IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 三菱電機株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-冷熱源ユニットおよび冷凍サイクル装置 図1
  • 特許-冷熱源ユニットおよび冷凍サイクル装置 図2
  • 特許-冷熱源ユニットおよび冷凍サイクル装置 図3
  • 特許-冷熱源ユニットおよび冷凍サイクル装置 図4
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-07
(45)【発行日】2023-12-15
(54)【発明の名称】冷熱源ユニットおよび冷凍サイクル装置
(51)【国際特許分類】
   F25B 1/00 20060101AFI20231208BHJP
【FI】
F25B1/00 341T
F25B1/00 351U
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2021555751
(86)(22)【出願日】2019-11-15
(86)【国際出願番号】 JP2019044891
(87)【国際公開番号】W WO2021095237
(87)【国際公開日】2021-05-20
【審査請求日】2022-03-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鶴島 誠也
(72)【発明者】
【氏名】森田 久登
(72)【発明者】
【氏名】佐多 裕士
【審査官】関口 勇
(56)【参考文献】
【文献】特開平04-093558(JP,A)
【文献】国際公開第2018/073855(WO,A1)
【文献】特開2015-004473(JP,A)
【文献】特開2005-180753(JP,A)
【文献】特開2000-292017(JP,A)
【文献】特開平11-108471(JP,A)
【文献】特開平06-034224(JP,A)
【文献】特開2009-216000(JP,A)
【文献】特開平09-149547(JP,A)
【文献】特開平08-261571(JP,A)
【文献】特開2000-105011(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F25B 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
負荷装置に接続され冷凍サイクル装置を構成する冷熱源ユニットであって、
圧縮機と、
前記圧縮機を制御する制御装置とを備え、
前記制御装置は、前記圧縮機の過負荷を検出した場合に、前記圧縮機を第1時間停止してから前記圧縮機を再起動する第1起動リトライ制御を実行し、
前記制御装置は、前記第1起動リトライ制御を実行した回数が第1判定値を超えた場合に、前記圧縮機を前記第1時間よりも長い第2時間停止してから前記圧縮機を再起動する第2起動リトライ制御を実行するように構成され、
前記圧縮機の内部の液冷媒を加熱するように構成された加熱装置をさらに備え、
前記制御装置は、前記第2起動リトライ制御を実行する場合に、前記加熱装置によって、前記液冷媒を加熱するように構成され
前記制御装置は、外気温が第1しきい値温度を超えていない場合には、前記加熱装置による前記液冷媒の加熱を実行しながら、前記第2起動リトライ制御を実行し、
前記制御装置は、前記外気温が前記第1しきい値温度を超えている場合には、前記加熱装置による前記液冷媒の加熱を停止した状態で、前記第2起動リトライ制御を実行する、冷熱源ユニット。
【請求項2】
前記制御装置は、冷媒の蒸発温度と目標蒸発温度の差が第2しきい値温度を下回る場合に、前記第1起動リトライ制御を実行する、請求項1に記載の冷熱源ユニット。
【請求項3】
前記制御装置は、前記圧縮機に液冷媒の吸入が発生していない場合には、前記第1起動リトライ制御を実行した回数が前記第1判定値を超えた場合であっても前記第1起動リトライ制御を実行し、
前記制御装置は、前記圧縮機が吸入する冷媒の過熱度、前記圧縮機のシェル下温度、前記圧縮機内の冷媒の過熱度の少なくともいずれかに基づいて前記圧縮機への前記液冷媒の吸入の有無を判断する、請求項1に記載の冷熱源ユニット。
【請求項4】
前記第2時間は、前記圧縮機内の液量が減少し、前記圧縮機が再起動可能となるのに必要な時間である、請求項1~のいずれか1項に記載の冷熱源ユニット。
【請求項5】
前記制御装置は、前記第2起動リトライ制御を行なった場合に前記圧縮機の起動に失敗した場合には、前記第2起動リトライ制御を繰り返し実行し、
前記制御装置は、前記第2起動リトライ制御を実行した回数が第2判定値を超えた場合には、前記圧縮機を停止状態に設定し、
前記第1判定値は、前記第1判定値と前記第2判定値の合計に対して、60%となる判定値である、請求項1~3のいずれか1項に記載の冷熱源ユニット。
【請求項6】
負荷装置に接続され冷凍サイクル装置を構成する冷熱源ユニットであって、
圧縮機と、
前記圧縮機を制御する制御装置とを備え、
前記制御装置は、前記圧縮機の過負荷を検出した場合に、前記圧縮機を第1時間停止してから前記圧縮機を再起動する第1起動リトライ制御を実行し、
前記制御装置は、前記第1起動リトライ制御を実行した回数が第1判定値を超えた場合に、前記圧縮機を前記第1時間よりも長い第2時間停止してから前記圧縮機を再起動する第2起動リトライ制御を実行するように構成され、
前記制御装置は、前記圧縮機に液冷媒の吸入が発生していない場合には、前記第1起動リトライ制御を実行した回数が前記第1判定値を超えた場合であっても前記第1起動リトライ制御を実行し、
前記制御装置は、前記圧縮機が吸入する冷媒の過熱度、前記圧縮機のシェル下温度、前記圧縮機内の冷媒の過熱度の少なくともいずれかに基づいて前記圧縮機への前記液冷媒の吸入の有無を判断する、冷熱源ユニット。
【請求項7】
負荷装置に接続され冷凍サイクル装置を構成する冷熱源ユニットであって、
圧縮機と、
前記圧縮機を制御する制御装置とを備え、
前記制御装置は、前記圧縮機の過負荷を検出した場合に、前記圧縮機を第1時間停止してから前記圧縮機を再起動する第1起動リトライ制御を実行し、
前記制御装置は、前記第1起動リトライ制御を実行した回数が第1判定値を超えた場合に、前記圧縮機を前記第1時間よりも長い第2時間停止してから前記圧縮機を再起動する第2起動リトライ制御を実行するように構成され、
前記制御装置は、前記第2起動リトライ制御を行なった場合に前記圧縮機の起動に失敗した場合には、前記第2起動リトライ制御を繰り返し実行し、
前記制御装置は、前記第2起動リトライ制御を実行した回数が第2判定値を超えた場合には、前記圧縮機を停止状態に設定し、
前記第1判定値は、前記第1判定値と前記第2判定値の合計に対して、60%となる判定値である、冷熱源ユニット。
【請求項8】
請求項1~のいずれか1項に記載の冷熱源ユニットと、前記負荷装置とを備える冷凍サイクル装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、冷熱源ユニットおよび冷凍サイクル装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば冷凍装置等において、除霜後の起動時にユニット内の液冷媒が大量にアキュムレータに戻る場合がある。このとき、アキュムレータの下部に設置された油戻し回路の内部に液冷媒が大量に通流し、この液冷媒が油戻し回路から圧縮機に過剰に流れ込む液戻り現象(以下、「液バック」という)が発生する場合がある。運転時の液バックにより圧縮機内で圧力が急上昇し、圧縮機の運転電流が過電流状態となる問題があった。
【0003】
特開平6-34224号公報(特許文献1)には、過電流状態に起因する圧縮機の故障を防止するために、電流値比較部により圧縮機電流値が或る値以上を或る時間継続したら圧縮機を一旦停止し、圧縮機停止後或る時間後に圧縮機の再起動を行ない、同じ動作を或る回数繰り返したら全運転停止を行なう暖冷房機が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平6-34224号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
液バックにより圧縮機内に液冷媒が溜まった状態で圧縮機を再起動しようとした際、液圧縮運転に伴う圧縮機のモータ負荷の増大によって過電流状態となり、圧縮機が一旦停止する場合がある。特開平6-34224号公報(特許文献1)に開示された技術では、圧縮機停止後の或る時間後に圧縮機の再起動を試みる。以下、この圧縮機の再起動試行を「起動リトライ」ということとする。しかし、圧縮機内に液冷媒の残留量が多い状態で起動リトライをしても過電流のために圧縮機が停止してしまい、起動リトライを繰り返して全運転停止となる可能性が高いという課題がある。
【0006】
本発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであって、過電流によって圧縮機が停止された場合に、圧縮機の再起動の成功確率が向上した冷熱源ユニットおよび冷凍サイクル装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示は、負荷装置に接続され冷凍サイクル装置を構成する冷熱源ユニットに関する。冷熱源ユニットは、圧縮機と、圧縮機を制御する制御装置とを備える。制御装置は、圧縮機の過負荷を検出した場合に、圧縮機を第1時間停止してから圧縮機を再起動する第1起動リトライ制御を実行する。制御装置は、第1起動リトライ制御を実行した回数が第1判定値を超えた場合に、圧縮機を第1時間よりも長い第2時間停止してから圧縮機を再起動する第2起動リトライ制御を実行する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、圧縮機の起動がうまくいかない場合に、圧縮機起動までの待ち時間を長くして再起動を行なうため、圧縮機内の液冷媒が排出され、再起動の成功確率が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本実施の形態における冷凍サイクル装置200の冷媒回路を表す図である。
図2】圧縮機の停止時間と圧縮機内の液量変化率との関係を示した図である。
図3】圧縮機の起動リトライを実行する制御を説明するためのフローチャートである。
図4】液排出促進制御開始時のヒータの通電制御を説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。以下では、複数の実施の形態について説明するが、各実施の形態で説明された構成を適宜組み合わせることは出願当初から予定されている。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰返さない。なお、以下の図は各構成部材の大きさの関係が実際のものとは異なる場合がある。
【0011】
図1は、本実施の形態における冷凍サイクル装置200の冷媒回路を表す図である。図1に示すように、冷凍サイクル装置200は、冷熱源ユニット100と、負荷装置110とを備える。なお、「冷熱源ユニット」は、「熱源ユニット」と呼ばれることもある。
【0012】
負荷装置110は、膨張弁3と、第1熱交換器(以下、蒸発器4という)とを含む。冷熱源ユニット100は、負荷装置110に接続され冷凍サイクル装置200を構成する。冷熱源ユニット100は、圧縮機1と、第2熱交換器(以下、凝縮器2という)と、ヒータ40と、圧縮機1およびヒータ40を制御する制御装置30とを備える。
【0013】
制御装置30は、CPU(Central Processing Unit)31と、メモリ32(ROM(Read Only Memory)およびRAM(Random Access Memory))と、各種信号を入力するための図示しない入出力装置等を含んで構成される。CPU31は、ROMに格納されているプログラムをRAM等に展開して実行する。ROMに格納されるプログラムは、制御装置30の処理手順が記されたプログラムである。制御装置30は、これらのプログラムに従って、冷熱源ユニット100における各機器の制御を実行する。この制御については、ソフトウェアによる処理に限られず、専用のハードウェア(電子回路)で処理することも可能である。
【0014】
また、圧縮機1には、吸入温度を検出するサーミスタ5と、圧縮機1の筐体外郭下部の温度または圧縮機1の筐体内に滞留する冷凍機油の温度(以下、「シェル下温度」という)を検出するサーミスタ6と、過電流を検出する電流センサ7とが付随している。
【0015】
冷凍サイクル装置200では、圧縮機1が冷媒ガスを圧縮して高圧のガスにし、高圧のガス冷媒が凝縮器2に流れる。凝縮器2では、冷媒から熱が放出され、高圧のガス冷媒は凝縮し、高圧の液冷媒となる。高圧の液冷媒は膨張弁3に流れる。膨張弁3にて高圧の液冷媒は減圧され、低圧の液冷媒が蒸発器4に流れる。蒸発器4において液冷媒は蒸発し、周囲の熱を奪う冷却作用が行なわれる。蒸発したガス冷媒は、圧縮機1に戻り、冷媒回路が成立する。
【0016】
本実施の形態では、過負荷を検知した場合圧縮機1を停止し、停止時間を十分な時間確保することによって圧縮機1内の液量を減少させ、起動リトライ時の起動不良を抑制する。たとえば、制御装置30は、電流センサ7によって過電流が検出された場合に、圧縮機1の負荷が、過負荷であることを検知する。
【0017】
具体的には、制御装置30は、圧縮機1の過負荷を検出した場合に、圧縮機1を第1時間停止してから圧縮機1を再起動する第1起動リトライ制御を実行する。そして、制御装置30は、第1起動リトライ制御を実行した回数が判定値を超えた場合に、圧縮機1を第1時間よりも長い第2時間停止してから圧縮機1を再起動する第2起動リトライ制御を実行する。停止時間については、以下に限定されないが、たとえば、第1時間を3分とし、第2時間を30分とすることができる。
【0018】
図2は、圧縮機の停止時間と圧縮機内の液量変化率との関係を示した図である。図2に示す関係および圧縮機停止に伴う庫内温度上昇を考慮し、1回の液排出促進制御実施における圧縮機停止時間を決定する。
【0019】
庫内が通常運転により冷却された状態で、圧縮機を停止した場合、庫内温度の上昇が許容されるのは、60分程度である。ただし、60分よりも前に、圧縮機1の起動時に過電流が生じない程度に液量が減少していれば、停止時間は短い方がよい。したがって、本実施の形態では、液排出促進制御を2回まで実施することとし、1回の液排出促進制御実施における圧縮機停止時間を30分と設定する。
【0020】
図3は、圧縮機の起動リトライを実行する制御を説明するためのフローチャートである。このフローチャートにより過電流異常の起動不良の改善について説明する。
【0021】
まずステップS1において、制御装置30は、過電流による起動リトライ制御を5回実施したか否かを判断する。
【0022】
起動リトライ制御の回数の合計が5回に達していれば(S1でYES)、制御装置30は、ステップS10に処理をすすめ、これ以上の起動リトライ制御を実行しないようにし、異常停止であることを報知する。たとえば、発光ダイオードの点灯などによってユーザに異常停止したことが認識可能とされる。
【0023】
起動リトライ制御の回数の合計が5回に達していなければ(S1でNO)、制御装置30は、ステップS2において、起動リトライ制御の回数の合計が3回に達しているか否かを判断する。
【0024】
起動リトライ制御の回数の合計が3回に達していなければ(S2でNO)、制御装置30は、ステップS11に処理をすすめ、圧縮機の通常の起動リトライ制御を行なう。たとえば、この場合には、3分間圧縮機を停止させた状態に維持した後に、圧縮機1に通電し、再起動を試みる。この3分間は、圧縮機1の液冷媒量が少ない状態において発停を繰り返さないよう定めた時間である。
【0025】
一方、起動リトライ制御の回数の合計が3回に達した場合(S2でYES)、制御装置30は、ステップS3に処理をすすめる。
【0026】
原則的には、ステップS2でYESと判定された場合には、圧縮機1の起動を今までよりも遅延させるステップS5以降の制御を実行する。ただし、圧縮機1の長時間停止に伴う不冷の不具合を防止するため、あるいはその他の重要度の高い制御を優先させるため、ステップS5以降の処理を実施せずに今まで通りの圧縮機1の起動を5回まで繰り返す場合もある。たとえば、以下のような場合が想定される。
・除霜運転などによって庫内温度があるしきい値以上となった場合、冷熱源ユニットの冷凍能力が不足している場合など、冷却を優先する必要がある場合。
・液バックが発生していない場合。
・圧縮機1の冷凍機油が不足し、油戻し制御が開始された場合。
・圧縮機1の吐出側と吸入側の圧力が逆転するおそれがある場合。
・低圧圧力センサがオープンあるいはショートを検知し、異常となった場合。
【0027】
これらの判定をすべて行なっても良い。しかし、本実施の形態では、ステップS5の処理に移行する前に、ステップS3,S4における判定が行なわれる。
【0028】
ステップS3では、制御装置30は、サーミスタ5およびサーミスタ6で温度測定し、吸入冷媒の過熱度(吸入SH)、シェル下温度、および圧縮機1の筐体内に滞留する冷凍機油の過熱度(以下、シェル下SHという)のいずれか1つが、各々に対応する基準値よりも一定時間(たとえば3分間)低下した状態が継続しているか否かを判断する。これにより、制御装置30は、液バックの発生の有無を判断する。
【0029】
ただし、過熱度(SH:スーパーヒート)は、実際に計測した冷媒温度と計測した圧力に対応する飽和ガス温度の温度差である。
【0030】
制御装置30は、たとえば、3分連続で吸入SHが目標値よりも10K低下した場合に、液バックが発生したことを検出する。
【0031】
吸入SH、シェル下温度、およびシェル下SHのいずれも基準値よりも一定時間低下した状態が継続していない場合(S3でNO)、ステップS12において制御装置30は、圧縮機の通常の起動リトライ制御を行なう。たとえば、この場合には、3分間圧縮機を停止させた状態に維持した後に、圧縮機1に通電し、再起動を試みる。
【0032】
一方、吸入SH、シェル下温度、およびシェル下SHのいずれかが基準値よりも一定時間低下した状態が継続している場合(S3でYES)、制御装置30は、ステップS4に処理を進める。
【0033】
ステップS4では、制御装置30は、蒸発温度ETが目標蒸発温度ETm+10K(ケルビン)より低いか否かを判断する。蒸発温度ETと目標蒸発温度ETmの差が10K以下であれば、圧縮機をある程度の時間停止させても庫内の冷却を保つことができると判断できる。なお、蒸発温度ETは、蒸発器4に温度センサを設けて測定しても良いが、吸入温度を検出するサーミスタ5の検出温度で代用しても良い。
【0034】
ET<ETm+10Kが成立しない場合(S4でNO)、ステップS13において制御装置30は、圧縮機の通常の起動リトライ制御を行なう。たとえば、この場合には、3分間圧縮機を停止させた状態に維持した後に、圧縮機1に通電し、再起動を試みる。たとえば、除霜運転後の庫内温度が高い場合、または複数台の負荷ユニットが接続されており冷熱源ユニットの冷凍能力が不足して庫内温度が高い場合には、30分間の停止時間は長すぎるからである。
【0035】
ET<ETm+10Kが成立する場合(S4でYES)、ステップS5において制御装置30は、圧縮機1の起動を遅延させる液排出促進制御を開始する。そして、圧縮機1を停止してからの時間の計測が開始される。このような圧縮機1を停止してから再起動するまでの計測中の時間を「遅延時間」ということにする。制御装置30は、圧縮機1中の液冷媒を十分に減少させるために、遅延時間が第2時間(たとえば、30分間)に至るまでの間は、圧縮機1を停止したままにする。この第2時間は、ステップS11,S12,S13における停止時間である第1時間(たとえば、3分間)よりも長く設定される。このとき液排出促進制御の実施状況をユーザが判定するため、冷凍装置に搭載の制御基板の液晶ディスプレイに“Lout”等の表示することが好ましい。
【0036】
まずステップS6において、遅延時間が設定時間(たとえば、30分間)経過したか否かが判断される。遅延時間が設定時間経過した場合(S6でYES)、ステップS14において、圧縮機1の起動リトライが実行される。
【0037】
一方、遅延時間が設定時間経過していない場合(S6でNO)、ステップS7に処理が進められる。ステップS7では、油戻し制御の開始要求があるか否かが判断される。なお、油戻し制御は、圧縮機1の焼き付きが生じるのを防ぐために、圧縮機1内の冷凍機油が不足したときに要求が発生する。
【0038】
油戻し制御の開始要求がある場合(S7でYES)、ステップS15において、圧縮機1の起動リトライが実行される。
【0039】
一方、油戻し制御の開始要求がない場合(S7でNO)、ステップS8に処理が進められる。ステップS8では、高低圧逆転防止制御の開始要求があるか否かが判断される。なお、高低圧逆転防止制御は、圧縮機1の吸入ポート側圧力が吐出ポート側圧力よりも高いことが検出された場合に開始要求が発生する。
【0040】
高低圧逆転防止制御の開始要求がある場合(S8でYES)、ステップS16において、圧縮機1の起動リトライが実行される。
【0041】
一方、高低圧逆転防止制御の開始要求がない場合(S8でNO)、ステップS9に処理が進められる。ステップS9では、蒸発温度ETが3分間連続して目標蒸発温度ETm+10K(ケルビン)以上となっているか否かが判断される。
【0042】
Et≧ETm+10Kである状態が3分連続した場合には(S9でYES)、庫内の温度上昇を許容できないので、ステップS17において、圧縮機1の起動リトライが実行される。ただし、瞬間的に蒸発温度Etがしきい値を超える可能性があるため、ここでは3分連続を起動遅延中断の条件としている。
【0043】
目標蒸発温度ETm+10K(ケルビン)以上となっている時間が3分間未満である場合には(S9でNO)、ステップS6に処理が戻され、圧縮機の起動リトライ開始までの遅延時間の計測が続行される。
【0044】
ステップS11~S17のいずれかにおいて、圧縮機1の起動リトライが実施された場合、ステップS18において、制御装置30は、圧縮機1の起動が正常に完了したか否かを判断する。
【0045】
たとえば、過電流が再び検出された場合には、圧縮機1の起動は失敗と判断され(S18でNO)、圧縮機1のモータへの通電が遮断され、圧縮機1は停止される。この場合には、制御装置30は、ステップS19において、起動リトライ回数を1増加させ、再びステップS1から処理を実行する。
【0046】
そして、液冷媒流出促進制御を2回実施した後に起動リトライしても圧縮機が起動しない場合はステップS10において運転停止させる。このときには、過電流異常検知の原因が液バックによるものでないと判断できる。
【0047】
一方、過電流が検出されていない場合には、圧縮機1の起動は成功と判断され(S18でYES)、ステップS20において、起動リトライ回数のカウントが初期化され、ステップS21において、通常の圧縮機1の通常運転状態の制御ルーチンに処理が戻される。
【0048】
なお、ステップS5における液排出促進制御の開始時には、ヒータ40を併用して加熱しても良いが、外気温が高い場合には、省エネルギのためにヒータ40を停止してもよい。
【0049】
図4は、液排出促進制御開始時のヒータの通電制御を説明するためのフローチャートである。図4を参照して、ステップS51において制御装置30は、外気温センサ8から外気温Taを取得し、外気温Taが第1しきい値温度Tthよりも低いか否かを判断する。
【0050】
Ta<Tthが成立した場合には(S51でYES)、制御装置30は、ヒータ40に通電し、30分の遅延時間の間、ヒータ40によって圧縮機1の内部の液冷媒を加熱する。一方、Ta<Tthが成立しない場合には(S51でNO)、制御装置30は、ヒータ40への通電は行なわず、30分の遅延時間においてヒータOFFの状態で、外気温によって圧縮機1の内部の液冷媒が温められるのを待つ。
【0051】
このように、外気温に応じてヒータ加熱を実行するか否かを変更するようにすれば、必要以上の冷媒の加熱が行なわれないので、消費電力を低減させることができる。
【0052】
以上説明したように、本実施の形態の冷凍サイクル装置によれば、4回目以降の起動リトライ時の圧縮機1の停止時間を初回起動リトライ時よりも長い時間にする。これによって、液バックにより圧縮機1内の液量が増加した状態においても、ヒータ40による加熱または外気温度により圧縮機1内の液冷媒を加熱し、圧縮機1から十分に追い出すことができる。このようにして圧縮機1内の液量を減少させ、起動リトライ時の過電流異常による起動不良を抑制することができる。
【0053】
最後に、本実施の形態について、再び図面を参照して総括する。
図1を参照して、本実施の形態は、負荷装置110に接続され冷凍サイクル装置200を構成する冷熱源ユニット100に関する。冷熱源ユニット100は、圧縮機1と、圧縮機1を制御する制御装置30とを備える。制御装置30は、圧縮機1の過負荷を検出した場合に、圧縮機1を第1時間停止してから圧縮機1を再起動する第1起動リトライ制御を実行する。制御装置30は、第1起動リトライ制御を実行した回数が第1判定値を超えた場合に、圧縮機1を第1時間よりも長い第2時間停止してから圧縮機1を再起動する第2起動リトライ制御を実行する。
【0054】
好ましくは、第2時間は、圧縮機1内の液量が減少し、圧縮機1が再起動可能となるのに必要な時間である。
【0055】
これにより、第2起動リトライ制御では、圧縮機1の内部の液冷媒の量が第1起動リトライ制御実行時よりも減少していることが期待されるため、圧縮機1の過負荷が解消され、圧縮機1の再起動が成功する可能性が高まる。
【0056】
好ましくは、冷熱源ユニット100は、圧縮機1の内部の液冷媒を加熱するように構成されたヒータ40をさらに備える。制御装置30は、第2起動リトライ制御を実行する場合に、ヒータ40によって、液冷媒を加熱するように構成される。
【0057】
このようにすることによって、第2起動リトライ制御を実行する際に、ヒータ40によって圧縮機1中の液冷媒の気化が一層促進され液量が減少することが期待されるため、圧縮機1の起動時の過負荷が解消され、圧縮機1の再起動が成功する可能性がさらに高まる。
【0058】
より好ましくは、図4に示すように、制御装置30は、外気温Taが第1しきい値温度Tthを超えていない場合には、ヒータ40による液冷媒の加熱を実行しながら、第2起動リトライ制御を実行する。制御装置30は、外気温Taが第1しきい値温度Tthを超えている場合には、ヒータ40による液冷媒の加熱を停止した状態で、第2起動リトライ制御を実行する。
【0059】
このようにすることによって、外気温Taが高く、ヒータ40による加熱を行なわなくても第2時間の待ち時間内に圧縮機1の液冷媒量が減少する場合には、ヒータ40に通電しないので消費電力を低減させることができる。
【0060】
好ましくは、図3のステップS4に示すように、制御装置30は、冷媒の蒸発温度ETと目標蒸発温度ETmの差が第2しきい値温度(たとえば10K)を下回る場合に、第1起動リトライ制御を実行する。
【0061】
このようにすることによって、除霜運転後の庫内温度が高い状況、または、冷熱源機の冷凍能力が不足する状況において、蒸発温度ETが目標蒸発温度ETmよりもある程度高くなってしまう場合に、起動時間を遅延させることによる庫内温度のさらなる上昇を避けることができる。
【0062】
好ましくは、図3のステップS3に示すように、制御装置30は、圧縮機1に液冷媒の吸入が発生していない場合には、第1起動リトライ制御を実行した回数が第1判定値(たとえば3回)を超えた場合であっても第1起動リトライ制御を実行する。制御装置30は、圧縮機1が吸入する冷媒の過熱度、圧縮機1のシェル下温度、圧縮機1内の冷媒の過熱度の少なくともいずれかに基づいて圧縮機1への液冷媒の吸入の有無を判断する。
【0063】
液バックが生じていない場合には圧縮機1の起動を遅延させても過負荷が解消しないので、このようにすることによって、圧縮機1の起動を遅延させることによる庫内温度の上昇を避けることができる。
【0064】
好ましくは、制御装置30は、第2起動リトライ制御を行なった場合に圧縮機1の起動に失敗した場合には、第2起動リトライ制御を繰り返し実行し、制御装置30は、第2起動リトライ制御を実行した回数が第2判定値を超えた場合には、圧縮機1を停止状態に設定し、第1判定値は、第1判定値と第2判定値の合計に対して、60%となる判定値である。
【0065】
具体的には、図3のフローチャートでは、3回の第1リトライ制御が行なわれた後に、2回のリトライ制御が行なわれ、それでも圧縮機1の起動が成功しない場合に制御装置30は圧縮機1を停止状態に設定する。したがって、第1判定値は3であり、第2判定値は2であるので、第1判定値は、第1判定値と第2判定値の合計に対して、60%となる。液排出の効果が最も期待できるのが、合計60分(30分×2回)停止した場合でるため、起動リトライ5回のうち3回を超えたときに液排出を実行する。
【0066】
今回開示された実施の形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施の形態の説明ではなくて請求の範囲によって示され、請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0067】
1 圧縮機、2 凝縮器、3 膨張弁、4 蒸発器、5,6 サーミスタ、7 電流センサ、8 外気温センサ、30 制御装置、31 CPU、32 メモリ、40 ヒータ、100 冷熱源ユニット、110 負荷装置、200 冷凍サイクル装置。
図1
図2
図3
図4