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特許7399214液体クロマトグラフィー質量分析による体液中のアミノ酸分析
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  • 特許-液体クロマトグラフィー質量分析による体液中のアミノ酸分析 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-07
(45)【発行日】2023-12-15
(54)【発明の名称】液体クロマトグラフィー質量分析による体液中のアミノ酸分析
(51)【国際特許分類】
   G01N 27/62 20210101AFI20231208BHJP
   G01N 30/72 20060101ALI20231208BHJP
   G01N 30/88 20060101ALI20231208BHJP
   G01N 30/06 20060101ALI20231208BHJP
   G01N 33/68 20060101ALI20231208BHJP
【FI】
G01N27/62 V
G01N30/72 C
G01N30/88 F
G01N30/06 E
G01N27/62 X
G01N33/68
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2022075665
(22)【出願日】2022-05-02
(62)【分割の表示】P 2020121050の分割
【原出願日】2008-06-27
(65)【公開番号】P2022119774
(43)【公開日】2022-08-17
【審査請求日】2022-06-01
(31)【優先権主張番号】60/947,338
(32)【優先日】2007-06-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】505063050
【氏名又は名称】クエスト ダイアグノスティックス インヴェストメンツ インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】230104019
【弁護士】
【氏名又は名称】大野 聖二
(74)【代理人】
【識別番号】100119183
【弁理士】
【氏名又は名称】松任谷 優子
(72)【発明者】
【氏名】ゴールドマン,スコット
【審査官】高田 亜希
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2005/116629(WO,A1)
【文献】国際公開第2006/086540(WO,A1)
【文献】特開2007-163423(JP,A)
【文献】特開2006-003347(JP,A)
【文献】特開昭62-209055(JP,A)
【文献】国際公開第03/069328(WO,A1)
【文献】国際公開第07/003344(WO,A2)
【文献】Hans M. H. van Eijk(外3名),Determination of Amino Acid Isotope Enrichment Using Liquid Chromatography-Mass Spectrometry,Analytical Biochemistry,1999年06月15日,Volume 271, Issue 1,p. 8-17
【文献】分析化学II 改訂第3版,1992年04月10日,p. 243
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 30/00 -30/96
B01J 20/281-20/292
G01N 27/60 -27/92
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
サンプル中の少なくともつのアミノ酸の量を質量分析法によって決定する方法であって、
(a)アルギノコハク酸、タウリン及びβ-アラニンを含む前記少なくともつのアミノ酸を、液体クロマトグラフィー(LC)により精製すること、
(b)前記少なくともつのアミノ酸を、質量分析法により検出可能なイオンを生成するのに適した条件下でイオン化すること、
(c)前記少なくともつのアミノ酸のイオンの量を、質量分析法によって検出すること、及び
(d)前記サンプル中の前記少なくともつのアミノ酸の量を、ステップ(c)で決定されたイオンの量から決定すること、
を含む、方法。
【請求項2】
前記少なくともつのアミノ酸が、アロイソロイシンをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記少なくともつのアミノ酸が、アスパラギン酸、スレオニン、セリン、アスパラギン、グルタミン酸、グルタミン、グリシン、アラニン、シトルリン、バリン、シスチン、メチオニン、イソロイシン、ロイシン、チロシン、フェニルアラニン、γ-アミノ酪酸、リジン、及びヒスチジンをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記少なくともつのアミノ酸が、アスパラギン酸、ヒドロキシプロリン、スレオニン、セリン、アスパラギン、グルタミン酸、グルタミン、サルコシン、α-アミノアジピン酸、プロリン、グリシン、アラニン、α-アミノ酪酸、バリン、シスチン、メチオニン、ホモシトルリン、シスタチオニン、アロイソロイシン、イソロイシン、ロイシン、チロシン、フェニルアラニン、β-アミノイソ酪酸、ホモシスチン、γ-アミノ酪酸、トリプトファン、ヒドロキシリジン、リジン、及びヒスチジンをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記サンプルが、尿である、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記サンプルが、血漿である、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記少なくともつのアミノ酸の前記量が、メープルシロップ尿症、腎不全、クローン病、潰瘍性大腸炎、慢性疲労症候群、ウィルソン病、クッシング病、痛風、及び多動性障害からなる群から選択される1以上の疾患の診断又はモニタリングに用いられる、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
1以上の内部標準を用いることを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記質量分析法が、タンデム質量分析法である、請求項1に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は一般にアミノ酸、特に生物体液中に含有されるアミノ酸の検出および分析に関
する。
【背景技術】
【0002】
患者の体液(例えば血漿)中のアミノ酸の種類および量は様々な理由で患者の健康状態
に重要である。アミノ酸のレベル異常を用いて疾患または疾病の診断を行うことができる
。例えば、血漿アミノ酸レベルの低下は癌、摂食障害、関節炎、毛包炎、アルコール依存
症、グルカゴン産生腫瘍、および/または妊娠を伴う患者で起こりうる。ストレスまたは
鬱状態にある患者も血漿アミノ酸レベルの低下を有しうる。特に、鬱病患者はフェニルア
ラニン、チロシン、メチオニン、グリシン、トリプトファン、および/またはタウリンの
欠乏が起こりうる。精神病患者はアミノ酸(例えばグリシン、トリプトファン、および/
またはヒスチジン)レベルの低下、およびアミノ酸(例えばフェニルアラニン、チロシン
、および/またはセリン)レベルの上昇を有しうる。
【0003】
感染性疾患および/または発熱を伴う患者においてもアミノ酸レベルが低下しうるが、
それらの患者における一部のアミノ酸(例えばフェニルアラニン)はレベル上昇を示しう
る。腎不全患者ではアミノ酸(例えばチロシン、スレオニン、ロイシン、イソロイシン、
バリン、リジン、および/またはヒスチジン)のレベルが低下しうる。クローン病、潰瘍
性大腸炎、慢性疲労症候群患者では血漿中のシスチンおよびグルタミンレベルが異常に低
下しうる。
【0004】
更に、正常より高いアミノ酸レベルも疾病状態を示しうる。例えば血漿アミノ酸レベル
の上昇は肝疾患、膵炎、重金属中毒、ビタミンC欠乏症、および/またはビタミンD欠乏
症患者で観察されうる。特にウィルソン病患者はトリプトファンおよびヒスチジンのレベ
ル上昇を示しうる。クッシング病または痛風患者はアラニンのレベル上昇を示しうる。糖
尿病患者はバリン、ロイシン、および/またはイソロイシンのレベル上昇を示しうる。多
動児はチロシンおよびフェニルアラニンのレベル上昇を示しうる。メープルシロップ尿症
患者は血漿中のロイシン、イソロイシン、およびバリンのレベル上昇を示しうる。このよ
うに、体液(例えば血漿)中のアミノ酸を分析する方法は医学および科学の分野で有用で
ある。
【0005】
伝統的に、アミノ酸の分析法は誘導体化の段階を伴うものであった。誘導体化の際、ア
ミノ酸をサンプル中のアミノ酸分析を促進する誘導体化試薬と反応させる。誘導体化試薬
は一般にサンプル中のアミノ酸の遊離のアミノ基と反応する。アミノ酸を誘導体化するた
めの一般的な物質には、イソチオシアネート(例えばフェニルイソチオシアネート(PITC
))、o-フタルジアルデヒド(OPA)、2,4-ジニトロフルオロベンゼン(DNFB)、およびN
α-(2,4-ジニトロ-5-フルオロフェニル)-L-アラニンアミド(FDAA)がある。誘導体化試
薬は誘導体化されたアミノ酸の分析を促進する置換基を含みうるため、有用である。例え
ば誘導体化試薬は、UV吸収検出のための発色団または蛍光検出のためのフルオロフォアを
含有してもよい。
【0006】
誘導体化アミノ酸は、クロマトグラフィー、例えば液体クロマトグラフィー(LC)また
はガスクロマトグラフィー(GC)を質量分析と組み合わせたもの(すなわちLC-MSまたはG
C-MS)を実施することにより、分離および検出することができる。しかしながら、アミノ
酸は多様な化学構造(例えば塩基性、酸性、芳香族、極性、非極性など)を有し、体液中
に存在しうる種々のアミノ酸の化学構造は著しく異なるため、分析者にとってこれらの化
合物をLC-MSまたはGC-MSで誘導体化/分離することは困難な課題である。
【0007】
LCおよびMSを用いるアミノ酸検出法がこれまでに報告されており、それらには例えば以
下がある:Casettaら,“Development of a method for rapid quantification of amino
acids by liquid chromatrography, tandem mass spectrometry” (LC-MSMS) in plasma
”Clin Chem lab Med (2000) 38: 391-401;Hessら,“Acid hydrolysis of silk fibroin
s and determination of the enrichment of isotopically labeled amino acids using
precolumn derivitization and high performance liquid chromatography-electrspray
ionization mass spectrometry”Anal Biochem (2002) 311:19-26;Jiら,“Determinatio
n of phenethyl isothiocyanate in human plasma and urine by ammonia derivatizatio
n and liquid chromatography-tandem mass spectrometry” Anal Biochem (2003) 323:3
9-47;Van Eijikら,“Determination of amino acid isotope enrichment using liquid
chromatography-mass spectrometry” (1999) Anal Biochem 271:8-17;およびLiuら,“D
erivitization of amino acids with N,N-dimethyl-2,4-dinitro-5-fluorobenzylamine f
or liquid chromatography/electrospray ionization mass spectrometry”(2004) Rapid
Commun Mass Spectrom 18:1059-65。体液中のアミノ酸を検出するための改善された方法
が所望されている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
発明の概要
個体の体液中に存在しうる様々の個別アミノ酸を検出するための方法を開示する。体液
中の個別アミノ酸の検出を用いて、体液が1つまたはそれ以上のアミノ酸異常を有するか
否かを判定することができる。ある観点では、本発明の方法は以下を伴う:体液アミノ酸
の誘導体化、液体クロマトグラフィー(LC)による誘導体化アミノ酸の分離、質量分析(
MS)法による誘導体化アミノ酸の同定、およびアミノ酸標準物質群中の構造的に類似した
アミノ酸との比較による誘導体化アミノ酸の定量。好ましくはMSはタンデムMS以外のもの
(例えばシングルMSなど)である。構造的に類似したアミノ酸は重要な構造的特徴(例え
ば主要な官能基)を共有しているため、質量分析による一つのアミノ酸の同定を用いて、
同じ方法で構造的に類似した他のアミノ酸を同定することができる。個別アミノ酸標準物
質群を、処理前に体液に添加して一連の内部標準として使用するのが好ましい。
【0009】
好適な体液には、例えば血漿、血清、唾液、尿、および脳脊髄液(CSF)がある。血漿
中で個々のアミノ酸を検出、同定および/または定量する方法では、そのレベルを表1に
示す基準範囲と比較することができる。表1の基準範囲外にある血漿アミノ酸レベルを異
常として同定してもよい。尿中で個別アミノ酸を検出、同定、および/または定量する方
法では、そのレベルを表2に示す基準範囲と比較することができる。表2の基準範囲外に
ある尿中アミノ酸レベルを異常として同定してもよい。CSF中で個別アミノ酸を検出、同
定、および/または定量する方法では、そのレベルを表3に示す基準範囲と比較すること
ができる。表3の基準範囲外にあるCSF中アミノ酸レベルを異常として同定してもよい。
唾液中で個別アミノ酸を検出、同定、および/または定量する方法では、そのレベルを表
4に示す基準範囲と比較することができる。表4の基準範囲外にある唾液中アミノ酸レベ
ルを異常として同定してもよい。ある態様では、各アミノ酸の基準範囲は被験体の年齢(
すなわち新生児、乳幼児、小児、または成人)によって変化する。
【0010】
標準物質群は、誘導体化せず、出発体液または任意の後処理段階に添加した後、誘導体
化してもよい。好ましい態様では、標準物質は個別の重水素化アミノ酸(すなわち1つま
たはそれ以上の重水素イオンを含有する単一アミノ酸)を含む。標準物質群を、誘導体化
段階の後に体液アミノ酸に添加してもよい。この場合、添加する標準物質は体液アミノ酸
と同じ方法で誘導体化すべきである。ある方法では、アミノ酸をイソチオシアネート(例
えばフェニルイソチオシアネート(PITC))で誘導体化する。好ましい態様では、誘導体
化試薬はPITCである。他の好適な誘導体化試薬にはo-フタルジアルデヒド(OPA)、2,4-
ジニトロフルオロベンゼン(DNFB)、およびNα-(2,4-ジニトロ-5-フルオロフェニル)-L-
アラニンアミド(FDAA)がある。
【0011】
一定容量の体液から同定されたそれぞれのアミノ酸の量は、MSによるシグナルを既知量
の構造的に類似したアミノ酸のシグナルと比較することによって測定できる。その後、体
液中のアミノ酸の量を、分析した体液の容量に相対させて表し、元の体液中のアミノ酸濃
度を得ることができる。定量分析は内部標準を用いて行うのが好ましい。
【0012】
ある態様では、体液を処理して高濃度のアミノ酸を含有する画分を得た後、更なる分析
を行ってもよい。ある方法では、(例えば体液を分子量フィルターに通過させることによ
って)体液の低分子量画分を得る。
【0013】
ある態様では、この方法を用いて少なくとも20個の異なる個別アミノ酸を検出してもよ
い。他の態様では、この方法を用いて少なくとも25個、30個、35個、または40個の個別ア
ミノ酸を検出してもよい。
【0014】
例えば、本発明の方法は、限定される訳ではないが以下を含む個別アミノ酸を任意の組
み合わせで検出および/または定量するのに有用であり得る:ホスホセリン、スルホシス
テイン、アルギノコハク酸、ヒドロキシプロリン、アスパラギン酸、アスパラギン、グル
タミン酸、セリン、ホスホエタノールアミン(PEA)、グルタミン、グリシン、ヒスチジ
ン、サルコシン、タウリン、カルノシン、シトルリン、アルギニン、アンセリン、1-メチ
ルヒスチジン、3-メチルヒスチジン、α-アミノアジピン酸(AAD)、スレオニン、アラニ
ン、β-アラニン(BALA)プロリン、エタノールアミン、γ-アミノ酪酸(GABA)、β-ア
ミノイソ酪酸(BAIA)、α-アミノ酪酸(AAB)、システイン、チロシン、バリン、メチオ
ニン、L-アロシスタチオニン(シスタチオニンA)、L-シスタチオニン(シスタチオニンB)
、シスチン、イソロイシン、アロイソロイシン、ロイシン、DL-ヒドロキシリジン(ヒド
ロキシリジン(1))、DL-アロヒドロキシリジン(ヒドロキシリジン(2))、フェニルアラ
ニン、オルニチン、トリプトファン、ホモシスチン、アルギノコハク酸(ASA)、リジン
、および ホーキンシン(Hawkinsin;(2-L-システイン-S-イル-1,4-ジヒドロキシシクロ
ヘキシ-5-エン-1-イル)酢酸。更に、この方法を使用して体液中で検出された任意の個別
アミノ酸のレベルに基づいて疾病状態を診断してもよい。
【0015】
ある態様では、本発明の方法は、限定される訳ではないが以下を含む個別アミノ酸を任
意の組み合わせで検出および/または定量するのに有用であり得る:アスパラギン酸、AS
A、S-システイン、グルタミン酸、OH-プロリン、セリン、アスパラギン、PEA、AAD、グリ
シン、グルタミン、サルコシン、ヒスチジン、β-アラニン、タウリン、シトルリン、カ
ルノシン、スレオニン、アルギニン、アンセリン、1-メチルヒスチジン、3-メチルヒスチ
ジン、アラニン、GABA、BAIB、プロリン、エタノールアミン、AAB、チロシン、バリン、
メチオニン、シスタチオニンA、シスタチオニンB、シスチン、イソロイシン、アロイソロ
イシン、ロイシン、OH-リジン-1, OH-リジン-2、ホモシスチン、フェニルアラニン、トリ
プトファン、オルニチン、およびリジン。
【0016】
別の態様では、本発明の方法は、限定される訳ではないが以下を含む個別アミノ酸を任
意の組み合わせで検出および/または定量するのに有用であり得る:ヒドロキシプロリン
、アスパラギン酸、アスパラギン、グルタミン酸、セリン、グルタミン、グリシン、ヒス
チジン、サルコシン、タウリン、シトルリン、アルギニン、1,3-メチルヒスチジン、α-
アミノアジピン酸、スレオニン、アラニン、β-アラニン、プロリン、エタノールアミン
、γ-アミノ酪酸、β-アミノイソ酪酸、α-アミノ酪酸、チロシン、バリン、メチオニン
、L-シスタチオニン、イソロイシン、ロイシン、フェニルアラニン、オルニチン、トリプ
トファン、ホモシスチン、およびリジン。
【0017】
更に別の態様では、本発明の方法は、限定される訳ではないが以下を含む個別アミノ酸
を任意の組み合わせで検出および/または定量するのに有用であり得る:ヒドロキシプロ
リン、アスパラギン酸、アスパラギン、グルタミン酸、セリン、グルタミン、グリシン、
ヒスチジン、サルコシン、タウリン、シトルリン、アルギニン、1,3-メチルヒスチジン、
α-アミノアジピン酸、スレオニン、アラニン、β-アラニン、プロリン、エタノールアミ
ン、γ-アミノ酪酸、β-アミノイソ酪酸、α-アミノ酪酸、チロシン、バリン、メチオニ
ン、L-シスタチオニン、イソロイシン、ロイシン、フェニルアラニン、オルニチン、トリ
プトファン、ホモシスチン、リジン、シスチン、およびヒドロキシリジン。
【0018】
更に別の態様では、本発明の方法は、限定される訳ではないが以下を含む個別アミノ酸
を任意の組み合わせで検出および/または定量するのに有用であり得る:ヒドロキシプロ
リン、アスパラギン酸、アスパラギン、グルタミン酸、セリン、グルタミン、グリシン、
ヒスチジン、サルコシン、タウリン、シトルリン、アルギニン、α-アミノアジピン酸、
スレオニン、アラニン、β-アラニン、プロリン、γ-アミノ酪酸、β-アミノイソ酪酸、
α-アミノ酪酸、チロシン、バリン、メチオニン、イソロイシン、ロイシン、フェニルア
ラニン、オルニチン、トリプトファン、ホモシスチン、およびリジン。
【0019】
ある態様では、本発明の方法は、限定される訳ではないが以下を含む個別アミノ酸を任
意の組み合わせで検出および/または定量するのに有用であり得る:ホスホセリン、スル
ホシステイン、アルギノコハク酸、ヒドロキシプロリン、アスパラギン酸、ホスホエタノ
ールアミン、サルコシン、カルノシン、アンセリン、1,3-メチルヒスチジン、α-アミノ
アジピン酸、β-アラニン、プロリン、エタノールアミン、γ-アミノ酪酸、β-アミノイ
ソ酪酸、システイン、L-アロシスタチオニンA、L-シスタチオニン、シスチン、アロイソ
ロイシン、DL-ヒドロキシリジン、DL-アロヒドロキシリジン、およびホモシスチン。
【0020】
別の態様では、本発明の方法は、限定される訳ではないが以下を含む個別アミノ酸を任
意の組み合わせで検出および/または定量するのに有用であり得る:ホスホセリン、スル
ホシステイン、アルギノコハク酸、ヒドロキシプロリン、アスパラギン酸、ホスホエタノ
ールアミン、サルコシン、カルノシン、アンセリン、1,3-メチルヒスチジン、α-アミノ
アジピン酸、β-アラニン、プロリン、エタノールアミン、γ-アミノ酪酸、β-アミノイ
ソ酪酸、システイン、L-アロシスタチオニンA、L-シスタチオニン、シスチン、DL-ヒドロ
キシリジン、DL-アロヒドロキシリジン、およびホモシスチン。更に別の態様では、この
方法を用いてシステイン、ホスホセリン、またはアルギノコハク酸のいずれかを同定でき
る。
【0021】
更に別の態様では、本発明の方法は、限定される訳ではないが以下を含む個別アミノ酸
を任意の組み合わせで検出および/または定量するのに有用であり得る:ホスホセリン、
スルホシステイン、アルギノコハク酸、ヒドロキシプロリン、ホスホエタノールアミン、
サルコシン、カルノシン、アンセリン、1,3-メチルヒスチジン、α-アミノアジピン酸、
β-アラニン、プロリン、エタノールアミン、γ-アミノ酪酸、β-アミノイソ酪酸、シス
テイン、L-アロシスタチオニンA、L-シスタチオニン、シスチン、アロイソロイシン、DL-
ヒドロキシリジン、DL-アロヒドロキシリジン、およびホモシスチン。
【0022】
更なる態様では、本発明の方法は、限定される訳ではないが以下を含む個別アミノ酸を
任意の組み合わせで検出および/または定量するのに有用であり得る:ホスホセリン、ス
ルホシステイン、アルギノコハク酸、ヒドロキシプロリン、ホスホエタノールアミン、サ
ルコシン、カルノシン、アンセリン、1,3-メチルヒスチジン、α-アミノアジピン酸、エ
タノールアミン、γ-アミノ酪酸、β-アミノイソ酪酸、L-アロシスタチオニンA、L-シス
タチオニン、シスチン、アロイソロイシン、DL-ヒドロキシリジン、DL-アロヒドロキシリ
ジン、およびホモシスチン。
【0023】
更なる態様では、本発明の方法は、限定される訳ではないが以下を含む個別アミノ酸を
任意の組み合わせで検出および/または定量するのに有用であり得る:ホスホセリン、シ
ステイン、アルギノコハク酸、ヒドロキシプロリン、ホスホエタノールアミン、サルコシ
ン、カルノシン、アンセリン、1,3-メチルヒスチジン、α-アミノアジピン酸、エタノー
ルアミン、γ-アミノ酪酸、β-アミノイソ酪酸、L-アロシスタチオニンA、L-シスタチオ
ニン、シスチン、DL-ヒドロキシリジン、DL-アロヒドロキシリジン、およびホモシスチン
【0024】
他の態様では、本発明の方法は少なくとも2個、少なくとも3個、少なくとも4個、少
なくとも5個、少なくとも7個、少なくとも10個、少なくとも15個、少なくとも20
個、少なくとも25個、または少なくとも30個もしくはそれ以上の個別アミノ酸を定量
する。
【0025】
開示される方法は、個別アミノ酸(すなわちジペプチドおよびポリペプチドから分離さ
れた単一のアミノ酸)のレベル異常に関係することが知られている種々の疾病の診断また
は治療有効性のモニタリングの基準として使用することができる。例えば、ロイシン、イ
ソロイシン、バリン、リジン、および/またはヒスチジンのレベルを用いて腎不全の診断
および/またはモニタリングを行ってもよい;シスチンおよび/またはグルタミンのレベ
ルを用いてクローン病、潰瘍性大腸炎、および/または慢性疲労症候群の診断および/ま
たはモニタリングを行ってもよい;トリプトファンおよび/またはヒスチジンのレベルを
用いてウィルソン病の診断および/またはモニタリングを行ってもよい;アラニンのレベ
ルを用いてクッシング病または痛風の診断および/またはモニタリングを行ってもよい;
バリン、ロイシン、および/またはイソロイシンのレベルを用いて糖尿病および/または
メープルシロップ尿症の診断および/またはモニタリングを行ってもよい;チロシンおよ
び/またはフェニルアラニンのレベルを用いて多動性障害の診断および/またはモニタリ
ングを行ってもよい;ホーキンシンのレベルを用いてホーキンシン尿症の診断および/ま
たはモニタリングを行ってもよい。
【0026】
誘導体化アミノ酸のLC分離は、市販されているような任意の型のLCシステムを用いて行
うことができる。好適なLCカラムは微小粒子(例えば直径約2-5μm、好ましくは約3μmの
シリカ粒子)を含む充填剤を含有するものである。粒子は一般に約50から300オングストロ
ーム、好ましくは約150オングストロームの微細孔を有する。粒子は一般に約50-600m2/g
、好ましくは約100m2/gの表面積を有する。
【0027】
粒子は、その表面に結合した疎水性の固定相を有してもよい。ある態様では、疎水性固
定相はC-4、C-8、およびC-18(好ましくはC-18)を含むアルキル相であってもよい。
【0028】
カラムは好適な寸法を有することができる。好ましくはカラムは直径約0.5mmから約5mm
、および長さ約15mmから約300mmであり、最も好ましくは直径約2mm、長さ約50mmである。
【0029】
誘導化アミノ酸のLC分離は、移動相として疎水性溶媒または疎水性溶媒を含む溶媒混合
物をグラジエントで使用し、アミノ酸を溶出することにより行うことができる。ある態様
では、誘導体化画分を水性バッファー(すなわち親水性溶媒)中のカラムに適用し、漸増
量の有機溶媒(すなわち疎水性溶媒)を含有する移動相をカラムに適用してアミノ酸を溶
出してもよい。例えば、水性バッファーは(95% H2O、5%アセトニトリル)を含有しても
よく、移動相中のアセトニトリル濃度を約100%まで漸増させてアミノ酸をカラムから溶
出してもよい。必要により、移動相を約40-60℃、好ましくは約50℃の温度まで加熱して
もよい。更に、移動相は必要により、LCおよび/またはMSの際に有用な更なる1つまたは
それ以上の試薬を含有してもよい(例えば酢酸アンモニウムまたは酢酸)。
【0030】
誘導体化アミノ酸のMS分析はサンプルのイオン化によって行うことができる。好適なイ
オン化法にはエレクトロスプレーイオン化法(ESI)、大気圧化学イオン化法(APCI)、
光イオン化法、電子イオン化法、高速電子衝撃(FAB)/液体二次イオン化法(LSIMS)、
マトリクス支援レーザー脱離イオン化法(MALDI)、フィールドイオン化法、フィールド
脱離法、熱スプレー/プラズマスプレーイオン化法、およびパーティクルビーム・イオン
化法がある。好ましくはMSはESIを用いて行う。更に、MSは負または正イオンモード(好
ましくは負イオンモード)を用いて行ってもよい。
【0031】
誘導体化アミノ酸のMS分析はいくつかのタイプのイオン分析計(四重極分析計、イオン
トラップ分析計、および飛行時間型分析計)のいずれを使用して行ってもよい。好ましく
は、MSは四重極分析計を用いて行う。MSの際に生じるイオンはいくつかある検出法(選択
イオンモニタリング法(SIM)およびスキャニング法など)を用いて検出してもよい。好
ましくは、イオンはSIMを用いて検出する。MSはタンデムMS以外が好ましい。
【0032】
また、個体中のアミノ酸代謝に関与する代謝障害の存在を診断する方法も提供される。
この方法は以下によって、体液が1つまたはそれ以上のアミノ酸を異常レベルで含有する
か否かを確認することを含む:(a)体液アミノ酸の誘導体化;(b)液体クロマトグラ
フィー(LC)による誘導体化アミノ酸の分離;(c)分離した誘導体化アミノ酸の質量分
析計による質量分光分析(MS);および(d)アミノ酸標準物質群からの構造的に類似し
たアミノ酸と比較することによるMS分析を用いた誘導体化アミノ酸の定量。この方法の種
々の態様は既に記載したものと同様である。
【図面の簡単な説明】
【0033】
図1図1は、本明細書に記載する方法によって検出および定量される種々のアミノ酸を示す表である。第3列はMW“分子量”を示す;第4列はPITCの分子量を示す。第5列は各PITC誘導体化アミノ酸の分子量を示す;第6列はLC保持時間を示す;第7列は質量分析で観察されたイオンを示す。
図2図2は、表示するアミノ酸を含有する単一サンプルのLC実施後のMS分析結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0034】
好ましい態様の詳細な説明
本明細書で使用する“アミノ酸”とは、アミノ基および酸性基に共有結合したα炭素を
含有する任意の分子を意味する。酸性基はカルボキシル基であってもよい。“酸性基”は
以下の式の一つを有する分子であってもよい:
【化1】
式中、Rは側鎖であり、Zは少なくとも3個の炭素原子を含む。“アミノ酸”には、限定さ
れるわけではないが20個のヒト内因性アミノ酸およびその誘導体、例えば以下がある:
リジン、アスパラギン、スレオニン、セリン、イソロイシン、メチオニン、プロリン、ヒ
スチジン、グルタミン、アルギニン、グリシン、アスパラギン酸、グルタミン酸、アラニ
ン、バリン、フェニルアラニン、ロイシン、チロシン、システイン、トリプトファン、ホ
スホセリン(PSER)、スルホシステイン、アルギノコハク酸(ASA)、ヒドロキシプロリ
ン、ホスホエタノールアミン(PEA)、 サルコシン(SARC)、タウリン(TAU)、カルノ
シン(CARN)、シトルリン(CIT)、アンセリン(ANS)、1,3-メチルヒスチジン(ME-HIS
)、α-アミノアジピン酸(AAA)、β-アラニン(BALA)、エタノールアミン(ETN)、γ
-アミノ酪酸(GABA)、β-アミノイソ酪酸(BAIA)、α-アミノ酪酸(BABA)、L-アロシ
スタチオニン(シスタチオニンA;CYSTA-A)、L-シスタチオニン(シスタチオニンB;CYS
TA-B)、シスチン、アロイソロイシン(アロILE)、DL-ヒドロキシリジン(ヒドロキシリ
ジン(1))、DL-アロヒドロキシリジン(ヒドロキシリジン(2))、オルニチン(ORN)、ホ
モシスチン(HCY)、およびそれらの誘導体。“アミノ酸”にはD-アミノ酸およびL-アミ
ノ酸型のような立体異性体も含まれる。特に記載しないかぎり、“アミノ酸”という用語
は、ジペプチド、ポリペプチド、およびタンパク質中に存在するアミノ酸から分離された
個別の(すなわち遊離の)アミノ酸分子を示す。
【0035】
本明細書で使用する“体液”とは、個体の身体から単離できる任意の液体を意味する。
例えば“体液”には血液、血漿、血清、胆汁、唾液、尿、涙、汗、脳脊髄液(CSF)など
が含まれる。好ましくは、体液は血漿、血清、脳脊髄液、尿、または唾液であり、最も好
ましくは血漿である。
【0036】
本明細書で使用する“誘導体化”とは、2つの分子を反応させて新規の分子を生成させ
ることを意味する。例えばアミノ酸の誘導体化は、アミノ酸を誘導体化試薬と反応させて
誘導体化アミノ酸を生成させることによって行ってもよい。誘導体化は、アミノ酸のαア
ミノ基を誘導体化試薬の求電子性原子と反応させて共有結合を形成させることを含んでも
よい。誘導体化試薬はイソチオシアネート基、ジニトロフルオロフェニル基、ニトロフェ
ノキシカルボニル基、および/またはフタルアルデヒド基であってもよい。
【0037】
本明細書で使用する“液体クロマトグラフィー(LC)”とは、体液を微細物質のカラム
またはキャピラリー経路を通して均一に通過させる際の、1つまたはそれ以上の体液成分
の選択的遅延過程を意味する。遅延は1つまたはそれ以上の固定相とバルク流体(すなわ
ち移動相)との間の混合物成分の分布に起因し、これはこの液体が固定相に対して向流す
る際に起こる。この工程を利用して2つまたはそれ以上の物質の混合物の分析および分離
を行う。“液体クロマトグラフィー”には逆相液体クロマトグラフィー(RPLC)および高
圧液体クロマトグラフィー(HPLC)が含まれる。
【0038】
本明細書で使用する“質量分析“法または“質量分析”(MS分析)とは、以下を含む未
知化合物を同定するための分析技術を意味する:(1)化合物のイオン化および化合物の
電位的分画による帯電化合物の生成;および(2)帯電化合物の分子量検出および質量電
荷比(m/z)の算出。化合物は任意の好適な方法でイオン化および検出してもよい。“質
量分析計”には化合物のイオン化および帯電化合物の検出のための手段が含まれる。
【0039】
本明細書で使用する“エレクトロスプレーイオン化法”とは、質量分析において使用さ
れ、高分子をイオン化し、高分子がフラグメントになる傾向に打ち勝つ技術である。“エ
レクトロスプレーイオン化法”では、キャリアーガスによって帯電した微細金属キャピラ
リーから液体を押し出す。液体は研究対象物質(分析物)並びに大量の溶媒(通常、分析
物よりはるかに揮発性が高い)を含有する。キャピラリー中に含まれる電荷が液体に伝達
され、これが分析物分子を帯電させる。同種の電荷は反発するため、液体が自らをキャピ
ラリーカラムの外に押し出し、直径約10μmの微小液滴の霧またはエアロゾルとなって、
同様の電荷を持つ分子間の距離が増大する。中性キャリアガスを用いて微小液滴中の中性
溶媒を揮発させ、これによって今度は帯電した分析物分子が互いに接近する。しかしなが
らこの分子の接近は不安定となり、同様の電荷を持つ分子同士が接近すると液滴は再び爆
発する。この過程は、分析物が溶媒を含有しなくなり、孤立したイオンが生成されるまで
繰り返される。孤立したイオンは質量分析計へ輸送される。
【0040】
本明細書で使用する“四重極型分析計”とは、四重極(quads;すなわち2対の平行に
アラインされた金属製ロッド)から成る質量分析計であり、1対のロッドは正電位を、他
の組のロッドは負電位を有する。検出されるためには、イオンはアラインされたロッドに
沿って並行する軌道の中央を通過しなければならない。所定の直流振幅および高周波電圧
で四重極を操作すると、所定のm/zを有するイオンだけが共鳴し、安定した軌道で四重極
を通過し、検出される。“陽イオンモード”とは、正電位を有するイオンが質量分析計に
よって検出されるモードを意味する。“陰イオンモード”とは、負電位を有するイオンが
質量分析計によって検出されるモードを意味する。“単一(single)イオンモニタリング
”または“選択(selected)モニタリング”(すなわちSIM)では、特定の質量だけが観
察されるように直流振幅および高周波電圧を調整する。
【0041】
本明細書で使用する“低分子量画分”とは、1つまたはそれ以上の低分子量分子を高濃
度で含有する画分である。低分子量分子の分子量は一般に約1000ダルトン未満、より一般
的には約500ダルトン未満である。
【0042】
本明細書で使用する“疎水性”とは、水に不溶である、または難溶解性であることを意
味する。“疎水性”化合物には長鎖アルカンがある。疎水性溶媒は疎水性化合物を溶解で
きる溶媒である。
【0043】
本明細書で数量に関して使用する“約”という用語は、その数量プラスまたはマイナス
10%を意味する。
【0044】
体液中のアミノ酸を同定および/または定量する方法を開示する。体液は血液、血漿、
血清、胆汁、唾液、尿、脳脊髄液などであってもよい。好ましい体液は血漿、血清、CSF
、尿、または唾液であり、血漿が最も好ましい。
【0045】
好ましくは、特定の体液中に存在しうるアミノ酸のタイプに相当する個別アミノ酸標準
物質群を体液サンプルに添加した後、任意の工程を実施する。好ましくはアミノ酸標準物
質群は、それに含まれるそれぞれの個別アミノ酸を既知量含有する。アミノ酸標準物質群
は、以下から成る群からのアミノ酸を1つまたはそれ以上含んでもよい:リジン、アスパ
ラギン、スレオニン、セリン、イソロイシン、メチオニン、プロリン、ヒスチジン、グル
タミン、アルギニン、グリシン、アスパラギン酸、グルタミン酸、アラニン、バリン、フ
ェニルアラニン、ロイシン、チロシン、システイン、トリプトファン、ホスホセリン、ス
ルホシステイン、アルギノコハク酸、ヒドロキシプロリン、ホスホエタノールアミン、
サルコシン、タウリン、カルノシン、シトルリン、アンセリン、1,3-メチルヒスチジン、
α-アミノアジピン酸、β-アラニン、エタノールアミン、γ-アミノ酪酸、β-アミノイソ
酪酸、α-アミノ酪酸、L-アロシスタチオニン(シスタチオニンA)、L-シスタチオニン(
シスタチオニンB)、シスチン、アロイソロイシン、ロイシン、DL-ヒドロキシリジン(ヒ
ドロキシリジン(1))、DL-アロヒドロキシリジン(ヒドロキシリジン(2))、オルニチン
、トリプトファン、ホモシスチン、およびそれらの異性体(例えば立体異性体)。
【0046】
アミノ酸標準物質群のアミノ酸を、体液中に見られる類似のアミノ酸と容易に識別でき
るように修飾してもよい。内部標準アミノ酸は、好ましくはそれが化学的および物理的に
同等であるように選択されたアミノ酸と最も近い挙動を示すが、質量分光分析の際には断
片化して異なる質量のイオンになる。従って好ましいアミノ酸標準物質群は重水素化され
たものである。
【0047】
誘導体化する前に体液を処理し、高濃度のアミノ酸調製品を得てもよい。体液のタイプ
によって種々の操作をこの目的で用いてもよい。これらにはろ過、沈殿、遠心分離、それ
らを組み合わせたものなどがある。低分子量画分の分離は好ましい方法である。少量サン
プルのサイズ分離は、好ましくは低分子量カットオフフィルターによるろ過によって行う
。ろ過された体液サンプル(すなわち透過液)は遊離アミノ酸を含有し、保持された成分
(すなわち残渣)は高分子量成分(例えばタンパク質)を含有する。濾液を得るための好
適なフィルターには45ミクロン、22ミクロン、および100,000、50,000、および10,000ダ
ルトン・カットオフフィルターがある。更に、アルコール(例えばメタノール)または酸
をサンプルに添加して高分子量成分を血漿サンプルから沈殿させてもよい。また、高速遠
心分離によって高分子量成分をサンプルから除去してもよい。
【0048】
アミノ酸の誘導体化は、体液サンプルに任意の必要な処理を行った後に実施してもよい
。一般に、サンプル中のアミノ酸を誘導体化して、LC-MS時のサンプル中の遊離アミノ酸
の分離および/または検出を容易にする(例えばプレカラム誘導体化を最初に行い、その
後LCを実施する)。誘導体化試薬は、クロマトグラフィーの際、またはその後の誘導体化
アミノ酸の検出を容易にする置換基(例えば蛍光体または発色団)を含んでもよい。更に
、誘導体化試薬は質量分析の際の誘導体化アミノ酸のイオン化を容易にする置換基を含ん
でもよい。一般的な誘導体化試薬にはイソチオシアネート(例えばフェニルイソチオシア
ネート(PITC))、o-フタルジアルデヒド(OPA)、2,4-ジニトロフルオロベンゼン(DNF
B)、およびNα-(2,4-ジニトロ-5-フルオロフェニル)-L-アラニンアミド(FDAA)がある
。好ましい態様では、誘導体化試薬はPITCである。
【0049】
サンプル中のアミノ酸を誘導体化した後、サンプルのクロマトグラフィー分離(好まし
くは高圧液体クロマトグラフィー分離)および質量分析(すなわちLC-MS)を行う。
【0050】
液体クロマトグラフィーおよび質量分析は、質量分析計と連通するクロマトグラフィー
用カラムを含む装置に誘導体化したサンプルを配して行うことができる。一般にクロマト
グラフィー用カラムは誘導体化アミノ酸の分離(すなわち分画)を容易にするために媒体
(すなわち充填剤)を含有する。媒体は直径約2-6μm、好ましくは約3μmの微細粒子を含
んでもよい。例えば粒子はシリカ粒子であってもよい。粒子は直径約50-300オングストロ
ーム、好ましくは150オングストロームの微細孔を有してもよい。更に粒子は約50-600m2/
g、好ましくは100m2/gの表面積を有してもよい。
【0051】
粒子は、アミノ酸の分離を容易にするために誘導体化アミノ酸と相互作用する結合表面
を有してもよい。好適な結合表面の一つは疎水性結合表面、例えばアルキル結合表面であ
る。アルキル結合表面はC-4、C-8、またはC-18アルキル結合基、好ましくはC-18結合基を
含んでもよい。
【0052】
カラムは好適な寸法を有することができる。特に、カラムは直径約0.5-5mmおよび長さ
約15-300mmであってもよい。好ましくはカラムは直径約2mm、長さ約50mmである。
【0053】
クロマトグラフィー用カラムの調製に好適な媒体および/または調製済みカラムは市販
品として入手することができる。特に、好適なカラムはThermo Electron社から入手でき
る(例えば250x2.1mm、5μm、BetaBasic C18カラム)。
【0054】
クロマトグラフィー用カラムはサンプルを受け入れるインレットポートおよび分画され
たサンプルを含む流出物を放出するアウトレットポートを含む。この方法では、誘導体化
されたサンプルはインレットポートでカラムに適用され、溶媒または溶媒混合物で溶出さ
れ、アウトレットポートで排出される。種々の溶媒モードをアミノ酸の溶出のために選択
してもよい。例えば、液体クロマトグラフィーはグラジエントモード、アイソクラティッ
クモード、またはポリタイピック(すなわち混合)モードを用いて行ってもよい。好まし
くは、液体クロマトグラフィーはグラジエントモードを用いて行う。グラジエントモード
では、誘導体化したサンプルをカラムに適用し、2つの溶媒の混合液(すなわち移動相)
をカラムに通過させてアミノ酸を溶出させる。一般に、当該分野で公知のように、一方の
溶媒は相対的に親水性の傾向があり、他方の溶媒は相対的に疎水性の傾向がある。本発明
の方法の実施に好適であることが明らかになっている溶媒配合の具体例として、親水性溶
媒が95% H2O、5% アセトニトリルであり、疎水性溶媒が100% アセトニトリルであっても
よい。必要により、配合溶媒は、誘導体化アミノ酸の分離および/または検出を容易にす
るために1つまたはそれ以上の試薬(例えば20mM 酢酸アンモニウム)を含有してもよい
。いくつかの試薬を移動相に添加してクロマトグラフィーのピーク形状の改善および/ま
たはLC-MSのイオン源の提供を行ってもよい。
【0055】
ほとんどの場合、グラジエント溶媒で液体クロマトグラフィーを行うには、2つのポン
プを使用して2溶媒を混合する。まず、溶媒を混合する際、カラムを通過する溶媒混合物
(すなわち移動相)は最も親水性の高い溶媒を含有する。混合液中の親水性溶媒の量を徐
々に減少させ、混合液中の疎水性溶媒の量を増加させて溶媒グラジエントを構築する。最
終的に、カラムを通過する溶媒混合物は最も疎水性の高い溶媒を含有する。このようにし
て、親水性アミノ酸は疎水性アミノ酸より先に溶出される。
【0056】
質量分析計には分画されたサンプルを受け入れるインレットポートが含まれ、これはク
ロマトグラフィー用カラムのアウトレットポートと連通している。質量分析計は、サンプ
ル中の1つまたはそれ以上のアミノ酸を同定するための1つまたはそれ以上の質量分析デ
ータセットを生み出すことができる。LC-MSの実施に好適な装置は市販されている。特に
、LC-MSの実施に好適な装置はAgilent Technologiesから入手できる(例えばAgilent 110
0シリーズLC/MSD)。
【0057】
質量分析計は、更なる分析のために分画されたサンプルをイオン化し、帯電した分子を
生成するためのイオン源を含む。サンプルのイオン化は以下によって実施してもよい:エ
レクトロスプレーイオン化法(ESI)、大気圧化学イオン化法(ACPI)、光イオン化法、
電子イオン化法、高速原子衝突(FAB)/液体二次イオン化法(LSIMS)、マトリクス支援
レーザー脱離イオン化法(MALDI)、フィールドイオン化法、電解脱離法、熱スプレー/
プラズマスプレーイオン化法、および粒子ビームイオン化法。エレクトロスプレーイオン
化法が好ましい。
【0058】
サンプルをイオン化した後、それによって生成した正または負に帯電したイオンを分析
し、質量電荷比(すなわちm/z)を測定することができる。好ましくは負帯電イオンを分
析する。質量電荷比を測定するのに好適な分析計には四重極型分析計、イオントラップ型
分析計、および飛行時間型分析計がある。好ましくは四重極を用いて質量電荷比を測定す
る。イオンの検出は、いくつかの検出法を用いて行ってもよい。例えば選択されたイオン
を検出するか(すなわち選択イオンモニタリングモード(SIM)を用いて)、またはスキ
ャンモードを用いてイオンを検出してもよい。好ましくはイオンはSIMを用いて検出する
【実施例
【0059】
実施例1 分析法
尿、血漿、および脳脊髄液(CSF)サンプルを健常個体から得た。一晩絶食した後の患
者からヘパリン化血漿サンプルを採取した。小児患者では非絶食サンプルを使用した。以
下の操作を用いて、尿、血漿、およびCSF中のアミノ酸を定量した。
【0060】
重水素化内部標準を約100μlの試験物質(すなわち血漿、尿、またはCSF)に添加して
試験混合液を調製した。次いで試験混合液を分画分子量10,000のフィルターに通過させ、
試験サンプルとして低分子量ろ液画分を得、その後窒素雰囲気下、40-75℃で乾燥させた
。乾燥サンプルを約25μlの再乾燥溶液(等量のメタノール、1M 酢酸ナトリウム、および
トリエチルアミン)に溶解し、窒素雰囲気下、40℃で乾燥した。サンプルを50μlの誘導
体化溶液(1.12μlの100%メタノール、1.60μlの水、1.60μlの100%トリエチルアミン、
および1.60μlの100%フェニルイソチオシアネート(PITC))に溶解した。次いで、溶解
したサンプルを約40℃で約15-20分間加熱し、その後窒素雰囲気下、50-60℃で乾燥した。
乾燥したサンプルを100μlの再構成溶液(95% H2O、5%アセトニトリル)に溶解し、ボル
テックスをし、LC/MS用バイアルに移した。
【0061】
アミノ酸サンプルのLC/MS測定は、Agilent 1100シリーズLC/MSDにより、Thermo Beta-B
asic C-18(250x2.1mm)HPLCカラムを用いて行った。移動相の組成は(A)20mM酢酸アン
モニウムおよび(B)100%アセトニトリル(50℃に加熱)であった。アミノ酸サンプルを
以下のステップグラジエントでカラムから溶出した:
【0062】
【表1】
【0063】
分離されたアミノ酸はHPLCカラムから溶出するとスプレーチャンバーに導入され、ここ
でエレクトロスプレーイオン源によって溶出液はスプレーとなり、脱溶媒される。PITC誘
導体をエレクトロスプレー工程で負に帯電させ、その後四重極質量フィルターで更に分離
した。アミノ酸イオンを検出し、その存在量を測定した。各アミノ酸イオンのエリア存在
量とその内部標準の比を6点検量線に対してプロットした。図1および2に典型的な測定
の結果を示す。
【0064】
実施例2 血漿中のアミノ酸含量の定量
新生児(30日以下)、乳児(1-23.9ヶ月)、小児(2-17.9歳)、および成人(18歳以上
)から採取したヘパリン化血漿サンプルについてアミノ酸分析を行った。全ての個体は臨
床的に正常と診断されたか、または感染性疾患判定のために提出されたサンプルから得た
。全ての被験体は完全に歩行可能、地域在住、健常であって、医薬品を服用していない。
試験群の人口統計は以下の通りである:
【0065】
【表2】
【0066】
これらの血漿サンプルの分析に基づき、標準的なパラメトリックおよびノンパラメトリ
ック統計学手法を用いて正常基準範囲を構築した。データがガウス分布を示す場合は、好
適な平均値±2SDの範囲を選択した。データがガウス分布を示さない場合は、ノンパラメ
トリック法で95パーセンタイル範囲または観察された範囲を選択した。表1にアッセイし
た各アミノ酸の正常基準範囲を定量限界(LOQ)と共に示す。基準範囲はμM(マイクロモ
ル/リットル)で表す。検出不能であるアミノ酸の正常範囲はLOQ未満であるか、それと
同値にすべきである。
【0067】
【表3】
【0068】
【表4】
【0069】
実施例3 尿中のアミノ酸含量の定量
新生児(30日以下)、乳児(1-23.9ヶ月)、小児(2-17歳)、および成人(17歳以上)
から採取した尿サンプルについてアミノ酸分析を行った。全ての個体は臨床的に正常と診
断されたか、または感染性疾患判定のために提出されたサンプルから得た。全ての被験体
は完全に歩行可能、地域在住、健常であって、医薬品を服用していない。試験群の人口統
計は以下の通りである:
【0070】
【表5】
【0071】
最初に濃度(アミノ酸μmol/尿1リットル;μM)基準に基づいて尿中のアミノ酸含量
を測定する。次いでアミノ酸濃度を尿クレアチニンレベルに基づいて標準化し、標準的な
パラメトリックおよびノンパラメトリック統計学手法を用いて正常基準範囲を構築した。
データがガウス分布を示す場合は、好適な平均値±2SDの範囲を選択した。データがガウ
ス分布を示さない場合は、ノンパラメトリック法で95パーセンタイル範囲または観察され
た範囲を選択した。表2にアッセイした各アミノ酸の正常基準範囲(mmol/molクレアチニ
ン)を示す。定量限界(LOQ)は尿中のアミノ酸測定値に基づき、クレアチニンによる補
正を行っていない。検出不能であるアミノ酸の正常範囲はLOQ未満であるか、それと同値
にすべきである。
【0072】
【表6】
【0073】
【表7】
【0074】
実施例4 脳脊髄液(CSF)中のアミノ酸含量の定量
新生児(3ヶ月以下)、乳児(3-23.9ヶ月)、小児(2-10歳)、および成人(10歳以上
)から採取したCSFサンプルについてアミノ酸分析を行った。全ての個体は臨床的に正常
と診断されたか、または感染性疾患判定のために提出されたサンプルから得た。全ての被
験体は完全に歩行可能、地域在住、健常であって、医薬品を服用していない。試験群の人
口統計は以下の通りである:
【0075】
【表8】
【0076】
これらのCSFサンプルの分析に基づき、標準的なパラメトリックおよびノンパラメトリ
ック統計学手法を用いて正常基準範囲を構築した。データがガウス分布を示す場合は、好
適な平均値±2SDの範囲を選択した。データがガウス分布を示さない場合は、ノンパラメ
トリック法で95パーセンタイル範囲または観察された範囲を選択した。表3にアッセイし
た各アミノ酸の正常基準範囲を定量限界(LOQ)と共に示す。基準範囲はμM(マイクロモ
ル/リットル)で表す。検出不能であるアミノ酸の正常範囲はLOQ未満であるか、それと
同値にすべきである。
【0077】
【表9】
【0078】
【表10】
【0079】
実施例5 唾液中のアミノ酸含量の定量
成人9人(男性3人、女性6人)の唾液サンプルについてアミノ酸分析を実施した。全
ての被験体は臨床的に正常であると診断され、完全に歩行可能、地域在住、健常であって
、医薬品を服用していない。表4にアミノ酸レベルの実測値の範囲を示す。診断目的では
、これらの範囲を“正常”範囲と見なしてもよい。検出不能であるアミノ酸の正常範囲は
LOQ未満であるか、それと同値にすべきである。
【0080】
【表11】
【0081】
【表12】
【0082】
本明細書中に引用する全ての特許および他の参考文献は本発明が属する分野の技術者の
技術レベルを示し、いずれの表および図面も含めてその全体が、各参考文献が個々に参照
により全体として組み込まれたのと同程度まで、参照により本明細書に組み込まれる。
【0083】
当業者に容易に認識されるように、本発明は記載する目的および利点、並びにそれらに
本質的に付随した目的および利点を達成するのに十分適合している。本明細書に現時点で
の好ましい態様の典型として記載した方法、変形、および組成物は代表例であり、本発明
の範囲を制限することを意図するものではない。当業者が行うその変更および他の使用は
本発明の意図に包含されるが、これは特許請求の範囲に定義する。
【0084】
当業者に容易に明白となるように、種々の置換および改変を、本発明の範囲および意図
から逸脱することなく、本明細書に開示する本発明に施与してもよい。従って、それらの
更なる態様は本発明および添付の特許請求の範囲内に包含される。
【0085】
本明細書に好適に例証した本発明を、任意の要素(単数または複数)、制限(単数また
は複数)を欠いた状態で実施してもよいが、それらについては特に本明細書に開示してい
ない。従って、例えば本明細書に記載する各場合において、“を含む”、“本質的に...
から成る”、および“から成る”という用語は互いに他の2つのいずれかで置換してもよ
い。使用した用語および表現は制限ではなく説明のための用語として使用するものであり
、それらの用語および表現の使用において提示および記載する特長に相当するものまたは
その一部のいずれをも除外する意図はなく、認識されるように、請求する本発明の範囲内
で種々の改変を行うことができる。従って、好ましい態様および必要に応じた特長によっ
て本発明を具体的に開示したが、当業者は本明細書に開示する概念の改変および変更を行
ってもよく、それらの改変および変更は添付の特許請求の範囲に定義される本発明の範囲
内に含まれると見なされることは理解されるべきである。
【0086】
更に、本発明の特長または観点をマーカッシュ群または他の選択肢群で記載する場合、
当業者に認識されるように、本発明はマーカッシュ群または他の群の個々のメンバーまた
はメンバーの亜群でも記載される。
【0087】
また、そうでない旨の記載をしないかぎり、態様に関して種々の数値を記載する場合、
任意の2つの異なる数値を範囲の端点とすることによって更なる態様が記載される。それ
らの範囲も記載する本発明の範囲内に含まれる。
【0088】
従って、更なる態様は本発明の範囲および添付の特許請求の範囲内に含まれる。
図1
図2