし、当業者は、格子構造1105は代表的に上述した領域を占めていることを認識するであろう。この第1の実施例の格子構造1105は、格子媒体1110内で互いに少なくとも部分的に且つ空間的に重なる複数のホログラムを有する。
【0055】
これら複数のホログラムは格子媒体の内部体積内に記録され、従って、格子媒体の表面1112の下方に延在している。従って、これらのホログラムはしばしば、体積ホログラムと称されている。第1の実施例のこれらの複数のホログラムは、405nmの波長を有する記録ビームで記録された48個の体積ホログラムを具える。これらの48個の体積ホログラムの各々は、格子媒体1110内で、代表的に少なくとも部分的に且つ空間的に、これらの48個の体積ホログラムのうちの他の残りの全てのホログラムに重なる。ある実施例では、複数のホログラムの各々が少なくとも部分的に且つ空間的に、これら複数のホログラムの他の全てを除く少なくとも1つに重なるようにする。第1実施例のスキューミラーの48個のホログラムを記録することを以下でスキューミラーの第1の形成方法で説明する。ある実施例では、1~48個のホログラムを、又は4~25個のホログラムを、又は少なくとも5個のホログラムを、又は少なくとも9個のホログラムを、又は少なくとも11個のホログラムを、又は少なくとも24個のホログラムを格子構造が有するようにする。
【0056】
第1の実施例の格子媒体1110は、米国コロラド州ロングモンドのアコニアホログラフィックス、エルエルシー(Akonia Holographics, LLC)から市販されているAK174‐200と称される独占的な感光性高分子光記録媒体である。第1の実施例のこのAK174‐200の記録媒体は、405nmの光に対しほぼ200μmの厚さ、ほぼ18のM/#、ほぼ1.50の屈折率を有する。このAK174‐200の記録媒体のような光記録媒体は、光学手段により格子構造を記録しうる種類の格子媒体である。これらの格子媒体は、代表的に少なくとも70μm~ほぼ1.2mmの厚さであるが、必ずしもこの厚さに限定されない。このAK174‐200の媒体が受ける収縮は代表的に、体積ホログラムを記録した結果として比較的僅か(通常約0.1%~0.2%)である。格子媒体の変形例には、光屈折結晶と、二クロム酸ゼラチンと、光熱屈折ガラスと、分散ハロゲン化銀粒子を包含するフィルムとが含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0057】
第1の実施例のスキューミラー1100の変形例には、ガラスカバー又はガラス基板のような追加の層(図11A及び11Bには図示せず)を含めることができる。この追加の層は、格子媒体を汚染、湿気、酸素、反応性化学種、損傷等から保護する作用をしうる。
この追加の層は代表的に、格子媒体1110に屈折率整合されている。この追加の層に対する屈折率は通常、格子媒体の屈折率に極めて近似している為、この追加の層と格子媒体との界面における光の屈折はしばしば無視しうる。第1の実施例の場合、追加の層と格子媒体との双方に対する屈折率は405nmの波長を有する光に対しほぼ1.5とする。図面を明瞭とするために、この追加の層は図11A及び11Bに図示していない。
【0058】
図11Aに示すように、第1の実施形態の格子構造1105は、第1の反射軸1138(破線で示す)を中心として第1の入射光1124A、1124Bを反射するように構成された物理的特性を有する。第1の入射光は532nmの第1の波長を有し、特定の部位1117において格子媒体1110に入射される。第1の反射軸1138は、格子媒体の表面法線1122とは(表面法線に対し内部の)+13.759度の第1の反射軸角1135だけ異なり、この場合第1の入射光が、表面法線に対し-4.660度(第1の入射光1124Aとして示す)~+1.933度(第1の入射光1124Bとして示す)の第1の内部入射角1125A、1125Bを有し、その結果6.593度の範囲が得られる。
第1の入射光の第1の内部入射角は、以下の表1に示すように、-4.660度から+1.933度までで、約0.067の角度間隔で離間した100個の異なる内角を有する。
第1の実施例のスキューミラーの幾つかの変形例では、第1の入射光に対する第1の内部入射角は、-4.660度から+1.933度までで、約0.67の角度間隔で離間した10個の異なる内角を有するようにする。本明細書及び添付の特許請求の範囲を通して、特定された角度及び角度値は、特に明記しない限り、表面法線に対する内角を指すものである。
【0059】
図11Aに示すように、表面法線に対し-4.660度の第1の入射角1125Aを有する第1の入射光1124Aは、表面法線に対し+32.267度の第1の反射角1126Aを有する第1の反射光1127Aとして格子構造1105により反射される。表面法線に対し+1.933度の第1の内部入射角1125Bを有する第1の入射光1124Bは、+25.668度の第1の内部反射角1126Bを有する第1の反射光1127Bとして反射される。第1の反射光1127A、1127Bは第1の波長を有する。すなわち、第1の実施例では、第1の反射光は532nmの波長を有する。第1の実施例のスキューミラーに対する第1の入射光の角度、第1の反射光の角度及び第1の反射軸角は以下の表1に示してある。
【表1-1】
【表1-2】
【表1-3】
【0060】
入射光及びその反射光は、反射軸に対する入射光の内部入射角が反射軸に対する反射光の内部反射角と同じ大きさを有するように反射軸によって二等分される。従って、入射光及びその反射光は、反射軸を中心として左右相称を呈する。
【0061】
図11Bに示すように、第1の実施例の格子構造1105は更に、第2の入射光1130A、1130Bを第2の反射軸1139を中心として反射させるように構成されている。第2の入射光は513nmの第2の波長を有し、特定の部位1117において格子媒体1110に入射される。この特定の部位1117は、第1及び第2の入射光の両方が照射される格子媒体表面1112の領域を含んでいる。第2の反射軸1139は、格子媒体の表面法線1122から、この表面法線に対する(内部の)+13.693度の第2の反射軸角1136だけ相違しており、この場合第2の入射光は表面法線に対して-4.660度~+1.933度の第2の内部入射角を有する。この第2の内部入射角は、-0.460度から+1.933度までで、ほぼ0.067度の角度間隔で離間されている100個の異なる内角を含んでいる。第1の実施例のスキューミラーの幾つかの変形例では、第2の入射光に対する第2の内部入射角には、-4.660度から+1.933度までで、約0.67度の角度間隔で離間した10個の異なる内角を含むようにする。
【0062】
図11Bに示すように、表面法線に対して-4.660度の第2の内部入射角1128Aを有する第2の入射光1130Aは、格子構造1105により、表面法線に対して+32.075度の第2の内部反射角1129Aを有する第2の反射光1133Aとして反射される。表面法線に対して+1.933度の第2の内部入射角1128Bを有する第2の入射光1130Bは、+25.273度の第2の内部反射角1129Bを有する第2の反射光1133Bとして反射される。第2の反射光1133A、1133Bは、第2の波長を有する。すなわち、第1の実施例では、第2の反射光は、513nmの波長を有する。第1の実施例のスキューミラーに対する第2の入射光角度、第2の反射光角度及び第2の反射軸角を以下の表2に示す。
【表2-1】
【表2-2】
【表2-3】
【0063】
第1の波長(λ1=532nm)は、第2の波長(λ2=513nm)とは19nmだけ異なっており、このことはWF=|λ1-λ2|/[(λ1+λ2)/2]として規定されるウェーブフラクション(波の比率)(WF)により表すことができる。従って、複数の波長が532nmの第1の波長及び513nmの第2の波長を有する場合には、WF=0.036となる。同様に、複数の波長が390nm以下から少なくとも700nmまでの連続スペクトルからなる場合には、WF≧0.57となる。本発明の実施例には、WF≧0.005、WF≧0.010、WF≧0.030、WF≧0.10、WF≧0.250、WF≧1.0又はWF≧2.0とした変形例を含むが、これらに限定されるものではない。この範囲内の第1の波長(λ1)及び第2の波長(λ2)によって規定されるウェーブフラクション(WF)は、λ1及びλ2間の波長の連続スペクトルを含むが、これに限定されるものではない。
【0064】
第2の反射軸角1136は、第1の反射軸角1135と0.066度だけ相違する。従って、第2の反射軸は第1の反射軸と実質的に一致しており、このことは、第2の反射軸角1136が第1の反射軸角1135と1.0度以下だけ相違していることを意味する。
ある範囲の波長に亘る(この場合、0.039のWFに亘る)反射軸角間のこのような僅かな相違は、格子構造が非分散型ミラーとして作用することを意味する。ある適用分野の場合、反射軸角間の相違をWF=0.030に対し0.250度以下となるようにする必要がある。同様に、他のある適用分野の場合、反射軸角間の相違は、WF=0.030に対し0.10度以下に等しくする必要がある。
【0065】
第1の反射軸に対しては、第1の入射光の内部入射角は、-11.867度から-18.464度までの範囲となる。第2の反射軸に対しては、第2の入射光の内部入射角は、-11.670度から-18.368度までの範囲となる。従って、第1の入射光及び第2の入射光の各々は、少なくとも11.670度だけ第1の反射軸からオフセットされていると言うことができる。本発明の実施例では、入射光は、その反射軸から少なくとも1.0度、少なくとも2.0度、少なくとも5.0度又は少なくとも9.0度の内角だけオフセットさせることができる。入射光の反射軸からオフセットされた入射光を反射するように構成されたスキューミラーまたはその他の反射装置は、幾つかの適用分野において有利なものとしうる。例えば、頭部装着型のディスプレイ装置では、画像をユーザの眼に向けて反射させるが、画像をその光源に向けて再帰反射させないようにするのが有利である。ユーザの眼に向かうこのような反射は、入射光がその反射軸から代表的に少なくとも5.0度、より一層代表的には少なくとも9.0度の内角だけオフセットさせる必要がある。同様に、全内部反射を利用する装置では代表的に、入射光がその反射軸からオフセットされるようにする必要がある。
【0066】
入射光及びその反射光の場合の表面法線に対する第1の実施例の外角も図11A及び11Bに示してある。図11Aにおいて明らかなように、第1の入射光1124A、1124Bの場合の表面法線に対する外角は、-7.000度の第1の入射光の外角1113Aから+2.900度の第1の入射光の外角1113Bまでの範囲となる。図11Bにおいて明らかなように、第2の入射光1130A、1130Bの場合の表面法線に対する外角は、-7.000度の第2の入射光の外角1115Aから+2.900度の第2の入射光の外角1115Bまでの範囲となる。第1の反射光の外角1114A、1114B及び第2の反射光の外角1116A、1116Bもそれぞれ図11A及び図11Bに示してある。外角は、空気中に存在するスキューミラーで測定したものであり、屈折はスキューミラー/空気の境界で生じるものである。入射角及び反射角、並びに反射軸角を表1及び表2に示してある。
【0067】
第1の実施例の物理的性質によれば、他の波長を有する光を反射させるとともに、他の角度で格子媒体に入射される光を、実質的に一定の反射軸を中心として反射させるようにすることができる。例えば、第1の実施例の格子構造の反射特性によれば、520.4nmの波長を有する光を13.726度の平均反射軸角を有する反射軸を中心として反射させることができ、この場合反射軸角は、-6.862度から+13.726度までの範囲の入射角及これらの間(20.588度の範囲)の全ての角度に対して0.10度以下だけ変化する。その反射特性の他の例では、第1の実施例は、入射光を(+13.726°の平均反射軸角を有する)反射軸を中心として反射するように構成され、この場合反射軸角は503nm及び537nm(その範囲は34nmであり、WF=0.065で、503nm及び537nm間の波長の連続スペクトルを含む)に対し0.20度だけ変化し、(表面法線に対する内部の)入射角は-1.174度である。
【0068】
図面を明瞭にするために、図11A及び11Bにおける光は、格子構造1105の中心に近接する点で反射されるものとして示してある。しかし、光は代表的に特定の点以外の格子構造全体に亘って反射されることを当業者は認識するものである。
【0069】
本発明のある実施例では、第1の入射光及び第2の入射光は、それぞれ532nm及び513nm以外の波長を有するようする。同様に、本発明の実施例は、表面法線と一致しうる又は表面法線とは異なるようにしうる第1及び第2の反射軸を含むようにする。
[第2の実施例のスキューミラー]
【0070】
第2の実施例のスキューミラーの本発明の態様は、集合的に表面法線に対して+14.62度の平均反射軸角を有する反射軸を中心として、532nmの波長を有する入射光及び513nmの波長を有する入射光を反射させるように構成したミラーを有する。更なる本発明の態様では、-9.281度~-2.665度の範囲の内部入射角でスキューミラーに入射される532nmの光に対する平均反射軸角(+14.618度)は、532nmの入射光と同じ入射角でスキューミラーに入射される513nmの光に対する平均反射軸角(+14.617度)とは0.001度よりも少なく相違するようにする。従って、反射軸は532nmから513nmの波長範囲、すなわち-9.281度から-2.665度までの(表面法線に対する)内部入射角に対して得られる条件に対して実質的に一定となる。
【0071】
第2の実施例のスキューミラー1200を図12A及び12Bに示す。この第2の実施例のスキューミラー1200は、格子媒体1210内に存在する(図12A及び12Bに斜線のハッチラインで示す)格子構造1205を具えている。図面を明瞭とする為に、光、軸及び角度を表す図形要素に近接する格子媒体1210内の領域では、斜線のハッチラインを省略してある。しかし、当業者は、格子構造1205は代表的に上述した領域を占めていることを認識するであろう。この第2の実施例の格子構造1205は、格子媒体1210内で互いに少なくとも部分的に重なる複数のホログラムを有する。第2の実施例のこれら複数のホログラムは、405nmの波長を有する記録ビームで記録された49個の体積ホログラムを具えている。これらの49個の体積ホログラムは、格子媒体1210内で互いに重なっており、媒体の収縮を考慮して記録ビームの入射角を調整することを除いて第1の実施例のスキューミラーと類似する方法でこれらの体積ホログラムを記録する。第2の実施例のスキューミラーの49個のホログラムの記録に関しては、以下で第2のスキューミラー形成方法で説明する。
【0072】
第2の実施例の格子媒体1210は、米国コロラド州ロングモンドのアコニアホログラフィックス、エルエルシー(Akonia Holographics, LLC)から市販されているAK233‐200と称される独占的な感光性高分子光記録媒体である。第2の実施例のこのAK233‐200の記録媒体は、405nmの波長を有する光に対しほぼ200μmの厚さ、ほぼ24のM/#、ほぼ1.50の屈折率を有する。このAK233‐200の媒体は代表的に、体積ホログラムを記録する結果として約0.50%だけ収縮する。
【0073】
第2の実施例のスキューミラー1200の変形例には、ガラスカバー又はガラス基板のような追加の層(図12A及び12Bには図示せず)を含めることができる。この追加の層は代表的に、格子媒体に屈折率整合されており、格子媒体1210とこの追加の層との間に屈折率整合流体の薄膜が存在するようにしうる。
【0074】
図12Aに示すように、第2の実施形態の格子構造1205は、第1の反射軸1238(破線で示す)を中心として第1の入射光1224A、1224Bを反射するように構成された物理的特性を有する。第1の入射光は532nmの第1の波長を有し、特定の部位1217において格子媒体1210に入射される。第1の反射軸1238は、格子媒体の表面法線1222とはこの表面法線に対し(内部の)+14.618度の第1の反射軸角1235だけ異なり、この場合第1の入射光が、(6.616度の範囲)を含む-9.281度及び-2.665度間にある、表面法線に対する第1の内部入射角1225A、1225Bを有する。第1の内部入射角は、-9.281度から-2.665度までで、ほぼ0.066の角度間隔で離間した101個の異なる内角を有する。第2の実施例のスキューミラーの幾つかの変形例では、第1の入射光に対する第1の内部入射角は、-9.281度から-2.665度までで、約0.66の角度間隔で離間した10個の異なる内角を有するようにする。
【0075】
図12Aに示すように、表面法線に対し-9.281度の第1の入射角1225Aを有する第1の入射光1224Aは、表面法線に対し+38.610度の第1の反射角1226Aを有する第1の反射光1227Aとして格子構造1205により反射される。表面法線に対し-2.665度の第1の内部入射角1225Bを有する第1の入射光1224Bは、+31.836度の第1の内部反射角1226Bを有する第1の反射光1227Bとして反射される。第1の反射光1227A、1227Bは第1の波長を有する。すなわち、第2の実施例では、第1の反射光は532nmの波長を有する。第2の実施例のスキューミラーに対する第1の入射光の角度、第1の反射光の角度及び第1の反射軸角は以下の表3に示してある。
【表3-1】
【表3-2】
【表3-3】
【0076】
図12Bに示すように、第2の実施例の格子構造1205は更に、第2の入射光1230A、1230Bを第2の反射軸1239を中心として反射させるように構成されている。第2の入射光は513nmの第2の波長を有し、従って、この第2の波長は第1の波長とは19nm又は0.036のウェーブフラクション(WF)だけ相違している。第2の入射光は、特定の部位1217において格子媒体1210に入射される。この第2の実施例の特定の部位1217には、第1及び第2の入射光の双方が照射する格子媒体の表面1212の領域が含まれる。第2の反射軸1239は、表面法線に対して(内部の)+14.617度の第2の反射軸角1236だけ格子媒体の表面法線1222と相違しており、この場合、第2の入射光は表面法線に対し-9.281度から-2.665度までの範囲に及ぶ第2の内部入射角1228A、1228Bを有している。第2の入射光の第2の内部入射角は、-9.281度から-2.665度までのほぼ0.066度の角度間隔で離間した101個の異なる内角を含んでいる。第2の実施例のスキューミラーの幾つかの変形例では、第2の入射光に対する第2の内部入射角は、-9.281度から-2.665度までで約0.66度の角度間隔で離間した10個の異なる内角を含むようにする。
【0077】
図12Bに示すように、表面法線に対して-9.281度の第2の内部入射角1228Aを有する第2の入射光1230Aは、格子構造1205により、表面法線に対して+38.598度の第2の内部反射角1229Aを有する第2の反射光1233Aとして反射される。表面法線に対して-2.655度の第2の内部入射角1228Bを有する第2の入射光1230Bは、+31.836度の第2の内部反射角1229Bを有する第2の反射光1233Bとして反射される。第2の反射光1233A、1233Bは、第2の波長を有する。すなわち、第2の実施例では、第2の反射光は、513nmの波長を有する。第2の実施例のスキューミラー1200に対する第2の入射光角度、第2の反射光角度及び第2の反射軸角を以下の表4に示す。
【表4-1】
【表4-2】
【表4-3】
【0078】
図面を明瞭にするために、図12A及び12Bにおける光は、格子構造1205の中心に近接する点で反射されるものとして示してある。しかし、光は代表的に特定の点以外の格子構造全体に亘って反射されることを当業者は認識するものである。
【0079】
第2の実施例では、第2の反射軸角は、WF=0.036に亘るほぼ0.0005度だけ第1の反射軸角と相違するようにする。この極めて低い変化レベルは、反射角を測定するために使用される計測精度のレベルに近づくようにすることができる。従って、本発明の目的のために、第2の反射軸は、第1の反射軸と相違させないことが考えられる。ある適用分野に対しては、反射軸角間の差を0.025度以下とする必要がある。他のある適用分野に対しては、反射軸角間の差をWF≧0.036に亘る0.010度以下とする必要がある。第2の実施例のスキューミラーは、これらの要件を満たしている。スチューデントのt検定(両側)によれば、第1の反射軸角と第2の反射軸角との間に差がないことを表している(1グループ当りN=101;P=0.873)。更に、0.001度以下の差は、スキューミラーの反射角を測定するのに用いられる計測精度に対し問題となるものである。従って、本発明の目的のために、第2の反射軸が第1の反射軸と0.001度以下だけ相違する場合には、第2の反射軸は第1の反射軸と相違させないことが考えられる。
【0080】
第2の実施例のスキューミラーの場合、第1の入射光の入射角は第1の反射軸に対して-17.250度から-23.946度まで変化する。第2の反射軸に対する第2の入射光の入射角は、-17.250度から-23.940度まで変化する。従って、第1の入射光及び第2の入射光の各々は、第1の反射軸から少なくとも17.20度だけオフセットされているということができる。第2の実施例のスキューミラーの場合、入射光及びその反射光のそれぞれに関する、反射軸に対する入射角及び反射角は表3及び表4に示してある。
【0081】
入射光及びその反射光の場合の表面法線に対する第2の実施例の外角も図12A及び12Bに示してある。図12Aにおいて明らかなように、第1の入射光1224A、1224Bの場合の表面法線に対する外角は、-14.000度の第1の入射光の外角1213Aから-4.000度の第1の入射光の外角1213Bまでの範囲となる。図12Bにおいて明らかなように、第2の入射光1230A、1230Bの場合の表面法線に対する外角は、-14.000度の第2の入射光の外角1215Aから-4.000度の第2の入射光の外角1215Bまでの範囲となる。第1の反射光の外角1214A、1214B及び第2の反射光の外角1216A、1216Bもそれぞれ図12A及び図12Bに示してある。
【0082】
代表的には、入射光及びその反射光を逆にして、以前の反射角が入射角となり、又入射角が反射角となるようにすることができることを、当業者は認識するであろう。しかし、本発明を開示する目的のためには、入射角の範囲の詳述又は説明は、反射軸の一方の側又は他方の側(双方ではない)に向けられた入射光を、或いは再帰反射された入射光の場合には、反射軸に対してゼロ(0)の入射角を言及するものである。従って、ある範囲の入射角は、反射軸に対して正及び負の双方の角度を含まない。ここで図示し且つ説明したように、それぞれの反射角に対する入射角は負(すなわち、時計回りの方向)である。しかし、この取り決めは便宜上及び簡略化のために用いるものであり、スキューミラーが反射軸の一方の側に存在する入射光のみを反射しうることを教示したり、示唆したり、或いは暗示することを意味するものではない。
[第3の実施例のスキューミラー]
【0083】
第3の実施例のスキューミラーは、格子媒体中に存在する格子構造を具えており、この場合この格子構造は、格子媒体内で互いに重なり合う21個の体積ホログラムを具えている。
【0084】
第3の実施例の格子媒体は、(ドイツのレーヴァークーゼン所在の)コベストロ社(Covestro AG)(旧社名はバイエル・マテリアルサイエンス社(Bayer MaterialScience AG))から入手しうるBAYFOL(登録商標)HX TP フォトポリマーフィルムと称される市販の感光性ポリマー光記録媒体である。この第3の実施例のBAYFOL HX TPの記録媒体は、ほぼ70μmの厚さであり、代表的に体積ホログラムを記録する結果として約1.0%だけ収縮する。従って、代表的には、第3の実施例の格子媒体内に体積ホログラムを記録する際に収縮補償が採用される。この収縮補償は以下で第3の実施例のスキューミラーの形成方法で説明する。
【0085】
第3の実施例のスキューミラーの変形例には、ガラスカバーまたはガラス基板のような追加の層を含めることができる。この追加の層は、代表的に、格子媒体に屈折率整合させ、第3の実施例の格子媒体とこの追加の層との間に屈折率整合流体の薄膜を存在させることができる。
【0086】
第3の実施例の格子構造は、第1の入射光を第1の反射軸を中心として反射させるように構成させた物理的特性を有する。第1の入射光は、532nmの第1の波長を有し、特定の部位で格子媒体に入射させる。第1の反射軸は、表面法線に対して+9.419度の第1の(内部)反射軸角だけ格子媒体の面法線と異なっており、この場合、第1の入射光は、(6.585度の範囲)を含んだ、-6.251度及び+0.334度間にある表面法線に対する内角を有している。この第1の入射光の内角は、ほぼ6.59度の範囲に及ぶ複数の角度を含んでおり、これらの複数の角度は、-6.251度から+0.334度まででほぼ0.067度の角度間隔で離間した100個の異なる内角を含んでいる。
【0087】
表面法線に対して-6.251度の内角を有する第3の実施例の第1の入射光は、格子構造により表面法線に対して+25.027度の内角を有する第1の反射光として反射される。表面法線に対して+0.334度の内角を有する第1の入射光は、+18.487度の内角を有する第1の反射光として反射される。この第1の反射光は第1の波長を有する。すなわち、第3の実施例では、第1の反射光が532nmの波長を有する。
【0088】
第3の実施例の格子構造は更に、第2の入射光を第2の反射軸を中心として反射するように構成する。この第2の入射光は513nmの第2の波長を有し、従って、第2の波長は第1の波長と19nm又は0.036のウェーブフラクション(波の比率)(WF)だけ相違する。第2の入射光は、特定の部位で格子媒体に入射される。第2の反射軸は、表面法線に対して+9.400度の第2の(内部)反射軸角だけ格子媒体の表面法線と相違しており、この場合、第2の入射光は、表面法線に対し、-6.251度から+0.334度までの範囲に及ぶ内角を有する。この第2の入射光の内角は、-6.251度から+0.334度まででほぼ0.067度の角度間隔で離間した100個の異なる内角を含んでいる。
【0089】
表面法線に対して-6.251度の内角を有する第3の実施形態の第2の入射光は、格子構造によって表面法線に対して+24.967度の内角を有する第2の反射光として反射される。表面法線に対して+0.334度の内角を有する第2の入射光は、+18.425度の内角を有する第2の反射光として反射される。この
第2の反射光は第2の波長を有する。すなわち、第3の実施例では、第2の反射光は、513nmの波長を有する。又、第3の実施例の第2の反射軸は、第1の反射軸と実質的に一致している。
【0090】
以下の表5は、第1、第2及び第3の実施例のスキューミラーの反射特性を要約している。
【表5】
* 平均角は表面法線に対するものであるとともに入射のN個の入射角におけるN個の測定の平均であり、入射光及び反射光の双方は明記した波長(λ)を有している。
** λ=532nm及びλ=513nmでの平均反射軸角間の差は絶対値であり、従って、負数は排除するものである。
*** 入射の入射光角は表面法線に対する。
【0091】
入射角の範囲に亘って反射軸が一定に保たれているこの入射角の範囲はΔθB に関して表すことができる。以下の表6に示すように、第1の実施例のスキューミラーに対する反射軸角は、WF≧0.036だけ互いに相違する複数の波長で≧20×ΔθB の入射角の範囲を有する入射光に対し0.015度よりも小さい角度だけ変化する。第2の実施例のスキューミラーの場合、反射軸角は、WF≧0.036だけ互いに相違する複数の波長で≧20×ΔθB の入射角の範囲を有する入射光に対し0.020度よりも小さい角度だけ変化する。
【表6】
* 入射光及び反射光の双方の波長。
** ほぼ20×ΔθB の入射角の変化を有する入射光に対する(表面法線に対する内部の)反射軸角の差
*** 反射軸角の差をこの表に記録するための、ほぼ20×ΔθB に等しい(表面法線に対する内部の)入射の入射光角の範囲。
*ΔθB はこの表に記録した入射光角の中間点に入射される入射光角に対し計算する。
[スキューミラーの形成方法]
【0092】
スキューミラーを形成するための例示的なシステム1350を図13に示す。この例示的なシステム1350は、第1のミラー1352Aと第2のミラー1352Bとの間に配置された格子媒体1310を有する。第1及び第2のミラーは、第1の記録ビーム1354及び第2の記録ビーム1355が互いに交差及び干渉するようにこれら記録ビームを指向させて、ホログラム1305として格子媒体1310内に記録された干渉パターンを形成するように配置されている。ホログラム1305は格子構造の一例である。
【0093】
記録ビームは、ホログラフィック技術の当業者によってしばしば使用されている慣例に従って、基準ビーム及び信号ビームと称することができる。しかし、第1及び第2の記録ビームの各々は代表的に、(格子媒体に入射される角度を除いて)互いに同一である単色の平行平面波ビームである。更に、いわゆる信号ビームには代表的に、符号化されたデータが含まれておらず、この符号化されたデータはいわゆる基準ビームにも存在しない。従って、一方の記録ビームを信号ビームとして、他方の記録ビームを基準ビームとして指定することは任意であり、“信号”及び“基準”は、2つの記録ビーム間を区別する作用をするものであり、一方の記録ビームに、他方の記録ビームには存在しない符号化されたデータが含まれていることを表す作用をするものではない。
【0094】
本発明のある実施例では、記録ビームが、互いに異なる幅を有するようにでき、又はこれらを同じにすることができる。これらの記録ビームは、それぞれ互いに同じ強度を有するようにでき、又はビーム間で強度を異ならせることができる。格子媒体1310は代表的に、第1のプリズム1359Aと第2のプリズム1359Bとの間の適所に、これらプリズムと格子媒体との双方に適合した流体屈折率を用いて固定させる。スキュー軸1361は、表面法線1322に対してスキュー角1364にある。第1の記録ビーム1354及び第2の記録ビーム1355はそれぞれ、表面法線1322に対して第1の記録ビームの内角1356及び第2の記録ビームの内角1357にある。ビーム差角(α)1358は、第1の記録ビーム1354及び第2の記録ビーム1355の互いに対する角度である。本発明の実施例では、αは0度から180度までの範囲内にあるようにする。各ホログラムに対するスキュー角1364は、以下の式(9)により計算することができる。
【数5】
ここで、θskewはスキュー角、すなわち表面法線に対するスキュー軸の内角であり、
θR1は表面法線に対する第1の記録ビームの内角であり、
θR2は表面法線に対する第2の記録ビームの内角である。
図13において明らかなように、第1の記録ビーム1354及び第2の記録ビーム1355はスキュー軸1361を中心として対称的であり、スキュー軸に対する第1の記録ビームの内角1366とスキュー軸に対する第2の記録ビームの内角1367との合計は180度に等しくなる。スキュー軸に対する第1の記録ビームの内角1366及び第2の記録ビームの内角1367は、第1及び第2の記録ビームのそれぞれの内角1356及び1357と、スキュー角1364とにより容易に計算される。
【0095】
第1及び第2の記録ビームの各々は代表的に、レーザ光源から生じる平行平面波ビームである。これらの平面波ビームは、各記録ビームに対して複数の光線描写を用いて図示することができる。しかし、図面を明瞭にするために、図13では、第1及び第2の記録ビームを、これらの各記録ビームに対し単一の光線描写を用いて図示している。
【0096】
例えば第1の記録ビーム1354が第1のプリズム1359Aの空気/プリズム境界と交差し、第2の記録ビーム1355が第2のプリズム1359Bの空気/プリズム境界と交差する場合の空気/プリズム境界での屈折は、図13では正確に定量的にではなく比喩的に示している。プリズムは代表的に、格子媒体1310と屈折率整合している為、プリズム/格子媒体境界における屈折は通常無視することができる。本発明の実施例では、格子媒体及びプリズムの各々は、ほぼ1.50の屈折率を有するようにする。
【0097】
(ホログラムの集合に対する平均スキュー角を含む)ホログラムに対するスキュー角は、反射軸角と実質的に同一にし、これによりスキュー角又は平均スキュー角が反射軸角の1.0度内にあることを意味するようにすることができる。スキュー角及び反射軸角は理論的に同一にしうることを当業者は認識するであろう。しかし、システムの正確度及び精密度の限界や、ホログラムを記録する際に生じる記録媒体の収縮や、他の誤差源のために、記録ビーム角に基づいて測定又は評価するようなスキュー角又は平均スキュー角は、スキューミラーによって反射された光の入射角及び反射角によって測定されるような反射軸角に完全には整合し得ないおそれがある。それにもかかわらず、媒体の収縮及びシステムの不完全性がスキュー角及び反射軸角を評価する際の誤差の一因となる場合でも、記録ビーム角に基づいて決定されたスキュー角は、入射光及びその反射光の角度に基づいて決定された反射軸角の1.0度以内にすることができる。スキュー軸/反射軸は一般に、スキューミラーを形成することを言及する際に(例えば、スキューミラー媒体内にホログラムを記録することを表現する際に)、スキュー軸と称され、又スキューミラーの光反射特性を言及する際には反射軸と称される。
【0098】
第1の記録ビーム1354及び第2の記録ビーム1355を格子媒体に入射させる角度は、第1のビームミラー1352A及び第2のビームミラー1352Bをそれぞれ回転させることによって調整される。回転矢印1353によって示すビームミラーの回転は、入射角を調整するだけでなく、格子媒体1310内で記録ビームが互いに干渉させる場合にも変わるものである。従って、入射角を調整するためにビームミラーを回転させる場合、格子媒体1310及びプリズム1359A、1359Bは、格子媒体において以前に記録されたホログラムとほぼ同じ位置に新たなホログラムを記録するために並進移動させる。
格子媒体1310の並進移動は、並進移動矢印1360によって示してある。
【0099】
例示的なシステム1350の変形例では、可変波長レーザを用いて、第1及び第2の記録ビームの波長を変化させるようにする。第1及び第2の記録ビームの入射角は、第1及び第2の記録ビームの波長を変化させる際に一定に保つことができるが、必ずしもこのようにする必要はない。
[スキューミラーを形成する第1の方法]
【0100】
スキューミラーを形成する第1の方法を図14に示す。この第1の方法のスキューミラーは第1の実施例のスキューミラー1100であり、このスキューミラーは図11A及び図11Bにも示してあり、その反射特性は上述してある。この第1の方法は代表的に、図13に図示され且つ上述した例示的なシステム1350のようなスキューミラー形成システムを利用する。しかし図面を明瞭とする為に、図14では、第1及び第2のプリズムを省略しており、空気/格子媒体の境界又は空気/プリズムの境界での屈折を示すことなく記録ビームを図示している。しかし、当業者は代表的に、空気/プリズムの境界(又は屈折率整合プリズムが使用されない場合の空気/格子媒体の境界)で屈折が生じ、上述した内角を達成するシステム又は方法を設計する際にこの屈折を考慮する必要があることを認識するであろう。
【0101】
第1の記録ビーム1154及び第2の記録ビーム1155は、第1の実施例の格子媒体1110に指向され、ここでこれら記録ビームが互いに干渉して干渉パターンを生ぜしめ、この干渉パターンが格子媒体1110内に体積ホログラムとして記録される。これら記録ビームは代表的に、外部キャビティのチューナブル(波長可変)ダイオードレーザからの405nmの光ビームを2つの分離したビームに分割することによって生ぜしめられる。
この光ビームは、偏光ビームスプリッタを用いて分割され、且つ2分の1波長板を用いて、2つの分離したビームの一方の極性をp偏光からs偏光に変えて2つの分離したビームの双方がs偏光となるようにする。一方のs偏光ビームは第1の記録ビーム1154となり、他方のs偏光ビームは第2の記録ビーム1155となる。第1及び第2の記録ビームの各々は、405nmの波長を有する平行平面波ビームである。
【0102】
第1の実施例のスキューミラーは、記録ビームの波長とは実質的に異なる波長で、特に記録ビームの波長よりも著しく長い波長で光を反射させる反射特性を有していることから利点を得るものである。第1の実施例のホログラムが405nmの波長の記録ビームで記録されるAK174‐200の格子媒体は、200μmの媒体の場合ほぼ0.07の吸光度単位で405nmの光を吸収する。逆に、AK174‐200の格子媒体は、425nmより大きい可視光波長に対しては無視しうる吸光度単位を有する(この吸光度単位は控えめに200μmあたり0.002よりも少なく推定したものであり、無視しうる吸光度単位は、代表的にはゼロと区別できない)。従って、AK174‐200の格子媒体は、第1の実施例のスキューミラーが反射するように構成されている(例えば、503nm~537nmの範囲内の)緑色光より少なくとも35倍強く(405nmでの)記録ビーム光を吸収する。
【0103】
第1の実施例のスキューミラー1100の格子構造1105は、格子媒体1110内に48個の体積ホログラムを記録することによって生ぜしめられている。これら48個のホログラムの各々は、それ自体の独自の第1の記録ビームの内角1156と、それ自体の独自の第2の記録ビームの内角1157とで記録されている。第1の記録ビームの内角1156は、格子媒体1110の表面法線1122に対する第1の記録ビーム1154の内角であり、第2の記録ビームの内角1157は、表面法線1122に対する第2の記録ビーム1155の内角である。ビーム差の角度(α)1158は、第1の記録ビーム1154及び第2の記録ビーム1155の相互間の角度である。
【0104】
第1の実施例のスキューミラーに対する第1及び第2の記録ビームの各々は、ほぼ3mW/cm2 の放射照度を有する。48個のホログラムのうちの最初の(第1の)ホログラムは代表的に35mJ/cm2 のエネルギー線量で記録し、その後の各ホログラムに対し約1.5%だけ線量を増大させる。48個の全てのホログラムを記録するための総エネルギー線量は、代表的に約2.5J/cm2 である。ここに記載した放射照度及びエネルギー線量は単なる例示的なものである。スキューミラー及びスキューミラー形成方法の他の実施例では、異なるレベルの放射照度及びエネルギー線量を使用することができる。
【0105】
第1のホログラムは、+53.218度とした第1の記録ビームの内角1156と、+154.234度とした第2の記録ビームの内角1157とを使用して記録し、101.016度のビーム差の角度(α)1158が得られるようしにしている。48個のホログラムの各々に対するスキュー軸1161は、表面法線1122に対して+13.726度のスキュー角1164を有し、従って、48個のホログラムの平均スキュー角も+13.726度である。各ホログラムのスキュー角は、前述した式(9)に応じて計算される。
これに続く回折格子構造の各ホログラムに対しては、第1の記録ビームの内角1156及び第2の記録ビームの内角1157を代表的に、大きさが互いにほぼ等しいが逆の正負符号を有する量だけ変化させ、これによりスキュー軸を中心として第1及び第2の記録ビームの対称性が維持されるようにする。
【0106】
第2のホログラムの場合、例えば、第1の記録ビームの内角を+0.091度だけ変化させ、第2の記録ビームの内角を-0.091度だけ調整し、第1の記録ビームの内角1156が+53.309度となり、第2の記録ビームの内角が+154.1433度で、α=100.834度となるようにする。1つのホログラムから次のホログラムへの記録ビームの内角の変化の大きさは、第1のホログラムから第2のホログラムまでの記録ビームの内角の変化に対しての0.091度から、47番目のホログラムか48番目のホログラムまでの記録ビームの内角の変化に対しての0.084度までで、48個の体積ホログラムに亘って僅かに変化させる(すなわち、1つのホログラムから次のホログラムへの記録ビームの内角の変化を変更させる)。しかし、第1及び第2の記録ビームの内角の各変化に対し、変化の大きさは同じであり、正負符号は第1及び第2のビームの角度の各々に対して逆である。第1の実施例の格子構造1105の最終の(48番目の)ホログラムに対する第1の記録ビームの内角1156及び第2の記録ビームの内角1157は、それぞれ+57.332度及び+150.120度であり、α=92.788度とする。本発明のある実施例では、第1の記録ビームの内角の変化の大きさを、第2の記録ビームの内角の変化の大きさとは極めて僅かに相違させ、これによりシステムの不正確さ、スネル効果、分散、又はホログラムを記録することから生じる格子媒体の収縮を補償しうるようにする。
【0107】
格子媒体1110の位置は、(並進矢印1160により示すように)1つのホログラムを記録する際と次のホログラムを記録する際との間で調整し、48個のホログラムの各々の少なくとも一部が、48個のホログラムのうちの他の全てのホログラムの少なくとも一部分と共有される格子媒体内の共通スペース内に記録されるようにする。従って、48個のホログラムの各々が、格子媒体中で48個のホログラムのうちの他の全てのホログラムと少なくとも部分的に且つ空間的に重なり合うものである。
【0108】
第1の記録ビームの内角1156は+53.218度から+57.332度まで(4.114度の範囲に)及び、第2の記録ビームの内角1157は+154.234度から+150.120度まで(4.114度の範囲に)及ぶ。図14において明らかなように、第1の方法の各ホログラムの場合、第1の記録ビーム1154及び第2の記録ビーム1155は、スキュー軸1161を中心として対称的であり、スキュー軸1166に対する第1の記録ビームの内角(第1のホログラムの場合+38.492度)とスキュー軸1167に対する第2の記録ビームの内角(第1のホログラムの場合+141.508度)との合計は180度(38.492°+141.508°=180°)に等しくなる。スキュー軸に対する第1の記録ビームの内角1366及び第2の記録ビームの内角1367は、第1及び第2の記録ビームのそれぞれの内角1156及び1157と、スキュー角1164とにより容易に計算される。(格子媒体の表面法線に対する内角として規定される)第1及び第2の記録ビームの内角と、第1及び第2の記録ビームのスキュー軸に対する内角とは後の表7に列挙してある。48個の体積ホログラムを記録した後、AK174‐200の記録媒体を、当業者にとってよく知られている処理によって光硬化させる。[ここではもっと必要とする]
【0109】
【0110】
第1の実施例のスキューミラーに使用されるAK174‐200の格子媒体の場合、nは405nmの光に対して1.50と推定される。第1の実施例のスキューミラーを形成する場合にホログラムを記録するために使用される第1及び第2の記録ビームの波長は、405nm=405×10-9mである。従って、AK174‐200の格子媒体における第1及び第2の記録ビームに対し、k=2.327×107 ラジアン/メートル(rad/m)が得られる。第1の実施例のスキューミラーのホログラムに対するKGは、最初のホログラムに対する3.592×107 rad/mから48番目のホログラムに対する3.370×107 rad/mまで及ぶ。
【0111】
任意の2つのホログラム間の格子ベクトルにおける差の絶対値|ΔKG |は、ホログラムの“間隔”(すなわち、任意の2つのホログラムに対する格子ベクトルがk空間において互いに如何に接近しているか)を表すための有用な測定基準としうる。第1の実施例の各ホログラムとその隣接ホログラムとに対する|ΔKG |は比較的一定であり、48個のホログラム全ての平均値は4.715×104 rad/mであり、変動係数は0.11%である。各ホログラムに対する隣接ホログラムは、この各ホログラムに対するKG と比較して次に高い又は低いKG を有するホログラムから成っている。第1の実施例の各ホログラムとその隣接ホログラムとに対する|ΔKG |は、4.70×104 rad/mと4.73×104 rad/mよりも低い値との間の範囲内にある。最初のホログラムと48番目のホログラムとの間の|ΔKG |は2.22×106 rad/mである。
【0112】
スキューミラーの実施例では、ホログラムと、その隣接ホログラムとの間の(隣接|ΔKG |と称することのできる)|ΔKG |は、代表的に5.0×103 rad/mと、1.0×107 rad/mとの間の範囲、より代表的には1.0×104 rad/mと、5×106 rad/mとの間の範囲、更により代表的には1.0×104 rad/mと、1.0×106 rad/mとの間の範囲内にあるが、必ずしもこのようにする必要はない。本発明のある実施例では、複数のホログラムに対する平均の隣接|ΔKG |は、8.0×104 rad/mと、5.0×106 rad/mとの間の範囲内にあるものであり、1.0×105 rad/mと、1.0×106 rad/mとの間の範囲内にあるようにすることもできる。
【0113】
本発明のある実施例では、複数のホログラムに対する平均の隣接|ΔKG |は、スキューミラーの性能に強く影響を及ぼす。一組のホログラムに対する比較的小さな平均の隣接|ΔKG |は、比較的高いスキューミラーの画像忠実度に対応させることができる。しかし、一組のホログラムに対する隣接|ΔKG |が比較的小さい場合には、この一組のホログラムの総数は、このホログラムの組に対する所定の|ΔKG |の範囲を広げるために、一層多くなる。更に、格子媒体の記録容量が、代表的に(通常、M/#として表される)ダイナミックレンジによって制限されることを考慮すると、一組でより多くのホログラムを記録することは、通常この組内の各ホログラムがより弱くなる(すなわち、媒体内により一層ぼんやり記録される)ことを意味するようになる。従って、ホログラムの組に対し比較的小さな隣接|ΔKG |を有すること(このことはより多くのホログラムを必要とすることを意味するが、他のことは等しい)と、この組に対しより大きな隣接|ΔKG |を有し、これにより記録を少なくするがより強力なホログラムを可能にすることとの間には対立関係が存在する。より少なく且つより強力なホログラムは代表的に、スキューミラーにより強力な反射が得られるようにする。更に、比較的広帯域の照明源(例えば、レーザの代わりに用いるLED)を使用することにより、より大きな平均隣接|ΔKG |を有するスキューミラーにおいて画像忠実度の損失を低減させることができる。本発明のある実施例では、複数のホログラムに対する平均隣接|ΔKG |が5.0×103 rad/m及び1.0×107 rad/m間の範囲内にある場合に、スイートスポットが存在するようにする。
スイートスポット内に平均隣接|ΔKG |が存在するスキューミラーの実施例は代表的に、画像忠実度と反射率との所望のバランスを呈するようにする。
【0114】
第1の実施例のスキューミラーの48個のホログラムの各々の場合のα、KG 及び|ΔKG |に対する値を以下の表7に示すことができる。
【表7-1】
【表7-2】
【0115】
第1のスキューミラーの形成方法の変形例では、上述したようにスキュー軸を中心とする第1及び第2の記録ビームの対称性を維持して、第1及び第2の記録ビームの内角を連続的に且つ同調的に調整することによりホログラムを生ぜしめる。従って、第1の記録ビームを、+53.218度の第1の記録ビームの内角から+57.332度の第1の記録ビーム角まで走査させて、単一のホログラムを記録する。これと同時に、第2の記録ビームを+154.234度の第2の記録ビームの内角から+150.120度まで走査させる。従って、単一のホログラムを記録している間、αを101.016度から92.788度まで変化させ、KG を3.592×107 rad/mから3.370×107 rad/mまで変化させる。格子媒体の位置は、単一のホログラムが記録されている間に調整し、単一のホログラムが、記録ビーム角が変化するにつれて比較的広いスペースに亘ってスミア(smear )を生ぜしめることなく、格子媒体内の比較的小さなスペースに記録されるようにする。従って、単一のホログラムは、48組の固有の第1記録ビーム及び第2記録ビームの内角で記録された48個の個別のホログラムに極めて類似した反射特性を呈し、単一のホログラムを記録するための総エネルギー線量は、代表的に48個のホログラムに対するのと約同じ値(2.5J/cm2 )となる。
[スキューミラーを形成する第2の方法]
【0116】
スキューミラーを形成する第2の方法を以下で説明する。この第2の方法によって形成したスキューミラーは第2の実施例のスキューミラー1200であり、このスキューミラーは図12A及び12Bにも示されているとともにその反射特性は上述してある。
【0117】
この第2の方法は、第1及び第2の記録ビームの内角が第1の方法とは異なる点を除いて、第1の方法と同じであり、この第2の方法により第1の実施例の反射特性とは異なる反射特性を第2の実施例のスキューミラーに与える。本例では、第1の方法の格子媒体(AK174‐200)とは異なる格子媒体(AK233‐200)を用いて第2の方法を実施する。第2の実施例のスキューミラーは、第1の実施例と同様に、記録ビーム波長とは実質的に異なる波長、特に記録ビーム波長よりもかなり長い波長の光を反射させる反射特性を有することから利点を得るものである。
【0118】
第2の実施例のスキューミラー1200の格子構造1205は、格子媒体1210内に49個の体積ホログラムを記録することによって生ぜしめる。第2の方法の49個のホログラムの各々は、それ自身の固有の第1の記録ビームの内角とそれ自身の固有の第2の記録ビームの内角とをもって記録する。第1の記録ビームの内角は、格子媒体の表面法線に対する第1の記録ビームの内角であり、第2の記録ビームの内角は、表面法線に対する第2の記録ビームの内角である。第1の実施例のスキューミラーに対する第1及び第2の記録ビームの各々は、ほぼ3mW/cm2 の放射照度を有する。49個のホログラムのうちの最初のホログラムは代表的に、35mJ/cm2 のエネルギー線量で記録し、その後の各ホログラムに対し線量を約1.5%だけ増大させる。49個の全てのホログラムを記録するための総線量は代表的に、約2.5J/cm2 である。
【0119】
この第2の方法によれば、+55.913度の第1の記録ビームの内角と+153.323度の第2の記録ビームの内角とを用いて第1のホログラムを記録し、従って、αは97.410度となる。49個のホログラムの各々に対するスキュー軸は、表面法線に対して+14.618度のスキュー角を有する。各ホログラムに対するスキュー角は、前述した式(9)に応じて計算される。第1及び第2の記録ビームの内角は代表的に、大きさにおいて互いにほぼ等しいが、逆の正負符号有する量だけ変化させ、これによりスキュー軸を中心とする第1及び第2の記録ビームの対称性を保つようにする。
【0120】
例えば、第2の方法により第2のホログラムを記録する場合、第1の記録ビームの内角を+0.095度だけ変化させるとともに、第2の記録ビームの内角を-0.095度だけ調整して、第1の記録ビームの内角が+56.008度となり、第2記録ビームの内角が+153.228度となるようにする、すなわちα=97.220度が得られるようにする。1つのホログラムから次のホログラムへの記録ビームの内角の変化の大きさは代表的に、第1のホログラムから第2のホログラムへの記録ビームの内角の変化に対する0.095度から、第48番目のホログラムから第49番目のホログラムへの記録ビームの内角の変化に対する0.087度の大きさまでで、49個の体積ホログラムに亘って僅かに変化させる(すなわち、あるホログラムから次のホログラムへの記録ビーム内角の変化を変更させる)。しかし、変化の大きさは、第1及び第2の記録ビームの内角の各々に対し同じとし、変化の正負符号は、第1及び第2の記録ビームの内角の各々対して逆とする。
第2の実施例の格子構造の最後(49番目)のホログラムに対する第1及び第2の記録ビームの内角は、それぞれ+60.252度及び+148.984度とし、α=88.732が得られるようにする。本発明のある実施例では、第1の記録ビームの内角の変化の大きさは、システムの不正確さ、スネル効果、分散又はホログラムを記録することから生じる格子媒体の収縮のような要因を補償するために、第2の記録ビームの内角の変化の大きさとは極めて僅かに相違させることができる。
【0121】
格子媒体の位置は1つのホログラムと次のホログラムとの間で調整し、49個のホログラムの各々の少なくとも一部が、49個のホログラムのうちの他の全てのホログラムの少なくとも一部と共有される共通スペース内に記録されるようにする。従って、49個のホログラムの各々が少なくとも部分的に且つ空間的に、格子媒体中の49個のホログラムのうちの他の全てのホログラムと重なり合うようになる。
【0122】
従って、第2の方法によれば、第1の記録ビームの内角は、+55.913度から+60.252度までの範囲(すなわち、4.339度の範囲)に及び、第2の記録ビームの内角は、+153.323度から+148.984度までの範囲(すなわち、4.339度の範囲)に及ぶ。第2の方法の各ホログラムに対しては、第1の方法と同様に、第1及び第2の記録ビームはスキュー軸を中心として対称的にして、スキュー軸に対する第1の記録ビームの内角(第1のホログラムの場合+41.295度)と、スキュー軸に対する第2の記録ビームの内角(第1のホログラムの場合+138.705度)との合計が180度(41.295°+138.705°=180°)となるようにする。スキュー軸に対する第1及び第2の記録ビームの内角は、それぞれ表面法線に対する第1及び第2の記録ビームの内角とスキュー角とから容易に計算される。スキューミラーを形成する第2の方法の場合、(格子媒体の表面法線に対する内角として規定される)第1及び第2の記録ビームの内角と、第1及び第2の記録ビームの場合のスキュー軸に対する内角とは以下の表8に列挙してある。49個の体積のホログラムを記録した後、AK233‐200の記録媒体は、当業者にとってよく知られている処理によって光硬化させる。例えば、本発明のある実施例では、光硬化には、光開始剤、感光性モノマー又はその他の感光性の化学反応の実質的に全てが消滅されるまで、発光ダイオードからの近紫外線の均一コヒーレント光に対する照射を含むものである。
【表8-1】
【表8-2】
【0123】
第2の実施例のスキューミラーに対して使用されるAK233‐200の格子媒体の場合、nは405nmの光に対して1.50と推定される。第2の実施例のスキューミラーを形成するためにホログラムを記録するのに使用される第1及び第2の記録ビームの波長は、405nm=405×10-9mである。従って、AK233‐200の格子媒体における第1及び第2の記録ビームの場合、k=2.327×107 rad/mである。第2の実施例のスキューミラーのホログラムに対するKG は、最初のホログラムに対する3.497×107 rad/mから49番目のホログラムに対する3.254×107 rad/mの範囲に及ぶものである。
【0124】
第2の実施例のホログラムに対する隣接|ΔKG |は比較的一定であり、49個の全ホログラムの平均値は5.050×104 rad/mであり、変動係数は0.47%である。第2の実施例の各ホログラムに対する隣接|ΔKG |は、5.01×104 rad/mから5.10×104 rad/mの範囲内にある。最初のホログラムと49番目のホログラムとの間の|ΔKG |は、2.42×106 ras/mである。
【0125】
第2のスキューミラーの形成方法の変形例では、前述したようにスキュー軸を中心とする第1及び第2の記録ビームの対称性を維持して、第1及び第2の記録ビームの内角を連続的に且つ同調的に調整することによりホログラムを生ぜしめる。従って、第1の記録ビームを、+55.913度の第1の記録ビームの内角から+60.252度の第1の記録ビーム角まで走査させて、単一のホログラムを記録する。これと同時に、第2の記録ビームを+153.323度の第2の記録ビームの内角から+148.984度まで走査させる。従って、単一のホログラムは、49組の固有の第1記録ビーム及び第2記録ビームの内角で記録された49個の個別のホログラムと等価である。単一のホログラムを記録するための総エネルギー線量は、代表的に単一のホログラムに対する2.5J/cm2 となる。
[スキューミラーを形成する第3の方法]
【0126】
スキューミラーを形成する第3の方法を以下で説明する。この第3の方法は代表的に、第1の方法と同様に、図13に示され且つ上述した例示的なシステム1350のようなスキューミラーを形成するためのシステムを利用している。
【0127】
この第3の方法によれば、格子媒体内に3組のホログラムを記録することによって格子構造を生ぜしめる。総計で56個のホログラムの場合、第1のホログラムの組が21個のホログラムを有し、第2のホログラムの組が19個のホログラムを有し、第3のホログラムの組が16個のホログラムを有する。本発明のある実施例では、第1、第2及び第3のホログラムの組の各々は少なくとも6個のホログラム又は少なくとも9個のホログラムを有するようにする。第1のホログラムの組における複数のホログラムの各々は代表的に、この第1のホログラムの組における複数のホログラムのうちの少なくとも1つの他のホログラムに少なくとも部分的に且つ空間的に重なるものであり、第1のホログラムの組における複数のホログラムのうちの少なくとも1つのホログラムは、第2のホログラムの組における少なくとも1つのホログラムに少なくとも部分的に且つ空間的に重なるようにしうる。本発明のある実施例では、第1のホログラムの組における複数のホログラムの各々が、この第1のホログラムの組における複数のホログラムのうちの他の全てのホログラムと少なくとも部分的に且つ空間的に重なるようにする。
【0128】
同様に、第2のホログラムの組における複数のホログラムの各々は代表的に、この第2のホログラムの組における複数のホログラムのうちの少なくとも1つの他のホログラムに少なくとも部分的に且つ空間的に重なるようにするものであり、この第2のホログラムの組における複数のホログラムのうちの少なくとも1つは第1のホログラムの組又は第3のホログラムの組における少なくとも1つのホログラムに少なくとも部分的に且つ空間的に重なるようにしうる。本発明のある実施例では、第2のホログラムの組における複数のホログラムの各々が、第2のホログラムの組における複数のホログラムのうちの他の全てのホログラムと少なくとも部分的に且つ空間的に重なるようにする。
【0129】
同様に、第3のホログラムの組における複数のホログラムの各々は代表的に、この第3のホログラムの組における複数のホログラムのうちの少なくとも1つの他のホログラムに少なくとも部分的に且つ空間的に重なるようにするものであり、この第3のホログラムの組における複数のホログラムのうちの少なくとも1つのホログラムが第2のホログラムの組における少なくとも1つのホログラムに少なくとも部分的に且つ空間的に重なるようにしうる。本発明のある実施例では、第3のホログラムの組における複数のホログラムの各々が、第3のホログラムの組における複数のホログラムのうちの他の全てのホログラムと少なくとも部分的に且つ空間的に重なるようにする。本発明のある実施例では、第1、第2及び第3のホログラムの組における全てのホログラムが、互いに少なくとも部分的に且つ空間的に重なり合うようにする。
【0130】
56個の全ホログラムの各々は、第1及び第2の記録ビームを使用し、これらの各々のビームを、自身の固有の第1の記録ビームの内角及び自身の固有の第2の記録ビーム内角で格子媒体に入射させることにより記録する。本発明のある実施例では、第1及び第2の記録ビームの内角のすべてが固有であるとは限らない。例えば、本発明のある実施例では、互いに同じ記録ビームの内角を有する複数のホログラムを、互いに異なるスキューミラー内の位置に書込むことができる。第1の記録ビームの内角は、格子媒体の表面法線に対する第1の記録ビームの内角であり、第2の記録ビームの内角は、表面法線に対する第2の記録ビームの内角である。第1の実施例のスキューミラーに対する第1及び第2の記録ビームの各々は、ほぼ3mW/cm2 の放射照度を有する単色の平行光ビームである。56個のホログラムのうちの最初のホログラムは代表的に、35mJ/cm2 のエネルギー線量で記録し、その後の各ホログラムに対し線量を約0.9%だけ増大させる。56個全てのホログラムを記録するための総線量は代表的に、約2.5J/cm2 である。
【0131】
第3の方法の第1のホログラムの組は、+43.519度の第1の記録ビームの内角及び+163.882度の第2の記録ビームの内角を用いてビーム差角(α)を120.363度として記録した第1のホログラムを有している。第1のホログラムの第1及び第2の記録ビームは、13.700度のスキュー角を有するスキュー軸を中心として対称となっている。第1のホログラムの組の後続する各ホログラムに対しては、第1及び第2の記録ビームの内角を代表的に、大きさは互いにほぼ等しいが正負符号は逆とした量だけ変化させる。例えば、第1のホログラムの組の第2のホログラムを記録する場合には、第1の記録ビームの内角を+0.351度だけ変えるとともに第2の記録ビームの内角を-0.355度だけ調整して、第1の記録ビームの内角が+43.870度となるとともに第2の記録ビームの内角が+163.527度(α=119.657度)となるようにする。
第2のホログラムの第1及び第2の記録ビームは、13.699度のスキュー角を有するスキュー軸を中心として対称である。1つのホログラムから次のホログラムへの記録ビームの内角の変化の大きさは代表的に、第1のホログラムから第2のホログラムへの記録ビームの内角の変化に対するほぼ0.353度の大きさから、20番目のホログラムから21番目のホログラムへの記録ビームの内角の変化に対するほぼ0.299度の大きさまでで、第1のホログラムの組の21個の体積ホログラムに亘って僅かに変更させる(すなわち、あるホログラムから次のホログラムへの記録ビーム内角の変化を変更させる)。しかし、変化の大きさは、第1及び第2の記録ビームの内角の各々に対してほぼ同じとし、変化の正負符号は、第1及び第2の記録ビームの内角の各々に対して逆とする。第1のホログラムの組の最後(21番目)のホログラムに対する第1及び第2の記録ビームの内角は、それぞれ+49.960及び+157.379度とし、α=107.419度とする。
21番目のホログラムの第1及び第2の記録ビームは、13.670度のスキュー角を有するスキュー軸を中心として対称である。
【0132】
この第3の方法によれば、第1のホログラムの組の第1の記録ビームの内角は+43.519度から+49.960度の範囲(6.441度の範囲)に及び、第1のホログラムの組の第2の記録ビームの内角は+163.882度から+157.379度の範囲(6.503度の範囲)に及ぶ。第1のホログラムの組の各ホログラムに対しては、第1の記録ビーム及びそのそれぞれの第2の記録ビームは、スキュー軸を中心として対称である。
従って、スキュー軸に対する第1の記録ビームの内角(第1のホログラムの場合+29.819度)と、スキュー軸に対する第2の記録ビームの内角(第1のホログラムの場合+150.182度)との合計は、180.0度(29.818°+150.182°=180°)に等しい。スキュー軸に対する第1及び第2の記録ビームの内角は、第1及び第2の記録ビームのそれぞれの内角とスキュー角とから容易に計算される。第1のホログラムの組の全てのホログラムの平均スキュー角は13.685度であり、第1のホログラムの組の全てのスキュー角は平均である0.015度内にある。スキューミラーを形成する第3の方法の第1のホログラムの組に対しての、格子媒体の表面法線に対する第1及び第2の記録ビームの内角と、スキュー軸に対する内角とは後の表9に列挙してある。
【0133】
多くのスキューミラーの適用分野に対しては、適切な反射性能を達成するために、ホログラムの組に対する全てのスキュー角は、このホログラムの組における全てのホログラムに対する2.0度の平均スキュー角内にある。スキューミラーのある適用分野では、適切な反射性能を達成するために、ホログラムの組に対する全てのスキュー角はこのホログラムの組の、1.0度の平均スキュー角内にある。より要求の厳しい適用分野の場合、適切な反射性能を達成するために、ホログラムの組の全てのスキュー角はこのホログラムの組の、0.5度の平均スキュー角内にある。更により要求の厳しい適用分野の場合、適切な反射性能を達成するために、ホログラムの組の全てのスキュー角はホログラムの組の、0.10度の平均スキュー角内にある。特別に要求の厳しい適用分野の場合、ホログラムの組における全てのスキュー角は、ホログラムの組の、0.01度の平均スキュー角内にある。
【0134】
第1のホログラムの組のホログラムに対するKG は、405nmの光に対するn=1.538とAK283の感光性格子媒体とに基づいて、最初のホログラムに対する4.140×107 rad/mから21番目のホログラムに対する3.846×107 rad/mまでの範囲に及び、k=2.386×107 rad/mが得られるようにする。第3の方法は、厚さ500μmの厚さを有するAK283の格子媒体を使用して実施することができるが、必ずしもこのようにする必要はない。第1のホログラムの組の各ホログラムに対する隣接|ΔKG |は、1.469×105 rad/mである。最初のホログラムと21番目のホログラムとの間の|ΔKG |は、2.939×106 rad/mである。第3の方法の第1のホログラムの組の21個のホログラムの各々の場合のα、KG 及び|ΔKG |に対する値は以下の表9で見ることができる。
【0135】
第3の方法の第2のホログラムの組は、+53.704度の第1の記録ビームの内角と、+153.696度の第2の記録ビームの内角とを使用して、α=99.992度とすることにより記録した第1のホログラムを有するようにする。第1のホログラムの第1及び第2の記録ビームは、13.700度のスキュー角を有するスキュー軸を中心として対称とする。第2のホログラムの組の第2のホログラムを記録する場合には、第1の記録ビームの内角を+0.272度だけ変化させるとともに、第2の記録ビームの内角を-0.275度だけ調整して、第1の記録ビームの内角が+53.976度となり、第2の記録ビーム内角が+153.421度となり、α=99.445度が得られるようにする。第2のホログラムの第1及び第2の記録ビームは、13.699度のスキュー角を有するスキュー軸を中心として対称とする。1つのホログラムから次のホログラムへの記録ビームの内角の変化の大きさは代表的に、第1のホログラムから第2のホログラムへの記録ビームの内角の変化に対するほぼ0.274度の大きさから、18番目のホログラムから19番目のホログラムへの記録ビームの内角の変化に対する0.252度の大きさまでで、第2のホログラムの組の19個の体積ホログラムに亘って僅かに変更させる(すなわち、あるホログラムから次のホログラムへの記録ビーム内角の変化を変更させる)。しかし、変化の大きさは、第1及び第2の記録ビームの内角の各々に対しほぼ同じとし、変化の正負符号は、第1及び第2の記録ビームの内角の各々対して逆とする。第2のホログラムの組の最後(19番目)のホログラムに対する第1及び第2の記録ビームの内角は、それぞれ+58.393度及び+148.957度とし、α=90.564度とする。19番目のホログラムの第1及び第2の記録ビームは、13.675度のスキュー角を有するスキュー軸を中心として対称とする。
【0136】
第2のホログラムの組のホログラムに対するKG は、最初のホログラムに対する3.655×107 から19番目のホログラムに対する3.391×107 までの範囲に及ぶようにする(n=1.538;k=2.386×107 )。第2のホログラムの組の各ホログラムに対する隣接|ΔKG |は、1.469×105 とする。最初のホログラムと19番目のホログラムとの間の|ΔKG |は、2.645×106 とする。第3の方法の第2のホログラムの組の19個のホログラムの各々の場合のα、KG 及び|ΔKG |に対する値は、以下の表9で見ることができる。
【0137】
第3の方法によれば、第2のホログラムの組の第1の記録ビームの内角が+53.704度から+58.394度までの範囲(4.689度の範囲)に及ぶようにするとともに、第2のホログラムの組の第2の記録ビームの内角が+153.696度から+148.597度までの範囲(4.736度の範囲)に及ぶようにする。第2のホログラムの組の各ホログラムに対しては、第1の記録ビーム及びそのそれぞれの第2の記録ビームは、スキュー軸を中心として対称とする。従って、スキュー軸に対する第1の記録ビームの内角(第1のホログラムの場合+40.004度)と、スキュー軸に対する第2の記録ビームの内角(第1のホログラムの場合+139.996度)との合計は、180.0度(40.004°+139.996°=180°)に等しい。スキュー軸に対する第1及び第2の記録ビームの内角は、第1及び第2の記録ビームのそれぞれの内角とスキュー角とから容易に計算される。第2のホログラムの組の全てのホログラムの平均スキュー角は13.688度であり、第1のホログラムの組の全てのスキュー角は平均である0.013度内にある。スキューミラーを形成する第3の方法の第2のホログラムの組に対しての、格子媒体の表面法線に対する第1及び第2の記録ビームの内角と、スキュー軸に対する内角とは後の表9に列挙してある。
【0138】
第3の方法の第3のホログラムの組は、+63.696度の第1の記録ビームの内角と、+143.704度の第2の記録ビームの内角とを使用して、α=80.008度とすることにより記録した第1のホログラムを有するようにする。第1のホログラムの第1及び第2の記録ビームは、13.700度のスキュー角を有するスキュー軸を中心として対称とする。第3のホログラムの組の第2のホログラムを記録する場合には、第1の記録ビームの内角を+0.229度だけ変化させるとともに、第2の記録ビームの内角を-0.231度だけ調整して、第1の記録ビームの内角が+63.925度となり、第2の記録ビーム内角が+143.473度となり、α=79.548度が得られるようにする。第1のホログラムの第1及び第2の記録ビームは、13.699度のスキュー角を有するスキュー軸を中心として対称とする。1つのホログラムから次のホログラムへの記録ビームの内角の変化の大きさは代表的に、第1のホログラムから第2のホログラムへの記録ビームの内角の変化に対するほぼ0.230度の大きさから、18番目のホログラムから19番目のホログラムへの記録ビームの内角の変化に対するほぼ0.219度の大きさまでで、第3のホログラムの組の16個の体積ホログラムに亘って僅かに変更させる(すなわち、あるホログラムから次のホログラムへの記録ビーム内角の変化を変更させる)。しかし、変化の大きさは、第1及び第2の記録ビームの内角の各々に対しほぼ同じとし、変化の正負符号は、第1及び第2の記録ビームの内角の各々対して逆とする。第3のホログラムの組の最後(16番目)のホログラムに対する第1及び第2の記録ビームの内角は、それぞれ+67.051度及び+140.313度とし、α=70.262度とする。16番目のホログラムの第1及び第2の記録ビームは、13.682度のスキュー角を有するスキュー軸を中心として対称とする。
【0139】
第3のホログラムの組のホログラムに対するKG は、最初のホログラムに対する3.068×107 から16番目のホログラムに対する2.847×107 までの範囲に及ぶようにする(n=1.538;k=2.386×107 )。第3のホログラムの組の各ホログラムに対する隣接|ΔKG |は、1.469×105 とする。最初のホログラムと16番目のホログラムとの間の|ΔKG |は、2.204×106 とする。第3の方法の第3のホログラムの組の16個のホログラムの各々の場合のα、KG 及び|ΔKG |に対する値は、以下の表9で見ることができる。
【0140】
第3の方法によれば、第3のホログラムの組の第1の記録ビームの内角が+63.696度から+67.051度までの範囲(3.355度の範囲)に及ぶようにするとともに、第3のホログラムの組の第2の記録ビームの内角が+143.704度から+140.313度までの範囲(3.391度の範囲)に及ぶようにする。第3のホログラムの組の各ホログラムに対しては、第1の記録ビーム及びそのそれぞれの第2の記録ビームは、スキュー軸を中心として対称とする。従って、スキュー軸に対する第1の記録ビームの内角(第1のホログラムの場合+49.996度)と、スキュー軸に対する第2の記録ビームの内角(第1のホログラムの場合+130.004度)との合計は、180.0度(49.996°+130.004°=180°)に等しい。スキュー軸に対する第1及び第2の記録ビームの内角は、第1及び第2の記録ビームのそれぞれの内角とスキュー角とから容易に計算される。第3のホログラムの組の全てのホログラムの平均スキュー角は13.691度であり、第1のホログラムの組の全てのスキュー角は平均である0.009度内にある。スキューミラーを形成する第3の方法の第3のホログラムの組に対しての、格子媒体の表面法線に対する第1及び第2の記録ビームの内角と、スキュー軸に対する内角とは後の表9に列挙してある。
【表9-1】
【表9-2】
[多色スキューミラーの実施例]
【0141】
スキューミラーを形成する第3の方法によって形成したスキューミラーは、その格子媒体を、実質的に一定の反射軸を中心として青色、緑色及び赤色の光を反射するように構成している為に、多色スキューミラーと称することができる。第1のホログラムの組は、格子媒体の表面法線から少なくとも2.0度だけ異なる実質的に一定の第1の反射軸を中心として、可視スペクトルの青色領域内にある入射光を反射するように構成する。本発明の開示目的のために、可視スペクトルの青色領域内の入射光は、405nmから492nmまでの範囲内の波長を有するようにする。より具体的には、第1のホログラムの組は、463nmの波長を有する青色の入射光を、+13.685度の平均反射軸角を有する実質的に一定の第1の反射軸を中心に反射させるように構成し、この場合、(i)青色の入射光は、+8.615度から-8.606度までの範囲の(表面法線に対する)内部入射角を有し、(ii)この内部入射角は、少なくとも21の異なる入射角を含んでおり、その各入射角は、少なくとも21の異なる入射角のうちの他の全ての入射角から0.52度以上分離されているようにする。本発明のある実施例では、青色の入射光の内部入射角は、少なくとも4つの異なる入射角を含み、その各々は、少なくとも4つの異なる入射角のうちの他の全てから1.0度以上分離されているようにする。
【0142】
入射光は、+18.785度から+35.946度の範囲までの(表面法線に対する)内部反射角でそれぞれ反射させ、反射光は入射光と同じ波長を有するようにする。当業者は、入射光とその反射光とを互いに交換して、463nmの入射光が+18.785度から+35.946度までの範囲に及ぶ内部入射角を有する場合に、+8.615度から-8.606度までの範囲の内部反射角で実質的に一定の反射軸を中心としてそれぞれ反射が行われるようにすることができることを認識している。
【0143】
第2のホログラムの組は、格子媒体の表面法線から少なくとも2.0度だけ異なる実質的に一定の第2の反射軸を中心として、可視スペクトルの緑色領域内にある入射光を反射するように構成する。本発明の開示目的のために、可視スペクトルの緑色領域内の入射光は、493nmから577nmまでの範囲内の波長を有するようにする。より具体的には、第2のホログラムの組は、522nmの波長を有する緑色の入射光を、+13.688度の平均反射軸角を有する実質的に一定の第2の反射軸を中心に反射させるように構成し、この場合、(i)緑色の入射光は、+7.813度から-8.993度までの範囲の(表面法線に対する)内部入射角を有し、(ii)この内部入射角は、少なくとも19の異なる入射角を含んでおり、その各入射角は、少なくとも19の異なる入射角のうちの他の全ての入射角から0.60度以上分離されているようにする。本発明のある実施例では、緑色の入射光の内部入射角は、少なくとも4つの異なる入射角を含み、その各々は、少なくとも4つの異なる入射角のうちの他の全てから1.2度以上分離されているようにする。
【0144】
緑色の入射光は、+19.587度から+36.342度の範囲までの内部反射角でそれぞれ反射させ、反射光は入射光と同じ波長を有するようにする。当業者は、入射光とその反射光とを互いに交換して、522nmの入射光が+19.587度から+36.342度までの範囲に及ぶ内部入射角を有する場合に、+7.813度から-8.993度までの範囲の内部反射角で実質的に一定の反射軸を中心としてそれぞれ反射が行われるようにすることができることを認識している。
【0145】
第3のホログラムの組は、格子媒体の表面法線から少なくとも2.0度だけ異なる実質的に一定の第3の反射軸を中心として、可視スペクトルの赤色領域内にある入射光を反射するように構成する。本発明の開示目的のために、可視スペクトルの赤色領域内の入射光は、610nmから780nmまでの範囲内の波長を有するようにする。より具体的には、第3のホログラムの組は、622nmの波長を有する赤色の入射光を、+13.691度の平均反射軸角を有する実質的に一定の第3の反射軸を中心に反射させるように構成し、この場合、(i)赤色の入射光は、+10.370度から-8.391度までの範囲の(表面法線に対する)内部入射角を有し、(ii)この内部入射角は、少なくとも16の異なる入射角を含んでおり、その各入射角は、少なくとも16の異なる入射角のうちの他の全ての入射角から0.74度以上分離されているようにする。本発明のある実施例では、赤色の入射光の内部入射角は、少なくとも4つの異なる入射角を含み、その各々は、少なくとも4つの異なる入射角のうちの他の全てから1.5度以上分離されているようにする。
【0146】
赤色の入射光は、+17.030度から+35.791度の範囲までの内部反射角でそれぞれ反射させ、反射光は入射光と同じ波長を有するようにする。当業者は、赤色の入射光とその反射光とを互いに交換して、622nmの入射光が+17.030度から+35.791度までの範囲に及ぶ内部入射角を有する場合に、+10.370度から-8.391度までの範囲の内部反射角で実質的に一定の反射軸を中心としてそれぞれ反射が行われるようにすることができることを認識している。
【0147】
上述したように、第1のホログラムの組は、463nmの波長を有する青色の入射光を、+13.7度の平均反射軸角を有する実質的に一定の第1の反射軸を中心に反射させるように構成され、この場合、463nmの光が、表面法線に対し-8.6度から+8.6度までの範囲の複数の内部入射角で格子媒体に入射されるようにしている。第2のホログラムの組は、522nmの波長を有する緑色の入射光を、+13.7度の平均反射軸角を有する実質的に一定の反射軸を中心に反射させるように構成され、この場合、522nmの光が、表面法線に対し-9.0度から+7.8度までの範囲の複数の内部入射角で格子媒体に入射されるようにしている。第3のホログラムの組は、622nmの波長を有する赤色の入射光を、+13.7度の平均反射軸角を有する実質的に一定の反射軸を中心に反射させるように構成され、この場合、622nmの光が、表面法線に対し-8.4度から+10.4度までの範囲の複数の内部入射角で格子媒体に入射されるようにしている。
【0148】
従って、多色スキューミラーの反射特性により、青色、緑色及び赤色の入射光を、13.7度の平均反射軸角を有する実質的に一定の反射軸を中心として反射させることができ、この場合、青色、緑色及び赤色の入射光は、表面法線に対して-8.4度から+7.8度までの範囲(16.2度の範囲)の内部入射角でミラーに入射させるものである。本発明のある実施例では、スキューミラーの反射特性により、青色、緑色及び赤色の入射光を、実質的に一定の反射軸を中心として反射させることを可能にするものであり、この場合、青色、緑色及び赤色の入射光は、少なくとも4.0度又は少なくとも8.0度の範囲に及ぶ複数の内部入射角で格子媒体に入射させる。
[多波長のスキューミラー形成方法]
【0149】
スキューミラーを形成する多波長法では、6つの体積ホログラムをAK233‐200の格子媒体内に記録し、これら6つのホログラムの各々は、その固有の第1及び第2の記録ビームの内部入射角を使用して記録するものである。更に、6つの体積ホログラムの各々に対し第1及び第2の記録ビームの波長を、可変波長レーザを用いて、403nmから408nmまで連続的且つ同調的に調整する。6つの体積ホログラムの各々を記録する際、第1及び第2の記録ビームの波長は互いに等しく保つ。多波長法に応じて6つの体積のホログラムを記録する際に供給される全エネルギー線量は代表的に、スキューミラーを形成するマルチ波長法のための第1及び第2の記録ビームの内部入射角に対し2.5J/cm2 とするが、必ずしもこのようにする必要はない。これらの内部入射角は以下で表10に記載してある。多波長法により形成したスキューミラーは、上述した第2の実施例と同じ反射特性を有するようにした。
【表10】
[他のスキューミラー実施例]
【0150】
スキューミラーの実施例は、感光性記録媒体のような体積誘電体を具える格子媒体内に生ぜしめることができる。スキューミラーの実施例は、本明細書に開示したような空間誘電性変調スペクトルを限定することによって形成することができる。一実施例では、2つ以上のコヒーレント光ビームの干渉パターンを感光性記録媒体内に記録することによって誘電性変調をホログラフ的に達成する。他の実施例では、誘電性変調を他の手段によって達成しうるようにすることができる。
【0151】
図15は他のスキューミラーの実施例を示しており、“ナルシストミラー(narcissist's mirror )”は反射軸1561が交差している数個のスキューミラー1500を有している。ナルシストは収束点に座って、自分自身の数個の画像を見ることができる。
[スキューミラーの製造]
【0152】
本発明の一実施例によれば、スキューミラーをホログラフ的に記録することができる。
スキューミラーは、ホログラフ的に記録することができ、或いは実施例によっては非ホログラフィ手段によって製造することができる。
[ホログラフィック記録]
【0153】
【0154】
【0155】
【0156】
【0157】
図16Bは、第1のプリズム1659Aと第2のプリズム1659Bとを組込んで、内部ビーム角を生ぜしめるようにした実施例を示しており、このようにしないと格子媒体1610の表面での屈折によりこれらの内部ビーム角を達成できないものである。この方法は代表的に、例えば、図12Bのスキューミラーを製造するのに用いられる。所望の分布を達成するのに図13A及び13Bの構成を如何に変更させるかは当業者が容易に理解するであろう。
【0158】
[他の製造方法]
【0159】
スキューミラーを製造するための他の方法も本発明の範囲内に入るものである。本発明の一実施例では、例えば、従来の光学コーティング手段を用いて極めて肉厚の誘電体層の構造体を形成する。この誘電体層の構造体は代表的に、従来の広帯域反射性のコーティング設計を繰返すことによって、副層内に広帯域の反射率を生ぜしめるように設計する。次いで、この肉厚の構造体を研削(glind )及び研磨(polish)し、コーティング層に対して斜めの角度となっている表面を生ぜしめる。この結果として得られた構造体は代表的に、研磨された表面ではなくコーティング層の法線によって実質的に規定された反射軸に対してミラー状の作用を呈し、従って、スキューミラーを構成する。本発明のある実施例では、原子的に正確な製造方法により、外部表面にこだわることなくアトムバイアトム(atom-by-atom)堆積技術を用いて誘電体構造を構成することによって、スキューミラーの製造を可能にする。
[非平坦ミラー]
【0160】
スキューミラーは、
1)記録媒体の物理的形状が平坦でないのと、
2)ホログラフィックフリンジが平面でないのと
の2つの理由で非平坦であると言える。
[非スラブ状のミラー]
【0161】
スキューミラー、広帯域ミラー及びホログラフィックミラーを含む本発明によるミラーの実施例は、形状がスラブ状でない媒体中に記録されたホログラムを含む。本発明のある実施例では、例えば、記録層を、湾曲面上に均一な厚さで成形する。他の例では、(例えば、くさび形状とした)不均一な記録層を用いる。更に他の例では、任意の形状(例えば、球状)を型成形する。これらの非スラブ状のミラーの場合には、表記“スキューミラー”が適切であるかどうかは、関連する表面の幾何学的形状に依存する。非スラブ状のホログラフィックミラーは代表的に、広帯域ミラー状の特性を呈する。
[非平面のホログラフィックフリンジを有するミラー]
【0162】
本発明のある実施例では、屈折力(optical power )又は他の意図的な収差を反射に導入するのが望ましい。このことは、反射軸の方向を局部的に変化させ、例えば、従来の放物面ミラーの場合に生じるような球面波の反射ビームを形成するように平面波の入射ビームを反射させるようにすることによって、スキューミラーの実施例で達成することができる。このようなスキューミラーは、例えば、図13の製造方法において1つの集束ビームと1つの発散ビームとを使用し、且つ入射角の代わりに波長を変えて記録することによって製造することができる。このようなミラーは、非平坦表面上に堆積した誘電体層を研磨することによって、又は進んだ原子的に正確な製造方法を用いることにより製造することもできる。
[他の製造の実施例]
【0163】
あるホログラフィック記録システムの実施例は、第1及び第2の記録ビームを格子媒体内に指向させるミラー、レンズ及びプリズムを内蔵し、この格子媒体内のほぼ同じ位置で記録ビームの内角を変えて複数のホログラムを記録するのにこの格子媒体の並進運動を必要としないようにする。
【0164】
[代わりの実施例及び変形例]
【0165】
添付の図面に示す又は上述した或いはその双方の種々の実施例及びその変形例は、単に例示的なものであり、本発明の範囲を限定することを意味するものではない。当業者には明らかであるように、本発明の利益を前提として本発明の多数の他の変形例が考えられること明らかである。本発明の特許請求の範囲を読むことにより得られる本発明の全ての変形例は本発明の範囲内であることを意味及び意図されるものである。
[ターミノロジー]
【0166】
このターミノロジー(専門用語)の区分において引用符(“”)で示してある用語及び語句は、文脈内で異なるものとして特に明記されていない限り、特許請求の範囲を含む本明細書全体に亘るこれらの用語及び語句に適用されるこのターミノロジーの区分におけるこれらの用語及び語句に属する意味を有することを意図するものである。更に、適用可能な場合には、上述した定義は、単語又は語句にかかわらず、定義した単語又は語句の単数及び複数の変形に適用されるものである。
【0167】
“一実施例”、“実施例”、“他の実施例”、“好適実施例”、“代わりの実施例”、“一変形例”、“変形例”及びこれらと同様な語句に対する本発明中の言及は、本発明の実施例又は変形例と関連して説明した特定の特徴、構造又は特性が少なくとも本発明の実施例又は変形例に含まれることを意味する。本明細書における様々な個所で用いたような語句“一実施例では”、“ある変形例では”又はこれに類似する語句は、必ずしも同じ実施例又は同じ変形例を言及することを意味するものではない。
【0168】
本明細書及び特許請求の範囲で用いる用語“ほぼ”は、これにより与えた値の10%だけ増大又は減少させることを言及するものである。
【0169】
本明細書及び特許請求の範囲で用いる用語“約”は、これにより与えた値の20%だけ増大又は減少させることを言及するものである。
【0170】
本明細書及び特許請求の範囲で用いる用語“一般に”は、殆ど又は大部分を意味するものである。
【0171】
本明細書及び特許請求の範囲において反射光に対して用いる用語“主として”は、格子構造によって反射される光を言及する。主として言及した角度で反射された光には、(表面反射を除く)他の如何なる角度でも反射された光よりも多の光を含むものである。主として反射軸を中心として反射された光には、(表面反射を除く)他の如何なる反射軸をも中心して反射される光よりも多くの反射光を含む。主として反射光を考慮する場合には、この反射光には装置の表面により反射された光は含まれない。
【0172】
本明細書及び特許請求の範囲で用いた用語“反射軸”は、入射光線の、その反射光線に対する角度を二等分する軸を言及する。入射光線、反射軸及び反射光線は全て、入射平面として参照できる1つの共通平面内に存在する。スキューミラーに対する入射平面は表面法線と一致させる必要はないが、このようにすることも可能である。反射軸に対する入射光線の入射角の大きさは、反射軸に対する反射光線の反射角の大きさに等しい。“反射軸”の前述した定義の目的のために、角度は内角である。従来の誘電体ミラー及び金属ミラーの場合、反射軸は表面法線と一致しており、すなわち、反射軸は入射平面であるようなミラー表面に対し垂直である。逆に言えば、本発明によるスキューミラーの実施例は、表面法線とは異なる反射軸を有するように、又は表面法線と一致する反射軸を有するようにしうる。スキューミラーの反射軸が表面法線と一致するか否かは、スキューミラーの入射面が表面法線と一致するか否かとは関係ない。入射角及び反射角は通常、平均値を生ぜしめるのに代表的に用いられる複数(一般的に3つ以上)の測定値を用いて経験的に決定されるが、必ずしもこのようにする必要はない。
【0173】
用語“反射”及びこれに類似する用語は、“回折”が通常適切な用語と考えられるある場合に、本明細書で使用するものである。この“反射”の使用は、スキューミラーが呈するミラー状の特性と合致するとともに混乱を招くおそれのあるターミノロジーを回避するのに役立つものである。例えば、格子構造が入射光を“反射”するように構成されると考えられる場合には、従来の技術者は、入射光を“回折”するように格子構造を構成するのが好ましいと考えることができる。その理由は、格子構造が一般に回折によって光に作用すると考えられている為である。しかし、このような用語“回折”を使用することにより、“入射光が実質的に一定な反射軸を中心として回折される”のような表現をもたらし、これが混乱となるおそれがある。従って、入射光が格子構造によって“反射”されると考えられる場合には、当業者は、本明細書の開示の利益に従って、格子構造が実際に入射光を回折機構によって“反射”させると認識するであろう。従来の誘電体ミラーは、主な役割の回折がこのような反射において役割を奏することにかかわらず、一般に光を“反射”すると考えられているので、このような“反射”の使用は、光学上先例がないものではない。従って、当業者は、大部分の“反射”に回折の特性が含まれ、スキューミラー又はその構成要素による“反射”にも回折が含まれることを認識するものである。
【0174】
本明細書及び特許請求の範囲で用いた用語“角度間隔”は、入射角の言及した角度範囲内でスキューミラーに入射される複数の光ビーム間の角度間隔を言及するものである。
【0175】
本明細書及び特許請求の範囲で用いる用語“ホログラム”及び“ホログラフィック格子”は、複数の交差する光ビーム間の干渉によって発生される干渉パターンの記録を言及するものである。ホログラム又はホログラフィック格子は、格子構造の一例である。
【0176】
種々の本発明の実施例を本明細書に開示し且つ図示したが、当業者であれば、ここに開示した機能を実行するためと、ここに開示した結果を得るためと、ここに開示した1つ以上の利点を得るためとの何れか1つ又はこれらの任意の組合せを達成するための種々の他の手段又は構造の双方又は何れか一方を容易に想定するであろうし、これらの変形例及び変更例の双方又は何れか一方の各々はここに開示した本発明の実施例の範囲内のものであるとみなすものである。より一般的には、当業者は、ここに開示したパラメータ、寸法、材料及び構成の全てが例示的なものであることを意味することと、特定のパラメータ、寸法、材料及び構成の何れか又はこれらの任意の組合せは、本発明の教示を用いる特定の適用分野に依存することとを容易に認めるであろう。当業者は、日常的なものにすぎない実験を用いて、ここに開示した特定の本発明の実施例に対する多くの均等例を認識するか又は解明することができる。従って、前述した実施例は単なる例示として提示したものであり、本発明の特許請求の範囲及びそれと同等の範囲内で、本発明の実施例は、具体的に記載し特許請求の範囲に開示した以外で実施しうることを理解すべきである。本明細書に開示した本発明の実施例は、本明細書に記載される個々の特徴、システム、品物(article )、材料、キット及び方法の何れか又はこれらの任意の組合せを対象とするものである。
更に、このような特徴、システム、品物、材料、キット及び方法の何れか又はこれらの任意の組合せが相互に矛盾しない場合、このような特徴、システム、品物、材料、キット及び方法の何れか又はこれらの任意の組合せは本発明の範囲内である。
【0177】
上述した実施例は、種々の方法のうちの何れかで実施することができる。例えば、ここで開示した技術を設計及び達成する実施例は、ハードウェア、ソフトウェア又はこれらの組合せを用いて実施することができる。ソフトウェアで実施する場合には、ソフトウェアコードは、単一のコンピュータで提供するか又は複数のコンピュータ間でに分散させるかどうかで、何れかの適切な1つのプロセッサ又はプロセッサの群で実行することができる。
【0178】
更に、コンピュータは、ラックマウント型コンピュータ、デスクトップ型コンピュータ、ラップトップ型コンピュータ又はタブレット型コンピュータのような多くの形態の何れかで実現することができることを理解されたい。更に、コンピュータは、一般にコンピュータとはみなされないが、パーソナルデジタルアシスタント(PDA)、スマートフォン又はその他の何れかの適切な携帯又は固定式の電子装置を含む、適切な処理能力を有する装置に組込むことができる。
【0179】
又、コンピュータは、1つ以上の入力装置及び出力装置を有するようにすることができる。これらの装置は、特にユーザインタフェースを提供するために使用することができる。ユーザインタフェースを提供するために用い得る出力装置の例には、出力を可視提示するためのプリンタ又はディスプレイスクリーンや、出力を可聴提示するためのスピーカ又はその他の音声発生装置が含まれる。ユーザインタフェースに対して用いうる入力装置の例には、キーボードと、マウス、タッチパッド、及びデジタル化用のタブレットなどの位置決め装置とが含まれる。他の例としては、コンピュータが音声認識を介して又は他の可聴形式で入力情報を受信するようにすることができる。
【0180】
このようなコンピュータは、エンタープライズネットワークやインテリジェントネットワーク(IN)又はインターネットのような、ローカルエリアネットワーク又はワイドエリアネットワークを含む適切な如何なる形態の1つ以上のネットワークによっても相互接続することができる。このようなネットワークは、適切な如何なる技術にも基づかせることができ、適切な如何なるプロトコルによっても動作させることができ、無線ネットワーク、有線ネットワーク又は光ファイバネットワークを含むようにしうる。
【0181】
ここで概説した(例えば、上述した結合構造及び回折光学素子を設計及び形成する)種々の方法又は処理は、種々のオペレーティングシステム又はプラットフォームのうちの何れか1つを採用する1つ以上のプロセッサで実行しうるソフトウェアとして符号化しうる。更に、このようなソフトウェアは、多数の適切なプログラミング言語とプログラミングツール又はスクリプトツールとの双方又は何れか一方を使用して記述することができるとともに、フレームワーク又は仮想マシンで実行される実行可能な機械語コード又は中間コードとしてコンパイルされるようにすることもできる。
【0182】
この点において、本発明の種々の概念は、1つ以上のコンピュータ又はその他のプロセッサで実行する場合に、上述した本発明の種々の実施例を実施する方法を実行する1つ以上のプログラムで符号化した1つのコンピュータ可読記憶媒体(又は複数のコンピュータ可読記憶媒体)(例えば、コンピュータメモリ、1つ以上のフロッピーディスク、コンパクトディスク、光ディスク、磁気テープ、フラッシュメモリ、フィールドプログラマブルゲートアレイ又はその他の半導体装置内の回路構成、又は他の非一過性(non-transitory)媒体又はタンジブルコンピュータ記録媒体)として具体化することができる。1つ以上のコンピュータ可読媒体は可搬型とし、これに記憶されたプログラムを1つ以上の異なるコンピュータ又は他のプロセッサ上にローディングして上述した本発明の種々の概念を実施するようにしうる。
【0183】
用語“プログラム”又は“ソフトウェア”は、ここでは一般的な意味で使用して、上述した実施例の種々の態様を実施するためのコンピュータ又は他のプロセッサをプログラミングするために採用しうる何らかの種類のコンピュータコード又はコンピュータ実行可能命令の組を言及するものである。更に、本発明の1つの態様によれば、実行に際し本発明の方法を遂行する1つ以上のコンピュータプログラムは、単一のコンピュータ又はプロセッサに存在させる必要はなく、多数の異なるコンピュータ又はプロセッサ間で、モジュール方式で分散させて本発明の種々の態様を実施するようにすることができることを理解すべきである。
【0184】
コンピュータ実行可能命令は、1つ以上のコンピュータ又は他の装置によって実行されるプログラムモジュールのような多くの形態のものにしうる。プログラムモジュールは一般に、特定のタスクを実行する、又は特定の抽象データ型を使用するルーチン、プログラム、オブジェクト、コンポーネント、データ構造等を含んでいる。プログラムモジュールの機能性は代表的に、種々の実施例において所望通りに組合せるか又は分散させることができる。
【0185】
又、データ構造は、適切な如何なる形態でもコンピュータ可読媒体内に記憶させることができる。イラストレーションを簡単にするために、データ構造は、データ構造内の位置を通じて関連するフィールドを有するように示すことができる。このような関連性は、フィールド間の関連性を伝達するコンピュータ可読媒体内の位置をフィールドに対する記憶領域に割当てることにより同様に達成することができる。しかし、データ構造のフィールドにおける情報間の関連性を確立するのに、データ要素間の関係を確立するポインタ、タグ又はその他の機構の使用を介することを含む適切な如何なる機構をも用いることができる。
【0186】
又、本発明の種々の概念は1つ以上の方法として具体化することができるものであり、これらの方法のうち一例を提供したものである。この方法の一部として実行される動作は、適切な如何なるようにも順序付けするようにしうる。従って、これらの動作は、実例において順次的な動作として示しているが、幾つかの動作を同時に実行することを含みうる図示以外の異なる順序で実行するようにした実施例を構成することができる。
【0187】
ここで規定し使用した全ての定義は、辞書の定義と、参考のために導入する文献における定義と、定義した用語の通常の意味との何れか又は任意の組合せに対して照合するものであることを理解すべきである。
【0188】
本明細書及び特許請求の範囲において使用する語句“双方又は何れか一方”は、双方の要素又は何れか一方の要素を意味するものである。すなわち、ある場合にはこれらの要素は結合的に存在し、他の場合にはこれらの要素は分離的に存在する。複数の要素が存在する場合の“何れか又は任意の組合せ”は、1つ要素又は任意の複数の要素を意味するものである。又、限定的な例ではないが、“具える”のような他の要素を排除しないオープンエンデッドの言語と関連して用いた“A及びBの双方又は何れか一方”は、一例では、Aのみ(随意にB以外の要素を含む)を言及することができ、他の例では、Bのみ(随意にA以外の要素を含む)を言及することができ、更に他の例では、A及びBの双方(随意にA及びB以外の要素を含む)を言及することができる。
【0189】
本明細書及び特許請求の範囲で用いている場合、“又は”は、“双方又は何れか一方”と同じ意味を有すると理解すべきである。例えば、リスト中の項目を分離する場合、“又は”或いは“双方又は何れか一方”は、包括的であるものとして、すなわち、多数の要素又は要素のリストのうち1つ以上を含む少なくとも1つを含むとともに、随意ではあるが、必要に応じてリストにない追加の項目を含むものとして解釈されるべきである。これとは逆に、“~のうちの1つだけ”又は“~のうち正確に1つ”、特許請求の範囲に用いられている場合には“~より成る”のような明確に指示された用語のみが、多数の要素又はこれら要素のリストのうち正確に1つの要素が含まれることを言及する。一般的には、排他的に“どちらか一方”、“~の一方”、“~の一方のみ”又は“~の正確に1つ”のような用語が先行する場合には、ここで用いる用語“又は”は排他的な選択肢(すなわち、“一方又は他方であって双方ではない”)を表すものとしてのみ解釈すべきである。又、特許請求の範囲で用いた場合の“本質的に~より成る”は特許法の分野で用いられる通常の意味を有するものとする。
【0190】
本明細書及び特許請求の範囲で用いる場合、1つ以上の要素のリストを参照する語句“少なくとも1つ”は、これらの要素のリストにおける何れかの1つ以上の要素から選択した少なくとも1つの要素を意味するものと理解するべきであるが、これらの要素のリスト内に特に記載されている各々の及び全ての要素のうちの少なくとも1つを必ずしも含むものではなく且つこれらの要素のリストの如何なる要素の組合せも排除するものでもない。
この定義はまた、語句“少なくとも1つ”が、関連するか関連しないかに拘らづ、特定したこれらの要素を言及している要素のリスト内で特定された要素以外に、要素を随意に存在させるようにすることをも可能にする。従って、非限定的な例として、“A及びBの少なくとも一方”(又は、同等に“A又はBの少なくとも一方”または同等に“A及びBの双方又は何れか一方”)は、一実施例では、随意にBを存在させないで2つ以上を含む少なくとも1つのA(及び随意にB以外の要素を含む)を、他の実施例では、随意にAを存在させないで2つ以上を含む少なくとも1つのB(及び随意にA以外の要素を含む)を、更に他の実施例では、随意に2つ以上を含む少なくとも1つのA及び随意に2つ以上を含む少なくとも1つのB(及び随意に他の要素を含む)を、その他を言及することができる。
【0191】
本発明の特許請求の範囲及び明細書において、“具える”、“含む”、“運ぶ”、“有する”、“包含する”、“伴う”、“保持する”、“より成る”等の全ての移行句はオープンエンドであること、すなわち含むことを意味するが、これに限定されるものではない。米国特許庁特許審査手順マニュアル(MPEP)のセクション2111.03に規定されているように、移行句“~で構成される(consisting of )”及び“本質的に~より成る(consisting essentially of )”のみがそれぞれ閉鎖又は半閉鎖移行句とされる。
図1A-1B】
図2A
図2B
図3
図4A
図4B
図5A
図5B
図6A
図6B
図6C
図6D
図7A
図7B
図8A
図8B
図8C
図9A
図9B
図10A
図10B
図11A
図11B
図12A
図12B
図13
図14
図15
図16A
図16B