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特許7399161有機IR吸収顔料を含むマイクロ粒子組成物
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  • 特許-有機IR吸収顔料を含むマイクロ粒子組成物 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-07
(45)【発行日】2023-12-15
(54)【発明の名称】有機IR吸収顔料を含むマイクロ粒子組成物
(51)【国際特許分類】
   C09B 67/08 20060101AFI20231208BHJP
   C09D 11/037 20140101ALI20231208BHJP
   C09D 11/023 20140101ALI20231208BHJP
   C09B 67/46 20060101ALI20231208BHJP
   C09B 57/10 20060101ALI20231208BHJP
   C09B 47/00 20060101ALI20231208BHJP
【FI】
C09B67/08 A
C09D11/037
C09D11/023
C09B67/46 B
C09B57/10
C09B47/00
【請求項の数】 17
(21)【出願番号】P 2021521254
(86)(22)【出願日】2019-10-17
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-14
(86)【国際出願番号】 EP2019078222
(87)【国際公開番号】W WO2020079154
(87)【国際公開日】2020-04-23
【審査請求日】2022-10-14
(31)【優先権主張番号】18201244.3
(32)【優先日】2018-10-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】521037411
【氏名又は名称】ベーアーエスエフ・エスエー
(74)【代理人】
【識別番号】100188558
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100133086
【弁理士】
【氏名又は名称】堀江 健太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100163522
【弁理士】
【氏名又は名称】黒田 晋平
(72)【発明者】
【氏名】ローラント・ヒンリッヒ・シュタフ
(72)【発明者】
【氏名】ヤニック・フックス
(72)【発明者】
【氏名】ヘルムート・ライヒェルト
(72)【発明者】
【氏名】ハンス・ライヒェルト
(72)【発明者】
【氏名】オリヴァー・ゼーガー
(72)【発明者】
【氏名】コリンナ・ドルマン
(72)【発明者】
【氏名】ベルント・ディーター・オッシュマン
【審査官】井上 明子
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2018/0326776(US,A1)
【文献】特表2012-506463(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0311991(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2018/0320014(US,A1)
【文献】特表2011-504157(JP,A)
【文献】特表2014-505667(JP,A)
【文献】特開2012-041485(JP,A)
【文献】特開2013-189596(JP,A)
【文献】特表2015-507218(JP,A)
【文献】特開2016-190900(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09B 1/00-69/10
C09D 11/00-11/54
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機IR吸収顔料のマイクロ粒子ベース顔料組成物であって、前記有機IR吸収顔料が、750~1100nmの範囲に主要吸収極大を有する、多不飽和多環式有機化合物又は金属有機化合物であり、前記顔料組成物の前記マイクロ粒子が、前記有機IR吸収顔料を、アミノプラストポリマーにより取り囲まれているか又はこれに埋包されている固体粒子として含有し、前記アミノプラストポリマーが、1種又は複数のアミノ化合物と1種又は複数のアルデヒドとの重縮合生成物であり、前記マイクロ粒子ベース顔料組成物が、ISO13320:2009ENに準拠した静的光散乱法によって決定して、1.0~15.0μmの範囲の体積加重粒平均D(4,3)値を有する体積基準の粒径分布を特徴とし、マイクロ粒子組成物中の前記アミノプラストポリマーの量が、前記アミノプラストポリマー及び前記有機IR吸収顔料の総質量に対して15~50質量%であり、且つ有機IR吸収顔料の量が、アミノプラストポリマー及び有機IR吸収顔料の総質量に対して、50~85質量%である、マイクロ粒子ベース顔料組成物。
【請求項2】
前記アミノプラストポリマーがメラミンホルムアルデヒド樹脂である、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記有機IR吸収顔料が、金属ジチオレン錯体、フタロシアニン顔料、ナフタロシアニン顔料、リレン顔料、ポリメチン顔料、アントラキノン顔料、及びそれらの混合物からなる群から選択される、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
前記有機IR吸収顔料が、式(I)の金属ジチオレン錯体:
【化1】
(式中、
Mは、Ni、Pd、又はPtであり、
、Xは、互いに独立して、O又はSであり、
、R、R、Rは、同一であるか又は異なり、アルキルからなる群から選択され、アルキルの1つ又は複数の非隣接CH基は、O、アルケニル、アリール、及びヘタリールからなる群から選択されるいずれかにより独立して置き換えられていてもよく、アリール及びヘタリールは、非置換であるか又は置換されている)、
及び式(II)のナフタロシアニン錯体:
【化2】
(式中、
は、Cu、Fe、Mn、Pd、Pt、VO、Si(OR、Al(R)、又はGa(R)であり、
は、H、F、OR、SR、NHR10、NR1011であり、
は、H、F、OR、SR、NHR10、NR1011であり、
は、Cl、OH、及びOR12からなる群から選択され、
は、C~C12-アルキル、(CO)-R13、及びフェニルからなる群から選択され、
は、C~C12-アルキル、(CO)-R13、及びフェニルからなる群から選択され、
10、R11は、互いに独立して、C~C12-アルキル、(CO)-R13、及びフェニルからなる群から選択されるか、又は
10、R11は一緒になって、1つ又は2つのメチル基により場合により置換されていてもよい、5員又は6員の飽和N-複素環式環を形成し、
12は、C~C12-アルキル、(CO)-R13、及びフェニルからなる群から選択され、
13は、C~C12-アルキルであり、
n、mは、互いに独立して、0、1、2、3、又は4である)
からなる群から選択される、請求項3に記載の組成物。
【請求項5】
- 複数のポリ(オキシ-C~C-アルキレン)基を有する非イオン性又は陰イオン性ポリマー分散剤、
- 少なくとも1つのポリ(オキシ-C~C-アルキレン)基を有する酸性ポリエーテルエステル、又はそれとポリ(オキシ-C~C-アルキレン)グリコール及び/若しくは陰イオン性界面活性剤との混合物、並びに
- 修飾ポリアミンと少なくとも1つのポリ(オキシ-C~C-アルキレン)基を有する陰イオン性界面活性剤との混合物
からなる群から選択される少なくとも1種の分散剤を含有する、請求項1から4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
前記マイクロ粒子の水性懸濁液である、請求項1から5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
前記マイクロ粒子の固体組成物である、請求項1から5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか一項に記載のマイクロ粒子ベース顔料組成物を製造する方法であって、
i) 1種又は複数のアミノ化合物と1種又は複数のアルデヒドとのアミノプラスト予備縮合物も含有する、固体有機IR吸収顔料粒子の水性懸濁液を用意する工程と、
ii) 少なくとも1種の界面活性剤の存在下で、前記固体有機IR吸収顔料の水性懸濁液中の前記アミノプラスト予備縮合物の重縮合を行う工程と
を含む、方法。
【請求項9】
前記水性懸濁液中の前記固体有機IR吸収顔料の粒子が、ISO13320:2009ENに準拠する静的光散乱法によって決定して、最大で0.8μmのD(v0.5)を有する体積基準の粒径分布を特徴とする、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記界面活性剤と前記固体有機IR吸収顔料との質量比が0.05:1~1:1の範囲にある、請求項8又は9に記載の方法。
【請求項11】
前記固体有機IR吸収顔料の水性懸濁液に、工程ii)の前に解凝集を施す、請求項8から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
セキュリティ印刷のための印刷用インク配合物における、請求項1から7のいずれか一項に記載のマイクロ粒子組成物の使用。
【請求項13】
請求項1から7のいずれか一項に記載のマイクロ粒子ベース顔料組成物、及び結合剤を含有する、印刷用インク配合物。
【請求項14】
セキュリティ印刷用の、請求項13に記載の印刷用インク配合物。
【請求項15】
前記結合剤が少なくとも1種の酸化乾燥性樹脂を含む、請求項13又は14に記載の印刷用インク配合物。
【請求項16】
セキュリティ機能又はセキュリティ書類を生成する方法であって、印刷プロセスによって、特に銅版凹版印刷、オフセット印刷、グラビア印刷(回転グラビアとしても知られている)、シルクスクリーン印刷、フレキソグラフィー、及びそれらの組合せからなる群から選択される印刷プロセスによって、基材に請求項13から15のいずれか一項に記載の印刷用インク配合物を塗布する工程を含む、方法。
【請求項17】
請求項13から15のいずれか一項に記載の印刷用インク配合物が印刷プロセスによりその上に塗布されている基材を含む、セキュリティ書類。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、750~1100nmの範囲に主要吸収極大を有する有機IR吸収顔料を含むマイクロ粒子組成物に関する。本発明はまた、前記マイクロ粒子組成物を製造する方法、及び印刷用インク、特にセキュリティ機能又はセキュリティ書類を生成するのに好適な印刷用インクにおけるその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
無色又はほとんど無色のIR吸収剤は、セキュリティ印刷 (紙幣、クレジットカード、身分証明書、パスポート等)、見えない及び/又はIR読取り可能なバーコード、プラスチックのレーザー溶接、IRラジエータを使用する表面コーティングの硬化、印刷の乾燥及び硬化、ペーパー又はプラスチック表面のトナーの定着、PDP用の光学フィルター (プラズマディスプレイパネル)、例えば、ペーパー若しくはプラスチックのレーザー刻印、プラスチックプレフォームの加熱又は熱遮蔽用途等の幅広い範囲の用途において、重要な技術的ニーズを満たす。
【0003】
様々な化合物クラスに属しており、非常に多岐にわたる異なる構造を有する大多数の有機物質及び無機物質が、IR吸収剤としての用途に知られている (例えば、EP30672216、及びその中に引用されている参考文献を参照されたい)。多数の公知化合物のクラス及び構造があるにもかかわらず、特性の複雑なプロファイルを有する生成物の提供は、多くの場合、困難である。IR吸収剤が最小限の可能な固有の色調を有するという意味である「無色の」IR吸収剤であって、化学安定性、熱安定性及び/又は光安定性等の技術的安定性要件を同時に満たすIR吸収剤が継続的に必要とされている。
【0004】
不運なことに、IR吸収顔料の化学安定性は、多くの場合、十分ではない。特に、750~1100の範囲に主要吸収極大を有する無色のIR吸収顔料は、特に酸化ストレスに対して不安定となることがある。したがって、酸化に対するその堅牢特性を改善したIR吸収化合物の高性能用途に対するニーズが依然として存在する。この特性は、セキュリティ印刷の分野における用途にとって特に重要である。IR吸収特性は、印刷用インクの乾燥/硬化工程後に依然として高いこと、及びIRスペクトルは、乾燥/硬化工程の前のその初期形態と比べて実質的に変化しないままであるということは、セキュリティ印刷用途において最も重要である。印刷用インクから作製したセキュリティ機能は、セキュリティ書類の寿命の間に特徴的なその吸収の有意な変化を受けないこともやはり必須である。最後に、印刷用インクに含まれているIR吸収顔料は、インクが実際に使用される前に分解しない (保存安定性) ことが必須である。
【0005】
WO2017/080652は、熱可塑性ポリマーから作製され、かつUV、VIS又はIR色素を含有するコア、及びメラミンホルムアルデヒド樹脂等の縮合ポリマーにより形成されるシェルを有する、コアシェル粒子の形態のセキュリティ用顔料を記載している。その調製は、ポリマー粒子を含有する色素の調製、次いで、こうして得られたポリマー粒子をデュロプラスチックマトリックス中に取り込ませ、こうして得られたマトリックスを粉砕し、こうして得られた色素含有ポリマー粒子を縮合ポリマーによりカプセル封入することを含む。得られたコアシェル粒子は、わずか少量の色素しか含有していない。更に、この概念は、有機溶媒に可溶性で、熱可塑性ポリマーと適合性がある色素にしか適用可能ではない。
【0006】
WO2017/080656は、UV、VIS又はIR色素を含有する架橋されたデュロプラスチック付加ポリマーから作製されたコア、及びメラミンホルムアルデヒド樹脂等の付加ポリマーにより形成されるシェルを有する、コアシェル粒子の形態のセキュリティ用顔料を記載している。これらの顔料の調製は、面倒である。その調製は、デュロプラスチックマトリックス中に色素を取り込ませることによるポリマー粒子を含有する色素の調製、こうして得られたマトリックスを粉砕し、こうして得られた色素含有ポリマー粒子を縮合ポリマーによりカプセル封入することを必要とする。得られたコアシェル (core shall) 粒子は、わずか少量の色素しか含有していない。更に、この概念は、デュロプラスチックポリマーマトリックスに取り込ませることができる色素にしか適用可能ではない。
【0007】
EP30672216は、トリチオシアヌル酸 (thrihiocyanuric acid)、ジフェニルチオウレア、ジブチルチオウレア、ジイソプロピルチオウレア、2-メルカプト-1-メチルイミダゾール、2-メルカプトベンゾイミダゾール、N-フェニルチオアセトアミド等のチオアミド、チオウレア及びチオカルバメート化合物、並びに2-チオメルカプトピリミジン化合物等のそれらの互変異性体から選択される、IR吸収剤及び安定剤を含有する顔料組成物を記載している。これらの組成物は、化学物質及び光の両方に対するIR吸収顔料への安定性の改善を実現し、かつ色を付けないが、安定剤が顔料自体を分解する恐れがあるので、低分子安定性化合物は必ずしも許容されるわけではないことがあり、長期間安定性が必ずしも十分ではないことがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】WO2017/080652
【文献】WO2017/080656
【文献】EP30672216
【文献】EP3067216
【文献】WO2008/086931
【文献】WO2012/069518
【文献】US4,918,317
【文献】EP26914
【文献】EP218887
【文献】EP319337
【文献】EP383,337
【文献】EP415273
【文献】DE19833347
【文献】DE19835114
【文献】WO01/51197
【文献】WO99/32220
【文献】WO2006/074969
【非特許文献】
【0009】
【文献】F. Pirrung and C. Auschra in Macromolecular Engineering, Precise Synthesis, Materials Properties, Applications (K. Matyjaszewskiら編), 第4章, Polymeric Dispersants, 2135~2180頁
【文献】Kirk-Othmer, Encyclopedia of Chemical Technology, 第3版, 第2巻, 440~469頁
【文献】Perry's Chemical Engineers' Handbook, 第7版, McGraw Hill 1997, 20-31~20-38頁
【文献】U Teipelら, Int. J. Mineral Processing Vol. 74, Supplement (2004), S183~S190頁
【文献】R. van Gorkumら, Coordination Chemistry Reviews 249 (2005) 1709~1728頁
【文献】J. F. Black, J. Am. Chem. Soc., 1978, 100, 527頁
【文献】J. Mallegolら, Prog. Org. Coatings 39 (2000) 107~113頁
【文献】The Printing ink manual, R.H. Leach and R.J. Pierce, Springer Edition, 第5版
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
したがって、従来のIR吸収顔料、特に有機IR吸収顔料から容易に調製することができる有機IR吸収顔料組成物であって、IR吸収顔料への安定性の増大を実現し、特に酸化乾燥性印刷用インクにおいて発生する酸化ストレスに対する安定性が増大した有機IR吸収顔料組成物が必要とされている。更に、顔料組成物は、印刷用インクと適合可能であり、かつ印刷用インク、特に酸化乾燥性印刷用インクに容易に取り込ませることが可能であるべきである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
驚くべきことに、本明細書に記載される有機IR吸収顔料のマイクロ粒子ベース顔料組成物が、技術的安定性要件、特に化学安定性を満たし、かつ印刷用インクに容易に取り込ませることが可能であることが見出された。
【0012】
したがって、本発明は、750~1100nmの範囲において主要吸収極大を有する有機IR吸収顔料のマイクロ粒子ベース顔料組成物であって、該顔料組成物のマイクロ粒子が、有機IR吸収顔料を、アミノプラストポリマーにより取り囲まれているか又はこれに埋包されている固体粒子として含有し、アミノプラストポリマーが、1種又は複数のアミノ化合物と1種又は複数のアルデヒドとの重縮合生成物であり、マイクロ粒子ベース顔料組成物が、ISO13320:2009ENに準拠した静的光散乱法によって決定して、1.0~15.0μmの範囲、特に3.0~12.0μmの範囲のD(4,3)値を有する体積基準の粒径分布を特徴とする、顔料組成物に関する。
【0013】
本発明はまた、本発明のマイクロ粒子ベース顔料組成物を製造する方法であって、
i) 1種又は複数のアミノ化合物と1種又は複数のアルデヒドとのアミノプラスト予備縮合物(プレ縮合物)も含有する、固体有機IR吸収顔料の水性懸濁液を用意する工程と、
ii) 少なくとも1種の界面活性剤の存在下で、固体有機IR吸収顔料の水性懸濁液中のアミノプラスト予備縮合物の重縮合を行う工程と
を含む、方法に関する。
【0014】
本発明はまた、印刷用インク、特に酸化乾燥性印刷用インク、特に、凹版印刷に好適な印刷用インクにおける、本発明のマイクロ粒子ベース顔料組成物の使用に関する。
【0015】
本発明の更なる態様は、印刷用インク、特に本明細書に記載されているマイクロ粒子ベース組成物及び結合剤、特に酸化乾燥結合剤を含有する、セキュリティ印刷用の印刷用インクに関する。
【0016】
本発明の更なる態様は、本発明の印刷用インクを印刷プロセスによって基材に塗布する工程を含む、セキュリティ機能又はセキュリティ書類を生成する方法に関する。
【0017】
本発明は、いくつかの利益を伴う。本発明のマイクロ粒子ベース組成物は、その中に含有するIR吸収顔料への安定性、特に化学物質及び光に対する安定性の増大をもたらす。特に、本組成物は、酸化乾燥性印刷用インクに発生する、酸化ストレスへの安定性の増大を実現する。したがって、IR吸収特性は、印刷用インクの乾燥/硬化工程後に依然として高く、IRスペクトルは、乾燥/硬化工程の前のその初期形態と比べて実質的に変化しないままである。その上に、本発明の組成物は、良好な長期安定性を有しており、追加的な安定剤の使用を必要としない。更に、本組成物は、印刷用インクに容易に取り込ませることができる。本発明の方法により、組成物に多量のIR吸収有機顔料を取り込ませることが可能となる。したがって、多量のIR吸収有機顔料を含有し、かつ顔料のIR吸光度又は他の特性に影響を及ぼすことがある他の成分を比較的少ない量で含有する組成物を得ることが可能である。もっと正確に述べると、本発明のマイクロ粒子ベース組成物は、親となる未処理有機顔料との比較により、保護性アミノプラストシェルにより実質的に影響を受けないIR吸収プロファイルを有する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1図1は、本発明の吸収極大において測定される印刷の劣化 (remission) から計算される吸収の相対的低下、及び用途実施例3の比較印刷用インクを示す略図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
ここで、及び本明細書の全体を通して、用語「マイクロ粒子ベース組成物」は、離散性のマイクロ粒子からなる組成物に関する。用語「マイクロ粒子」は、離散性粒子が、通常、数マイクロメートルを超えない、又は更に一層小さい、例えばナノメートル範囲にある粒径を有することを示す。特に、用語「マイクロ粒子」は、組成物中に含まれる粒子の全量に対して、少なくとも90体積%の粒子が、25μm未満、特に最大で20.0μm、より詳細には最大で17.5μm、とりわけ最大で15.0μmの、D(v0.9)値として与えられる粒径を有することを示す。
【0020】
例えばD(v0.1)、D(v0.5)、D(v0.9)、D(3,2)、及びD(4,3)値を特徴とする、本明細書において称される粒径及びやはりまた粒径分布は、静的光散乱法 (SLS) とも呼ばれるレーザー回折等の技法により求めることができる粒子、例えば顔料粒子及び顔料-ポリマー粒子の直径である。SLSは、ISO13320:2009ENに準拠して通常、行われる。
【0021】
粒径の文脈において、粒径のD(0.9)又はD(v0.9)値は、粒子の90体積%がこの値よりも小さな流体力学的径を有することを示す。粒径の文脈において、体積メジアン粒子径D(0.5)又はD(v0.5)値は、それぞれ、粒子の50体積%が引用している値より大きな直径を有しており、粒子の50体積%が引用している値より小さな直径を有することを意味する。粒径の文脈において、D(0.1)又はD(v0.1)値は、粒子の10体積%が引用されている値よりも小さな流体力学的径を有することを示す。D(3,2)は、全粒子の表面加重平均値であることを説明する一方、D(4,3)は、全粒子の体積加重平均値であることを説明する。
【0022】
マイクロ粒子ベース組成物に含まれているマイクロ粒子は、有機IR吸収顔料及びアミノプラストポリマーを含有する。有機IR吸収顔料は、アミノプラスト樹脂によって埋包されているか又はこれにより取り囲まれている。
【0023】
本発明のマイクロ粒子組成物に含まれているアミノプラストポリマーは、1種又は複数のアミノ化合物と1種又は複数のアルデヒドとの重縮合生成物である。この点で有用なアミノ化合物は、少なくとも2つのアミノ基、特に2つ又は3つのアミノ基を有するアミンである。これらのアミンは、そのアミノ基がそれぞれ、二重結合を介して、酸素原子、硫黄原子又は窒素原子に連結している炭素原子に結合しているという特徴があることが好ましい。このようなアミンの好ましい例は、ウレア、チオウレア及びメラミン、シアノグアナミン(=ジシアンジアミド)、アセトグアナミン及びベンゾグアナミンである。この点での有用なアルデヒドは、C1~C10-アルカナール、とりわけホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロパナール又はn-ブタナール等のC1~C4-アルカナール、及びC2~C10-アルカンジアール、とりわけグリオキサール又はグルタルアルデヒド等のC2~C6-アルカンジアールである。好ましいアルデヒドは、ホルムアルデヒド、グリオキサール及びグルタルアルデヒド、特に、ホルムアルデヒドである。アミノプラストポリマーは、部分的に又は完全にエーテル化されていてもよい。
【0024】
本発明のマイクロ粒子組成物のアミノプラストポリマーは、典型的には、メラミン-ホルムアルデヒド樹脂(=MF樹脂)(完全に又は部分的にエーテル化されているMF樹脂を含む)、ウレア-ホルムアルデヒド樹脂 (=UF樹脂)、チオウレア-ホルムアルデヒド樹脂 (=TUF樹脂)、メラミン-ウレア-ホルムアルデヒド樹脂 (=MUF樹脂) (完全に又は部分的にエーテル化されているMUF樹脂を含む)、メラミン-チオウレア-ホルムアルデヒド樹脂 (=MTUF樹脂) (部分的にエーテル化されているMTUF樹脂を含む)、ウレア-グルタルアルデヒド樹脂、ベンゾグアナミン-ホルムアルデヒド樹脂、ジシアンジアミド-ホルムアルデヒド樹脂及びウレア-グリオキサール樹脂から、すなわちメラミン、ウレア、チオウレア、メラミン/(チオ)ウレア混合物、ベンゾグアナミン又はジシアンジアミドとホルムアルデヒドとの重縮合によって、ウレアとグルタルアルデヒドとの重縮合によって、又はウレアとグリオキサールとの重縮合によって得られるポリマーから選択される。
【0025】
本発明のマイクロ粒子組成物のアミノプラストポリマーは、MF樹脂 (完全に又は部分的にエーテル化されているMF樹脂を含む) 及びメラミン-ウレア-ホルムアルデヒド樹脂 (=MUF樹脂) (完全に又は部分的にエーテル化されているMUF樹脂を含む) から好ましくは選択され、特に、MF樹脂、及びとりわけ完全に又は部分的にエーテル化されているMF樹脂である。
【0026】
本発明のマイクロ粒子組成物中のアミノプラストポリマーの量は、通常、アミノプラストポリマー及び有機IR吸収顔料の総質量に対して、15~50質量%、特に17~45質量%、及びとりわけ19~42質量%である。したがって、本発明のマイクロ粒子組成物中のIR吸収顔料の量は、通常、アミノプラストポリマー及び有機IR吸収顔料の総質量に対して、50~85質量%、特に55~83質量%、及びとりわけ68~81質量%である。
【0027】
原理的に、750~1100nmの範囲に主要吸収極大を有する、当分野で公知のIR吸収有機化合物は、本発明のマイクロ粒子ベース組成物に含まれる有機IR吸収顔料として使用するのが好適である。「無色」なIR吸収顔料が優先され、これは、このIR吸収顔料が、電磁スペクトルのVIS範囲、特に400~700nmの範囲に最小限の吸収しか有さないことを意味する。
【0028】
本発明に関する顔料は、750~1100nmの範囲に主要吸収極大を有する、多不飽和多環式有機化合物又は金属有機化合物である。多環式有機金属有機化合物、特に一不飽和若しくは多不飽和単環式又は多環式有機化合物と金属又は半金属との錯体が特に優先され、金属原子又は半金属と一緒になった一不飽和若しくは多不飽和単環式又は多環式有機化合物は、多不飽和多環式金属有機化合物を形成する。本発明の顔料は、多不飽和多環式有機化合物又は金属有機化合物から主になる。本発明による有機顔料は、特に、顔料の総質量に対して、750~1100nmの範囲に主要吸収極大を有していない有機物質の60質量%未満、特に50質量%未満若しくは40質量%未満しか含有しておらず、又は30質量%未満しか含有していないことさえある。
【0029】
多くの場合、有機IR吸収顔料は、金属ジチオレン錯体、フタロシアニン顔料、ナフタロシアニン顔料、リレン顔料、ポリメチン顔料及びアントラキノン顔料、特に参照により本明細書に組み込まれているEP3067216に詳述されているもの、及びこれらの顔料の混合物からなる群から選択される。
【0030】
より好ましくは、本発明のマイクロ粒子組成物の有機IR吸収顔料は、ナフタロシアニン顔料及び金属ジチオレン錯体から選択される。好適なナフタロシアニン顔料は、参照により本明細書に組み込まれているEP3067216に記載されている、式IIIc、IIId及びIIIeのものである。好適な金属ジチオレン錯体は、例えばEP3067216における式IIa及びIIbによって記載されているもの、特にWO2008/086931の式(I)によって、又はWO2012/069518の式(I)によって記載されているものであり、これらは、参照により本明細書に組み込まれている。
【0031】
本発明の特定の実施形態では、本発明のマイクロ粒子組成物の有機IR吸収顔料は、式(I)の金属ジチオレン錯体:
【0032】
【化1】
【0033】
(式中、
Mは、Ni、Pd、又はPtであり、
X1、X2は、互いに独立して、O又はSであり、
R1、R2、R3、及びR4は、同一であるか又は異なり、アルキルからなる群から選択され、アルキルの1つ又は複数の非隣接CH2基は、O、アルケニル、アリール、及びヘタリール (hetaryl) により置き換えられていてもよく、アリール及びヘタリールは、非置換であるか又は置換されている)
からなる群から選択される。
【0034】
ここで、及び本明細書の全体を通して、用語「アルキル」は、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、2-ブチル、イソブチル、tert.-ブチル、n-ペンチル、2-ペンチル、1,2-ジメチルプロピル、2,2-ジメチルプロピル、n-ヘキシル、2-ヘキシル、2,3-ジメチルブチル、n-ヘプチル、2-ヘプチル、n-オクチル、2-オクチル、2-エチルヘキシル、2,4,4-トリメチルペンチル、n-ノニル、2-ノニル、n-デシル、2-デシル、n-ウンデシル、2-ウンデシル、n-ドデシル、2-ドデシル及び2,4,4,6,6-ペンタメチルデシル等の、1~18個の炭素原子、特に1~12個の炭素原子、多くの場合、1~6個の炭素原子、特に、1~4個の炭素原子を通常、有する直鎖状又は分岐状の飽和炭化水素基に関する。
【0035】
ここで、及び本明細書の全体を通して、「アルキルの1つ又は複数の非隣接CH2基がOによって置き換えられているアルキル」という用語は、通常、3~18個の炭素原子、特に、4~12個の炭素原子を有する、直鎖状又は分岐状の飽和脂肪族基に関し、この場合、CH2基の少なくとも1つ、例えば、1つ、2つ、3つ、又は4つの非隣接CH2基がOによって置き換えられており、こうして、メトキシメチル、2-メトキシエチル、2-エトキシエチル、2-プロポキシエチル、2-メトキシプロピル、2-エトキシプロピル、3-メトキシプロピル、3-エトキシプロピル、2-(2-メトキシエトキシ)-エチル、2-(2-エトキシエトキシ)-エチル、2-(2-メトキシエトキシ)-プロピル、2-(2-エトキシエトキシ)-プロピル、2-(2-メトキシプロポキシ)-プロピル、2-(2-エトキシプロポキシ)-プロピル、3-(2-メトキシエトキシ)-プロピル、3-(2-エトキシエトキシ)-プロピル、2-(2-(2-メトキシエトキシ)-エトキシ)エチル、2-(2-(2-エトキシエトキシ)-エトキシ)エチル、2-(2-(2-メトキシエトキシ)-エトキシ)プロピル、2-(2-(2-エトキシエトキシ)-エトキシ)プロピル、3-(2-(2-メトキシエトキシ)-エトキシ)プロピル、3-(2-(2-エトキシエトキシ)-エトキシ)プロピル等のオキシアルキレン基を形成する。
【0036】
ここで、及び本明細書の全体を通して、用語「アルケニル」は、エテニル、1-プロペニル、2-プロペニル、1-メチルエテニル、1-ブテニル、2-ブテニル、3-ブテニル、1-メチル-1-プロペニル、2-メチル-1-プロペニル、1-メチル-2-プロペニル又は2-メチル-2-プロペニル、C2~C6-アルケニル(エテニル、1-プロペニル、2-プロペニル、1-メチルエテニル、1-ブテニル、2-ブテニル、3-ブテニル、1-メチル-1-プロペニル、2-メチル-1-プロペニル、1-メチル-2-プロペニル、2-メチル-2-プロペニル、1-ペンテニル、2-ペンテニル、3-ペンテニル、4-ペンテニル、1-メチル-1-ブテニル、2-メチル-1-ブテニル、3-メチル-1-ブテニル、1-メチル-2-ブテニル、2-メチル-2-ブテニル、3-メチル-2-ブテニル、1-メチル-3-ブテニル、2-メチル-3-ブテニル、3-メチル-3-ブテニル、1,1-ジメチル-2-プロペニル、1,2-ジメチル-1-プロペニル、1,2-ジメチル-2-プロペニル、1-エチル-1-プロペニル、1-エチル-2-プロペニル、1-ヘキセニル、2-ヘキセニル、3-ヘキセニル、4-ヘキセニル、5-ヘキセニル、1-メチル-1-ペンテニル、2-メチル-1-ペンテニル、3-メチル-1-ペンテニル、4-メチル-1-ペンテニル、1-メチル-2-ペンテニル、2-メチル-2-ペンテニル、3-メチル-2-ペンテニル、4-メチル-2-ペンテニル、1-メチル-3-ペンテニル、2-メチル-3-ペンテニル、3-メチル-3-ペンテニル、4-メチル-3-ペンテニル、1-メチル-4-ペンテニル、2-メチル-4-ペンテニル、3-メチル-4-ペンテニル、4-メチル-4-ペンテニル、1,1-ジメチル-2-ブテニル、1,1-ジメチル-3-ブテニル、1,2-ジメチル-1-ブテニル、1,2-ジメチル-2-ブテニル、1,2-ジメチル-3-ブテニル、1,3-ジメチル-1-ブテニル、1,3-ジメチル-2-ブテニル、1,3-ジメチル-3-ブテニル、2,2-ジメチル-3-ブテニル、2,3-ジメチル-1-ブテニル、2,3-ジメチル-2-ブテニル、2,3-ジメチル-3-ブテニル、3,3-ジメチル-1-ブテニル、3,3-ジメチル-2-ブテニル、1-エチル-1-ブテニル、1-エチル-2-ブテニル、1-エチル-3-ブテニル、2-エチル-1-ブテニル、2-エチル-2-ブテニル、2-エチル-3-ブテニル、1,1,2-トリメチル-2-プロペニル、1-エチル-1-メチル-2-プロペニル、1-エチル-2-メチル-1-プロペニル、1-エチル-2-メチル-2-プロペニル等)、又はC2~C8-アルケニル(C2~C6-アルケニルに関して言及されている基等)、及び更に1-ヘプテニル、2-ヘプテニル、3-ヘプテニル、1-オクテニル、2-オクテニル、3-オクテニル、4-オクテニル、及びそれらの位置異性体等の、2~18個の炭素原子、特に、3~12個の炭素原子、多くの場合、3~6個の炭素原子を通常、有しており、かつ少なくとも1つのエチレン性不飽和二重結合を有する、直鎖状又は分岐状の不飽和炭化水素基に関する。
【0037】
ここで、及び本明細書の全体を通して、用語「アリール」は、単環式及び多環式アリールを指す一方、用語「ヘタリール」とは、単環式及び多環式ヘタリールを指し、用語「単環式アリール」、「多環式アリール」、「単環式ヘタリール」及び「多環式ヘタリール」は、本明細書において定義されている通りである。
【0038】
ここで、及び本明細書の全体を通して、アリール及びヘタリールの文脈において、用語「置換されている」は、アリール及びヘタリールが、水素と異なる少なくとも1つの基を有することを意味する。特に、用語「置換されている」は、アリール及びヘタリールが、以下に定義されている、1つ、2つ、3つ、4つ、又は5つのRa基により置換されていることを意味する。
【0039】
ここで、及び本明細書の全体を通して、用語「単環式芳香族基」及び「単環式アリール」とは、フェニルを指す。
【0040】
ここで、及び本明細書の全体を通して、用語「多環式アリール」とは、以下:
(i) 多環式芳香族炭化水素基、すなわち炭素原子の各々が、共役π電子系の部分である、完全に不飽和な多環式炭化水素基、
(ii) 飽和又は不飽和な4~10員の単環式又は二環式炭化水素環に縮合している1つのフェニル環を有する多環式炭化水素基、
(iii) 互いに直接縮合している、及び/又は飽和若しくは不飽和な4~10員の単環式又は二環式炭化水素環に縮合している少なくとも2つのフェニル環を有する多環式炭化水素基
を指す。
【0041】
通常、多環式アリールは、9~26個、例えば9個、10個、12個、13個、14個、16個、17個、18個、19個、20個、22個、24個、25個、又は26個の炭素原子、特に10~20個の炭素原子、とりわけ10個、12個、13個、14個、又は16個の炭素原子を有する。
【0042】
本文脈において、互いに直接縮合している2つ、3つ又は4つのフェニル環を有する多環式アリールは、例えば、ナフチル、アントラセニル、フェナントレニル、ピレニル及びトリフェニレニルを含む。飽和若しくは不飽和な4~10員の単環式又は二環式炭化水素環に縮合している2つ、3つ又は4つのフェニル環を有する多環式アリールは、例えば、9H-フルオレニル、ビフェニレニル、テトラフェニレニル、アセナフテニル(1,2-ジヒドロアセナフチレニル)、アセナフチレニル、9,10-ジヒドロアントラセン-1-イル、1,2,3,4-テトラヒドロフェナントレニル、5,6,7,8-テトラヒドロフェナントレニル、シクロペンタ[fg]アセナフチレニル、フェナレニル、フルオランテニル、ベンゾ[k]フルオランテニル、ペリレニル、9,10-ジヒドロ-9,10[1',2']-ベンゼノアントラセニル、ジベンゾ[a,e][8]アヌレニル、9,9'-スピロビ[9H-フルオレン]イル、及びスピロ[1H-シクロブタ[de]ナフタレン-1,9'-[9H]フルオレン]イルを含む。
【0043】
多環式アリールは、例として、ナフチル、9H-フルオレニル、フェナントリル、アントラセニル、ピレニル、アセナフテニル、アセナフチレニル、2,3-ジヒドロ-1H-インデニル、5,6,7,8-テトラヒドロ-ナフタレニル、シクロペンタ[fg]アセナフチレニル、2,3-ジヒドロフェナレニル、9,10-ジヒドロアントラセン-1-イル、1,2,3,4-テトラヒドロフェナントレニル、5,6,7,8-テトラヒドロフェナントレニル、フルオランテニル、ベンゾ[k]フルオランテニル、ビフェニレニル、トリフェニレニル、テトラフェニレニル、1,2-ジヒドロアセナフチレニル、ジベンゾ[a,e][8]アヌレニル、ペリレニル、ビフェニリル、ターフェニリル、ナフチレンフェニル、フェナントリルフェニル、アントラセニルフェニル、ピレニルフェニル、9H-フルオレニルフェニル、ジ(ナフチレン)フェニル、ナフチレンビフェニル、トリ(フェニル)フェニル、テトラ(フェニル)フェニル、ペンタフェニル(フェニル)、フェニルナフチル、ビナフチル、フェナントリルナフチル、ピレニルナフチル、フェニルアントラセニル、ビフェニルアントラセニル、ナフタレニルアントラセニル、フェナントリルアントラセニル、ジベンゾ[a,e][8]アヌレニル、9,10-ジヒドロ-9,10[1',2']ベンゾアントラセニル、9,9'-スピロビ-9H-フルオレニル、及びスピロ[1H-シクロブタ[de]ナフタレン-1,9'-[9H]フルオレン]イルを含む。
【0044】
ここで、及び本明細書の全体を通して、用語「単環式複素芳香族基」及び「単環式ヘタリール」とは、複素芳香族単環式基であって、環員原子が共役π電子系の部分である、複素芳香族単環式基を指し、複素芳香族単環は、複素環式環員として、1個、2個、3個、若しくは4個の窒素原子、又は1個の酸素原子及び0個、1個、2個、若しくは3個の窒素原子、又は1個の硫黄原子及び0個、1個、2個、若しくは3個の窒素原子を含み、環原子の残部は炭素原子である、5環原子又は6環原子を有する。例は、フリル (=フラニル)、ピロリル (=1H-ピロリル)、チエニル (=チオフェニル)、イミダゾリル (=1H-イミダゾリル)、ピラゾリル (=1H-ピラゾリル)、1,2,3-トリアゾリル、1,2,4-トリアゾリル、テトラゾリル、オキサゾリル、チアゾリル、イソオキサゾリル、イソチアゾリル、1,3,4-オキサジアゾリル、1,3,4-チアジアゾリル、ピリジル(=ピリジニル)、ピラジニル、ピリダジニル、ピリミジニル及びトリアジニルを含む。
【0045】
ここで、及び本明細書の全体を通して、用語「多環式ヘタリール」とは、上で定義した単環式ヘタリール環、並びにフェニル及び上で定義した複素芳香族単環から選択される、少なくとも1つ、例えば1つ、2つ、3つ、4つ、又は5つの更なる芳香族環を有する複素芳香族多環式基を指し、この場合、多環式ヘタリールの芳香族環は、共有結合により互いに連結されている、及び/或いは互いに直接縮合している、及び/或いは飽和若しくは不飽和な4~10員の単環式又は二環式炭化水素環に縮合している。用語「多環式ヘタリール」はまた、環原子として、酸素、硫黄及び窒素から選択される1個又は2個のヘテロ原子を有する少なくとも1つの飽和若しくは部分不飽和な5員又は6員の複素環式環 (2H-ピラン、4H-ピラン、チオピラン、1,4-ジヒドロピリジン、4H-1,4-オキサジン4H-1,4-チアジン又は1,4-ジオキシン等)、並びにフェニル及び複素芳香族単環から選択される、少なくとも1つ、例えば、1つ、2つ、3つ、4つ、又は5つの更なる芳香族環を有する複素芳香族多環式基を指し、この場合、更なる芳香族環の少なくとも1つは、飽和若しくは部分不飽和な5員又は6員の複素環式基に直接縮合しており、多環式ヘタリールの更なる芳香族環の残部は、共有結合により互いに連結されている、又は互いに直接縮合している、及び/又は飽和若しくは不飽和な4~10員の単環式又は二環式炭化水素環に縮合している。通常、多環式ヘタリールは、窒素原子、硫黄原子及び酸素原子から選択される、1個、2個、3個、又は4個の原子を含む、9~26個の環原子、特に9~20個の環原子を有しており、環原子の残部は炭素原子である。
【0046】
多環式ヘタリールの例は、以下に限定されないが、ベンゾフリル、ベンゾチエニル、ジベンゾフラニル (=ジベンゾ[b,d]フラニル)、ジベンゾチエニル(=ジベンゾ[b,d]チエニル)、ナフトフリル、ナフトチエニル、フロ[3,2-b]フラニル、フロ[2,3-b]フラニル、フロ[3,4-b]フラニル、チエノ[3,2-b]チエニル、チエノ[2,3-b]チエニル、チエノ[3,4-b]チエニル、オキサントレニル、チアントレニル、インドリル (=1H-インドリル)、イソインドリル(=2H-イソインドリル)、カルバゾリル、インドリジニル、ベンゾピラゾリル、ベンゾイミダゾリル、ベンゾオキサゾリル、ベンゾチアゾリル、ベンゾ[cd]インドリル、1H-ベンゾ[g]インドリル、キノリニル、イソキノリニル、アクリジニル、フェナジニル、キナゾリニル、キノキサリニル、フェノキサジニル、フェンチアジニル、ベンゾ[b][1,5]ナフチリジニル、シンノリニル、1,5-ナフチリジニル、1,8-ナフチリジニル、フェニルピロリル、ナフチルピロリル、ジピリジル、フェニルピリジル、ナフチルピリジル、ピリド[4,3-b]インドリル、ピリド[3,2-b]インドリル、ピリド[3,2-g]キノリニル、ピリド[2,3-b][1,8]ナフチリジニル、ピロロ[3,2-b]ピリジニル、プテリジニル、プリル、9H-キサンテニル、9H-チオキサンテニル、2H-クロメニル、2H-チオクロメニル、フェナントリジニル、フェナントロリニル、フロ[3,2-f][1]ベンゾフラニル、フロ[2,3-f][1]ベンゾフラニル、フロ[3,2-g]キノリニル、フロ[2,3-g]キノリニル、フロ[2,3-g]キノキサリニル、ベンゾ[g]クロメニル、チエノ[3,2-f][1]ベンゾチエニル、チエノ[2,3-f][1]ベンゾチエニル、チエノ[3,2-g]キノリニル、チエノ[2,3-g]キノリニル、チエノ[2,3-g]キノキサリニル、ベンゾ[g]チオクロメニル、ピロロ[3,2,1-hi]インドリル、ベンゾ[g]キノキサリニル、ベンゾ[f]キノキサリニル、及びベンゾ[h]イソキノリニルを含む。
【0047】
ここで、及び本明細書の全体を通して、用語「シクロアルキル」は、シクロペンチル、シクロヘキシル、ノルボルニル又はアダマンチル等の、通常、3~12個の炭素原子、多くの場合、3~8個の炭素原子、特に5~6個の炭素原子を有する、単環式又は多環式飽和炭化水素基に関する。
【0048】
式(I)のジチオレン錯体中の金属原子Mは、好ましくはニッケル又は白金であり、特にニッケルである。
【0049】
式(I)中の可変基X1及びX2は、異なっていてもよいが、好ましくは同一であり、どちらも硫黄又は酸素である。特定の好ましい実施形態では、X1及びX2はどちらも硫黄である。
【0050】
好ましくは、R1、R2、R3、及びR4基は、互いに独立して、C1~C8アルキル、フェニル、多環式アリール (とりわけナフチル等)、単環式及び多環式ヘタリール (とりわけピリジル、フリル、チエニル、イミダゾリル又はピラゾリル等) から選択され、フェニル、多環式アリール、単環式及び多環式ヘタリールは、非置換であってもよく、又は1つ、2つ、3つ、4つ若しくは5つのRa基により置換されていてもよい。
【0051】
Ra基は、互いに独立して、ハロゲン、C1~C8-アルキル、C1~C8-ハロアルキル、C1~C8-アルコキシ、C1~C8-アルキルチオ、C3~C8-シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール、ヘタリール、ヒドロキシル、メルカプト、シアノ、ニトロ、COOH、SO3H及びNE1E2からなる群から通常、選択され、E1及びE2は、それぞれ独立して、水素、C1~C6-アルキル、C3~C8-シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール又はヘタリールである。特に、Ra基は、互いに独立して、フッ素、塩素、臭素、シアノ、ニトロ、C1~C4-アルキル (メチル、エチル、n-プロピル、イソ-プロピル、n-ブチル、2-ブチル、イソブチル又はtert.-ブチル等)、C1~C4-ハロアルキル (フルオロメチル、ジフルオロメチル、トリフルオロメチル、クロロメチル、ジクロロメチル 2-フルオロエチル (fluroethyl)、2,2-ジフルオロエチル又は2,2,2-トリフルオロエチル等)、C1~C3-アルコキシ (メトキシ、エトキシ、n-プロポキシ又はイソ-プロポキシ等)、C3~C6-シクロアルキル (シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル又はシクロヘキシル等)、アリール (フェニル又はナフチル等)、及びヘタリール (ピリジル、フリル、ピロリル、イミダゾリル、ピラゾリル又はチエニル等) からなる群から選択され、特に、フッ素、塩素、シアノ、ニトロ、メチル、エチル、n-プロピル、イソ-プロピル、フルオロメチル、ジフルオロメチル、トリフルオロメチル、クロロメチル、2,2,2-トリフルオロエチル、メトキシ、エトキシ、フェニル、ピリジル、フリル、及びチエニルから選択され、より詳細には、メチル、エチル、イソプロピル、フッ素、シアノ、ニトロ、トリフルオロメチル、2,2,2-トリフルオロエチル、メトキシ、及びフェニルから選択され、具体的には、メチル、エチル、イソプロピル、フッ素、及びトリフルオロメチルから選択される。
【0052】
特に、R1、R2、R3、及びR4基は、互いに独立して、C1~C8アルキル又はアリールであり、アリールは、本明細書において定義されている意味、特に好ましい意味を有する1つ又は2つのRa基で置換されているか、又は非置換であるかのどちらかであり、すなわちアリールは、いかなるRa基も有していない。R1、R2、R3及び/又はR4基が2つのRa基により置換されている場合、これらの2つのRa基は、好ましくは同一である。
【0053】
特に、好ましいR1、R2、R3、及びR4基は、互いに独立して、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、2-ブチル、イソブチル、n-ヘキシル、n-オクチル、2-エチルヘキサン-1-イル、フェニル、2-メチルフェニル、3-メチルフェニル、4-メチルフェニル、2-エチルフェニル、3-エチルフェニル、4-エチルフェニル、2-イソプロピルフェニル、3-イソプロピルフェニル、4-イソプロピルフェニル、3,5-ジメチルフェニル、3,5-ジエチルフェニル、3,5-ジイソプロピルフェニル、2,6-ジメチルフェニル、2,6-ジエチルフェニル、2,6-ジイソプロピルフェニル、2-フルオロフェニル、3-フルオロフェニル、4-フルオロフェニル、2-クロロフェニル、3-クロロフェニル、4-クロロフェニル、ペンタフルオロフェニル、3,5-ジフルオロフェニル、2,6-ジフルオロフェニル、2-ジフルオロメチル-フェニル、3-ジフルオロメチル-フェニル、4-ジフルオロメチル-フェニル、2-トリフルオロメチル-フェニル、3-トリフルオロメチル-フェニル、4-トリフルオロメチル-フェニル、3,5-ジ-トリフルオロメチル-フェニル、2,6-ジ-トリフルオロメチル-フェニル、ナフト-1-イル、ナフト-2-イル、ピリジン-2-イル、ピリジン-3-イル、ピリジン-4-イル、フラン-2-イル、フラン-3-イル、チエン-2-イル、及びチエン-3-イルから選択される。
【0054】
R1、R2、R3、及びR4基がすべて、本明細書において定義されている意味、特に好ましいものから選択されるものと同じ意味を有する、式(I)の金属ジチオレン錯体が特に優先される。
【0055】
別の詳細な本発明の実施形態では、本発明のマイクロ粒子ベース組成物に含まれる有機IR吸収顔料は、式(II)のナフタロシアニン (naphthaloycyanine) 錯体:
【0056】
【化2】
【0057】
(式中、
M1は、Cu、Fe、Mn、Pd、Pt、VO、Si(OR8)2、Al(R7)、又はGa(R7)であり、
R5は、H、F、OR9、SR9、NHR10、NR10R11であり、
R6は、H、F、OR9、SR9、NHR10、NR10R11であり、
R7は、Cl、OH及びOR12からなる群から選択され、
R8は、C1~C12-アルキル、(C2H4O)m-R13、及びフェニルからなる群から選択され、
R9は、C1~C12-アルキル、(C2H4O)m-R13、及びフェニルからなる群から選択され、
R10、R11は、互いに独立して、C1~C12-アルキル、(C2H4O)n-R13、及びフェニルからなる群から選択されるか、又は
R10、R11は一緒になって、1つ又は2つのメチル基により場合により置換されていてもよい、5員又は6員の飽和N-複素環式環を形成し、
R12は、C1~C12-アルキル、(C2H4O)n-R13、及びフェニルからなる群から選択され、
R13は、C1~C12-アルキルであり、
n、mは、互いに独立して、0、1、2、3、又は4である)
からなる群から選択される。
【0058】
式(II)のナフタロシアニン錯体中のM1部分は、Cu、Ga、Fe、Mn、Pd、及びPtからなる群から、特に、Cu、Ga、及びFeから好ましくは選択される。
【0059】
好ましくは、式(II)中のR5及びR6基は、互いに独立して、H、F、OR9、及びNHR10からなる群から、特に、H、F、及びOR9から選択される。
【0060】
本発明の好ましい実施形態によれば、R5及びR6基は同じ意味を有する。
【0061】
R7、R8、R9、R10、R11、R12、R13基、n、及びmは、以下の好ましい意味を有する:
R7は、OH又はOR12、特に、OR12であり、
R8は、C1~C8-アルキル又は(C2H4O)m-R13、特に、C1~C6-アルキルであり、
R9は、C1~C8-アルキル又は(C2H4O)m-R13、特に、(C2H4O)m-R13であり、
R10及びR11は、互いに独立して、C1~C8-アルキル又は(C2H4O)n-R13、より好ましくはC1~C6-アルキル又は(C2H4O)n-R13であり、n及びR13は、本明細書において定義されている好ましい意味を有するか、又は
R10及びR11は一緒になって、5員又は6員の飽和N-複素環式環を形成し、
R12は、C1~C8-アルキル又は(C2H4O)n-R13であり、
R13は、C1~C8-アルキル、特に、C1~C6-アルキルであり、
n及びmは、互いに独立して、1、2、又は3、特に、2又は3である。
【0062】
本発明のマイクロ粒子組成物では、マイクロ粒子の体積加重平均粒子径D(4.3)は、静的光散乱法によって決定して、多くの場合、2.0~14.0μmの範囲、特に3.0~12.0μmの範囲、好ましくは3.5~11.0μmの範囲、より好ましくは4.0~10.0μmの範囲、とりわけ4.5~9.5μmの範囲にある。
【0063】
本発明のマイクロ粒子組成物では、マイクロ粒子のD(v0.5)は、静的光散乱法によって決定して、多くの場合、1.8~12.5μmの範囲、特に2.8~11.0μmの範囲、好ましくは3.0~9.5μmの範囲、より詳細には3.2~9.2μmの範囲、とりわけ3.5~9.0μmの範囲にある。
【0064】
本発明のマイクロ粒子組成物では、マイクロ粒子の表面加重平均径D(3,2)は、静的光散乱法によって決定して、多くの場合、1.6~12.5μmの範囲、特に2.6~10.5μmの範囲、好ましくは2.8~9.2μmの範囲、より詳細には3.0~9.0μmの範囲、とりわけ3.2~8.8μmの範囲にある。
【0065】
本発明のマイクロ粒子組成物では、マイクロ粒子の粒子径D(v0.1)は、静的光散乱法によって決定して、多くの場合、少なくとも1.0μm、特に少なくとも2.0μm、より詳細には少なくとも2.4μm及びとりわけ少なくとも2.7μm、例えば1.0~8.0μmの範囲、特に2.0~7.0μmの範囲、より詳細には2.4~6.0μmの範囲、とりわけ2.7~5.5μmの範囲にある。
【0066】
本発明のマイクロ粒子組成物では、マイクロ粒子の粒子径D(v0.9)は、静的光散乱法によって決定して、多くの場合、最大で20.0μm、特に最大で17.5μm、及びとりわけ最大で15.0μm、例えば4.0~20.0μm、特に5.0~17.5μmの範囲、より詳細には6.0~15.0μmの範囲にある。
【0067】
多くの場合、本発明のマイクロ粒子ベース組成物は、少なくとも1つの分散剤を含有しており、この分散剤は、本発明のマイクロ粒子ベース組成物の製造の間、顔料粒子を凝集から安定化するよう働くことができるが、特に印刷用インクに取り込ませる点で、本発明のマイクロ粒子ベース組成物の特性に有利に影響を及ぼすこともある。
【0068】
好適な分散剤は当業者に公知である。様々なタイプのポリマー分散剤、そのポリマー構造及びそれらの特性に関する一般的な調査は、F. Pirrung and C. AuschraによるMacromolecular Engineering, Precise Synthesis, Materials Properties, Applications (K. Matyjaszewskiら編), 第4章, Polymeric Dispersants, 2135~2180頁に示されている。本発明の目的のための好適なポリマー分散剤は、原理的に、水に可溶性であるか又は少なくとも分散性の有機ポリマーであって、該ポリマーの水溶解度又は分散性をもたらす少なくとも1つの極性基、及び多くの場合、顔料粒子の表面に吸着されることが可能な少なくとも1つの固定基 (anchoring group) を有する、上記の有機ポリマーである。固定は、水素結合、双極子双極子相互作用、π-π相互作用及びロンドン力、又はファンデルワールス力、並びにこれらの組合せにより実現され得る。
【0069】
好ましくは、本発明のマイクロ粒子ベース組成物は、1つ又は複数のポリ(オキシ-C2~C4-アルキレン)基を有する、選択される少なくとも1つの分散剤を含有する。ポリオキシアルキレン基は、ポリマー分散剤に水溶解度又は分散性を付与し、水性相中で顔料粒子が凝集に対する立体安定化のために働く。ポリオキシアルキレン基の分子量は、3~110個の範囲のオキシアルキレン繰り返し単位に相当する200~5000g/mol (数平均) と様々となり得る。
【0070】
ここで、及び本明細書の全体を通して、用語「ポリオキシアルキレン基」、「ポリアルキレンオキシド (polalkyleneoxide) 基」及びポリアルキレングリコール基は、同義的に使用され、オリゴマー基又はポリマー基又は部分に関連し、これらは、特にC2~C4-アルキレンオキシド繰り返し単位に由来するアルキレンオキシ繰り返し単位、すなわち式A-Oの繰り返し単位 (Aは、1,2-エタンジイル、1,2-プロパンジイル、1,2-ブタンジイル、2,3-ブタンジイル又は1-メチル-1,2-プロパンジイル等のC2~C4-アルカンジイルである)、とりわけエチレンオキシ (CH2CH2O) 及び/又はプロピレンオキシ (CH(CH3)CH2O) 繰り返し単位から作製されている。C2~C4-アルキレンオキシド繰り返し単位から作製されるポリオキシアルキレン基は、本明細書のこれ以降、それぞれ、ポリ(オキシ-C2~C4-アルキレン)基又はポリ-C2~C4-アルキレングリコール基と称する。エチレンオキシド及び/又はプロピレンオキシド繰り返し単位から作製されるポリオキシアルキレン基は、本明細書のこれ以降、それぞれ、ポリ(オキシ-C2~C3-アルキレン)基又はポリ-C2~C3-アルキレングリコール基と称する。ポリオキシアルキレン基は、キャップされていなくてもよく、例えば、この基は、末端OH基を有しているか、又はキャップされていてもよく、これは、C1~C12-アルキル、C3~C12-アルキル又はベンジル等の末端でOに結合している炭化水素基を有することを意味する。
【0071】
分散剤中の好適な固定化(anchoring)基は、特に、
- ピリジニル、ピリミジニル、トリアジニル、ピラゾリル、イミダゾリル、イミダゾリニル又はトリアゾリル基等の芳香族基又は部分不飽和な複素環式基であって、C1~C22-アルキル、C2~C20-アルケニル、OH、アミノ (NH2)、アミノスルホニル (SO2NH2) 及びカルバモイル (CONH2) から選択される1つ、2つ又は3つの基により場合により置換されている、芳香族基又は部分不飽和な複素環式基;
- フェニル又はナフチル等のアリール基であって、少なくとも1つ、例えばOH、アミノ (NH2)、アミノスルホニル (SO2NH2) 及びカルバモイル (CONH2) から選択される1つ、2つ、又は3つの基、及び場合によりC1~C4-アルキルから選択される1つ、2つ、又は3つの基を有する、アリール基;
- C8~C22-アルキル、C8~C22-アルケニル、又はC8~C22-アルカジエニル等の、多くの場合、8~22個の炭素原子を有する長鎖脂肪酸基;
- ピロリドン、カプロラクトン、又はモルホリノン基等のラクタミル基、及び
- イミダゾリノン基及びトリアジントリオン基を含めた、ウレタン基又はウレア基
である。
【0072】
特に、本発明のマイクロ粒子ベース組成物は、以下
- 複数のポリ(オキシ-C2~C4-アルキレン)基を有する非イオン性又は陰イオン性ポリマー分散剤(分散剤I型)、
- 少なくとも1つのポリ(オキシ-C2~C4-アルキレン)基を有する酸性ポリエーテルエステル、又はそれとポリ(オキシ-C2~C4-アルキレン)グリコール及び/若しくは陰イオン性界面活性剤との混合物(分散剤II型)、及び
- 脂肪酸により修飾されているポリアルキレンイミンと少なくとも1つのポリ(オキシ-C2~C4-アルキレン)基を有する少なくとも1つの陰イオン性界面活性剤との混合物(分散剤III型)
からなる群から選択される、少なくとも1つの分散剤を含有する。
【0073】
分散剤I型の例は、ポリオキシアルキレン基が主鎖又は側鎖の部分を形成する、ポリウレタン主鎖を有する非イオン性ポリマー又は陰イオン性ポリマー、及びポリオキシアルキレン基が側鎖として存在する、炭素-主鎖を有する非イオン性ポリマー又は陰イオン性ポリマーを含む。
【0074】
詳細な分散剤I型の群は、炭素-主鎖を有する非イオン性くし形ポリマー及び陰イオン性くし形ポリマーであって、ポリオキシアルキレン基が側鎖として存在する上記のくし形ポリマー及びそれらの混合物から選択される。
【0075】
特に、ポリマー分散剤I型が、ポリ-C2~C4-アルキレンエーテル基を有する繰り返し単位と固定基を有するモノマーに由来する繰り返し単位の両方を有するくし形ポリマー、及びそれらと、ポリ-C2~C4-アルキレンエーテル基を有する繰り返し単位と酸性モノマーに由来する繰り返し単位の両方を有するくし形ポリマーとの混合物から選択される。これらのくし形ポリマーは、固定基を有する少なくとも1つのモノエチレン性不飽和モノマー(モノマーM1)又は酸性基を有する少なくとも1つのモノエチレン性不飽和モノマー(M1')を重合形態で含むエチレン性不飽和モノマーM、ポリ(オキシアルキレン)基、特にポリ(オキシ-C2~C4-アルキレン)基及びとりわけポリ(オキシ-C2~C3-アルキレン)基を有するモノエチレン性不飽和モノマー (モノマーM2)、並びに場合により、上記とは異なる非イオン性モノマーM3の重合した繰り返し単位から作製されることが多い。これらのタイプのポリマーは、例えば、ラジカル重合によりモノマーM1、M2、及び場合によりM3を重合することによって、又はポリマーM1及びM3から作製されているポリマーを、OH末端ポリ(オキシ-C2~C4-アルキレン)エーテル、特に一官能性OH末端ポリ(オキシ-C2~C4-アルキレン)エーテル、とりわけ一官能性OH末端ポリ(オキシ-C2~C3-アルキレン)エーテルとのポリマー類似物反応に供することによって作製され得ることが当業者に明らかであり、ただし、モノマーM3は、エステル化反応又はトランス-エステル化反応を受けることが可能な官能基、例えばカルボキシル基又はC1~C6-アルコキシカルボニル基を有することを条件とする。
【0076】
好適なモノマーM1は、
- N-ビニルピロリドン、N-ビニルカプロラクタム及びN-ビニル等のN-ビニルラクタム;
- ビニルピリジン、N-ビニルイミダゾール、N-ビニルトリアゾール及びN-ビニルピラゾール等のビニル又はアリル置換複素環;
であり、
ビニルピリジンが特に優先される。
【0077】
好適なモノマーM1'は、モノエチレン性不飽和カルボン酸、特にアクリル酸又はメタクリル酸等の3~6個の炭素原子を有するモノエチレン性不飽和モノカルボン酸、及びマレイン酸又はイタコン酸等の4~6個の炭素原子を有するモノエチレン性不飽和ジカルボン酸である。
【0078】
好適なモノマーM2は、例えば、
- ポリ-C2~C4-アルキレングリコール、とりわけポリ-C2~C3-アルキレングリコールとも称される、ポリ(オキシ-C2~C4-アルキレン)エーテルのビニルエーテル及びアリルエーテル、
- それぞれ、本明細書のこれ以降、ポリ-C2~C4-アルキレングリコール(メタ)アクリレート及びポリ-C2~C3-アルキレングリコール(メタ)アクリレートとも称される、アクリル酸と、ポリ(オキシ-C2~C4-アルキレン)エーテル、特にポリ(オキシ-C2~C4-アルキレン)エーテル、とりわけポリ(オキシ-C2~C3-アルキレン)エーテルとのエステル、及びメタクリル酸と、ポリ(オキシ-C2~C4-アルキレン)エーテル、特にポリ(オキシ-C2~C3-アルキレン)エーテルとのエステル、
- マレイン酸又はフマル酸と、ポリ(オキシ-C2~C4-アルキレン)エーテル、とりわけポリ(オキシ-C2~C3-アルキレン)エーテルとのジエステル
である。
【0079】
前述のモノマーM2では、ポリ(オキシ-C2~C4-アルキレン)基は、キャップされていなくてもよい、すなわちヒドロキシ基を末端としていてもよく、又はキャップされていてもよい、すなわちO結合炭化水素基、例えば、C1~C6アルキルオキシ基を末端としていてもよい。例えば、ポリ(オキシアルキレン)基は、それぞれ、C1~C6アルキル末端ポリオキシエチレン基又はC1~C6アルキル末端ポリエチレングリコール基、それぞれ、メチル末端ポリオキシエチレン基、又はメチル末端ポリエチレングリコール基である。
【0080】
分散剤I型におけるポリ(オキシ-C2~C4-アルキレン)グリコール基の分子量は、3~110個のオキシアルキレン繰り返し単位に相当する、200~5000g/molと様々であってもよい。
【0081】
前述のモノマーM2の中で、アクリル酸と、ポリ(オキシ-C2~C4-アルキレン)エーテル、特にポリ(オキシ-C2~C3-アルキレン)エーテルとのエステル、及びメタクリル酸と、ポリ(オキシアルキレン)エーテル、特にポリ(オキシ-C2~C3-アルキレン)エーテルとのエステルが優先される。ポリ-C1~C6アルキル末端C2~C4-アルキレングリコール(メタ)アクリレート、特にC1~C6アルキル末端ポリ-C2~C3-アルキレングリコール(メタ)アクリレート、より詳細にはC1~C6アルキル末端ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、とりわけ対応するメチル末端ポリアルキレングリコール(メタ)アクリレートが特に優先される。
【0082】
好適なモノマーM3は、例えば、
- C1~C8-アルキルビニルエーテル及びC1~C8-アルキルアリルエーテル;
- 酢酸ビニル又はプロピオン酸ビニル等のC1~C8アルカン酸のビニルエステル及びアリルエステル;
- アクリル酸及びメタクリル酸のC1~C12-アルカノールとのエステル、アクリル酸及びメタクリル酸のC5~C12-シクロアルカノールとのエステル、特にアクリル酸及びメタクリル酸のC1~C6-アルカノールとのエステル(アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n-プロピル、アクリル酸n-ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸tert.-ブチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n-プロピル、メタクリル酸n-ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸tert.-ブチル等);
- スチレン及びビニルトルエン等のビニル芳香族炭化水素;
- マレイン酸のC1~C12-アルカノールとのジエステル(マレイン酸ジブチル及びフマル酸ジブチル等)
である。
【0083】
前述のモノマーM3のうち、アクリル酸のC1~C12-アルカノールとのエステルが優先され、アクリル酸のC1~C12-アルカノールとのエステルは本明細書のこれ以降、C1~C12-アルキル(メタ)アクリレートと称する。アクリル酸のC1~C6-アルカノールとのエステルが特に優先され、アクリル酸のC1~C6-アルカノールとのエステルは本明細書のこれ以降、C1~C6-アルキル(メタ)アクリレートと称する。
【0084】
特に、分散剤I型は、炭素を有する非イオン性くし形ポリマー (炭素主鎖は、ポリ(オキシ-C2~C4-アルキレン)基を有する繰り返し単位とビニルピリジン単位に由来する繰り返し単位の両方を有する)、又は上記の非イオン性くし形ポリマーとくし形ポリマーとの混合物(炭素主鎖は、ポリ(オキシ-C2~C4-アルキレン)基を有する繰り返し単位と1つ又は複数のモノマーM1'に由来する繰り返し単位の両方を含む)を含む。
【0085】
分散剤II型は、1つ又は複数のポリ(オキシ-C2~C4-アルキレン)基を有する少なくとも1つの陰イオン性ポリエーテルエステルを含み、これは、特に、ポリ(オキシ-C2~C4-アルキレン)グリコール、特にポリエチレングリコールの、フタル酸又はテレフタル酸、及び少なくとも1つのカルボン酸基を有するジオール成分等の芳香族ジカルボン酸エステルとのポリエーテルエステルである。陰イオン性ポリエステルは、脂肪酸、特に、6~22個の炭素原子を有する長鎖脂肪酸の単位を含有することができる。
【0086】
分散剤II型の陰イオン性ポリエステル中のポリ(オキシ-C2~C4-アルキレン)グリコール基の分子量は、3~110個のオキシアルキレン繰り返し単位に相当する、200~5000g/molと特に様々であってもよい。分散剤II型のポリエーテルエステルの分子量は、GPCによって決定して、特に500~20000g/molと様々であってもよい。
【0087】
II型の分散剤は、1つ又は複数のポリ(オキシ-C2~C4-アルキレン)グリコール、特に、ポリエチレングリコール又はポリ(エチレン-co-プロピレン)グリコール、及び/又は陰イオン性界面活性剤、特にスルホン酸塩の基又は硫酸塩の基を有する陰イオン性界面活性剤を更に含んでもよい。陰イオン性界面活性剤の例は、アルキルベンゼンスルホン酸の塩、アルキル硫酸の塩、及び硫酸とC2~C4-アルコキシ化脂肪アルコール、特にエトキシ化又はエトキシ化-co-プロポキシ化脂肪アルコールとの半エステルの塩、特にアルカリ金属塩及びアンモニウム塩を含む。
【0088】
III型の分散剤は、少なくとも1つのオリゴ又はポリアルキレンイミン、特に脂肪酸により修飾されている少なくとも1つのオリゴ-又はポリ-C2~C4-アルキレンイミン、特に式NH2-A-NH-(A-NH)k-A-NH2 (Aは、C2~C3-アルキレンであり、kは、0~50、特に1~20の整数である) のオリゴ又はポリアルキレンイミンをベースとする修飾オリゴ又はポリアルキレンイミンを含む。オリゴ又はポリアルキレンイミンを修飾するための好適な脂肪酸は、C8~C22-アルカン酸、C8~C22-アルケン酸及びC8~C22-アルカジエン酸並びにそれらの混合物を含む。
【0089】
好ましい修飾オリゴ又はポリアルキレンイミンは、修飾オリゴ-又はポリ-C2~C4-アルキレンイミンの総量に対して、以下の式IIIa、IIIb、IIIc、IIId及びIIIe:
【0090】
【化3】
【0091】
(式中、
R'は、同一であるか又は異なり、長鎖脂肪酸に由来する炭化水素基からなる群から選択され、R'は、C7~C21-アルキル、C7~C21-アルケニル、及びC7~C21-アルカジエニルからなる群から特に選択され;
Aは、C2~C3-アルキレン、特に1,2-エタンジイルであり;
kは、0~50、特に1~20であり、mは、k-1、すなわち0~49、特に0~19である)
によって記載することができる化合物を少なくとも50質量%、好ましくは含む。
【0092】
当業者は、修飾オリゴ又はポリアルキレンイミンはまた、ポリアルキレンイミンの更なるイミノ窒素原子が、式(IIIb)、(IIIe)及び(IIIe)に関して記載されている脂肪酸基又はイミダゾリン基により修飾されている化合物も含んでもよいことを容易に理解していよう。特に好ましい修飾オリゴ又はポリアルキレンイミンは、少なくとも1つの式(IIIc)の化合物、又はこの化合物と1つ若しくは複数の式(IIIa)若しくは(IIIb)の化合物との混合物、特に、式(IIIb)及び(IIIc)の化合物が、分散剤中に存在している修飾オリゴ又はポリアルキレンイミンの総質量に対して少なくとも30質量%の量となる混合物を含む。
【0093】
III型の分散剤は、少なくとも1つのポリ(オキシ-C2~C4-アルキレン)基を有する1つ又は複数の陰イオン性界面活性剤を更に含む。このような陰イオン性界面活性剤の例は、塩、特に硫酸のC2~C4-アルコキシ化脂肪アルコール、特にエトキシ化又はエトキシ化-co-プロポキシ化脂肪アルコールとの半エステル、及び脂肪族ジカルボン酸 (マレイン酸、フマル酸又はコハク酸等) とC2~C4-アルコキシ化脂肪アルコール、特にエトキシ化又はエトキシ化-co-プロポキシ化脂肪アルコールとの半エステルのアルカリ金属塩及びアンモニウム塩を含む。
【0094】
分散剤の量は、マイクロ粒子ベース組成物中に存在する場合、典型的には、固体として計算すると、分散剤と固体有機IR吸収顔料との質量比が、0.05:1~1:1の範囲、好ましくは0.1:1~0.8:1、特に0.1:1~0.5:1の範囲にあるような量である。
【0095】
本発明の1つの特定の実施形態によれば、マイクロ粒子ベース組成物は、水性懸濁液の形態にある。このような懸濁液は、分散相としてマイクロ粒子、及び連続相として水性媒体を含有する。水性懸濁液は、本明細書に記載されているマイクロ粒子ベース組成物を調製する方法によって得ることができる。水性懸濁液は、水性媒体中に、本明細書に記載されている固体マイクロ粒子ベース組成物を再分散させることによって得ることもできる。
【0096】
用語「水性媒体」とは、組成物の液相を指し、水性溶媒及び場合によりそこに溶解している化合物、例えば上記の分散剤、及び存在する場合、消泡剤又は保存剤等の1種又は複数の慣用的な配合物用補助剤を含む。水性懸濁液の水性溶媒は、水、又は水とC1~C4-アルカノール、例えば、メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、n-ブタノール、2-ブタノール、イソブタノール若しくはtert.ブタノール、C2~C5-アルカンジオール及びC3~C8-アルカントリオール、好ましくはエチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、グリセロール及び1,4-ブタンジオールからなる群から等の水混和性有機溶媒との混合物のどちらか一方である。一般に、水性溶媒中の水の量は、水性溶媒に対して、少なくとも50質量%、特に、少なくとも80質量%又は少なくとも90質量%である。水性溶媒は、水から主になることができ、すなわち、水は、懸濁液中に存在する溶媒の総量の少なくとも95質量%を占める。水性溶媒はまた、上述の水混和性有機溶媒と水との混合物であってもよい。後者の例では、水性溶媒中の水と水混和性有機溶媒との質量比は、好ましくは、99:1~1:1の範囲、より好ましくは50:1~3:1の範囲、最も好ましくは20:1~4:1の範囲にある。有機溶媒の異なって表されている量は、水性溶媒の総質量に対して、1~50質量%、より好ましくは2~25質量%及び最も好ましくは5~20質量%とすることができる。
【0097】
水性懸濁液は、マイクロ粒子を少なくとも5質量%の量で通常、含有し、その量は、各場合において、水性懸濁液の総質量に対して、並びにアミノプラスト-ポリマー及びIR吸収顔料の総量として計算すると、45質量%と高くてもよく、又は更に高いことさえあってもよい。多くの場合、水性懸濁液は、各場合において、水性懸濁液の総質量に対して、並びにアミノプラスト-ポリマー及び有機IR吸収顔料の総量として計算すると、マイクロ粒子を5~45質量%、好ましくは7~40質量%、特に、9~35質量%の量で含有する。水性懸濁液中の顔料の濃度は、多くの場合、水性懸濁液の総質量に対して、1~40質量%の範囲、特に2~25質量%の範囲、より詳細には3~20質量%の範囲、とりわけ4~15質量%の範囲にある。
【0098】
水性懸濁液中の1種又は複数の分散剤の濃度は、存在する場合、マイクロ粒子の水性懸濁液の総質量に対して、多くの場合、0.1~20質量%、好ましくは0.5~10質量%、特に1.0~8質量%の範囲にある。
【0099】
本発明による水性組成物はまた、除草剤の水性配合物において通常使用される、粘度改変添加物(増粘剤)、消泡剤、保存剤、緩衝剤、無機分散剤等の慣用的な配合物用補助剤を含んでもよい。このような補助剤は、本明細書に記載されている調製法の工程ii)が実施された後に、水性懸濁液に取り込ませることができる。添加物の量は、一般に、水性懸濁液の総質量の10質量%、特に5質量%を超えない。
【0100】
本発明による組成物に好適な消泡剤は、例えば、シリコーンエマルション (例えば、Wacker社製のシリコーンSRE-PFL又はBluestar Silicones社製のRhodorsil(登録商標))、ポリシロキサン及び修飾ポリシロキサン (BASF SE社の製品であるFoamStar(登録商標)SI及びFoamStar(登録商標)ST等のポリシロキサンブロックポリマーを含む)、長鎖アルコール、脂肪酸、オルガノフッ素化合物並びにそれらの混合物である。
【0101】
本発明の組成物の微生物による腐敗を防止するのに好適な保存剤は、ホルムアルデヒド、p-ヒドロキシ安息香酸のアルキルエステル、安息香酸ナトリウム、2-ブロモ-2-ニトロプロパン-1,3-ジオール、o-フェニルフェノール、チアゾリノン (ベンゾイソチアゾリノン、5-クロロ-2-メチル-4-イソチアゾリノン等)、ペンタクロロフェノール、2,4-ジクロロベンジルアルコール及びそれらの混合物を含む。イソチアゾリノンに基づく市販の保存剤は、例えば、Proxel(登録商標) (Arch Chemical社)、Acticide(登録商標)MBS (Thor Chemie社)及びKathon(登録商標)MK (Rohm&Haas社)という商標名で上市されている。
【0102】
適切な場合、本発明による組成物、特に水性懸濁液は、pHを調節するための緩衝剤を含んでもよい。緩衝剤の例は、例えば、リン酸、ホウ酸、酢酸、プロピオン酸、クエン酸、フマル酸、酒石酸、シュウ酸、及びコハク酸等の無機又有機弱酸のアルカリ金属塩である。
【0103】
別の特定の実施形態によれば、本発明のマイクロ粒子ベース組成物は、固体組成物の形態にある。このような固体組成物は、マイクロ粒子、場合により1種又は複数の分散剤、特に本明細書において好ましいと記載されている分散剤を含有する。固体組成物は、特に、分散性粉末の形態にある。
【0104】
本固体組成物は、水性懸濁液から得ることができ、この固体組成物は、水性懸濁液から水性相を除去することによって、本明細書に記載されているマイクロ粒子ベース組成物を調製する方法において主に形成される。水性相の除去は、固体のマイクロ粒子から、例えば遠心分離又はろ過のどちらか一方によって水性相を分離することによって実現することができる。好ましくは、水性相は、噴霧乾燥又は凍結乾燥等の蒸発プロセスによって除去される。
【0105】
上で概説した通り、本発明のマイクロ粒子ベース組成物を製造する方法は、1種又は複数のアミノ化合物と1種又は複数のアルデヒドとのアミノプラスト予備縮合物も含む、固体有機IR吸収顔料の水性懸濁液を用意する、第1の工程i)を含む。本文脈において、「IR吸収顔料」は、本明細書において定義されている意味の1つ、特に好ましい意味の1つを有する。
【0106】
IR吸収顔料は、典型的に、圧縮ケーキの総質量に対して、20~60質量%、好ましくは30~55質量%、特に35~50質量%の顔料濃度を有する水で湿潤した圧縮ケーキの形態で、工程i)において好ましくは導入される。圧縮ケーキは、いかなる分散剤も存在しないで、又は分散剤の存在下で、微粒子顔料と好適な量の水とを均一な物質が得られるまで混合することによって調製することができる。代替的に、IR吸収顔料は、ほとんど水の無い微粒子形態、例えば、粉末状形態で工程i)において導入することができる。
【0107】
好適なアミノプラスト予備縮合物は、例えば、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロパナール、グリオキサール又はグルタルアルデヒド等の1種又は複数のアルデヒドと、通常、例えば、ウレア、チオウレア、メラミン、シアノグアナミン (=ジシアンジアミド)、アセトグアナミン及びベンゾグアナミン等の少なくとも2つの一級アミノ基を有する1種又は複数のアミノ化合物とのオリゴマー又はポリマー反応生成物である。予備縮合物は、部分的又は完全にエーテル化されていてもよく、これは、一級アミノ基の反応時に形成されるセミアミナール単位のヒドロキシル基が、アルコールにより、好ましくはメタノール、エタノール、プロパノール、n-ブタノール、2-ブタノール、イソブタノール、n-ペンタノール又はn-ヘキサノール等のC1~C6アルカノールにより、及び/又はエチレングリコール等のC2~C4-アルカンジオールによりエーテル化されていることを意味する。硬化条件を適用すると、予備縮合物は、架橋アミノプラストポリマーを形成する。
【0108】
アミノプラスト予備縮合物は、以下に限定されないが、メラミン及びホルムアルデヒドの縮合生成物 (メラミン-ホルムアルデヒド予備縮合物又はMF予備縮合物) (完全に又は部分的にエーテル化されているMF予備縮合物を含む)、ウレア-ホルムアルデヒド予備縮合物 (UF予備縮合物)、チオウレア-ホルムアルデヒド予備縮合物 (TUF予備縮合物)、メラミン、ウレア及びホルムアルデヒドの予備縮合物 (MUF予備縮合物) (完全に又は部分的にエーテル化されているMUF予備縮合物を含む)、メラミン、チオウレア及びホルムアルデヒドの予備縮合物 (MTUF予備縮合物) (完全に又は部分的にエーテル化されているMTUF予備縮合物を含む)、ウレア-グルタルアルデヒド予備縮合物、ベンゾグアナミン-ホルムアルデヒド予備縮合物、ジシアンジアミドホルムアルデヒド予備縮合物、及びウレア-グリオキサール予備縮合物を含む。
【0109】
マイクロカプセル封入に好適なアミノプラスト予備縮合物は、公知であり、とりわけKirk-Othmer, Encyclopedia of Chemical Technology, 第3版, 第2巻, 440~469頁; US4,918,317、EP26914、EP218887、EP319337、EP383,337、EP415273、DE19833347、DE19835114及びWO01/51197の概要部分に引用されている先行技術に見出すことができる。好適な予備縮合物は、市販の、例えばCymelタイプ (以下に限定されないが、Cymel(登録商標)303、327、328、又は385 (Cytecのエーテル化メラミンホルムアルデヒド樹脂) 等)、Maprenal(登録商標)タイプ (以下に限定されないが、Maprenal(登録商標)MF900w/95、MF915/75IB、MF920/75WA、MF921w/85WA (Ineosのエーテル化メラミンホルムアルデヒド樹脂) 等)、BASF SE社のKauramin(登録商標)タイプ (以下に限定されないが、Kauramin(登録商標)783、Kauramin(登録商標)792、又はKauramin(登録商標)753 (メラミンホルムアルデヒド樹脂)、Kauramin(登録商標)620又はKauramin(登録商標)621 (メラミンウレアホルムアルデヒド樹脂)等)、BASF SE社のKaurit(登録商標)タイプ (以下に限定されないが、Kaurit(登録商標)210、216、217、220、270、285、325 (ウレアホルムアルデヒド樹脂の水溶液)等)、Luracoll(登録商標)タイプ (Luracoll(登録商標)SD (エーテル化メラミンホルムアルデヒド樹脂) 等)、Luwipal(登録商標)タイプ (以下に限定されないがLuwipal(登録商標)063、Luwipal(登録商標)069 (エーテル化メラミンホルムアルデヒド樹脂) 等)、又はPlastopal(登録商標)タイプ (以下に限定されないがPlastopal(登録商標)BTM、Plastopal(登録商標)BTW (エーテル化ウレアホルムアルデヒド樹脂)等)である。
【0110】
好適なウレア-ホルムアルデヒド又はチオウレア-ホルムアルデヒド予備縮合物において、ウレア又はチオウレア対ホルムアルデヒドのモル比は、一般に、1:0.8~1:4の範囲、特に1:1.5~1:4の範囲、とりわけ1:2~1:3.5の範囲にある。
【0111】
完全に又は部分的にエーテル化されていてもよい、好適なメラミン-ホルムアルデヒド予備縮合物において、メラミン対ホルムアルデヒドのモル比は、一般に、1:1.5~1:10の範囲、特に1:3~1:8の範囲、好ましくは1:4~1:6の範囲にある。
【0112】
完全に又は部分的にエーテル化されていてもよい、好適なメラミン-(チオ)ウレア-ホルムアルデヒド予備縮合物において、メラミン+ウレア又はチオウレア対ホルムアルデヒドのモル比は、一般に、1:0.8~1:9の範囲、特に1:2~1:8の範囲、好ましくは1:3~1:6の範囲にある。ウレア又はチオウレア対メラミンのモル比は、通常、5:1~1:50の範囲、特に3:1~1:30の範囲にある。
【0113】
予備縮合物は、アミノ化合物及びアルデヒドのエーテル化された予備縮合物の形態で使用されてもよい。これらのエーテル化された予備縮合物では、メチロール基は、アミノ基とホルムアルデヒド及びアルカノール又はアルカンジオールと、特にC1~C6-アルカノール(メタノール、エタノール、n-プロパノール又はn-ブタノール、特に、メタノール等)又はC2~C4-アルカンジオール(エチレングリコール等)との反応によって形成される。これらの樹脂のエーテル化度は、アミノ基とアルカノールとのモル比によって調節することができ、これは、典型的には、10:1~1:10の範囲、好ましくは2:1~1:5の範囲にある。
【0114】
予備縮合物は、メラミン-ホルムアルデヒド予備縮合物(完全に又は部分的にエーテル化されているメラミン-ホルムアルデヒド予備縮合物を含む)、メラミン-ウレア-ホルムアルデヒド予備縮合物及び完全に又は部分的にエーテル化されているメラミン-ホルムアルデヒド予備縮合物、及びそれらの混合物からなる群からとりわけ選択される。とりわけ、予備縮合物は、完全に又は部分的にエーテル化されているメラミン-ホルムアルデヒド縮合物であり、これは、メラミンに対して、少量の、例えば1~20mol%のウレアを含有することができる。
【0115】
工程i)による水性懸濁液は、水等の水性媒体に微粒子顔料及びアミノプラスト予備縮合物を取り込ませることによって得ることができる。好ましくは、水性懸濁液は、更に、本発明のマイクロ粒子ベース組成物の任意選択の成分として、本明細書に記載されている分散剤から、特に好ましいと記載されているものから好ましくは選択される少なくとも1つの分散剤を含有する。水性懸濁液は、分散剤を、最終マイクロ粒子ベース組成物中に含まれるよう意図されている一部又は全量を表す量で含有することができる。
【0116】
工程i)において用意された水性懸濁液は、特に、本明細書に記載されている消泡剤の1つ等の、本発明のマイクロ粒子ベース組成物にすることになる更なる補助剤を含んでもよい。本発明の一実施形態では、最終マイクロ粒子ベース組成物に含まれるよう意図されている一部又は全量の消泡剤が、懸濁液中に既に存在している。
【0117】
水性懸濁液は、アミノプラスト予備縮合物を、アミノプラスト予備縮合物及び有機IR吸収顔料の総質量に対して、及び固体有機物質として計算すると、通常、20~65質量%、特に、25~57質量%及びとりわけ27~52質量%の範囲内の量で含有する。
【0118】
工程i)では、顔料は、微粒子形態の懸濁液中に存在する。IR吸収有機顔料の粒子の粒径分布は、典型的には、アミノプラストポリマーにより取り囲まれているか又は埋包されているIR吸収有機顔料の固体粒子を含有するマイクロ粒子の粒径よりも小さな粒径を有することを特徴とする。多くの場合、IR吸収有機顔料の粒子の粒径分布は、静的光散乱法によって決定される、最大で0.8μm、特に最大で0.5μm、とりわけ最大で0.3μm、例えば10~800nmの範囲、特に20~500nm、より詳細には20~300nmの範囲のD(v、0.5)値を有することを特徴とする。しかし、懸濁液では、IR吸収有機顔料の粒子は、緩い凝集体を形成する恐れがあり、したがって、見かけの粒径はより大きいことがある。しかし、凝集体を形成する、IR吸収有機顔料の粒子の一次粒子の粒径分布は、通常、上記の範囲のD(v、0.5)を有することを特徴とする。
【0119】
本発明のマイクロ粒子ベース組成物に好適なIR吸収顔料は、例えば、化学合成から、又は上述の範囲にある適切な粒径分布及びメジアン粒子径D(v 0.5)を既に有する市販源から得ることができる。使用される顔料の粒子が余りに粗すぎる場合、粒径は、特に、水又は有機溶媒を含む特定の粉砕 (communition) 法を含めた、確立された粒子粉砕法を使用し、媒体様ビーズ又は無機塩を磨砕することによって低下させることができる。好適な方法及び装置は公知であり、例えば、Perry's Chemical Engineers' Handbook, 第7版, McGraw Hill 1997, 20-31~20-38頁及びその中に引用されている文献に記載されており、例えば、Netzsch Feinmahltechnik社, FHZ GmbH社, Hosokawa-Alpine AG社, Willy A. Bachofen AG Maschinenfabrik社, Coperion社及びBuhler GmbH社から市販されている。
【0120】
工程i)の懸濁液中に存在するIR吸収顔料に、工程ii)の間又は好ましくはその前に解凝集を施してもよい。それにより、懸濁液中に含まれる顔料粒子の凝集体が破壊される。解凝集(desagglomeration) (時として、解凝集(disagglomeration)とも綴られる) は、例えば、分散器、又はディスク型ホモジナイザー若しくはローターステータ式ホモジナイザー等のホモジナイザーを使用することによって、又は超音波を適用することによって懸濁液に強力なせん断力を適用することによって実現することができる。好適なホモジナイザーは、周知であり、例えば、Netzsch Feinmahltechnik社又はIKA-Werke GmbH&Co.KG社から市販されている。液相中の粒子の解凝集のための超音波の適用は、例えば、WO99/32220、又はU Teipelら, Int. J. Mineral Processing Vol. 74, Supplement(2004), S183~S190頁に多くの場合、記載されている。前述の範囲内にある粒径分布及びメジアン粒子径D(v0.5)が得られるまで、解凝集を典型的には、継続する。
【0121】
水性懸濁液は、この段階でアミノプラスト予備縮合物の有意な重縮合のいずれも防止する条件下で、工程i)において調製される。これは、pHを少なくともpH6に、例えばpH6からpH9に調節することによって特に実現される。均一な混合物を得るため、水性懸濁液の成分、すなわち顔料粒子、典型的には、洗剤、アミノプラスト予備縮合物及び場合により補助剤(特に、消泡剤等)を一緒にして、特に、高い周辺チップ速度による歯型形状ディスクを使用するディスク型分散器 (例えば、Vollrath GmbH社製)等の高性能ブレンダー、Ultra-turrax分散器 (IKA(登録商標)-Werke GmbH&Co社) 及び/又は超音波(ultrosonic)チップ等の超音波装置を典型的には、使用することによって激しく撹拌する。好ましくは、この混合物は、ディスク型分散器を用いて分散されるか、又は代替的に、Ultra-turrax分散器を用いて最初に分散させて、この後に冷却しながら、超音波チップを用いて処理する。
【0122】
本発明のマイクロ粒子ベース組成物を生成するための本発明の方法の工程ii)において、工程i)において得られた水性懸濁液中のアミノプラスト予備縮合物の重縮合は、1種又は複数の界面活性剤の存在下で行われ、この界面活性剤は、本発明のマイクロ粒子ベース組成物の任意選択の成分として、本明細書に記載されている分散剤から好ましくは選択される。したがって、工程i)における懸濁液に既に添加されたこのような分散剤の量に応じて、分散剤の更なる量が、最終マイクロ粒子ベース組成物に含まれるよう意図される分散剤の全量になるまで工程ii)において添加されてもよい。しかし、好ましくは、最終組成物中に含まれるよう意図されている分散剤の量は、工程i)において既に添加されている。
【0123】
したがって、工程ii)において重縮合が行われる水性懸濁液に含まれる1種又は複数の界面活性剤は、本発明によるマイクロ粒子ベース組成物の任意選択の成分として、本明細書に記載されている分散剤から選択される。1種又は複数の界面活性剤、すなわちとりわけ本明細書において定義されている1種又は複数の分散剤は、工程ii)において、界面活性剤と固体有機IR吸収顔料との質量比が、0.05:1~1:1の範囲、好ましくは0.1:1~0.8:1、特に0.1:1~0.5:1の範囲にあるような量で、典型的には使用される。
【0124】
工程ii)において重縮合が施される水性懸濁液中のアミノプラスト予備縮合物の濃度は、懸濁液の総質量に対して、0.5~30質量%、好ましくは1.0~25質量%、特に2.0~20質量%の範囲にあることが多い。
【0125】
重縮合が施される水性懸濁液中の顔料の濃度は、通常、懸濁液の総質量の1~40質量%の範囲、特に2~25質量%の範囲、より詳細には3~20質量%の範囲、とりわけ4~15質量%の範囲にある。
【0126】
アミノプラスト予備縮合物の重縮合は、周知の方法で、例えば、工程i)において得られた懸濁液のpHを最大でpH5.5の値に調節し、この懸濁液を、重縮合を開始及び実施するのに好適な条件となるある特定の反応温度まで加熱することによって行うことができる。重縮合中に、アミノプラスト予備縮合物は水不溶性アミノプラスト樹脂に変換され、この樹脂は水性相から析出し、好ましくは固体粒子顔料物質の表面に堆積し、このようして顔料粒子を埋包する又は取り囲んで、顔料-ポリマー粒子が得られる。
【0127】
本発明によれば、アミノプラストの重縮合は、最大でpH5.5のpHで、特に最大でpH5のpHで、とりわけ最大でpH4のpHで、例えばpH0~5の範囲、より詳細にはpH1~4の範囲又はpH2~4の範囲で行われる。
【0128】
水性懸濁液のpHは、硫酸、塩酸、リン酸、カルボン酸 (アルカン酸、アルカン二酸又はヒドロキシカルボン酸 (ギ酸、酢酸、プロピオン酸、シュウ酸、リンゴ酸又はクエン酸等) 及びアルキルスルホン酸又はアリールスルホン酸 (メタンスルホン酸又はトルエンスルホン酸等) を含む) 等の有機酸又は無機酸を好適な量添加することによって通常、調節される。好ましくは、酸触媒は、ギ酸、硫酸、メタンスルホン酸及び塩酸からなる群から選択され、特に、ギ酸である。酸の少なくとも一部、特に大部分が、水性懸濁液中に存在する場合、水性懸濁液が反応温度まで加熱する前であることが好ましいが、必須ではない。
【0129】
好ましくは、アミノプラスト予備縮合物の重縮合は、高温で、特に少なくとも50℃、特に、少なくとも60℃の温度で行われ、100℃と高くてもよい。好ましくは、アミノプラスト予備縮合物の重縮合が行われる温度は、95℃、特に90℃を超えず、50~95℃の範囲、特に60~90℃の範囲又は70~90℃の範囲にあるのが好ましい。アミノプラストの重縮合は、比較的低温で、例えば、40~60℃の範囲の温度で開始し、次に、例えば60~95℃又は70~90℃というより高い温度で重縮合反応を完了することが可能となり得る。
【0130】
重縮合を完了する時間は、予備縮合物の反応性、温度及び水性懸濁液のpHに応じて様々となり得、0.3時間~10時間、特に0.5時間~5時間かかり得る。
【0131】
顔料-ポリマー粒子のこうして得られた水性懸濁液は、塩基の添加によって中和することができる。好ましくは、懸濁液のpHは、少なくとも6のpH、例えばpH6~10の範囲、特にpH6.5~9.0の範囲のpHに調節される。好適な塩基には、以下に限定されないが、有機アミン、特にモノエタノールアミン、ジエタノールアミン及びトリエタノールアミン等の水溶性アミンが含まれる。しかし、水酸化カリウム又は水酸化ナトリウム等の無機塩基を使用してもよい。しかし、本発明の目的のために、このような中和は必要ではない。
【0132】
本発明の方法によって得ることができる顔料-ポリマー粒子の水性懸濁液は、本発明のマイクロ粒子ベース組成物として適格である。これらの水性懸濁液では、顔料-ポリマー粒子は、顔料、及び顔料を取り囲む又は埋包するアミノプラスト樹脂を含有する。
【0133】
顔料-ポリマー粒子の水性懸濁液は、特に好ましいと記載されているもの等の、本明細書に詳細に記載されている分散剤から好ましくは選択される、上で定義した1種又は複数の界面活性剤を更に含有する。
【0134】
本明細書に記載されている方法によって得られる水性懸濁液から、例えば、ろ過又は遠心分離によって顔料-ポリマー粒子を単離することができるか、又は水性懸濁液を、噴霧乾燥して造粒するか、又は凍結乾燥し、粉末又は顆粒の形態の固体組成物を得ることができる。この固体組成物は、例えば、粘度改変添加物 (増粘剤)、消泡剤、保存剤、緩衝剤、無機分散剤、及び水性配合物中で通常使用される他のもの等の、本明細書に記載されている配合物用補助剤を使用することによって再懸濁又は配合され得る。
【0135】
マイクロ粒子の水性懸濁液の形態にある、及び粉末等のマイクロ粒子の固体組成物の形態にある本発明のマイクロ粒子組成物は、セキュリティ印刷に特に好適な、印刷用インク配合物に使用することができる。
【0136】
例えばセキュリティ書類のためのセキュリティ機能は、「極秘の」セキュリティ機能及び「公然の」セキュリティ機能に分類することができる。極秘のセキュリティ機能によって実現される保護は、このような機能が秘密にされて、その検出のための専用装置及び知識を典型的に、必要とするという概念に依存している一方、「公然の」セキュリティ機能は、肉眼の人の感覚により容易に検出可能であり、例えば、このような機能は、生成及び/又は複写するのが依然として困難でありながらも、目視可能となり得る及び/又は触覚により検出可能となり得る。
【0137】
「極秘の」セキュリティ機能のセキュリティ印刷は、一般に、周囲条件下で、目視不能であるか、又はそうでない場合、検出不可能であり、かつ好適な刺激を施すことによって目視可能又は検出可能とし得る画像を基材表面に印刷することを含む。この刺激は、例えば電磁線照射又は熱とすることができる。
【0138】
具体的には、本発明の印刷用配合物により、基材表面へのコーティング又はセキュリティ画像の印刷が可能となる。本発明の印刷用配合物は、IR吸収顔料を含むので、これらの顔料は、結果として、基材表面にコーティング又は印刷された画像の部分でもある。次に、IR照射を測定することが可能な装置を使用することによって、IR照射線が吸収される、特に750~1100nmの範囲、とりわけ790~1100nmの範囲の放射線の波長の範囲に基づいた、他の方法で検出不可能な画像を検出することが可能である。このように、特定のセキュリティ画像が、基材表面で特定され得る。
【0139】
本発明の印刷用配合物により、セキュリティ画像が750~1100nm、とりわけ790~1100nmの範囲の波長の照射反射率 (これは、ブランク基材に比べて、少なくとも40%、特に少なくとも50%低下する) を示すことが可能となるので、本発明の印刷用配合物は、このタイプのセキュリティ印刷にとって特に好適である。
【0140】
本発明の印刷用インク配合物、特に、セキュリティ印刷に適用可能な配合物は、本明細書において定義されているマイクロ粒子ベース組成物の他に、結合剤(バインダー)を含有し、この結合剤は、原理的に、印刷用インクを配合するのに好適な、当分野において公知の任意の結合剤から選択することができる。より詳細には、本発明の印刷用インク配合物用の結合剤は、照射線硬化可能な結合剤、又は熱的に乾燥することができる結合剤又は酸化的に乾燥することができる結合剤から選択され、したがって、照射線硬化可能な、又は熱的に乾燥することができる又は酸化的に乾燥することができるインク配合物をもたらす。酸化乾燥性結合剤及び得られたその酸化乾燥性インクは、本発明の文脈の範囲内において特に好ましい。
【0141】
特に、UV硬化可能なもの等の照射線による硬化性結合剤の例は、エチレン性不飽和二重結合を有するオリゴマー及びモノマーを含有する結合剤である。オリゴマーは、ポリエーテル(メタ)アクリレート、すなわちアクリル基又はメタクリル基を有するポリエーテル、ポリエステル(メタ)アクリレート、すなわちアクリル基又はメタクリル基を有するポリエステル、及びウレタン(メタ)アクリレート、すなわち(ポリ)ウレタン構造を有しており、かつアクリル基又はメタクリル基を有するオリゴマー、例えばポリイソシアネートとヒドロキシ官能性アクリル化合物又はメタクリル化合物との反応生成物、及びこれらの混合物から典型的には、選択される。好ましくは、オリゴマーは、ポリエステルアクリレート、ウレタンアクリレート、及びこれらの混合物である。モノマーは、アクリル酸と、モノ~テトラヒドロ(tetrahydric)(シクロ)脂肪族アルコール(トリメチロールプロパンジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、エチレングリコールジアクリレート、ブタンジオールジアクリレート、ヘキサンジオールジアクリレート、ジプロピレングリコールジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、フェノキシエチルアクリレート、フルフリルアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、4-tert-ブチルシクロヘキシルアクリレート、4-ヒドロキシブチルアクリレート及びトリメチロールホルマールモノアクリレート(アクリル酸の5-エチル-1,3-ジオキサン-5-イル)メチルエステル)等)とのエステルから典型的には、選択される。
【0142】
熱的に又は酸化乾燥結合剤の例は、特に、長油性アルキド樹脂、ポリアミド樹脂,(メタ)アクリル樹脂、ポリウレタン樹脂、フェノール樹脂、ビニル樹脂、ロジン修飾マレイン酸樹脂、及びアルキド樹脂、ポリウレタン樹脂又はフェノール樹脂等の樹脂をキリ油、亜麻仁油、ケシ油又はエゴマ油等の酸化乾燥性油と焼くことにより作製されるワニス、並びにこれらの樹脂及びワニスの混合物である。上述の樹脂及びワニスは周知であり、例えば、R. van Gorkumら, Coordination Chemistry Reviews 249(2005) 1709~1728頁; J. F. Black, J. Am. Chem. Soc., 1978, 100, 527頁、J. Mallegolら, Prog. Org. Coatings 39(2000) 107~113頁、The Printing ink manual, R.H. Leach and R.J. Pierce, Springer Edition, 第5版により詳細に記載されており、例えばEpple Druckfarben AG社から市販されている。
【0143】
本明細書において開示されているマイクロ粒子を含むセキュリティインクは、
- 酸化乾燥性セキュリティインクであって、マイクロ粒子及び酸化乾燥結合剤の他に、酸化乾燥性セキュリティインクの総質量に対して、1種又は複数の乾燥剤を約0.01~約10質量%含む、酸化乾燥性セキュリティインク、又は
- UV-Vis硬化性セキュリティインクであって、マイクロ粒子及びUV-Vis硬化性結合剤の他に、UV-Vis硬化性セキュリティインクの総質量に対して、1種又は複数の光開示剤を約0.1~約20質量%含む、UV-Vis硬化性セキュリティインク、又は
- 熱的乾燥性セキュリティインクであって、マイクロ粒子及び熱乾燥性結合剤の他に、熱乾燥性セキュリティインクの総質量に対して、有機溶媒、水及びそれらの混合物からなる群から選択される1種又は複数の溶媒を約10~約90質量%含む、熱的乾燥性セキュリティインク、又は
上述のセキュリティインクの組合せ
とすることができる。
【0144】
本明細書において、少なくとも1種の酸化乾燥性結合剤(酸化乾燥性バインダー)を含む、印刷用インク配合物が特に優先され、酸化乾燥性バインダーは、特にアルキド樹脂、例えば、長油性アルキド樹脂、ポリアミド樹脂、(メタ)アクリル樹脂、ビニル樹脂、ロジン変性マレイン酸樹脂;アルキド樹脂、ポリウレタン樹脂又はフェノール樹脂をキリ油又は亜麻仁油と煮て、場合により次いで有機溶媒、例えば鉱物油中に溶解することにより作製されるワニス;並びにこれらの樹脂及びワニスの混合物からとりわけ選択される。
【0145】
本発明の印刷用インク配合物は、例えば、顔料及び着色剤、充填剤、例えば、アルミナ、炭酸カルシウム又は陶土、乾燥剤、例えば、カルボン酸コバルト塩又はカルボン酸マンガン塩、溶媒、界面活性剤、ワックス、UV安定剤、光開始剤、抗酸化剤、乳化剤、スリップ剤等の、インクに慣用的に含まれる更なる補助剤及び成分を、典型的には含む。
【0146】
以下において、配合物A~Dは、本発明の印刷用インク配合物の具体例としての役割を果たし、この場合、個々の成分は、本明細書において定義されている意味、特に好ましい意味を有する。
【0147】
配合物A:酸化乾燥性性凹版インク配合物:
10~30質量% 酸化乾燥性樹脂
0~15質量% 顔料
1~10質量% 好ましくはマイクロ粒子の固体組成物の形態にある、有機IR吸収顔料を含む本発明のマイクロ粒子組成物
10~50質量% 充填剤
5~20質量% 溶媒
0.1~3質量% 乾燥剤
1~7質量% ワックス
1~10質量% 界面活性剤
0.1~5質量% 添加物、例えばスリップ剤、抗酸化剤又は安定剤
【0148】
配合物B:UV硬化性凹版インク配合物:
20~35質量% オリゴマー
10~30質量% モノマー
0~20質量% 顔料
1~10質量% 好ましくはマイクロ粒子の固体組成物の形態にある、有機IR吸収顔料を含む本発明のマイクロ粒子組成物
10~50質量% 充填剤
1~10質量% 光開始剤
1~3質量% UV安定剤
1~5質量% 添加物、例えば乳化剤
【0149】
配合物C:熱硬化性又は熱乾燥性凹版インク配合物:
25~35質量% 熱乾燥性樹脂
0~5質量% 顔料
1~10質量% 好ましくはマイクロ粒子の固体組成物の形態にある、有機IR吸収顔料を含む本発明のマイクロ粒子組成物
45~50質量% 充填剤
10~15質量% 溶媒
0.5~2質量% 乾燥剤
1~5質量% ワックス
【0150】
配合物D:酸化乾燥性オフセットインク配合物:
20~40質量% ワニスI:アルキド樹脂等の酸化乾燥性樹脂
30~50質量% ワニスII:アルキド樹脂、ポリウレタン樹脂又はフェノール樹脂、特にフェノール樹脂等の樹脂とキリ油等の乾性油と焼くことにより調製した酸化乾燥性樹脂
10~20質量% 顔料
1~10質量% 好ましくはマイクロ粒子の固体組成物の形態にある、有機IR吸収顔料を含む本発明のマイクロ粒子組成物
1~7質量% ワックス
0.1~0.5質量% 抗酸化剤
1~5質量% 乾燥剤
【0151】
本発明はまた、セキュリティ機能又はセキュリティ書類を生成する方法であって、印刷用インク配合物を印刷プロセスによって基材に塗布する工程を含む、方法に関する。
【0152】
本発明の印刷用インク配合物は、オフセット印刷プロセス、回転グラビア印刷プロセス、シルクスクリーン印刷プロセス、銅版凹版印刷プロセス、フレキソグラフィック印刷プロセス、活版印刷プロセスからなる群から好ましくは選択される印刷プロセスによって、より好ましくは、オフセット印刷プロセス及び銅版凹版印刷プロセスにより塗布することができる。前述の印刷技法は、当業者に周知である。
【0153】
この文脈では、用語「セキュリティ機能」は、特に、基材表面に印刷される特定の画像であり、用語「基材」は、セキュリティ機能を生成するため、インク配合物に塗布することにより、セキュリティ機能を得るよう意図されている、又はセキュリティ書類に変換するよう意図されている任意の対象物を意味する。
【0154】
用語「セキュリティ書類」は、偽造文書又は偽造から保護することが意図されている任意の書類を意味する。このようなセキュリティ書類には、特に、価値のある書類及び価値のある市販製品が含まれる。価値ある書類の典型的な例には、例えば、紙幣、証書、チケット、小切手、バウチャー、印紙及び税印紙、契約書等、パスポート、身分証明書、ビザ、運転免許証、銀行カード、クレジットカード、取引カード、アクセス文書又はカード等の身分証明書、入場チケット、公共交通機関のチケット又はタイトル等、好ましくは紙幣、身分証明書、権利付与文書、運転免許証及びクレジットカードが含まれる。用語「価値のある市販製品」とは、特に、化粧品、栄養補助食品、医薬品、アルコール、タバコ製品、飲料又は食品、電気/電子製品、布地又は宝飾品、すなわち例えば、本物の薬物のような包装の内容物を保証するため、偽造及び/又は違法複製物から保護されることになる物品用の包装材料を指す。これらの包装材料の例は、例えば、認証ブランドラベル、改ざん証拠ラベル及びシール等のラベルを含む。開示されている基材、価値ある書類及び価値ある市販製品は、本発明の範囲を限定することなく、専ら例示目的で示されているに過ぎないことが指摘される。
【0155】
代替的に、有機IR吸収顔料を含むマイクロ粒子を含む本発明の印刷用インク配合物は、例えば、セキュリティスレッド、セキュリティストライプ、ホイル、デカール、窓又はラベル等の補助基材表面に印刷され、続いて、別の工程でセキュリティ書類に転写されてもよい。
【0156】
上記のセキュリティ文書を保護する及びこれが本物であることを証明するために使用されることの他に、本発明の印刷用インク配合物を装飾される目的物又は要素に塗布することによって、装飾目的で上記の配合物を使用することもできる。典型的には、このような目的物又は要素の例には、例えば、高級品、化粧品のパッケージ、自動車部品、電子/電気機器、家具及び爪用ラッカーが含まれる。
【0157】
したがって、本発明はまた、本発明の印刷用インク配合物が印刷プロセスにより塗布された基材を含む、セキュリティ書類及び装飾用目的物に関する。
【0158】
図1:本発明の吸収極大において測定される印刷の劣化 (remission) から計算される吸収の相対的低下、及び用途実施例3の比較印刷用インクを示す略図である。
【0159】
粒径分布 (PSD) は、欧州規格ISO13320:2009ENに準拠した、Malvern Mastersizer2000を使用するレーザー回折により求めた。これらのデータは、Malvern Instruments社により供給される「汎用モデル」を使用するソフトウェアによるミー理論に従い処理した。重要なパラメータは、特に以下の値:D(v0.5)、D(v0.9)、D(v0.1)、D(3,2)、及びD(4,3)であり、D(v0.5)、D(v0.9)、D(v0.1)、D(3,2)、及びD(4,3)は、本明細書において定義されている通りである。
【0160】
アミノプラスト予備縮合物A:メチロール化メラミンホルムアルデヒド予備縮合物の70質量%水溶液:Luracoll(登録商標)SD、BASF SE社。
【0161】
顔料A:式(I)のIR吸収ニッケルジチオレン錯体顔料 (式中、R1、R2、R3、及びR4は、アリールである) CAS名 [ニッケル(II), ビス(ジフェニルイミダゾリジントリチオン-κS4、κS5-), (SP-4-1)-]。
【0162】
顔料B:EP3067216の式B-6のIR吸収銅ナフタロシアニン錯体顔料。
【0163】
顔料C:式(I)のIR吸収ニッケルジチオレン錯体顔料 (式中、R1、R2、R3、及びR4は、メチルである)。
【0164】
顔料D:式(I)のIR吸収ニッケルジチオレン錯体顔料 (式中、R1、R2、R3、及びR4は、イソプロピルである)。
【0165】
分散剤A:市販のI型分散剤 (WO2006/074969の実施例A6に準拠して調製される、アクリル酸ブチル、メチルポリエチレンオキシドアクリレート及びビニルピリジンの繰り返し単位を有するコポリマーの40質量%水溶液)。
【0166】
分散剤B:III型分散剤(97質量%の固体含有物を有する、脂肪酸修飾ペンタメチレンヘキサミンとエトキシ化脂肪酸のマレイン酸による半エステルとの混合物を含有する水)。
【0167】
消泡剤A:修飾ポリジメチルシロキサン:Foamstar(登録商標)SL2280、BASF SE社
【実施例
【0168】
調製実施例:
(実施例1a)
顔料Aの29.91gの湿潤ケーキ (46.8質量%の顔料) を、108.53gの水中で20gの分散剤A、及び0.4gの消泡剤A、及び12.25gのアミノプラスト予備縮合物Aと混合した。この混合物をUltra-turraxを使用して事前分散し、次に、氷冷下、超音波チップを使用して10分間、超音波を施した。この後、ギ酸の4g水溶液 (20質量%) を添加した。この混合物を室温で1時間、撹拌した。次に、この温度を1時間以内に80℃まで昇温し、80℃で2時間、保持し、次に、室温まで冷却した。カプセル封入した顔料の分散液を得た。粒径分布の特性値、及びアミノプラストに対する顔料の相対量が、Table1(表1)に示されている。次に、この分散液を乾燥すると微粉末が得られた。
【0169】
実施例1b及び1cは、実施例1aの繰り返しである。粒径分布の特性値が表1に示されている。
【0170】
(実施例2)
顔料Aの33.12gの湿潤ケーキ (46.8質量%の顔料) を、105.82gの水中で20gの分散剤A、及び0.4gの消泡剤A、及び9.19gのアミノプラスト予備縮合物Aと混合した。次に、この混合物を実施例1aに記載されている方法と同じ方法で処理した。粒径分布の特性値、及びアミノプラストに対する顔料の相対量が、表1に示されている。
【0171】
(実施例3)
顔料Aの32.05gの湿潤ケーキ (46.8質量%の顔料) を、106.72gの水中で20gの分散剤A、及び0.4gの消泡剤A、及び10.21gのアミノプラスト予備縮合物Aと混合した。次に、この混合物を実施例1aに記載されている方法と同じ方法で処理した。粒径分布の特性値、及びアミノプラストに対する顔料の相対量が、表1に示されている。
【0172】
(実施例4)
顔料Aの30.98gの湿潤ケーキ (46.8質量%の顔料) を、107.63gの水中で20gの分散剤A、及び0.4gの消泡剤A、及び11.23gのアミノプラスト予備縮合物Aと混合した。次に、この混合物を実施例1aに記載されている方法と同じ方法で処理した。粒径分布の特性値、及びアミノプラストに対する顔料の相対量が、表1に示されている。
【0173】
(実施例5)
顔料Aの28.85gの湿潤ケーキ (46.8質量%の顔料) を、109.5gの水中で20gの分散剤A、及び0.4gの消泡剤A、及び13.27gのアミノプラスト予備縮合物Aと混合した。次に、この混合物を実施例1aに記載されている方法と同じ方法で処理した。粒径分布の特性値、及びアミノプラストに対する顔料の相対量が、表1に示されている。
【0174】
(実施例6)
顔料Aの27.78gの湿潤ケーキ (46.8質量%の顔料) を、109.5gの水中で20gの分散剤A、及び0.4gの消泡剤A、及び14.29gのアミノプラスト予備縮合物Aと混合した。次に、この混合物を実施例1aに記載されている方法と同じ方法で処理した。粒径分布の特性値、及びアミノプラストに対する顔料の相対量が、表1に示されている。
【0175】
(実施例7)
顔料Aの155.44gの湿潤ケーキ (38.60質量%の顔料) を、449.55gの水中で25gの分散剤A、及び2.0gの消泡剤A、及び81.66gのアミノプラスト予備縮合物Aと混合した。この混合物を、10000rpmの撹拌速度でディスク型分散器を使用して分散させた。この後、ギ酸の20質量%溶液20gを添加した。この混合物を室温で1時間、撹拌した。次に、この混合物を実施例1aに記載されている方法と同じ方法で処理した。粒径分布の特性値、及びアミノプラストに対する顔料の相対量が、表1に示されている。
【0176】
(実施例8)
顔料Aの29.91gの湿潤ケーキ (46.8質量%の顔料) を、63.55gの水中で5.0gの分散剤A、及び0.4gの消泡剤A、及び12.25gのアミノプラスト予備縮合物Aと混合した。次に、この混合物を実施例1aに記載されている方法と同じ方法で処理した。粒径分布の特性値、及びアミノプラストに対する顔料の相対量が、表1に示されている。
【0177】
(実施例9)
顔料Aの33.10gの湿潤ケーキ (42.3質量%の顔料) を、63.55gの水中で8.24gの分散剤B、及び0.4gの消泡剤A、及び12.25gのアミノプラスト予備縮合物Aと混合した。次に、この混合物を実施例1aに記載されている方法と同じ方法で処理した。粒径分布の特性値、及びアミノプラストに対する顔料の相対量が、表1に示されている。
【0178】
【表1】
【0179】
顔料B、C、及びDのマイクロ粒子ベース組成物は、実施例1a~9に記載されている手順と同様に調製することができる。
【0180】
用途実施例:
(用途実施例1): オフセット印刷用インク配合物の調製 (一般手順):
本発明の固体粉末マイクロ粒子組成物1部を、市販の酸化乾燥性オフセットワニス9部に配合した。この混合物を3本のロールミルを使用して均一にする。
【0181】
(用途実施例2): 調整後のIR吸収との印刷物の比較:
市販の酸化乾燥性オフセットワニス (Glanzdrucklack1188、Epple AG社) 中、実施例1aの固体マイクロ粒子組成物10質量%からなる本発明によるオフセットインク配合物を上記の通り調製した。インクはオフセット印刷装置 (Prufbau社) を使用して、ペーパー (APCO II/IIペーパー; Fogra Forschungsgesellschaft Druck e.V.社) 上に印刷した。非カプセル封入顔料Aを4質量%含むこうして調製したインク配合物を、印刷後に直接、NIR分光計 (データカラー45IR) を用いて測定した場合、750~1100nmの波長範囲において、本発明のインク配合物の印刷とほとんど同じIR劣化を有するオフセット紙印刷を生じることが見出されたので、比較配合物として選択して印刷した。どちらの印刷も、20日後に再度、測定した。得られた結果は、この期間の後の、比較インクを用いて調製した印刷の劣化の増大は、本発明のインクを用いて調製した印刷の劣化の増大よりも25%高いことを示した (インクの吸収極大において測定した)。
【0182】
(用途実施例3): 同じ顔料濃度を有するインクを用いて調製した印刷の比較:
市販されていない酸化乾燥性オフセットワニス中、実施例1cの固体マイクロ粒子組成物の、本発明によるオフセットインク配合物を上記の通り調製した。顔料濃度は4質量%とした。比較インクは、顔料濃度4%を有する非カプセル封入顔料Aを使用したが、同様の方法で調製した。本発明のインク配合物及び比較インク配合物を、各場合において、ペーパー1m2あたり2gのインク濃度 (4%の顔料搭載量) が得られるよう、オフセット印刷装置 (Prufbau社) を使用して、ペーパー (APCO II/IIペーパー; Fogra Forschungsgesellschaft Druck e.V.社) 表面に印刷した。印刷の750~1100nmの波長範囲のIR劣化をNIR分光計 (データカラー45IR) を用いて20日間、モニタリングした。インクの吸収極大において測定した吸収の相対低下 (劣化から計算した) が、図1に示されている。
【0183】
(用途実施例4): 同じ顔料濃度を有するインクを用いて調製した印刷の比較:
市販の酸化乾燥性オフセットワニス (Matt 2154、Epple AG社) 中、実施例7の固体マイクロ粒子組成物の、本発明による酸化乾燥性オフセットインク配合物を上記の通り調製した。顔料濃度は4質量%とした。比較インクは、顔料濃度4%を有する非カプセル封入顔料Aを使用したが、同様の方法で調製した。本発明のインク配合物及び比較インク配合物を、各場合において、ペーパー1m2あたり1gのインク搭載量 (4%の顔料濃度) が得られるよう、オフセット印刷装置 (Prufbau社) を使用して、ペーパー (APCO II/IIペーパー; Fogra Forschungsgesellschaft Druck e.V.社) 表面に印刷した。印刷物の750~1100nmの波長範囲のIR劣化を、印刷直後及び6日後に再度、NIR分光計 (データカラー45IR) を用いて測定した。この期間にわたり、比較インクを用いて得た印刷の劣化は、測定された開始時の劣化に比べて37%高く、本発明のインクを用いて得た印刷物は、7%だけ高かった。
図1