(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-07
(45)【発行日】2023-12-15
(54)【発明の名称】車両制御システム
(51)【国際特許分類】
G08G 1/16 20060101AFI20231208BHJP
【FI】
G08G1/16 C
(21)【出願番号】P 2022020239
(22)【出願日】2022-02-14
【審査請求日】2022-02-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088672
【氏名又は名称】吉竹 英俊
(74)【代理人】
【識別番号】100088845
【氏名又は名称】有田 貴弘
(72)【発明者】
【氏名】杉山 昭暢
(72)【発明者】
【氏名】中村 恒毅
(72)【発明者】
【氏名】春木 浩志
【審査官】増子 真
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-066363(JP,A)
【文献】国際公開第2014/016910(WO,A1)
【文献】特開2021-088245(JP,A)
【文献】特開2020-121645(JP,A)
【文献】特開2017-045348(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08G 1/00 - 99/00
B60W 10/00 - 10/30
B60W 30/00 - 60/00
B60R 21/00 - 21/13
B60R 21/34 - 21/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
予防安全機能を搭載した車両を制御する車両制御システムであって、
ドライバの個人認証を行う個人認証部と、
前記個人認証部で認証されたドライバについての個人情報を管理する個人情報管理部と、
ドライバにより予防安全機能についてのON/OFF設定入力が行われるドライバ入力取得部と、
前記個人情報管理部の個人情報に基づいてドライバの運転技術が未熟かどうかを判断する運転技術未熟判断部と、
前記ドライバ入力取得部からの入力情報と前記運転技術未熟判断部からの入力結果とを元に予防安全機能の制御演算を行う予防安全機能制御部と、を備え、
前記予防安全機能制御部は、前記運転技術未熟判断部がドライバの運転技術が未熟と判断した場合に前記ドライバ入力取得部からのOFF設定を反映せず、
前記個人情報管理部は個人情報として運転免許証情報、運転履歴情報、自動車保険情報のうち、少なくとも1つの情報について管理し、前記運転技術未熟判断部は当該情報を用いてドライバの運転技術が未熟かどうかを判断することを特徴とする車両制御システム。
【請求項2】
前記個人情報管理部は個人情報として運転免許証情報、運転履歴情報、自動車保険情報のうち、少なくとも2つの情報について管理し、前記運転技術未熟判断部は前記個人情報管理部の個人情報のうち、少なくとも2つの情報を組み合わせてドライバの運転技術が未熟かどうかを判断することを特徴とする請求項1に記載の車両制御システム。
【請求項3】
前記運転技術未熟判断部は、前記個人情報管理部の各個人情報を点数で評価し、各個人情報の点数の合計に基づいてドライバの運転技術が未熟かどうかを判断することを特徴とする請求項2に記載の車両制御システム。
【請求項4】
予防安全機能は、車両の加速、操舵、制動の操作のうち少なくとも一つを制御するものであり、前記運転技術未熟判断部は、操作対象に応じて個別の判断基準でドライバの運転技術が未熟かどうかを判断することを特徴とする請求項1~3
のいずれか1項に記載の車両制御システム。
【請求項5】
予防安全機能は、車両の加速、操舵、制動の操作のうち少なくとも一つを制御するものであって、前記予防安全機能制御部は当該操作対象について複数の項目を設定可能であり、前記運転技術未熟判断部は、設定項目毎に個別の判断基準でドライバの運転技術が未熟かどうかを判断することを特徴とする請求項1~4
のいずれか1項に記載の車両制御システム。
【請求項6】
走行ルートについての走行ルート情報を管理する走行ルート管理部を備え、前記運転技術未熟判断部は前記個人情報管理部の個人情報に加えて走行ルート管理部からの走行ルート情報に基づいてドライバの運転技術が未熟かどうかを判断することを特徴とする請求項1~5
のいずれか1項に記載の車両制御システム。
【請求項7】
前記運転技術未熟判断部は、走行ルート情報と運転履歴情報を組み合わせてドライバにとって不慣れな道かどうかを判断し、不慣れな道だと判断した場合にドライバの運転技術が未熟と判断することを特徴とする請求項6に記載の車両制御システム。
【請求項8】
走行ルートについての走行ルート情報を管理する走行ルート管理部を備え、前記運転技術未熟判断部は、前記個人情報管理部の各個人情報に加えて前記走行ルート管理部の走行ルート情報も点数で評価し、各個人情報および走行ルート情報の点数の合計に基づいてドライバの運転技術が未熟かどうかを判断することを特徴とする請求項3に記載の車両制御システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動運転を行う車両を制御する車両制御システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、運転者の負担を軽減し、快適かつ安全に運転できるようにするための自動運転技術の研究が盛んであり、一部は既に実用化されている。
【0003】
特許文献1では、運転者自らが車両を操舵する手動運転モードと第1運転支援モードと第2運転支援モードとを運転者が任意に選択することの出来る運転モードスイッチを備えた運転支援システムが開示されている。なお、第1運転支援モードと第2運転支援モードは、自車両を目標進行路に沿って自動運転させる点は共通しているが、第1運転支援モードは運転者の保舵を条件とする運転モードであり、第2運転支援モードは運転者の保舵を条件としない運転モードである。
【0004】
この運転支援システムでは、運転者が運転モードスイッチをOFFにした場合は手動運転モードとなり、運転者が運転モードスイッチをONにした場合には第1運転支援モードか第2運転支援モードどちらかを選択して自動運転を行う構成となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に開示されている運転支援システムの第1運転支援モードには、レーンキープ制御や緊急自動ブレーキといった、交通事故を未然に防止するための予防安全機能が含まれている。一般的に運転技術が未熟であるほど、車線逸脱やアクセルとブレーキの踏み間違えといった車両が危険な状態になる可能性が高いため、予防安全機能の必要性は高くなる。
【0007】
しかし、特許文献1の構成では、運転技術を問わず運転者が運転モードスイッチによって手動運転モードを選択し、第1運転支援モードをOFFにすることができる。このため、本来運転技術が未熟な運転者にとって必要性の高い予防安全機能をOFFにすることができるため、万が一車両が危険な状態に陥った際に運転技術が未熟な運転者にこそ必要な予防安全機能が機能しない場合があるという問題があった。
【0008】
本開示は、上記の問題を解決するために、運転技術が未熟なドライバが予防安全機能を制限してしまうことを避け、車両の安全性を向上させることの出来る車両制御システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した問題を解決するために、本開示の車両制御システムは、予防安全機能を搭載した車両を制御する車両制御システムであって、ドライバの個人認証を行う個人認証部と、個人認証部で認証されたドライバについての個人情報を管理する個人情報管理部と、ドライバにより予防安全機能についてのON/OFF設定入力が行われるドライバ入力取得部と、個人情報管理部の個人情報に基づいてドライバの運転技術が未熟かどうかを判断する運転技術未熟判断部と、ドライバ入力取得部からの入力情報と運転技術未熟判断部からの入力結果とを元に予防安全機能の制御演算を行う予防安全機能制御部と、を備え、予防安全機能制御部は、運転技術未熟判断部がドライバの運転技術が未熟と判断した場合にドライバ入力取得部からのOFF設定を反映せず、個人情報管理部は個人情報として運転免許証情報、運転履歴情報、自動車保険情報のうち、少なくとも1つの情報について管理し、運転技術未熟判断部は当該情報を用いてドライバの運転技術が未熟かどうかを判断することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本開示に係る車両制御システムによれば、運転技術未熟判断部がドライバの運転技術が未熟と判断した場合にドライバ入力取得部からのОFF設定を反映しないことで、運転技術が未熟なドライバが予防安全機能をOFFに設定してしまった際に設定を反映せずに予防安全機能が機能した状態を維持できるため、車両の安全性を向上させることが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】実施の形態1に係る車両制御システムの構成を示すブロック図である。
【
図2】実施の形態1に係る車両制御システムの動作を示すフローチャート図である。
【
図3】実施の形態1に係る運転技術未熟判断部の動作を示すフローチャート図である。
【
図4】実施の形態1の変形例に係る運転技術未熟判断部の運転技術点マップを示す表である。
【
図5】実施の形態2に係る車両制御システムの構成を示すブロック図である。
【
図6】実施の形態2に係る車両制御システムの動作を示すフローチャート図である。
【
図7】実施の形態2に係る運転技術未熟判断部の動作を示すフローチャート図である。
【
図8】実施の形態2に係る運転技術未熟判断部の運転技術点マップを示す表である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照しながら、本開示の車両制御システムの実施の形態を説明する。実施形態は適宜変更し、組合せて適用することができる。また、以下の説明及び添付図面において、実質的に同一又は等価な構成には同一の符号を付して説明する。なお、本開示は、以下で説明する実施の形態に限定されるものではない。
【0013】
また、本開示では、日本政府および米国運輸省道路交通安全局(NHTSA)により定義された以下の自動運転レベルを用い、レベル1からレベル2を予防安全機能、レベル3からレベル5を自動運転機能と定義する。なお、特許文献1の運転支援システムにおいては、第1運転支援モードがレベル1からレベル2、第2運転支援モードがレベル3からレベル5に相当する。
【0014】
レベル0:ドライバが常にすべての主制御系統(加速、操舵および制動)の操作を行う。
【0015】
レベル1:加速、操舵および制動のいずれか単一をシステムが支援的に行う。
【0016】
レベル2:システムがドライビング環境を観測しながら、加速、操舵および制動のうち同時に複数の操作をシステムが行う。
【0017】
レベル3:限定的な環境下若しくは交通状況のみ、システムが加速、操舵および制動を行う。システムが要請したときはドライバが対応する。
【0018】
レベル4:特定の状況下のみ(例えば高速道路上のみなど、極限環境を除く天候などの条件)、加速、操舵および制動といった操作を全てシステムが行い、その条件が続く限りドライバが関与しない。
【0019】
レベル5:無人運転。考え得る全ての状況下及び、極限環境での運転をシステムに任せる。
【0020】
実施の形態1.
図1は実施の形態1に係る車両制御システムの構成を示すブロック図である。
【0021】
図1に示すように、車両制御システム1は、個人認証部2と、個人情報管理部3と、ドライバ入力取得部4と、運転技術未熟判断部5と、車両情報取得部6と、予防安全機能制御部7と、ドライバ通知部8と、アクチュエータ9と、を備える。
【0022】
まず、個人認証部2について説明する。個人認証部2は、ドライバがどの人物であるかを特定する個人認証を行う。例えば運転席に座っているドライバの運転免許証を画像認識するカメラを備え、画像認識した運転免許証からドライバが本システムに登録された人物のうち、どの人物か、または未登録の人物か、を特定する。
【0023】
ここで、個人認証部2は運転免許証を画像認識するカメラではなくICカードリーダーを備え、ICチップにより運転免許証情報を取得する構成でも問題ない。また運転免許証は、マイナンバーカードや健康保険証、ディーラで発行されたIDカード等のドライバが特定できるものであればどんなものでも構わない。さらに、個人認証部2は顔認証や指紋認証といった生体認証によって個人を特定する構成でもよい。
【0024】
次に、個人情報管理部3について説明する。個人情報管理部3は、個人認証部2で認証されたドライバについての個人情報を収集し、管理する。個人情報管理部3で管理するドライバについての個人情報は、ドライバの運転技術に係る情報であればどのような情報を管理してもよい。
【0025】
例えば、個人情報管理部3ではドライバの運転免許証についての情報を、新規運転者、一般運転者、優良運転者等に区分して管理する。また、運転免許証の点数、運転可能な車種、運転免許証の保有年数等の運転免許証に関する他の情報を管理してもよい。
【0026】
また、ドライバの運転履歴情報について管理してもよい。この場での運転履歴情報は、運転回数や運転頻度、走行距離、事故回数、事故種類(加害、被害、自損)、交通違反回数、加減速頻度、予防安全機能作動回数等、ドライバの運転技術に係る個人情報であればどのような情報でも構わない。
【0027】
さらに、ドライバが加入している自動車保険の情報について管理してもよい。この場での自動車保険の情報は、保険等級、保険利用回数、事故履歴、事故種類(加害、被害、自損)等、ドライバの運転技術に係る個人情報であればどのような情報でも構わない。
【0028】
次に、ドライバ入力取得部4について説明する。ドライバ入力取得部4は、例えばディスプレイに備えられたタッチパネルを介して、ドライバから予防安全機能についてON/OFF等の設定入力を受け付ける。ドライバが設定できる予防安全機能としては、緊急自動ブレーキ、車線逸脱防止機能、オートクルーズのON/OFF、車間距離設定、車速設定、踏み間違い防止機能、後側方車両接近警報、警報音音量等があげられる。
【0029】
ここで、ドライバ入力取得部4は、ディスプレイに備えられたタッチパネルによる設定入力ではなく、ディスプレイ周辺やハンドル周りに備えられたスイッチによって設定入力する構成でも構わない。また、ドライバの音声やジェスチャを認識し設定入力する方法や、スマートフォン等の端末から設定入力する方法でも構わない。
【0030】
次に、運転技術未熟判断部5について説明する。運転技術未熟判断部5は、ドライバ入力取得部4から予防安全機能に関する設定入力を受信した際に、個人認証部2で認証されたドライバについて、個人情報管理部3からの個人情報に基づいてドライバの運転技術が未熟かどうかを判断し予防安全機能制御部7にドライバ入力取得部4からの設定入力とともに入力結果を送信する。なお、本明細書では、予防安全機能がなくとも自らの判断で十分に危機対応が可能である状態を熟として、そのレベルに達していないものを未熟と定義する。
【0031】
次に、車両情報取得部6について説明する。車両情報取得部6は、車両に備えられたセンサやカメラによって得られる、予防安全機能の制御に利用可能な情報を取得する。例えば、車速やヨーレート、カメラが認識した周囲の障害物、白線情報等があげられる。
【0032】
次に、予防安全機能制御部7について説明する。予防安全機能制御部7は、運転技術未熟判断部5からの入力結果と、車両情報取得部6の車両情報とを元に、アクチュエータ9に対しての予防安全機能の制動指示や操舵指示を演算する。予防安全機能制御部7が扱う予防安全機能としては、緊急自動ブレーキ、車線逸脱防止機能、オートクルーズ、踏み間違い防止機能、後側方車両接近警報等が挙げられる。
【0033】
次に、ドライバ通知部8について説明する。ドライバ通知部8は、運転技術未熟判断部5の入力結果を元にした情報や、緊急自動ブレーキ機能の警報といった、ドライバに知らせる必要がある情報を通知する。
【0034】
ここで、ドライバ通知部8は、例えば専用に車両に設置されたディスプレイによって構成されるが、ナビの画面やメータ、HUD(Head-Up Display)、スマートフォン等の端末に表示するような構成でもよい。また、音や光など、ドライバに知らせる必要がある情報を通知出来る構成であれば、どのような構成でも構わない。
【0035】
次に、アクチュエータ9について説明する。アクチュエータ9は、予防安全機能制御部7の制御指示に基づき、車両の加速、制動、操舵などを行う装置であり、例えば、エンジン、ブレーキ、電動パワーステアリング、およびそれらを制御するECU(Electronic Control Unit)などが含まれる。また、アクチュエータ9はヘッドライトやハザードランプ等の灯火系に指示を出すようにしてもよい。
【0036】
ここからは、実施の形態1に係る車両制御システムの動作について説明する。
図2は本発明の実施の形態1に係る車両制御システムの動作を示すフローチャートである。
【0037】
車両制御システム1はまず、個人認証部2にて個人情報を取得し、ドライバを認証する(ステップS101)。
【0038】
次に、個人情報管理部3が個人認証部2で認証されたドライバに対応する個人情報を
管理し、運転技術未熟判断部5に送信する(ステップS102)。
【0039】
次に、ドライバ入力取得部4がドライバからの予防安全機能についてのON/OFF等の設定入力情報を取得する(ステップS103)。
【0040】
次に、運転技術未熟判断部5が、個人情報管理部3から取得したドライバの個人情報を元にドライバの運転技術が未熟かどうかを判断し予防安全機能制御部7に判断情報を送信する(ステップS104)。
【0041】
次に、車両情報取得部6が車両や車両周辺に関する情報を取得し、予防安全機能制御部7に送信する(ステップS105)。
【0042】
次に、予防安全機能制御部7が、運転技術未熟判断部5からの入力結果および予防安全機能に関する入力情報と、車両情報取得部6からの車両に関する情報とを受信し、予防安全機能が必要であれば、受信した車両に関する情報から予防安全機能の制御演算を行う(ステップS106)。
【0043】
次に、ドライバ通知部8が、運転技術未熟判断部7からの入力結果や緊急自動ブレーキ機能からの警報等をドライバに通知する(ステップS107)。
【0044】
最後に、アクチュエータ9が予防安全機能制御部7からの制御指示に基づきブレーキや電動パワ―ステアリング等の車両の加速、制動、操舵に関する制御を行う(ステップS108)。
【0045】
ここからは、
図3を用いて運転技術未熟判断部5のステップ104での動作について、予防安全機能の内、緊急自動ブレーキ機能を用いて詳細に説明する。
図3は、本開示に係る実施の形態1の運転技術未熟判断部5の動作を説明するフローチャートである。なお、ドライバがドライバ入力取得部4で予防安全機能の設定をしていない状態では、予防安全機能はONに設定されている。また、ここでは一例として緊急自動ブレーキ機能について説明しているが、その他の予防安全機能についても同様の構成が成り立つものとする。
【0046】
まず、ドライバ入力取得部4にてドライバにより緊急自動ブレーキ機能OFFが入力される。(ステップS1041)。
【0047】
ドライバ入力取得部4から緊急自動ブレーキ機能をOFFにする設定を受信した運転技術未熟判断部5は、個人情報管理部3から個人認証部2で認証されたドライバに関する個人情報を取得する(ステップS1042)。
【0048】
次に、運転技術未熟判断部5は、管理されている個人情報のうちドライバの運転免許証情報を用いて、新規運転者、一般運転者、優良運転者等の区分情報から、ドライバが新規運転者だった場合、運転技術が未熟であると判断する(ステップS1043)。運転技術が未熟であると判断した場合、ドライバ入力取得部4でドライバが緊急自動ブレーキ機能をOFFに設定しようとしても、ドライバ入力取得部4からの設定を予防安全機能制御部5に反映しないようにする(ステップS1044)。
【0049】
ステップS3でドライバが新規運転者以外だと判断された場合、次に、ドライバの運転免許証情報からドライバの加害事故や自損事故がある一定回数以上だった場合、運転技術が未熟であると判断する(ステップS1045)。運転技術が未熟であると判断された場合、ドライバ入力取得部4でドライバが緊急自動ブレーキ機能をOFF設定にしようとしても、ドライバ入力取得部4からのOFF設定を予防安全機能制御部7に反映しないようにする(ステップS1044)。
【0050】
また、加害事故や自損事故がある一定回数未満と判断された場合、次にドライバの運転免許証情報から、運転免許証の点数が一定点数以上だった場合に運転技術が未熟であると判断する(ステップS1046)。運転技術が未熟であると判断された場合、ドライバ入力取得部4でドライバが緊急自動ブレーキ機能をOFF設定にしようとしても、ドライバ入力取得部4からのOFF設定を予防安全機能制御部7に反映しないようにする。(ステップS1044)。
【0051】
運転免許証の点数が一定点数未満であると判断された場合、ドライバ入力取得部4からの緊急ブレーキ機能をOFFにする設定を予防安全機能制御部7に反映し、緊急自動ブレーキ機能を制限する(ステップS1047)。
【0052】
なお、
図3ではドライバの運転免許証情報に基づいて運転技術が未熟であるかを判断していたが、ドライバの運転履歴情報から判断しても構わない。例えば、ドライバの運転年数がある一定年数以下だった場合に運転技術が未熟であると判断し、ドライバ入力取得部4でドライバが緊急自動ブレーキ機能をOFF設定にしようとしても、ドライバ入力取得部4からのOFF設定を予防安全機能制御部7に反映しないようにしてもよい。
【0053】
また、ドライバの運転履歴情報から運転回数が一定回数以下だった場合に運転技術が未熟であると判断し、ドライバ入取得部4でドライバが緊急自動ブレーキ機能をOFF設定にしようとしても、ドライバ入力取得部4からのOFF設定を予防安全機能制御部7に反映しないようにしてもよい。
【0054】
なお、ドライバの運転履歴情報は運転回数に限らず、運転頻度がある一定閾値以下、走行距離がある一定距離以下、交通違反がある一定回数以上、運転時の加減速がある一定頻度以上、加減速の絶対値の大きさがある閾値以上、緊急自動ブレーキ機能の作動回数がある一定回数以上、車線逸脱防止機能の作動回数がある一定回数以上等、運転履歴情報の内1つ以上の要素を用いて運転技術が未熟であるか判断してもよい。
【0055】
また、ドライバの運転免許証情報ではなく,ドライバが加入する自動車保険の情報から運転技術が未熟かを判断してもよい。例えば、保険等級がある等級以下の場合に運転技術が未熟であると判断し、ドライバ入力取得部4でドライバが緊急自動ブレーキ機能をOFFに設定しようとしても、ドライバ入力取得部4からのOFF設定を予防安全機能制御部7に反映しないようにしてもよい。また、保険利用回数がある一定回数以上、事故回数がある一定回数以上、加害事故や自損事故がある一定回数以上等、自動車保険の情報の内1つ以上の要素を用いて運転技術が未熟であると判断し、ドライバ入力取得部4でドライバが緊急自動ブレーキ機能をOFF設定にしようとしても、ドライバ入力取得部4からのOFF設定を予防安全機能制御部7に反映しないようにしてもよい。
【0056】
なお、
図3のフローチャートでは運転免許証情報の中の3つの要素を用いてドライバの運転技術が未熟かどうかを判断していたが、少なくとも1つの要素を用いていればその数は問わない。
【0057】
また、運転技術未熟判断部5は、運転免許証情報、運転履歴情報、自動車保険の情報のうち1つの情報からドライバの運転技術が未熟かどうかを判断していたが、複数の項目を組み合わせてドライバの運転技術が未熟かどうかを判断してもよい。複数の項目を組み合わせることで,運転免許証では優良運転者であっても過去に事故や違反がある一定回数以上あれば,運転技術が未熟であると判断することが出来るため、ドライバの運転技術が未熟かどうかをより正確に把握し、車両の安全性を向上させることが出来る。
【0058】
ここからは、実施の形態1の変形例を説明する。
図4は、本開示の実施の形態1の変形例に係る予防安全機能制御判断部5の運転技術点マップである。
【0059】
運転技術点マップは、運転技術未熟判断部5が複数の個人情報を用いて判断する際に用いるものである。それぞれの個人情報を点数で評価し、各個人情報の点数の合計に基づいて運転技術未熟判断部5はドライバの運転技術が未熟かどうかを判断する。
【0060】
例えば、
図4に示すように、免許証区分、事故回数、保険等級の3つの個人情報に関して、それぞれ1点から3点までの3段階で評価点を設定する。ここで、運転技術点の合計点Hが5点以下の時に運転技術が未熟と判断する場合、免許証区分が新規、事故回数が1回、保険等級が6等級のドライバの場合、運転技術点の合計をHとすると、
H=1+2+1=4
となり、Hが5点以下のため、ドライバは運転技術が未熟だと判断される。
【0061】
図4では、評価項目について免許証区分、事故回数、保険等級の3点を用いて判断したが、他の免許証情報や運転履歴情報、自動車保険の情報を組み合わせても構わない。また、
図4では運転技術点について3段階で評価点を設定し、合計点が5点以下の場合に運転技術が未熟と判断していたが、点数設定については運転技術を正確に判断できる設定であればどんなものでも構わない。
【0062】
以上で説明したように、本実施の形態における車両制御システム1は運転技術未熟判断部5を備え、ドライバの操作によりドライバ入力取得部4から予防安全機能に関する設定の入力を受け付けた際に、運転技術未熟判断部5が個人情報管理部3からのドライバについての個人情報を元にドライバの運転技術が未熟かどうかを判断し、運転技術が未熟であると判断された場合に、ドライバ入力取得部4からのOFF設定を予防安全機能制御部7に反映しないようにしている、
【0063】
これにより、運転技術が未熟なドライバが運転している間は予防安全機能がOFFになることなくON状態が維持され、車両が危険な状態に陥った際に予防安全機能が作動するため、車両の安全性を確保することが出来る。
【0064】
また、個人情報管理部3は個人情報として運転免許証情報、運転履歴情報、自動車保険情報のうち、少なくとも1つの情報について管理し、運転技術未熟判断部5は当該情報(個人情報管理部3にて管理することとなった運転免許証情報、運転履歴情報、自動車保険情報のうち、少なくとも1つの情報)を用いてドライバの運転技術が未熟かどうかを判断することが出来る。
【0065】
これにより、予防安全機能により密接に関係するドライバについての個人情報を用いてドライバの運転技術が未熟かどうかを判断出来るため、車両の安全性を向上させることが出来る。
【0066】
また、個人情報管理部3は個人情報として運転免許証情報、運転履歴情報、自動車保険情報のうち、少なくとも2つの情報について管理し、運転技術未熟判断部5は、運転免許証情報、運転履歴情報、自動車保険情報の中から少なくとも2つの情報を組み合わせてドライバの運転技術が未熟かどうかを判断することが出来る。
【0067】
これにより、運転免許証情報、運転履歴情報、自動車保険情報の内1つの情報だけを用いて判断する場合と比べて、複数の情報を用いてドライバの運転技術が未熟かどうかをより正確に判断出来るため、車両の安全性を向上させることが出来る。
【0068】
また、運転技術未熟判断部5は、それぞれの個人情報を点数で評価して運転技術点マップを作成し、各個人情報の点数の合計に基づいてドライバの運転技術が未熟かどうかを判断する。
【0069】
これにより合計点数で判断することによって、各個人情報を組み合わせて総合的に評価することが可能になるため、より正確にドライバの運転技術が未熟かどうかを判断することが可能になる。
【0070】
また、運転技術未熟判断部5は、ドライバ入力取得部4からの予防安全機能の入力情報を反映させるかについて、予防安全機能のうち、車両の加速、操舵、制動の操作といった操作対象に応じて個別の判断基準で判断するように構成してもよい。
【0071】
これにより、例えば過去の事故履歴が前方車両への追突のみであれば、緊急ブレーキ機能は制限するが車線逸脱防止機能は制限しないといったように、ドライバに応じたより細やかな予防安全機能の設定が可能になる。
【0072】
なお、緊急ブレーキ機能や車線逸脱防止機能といった、予防安全機能の種類だけでなく、例えば緊急ブレーキ機能の中の各設定項目についても個別の判断基準で判断しても構わない。設定項目とは、例えば緊急ブレーキ機能においての前方ブレーキ、後方ブレーキ、ブレーキ作動車速範囲、警報音量、作動タイミング等が挙げられ、操作対象についてそれぞれ複数の項目を設定可能である。これにより、設定項目に応じたより細やかな予防安全機能の設定が可能になる。
【0073】
実施の形態2.
本開示の実施の形態2について
図5から
図8を用いて説明する。実施の形態1との差異を説明する。そのため説明しない事項は実施の形態1と同様である。
【0074】
図5は本開示の実施の形態2に係る車両制御システムの構成を示すブロック図である。
図5に示す通り、本開示の実施の形態の車両制御システムには、ドライバ入力取得部4の入力情報を元に走行ルート情報を取得し管理する走行ルート管理部10が備えられている。
【0075】
なお、本実施の形態のドライバ入力取得部4は、予防安全機能についてのON/OFFの設定に加え、目的地の入力も受け付ける。また、本実施の形態の運転技術未熟判断部5は、個人情報管理部3からの個人情報に加え、走行ルート管理部10からの走行ルート情報にも基づいてドライバの運転技術が未熟かどうかを判断する。
【0076】
走行ルート管理部10について詳細に説明する。走行ルート管理部10は、現在地からドライバがドライバ入力取得部4にて設定入力した目的地までの走行ルートや、走行ルートについての様々な情報を取得し管理する。例えば、走行ルートにおける渋滞有無や渋滞の長さ、回数、渋滞が発生している位置などの渋滞情報について管理する。
【0077】
走行ルート管理部10は、渋滞情報だけでなく、走行ルートにおける工事の有無や区間の長さ、回数、位置、車線減少数等の工事に関する情報についても管理してよい。また、工事情報だけでなく、事故情報や移動体情報等、走行ルートに関係するあらゆる情報について管理してよい。
【0078】
また、走行ルート管理部10はドライバ入力取得部4からの情報だけでなく、カーナビや高精度地図、道路交通情報通信システム、カーメーカが提供するサーバ、インターネット等のあらゆる場所から情報を取得して管理してもよい。取得する情報は、例えばGPSや地図情報、車線情報、渋滞情報、工事情報等が挙げられる。
【0079】
次に、
図6に示すフローチャート図を用いて、本実施の形態の車両制御システムの動作について詳細に説明する。なお、ドライバがドライバ入力取得部4で予防安全機能の設定をしていない状態では、予防安全機能はONに設定されている。また、ここでは一例として緊急自動ブレーキ機能について説明しているが、その他の予防安全機能についても同様の構成が成り立つものとする。
【0080】
車両制御システムはまず、個人認証部2にて個人情報を取得し、ドライバを認証する。(ステップS201)
【0081】
次に、個人情報管理部3が個人認証部2で認証されたドライバに対応する個人情報を管理し、運転技術未熟判断部5に送信する(ステップS202)。
【0082】
次に、ドライバ入力取得部4がドライバからの予防安全機能に関する入力情報を取得する(ステップS203)。
【0083】
次に、走行ルート管理部10が現在地から目的地までの走行ルート情報を取得する(ステップS204)。
【0084】
次に、予防安全機能制御判断部5が、個人情報管理部3から取得したドライバの個人情報と、走行ルート管理部10から取得した走行ルート情報とを元にドライバの運転技術が未熟かどうかを判断し予防安全機能制御部7に入力結果を送信する(ステップS205)。
【0085】
次に、車両情報取得部6が車両に関する情報を取得し、予防安全機能制御部7に送信する(ステップS206)。
【0086】
次に、予防安全機能制御部7が運転技術未熟判断部5からの入力結果および予防安全機能に関する入力情報と、車両情報取得部6からの車両に関する情報とを受信し、受信した車両に関する情報から予防安全機能の制御演算を行う、(ステップS207)。
【0087】
次に、ドライバ通知部8が、運転技術未熟判断部5からの判断情報や緊急自動ブレーキからの警報等をドライバに通知する(ステップS208)。
【0088】
最後に、アクチュエータ9が予防安全機能制御部5からの制御指示に基づきブレーキや電動パワ―ステアリング等の車両の加速、制動、操舵に関する制御を行う(ステップS209)。
【0089】
次に、ステップ204での運転技術未熟判断部5について詳細に説明する。
図7は実施の形態2に係る運転技術未熟判断部5の動作を示すフローチャート図である。
【0090】
図7に示すように、本実施の形態の運転技術未熟判断部5の動作を示すフローチャート図は、実施の形態1のフローチャート図と比べて、走行ルート管理部10からの走行ルート情報に基づいてドライバの運転技術が未熟かどうかを判断するステップS2043とステップS2045とが追加されている。なお、ステップS2043とステップS2045において、渋滞区間や工事区間では例え優良ドライバでも事故が発生してしまう可能性があるため、優良ドライバでも運転技術が未熟と定義する。
【0091】
ステップS2043では、走行ルート管理部10からの渋滞情報に基づいて、ドライバの運転技術で安全に渋滞を運転できるかどうかを判断する。運転技術が未熟であると判断された場合、ドライバ入力取得部4でドライバが緊急自動ブレーキ機能をOFF設定にしようとしても、ドライバ入力取得部4からのOFF設定を予防安全機能制御部5に反映しないようにする(ステップS2044)。
【0092】
次に、ステップS2045では、走行ルート管理部10からの工事情報に基づいて、ドライバの運転技術で安全に工事区間を運転できるかどうかを判断する。運転技術が未熟であると判断された場合、ドライバ入力取得部4でドライバが緊急ブレーキ機能をOFF設定にしようとしても、ドライバ入力取得部4からのOFF設定を予防安全機能制御部7に反映しないようにする(ステップS2044)。
【0093】
なお、本実施の形態では渋滞情報と工事情報を用いてドライバの運転技術が未熟かどうかを判断したが、走行ルート管理部10で管理されている情報であればどんな情報を用いても構わない。
【0094】
以上の説明より、本実施の形態の車両制御システム1は、ドライバがドライバ入力取得部4にて設定入力した目的地までの走行ルートについての走行ルート情報を管理する走行ルート管理部10を設け、運転技術未熟判断部5は個人情報に加えて走行ルート管理部10からの情報に基づいてドライバの運転技術が未熟かどうかを判断する。
【0095】
これにより、個人情報管理部3からのドライバの個人情報に加えて、目的地までの外的要因も参考にドライバの運転技術が未熟かどうかを判断することが出来る。そのため、たとえ優良ドライバであっても、予防安全機能を制限した状態で、予期せぬ渋滞や工事で事故に遭うことを回避しより確実に予防安全機能を作動することができるため、車両の安全性を向上することが出来る。
【0096】
また、運転技術未熟判断部5は、走行ルート情報と運転履歴情報を組み合わせてドライバにとって不慣れな道かどうかを判断し、不慣れな道だと判断した場合にドライバ入力取得部からの予防安全機能に関するOFF設定を反映しないようにしてもよい。ドライバにとって不慣れな道かどうかの判断基準は、例えば初めて走行する区間の有無でもよいし、走行履歴がある閾値回数以下かどうかでもよい。
【0097】
これにより、運転経験が少ない走行ルートを走行する際に確実に予防安全機能が機能できるため、車両の安全性をより向上させることが出来る。
【0098】
次に、走行ルート情報を用いた運転技術点マップについて説明する。
図8は実施の形態2に係る運転技術未熟判断部5の運転技術点マップを示す表である。実施の形態1の変形例の運転技術点マップと比べて渋滞区間長さ(最大)と、工事区間長さ(最大)と、渋滞回数と、工事回数という評価項目が追加されている。また、渋滞区間長さ(最大)と、工事区間長さ(最大)と、渋滞回数と、工事回数それぞれにも、1点から3点までの3段階で評価点を設定する。
【0099】
本実施の形態の運転技術点マップでは、例えば、運転技術点の合計点Hが12点以下の場合に、運転技術が未熟であると判断する。免許証区分が新規、事故回数1回、保険等級が6等級,走行ルートでの渋滞区間長さ最大3km、渋滞回数2回、工事区間長さ500m、工事回数1回の場合、運転技術点の合計をHとすると、
H=1+2+1+1+2+2+2=11<12
となり、Hが12点以下のため、運転技術が未熟だと判断される。
【0100】
運転技術点マップに走行ルート情報を加えて、合計点数に基づいてドライバの運転技術が未熟かどうかを判断することで、ドライバの個人情報のみで判断していた場合と比べて、複数の個人情報および走行ルート情報を細かく定義して組み合わせることで、より正確にドライバの運転技術が未熟かどうかを判断することができ、車両の安全性を向上することが出来る。
【符号の説明】
【0101】
1.車両制御システム
2.個人認証部
3.個人情報管理部
4.ドライバ入力取得部
5.運転技術未熟判断部
6.車両情報取得部
7.予防安全機能制御部
8.ドライバ通知部
9.アクチュエータ
10.走行ルート管理部