(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-07
(45)【発行日】2023-12-15
(54)【発明の名称】高い損傷耐性を備えた、ジルコン適合性を有するイオン交換可能なガラス
(51)【国際特許分類】
C03C 3/093 20060101AFI20231208BHJP
C03C 3/095 20060101ALI20231208BHJP
C03C 21/00 20060101ALI20231208BHJP
【FI】
C03C3/093
C03C3/095
C03C21/00 101
(21)【出願番号】P 2022007765
(22)【出願日】2022-01-21
(62)【分割の表示】P 2021107349の分割
【原出願日】2013-05-28
【審査請求日】2022-01-21
(32)【優先日】2012-05-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2013-01-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】397068274
【氏名又は名称】コーニング インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100073184
【氏名又は名称】柳田 征史
(72)【発明者】
【氏名】マシュー ジョン デジネカ
(72)【発明者】
【氏名】アダム ジェームズ エリソン
(72)【発明者】
【氏名】ジョン クリストファー マウロ
【審査官】末松 佳記
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第04192688(US,A)
【文献】米国特許出願公開第2003/0129329(US,A1)
【文献】国際公開第2011/022639(WO,A2)
【文献】国際公開第2011/022661(WO,A2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C03C 1/00 - 14/00
C03C 21/00
INTERGLAD
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
66モル%~74モル%のSiO
2;
9モル%~22モル%のAl
2O
3;
少なくとも10モル%のR
2O、ここでR
2Oはアルカリ金属酸化物の合計;
3モル%~4.5モル%のB
2O
3
;
0モル%超のZnO;及び
少なくとも0.1モル%のMgO;を含み、
B
2O
3-(R
2O-Al
2O
3)≧3モル%である、
ガラス。
【請求項2】
MgO+ZnOが6モル%以下である、請求項1に記載のガラス。
【請求項3】
Na
2Oをさらに含む、請求項1記載のガラス。
【請求項4】
Li
2Oをさらに含む、請求項1記載のガラス。
【請求項5】
K
2Oをさらに含む請求項1記載のガラス。
【請求項6】
0モル%から5モル%のK
2Oさらに含む請求項1記載のガラス。
【請求項7】
前記ガラスがイオン交換され、少なくとも600MPaの圧縮応力下の層を有し、該層が、前記ガラスの表面から前記ガラス内に少なくとも30μmの層深さまで延在する、請求項1記載のガラス。
【請求項8】
前記圧縮応力が少なくとも800MPaである、請求項7記載のガラス。
【請求項9】
前記ガラスは、該ガラスが30キロポアズ(3.0kPa・s)~40キロポアズ(4.0kPa・s)の範囲の粘度を有する温度に等しいジルコン破壊温度を有する、請求項1記載のガラス。
【請求項10】
前記ガラスがイオン交換され、20重量キログラム(kgf)(約196N)から30重量キログラム(kgf)(約294N)の範囲のビッカース亀裂開始閾値を有する、請求項1記載のガラス。
【請求項11】
前記ガラスがイオン交換され、30kgf(約294N)から35kgf(約343N)の範囲のビッカース亀裂開始閾値を有する、請求項1記載のガラス。
【請求項12】
66モル%~74モル%のSiO
2;
9モル%~22モル%のAl
2O
3;
少なくとも10モル%のR
2O、ここでR
2Oはアルカリ金属酸化物の合計;
3モル%~4.5モル%のB
2O
3;
0モル%超のZnO;及び
少なくとも0.1モル%のMgO;を含み、
B
2O
3-(R
2O-Al
2O
3)≧3モル%であり、
少なくとも600MPaの圧縮応力下の層を有する、
イオン交換されたガラス物品。
【請求項13】
MgO+ZnOが6モル%以下である、請求項12に記載のイオン交換されたガラス物品。
【請求項14】
Na
2Oを含む、請求項12記載のイオン交換されたガラス物品。
【請求項15】
Li
2Oを含む、請求項12記載のイオン交換されたガラス物品。
【請求項16】
K
2Oをさらに含む請求項12記載のイオン交換されたガラス物品。
【請求項17】
0モル%から5モル%のK
2Oさらに含む請求項12記載のイオン交換されたガラス物品。
【請求項18】
前記圧縮応力下の層が、ガラスの表面から前記ガラス内に少なくとも30μmの層深さまで延在する、請求項12記載のイオン交換されたガラス物品。
【請求項19】
前記圧縮応力が少なくとも800MPaである、請求項18記載のイオン交換されたガラス物品。
【請求項20】
ガラスが、該ガラスが30キロポアズ(3.0kPa・s)~40キロポアズ(4.0kPa・s)の範囲の粘度を有する温度に等しいジルコン破壊温度を有する、請求項12記載のイオン交換されたガラス物品。
【請求項21】
前記イオン交換されたガラス物品が、20重量キログラム(kgf)(約196N)から30重量キログラム(kgf)(約294N)の範囲のビッカース亀裂開始閾値を有する、請求項12記載のイオン交換されたガラス物品。
【請求項22】
前記イオン交換されたガラス物品が、30kgf(約294N)~35kgf(約343N)の範囲のビッカース亀裂開始閾値を有する、請求項12記載のイオン交換されたガラス物品。
【発明の詳細な説明】
【関連出願の相互参照】
【0001】
本出願は、米国特許法第119条の下で、2012年5月31日出願の米国仮特許出願第61/653489号及び2013年1月4日出願の米国仮特許出願第61/748981号の優先権の利益を主張するものであり、本出願は上記出願の内容に依存するものであり、参照によってその全体を援用する。
【技術分野】
【0002】
本開示は、イオン交換による化学強化が可能であり、かつそれ自体の、即ち「固有の(native)」損傷耐性を有するガラスに関する。より具体的には本開示は、イオン交換によって強化され、かつ摩耗、引っ掻き、押込み及びその他の形態の強い接触による損傷に対する耐性を有する、このようなガラスに関する。
【背景技術】
【0003】
イオン交換処理はガラスの有意な改良を提供し、この処理によってガラスを、強い衝撃又は押込みによる損傷に耐えられるように強化できる。現在まで、アルカリ及びアルカリ土類陽イオン等の網目構造改質剤を含有するガラスが用いられてきた。これらの陽イオンは、非架橋酸素(1つのケイ素原子にのみ結合された酸素)を形成し、これはイオン交換したガラスの摩耗、引っ掻き等による損傷に対する耐性を低下させる。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
本開示は、摩耗、引っ掻き、押込み等が引き起こす損傷に対して高い耐性を有するイオン交換可能なガラスを提供する。このガラスは、アルミナ、B2O3、及びアルカリ金属酸化物を含み、3配位のホウ素陽イオンを含有する。このガラスはイオン交換すると、少なくとも10重量キログラム(kgf)(約98N)のビッカース亀裂開始閾値を有する。
【0005】
従って本開示の一態様は、少なくとも約50モル%のSiO2;少なくとも約10モル%のR2O(ここでR2OはNa2Oを含む);Al2O3(Al2O3(モル%)<R2O(モル%));及びB2O3(B2O3(モル%)-(R2O(モル%)-Al2O3(モル%))≧3モル%)を含む、イオン交換可能なガラスを提供することである。
【0006】
本開示の第2の態様は、少なくとも約50モル%のSiO2;少なくとも約10モル%のR2O(ここでR2OはNa2Oを含む);Al2O3;及びB2O3(B2O3(モル%)-(R2O(モル%)-Al2O3(モル%))≧3モル%)を含むガラスであって、そのジルコン破壊温度が、約25キロポアズ(2.5kPa・s)~約40キロポアズ(4.0kPa・s)の範囲の粘度を有する温度の範囲内にある、ガラスを提供することである。
【0007】
本開示の第3の態様は、少なくとも約10kgf(約98N)のビッカース亀裂開始閾値を有するイオン交換ガラスを提供することである。このガラスは、少なくとも約50モル%のSiO2;少なくとも約10モル%のR2O(ここでR2OはNa2Oを含む);Al2O3(Al2O3(モル%)<R2O(モル%));及びB2O3(B2O3(モル%)-(R2O(モル%)-Al2O3(モル%))≧3モル%)を含む。
【0008】
第4の態様は、少なくとも約50モル%のSiO2;少なくとも約10モル%のR2O(ここでR2OはNa2Oを含む);Al2O3;及び配位ホウ素陽イオンを含有する少なくとも2.7モル%のB2O3(B2O3-(R2O-Al2O3)≧3モル%)を含む、ガラスを提供することである。
【0009】
これらの及び他の態様、利点及び突出した特徴は、以下の詳細な説明、添付の図面及び添付の請求項から明らかとなるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本明細書に記載のガラスの試料について、核磁気共鳴(NMR)スペクトルをプロットしたグラフ
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下の説明では、図面に示す複数の図を通して、類似する又は対応する部品は類似の参照符号で示す。また、そうでないことが明記されていない限り、「上部」「底部」「外側」「内側」等は便宜上使用する語句であり、限定する用語として解釈されるべきではないことを理解されたい。また、ある群が、複数の要素の群及びそれらの組合せのうちの少なくとも1つを含むものとして記載されている場合、この群は、別個に又は互いの組合せで、列挙された複数の要素のうちいずれの数の要素を含むか、から実質的になるか、又はからなることを理解されたい。同様に、群が複数の要素の群及びそれらの組合せの少なくとも1つからなるものとして記載されている場合、この群は、別個に又は互いの組合せで、列挙された複数の要素のうちいずれの数の要素からなることを理解されたい。そうではないことが明記されていない限り、値の範囲を記述する場合、この値の範囲は、この範囲の上限及び下限並びにその間のいずれの範囲を含む。そうでないことが明記されていない限り、本明細書で用いる単数形は、「少なくとも1つの」又は「1つ以上」を意味する。本明細書及び図面に開示された様々な特徴を、いずれの及び全ての組み合わせで用いてよい。
【0012】
本明細書で用いる用語「ガラス(glass)」及び「複数のガラス(glasses)」は、ガラス及びガラスセラミックの両方を含む。用語「ガラス物品(glass article)」及び「複数のガラス物品(glass articles)」はその最も広い意味で使用され、全体的に又は部分的にガラス及び/又はガラスセラミックで作製されたいずれの物品を含む。
【0013】
なお、本明細書において、用語「実質的に(substantially)」及び「約(about)」は、いずれの定量比較、値、測定値、又は他の表現が備え得る不確実性の固有の程度を表すために使用される。本明細書においてこれらの用語はまた、ある量的表現が、争点となる主題の基本的な機能に変更をもたらすことなく規定の基準から変化し得る程度を表すために使用される。
【0014】
明記しない限り、本明細書に記載の全ての組成及び濃度は、モルパーセント(モル%)で表される。本明細書で記載及び請求される組成の範囲は、当業者の手段で決定されるガラスのバルク組成を表し、本明細書に記載の非強化及び強化ガラスの両方に適用できる。
【0015】
図面全般、及び特に
図1を参照すると、これらの図面は、特定の実施形態の説明を目的としたものであり、本開示又は添付の請求項を限定することを意図したものではないことが理解されるであろう。図面は必ずしも実寸ではなく、特定の特徴及び特定の図は、明確さ及び簡潔さを目的として寸法について又は図式的に強調して示している場合がある。
【0016】
それ自体の損傷耐性を有するガラスを提供する。一態様では、急な衝撃による損傷に対して耐性を有するように強化できるこのガラスは、少なくとも約50モル%のSiO2;少なくとも約10モル%の少なくとも1つのアルカリ金属酸化物R2O(ここでR2OはNa2Oを含み、任意で他のアルカリ金属酸化物(例えば、Li2O、K2O、Ce2O、Rb2O)を含む);アルミナ(Al2O3)(ここで、モル%で表されるAl2O3の量は、ガラス中の上記アルカリ金属酸化物の全量より少ない(即ち、Al2O3(モル%)<R2O(モル%)));及びホウ素酸化物(B2O3)(B2O3(モル%)-(R2O(モル%)-Al2O3(モル%))≧3モル%)を含む。
【0017】
別の態様では、ガラスは、少なくとも約50モル%のSiO2;Al2O3;B2O3;及び少なくとも約10モル%のR2O(ここでR2OはNa2Oを含む)を含み、ここでB2O3(モル%)-(R2O(モル%)-Al2O3(モル%))≧3モル%であり、このガラスのジルコン破壊温度(即ちジルコンが破壊してジルコニア及びシリカを形成する温度)は、ガラス粘度が約25キロポアズ(2.5kPa・s)~約40キロポアズ(4.0kPa・s)の範囲である温度の範囲内にある。
【0018】
いくつかの態様では、本明細書に記載のガラスはイオン交換可能である。即ち、ガラス中に存在する陽イオン(典型的には一価アルカリ金属陽イオン)が、同一の原子価又は酸化状態を有するより大きな陽イオン(典型的には一価アルカリ金属陽イオンであるが、Ag+又はTl+等の他の陽イオン)により置換される。大きな陽イオンによる小さな陽イオンの置換は、圧縮、即ち圧縮応力CS下にある表面層を生成する。この層は、ガラスの表面から内部又は容積へと、層深さ(DOL)だけ延在する。ガラスの表面層における圧縮応力は、ガラスの内部又は内側領域における引張応力、即ち中心張力CTによって平衡化される。圧縮応力及び層深さは、従来技術で公知の手段を用いて測定できる。このような手段としては、株式会社ルケオ(東京、日本)が製造するFSM-6000等の市販の設備を用いた表面応力測定(FSM)が挙げられるが、これに限定されない。圧縮応力及び層深さの測定方法は、「Standard Specification for Chemically Strengthened Flat Glass」という題のASTM 1422C-99及び「Standard Test Method for Non-Destructive Photoelastic Measurement of Edge and Surface Stresses in Annealed,Heat-Strengthened,and Fully-Tempered Flat Glass」という題のASTM 1279.19779に記載されており、これらの内容は参照によりその全体が本明細書中に援用される。表面応力測定は、応力光係数(SOC)の正確な測定に基づくものであり、この係数はガラスの応力誘発性複屈折に関連している。またSOCは、繊維曲げ方法及び四点曲げ方法(これらの方法はいずれも、「Standard Test Method for Measurement of Glass Stress-Optical Coefficient」という題のASTM標準C770-98(2008年)に記載されており、これらの内容は参照によりその全体が本明細書中に援用される)、並びにバルクシリンダー法等の従来技術で公知の方法により測定される。
【0019】
他の態様では、上述のように、本明細書に記載のガラスはイオン交換され、また層深さだけ延在する、圧縮下にある層と、引張応力下にある内部領域とを有する、少なくとも1つの表面を有する。一態様では、このイオン交換されたガラスは、少なくとも約50モル%のSiO2;少なくとも約10モル%のR2O(ここでR2OはNa2Oを含む);Al2O3;及びB2O3(B2O3-(R2O-Al2O3)≧3モル%)を含む。このイオン交換されたガラスは、少なくとも約10重量キログラム(kgf)(約98N)のビッカース亀裂開始閾値を有する。
【0020】
アルカリ金属は、アルミノホウケイ酸ガラス中に存在する場合、4配位アルミニウム及びホウ素のための荷電平衡化陽イオンとして作用する。RAlO2又はRBO2(Rはアルカリ金属及びアルミニウム)に似た種類は、例えばAl3+及びB3+であり、酸素により4配位となる。アルミニウム又はホウ素を取り囲む4つの酸素原子は、ケイ素原子に結合するものと仮定する。従って、各酸素はケイ素原子から1つの電子を取得し、つまり4分の3の電子を4配位のAl3+又はB3+から取得する。アルカリ金属は、この構成に電子を供与し、これにより四面体の全ての4つの酸素が、完全な電子殻を取得する。アルミニウムの役割を果たすものとして、大きなアルカリ土類元素Ca、Sr及びBaが公知である。よって、R2O(モル%)+CaO(モル%)+SrO+BaO(モル%)-Al2O3(モル%)-B2O3(モル%)=0(モル%)、あるいは(Al2O3(モル%)+B2O3(モル%))/(R2O(モル%)+CaO(モル%)+SrO(モル%)+BaO(モル%))=1であるアルミノホウケイ酸ガラス中には、荷電平衡化を必要とする4配位アルミニウム及びホウ素原子と丁度同数の、アルカリ及びアルカリ土類から供与された電子が存在する。R2O(モル%)+CaO(モル%)+SrO(モル%)+BaO(モル%)-Al2O3(モル%)-B2O3(モル%)<0(モル%)である場合、荷電平衡化用のアルカリ又はアルカリ土類陽イオンに由来する電子よりも多数の、荷電平衡化を必要とするアルミニウム及びホウ素原子が存在する。このようなガラスは一般に、それ自体の、即ち「固有の」高い損傷耐性を有し、この耐性はイオン交換後に著しく強化される。
【0021】
これらのガラスでは、十分な荷電平衡化陽イオンが利用可能であれば、アルミニウムはほぼ常に酸素による4配位となる。低原子価陽イオンは、小さく高原子価の陽イオンよりも荷電平衡化の役割を良好果たす。これは、荷電平衡陽イオンが電子濃度についてアルミニウムと競合する程度に起因する。大きく低原子価の陽イオンはこの競合に影響せず、従ってAlO
4四面体内の電子濃度は高いままとなる。ガラス中に存在するアルカリ酸化物の量がAl
2O
3の濃度以下である十分アニールされたアルカリホウケイ酸ガラスでは、アルカリ改質剤がアルミニウムとの結合において消費される又は取り込まれるため、ホウ素はほとんど4配位である。ガラス中に存在するアルカリ酸化物の量がB
2O
3とAl
2O
3とを合わせた濃度よりも多い、十分にアニールされたアルカリホウケイ酸ガラスでは、ホウ素はほぼ4配位であり、過剰なアルカリ改質剤は非架橋酸素(NBO)結合に取り込まれる。しかしながら、B
2O
3≧アルカリ改質剤>Al
2O
3である十分にアニールされたアルミノホウケイ酸ガラスでは、荷電平衡化した組成物においても、ホウ素は3配位及び4配位の混合物であると考えられる。ガラスのアニール点又は歪み点超から急速冷却すると、3配位ホウ素の構造はエントロピー的に好ましいものとなる。従って、ダウンドロー(例えばスロット若しくはフュージョンドロー)処理等の形成プロセスを通して、又はそのアニール点若しくは歪み点超の温度までガラスを加熱した後に(例えば少なくとも約4℃/秒の速度で)急速冷却することにより、3配位ホウ素の割合を上昇させることができる。いくつかの実施形態では、ガラスのアニール点又は歪み点超の温度からガラスを急速冷却する。妥当な推量としては、荷電平衡化陽イオンはまずアルミニウムを4配位に安定化し、残りの陽イオンはホウ素のいくらかの画分を4配位に安定化する。上記画分は1に達してもよい。本明細書に記載のガラスは、少なくとも2.7モル%、いくつかの実施形態では約2.7モル%~4.5モル%のB
2O
3を含み、ここでホウ素陽イオンは3配位が優勢である。いくつかの実施形態では、本明細書に記載のガラスを成すホウ素陽イオンの少なくとも約50%は、3配位である。他の実施形態では、これらのガラス中のホウ素の少なくとも約80%が3配位であり、また他の実施形態では、これらのガラス中のホウ素陽イオンの少なくとも90%が3配位である。3配位ホウ素の割合は、
11B核磁気共鳴(NMR)を用いて決定できる。
図1は、67.45モル%のSiO
2、12.69モル%のAl
2O
3、3.67モル%のB
2O
3、13.67モル%のNa
2O、2.36モル%のMgO、及び0.09モル%のSnO
2という組成を有する本明細書に記載のガラス試料のNMRスペクトルを示している。4配位ホウ素の量(
図1のN
4)は8.9%~9.5%の範囲である。従って、
図1に示す各試料中に存在するホウ素の約90%は3配位である。
【0022】
R2O(モル%)+MO(モル%)<Al2O3(モル%)(ここでMOは二価金属酸化物(例えばMgO、ZnO、CaO、BaO、SrO等)を表す)である場合、アルミニウムを4配位に安定化するための十分な一価又は二価陽イオンが存在せず、従ってこれらのガラス中ではホウ素がほぼ全て3配位である。いくつかの実施形態では、本明細書に記載のガラスは、約3モル%~約4.5モル%のB2O3を含んでおり、このB2O3は、3つのアニオンに取り囲まれたホウ素陽イオンを含有し、即ちホウ素陽イオンは3配位であり、いくつかの実施形態では、B2O3(モル%)-(R2O(モル%)-Al2O3(モル%))≦4.5モル%である。3配位ホウ素は圧縮すると容易に密度が高くなり、それ自体の、即ち固有の耐性をガラスに与えるため、望ましい。しかしながら、R2O(モル%)+MO(モル%)-Al2O3(モル%)<0(モル%)の組成を有するガラスは、例えば約10モル%超の極めて高いB2O3含有量を有することがない限り、一般に極めて高い融解温度を有する。このようなB2O3の高い含有量は、固定期間/時間のイオン交換において得られる層厚さが小さいことから立証されるように、表面圧縮応力及びイオン交換比率の両方に有害な影響を及ぼす。良好な損傷抵抗を得るには、(例えば約650MPa超の)高いCS及び(例えば30μm超の)有意な層深さ(DOL)も求められるため、それ自体の高い損傷耐性という追加の利益は、イオン交換特性の低さによって相殺され得る。従って、イオン交換後の属性の最適なバランスを達成するために、ホウ素濃度を十分に低く維持することが望ましい。従っていくつかの実施形態では、本明細書に記載のガラスは、10モル%未満のB2O3を含む。このようなガラスは、大量生産のために許容可能な品質レベル(例えば欠陥濃度)まで溶解するのが極めて困難である。ガラス物品の用途に応じて、連続処理において僅かに許容可能な欠陥レベルは、約50μmを超えるサイズ(例えば略球形の粒子においては直径、又は細長形状の粒子においては主軸)の欠陥(例えば、ガス気泡、粒子又は「糠泡」)が、ガラス1ポンド(lb)(約0.45kg)に対して約1個である。
【0023】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載のガラスは、少なくとも約50モル%のSiO2、約9モル%~約22モル%のAl2O3;約3モル%~約10モル%のB2O3;約10モル%~約20モル%のNa2O;0モル%~約5モル%のK2O;少なくとも約0.1モル%のMgO及び/又はZnO(0モル%≦MgO(モル%)+ZnO(モル%)≦6モル%);並びに、任意で、CaO、BaO及びSrOの少なくとも1つ(0モル%≦CaO(モル%)+SrO(モル%)+BaO(モル%)≦2モル%)を含む。いくつかの実施形態では、本明細書に記載のガラスは、約66モル%~約74モル%のSiO2を含む。
【0024】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載のガラスは、MgO及びZnOの少なくとも一方を少なくとも約0.1モル%含む。特定の実施形態では、ガラスは、MgO及び/又はZnOを約6モル%まで含んでよい。マグネシウム及び亜鉛は、他方の二価陽イオンとは異なる挙動を示す。マグネシウム及び亜鉛は、アルミニウムをある程度まで荷電平衡化できる一方、本明細書に記載のガラス中でホウ素を4配位に安定化することについてほとんど又は全く役割を果たさないように思われる。従って、アルミノホウケイ酸ガラス中のアルカリ酸化物をマグネシウム酸化物と置換すると、ホウ素原子は4配位から3配位となり、これはイオン交換後のガラスに、より高い亀裂開始閾値負荷をもたらす。
【0025】
上に挙げた酸化物に加えて、本明細書に記載のガラスは、以下に限られないが、ハロゲン又はハロゲン化物(F、Cl、Br及びIを含有する化合物)、並びに酸化物As2O3、Sb2O3、CeO2及びSnO2の少なくとも1つを含む化学清澄剤を更に含んでよい。これらの清澄剤は、存在する場合、一般に約0.5モル%以下のレベルで原料中にバッチ配合され、イオン交換速度及び最終的に得られる圧縮応力の両方にほとんど影響を及ぼさない。また、他の酸化物を、これらのガラスのイオン交換特性にほとんど又は全く影響しない低濃度で添加してよい。これらの酸化物の例としては、溶解器内のジルコニア耐火物が導入する一般的な不純物であるZrO2;天然シリカ源の一般的な混入要素であるTiO2;完全に純粋なもの以外の化学試薬に頻繁に見られる混入酸化物であるFe2O3;及び着色に使用できる他の遷移金属酸化物が挙げられる。これらの遷移金属酸化物としては、V2O5、Cr2O3、Co3O4、Fe2O3、MnO2、NiO、CuO、Cu2O等が挙げられる。これらの酸化物の濃度は、ガラス中に存在する場合、約2モル%以下のレベルに維持される。カルシウムと比較して、Sr及びBa等の大型のアルカリ土類は、低い分散性及び有意に浅い圧縮層深さをもたらす。Sr及びBaは、本明細書に記載のガラスの他の酸化物の多くと比較して無駄の大きい試薬であり、イオン交換を阻害又は遅延させるからである。従ってSrO及びBaOの濃度は、ガラス中に存在する場合、約0.5モル%以下のレベルで維持される。ルビジウム及びセシウム酸化物は、適当な速度でイオン交換するには大き過ぎ、無駄が大きく、かつ高濃度において高い液相線温度に寄与する。従ってこれらの酸化物の濃度は0.5モル%未満に維持される。リチウム酸化物は、硝酸カリウム塩のイオン交換槽の「毒作用(poisoning)」に寄与して、リチウムを含まない塩浴中で同じガラスをイオン交換した場合に比べて圧縮応力を低下させるため、一般に避けるべきである。また、ナトリウム-カリウムの交換と比較して、リチウムの存在により、カリウムを交換する際の拡散性が有意に低下する。従ってリチウム酸化物がガラス中に存在する場合、その濃度は約0.5モル%未満、いくつかの実施形態では約0.1モル%未満に維持すべきである。いくつかの実施形態では、本明細書に記載のガラスは実質的にリチウムを含まない。いくつかの実施形態では、本明細書に記載のガラスは実質的にリンを含まない。
【0026】
本明細書中で用いる用語「ジルコン破壊温度」又は「T破壊」は、ジルコン(これはガラス処理及び製造において耐火材として一般的に使用される)が破壊されてジルコニア及びシリカを形成する温度を表す。フュージョン等の等粘度プロセスでは、ガラスが曝露される最高温度は、ガラスの特定の粘度に対応している。例えば「T35kP」は、ガラスが35キロポアズ(kP)(3.5kPa・s)の粘度を有する温度を表す。破壊温度と35000ポアズ(3.5kPa・s)の粘度に対応する温度との差分は、破壊マージンTマージンとして定義され、ここでTマージン=T破壊-T35kpである。破壊マージンTマージンが負である場合、ジルコンは破壊され、フュージョンアイソパイプ上のいくつかの場所においてジルコニア欠陥を形成する。Tマージンがゼロである場合にも、温度逸脱によりジルコン破壊が発生し得る。従って、破壊マージンを正とすることのみならず、最終的なガラス製品において維持しなければならないその他全ての属性を一定にしながら、可能な限りTマージンを最大化することが望ましい。本明細書に記載のガラスは、いくつかの実施形態では粘度が約25キロポアズ(2.5kPa・s)~約40キロポアズ(4.0kPa・s)、いくつかの実施形態では約30キロポアズ(3.0kPa・s)~約40キロポアズ(4.0kPa・s)、特定の実施形態では30キロポアズ(3.0kPa・s)~約35キロポアズ(3.5kPa・s)の範囲となる温度と同等のジルコン破壊温度を有する。表3に、本明細書に記載のガラスの様々な試料について測定したジルコン破壊温度T破壊を列挙する。
【0027】
前述のように、破壊マージンTマージンが負である場合、ジルコンは破壊され、処理装置(例えばフュージョンアイソパイプ等)のいくつかの位置においてジルコニア及びシリカを形成する。これにより、形成されたガラスが欠陥、気泡、ジルコニア小片等を含有することになる場合がある。こうしたガラス中の内包物の存在は典型的には、例えば光学顕微鏡検査等の公知の従来技術により検出される。本明細書に記載のガラスは、正のジルコン破壊マージンを有し、いくつかの実施形態では、内包物はガラス1ポンド(約0.45kg)に対して0.1個未満であり、このとき内包物のサイズ(例えば略球形の粒子においては直径、又は細長形状の粒子においては主軸)は少なくとも約50μmである。いくつかの実施形態では、本明細書に記載のガラスは、ガラス1ポンド(約0.45kg)に対して0.01個未満の内包物を含み、このとき内包物のサイズは少なくとも約50μmである。
【0028】
イオン交換によりガラスを強化するこれらの実施形態では、ガラスをイオン交換して、いくつかの実施形態では少なくとも約600メガパスカル(MPa)未満、他の実施形態では少なくとも800MPaの圧縮応力下にある表面層を生成できる。この圧縮表面層は、少なくとも約30マイクロメートル(μm)の層深さを有する。本明細書に記載のイオン交換されたガラスは、ある程度の固有の、即ちそれ自体の損傷耐性(IDR)も有し、この損傷耐性は、10重量キログラム(kgf)(約98N)以上のビッカース亀裂開始閾値を特徴とするものであってよい。いくつかの実施形態では、イオン交換したガラスは約20kgf(約196N)~約30kgf(約294N)の範囲のビッカース亀裂開始閾値を有する。他の実施形態では、イオン交換したガラスは、約30kgf(約294N)~約35kgf(約343N)の範囲のビッカース亀裂開始閾値を有する。本明細書に記載のビッカース亀裂開始閾値の測定は、ガラス表面に対して0.2mm/分の速度で押込荷重を印加して除去することにより実施する。最大押込荷重を10秒間保持する。亀裂開始閾値は、10回の押込みのうち50%が、押込み跡の角から発するいずれの数の放射状/中心方向亀裂を呈するような押込荷重として定義される。最大負荷を所定のガラス組成に適合するまで増加させる。全ての押込測定は、50%の相対湿度において室温で実施する。
【0029】
本明細書に記載のガラスは、イオン交換すると、様々な種類の衝撃に対して顕著な損傷耐性を提供するのに十分な高い圧縮応力を有する。本明細書に記載のガラスは、大量生産が容易となる速度でイオン交換してよい。イオン交換の前にガラスをアニールすることにより高い圧縮応力を提供することは有利であるが、その代わりに、ガラスを高温(例えばガラスの歪み点超)から急速に冷却することによって高い圧縮応力を得ることもできる。このような急速冷却は、フュージョン又はスロットドロー処理等の例えばダウンドロー処理において発生する。本明細書に記載のイオン交換したガラスの圧縮応力、層深さ、及びそれ自体の損傷耐性の組み合わせは、急な接触及び引っ掻きによりもたらされる視認できる又は強度を制限する損傷に対する、素晴らしい耐性を提供する。
【0030】
表1では、本明細書に記載のガラス試料(ガラス3)の物理的特性を、Matthew J. DejMeka等による「Ion Exchangeable Glass With High Compressive Stress」という題の、2011年7月1日に出願された米国仮特許出願第61/503734号の優先権を主張する、Matthew J. Dejneka等による同じ題の2011年7月1日に出願された米国特許出願第13/533298号明細書に記載のガラス(ガラス1);及びMatthew J. Dejneka等による「Ion Exchangeable Glass With High Damage Resistance」という題の2012年5月31日に出願された米国仮特許出願第61/653485号明細書に記載のガラス(ガラス2)の物理的特性と比較する。ガラス1はジルコンと適合するが低い押込閾値を有し、反対にガラス2は高い押込閾値を有するがジルコンとは非適合である。ガラス3は、上述したように高い押込閾値とジルコン適合性とを併せ持つ。
【0031】
【0032】
本明細書に記載のガラスの組成の更なる非限定的な実施例及びその特性を、それぞれ表2、3に挙げる。ここに挙げた実施例は、高い押込閾値を特徴とするそれ自体の損傷耐性と、低いジルコン破壊粘度を特徴とするジルコン適合性とを有するという要求を満たしている。
【0033】
【0034】
【0035】
【0036】
【0037】
【0038】
【0039】
【0040】
【0041】
【0042】
【0043】
【0044】
本明細書に記載のガラスは、チッピング及び引っ掻きの両方に対して耐性であり、これによりカバープレート、タッチスクリーン、腕時計用風防ガラス(watch crystals)、太陽集光器(solar concentrator)、窓、スクリーン、コンテナ、及び良好な引っ掻き耐性を備える強く丈夫なガラスが必要とされるその他の用途で用いるのに好適となる。
【0045】
典型的な実施形態を例示の目的で明示してきたが、上述の説明は本開示又は添付の請求項の範囲を制限するものと捉えるべきではない。従って当業者は、本開示又は添付の請求項の精神及び範囲を逸脱することなく、様々な修正例、改変例、及び代替例を実施できる。
【0046】
他の実施態様
1.ガラスにおいて、
少なくとも約50モル%のSiO2;
少なくとも約10モル%のR2O(ここでR2OはNa2Oを含む);
Al2O3(Al2O3(モル%)<R2O(モル%));及び
B2O3(B2O3(モル%)-(R2O(モル%)-Al2O3(モル%))≧3モル%)
を含む、イオン交換可能なガラス。
【0047】
2.前記ガラスは、
少なくとも約50モル%のSiO2;
約9モル%~約22モル%のAl2O3;
約3モル%~約10モル%のB2O3;
約9モル%~約20モル%のNa2O;
0モル%~5モル%のK2O;
少なくとも約0.1モル%のMgO、ZnO、又はこれらの組み合わせ(0≦MgO≦6かつ0≦ZnO≦6モル%);並びに
任意で、CaO、BaO及びSrOの少なくとも1つ(0モル%≦CaO+SrO+BaO≦2モル%)を含む、実施態様1に記載のガラス。
【0048】
3.前記ガラスは、約66モル%~74モル%のSiO2を含む、実施態様1または2に記載のガラス。
【0049】
4.前記ガラスは、MgO及びZnOの少なくとも一方を少なくとも約0.1モル%含む、実施態様1または2に記載のガラス。
【0050】
5.前記ガラスは、該ガラスが約30キロポアズ(3.0kPa・s)~約40キロポアズ(4.0kPa・s)の範囲の粘度を有する温度の範囲内のジルコン破壊温度を有する、実施態様1または2に記載のガラス。
【0051】
6.前記ガラスは、3配位のホウ素陽イオンを含有する少なくとも約2.7モル%のB2O3を含む、実施態様1または2に記載のガラス。
【0052】
7.前記ガラスは、約2.7モル%~約4.5モル%のB2O3を含む、実施態様6記載のガラス。
【0053】
8.前記ガラス中のB2O3の少なくとも50%が3配位ホウ素陽イオンを含む、実施態様1または2に記載のガラス。
【0054】
9.B2O3(モル%)-(R2O(モル%)-Al2O3(モル%))≦4.5モル%である、実施態様1または2に記載のガラス。
【0055】
10.前記ガラスは、前記ガラスの1ポンド(約0.45kg)につき約0.1個未満の内包物を含有しており、前記内包物は少なくとも約50μmのサイズを有する、実施態様1または2に記載のガラス。
【0056】
11.前記ガラスはダウンドローされる、実施態様1または2に記載のガラス。
【0057】
12.前記ガラスは、アニール点および歪み点を有し、アニール点又は歪み点超の温度から急速冷却される、実施態様1または2に記載のガラス。
【0058】
13.前記ガラスはイオン交換され、少なくとも約600MPaの圧縮応力下にある層を有し、前記層は、前記ガラスの表面から前記ガラス内に少なくとも約30μmの層深さまで延在する、実施態様1または2に記載のガラス。
【0059】
14.前記圧縮応力が少なくとも約800MPaである、実施態様13に記載のガラス。
【0060】
15.前記ガラスは、少なくとも約10kgf(約98N)のビッカース亀裂開始閾値を有する、実施態様13に記載のガラス。
【0061】
16.前記ガラスは、約20kgf(約196N)~約30kgf(約294N)の範囲のビッカース亀裂開始閾値を有する、実施態様15に記載のガラス。
【0062】
17.前記ガラスは、約30kgf(約294N)~約35kgf(約343N)の範囲のビッカース亀裂開始閾値を有する、実施態様15に記載のガラス。
【0063】
18.ガラスにおいて、少なくとも約50モル%のSiO2;Al2O3;B2O3;及び少なくとも約10モル%のR2O(ここでR2OはNa2Oを含む)を含み、B2O3(モル%)-(R2O(モル%)-Al2O3(モル%))≧3モル%であり、該ガラスが約25キロポアズ(2.5kPa・s)~約40キロポアズ(4.0kPa・s)の範囲の粘度を有する温度の範囲内のジルコン破壊温度を有する、ガラス。
【0064】
19.前記ガラスは、
少なくとも約50モル%のSiO2;
約9モル%~約22モル%のAl2O3;
約3モル%~約10モル%のB2O3;
約9モル%~約20モル%のNa2O;
0モル%~5モル%のK2O;
少なくとも約0.1モル%のMgO、ZnO、又はこれらの組み合わせ(0≦MgO≦6かつ0≦ZnO≦6モル%);並びに
任意で、CaO、BaO及びSrOの少なくとも1つ(0モル%≦CaO+SrO+BaO≦2モル%)
を含む、実施態様18に記載のガラス。
【0065】
20.前記ガラスは、約66モル%~74モル%のSiO2を含む、実施態様18または19に記載のガラス。
【0066】
21.前記ガラスは、MgO及びZnOの少なくとも一方を少なくとも約0.1モル%含む、実施態様18または19に記載のガラス。
【0067】
22.前記ガラスは、3配位のホウ素陽イオンを含有する少なくとも約2.7モル%のB2O3を含む、実施態様18または19に記載のガラス。
【0068】
23.前記ガラスは、約2.7モル%~約4.5モル%のB2O3を含む、実施態様22記載のガラス。
【0069】
24.前記ガラス中のB2O3の少なくとも50%が3配位ホウ素陽イオンを含む、実施態様18または19に記載のガラス。
【0070】
25.B2O3(モル%)-(R2O(モル%)-Al2O3(モル%))≦4.5モル%である、実施態様18または19に記載のガラス。
【0071】
26.前記ガラスはイオン交換され、少なくとも約600MPaの圧縮応力下にある層を有し、前記層は、前記ガラスの表面から前記ガラス内に少なくとも約30μmの層深さまで延在する、実施態様18または19に記載のガラス。
【0072】
27.前記圧縮応力が少なくとも約800MPaである、実施態様26に記載のガラス。
【0073】
28.前記ガラスは、少なくとも約10kgf(約98N)のビッカース亀裂開始閾値を有する、実施態様26に記載のガラス。
【0074】
29.前記ガラスは、約20kgf(約196N)~約30kgf(約294N)の範囲のビッカース亀裂開始閾値を有する、実施態様28に記載のガラス。
【0075】
30.前記ガラスは、約30kgf(約294N)~約35kgf(約343N)の範囲のビッカース亀裂開始閾値を有する、実施態様28に記載のガラス。
【0076】
31.前記ガラスは、前記ガラスの1ポンド(約0.45kg)につき約0.1個未満の内包物を含有しており、前記内包物は少なくとも約50μmのサイズを有する、実施態様18または19に記載のガラス。
【0077】
32.前記ガラスはダウンドローされる、実施態様18または19に記載のガラス。
【0078】
33.前記ガラスは、アニール点および歪み点を有し、アニール点又は歪み点超の温度から急速冷却される、実施態様18または19に記載のガラス。
【0079】
34.前記ガラスは、カバープレート、タッチスクリーン、腕時計用風防ガラス、太陽集光器、窓、スクリーン、またはコンテナの少なくとも一部を形成する、実施態様18または19に記載のガラス。
【0080】
35.ガラスにおいて、
少なくとも約50モル%のSiO2;
少なくとも約10モル%のR2O(ここでR2OはNa2Oを含む);
Al2O3(Al2O3(モル%)<R2O(モル%));及び
B2O3(B2O3(モル%)-(R2O(モル%)-Al2O3(モル%))≧3モル%)を含み、イオン交換され、少なくとも約10kgf(約98N)のビッカース亀裂開始閾値を有するガラス。
【0081】
36.前記ガラスは、
少なくとも約50モル%のSiO2;
約9モル%~約22モル%のAl2O3;
約3モル%~約10モル%のB2O3;
約9モル%~約20モル%のNa2O;
0モル%~5モル%のK2O;
少なくとも約0.1モル%のMgO、ZnO、又はこれらの組み合わせ(0≦MgO≦6かつ0≦ZnO≦6モル%);並びに
任意で、CaO、BaO及びSrOの少なくとも1つ(0モル%≦CaO+SrO+BaO≦2モル%)
を含む、実施態様35に記載のガラス。
【0082】
37.前記ガラスは、約66モル%~74モル%のSiO2を含む、実施態様35または36に記載のガラス。
【0083】
38.前記ガラスは、MgO及びZnOの少なくとも一方を少なくとも約0.1モル%含む、実施態様35または36に記載のガラス。
【0084】
39.前記ガラスは、3配位ホウ素陽イオンを含有する約2.7モル%~約4.5モル%のB2O3を含む、実施態様35または36記載のガラス。
【0085】
40.B2O3(モル%)-(R2O(モル%)-Al2O3(モル%))≦4.5モル%である、実施態様35または36に記載のガラス。
【0086】
41.前記ガラス中のB2O3の少なくとも50%が3配位ホウ素陽イオンを含む、実施態様35または36に記載のガラス。
【0087】
42.前記ガラスは、少なくとも約600MPaの圧縮応力下にある層を有し、前記層は、前記ガラスの表面から前記ガラス内に少なくとも約30μmの層深さまで延在する、実施態様35または36に記載のガラス。
【0088】
43.前記圧縮応力が少なくとも約800MPaである、実施態様42に記載のガラス。
【0089】
44.前記ガラスは、約20kgf(約196N)~約30kgf(約294N)の範囲のビッカース亀裂開始閾値を有する、実施態様35または36に記載のガラス。
【0090】
45.前記ガラスは、約30kgf(約294N)~約35kgf(約343N)の範囲のビッカース亀裂開始閾値を有する、実施態様35または36に記載のガラス。
【0091】
46.前記ガラスは、前記ガラスの1ポンド(約0.45kg)につき約0.1個未満の内包物を含有しており、前記内包物は少なくとも約50μmのサイズを有する、実施態様35または36に記載のガラス。
【0092】
47.前記ガラスはダウンドローされる、実施態様35または36に記載のガラス。
【0093】
48.前記ガラスは、アニール点および歪み点を有し、アニール点又は歪み点超の温度から急速冷却される、実施態様35または36に記載のガラス。
【0094】
49.前記ガラスは、カバープレート、タッチスクリーン、腕時計用風防ガラス、太陽集光器、窓、スクリーン、またはコンテナの少なくとも一部を形成する、実施態様35または36に記載のガラス。
【0095】
50.ガラスにおいて、
少なくとも約50モル%のSiO2;
少なくとも約10モル%のR2O(ここでR2OはNa2Oを含む);
Al2O3;及び
配位ホウ素陽イオンを含有する少なくとも2.7モル%のB2O3(B2O3-(R2O-Al2O3)≧3モル%)を含む、ガラス。
【0096】
51.前記ガラスは、
少なくとも約50モル%のSiO2;
約9モル%~約22モル%のAl2O3;
約3モル%~約10モル%のB2O3;
約9モル%~約20モル%のNa2O;
0モル%~5モル%のK2O;
少なくとも約0.1モル%のMgO、ZnO、又はこれらの組み合わせ(0≦MgO≦6かつ0≦ZnO≦6モル%);並びに
任意で、CaO、BaO及びSrOの少なくとも1つ(0モル%≦CaO+SrO+BaO≦2モル%)
を含む、実施態様50に記載のガラス。
【0097】
52.前記ガラスは、約66モル%~74モル%のSiO2を含む、実施態様50または51に記載のガラス。
【0098】
53.前記ガラスは、MgO及びZnOの少なくとも一方を少なくとも約0.1モル%含む、実施態様50または51に記載のガラス。
【0099】
54.前記ガラスは、該ガラスが約30キロポアズ(3.0kPa・s)~約40キロポアズ(4.0kPa・s)の範囲の粘度を有する温度の範囲内のジルコン破壊温度を有する、実施態様50または51に記載のガラス。
【0100】
55.前記ガラスは、3配位ホウ素陽イオンを含有する約2.7モル%~約4.5モル%のB2O3を含む、実施態様50または51に記載のガラス。
【0101】
56.前記ガラス中のB2O3の少なくとも50%が3配位ホウ素陽イオンを含む、実施態様50または51に記載のガラス。
【0102】
57.B2O3(モル%)-(R2O(モル%)-Al2O3(モル%))≦4.5モル%である、実施態様50または51に記載のガラス。
【0103】
58.前記ガラスは、該ガラスの1ポンド(約0.45kg)につき約0.1個未満の内包物を含有しており、前記内包物は少なくとも約50μmのサイズを有する、実施態様50または51に記載のガラス。
【0104】
59.前記ガラスはダウンドローされる、実施態様50または51に記載のガラス。
【0105】
60.前記ガラスは、アニール点および歪み点を有し、アニール点又は歪み点超の温度から急速冷却される、実施態様50または51に記載のガラス。
【0106】
61.前記ガラスはイオン交換され、少なくとも約600MPaの圧縮応力下にある層を有し、前記層は、前記ガラスの表面から前記ガラス内に少なくとも約30μmの層深さまで延在する、実施態様50または51に記載のガラス。
【0107】
62.前記圧縮応力が少なくとも約800MPaである、実施態様61に記載のガラス。
【0108】
63.前記ガラスは、少なくとも約10kgf(約98N)のビッカース亀裂開始閾値を有する、実施態様61に記載のガラス。
【0109】
64.前記ガラスは、約20kgf(約196N)~約30kgf(約294N)の範囲のビッカース亀裂開始閾値を有する、実施態様63に記載のガラス。
【0110】
65.前記ガラスは、約30kgf(約294N)~約35kgf(約343N)の範囲のビッカース亀裂開始閾値を有する、実施態様63に記載のガラス。