(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-07
(45)【発行日】2023-12-15
(54)【発明の名称】水上車両の誘導充電電力伝達装置及び誘導充電電力伝達装置を備えた係留装置
(51)【国際特許分類】
H02J 50/10 20160101AFI20231208BHJP
H01F 38/14 20060101ALI20231208BHJP
B60L 53/12 20190101ALI20231208BHJP
B60L 53/30 20190101ALI20231208BHJP
B60M 7/00 20060101ALI20231208BHJP
H02J 7/00 20060101ALI20231208BHJP
B63B 21/02 20060101ALI20231208BHJP
【FI】
H02J50/10
H01F38/14
B60L53/12
B60L53/30
B60M7/00 X
H02J7/00 P
H02J7/00 301D
H02J7/00 301B
B63B21/02
(21)【出願番号】P 2021531210
(86)(22)【出願日】2019-12-03
(86)【国際出願番号】 EP2019083453
(87)【国際公開番号】W WO2020115030
(87)【国際公開日】2020-06-11
【審査請求日】2022-07-29
(32)【優先日】2018-12-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】516149435
【氏名又は名称】ボンバルディアー プリモーフ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】Bombardier Primove GmbH
【住所又は居所原語表記】Eichhornstrasse 3, 10785 Berlin, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100106404
【氏名又は名称】江森 健二
(74)【代理人】
【識別番号】100112977
【氏名又は名称】田中 有子
(72)【発明者】
【氏名】アナ カーン
(72)【発明者】
【氏名】ゼルギオ アレハンドロ ペレズ ロメロ
【審査官】大濱 伸也
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-011696(JP,A)
【文献】国際公開第2016/140239(WO,A1)
【文献】特開平09-102329(JP,A)
【文献】特開2004-022779(JP,A)
【文献】国際公開第2017/125153(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 50/00-50/90
H01F 38/14
B60L 53/12
B60L 53/30
B60M 7/00
H02J 7/00
B63B 21/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水上車両(30)の誘導充電電力伝達装置(10)であって、
一次導体構成(40)を備えた電力伝達部(28)と、
少なくとも1つの連結部材(22)であって、前記誘導充電電力伝達装置(10)を周囲に接続するための少なくとも1つの第1連結部(24)と、前記少なくとも1つの連結部材(22)を前記電力伝達部(28)に連結するための少なくとも1つの第2連結部(26)とを有する少なくとも1つの連結部材(22)と、を備えており、
前記連結部材(22)が
、前記電力伝達部(28)に加わる
水上車両(30)の接触による衝撃を吸収するように構成された、
弾性材料からなる弾性部
(23)を少なくとも1つ有することを特徴とする水上車両の誘導充電電力伝達装置。
【請求項2】
前記電力伝達部(28)は、第1連結部(24)に対して、平行な平面内に延出していることを特徴とする請求項1に記載の水上車両の誘導充電電力伝達装置。
【請求項3】
前記電力伝達部(28)が、板状部材又はパネルとして形成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の水上車両の誘導充電電力伝達装置。
【請求項4】
前記弾性部(23)が中空であることを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載の水上車両の誘導充電電力伝達装置。
【請求項5】
前記
弾性部(23)が、円錐形又は円筒形のセクションを備えることを特徴とする請求項1~4のいずれか一項に記載の水上車両の誘導充電電力伝達装置。
【請求項6】
前記連結部材(22)が、三角形又は長方形のセクションから構成されることを特徴とする請求項1~4のいずれか一項に記載の水上車両の誘導充電電力伝達装置。
【請求項7】
前記連結部材の長手方向の軸(L)が、以下の1)又は2)のいずれかに従って延出していることを特徴とする請求項1~
6のいずれか一項に記載の水上車両の誘導充電電力伝達装置。
1)前記連結部材の長手方向の軸(L)が、前記電力伝達部(28)に対して平行に延出していること。
2)前記連結部材の長手方向の軸(L)が、前記電力伝達部(28)に対して
垂直に延出していること。
【請求項8】
前記電力伝達部(28)の少なくとも1つの外面が、保護層(54)を有する少なくとも1つの領域を備えていることを特徴とする請求項1~
7のいずれか一項に記載の水上車両の誘導充電電力伝達装置。
【請求項9】
前記保護層(54)が、レジン、プラスチック、ゴム材料のうちの少なくとも1つを含むことを特徴とする請求項
8に記載の水上車両の誘導充電電力伝達装置。
【請求項10】
前記誘導充電電力伝達装置(10)が、前記電力伝達部(28)に接続されるケーブル構成(38)を備えており、当該ケーブル構成(38)が、前記電力伝達部(28)の変位を補償するように、柔軟性を有していることを特徴とする請求項1~
9のいずれか一項に記載の水上車両の誘導充電電力伝達装置。
【請求項11】
誘導充電電力伝達装置(10)を備えた係留装置(12)であって、
隣接する水面(20)に対して
角度を持って延出する締結領域(16)を備えており、かつ、当該締結領域(16)に締結される請求項1~
10のいずれか一項に記載の誘導充電電力伝達装置(10)を備えることを特徴とする誘導充電電力伝達装置を備えた係留装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水上車両の誘導充電電力伝達装置(以下、誘導電力伝達装置、又は、単に電力伝達装置と称する場合がある。)及び、そのような誘導充電電力伝達装置を備えた係留装置(以下、誘導充電電力伝達装置を備えた係留エリア、又は誘導充電電力伝達装置のシステムと称する場合がある。)に関する。
より具体的には、本発明の誘導充電電力伝達装置は、水上車両が電気的に推進されるか、言い換えれば、電気的に誘導充電されて駆動させるために使用される。
更に、誘導充電電力伝達装置は、水上車両を電気的に推進するために使用可能な電気エネルギーを提供するために使用される。
なお、伝達された電気エネルギーは、追加的又は代替的に、水上車両のオンボード電気システムの動作など、推進以外の異なる目的にも使用することができる。
【背景技術】
【0002】
電気自動車や、ボート、船舶、海洋船舶等の水上車両は、一般的に誘導電力伝達によって伝達可能な電気エネルギーによって推進する。
このような水上車両は、水上車両の推進システム又は推進システムの一部である回路構成を含んでおり、交流電磁界を受信し、電磁誘導によって交流電流を生成するように適合された受信装置を含む回路構成を備えていることが好ましい。
更に、このような水上車両は、交流(AC)を直流(DC)に変換するように適合された整流器を備えていることが好ましい。直流は、バッテリーを充電するため、又は電気機械を作動させるために使用することが好ましい。後者の場合、直流はインバータによって交流に変換されることが好ましい。
【0003】
一般的に、誘導電力の伝達は、それぞれが巻線に形成されるか、又は一般的に電気導体の特定の形状、コース、又はパスに形成される可能性のある、例えば三相一次導体構成のセットを使用して行われる。
ここで、第1のセットは、一次導体構成として周囲に設置され、いわゆるウェイサイドパワーコンバータ(Wayside power converter)によって供給されることが好ましい。
かかる一次導体構成及び/又はウェイサイドパワーコンバータは、通常は静止したままの、いわゆる一次ユニットの一部であることが好ましく、可動部品を備えていることがより好ましい。
又、第2のセットは、二次導体構成として水上車両に設置されていることが好ましい。
かかる二次導体構成又は一般的に二次側は、しばしばピックアップ構成又は受信機と呼ばれる。
第1のセットである一次導体構成、及び第2のセットである二次導体構成は、電気エネルギーを水上車両に伝達するための高周波トランスを形成することが好ましい。
これは、推進システムによる水上車両の動きがない静的な状態でも、動的な状態でも行うことができる。
【0004】
それぞれの一次導体構成を利用して、道路や線路に面した車両(以下、非水上車両と称する場合がある。)を誘導的に電気で充電するためのソリューションは数多く存在する。
これらのケースでは、誘導電力の伝達中に、非水上車両、例えば、特定の自動車、列車、トラックのモデルと、電力伝達装置の相対的な位置は、実質的に一定であると仮定するのが妥当である。
又、電力伝達装置に非水上車両を配置する際には、例えば、電力伝達装置の電力伝達ユニットを非水上車両に対して慎重に移動させることにより、電力伝達装置と非水上車両との間の衝撃や衝突を回避できると想定することができる。
【0005】
ここで、水に浮かぶ乗り物である水上車両、例えば、船やボート等の場合、このような仮定は特定の状況下でのみ成立する。
例えば、水上車両が浮かんでいる水域が、誘導充電の間ずっと穏やかであること、例えば、波や流れがほとんど影響しないことが必要である。
更に、水上車両が、正確に制御され、電力伝達装置に対して相対的に移動できることが必要であるが、これは水に浮かんでいる水上車両の場合には実現が困難となる可能性があることを示している。
その結果、道路や軌道に沿った非水上車両の誘導充電のためのソリューションは、水上車両では非効率的であるか、あるいは使用不可能であることが判明している。
【0006】
そこで、特許文献1によれば、格納式作業アームによって、例えば船舶に対して移動可能な電力伝達装置を有する海洋アプリケーション用の誘導充電装置を開示している。
かかる格納式作業アームの、例えば、異なる水位に対応するため高さは、格納式作業アームの長さを変更することによって、及び/又は別個の油圧又は空気圧シリンダによって調整することができる。
しかしながら、全体的に、このような構造はかなり複雑で、操作が難しく、スペース効率も悪くなると問題があった。
又、その構造の複雑さと大きさのために、所望の信頼性を得ることが難しく、コストも高くなるという問題もあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】WO2017/125153 A1(特許請求の範囲等)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、コストやスペースに配慮した構造でありながら、水上車両に確実に誘導電力を伝達することができる誘導電力伝達装置、及びそのような誘導電力伝達装置を備えた係留装置を提供することである。
【0009】
従って、本発明の目的や課題は、明細書に添付されている独立請求項に記載された誘導充電電力伝達装置及び誘導充電電力伝達装置を備えた係留装置によって達成し、解決することができる。
又、有利な効果を発揮する本発明の好適実施形態は、従属請求項の誘導充電電力伝達装置や、それを備えた係留装置で定義されている。
更に、本明細書の導入部で言及された特徴は、言及されていない場合や他に明らかな場合であっても、個別に又はそれらの任意の組み合わせで、現在開示されている解決策にも提供することができる。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明によれば、一般的に、少なくとも部分的に弾力性のある連結部材に対して、一次導体構成を備えてなる電力伝達部(以下、パネル式電力伝達部と称する場合がある。)を配置することを提案するものであり、後者は、例えば、誘導充電電力伝達装置を備えた係留装置への接続を可能にするものである。
このようにして、定義された弾性変形性及び/又は弾力性が提供され、例えば、水上車両がそれに接触した場合に電力伝達部に及ぼされる衝撃又は圧力を吸収することができる。
更に、本発明による電力伝達装置は、一般的に、作動可能な可動部がない又は少ないことが好ましい。例えば、制御可能に移動可能なキネマティックユニット、駆動ユニット及び/又はアクチュエータがないことが好ましい。
このような部品がないことにより、油圧作動液や潤滑油等の作動流体の必要性を低減又は排除することができ、その結果、それらの作動流体の流出による汚染のリスクを低減することができる。
又、複雑さやコストを低減し、信頼性を高めることができる。一般的に、本発明は、特に、限られた水平方向の寸法で設計することができる、スペース効率の良い電力伝達装置を提供することができる。
又、提案された電力伝達装置は、既存の係留装置及び/又はフェンダーに後付けすることが容易であり、一般に、係留装置において、広々とした基礎などの特定の設置をほとんど又は全く必要としないという利点もある。
【0011】
よって、本発明によれば、水上車両の誘導充電電力伝達装置や、そのような誘導電力伝達装置を備えた係留装置が提案され、下記構成を有することを特徴としている。
すなわち、誘導充電電力伝達装置は、一次導体構成を備えた電力伝達部と、少なくとも1つの連結部材であって、電力伝達装置を周囲に接続するための少なくとも1つの第1連結部と、少なくとも1つの連結部材を電力伝達部に連結するための少なくとも1つの第2連結部とを有する少なくとも1つの連結部材と、を備えることを特徴とする。
そこで、連結部材が、例えば、サイズ、形状、及び使用される材料の観点から、連結部材の少なくとも1つの中央部に、電力伝達部に加わる衝撃を吸収するように構成された、弾性部(吸収部材や、衝撃吸収弾性部と称する場合もある。)を有することを特徴とする。
【0012】
すなわち、船舶、ボート、海洋船舶などの水上車両は、少なくとも誘導電力の伝達中は、水に浸かっていることが好ましい。そして、伝達された電気エネルギーは、例えば回転可能なプロペラやポンプジェットからなる水上車両の電気推進システムに使用されることが好ましい。
又、追加で、或いはその代わりに、電気エネルギーは、推進システム以外の水上車両のオンボード電気システムに使用することも好ましい。
【0013】
水上車両が浮かんでいる水域は、例えば、数日間の長い期間にわたって、実質的に一定の水位を有する領域、あるいは、別の言い方をすれば、潮の満ち引きがない水位の領域として特徴づけられることが好ましい。
かかる水域において、誘導充電電力伝達装置は、一般に、任意のキネマティック部材、特に、例えば、電力伝達部などの電力伝達装置の構成要素の定義された動き、特に実質的な変位を可能にする駆動又は制御可能なキネマティック部材を備えていないことが好ましい。
すなわち、かかる電力伝達部は、実質的な外力、例えば、100N以上又は1kN以上の力が適用されない限り、連結部材によって、一般的に静止しているか、及び/又は実質的に一定の位置及び/又は方向に保持されていることが好ましい。
【0014】
誘導電力伝達装置は、一般に、誘導電力伝達のためのシステムの一次ユニットの一部であることが好ましい。そして又、一般的に据え置き型であることが好ましい。
【0015】
又、電力伝達部は、板状部材又はパネルとして形成されていることが好ましい。
かかる電力伝達部が、特に、板状部材又はパネルとして形成されている場合、一次導体構成が形成されている平面と一致するか、又は平行に延出する平面を規定することが好ましい。
かかる一次導体構成は、一次導体構成に通電又は動作電流が供給されると、交流電磁界を生成するように構成されていることが好ましく、この交流電磁界によって水上車両への誘導電力の効率的伝達が可能になる。
【0016】
又、電力伝達部は、例えば、任意の板状部材又はそのパネルによって少なくとも部分的に形成されるハウジングを含んでいることが好ましい。
そして、一次導体構成は、ハウジングに収容され、及び/又は、ハウジングに周囲を被覆されていることが好ましい。
更に、誘導電力伝達装置は、一次導体構成又はコンバータ等の他の電気要素の電力接続のための少なくとも1つの接続端子を含んでいることが好ましく、かかる接続端子は、例えば、電力伝達部に形成されていることが好ましい。
【0017】
更に、一次導体構成は、複数の相線、例えば3つの相線で構成されていることが好ましい。
これらは一般的に、例えば交流電流が供給されるときに、誘導電力伝達のための前述の交流電磁界を生成するように構成することが好ましい。
かかる一次導体構成の少なくとも1つの相線は、蛇行したコースを有することが好ましい。
又、一次導体構成の少なくとも1つの相線は、相線のコースが、互いに隣接して配置された偶数又は不均等な数の副巻線を提供するように設計することが好ましい。
本明細書の流れでは、副巻線は、所定の領域を囲む、好ましくは完全な導体ループを示していることが好ましい。このような導体ループであれば、それぞれの副巻線の1ターン又は複数ターンを提供又は構成することが好ましい。
又、互いに隣接しているとは、副巻線の中心軸、特に対称軸が、例えば一次導体構成の延伸方向に対応できる共通の直線に沿って、例えば所定の距離だけ離れていることを意味する。
【0018】
更に、一次導体構成の少なくとも1つの相線のコースは、8の字形状とすることが好ましい。
これは、電気配線としての相線が、互いに隣接して配置された2つの、例えば円形状の副巻線からなることを意味する。
それぞれの相線から一次導体構成を形成するための例は、GB 2512864 A公報に見出すことができ、その態様は、本発明に含めることができる。
すなわち、本発明の明細書の流れにおいて、一次導体構成は、GB 2512864 A公報に開示された例のいずれかに従って形成されていることが好ましい。
又、一次導体構成と相互作用するものとして、GB 2512864 A公報に開示された要素のいずれかが、本明細書に開示された誘導電力伝達装置によって省略されていることが好ましい。
【0019】
一例ではあるが、少なくとも1つ又は好ましくは全ての相線が、ケーブル軸受要素によって所定の位置に保持され、ケーブル軸受要素は、好ましくはプラスチックモールドとして形成されることが好ましい。
【0020】
又、誘導電力伝達装置、特に、それに含まれる電力伝達部は、磁束を誘導するための少なくとも1つの誘導手段を含んでいることが好ましい。
特に、誘導電力伝達装置は、フェライト構成部を含むことができ、かかるフェライト構成部は、例えば、フェライトバー、ストリップ、又はスラブなどの1つ以上のフェライト素子を含む構成部品であることが好ましい。
又、誘導手段は、生成された電磁界の磁束を所望の経路に沿って誘導するために備えられ、使用されることが好ましい。
【0021】
かかる誘導手段は、誘導電力伝達装置、特に電力伝達部の内部にある磁性層によって形成されるか、又は磁性層で構成されていることが好ましい。
従って、当該磁性層は、例えば、フェライトストリップのフェライトバーを備えていることが好ましい。
かかる磁性層は、好ましくはアルミニウムなどの非磁性金属材料で形成された、フェライト素子が内部に配置された剛性プレートを更に含んでいることが好ましい。
更に、かかる磁性層は、電力伝達部の安定化機能を提供し、例えば、数ミリメートル(例えば、1~9ミリメートルの範囲)、又は数センチメートル(例えば、1~9センチメートルの範囲)の厚さで設計されていることが好ましい。
【0022】
又、誘導電力伝達装置は、例えば、電力伝達部に向かって誘導され、接続されるケーブルを含んでいることが好ましい。
かかるケーブルは、例えば、ケーブルローラーやドラムに選択的に巻き付けられたり、取り外されたりすることで、可変の直線長さを有していることが好ましい。
又、追加で、或いはその代わりに、ケーブルには、電力伝達部の可能な変位の制限を避けるために、例えば、当該部が外部の衝撃又は圧力を受け、それに応じて連結部材が変形する場合、定義されたたるみ又は緩みを設けておくことが好ましい。
又、ケーブルは、保護スリーブ又はチューブで囲まれていることが好ましく、これらはいずれも、柔軟性及び/又は弾性及び/又は水密性を有することが好ましい。
又、追加で、或いはその代わりに、ケーブルの少なくとも一部は、連結部材の中空セクション等の誘導電力伝達装置の部材を介して案内され、それによって遮蔽されていることが好ましい。
又、保護スリーブ又はチューブは、異なる層で構成されていることが好ましく、1つの層は、アルミニウムなどの非磁性金属材料で形成されたシールドであることが好ましい。
【0023】
又、誘導電力伝達装置、特に電力伝達部は、少なくとも特定の実施形態では、アンテナと呼ばれることがある少なくとも1つの物体検出手段を含んでいることが好ましい。
かかる物体検出手段は、電力伝達パッドの充電ボリューム(以下、充電容積と称する場合がある。)の内部の異物、特に金属物体を検出するシステムを示すことができる。
又、追加で、或いはその代わりに、物体検出手段は、充電ボリュームの内部の移動物体を検出するシステムを示すことができる。
かかる充電ボリュームは、一次導体構成によって生成された電磁界の少なくとも所定の部分であるが、通常、80%延びる充電ボリュームを示すことが好ましい。
更に言えば、90%延びる充電ボリュームを示すことがより好ましく、95%延びる充電ボリュームを示すことが更に好ましい。
又、充電ボリュームは、一次導体構成によって生成された全電磁界が延びる容積を示すことができる。従って、充電容積は、一次導体構成の前など、電力伝達部の前の容積を示すことができる。
そして、充電面は、充電ボリュームの底面とすることが好ましい。特に、充電面は、電力伝達部の前面とすることが好ましい。
【0024】
又、物体検出手段は、少なくとも1つの誘導検出システムを含むことが好ましく、かかる誘導検出システムによって能動的又は受動的な検出を行うことができる。
それぞれの場合において、誘導検出システムは、1つ又は複数の検出巻線を含むことが好ましい。
又、複数の検出巻線は、アレイ構造に配置することが好ましく、当該アレイ構造は、電力伝達部の充電面を覆うことが好ましい。
又、能動的な検出の場合、1つ又は複数の励磁巻線を使用することが好ましい。すなわち、能動的な物体検出は、励磁巻線によって生成される励磁場の特性を監視することによって行うことが好ましい。
又、受動的な検出の場合、1つ又は複数の受動巻線のみが使用されることが好ましい。すなわち、受動的な物体検出は、受動巻線の特性、特にインダクタンスを監視することによって行うことが好ましい。
このような誘導検出システムは、GB 2508923 A公報又はGB 2517679 A公報に開示されており、そのような開示内容を本発明に含めることができる。
すなわち、本発明の明細書において、検出システムは、参照により本明細書に組み込まれるGB 2508923 A公報又はGB 2517679 A公報に記載されている実施形態のいずれかに従って設計することが好ましい。
【0025】
本明細書の開示の流れにおいて、垂直軸は、重力の軸と一致していることが好ましく、更に、水平な空間平面の法線を形成していることが好ましい。すなわち、それと直交して延出する水平な空間平面は、少なくとも1つの水平な空間軸を含んでいる。
又、水平な空間平面は、少なくとも波がない場合には、水面に平行に構成されるか、或いは水面に沿って延出されていることが好ましい。そして、言及されていないか、或いは他に明らかな場合には、垂直及び水平という用語は、それぞれ上述の垂直軸及び水平軸に関するものである。
【0026】
一次導体構成の導体、例えば、相線の形態は、同一の、隣接する、又は平行な空間平面に形成されていることが好ましい。従って、例えば、互いに積み重ねられる場合、平面の各々は、非水平であることが好ましい。
導体構成が延出する平面は、これらの空間平面のうちの少なくとも1つを含むことが好ましく、平面のうちの少なくとも2つの間に延出する中央部の平面として定義されていていることが好ましい。
【0027】
一般的に、一次導体構成によって生成された磁束の方向は、電力伝達部、特にそのパネル又は板状部材に対して角度を持って、例えば、実質的に直交して延出していることが好ましい。
一例ではあるが、かかる磁束の方向は、実質的に水面等に対して水平方向に延出していることが好ましい。又、磁束の方向は、一次導体構成の平面に対して実質的に直交して延出していることが好ましい。
又、かかる磁束の方向は、一次導体構成の平面内に延出している、及び/又は、一次導体構成によって少なくとも部分的に囲まれる磁界の部分、すなわち、一次導体構成のループ又は蛇行部を通って直交して延出している部分に関するものであることが好ましい。
【0028】
又、一次導体構成は、非水平な空間平面、例えば、水面方向等に水平な空間平面に対して、垂直面に延出していることが好ましい。別な言い方をすれば、導体構成のループ又は蛇行部は、少なくとも1つの非水平面に形成されていることが好ましい。
【0029】
一般的に、一次導体構成及び/又はその単一ループ又は蛇行部は、電力伝達部の平面に対して実質的に平行に、例えば電力伝達部の前面に対して、実質的に平行に延出していることが好ましい。
かかる前面は、電力が誘導的に伝達されるべき水上車両に面するように配置されていることが好ましい。別な言い方をすれば、一次導体構成及び/又はその単一のループ又は巻線の平面、すなわち、そのループ又は巻線の少なくとも1つが形成されている平面は、電力が誘導的に伝達されるべき水上車両に面するように配置されていることが好ましい。
【0030】
連結部材は、一般的に、例えば、それに応じて弾性変形することによって、電力伝達装置に加わる衝撃及び/又は圧力を少なくとも部分的に吸収するように構成されていることが好ましい。
具体的には、衝撃及び/又は圧力は、例えば、誘導電力伝達の間又はその準備中に水上車両を近くに配置する際に、電力伝達部に及ぼされることがある。そのために、連結部材は、フェンダーであることが好ましい。
【0031】
連結部材、又はそのような連結部材の少なくとも1つの弾性部(吸収部材)は、弾性材料及び/又はプラスチック、又は、より具体的には、ゴム材料(例えば、加硫ゴム)で形成されていることが好ましい。
かかる連結部材、又は少なくともその弾性部は、弾力性を向上させるために、中空の部材として設計されていることが好ましい。
又、かかる弾性部は、連結部材の中央部を形成していることが好ましく、連結部の間に配置していることが好ましい。
一般的に、電力伝達部の変位は、連結部材又は少なくともその弾性部を変形させる場合にのみ可能である場合がある。
【0032】
又、第1及び/又は第2連結部は、それぞれ、連結部材の中央部、特に弾性部に取り付けられた別個の部材によって提供されていることが好ましい。
一例ではあるが、第1及び/又は第2連結部は、リング型の部材又は連結部材の一部分で構成されている。
又、追加で、或いはその代わりに、第1及び/又は第2連結部は、それに接続されたそれぞれの部材に確実に固定できるように、少なくとも部分的に剛性材料を含んで形成されていることが好ましい。それぞれの連結部等の接続は、ボルトなどの締結手段を用いてあることが好ましい。
又、少なくとも第2連結部は、連結部材の閉塞面、すなわち、前面として構成されていることが好ましく、当該面は、例えば、円形又は長方形の形状を有していることが好ましい。
又、第1及び/又は第2連結部は、通常、細長い部分又は部材、より具体的には、例えば、細長い長方形の部材として構成されていることが好ましい。
【0033】
本明細書で使用される「接続」という用語は、別段の記載又は明白でない限り、直接的な接続である、例えば、1つの更なる部材への接触を含む直接的な締結と、間接的な接続である、例えば、1つの更なる部材への接触のない、更なる中間部材を介した間接的な締結、の両方を包含することが好ましい。
【0034】
以下に詳述するように、周囲は、誘導充電電力伝達装置を備えた係留装置の端部、特にその特定の固定領域、例えば、水上車両の側部に面した、重力方向に沿った垂直部によって形成されていることが好ましい。
【0035】
更なる実施形態によれば、電力伝達部は、第1連結部に対して、実質的に平行な平面内に延出していることが好ましい。
例えば、かかる第1連結部は、周囲又は電力伝達部と結合される可能性のある、例えば、接触する可能性のある、連結面又は接触面を定義することが好ましい。
かかる面は、電力伝達部に実質的に平行な、例えば、板状部材又はそのパネルに平行な平面内に延出するか、又はその平面を定義することが好ましい。
このような構成は、装置全体のサイズを制限し、外部からの衝撃に応じて装置内の力の分散を改善するのに役立つ。例えば、力が、実質的に真っ直ぐに、好ましくは装置内を最短距離で移動することになる。
【0036】
一例ではあるが、連結部材が、楕円形又は円形の断面を有する少なくとも1つのセクションを備えていることが好ましい。
かかる断面は、連結部材の長手方向の軸に対して直交して延出していることが好ましく、長手方向の軸は、一般的に、連結部材の長さ寸法に沿って、及び/又は、連結部材の最長寸法に沿って延出していることが好ましい。
更に、長手方向の軸は、周囲、電力伝達部、又は第1連結部及び第2連結部の少なくとも1つに対して直交して延出していることが好ましい。それぞれの形状の断面を設けることで、連結部材の変形性を特に信頼性の高い方法で定義することができ、その中の望ましくない応力を制限することができる。代わりに、連結部材は、実質的に三角形又は長方形の断面を有していることが好ましい。
【0037】
更なる実施形態によれば、連結部材は、少なくとも1つの円錐形又は円筒形のセクションを備えていることが好ましい。
かかるセクションは、議論されている弾力性のある部分を形成していることが好ましい。
又、別の例によれば、弾力性のある部分は、複数のそれぞれの円錐形又は円筒形のセクションから構成されていることが好ましい。
又、追加で、或いはその代わりに、円錐形又は円筒形のセクションは、楕円形又は円形の断面を有する上述のセクションを提供していることが好ましい。更なる代替として、連結部材は、少なくとも1つの三角形又は長方形のセクションから構成されていることも好ましい。
【0038】
上述したように、連結部材は、定義された長手方向の軸を有していることが好ましい。
すなわち、連結部材の長手方向の軸が、以下の1)又は2)のいずれかに従って延出していることが好ましい。
1)連結部材の長手方向の軸が、電力伝達部に対して、実質的に平行に延出していること。
2)連結部材の長手方向の軸が、電力伝達部に対して、実質的に角度を持って延出していること。
又、一例ではあるが、連結部材の長手方向の軸が、以下の1´)又は2´)のいずれかに従って延出していることも好ましい。
1´)連結部材の長手方向の軸が、電力伝達部及び/又は締結領域に対して、実質的に平行に延出していること。
2´)連結部材の長手方向の軸が、電力伝達部及び/又は締結領域に対して、角度を持って延出していること。
【0039】
又、第1の代替案では、特にその水平方向の寸法に関して、電力伝達装置のサイズを特に小さくすることができると言える。この場合、連結部材は、締結領域のような周囲に沿って延出する細長い部材として提供されていることが好ましい。
一方、第2の代替案では、高い外力及び圧力を補償することができる特に強い設計を提供するのに役立つと言える。この場合、連結部材は、締結領域のような周囲に対して例えば実質的に直交して延出する部材として提供されていることが好ましい。
【0040】
更なる実施形態によれば、電力伝達部の少なくとも1つの外面が、保護層(表面保護層)を有する少なくとも1つの領域を備えていることが好ましい。
【0041】
又、かかる保護層が、レジン(樹脂)、プラスチック、ゴム材料のうちの少なくとも1つを含むことが好ましい。
又、かかる電力伝達部の少なくとも1つの外面は、電力が伝達されるべき水上車両に面する正面又は前面であることが好ましい。
一例ではあるが、好ましくは任意の縁部を含む、全ての外側の面に、それぞれの保護層が設けられていることが好ましい。ただし、この場合、連結部又はケーブルを電力伝達部に接続するために、保護層に凹部又は貫通孔を設けていることが好ましい。
【0042】
又、誘導充電電力伝達装置が、電力伝達部に接続されるケーブル構成を更に備えており、当該ケーブル構成が、電力伝達部の変位を補償するように、柔軟性を有していることが好ましい。
かかるケーブル構成は、少なくとも1本のケーブルを含んでいることが好ましく、複数の単相線、例えば三相線を含んでいることが好ましい。
又、かかるケーブル構成は、その一端で、例えばパワーエレクトロニクス機器で構成されたり、誘導充電電力伝達装置を備えた係留装置に取り付けられたりする固定ユニットに接続することが好ましい。
又、ケーブル構成のもう一方の端では、ケーブル構成は、電力伝達部に接続することが好ましい。これは、好ましくは、水上車両に面した前面から離れた場所である、例えば、電力伝達部の裏側又は反対側の面で行われる。ケーブル構成は、可撓性及び/又は弾性を有する保護スリーブ又はチューブ内に配置されていることが好ましい。
一例ではあるが、ケーブル構成は、ある定義された緩み又は弛みを備えており、例えば、ドラム又はローラーから巻き取られることにより、可変の直線長さを有していることが好ましい。
【0043】
上述の手段は、例えば、ケーブル構成のそれぞれの直線長さを調整したり、以前に緩んでいた部分をまっすぐにしたりすることで、電力伝達部の変位(垂直方向位置)を補償するのに役立つと言える。
【0044】
本発明の別の態様は、隣接する水面に対して角度を持って延出する締結領域、例えば、壁又は平面を含み、当該締結領域に配置される、前述又は後述のいずれかの態様による電力伝達装置を備えることを特徴とする誘導充電電力伝達装置を備えた係留装置(以下、誘導充電電力伝達装置のシステムやシステム的使用方法、又は誘導充電電力伝達装置を備えた係留エリアと称する場合がある。)に関するものである。
【0045】
かかる係留装置は、例えば、岸壁、埠頭、階段、桟橋、堤防エリア、海岸エリア、上陸ステージとして、又はそれらによって提供されていることが好ましい。
一般的には、川岸、湖岸、海岸、又は港やハーバー内に人工的に作られた構造物に関するものである。又、一般的には、水上車両がそこに係留又は停泊することができ、好ましくはそこに結び付けられるようになっている。
又、一般的に、誘導充電電力伝達装置を備えた係留装置は、石、レンガ、木、コンクリートなどの剛性のある材料で形成されているか、又はそれらを含んで構成されていることが好ましい。
更に、誘導充電電力伝達装置を備えた係留装置は、水面方向等に対して、実質的に直交して延出していることが好ましく、空間内で垂直に延出していることも好ましい。
又、締結領域は、実質的に、重力方向等に対して、垂直方向に延出する平面を形成していることが好ましい。
又、誘導充電電力伝達装置を備えた係留装置は、上述の締結領域に対して角度を有する更なる部分、例えば、更なる壁又は床を含んでいることが好ましい。
かかる更なる部分は、例えば、実質的に、水面方向等に対して、水平に延出することによって、物品又は人を水の近くに配置することを可能にすることができる。
【0046】
又、本発明の誘導充電電力伝達装置を備えた係留装置を構成するにあたり、連結部材の長手方向の軸が、以下の1)又は2)のいずれかに従って延出していることが好ましい。
1)連結部材の長手方向の軸が、締結領域に対して、実質的に平行に延出していること。
2)連結部材の長手方向の軸が、締結領域に対して、実質的に斜めに延出していること。
【0047】
上述のように、長手方向の軸と、一般的には締結領域に平行に延出している電力伝達部との相対的な配置に関して、第1の変形例は、サイズを制限するのに役立ち、第2の変形例は、強度と剛性を向上させるのに役立つことが好ましい。
【0048】
以下では、本発明の一実施形態を、添付の概略図を参照して説明する。その種類及び/又は機能に関して互いに対応する特徴は、図全体を通して同じ参照符号を割り当てることができる。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【
図1】
図1は、本発明の一実施形態に係る電力伝達装置を構成する係留装置の側面図である。
【
図3】
図3は、本発明の更なる実施形態による電力伝達装置の透視図である。
【発明を実施するための形態】
【0050】
図1では、本発明による誘導充電電力伝達装置10が開示されている。
かかる誘導充電電力伝達装置10は、係留装置12に配置されており、当該係留装置12は、水面等に対して水平な上面、又は別の言い方をすれば水平なフロア14を含んでいることが好ましい。
更に、誘導充電電力伝達装置10を備えた係留装置12は、水域18に部分的に沈められた、重力方向等に沿った垂直な壁の形をした締結領域16を含んでいることが好ましい。所定の例では、誘導充電電力伝達装置10を備えた係留装置12は、岸壁として提供される。
【0051】
又、締結領域16に、水面20(以下、水位と称する場合がある。)よりも上の位置に、連結部材22が固定されていることが好ましい。そのために、連結部材22は、締結領域16に接触して固定される第1連結部24を備えていることが好ましい。
更に、連結部材22は、電力伝達部28(以下、パネル式電力伝達部と称する場合がある。)の裏面に接触して固定される第2連結部26を備えていることが好ましい。以下に更に詳述するように、連結部材22は、弾力性があり、弾性的に変形可能なフェンダーであることが好ましい。
【0052】
図1に関して更に詳しく説明すると、電力伝達部28は、一次導体構成40を備え、この一次導体構成40は、通電されると、電力を水上車両30に誘導的に伝達するための交流電磁界を生成するように構成されていることが好ましい。
図に示された例では、水上車両30は、水域18に浮かぶ船であり、その部分断面を模式的に示している。水上車両30の前方部(図示せず)は、
図1の観察者に面している。
一方、水上車両30の側壁32は、電力伝達部28の前面に面している。かかる側壁32には、ピックアップ構成34の形態の二次導体構成が配置されており、ピックアップ構成34は、電磁界を受信し、そこから電気エネルギーを誘導的に生成し、水上車両30の電気エネルギー貯蔵装置に供給することができるように構成されていることが好ましい。
このように、水上車両30は側方停泊(side berthing)の位置で示されているが、本発明はそれに限定されるものではなく、例えば、後方停泊(end berthing)も同様に可能である。
【0053】
図1には、電力伝達部28に対して、電気エネルギーを供給するためのパワーエレクトロニクス機器36が更に示されている。
かかるパワーエレクトロニクス機器36は、例えば、一次コンバータを備えていることが好ましい。
又、パワーエレクトロニクス機器36は、誘導充電電力伝達装置10を備えた係留装置12の水平なフロア14に配置されており、通常、概ね静止していることが好ましい。
又、パワーエレクトロニクス機器36は、可撓性チューブで囲まれ、一般的に定義されたスラックを備えたケーブル構成38、すなわち、少なくとも電力伝達部28に外力が加わっていないときには、張力がかかっていないケーブル構成38によって、電力伝達部28に接続されていることが好ましい。
【0054】
次いで、以下では、
図2を参照して、誘導充電電力伝達装置10を更に詳細に説明する。
すなわち、
図2は、締結領域16における連結部材22の配置が再び明らかになる透視図である。同じことが、誘導充電電力伝達装置10を備えた係留装置12の水平なフロア14におけるパワーエレクトロニクス機器36の配置関係を示すのにも当てはまる。
更に、連結部材22は、円形の断面を有する円筒状の中央部23(以下、弾性部と称する場合がある。)からなり、第1連結部24及び第2連結部26を互いに連結している。
すなわち、第1連結部24及び第2連結部26は、中央部23の反対側の端部に形成されていることが好ましい。その断面の平面に対して直交して延出し、連結部材22の長さ寸法を示す連結部材22の長手方向の軸Lは、締結領域16に対して直交して延出していることが好ましい。
かかる連結部材22又は少なくともその中央部23は、加硫ゴムなどの弾性材料で構成されていることが好ましく、中空部材として構成されていることも好ましい。
【0055】
更に、第1連結部24は、連結部材22を締結領域16に固定するための図示しないボルトを受け入れるための貫通孔25からなるリング状の部材として構成されていることが好ましい。
又、
図2の図解で部分的に見えている第2連結部26は、一般的に連結部材22の前面として構成されており、又、これに電力伝達部28を結合するための貫通孔27を備えていることが好ましい。
又、第1連結部24及び第2連結部26の両方は、剛性の高い、例えば金属製の材料、例えば剛性の高いリングや剛性の高いプレートで構成されていることが好ましい。
これらは、連結部材22の弾性材料に成形されていることが好ましく、他の手段、例えば、機械的手段によって筒状の中央部23に連結されていることが好ましい。
【0056】
従って、連結部材22は、一般的に弾力性があり、特に、電力伝達部28に衝撃や圧力が加えられた場合などに圧縮可能である。後者の場合、水上車両30を電力伝達部28に隣接して接触するように配置しようとするときに生じる可能性がある。
【0057】
以下では、電力伝達部28について更に詳しく説明する。
図2は、連結部材22の詳細を示すために、当該電力伝達部28を一部切り取った状態で表示している。
具体的には、電力伝達部28の右上が、説明のために切り取られている。すなわち、電力伝達部28は、一般的には、それぞれ切り落としや丸みを帯びた角部を有さない中実の長方形の部材、すなわち、板状部材又はパネルとして形成されていることが好ましい。
更に、電力伝達部28は、その内部構成要素の一部を説明するために、部分的に透明な態様で示されている。
これらは、実際には、環境に直接さらされておらず、電力伝達部28の内部に収容されており、電力伝達部28によって覆われていることが好ましい。
図1及び
図2を合わせて見ると、板状の電力伝達部28は、一般的に締結領域16に対して平行に延出しており、従って、非水平な態様ではあるが、重力方向等に沿った垂直な空間平面内にあることが更に明らかになる。更に、電力伝達部28は、第1連結部24及び第2連結部26に対して平行に延出している。
【0058】
これは、一次導体構成40に関するものでもある。かかる一次導体構成40は、3つの個別の相線、すなわち、第1相線L1、第2相線L2、及び第3相線L3(以下、それぞれ、導体、又は、単に相線と称する場合がある。)を備えていることが好ましい。
これらの相線はそれぞれ、蛇行しながら水平方向、すなわち、締結領域16に対して平行に延出しており、スターポイント42で互いに接続されていることが好ましい。
従って、第1相線L1、第2相線L2、第3相線L3の各相線は、水面方向等に対して平行な水平部だけでなく、重力方向等に沿った垂直部も含んでいることが好ましい。
更に、第1相線L1、第2相線L2、第3相線L3の各相線は、個々の相電流に接続されており、個々の相電流間で120°の位相差が得られるように、第1相線L1、第2相線L2、第3相線L3間の距離、特にその垂直部間の距離が選択されていることが好ましい。
一次導体構成40の、このような設計に関する更なる詳細は、特に
図2に関連して、GB 2512864 A公報に記載されており、本発明に含めることができる。
【0059】
図1から明らかなように、一次導体構成40、特にその蛇行部を形成する第1相線L1、第2相線L2、第3相線L3の各相線は、パネル式電力伝達部としての電力伝達部28の平面内に延出していることが好ましい。
従って、一次導体構成40は、一般的に、非水平な空間平面内に延出し、及び/又は、一般的に形成され、実質的に、重力方向に対して、垂直方向に延出していることが好ましい。
更に、一次導体構成40によって当該一次導体構成40の領域で生成される磁束の主な方向は、一次導体構成40及び電力伝達部28の平面に対して実質的に直交するように、すなわち実質的に水平に、例えば、電力伝達部28の前面に対して、
図2において45°の角度で、見る人に向かって延出していることが好ましい。
更に、第1相線L1、第2相線L2、第3相線L3によって定義される平面の法線は、水平軸であり、これも又、電力伝達部28の前面に対して
図2において約45°の角度で延出することが好ましい。
従って、一次導体構成40の導体としての、第1相線L1、第2相線L2、第3相線L3は、一般的に、非水平な空間平面内に延出しており、定義されたコース、すなわち、蛇行コースを描く形状であることが好ましい。
すなわち、第1相線L1、第2相線L2、第3相線L3の各相線の長手方向に沿って延出し、各相線の長さ寸法を規定する長手方向の軸は、非水平な空間平面内を通っていることが好ましい。そして、全体として、一次導体構成40は、このように非水平面内に配置され、延出していることが好ましい。
【0060】
又、電力伝達部28の更なる内部の構成要素として、アンテナの形をした物体検出手段44が示されている。
かかる物体検出手段44は、
図2では部分的に切断されているが、一般的には楕円形で閉じた巻線として構成されている単一の検出巻線46から構成されていることが好ましい。
そして、物体検出手段44は、電力が伝達されるべき水上車両30における金属製部品等の物体の存在を検出するための受動的な誘導センサーとして機能する。
【0061】
図2から、一次導体構成40と物体検出手段44の両方が、ケーブル構成38の個々のケーブル部48、51を介してパワーエレクトロニクス機器36に接続されていることが更に明らかである。
具体的には、電力伝達部28の内部のケーブル部48、51は、パワーエレクトロニクス機器36に接続されているケーブル構成38の外部に露出した柔軟なチューブセクションに入っていることが好ましい。
【0062】
一般的に、電力伝達部28は、水上車両30から加わる衝撃や圧力を吸収するために、十分な剛性を持つように設計されていることが好ましい。そのために、電力伝達部28は、
図2では一部しか見えていない多数のフェライトバー52を含むことによって、磁束の誘導手段として機能するアルミニウム製のバックプレート50を備えていることが好ましい。
【0063】
更に、
図2において、観察者に面する電力伝達部28の少なくとも前面は、例えば樹脂やゴムからなる保護層54によって覆われていることが好ましい。
かかる保護層54は、電力伝達部の特定の領域にのみ形成されていることが好ましく、例えば、
図2に示すように、電力伝達部28の下部領域にまたがって形成されていることが好ましい。
このようにして、誘導電力の伝達に対する干渉を制限することが好ましい。或いは、保護性を高めるために、保護層54が電力伝達部28の前面全体を覆っていることが好ましい。
【0064】
最後に、
図1及び
図2には、支持チェーン60が示されており、説明のために、棒状の部材として描かれているが、一般的には、一連のチェーンリンクからなる細長いチェーンとして構成されていることが好ましい。
かかる支持チェーン60は、生成された電磁界との干渉を避けるために、非金属材料で構成されていることが好ましい。更に、支持チェーン60は、電力伝達部28を所定の位置に保持し、定義された力で連結部材22に近づけたり、連結部材22に対して引っ張ったりするように、張力がかけられていることが好ましい。
【0065】
上述の議論から、誘導充電電力伝達装置10は、電力伝達部28の定義された作動可能又は制御可能な動きを可能にするようなアクチュエータは言うに及ばず、例えば定義された軸又は関節からなる特定のキネマティックユニットを備えていないことが好ましい。
その代わりに、誘導充電電力伝達装置10は、一般的に、電力伝達部28を空間に位置決めし、係留装置12に結合するための受動的なシステムとして構成されていることが好ましい。このようにして、誘導充電電力伝達装置10は、複雑さを低減させた、安価で信頼性の高いシステムとして提供することができる。
【0066】
又、誘導電力の伝達を実現するために、
図1の水上車両30は、そのピックアップ構成34が電力伝達部28に対向して、例えば、実質的に一致して及び/又は所望の距離で、配置されるような方法で操縦することが好ましい。
その後、水上車両30は、例えば、誘導充電電力伝達装置10を備えた係留装置12に固定されるか、又は縛り付けられることが好ましい。
又、水上車両30が、電力伝達部28に対してピックアップ構成34を位置決めするためのキネマティックユニット、例えば、可動式アームを備えることも考えられる。これは、アンカーリング又はタイアップの後に行われていることが好ましく、及び/又は、水面等に対して水平方向の動きに限定されていることが好ましい。
【0067】
更に、連結部材22は、一般的に、電力伝達部28に加えられる外部の衝撃又は圧力を補償するために、弾力性のある、より具体的には、弾性的に変形可能な部材として作用することが好ましい。
例えば、連結部材22は、電力伝達部28に加えられるそのような力に応じて、圧縮されることが好ましく、一般的には伸長されることも好ましい。
このようにして、内部応力が制限されることが好ましく、誘導充電電力伝達装置10の全体の信頼性を、例えば、完全に剛性の高いシステムと比較して向上させることができる。
【0068】
更に、水上車両30のオペレータの観点から、電力伝達は一般的に容易であることが好ましい。
これは、弾力性のある連結部材22のために、電力伝達部28に対する水上車両30及びピックアップ構成34の位置決めのための定義された許容範囲が存在するからである。
具体的には、水上車両30で電力伝達部28に接近する際に、水上車両30が電力伝達部28に接触しても構わないが、これは、この明細書の流れでは、電力伝達部28に及ぼされる可能性のある力が、弾力性のある連結部材22によって補償されるからである。そのため、所望の電力伝達を準備する際に、水上車両30を非常に高い精度で操縦する必要がない。
【0069】
図3は、本発明による誘導充電電力伝達装置10の更なる実施形態を示している。この図では、連結部材22のみが示されており、この連結部材22は、水面20よりも上の位置にある、誘導充電電力伝達装置10を備えた係留装置12の締結領域16に接続されていることが好ましい。
図示されていない電力伝達部28ならびにケーブル構成38、パワーエレクトロニクス機器36及び支持チェーン60は、前述の例と同様に構成されている。従って、これらに関しては、特に図示せず、説明も省略する。
又、連結部材22は、再び、弾性を有し弾性変形可能なフェンダーとして提供される。
【0070】
又、連結部材22の長手方向の軸Lは、連結部材22の最長寸法に沿って延出しており、重力方向等に沿った垂直方向だけでなく、締結領域16と平行に延出している。かかる長手方向の軸Lは、連結部材22を90°回転させると、水面等に対して水平方向にも同様に延出することが可能となる。
更に、連結部材22は、長手方向の軸Lに対して直交して延出する実質的に三角形の断面を有しており、その外縁部には、長手方向の軸Lに沿って延出する細長い第1連結部24が設けられ、締結ボルトを受け入れるための図示しない貫通孔が設けられている。
又、第2連結部26は、再び連結部材22の前面として構成され、長手方向の軸Lに沿って延出する長方形の細長い形状を有している。
又、連結部材22は、任意の弾力性のある、より具体的には、弾性的に変形可能な材料で形成されている。図示されていない電力伝達部28に加えられる外部の衝撃及び圧力は、従って、連結部材22を圧縮及び変形させることによって補償されることが好ましい。
図3の実施形態は、限定されたサイズ、特に限定された水平方向の寸法によって特徴付けられており、これにより、誘導充電電力伝達装置10のコンパクト性が更に改善されている。
【0071】
なお、いずれの実施形態においても、類似した形状の連結部材22を1つ以上。例えば2つ又は3つ設けることも可能であり、好ましいと言える。
【符号の説明】
【0072】
10:誘導充電電力伝達装置、12:係留装置、14:フロア、16:締結領域、18:水域、20:水面、22:連結部材、23:中央部、24:第1連結部、25、27:貫通孔、26:第2連結部、28:電力伝達部、30:水上車両、32:側壁、34:ピックアップ構成、36:パワーエレクトロニクス機器、38:ケーブル構成、40:一次導体構成、42:スターポイント、44:物体検出手段、46:検出巻線、48、51:ケーブル部、50:バックプレート、52:フェライトバー、54:保護層、60:支持チェーン、L:長手方向の軸、L1:第1相線、L2:第2相線、L3:第3相線