(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-07
(45)【発行日】2023-12-15
(54)【発明の名称】冶具および半導体装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 23/02 20060101AFI20231208BHJP
【FI】
H01L23/02 C
(21)【出願番号】P 2022190493
(22)【出願日】2022-11-29
(62)【分割の表示】P 2020539556の分割
【原出願日】2019-08-28
【審査請求日】2022-11-29
(31)【優先権主張番号】P 2018162659
(32)【優先日】2018-08-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】江草 稔
(72)【発明者】
【氏名】矢野 佑樹
(72)【発明者】
【氏名】和田 裕邦
【審査官】河合 俊英
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-164841(JP,A)
【文献】特開2006-120918(JP,A)
【文献】特開2012-238638(JP,A)
【文献】特開2010-62248(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 23/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
板状部材の上面に配置される半導体素子の位置決めに用いる冶具であって、
第1面と、前記第1面と反対側の第2面とを有するベース部を備え、前記ベース部には、前記第1面から前記第2面に到達する第1貫通孔が形成され、さらに、
前記第1貫通孔の内部に配置され、前記半導体素子が挿入される第2貫通孔が形成された位置決め部を備え、
前記位置決め部は、前記第1貫通孔の内部において移動可能であって、前記位置決め部の前記第2面側の端部が前記第2面より外側に前記板状部材の反り量以上突出するように構成され、
前記ベース部は、前記第1貫通孔の内側に向けて突出する第1突出部を含み、
前記位置決め部は、前記ベース部に向けて突出するとともに、前記第1突出部より前記第1面側に位置する第2突出部を含み、
前記ベース部の前記第1面側から見た場合に、前記第1突出部と前記第2突出部とが重なるように配置され、
前記位置決め部は、前記第2突出部の前記第1面側に接続された前記第1面側に延びる壁部を有し、
前記第2貫通孔の側面は、前記第2突出部の側面と前記壁部の側面を含み、
前記位置決め部の厚みは、前記第2突出部と前記壁部の厚みの和であり、
前記第1突出部の厚みは、前記壁部の厚みより小さく、かつ、前記ベース部の厚みより小さく、
前記半導体素子は前記板状部材の中心からずれた位置に配置される、冶具。
【請求項2】
前記第1面から前記第2面に向かう厚み方向において、前記ベース部の厚みは前記位置決め部の厚みより大きい、請求項1に記載の冶具。
【請求項3】
前記第1貫通孔の延在方向に沿った断面において、前記第1面側に向かうにつれて前記第1貫通孔の幅が徐々に小さくなるように、前記第1貫通孔の内壁は前記第1面に対して傾斜している、請求項1または請求項2に記載の冶具。
【請求項4】
前記第1貫通孔の延在方向に沿った断面において、前記第1面における前記第1貫通孔の幅は前記第1貫通孔の前記延在方向における中央部での前記第1貫通孔の幅より小さい、請求項1または請求項2に記載の冶具。
【請求項5】
前記ベース部は、
前記第1貫通孔の前記第1面に連なる第1面側部分が形成された第1部分と、
前記第1部分が接続され、前記第1貫通孔の前記第1面側部分以外の部分が形成された第2部分とを含む、請求項4に記載の冶具。
【請求項6】
前記第1部分には固定用貫通孔が形成され、
前記第2部分には、前記第1面側から見て前記固定用貫通孔と重なる位置に固定用開口部が形成され、
前記ベース部は、前記固定用貫通孔の内部から前記固定用開口部の内部まで延在し、前記第1部分を前記第2部分に固定する固定用ピンを含む、請求項5に記載の冶具。
【請求項7】
前記第1面側から見た前記第1貫通孔の平面形状は多角形状であり、
前記第1面側から見た前記位置決め部の平面形状は、前記第1貫通孔の前記平面形状に沿った多角形状であり、
前記位置決め部の前記平面形状における角部には面取部が形成されている、請求項1~請求項6のいずれか1項に記載の冶具。
【請求項8】
前記第2貫通孔の平面形状は多角形状であり、
前記第2貫通孔の前記平面形状における角部には、外側に突出した切り欠き部が形成されている、請求項1~請求項7のいずれか1項に記載の冶具。
【請求項9】
前記板状部材と前記半導体素子とを準備する工程と、
前記板状部材上に請求項1~請求項8のいずれか1項に記載の冶具を配置するとともに、前記冶具の前記位置決め部における前記第2貫通孔の内部に接合材と前記半導体素子とを配置する工程と、
前記接合材により前記半導体素子を前記板状部材に固定する工程と、を備える、半導体装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、冶具および半導体装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、板状部材としての絶縁基板に部品としての半導体素子をはんだなどの接合材により接合する際、半導体素子の位置決めを行うための冶具が用いられている。たとえば、特開2002-361410号公報には、開口部が形成された板状の第1冶具と、開口部の内部に配置され、第1冶具の表面に沿って開口部内を移動可能に構成され、はんだと部品とを位置決めする第2冶具とを含む冶具が開示されている。また、特開2009-59832号公報には、湾曲した板状部材に部品をはんだ付けするために用いる冶具であって、下向きに凸となった湾曲形状の板状部材における当該湾曲した部分に接触する凸部を有する冶具が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2002-361410号公報
【文献】特開2009-59832号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した文献では、半導体素子などの部品を接合する対象である絶縁基板などの板状部材が湾曲している場合に、冶具と板状部材との間に想定より大きな隙間が発生するため、冶具により位置決めされた部品の位置がずれてしまうという課題について特に言及していない。
【0005】
この発明の目的は、半導体素子などの部品を接合する対象である板状部材が湾曲していても、板状部材に対する部品の位置ずれを抑制することが可能な冶具および半導体装置の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示に従った冶具は、半導体素子の位置決めに用いる冶具であって、ベース部と位置決め部とを備える。ベース部は、第1面と、当該第1面と反対側の第2面とを有する。ベース部には、第1面から第2面に到達する第1貫通孔が形成される。位置決め部は、第1貫通孔の内部に配置され、半導体素子が挿入される第2貫通孔が形成されている。位置決め部は、第1貫通孔の内部において移動可能であって、位置決め部の第2面側の端部が第2面より外側に突出するように構成されている。
【0007】
本開示に従った半導体装置の製造方法は、板状部材と半導体素子とを準備する工程を備える。上記半導体装置の製造方法は、板状部材上に上記冶具を配置するとともに、冶具の位置決め部における第2貫通孔の内部に接合材と半導体素子とを配置する工程を備える。上記半導体装置の製造方法は、接合材により半導体素子を板状部材に固定する工程を備える。
【発明の効果】
【0008】
上記によれば、板状部材が湾曲していても、板状部材に対する部品の位置ずれを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】実施の形態1に係る冶具の斜視模式図である。
【
図2】
図1の線分II-IIにおける断面模式図である。
【
図3】実施の形態1に係る半導体装置の製造方法を説明するためのフローチャートである。
【
図4】実施の形態1に係る半導体装置の製造方法を説明するための断面模式図である。
【
図5】
図3に示した半導体装置の製造方法を用いて製造された半導体装置の模式図である。
【
図6】比較例としての半導体装置の製造方法を説明するための断面模式図である。
【
図7】比較例としての半導体装置の製造方法を説明するための断面模式図である。
【
図8】比較例としての半導体装置の製造方法を説明するための断面模式図である。
【
図9】比較例としての半導体装置の製造方法を説明するための断面模式図である。
【
図10】実施の形態1に係る冶具の第1変形例を説明するための拡大模式図である。
【
図11】実施の形態1に係る冶具の第2変形例を説明するための部分断面模式図である。
【
図12】実施の形態2に係る冶具の断面模式図である。
【
図13】
図12に示した冶具のサイズを説明するための模式図である。
【
図14】実施の形態2に係る冶具の第1変形例を説明するための部分断面模式図である。
【
図15】実施の形態2に係る冶具の第2変形例を説明するための部分断面模式図である。
【
図16】実施の形態3に係る冶具の部分断面模式図である。
【
図17】
図16に示した冶具の構成例を説明するための部分断面模式図である。
【
図19】実施の形態4に係る冶具の斜視模式図である。
【
図20】実施の形態4に係る冶具の第1変形例を説明するための模式図である。
【
図21】実施の形態4に係る冶具の第2変形例を説明するための模式図である。
【
図22】実施の形態5に係る冶具のベース部を示す平面模式図である。
【
図23】実施の形態5に係る冶具の位置決め部を示す平面模式図である。
【
図24】実施の形態5に係る冶具の部分断面模式図である。
【
図25】実施の形態5に係る冶具の第1変形例を説明するための部分断面模式図である。
【
図26】実施の形態5に係る冶具の第2変形例を説明するための平面模式図である。
【
図27】実施の形態6に係る冶具の断面模式図である。
【
図28】
図27に示した冶具の構成例を説明するための断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態を説明する。なお、同一の構成には同一の参照番号を付し、その説明は繰り返さない。
【0011】
実施の形態1.
<冶具の構成>
図1は、実施の形態1に係る冶具の斜視模式図である。
図2は、
図1の線分II-IIにおける断面模式図である。
図1および
図2に示す冶具1は、半導体素子21、22の位置決めに用いる冶具1であって、ベース部4と位置決め部3とを備える。ベース部4は、第1面4cと、当該第1面4cと反対側の第2面4dとを有する。ベース部4には、第1面4cから第2面4dに到達する第1貫通孔4aが形成される。
図1および
図2に示した冶具1のベース部4には、複数の第1貫通孔4aが形成されている。
図1に示した冶具1では、ベース部4において6つの第1貫通孔4aが形成されている。なお、第1貫通孔4aの数は1でもよく、2以上の任意の数でもよい。複数の第1貫通孔4aは、
図1に示すように行列上に配置されていてもよいが、任意の配置とすることができる。第1貫通孔4aの平面形状は、
図1に示すような四角形状でもよいが、円形状あるいは三角形状などの多角形状であってもよい。
【0012】
位置決め部3は、第1貫通孔4aの内部に配置される。位置決め部3には、位置決め対象の部品としての半導体素子が挿入される第2貫通孔3aが形成されている。位置決め部3は、第1貫通孔4aの内部においてベース部4の厚み方向に移動可能である。位置決め部3は、位置決め部3の第2面4d側の端部が第2面4dより外側に突出するように第1貫通孔4a内を移動可能に構成されている。
【0013】
位置決め部3の平面形状の外形は第1貫通孔4aの平面視における形状と相似形である。ただし、位置決め部3の平面形状は第1貫通孔4a内における位置決め部3の位置を決定できれば任意の形状とすることができる。位置決め部3の第2貫通孔3aの形状は四角形状となっているが、当該第2貫通孔3aの平面形状は、位置決め対象の半導体素子の位置を決定できればよく、任意の形状とすることができる。
【0014】
<半導体装置の製造方法>
図3は、実施の形態1に係る半導体装置の製造方法を説明するためのフローチャートである。
図4は、実施の形態1に係る半導体装置の製造方法を説明するための断面模式図である。
図5は、
図3に示した半導体装置の製造方法を用いて製造された半導体装置の模式図である。
図3~
図5を参照しながら、半導体装置の製造方法を説明する。
【0015】
図3に示すように、半導体装置の製造方法では、まず準備工程(S10)を実施する。この工程(S10)では、半導体装置を構成する部品および冶具1が準備される。半導体装置を構成する部品としては、たとえば
図4に示した板状部材の一例である絶縁基板10、はんだおよび半導体素子などが挙げられる。
【0016】
次に、位置決め工程(S20)を実施する。この工程(S20)では、凹部5aが形成された下冶具5の当該凹部5a内に絶縁基板10を配置する。なお、絶縁基板10は、セラミックス製の絶縁層11と、放熱のための裏面導体パターン13と、回路を構成する表面導体パターン12とを含む。裏面導体パターン13は絶縁層11の裏面上に形成されている。表面導体パターン12は絶縁層11の表面上に形成されている。裏面導体パターン13および表面導体パターン12を構成する材料は任意の材料を用いることができるが、たとえば当該材料として銅を用いてもよい。裏面導体パターン13の厚みはたとえば0.7mmとすることができる。表面導体パターン12の厚みはたとえば0.8mmとすることができる。
【0017】
絶縁基板10上に上冶具としての冶具1を配置する。冶具1は下冶具5の凹部5aを塞ぐように配置される。冶具1における位置決め部3は、絶縁基板10の表面導体パターン12上であって半導体素子が固定されるべき位置に重なるように配置されている。このとき、
図4に示すように位置決め部3は冶具1のベース部4の第1貫通孔4a内をベース部4の厚み方向に移動し、当該位置決め部3の下部が絶縁基板10と接している。この状態で、位置決め部3の第2貫通孔3aの内部にはんだおよび半導体素子21、22(
図5参照)を配置する。はんだとしては第2貫通孔3aの平面形状よりやや小さいサイズのペレット状のはんだを用いることができる。ここで、位置決め部3が第1貫通孔4a内部を移動可能となっているため、当該位置決め部3と絶縁基板10との間に半導体素子21、22が通り抜ける程度の大きさの隙間が形成されることを防止できる。このため、絶縁基板10上において半導体素子の配置を正確に決定できる。なお、半導体素子21、22の厚みはたとえば50μm以上250μm以下、位置決め工程(S20)において用いられるペレット状のはんだの厚みはたとえば40μm以上150μm以下である。
【0018】
次に、接合工程(S30)を実施する。この工程(S30)では、上記下冶具5および冶具1によりはんだ23および半導体素子21、22が正確な位置に配置された絶縁基板10を加熱する。加熱方法としては任意の方法を用いることができるが、たとえばはんだ付け炉に絶縁基板10を投入してもよい。当該加熱によりはんだが溶融し、
図5に示すように絶縁基板10の表面導体パターン12と半導体素子21,22とが接合される。なお、はんだ付け炉に絶縁基板10を投入するときには、絶縁基板10は下冶具5および冶具1に組込まれた状態となっている。はんだ付け炉中ではコンベアにより絶縁基板10が搬送されてもよい。はんだ付け炉中の圧力を大気圧より下げてもよい。この場合、はんだ23におけるボイドの発生を抑制できる。
【0019】
ここで、絶縁基板10は常温において反り量がたとえば100μm以下であったとしても、加熱されることにより絶縁層11の構成材料と裏面導体パターン13および表面導体パターン12の構成材料との線膨張係数の差により、凹形状の大きな反りが発生する場合がある。たとえば、絶縁層11を構成するセラミックの線膨張係数は3ppm/K程度、裏面導体パターン13および表面導体パターン12を構成する銅の線膨張係数が17ppm/K程度である。また、絶縁基板10において絶縁層11の最も長い一辺の長さが50mmより大きい場合に、当該反り量が顕著に大きくなる。このような場合であっても、本実施の形態に係る冶具1を用いることで、接合工程(S30)において、冶具1と絶縁基板10との間に大きな隙間が発生することを抑制できる。
【0020】
次に、後処理工程(S40)を実施する。この工程(S40)では、たとえばはんだ付け炉から排出された絶縁基板10から、下冶具5および冶具1が除去される。その後、半導体素子21、22と表面導体パターン12とがワイヤ24により接続される。このようにして、
図5に示す半導体装置を得ることができる。
【0021】
ワイヤ24としては任意の金属製ワイヤを用いることができるが、たとえばアルミニウム(Al)ワイヤを用いてもよい。ワイヤ24の直径はたとえば400μmとしてもよい。また、半導体素子21、22としては、任意の半導体素子を用いることができる。半導体素子21、22としては、たとえばIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)およびFwDi(Free-Wheel Diode)などを用いることができる。
【0022】
<作用効果>
本開示に従った冶具1は、半導体素子21、22の位置決めに用いる冶具1であって、ベース部4と位置決め部3とを備える。ベース部4は、第1面4cと、当該第1面4cと反対側の第2面4dとを有する。ベース部4には、第1面4cから第2面4dに到達する第1貫通孔4aが形成される。位置決め部3は、第1貫通孔4aの内部に配置され、半導体素子21、22が挿入される第2貫通孔3aが形成されている。位置決め部3は、第1貫通孔4aの内部において移動可能であって、位置決め部3の第2面4d側の端部が第2面4dより外側に突出するように構成されている。
【0023】
このようにすれば、半導体素子21,22を固定する板状部材としての絶縁基板10が
図4に示すように反ることにより、冶具1のベース部4と絶縁基板10の表面との間に想定より大きな隙間が形成されても、位置決め部3が第1貫通孔4aの内部を移動することで、位置決め部3の第2面4d側の端部が絶縁基板10の表面に隣接した位置に配置される。つまり、冶具1の位置決め部3の位置が絶縁基板10の反り形状に追従して変化する。このため、位置決め部3の第2貫通孔3aの内部に半導体素子21、22およびはんだ23を配置したときに、冶具1と絶縁基板10の間の隙間から当該半導体素子21、22が第2貫通孔3aの外側に移動することを防止できる。このため、絶縁基板10に対する部品としての半導体素子21、22の位置ずれの発生を防止し、半導体装置における不良の発生を抑制できる。
【0024】
本開示に従った半導体装置の製造方法は、板状部材としての絶縁基板10と半導体素子21、22とを準備する工程である準備工程(S10)を備える。上記半導体装置の製造方法は、板状部材としての絶縁基板10上に上記冶具1を配置するとともに、冶具1の位置決め部3における第2貫通孔3aの内部に接合材としてのはんだ23と半導体素子21,22とを配置する工程である位置決め工程(S20)を備える。上記半導体装置の製造方法は、接合材としてのはんだ23により半導体素子21,22を板状部材としての絶縁基板10に固定する工程である接合工程(S30)を備える。
【0025】
このようにすれば、本実施の形態に係る冶具1を用いて位置決め工程(S20)を実施しているので、絶縁基板10が反っていても当該絶縁基板10上に置いて半導体素子21、22の位置を正確に決定できる。このため、絶縁基板10に対する半導体素子21,22の接合位置が設計位置からずれるといった不良の発生を抑制できる。
【0026】
また、上述した冶具1を用いれば、接合工程(S30)において絶縁基板10が加熱された際、位置決め部3と絶縁基板10の表面導体パターン12とが接触していることから、冶具1を介しても絶縁基板10へ熱を伝えることができ、結果的に絶縁基板10の昇温速度を大きくできるため、接合工程(S30)での加熱時間を短縮できる。
【0027】
上述した本実施の形態に係る冶具1および半導体装置の製造方法の効果を、比較例としての冶具を用いた半導体装置の製造方法と比較しながらより詳細に説明する。
図6~
図9は、比較例としての半導体装置の製造方法を説明するための断面模式図である。
図6~
図9は、
図3の位置決め工程(S20)および接合工程(S30)に対応する。
【0028】
図6に示すように、下冶具105の凹部内に絶縁基板10を配置する。
図7に示すように、絶縁基板10上に冶具101を配置する。冶具101は、半導体素子21、22を配置するべき領域に貫通孔101aが形成されている。そして、
図8に示すように、貫通孔101aの内部にはんだ23および半導体素子21、22を配置する。このようにして、絶縁基板10上におけるはんだ23および半導体素子21、22の位置を冶具101により決定する。冶具101の厚さはたとえば3mmとする。また、半導体素子21、22の厚みは100μmとし、はんだ23の厚みを60μmとする。
【0029】
ここで、
図9に示すように接合工程(S30)にて絶縁基板10が反った場合、冶具101の貫通孔101aが形成された領域に隣接する領域と絶縁基板10との間に半導体素子21、22の厚さより大きな隙間が形成される。この状態では、冶具101によって半導体素子21、22の位置決めは実施できない。
【0030】
この結果、
図9に示すように隙間からはんだ23および半導体素子21、22が横方向に移動する。当該移動の原因としては、絶縁基板10を移動させるためのコンベアの振動や、はんだ23の面内の温度分布に起因する局所的なはんだの溶融などが考えられる。この結果、絶縁基板10上における半導体素子21、22の位置ずれて固定される。つまり、絶縁基板10上において半導体素子21、22が正確な位置に接続されず、その後のワイヤボンドが正常に実施できない、あるいは回路としての動作不良が発生するなど、半導体装置における不良の原因となる。
【0031】
一方、上述のように本実施の形態に係る冶具1を用いれば、
図4に示すように絶縁基板10において反りが発生していても、絶縁基板10と冶具1の位置決め部3との間における大きな隙間の発生が抑制される。この結果、当該隙間から半導体素子21、22が第2貫通孔3aの外側に移動することを防止できる。
【0032】
<冶具の変形例の構成および作用効果>
図10は、実施の形態1に係る冶具の第1変形例を説明するための拡大模式図である。
図10に示す冶具は、基本的に
図1および
図2に示した冶具1と同様の構成を備えるが、第1貫通孔4aの平面形状および位置決め部3の平面形状が
図1および
図2に示した冶具1と異なっている。すなわち、
図10に示した冶具では、第1貫通孔4aの平面形状において部分的に凹部4bが形成されている。また、位置決め部3には、当該凹部4bにはめ込む凸部3bが形成されている。このようにすれば、第1貫通孔4aに位置決め部3を挿入するときに、凸部3bを凹部4bにはめ込むことで、第1貫通孔4aに対する位置決め部3の向きを間違うことを防止できる。この結果、たとえば位置決め部3における第2貫通孔3aの平面形状が正方形ではない場合、つまり位置決め対象の半導体素子21、22の平面形状が長方形状などである場合に、当該半導体素子21、22の向きおよび配置の両方を正確に決定できる。なお、位置決め部3における凸部3bは、ベース部4の厚み方向における全体に形成されていてもよいが、当該厚み方向における一部分のみに形成されていてもよい。
【0033】
図11は、実施の形態1に係る冶具の第2変形例を説明するための部分断面模式図である。
図11に示す冶具は、基本的に
図1および
図2に示した冶具1と同様の構成を備えるが、位置決め部3の断面形状が
図1および
図2に示した冶具1と異なっている。すなわち、
図11に示した冶具では、位置決め部3の外周側壁3cが傾斜している。位置決め部3の外周側壁3c間の幅は、ベース部4の第2面4d側に行くほど小さくなっている。このような構成とすることにより、ベース部4の第1貫通孔4aに位置決め部3を第1面4c側から挿入する作業を容易に行うことができる。
【0034】
実施の形態2.
<冶具の構成>
図12は、実施の形態2に係る冶具の断面模式図である。
図13は、
図12に示した冶具のサイズを説明するための模式図である。
図12および
図13に示す冶具1は、基本的に
図1および
図2に示した冶具1と同様の構成を備えるが、ベース部4の第1貫通孔4aの断面形状および位置決め部3の断面形状が
図1および
図2に示した冶具1と異なっている。すなわち、上記冶具1において、ベース部4は第1貫通孔4aの内壁から突出する第1突出部41を含む。第1突出部41は、第1貫通孔4aの内側に向けて突出する。位置決め部3は外周側壁から外側に突出する第2突出部31を含む。第2突出部31は、第1突出部41よりベース部4の第1面4c側に位置する。位置決め部3は、第2突出部31と、当該第2突出部の内周側から下方に延在する壁部32とを含む。第2突出部31と壁部32とは逆L字状の断面形状を有している。
【0035】
ベース部4の第1面4c側から見た場合に、第1突出部41と第2突出部31とが重なるように配置されている。なお、第1突出部41は第1貫通孔4aの内周面の全周に形成されていてもよいが、当該内周面の一部のみに形成されていてもよい。また、第2突出部31は、位置決め部3の外周側壁の全周に形成されていてもよいが、当該外周側壁の周囲の一部のみに形成されていてもよい。第1貫通孔4aの第2面4dに連なる最下部に第1突出部41が形成されている。第1突出部41が形成された領域における第1貫通孔4aの幅W2は、第2突出部31が形成された領域における位置決め部3の幅W1より小さい。
【0036】
<作用効果>
上記冶具1において、ベース部4は第1突出部41を含む。第1突出部41は、第1貫通孔4aの内側に向けて突出する。位置決め部3は第2突出部31を含む。第2突出部31は、ベース部4に向けて突出するとともに、第1突出部41より上記第1面4c側に位置する。ベース部4の第1面4c側から見た場合に、第1突出部41と第2突出部31とが重なるように配置されている。
【0037】
この場合、位置決め部3がベース部4の第2面4d側に移動したときに、位置決め部3の第2突出部31がベース部4の第1突出部41と接触することにより位置決め部3がベース部4の第1貫通孔4aの内部から抜け落ちることを防止できる。したがって、冶具1をロボットアームなどが移動させるときに、ベース部4から位置決め部3が抜け落ちてばらばらになることを防止できる。このため、冶具1を用いた半導体装置の製造方法における作業効率が向上する。
【0038】
なお、第1突出部41の高さL1はたとえば1mmとすることができる。また、ベース部4の厚みL2はたとえば3mmとすることができる。位置決め部3における第2突出部31の厚みL3はたとえば1mmとすることができる。壁部32の長さL4はたとえば1.8mmとすることができる。位置決め部3の厚みL5はこの場合2.8mmとなる。このような寸法とすることで、絶縁基板10の反り量が0.05mm程度から0.8mm程度の場合まで、上記冶具1を用いて絶縁基板10に対して半導体素子21、22の位置決めを行うことができる。
【0039】
また、壁部32の長さL4から第1突出部41の厚みL1を引いた値が、絶縁基板10の反り量h以上となるように冶具1の寸法を決定しておくことで、絶縁基板10の反り量hに対応した冶具1を準備することができる。
【0040】
<冶具の変形例の構成および作用効果>
図14は、実施の形態2に係る冶具の第1変形例を説明するための部分断面模式図である。
図14に示す冶具は、基本的に
図12および
図13に示した冶具1と同様の構成を備えるが、ベース部4の厚みL2と位置決め部3の厚みL5との関係が
図12および
図13に示した冶具1と異なっている。すなわち、
図14に示した冶具では、第1面4cから第2面4dに向かう厚み方向において、ベース部4の厚みL2は位置決め部3の厚みL5より大きい。たとえば、厚みL2を4.2mm、厚みL5を3mmとすることができる。このようにすれば、冶具を持ち運ぶ場合や絶縁基板10上に配置する場合に、位置決め部3がベース部4の上側から飛び出すことを防止できる。したがって、ベース部4から位置決め部3が飛び出して冶具がバラバラになる可能性を低減できる。
【0041】
図15は、実施の形態2に係る冶具の第2変形例を説明するための部分断面模式図である。
図15に示す冶具は、基本的に
図12および
図13に示した冶具1と同様の構成を備えるが、ベース部4の第1貫通孔4aの内周側面および位置決め部3の第2突出部31の端面3dの少なくともいずれか一方の表面粗さを相対的に大きくしている点が、
図12および
図13に示した冶具1と異なっている。具体的には、
図15に示した冶具では、ベース部4の第1貫通孔4aの内周側面および位置決め部3の第2突出部31の端面3dの少なくともいずれか一方の表面粗さを、ベース部4の第1面4cまたは第2面4dのいずれかの表面粗さより大きくしている。ベース部4の第1貫通孔4aの内周側面および位置決め部3の第2突出部31の端面3dの少なくともいずれか一方の表面粗さ(Ra)を1.0μm以上10μm以下としてもよい。
【0042】
このようにすれば、位置決め部3が第1貫通孔4aの内部の移動するときに、第2突出部31の端面3dと第1貫通孔4aの内周側面との接触部における摩擦係数を大きくできる。したがって、位置決め部3が第1貫通孔4aの上方に向けて移動するときの抵抗を大きくできるので、位置決め部3が第1貫通孔4aの上部から飛び出す可能性を低減できる。
【0043】
実施の形態3.
<冶具の構成>
図16は、実施の形態3に係る冶具の部分断面模式図である。
図17は、
図16に示した冶具の構成例を説明するための部分断面模式図である。
図18は、
図17に示した冶具の部分平面模式図である。
図16~
図18に示す冶具は、基本的に
図12および
図13に示した冶具1と同様の構成を備えるが、ベース部4の第1貫通孔4aの断面形状が
図12および
図13に示した冶具1と異なっている。すなわち、
図16~
図18に示した冶具では、第1貫通孔4aの延在方向に沿ったベース部4の断面において、第1面4c側に向かうにつれて第1貫通孔4aの幅が徐々に小さくなっている。別の観点から言えば、第1貫通孔4aの内壁は第1面4cに対して傾斜している。第1貫通孔4aの断面における対向する内壁は、第1面4cに対する傾斜角が同じであってもよいが、当該傾斜角が互いに異なっていてもよい。
【0044】
なお、
図16に示す冶具の実現方法としては、たとえば
図17および
図18に示すように、ベース部4を2つの部材により構成する方法を用いてもよい。具体的には、ベース部4を本体部分42とテーパ部分43とにより構成する。本体部分42には、第1貫通孔4aが形成されるべき領域に、内壁が第1面4c(
図16参照)に対して垂直に伸びる貫通孔が形成されている。当該貫通孔の底部には第1突出部41が形成されている。当該貫通孔の内部に位置決め部3を配置する。その後、貫通孔の内部にテーパ部分43を挿入する。テーパ部分43の外周面は、当該貫通孔の内壁に接触して固定される。テーパ部分43の内壁が第1貫通孔4aの傾斜した内壁を構成する。テーパ部分43を本体部分42に固定する方法は任意の方法を採用できる。たとえば、テーパ部分43から本体部分42に貫通する貫通孔を形成し、当該貫通孔に圧入ピン等の固定部材を配置することで、テーパ部分43を本体部分42に固定してもよい。
【0045】
図18に示すように、テーパ部分43は本体部分42の貫通孔の全周に接触するように形成されているが、当該テーパ部分43を本体部分42の貫通孔の内周面の一部のみに配置してもよい。
【0046】
<作用効果>
上記冶具1では、第1貫通孔4aの延在方向に沿った断面において、第1面4c側に向かうにつれて第1貫通孔4aの幅が徐々に小さくなるように、第1貫通孔4aの内壁は第1面4cに対して傾斜している。
【0047】
この場合、第1貫通孔4aの第1面4cにおける幅W3が、第1貫通孔4aの延在方向中央部における第1貫通孔4aの幅より相対的に小さいので、第1貫通孔4aの第1面4c側から位置決め部3が飛び出しにくくなっている。このため、位置決め部3がベース部4の第1貫通孔4aの上部より飛び出してベース部4から分離するといった問題の発生を抑制できる。なお、第1貫通孔4aの第1面4cにおける幅W3は、位置決め部3の最大幅である第1面4c側の部分での幅W1より小さくなっていることが好ましい。
【0048】
実施の形態4.
<冶具の構成>
図19は、実施の形態4に係る冶具の斜視模式図である。
図19に示す冶具1は、基本的に
図1および
図2に示した冶具1と同様の構成を備えるが、ベース部4の第1貫通孔4aの平面形状および位置決め部3の形状が
図1および
図2に示した冶具1と異なっている。すなわち、
図19に示した冶具では、第1貫通孔4aの平面形状が長方形状である。また、
図19に示した冶具では、位置決め部3の平面視における外周形状が長方形状であるとともに、1つの位置決め部3に第2貫通孔3aとして複数の貫通孔3aa~3acが形成されている。なお、複数の貫通孔3aa~3acの数は、
図19に示すように3でもよいが、2以上の任意の数でもよい。複数の貫通孔3aa~3acの間の間隔は等間隔でもよいが、それぞれ異なる間隔であってもよい。複数の貫通孔3aa~3acは、位置決め部3において一方向に並ぶように配置されているが、千鳥状に配置されていてもよい。
【0049】
<作用効果>
上記冶具では、1つの位置決め部3において第2貫通孔3aとして複数の貫通孔3aa~3acが形成されている。この場合、絶縁基板10上において複数の半導体素子21、22が近接して配置されるような構成においても、上記冶具を用いて半導体素子21、22の位置決めを行うことができる。
【0050】
<冶具の変形例の構成および作用効果>
図20は、実施の形態4に係る冶具の第1変形例を説明するための模式図である。
図20では、冶具の位置決め部3のみを示している。
図20に示した位置決め部3を有する冶具は、基本的には
図19に示した冶具と同様の構成を備えるが、位置決め部3の構成が
図19に示した冶具と異なっている。すなわち、
図20に示した位置決め部3は、3つの位置決め部分30a~30cにより構成されている。各位置決め部分30a~30cは、平面形状がU字状の部品である。位置決め部分30a~30cが連なるように配置されて位置決め部3が構成されている。当該位置決め部3は
図19のベース部4における第1貫通孔4a内部に配置される。個々の位置決め部分30a~30cは、独立して第1貫通孔4a内をベース部4の厚み方向に移動可能に構成されている。
【0051】
このようにすれば、絶縁基板10の反り量が大きい場合や、複数の半導体素子が搭載される位置毎に冶具からの距離が異なるような場合に、複数の半導体素子それぞれについて絶縁基板10の反り量に合わせて位置決め部分30a~30cが独立して移動することにより、複数の半導体素子の位置ずれの発生を抑制できる。なお、
図20では3つの位置決め部分30a~30cが連なるように配置されているが、2つ、あるいは4以上の任意の数の位置決め部分を用いて位置決め部3を構成してもよい。
【0052】
図21は、実施の形態4に係る冶具の第2変形例を説明するための模式図である。
図21では、
図20と同様に冶具の位置決め部3のみを示している。
図21に示した位置決め部3を有する冶具は、基本的には
図20に示した位置決め部3を備える冶具と同様の構成を備えるが、位置決め部3の構成が
図20に示した位置決め部3を備える冶具と異なっている。すなわち、
図21に示した位置決め部3では、複数の位置決め部分30a~30cにおいて、隣接する他の位置決め部分の端部36との接触部に凹部35が形成されている。当該端部36が凹部35にはめ込まれることにより、ベース部4の第1面4c内における、複数の位置決め部分30a~30cの相対的な位置を規定できる。つまり、位置決め部分30a~30cの、ベース部4の第1面4c内における位置精度を向上させることができる。
【0053】
実施の形態5.
<冶具の構成>
図22は、実施の形態5に係る冶具のベース部を示す平面模式図である。
図23は、実施の形態5に係る冶具の位置決め部を示す平面模式図である。
図24は、実施の形態5に係る冶具の部分断面模式図である。
図22~
図24に示す冶具は、基本的に
図19に示した冶具1と同様の構成を備えるが、ベース部4の第1貫通孔4aの断面形状および位置決め部3の断面形状が
図19に示した冶具1と異なっている。すなわち、
図22~
図24に示した冶具1において、ベース部4は第1貫通孔4aの内壁から突出する第1突出部41a、41bを含む。第1突出部41a、41bは、第1貫通孔4aの内面において対向する位置から互いに向けて突出する。第1突出部41a、41bは、第1貫通孔4aの平面形状における長辺に位置する。位置決め部3は外周側壁から外側に突出する第2突出部31a、31bを含む。第2突出部31a、31bは、第1突出部41a、41bよりベース部4の第1面4c側に位置する。位置決め部3は、第2突出部31a、31bと、当該第2突出部31a、31bの内周側から下方に延在する壁部とを含む。第2突出部31a、31bと壁部とは
図24に示すように逆L字状の断面形状を有している。
【0054】
ベース部4の第1面4c側から見た場合に、第1突出部41aと第2突出部31aとが重なるように配置されている。また、第1突出部41bと第2突出部31bとが重なるように配置されている。第1貫通孔4aの第2面4dに連なる最下部に第1突出部41a、41bが形成されている。
【0055】
位置決め部3の平面形状は、第1貫通孔4aの平面形状と相似形とした四角形状でも良いが、
図23に示すように長方形状の角部を面取りした8角形状のように、第1貫通孔4aの平面形状と異なる形状であってもよい。
【0056】
図22に示すように、第1突出部41aの幅W4は第1突出部41bの幅W5より大きい。たとえば、幅W4を2.3mmとし、幅W5を1.3mmとすることができる。また、第2突出部31aの幅W6は第2突出部31bの幅W7より大きい。また、
図24に示すように、第2突出部31aの幅W6は、第1突出部41aの幅W4より大きいことが好ましい。幅W6と幅W4との差はたとえば0.3mm以上0.6mm以下とすることができる。なお、このような幅の大小関係は、
図22に示す第1突出部41bの幅W5と
図23に示す第2突出部31bの幅W7とにおいても成立することが好ましい。また、このような幅の大小関係は、他の実施の形態における第1突出部41と第2突出部31との間においても成立することが好ましい。
【0057】
<作用効果>
上記冶具1において、位置決め部3には2つの第2突出部31a、31bが形成されている。また、ベース部4においても第1貫通孔4aにおいて2つの第1突出部41a、41bが形成されている。第1突出部41aの第1貫通孔4a内壁からの突出量である幅W4は、他の第1突出部41bの幅W5より大きい。また、位置決め部3における第2突出部31aの突出量である幅W6は、他の第2突出部31bの幅W7より大きい。
【0058】
この場合、第1貫通孔4aに対して位置決め部3を挿入するときの、当該位置決め部3の向きを規定することができる。つまり、相対的に大きな幅W4を有する第1突出部41aと、相対的に大きな幅W6を有する第2突出部31aとが重なるように、位置決め部3の向きを調整しなければ、位置決め部3を第1貫通孔4aに挿入することができない。したがって、もし位置決め部3が第1貫通孔4aから抜けてしまった場合でも、位置決め部3の方向を正確な状態で第1貫通孔4aに当該位置決め部3を挿入することができる。
【0059】
また、上記冶具1において、第2突出部31a、31bの幅W6、W7は、第1突出部41a、41bの幅W4、W5より大きい。この場合、位置決め部3が第1貫通孔4aの内部で詰まる可能性を低減できる。幅W6および幅W7と幅W4および幅W5との差はたとえば0.3mm以上0.6mm以下とすることができる。当該差が0.3mmより小さいと、第1貫通孔4aの内部で位置決め部3が詰まる可能性がでてくる。また、当該差が0.6mm越えの場合、第1突出部41a、41bに第2突出部31a、31bが接触しない可能性が出てくる。
【0060】
<冶具の変形例の構成および作用効果>
図25は、実施の形態5に係る冶具の第1変形例を説明するための部分断面模式図である。
図25では冶具のベース部4に形成された第1突出部41aのみを示している。
図25に示したベース部4を備える冶具は、基本的には
図22~
図24に示した冶具と同様の構成を備えるが、第1突出部41aの角部に面取り部41cが形成されている点が、
図22~
図24に示した冶具と異なる。なお、図示していないが他方の第1突出部41b(
図22参照)においても同様に面取り部41cが形成されている。
【0061】
このような構成とすることで、位置決め部3が第1貫通孔4aの延在方向に対して斜めになったような場合に、位置決め部3が第1突出部41a、41bに引っかかり第1貫通孔4aの内部で位置決め部3が固定されてしまうといった事態の発生を抑制できる。なお、面取り部41cの幅は、第1突出部41aの高さL1(
図13参照)の1/3以下とすることが好ましい。たとえば、上記高さL1が1mmである場合、面取り部41cの幅は0.1mm以上0.3mm以下とすることができる。
【0062】
図26は、実施の形態5に係る冶具の第2変形例を説明するための平面模式図である。
図26では、冶具の位置決め部3のみを示している。
図26に示した位置決め部3を備える冶具は、基本的には
図22~
図24に示した冶具と同様の構成を備えるが、位置決め部3の構成および当該位置決め部3が配置されるベース部4の第1貫通孔4aの形状が、
図22~
図24に示した冶具と異なる。
【0063】
図26に示した位置決め部3には、第2貫通孔3aとして2つの貫通孔3aa、3abが形成されている。貫通孔3aaの平面形状と貫通孔3abの平面形状とは異なっている。つまり、第2貫通孔3aとして複数の貫通孔が形成される場合において、複数の貫通孔は互いに平面形状の異なる貫通孔を含んでいてもよい。
【0064】
図26に示した位置決め部3は、ベース部4の第1面4c側の表面に形成された位置検出用マーク部38を含む。位置検出用マーク部38は位置決め部3の位置ずれの有無および位置ずれ量を検出するために用いられる。位置検出用マーク部38は、互いに間隔を隔てて形成された第1マーク部38aおよび第2マーク部38bを含む。位置検出用マーク部38の構成としては、光学的に認識できれば任意の構成を採用できる。たとえば、位置検出用マーク部38はベース部4に形成された貫通孔、凹部および凸部のいずれかでもよい。また、位置検出用マーク部38の数は、
図26に示すように2つでもよいが3以上でもよい。また、位置検出用マーク部38の数を1つとしてもよい。この場合、位置検出用マーク部38の位置と第2貫通孔3aの位置との両方を検出することで、位置決め部3の位置ずれを検出できる。
【0065】
位置決め部3において、第1マーク部38aと第2マーク部38bとは、複数の貫通孔3aa、3abを挟むように配置されていてもよい。第1マーク部38aと第2マーク部38bとは位置決め部3の表面における対角線上に配置されていてもよい。また、複数の貫通孔3aa、3abのうちの1つから見て同じ側に第1マーク部38aと第2マーク部38bとが配置されていてもよい。
【0066】
位置決め部3が配置されるベース部4において、当該ベース部4の第1面4c側から見た第1貫通孔4aの平面形状は多角形状の一例である四角形状である。第1面4c側から見た位置決め部3の平面形状は、第1貫通孔4aの平面形状に沿った多角形状としての、実質的な四角形状である。位置決め部3の平面形状における角部には面取部37が形成されている。面取部37は、表面が平面状でもよいし曲面状でもよい。
【0067】
位置決め部3において、第2貫通孔3aの平面形状は多角形状の一例である実質的な四角形状である。第2貫通孔3aの平面形状における角部には、外側に突出した切り欠き部39が形成されている。切り欠き部39の平面形状は半円状である。切り欠き部39の平面形状は半円状以外の任意の形状としてもよい。
【0068】
図26に示した位置決め部3では、第2突出部31a、31bが形成されていない短辺の長さに対する、第2突出部31a、31bが形成された長辺の長さの比が、
図23に示した位置決め部3における当該比より小さくなっている。位置決め部3における当該比は第2貫通孔3aの数や配置などに応じて任意に設定できる。
【0069】
図26に示した位置決め部3を備える冶具では、位置検出用マーク部38が形成されているため、当該位置検出用マーク部38を画像認識などにより検出することで、位置決め部3の位置を正確に測定できる。そのため、位置決め部3とベース部4の第1貫通孔4aとの隙間(クリアランス)に起因して、位置決め部3が第1貫通孔4a内で位置ずれした場合に、位置決め部3の設定位置からのずれ量を正確に検出できる。このため、
図26に示した位置決め部3を備える冶具を用いれば、検出したずれ量を補正するといった制御を行うことにより、第2貫通孔3aの内部にはんだ23および半導体素子21,22を正確に搭載できる。また、当該冶具を用いて、はんだ23および半導体素子21,22を絶縁基板10(
図10参照)の表面上において正確に位置決めできる。
【0070】
また、位置検出用マーク部38が複数のマーク部である第1マーク部38aおよび第2マーク部38bを含むため、これらの複数のマーク部を検出することで位置決め部3の回転方向における位置ずれも正確に検出できる。このため、位置決め部3の移動による位置ずれ量と、回転によるずれ量との両方を検出することで、位置決め部3の正確な位置を検出できる。
【0071】
また、位置決め部3の平面形状における角部には面取部37が形成されているので、当該面取部37が形成されていない場合より位置決め部3の角部がベース部4の第1貫通孔4aの側壁に接触する可能性を低減できる。このため、当該接触に起因するベース部4および位置決め部3の摩耗を抑制できる。この結果、冶具の長寿命化を図ることができる。
【0072】
また、第2貫通孔3aの角部に切り欠き部39が形成されているので、第2貫通孔3aの内部に配置される半導体素子21,22の角部が第2貫通孔3aの内壁に接触する可能性を低減できる。また、このような切り欠き部39を有する第2貫通孔3aは、比較的安価なエンドミルを用いた加工により形成できるため、冶具の製造コストを低減できる。
【0073】
実施の形態6.
<冶具の構成>
図27は、実施の形態6に係る冶具の断面模式図である。
図28は、
図27に示した冶具の構成例を説明するための断面模式図である。
図27および
図28に示した冶具は、基本的には
図12および
図13に示した冶具1と同様の構成を備えるが、ベース部4の形状が
図12および
図13に示した冶具1と異なっている。すなわち、
図27および
図28に示した冶具では、第1貫通孔4aの第1面4c側に、当該第1貫通孔4aの内周面から突出する上側突出部45が形成されている。当該上側突出部45を形成する具体的な構成としては、たとえば
図28に示すような構成を採用できる。すなわち、冶具1において、ベース部4が、第1部分47と第2部分49と、固定用ピン48とを含む。第2部分49上に第1部分47が厚み方向において積層配置されている。第1部分47には、第1貫通孔4aにおいて第1面4cに連なる第1面側部分4aaが形成されている。第2部分49には、第1部分47が接続される。第2部分49には、第1貫通孔4aの上記第1面側部分4aa以外の部分4abが形成されている。第1部分47に形成された固定用貫通孔47aの内部から、第2部分49に形成された固定用開口部49aの内部まで延在するように、固定用ピン48が配置されている。なお、固定用貫通孔47aは固定用開口部49aと重なる位置に形成されている。
【0074】
<作用効果>
上記冶具1では、第1貫通孔4aの延在方向に沿った断面において、第1面4cにおける第1貫通孔4aの幅W1は、第1貫通孔4aの延在方向における中央部での第1貫通孔4aの幅W7より小さい。
【0075】
この場合、第1貫通孔4aの第1面4cにおける幅W3が、第1貫通孔4aの延在方向中央部における第1貫通孔4aの幅W7より相対的に小さいので、第1貫通孔4aの第1面4c側から位置決め部3が飛び出しにくくなっている。このため、冶具のハンドリングが複雑化しても、位置決め部3がベース部4の第1貫通孔4aの上部より飛び出してベース部4から分離するといった問題の発生を抑制できる。なお、第1貫通孔4aの第1面4cにおける幅W3は、位置決め部3の最大幅である第1面4c側の部分での幅W1より小さくなっていることが好ましい。
【0076】
上記冶具1において、ベース部4は、第1部分47と第2部分49とを含む。第1部分47には、第1貫通孔4aの第1面4cに連なる第1面側部分4aaが形成されている。第2部分49には、第1部分47が接続される。第2部分49には、第1貫通孔4aの上記第1面側部分4aa以外の部分4abが形成されている。
【0077】
この場合、第1部分47と第2部分49とを組み合わせることで、第1貫通孔4aの第1面4cにおける幅W3が、第1貫通孔4aの延在方向中央部における第1貫通孔4aの幅W7より相対的に小さくなったベース部4を実現できる。
【0078】
上記冶具1において、第1部分47には固定用貫通孔47aが形成される。第2部分49には、第1面4c側から見て固定用貫通孔47aと重なる位置に固定用開口部49aが形成される。ベース部4は、固定用貫通孔47aの内部から固定用開口部49aの内部まで延在し、第1部分47を第2部分49に固定する固定用ピン48を含む。この場合、固定用ピン48により第1部分47と第2部分49とを固定して容易にベース部4を形成できる。
【0079】
なお、絶縁基板10では、はんだ付け時の加熱により反り量が大きくなり、その後の冷却時に反り量が小さくなる。そのため、冶具1の寸法を、絶縁基板10の最大反り量を考慮して決定することが好ましい。また、冶具1の材料は伝導性に優れ加熱時の温度上昇が早いカーボンであることが望ましい。さらに、カーボンははんだが濡れないことと、加工性にも優れることからも、冶具1の構成材料として望ましい。半導体素子21、22やはんだ23と直接接触することのない冶具1のベース部4には、位置決め部3の材料と異なる材料を用いても良い。例えば、ベース部4の材料としてはんだが濡れる銅を採用してもよい。
【0080】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。矛盾のない限り、今回開示された実施の形態の少なくとも2つを組み合わせてもよい。本発明の範囲は、上記した説明ではなく請求の範囲によって示され、請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることを意図される。
【符号の説明】
【0081】
1,5,101,105 冶具、3 位置決め部、3a 第2貫通孔、3aa,3ab,101a 貫通孔、3b 凸部、3c 外周側壁、3d 端面、4 ベース部、4a 第1貫通孔、4aa 第1面側部分、4ab 部分、4b,5a,35 凹部、4c 第1面、4d 第2面、10 絶縁基板、11 絶縁層、12 表面導体パターン、13 裏面導体パターン、21,22 半導体素子、23 はんだ、24 ワイヤ、30a,30c 位置決め部分、31,31a,31b 第2突出部、32 壁部、36 端部、37 面取部、38 位置検出用マーク部、38a 第1マーク部、38b 第2マーク部、39 切り欠き部、41,41a,41b 第1突出部、41c 面取り部、42 本体部分、43 テーパ部分、45 上側突出部、47 第1部分、47a 固定用貫通孔、48 固定用ピン、49 第2部分、49a 固定用開口部。