(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-07
(45)【発行日】2023-12-15
(54)【発明の名称】バイオ燃料中への耐溶出性が向上した多層管状構造体および当該多層管状構造体の使用
(51)【国際特許分類】
B32B 1/08 20060101AFI20231208BHJP
B32B 27/34 20060101ALI20231208BHJP
F02M 37/00 20060101ALI20231208BHJP
F16L 9/14 20060101ALI20231208BHJP
F16L 11/04 20060101ALI20231208BHJP
【FI】
B32B1/08
B32B27/34
F02M37/00 321A
F16L9/14
F16L11/04
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021203966
(22)【出願日】2021-12-16
(62)【分割の表示】P 2018213830の分割
【原出願日】2017-01-12
【審査請求日】2022-01-13
(32)【優先日】2016-01-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】505005522
【氏名又は名称】アルケマ フランス
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】弁理士法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ティボー・モンタナリ
(72)【発明者】
【氏名】クリステル・ルコッキユ
(72)【発明者】
【氏名】ベルトラン・ベルバウヘーデ
(72)【発明者】
【氏名】ニコラ・デュフォール
(72)【発明者】
【氏名】フロラン・ドゥシャン
【審査官】横山 敏志
(56)【参考文献】
【文献】特開平08-247345(JP,A)
【文献】仏国特許出願公開第02925865(FR,A1)
【文献】特開2003-094540(JP,A)
【文献】特開平07-266474(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第01393889(EP,A1)
【文献】特表2012-510544(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0126031(US,A1)
【文献】特開2005-030598(JP,A)
【文献】国際公開第2016/104095(WO,A1)
【文献】国際公開第2015/033982(WO,A1)
【文献】特開2014-240139(JP,A)
【文献】特表2010-510910(JP,A)
【文献】特開2012-224085(JP,A)
【文献】国際公開第2016/039445(WO,A1)
【文献】国際公開第2005/071301(WO,A1)
【文献】特表2008-515658(JP,A)
【文献】特開2004-262244(JP,A)
【文献】特開2008-030483(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00-43/00
F16L 9/00-11/26
F02M 37/00-37/54
Japio-GPG/FX
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
多層管状構造体(MLT)の外側から内側に向かって、少なくとも1つの第1のバリア層(1)と、該第1のバリア層(1)より下に配置された少なくとも1つの内層(2)と、該第1のバリア層(1)より下に配置された任意の層とを含む多層管状構造体(MLT)であって、
前記第1のバリア層(1)が、27%のエチレンを含有するエチレンとビニルアルコールとのコポリマー(EVOH)を含み、
前記内層(2)および前記第1のバリア層(1)より下に配置された任意の層が、前記内層(2)および前記第1のバリア層(1)より下に配置された任意の層の総重量に対して0重量%から1.5重量%の可塑剤を含有し、
前記内層(2)が、脂肪族型のまたは75%超の脂肪族単位を含む少なくとも1種の脂肪族ポリアミドを含み、前記脂肪族ポリアミドが
・窒素原子1個当たりの炭素原子の平均数C
Aが4から7であるポリアミドAと、
・窒素原子1個当たりの炭素原子の平均数C
Bが7から10であるポリアミドBと、
・窒素原子1個当たりの炭素原子の平均数C
Cが10から18であるポリアミドCと
から選択され、
前記内層(2)の前記ポリアミドが、PA11、PA610、PA612またはPA1012から選択されるA、BまたはC、対応するコポリアミドおよび前記ポリアミドまたは前記コポリアミドの混合物から選択されるポリアミドをベースとした組成物であり、
ただし、前記内層(2)が少なくとも3種のポリアミドを含む場合、前記ポリアミドA、BおよびCの少なくとも1つが除外され、
少なくとも1つの第1の外層(3)が存在し、該第1の外層(3)が、前記第1のバリア層(1)より上のさらに外側に配置され、前記少なくとも1つの外層(3)が、脂肪族型のまたは75%超の脂肪族単位を含む少なくとも1種の脂肪族ポリアミドを含み
、
前記第1のバリア層(1)より上に配置された少なくとも1つの第2の外層(3’)が存在し、前記第1の外層(3)より上に配置されており、前記少なくとも1つの第2の外層(3’)が、前記少なくとも1つの第2の外層(3’)の組成の総重量に対して1.5%から15%の可塑剤を含み、
すべての外層が平均で0%から5%の可塑剤を含み、
少なくとも1つの層(4)が存在し、前記層(4)が前記層(4)の成分の総重量に対して15重量%以下の可塑
剤を含有し
、
前記層(4)が、脂肪族型のまたは75%超の脂肪族単位からなる少なくとも1種のポリアミドを主体として含み、前記脂肪族ポリアミドが
・窒素原子1個当たりの炭素原子の平均数C
Aが4から7であるポリアミドAと、
・窒素原子1個当たりの炭素原子の平均数C
Bが7から10であるポリアミドBと、
・窒素原子1個当たりの炭素原子の平均数C
Cが10から18であるポリアミドCと
から選択され、
ただし、前記層(4)が少なくとも3種のポリアミドを含む場合、前記ポリアミドA、BおよびCの少なくとも1つが除外され、
前記層(4)が、前記第1のバリア層(1)と前記内層(2)の間および/または前記第1の外層(3)と前記第1のバリア層(1)との間に配置されており、
前記層(4)の前記ポリアミドが、PA6とPA12との二元混合物、PA6とPA612との二元混合物、PA6とPA610との二元混合物、PA12とPA612との二元混合物、PA12とPA610との二元混合物、PA1010とPA612との二元混合物、PA1010とPA610との二元混合物、PA1012とPA612との二元混合物、PA1012とPA610との二元混合物、およびPA6とPA610とPA12との三元混合物、PA6とPA612とPA12との三元混合物、PA6とPA614とPA12との三元混合物から選択され、
前記内層(2)および前記第1のバリア層(1)より下に配置された任意の層が、可塑剤を含有せず、
前記内層(2)の前記ポリアミドまたは前記第1の外層(3)の前記ポリアミドが、全脂肪族ポリアミドであ
る、
多層管状構造体(MLT)。
【請求項2】
前記層(4)が前記層(4)の成分の総重量に対して1.5重量%以下の可塑剤を含有する、請求項1に記載の多層管状構造体(MLT)。
【請求項3】
前記層(4)が可塑剤を含有しない、請求項1に記載の多層管状構造体(MLT)。
【請求項4】
前記内層(2)の前記ポリアミドおよび前記第1の外層(3)の前記ポリアミドが、全脂肪族ポリアミドである、請求項1に記載の多層管状構造体(MLT)。
【請求項5】
前記第2の外層(3’)が、最も外側の層であり、そして可塑化された唯一の層であり、前記第1の外層(3)が可塑剤を含有しない、請求項1に記載の多層管状構造体(MLT)。
【請求項6】
層(4’)が存在し、前記層(4’)が、脂肪族型のまたは75%超の脂肪族単位からなる少なくとも1種のポリアミドを主体として含み、前記脂肪族ポリアミドが
・窒素原子1個当たりの炭素原子の平均数C
Aが4から7であるポリアミドAと、
・窒素原子1個当たりの炭素原子の平均数C
Bが7から10であるポリアミドBと、
・窒素原子1個当たりの炭素原子の平均数C
Cが10から18であるポリアミドCと
から選択され、
ただし、前記層(4’)が少なくとも3種のポリアミドを含む場合、前記ポリアミドA、BおよびCの少なくとも1つが除外され、
前記層(4’)の前記少なくとも1種のポリアミドが、前記層(4)の前記ポリアミドと同一であるまたは異なることが可能であり、
前記層(4’)が、前記第1の外層(3)と前記第1のバリア層(1)との間に配置されている、請求項1に記載の多層管状構造体(MLT)。
【請求項7】
第2のバリア層(5)が存在し、前記第2のバリア層(5)が、前記第1のバリア層(1)に隣接し、または隣接せず、前記第1のバリア層(1)より下に配置されている、請求項1から
6の一項に記載の多層管状構造体(MLT)。
【請求項8】
前記EVOHが耐衝撃性改良剤を含むEVOHである、請求項1に記載の多層管状構造体(MLT)。
【請求項9】
前記第2のバリア層(5)がポリフタルアミド(PPA)製の層またはフルオロポリマ
ー製の層である、請求項
7に記載の多層管状構造体(MLT)。
【請求項10】
前記第2のバリア層(5)がETFE型、EFEP型またはCPT型のフルオロポリマー製の層である、請求項9に記載の多層管状構造体(MLT)。
【請求項11】
前記第1の外層(3)の前記ポリアミドが、請求項1に規定のBまたはC
、対応するコポリアミドおよび前記ポリアミドまたは前記コポリアミドの混合物から選択されるポリアミドであ
る、請求項1から
10の一項に記載の多層管状構造体(MLT)。
【請求項12】
前記第1の外層(3)の前記ポリアミドが、PA11、PA12、PA610、PA612またはPA1012、対応するコポリアミドおよび前記ポリアミドまたは前記コポリアミドの混合物から選択されるポリアミドである、請求項11に記載の多層管状構造体(MLT)。
【請求項13】
ラクタムから得られた前記ポリアミドが洗浄されている、請求項11に記載の多層管状構造体(MLT)。
【請求項14】
前記内層(2)の前記ポリアミドまたは前記内層(2)の少なくとも1つの前記ポリアミドが、導電性ポリアミドである、請求項1から
13の一項に記載の多層管状構造体(MLT)。
【請求項15】
多層管状構造体(MLT)であって、前記内層(2)、前記第1の外層(3)、前記層(4)および前記層(4’)の少なくとも1つが、少なくとも1種の耐衝撃性改良剤および/または少なくとも1種の添加剤を含む、請求項
6に記載の多層管状構造体(MLT)。
【請求項16】
前記構造体が(3’)//(3)//(4’)//(1)//(4)//(2)の順で前記層を含み、前記第1の外層(3)および前記第2の外層(3’)が請求項1に規定のとおりであり、前記内層(2)および前記層(4)が各層の組成の総重量に対して1.5重量%以下の可塑剤を含有し
、前記層(4’)が可塑剤を含
む、請求項
6または
15に記載の多層管状構造体(MLT)。
【請求項17】
前記内層(2)および/または前記層(4)が可塑剤を含有しない、請求項16に記載の多層管状構造体(MLT)。
【請求項18】
前記層(4’)が可塑剤を含有しない、請求項16に記載の多層管状構造体(MLT)。
【請求項19】
燃
料の輸送のための、請求項1から
18の一項に記載の多層管状構造体(MLT)の使用。
【請求項20】
ガソリンの輸送のための、請求項19に記載の使用。
【請求項21】
溶出可能分の試験であって、前記試験
が、前記多層管状構造体(MLT)にFAM B型のアルコール含有ガソリンを充填し、全体を60℃で96時間加熱し、次いで、前記アルコール含有ガソリンをビーカー内にろ取することによって、前記多層管状構造体(MLT)を空にし、次いで前記ビーカーのろ液を放置して室温で蒸発させ、最後に割合が管の内表面積に対して6g/m
2以下でなければならないこの蒸発の残留物を秤量するものである溶出可能分の試験に適合させるための、請求項1から
18の一項に記載の多層管状構造体(MLT)の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多層構造体、特に管の形態の多層構造体に関し、流体、特にガソリン型の燃料、特にアルコール含有ガソリンであって、特に、自動車用であるものを輸送するための当該多層構造体の使用にも関する。
【0002】
より特定すると、本発明は、エンジン内に存在する管に関する。例えば、これらの管は、燃料の輸送、特にタンクとエンジンとの間での燃料の輸送用、冷却回路用、油圧系統用として意図されている場合もあるし、または、空調回路用もしくは尿素と水との混合物の輸送用として意図されている場合もある。
【背景技術】
【0003】
ガソリン、特にバイオガソリンの輸送に関しては、数多くの判断基準を満たさなければならず、特に、(環境保護の理由から)良好なバリア特性、低温衝撃性、耐圧性等を満たさなければならない。
【0004】
安全性および環境保護を理由として、特に、新型のバイオ燃料の出現に伴って、自動車製造業者は、上記管に対して特定の機械的特性を要求するようになっており、さらには、国によって異なる多様な燃料成分(炭化水素、添加剤、メタノールおよびエタノール等のアルコール。場合によっては、アルコールが主要成分であることもあり得る。)、エンジン用潤滑油およびこうした自動車における環境下で接する可能性が高い他の化学製品(バッテリー用の酸、ブレーキフルード、冷却液、塩化亜鉛または塩化カルシウム等の金属塩)を透過する度合いが非常に低く、これらに対する抵抗性も良好であるという特徴をも要求している。
【0005】
自動車製造業者が管に対して一般的に満足のいくものだと考えて要求する仕様の特徴を数え上げていくと、次のとおりになる。
【0006】
・管が多層管である場合において、最も特定すると、燃料との接触後において、層どうしの接着が保たれており、良好であること、
・燃料の循環後において、(管とコネクタとの)接続の完全性が良好であること、即ち、いかなる漏れも起きないこと、
・ガソリンと一緒に使用される場合において、管の寸法安定性が良好であること、
・管が破砕しないような(およそ-30℃から-40℃の)低温条件下における良好な耐衝撃性、
・管が変形しないような良好な耐熱性(およそ150℃)
・酸化作用のある高温の媒体(例えば、エンジン区画から出てくるおよそ100℃から150℃の高温の空気)中における耐老化性が良好であること、
・燃料および燃料の分解生成物、特に、高い過酸化物含量を有する燃料および燃料の分解生成物に対する良好な抵抗性
・燃料を透過する度合いが非常に低いこと、より特定すると、バイオ燃料の極性成分(エタノール等)と無極性成分(炭化水素)との両方に対するバリア特性が良好であること、
・組立てが容易になるほどに管、特に燃料供給管の可とう性が良好であること、
・ZnCl2に対する良好な抵抗性(例えば、冬に道路に砂がまかれている場合、管の外側は、こうしたZnCl2のある環境に晒される。)。
【0007】
さらに、望ましい管は、次の欠点を回避しなければならない。
【0008】
・管が多層管である場合において、層、特に内層が、特にコネクタの挿入の最中に層間はく離すること(この層間はく離は、漏れを起こす可能性がある。)、
・ガソリン/ディーゼルシステム(バイオディーゼルまたはバイオガソリン用のものを含む。)内にあって老化した管が過度に膨潤すること。これにより、漏れが起き、または、車両の下で位置決めする際に問題が発生する可能性がある。
【0009】
最近、アルコール含有ガソリンと長期間にわたって接触した多層管から過度の溶出可能物質が出てくるという、新たな課題が出現した。この溶出可能物質は、車両のエンジンのインジェクタを閉塞するまたは詰まらせる可能性が高い。このため、自動車製造業者、特にVolkswagenは、自動車内でガソリン、特にアルコール含有ガソリンを輸送できる管を選択するための新たな判断基準を確立したが、この新たな判断基準は、以前の判断基準より厳しいものである。従って、多様な製造業者、特にVolkswagenによって開発された新型の試験は、ガソリン輸送管の内部が数時間にわたって高温のアルコール含有ガソリンと接触した後に、ガソリン輸送管の溶出可能分の割合を測定し、溶出可能分に相当する管に内包されたガソリンの蒸発残留物を秤量するものである。従って、試験される管は、溶出可能分の割合が可能な限り低い場合、特に(管の内表面積)1m2当たり6g以下である場合にのみ、ガソリンを輸送するために使用することができる。
【0010】
現在、単層および多層管、即ち、1つ以上のポリマー層からなる管という2種類の管が存在する。ガソリンの輸送に関しては、経済的な理由のため、特にバリア層を含む多層管の使用が普及している傾向にある。
【0011】
従来、使用される管は、熱可塑性物質を変形させるための慣例的な技法に従って、当該管が単層管である場合ならば単押出によって製造され、または、当該管が多層管である場合ならば相異なる層の共押出によって製造される。
【0012】
ガソリンを輸送するための構造体(MLT)は一般的に、PA層(少なくとも1つの層)によって両面が取り囲まれている、EVOH等のバリア層からなるが、他の層との接着が不十分だと判明した場合は、場合によりバインダー層も含む。
【0013】
従って、欧州特許第2098580号は特に、EVOHバリアと、可塑化されたまたは可塑化されていない少なくとも2つのポリアミド層とを有し、当該ポリアミド層の1つがバリア層より上に配置されており、当該ポリアミド層の残りの層がバリア層より下に配置されている、管を記述している。
【0014】
上記の事柄があるとはいえ、この種類の構造体および当業者に公知な他のMLTは、溶出可能分を対象とした上記新型の試験にもはや適合していない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
本発明は、特定の配置および組成の多層構造体の層によって、この新たな課題を解決することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明は、多層管状構造体(MLT)の外側から内側に向かって、少なくとも1つのバリア層(1)と、バリア層より下に配置された少なくとも1つの内層(2)とを含む、流体、特にガソリン、特にアルコール含有ガソリンの輸送用として意図された多層管状構造体(MLT)であって、
前記内層(2)、あるいはすべての前記層(2)およびバリア層より下に配置された任意の他の層が、それぞれ、前記層(2)の組成の総重量に対してまたは層(2)およびバリア層より下に配置された任意の他の層の組成のすべての総重量に対して平均で0重量%から1.5重量%の可塑剤を含有し、
前記内層(2)が、脂肪族型のまたは75%超の脂肪族単位からなる少なくとも1種のポリアミドを主体として含み、前記脂肪族ポリアミドが
・窒素原子1個当たりの炭素原子の平均数CAが4から8.5、有利には4から7であるポリアミドAと、
・窒素原子1個当たりの炭素原子の平均数CBが7から10、有利には7.5から9.5であるポリアミドBと、
・窒素原子1個当たりの炭素原子の平均数CCが9から18、有利には10から18であるポリアミドCと
から選択され、
ただし、前記内層(2)が少なくとも3種のポリアミドを含む場合、前記ポリアミドA、BおよびCの少なくとも1つが除外される、
多層管状構造体に関する。
【発明を実施するための形態】
【0018】
流体の輸送用として意図された対象が流体を貯蔵するように同様に働く場合、当該対象は、本発明の観点から逸脱しているわけではない。
【0019】
「流体」という用語は、自動車において使用される気体または液体を表し、特には、液体、特に油、ブレーキフルード、尿素溶液、グリコール主体型冷却液、燃料、特には汚染を受けやすい軽質燃料、有利にはディーゼル以外の燃料、特にガソリンまたはLPG、特にガソリン、より特定するとアルコール含有ガソリンを表す。
【0020】
空気、窒素および酸素は、前記気体の定義から除外される。
【0021】
有利には、前記流体は、燃料、特にガソリンを表し、特には、アルコール含有ガソリンを表す。
【0022】
「ガソリン」という用語は、石油の蒸留から発生した炭化水素の混合物を表すが、この炭化水素の混合物には、添加剤またはメタノールもしくはエタノール等のアルコールが添加されていてもよく、場合によっては、アルコールが主要成分であることもあり得る。
【0023】
「アルコール含有ガソリン」という表現は、メタノールまたはエタノールが添加されたガソリンを表す。アルコール含有ガソリンは、石油の蒸留生成物を全く含有しないE95型ガソリンも同様に表す。
【0024】
「すべての層(2)およびバリア層より下に配置された任意の他の層」という表現は、すべての層がバリア層より下に配置されて存在することを意味する。
【0025】
「バリア層」という表現は、低い透過性という特徴と、流体、特に燃料の様々な成分に対する良好な抵抗性という特徴とを有する層を表し、即ち、このバリア層は、構造体にある他の層の中へのまたは構造体の外側への流体の通過、特に、燃料の極性成分(エタノール等)と無極性成分(炭化水素)との両方の通過を緩やかにするものである。従って、バリア層は、何よりもまず、拡散によって大気中に失われるガソリンが多くなりすぎないようにでき、これにより、大気汚染の回避を可能にする層である。
【0026】
これらのバリア材料は、低い炭素含量を有するポリアミド、即ち、窒素原子(N)に対する炭素原子(C)の平均数が9未満であり、好ましくは半結晶性であり、高い融点を有するポリアミド、ポリフタルアミド、および/または、エチレンとビニルアルコールとのコポリマー(以下、EVOHと表記される。)等の高結晶性ポリマー等の非ポリアミド型バリア材料、または、官能化ポリビニリデンフルオリド(PVDF)、エチレンとテトラフルオロエチレンとの官能化コポリマー(ETFE)、エチレンとテトラフルオロエチレンとヘキサフルオロプロピレンとの官能化コポリマー(EFEP)、官能化ポリフェニレンスルフィド(PPS)もしくは官能化ポリブチレンナフタレート(PBN)等の官能化含フッ素材料であってよい。これらのポリマーが官能化されていない場合、MLT構造体内での良好な接着を確保するために、バインダーの中間層を追加することもできる。
【0027】
これらのバリア材料の中でも、EVOHは、特に有益なものであり、特には、最も多くビニルアルコールコモノマーを含有するEVOH、および、耐衝撃性が改良されたEVOHが有益であるが、理由として、これらのEVOHにより、もろい構造の発生が低減され得るという点がある。
【0028】
本発明者らは、1または複数の内層、即ち、バリア層より下に配置された1または複数の層の中に可塑剤が存在しなければ、または少なくとも、可塑剤の割合が非常に低ければ、上記に規定の試験によって測定される溶出可能分の割合、特に、FAM B型のアルコール含有ガソリンを管状構造体に充填し、この管状構造体の全体を60℃で96時間加熱し、次いで、アルコール含有ガソリンをビーカー内にろ取することによって、この管状構造体を空にし、次いでビーカー内のろ液を放置して、室温で蒸発させ、最後に、割合が管の内表面積に対しておよそ6g/m2以下でなければならないこの蒸発の残留物を秤量するものである試験によって測定される溶出可能分の割合を大きく低下させることが可能であることを発見した。
【0029】
アルコール含有ガソリンFAM Bは、規格DIN51604-1:1982、DIN51604-2:1984およびDIN51604-3:1984において記述されている。
【0030】
簡単に言うと、最初に、50%のトルエンと、30%のイソオクタンと、15%のジイソブチレンと、5%のエタノールとの混合物を用いてアルコール含有ガソリンFAM Aを調製し、次いで、84.5%のFAM Aを15%のメタノールおよび0.5%の水と混合することによってFAM Bを調製する。
【0031】
FAM Bは合計で、42.3%のトルエン、25.4%のイソオクタン、12.7%のジイソブチレン、4.2%のエタノール、15%のメタノールおよび0.5%の水からなる。
【0032】
単一の層(2)が存在する場合、単一の層(2)は、流体と接触している。
【0033】
幾つかの層(2)が存在する場合、これらの内層の1つが1.5重量%超の比率の可塑剤を有することもできるが、この場合、1.5%超の可塑剤の比率は、この場合だとはるかに薄くなった層の厚さによって相殺されており、結果として、すべての内層中に存在する可塑剤の平均値は、1.5%を超えない。このとき、上記層の中の可塑剤の比率は、最大15%であり得るが、この層の厚さは、このとき、管の総厚に対して10%を超えず、好ましくは100μmを超えない。
【0034】
このはるかに薄くなった層は、バリア層と直接接触していてもよいし、または、後で流体と接触することになる最も内側の層と直接接触していてもよい。
【0035】
「前記内層(2)が少なくとも1種の脂肪族型ポリアミドを主体として含む」という表現は、前記脂肪族型ポリアミドが層(2)中に50重量%超の比率で存在することを意味する。脂肪族型ポリアミドは、直鎖状であり、脂環式化合物型ではない。
【0036】
有利には、1または複数の層(2)の前記主体としての脂肪族型ポリアミドは、脂肪族単位、即ち、50%超の脂肪族単位をやはり主体として含む。
【0037】
有利には、1または複数の層(2)の前記主体としての脂肪族型ポリアミドは、75%超の脂肪族単位からなり、好ましくは、1または複数の層(2)の前記主体としての脂肪族型ポリアミドは、全脂肪族ポリアミドである。
【0038】
これらのバリア材料の中でも、やはり、PPAが有益であり、特に、coPA6T、PA9TおよびPA9TのコポリマーならびにPA10TおよびPA10Tのコポリマーが有益である。
【0039】
本出願によれば、「PA」とも表される「ポリアミド」という用語は、
・ホモポリマーと、
・例えばラクタム6およびラクタム12に由来したアミド単位を有するコポリアミド6/12等、様々なアミド単位を主体としたコポリマーまたはコポリアミドと、
・ポリアミドが主要成分であることを条件にして、ポリアミドのアロイと
を包含する。
【0040】
広義の意味でのある種類のコポリアミドも存在しており、これらのコポリアミドは、好ましいものではないが、本発明の観点の一部を形成する。これらの広義の意味でのコポリアミドは、アミド単位(主体になっており、従って、広義の意味において、コポリアミドであると考えるべきであるということになる。)だけでなく、本質的にアミドではない単位、例えばエーテル単位も含む、コポリアミドである。最もよく知られた例は、PEBAまたはポリエーテルブロックアミド、ならびに、PEBAのコポリアミド-エステル-エーテル型変種、コポリアミド-エーテル型変種およびコポリアミド-エステル型変種である。これらの変種の中でも、ポリアミド単位がPA12のポリアミド単位と同じであるPEBA-12およびポリアミド単位がPA6.12のポリアミド単位と同じであるPEBA-6.12が挙げられる。
【0041】
さらに、ホモポリアミド、コポリアミドおよびアロイは、アミド基(-CO-NH-)と同数の窒素原子が存在するものであると分かっているため、窒素原子1個当たりの炭素原子の数によって互いに区別される。
【0042】
高い炭素含量を有するポリアミドは、窒素原子(N)に比べて高い含量の炭素原子(C)を有する、ポリアミドである。これらの高い炭素含量を有するポリアミドは、例えばポリアミド-9、ポリアミド-12、ポリアミド-11、ポリアミド-10.10(PA10.10)、コポリアミド12/10.T、コポリアミド11/10.T、ポリアミド-12.Tおよびポリアミド-6.12(PA6.12)等、窒素原子1個当たり少なくともおよそ9個の炭素原子を有するポリアミドである。Tは、テレフタル酸を表す。
【0043】
ポリアミドを規定するために採用される命名法は、規格ISO1874-1:1992「Plastics - Polyamide (PA)molding and extrusion materials - Part 1:Designation」において、特に3頁(表1および表2)で記述されており、当業者に周知である。
【0044】
低い炭素含量を有するポリアミドは、窒素原子(N)に比べて低い含量の炭素原子(C)を有する、ポリアミドである。これらの低い炭素含量を有するポリアミドは、例えばポリアミド-6、ポリアミド-6.6、ポリアミド-4.6、コポリアミド-6.T/6.6、コポリアミド6.I/6.6、コポリアミド6.T/6.I/6.6およびポリアミド9.T等、窒素原子1個当たりおよそ9個未満の炭素原子を有するポリアミドである。Iは、イソフタル二酸を表す。
【0045】
PA-X.Y型ホモポリアミドの場合、Xがジアミンから得られた単位を表し、Yが二酸から得られた単位を表しており、窒素原子1個当たりの炭素原子の数は、ジアミンXに由来の単位中と、二酸Yに由来の単位中に存在する炭素原子の数の平均である。従って、PA6.12は、窒素原子1個当たり9個の炭素原子を有するPAであり、言い換えると、C9PA.PA6.13は、C9.5である。
【0046】
コポリアミドの場合、窒素原子1個当たりの炭素原子の数は、同じ原理に従って計算される。この計算は、様々なアミド単位のモル比率に基づいて実施される。アミド型ではない単位を有するコポリアミドの場合、計算は、アミド単位部分のみを対象にして実施される。従って、例えば、12個のアミド単位とエーテル単位とのブロックコポリマーであるPEBA-12の場合、窒素原子1個当たりの炭素原子の平均数は、PA12の場合と同様に12であり、PEBA-6.12の場合、窒素原子1個当たりの炭素原子の平均数は、PA6.12の場合と同様に9である。
【0047】
従って、ポリアミドPA12またはPA11等の高い炭素含量を有するポリアミドは、EVOHポリマー、ポリアミドPA6等の低い炭素含量を有するポリアミドまたはポリアミドPA6とポリオレフィンとのアロイ(例えば、Arkemaから販売のOrgalloy(R)等)に接着しにくい。
【0048】
しかしながら、現在提案されている管構造体は、上記の内容を振り返ると、自動車製造業者の仕様に関する要件のすべてを同時に満たすことができないため、バイオ燃料用を意図して使用するためには満足がいかないものであると認識されている。
【0049】
バイオ燃料は、石油にのみ由来するわけではなく、少なくとも3%の比率のプラントから発生したアルコール、例えばエタノールまたはメタノール等の極性生成物も含む。この含量は、85%または95%という高いものであり得る。
【0050】
さらに、新型のエンジン(より厳密には、より高い温度で動作するエンジン)を理由として、燃料の循環温度が高まる傾向にある。
【0051】
有利な一実施形態において、前記内層(2)、あるいは層(2)およびバリア層より下に配置された任意の他の層のそれぞれは、それぞれ、層(2)の組成の総重量に対してまたは層(2)およびバリア層より下に配置された任意の他の層のそれぞれの各組成の総重量に対して0重量%から1.5重量%の可塑剤を含有する。
【0052】
有利な一実施形態において、上記に規定の多層管状構造体(MLT)では、前記内層(2)、あるいは層(2)およびバリア層より下に配置された任意の他の層のそれぞれは、可塑剤を含有しない。
【0053】
この実施形態において、バリア層より下に配置されたすべての層は、いかなる可塑剤も全く含有せず、本発明の好ましい構造体の1つからなる。
【0054】
有利な一実施形態において、本発明は、バリア層より上のさらに外側に配置された少なくとも1つの層(3)が存在し、前記外層(3)が脂肪族型のまたは75%超の脂肪族単位からなる少なくとも1種のポリアミドを主体として含み、特に、9.5から18、有利には11から18の窒素原子1個当たりの炭素原子の平均数を有する前記脂肪族ポリアミドからなる、上記に規定の多層管状構造体(MLT)に関する。
【0055】
「前記外層(3)が少なくとも1種の脂肪族型ポリアミドを主体として含む」という表現は、前記脂肪族型ポリアミドが層(3)中に50重量%超の比率で存在することを意味する。脂肪族型ポリアミドは、直鎖状であり、脂環式化合物型ではない。
【0056】
有利には、1または複数の層(3)の前記主体としての脂肪族型ポリアミドはやはり、脂肪族単位を主体として含み、即ち、50%超の脂肪族単位を含む。
【0057】
有利には、1または複数の層(3)の前記主体としての脂肪族型ポリアミドは、75%超の脂肪族単位からなり、好ましくは、1または複数の層(3)の前記主体としての脂肪族型ポリアミドが全脂肪族ポリアミドである。
【0058】
有利には、1または複数の層(2)および1または複数の層(3)の前記主体としての脂肪族型ポリアミドはやはり、脂肪族単位を主体として含み、即ち、50%超の脂肪族単位を含む。
【0059】
有利には、1または複数の層(2)および1または複数の層(3)の前記主体としての脂肪族型ポリアミドは、75%超の脂肪族単位からなり、好ましくは、1または複数の層(2)および1または複数の層(3)の前記主体としての脂肪族型ポリアミドが全脂肪族ポリアミドである。
【0060】
有利には、本発明は、前記外層(3)が層(3)の組成の総重量に対して0%から15%の可塑剤を含み、またはすべての外層が平均で0%から5%の可塑剤を含む、上記に規定の多層管状構造体(MLT)に関する。
【0061】
溶出可能分の比率を著しく高めることなく、1または複数の外層、即ち、バリア層より上に配置された1または複数の層の中の可塑剤の比率を高くすることも可能である。
【0062】
層(2)に関して上記ですでに示したように、幾つかの層(3)が存在する場合、これらの外層の1つがより高い比率、例えば15重量%の可塑剤を有することもできるが、この場合、可塑剤の比率は、この場合だとはるかに薄くなった層の厚さによって相殺されており、結果として、すべての外層中に存在する可塑剤の平均値は、5%を超えない。このとき、上記外層の1つの中の可塑剤の比率は、最大15%であり得るが、この層の厚さは、管の総厚に対して20%を超えず、好ましくは200μmを超えない。
【0063】
有利には、本発明は、上記に規定の層(3)を含む、多層管状構造体(MLT)であって、バリア層より上に配置された少なくとも1つの第2の外層(3’)が存在し、好ましくは層(3)より上に配置されており、前記層(3’)が可塑化されており、前記可塑剤が特に、前記層の組成の総重量に対して1.5重量%から15重量%の比率で存在し、前記層(3’)の厚さが好ましくは、管状構造体の総厚に対して最大20%であり、特に最大200μmである、多層管状構造体に関する。
【0064】
層(3)と全く同じように、層(3’)は、脂肪族型ポリアミドを主体として含み、即ち、前記脂肪族型ポリアミドは、層(3’)中に50重量%超の比率で存在する。脂肪族型ポリアミドは、直鎖状であり、脂環式化合物型ではない。
【0065】
有利には、1または複数の層(3’)の前記主体としての脂肪族型ポリアミドはやはり、脂肪族単位を主体として含み、即ち、50%超の脂肪族単位を含む。
【0066】
有利には、1または複数の層(3’)の前記主体としての脂肪族型ポリアミドは、75%超の脂肪族単位からなり、好ましくは、1または複数の層(3’)の前記主体としての脂肪族型ポリアミドが全脂肪族ポリアミドである。
【0067】
別の実施形態において、本発明は、1または複数の層(3)が、前記層の組成の総重量または層(3)のすべての組成の総重量に対して最大1.5重量%の可塑剤を含む、多層管状構造体(MLT)に関する。
【0068】
有利には、多層管状構造体(MLT)は、単一の層(3)を含み、可塑剤を含有しない。
【0069】
有利には、多層管状構造体(MLT)は、単一の層(3)および単一の層(2)を含み、層(2)および層(3)が可塑剤を含有しない。
【0070】
別の実施形態において、本発明は、バリア層より上に配置されたすべての層の可塑剤含量が、バリア層より上に配置されたすべての層の組成の総重量に対して最大5重量%である、多層管状構造体(MLT)に関する。
【0071】
別の実施形態において、本発明は、層(3’)が最も外側の層であり、可塑化された唯一の層であり、1または複数の層(3)が可塑剤を含有しない、多層管状構造体(MLT)に関する。
【0072】
可塑剤の比率は、層(3’)の組成の総重量に対して最大15重量%であり得る。可塑剤の比率が高いほど、層(3’)が薄くなっていくが、前記層(3’)の厚さは好ましくは、管状構造体の総厚に対して最大20%であり、特に最大200μmである。
【0073】
有利には、多層管状構造体(MLT)は、外側から内側に向かって、(3’)//(3)//(1)//(2)の4つの層からなり、層(3’)が上記に規定の比率で可塑化された唯一の層であり、層(3)および層(2)が可塑剤を含有しない。
【0074】
外側から内側に向かって、(3’)//(3)//(1)//(2)の4つの層からなる、多層管状構造体(MLT)には、当該多層管状構造体が非常に乾燥しており、相対湿度が0%から30%の間であるような非常に低い湿度の場合、t=0のときに破断伸びを有するという利点があり、この破断伸びは、非常に良好であり、特に、層(3’)、層(3)および層(2)が可塑剤を含有しない構造体より良好である。
【0075】
有利には、上記で最後に挙げた実施形態において、層(3’)は、最も外側の層であり、この実施形態のポリアミドが長鎖ポリアミドであり、即ち、Ccと表される窒素原子1個当たりの炭素原子の平均数が9.5から18のポリアミドであり、層(3)がバリア層と層(3’)との間に配置されており、この層(3)のポリアミドが短鎖ポリアミドであり、即ち、Caと表される窒素原子1個当たりの炭素原子の平均数が4から9のポリアミドである。
【0076】
有利には、上記で最後に挙げた実施形態において、層(3’)が100μmから200μmの厚さである場合、層(3)は、少なくとも200μmの厚さを有し、層(1)は、100μmから200μmの厚さを有する。
【0077】
有利には、上記で最後に挙げた実施形態において、層(3’)は、最も外側の層であり、この実施形態のポリアミドは、長鎖ポリアミドであり、即ち、Ccと表される窒素原子1個当たりの炭素原子の平均数が9.5から18のポリアミドであり、層(3)がバリア層と層(3’)との間に配置されており、この層(3)のポリアミドが短鎖ポリアミドであり、即ち、Caと表される窒素原子1個当たりの炭素原子の平均数が4から9のポリアミドであり、層(3’)が100μmから200μmの厚さである場合、層(3)が少なくとも200μmの厚さを有し、層(1)が100μmから200μmの厚さを有する。
【0078】
有利には、多層管状構造体(MLT)は、外側から内側に向かって、(3’)//(3)//(1)//(2)//(2’)の5つの層からなり、層(3’)が上記に規定の比率で可塑化された唯一の層であり、層(3)ならびに層(2)および層(2’)が可塑剤を含有せず、層(2’)が層(2)に関して規定されたポリアミドであるが、層(2)のポリアミドと異なる。この種類の構造体は、構造体を過度に剛化することなく、湿度が非常に低い条件下における破断伸びを向上することを可能にする。
【0079】
3つ、4つ、5つまたはそれ以上といった層の数にかかわらず、好ましい管状構造体は、可能な限り少ない可塑剤を含有する、好ましくは、最も内側の層、即ち、流体に最も近い層の中の可塑剤の量が最も少なくなっている、管状構造体である。これらの構造体は、下記のものであってよい。
【0080】
・流体と接触している内面を起点として、当該多層管状構造体の最初の50%の厚さの中に1.5%以下の可塑剤を含有する、多層管状構造体(MLT)。
【0081】
・流体と接触している内面を起点として、当該多層管状構造体の最初の75%の厚さの中に1.5%以下の可塑剤を含有する、多層管状構造体(MLT)。
【0082】
・流体と接触している内面を起点として、当該多層管状構造体の最初の85%の厚さの中に1.5%以下の可塑剤を含有する、多層管状構造体(MLT)。
【0083】
・流体と接触している内面を起点として、当該多層管状構造体の最初の50%の厚さの中に可塑剤を含有しない、多層管状構造体(MLT)。
【0084】
・流体と接触している内面を起点として、当該多層管状構造体の最初の75%の厚さの中に可塑剤を含有しない、多層管状構造体(MLT)。
【0085】
・流体と接触している内面を起点として、当該多層管状構造体の最初の85%の厚さの中に可塑剤を含有しない、多層管状構造体(MLT)。
【0086】
別の実施形態において、本発明は、少なくとも1つの層(4)が存在し、前記層(4)が層(4)の成分の総重量に対して15重量%以下の可塑剤、好ましくは1.5重量%以下の可塑剤を含有し、有利には、層(4)が可塑剤を含有せず、前記層(4)が脂肪族型のまたは75%超の脂肪族単位からなる少なくとも1種のポリアミドを主体として含み、前記脂肪族ポリアミドが
・窒素原子1個当たりの炭素原子の平均数CAが4から8.5、有利には4から7であるポリアミドAと、
・窒素原子1個当たりの炭素原子の平均数CBが7から10、有利には7.5から9.5であるポリアミドBと、
・窒素原子1個当たりの炭素原子の平均数CCが9から18、有利には10から18であるポリアミドCと
から選択され、
ただし、前記層(4)が少なくとも3種のポリアミドを含む場合、前記ポリアミドA、BおよびCの少なくとも1つが除外され、
前記層(4)がバリア層(1)と内層(2)との間および/または外層(3)とバリア層(1)との間に配置されており、
または、前記層(4)が前記構造体(MLT)に対して最大15%の厚さのバインダー層である、
上記に規定の多層管状構造体(MLT)に関する。
【0087】
層(4)は、バインダー層ではない場合、層(2)、層(3)および層(3’)に関して規定された脂肪族型ポリアミドである。
【0088】
有利には、本発明の管状構造体は、外側から内側に向かって、(3)//(4)//(1)//(2)の層からなる4層構造体であり、層(3)が上記のように最大15%可塑化されており、薄く、層(4)が上記に規定のバインダー層と異なる場合、可塑剤を含有せず、層(2)も同様に、上記に規定のバインダー層と異なる場合、可塑剤を含有しない。
【0089】
有利には、本発明の管状構造体は、外側から内側に向かって、(3)//(1)//(4)//(2)の層からなる4層構造体であり、層(3)が上記のように最大15%可塑化されており、好ましくは薄く、層(4)が上記に規定のバインダー層と異なる場合、可塑剤を含有せず、層(2)も同様に、上記に規定のバインダー層と異なる場合、可塑剤を含有しない。
【0090】
しかしながら、最大15重量%まで可塑化されているこの層(3)は、薄すぎないようにしなければならず、さもなければ、バリア層が十分に中心に置かれず、MLT構造体が衝撃性の観点から十分に良好ではなくなる危険性がある。一方、上記層(3)は、層(3)と層(1)との間にさらなる厚い(可塑化されていない)層が存在する場合、非常に薄くてもよく、この結果、層(1)は、中心から外れすぎることがない。
【0091】
別の層(2’)および/または層(3’)が上記の2種類の4層構造中に存在してもよい。
【0092】
前記層(4)は特に、特許EP1452307およびEP1162061、EP1216826およびEP0428833に記載のバインダーであってもよい。
【0093】
暗黙の事項として、層(3)と層(1)または層(1)と層(2)は、互いに接着し合っている。バインダー層は、互いに接着しないまたは互いに接着しにくい2つの層の間に介在するように意図されている。
【0094】
バインダーは例えば、限定されるわけではないが、Mn16000の50%のコポリアミド6/12(70/30の重量比)とMn16000の50%のコポリアミド6/12(30/70の重量比)とをベースとした組成物、Admer QF551Aの名称で知られたMitsui製の無水マレイン酸によってグラフト化されたPP(ポリプロピレン)をベースとした組成物、PA610(Mn30000、別途規定あり)と36%のPA6(Mn28000)と1.2%の有機安定剤(0.8%のフェノールであるGreat Lakes製のLowinox44B25と、0.2%のホスフィトであるCiba製のIrgafos168と、0.2%のUV安定剤であるCiba製のTinuvin312とからなる。)とをベースとした組成物、PA612(Mn29000、別途規定あり)と36%のPA6(Mn28000、別途規定あり)と1.2%の有機安定剤(0.8%のフェノールであるGreat Lakes製のLowinox44B25と、0.2%のホスフィトであるCiba製のIrgafos168と、0.2%のUV安定剤であるCiba製のTinuvin312とからなる。)とをベースとした組成物、PA610(Mn30000、別途規定あり)と36%のPA12(Mn35000、別途規定あり)と1.2%の有機安定剤(0.8%のフェノールであるGreat Lakes製のLowinox44B25と、0.2%のホスフィトであるCiba製のIrgafos168と、0.2%のUV安定剤であるCiba製のTinuvin312とからなる。)とをベースとした組成物、40%のPA6(Mn28000、別途規定あり)と40%のPA12(Mn35000、別途規定あり)と20%の官能化EPR Exxelor VA1801(Exxon)と1.2%の有機安定剤(0.8%のフェノールであるGreat Lakes製のLowinox44B25と、0.2%のホスフィトであるCiba製のIrgafos168と、0.2%のUV安定剤であるCiba製のTinuvin312からなる。)とをベースとした組成物、または、40%のPA6.10(Mn30000、別途規定あり)と40%のPA6(Mn28000、別途規定あり)と重量比が68.5/30/1.5のエチレン/エチルアクリレート/無水物型である20%の耐衝撃性改良剤(190℃において2.16kgの状況下でMFI6)と1.2%の有機安定剤(0.8%のフェノールであるGreat Lakes製のLowinox44B25と、0.2%のホスフィトであるCiba製のIrgafos168と、0.2%のUV安定剤であるCiba製のTinuvin312とからなる。)とをベースとした組成物であってよい。
【0095】
別の実施形態において、本発明は、層(4’)が存在し、前記層(4’)が脂肪族型のまたは75%超の脂肪族単位からなる少なくとも1種のポリアミドを主体として含み、前記脂肪族ポリアミドが
・窒素原子1個当たりの炭素原子の平均数CAが4から8.5、有利には4から7であるポリアミドAと、
・窒素原子1個当たりの炭素原子の平均数CBが7から10、有利には7.5から9.5であるポリアミドBと、
・窒素原子1個当たりの炭素原子の平均数CCが9から18、有利には10から18であるポリアミドCと
から選択され、
ただし、前記層(4’)が少なくとも3種のポリアミドを含む場合、前記ポリアミドA、BおよびCの少なくとも1つが除外され、
または、前記層(4’)が前記構造体(MLT)に対して最大15%の厚さのバインダー層であり、
前記層(4’)の前記少なくとも1種のポリアミドが層(4)の前記ポリアミドと同一であるまたは異なることが可能であり、
前記層(4’)が外層(3)とバリア層(1)との間に配置されており、前記バインダー層(4)がバリア層(1)と内層(2)との間に配置されている、
上記に規定の多層管状構造体(MLT)に関する。
【0096】
層(4’)は、可塑剤を含んでもよいし、含まなくてもよい。有利には、層(4’)は、層(2)および層(4)と全く同じように、可塑剤を含有せず、層(3)は、上記に規定のように、可塑化されているが薄い。
【0097】
別の実施形態において、本発明は、内層(2)のポリアミドまたは外層(3)のポリアミドが全脂肪族ポリアミドであり、好ましくは、内層(2)のポリアミドおよび外層(3)のポリアミドが全脂肪族ポリアミドである、上記に規定の多層管状構造体(MLT)に関する。
【0098】
別の実施形態において、本発明は、第2のバリア層(5)が存在し、前記第2のバリア層(5)が第1のバリア層(1)に隣接し、または隣接せず、前記バリア層(1)より下に配置されている、上記に規定の多層管状構造体(MLT)に関する。
【0099】
特にアルコール含有ガソリン、最も特定するとメタノール含有ガソリンの場合、第2のバリア層を大気中へのガソリンの拡散をさらに抑制するため、および/または溶出可能分の含量を低減するために配置することが有益な場合もある。
【0100】
この第2のバリア層は、第1のバリア層(1)と異なる。
【0101】
別の実施形態において、本発明は、バリア層(1)がEVOH製の層である、上記に規定の多層管状構造体(MLT)に関する。
【0102】
別の実施形態において、本発明は、EVOHが最大27%のエチレンを含むEVOHである、上記に規定の多層管状構造体(MLT)に関する。
【0103】
別の実施形態において、本発明は、EVOHが耐衝撃性改良剤を含むEVOHである、上記に規定の多層管状構造体(MLT)に関する。
【0104】
別の実施形態において、本発明は、バリア層(1)がポリフタルアミド(PPA)製の層である、上記に規定の多層管状構造体(MLT)に関する。
【0105】
PPAという用語は、少なくとも1種の芳香族モノマー、特には、Dupont製のZytel HTN等、Ems製のGrivory HT等、Solvay製のAmodel等、Kuraray製のGenestar等、coPA6T/6I、coPA6T/66、coPA6T/6、coPA6T/6I/66、PPA9T、coPPA9T/x、PPA10TまたはcoPPA10T/xを主体としたPPA組成物等、コポリアミド6.T/x型(xは、1種以上のコモノマーを表す。)のポリフタルアミドを含む過半数を占める単位を含む、主にポリアミドをベースとした、組成物を意味する。
【0106】
別の実施形態において、本発明は、バリア層(1)がEVOH製の層であり、第2のバリア層(5)がPPAまたはフルオロポリマー、特にETFE型、EFEP型またはCPT型のフルオロポリマー製の層である、上記に規定の多層管状構造体(MLT)に関する。
【0107】
有利には、バリア層(1)は、EVOH製の層であり、第2のバリア層(5)は、PPA製の層である。
【0108】
別の実施形態において、本発明は、バリア層(1)がEVOH製の層であり、第2のバリア層(5)がPPA製の層である、上記に規定の多層管状構造体(MLT)に関する。
【0109】
別の実施形態において、本発明は、バリア層(1)がEVOH製の層であり、第2のバリア層(5)がフルオロポリマー、特にETFE型、EFEP型またはCPT型のフルオロポリマー製の層である、上記に規定の多層管状構造体(MLT)に関する。
【0110】
有利には、上記に規定の多層管状構造体(MLT)において、内層(2)のポリアミドは、上記に規定のA、BまたはC、特にPA6、PA66、PA6/66、PA11、PA610、PA612またはPA1012、対応するコポリアミドおよび前記ポリアミドまたは前記コポリアミドの混合物から選択されるポリアミドをベースとした組成物であり、ラクタムから得られたポリアミドが有利には、洗浄されている。
【0111】
有利には、上記に規定の多層管状構造体(MLT)において、外層(3)のポリアミドは、上記に規定のBまたはC、特にPA11、PA12、PA610、PA612またはPA1012、対応するコポリアミドおよび前記ポリアミドまたは前記コポリアミドの混合物から選択されるポリアミドであり、ラクタムから得られたポリアミドが有利には、洗浄されている。
【0112】
有利には、上記に規定の多層管状構造体(MLT)において、内層(2)のポリアミドは、上記に規定のA、BまたはC、特にPA6、PA66、PA6/66、PA11、PA610、PA612またはPA1012、対応するコポリアミドおよび前記ポリアミドまたは前記コポリアミドの混合物から選択されるポリアミドをベースとした組成物であり、ラクタムから得られたポリアミドが有利には、洗浄されており、外層(3)のポリアミドが、上記に規定のBまたはC、特にPA11、PA12、PA610、PA612またはPA1012、対応するコポリアミドおよび前記ポリアミドまたは前記コポリアミドの混合物から選択されるポリアミドであり、ラクタムから得られたポリアミドが有利には、洗浄されている。
【0113】
別の実施形態において、本発明は、内層(2)のポリアミドまたは外層(2)の少なくとも1つのポリアミドが導電性ポリアミドである、下記に規定の多層管状構造体(MLT)に関する。
【0114】
本発明の管状構造体が幾つかの層(2)を含む場合、導電性層は、これらの層(2)のうちで最も内側にあり、即ち、流体と接触している。
【0115】
有利には、上記に規定の多層管状構造体(MLT)において、層(4)および/または層(4’)のポリアミドは、10以上である窒素原子1個当たりの炭素原子の平均数を有するポリアミドと、6以下である窒素原子1個当たりの炭素原子の平均数を有するポリアミドとの混合物、例えば、PA12およびPA6ならびに無水物によって官能化された(コ)ポリオレフィンである。
【0116】
有利には、上記に規定の多層管状構造体(MLT)において、層(4)および/または層(4’)のポリアミドは、PA6とPA12との二元混合物、PA6とPA612との二元混合物、PA6とPA610との二元混合物、PA12とPA612との二元混合物、PA12とPA610との二元混合物、PA1010とPA612との二元混合物、PA1010とPA610との二元混合物、PA1012とPA612との二元混合物、PA1012とPA610との二元混合物、およびPA6とPA610とPA12との三元混合物、PA6とPA612とPA12との三元混合物、PA6とPA614とPA12との三元混合物から選択される。
【0117】
別の実施形態において、本発明は、層(2)、層(3)、層(3’)、層(4)および層(4’)の少なくとも1つが、少なくとも1種の耐衝撃性改良剤および/または少なくとも1種の添加剤を含む、上記に規定の多層管状構造体(MLT)に関する。
【0118】
当然ながら、耐衝撃性改良剤または添加剤は、可塑剤ではない。
【0119】
有利には、層(2)および層(3)は、少なくとも1種の耐衝撃性改良剤および/または少なくとも1種の添加剤を含む。
【0120】
有利には、層(2)、層(3)および層(3’)は、少なくとも1種の耐衝撃性改良剤および/または少なくとも1種の添加剤を含む。
【0121】
有利には、層(2)、層(3)、層(3’)および層(4’)は、少なくとも1種の耐衝撃性改良剤および/または少なくとも1種の添加剤を含む。
【0122】
有利には、層(2)、層(3)、層(3’)、層(4)および層(4’)は、少なくとも1種の耐衝撃性改良剤および/または少なくとも1種の添加剤を含む。
【0123】
別の実施形態において、本発明は、構造体が(3)//(1)//(2)の順で3つの層を含み、層(3)および/または層(2)が各層の組成の総重量に対して1.5重量%以下の可塑剤を含有し、特に層(3)および/または層(2)が可塑剤を含有しない、上記に規定の多層管状構造体(MLT)に関する。
【0124】
別の実施形態において、本発明は、構造体が(3’)//(3)//(1)//(2)の順で4つの層を含み、層(3’)が上記に規定のとおりであり、層(2)および/または層(3)が各層の組成の総重量に対して1.5重量%以下の可塑剤を含有し、特に層(2)および/または層(3)が可塑剤を含有しない、上記に規定の多層管状構造体(MLT)に関する。
【0125】
別の実施形態において、本発明は、構造体が
(3’)//(3)//(1)//(5)//(2)の順で5つの層を含み、層(1)がEVOH層であり、層(5)がPPA層であり、層(2)が各層の組成の総重量に対して1.5重量%以下の可塑剤を含有し、特に層(2)が可塑剤を含有せず、層(3)および層(3’)が可塑剤を含み、または、
(3’)//(3)//(1)//(2)//(5)の順で5つの層を含み、層(1)がEVOH層であり、層(5)がPPA層であり、層(2)が各層の組成の総重量に対して1.5重量%以下の可塑剤を含有し、特に層(2)が可塑剤を含有せず、層(3)および層(3’)が可塑剤を含み、または、
(3’)//(4)//(1)//(4)//(2)の順で5つの層を含み、層(3)が請求項3に規定のとおりであり、層(2)および層(4)が各層の組成の総重量に対して1.5重量%以下の可塑剤を含有し、特に層(2)および/もしくは層(4)が可塑剤を含有せず、層(4’)が可塑剤を含み、特に層(4’)が可塑剤を含有しない、
上記に規定の多層管状構造体(MLT)に関する。
【0126】
別の実施形態によれば、本発明は、構造体が
(3’)//(3)//(4’)//(1)//(4)//(2)の順で層を含み、層(3)および層(3’)が上記に規定のとおりであり、層(2)および層(4)が各層の組成の総重量に対して1.5重量%以下の可塑剤を含有し、特に層(2)および/または層(4)が可塑剤を含有せず、層(4’)が可塑剤を含み、特に層(4’)が可塑剤を含有しない、上記に規定の多層管状構造体(MLT)に関する。
【0127】
特に、上記6層構造体の前記層(3’)は、可塑化されており、前記可塑剤が特に、前記層の組成の総重量に対して1.5重量%から15重量%の比率で存在し、前記層(3’)の厚さが好ましくは、管状構造体の総厚に対して最大20%、特に最大200μmであり、特に層(3’)が最も外側の層であり、可塑化された唯一の層であり、1または複数の層(3)が可塑剤を含有しない。
【0128】
別の態様によれば、本発明は、燃料、特にガソリンの輸送のための、上記に規定の多層管状構造体MLTの使用に関する。
【0129】
別の態様によれば、本発明は、溶出可能分の試験であって、前記試験が特に、前記多層管状構造体MLTにFAM B型のアルコール含有ガソリンを充填し、全体を60℃で96時間加熱し、次いで、アルコール含有ガソリンをビーカー内にろ取することによって、前記多層管状構造体MLTを空にし、次いでビーカーのろ液を放置して室温で蒸発させ、最後に割合が管の内表面積に対して6g/m2以下でなければならないこの蒸発の残留物を秤量するものである溶出可能分の試験に適合させるための、上記に規定の多層管状構造体MLTの使用に関する。
【0130】
ここで、多層管状構造体MLTに関して記述されたすべての変形形態は、前記溶出可能分の試験に適合するための前記多層管状構造体MLTの使用にも当てはまる。
【0131】
管の内表面積に対しておよそ6g/m2以下の溶出可能分の値は、溶出可能分の割合が非常に低く、この結果、インジェクタが詰まることがないことを示している。
【実施例】
【0132】
ここで、下記の非限定的な例によって本発明をより詳細に記述する。
【0133】
下記の構造体を、押出によって調製した。
【0134】
多層管は、共押出によって製造される。スパイラルマンドレルを有する多層押出ヘッドに接続された5台の押出機を備える、McNeil製の工業用多層押出ラインが使用される。
【0135】
使用されるスクリューは、ポリアミドに合わせたスクリュープロファイルを有する、単軸型押出スクリューである。5台の押出機および多層押出ヘッドの他にも、押出ラインは、次のものを備える。
・共押出ヘッドの端部に配置された、ダイとパンチとの組立体。ダイの内径およびパンチの外径は、製造しようとする構造体および当該構造体を構成する材料と、管の寸法およびライン速度とに応じて選択される。
・真空のレベルを調節できる真空タンク。このタンク内では、一般に20℃維持された水が循環しており、この水の中には、最終的な寸法に管を合致させるためのゲージが浸漬されている。ゲージの直径は、製造しようとする管の寸法に合わせられており、一般的には、外形8mm厚さ1mmの管の場合で8.5mmから10mmである。
・引抜きヘッドからドローベンチへの経路に沿って管を冷却するために水が約20℃に維持されている、一連の冷却タンク。
・直径測定装置。
・ドローベンチ。
【0136】
5台の押出機がある構成を使用して、2層から5層の範囲で管を製造する。層の数が5つ未満である構造体の場合は次いで、数台の押出機に同じ材料が供給される。
【0137】
6つの層を含む構造体の場合は、流体と接触する内層を製造するために、追加の押出機が接続されており、スパイラルマンドレルが既存のヘッドに追加されている。
【0138】
試験前には、最良の管の特性および良好な押出品質を確保するために、押出される材料は、押出前の残留水分含量が0.08%未満であることを確認しておく。残留水分含量が0.08%未満でない場合、試験前に材料を乾燥させる追加ステップが、一般に真空乾燥機内において、80℃で終夜実施される。
【0139】
本特許出願に記載の特徴を満足する管は、押出パラメータが安定化し、時間がたっても管の公称寸法がもはや変化しなくなった後に得られた。直径は、押出ラインの端部に設置されたレーザー式直径測定装置によってモニタリングされる。
【0140】
一般に、ライン速度は一般的に、20m/minである。ライン速度は一般に、5m/minから100m/minの間である。
【0141】
当業者に公知なように、押出機スクリューの速度は、層の厚さおよびスクリューの直径に左右される。
【0142】
一般に、押出機および工具(ヘッドおよび継ぎ手)の温度は、検討する組成物の融点より十分に高いように設定すべきであり、この結果、当該組成物が溶融状態を維持し、これにより、当該組成物が固化して機械を閉塞することがなくなる。
【0143】
管状構造体を、多様なパラメータについて試験した(表1)。
【0144】
溶出可能分の量を測定し、バリア性ならびに衝撃性および破裂強さに関する特性も評価した。表1は、採用された試験および結果の分類を示している。
【0145】
【0146】
【0147】
ガソリンに対する透過性(バイオガソリンに対するバリア性)の測定は、重量法に従って、CE10、即ち、イソオクタン/トルエン/エタノール=45/45/10体積%を用いて60℃で判定される。
【0148】
瞬間的な透過性は、誘導期の間は0であるが、誘導期の後には、連続運転条件下での透過性の値に相当する平衡値になるまで徐々に増大していく。この平衡値は、連続運転条件下で得られたものであり、材料の透過性であると考えられている。
【0149】
組成物
PA12-TL:6%のBBSA(ベンジルブチルスルホンアミド)可塑剤と、無水物によって官能化された6%のEPR Exxelor VA1801(Exxon)とを含有するMn(数平均分子量)35000のポリアミド12、および1.2%の有機安定剤(0.8%のフェノールであるGreat Lakes製のLowinox44B25と0.2%のホスフィトであるCiba製のIrgafos168と0.2%のUV安定剤であるCiba製のTinuvin312とからなる。)をベースとした、組成物を表す。この組成物の融点は、175℃である。
【0150】
PA12-NoPlast=可塑剤を含まない(可塑剤が同じ%のPA12によって置き換えられている。)PA12-TL
PA11-TL:5%のBBSA(ベンジルブチルスルホンアミド)可塑剤と重量比が68.5/30/1.5のエチレン/エチルアクリレート/無水物型である6%の耐衝撃性改良剤(190℃において2.16kgの状況下でMFI6)とを含有するMn(数平均分子量)29000のポリアミド11、および1.2%の有機安定剤(0.8%のフェノールであるGreat Lakes製のLowinox44B25と0.2%のホスフィトであるCiba製のIrgafos168と0.2%のUV安定剤であるCiba製のTinuvin312とからなる。)をベースとした、組成物を表す。この組成物の融点は、185℃である。
【0151】
PA11-NoPlast=可塑剤を含まない(可塑剤が同じ%のPA11によって置き換えられている)PA11-TL
PA610-TL=PA610+12%耐衝撃性改良剤EPR1+有機安定剤+10%可塑剤
PA610-NoPlast=可塑剤を含まない(可塑剤がPA610によって置き換えられている)PA610-TL
PA612-TL=PA612+12%耐衝撃性改良剤EPR1+有機安定剤+9%可塑剤
PA612-NoPlast=可塑剤を含まない(可塑剤がPA612によって置き換えられている)PA612-TL
PA6-TL=PA6+12%耐衝撃性改良剤EPR1+有機安定剤+12%可塑剤
PA6-NoPlast=可塑剤を含まない(可塑剤がPA6によって置き換えられている)PA6-TL
【0152】
・PA12:Mn(数平均分子量)35000のポリアミド12。融点が178℃であり、このポリアミドの融解エンタルピーは、54kJ/m2である
・PA11:Mn(数平均分子量)29000のポリアミド11。融点が190℃であり、このポリアミドの融解エンタルピーは、56kJ/m2である
・PA610:Mn(数平均分子量)30000のポリアミド6.10。融点が223℃であり、このポリアミドの融解エンタルピーは、61kJ/m2である
・PA612:Mn(数平均分子量)29000のポリアミド6.12。融点が218℃であり、このポリアミドの融解エンタルピーは、67kJ/m2である
・PA6:Mn(数平均分子量)28000のポリアミド6。融点が220℃であり、このポリアミドの融解エンタルピーは、68kJ/m2である
・EPR1:無水物官能性の反応性基によって(0.5から1重量%)官能化されたEPRを表しており、MFI9(230℃において、10kgの状況下)で、Exxon製のExxellor VA1801型のものである。
【0153】
有機安定剤=0.8%のフェノール(Great Lakes製のLowinox44B25)と、0.2%のホスフィト(Ciba製のIrgafos168)と、0.2%のUV安定剤(Ciba製のTinuvin312)とからなる1.2%の有機安定剤。
【0154】
可塑剤=BBSA(ベンジルブチルスルホンアミド)
coPA612-6T-NoPlast=20mol%の6.T(従って、80mol%の6.12)を含むcoPA6.12/6.T(このcoPAは、MFIが235℃で5kgにおけるものである=(融点T°=200℃)+20%EPR1+orga.stab.)
PPA10T=モル比が60/40で融点Tが280℃のcoPA10.T/6.T+18%EPR1+orga.stab。
【0155】
PA11cond-noplast=Mn15000のPA11+9%EPR1+22%のEnsaco200型カーボンブラック
バインダー=43.8%のPA612(別途規定あり)、25%のPA6(別途規定あり)および20%のEPR1型耐衝撃性改良剤ならびに1.2%の有機安定剤(0.8%のフェノールであるGreat Lakes製のLowinox44B25と、0.2%のホスフィトであるCiba製のIrgafos168と、0.2%のUV安定剤であるCiba製のTinuvin312とからなる。)および10%のBBSA(ベンジルブチルスルホンアミド)可塑剤をベースとした組成物。
【0156】
バインダー-NoPlast=48.8%のPA612(別途規定あり)、30%のPA6(別途規定あり)および20%のEPR1型耐衝撃性改良剤ならびに1.2%の有機安定剤(0.8%のフェノールであるGreat Lakes製のLowinox44B25と、0.2%のホスフィトであるCiba製のIrgafos168と、0.2%のUV安定剤であるCiba製のTinuvin312とからなる。)をベースとした組成物。
【0157】
バインダー2=43.8%のPA610(別途規定あり)、25%のPA6(別途規定あり)および20%のEPR1型耐衝撃性改良剤ならびに1.2%の有機安定剤(0.8%のフェノールであるGreat Lakes製のLowinox44B25と、0.2%のホスフィトであるCiba製のIrgafos168と、0.2%のUV安定剤であるCiba製のTinuvin312とからなる。)および10%のBBSA(ベンジルブチルスルホンアミド)可塑剤をベースとした組成物。
【0158】
バインダー2-NoPlast=48.8%のPA610(別途規定あり)、30%のPA6(別途規定あり)および20%のEPR1型耐衝撃性改良剤ならびに1.2%の有機安定剤(0.8%のフェノールであるGreat Lakes製のLowinox44B25と、0.2%のホスフィトであるCiba製のIrgafos168と、0.2%のUV安定剤であるCiba製のTinuvin312とからなる。)をベースとした組成物。
【0159】
EVOH=32%のエチレンを含有するEVOHで、EVAL FP101B型(Eval)
EVOH24=24%のエチレンを含有するEVOHで、EVAL M100B型(Eval)
EVOHhi=27%のエチレンおよび耐衝撃性改良剤を含有するEVOHで、EVAL LA170B型(Eval)
PPA10T/6T=40mol%の6.T(300℃で5kgにおけるMFI=8で、融点T℃が280℃のもの)+15%のEPR1+orga.stab.)を含むcoPA10.T/6.T
EFEPc=Daikin製のNeoflon RP5000ASという型である、官能化された導電性のEFEP
バインダーPA610+PA6。PA612(Mn29000、別途規定あり)および36%のPA6(Mn28000、別途規定あり)および1.2%の有機安定剤(0.8%のフェノールであるGreat Lakes製のLowinox44B25と、0.2%のホスフィトであるCiba製のIrgafos168と、0.2%のUV安定剤であるCiba製のTinuvin312とからなる。)をベースとした組成物を表す。
【0160】
可塑剤を含有せず、バリアより下に配置されており、特に流体と接触している層を有する構造体は、溶出可能分の試験における結果が非常に良好であり、流体と接触している層が可塑化された反例よりはるかに良好である。