IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ シスメックス株式会社の特許一覧

特許7399238解析方法、情報処理装置、レポート提供方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-07
(45)【発行日】2023-12-15
(54)【発明の名称】解析方法、情報処理装置、レポート提供方法
(51)【国際特許分類】
   G16H 15/00 20180101AFI20231208BHJP
   G16B 20/00 20190101ALI20231208BHJP
【FI】
G16H15/00
G16B20/00
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2022151727
(22)【出願日】2022-09-22
(62)【分割の表示】P 2021121678の分割
【原出願日】2018-06-29
(65)【公開番号】P2022180553
(43)【公開日】2022-12-06
【審査請求日】2022-09-22
(73)【特許権者】
【識別番号】390014960
【氏名又は名称】シスメックス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 玲子
(72)【発明者】
【氏名】井上 二三夫
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 健一郎
【審査官】鹿谷 真紀
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/175330(WO,A1)
【文献】特開2016-014984(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G16H 10/00-80/00
G16B 20/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料の核酸配列をコンピュータにより解析する解析方法であって、
前記コンピュータは、
前記核酸配列をシーケンサーにより読み取ることで得られた配列情報に基づいて、前記核酸配列の遺伝子変異を解析し、
前記遺伝子変異に関する少なくとも一つの薬剤を検索し、
前記試料に対応する疾患に奏功性を有するとして複数の国の少なくとも一つで承認されている前記薬剤が少なくとも一つ検索された場合、前記遺伝子変異、前記薬剤、および、前記薬剤が承認されている国に関する情報を含むレポートを作成する、
解析方法。
【請求項2】
前記コンピュータは、
前記疾患に奏功性を有するとして複数の国の少なくとも一つで承認されている前記薬剤が少なくとも一つ検索された場合、当該薬剤と前記遺伝子変異とがコンパニオン診断に関する結果であることを示す情報を更に含む前記レポートを作成する、
請求項1に記載の解析方法。
【請求項3】
前記コンピュータは、
前記疾患に奏功性を有するとして複数の国の少なくとも一つで承認されている前記薬剤が検索されなかった場合、コンパニオン診断に関する前記遺伝子変異が検出されなかったことを示す情報を含む前記レポートを作成する、
請求項1に記載の解析方法。
【請求項4】
前記コンピュータは、
検索された前記薬剤のうち、前記疾患に奏功性を有するとして複数の国のいずれでも未承認である前記薬剤は、前記試料に対応する疾患とは異なる疾患に対して奏功性が認められることを示す情報を更に含む前記レポートを作成する、
請求項1に記載の解析方法。
【請求項5】
前記薬剤が承認されている国に関する情報は、当該国の国名を含む、
請求項1に記載の解析方法。
【請求項6】
試料の核酸配列を解析する情報処理装置であって、
前記核酸配列をシーケンサーにより読み取ることで得られた配列情報に基づいて、前記核酸配列の遺伝子変異を解析する変異同定部と、
前記遺伝子変異に関する少なくとも一つの薬剤を検索する薬剤検索部と、
前記試料に対応する疾患に奏功性を有するとして複数の国の少なくとも一つで承認されている前記薬剤が少なくとも一つ検索された場合、前記遺伝子変異、前記薬剤、および、前記薬剤が承認されている国に関する情報を含むレポートを作成するレポート作成部と、を備える、
情報処理装置。
【請求項7】
前記レポート作成部は、
検索された前記薬剤の少なくとも一つが前記疾患に奏功性を有するとして複数の国の少なくとも一つで承認されている場合、当該薬剤と前記遺伝子変異とがコンパニオン診断に関する結果であることを示す情報を更に含む前記レポートを作成する、
請求項6に記載の情報処理装置。
【請求項8】
前記レポート作成部は、
前記疾患に奏功性を有するとして複数の国の少なくとも一つで承認されている前記薬剤が検索されなかった場合、コンパニオン診断に関する前記遺伝子変異が検出されなかったことを示す情報を含む前記レポートを作成する、
請求項6に記載の情報処理装置。
【請求項9】
前記レポート作成部は、
検索された前記薬剤のうち、前記疾患に奏功性を有するとして複数の国のいずれでも未承認である前記薬剤は、前記試料に対応する疾患とは異なる疾患に対して奏功性が認められることを示す情報を更に含む前記レポートを作成する、
請求項6に記載の情報処理装置。
【請求項10】
前記薬剤が承認されている国に関する情報は、当該国の国名を含む、
請求項6に記載の情報処理装置。
【請求項11】
試料の核酸配列の解析結果を含むレポートを情報処理装置により提供するレポート提供方法であって、
前記情報処理装置は、
疾患を罹患した患者由来の前記試料の核酸配列の解析依頼を受け付け、
シーケンサーで読み取られた前記核酸配列の解析結果を含む前記レポートを解析依頼元に提供し、
前記レポートは、前記疾患に奏功性を有するとして複数の国の少なくとも一つで承認されている薬剤が前記核酸配列の遺伝子変異に基づいて少なくとも一つ検索された場合、前記遺伝子変異、前記薬剤、および、前記薬剤が承認されている国に関する情報を含む、
レポート提供方法。
【請求項12】
前記レポートは、
検索された前記薬剤の少なくとも一つが前記疾患に奏功性を有するとして複数の国の少なくとも一つで承認されている場合、当該薬剤と前記遺伝子変異とがコンパニオン診断に関する結果であることを示す情報を更に含む、
請求項11に記載のレポート提供方法。
【請求項13】
前記レポートは、
前記疾患に奏功性を有するとして複数の国の少なくとも一つで承認されている前記薬剤が検索されなかった場合、コンパニオン診断に関する前記遺伝子変異が検出されなかったことを示す情報を含む、
請求項11に記載のレポート提供方法。
【請求項14】
前記レポートは、
検索された前記薬剤のうち、前記疾患に奏功性を有するとして複数の国のいずれでも未承認である前記薬剤は、前記試料に対応する疾患とは異なる疾患に対して奏功性が認められることを示す情報を更に含む、
請求項11に記載のレポート提供方法。
【請求項15】
前記薬剤が承認されている国に関する情報は、当該国の国名を含む、
請求項11に記載のレポート提供方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、試料の核酸配列を解析する解析方法、試料の核酸配列を解析する情報処理装置、および、核酸配列の解析結果を含むレポートを提供するレポート提供方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の遺伝子検査技術の進展の中、患者の遺伝子配列を解析し、患者の遺伝的背景、生理的状態、および疾患の状態などの特性を考慮して患者毎に治療方針を適切に選択する個別化医療への期待が高まっている。
【0003】
近年、複数の遺伝子における異常を、次世代シーケンサーを用いて網羅的に調べることが可能な遺伝子パネル検査が登場しており、個別化医療において重要な枠割を担う技術として期待されている。
【0004】
さらに、最近では、所定の医薬品の奏功性を予測するコンパニオン診断(Companion Diagnostics、「CDx」と略記される)が着目されている。遺伝子パネル検査によって複数の遺伝子における異常を網羅的に調べた結果を用いてCDxを行うことも期待されている。
【0005】
特許文献1には、遺伝子や遺伝子発現タンパク質などが、正常な参照と比べて変化があるか否かを判定し、変化を示した遺伝子や遺伝子発現たんぱく質などと相互作用することができる薬物療法を同定するシステムが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2015-200678号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、特許文献1に記載のシステムでは、医療機関および医療従事者は、CDx用途での使用が認められた遺伝子パネル検査を行った検査機関から提供された遺伝子変異の結果が、CDxに関連するものであるかを判別することは困難である。
【0008】
特に、近年の遺伝子パネル検査では、複数の遺伝子における異常が一括して網羅的に調べられるため、遺伝子パネル検査の結果は非常に多くの情報が含まれている。一方、検査対象となった複数の遺伝子のすべてがCDx対象というわけではなく、所定の遺伝子に所定の異常が検出された場合がCDxの対象となる。また、同様の遺伝子の異常が検出された場合であっても、疾患の種類によっては、遺伝子異常の検出結果はCDxの対象にならない。それゆえ、遺伝子パネル検査を見た医療従事者が、検査結果に含まれる数多くの遺伝子情報の中から、実際にコンパニオン診断に適用できる遺伝子変異を判別し、その変異に有効な治療方針や用いる医薬品を決定するには、非常に高水準な専門性が必要となる。
【0009】
本発明の一態様は、遺伝子パネル検査の結果から、CDxに適用可能な遺伝子変異を容易に判別可能な、試料の核酸配列をコンピュータにより解析する解析方法、試料の核酸配列を解析する情報処理装置、および、核酸配列の解析結果を含むレポートを提供するレポート提供方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係る解析方法は、試料の核酸配列をコンピュータにより解析する解析方法であって、前記コンピュータは、前記核酸配列をシーケンサーにより読み取ることで得られた配列情報に基づいて、前記核酸配列の遺伝子変異を解析し、前記遺伝子変異に関する少なくとも一つの薬剤を検索し、前記試料に対応する疾患に奏功性を有するとして複数の国の少なくとも一つで承認されている前記薬剤が少なくとも一つ検索された場合、前記遺伝子変異、前記薬剤、および、前記薬剤が承認されている国に関する情報を含むレポートを作成する。
【0011】
前記解析方法において、前記コンピュータは、前記疾患に奏功性を有するとして複数の国の少なくとも一つで承認されている前記薬剤が少なくとも一つ検索された場合、当該薬剤と前記遺伝子変異とがコンパニオン診断に関する結果であることを示す情報を更に含む前記レポートを作成してもよい。
【0012】
前記解析方法において、前記コンピュータは、前記疾患に奏功性を有するとして複数の国の少なくとも一つで承認されている前記薬剤が検索されなかった場合、コンパニオン診断に関する前記遺伝子変異が検出されなかったことを示す情報を含む前記レポートを作成してもよい。
【0013】
前記解析方法において、前記コンピュータは、検索された前記薬剤のうち、前記疾患に奏功性を有するとして複数の国のいずれでも未承認である前記薬剤は、前記試料に対応する疾患とは異なる疾患に対して奏功性が認められることを示す情報を更に含む前記レポートを作成してもよい。
【0014】
前記解析方法において、前記薬剤が承認されている国に関する情報は、当該国の国名を含んでいてもよい。
【0015】
本発明の一態様に係る情報処理装置は、試料の核酸配列を解析する情報処理装置であって、前記核酸配列をシーケンサーにより読み取ることで得られた配列情報に基づいて、前記核酸配列の遺伝子変異を解析する変異同定部と、前記遺伝子変異に関する少なくとも一つの薬剤を検索する薬剤検索部と、前記試料に対応する疾患に奏功性を有するとして複数の国の少なくとも一つで承認されている前記薬剤が少なくとも一つ検索された場合、前記遺伝子変異、前記薬剤、および、前記薬剤が承認されている国に関する情報を含むレポートを作成するレポート作成部と、を備える。
【0016】
前記情報処理装置において、前記レポート作成部は、検索された前記薬剤の少なくとも一つが前記疾患に奏功性を有するとして複数の国の少なくとも一つで承認されている場合、当該薬剤と前記遺伝子変異とがコンパニオン診断に関する結果であることを示す情報を更に含む前記レポートを作成してもよい。
【0017】
前記情報処理装置において、前記レポート作成部は、前記疾患に奏功性を有するとして複数の国の少なくとも一つで承認されている前記薬剤が検索されなかった場合、コンパニオン診断に関する前記遺伝子変異が検出されなかったことを示す情報を含む前記レポートを作成してもよい。
【0018】
前記情報処理装置において、前記レポート作成部は、検索された前記薬剤のうち、前記疾患に奏功性を有するとして複数の国のいずれでも未承認である前記薬剤は、前記試料に対応する疾患とは異なる疾患に対して奏功性が認められることを示す情報を更に含む前記レポートを作成してもよい。
【0019】
前記情報処理装置において、前記薬剤が承認されている国に関する情報は、当該国の国名を含んでいてもよい。
【0020】
本発明の一態様に係るレポート提供方法は、試料の核酸配列の解析結果を含むレポートを情報処理措置により提供するレポート提供方法であって、前記情報処理装置は、疾患を罹患した患者由来の前記試料の核酸配列の解析依頼を受け付け、シーケンサーで読み取られた前記核酸配列の解析結果を含む前記レポートを解析依頼元に提供し、前記レポートは、前記疾患に奏功性を有するとして複数の国の少なくとも一つで承認されている薬剤が前記核酸配列の遺伝子変異に基づいて少なくとも一つ検索された場合、前記遺伝子変異、前記薬剤、および、前記薬剤が承認されている国に関する情報を含む。
【0021】
前記レポート提供方法において、前記レポートは、検索された前記薬剤の少なくとも一つが前記疾患に奏功性を有するとして複数の国の少なくとも一つで承認されている場合、当該薬剤と前記遺伝子変異とがコンパニオン診断に関する結果であることを示す情報を更に含んでいてもよい。
【0022】
前記レポート提供方法において、前記レポートは、前記疾患に奏功性を有するとして複数の国の少なくとも一つで承認されている前記薬剤が検索されなかった場合、コンパニオン診断に関する前記遺伝子変異が検出されなかったことを示す情報を含んでいてもよい。
【0023】
前記レポート提供方法において、前記レポートは、検索された前記薬剤のうち、前記疾患に奏功性を有するとして複数の国のいずれでも未承認である前記薬剤は、前記試料に対応する疾患とは異なる疾患に対して奏功性が認められることを示す情報を更に含んでいてもよい。
【0024】
前記レポート提供方法において、前記薬剤が承認されている国に関する情報は、当該国の国名を含んでいてもよい。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、遺伝子パネル検査の結果から、CDxに適用可能な所定変異を容易に判別することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】本発明の一実施形態に係る解析方法におけるレポート作成処理の流れの一例を示すフローチャートである。
図2】本発明の一実施形態に係る解析方法によってレポートを作成する情報処理装置、および情報処理装置に配列情報を提供するシーケンサーからなるシステム構成例を示す図である。
図3】本発明の一実施形態に係る情報処理装置を備える遺伝子解析システムの構成例を示す図である。
図4】遺伝子解析システムにおいて行われる主要な処理の例を示すシーケンス図である。
図5】管理サーバに記憶されているデータのデータ構造の例を示す図である。
図6】情報処理装置の構成の例を示す図である。
図7】遺伝子パネルに関する情報の入力を受け付ける処理の流れの一例を示すフローチャートである。
図8】遺伝子パネルに関する情報の入力に用いられるGUIの例を示す図である。
図9】遺伝子パネル関連情報データベースのデータ構造の例を示す図である。
図10】遺伝子パネルに関する情報の入力に用いられるGUIの別の例を示す図である。
図11】疾患を識別するための識別情報の入力に用いられるGUIの別の例を示す図である。
図12】遺伝子パネルに関する情報を操作者が更新する場合に用いられるGUIの例を示す図である。
図13】遺伝子パネルに関する情報を操作者が更新する場合に用いられるGUIの別の例を示す図である。
図14】試料の遺伝子配列を解析するための処理の流れの一例を示すフローチャートである。
図15】試料DNAの塩基配列をシーケンサーによって解析するための前処理の手順の一例を説明するフローチャートである。
図16】試料DNAの塩基配列をシーケンサーによって解析するための前処理の手順の別の一例を説明するフローチャートである。
図17】試料DNAの塩基配列をシーケンサーによって解析するための前処理の手順の他の一例を説明するフローチャートである。
図18】試料DNAの塩基配列をシーケンサーによって解析するための前処理の手順の他の一例を説明するフローチャートである。
図19】品質管理試料の一例を説明する図である。
図20】遺伝子パネル関連情報データベースのデータ構造の例を示す図である。
図21】品質管理試料の具体例を示す図である。
図22】試料の断片化の工程(a)、およびインデックス配列およびアダプター配列の付与の工程(b)の例について説明する図である。
図23】ハイブリダイズの工程の一例について説明する図である。
図24】解析対象となるDNA断片を回収する工程の一例について説明する図である。
図25】試料DNAの塩基配列をシーケンサーによって解析する手順の一例を説明するフローチャートである。
図26】DNA断片をフローセルに供する工程の一例について説明する図である。
図27】解析対象となるDNA断片を増幅する工程の一例について説明する図である。
図28】シーケンシング工程の一例について説明する図である。
図29】品質評価装置による解析の流れの一例を説明するフローチャートである。
図30】リード配列情報のファイルフォーマットの一例を示す図である。
図31】(a)は、データ調整部によるアライメントを説明する図であり、(b)は、データ調整部のアライメント結果のフォーマットの一例を示す図である。
図32】参照配列データベースの構造例を示す図である。
図33】参照配列データベースに含まれる参照配列(野生型の配列を示すものでないもの)に組み込まれる既知の変異の例を示す図である。
図34】アライメントの詳細な工程の一例を説明するフローチャートである。
図35】(a)は、スコア算出の一例を示す図であり、(b)は、スコア算出の他の例を示す図である。
図36】変異同定部が生成する結果ファイルのフォーマットの一例を示す図である。
図37】変異データベースの構造の一例を示す図である。
図38】変異データベース中の変異情報の構造の詳細例を示す図である。
図39】(a)は、解析対象の遺伝子と位置情報との対応関係を示すテーブルであり、(b)は、遺伝子パネルに関する情報に対応しない変異を、結果ファイルから除外した様子を示す図である。
図40】薬剤検索部が変異に関する薬剤のリストを生成する処理の一例を示すフローチャートである。
図41】薬剤データベースのデータ構造の例を示す図である。
図42】薬剤データベースのデータ構造の例を示す図である。
図43】薬剤検索部が変異に関する薬剤に関する情報を含むリストを生成する処理の一例を示すフローチャートである。
図44】薬剤検索部が薬剤データベースを検索して得た情報に基づいて、適用外使用の可能性がある薬剤の有無を判定し、判定結果を含むリストを生成する処理の一例を示すフローチャートである。
図44A】試料を収容する容器に付されたラベルの例を示す図である。
図44B】試料を収容する容器に付されたラベルの他の一例を示す図である。
図45】薬剤データベースのデータ構造の例を示す図である。
図46】遺伝子パネルに関する情報の入力に用いられるGUIの別の例を示す図である。
図47】CDx情報データベースのデータ構造の例を示す図である。
図48】レポート作成部が、所定の薬剤の奏功性に関する補助情報を含むレポートを作成する処理の一例を示すフローチャートである。
図49】レポート作成部が、所定の薬剤の奏功性に関する補助情報を含むレポートを作成する処理の別の一例を示すフローチャートである。
図50】レポート作成部が、使用された遺伝子パネルがCDx対象であるか否かに応じて、CDxの奏功性に関する補助情報を含むレポートを作成する処理の一例を示すフローチャートである。
図51】レポート作成部が、所定の薬剤の奏功性に関する補助情報を含むレポートを作成する処理の他の一例を示すフローチャートである。
図52】作成されるレポートの一例を示す図である。
図53】作成されるレポートの一例を示す図である。
図54】作成されるレポートの一例を示す図である。
図55】作成されるレポートの一例を示す図である。
図56】作成されるレポートの一例を示す図である。
図57】作成されるレポートの一例を示す図である。
図58】作成されるレポートの一例を示す図である。
図59】作成されるレポートの一例を示す図である。
図60】作成されるレポートの一例を示す図である。
図61】検査機関が遺伝子解析システムにログインする場合に表示されるGUIの一例であり、
図62】検査機関の契約種別がCDx用途を含まない場合に作成されるレポートの一例を示す図である。
図63】品質評価指標の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
〔実施形態1〕
本発明の一実施形態に係る解析方法は、コンピュータを用いて、被検者から採取された試料の核酸配列を解析する解析方法である。この解析方法では、核酸配列から読み取られた配列情報に基づいて、所定変異(例えば、CDx対象の遺伝子変異)を特定し、試料に対応する疾患に応じて、所定変異を有する被検者に対する所定の薬剤の奏功性に関連する情報を表示するレポートを作成する。まず、この解析方法の概要について、図1を用いて説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る解析方法を実行する情報処理装置1の処理の流れの概要を示すフローチャートである。
【0028】
なお、情報処理装置1は、本発明の一実施形態に係る解析方法を実行するコンピュータである。図2は、本発明の一実施形態に係る解析方法によってレポートを作成する情報処理装置1、および情報処理装置1に配列情報を提供するシーケンサー2からなるシステム構成例を示す図である。情報処理装置1は、図2に示すように、シーケンサー2が生成した配列情報を解析し、遺伝子異常の有無を解析する。シーケンサー2が生成した配列情報は、例えば、シーケンサー2に接続された情報記憶媒体に格納され、情報処理装置1は、情報記憶媒体から配列情報を取得する。情報処理装置1は、シーケンサー2によって読み取られた配列情報を、通信回線を介して受信してもよい。
【0029】
ここで、「読み取られた配列情報」とは、シーケンシングによって得られたポリヌクレオチド配列を意味しており、「配列情報」はシーケンサー2により出力されるリード配列の情報を指している。
【0030】
「遺伝子」とは、スタートコドンからストップコドンまでのゲノム上の配列、ゲノム上の配列から生成されたmRNA、およびゲノム上のプロモータ領域などを含む。「遺伝子変異」とは、遺伝子の多型、置換およびInDelなどの変異のうちの少なくともいずれかを意味する。「InDel(Insertion and/or Deletion)」は、挿入、欠失、または、挿入および欠失の両方が含まれた遺伝子変異を意味している。遺伝子の「多型」は、SNV(Single Nucleotide Variant、一塩基多型)、VNTR(Variable Nucleotide of Tandem Repeat、反復配列多型)、およびSTRP(Short Tandem Repeat Polymorphism、マイクロサテライト多型)などを含む。
【0031】
まず、情報処理装置1は、ステップS1において、試料の核酸配列の配列情報に基づいて、CDx対象の所定の遺伝子変異が検出されたか否かを確認する。次に、情報処理装置1は、ステップS2において、所定の疾患の試料であるか否かを確認する。情報処理装置1は、例えば、試料に対応づけられた疾患が、検出された所定の遺伝子変異との関係でCDxの対象となる所定の疾患であるか否かを確認する。所定の疾患の試料である場合(ステップS2にてYES)、ステップS3において、情報処理装置1は、所定の遺伝子変異に関連付けられた所定の薬剤の、被検者に対する奏功性に関する情報(以下、単に「補助情報」とも記す場合がある)を含むレポートを作成する。一方、ステップS1およびステップS2にてNOの場合には、ステップS4において、情報処理装置1は、CDx対象の遺伝子変異が検出されなかったことが判別可能なレポートを作成する。
【0032】
「所定の薬剤」とは、コンパニオン診断(CDx)に適用可能な薬剤などを意図している。CDxに適用可能な薬剤とは一般に、治療の効果がより期待される被検者(例えば、患者)を特定するための薬剤、特定の副作用が発現するおそれの高い被検者を特定するための薬剤、用法・用量の最適化または投与中止の判断を適切に実施するための薬剤などと定義される。
【0033】
この解析方法を採用することにより、情報処理装置1は、所定の疾患の検体における所定の遺伝子変異の検出に応じて、所定の薬剤の奏功性に関する補助情報を含むレポートを作成することができる。例えば、情報処理装置1は、複数の疾患に関連する、複数の遺伝子における複数の異常を一括で分析することが可能な遺伝子パネルを用いたパネル検査の結果において、疾患の種類に応じ、コンパニオン診断(CDx)に適用可能な薬剤の奏功性に関連する情報を表示するレポートを作成する。
【0034】
このように作成されたレポートは、複数の遺伝子異常を網羅的に解析する遺伝子パネル検査の結果においても、CDxに適用可能な遺伝子変異を判別することが容易である。このようなレポートを医療機関などに提供すれば、遺伝子変異の検出に基づいたCDxに適用可能な薬剤の奏功性に関連する薬剤の利用および個別化医療を、より実効的なものにすることができる。
【0035】
以下、本発明の一実施形態について、より詳細に説明する。
【0036】
(遺伝子解析システム100の適用例)
まず、本発明の一実施形態に係る情報処理装置1を含む遺伝子解析システム100の概略について、図3を用いて説明する。図3は、本発明の一実施形態に係る情報処理装置1を備える遺伝子解析システム100の構成例を示す図である。遺伝子解析システム100は、遺伝子の配列情報を解析するシステムであって、情報処理装置1、シーケンサー2、および管理サーバ3を備えている。
【0037】
図3に示す遺伝子解析システム100は、検査機関120において実行される解析全般を管理する解析システム管理機関130、および医療機関210からの解析依頼に応じて、提供された試料を解析して、解析結果を医療機関210に提供する検査機関120において適用されている。
【0038】
検査機関120は、医療機関210から提供された試料を検査・解析し、解析結果に基づいたレポートを作成し、医療機関210に該レポートを提供する機関である。図3に示す例では、検査機関120には、シーケンサー2、および情報処理装置1などが設置されているがこれに限定されない。例えば、検査機関120が、情報処理装置1が設置されている施設とシーケンサー2が設置されている別の施設とを備える構成であってもよい。
【0039】
解析システム管理機関130は、遺伝子解析システム100を利用する各検査機関120において実行される解析全般を管理する機関である。解析システム管理機関130は、検査機関120と同一の機関であってもよい。
【0040】
医療機関210は、医師、看護師、薬剤師等が患者に対して診断、治療、調剤等の医療行為を行う機関であり、例えば、病院、診療所、薬局等が挙げられる。
【0041】
なお、図3は、検査機関120と医療機関210とが個別の機関である場合を例示しているが、検査機関120および医療機関210が一体となった施設、例えば、大学病院などにおいても、遺伝子解析システム100を好適に利用することが可能である。
【0042】
(遺伝子解析システム100を適用例における処理)
続いて、図3に示す遺伝子解析システム100の適用例における処理の流れについて、図4を用いてより具体的に説明する。図4は、遺伝子解析システム100において行われる主要な処理の例を示すシーケンス図である。なお、図4に示された処理は、各機関で行われる処理の一部分に過ぎない。
【0043】
<遺伝子解析システム利用の申請および利用開始>
まず、遺伝子解析システム100の利用を希望する検査機関120は、情報処理装置1を導入する。そして、遺伝子解析システム100の利用を解析システム管理機関130に申請する(ステップS101)。S101は省略可能である。例えば、解析システム管理機関130が検査機関120と同一である場合、S101は省略される。
【0044】
検査機関120および解析システム管理機関130は複数の契約種別の中から、遺伝子解析システム100の利用に関して、事前に所望の契約を締結することができる。例えば、解析システム管理機関130から検査機関120に提供されるサービス内容、解析システム管理機関130が検査機関120に対して請求するシステム利用料の決定方法、およびシステム利用料の支払い方法などが異なる複数の契約種別から選択されたものであってもよい。解析システム管理機関130の管理サーバ3は、検査機関120からの申請に応じて、検査機関120との間で締結された契約の内容を特定する(ステップS102)。S102は省略可能である。例えば、解析システム管理機関130が検査機関120と同一である場合、S102は省略される。
【0045】
次に、解析システム管理機関130によって管理されている管理サーバ3は、契約を締結した検査機関120の情報処理装置1に対して、検査機関IDを付与し、各種サービスの提供を開始する(ステップS103)。S103は省略可能である。例えば、解析システム管理機関130が検査機関120と同一である場合、S103は省略される。解析システム管理機関130が検査機関120と同一である場合、検査機関IDや各種サービスは、検査機関120自身で管理される。
【0046】
情報処理装置1は、遺伝子配列の解析結果、および該解析結果に基づくレポートなどを制御するためのプログラムや情報等を、管理サーバ3から受信する。これにより、検査機関120は、解析システム管理機関130から各種サービスを受けることが可能となる。そして、情報処理装置1は、入力された遺伝子パネルに関する情報に適合した、解析結果およびレポートなどを出力できる。解析システム管理機関130が検査機関120と同一である場合、遺伝子配列の解析結果、および該解析結果に基づくレポートなどを制御するためのプログラムや情報等は、検査機関120自身で管理される。
【0047】
遺伝子パネルは、多くの場合、プライマーやプローブなどの一揃いの試薬を含んでいる。なお、遺伝子パネルは、遺伝子配列に生じた変異、一塩基多型(SNP、Single Nucleotide Polymorphism)、およびコピー数多型(コピー数異常)(CNV、Copy Number Polymorphism)などの多型を解析するために用いられてもよい。また、遺伝子パネルは、解析対象遺伝子全体の変異などの量に関する情報(Tumor Mutation Burdenなどとも呼ばれる)の出力や、メチル化頻度の算出に用いられてもよい。
【0048】
なお、本明細書において、「遺伝子パネル」とは、複数の遺伝子における複数の異常を一括で分析することが可能であり、複数の疾患の検体を検査可能な遺伝子パネルである。このような遺伝子パネルは、「マルチパネル」および「ラージパネル」とも呼称され、複数の疾患に関連する遺伝子を解析対象とする遺伝子パネルである。このような遺伝子パネルにおいては、塩基長が10Mb(1000万塩基)以上のエクソン領域から読み取られた塩基配列が解析対象となる。
【0049】
<検査機関120への解析依頼>
医療機関210では、医師等が必要に応じて、被検者の病変部位の組織および血液などの試料を採取する。採取した試料の解析を検査機関120に依頼する場合、例えば、医療機関210に設けられた通信端末5から解析依頼が送信される(ステップS105)。検査機関120に試料の解析を依頼する場合、医療機関210は、解析依頼の送信とともに、試料毎に付与された試料IDを検査機関120に提供する。試料毎に付与された試料IDは、各試料が採取された被検者に関する情報(例えば、患者IDなど)および該被検者の疾患を識別するための識別情報(例えば、疾患名および疾患ID)などと各試料とを対応付けるものである。なお、医療機関210から検査機関120に、試料IDと共に、被検者IDおよび疾患IDなども送信されてもよい。
【0050】
以下では、医療機関210が、パネル検査を検査機関120に解析を依頼する場合を例に挙げて説明する。なお、パネル検査は臨床検査に限らず、研究用途の検査も含む。
【0051】
なお、本明細書において「被検者」とは、本明細書の実施例はヒトに関している。しかしながら、本発明の概念はヒト以外の任意の動物などの生物由来のゲノムに適用でき、医療、獣医学および動物科学などの分野においても有用である。
【0052】
医療機関210から遺伝子パネル検査が依頼される場合、所望の遺伝子パネルが指定されてもよい。それゆえ、図4のステップS105において医療機関210から送信される解析依頼には、遺伝子パネルに関する情報が含まれ得る。ここで、遺伝子パネルに関する情報は、遺伝子パネルを特定するために用いられ得る情報であればよく、例えば遺伝子パネル名、およびパネル検査における解析対象の遺伝子の名などであってよい。
【0053】
<検査機関120での解析>
情報処理装置1は、医療機関210から解析依頼を受信する(S106)。さらに、情報処理装置1は、該解析依頼の送信元である医療機関210から試料を受け取る。
【0054】
なお、検査機関120が医療機関210から依頼を受ける解析において用いられ得る遺伝子パネルは複数あり、かつ、解析対象の遺伝子群は遺伝子パネル毎に決まっている。検査機関120は、複数の遺伝子パネルを解析の目的に合わせて使い分けることも可能である。すなわち、医療機関210から提供された第1試料について、第1の解析対象遺伝子群を解析するためには第1遺伝子パネルが使用され、第2試料について、第2の解析対象遺伝子群を解析するためには第2遺伝子パネルが使用され得る。
【0055】
情報処理装置1は、操作者から、試料を解析するために使用する遺伝子パネルに関する情報の入力を受け付ける(ステップS107)。
【0056】
検査機関120では、受け取った試料に対して遺伝子パネルを用いて前処理を行い、シーケンサー2を用いたシーケンシングが行われる(ステップS108)。
【0057】
また、検査機関120では、通常の試料のシーケンシングとは別に、遺伝子パネルに対応する所定の品質管理試料に対して遺伝子パネルを用いて前処理を行い、シーケンサー2を用いたシーケンシングを行う(ステップS108)ことにより、精度管理を行っている。
【0058】
品質管理試料を前処理、シーケンシング、および配列解析などの遺伝子検査に供した場合の結果は、パネル検査の品質評価指標として利用される。
【0059】
遺伝子パネル毎に、1または複数の品質管理試料が対応付けられていてもよく、例えば、遺伝子パネル毎に、対応する品質管理試料が予め調製されていてもよい。また、品質管理試料は単独で測定してもよいし、医療機関210から提供された試料と共に測定してもよい。
【0060】
ここで、品質管理試料は、第1の種別の遺伝子変異と、第1の種別とは異なる第2の種別の遺伝子変異を検査する遺伝子検査において用いる品質管理用の試料である。「品質管理試料」は、第1の種別の遺伝子変異を有する第1の標準遺伝子と、第2の種別の遺伝子変異を有する第2の標準遺伝子を含む調製物である。
【0061】
前処理とは、試料に含まれるDNAなどの遺伝子を断片化して、断片化された遺伝子を回収するまでの処理が含まれ得る。また、シーケンシングとは、前処理にて回収された解析対象となる1または複数のDNA断片の配列を読み取る処理を含んでいる。シーケンサー2によるシーケンシングによって読み取られた配列情報は、リード配列情報として情報処理装置1に入力される。なお、情報処理装置1は、リード配列情報をシーケンサー2から通信回線を介して取得する構成であってもよい。例えば、医療機関210および解析システム管理機関130にシーケンサー2が設置されており、情報処理装置1がシーケンサー2によって読み取られたリード配列情報を、通信回線4(ネットワーク)を介して取得する構成であってもよい。この構成によれば、シーケンサー2が設置されていない検査機関120においても、外部からリード配列情報を取得して、遺伝子変異を有する前記被検者に対する薬剤の奏功性に関する情報である補助情報を含むレポートを作成することができる。
【0062】
また、前処理とは、試料および品質管理試料に含まれるDNAなどの遺伝子を断片化して、断片化された遺伝子を回収するまでの処理が含まれ得る。
【0063】
リード配列は、シーケンシングによって得られたポリヌクレオチド配列を意味しており、シーケンサー2から出力される配列を指している。
【0064】
シーケンシングとは、前処理にて回収された解析対象となる1または複数のDNA断片の配列を読み取る処理を含んでいる。シーケンサー2によるシーケンシングによって読み取られた配列情報は、リード配列情報として情報処理装置1に入力される。
【0065】
シーケンサー2は、遺伝子配列の読み取り工程に関する品質評価指標であるクオリティスコアを含むリード配列情報を情報処理装置1に出力してもよい。また、シーケンサー2は、解析対象となるDNA断片の増幅工程に関する品質評価指標であるクラスター濃度を情報処理装置1に出力してもよい。なお、「クオリティスコア」、および「クラスター濃度」については、後に説明する。
【0066】
情報処理装置1は、シーケンサー2からリード配列情報を取得して、遺伝子配列の解析を行う(ステップS109)。
【0067】
なお、品質管理試料もまた、医療機関210からの試料のパネル検査において行われる工程と同じ工程にて処理され、品質管理試料の遺伝子の配列情報が解析される。品質管理試料を解析した結果に基づいて、パネル検査の品質を評価するための品質評価指標が生成される。
【0068】
次に、情報処理装置1は、品質管理部117によって生成された品質評価指標に基づいて、パネル検査の品質を評価する(ステップS110)。具体的には、情報処理装置1は、図6の品質評価基準126に記憶されている品質評価指標毎に設定された評価基準と、生成された品質評価指標とを比較した比較結果に基づいて、各パネル検査の品質が評価され得る。
【0069】
情報処理装置1は、ステップS109における解析結果、および品質管理試料を解析した結果に基づいて生成された指標に基づいてレポートを作成し(ステップS111)、作成したレポートを通信端末5に送信する(ステップS112)。レポートには、例えば、リード配列情報をアライメント結果のデータ、および同定された遺伝子変異等に関するデータ等の情報処理装置1が解析した結果のデータ自身、およびパネル検査の品質に関する情報が含まれていてもよい。
【0070】
なお、作成したレポートは検査機関120にて印刷されてもよく、例えば、検査機関120は作成されたレポートを紙媒体として医療機関210へ送付してもよい。
【0071】
遺伝子解析システム100を利用する検査機関120の情報処理装置1は、管理サーバ3に、解析に用いた遺伝子パネルに関する情報、解析した遺伝子に関する情報、解析実績、および、行われた遺伝子検査について生成された品質評価指標などを通知する(ステップS114)。S114は省略可能である。例えば、解析システム管理機関130が検査機関120と同一である場合、S114は省略される。この場合、検査機関120自身が、解析実績・品質評価指標などを管理する。
【0072】
管理サーバ3は、例えば通信回線4を介して、遺伝子解析システム100を利用する各検査機関120の情報処理装置1から、検査機関ID、遺伝子パネルID、遺伝子ID、および解析実績などを取得する。また、管理サーバ3は、取得した検査機関ID、遺伝子パネルID、遺伝子ID、解析実績、および品質評価指標などを対応付けて記憶する(ステップS115)。S115は省略可能である。例えば、解析システム管理機関130が検査機関120と同一である場合、S115は省略される。この場合、検査機関120自身が、解析実績・品質評価指標などを管理する。
【0073】
なお、検査機関IDは、遺伝子の配列解析を行う検査機関120を特定する情報であり、情報処理装置1を利用する検査機関120に所属している操作者毎に付与されている識別情報である操作者IDであってもよい。
【0074】
遺伝子パネルIDは、解析対象の遺伝子の解析に用いる遺伝子パネルを特定するために付与される識別情報である。遺伝子パネルに付与された遺伝子パネルIDは、遺伝子パネル名および該遺伝子パネルを提供している会社名などと対応付けられる。
【0075】
遺伝子IDは、解析対象の遺伝子を特定するために遺伝子毎に付与された識別情報である。
【0076】
解析実績は、遺伝子の配列情報の解析状況に関する情報である。解析実績は、例えば、情報処理装置1において所定の遺伝子パネルを用いた解析が実行された配列解析回数であってもよいし、解析された遺伝子数であってもよいし、同定された遺伝子変異の数などの累計であってもよい。あるいは、解析において処理されたデータ量に関する情報であってもよい。
【0077】
管理サーバ3は、所定の期間(例えば、日、週、月、年など任意の期間)における解析実績を検査機関120毎に集計し、集計結果および契約種別に応じたシステム利用料を決定する(ステップS116)。解析システム管理機関130は、決定したシステム利用料を検査機関120に対して請求し、システム利用料を解析システム管理機関130に支払うように要求してもよい。S116は省略可能である。例えば、解析システム管理機関130が検査機関120と同一である場合、S116は省略される。
【0078】
(遺伝子解析システム100の構成例)
遺伝子解析システム100は、遺伝子の配列情報を解析するシステムであって、少なくとも情報処理装置1と、管理サーバ3とを備える。情報処理装置1はイントラネットおよびインターネットなどの通信回線4を介して管理サーバ3と接続されている。
【0079】
(シーケンサー2)
シーケンサー2は、試料に含まれる遺伝子の塩基配列を読み取るために利用される塩基配列解析装置である。
【0080】
本実施形態に係るシーケンサー2は、好ましくは、次世代シークエンシング技術を用いたシーケンシングを行う次世代シーケンサー、または第3世代のシーケンサーであることが好ましい。次世代シーケンサーは、近年開発の進められている一群の塩基配列解析装置であり、クローン的に増幅したDNAテンプレートまたは単独DNA分子をフローセル内で大量に並列処理を行うことによって、飛躍的に向上した解析能力を有している。
【0081】
また、本実施形態において使用可能なシークエンシング技術は、同一の領域を重複して読むこと(ディープシーケンシング)により複数のリードを取得するシーケンシング技術であり得る。
【0082】
本実施形態において使用可能なシークエンシング技術の例としては、イオン半導体シークエンシング、パイロシークエンシング(pyrosequencing)、可逆色素ターミネータを使用するシークエンシング・バイ・シンセシス(sequencing-by-synthesis)、シークエンシング・バイ・リゲーション(sequencing-by-ligation)、およびオリゴヌクレオチドのプローブ結紮によるシークエンシングなど、1ラン当たりに多数のリードを取得可能なシーケンシング技術が挙げられる。また、特定の領域の塩基配列ではなく、ゲノム全体の塩基配列を解析するホールゲノムシークエンス(whole genome sequencing)に本発明を適用してもよい。ホールゲノムシークエンスは、複数の疾患に関連する遺伝子を解析対象とする遺伝子パネルに適用され、10Mb(1000万塩基)以上のエクソン領域から塩基配列を読み取ることが可能である。
【0083】
シーケンシングに用いるシーケンシングプライマーは特に限定されず、目的の領域を増幅させるのに適した配列に基づいて、適宜設定される。また、シーケンシングに用いられる試薬についても、用いるシーケンシング技術およびシーケンサー2に応じて好適な試薬を選択すればよい。前処理からシーケンシングまでの手順については、後に具体例を挙げて説明する。
【0084】
(管理サーバ3)
次に、管理サーバ3に格納されているデータについて、図5を用いて説明する。図5は、管理サーバ3に記憶されているデータのデータ構造の例を示す図である。解析システム管理機関130は、図5に示す各データに基づいて、各検査機関に請求するシステム利用料を決定する。管理サーバ3は、遺伝子の配列解析を行う検査機関120を特定する情報(例えば、検査機関ID)と、使用された遺伝子パネルに関する情報と、遺伝子の配列の解析状況に関する情報(例えば、解析実績)とを含む情報を、情報処理装置1から通信回線4を介して受信する。なお、図5では、「遺伝子パネルA」は「Aパネル」、「遺伝子パネルB」は「Bパネル」などと表記されており、「遺伝子パネルID」は「パネルID」と表記されている。
【0085】
図5に示すデータ3Aでは、遺伝子解析システム100を利用する検査機関の名称と、検査機関毎に付与された検査機関IDとが関連付けられている。図5に示すデータ3Bでは、解析システム管理機関130が検査機関120との間で締結する契約の種別と、各契約を締結した検査機関に対して提供されるサービス(例えば、使用可能な遺伝子パネル)と、システム利用料とが関連付けられている。
【0086】
例えば、検査機関「P機関」が解析システム管理機関130との間で「プラン1」の契約を締結している場合、解析システム管理機関130は検査機関Pに対して、動作回数に応じた利用料を請求する。なお、「動作回数」とは、例えば、情報処理装置1が行ったパネル検査の回数である。遺伝子解析システム100の利用を開始する場合、検査機関Pは、検査機関Pの検査機関IDおよびパスワードを用いて、遺伝子解析システム100にログインする。管理サーバ3は、ログイン時に入力された検査機関IDに基づいて、検査機関名、および契約種別などを特定することができる。
【0087】
「プラン3」は、「プラン1」に「CDx用途」に用いることが可能な補助情報の提供が付加された、「プラン1」の上位プランである。したがって、「プラン3」の契約を締結するためには、「プラン1」の契約を締結するための費用よりも高額であってもよい。
【0088】
「プラン3」の契約を締結した検査機関に対しては、コンパニオン診断(CDx)に適用可能な薬剤の奏功性に関連する補助情報を含むレポートを作成するために必要なCDx情報が提供される(図4のS104参照)。例えば、検査機関「Q機関」が解析システム管理機関130との間で「プラン3」の契約を締結している場合、管理サーバ3は、検査機関Qが遺伝子解析システム100にログインする時に入力された検査機関IDに基づいて、検査機関名、および契約種別などを特定し、CDxに適用可能な薬剤の奏功性に関連する補助情報を検査機関Qに対して提供する。これにより、検査機関Qは、医療機関210に対して、CDxに適用可能な薬剤の奏功性に関連する補助情報を含むレポートを提供することができる。
【0089】
図5に示すデータ3C~3Eはそれぞれ、遺伝子解析システム100を利用する検査機関が2017年8月1日~2017年8月31日までの期間に行った動作回数、解析した遺伝子、および同定した遺伝子変異の総数、に関する解析実績である。これらの解析実績は、情報処理装置1から管理サーバ3に送信され、管理サーバ3において記憶される。解析システム管理機関130は、これらの解析実績のデータに基づいて、各検査機関に請求するシステム利用料を決定する。実績の集計期間は、上記に限らず、日、週、月、年など任意の期間で集計すればよい。
【0090】
なお、解析システム管理機関130がシステム利用料を決定する場合、検査に用いられた遺伝子パネルを提供(例えば、製造または販売)する会社によって提供したものであるかに応じて、システムの利用料を変えてもよい。この場合、管理サーバ3には、図5に示すデータ3Fを記憶しておけばよい。図5に示すデータ3Fでは、「A社」、「B社」などの遺伝子パネルを提供する会社名と、遺伝子パネルIDと、およびシステム利用料に関する取り決め(例えば、システム利用料の要否など)とが関連付けられている。
【0091】
「P機関」が、解析システム管理機関130との間で「プラン1」の契約を締結しており、その解析実績が図5に示すようなものであった場合を例に挙げて説明する。P機関は、A社によって提供された遺伝子パネル(遺伝子パネルID「AAA」)を用いた検査を5回行い、B社によって提供された遺伝子パネル(遺伝子パネルID「BBB」)を用いた検査を10回行っている。図5に示すデータによれば、A社によって提供された遺伝子パネルを用いた5回分についてはシステム利用料が不要である。それゆえ、解析システム管理機関130はP機関に対し、A社によって提供された遺伝子パネルを用いた検査の回数は除外して、システム利用料を決定する。
【0092】
(情報処理装置1の構成例)
図6は情報処理装置1の構成の一例である。情報処理装置1は、シーケンサー2により読み取られたリード配列情報および解析対象となる複数の遺伝子を含む遺伝子パネルに関する情報とを取得する制御部11と、制御部11が取得した遺伝子パネルに関する情報に基づいた、リード配列情報の解析結果を出力する出力部13と、を備える装置である。情報処理装置1は、コンピュータを用いて構成することができる。例えば、制御部11は、CPU(Central Processing Unit)等のプロセッサであり、記憶部12は、ハードディスクドライブである。
【0093】
また、記憶部12には、配列解析のためのプログラム、単一の参照配列を生成するためのプログラム等も記憶されている。出力部13は、ディスプレイ、プリンタ、スピーカ等を含む。入力部17は、キーボード、マウス、タッチセンサ等を含む。また、タッチセンサとディスプレイとが一体化されたタッチパネルのような、入力部および出力部の双方の機能を有する装置を用いてもよい。通信部14は、制御部11が外部の装置と通信するためのインターフェースである。
【0094】
情報処理装置1は、情報処理装置1が備える各部を統括して制御する制御部11、解析実行部110が使用する各種データを記憶する記憶部12、出力部13、通信部14、および入力部17を備えている。制御部11は、解析実行部110および管理部116を備えている。さらに、解析実行部110は、配列データ読取部111、情報選択部112、データ調整部113、変異同定部114、品質管理部117、薬剤検索部118、およびレポート作成部115を備えている。記憶部12には、遺伝子パネル関連情報データベース121、参照配列データベース122、変異データベース123、薬剤データベース124、および解析実績ログ151が記憶されている。
【0095】
情報処理装置1は、解析毎に異なる遺伝子パネルが使用された場合であっても、使用された遺伝子パネルに対応した解析結果を含むレポートを作成する。遺伝子解析システム100を利用する操作者は、遺伝子パネルの種別によらず、共通の解析プログラムでパネル検査の結果を解析し、レポートを作成することが可能となる。よって、パネル検査を実施する場合に、遺伝子パネル毎に使用する解析プログラムを使い分けたり、解析プログラムに対して使用する遺伝子パネル毎に特殊な設定を行ったりしなければならないという煩わしさが解消され、操作者の利便性が向上する。
【0096】
情報処理装置1の操作者が入力部17から遺伝子パネルに関する情報を入力した場合、情報選択部112は、遺伝子パネル関連情報データベース121を参照し、入力された遺伝子パネルに関する情報に応じて、解析プログラムが解析対象の遺伝子の解析を実行するように、解析プログラムのアルゴリズムを制御する。
【0097】
ここで、遺伝子パネルに関する情報は、シーケンサー2による測定に用いた遺伝子パネルを特定するものであればよく、例えば、遺伝子パネル名、遺伝子パネルの解析対象となっている遺伝子名、および遺伝子パネルIDなどである。
【0098】
情報選択部112は、入力部17から入力された遺伝子パネルに関する情報に基づいて、該遺伝子パネルに関する情報が示す遺伝子パネルの解析対象である遺伝子に対応した解析を行うための解析アルゴリズムを変更する。
【0099】
情報選択部112は、データ調整部113、変異同定部114、薬剤検索部118、およびレポート作成部115の少なくとも何れか1つに対し、遺伝子パネルに関する情報に基づいた指示を出力する。この構成を採用することより、情報処理装置1は、リード配列情報の解析結果を、入力された遺伝子パネルに関する情報に基づいて出力することができる。
【0100】
すなわち、情報選択部112は、解析対象となる複数の遺伝子を含む遺伝子パネルに関する情報を取得し、取得した遺伝子パネルに関する情報に基づいて、リード配列情報の解析結果が出力部13から出力されるように制御する機能ブロックである。
【0101】
パネル検査を実施する検査機関120によってさまざまな試料に含まれる遺伝子が解析される場合、試料毎の解析対象遺伝子群に応じてさまざまな遺伝子パネルが用いられる。
【0102】
すなわち、情報処理装置1は、第1試料から第1の解析対象遺伝子群を解析するための第1遺伝子パネルを用いて読み取られた第1リード配列情報、および第2試料から第2の解析対象遺伝子群を解析するための第2遺伝子パネルを用いて読み取られた第2リード配列情報を取得し得る。
【0103】
情報処理装置1は、種々の組合せの解析対象遺伝子がさまざまな遺伝子パネルを用いて解析された場合であっても、情報選択部112を備えることにより、リード配列情報を解析した解析結果を適切に出力することができる。
【0104】
すなわち、操作者に対して、解析対象遺伝子毎にリード配列情報の解析に用いる解析プログラムを設定させたり、解析を行わせたりすることなく、遺伝子パネルに関する情報を選択させるだけで、各リード配列情報の解析結果を適切に出力することが可能である。
【0105】
例えば、情報選択部112が、データ調整部113に対して遺伝子パネルに関する情報に基づいた指示を出力する場合には、データ調整部113によって該遺伝子パネルに関する情報を反映したアライメント処理などが行われる。
【0106】
情報選択部112は、遺伝子パネルに関する情報に応じて、データ調整部113がリード配列情報のマッピングに用いる参照配列(野生型のゲノム配列および変異配列が組込まれた参照配列)を、遺伝子パネルに関する情報に対応する遺伝子に関する参照配列のみに限定するよう指示する。
【0107】
この場合、データ調整部113による処理の結果には既に遺伝子パネルに関する情報が反映されているため、情報選択部112は、データ調整部113による処理の次に処理を行う変異同定部114に対して、遺伝子パネルに関する情報に基づいた指示を出力しなくてもよい。
【0108】
例えば、情報選択部112が、変異同定部114に対し、遺伝子パネルに関する情報に基づいた指示を出力する場合には、変異同定部114によって該遺伝子パネルに関する情報を反映した処理が行われる。
【0109】
例えば、情報選択部112は、遺伝子パネルに関する情報に応じて、変異同定部114が参照する変異データベース123の領域を、遺伝子パネルに関する情報に対応する遺伝子に関する変異のみに限定するよう指示する。これにより、変異同定部114による処理の結果に遺伝子パネルに関する情報が反映されることになる。
【0110】
(遺伝子パネルに関する情報の入力)
ここでは、図4のステップS107に示す、遺伝子パネル関する情報の入力を受け付ける処理について、図7を用いて説明する。図7は、遺伝子パネル関する情報の入力を受け付ける処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【0111】
ここでは、制御部11が遺伝子パネルに関する情報を入力するためのGUIを入力部17に表示させて、操作者に遺伝子パネルに関する情報を入力させる構成を例に挙げて説明する。ここでは、入力部17が、操作者に対して提示したGUIに対する入力操作が可能なタッチパネルを備えた構成である場合を例に挙げて説明する。
【0112】
まず、情報処理装置1の制御部11は、入力部17に遺伝子パネルに関する情報を操作者に選択させるためのGUIを表示させる。GUIに対する操作者の入力操作に基づいて、遺伝子パネルに関する情報の取得を行う(ステップS201)。
【0113】
情報選択部112は、GUIとして表示させた情報のうち、操作者によって選択された情報に基づいて遺伝子パネル関連情報データベース121を検索し、選択された情報に対応する遺伝子パネルに関する情報を読み出す。
【0114】
また、情報処理装置1は、医療機関210から受け付けた解析依頼に含まれる遺伝子パネルに関する情報を読み出す。
【0115】
選択された情報に対応する遺伝子パネルが、遺伝子パネル関連情報データベース121に登録されており(ステップS202にてYES)、かつその遺伝子パネルが医療機関210から受け付けた解析依頼に含まれる遺伝子パネルと一致している場合(ステップS203にてYES)には、情報選択部112は該入力を受け付ける。そして、情報選択部112は、入力部17に対し入力された遺伝子パネルが使用可能である旨のメッセージを表示する(ステップS204)。
【0116】
一方、選択された情報に対応する遺伝子パネルが、遺伝子パネル関連情報データベース121に登録されていない場合、すなわち、未登録の遺伝子パネルが選択された場合(ステップS202にてNO)、情報選択部112は、情報選択部112は入力部17に、入力された遺伝子パネルが使用不可である旨のメッセージを表示し(ステップS205)、情報処理装置1による解析を禁止する。
【0117】
この場合、遺伝子パネルが使用不可である旨のメッセージに代えてエラーを知らせるメッセージを表示させてもよい。このようなメッセージとしては、例えば、「選択された遺伝子パネルは登録されていません。」というメッセージであってもよいし、さらに「遺伝子パネルに関する情報を入力し直してください」などの再入力を促すメッセージを加えたものであってもよい。
【0118】
また、選択された情報に対応する遺伝子パネルが、医療機関210から受け付けた解析依頼に含まれる遺伝子パネルと一致していない場合(ステップS203にてNO)には、情報選択部112は入力部17に、入力された遺伝子パネルが使用不可である旨のメッセージを表示し(ステップS205)、情報処理装置1による解析を禁止する。
【0119】
この場合にも、遺伝子パネルが使用不可である旨のメッセージに代えてエラーを知らせるメッセージを表示させてもよい。このようなメッセージとしては、例えば、「選択された遺伝子パネルがオーダと異なります。」というメッセージであってもよいし、さらに「遺伝子パネルに関する情報を入力し直してください」などの再入力を促すメッセージを加えたものであってもよい。
【0120】
このような処理により、不適切な遺伝子パネルを使用してシーケンスを行ったり、また、不要な解析動作を実行したりすることが防止され、遺伝子パネルの無駄な使用や遺伝子解析システム100の無駄な稼働をなくすことができる。
【0121】
(遺伝子パネルに関する情報の入力に用いられるGUIの例)
続いて、図8を用いて、遺伝子パネルに関する情報を操作者に入力させるGUIのいくつかの例について説明する。図8は、遺伝子パネルに関する情報の入力に用いられるGUIの例を示す図である。
【0122】
図8に示すように、遺伝子パネルに関する情報として、「xxxxx」、「yyyyy」などの遺伝子パネル名のリストをGUIに表示し、リストに示した遺伝子パネルの中から操作者に所望の遺伝子パネルを選択させてもよい。
【0123】
GUIに表示される遺伝子パネル名のリストは、遺伝子パネル関連情報データベース121に登録されている、遺伝子パネルIDが付与された遺伝子パネルの遺伝子パネル名を基に表示される。
【0124】
図8に示すGUIでは、「遺伝子パネル2(遺伝子パネル名:「yyyyy」)」が操作者によって選択された様子が示されている。情報選択部112は、選択された遺伝子パネル名「yyyyy」に関連付けられた遺伝子パネルIDをキーとして用い、遺伝子パネル関連情報データベース121を検索して、入力された遺伝子パネル名に対応する遺伝子パネルに関する情報を取得する。
【0125】
(遺伝子パネル関連情報データベース121)
次に、入力部17を介して遺伝子パネルに関する情報が入力された場合に、情報選択部112が参照する遺伝子パネル関連情報データベース121に記憶されているデータについて、図9を用いて説明する。図9は、遺伝子パネル関連情報データベース121のデータ構造の例を示す図である。
【0126】
遺伝子パネル関連情報データベース121には、図9に示すデータ121Aのように、解析対象となり得る遺伝子の名称および遺伝子毎に付与された遺伝子IDが、遺伝子パネル毎に記憶されている。遺伝子パネル「Aパネル」「Bパネル」「Cパネル」は、複数の疾患に関連する、複数の遺伝子における複数の異常を一括で分析することが可能な遺伝子パネル(いわゆる「ラージパネル」)である。
【0127】
また、遺伝子パネル関連情報データベース121には、図9に示すデータ121Bのように、選択可能な遺伝子パネルの名称、各遺伝子パネルに付与された遺伝子パネルID、各遺伝子パネルが解析対象としている遺伝子の遺伝子ID(関連遺伝子ID)、およびCDxフラグが関連付けられて記憶されている。CDxフラグは、CDx対象の遺伝子パネルか否かを示すフラグである。なお、CDx対象の遺伝子パネルとは、CDx対象の遺伝子変異を検出可能な遺伝子パネルである。なお、各遺伝子パネルについて、公的機関(例えば、日本の厚生省等)によってその使用が承認されているか否かに関する情報も対応付けられていてもよい。
【0128】
図8に示すように、GUIに提示した遺伝子パネルの中から操作者に所望の遺伝子パネルを選択させた場合、情報選択部112は、遺伝子パネル関連情報データベース121を参照して、選択された遺伝子パネル名に関連付けられた遺伝子パネルIDおよび関連遺伝子IDを抽出する。
【0129】
図10に示すように、GUIに提示した遺伝子名の中から解析対象の遺伝子を選択させた場合、情報選択部112は、遺伝子パネル関連情報データベース121を参照して、選択された遺伝子名に関連付けられた遺伝子ID、およびこれらの遺伝子IDを関連遺伝子IDに含む遺伝子パネルの遺伝子パネルIDを抽出する。
【0130】
複数の疾患に関連する、複数の遺伝子における複数の異常を一括で分析することが可能な遺伝子パネルを用いたパネル検査を実施する場合、各試料が如何なる疾患に関連するものであるのかを入力させてもよい。例えば、図11に示すように、GUIに提示した疾患名のリストの中から、疾患を識別するための識別情報を選択させればよい。情報選択部112は、選択・入力された疾患名(または疾患ID)を、データ調整部113、変異同定部114、薬剤検索部118、品質管理部117、およびレポート作成部115などに出力する。なお、情報選択部112が、試料IDに基づいて、各試料IDに対応付けられている被検者の疾患名および疾患IDを自動で取得する構成であってもよい。
【0131】
<遺伝子パネル関連情報データベース121の更新>
ここでは、遺伝子パネル関連情報データベース121に記憶されている情報の更新について、図12および図13を用いて説明する。図12および図13は、遺伝子パネル関連情報データベース121を操作者が更新する場合に用いられるGUIの例を示す図である。
【0132】
遺伝子パネル関連情報データベース121に記憶されている情報の更新は、解析システム管理機関130から検査機関120に提供される更新パッチによって行われ得る。
【0133】
なお、解析システム管理機関130からの更新パッチの提供は、システム利用料を納付済の検査機関120を対象にして行う構成であってもよい。例えば、解析システム管理機関130は、提供可能な更新パッチが存在すること、およびシステム利用料が支払われることが更新パッチの提供の条件である旨を検査機関120に通知してもよい。このように通知することによって、システム利用料の支払いを、検査機関120に対して適切に促すことができる。
【0134】
複数の遺伝子を一括して更新する場合、図12に示すように、「登録ファイル名」を入力させる欄を表示させ、その欄に、「遺伝子パネル対象遺伝子.csv」など、遺伝子名が記載されたファイル名を入力させてもよい。図12に示す例では、この「遺伝子パネル対象遺伝子.csv」には、RET、CHEK2、PTEN、MEK1という複数の遺伝子名が含まれている。
【0135】
ファイル名が入力された後に「登録」ボタンが押下されると、該ファイルに含まれている遺伝子名に対応する遺伝子に関する情報の更新要求が、検査機関IDと対応付けられ、通信部14を介して管理サーバ3に送信される。この更新要求の生成および検査機関IDとの対応付けは、例えば、図6の制御部11が行う構成であってもよい。
【0136】
解析システム管理機関130は、管理サーバ3が受信した更新要求に含まれる遺伝子名に対して付与した遺伝子ID、および該遺伝子を解析対象とする遺伝子パネルに対して付与した遺伝子パネルIDを含む情報を情報処理装置1がダウンロードすることを許可する。
【0137】
あるいは、操作者が遺伝子名を個別に入力して更新する場合、図13に示すように、「遺伝子名」を入力させる欄を表示させ、その欄に、「FBXW7」など、遺伝子名を入力させてもよい。
【0138】
遺伝子名が入力された後に「登録」ボタンが押下されると、該遺伝子名に対応する遺伝子に関する情報の更新要求が、検査機関IDと対応付けられ、通信部14を介して管理サーバ3に送信される。解析システム管理機関130は、管理サーバ3が受信した更新要求に含まれる遺伝子名に対して付与した遺伝子ID、および該遺伝子を解析対象とする遺伝子パネルに対して付与した遺伝子パネルIDを含む情報を情報処理装置1がダウンロードすることを許可する。
【0139】
なお、図12の「登録ファイル名」を入力させる欄、および図13の「遺伝子名」を入力させる欄には、入力候補をサジェスチョンとして表示させる構成を備えていてもよい。
【0140】
例えば、表示させる入力候補の情報は、予め管理サーバ3から情報処理装置1に提供され、記憶部12に記憶されている。そして、入力させる欄のGUIに対するクリック操作を検出した場合に、更新可能な遺伝子名を入力候補としてすべて提示し、その中から操作者に選択させたり、操作者が入力した文字列と一致する更新可能な遺伝子名を入力候補として提示したりすればよい。あるいは、例えば、操作者が図13の「遺伝子名」を入力させる欄に「E」と入力した時点で、「EGFR」および「ESR」などの更新可能な遺伝子名のリストを表示し、そのリストの中から操作者に選択させるようにしてもよい。このように入力候補を提示することにより、操作者による入力誤りを防止することができる。
【0141】
遺伝子パネル関連情報データベース121に、各遺伝子名と、該遺伝子の遺伝子IDと、該遺伝子がコードするタンパク質名とが関連付けられて記憶されていてもよい。
【0142】
この場合、入力された文字列が遺伝子名ではなく、該遺伝子がコードするタンパク質などであった場合にも、情報選択部112は、遺伝子パネル関連情報データベース121を参照して、入力されたタンパク質名に関連付けられた遺伝子名および遺伝子IDを取得することができる。
【0143】
なお、「遺伝子名」を入力させる欄にタンパク質名が入力され、登録ボタンが押下された場合に、該タンパク質名に関連付けられた遺伝子名を表示させて、操作者にこの遺伝子名で間違いないことを確認させるGUIを表示させてもよい。
【0144】
(管理部116)
管理部116は、解析実行部110が動作した動作回数、解析した遺伝子数、および同定した権威の総数などを含む解析実績を、遺伝子パネルID、遺伝子IDと関連付けて、随時、解析実績ログ151に記憶させる。管理部116は、任意の頻度(例えば、日毎、週毎、月毎)に、解析実績ログ151から解析実績などを含むデータを読み出して、該データを検査機関IDと対応付けて通信部14を介して管理サーバに送信する。
【0145】
(通信部14)
通信部14は、情報処理装置1が通信回線4を介して、管理サーバ3と通信するためのものである。通信部14から管理サーバ3に送信されるデータには、検査機関ID、遺伝子パネルID、遺伝子ID、解析実績、更新要求などが含まれ得る。また、管理サーバ3から受信するデータには、遺伝子パネルに関する情報、更新可能な遺伝子名などが含まれ得る。
【0146】
(試料の遺伝子配列を解析するための処理の流れ)
ここでは、試料および品質管理試料の遺伝子配列を解析するための処理の流れについて、図14を用いて説明する。図14は、試料の遺伝子配列を解析するための処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【0147】
まず図14のステップS31において、解析対象の遺伝子の配列を解析するための前処理が行われる。前処理には、試料および品質管理試料に含まれるDNAなどの遺伝子を断片化して、断片化された遺伝子を回収するまでの処理が含まれる。なお、医療機関210から提供された試料が組織および血液などである場合、組織または血液から遺伝子(例えば、DNA)を抽出する処理も含まれる。
【0148】
次に、ステップS32において、前処理を終えた試料および品質管理試料に含まれる遺伝子の配列がシーケンサー2によって読み取られる。
【0149】
このステップS32は、具体的には、前処理の後に回収された解析対象となる1または複数のDNA断片の配列が読み取られる工程である。リード配列情報は、この工程で読み取られた遺伝子配列を含んでいる。前処理の後に回収された解析対象となる1または複数のDNA断片は、「ライブラリ」と呼称されることもある。
【0150】
続いて、品質管理試料を測定した場合、ステップS33において、情報処理装置1は、読み取られた遺伝子配列を解析し、配列中の変異の有無、変異の位置、変異の種別等を特定する。読み取られた遺伝子配列を解析することによって、検出された遺伝子変異が同定される。
【0151】
次に、ステップS34において、品質管理部117は、パネル検査の品質を評価するための品質評価指標を生成する。情報処理装置1は、生成した品質評価指標に基づいて、行ったパネル検査の品質を評価してもよい。
【0152】
最後に、情報処理装置1は、ステップS33にて同定された遺伝子変異に関連する情報等の解析結果、およびステップS34にて品質管理部117によって生成された品質評価指標などパネル検査の品質を示す情報を含むレポートを作成する。作成したレポートは、医療機関210に提供される。
【0153】
本実施形態において使用することができるシーケンサー2の種類は特に限定されず、複数の解析対象を一度のランで解析することができるシーケンサーを好適に用いることができる。以下では、一例として、イルミナ社(サンディエゴ、CA)のシーケンサー(例えば、MySeq、HiSeq、NextSeqなど)、または、イルミナ社のシーケンサーと同様の方式を採用する装置を用いる場合について説明する。
【0154】
イルミナ社のシーケンサーは、Bridge PCR法とSequencing-by-synthesisという手法との組合せにより、フローセル上で膨大な数の目的DNAを増幅させ、合成しながらシーケンシングを行うことができる。
【0155】
(a.前処理)
続いて、図14のステップS31の前処理の手順について図15~18に示す流れに沿って説明する。図15~18は、試料DNAの塩基配列をシーケンサー2によって解析するための前処理の手順の一例を説明するフローチャートである。
【0156】
試料および品質管理試料のそれぞれからDNAを抽出して配列解析を行う場合、まず、解析対象の遺伝子を含む試料、および用いる遺伝子パネルに対応する品質管理試料からDNAを抽出する(図15~18のステップ300)。
【0157】
この場合、試料由来のDNA、および品質管理試料由来のDNAをそれぞれステップS301以降の処理を行う。
【0158】
品質管理試料から抽出されたDNAに対して、試料から抽出されたDNAと同じ処理を行うことにより、パネル検査における配列解析の品質を評価するために有用な品質評価指標を生成することができる。
【0159】
なお、品質管理試料の利用法は、これに限定されない。例えば、図16に示すように、ステップ300aにて品質管理試料のDNAのみを抽出し、ステップS301以降の処理を行ってもよい。
【0160】
あるいは、図17に示すように、品質管理試料として変異を含む品質管理試料と、変異を含まない品質管理試料とを準備し、これらからDNAを抽出してもよい(ステップ300b)。
【0161】
変異を含む品質管理試料由来のDNAの解析結果と、変異を含まない品質管理試料由来のDNAの解析結果とを比較することにより、パネル検査における配列解析の品質を評価するために有用な品質評価指標を生成することができる。
【0162】
または、図18に示すように、解析対象の遺伝子を含む試料、変異を含む品質管理試料、および変異を含まない品質管理試料とからDNAを抽出してもよい(ステップ300c)。解析対象の遺伝子を含む試料が、血液試料および腫瘍細胞試料の組み合わせであってもよい。
【0163】
なお、ステップS301以降の処理において、試料由来のDNA、および品質管理試料由来のDNAを個別に処理するのではなく、試料由来のDNA、および品質管理試料由来のDNAを混合して、ステップS301以降の処理を行ってもよい。これにより、ステップS301以降のすべての処理において、両者の条件が同じになるため、より正確な品質評価指標を生成し得る。また、シーケンサー2に用いるフローセルのレーンの一部を、品質管理試料から調製されたDNA断片のためだけに使用する必要が無くなる。これにより、限られた数のレーンを、解析対象の遺伝子を含む試料由来のDNA断片のために有効に用いることができる。
【0164】
なお、この場合、(1)品質管理試料に含まれる標準遺伝子と、パネル検査の解析対象遺伝子とを適切に断片化してライブラリを調製するための試薬、および(2)品質管理試料に含まれる標準遺伝子とパネル検査の解析対象遺伝子とを断片化した後に、それぞれのDNA断片を適切に捕捉するためのRNAベイトを含む試薬を利用することが望ましい。
【0165】
(品質管理試料)
一実施形態では、品質管理試料は、複数の標準遺伝子を含む組成物である。品質管理試料は、複数の標準遺伝子を混合することにより調製され得る。これらの標準遺伝子を混合して単一の容器に収容した試薬を品質管理試料として検査機関120に提供することができる。また、品質管理試料として複数の標準遺伝子を別々の容器に収容してキットの形態として検査機関120に提供されてもよい。品質管理試料は、溶液の状態であってもよいし、固体(粉末)の状態であってもよい。溶液で提供される場合の溶媒としては、水、TEバッファーなど当業者に公知の水性溶媒を使用することができる。
【0166】
品質管理試料について、図19を用いて説明する。図19は、品質管理試料の一例を説明する図である。
【0167】
図19の(a)は、遺伝子パネルを用いたパネル検査において解析対象となり得る遺伝子のリストを示している。このリストの中の1または複数の遺伝子が、遺伝子パネルの解析対象の遺伝子として関連付けられている(図9のデータ121B参照)。
【0168】
図19の(b)及び(c)は、パネル検査において検出対象となる変異種別の例を示している。検出対象となる変異種別には、「SNV(一塩基多型)」、「Insertion(挿入)」および「Deletion(欠失)」(図中では、「InDel」と表記されている)、「CNV(コピー数多型)」、および「Fusion(融合)」を示している。
【0169】
遺伝子パネルAに対応する品質管理試料A1は、SNVを含む標準遺伝子、Insertionを含む標準遺伝子、Deletionを含む標準遺伝子、CNVを含む標準遺伝子、およびFusionを含む標準遺伝子のうち、少なくとも2つ含んでいる。たとえば、品質管理試料A1は、標準遺伝子として、野生型に対して「SNV」を含む遺伝子Aの部分配列と、野生型に対して「Insertion」を含む遺伝子Bの部分配列を含む。
【0170】
図19の(d)は、遺伝子パネルAを用いる遺伝子検査の解析結果と品質管理試料の解析結果の出力例である。この例では、遺伝子パネルAの解析結果として、GNA11、AKT1およびPIK3CAのSNV、EGFRのLong insertionおよびLong deletion、SLC34A2とROS1の融合遺伝子、CCDC6とRETの融合遺伝子、METの遺伝子増幅、MYC-Nの遺伝子増幅、およびMYC-Cの遺伝子増幅が検出されている。遺伝子パネルAの品質管理試料は、GNA11のSNVを含む標準遺伝子、AKT1のSNVを含む標準遺伝子、PIK3CAのSNVを含む標準遺伝子、EGFRのLong insertionを含む標準遺伝子、EGFRのLongdeletionを含む標準遺伝子、SLC34A2とROS1の融合配列を含む標準遺伝子、CCDC6とRETの融合配列を含む標準遺伝子、METの遺伝子増幅を含む標準遺伝子、MYC-Nの遺伝子増幅を含む標準遺伝子、およびMYC-Cの遺伝子増幅を含む標準遺伝子を含有する。ここでは、品質管理試料が10種の標準遺伝子を含む例を示しているが、これに限定されない。
【0171】
品質管理試料に含まれる第1の標準遺伝子と第2の標準遺伝子は、異なるDNA分子であってもよいし、これらが連結していてもよい。第1の標準遺伝子と第2の標準遺伝子が連結している場合は、第1の標準遺伝子の配列と、第2の標準遺伝子の配列とが直接連結されていてもよいし、第1の標準遺伝子の配列と、第2の標準遺伝子の配列との間にスペーサー配列を介在させてもよい。
【0172】
当該スペーサー配列は、遺伝子検査に供される試料に含まれる可能性の低い配列が好ましい。たとえば、アデニン塩基のみが複数個(たとえば、100個)連続した配列であり得る。
【0173】
標準遺伝子は、解析対象の遺伝子パネルに含まれる遺伝子であってもよいし、含まれない遺伝子であってもよい。遺伝子検査の対象となる生物種の遺伝子であってもよいし、異なる生物種の遺伝子であってもよい。たとえば、遺伝子検査の対象がヒトである場合は、ヒト以外の動物、植物、細菌などの遺伝子であり得る。
【0174】
標準遺伝子の合成方法は特に限定されない。たとえば、公知のDNA合成機で合成することができる。また、鋳型となる生物由来の遺伝子をPCRにより増幅し、精製することにより取得してもよい。DNA合成機で合成した標準遺伝子を鋳型としてPCR増幅し、精製することにより取得してもよい。
【0175】
標準遺伝子の長さは特に限定されない。たとえば、標準遺伝子の長さは50ヌクレオチド以上であり得る。PCRで増幅する場合は、2000ヌクレオチド以内であれば簡便に増幅することができ、好適である。DNA合成機で合成する場合は数kbpまで合成することができる。
【0176】
品質管理試料中の標準遺伝子の濃度は特に限定されない。たとえば、試料中のDNA濃度と同程度とすることができる。
【0177】
品質管理試料中の標準遺伝子は、1本鎖であってもよいし、2本鎖であってもよい。また、直鎖状であってもよいし、環状であってもよい。
【0178】
例えば、(1)置換変異を含む標準遺伝子が調製され、(2)融合変異を含む標準遺伝子が調製され、(3)品質管理試料と試料とを混合することにより配列解析用が調製される。次に、(4)配列解析用試料中の試料由来のゲノムDNAおよび標準遺伝子が前処理(断片化、DNA濃縮、タグプライマーを用いたPCR増幅等)および配列解析に供され、標的遺伝子の配列情報が取得される。配列解析に際して品質管理のための指標が取得され、標準DNA分子の配列解析の指標に基づき、標的遺伝子の解析結果の品質が評価される。操作者は当該品質評価の結果に基づき、解析対象遺伝子の解析結果の信頼性を判断することができる。
【0179】
なお、上記の例では、(3)において品質管理試料と被検者由来の試料とが混合されるが、これに限定されない。例えば、品質管理試料と試料とを混合せず、各々を(4)の配列解析に供してもよい。
【0180】
また、同じ遺伝子パネルを用いたパネル検査が繰り返し行われる場合、同じ品質管理試料が繰り返し使用されてもよい。図20のデータ121Dに示すように、各品質管理試料に含まれる標準遺伝子および変異種別が異なる複数種類の品質管理試料が、各遺伝子パネルに対応する品質管理試料として複数用意されていてもよい。
【0181】
標準遺伝子の組み合わせが異なる複数の品質管理試料をパネル検査毎、週毎、月毎に使い分けることにより、品質管理部117は、パネル検査において変異を検出する処理の品質を評価するための品質評価指標を、より多様な標準遺伝子の変異を検出することによって生成することができる。よって、パネル検査の品質管理の網羅性が向上する。
【0182】
例えば、遺伝子パネルAに対応する品質管理試料である品質管理試料Aと品質管理試料Bを図21に示す。品質管理試料Aに含まれる標準遺伝子a1、標準遺伝子a2、標準遺伝子a3が、品質管理試料Bでは、標準遺伝子b1、標準遺伝子b2、標準遺伝子b3にそれぞれ変更されている。
【0183】
次に、図22の(a)に示すように、試料(試料由来のゲノムDNAおよび/または標準遺伝子)を、シーケンサー2で配列を読み取るための長さに断片化する(図15図18のステップS301)。試料DNAの断片化は、例えば、超音波処理や、核酸を断片化する試薬による処理などの公知の方法によって行うことができる。得られるDNA断片(核酸断片)は、例えば、数十から数百bpの長さであり得る。
【0184】
続いて、図22の(b)に示すように、ステップS301で得られたDNA断片の両端(3´末端および5´末端)に、使用するシーケンサー2の種類やシーケンシングプロトコルに対応するアダプター配列を付与する(図15図18のステップS302)。但し、本工程は、シーケンサー2が、イルミナ社のシーケンサー、または、イルミナ社のシーケンサーと同様の方式を採用する装置である場合には必須の工程であるが、他の種類のシーケンサー2を用いる場合には、省略できる場合もある。
【0185】
アダプター配列は、後の工程においてシーケンシングを実行するために使用する配列であり、一実施形態において、Bridge PCR法において、フローセルに固定化したオリゴDNAにハイブリダイズするための配列であり得る。
【0186】
一態様において、図22の(b)の上段に示すように、DNA断片の両端に直接アダプター配列(例えば、図22中のアダプター1配列およびアダプター2配列)を付加してもよい。DNA断片へのアダプター配列の付加は、当該分野において公知の手法を用いることができる。例えば、DNA配列を平滑化し、アダプター配列をライゲーションしてもよい。
【0187】
DNA断片へのアダプター配列の付加は、当該分野において公知の手法を用いることができる。例えば、DNA断片を平滑化し、インデックス配列をライゲーションした後に、さらに、アダプター配列をライゲーションさせてもよい。
【0188】
次に、図23に示すように、アダプター配列を付与したDNA断片に対し、ビオチン化RNAベイトライブラリをハイブリダイズさせる(図15図18のステップS303)。
【0189】
ビオチン化RNAベイトライブラリは、解析対象の遺伝子とハイブリダイズするビオチン化RNA(以下、RNAベイトと称する。)によって構成されている。RNAベイトの長さは任意であるが、例えば、特異性を高めるために120bp程度のロングオリゴRNAベイトを使用してもよい。
【0190】
なお、本実施形態におけるシーケンサー2を用いたパネル検査では、多数の遺伝子(例えば、100以上)が解析対象の遺伝子となる。
【0191】
パネル検査で用いられる試薬には、当該多数の遺伝子の各々に対応するRNAベイトのセットが含まれる。パネルが異なれば、検査対象の遺伝子の数および種類が異なるため、パネル検査で用いられる試薬に含まれるRNAベイトのセットも異なる。解析対象の遺伝子とは異なる遺伝子を標準遺伝子として用いる場合は、標準遺伝子に結合するベイトも用意する必要がある。
【0192】
そして、図24に示すように、解析対象となるDNA断片を回収する(図15図18のステップS304)。詳細には、図24の上段に示すように、ビオチン化RNAベイトライブラリをハイブリダイズさせたDNA断片に対し、ストレプトアビジンと磁性ビーズとが結合したストレプトアビジン磁性ビーズを混合する。
【0193】
これにより、図24の中段に示すように、ストレプトアビジン磁性ビーズのストレプトアビジン部分と、RNAベイトのビオチン部分とが結合する。そして、図24の下段に示すように、ストレプトアビジン磁性ビーズを、磁石で集磁するとともに、RNAベイトとハイブリダイズしていない断片(即ち、解析対象とならないDNA断片)を洗浄により除去する。
【0194】
これにより、RNAベイトとハイブリダイズしたDNA断片、すなわち、解析対象となるDNA断片を選択・濃縮することができる。シーケンサー2は、このように複数のRNAベイトを用いて選択されたDNA断片の核酸配列を読み取ることによって複数のリード配列を取得する。
【0195】
(シーケンサー2によるリード配列の読み取り)
続いて、図26図28を適宜参照しながら、図14のステップS32の手順について図25に示す流れに沿って説明する。図25は、試料DNAの塩基配列をシーケンサー2によって解析する手順の一例を説明するフローチャートである。
【0196】
図26の左欄から中央欄に示すように、濃縮されたDNA断片からストレプトアビジン磁性ビーズおよびRNAベイトを外し、PCR法によって増幅することにより、前処理を完了させる。
【0197】
まず、図26の右欄に示すように、増幅されたDNA断片の配列をフローセルに注入する(図25のステップS305)。
【0198】
続いて、図27に示すように、フローセル上において、Bridge PCR法により、解析対象となるDNA断片を増幅する(図25のステップS306)。
【0199】
すなわち、解析対象となるDNA断片(例えば、図27中のTemplate DNA)は、上述した前処理によって、両末端に2種類の異なるアダプター配列(例えば、図27中のアダプター1配列およびアダプター2配列)が付加された状態であり(図27の「1」)、このDNA断片を1本鎖にし、5’末端側のアダプター1配列をフローセル上に固定させる(図27の「2」)。
【0200】
フローセル上には予め5’末端側のアダプター2配列が固定されており、DNA断片の3’末端側のアダプター2配列が、フローセル上の5’末端側のアダプター2配列と結合することにより、橋渡しをしたような状態となり、ブリッジが形成される(図27の「3」)。
【0201】
この状態でDNAポリメラーゼによってDNA伸長反応を行い(図27の「4」)、変性させると、2本の1本鎖DNA断片が得られる(図27の「5」)。
【0202】
このようなブリッジの形成、DNA伸長反応および変性をこの順に繰り返すことにより、多数の1本鎖DNA断片を局所的に増幅固定させて、クラスターを形成することができる(図27の「6」~「10」)。
【0203】
そして、図28に示すように、クラスターを形成する1本鎖DNAを鋳型として、Sequencing-by-synthesisにより、配列を読み取る(図25のステップS307)。
【0204】
まず、フローセル上に固定された1本鎖DNA(図28の上段左欄)に対し、DNAポリメラーゼ、および、蛍光標識され、3’末端側がブロックされたdNTPを添加し(図28の上段中央欄)、さらに、シーケンスプライマーを添加する(図28の上段右欄)。
【0205】
シーケンスプライマーは、例えば、アダプター配列の一部分にハイブリダイズするように設計されていればよい。換言すれば、シーケンスプライマーは、試料DNA由来のDNA断片を増幅するように設計されていればよく、インデックス配列を付加した場合には、さらにインデックス配列を増幅するように設計されていればよい。
【0206】
シーケンスプライマーを添加後、DNAポリメラーゼによって3’末端ブロック蛍光dNTPの1塩基伸長反応を行う。3’末端側がブロックされたdNTPを用いるため、1塩基分伸長したところで、ポリメラーゼ反応は停止する。そして、DNAポリメラーゼを除去し(図28の中段右欄)、1塩基伸長した1本鎖DNA(図28の下段右欄)に対し、レーザー光により塩基に結合している蛍光物質を励起させて、そのときに起こる発光を写真として記録する(図28の下段左欄)。
【0207】
写真は、蛍光顕微鏡を用いて、4種類の塩基を決定させるために、波長フィルタを変更しながら、A、C、G、Tそれぞれに対応する蛍光色毎に撮影する。すべての写真を取り込んだ後、写真データから塩基を決定する。そして、蛍光物質および3’末端側をブロックしている保護基を除去して、次のポリメラーゼ反応に進む。この流れを1サイクルとして、2サイクル目、3サイクル目と繰り返していくことにより、全長をシーケンシングすることができる。
【0208】
以上の手法によれば、解析できる鎖長は150塩基×2までに達し、ピコタイタープレートよりもはるかに小さい単位での解析が可能であるため、高密度化することにより、1回の解析において40~200Gbという膨大な配列情報を入手することができる。
【0209】
(遺伝子パネル)
シーケンサー2によるリード配列の読み取りに用いられる遺伝子パネルは、上述したように、複数の解析対象を一度のランで解析するための解析キットを意味し、一実施形態において、複数の疾病に関する複数の遺伝子配列を解析するための解析キットであり得る。
【0210】
本明細書中にて使用される場合、用語「キット」は、特定の材料を内包する容器(例えば、ボトル、プレート、チューブ、ディッシュなど)を備えた包装が意図される。好ましくは各材料を使用するための指示書を備える。本明細書中にてキットの局面において使用される場合、「備えた(備えている)」は、キットを構成する個々の容器のいずれかの中に内包されている状態が意図される。また、キットは、複数の異なる組成物を1つに梱包した包装であり得、ここで、組成物の形態は上述したような形態であり得、溶液形態の場合は容器中に内包されていてもよい。
【0211】
キットは、物質Aおよび物質Bを同一の容器に混合して備えていても別々の容器に備えていてもよい。「指示書」には、キット中の各構成を、治療および/または診断に適用する手順が示されている。なお、「指示書」は、紙またはその他の媒体に書かれていても印刷されていてもよく、あるいは磁気テープ、コンピュータ読み取り可能ディスクまたはテープ、CD-ROMなどのような電子媒体に付されてもよい。キットはまた、希釈剤、溶媒、洗浄液またはその他の試薬を内包した容器を備え得る。さらに、キットは、治療および/または診断に適用するために必要な器具をあわせて備えていてもよい。
【0212】
一実施形態において、遺伝子パネルは、上述した、品質管理試料、核酸を断片化する試薬、ライゲーション用試薬、洗浄液、PCR試薬(dNTP、DNAポリメラーゼなど)などの試薬、および磁性ビーズのうち一つ以上を備えていてもよい。また、遺伝子パネルは、断片化したDNAにアダプター配列を付加するためのオリゴヌクレオチド、断片化したDNAにインデックス配列を付加するためのオリゴヌクレオチド、RNAベイトライブラリなどのうち一つ以上を備えていてもよい。
【0213】
特に、各遺伝子パネルが備えるインデックス配列は、当該遺伝子パネル固有の、当該遺伝子パネルを識別するための配列であり得る。また、各遺伝子パネルが備えるRNAベイトライブラリは、当該遺伝子パネルの各検査遺伝子に対応するRNAベイトを含む、当該遺伝子パネル固有のライブラリであり得る。
【0214】
(配列データ読取部111、データ調整部113、変異同定部114)
続いて、解析実行部110の配列データ読取部111、データ調整部113、および変異同定部114の処理について、図30図38を適宜参照しながら、図29に示す処理の流れに沿って説明する。
【0215】
図29は、情報処理装置1による解析の流れの一例を説明するフローチャートである。なお、図29に示す処理は、図4に示すステップS109に対応している。
【0216】
<配列データ読取部111>
まず、図29のステップS11において、配列データ読取部111は、シーケンサー2から提供されたリード配列情報を読み込む。データ読取部111は、核酸配列のエクソン領域から読み取られたリード配列情報を取得してもよく、少なくとも10Mb(1000万塩基)以上のエクソン領域から読み取られたリード配列情報を取得してもよい。
【0217】
リード配列情報は、シーケンサー2で読み取られた塩基配列を示すデータである。シーケンサー2は、特定の遺伝子パネルを用いて得られた多数の核酸断片をシーケンシングして、それらの配列情報を読み取り、リード配列情報として情報処理装置1に提供する。
【0218】
一態様において、リード配列情報には、読み取られた配列と共に、配列中の各塩基のクオリティスコアが含まれていてもよい。また、被検者の病変部位から採取されたFFPE試料をシーケンサー2に供して得られたリード配列情報と、同被検者の血液試料をシーケンサー2に供して得られたリード配列情報との両方が、情報処理装置1に入力される。
【0219】
図30は、リード配列情報のファイルフォーマットの一例を示す図である。図30に示す例では、リード配列情報には、配列名、配列、および、クオリティスコアが含まれている。配列名は、シーケンサー2が出力するリード配列情報に付与された配列IDなどであってもよい。配列は、シーケンサー2で読み取られた塩基配列を示す。クオリティスコアは、シーケンサー2による塩基割当が正しく行われない確率を示す。任意の塩基のシーケンスクオリティスコア(Q)は、次の式により表される。
【0220】
Q=-10log10
この式において、Eは、塩基割当が正しく行われない確率の推定値を表す。Q値が高いほど、エラーの確率が低いことを意味する。Q値が低いほど、そのリードは使用できない部分が大きくなる。
【0221】
また、偽陽性の変異割当も増加し、結果の精度が低下する恐れがある。なお、「偽陽性」は、リード配列が判定対象となる真の変異を有していないにもかかわらず、変異を有すると判断されることを意味する。
【0222】
なお、「陽性」は、リード配列が判定対象となる真の変異を有していることを意味し、「陰性」は、リード配列が対象となる変異を有していないことを意味する。例えば、クオリティスコアが20であれば、エラーの確率は100分の1であり、したがって、読み取った遺伝子配列中の各塩基の正確さ(「ベースコールの精度」とも呼ばれる)は99%であることを意味する。
【0223】
<データ調整部113>
続いて、図29のステップS12において、データ調整部113は、配列データ読取部111が読み込んだリード配列情報に基づいて、リード配列情報に含まれる各核酸断片のリード配列のアライメントを実行する。
【0224】
図31の(a)は、データ調整部113によるアライメントを説明する図である。データ調整部113は、参照配列データベース122に格納された参照配列を参照し、各核酸断片のリード配列を、リード配列情報の比較対象とすべき参照配列に対してマッピングすることにより、アライメントを実行する。一態様において、参照配列データベース122には、各解析対象の遺伝子に対応する参照配列が複数種類格納されている。
【0225】
また、データ調整部113は、被検者の病変部位から採取されたFFPE試料をシーケンサー2に供して得られたリード配列情報と、同被検者の血液試料をシーケンサー2に供して得られたリード配列情報との両方について、アライメントを実行する。
【0226】
図31の(b)は、データ調整部113のアライメント結果のフォーマットの一例を示す図である。アライメント結果のフォーマットは、リード配列、参照配列およびマッピング位置をそれぞれ特定し得るものであれば特に限定されないが、図31の(b)のように、参照配列情報、リード配列名、ポジション情報、マップ品質および配列を含むものであってもよい。
【0227】
参照配列情報は、参照配列データベース122における参照配列名(参照配列ID)、参照配列の配列長などを示す情報である。リード配列名は、アライメント対象となった各リード配列の名称(リード配列ID)を示す情報である。ポジション情報は、リード配列の最左塩基がマッピングされた参照配列上の位置(Leftmost mapping position)を示す情報である。マップ品質は、当該リード配列に対応するマッピング品質を示す情報である。配列は、各リード配列に対応する塩基配列(例: …GTAAGGCACGTCATA…)を示す情報である。
【0228】
図32は、参照配列データベース122の構造例を示す図である。図32に示すように、参照配列データベース122には、野生型の配列を示す参照配列(例えば、染色体#1~23のゲノム配列)と、野生型の配列に対して既知の変位が組み込まれた参照配列とが記憶されている。
【0229】
さらに、参照配列データベース122中の各参照配列には、遺伝子パネルに関する情報を示すメタデータが付与されている。各参照配列に付与する遺伝子パネルに関する情報は、例えば、各参照配列が対応する解析対象の遺伝子を直接的または間接的に示すものであり得る。
【0230】
一実施形態において、情報選択部112は、データ調整部113が参照配列データベース122から参照配列を取得する際に、入力された遺伝子パネルに関する情報と、各参照配列のメタデータとを参照して、当該遺伝子パネルに関する情報に対応する参照配列を選択するよう制御してもよい。
【0231】
例えば、一態様において、情報選択部112は、入力された遺伝子パネルに関する情報によって特定される解析対象の遺伝子に対応する参照配列を選択するようデータ調整部113を制御してもよい。これにより、データ調整部113は、使用された遺伝子パネルに関連する参照配列のみに対するマッピングを行えばよいため、解析の効率を向上させることができる。
【0232】
また、他の実施形態において、情報選択部112は、上記制御を行わなくともよい。その場合、情報選択部112は、後述するように、変異同定部114またはレポート作成部115を制御すればよい。
【0233】
図33は、参照配列データベース122に含まれる参照配列(野生型の配列を示すものでないもの)に組み込まれる既知の変異の例を示す図である。既知の変異は、外部のデータベース(例えば、COSMIC、ClinVarなど)に登録された遺伝子変異であり、図33に示すように、染色体位置、遺伝子名および変異が特定されているものである。図33の例では、アミノ酸の変異が特定されているが、核酸の変異が特定されていてもよい。変異種別は、特に限定されず、置換、挿入、欠失など様々な変異であってもよく、他の染色体の一部の配列または逆相補配列が結合している変異であってもよい。
【0234】
図34は、図29のステップS12におけるアライメントの詳細な工程の一例を説明するフローチャートである。一態様において、図29のステップS12におけるアライメントは、図34に示すステップS401~S205によって実行される。
【0235】
図34のステップS401において、データ調整部113は、配列データ読取部111が取得したリード配列情報に含まれる各核酸断片のリード配列のうち、アライメントを行っていないものを選択して、参照配列データベース122から取得した参照配列と比較する。そして、ステップS402において、データ調整部113は、リード配列との一致度が所定の基準を満たす参照配列上の位置を特定する。ここで、一致度とは、取得したリード配列情報と参照配列とがどの程度一致しているかを示す値であり、例えば、一致する塩基の数や割合などが一例として挙げられる。
【0236】
一態様において、データ調整部113は、リード配列と参照配列の一致度を示すスコアを算出する。一致度を示すスコアは、例えば2つの配列間の同一性のパーセンテージ(percentage identity)とすることができる。データ調整部113は、例えば、リード配列の塩基と参照配列の塩基とが同一となる位置の数を特定し、一致した位置の数を求め、一致した位置の数を参照配列と比較されたリード配列の塩基数(比較ウィンドウの塩基数)で除算することによってパーセンテージを算出する。
【0237】
図35の(a)は、スコア算出の一例を示す図である。一態様において、図35の(a)に示す位置において、リード配列R1と参照配列との一致度のスコアは、リード配列13塩基中13塩基が一致しているため100%となり、リード配列R2と参照配列との一致度のスコアは、リード配列13塩基中12塩基が一致しているため92.3%となる。
【0238】
また、データ調整部113は、リード配列と参照配列の一致度を示すスコアの計算において、リード配列が参照配列に対して所定の変異(例えば、挿入・欠失(InDel : Insertion/Deletion))を含む場合には、通常の計算よりも低いスコアが付くように計算してもよい。
【0239】
一態様において、データ調整部113は、リード配列が参照配列に対して挿入および欠失の少なくとも一方を含む配列について、例えば、上述したような通常計算で算出されたスコアに、挿入・欠失に対応する塩基数に応じた重み係数を乗算することで、スコアを補正してもよい。重み係数Wは、例えば、W={1-(1/100)×(挿入・欠失に対応する塩基数)}で計算してもよい。
【0240】
図35の(b)は、スコア算出の他の例を示す図である。一態様において、図35の(b)に示す位置において、リード配列R3と参照配列との一致度のスコアは、通常計算では、リード配列17塩基(欠失を示す*も一塩基として計算)中15塩基が一致しているため88%となり、補正後のスコアは88%×0.98=86%となる。また、リード配列R4と参照配列との一致度のスコアは、通常計算では、リード配列21塩基中17塩基が一致しているため81%となり、補正後のスコアは81%×0.96=77.8%となる。
【0241】
データ調整部113は、各参照配列に対するリード配列のマッピング位置を変えながら一致度のスコアを算出することにより、リード配列との一致度が所定の基準を満たす参照配列上の位置を特定する。その際、動的計画法、FASTA法、BLAST法などの当該分野において公知のアルゴリズムを使用してもよい。
【0242】
図34に戻り、次に、データ調整部113は、リード配列との一致度が所定の基準を満たす参照配列上の位置が単一の位置であった場合には(ステップS403にてNO)、当該位置にリード配列をアライメントし、リード配列との一致度が所定の基準を満たす参照配列上の位置が複数の位置であった場合には(ステップS403にてYES)、データ調整部113は、最も一致度が高い位置に、リード配列をアライメントする(ステップS404)。
【0243】
そして、データ調整部113は、配列データ読取部111が取得したリード配列情報に含まれる全リード配列をアライメントしていない場合には(ステップS405にてNO)、ステップS401に戻り、リード配列情報に含まれる全リード配列をアライメントした場合には(ステップS405にてYES)、ステップS12の処理を完了する。
【0244】
<変異同定部114>
続いて、図29に戻り、ステップS13において、変異同定部114は、被検者の病変部位から採取された試料を供して得られたリード配列がアライメントされた参照配列の配列(アライメント配列)と、同被検者の血液試料を供して得られたリード配列がアライメントされた参照配列の配列とを比較する。
【0245】
そして、図29のステップS14において、両アライメント配列間の相違を、変異として抽出する。例えば、同じ解析対象の遺伝子の同じ位置に対する血液試料由来のアライメント配列がATCGAであり、腫瘍組織由来のアライメント配列がATCCAであれば、変異同定部114は、GとCとの相違を変異として抽出する。
【0246】
一態様において、変異同定部114は、抽出した遺伝子変異に基づいて結果ファイルを生成する。図36は、変異同定部114が生成する結果ファイルのフォーマットの一例を示す図である。当該フォーマットは、例えば、Variant Call Format(VCF)に基づくものであり得る。
【0247】
図36に示すように、結果ファイルには、抽出された遺伝子変異毎に、位置情報、参照塩基および変異塩基が記述されている。位置情報は、参照ゲノム上の位置を示し、例えば、染色体番号と、該染色体上の位置とを含む。参照塩基は、上記位置情報が示す位置における参照塩基(A,T,C,Gなど)を示す。変異塩基は、参照塩基の変異後の塩基を示す。参照塩基は、血液試料由来のアライメント配列上の塩基であり、変異塩基は、腫瘍組織由来のアライメント配列上の塩基である。
【0248】
なお、図36において、参照塩基がC、変異塩基がGである変異は、置換変異の例であり、参照塩基がC、変異塩基がCTAGである変異は、挿入(Insertion)変異の例であり、参照塩基がTCG、変異塩基がTである変異は、欠失(Deletion)変異の例である。また、変異塩基がG]17:198982]、]13:123456]T、C[2:321682[、または、[17:198983[Aである変異は、他の染色体の一部の配列または逆相補配列が結合している変異の例である。
【0249】
図29に戻り、続いて、ステップS15において、変異同定部114は、変異データベース123を検索する。そして、ステップS16において、変異同定部114は、変異データベース123の変異情報を参照して、結果ファイルに含まれる変異にアノテーションを付与することで、変異を同定する。
【0250】
図37は、変異データベース123の構造の一例を示す図である。変異データベース123は、例えば、COSMICやClinVarなどの外部データベースを基に構築される。また、一態様において、データベース中の各変異情報には、遺伝子パネルに関する情報に関するメタデータが付与されている。図37に示す例では、データベース中の各変異情報には、解析対象の遺伝子の遺伝子IDがメタデータとして付与されている。
【0251】
図38は、変異データベース123中の変異情報の構造の詳細例を示す図である。図38に示すように、一態様において、変異データベース123に含まれる変異情報には、変異ID、変異の位置情報(例えば、「CHROM」、および「POS」)、「REF」、「ALT」、「Annotation」が含まれていてもよい。変異IDは、変異を識別するための識別子である。
【0252】
変異の位置情報のうち、「CHROM」は染色体番号を示し、「POS」は染色体番号上の位置を示す。「REF」は、野生型(Wild type)における塩基を示し、「ALT」は、変異後の塩基を示す。「Annotation」は、変異に関する情報を示す。「Annotation」は、例えば、「EGFR C2573G」、「EGFR L858R」といったアミノ酸の変異を示す情報であってもよい。例えば、「EGFR C2573G」は、タンパク質「EGFR」の2573残基目のシステインがグリシンに置換した変異であることを示す。
【0253】
上記の例のように、変異情報の「Annotation」は、塩基情報に基づく変異を、アミノ酸情報に基づく変異に変換するための情報であってもよい。この場合、変異同定部114は、参照した「Annotation」の情報に基づいて、塩基情報に基づく変異を、アミノ酸情報に基づく変異に変換可能である。
【0254】
変異同定部114は、結果ファイルに含まれる変異を特定する情報(例えば、変異の位置情報と変異に対応する塩基情報)をキーとして、変異データベース123を検索する。例えば、変異同定部114は、「CHROM」、「POS」、「REF」および「ALT」の情報のいずれかをキーとして変異データベース123を検索してもよい。変異同定部114は、血液試料由来のアライメント配列と、病変部位由来のアライメント配列とを比較することで抽出した遺伝子変異が変異データベース123に登録されていた場合に、当該変異を試料中に存在する変異として同定し、結果ファイルに含まれる当該変異にアノテーション(例えば、「EGFR L858R」、「BRAF V600E」など)を付与する。
【0255】
なお、一実施形態において、情報選択部112は、変異同定部114が、結果ファイルに基づいて変異データベース123を検索する前に、変異同定部114に入力された遺伝子パネルに関する情報に対応しない変異を、結果ファイルからマスク(除外)させてもよい。
【0256】
例えば、一態様において、情報選択部112から遺伝子パネルに関する情報が通知された変異同定部114は、図39の(a)のような、解析対象の遺伝子と位置情報(例えば、「CHROM」と「POS」)との対応関係を示すテーブルを参照し、通知された遺伝子パネルに関する情報が特定する解析対象の遺伝子に対応する変異の位置を特定し、図39の(b)のように、それ以外の位置の変異を、結果ファイルからマスク(除外)させてもよい。これにより、変異同定部114は、結果ファイル中の、使用された遺伝子パネルに関連する変異のみにアノテーションを付与すればよいため、変異の同定および特定の効率を向上させることができる。
【0257】
(薬剤検索部118)
薬剤検索部118が薬剤に関する情報を含むリストを生成する処理の流れについて、図40を用いて説明する。図40は、薬剤検索部118が変異に関する薬剤のリストを生成する処理の一例を示すフローチャートである。
【0258】
薬剤検索部118は、変異同定部114によって同定された遺伝子変異に付与された変異IDをキーとして、薬剤データベース124を検索する(ステップS15a)。検索結果に基づいて、薬剤検索部118は、変異に関する薬剤に関する情報を含むリストを生成する(ステップS16a)。生成されたリストは、レポート作成部115が作成するレポートに組み込まれる。
【0259】
(薬剤データベース124)
薬剤検索部118が薬剤データベース124を検索して薬剤リストを生成する場合に、薬剤データベース124に記憶されているデータ124Aについて、図41を用いて説明する。図41は、薬剤データベース124のデータ構造の例を示す図である。
【0260】
薬剤データベース124には、図41に示すように、変異毎に付与された変異ID、関連薬剤名、および薬剤毎に付与された薬剤IDが互いに関連付けられて記憶されている。なお、図41のデータ124Aにおいて変異ID「♯3」に対して、「薬剤A」および「薬剤B」が関連付けられているように、各変異IDについて複数の関連薬剤が関連付けられてもよい。
【0261】
また、薬剤データベース124の各変異IDには、遺伝子パネルに関する情報に関するメタデータである「遺伝子パネル関連情報に関するメタデータ」が付与されていてもよい。薬剤検索部118は、情報選択部112からの指示に応じて、この「遺伝子パネル関連情報に関するメタデータ」を参照する。
【0262】
そして、薬剤検索部118は、薬剤データベース124を検索する範囲を、該メタデータに示された範囲に変更する。これにより、薬剤検索部118は、各薬剤に付与されている「遺伝子パネル関連情報に関するメタデータ」と入力された遺伝子パネルに関する情報に応じて、薬剤データベース中で参照すべき薬剤を絞り込むことができ、遺伝子パネルに関する情報に応じた薬剤に関する情報を含むリストを生成することができる。
【0263】
薬剤検索部118は、図42に示すデータ構造を有する薬剤データベース124を検索して、変異に関連する薬剤に関する他の情報を含むリストを生成してもよい。このことに関し、図43を用いて説明する。図43は、薬剤検索部118が変異に関する薬剤に関する情報を含むリストを生成する処理の一例を示すフローチャートである。
【0264】
薬剤検索部118は、図42に示すデータ124Bを記憶している薬剤データベース124から、関連薬剤が当局(FDA、PMDAなど)で承認されているか否かを検索する。具体的には、薬剤検索部118は、例えば、「変異ID」等の変異に関する情報をキーとして、変異に対応する関連薬剤が当局で承認されているかを示す「承認状況」、どの国の当局で承認されているかを示す「承認国」を検索する(ステップS15b)。
【0265】
薬剤検索部118は、検索結果に基づき、変異、該変異に対応する関連薬剤、および該関連薬剤の承認に関する情報などを含むリストを生成する(ステップS16b)。
【0266】
薬剤検索部118は、図42に示すデータ構造を有する薬剤データベース124を検索して、変異に関連する薬剤に関するさらに他の情報を含むリストを生成してもよい。このことに関し、図44を用いて説明する。図44は、薬剤検索部118が薬剤データベース124を検索して得た情報に基づいて、Off-label use(適用外使用)の可能性がある薬剤の有無を判定し、判定結果を含むリストを生成する処理の一例を示すフローチャートである。
【0267】
薬剤検索部118は、図42に示すデータ124Bを記憶している薬剤データベース124から、関連薬剤が当局(FDA、PMDAなど)で承認されているか否かを検索する(ステップS15b)。検索された薬剤が未承認である場合(ステップS21にてNO)、薬剤検索部118は、該薬剤を未承認薬として変異に関連付け(ステップS23)、変異に関連する薬剤のレポートを作成する(ステップS16a)。
【0268】
検索された薬剤が承認済みである場合(ステップS21にてYES)、薬剤検索部118は、試料が採取された被検者の疾患(疾患名あるいは疾患ID)と、薬剤データベース124から検索された関連薬剤に対応する疾患(例えば、図42に示す「対象疾患」の疾患名あるいは疾患ID)と、が一致するか否かを判定する(ステップS22)。
【0269】
被検者の疾患と「対象疾患」とが一致する場合(ステップS22にてYES)、薬剤検索部118は、検索結果の薬剤を承認薬として変異に関連付けを行い(ステップS24)、変異、該変異に対応する関連薬剤、および該関連薬剤の承認に関する情報などを含むリストを生成する(ステップS16a)。
【0270】
一方、被検者の疾患と「対象疾患」とが異なる場合(ステップS22にてNO)、薬剤検索部118は、検索された関連薬剤はOff-label use(適用外使用)の可能性がある薬剤であると判定し、その判定結果を変異に関連付けて(ステップS25)、変異、該変異に対応する関連薬剤、および該関連薬剤の承認に関する情報などを含むリストを生成する(ステップS16a)。
【0271】
なお、被検者の疾患を識別するための識別(例えば、疾患の名称、疾患IDなど)は、例えば、遺伝子解析を実行する際に操作者などによって入力部17から入力され得る。この場合、情報選択部112は、操作者によって入力された試料に対応する疾患に関する情報を取得して、疾患を識別する。あるいは、図44Aに示すように、試料を収容する各容器P1に被検者IDおよび試料IDなどが表示されたラベルL1が付されており、このラベルL1に表示されているバーコードL11などの記録手段を読み取ることにより、被検者の疾患の識別情報である疾患IDを取得する構成であってもよい。あるいは、図44Bに示すように、試料を収容する各容器P1に被検者IDおよび試料IDなどが表示されたラベルL2が付されており、このラベルL2に添付されているRFIDタグL21などの記録手段を読み取ることにより、被検者の疾患の識別情報である疾患IDを取得する構成であってもよい。あるいは、検査機関120では試料IDおよび被検者IDと疾患IDとが対応付けて管理されており、情報選択部112は、試料に対応する疾患IDを、被検者IDまたは試料IDに基づいて取得してもよい。例えば、情報選択部112は試料を収容する容器毎に付されたラベルの記録手段を読み取った被検者ID(または試料ID)に対応付けられている疾患IDを、通信回線を介して取得する構成であってもよい。なお、リード配列情報のヘッダ領域に疾患IDが含まれており、これを情報選択部112が取得する構成であってもよい。
【0272】
薬剤データベース124は、図42に示すデータ124Bのように、データベース中の各薬剤が、所定の遺伝子変異および所定の疾患との関係でCDxに関連する薬剤であるか否かを示す「CDxフラグ」を有していてもよい。薬剤検索部118は、CDxフラグが「1」である薬剤(図42における「薬剤A」および「薬剤B」)を検索した場合、所定の疾患における所定の遺伝子変異の検出結果が、検索された薬剤のCDxに適用可能であることを示す補助情報を含むリストを生成してもよい。薬剤検索部118は、所定の疾患(例えば、がんなど)を罹患している被検者から採取された試料において所定の遺伝子変異が検出されたことに応じて、検出された遺伝子変異と当該遺伝子変異に対応する薬剤とがCDxに関連しているという情報、およびこの薬剤の奏功性に関する補助情報を含むリストを作成してもよい。
【0273】
このように、薬剤検索部118は、遺伝子変異、対象疾患、および薬剤が関連付けられて記憶されている薬剤データベース124を検索し、検出した遺伝子変異と、情報選択部112が特定した疾患をつきあわせることによって、試料に対応する疾患に応じたリストを作成できる。レポート作成部115は、薬剤検索部118によって作成されたリストを用いてレポートを作成する。
【0274】
薬剤検索部118は、図45に示すデータ構造を有する薬剤データベース124を検索して、変異に関連する薬剤の治験に関する情報を含むリストを生成してもよい。このことに関し、図46を用いて説明する。図46は、薬剤検索部118が薬剤の治験に関する情報を含むリストを生成する処理の一例を示すフローチャートである。
【0275】
薬剤検索部118は、図45に示すデータ124Cを記憶している薬剤データベース124から、関連薬剤の治験の進捗具合などの情報を検索する。具体的には、薬剤検索部118は、変異IDなどをキーとして、変異の治験に関する情報、例えば、図45に示す「治験/臨床試験状況」、治験を実施している「実施国」、および「実施機関」などを検索する(図46のステップS15c)。薬剤検索部118は、検索結果に基づき、変異、該変異に対応する関連薬剤、および該関連薬剤の治験に関する情報などを含むリストを生成する(図46のステップS16c)。
【0276】
なお、図41に示すデータ124A、図42に示すデータ124B、および図45に示すデータ124Cは、一つに統合させて薬剤データベース124に記憶されていてもよいし、薬剤データベース124を含む複数のデータベースに分散させて記憶されていてもよい。
【0277】
(レポート作成部115)
レポート作成部115は、変異同定部114が出力した情報、情報選択部112から提供される遺伝子パネルに関する情報、および薬剤検索部118によって生成された薬剤リストに基づいてレポートを作成する(図4のステップS111、および図1に対応)。作成されるレポートに掲載される情報は、遺伝子パネルに関する情報、同定された遺伝子変異に関連する情報、および検出された遺伝子変異に関連する薬剤の情報を含んでいる。検査機関120が「CDx用途」のプランの契約を締結している場合には、レポート作成部115は、CDxに適用可能な薬剤の、所定の疾患を有する被検者に対する奏功性に関連する補助情報を含むレポートを作成することも可能である。
【0278】
レポート作成部115は、情報選択部112からの遺伝子パネルに関する情報に基づいて、レポートに掲載する対象を取捨選択し、選択されなかった情報はレポートから削除する構成であってもよい。あるいは、情報選択部112が、入力部17を介して入力された遺伝子パネルに関する情報に対応する遺伝子に関連する情報を、レポートに掲載する対象として選択し、選択されなかった情報はレポートから削除されるよう、レポート作成部115を制御する構成であってもよい。
【0279】
(CDx用途として作成されるレポートの作成)
レポート作成部115は、変異同定部114が出力した情報、および薬剤検索部118が生成した薬剤リストの少なくとも1つと、図47に示すCDx情報データベース124Dとに基づいて、所定の薬剤の奏功性に関する補助情報を含むレポートを作成する。
【0280】
具体的には、レポート作成部115は、情報選択部112が特定した疾患を確認した上で、変異同定部114によって特定された遺伝子変異に対応するか否かを確認して、遺伝子変異が対応している場合には、CDx用途としてこの遺伝子変異を表示するレポートを作成してもよい。あるいは、変異同定部114によって特定された遺伝子変異を確認した上で、情報選択部112が特定した疾患を確認して、疾患が対応している場合には、CDx用途としてこの遺伝子変異を表示するレポートを作成してもよい。
【0281】
<CDx情報データベース124D>
遺伝子解析システム100を利用する検査機関120には、CDx情報データベース124Dが提供される。図47は、CDx情報データベースのデータ構造の例を示す図である。CDx情報データベース124Dは、データ124A~124Cと同様に薬剤データベース124に記憶されていてもよいし、個別のデータベースとして記憶されていてもよい。
【0282】
CDx情報データベース124Dには、CDxに適用可能な薬剤について、薬剤名、薬剤ID、対象疾患、遺伝子名(遺伝子IDでもよい)、変異、変異IDなどが互いに対応付けられている。
【0283】
レポート作成部115は、変異IDまたは被検者の疾患名あるいは疾患IDなどをキーとして、CDx情報データベース124DからCDxに関連する情報を検索し、CDxの奏功性に関する補助情報を含むレポートを作成する。
【0284】
(レポートの例)
続いて、レポート作成部115によって作成されるレポートのいくつかの具体例を、図52図60を用いて説明する。図52図60はそれぞれ、作成されるレポートの一例を示す図である。
【0285】
図52図60に示すレポートの例において、左上の部分には、被検者IDを示す「患者ID」、「患者の性別」、「患者の病名」、医療機関210において該被検者を担当する医師の名前である「担当医師名」、および医療機関名を示す「機関名」が記載されている。
【0286】
その下には、遺伝子パネルに関する情報として、例えば、「Aパネル」などの遺伝子パネル名も含まれている。さらに、品質管理試料を用いた処理および解析結果などから得られた品質評価指標「QC指標」も、レポートに出力されている。
【0287】
図52に示すように、レポート作成部115は、補助情報が関連付けられている所定の遺伝子変異に関連する情報と、所定の遺伝子変異とは異なる遺伝子変異に関連する情報とが区別されているレポートを作成してもよい。具体的には、レポート作成部115は、「CDx用途」の解析結果と、「非CDx用途」の解析結果とが区別されているレポートを作成してもよい。「CDx用途」の解析結果を例えば赤色で表示し、「非CDx用途」の解析結果を例えば黒色で表示するなど、「非CDx用途」の解析結果と異なる色を用いて「CDx用途」の解析結果を表示してもよい。なお、レポート作成部115によって作成されたレポートにおいて、「CDx用途」という見出しは、CDxに適用可能な薬剤の奏功性に関連する補助情報に含まれる。
【0288】
図53に示すように、レポート作成部115は、試料の核酸配列において検出された所定の遺伝子変異に関連する情報に、補助情報に関連する遺伝子変異であることを示す表示(例えばアイコンなど)が付与されたレポートを作成してもよい。具体的には、レポート作成部115は、「CDx用途」の解析結果に対して、「CDx」などのアイコン表示を付与したレポートを作成してもよい。解析結果を情報処理装置1の入力部17において電子的に表示する場合(例えば、Webブラウザ上に表示する場合)、検出された遺伝子変異が示されたリスト中の、所定の遺伝子変異に対応する位置にカーソルが位置しているときに、「CDx」などのアイコンを表示させる構成であってもよい。
【0289】
図54に示すように、レポート作成部115は、所定の遺伝子変異に関連する情報および補助情報を含む第一領域と、所定の遺伝子変異とは異なる遺伝子変異に関連する情報を含む第二領域と、を含むレポートを作成してもよい。具体的には、レポート作成部115は、「CDx用途」の解析結果と、「非CDx用途」の解析結果とを、レポートの異なる領域(例えば、異なるページ)に表示されるようにレポートを作成してもよい。図52に示す例では、「CDx用途」の解析結果は3ページ目に表示され、「非CDx用途」の解析結果などは4ページ目以降に表示されている。
【0290】
図55に示すように、レポート作成部115は、試料の核酸配列を解析した解析結果に基づいて、試料が採取された被検者を、所定の薬剤が疾患に対して奏功する可能性がある被検者として選択可能であることを示す補助情報を含むレポートを作成してもよい。具体的には、レポート作成部115は、「CDx用途」の解析結果に対して「*」を付し、「この解析結果は薬剤Gが奏功する可能性がある患者の選択を補助するものです。」などのコメントを補助情報として表示することができる。
【0291】
なお、図56~58は、後に説明する図48のステップS1115において、レポート作成部115が作成するレポートの例を示しており、図58~61は、図49のステップS1115においてレポート作成部115が作成するレポートの例を示している。図60に示すレポートは、図50のステップS1117において、レポート作成部115が作成するレポートの例を示している。
【0292】
このように、レポート作成部115は、「CDx用途」の遺伝子変異の表示と、「非CDx用途」の遺伝子変異の表示とを、明確に区別したレポートを作成する。これにより、例えば、遺伝子パネル検査によって得られる解析結果は、複数の疾患に亘る、複数の遺伝子変異が表示されるため、「CDx用途」の遺伝子変異の表示が埋没してしまうことを回避することができる。また、このように作成されたレポートは、CDxに適用可能な遺伝子変異、および薬剤の奏功性に関連する補助情報を分かりやすく医療機関などに提供することができる。よって、レポートの使い勝手を向上させ、所定の遺伝子変異の検出に基づいたCDxの利用および個別化医療を、より実効的なものにすることができる。
【0293】
なお、図52図59に示すようなレポートは、CDx用途のプランの契約を締結している検査機関に設置されている情報処理装置1のみが作成を許可される構成であってもよい。
【0294】
これを実現するための構成としては、例えば、CDx用途のプラン(例えば、図5の3Bに示す「プラン3」および「プラン4」)の契約を締結している場合にのみ、管理サーバ3から情報処理装置1にCDx情報データベース124Dが提供される構成であってもよい。
【0295】
あるいは、CDx用途のプランの契約を締結している検査機関等のCDxを利用可能なユーザである場合にのみ、レポート作成部115が図52図59に示すようなレポートを作成することを許可される構成であってもよい。この構成について、図61および図62を用いて説明する。図61は、検査機関が遺伝子解析システムにログインする場合に表示されるGUIの一例である。図62は、検査機関の契約種別がCDx用途を含まない場合に作成されるレポートの一例を示す図である。
【0296】
図61に示すように、遺伝子解析システム100の利用を開始するときには、検査機関IDおよびパスワードの入力が各検査機関120に求められる。入力された検査機関IDを受信した管理サーバ3は、当該検査機関120が契約しているプランを確認する。検査機関120が契約を締結しているプランがCDx用途を含むプランである場合、該検査機関120の情報処理装置1のレポート作成部115が図52図59に示すようなレポートを作成することを許可する。一方、検査機関120が契約を締結しているプランがCDx用途を含まないプランである場合には、該検査機関120の情報処理装置1のレポート作成部115は例えば、図62に示すようなレポートを作成し、図52図59に示すようなレポートの作成を許可しない。図62に示す例では、このレポートがCDx用途ではないことを示す「このレポートはCDx用途ではありません。」というメッセージが、レポートに含まれている。
【0297】
なお、本構成において契約を締結しているプランの確認は必須ではなく、遺伝子解析システム100の利用開始時に入力された検査機関IDに基づいて、CDxを利用可能なユーザか否かを解析システム管理機関130が判断してもよい。その場合、検査機関IDがCDx利用可能なユーザである場合、該検査機関120の情報処理装置1のレポート作成部115が図52図59に示すようなレポートを作成することを許可する。一方、検査機関IDがCDx利用可能でない場合には、該検査機関120の情報処理装置1のレポート作成部115は例えば、図60に示すようなレポートを作成し、図52図59に示すようなレポートの作成を許可しない。
【0298】
すなわち、レポート作成部115は、薬剤の奏功性に関連する遺伝子変異を表示する第一のレポートと、前記薬剤の奏功性に関連しない遺伝子変異を表示する第二のレポートとを作成することができる。具体的には、レポート作成部115は、
(1)試料に対応する疾患に応じてレポートを作成する。
(2)試料に対応する疾患、および試料の核酸配列において特定された遺伝子変異に応じてレポートを作成する。
【0299】
(3)薬剤の奏功性に関連する情報(例えば、CDx用途)に対応付けられる遺伝子変異を、試料に対応する疾患、および試料の核酸配列において特定された遺伝子変異に応じて異ならせたレポートを作成する。
【0300】
以下では、レポート作成部115が、図47に示すCDx情報データベース124Dを参照して、レポートを作成する処理の流れについて図48を用いて説明する。図48は、レポート作成部115が、CDxの奏功性に関する補助情報を含むレポートを作成する処理の一例を示すフローチャートである。
【0301】
情報処理装置1が設置されている検査機関がCDx用途のプラン(例えば、図5の3Bに示す「プラン3」および「プラン4」)の契約を締結していない場合(ステップS1111にてNO)、レポート作成部115は、薬剤の奏功性に関連する情報を含まないレポートを作成する(ステップS1117)。なお、このプランの判定は必須ではなく、一律にCDxに適用可能な薬剤の奏功性に関連する補助情報を提供してもよい。
【0302】
検査機関がCDx用途のプランの契約を締結している場合(ステップS1111にてYES)、ステップS1112に進む。ステップS1112において、レポート作成部115は、変異同定部114または薬剤検索部118の少なくともいずれかから通知された遺伝子変異に関連する情報(例えば、変異IDなど)が、図47に示すCDx情報データベース124Dに存在するか否かを確認する。遺伝子変異がCDx情報データベース124Dに存在する場合(ステップS1112にてYES)、ステップS1113に進む。他方、所定の遺伝子変異がCDx情報データベース124Dに存在しない場合(ステップS1112にてNO)、ステップS1115に進む。
【0303】
続いて、レポート作成部115は、ステップS1113において、情報選択部112が取得した被検者の疾患の識別情報(例えば、対象疾患名、および疾患IDなど)が、CDx情報データベース124Dにて確認された遺伝子変異に対応する対象疾患と一致するか否かを確認する。具体的には、レポート作成部115は、解析結果に含まれる遺伝子変異の変異IDをキーとして用い、CDx情報データベース124Dを検索して、該変異IDに対応する対象疾患を取得する。レポート作成部115は、取得した対象疾患の中に、被検者の疾患が存在する場合(ステップS1113にてYES)、ステップS1114に進み、薬剤の奏功性に関連する情報を含むレポートを作成する。一方、レポート作成部115は、取得した対象疾患の中に、被検者の疾患が存在しない場合(ステップS1113にてNO)、ステップS1115に進み、CDx対象の遺伝子変異が検出されなかったことが判別可能なレポートを作成する。
【0304】
なお、ステップS1115において、レポート作成部115は、以下の(1)~(3)に示すようなレポートを作成する。
【0305】
(1)「CDx用途」である旨を示す情報(例えば、「CDx用途」という表示)の近傍に、CDx対象の遺伝子変異が検出されなかった旨を示したレポートを作成する。例えば、図56に示すように、CDx対象の遺伝子変異が検出されなかった旨を示す「CDx対象の遺伝子変異は検出されませんでした」などのメッセージ、あるいは「None」または「検出無し」という表示を含むレポートを作成する。
【0306】
(2)図57に示すように、「CDx用途」である旨を示す情報自体を表示していないレポートを作成する。
【0307】
ここで、疾患の識別情報は、遺伝子解析を実行する際に操作者などによって入力部17から入力され得る。レポート作成部115は、入力された疾患の識別情報を、情報選択部112から取得して、CDx情報データベース124Dに存在するか否かを確認する構成であってもよい。
【0308】
このように、レポート作成部115は、所定の疾患の識別情報と対応付けられている試料の核酸配列において所定の遺伝子変異が検出された場合、所定の薬剤の奏功性に関する補助情報を含むレポートを作成する。これにより、所定の薬剤の奏功性に関する補助情報を含むレポートを適切に作成することができる。
【0309】
<CDx用途として作成されるレポートの作成の変形例1>
品質管理部117は、品質評価試料を測定することにより得られた配列情報に基づいて、遺伝子検査の品質を評価するための品質管理指標を生成する。CDx用途として遺伝子パネル検査の結果を用いる場合、遺伝子パネル検査で得られた分析結果の信頼性および精度などが所定の基準を満たしていることが要求される。
【0310】
そこで、レポート作成部115は、図49に示すように、品質管理部117によって生成された複数の品質評価指標の少なくとも1つが、図6の品質評価基準126に記憶されている所定の基準を満たしているか否かを確認してもよい(ステップS1116)。すなわち、品質評価指標が所定の基準を満たしている場合(ステップS1116にてYES)、S1114に進み、薬剤の奏功性に関連する情報を含むレポートを作成する。一方、品質評価指標が所定の基準を満たしていない場合(ステップS1116にてNO)、S1118に進み、品質評価指標が所定の基準を満たしていないことを判別可能なレポートを作成する。なお、品質評価指標が所定の基準を満たしていない場合(ステップS1116にてNO)、作成したレポートに含まれる解析結果が通常の品質レベルに達していない参考情報である旨を示す情報を含むレポートを作成してもよい。なお、品質評価指標が所定の基準を満たしていない場合(ステップS1116にてNO)、レポート作成部115がレポートを作成しない構成であってもよい。
【0311】
なお、品質評価指標が所定の基準を満たしていない場合(ステップS1116にてNO)、以下の(1)または(2)に示すような、CDx対象の遺伝子変異が検出されなかったことが判別可能なレポートを作成してもよい。
【0312】
(1)図58に示すように、「CDx用途」および「非CDx用途」の遺伝子変異をそれぞれ表示するが、表示した遺伝子変異の近傍に、作成したレポートに含まれる解析結果が通常の品質レベルに達していない参考情報である旨を示す「検査のQC指標に基準を満たさない項目がありました。この検査結果は、参考情報です。」などのコメントが表示されている。
【0313】
(2)図59に示すように、解析結果が通常の品質レベルに達していない旨を示す「検査のQC指標に基準を満たさない項目がありました。」などのコメントを表示し、「CDx用途」および「非CDx用途」の解析結果がいずれも表示されていない。
【0314】
このように、品質評価指標が所定の基準を満たしていない場合であっても、レポート作成部115は、CDxに適用可能な薬剤の奏功性に関連する補助情報を含まないレポート、あるいはレポートに含まれる解析結果が通常の品質レベルに達していない参考情報である旨を示す情報を含むレポートを作成する。すなわち、レポート作成部115は、品質評価指標が所定の基準を満たしていないことに応じて、遺伝子変異を有する被検者に対する薬剤の奏功性に関する情報を含まない、CDx対象の遺伝子変異が検出されなかったことが判別可能なレポートを作成してもよい。
【0315】
<CDx用途として作成されるレポートの作成の変形例2>
CDx対象の遺伝子における遺伝子変異を解析対象とする遺伝子パネルを用いたパネル検査か否かに応じて、レポート作成部115が異なるレポートを作成する構成であってもよい。図50は、レポート作成部115が、使用された遺伝子パネルがCDx対象であるか否かに応じて、CDxの奏功性に関する補助情報を含むレポートを作成する処理の一例を示すフローチャートである。なお、既に説明された工程については、同じステップ番号を付してその説明を省略する。
【0316】
情報選択部112は、図9に示すデータ121Bに基づいて、取得した遺伝子パネル名(遺伝子パネルIDでもよい)の「CDxフラグ」が「1」であるか、「0」であるかを特定する。レポート作成部115は、情報選択部112において特定された遺伝子パネルがCDx対象の遺伝子パネルである場合(ステップS1111aにてYES)には、ステップS1112に進み、情報選択部112において特定された遺伝子パネルがCDx対象の遺伝子パネルでない場合(ステップS1111aにてNO)には、S1117に進み、薬剤の奏功性に関連する情報を含まないレポートを作成する。
【0317】
この構成によれば、CDx対象の遺伝子変異が解析対象の遺伝子として含まれていない遺伝子パネル(CDx対象の遺伝子パネルではない)を用いたパネル検査の結果を報告するレポートにおいて、薬剤の奏功性に関連する情報を含まないレポートを作成する。例えば、CDx対象の遺伝子パネルではない遺伝子パネルを用いたパネル検査において、試料の核酸配列にCDx対象の所定の遺伝子変異が検出され、かつ該試料に対応する疾患がCDx対象の所定の疾患である場合であっても、図60に示すような、薬剤の奏功性に関連する情報を含まないレポートを作成する。
【0318】
なお、図48~50におけるステップS1112およびステップS1113の処理順はこれに限定されない。例えば、図51に示すように、ステップS1112をステップS1113の後に行う構成であってもよい。図51は、レポート作成部115が、所定の薬剤の奏功性に関する補助情報を含むレポートを作成する処理の他の一例を示すフローチャートである。
【0319】
この場合、レポート作成部115は、まず、ステップS1113において、情報選択部112が取得した被検者の疾患の識別情報(例えば、対象疾患名、および疾患IDなど)が、CDx情報データベース124Dにて確認された遺伝子変異に対応する対象疾患と一致するか否かを確認する。具体的には、レポート作成部115は、解析結果に含まれる遺伝子変異の変異IDをキーとして用い、CDx情報データベース124Dを検索して、該変異IDに対応する対象疾患を取得する。レポート作成部115は、取得した対象疾患の中に、被検者の疾患が存在する場合(ステップS1113にてYES)、ステップS1112に進む。他方、レポート作成部115は、取得した対象疾患の中に、被検者の疾患が存在しない場合(ステップS1113にてNO)、ステップS1112に進む。
【0320】
続いて、ステップS1112において、レポート作成部115は、変異同定部114または薬剤検索部118の少なくともいずれかから通知された遺伝子変異に関連する情報(例えば、変異IDなど)が、ステップS1113に存在する対象疾患に対応付けられているか否かを確認する。CDx情報データベース124Dにおいて、対象疾患と遺伝子変異とが対応付けられている場合(ステップS1112にてYES)、ステップS1114に進み、薬剤の奏功性に関連する情報を含むレポートを作成する。他方、CDx情報データベース124Dにおいて、対象疾患と遺伝子変異とが対応付けられていない場合(ステップS1112にてNO)、ステップS1115に進み、CDx対象の遺伝子変異が検出されなかったことが判別可能なレポートを作成する。
【0321】
(出力部13)
レポート作成部115によって作成されたレポートは、リード配列情報の解析結果として、出力部13から、医療機関210に設置された通信端末5にデータ送信されてもよい(図4のステップS112に対応)。あるいは、情報処理装置1と接続されているプリンタ(図示せず)に送信され、該プリンタによって印刷された後に、紙媒体として、検査機関120から医療機関210へ送付されてもよい。
【0322】
<品質管理指標>
品質評価指標は、例えば、以下のようなものが挙げられる。
【0323】
・指標(i):シーケンサー2によるリード配列情報の読み取り品質を示す品質評価指標。
・指標(ii):解析対象の複数の遺伝子に含まれる塩基のうちシーケンサー2で読み取られた塩基の割合を示す品質評価指標。
・指標(iii):リード配列情報のデプスを示す品質評価指標。
・指標(iv):リード配列情報のデプスのばらつきを示す品質評価指標。
・指標(v):品質管理試料に含まれる各標準遺伝子が有する変異が全て検出されたか否かを示す品質評価指標。
【0324】
そして、指標(i)には、
指標(i-1):クオリティスコア、および
指標(i-2):クラスター濃度
が含まれ得る。
【0325】
ここでは、上記の品質評価指標について、図63を用いて説明する。
【0326】
指標(i-1):クオリティスコア
クオリティスコアは、シーケンサー2によって読み取られた遺伝子配列中の各塩基の正確さを示す指標である。
【0327】
例えば、シーケンサー2からFASTQファイルでリード配列情報が出力される場合、クオリティスコアもリード配列情報に含まれている(図30参照)。なお、クオリティスコアの詳細については、既に説明されているため、ここではその説明を省略する。
【0328】
指標(i-2):クラスター濃度
シーケンサー2は、フローセル上で多数の1本鎖DNA断片を局所的に増幅固定させて、クラスターを形成する(図27の「9」参照)。そして、蛍光顕微鏡を用いてフローセル上のクラスター群を撮像し、A、C、G、Tそれぞれに対応する蛍光色(すなわち、蛍光波長が異なっている)を検出することによって配列を読み取っていく。クラスター密度は、シーケンシングを行うときのフローセル上に形成した、各遺伝子のクラスターがどの程度近接し合っているかを示す指標である。
【0329】
例えば、クラスターの密度が過度に高くなり、クラスター同士が過度に近接したり重なり合ったりしてしまうと、フローセルを撮像した画像のコントラストすなわちS/N比が低くなるため、蛍光顕微鏡のフォーカスが取りにくくなる。それゆえ、蛍光を正しく検出することができなくなり、その結果、配列を正確に読み取ることができなくなる。
【0330】
指標(ii):シーケンサー2で読み取られた塩基のうちシーケンサー2で読み取られたターゲット領域の塩基の割合を示す品質評価指標
この指標は、シーケンサー2により読み取られた塩基(ターゲット領域以外も含む)のうち、どれだけのターゲット領域の塩基が読み取られたかを示す指標であり、読み取られた塩基の総数と、ターゲット領域の塩基の総数との比として算出され得る。
【0331】
指標(iii)リード配列情報のデプスを示す品質評価指標。
【0332】
この指標は、解析対象の遺伝子に含まれる各塩基について、その塩基を読み取ったリード配列情報の総数に基づく指標であり、読み取られた塩基のうちデプスが所定の値以上である塩基の総数と、読み取られた塩基の総数との比として算出され得る。
【0333】
なお、デプス(depth)とは、同一の塩基について読み取ったリード配列情報の総数を意味している。
【0334】
図63には、解析対象の遺伝子の全長がT塩基であり、読み取られた領域の塩基がt1塩基であった場合における、読み取られた各塩基のデプスを示すグラフを示している。このグラフの、横軸は塩基の位置であり、縦軸は各塩基のデプスである。図63に示す例では、読み取られた領域のt1塩基のうち、デプスが所定の値(例えば100)以上の領域の総塩基数は(t2+t3)塩基である。この場合、指標(iii)は、(t2+t3)/t1の値として生成される。
【0335】
指標(iv):リード配列情報のデプスのばらつきを示す品質評価指標。
【0336】
この指標は、デプスの均一性を示す指標である。読み取られた領域のうちのある部分を読み取ったリード配列情報だけが極端に多い場合、デプスの均一性は低く、読み取られた領域にわたって比較的万遍なくリード配列情報が存在している場合、デプスの均一性は高い。デプスの均一性は、これに限定されるものではないが、例えば、四分位範囲(IQR)を用いて数値化することができる。IQRが高いほど均一性が低く、IQRが低いほど均一性が高いことを示す。
【0337】
指標(v):品質管理試料に含まれる各標準遺伝子が有する変異が全て検出されたか否かを示す品質評価指標。
【0338】
この指標は、品質管理試料に含まれる各標準遺伝子が有する変異が検出されて、正しく同定されたことを示す指標である。例えば、図21の(a)に示す品質管理試料Aおよび図21の(b)に示す品質管理試料Bなどに含まれる各標準遺伝子が有する変異(「Variant」の欄を参照)は既知の変異である。これらの変異の位置、変異種別などを正しく同定できたか否かを評価するための指標が品質評価指標として用いられる。
【0339】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【0340】
なお、情報処理装置1は、各機能を実現するソフトウェアであるプログラムの命令を実行するコンピュータである。このコンピュータは、例えば1つ以上のプロセッサを備えていると共に、上記プログラムを記憶したコンピュータ読み取り可能な記録媒体を備えている。そして、上記コンピュータにおいて、上記プロセッサが上記プログラムを上記記録媒体から読み取って実行することにより、本発明の目的が達成される。上記プロセッサとしては、例えばCPU(Central Processing Unit)を用いることができる。上記記録媒体としては、「一時的でない有形の媒体」、例えば、ROM(Read Only Memory)等の他、テープ、ディスク、カード、半導体メモリ、プログラマブルな論理回路などを用いることができる。また、上記プログラムを展開するRAM(Random Access Memory)などをさらに備えていてもよい。また、上記プログラムは、該プログラムを伝送可能な任意の伝送媒体(通信ネットワークや放送波等)を介して上記コンピュータに供給されてもよい。なお、本発明の一態様は、上記プログラムが電子的な伝送によって具現化された、搬送波に埋め込まれたデータ信号の形態でも実現され得る。
【0341】
〔その他の態様1〕
本発明には、以下の態様も含まれる。
【0342】
本発明の一態様に係る解析方法は、コンピュータ(情報処理装置1)を用いて、試料の核酸配列を解析する解析方法であって、コンピュータは、遺伝子の変異の情報、薬剤の情報、該薬剤の対象疾患の情報、および該薬剤を承認している複数の機関または国の情報が関連付けられて記憶されているデータベース(124)を備えており、核酸配列からシーケンサー(2)により読み取られた配列情報に基づいて所定変異を特定し(ステップS1、S1112)、試料に対応する疾患を識別し、特定された所定変異および識別された疾患に対応付けられた薬剤であって、複数の機関または国のうちの少なくとも1つの機関または国によって承認されている薬剤をデータベース(124)から検索し、検索結果に基づいて、検索された薬剤の奏功性に関連する情報を含むレポートを作成する(ステップS3、S1114)。
【0343】
上記の構成によれば、試料の核酸配列において所定変異を特定し、試料に対応する疾患に応じて、所定変異に対応する所定の薬剤の奏功性に関連する情報を含むレポートを作成する。これにより、例えば、複数の疾患に関連する、複数の遺伝子における複数の異常を一括で分析することが可能な遺伝子パネルを用いたパネル検査の結果に基づいて、コンパニオン診断(CDx)に適用可能な薬剤の奏功性に関連する情報を含むレポートを作成することができる。このように作成されたレポートは、遺伝子パネル検査の結果においてCDxに適用可能な所定変異を判別することが容易である。このようなレポートを医療機関などに提供すれば、所定変異の検出に基づいたCDxに適用可能な薬剤の奏功性に関連する薬剤の利用および個別化医療を、より実効的なものにすることができる。
【0344】
上記解析方法において、試料に対応する疾患を識別し、所定の疾患の識別に応じて、所定の薬剤の奏功性に関連する情報を含むレポートを作成する構成であってもよい。
【0345】
上記解析方法において、試料に対応する疾患を識別し、所定の疾患における所定変異の検出に応じて、所定の薬剤の奏功性に関連する情報を含むレポートを作成する構成であってもよい。
【0346】
上記解析方法において、配列情報に基づいて、検索された薬剤の奏功性に関連する所定変異および検索された薬剤の奏功性に関連しない他の変異の有無を判定してもよい。
【0347】
例えば、がんなどに罹患した被検者から採取された試料において所定変異が検出された場合、この解析方法を採用することにより、所定変異に対応するCDxに適用可能な薬剤の奏功性に関連する情報を表示するレポートを作成することができる。
【0348】
上記解析方法において、検索された薬剤の奏功性に関連する所定変異と、検索された薬剤の奏功性に関連しない他の変異とが区別されているレポートを作成してもよい。
【0349】
上記解析方法において、所定変異と検索された薬剤の奏功性に関する情報とが関連付けられたレポートを作成してもよい。
【0350】
上記解析方法において、検索された薬剤の奏功性に関する所定変異を表示する第一領域と、検索された薬剤の奏功性に関連しない他の変異を表示する第二領域と、を含むレポートを作成してもよい。
【0351】
上記解析方法において、検索された薬剤の奏功性に関連する所定変異を表示するレポートと、検索された薬剤の奏功性に関連しない他の変異を表示するレポートを作成してもよい。
【0352】
上記解析方法において、検索された所定の薬剤の奏功性に関連することを示すアイコンが所定変異に関連付けられたレポートを作成してもよい。
【0353】
上記解析方法において、試料の核酸配列において所定変異が検出されたことを示す情報を含み、該試料が採取された被検者を検索された薬剤が奏効する可能性のある被検者として選択可能であることを示す情報を表示するレポートを作成してもよい。
【0354】
上記解析方法において、核酸配列の解析の品質に関する品質評価指標が所定の基準を満たしていることに応じて、検索された薬剤の奏功性に関する情報を表示するレポートを作成してもよい。
【0355】
上記解析方法において、品質評価指標は、シーケンサー(2)によって読み取られた配列情報中の各塩基の読取の正確さを示していてもよい。
【0356】
上記解析方法において、品質評価指標は、読み取られた配列情報のデプスを示していてもよい。
【0357】
上記解析方法において、品質評価指標は、読み取られた配列情報のデプスのばらつきを示していてもよい。
【0358】
上記解析方法において、配列情報は、フローセル上で増幅された核酸配列のクラスター群から読み取られた情報であり、品質評価指標は、クラスター群におけるクラスターの近接度合を示していてもよい。
【0359】
上記解析方法において、品質評価指標が所定の基準を満たしていないことに応じて、核酸配列の解析結果が参考情報であることを示す情報を含むレポートを作成してもよい。
【0360】
上記解析方法において、品質評価指標が所定の基準を満たしていないことに応じて、検索された薬剤の奏功性に関する情報を含まないレポートを作成してもよい。
【0361】
上記解析方法において、品質評価指標が所定の基準を満たさないことに応じて、試料の核酸配列において特定された所定変異が検出されたことを示す情報を含み、該試料が採取された被検者を検索された薬剤が奏効する可能性のある被検者のとして選択不可であることを示す情報を含むレポートを作成してもよい。
【0362】
上記解析方法において、所定変異は、ヌクレオチドの置換、欠失、もしくは挿入、多型、遺伝子のコピー数異常または遺伝子融合であってもよい。
【0363】
上記解析方法において、配列情報は、核酸配列のエクソン領域から読み取られた配列情報であってもよい。
【0364】
上記解析方法において、配列情報は、1000万塩基以上のエクソン領域から読み取られた配列情報であってもよい。
【0365】
上記解析方法において、配列情報を、通信回線を介して取得してもよい。
【0366】
上記解析方法において、コンピュータ(情報処理装置1)の操作者の入力に基づいて、試料に対応する情報を取得してもよい。
【0367】
上記解析方法において、試料に対応する疾患に関する情報を、試料に付された識別情報に基づいて取得する構成であってもよい。
【0368】
上記解析方法において、試料に対応する疾患に関する情報を、通信回線を介して取得する構成であってもよい。
【0369】
上記解析方法において、所定変異に対する薬剤の奏功性に関する情報を、通信回線を介して取得する構成であってもよい。
【0370】
本発明の別の態様に係る解析方法は、コンピュータ(情報処理装置1)を用いて、試料の核酸配列を解析する解析方法であって、核酸配列から読み取られた配列情報に基づいて所定変異を特定し、試料に対応する疾患を識別し、所定の疾患の試料における所定変異の検出に応じて、所定の薬剤の奏功性に関する情報を含むレポートを作成する。
【0371】
上記の構成によれば、所定の疾患の試料における所定変異が検出されたことに応じて、所定の薬剤の奏功性に関する情報を含むレポートを作成する。これにより、薬剤の奏功性に関する情報を表示するレポートを適切に作成することができる。
【0372】
上記解析方法において、コンピュータ(情報処理装置1)により所定変異の有無を判定し、コンピュータ(情報処理装置1)によりレポートを作成する構成であってもよい。
【0373】
本発明の他の態様に係る情報処理装置(1)は、試料の核酸配列を解析する情報処理装置(1)であって、遺伝子の変異の情報、薬剤の情報、該薬剤の対象疾患の情報、および該薬剤を承認している複数の機関または国の情報が関連付けられて記憶されているデータベース(124)を記憶する記憶部(12)と、核酸配列からシーケンサー(2)により読み取られた配列情報を取得する配列データ読取部(111)と、配列情報に基づいて、核酸配列における所定変異を特定する変異同定部(114)と、試料に対応する疾患を識別する情報選択部(112)と、特定された所定変異および識別された疾患に対応付けられた薬剤であって、複数の機関または国のうちの少なくとも1つの機関または国によって承認されている薬剤をデータベース(124)から検索する薬剤検索部(118)と、検索結果に基づいて、検索された薬剤の奏功性に関連する情報を含むレポートを作成するレポート作成部(115)と、を備える。
【0374】
上記の構成によれば、情報処理装置(1)は、核酸配列から読み取られた配列情報における所定変異を特定し、試料に対応する疾患に応じて、所定変異に対応する所定の薬剤の奏功性に関連する情報を表示するレポートを作成する。これにより、例えば、複数の疾患に関連する、複数の遺伝子における複数の異常を一括で分析することが可能な遺伝子パネル検査においても、所定変異に対応する薬剤の奏功性に関する情報を含むレポートを適切に作成することができる。
【0375】
レポート作成部(115)は、所定の疾患の識別に応じて、所定の薬剤の奏功性に関連する情報を含むレポートを作成してもよい。
【0376】
レポート作成部(115)は、所定の疾患における所定変異の検出に応じて、所定の薬剤の奏功性に関連する情報を含むレポートを作成してもよい。
【0377】
薬剤検索部(118)は、配列情報に基づいて、検索された薬剤の奏功性に関連する所定変異および検索された薬剤の奏功性に関連しない他の変異を判定してもよい。
【0378】
レポート作成部(115)は、検索された薬剤の奏功性に関連する所定変異と、検索された薬剤の奏功性に関連しない他の変異とが区別されているレポートを作成してもよい。
【0379】
レポート作成部(115)は、所定変異と検索された薬剤の奏功性に関する情報とが関連付けられたレポートを作成してもよい。
【0380】
レポート作成部(115)は、検索された薬剤の奏功性に関する所定変異を表示する第一領域と、検索された薬剤の奏功性に関連しない他の変異を表示する第二領域と、を含むレポートを作成してもよい。
【0381】
レポート作成部(115)は、検索された薬剤の奏功性に関連する所定変異を表示するレポートと、検索された薬剤の奏功性に関連しない他の変異を表示するレポートと、を作成してもよい。
【0382】
レポート作成部(115)は、検索された薬剤の奏功性に関連することを示すアイコンが所定変異に関連付けられたレポートを作成してもよい。
【0383】
レポート作成部(115)は、試料の核酸配列において所定変異が検出されたことを示す情報を含み、該試料が採取された被検者を検索された薬剤が奏効する可能性のある被検者としての選択可能であることを示す情報を表示するレポートを作成してもよい。
【0384】
レポート作成部(115)は、核酸配列の解析の品質に関する品質評価指標が所定の基準を満たしていることに応じて、検索された薬剤の奏功性に関する情報を表示するレポートを作成してもよい。
【0385】
品質評価指標は、シーケンサー(2)によって読み取られた配列情報中の各塩基の読取の正確さを示していてもよい。
【0386】
品質評価指標は、読み取られた配列情報のデプスを示していてもよい。
【0387】
品質評価指標は、読み取られた配列情報のデプスのばらつきを示していてもよい。
【0388】
配列データ読取部(111)は、フローセル上で増幅された核酸配列のクラスター群から読み取られた配列情報を取得し、品質評価指標は、クラスター群におけるクラスターの近接度合を示していてもよい。
【0389】
レポート作成部(115)は、品質評価指標が所定の基準を満たしていないことに応じて、核酸配列の解析結果が参考情報であることを示す情報を含むレポートを作成してもよい。
【0390】
リード配列情報のデプス、リード配列情報のデプスのばらつき、およびクラスター間の近接度合はいずれも、核酸配列を解析した解析結果の品質を適切に評価するための品質評価指標となり得る。これらの品質評価指標を適用すれば、十分な精度を有する、核酸配列を解析した解析結果に基づくレポートを作成することができる。
【0391】
レポート作成部(115)は、品質評価指標が前記所定の基準を満たしていないことに応じて、検索された薬剤の奏功性に関する情報を含まないレポートを作成してもよい。
【0392】
レポート作成部(115)は、品質評価指標が所定の基準を満たさないことに応じて、試料の核酸配列において特定された所定変異が検出されたことを示す情報を含み、該試料が採取された被検者を検索された薬剤が奏効する可能性のある被検者として選択不可であることを示す情報を含むレポートを作成してもよい。
【0393】
前記変異同定部(114)は、配列情報に基づいて、核酸配列におけるヌクレオチドの置換、欠失、もしくは挿入、多型、遺伝子のコピー数異常または遺伝子融合を特定してもよい。
【0394】
配列データ読取部(111)は、核酸配列のエクソン領域から読み取られた配列情報を取得してもよい。
【0395】
配列データ読取部(111)は、1000万塩基以上のエクソン領域から読み取られた配列情報を取得してもよい。
【0396】
配列データ読取部(111)は、配列情報を、通信回線を介して取得してもよい。
【0397】
情報選択部(112)は、操作者によって入力された試料に対応する疾患に関する情報を取得してもよい。
【0398】
情報選択部(112)は、試料に対応する疾患に関する情報を、試料を識別するための識別情報に基づいて取得してもよい。
【0399】
例えば、試料を収容する容器などに付されたバーコードまたはRFIDなどの記録手段を読取ることにより、情報選択部(112)は、試料IDおよび試料に対応する疾患に関する情報を取得する構成であってもよい。
【0400】
情報選択部(112)は、試料に対応する疾患に関する情報を、通信回線を介して取得してもよい。
【0401】
情報処理装置(1)は、所定変異に対する薬剤の奏功性に関する情報を、通信回線を介して取得してもよい。
【0402】
本発明の他の態様に係るプログラムは、遺伝子の変異の情報、薬剤の情報、該薬剤の対象疾患の情報、および該薬剤を承認している複数の機関または国の情報が関連付けられて記憶されているデータベース(124)を備えるコンピュータに、試料の核酸配列からシーケンサー(2)により読み取られた配列情報に基づいて所定変異を特定する工程(ステップS1、S1112)と、試料に対応する疾患を識別する工程(ステップS2、S1113)と、特定された所定変異および識別された疾患に対応付けられた薬剤であって、複数の機関または国のうちの少なくとも1つの機関または国によって承認されている薬剤をデータベース(124)から検索する工程(ステップS15b)と、検索結果に基づいて、検索された薬剤の奏功性に関連する情報を含むレポートを作成する工程(ステップS3、S1114)と、を実行させるためのプログラムである。
【0403】
上記の構成によれば、本発明の一態様に係る解析方法と同等の効果を奏する。
【0404】
〔その他の態様2〕
本発明には、以下の態様も含まれる。
【0405】
本発明の一態様に係る方法は、コンピュータ(情報処理装置1)を用いて、複数種類の遺伝子パネルに各々対応するレポートを作成する方法であって、コンピュータ(情報処理装置1)が、検査で用いた遺伝子パネルの識別情報と、検査で検出された遺伝子変異を示す情報を含む検査結果と、検査に供された試料に対応する疾患情報とを取得し、検査結果と疾患情報とに基づいて、識別情報に対応するコンパニオン診断対象の変異を特定し、コンパニオン診断対象の変異に対応する薬剤の奏功性に関連する情報を含むレポートを作成する。
【0406】
レポートにおいて、コンパニオン診断対象の変異と薬剤の奏功性に関連する情報とが関連付けられて表示されてもよい。
【0407】
レポートにおいて、コンパニオン診断対象の変異であることを示す情報が、薬剤の奏功性に関連する情報と関連付けられて表示されてもよい。
【0408】
レポートにおいて、コンパニオン診断対象の変異であることを示す情報がアイコンで示されてもよい。
【0409】
レポートにおいて、コンパニオン診断対象の変異と、コンパニオン診断対象の変異とは異なる他の変異とが区別可能に表示されてもよい。
【0410】
レポートは、コンパニオン診断対象の変異と薬剤の奏功性に関連する情報とを表示する第一の領域と、他の変異に関する情報を表示する第二の領域と、を含んでいてもよい。
【0411】
コンパニオン診断対象の変異と薬剤の奏功性に関連する情報とを表示する第一のレポートと、他の変異に関する情報を表示する第二のレポートと、を作成してもよい。
【0412】
レポートにおいて、コンパニオン診断対象の変異の有無が識別可能に表示されてもよい。
【0413】
複数種類の遺伝子パネルの少なくとも1つは、複数種類の疾患の検査に使用可能であり、検査で検出された複数の遺伝子変異の少なくとも1つは、複数種類の疾患の少なくとも1つに対応する試料で検出されたか否かに応じて、コンパニオン診断対象の変異か否かが特定されてもよい。
【0414】
コンピュータ(情報処理装置1)が、複数種類の遺伝子パネルの各々について、識別情報とコンパニオン診断対象に関する情報とが関連付けて記録されているデータベースを備えていてもよい。
【0415】
コンパニオン診断対象に関する情報が、遺伝子パネルがコンパニオン診断対象か否かに関する情報、コンパニオン診断対象の変異情報、コンパニオン診断対象の薬剤情報、およびコンパニオン診断対象の疾患情報のうちの少なくとも1つを含んでいてもよい。
【0416】
レポートは、検査で検出された遺伝子変異に関連する薬剤の治験に関する情報を含んでいてもよい。
【0417】
レポートは、検査で用いた遺伝子パネル名を含んでいてもよい。
【0418】
レポートは、試料に対応する疾患名を含んでいてもよい。
【0419】
本発明の一態様に係る情報処理装置は、複数種類の遺伝子パネルに各々対応するレポートを出力する情報処理装置(1)であって、検査で用いた遺伝子パネルの識別情報と、検査で検出された遺伝子変異を示す情報を含む検査結果と、検査に供された試料に対応する疾患情報を取得して解析を実行する制御部(11)と、解析に使用する各種データを記憶する記憶部(12)と、識別情報、検査結果、および疾患情報に基づく解析により作成された、遺伝子パネルに対応するレポートを出力する出力部(13)と、を備え、制御部(11)が、検査結果と疾患情報とに基づいて、識別情報に対応するコンパニオン診断対象変異を特定し、コンパニオン診断対象変異に対応する薬剤の奏功性に関連する情報を含むレポートを作成する。
【0420】
本発明の一態様に係るプログラムは、複数種類の遺伝子パネルの各々に対応するレポートをコンピュータ(情報処理装置1)に作成させるプログラムであって、コンピュータ(情報処理装置1)に、検査で用いた遺伝子パネルの識別情報と、検査で検出された遺伝子変異を示す情報を含む検査結果と、検査に供された試料に対応する疾患情報とを取得する工程と、検査結果と疾患情報とに基づいて、識別情報に対応するコンパニオン診断対象変異を特定する工程(図49~51のS1112)と、コンパニオン診断対象変異に対応する薬剤の奏功性に関連する情報を含むレポートを作成する工程(図49~51のS1114)と、を実行させる。
【符号の説明】
【0421】
1 情報処理装置
2 シーケンサー
3 管理サーバ
4 通信回線
11 制御部
111 配列データ読取部
112 情報選択部
114 変異同定部
115 レポート作成部
118 薬剤検索部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26
図27
図28
図29
図30
図31
図32
図33
図34
図35
図36
図37
図38
図39
図40
図41
図42
図43
図44
図44A
図44B
図45
図46
図47
図48
図49
図50
図51
図52
図53
図54
図55
図56
図57
図58
図59
図60
図61
図62
図63