(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-07
(45)【発行日】2023-12-15
(54)【発明の名称】基地局マルチチャネル位相同期装置、方法及び基地局
(51)【国際特許分類】
H04B 17/11 20150101AFI20231208BHJP
【FI】
H04B17/11
(21)【出願番号】P 2021578150
(86)(22)【出願日】2020-07-24
(86)【国際出願番号】 CN2020104644
(87)【国際公開番号】W WO2021018057
(87)【国際公開日】2021-02-04
【審査請求日】2021-12-28
(31)【優先権主張番号】201910698141.8
(32)【優先日】2019-07-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】511151662
【氏名又は名称】中興通訊股▲ふん▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】ZTE CORPORATION
【住所又は居所原語表記】ZTE Plaza,Keji Road South,Hi-Tech Industrial Park,Nanshan Shenzhen,Guangdong 518057 China
(74)【代理人】
【識別番号】100112656
【氏名又は名称】宮田 英毅
(74)【代理人】
【識別番号】100089118
【氏名又は名称】酒井 宏明
(72)【発明者】
【氏名】段沛
【審査官】後澤 瑞征
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-101464(JP,A)
【文献】特開平05-129980(JP,A)
【文献】特開2004-312600(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第109818596(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第101424730(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 17/11
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基地局マルチチャネル位相同期装置であって、
それぞれにはいずれもクロック信号をリファレンスとして局部発振信号を発生させるための局部発振回路が設けられている複数のチャネルと、
各前記チャネルに前記クロック信号を提供するように各前記チャネルにいずれも接続されているクロック回路と、
各チャネルのリファレンスチャネルに対する位相差を取得し、前記位相差に基づいて、各前記チャネルに対して位相較正を行うように構成される較正回路とを含み、
前記較正回路は、
各前記チャネルに較正信号を発射し、複数の前記チャネルのうちの一つをリファレンスチャネルとして選択し、且つ前記較正信号に基づいて、残りの前記チャネルの前記リファレンスチャネルに対する位相差を計算するように構成される取得モジュールであって、前記較正信号は、各前記
チャネルのアンテナポートからカップリングしてコンバイナに入り、較正チャネルを介して前記較正回路に戻る取得モジュールと、
前記位相差に基づいて、各前記チャネルに対して位相較正を行うように構成される較正モジュールとを含む、
基地局マルチチャネル位相同期装置。
【請求項2】
前記位相差は、各前記チャネルの局部発振位相差及び配線位相差を含む、請求項1に記載の基地局マルチチャネル位相同期装置。
【請求項3】
前記局部発振位相差は、電圧制御発振器位相差、周波数分割器位相差及び位相検出器位相差を含み、前記配線位相差は、局部発振配線位相差及びクロック配線位相差を含む、請求項2に記載の基地局マルチチャネル位相同期装置。
【請求項4】
前記装置は、判断モジュールをさらに含み、前記判断モジュールは、
予め設定された位相較正条件を満たすか否かを判断し、
前記予め設定された位相較正条件を満たす場合に、前記取得モジュールによる基地局の各チャネルのリファレンスチャネルに対する位相差の取得をトリガするように構成される、請求項1に記載の基地局マルチチャネル位相同期装置。
【請求項5】
前記予め設定された位相較正条件は、
前記基地局のシステム温度変化が予め設定された温度を超えること、及び/又は、
予め設定された較正時間に達することである、請求項4に記載の基地局マルチチャネル位相同期装置。
【請求項6】
各前記チャネルにおける局部発振回路の局部発振配線の長さは同じである、請求項1に記載の基地局マルチチャネル位相同期装置。
【請求項7】
前記クロック回路が各前記チャネルに接続されるクロック配線の長さは同じである、請求項1に記載の基地局マルチチャネル位相同期装置。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか一項に記載の基地局マルチチャネル位相同期装置を採用してマルチチャネル位相同期を行う基地局マルチチャネル位相同期方法であって、
基地局の各チャネルのリファレンスチャネルに対する位相差を取得することと、
前記較正信号は、各前記
チャネルのアンテナポートからカップリングしてコンバイナに入り、較正チャネルを介して前記較正回路に戻るように、各前記チャネルに較正信号を発射することと、
複数の前記チャネルのうちの一つをリファレンスチャネルとして選択し、且つ前記較正信号に基づいて、残りの前記チャネルの前記リファレンスチャネルに対する位相差を計算することと、
前記位相差に基づいて、各前記チャネルに対して位相較正を行うこととを含む、基地局マルチチャネル位相同期方法。
【請求項9】
前記位相差は、各前記チャネルの局部発振位相差及び配線位相差を含む、請求項8に記載の基地局マルチチャネル位相同期方法。
【請求項10】
前記局部発振位相差は、電圧制御発振器位相差、周波数分割器位相差及び位相検出器位相差を含み、前記配線位相差は、局部発振配線位相差及びクロック配線位相差を含む、請求項9に記載の基地局マルチチャネル位相同期方法。
【請求項11】
前記方法は、
予め設定された位相較正条件を満たすか否かを判断することと、
前記予め設定された位相較正条件を満たす場合に、基地局の各チャネルのリファレンスチャネルに対する位相差を取得することとをさらに含む、請求項8に記載の基地局マルチチャネル位相同期方法。
【請求項12】
前記予め設定された位相較正条件は、
前記基地局のシステム温度変化が予め設定された温度を超えること、及び/又は、
予め設定された較正時間に達することである、請求項11に記載の基地局マルチチャネル位相同期方法。
【請求項13】
請求項1から7のいずれか一項に記載の基地局マルチチャネル位相同期装置であるマルチチャネル位相同期装置を含む、基地局。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は通信技術分野に関し、特に基地局マルチチャネル位相同期装置、方法及び基地局に関する。
【背景技術】
【0002】
最新の通信技術は信号の位相制御に対してより高い要求を出しており、Massive多入力多出力(Multiple-Input Multiple-Output、MIMOと略称される)、beamforming技術はいずれもアレイユニットの位相及び振幅を精確に制御することができることを要求している。
【0003】
チャネル間の位相の同期状態を維持するために、関連技術では、大多数の基地局は共通局部発振方式を採用している。しかし、システムアレイユニット数の絶えない増加、チャネル数の増加に伴い、共通局部発振方式においては、局部発振の配布及び配線を設計しにくく、そしてPCB面積が占有され、機器全体の体積の増大を招く。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示が解決しようとする技術課題は、基地局マルチチャネル位相同期問題を解決することであり、本開示は、基地局マルチチャネル位相同期装置、方法及び基地局を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の実施例による基地局マルチチャネル位相同期装置は、それぞれにはいずれもクロック信号をリファレンスとして局部発振信号を発生させるための局部発振回路が設けられている複数のチャネルと、各前記チャネルに前記クロック信号を提供するように各前記チャネルにいずれも接続されているクロック回路と、各チャネルのリファレンスチャネルに対する位相差を取得し、前記位相差に基づいて、各前記チャネルに対して位相較正を行うように構成される較正回路とを含み、前記較正回路は、各前記チャネルに較正信号を発射し、複数の前記チャネルのうちの一つをリファレンスチャネルとして選択し、且つ前記較正信号に基づいて、残りの前記チャネルの前記リファレンスチャネルに対する位相差を計算するように構成される取得モジュールであって、前記較正信号は、各前記チャネルのアンテナポートからカップリングしてコンバイナに入り、較正チャネルを介して前記較正回路に戻る取得モジュールと、前記位相差に基づいて、各前記チャネルに対して位相較正を行うように構成される較正モジュールとを含む。
【0006】
本開示の実施例による基地局マルチチャネル位相同期装置によれば、各チャネルには、局部発振回路が単独に設置され、且つ全てのチャネルは一つの同期クロックを共用する。それにより、共同のクロックリファレンスによって各チャネル位相のある程度での同期を実現させる。そして、システムの配線をより便利で、柔軟にすることができる。そして、クロック信号の周波数が比較的に低く、挿入損失が小さいため、増幅器を設置する必要がなく、スプリアスの影響を過度に考慮する必要もなく、基地局全体の構造を効果的に簡略化し、且つ基地局マルチチャネル位相同期の問題を解決した。また、各チャネルに対してリアルタイムな位相較正を行うことにより、ハードウェアを簡略化した後に位相同期の性能に影響を与えないよう確保することができる。
【0007】
本開示の実施例による基地局マルチチャネル位相同期方法によれば、前記基地局マルチチャネル同期方法は、以上に記載の基地局マルチチャネル位相同期装置を採用して、マルチチャネル位相同期を行い、前記方法は、基地局の各チャネルのリファレンスチャネルに対する位相差を取得することと、前記位相差に基づいて、各前記チャネルに対して位相較正を行うこととを含む。
【0008】
本開示の基地局マルチチャネル位相同期方法によれば、各チャネルには、局部発振回路が単独に設置され、且つ全てのチャネルは一つの同期クロックを共用する。それにより、共同のクロックリファレンスによって各チャネル位相のある程度での同期を実現させる。それにより、システムの配線をより便利で、柔軟にすることができる。そして、クロック信号の周波数が比較的に低く、挿入損失が小さいため、増幅器を設置する必要がなく、スプリアスの影響を過度に考慮する必要もなく、基地局全体の構造を効果的に簡略化し、且つ基地局マルチチャネル位相同期の問題を解決した。また、各チャネルに対してリアルタイムな位相較正を行うことにより、ハードウェアを簡略化した後に位相同期の性能に影響を与えないよう確保することができる。
【0009】
本開示の実施例による基地局は、以上に記載の基地局マルチチャネル位相同期装置であるマルチチャネル位相同期装置を含む。
【0010】
本開示の実施例による基地局によれば、各チャネルには、いずれも局部発振回路が単独に設けられており、且つ各チャネルは一つの同期クロックを共用する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】関連技術における共通局部発振方式のシステム概略図である。
【
図2】関連技術における共通局部発振方式のシステム位相差分析図である。
【
図3】本開示の実施例による共通クロック方式のシステム概略図である。
【
図4】本開示の実施例による共通クロック方式のシステム位相差分析図である。
【
図5】本開示の実施例による基地局マルチチャネル位相同期方法のフローチャートである。
【
図6】本開示の実施例による基地局の各チャネルのリファレンスチャネルに対する位相差を取得する方法のフローチャートである。
【
図7】本開示の実施例による基地局マルチチャネル位相同期方法のフローチャートである。
【
図8】本開示の実施例による基地局マルチチャネル位相同期方法のフローチャートである。
【
図9】関連技術における参照用のシステムの具体例の概略図である。
【
図10】本開示の実施例による共通クロックリファレンスの具体例の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本開示が所定目的を達成するために採用した技術手段及び効果をさらに説明するために、以下では、添付図面及び好適な実施例を結び付けながら、本開示を以下のように詳しく説明する。
【0013】
関連技術では、基地局の各チャネル間の位相の同期状態を維持するために、大多数の基地局は共通局部発振方式を採用しており、
図1に示すとおりである。共通局部発振方式における基地局システムは、同一のクロック発生器122、PLL(局部発振器)101、局部発振配布器102及び増幅回路103、109、114で構成される。
【0014】
共通局部発振方式の最大な特徴は、機器全体の全ての送受信チャネルの局部発振信号がいずれも同一の局部発振器101から来ていることであり、それにより、各チャネル周波数ミキサに到達した位相が同じであるよう確保することができ、ベースバンド信号位相が一致する限り、N個のチャネルTX1~Nの発射位相が同じであるよう確保することができる。
【0015】
共通局部発振方式には、較正が必要であり、これは局部発振配布器の各チャネルの印刷回路板(Printed Circuit Board、PCBと略称される)の配線及び端子等の差異が固定位相差を導入し、較正した後にベースバンドで補償する必要があるからである。共通局部発振方式の位相差の経時的変化が極めて小さいため、共通局部発振の較正は簡単であり、初期化較正した後に数時間おきに較正すればよい。
【0016】
図1に示すように、共通局部発振方式を採用する場合に、同一のPLL(局部発振器)によってNチャネルの送受信リンクに局部発振信号を提供する必要があり、このように、局部発振信号が各チャネルに配布し到達する時、レベルが低下し、加えて、局部発振信号の周波数が高く、PCB損失が大きく、増幅回路を増やす必要があるなどして、このように、システムにさらなるチップ面積を増やす必要があって、消費電力及びコストも増える。それとともに、局部発振信号の周波数が比較的高く、局部発振配布配線はシステムにスプリアスを導入しやすく、システムに不確実なリスクをもたらす。システムアレイユニット数の絶えない増加、チャネル数の増加に伴い、64チャネル又は128チャネルの機器全体の局部発振配布及び配線問題と面積との矛盾はほとんど解決し難い。
【0017】
図3に示すように、本開示の実施例による基地局マルチチャネル位相同期装置は、複数のチャネル、クロック回路及び較正回路を含む。
【0018】
具体的には、
図3に示すように、基地局は複数のチャネルを有し、各チャネルには、いずれも局部発振信号を発生させるための局部発振回路が設けられている。クロック回路は、各チャネルにクロック信号を提供するように各チャネルにいずれも接続されている。較正回路は、各チャネルのリファレンスチャネルに対する位相差を取得し、位相差に基づいて各チャネルに対して位相較正を行うように構成される。
【0019】
本開示の実施例による基地局マルチチャネル位相同期装置によれば、各チャネルには、局部発振回路が単独に設置され、且つ全てのチャネルは一つの同期クロックを共用する。そして、共同のクロックリファレンスによって各チャネル位相のある程度での同期を実現させる。それにより、システムの配線をより便利で、柔軟にすることができる。そして、クロック信号の周波数が比較的に低く、挿入損失が小さいため、増幅器を設置する必要がなく、スプリアスの影響を過度に考慮する必要もなく、基地局全体の構造を効果的に簡略化し、且つ基地局マルチチャネル位相同期の問題を解決した。また、各チャネルに対してリアルタイムな位相較正を行うことにより、ハードウェアを簡略化した後に位相同期の性能に影響を与えないよう確保することができる。
【0020】
本開示のいくつかの実施例によれば、較正回路は、取得モジュールと較正モジュールとを含む。
【0021】
そのうち、取得モジュールは、基地局の各チャネルのリファレンスチャネルに対する位相差を取得するように構成される。
【0022】
較正モジュールは、位相差に基づいて、各チャネルに対して位相較正を行うように構成される。
【0023】
なお、本開示では、各チャネルには、局部発振回路が単独に設置され、且つ各チャネルは同一のクロック回路を共用し、本開示を共通クロックリファレンス方式と定義する。
【0024】
図6に示すように、本開示のいくつかの実施例によれば、取得モジュールは、具体的には、
各チャネルに較正信号を発射し、
複数のチャネルのうちの一つをリファレンスチャネルとして選択し、且つ較正信号に基づいて、残りのチャネルのリファレンスチャネルに対する位相差を計算するように構成される。
【0025】
図3に示すように、デジタルベースバンドプロセッシングユニット208は、各チャネルに一つの特殊な較正信号を送信することができ、較正信号は、各チャネルを介して較正チャネル226からデジタルベースバンドプロセッシングユニット208に戻る。複数のチャネルから一つのチャネルをリファレンスチャネルとして選択し、リファレンスチャネルを基準とし、残りのチャネルのリファレンスチャネルに対する位相差を計算する。
【0026】
それにより、デジタルベースバンドプロセッシングユニット208は、位相差に基づいて、各チャネルに対して位相補償を行い、全てのチャネルの位相をリファレンスチャネルと整列させることができる。
【0027】
本開示のいくつかの実施例では、位相差は、各チャネルの局部発振位相差と配線位相差とを含んでもよい。
【0028】
そのうち、局部発振位相差は、電圧制御発振器位相差、周波数分割器位相差及び位相検出器位相差を含んでもよく、配線位相差は、局部発振配線位相差及びクロック配線位相差を含んでもよい。
【0029】
図4に示すように、PLL(局部発振器)は、位相ノイズを導入する可能性があり、位相ノイズは、VCO(電圧制御発振器)、周波数分割器及び位相検出器に存在している。これらのノイズ成分は、PLL(局部発振器)の位相がリファレンスクロックの位相からずれることを引き起こす。そのため、異なるPLL出力位相には、位相変動Δpllが存在している可能性がある。クロック回路(CLK)からPLLまでの配線はΔclkpathを導入する可能性があり、局部発振回路配線はΔLO_pathを導入する可能性がある。つまり、本開示に採用されている共通リファレンス方式では、位相変動は、Δpll、Δclkpath及びΔLO_pathを含む。そのうち、Δclkpath及びΔLO_pathは、いずれも配線によって導入される位相差に属し、実験から分かるように、PCB配線の長さ、太さ、材質、曲がり角は、いずれも位相差を導入する可能性があり、同軸ケーブルの回転ジョイント、長さ、材質も位相差を導入する可能性がある。
【0030】
各チャネルのリファレンスチャネルに対する位相差を計算することによって、該位相差に基づいて、各チャネルに対して位相補償を行い、全てのチャネル位相をリファレンスチャネルと整列させることができる。
【0031】
本開示のいくつかの実施例では、装置は、判断モジュールをさらに含み、判断モジュールは、
予め設定された位相較正条件を満たすか否かを判断し、
予め設定された位相較正条件を満たす場合に、取得モジュールによる基地局の各チャネルのリファレンスチャネルに対する位相差の取得をトリガするように構成される。
【0032】
本開示のいくつかの実施例によれば、予め設定された位相較正条件は、基地局のシステム温度変化が予め設定された温度を超えること、及び/又は、予め設定された較正時間に達することである。
【0033】
つまり、基地局のシステム温度変化が予め設定された温度を超える時、各チャネルに対して位相較正補償を行い、又は、前回の較正補償との時間間隔が予め設定された較正時間に達する時、各チャネルに対して位相較正補償を行い、又は、基地局のシステム温度変化が予め設定された温度を超え、且つ前回の較正補償との時間間隔が予め設定された較正時間に達する時、各チャネルに対して位相較正補償を行う。
【0034】
なお、前述したように、本開示に採用されている共通クロックリファレンス方式では、位相変動は、Δpll、Δclkpath及びΔLO_pathを含む。これらの位相差が一定であるものであるが、温度変化で、位相差が変動する可能性があるため、共通リファレンス方式における機器全体は、較正後に各チャネルの位相がすでに整列したが、温度変化が比較的に大きいことが発生した場合に、Δclkpath及びΔLO_pathによる位相差変化が大きすぎるため、各チャネル間の位相差が相応な要求を超えるようになり、トラフィックに影響を与える可能性がある。そのため、機器全体の設計では、Δclkpath及びΔLO_pathが可能な限り小さくなるようにPCB配線を制御する必要があるが、システムの複雑性で、Δclkpath及びΔLO_pathを完全に除去することが不可能であり、較正補償を行う必要がある。PLLによる位相差Δpllも時間及び温度に伴って随時変化し、較正によって補償する必要もある。
【0035】
本開示のいくつかの実施例によれば、各チャネルにおける局部発振回路の局部発振配線の長さは同じである。各チャネルにおける局部発振回路の局部発振配線の長さが同じであるように構成することによって、各チャネルにおける異なるPLL出力位相に存在している位相変動Δpllを低減することができ、それによって各チャネルの位相一致性の向上に役立つ。
【0036】
本開示のいくつかの実施例では、クロック回路が各前記チャネルに接続するクロック配線の長さは同じである。クロック回路が各前記チャネルに接続するクロック配線の長さが同じであるように構成することによって、クロック回路(CLK)からPLLまでの配線によって導入されるクロック配線位相差Δclkpathを低減することができ、それによって各チャネルの位相一致性の向上に役立つ。
【0037】
図3及び
図5に示すように、本開示による基地局マルチチャネル位相同期方法によれば、基地局マルチチャネル位相同期方法は、以上に記載の基地局マルチチャネル位相同期装置を採用して、マルチチャネル位相同期を行い、方法は、以下のステップを含む。
【0038】
S101:基地局の各チャネルのリファレンスチャネルに対する位相差を取得する。
【0039】
S102:位相差に基づいて、各チャネルに対して位相較正を行う。
【0040】
本開示の基地局マルチチャネル位相同期方法によれば、各チャネルには、局部発振回路が単独に設置され、且つ全てのチャネルは一つの同期クロックを共用する。そして、共同のクロックリファレンスによって各チャネル位相のある程度での同期を実現させる。それにより、システムの配線をより便利で、柔軟にすることができる。そして、クロック信号の周波数が比較的に低く、挿入損失が小さいため、増幅器を設置する必要がなく、スプリアスの影響を過度に考慮する必要もなく、基地局全体の構造を効果的に簡略化し、且つ基地局マルチチャネル位相同期の問題を解決した。また、各チャネルに対してリアルタイムな位相較正を行うことにより、ハードウェアを簡略化した後に位相同期の性能に影響を与えないよう確保することができる。
【0041】
図6に示すように、本開示のいくつかの実施例によれば、基地局の各チャネルのリファレンスチャネルに対する位相差を取得することは、以下のステップを含む。
【0042】
S201:各チャネルに較正信号を発射する。
【0043】
図3に示すように、デジタルベースバンドプロセッシングユニット208は、各チャネルに一つの特殊な較正信号を送信することができ、較正信号は、各チャネルを介して較正チャネル226からデジタルベースバンドプロセッシングユニット208に戻る。
【0044】
S202:複数のチャネルのうちの一つをリファレンスチャネルとして選択し、且つ較正信号に基づいて、残りのチャネルのリファレンスチャネルに対する位相差を計算する。
【0045】
図3に示すように、複数のチャネルから一つのチャネルをリファレンスチャネルとして選択し、リファレンスチャネルを基準とし、残りのチャネルのリファレンスチャネルに対する位相差を計算する。
【0046】
それにより、デジタルベースバンドプロセッシングユニット208は、位相差に基づいて、各チャネルに対して位相補償を行い、全てのチャネルの位相をリファレンスチャネルと整列させることができる。
【0047】
本開示のいくつかの実施例では、位相差は、各チャネルの局部発振位相差と配線位相差とを含んでもよい。
【0048】
そのうち、局部発振位相差は、電圧制御発振器位相差、周波数分割器位相差及び位相検出器位相差を含んでもよく、配線位相差は、局部発振配線位相差及びクロック配線位相差を含んでもよい。
【0049】
なお、
図2に示すように、関連技術に採用されている共通局部発振方式では、PLL(局部発振器)から周波数ミキサまでの配線差異は、位相変動ΔLO_pathを導入する可能性がある。それにより分かるように、共通局部発振方式における位相変動は、局部発振回路配線によって導入されるΔLO_pathのみがあり、これは従来の方式が複雑な局部発振方式によって位相に影響を与える要素を少なくしたからである。
【0050】
本開示に採用されている共通クロック方式では、
図4に示すように、PLL(局部発振器)は、位相ノイズを導入する可能性があり、位相ノイズは、VCO(電圧制御発振器)、周波数分割器及び位相検出器に存在している。これらのノイズ成分は、PLL(局部発振器)の位相がリファレンスクロックの位相からずれることを引き起こす。そのため、異なるPLL出力位相には、位相変動Δpllが存在している可能性がある。クロック回路(CLK)からPLLまでの配線はΔclkpathを導入する可能性があり、局部発振回路配線はΔLO_pathを導入する可能性がある。つまり、本開示に採用されている共通リファレンス方式では、位相変動は、Δpll、Δclkpath及びΔLO_pathを含む。そのうち、Δclkpath及びΔLO_pathは、いずれも配線によって導入される位相差に属し、実験から分かるように、PCB配線の長さ、太さ、材質、曲がり角は、いずれも位相差を導入する可能性があり、同軸ケーブルの回転ジョイント、長さ、材質も位相差を導入する可能性がある。
【0051】
各チャネルのリファレンスチャネルに対する位相差を計算することによって、該位相差に基づいて、各チャネルに対して位相補償を行い、全てのチャネル位相をリファレンスチャネルと整列させることができる。
【0052】
図7に示すように、本開示のいくつかの実施例では、方法は、以下のステップをさらに含む。
【0053】
S301:予め設定された位相較正条件を満たすか否かを判断する。
【0054】
S302:予め設定された位相較正条件を満たす場合に、基地局の各チャネルのリファレンスチャネルに対する位相差を取得する。
【0055】
本開示のいくつかの実施例によれば、予め設定された位相較正条件は、基地局のシステム温度変化が予め設定された温度を超えること、及び/又は、予め設定された較正時間に達することである。
【0056】
つまり、基地局のシステム温度変化が予め設定された温度を超える時、各チャネルに対して位相較正補償を行い、又は、前回の較正補償との時間間隔が予め設定された較正時間に達する時、各チャネルに対して位相較正補償を行い、又は、基地局のシステム温度変化が予め設定された温度を超え、且つ前回の較正補償との時間間隔が予め設定された較正時間に達する時、各チャネルに対して位相較正補償を行う。
【0057】
なお、前述したように、本開示に採用されている共通クロックリファレンス方式では、位相変動は、Δpll、Δclkpath及びΔLO_pathを含む。これらの位相差が一定であるものであるが、温度変化で、位相差が変動する可能性があるため、共通リファレンス方式における機器全体は、較正後に各チャネルの位相がすでに整列したが、温度変化が比較的に大きいことが発生した場合に、Δclkpath及びΔLO_pathによる位相差変化が大きすぎるため、各チャネル間の位相差が相応な要求を超えるようになり、トラフィックに影響を与える可能性がある。そのため、機器全体の設計では、Δclkpath及びΔLO_pathが可能な限り小さくなるようにPCB配線を制御する必要があるが、システムの複雑性で、Δclkpath及びΔLO_pathを完全に除去することが不可能であり、較正補償を行う必要がある。PLLによる位相差Δpllも時間及び温度に伴って随時変化し、較正によって補償する必要もある。
【0058】
図8に示すように、各チャネルに対する較正補償をトリガする要素は時間及び温度がある。機器全体の温度変化が一定の範囲を超えるか又は一定の時間を経過した場合に、位相較正補償を開始する。事業者が出している位相誤差が5°以内にあるという要求に従うと、機器全体の温度変化が10℃を超え、時間変化が30分であることを較正トリガ条件に設定することができる。
図8に示すように、まず、システムをパワーオンした後に初期化較正を行う。基地局が動作する間、システムCPUは、機器全体の温度をリードバックし、温度変化が10℃を超える場合に、一回の位相較正を行う。それとともに、前回の位相較正から30分が経る場合に、システムは一回の位相較正を行う。それにより、共通リファレンス方式の基地局システムトラフィック等のサービスが正常であるよう確保することができる。
【0059】
図3及び
図4に示すように、信号は、アンテナポートからカップリングして、Nチャネルのコンバイナに入り、較正チャネルを介してベースバンドに入り、デジタルベースバンドプロセッシングユニット208は、Nチャネルのリファレンスチャネルに対する位相差ΔPhaseNを計算し、ベースバンド信号において位相補償ΔCalNを行う。補償後のNチャネルと基準チャネルとの位相差を0にし、そのうち、
ΔPhaseN=Δpll+Δclkpath+ΔLO_path;
ΔPhaseN+ΔCalN=0。
【0060】
本開示の共通クロックリファレンス方式は、5G基地局におけるMassive及びbeamformingの位相に対する要求を満たすことができ、それとともに、レイアウトがより柔軟であり、体積が小さく、そして、コスト、消費電力を削減することができ、マルチチャネル(64又は128)のビームフォーミングに適用することができる。
【0061】
図10は、共通クロックリファレンス方式における機器全体の送受信システムの回路の具体例を示した。それとともに、比較として、
図9は、Nチャネル共通局部発振方式(関連技術方式)における機器全体の送受信システムの回路の具体例を示した。
図10では、システムは2T2R送受信集積チップを使用し、合計N個の発射チャネル、N個の受信チャネルがある。同一のクロックチップは、N/2個の集積チップにリファレンスを提供し、各集積チップにおける二つのチャネルは共通局部発振である。N個の受信チャネルから一つのチャネルを発射位相較正チャネルとして選択し(このように、模擬チャネル数を節約することができ)、Nチャネルはコンバイナを介して較正チャネルに入り(Nチャネルを同時に較正することができ、このように、較正效率を向上させることができ)、このように、発射較正を完成させた。一つの発射チャネルを受信位相較正チャネルとして選択し、コンバイナを介して較正チャネルを各受信チャネルに割り当て、受信チャネルの較正を完成させる。機器全体のシングルボード配線では、クロック配線、無線周波数配線及びケーブルの長さが一致するように可能な限り確保することが要求される。
【0062】
図9と
図10の具体例の比較から分かるように、
本開示に採用されている共通リファレンス方式は、システムリスクが低く、スプリアスがより少なく、チップ数、コスト、電力消費、面積がいずれも関連技術に採用されている共通局部発振方式システムより小さく、そして、少なくとも一つのPLLチップ、Nチャネルの増幅器及びN/4個の電力分割器を節約することができる。また、transceiver及び無線周波数サンプリングチップの内部PLLに対する浪費を減少させることもできる。
【0063】
本出願に採用されている共通リファレンス方式及び関連技術に採用されている共通局部発振方式は、いずれも配線に対して要求を出しており、共通リファレンス方式はクロック配線の難しさを上げることになるが、共通局部発振方式は局部発振配線の複雑性を上げることになる。局部発振信号がクロック信号より周波数が高いため、全体的には、共通リファレンスの配線に対する要求は低い。
【0064】
図3に示すように、本開示の実施例による基地局は、以上に記載の基地局マルチチャネル位相同期装置であるマルチチャネル位相同期装置を含む。
【0065】
そのうち、各チャネルには、いずれも局部発振信号を発生させるための局部発振回路が設けられている。クロック回路は、各チャネルにクロック信号を提供するように各チャネルにいずれも接続されている。較正回路は、各チャネルのリファレンスチャネルに対する位相差を取得し、位相差に基づいて各チャネルに対して位相較正を行うために用いられる。
【0066】
具体的には、
図3に示すように、本開示に採用されている共通クロックリファレンス方式の基地局は、クロック発生及び配布回路、送受信回路及びシステム位相較正の3つの部分で構成される。
【0067】
そのうち、
図3に示すように、クロック発生及び配布回路は、主にクロック発生器224、クロック配布器225、クロックチップから各チャネルまでの配線204、211、219を有する。該回路の主な作用は、リカバリクロックをスプリアスをフィルタ除去した後に、各チャネルに配布することである。204、211、219における位相遅延が一致する限り、クロックの各チャネル局部発振器に到達する位相が一致するよう確保することができる。
【0068】
送受信回路は、各チャネル周波数合成器201、209、216、局部発振配線205、212、220及び無線周波数送受信リンクにおける他のデバイスを含む。周波数合成器1~3は、クロック信号をリファレンスとして局部発振LO信号を発生させ、ベースバンド信号とミキシングした後に、無線周波数リンクを介して送信する。理想的な状態では、局部発振信号位相とリファレンスが一致し、配線と他のデバイスとの位相遅延が一致すれば、アンテナまでの各チャネル位相は同じである。
【0069】
本開示の実施例による基地局によれば、各チャネルの局部発振回路は相対的に独立し、且つ全てのチャネルは一つの同期クロックを共用する。それにより、システムの配線をより便利で、柔軟にすることができる。そして、クロック信号の周波数が比較的に低く、挿入損失が小さいため、増幅器を設置する必要がなく、スプリアスの影響を過度に考慮する必要もなく、基地局マルチチャネル位相同期の問題を効果的に解決し、5G基地局におけるMassive及びbeamformingの位相に対する要求を満たすことができ、マルチチャネル(64又は128)のビームフォーミングに適用することができる。
【0070】
発明を実施するための形態の説明によって、本開示が所定目的を達成するために採用した技術手段及び効果をより深く且つ具体的に理解することができるはずであり、しかしながら、添付された図面は、参照及び説明を提供するためのものに過ぎず、本開示を制限するためのものではない。