(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-07
(45)【発行日】2023-12-15
(54)【発明の名称】車両走行経路生成装置、および車両走行経路生成方法
(51)【国際特許分類】
G08G 1/16 20060101AFI20231208BHJP
G08G 1/00 20060101ALI20231208BHJP
B60W 30/12 20200101ALI20231208BHJP
B60W 40/06 20120101ALI20231208BHJP
【FI】
G08G1/16 C
G08G1/00 X
B60W30/12
B60W40/06
(21)【出願番号】P 2022500180
(86)(22)【出願日】2020-02-14
(86)【国際出願番号】 JP2020005793
(87)【国際公開番号】W WO2021161510
(87)【国際公開日】2021-08-19
【審査請求日】2022-08-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002941
【氏名又は名称】弁理士法人ぱるも特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】竹内 佑
(72)【発明者】
【氏名】佐竹 敏英
(72)【発明者】
【氏名】前田 和士
(72)【発明者】
【氏名】中辻 修平
【審査官】藤村 泰智
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-039285(JP,A)
【文献】特開2018-024345(JP,A)
【文献】特開2019-189032(JP,A)
【文献】特許第6618653(JP,B1)
【文献】特開2018-062244(JP,A)
【文献】特開2019-059451(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08G 1/00 ~ 1/16
B60W 30/00 ~ 40/13
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自車が走行する車線を近似し
た結果を第一の走行経路情報として出力する第一走行経路生成部、前記自車の前方の道路区画線を近似し
た結果を第二の走行経路情報として出力する第二走行経路生成部、前記第一の走行経路情報と前記第二の走行経路情報
との確からしさとなる重みを設定する走行経路重み設定部、および前記第一の走行経路情報と前記第二の走行経路情報と前記走行経路重み設定部による前記重みとによって統合走行経路情報を生成する統合走行経路生成部を備え、前記走行経路重み設定部が、前記第一の走行経路情報に基づいて前記第一の走行経路情報と前記第二の走行経路情報との重みを算出する俯瞰検知走行経路重み設定部、前記自車の状態に基づいて前記第一の走行経路情報と前記第二の走行経路情報との重みを算出する車両状態重み設定部、前記第二の走行経路情報の走行経路の長さに基づいて前記第一の走行経路情報と前記第二の走行経路情報との重みを算出する経路長重み設定部、前記自車の周辺の道路環境に基づいて前記第一の走行経路情報と前記第二の走行経路情報との重みを算出する周辺環境重み設定部、および前記第一走行経路生成部と前記第二走行経路生成部との各走行経路の信頼度の情報に基づいて検出手段状態重みを設定する検出手段状態重み設定部の少なくとも一つの出力に基づいて重みを設定することを特徴とする車両走行経路生成装置。
【請求項2】
前記俯瞰検知走行経路重み設定部は、前記第一の走行経路情報のうち、走行経路の曲率成分の大きさと、前記走行経路と前記自車との間の角度成分の大きさと、前記走行経路と前記自車との間の横位置成分の大きさとに基づいて設定され、前記曲率成分の大きさが第一の閾値よりも大きい場合は、前記第二の走行経路情報の重みを、前記第一の走行経路情報の重みよりも小さく設定し、前記曲率成分の大きさが前記第一の閾値よりも小さく、かつ前記角度成分の大きさが第二の閾値よりも大きい場合は、前記第二の走行経路情報の重みを、前記第一の走行経路情報の重みよりも小さく設定し、前記曲率成分の大きさが前記第一の閾値よりも小さく、かつ前記角度成分の大きさが第二の閾値よりも小さく、かつ前記横位置成分の大きさが第三の閾値よりも大きい場合は、前記第二の走行経路情報の重みを、前記第一の走行経路情報の重みよりも小さく設定したことを特徴とする請求項1に記載の車両走行経路生成装置。
【請求項3】
前記車両状態重み設定部は、車両センサによって求められる車両ピッチ角の大きさが第四の閾値よりも大きい場合は、前記第二の走行経路情報の重みを前記第一の走行経路情報の重みよりも小さく設定したことを特徴とする請求項1に記載の車両走行経路生成装置。
【請求項4】
前記経路長重み設定部は、前記第二の走行経路情報の第二の走行経路長が第五の閾値よりも小さい場合、前記第二の走行経路情報の重みを前記第一の走行経路情報の重みよりも小さく設定したことを特徴とする請求項1に記載の車両走行経路生成装置。
【請求項5】
前記周辺環境重み設定部は、前記自車の前方の経路の勾配の変化が第六の閾値よりも大きい場合、前記第二の走行経路情報の重みを前記第一の走行経路情報の重みよりも小さく設定したことを特徴とする請求項1に記載の車両走行経路生成装置。
【請求項6】
前記走行経路重み設定部は、次の式にしたがって前記第一の走行経路情報と前記第二の走行経路情報との重みを演算したことを特徴とする請求項1から5のいずれか1項記載の車両走行経路生成装置。
【数19】
ただし、式中、Wbirdは前記俯瞰検知走行経路重み設定部の出力する重み、Wsensは前記車両状態重み設定部の出力する重み、Wdistは前記経路長重み設定部の出力する重み、Wmapは前記周辺環境重み設定部の出力する重み、Wstatusは前記検出手段状態重み設定部の出力する重み、Wtotalは前記走行経路重み設定部の出力する重みである。
【請求項7】
前記第一の走行経路情報と前記第二の走行経路情報とは、走行経路の曲率成分、前記自車と前記走行経路との間の角度成分、前記自車と前記走行経路との間の横位置成分によって構成され、前記走行経路重み設定部から出力される前記第一の走行経路情報の重みと前記第二の走行経路情報の重みとは、前記第一の走行経路情報と前記第二の走行経路情報との前記曲率成分、前記角度成分、前記横位置成分のそれぞれに対する重みとして設定したことを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の車両走行経路生成装置。
【請求項8】
前記第一の走行経路情報および前記第二の走行経路情報に基づいて前記自車を制御する車両制御部を備えたことを特徴とする請求項1に記載の車両走行経路生成装置。
【請求項9】
自車が走行する走行経路を俯瞰的に認識し、第一の走行経路情報を出力する第1のステップと、前記自車の周辺の走行路の情報を含む第2のステップと、前記自車が走行する走行経路の形状を検出する第3のステップと、前記自車の走行状態を検知する第4のステップと、前記第4のステップの出力から重みを算出する第5のステップと、前記第3のステップの情報を入力して、第二の走行経路情報を出力する第6のステップと、前記第一の走行経路情報と前記第二の走行経路情報との確からしさとなる重みを設定する走行経路重み設定部の出力情報と前記第一の走行経路情報と前記第二の走行経路情報とに基づいて統合走行経路情報を生成する第7のステップを備えた経路生成方法において、
前記第7のステップは、
前記第一の走行経路情報に基づいて、前記第一の走行経路情報と前記第二の走行経路情報との重みを算出する第8のステップと、
前記自車の状態に基づいて、前記第一の走行経路情報と前記第二の走行経路情報との重みを算出する第9のステップと、
前記第二の走行経路情報の走行経路の長さに基づいて、前記第一の走行経路情報と前記第二の走行経路情報との重みを算出する第10のステップと、
前記自車の周辺の道路環境に基づいて、前記第一の走行経路情報と前記第二の走行経路情報との重みを算出する第11のステップと、
の少なくとも一つの出力に基づいて重みを設定することを特徴とする車両走行経路生成方法。
【請求項10】
前記第8のステップは、前記第一の走行経路情報のうち、走行経路の曲率成分の大きさ、前記走行経路と前記自車との間の角度成分の大きさ、前記走行経路と前記自車との間の横位置成分の大きさにより設定され、前記曲率成分の大きさが第一の閾値よりも大きい場合は、前記第二の走行経路情報の重みを、前記第一の走行経路情報の重みよりも小さく設定し、前記曲率成分の大きさが前記第一の閾値よりも小さく、かつ前記角度成分の大きさが第二の閾値よりも大きい場合は、前記第二の走行経路情報の重みを、前記第一の走行経路情報の重みよりも小さく設定し、前記曲率成分の大きさが前記第一の閾値よりも小さく、かつ前記角度成分の大きさが第二の閾値よりも小さく、かつ前記横位置成分の大きさが第三の閾値よりも大きい場合は、前記第二の走行経路情報の重みを、前記第一の走行経路情報の重みよりも小さく設定したことを特徴とする請求項9に記載の車両走行経路生成方法。
【請求項11】
前記第9のステップは、車両センサにより求められる車両ピッチ角の大きさが第四の閾値よりも大きい場合は、前記第二の走行経路情報の重みを、前記第一の走行経路情報の重みよりも小さく設定したことを特徴とする請求項9に記載の車両走行経路生成方法。
【請求項12】
前記第10のステップは、前記第二の走行経路情報の走行経路の長さである第二の走行経路長が第五の閾値よりも短い場合、前記第二の走行経路情報の重みが、前記第一の走行経路情報の重みよりも小さく設定したことを特徴とする請求項9に記載の車両走行経路生成方法。
【請求項13】
前記第11のステップは、前記自車の前方の経路の勾配の変化が、第六の閾値よりも大きい場合に、前記第二の走行経路情報の重みが、前記第一の走行経路情報の重みよりも小さく設定したことを特徴とする請求項9に記載の車両走行経路生成方法。
【請求項14】
前記第7のステップは、次の式にしたがって前記第一の走行経路情報と前記第二の走行経路情報との重みを演算することを特徴とする請求項9から13のいずれか1項記載の車両走行経路生成方法。
【数20】
ただし、式中、Wbirdは俯瞰検知走行経路重み、Wsensは車両状態重み、Wdistは経路長重み、Wmapは周辺環境重み、Wstatusは検出手段状態重み、Wtotalは前記走行経路重み設定部の出力する重みである。
【請求項15】
前記第一の走行経路情報と前記第二の走行経路情報とは、走行経路の曲率成分と前記自車と前記走行経路との間の角度成分および前記自車と前記走行経路との間の横位置成分とによって構成され、前記第7のステップから出力される前記第一の走行経路情報の重みと前記第二の走行経路情報の重みとは、前記第一の走行経路情報と前記第二の走行経路情報の前記曲率成分、前記角度成分、および前記横位置成分の重みとして設定したことを特徴とする請求項9から13のいずれか1項に記載の車両走行経路生成方法。
【請求項16】
請求項9から15のいずれか1項に記載の車両走行経路生成方法によって生成された目標経路に基づいて前記自車を制御するステップ12を備えたことを特徴とする車両走行経路生成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、車両走行経路生成装置、および車両走行経路生成方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
車両に搭載された前方認識カメラによって、道路の区画線を検出し、検出した自車走行車線の白線形状から算出される自律センサ目標走行経路を走行経路として走行を保持する走行支援装置において、交通の渋滞、天候の悪化によって道路区画線の検知性能が低下し、走行支援を継続できなくなることが課題であった。
【0003】
この課題に対して、自車に搭載した前方認識カメラからの情報によって自車が走行する目標経路の軌跡と、自車の前方を走行する先行車の走行軌跡と、自車あるいは先行車と並行して走行する並走車の走行軌跡とのうちの少なくとも二つの軌跡を検出して、軌跡ごとに重みを付けて統合し、統合した統合経路を目標経路とすることが提案されている(特許文献1)。
【0004】
また、前方認識カメラによる画像情報の信頼度と、GPS等のGNSSによる自車周辺道路の車線中央点群および白線位置情報などが含まれた高精度地図情報の信頼度に応じて、画像情報と地図情報との採用比率を可変にして車線情報を検出して目標とする走行経路を設定する走行制御装置が提案されている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2018-39285号公報
【文献】特開2017-47798号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来の走行経路を生成する装置では、前方を認識するカメラによって画像情報を得て車両の走行経路を生成しているが、制御の精度をさらに向上させることが望まれている。
【0007】
本願は、自車の置かれている状態に応じて最適な制御が行われるように、車両の走行経路を推定して出力する車両走行経路生成装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本願の車両走行経路生成装置は、自車が走行する車線を近似した結果を第一の走行経路情報として出力する第一走行経路生成部、前記自車の前方の道路区画線を近似した結果を第二の走行経路情報として出力する第二走行経路生成部、前記第一の走行経路情報と前記第二の走行経路情報との確からしさとなる重みを設定する走行経路重み設定部、および前記第一の走行経路情報と前記第二の走行経路情報と前記走行経路重み設定部による前記重みとによって統合走行経路情報を生成する統合走行経路生成部を備え、前記走行経路重み設定部が、前記第一の走行経路情報に基づいて前記第一の走行経路情報と前記第二の走行経路情報との重みを算出する俯瞰検知走行経路重み設定部、前記自車の状態に基づいて前記第一の走行経路情報と前記第二の走行経路情報との重みを算出する車両状態重み設定部、前記第二の走行経路情報の走行経路の長さに基づいて前記第一の走行経路情報と前記第二の走行経路情報との重みを算出する経路長重み設定部、前記自車の周辺の道路環境に基づいて前記第一の走行経路情報と前記第二の走行経路情報との重みを算出する周辺環境重み設定部、および前記第一走行経路生成部と前記第二走行経路生成部との各走行経路の信頼度の情報に基づいて検出手段状態重みを設定する検出手段状態重み設定部の少なくとも一つの出力に基づいて重みを設定することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本願の車両走行経路生成装置は、自車の置かれている状態に応じて、走行経路を精度良く生成することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】実施の形態1の走行経路生成装置の構成を示すブロック図である。
【
図2】実施の形態1の走行経路生成装置の経路重み設定部の詳細を示すブロック図である。
【
図3】実施の形態1の走行経路生成の詳細を示すフローチャートである。
【
図4】実施の形態1の走行経路生成の経路重み設定の詳細を示すフローチャートである。
【
図5】実施の形態1の走行経路生成の俯瞰検知走行経路重みの設定の詳細を示すフローチャートである。
【
図6】実施の形態1の俯瞰検知走行経路重み設定部において、第二の走行経路に対する重みを第一の走行経路に対する重みよりも小さく設定する場合の動作を説明するための図である。
【
図7】実施の形態1の俯瞰検知走行経路重み設定部において、第二の走行経路に対する重みを第一の走行経路に対する重みよりも小さく設定する場合の前方カメラセンサの撮像状態を表した図である。
【
図8】実施の形態1の俯瞰検知走行経路重み設定部において、第二の走行経路に対する重みを第一の走行経路に対する重みよりも小さく設定する場合の前方カメラセンサの撮像状態を表した図である。
【
図9】実施の形態1の俯瞰検知走行経路重み設定部において、第二の走行経路に対する重みを第一の走行経路に対する重みよりも小さく設定する場合の前方カメラセンサ30の撮像状態を表した図である。
【
図10】実施の形態1の俯瞰検知走行経路重み設定部において、第一の走行経路に対する重みと第二の走行経路に対する重みを同等に設定する場合の前方カメラセンサの撮像状態を表した図である。
【
図11】実施の形態1の走行経路生成の車両状態重みの設定の詳細を示すフローチャートである。
【
図12】実施の形態1の車両状態重み設定部において、第一の走行経路に対する重みと第二の走行経路に対する重みを同等に設定する場合の前方カメラセンサの撮像状態を表した図である。
【
図13】実施の形態1の車両状態重み設定部において、第二の走行経路に対する重みを第一の走行経路に対する重みよりも小さく設定する場合の前方カメラセンサの撮像状態を表した図である。
【
図14】実施の形態1の走行経路生成方法の経路長重みの設定の詳細を示すフローチャートである。
【
図15】実施の形態1の経路長重み設定部において、第二の走行経路に対する重みを第一の走行経路に対する重みよりも小さく設定する場合の動作を説明するための図である。
【
図16】実施の形態1の走行経路生成方法の周辺環境重みの設定の詳細を示すフローチャートである。
【
図17】実施の形態1の周辺環境重み設定部において、第二の走行経路に対する重みを第一の走行経路に対する重みよりも小さく設定する場合の前方カメラセンサの撮像状態を表した図である。
【
図18】実施の形態1の走行経路生成装置および車両制御装置の構成を示すブロック図である。
【
図19】実施の形態1の走行経路生成装置において、各経路を点群で表した場合の統合走行経路生成部の動作を表した図である。
【
図20】実施の形態1の走行経路生成装置のハードウエアの一例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
実施の形態1
図1は実施の形態1による走行経路生成装置1000の構成を示すブロック図である。
図1に示すように、走行経路生成装置1000は、自車位置方位検出部10からの、自車の座標位置と方位との情報、道路地図データ20からの、自車の周辺走行車線の中央の目標点列情報が含まれる情報、前方カメラセンサ30からの、道路区画線の検出結果と検出信頼度の情報および自車の前方の道路区画線の情報、および車速センサ、ヨーレートセンサ、前後加速度センサを含む車両センサ40によって検出された情報を受けて走行経路に関する情報を出力する。
自車位置方位検出部10は、人工衛星からの測位用情報を利用して自車の座標位置と方位を検出し、検出結果と測位状態の信頼度を出力するものである。
【0012】
第一走行経路生成部60は、自車位置方位検出部10、道路地図データ20から、自車が走行すべき車線を多項式で近似した結果を第一の走行経路情報として出力する。第二走行経路生成部70は、前方カメラセンサ30にて取得した前方の道路区画線を多項式で近似した結果を第二の走行経路情報として出力する。
第一走行経路生成部60が出力する第一の走行経路情報、および第二走行経路生成部70が出力する第二の走行経路情報とは、例えば、自車と近似曲線に対する横位置偏差、角度偏差、経路の曲率、経路の曲率偏差の各係数を定めることに相当する。なお、この後、第一の走行経路情報および第二の走行経路情報を、それぞれ第一の走行経路および第二の走行経路と省略する。
【0013】
走行経路重み設定部90は、第一走行経路生成部60、自車位置方位検出部10、道路地図データ20、第二走行経路生成部70、前方カメラセンサ30、および車両センサ40の情報から、第一走行経路生成部60の第一の走行経路と第二走行経路生成部70の第二の走行経路の確からしさとなる重み、すなわち可能性の比率を設定する。統合走行経路生成部100は、第一走行経路生成部60、第二走行経路生成部70、走行経路重み設定部90の情報に基づいて、単一の経路に統合された統合走行経路を出力する。
【0014】
次に、
図1の
走行経路重み設定部90の詳細な構成について、
図2に基づいて説明する。
図2に示すように、
走行経路重み設定部90は、俯瞰検知走行経路重み設定部91、車両状態重み設定部92、経路長重み設定部93、周辺環境重み設定部94、および検出手段状態重み設定部95を備えている。俯瞰検知走行経路重み設定部91は、第一走行経路生成部60からの情報に基づいて、第一の走行経路と第二の走行経路との重み、すなわち俯瞰検知走行経路重みWbirdを設定する。
車両状態重み設定部92は、車両センサ40からの情報に基づいて、第一の走行経路と第二の走行経路に対する重み、すなわち車両状態重みWsensを設定する。経路長重み設定部93は、第一走行経路生成部60、第二走行経路生成部70の各走行経路の経路長の情報に基づいて、第一の走行経路と第二の走行経路との重み、すなわち経路長重みWdistを設定する。周辺環境重み設定部94は、道路地図データ20からの情報に基づいて、第一の走行経路と第二の走行経路との重み、すなわち周辺環境重みWmapを設定する。
【0015】
検出手段状態重み設定部95は、第一走行経路生成部60、第二走行経路生成部70の各走行経路の信頼度の情報に基づいて、第一の走行経路と第二の走行経路との重み、すなわち検出手段状態重みWstatusを設定する。重み統合部96は、俯瞰検知走行経路重み設定部91による俯瞰検知走行経路重みWbird、車両状態重み設定部92による車両状態重みWsens、経路長重み設定部93による経路長重みWdist、周辺環境重み設定部94による周辺環境重みWmap、検出手段状態重み設定部95による検出手段状態重みWstatusより、第一の走行経路と第二の走行経路との最終的な重みWtotalを算出し、その後、算出の結果を統合走行経路生成部100に出力する。
【0016】
次に、実施の形態1における
走行経路生成装置
1000の全体の動作を
図3のフローチャートを用いて説明する。なお、
図3のフローチャートは車両走行中に繰り返し実行するものである。
【0017】
まず始めに、第一走行経路生成部60にて、自車位置方位検出部10と道路地図データ20の情報から、現在自車が走行している車線の目標点列(基本的に車線中央に配置させる点列)と自車の状態を、自車基準座標系上での近似式として算出し、式(1)として表される(ステップS100)。
【数1】
【0018】
次に、第二の走行経路生成部70において前方カメラセンサ30で検出した自車の前方の区画線情報から、自車が走行すべき走行経路が算出され、式(2)として表される(ステップS200)。
【数2】
【0019】
式(1)、式(2)においては、第一項が各経路の曲率を、第二項が各経路に対する自車の角度を、第三項が各経路に対する自車の横位置を表す。次に、
走行経路重み設定部90によって各状態においてステップS100とステップS200で算出される各走行経路に対する重みWが算出され、式(3)で表される(ステップS400)。
【数3】
【0020】
その後、統合走行経路生成部100によって、ステップS100とステップS200で算出した経路とステップS400で算出される各経路に対する重みから、自車が走行すべき統合走行経路Path_totalが式(4)によって算出される(ステップS500)。
なお、ステップS100とステップS200の各経路の算出動作は、一方の算出結果が他方の算出動作に影響するものではないため、算出する順序についての制約はない。
【数4】
【0021】
次に、第一の走行経路と第二の走行経路の、それぞれの走行経路に対する重みを設定する
走行経路重み設定部90の動作を
図4のフローチャートを用いて説明する。なお、
図4は
図3のステップS400の動作の詳細であり、車両走行中にステップ毎の演算が実行されるものである。
【0022】
まず、第一走行経路生成部60からの情報によって俯瞰検知走行経路重みWbirdが設定され、式(5)として表される(ステップS410)。
【数5】
【0023】
次に車両センサ40からの情報によって車両状態重みWsensが設定され、式(6)として表される(ステップS420)。
【数6】
【0024】
次に第一走行経路生成部60、第二走行経路生成部70の各経路の経路長の情報によって、経路長重みWdistが設定され、式(7)として表される(ステップS430)。
【数7】
【0025】
次に道路地図データ20からの情報によって周辺環境重みWmapが設定され、式(8)として表される(ステップS440)。
【数8】
【0026】
次に第一走行経路生成部60および第二走行経路生成部70の各経路の信頼度の情報によって、検出手段状態重み
Wstatusが設定され、式(9)として表される(ステップS450)。
【数9】
【0027】
次にステップS410からステップS450において設定される各重みから、第一の走行経路に対する重みWtotal_1、第二の走行経路に対する重みWtotal_2が算出され、式(10)として表される(ステップS460)。
【数10】
なおステップS410からステップS450の各重みの設定動作は、一つの設定結果がその他の設定動作に影響するものではないため、算出する順序についての制約はない。
【0028】
次に、実施の形態1における、第一走行経路生成部60の情報から第一の走行経路と第二の走行経路に対する俯瞰検知走行経路重みWbirdを設定する俯瞰検知走行経路重み設定部91の動作を
図5のフローチャートを用いて説明する。なお、
図5は
図4のステップS410の動作の詳細を示したフローチャートであり、車両走行中にステップ毎の演算が行われる。
【0029】
まず始めに、第一の走行経路に対する俯瞰検知走行経路重みWbird_1_cX(X=0,1,2,3)の重みを1(最大値)に設定する(ステップS411)。次に、第一走行経路生成部60により算出される自車と目標経路の関係を表す近似曲線の曲率要素の係数の大きさが、閾値C2_thresholdよりも大きい、すなわち道路曲率が閾値C2_thresholdより大きいか否かが判定される(ステップS412)。ステップS412にて経路曲率が大きいと判定された場合、第二の走行経路に対する俯瞰検知走行経路重みWbird_2_cXを第一の走行経路に対する俯瞰検知走行経路重みWbird_1_cXより小さい値に設定する(ステップS413)。
【0030】
また、ステップS412において道路曲率が小さいと判断された場合、第一走行経路生成部60により算出される自車と目標経路の関係を表す近似曲線の角度要素の係数の大きさが、閾値C1_thresholdよりも大きい、すなわち走行経路に対しての自車の傾きが閾値C1_thresholdより大きいか否かが判定される(ステップS414)。ステップS414にて走行経路に対する自車の傾きが大きいと判断された場合、ステップS413へ遷移する。またステップS414にて走行経路に対する自車の傾きが小さいと判断された場合、第一走行経路生成部60により算出される自車と目標経路の関係を表す近似曲線の位置要素の係数の大きさが、閾値C0_thresholdよりも大きい、すなわち走行経路に対する自車の距離が閾値C0_thresholdより離れているか否かが判定される(ステップS415)。
【0031】
ステップS415において走行経路に対して自車が離れていると判断された場合、ステップS413へ遷移する。また、ステップS415にて走行経路に対して自車が離れていないと判断された場合、第二の走行経路の精度は高いと判断し、第二の走行経路に対する俯瞰検知走行経路重みWbird_2_cXを第一の走行経路に対する俯瞰検知走行経路重みWbird_1_cXと同等の値に設定する(ステップS416)。
【0032】
図6は本実施の形態1における俯瞰検知走行経路重み設定部91の動作において、走行経路の経路曲率の係数の大きさが、設定した閾値C2_thresholdよりも大きい場合(ステップS412におけるTrueの状態)の、
第一走行経路生成部60と
第二走行経路生成部70の出力結果を表した図である。
【0033】
図6において、第一の走行経路200は、第一走行経路生成部60により算出される走行経路である。第一の走行経路200は、自車位置方位検出部10からの自車1の絶対座標情報と絶対方位と、道路地図データ20からの自車走行車線の目標点列20Aの情報に基づいて、自車1に対する目標経路の関係を近似曲線で表した走行経路である。第一の走行経路200は、自車1と目標点列情報から俯瞰的に検出した結果から得られる走行経路であるため、精度が高い経路といえる。
【0034】
第二の走行経路201は、第二走行経路生成部70により算出される走行経路である。また、
図6中の202は道路区画線を表している。また、203は前方カメラセンサ30における撮像範囲境界である。この撮像範囲境界203の範囲内の画像情報が取得される。第二の走行経路201は前方カメラセンサ30による自車1の前方の道路区画線202の情報に基づいて、自車1と自車1の前方経路との関係を近似曲線で表したものとなっている。
【0035】
図7は
図6の車両状態において、前方カメラセンサ30によって自車1の前方の道路区画線202を撮像した状態を表す図である。
図7のように、前方カメラセンサ30により撮像された道路区画線202は、経路曲率が大きい経路の場合、一方の区画線の検知情報が極端に狭くなることから、
道路区画線202の形状から算出される走行経路を近似曲線で正確に表現することが困難となり、結果として実際の走行経路に対して誤差が含まれる走行経路情報が出力される。そのため、このような状況においては、
図6に示した第二の走行経路201の重みは第一の走行経路200の重みに対して相対的に低い値に設定される。
【0036】
図8は本実施の形態1における俯瞰検知走行経路重み設定部91の動作における別の例を示す図であって、走行経路の経路曲線の係数の大きさが、設定した閾値C2_thresholdよりも小さく、自車と走行経路の角度の係数の大きさが、設定した閾値C1_thresholdよりも大きい場合(ステップS414におけるTrueの状態)の、前方カメラセンサ30における自車の前方の道路区画線202の撮像状態を表した図である。
【0037】
図8のように、前方カメラセンサ30により撮像される道路区画線202は、自車1に対する走行経路の角度偏差が大きい場合、一方の道路区画線202の検知情報が極端に狭くなることから、道路区画線202の形状から算出される走行経路を近似曲線で正確に表現することが困難となり、結果として実際の走行経路に対して誤差が含まれる走行経路情報が出力される。そのため、このような状況においては第二の走行経路201の重みは第一の走行経路200の重みに対して相対的に低い値に設定される。
【0038】
図9は本実施の形態1における俯瞰検知走行経路重み設定部91の動作における、さらに別の例を示す図であり、走行経路の経路曲線の係数の大きさが、設定した閾値C2_thresholdよりも小さく、自車に対して走行経路の角度の係数の大きさが、設定した閾値C1_thresholdよりも小さく、自車と走行経路の位置の係数の大きさが、設定した閾値C0_thresholdより大きい場合(ステップS415におけるTrueの状態)に、前方カメラセンサ30によって自車1の前方の道路区画線202を撮像した状態を表した図である。
【0039】
図9のように、前方カメラセンサ30により撮像された道路区画線202は、自車1に対する走行経路の位置偏差が大きい場合、一方の区画線の検知情報が極端に狭くなることから、自車1に対する道路区画線202の形状から算出される走行経路を近似曲線で正確に表現することが困難となり、結果として実際の走行経路に対して誤差が含まれる走行経路情報が出力される。そのため、このような状況においては第二の走行経路201の重みは第一の走行経路200の重みに対して相対的に低い値に設定される。
【0040】
図10は本実施の形態1における俯瞰検知走行経路重み設定部91の動作における、さらに別の例を示す図であり、走行経路の経路曲線の係数の大きさが、閾値C2_thresholdよりも小さく、自車と走行経路の角度の係数の大きさが、閾値C1_thresholdよりも小さく、自車と走行経路の位置の係数の大きさが、閾値C0_thresholdよりも小さい場合(ステップS415におけるFalseの状態)の、前方カメラセンサ30における自車1の前方の道路区画線202を撮像した状態を表した図である。
【0041】
図10のように経路曲率が小さく、自車1に対して走行経路の角度偏差が小さく、自車1に対して走行経路の位置誤差も小さい場面においては、前方カメラセンサ30により撮像される道路区画線202は、撮像範囲の中央部に配置されるため、自車1と区画線形状から算出される走行経路を近似曲線で精度よく表現することが可能となる。このため、このような状況においては第二の走行経路201の重みは第一の走行経路200の重みと同等の高い値に設定される。
【0042】
このように、実施の形態1における走行経路生成装置1000は、俯瞰検知走行経路重み設定部91、車両状態重み設定部92、経路長重み設定部93、周辺環境重み設定部94、および検出手段状態重み設定部95から重み統合部96に出力し、それぞれの重みに基づいて第一の走行経路200と第二の走行経路201との重みを設定することによって、例えば、第二走行経路生成部70の情報が、実際の走行経路と異なる走行経路情報を出力してしまう状況において、俯瞰検知走行経路重み設定部91では、第一の走行経路200の情報から自車1に対する走行経路の位置関係によって、当該走行経路に対する重みを低く設定することが可能になるため、より実際の走行経路と一致した統合走行経路を生成することが可能となり、自動運転機能の利便性を向上させることができる。
【0043】
次に、実施の形態1における、車両センサ40からの情報に基づいて車両状態重みWsensを設定する車両状態重み設定部92の動作を
図11のフローチャートを用いて説明する。なお、
図11は
図4のステップS420の動作の詳細を示したフローチャートであって、車両走行中にステップ毎の演算が行われるものである。
【0044】
まず始めに、第一の走行経路200に対する車両状態重みWsens_1_cX(X=0,1,2,3)の重みを1(最大値)に設定する(ステップS421)。次に自車1に搭載された車両センサ40の情報から自車1の車体ピッチ角θpitchが、閾値θ_thresholdよりも大きい、すなわち車体が前傾もしくは後傾しているか否かが判定される(ステップS422)。ステップS422にて車体ピッチ角が大きいと判定された場合、第二の走行経路201に対する車両状態重みWsens_2_cXを第一の走行経路200に対する車両状態重みWsens_1_cXより小さい値に設定する(ステップS423)。また、ステップS423にて車体ピッチ角が小さいと判断された場合、第二の走行経路201の精度が高いと判断し、第二の走行経路201に対する車両状態重みWsens_2_cXを第一の走行経路200に対する車両状態重みWsens_1_cXと同等の値に設定する(ステップS424)。
【0045】
この実施の形態1における車両状態重み設定部92の動作において、車体ピッチ角の大きさが、設定した閾値θpitch_thresholdよりも大きい場合(車体が前傾側に傾いた場合)の、前方カメラ
センサ30による自車1の前方の道路区画線202の撮像状態(ステップS422におけるTrueの状態)を
図12に示す。また、車体ピッチ角の大きさが、設定した閾値θpitch_thresholdよりも小さい場合の、前方カメラ
センサ30による自車1の前方の道路区画線202の撮像状態(ステップS422におけるFalseの状態)を
図13に示す。
【0046】
図13において、前方カメラセンサ30によって撮像された道路区画線202は、
図12の状態と比較して、両側の道路区画線202間の距離長(車線幅)が長く撮像され、また、撮像された道路区画線202の長さは
図12の状態に比較して短くなっており、結果として実際の走行経路に対して誤差が含まれる走行経路情報が出力される。そのため、車体ピッチ角が大きい状態においては第二の走行経路201の重みは第一の走行経路200の重みに対して相対的に低い値に設定される。
【0047】
図12のように車体ピッチ角が小さい状態においては、自車1に対する道路区画線202の形状から算出される走行経路を近似曲線で精度よく表現することが可能となる。このため、このような状況においては第二の走行経路201の重みは第一の走行経路200の重みと同等の高い値に設定される。
【0048】
また、既述したように、第一走行経路生成部60から出力される第一の走行経路情報は、自車位置方位検出部10からの自車1の絶対座標情報と絶対方位と、道路地図データ20からの自車走行車線の目標点列20Aの情報によって、自車1に対する目標経路の関係を俯瞰的に近似曲線で表した走行経路であり、車体ピッチ角の影響による経路の精度の低下は小さい。このことより、第一の走行経路200は実際の走行経路に対して精度が高い経路といえる。
【0049】
このように、実施の形態1における走行経路生成装置1000は、車両状態重み設定部において、自車の車体ピッチ角の影響によって、第二走行経路生成部の走行経路情報が、実際の走行経路と異なってしまう状況においては、当該走行経路に対する重みを低く設定することが可能となるため、より実際の走行経路と一致した統合走行経路を生成することが可能となり、自動運転機能の利便性を向上させることができる。
【0050】
次に、実施の形態1における、第二走行経路生成部70の経路長の情報による経路長重みWdistを設定する経路長重み設定部93の動作を
図14のフローチャートを用いて説明する。なお、
図14は
図4のステップS430の動作の詳細を示したフローチャートであり、車両走行中に毎ステップS演算されるものである。
【0051】
まず始めに、第一の走行経路に対する経路長重みWdist_1_cX(X= 0,1,2,3)の重みを1(最大値)に設定する(ステップS431)。次に、第二走行経路生成部における経路検知距離dist_2が、設定した閾値dist_thresholdより短いか否かが判定される(ステップS432)。ステップS432にて第二の走行経路の検知距離が短いと判定された場合、第二の走行経路に対する経路長重みWdist_2_cXの重みを第一の走行経路に対する経路長重みWdist_1_cXより小さい値に設定する(ステップS433)。また、ステップS432にて第二の走行経路201の検知距離が長いと判断された場合、第二の走行経路201に対する経路長重みWdistt_2_cXの重みを第一の走行経路200に対する経路長重みWdist_1_cXと同等の値に設定する(ステップS434)。
【0052】
図15は本実施の形態1における経路長重み設定部93の動作を表すために、第二走行経路生成部70によって算出される第二の走行経路201の状態を示した図である。
図15において、自車1は直線路からクロソイド部を介してカーブ路へ侵入している。
【0053】
第一の走行経路200は、自車位置方位検出部10からの自車1の絶対座標情報と絶対方位と、道路地図データ20からの自車走行車線の目標点列20Aの情報に基づいて、自車1に対する目標経路の関係を近似曲線で表した走行経路であり、俯瞰的に検出した結果から得られる走行経路であるため、信頼度が高い経路といえる。第二の走行経路201は前方カメラセンサ30により撮像される道路区画線202のうちの撮像距離205の範囲の情報を用いて生成される経路である。
【0054】
図15に示すように、撮像距離205が短い場合、第二の走行経路201は自車1の前方のクロソイドからカーブ路の走行経路を再現することが困難であり、実際の走行経路に対して誤差が含まれる走行経路が出力されてしまう。そのため、第二の走行経路201の重みは第一の走行経路200の重みに対して相対的に低い値に設定される。
【0055】
式11に、
図14のステップS432における閾値dist_thresholdの算出式を示す。例えば、車速が低い場合において自動運転では、自車近傍の経路の精度が要求されるが、式11に示すように、dist_thresholdは自車の車速Vと定数Tldで算出され、検知距離と比較することで、自車近傍のみに生成される第二の走行経路201の重みを、第一の走行経路200に対する重みと同等の値に設定することが可能となり、最適な走行経路を生成することが可能となる。
【数11】
【0056】
このように、実施の形態1における走行経路生成装置1000は、経路長重み設定部において、第二の走行経路生成部の検知距離が短いことにより、第二走行経路生成部の走行経路情報が実際の走行経路と異なってしまう状況において、当該走行経路に対する重みを低く設定することが可能になるため、より実際の走行経路と一致した統合走行経路を生成することが可能となり、自動運転機能の利便性を向上させることができる。
【0057】
次に、実施の形態1における、道路地図データ20からの情報による重みW_mapを設定する周辺環境重み設定部94の動作を
図16のフローチャートを用いて説明する。なお、
図16は
図4のステップS440の動作の詳細を示したフローチャートであり、車両走行中にステップ毎の演算を実行するものである。
【0058】
まず始めに、第一の走行経路200に対する周辺環境重みWmap_1_cX(X=0,1,2,3)の重みを1(最大値)に設定する(ステップS441)。次に、道路地図データ20からの情報により、自車の現在位置から自車前方の一定距離の間の道路勾配の変化量dθの大きさが設定した閾値dθslope_thresholdより大きいか否かが判定される(ステップS442)。ステップS442において、道路勾配の変化が大きいと判断された場合、第二の走行経路201に対する周辺環境重みWmap_2_cXを第一の走行経路200に対する周辺環境重みWmap_1_cXより小さい値に設定する(ステップS443)。また、ステップS442において、道路勾配の変化が小さいと判断された場合、第二の走行経路の精度は高いと判断し、第二の走行経路201に対する周辺環境重みWmap_2_cXを第一の走行経路200に対する周辺環境重みWmap_1_cXと同等の値に設定する(ステップS424)。
【0059】
図17は本実施の形態1における周辺環境重み設定部94の動作において、自車1から前方の範囲の間の道路勾配が下り勾配から上り勾配へ変化することで、道路勾配変化量の大きさが、設定した閾値dθslope_shresholdより大きいと判断された場合(ステップS442におけるTrueの状態)の、前方カメラセンサ30により撮像される道路区画線と先行車の撮像状態を表した図である。
【0060】
図17において、前方カメラセンサ30によって撮像された道路区画線202は、道路勾配の変化の影響によって、左右それぞれの道路区画線202の形状の情報が実際の道路形状と異なる形状となっており、結果として、第二走行経路生成部70の出力は実際の走行経路に対して誤差が含まれる走行経路情報となってしまう。そのため、自車1から前方の範囲の間の道路勾配の変化量が大きい場合には、第二の走行経路201に対する周辺環境重みWmap_2_cXは第一の走行経路200に対する周辺環境重みWmap_1_cXに対して相対的に低い値に設定される。
【0061】
このように、実施の形態1における走行経路生成装置1000においては、周辺環境重み設定部94において、自車1に対して前方の道路勾配の変化量が大きいことにより、第二走行経路生成部70の走行経路情報が、実際の走行経路と異なってしまう状況においては、第二の走行経路201の重みを低く設定することが可能になるため、より実際の走行経路と一致した統合走行経路を生成することが可能となり、自動運転機能の利便性を向上させることができる。
【0062】
なお、実施の形態1では、
図18のように、走行経路生成装置1000からの統合走行経路の情報を車両制御部110に提供することによって走行制御装置2000を構成する場合を想定した。しかし、
走行経路生成装置として単独で適用してもよい。
【0063】
つぎに、第一の走行経路の生成方法に関して、「俯瞰的」検出手段による経路生成の別例についての説明をする。なお、本実施の形態では、第一走行経路生成部60において、第一の走行経路情報を自車位置方位検出部10と道路地図データ20から出力したが、かならずしも人工衛星からの測位情報と道路地図データを用いる手段でなくてもよい。
【0064】
例えば、走行経路端の電柱あるいは看板に設置された、ミリ波センサ、レーザーセンサ(Lidar)、あるいはカメラセンサなどのロードセンサにより、センシング領域内の車両の位置および角度、車両の周辺の道路形状を認識し、自車と自車周辺の走行経路の関係を多項式で表現することで、同様の効果を得ることができる。
【0065】
なお、本実施の形態では式(3)、式(5)、式(6)、式(7)、式(8)、式(9)、式(10)に示すように、走行経路重み設定部90で設定される第一の走行経路に対して設定する重みと第二の走行経路に対して設定する重みとを、三次の近似式で表現した際の各次数の係数に対して設定したが、かならずしも各次数の係数に対する重みでなくてもよい。
【0066】
例えば、第一の走行経路と第二の走行経路を、各経路の目標通過点で表現した点群情報とし、各経路に対する重みとしてもよい。第一の走行経路と第二の走行経路を点群情報として使用した場合の各経路の関係を
図19に示す。
走行経路重み設定部90により設定される重みWを式(12)に、俯瞰検知走行経路重みWbirdを式(13)に、車両状態重みWsensを式(14)に、経路長重みWdisを式(15)に、周辺環境重みWmapを式(16)に、検出手段状態重みWstatusを式(17)に、第一の走行経路に対する重みWtotal_1、第二の走行経路に対する重みWtotal_2を式(18)に示す。
【数12】
【数13】
【数14】
【数15】
【数16】
【数17】
【数18】
【0067】
なお、
図19に示すように、第二の走行経路201の点群21は、第一の走行経路200の点群20の前後方向座標値を式(2)へ代入することで生成され、その後、式(18)にて算出された各経路に対する重みを式(4)へ代入することで、各経路の自車前後方向の距離に対する左右方向の距離に重み付けすることで点群22が生成され、統合走行経路206とすることで同様の効果を得ることができる。
【0068】
なお、走行経路生成装置1000は、ハードウエアの一例を
図20に示すように、プロセッサ500と記憶装置501から構成される。記憶装置の内容は図示していないが、ランダムアクセスメモリ等の揮発性記憶装置と、フラッシュメモリ等の不揮発性の補助記憶装置とを具備する。また、フラッシュメモリの代わりにハードディスクの補助記憶装置を具備してもよい。プロセッサ500は、記憶装置501から入力されたプログラムを実行する。この場合、補助記憶装置から揮発性記憶装置を介してプロセッサ500にプログラムが入力される。また、プロセッサ500は、演算結果等のデータを記憶装置501の揮発性記憶装置に出力してもよいし、揮発性記憶装置を介して補助記憶装置にデータを保存してもよい。
【0069】
本願は、例示的な実施の形態が記載されているが、実施の形態に記載された様々な特徴、態様、及び機能は特定の実施の形態の適用に限られるのではなく、単独で、または様々な組み合わせで実施の形態に適用可能である。
従って、例示されていない無数の変形例が、本願明細書に開示される技術の範囲内において想定される。例えば、少なくとも1つの構成要素を変形する場合、追加する場合または省略する場合が含まれるものとする。
【符号の説明】
【0070】
1 自車、10 自車位置方位検出部、20 道路地図データ、20A 目標点列、30 前方カメラセンサ、40 車両センサ、60 第一走行経路生成部、70 第二走行経路生成部、90 走行経路重み設定部、91 俯瞰検知走行経路重み設定部、92 車両状態重み設定部、93 経路長重み設定部、94 周辺環境重み設定部、95 検出手段状態重み設定部、96 重み統合部、100 統合走行経路生成部、200 第一の走行経路、201 第二の走行経路、202 道路区画線、203 撮像範囲境界、205 撮像距離、206 統合走行経路、500 プロセッサ、501 記憶装置、1000 走行経路生成装置、2000 走行制御装置