(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-07
(45)【発行日】2023-12-15
(54)【発明の名称】自動分析装置
(51)【国際特許分類】
G01N 35/00 20060101AFI20231208BHJP
【FI】
G01N35/00 B
(21)【出願番号】P 2022503226
(86)(22)【出願日】2021-02-05
(86)【国際出願番号】 JP2021004429
(87)【国際公開番号】W WO2021171975
(87)【国際公開日】2021-09-02
【審査請求日】2022-08-08
(31)【優先権主張番号】P 2020031024
(32)【優先日】2020-02-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】501387839
【氏名又は名称】株式会社日立ハイテク
(74)【代理人】
【識別番号】110001829
【氏名又は名称】弁理士法人開知
(72)【発明者】
【氏名】金井 久美子
(72)【発明者】
【氏名】井上 陽子
(72)【発明者】
【氏名】佐川 彰太郎
(72)【発明者】
【氏名】峯村 祐輔
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 洋一郎
【審査官】目黒 大地
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-134141(JP,A)
【文献】特開2011-149905(JP,A)
【文献】特開平01-057173(JP,A)
【文献】特許第6446451(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 35/00-37/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
検体を分析する自動分析装置であって、
前記検体の分析を実施する分析部と、
前記分析部で用いられる液体を保管、供給する供給部と、
前記分析部内に存在する前記液体を循環させる分析部循環系、および前記供給部内に存在する前記液体を循環させる供給部循環系と、
前記自動分析装置の動作を制御する制御部と、を備え、
前記制御部は、前記分析部循環系と前記供給部循環系のうち少なくともいずれか一方の前記液体の循環の流速を、通常時の第1流速と前記第1流速とは異なる第2流速とで切り替える
ことを特徴とした自動分析装置。
【請求項2】
請求項1に記載の自動分析装置において、
前記分析部循環系内の前記液体の温度を調節する温度調節部を更に備え、
前記制御部は、装置電源を切る時、装置起動時、前記分析部で一定時間以上分析が計画されていない時、所定の時間間隔、のうち少なくともいずれかのタイミングで、前記液体を前記温度調節部による通常の温度調節時より加熱する
ことを特徴とした自動分析装置。
【請求項3】
請求項1に記載の自動分析装置において、
前記液体に紫外線を照射する紫外線源を更に備えた
ことを特徴とした自動分析装置。
【請求項4】
請求項3に記載の自動分析装置において、
前記分析部、および前記制御部への電力供給および遮断を切り替える継電器と、
前記紫外線源に電力が供給された状態を保ち、前記分析部および前記制御部への電力供給を遮断する休止状態と前記分析部および前記制御部へ電力を供給する起動状態とを切り替える休止制御部と、を更に備えた
ことを特徴とした自動分析装置。
【請求項5】
検体を分析する自動分析装置であって、
前記検体の分析を実施する分析部であって、液体を循環させる分析部循環系を有している分析部と、
前記分析部で用いられる液体を保管、供給する供給部であって、保管する前記液体をその内で循環させる供給部循環系を有している供給部と、
前記分析部循環系と前記供給部のうち少なくともいずれか一方の前記液体に紫外線を照射する紫外線源と、
前記自動分析装置の動作を制御する制御部と、
前記分析部、および前記制御部への電力供給および遮断を切り替える継電器と、
前記紫外線源に電力が供給された状態を保ち、前記分析部および前記制御部への電力供給を遮断する休止状態と前記分析部および前記制御部へ電力を供給する起動状態とを切り替える休止制御部と、を備え、
前記制御部は、前記分析部循環系と前記供給部循環系のうち少なくともいずれか一方の前記液体の循環の流速を、通常時の第1流速と前記第1流速とは異なる第2流速とで切り替える
ことを特徴とした自動分析装置。
【請求項6】
請求項5に記載の自動分析装置において、
前記分析部循環系内の前記液体の温度を調節する温度調節部を更に備え、
前記制御部は、装置電源を切る時、装置起動時、前記分析部で一定時間以上分析が計画されていない時、所定の時間間隔、のうち少なくともいずれかのタイミングで、前記液体を前記温度調節部による通常の温度調節時より加熱する
ことを特徴とした自動分析装置。
【請求項7】
請求項3または5に記載の自動分析装置において、
前記制御部は、前記紫外線源を、所定の時間間隔で定期的に、もしくは任意の時間間隔で複数回、点灯させる
ことを特徴とした自動分析装置。
【請求項8】
請求項
7に記載の自動分析装置において、
前記紫外線源の異常を検知する点灯検知センサを更に備えた
ことを特徴とした自動分析装置。
【請求項9】
請求項
8に記載の自動分析装置において、
前記制御部は、前記点灯検知センサの情報に基づいて異常を装置使用者に知らせる
ことを特徴とした自動分析装置。
【請求項10】
請求項
8に記載の自動分析装置において、
前記制御部は、前記点灯検知センサの情報に基づいて前記紫外線源への電力供給を遮断する
ことを特徴とした自動分析装置。
【請求項11】
請求項1
に記載の自動分析装置において、
前記分析部循環系、あるいは前記供給部循環系の前記液体の量を検知する液量センサを更に備えた
ことを特徴とした自動分析装置。
【請求項12】
請求項3または5に記載の自動分析装置において、
前記分析部循環系、あるいは前記供給部循環系の前記液体の量を検知する液量センサを更に備えた
ことを特徴とした自動分析装置。
【請求項13】
請求項12に記載の自動分析装置において、
前記制御部は、前記液量センサの情報に基づいて、異常を装置使用者に知らせる、前記紫外線源への電力供給を遮断する、前記液体を増量もしくは減量する
ことを特徴とした自動分析装置。
【請求項14】
請求項
3または5に記載の自動分析装置において、
前記分析部循環系、あるいは前記供給部循環系の前記液体の温度を測定する温度センサを更に備え、
前記制御部は、前記温度センサで測定された前記液体の温度情報に基づいて、前記紫外線源で照射される紫外線の強度、前記分析部循環系、あるいは前記供給部循環系での前記液体の流速、のうち少なくともいずれかを制御する
ことを特徴とした自動分析装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、血液や尿などの試料の定性・定量分析を行う自動分析装置に関する。
【背景技術】
【0002】
恒温媒体の循環路に使用している金属に悪影響を与えることなく、恒温媒体に発生した菌類の繁殖を防止し、循環路の汚染,詰まり、光学的特性の向上を図ることができる恒温装置を備える自動化学分析装置の一例として、特許文献1には、恒温槽内に試料を収容する試験管を配置し、恒温媒体を加熱部を経由して循環させることにより試料の温度を一定に保つようにした恒温装置を備え、加熱部における循環路の一部を紫外線を透過する部材で構成するとともに、部材を通して恒温媒体に紫外線を照射する紫外線ランプを備えたことが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
血液、尿等の生体サンプル中の特定成分の分析を行う自動分析装置は、特定成分と反応して光学的特性が変化する試薬、あるいは特定成分と特異的に反応する指標を備えた試薬を用いて、検体と試薬との反応液の光学的特性の変化を測定すること、あるいは標識の数をカウントすることにより、定性・定量分析を行う装置である。
【0005】
この自動分析装置は、一般的に、反応容器が円状の回転台上に配列されており、回転台に接近して検体容器、検体搬送機構、検体分注機構からなる検体供給部や、試薬保冷収納部、試薬分注機構、および試薬容器自動搬送機構からなる試薬供給部、検体と試薬の反応を均一化させるための撹拌機構、反応後の反応容器洗浄を実施する洗浄機構、分光測定を実施する光源部と受光部からなる光学系機構、装置内の各機器の動作を制御する制御系等が搭載されており、ソフトウエアにて動作管理されている。
【0006】
昨今の自動分析装置を取り巻く情勢は、高速化、小型化、低価格化と自動機としての機能の追求は頭打ちとなりつつある。そこで、検体の搭載動作や試薬容器の交換動作を自動で行うための機能・機構が盛り込まれ始めている。また、より一層のオペレータの作業軽減、メンテナンスレス化が重視されている。
【0007】
ここで、自動分析装置では、反応が安定化するように、検体と試薬の反応をさせるための反応容器を人体の体温と同じ37℃に保つことが望まれているため、反応容器は恒温水が満たされた恒温槽内に浸かった状態になる。この恒温水は、恒温に保つために循環流路となっており、冷却部分と加熱部分を通ることで温度制御を行っている。
【0008】
この37℃前後という温度は、雑菌の繁殖に非常に適した温度でもある。雑菌の過度な繁殖は部品側面にヌメリを発生させ、そのヌメリが蓄積すると凝集体(バイオフィルム)へと変わる。この凝集体が部品表面から剥離する可能性があり、その剥離した凝集体が万が一光軸上を通過してしまうと、分析データに悪影響を及ぼす可能性がある。
【0009】
そこで、この凝集体が出来上がる前にヌメリを取り去り、常に循環流路内を綺麗に保つ必要があり、これには物理的な清掃が一番効果がある。この清掃をなくすこと、あるいはその頻度を削減することが、メンテナンスレス化を目指すうえで大きな課題となっている。
【0010】
また、ヌメリを発生させないために、恒温槽の清掃の他に、恒温水の定期的な交換、雑菌の繁殖を防ぐための薬剤の添加などが行われている。しかし、これらの手法だけでは、長期間の循環流路の雑菌抑制に限りがある。
【0011】
これに対し、特許文献1のように、恒温媒体に発生した菌類の増殖を防止し、循環路の汚染、詰まり、光学的特性の向上を図る方法が考えられている。
【0012】
しかしながら、特許文献1に記載された技術では、紫外線により循環流路内を流れる菌は殺菌できるものの、反応槽内でバイオフィルムとなり反応槽内に留まっている菌は殺菌できなかった、との課題がある。
【0013】
また、装置の電源がオフの時は紫外線が照射されておらず、電源オフ状態の間に恒温媒体の循環流路内や反応槽内で菌類が繁殖してしまう、との課題があることが明らかとなった。そのため、特許文献1の自動分析装置においても、恒温媒体の交換および反応槽内の清掃作業は定期的に行う必要があり、時間がかかるため、オペレータにとって負担となっている。
【0014】
本発明は、恒温媒体を始めとした液体の循環流路内での菌類の繁殖を従来に比べて抑制することで液体の交換および反応槽内の清掃作業の頻度を減らし、オペレータが行うメンテナンス作業時間を低減することができる自動分析装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は、上記課題を解決する手段を複数含んでいるが、その一例を挙げるならば、検体を分析する自動分析装置であって、前記検体の分析を実施する分析部と、前記分析部で用いられる液体を保管、供給する供給部と、前記分析部内に存在する前記液体を循環させる分析部循環系、および前記供給部内に存在する前記液体を循環させる供給部循環系と、前記自動分析装置の動作を制御する制御部と、を備え、前記制御部は、前記分析部循環系と前記供給部循環系のうち少なくともいずれか一方の前記液体の循環の流速を、通常時の第1流速と前記第1流速とは異なる第2流速とで切り替えることを特徴とする。
【0016】
また、他の一例を挙げるならば、検体を分析する自動分析装置であって、前記検体の分析を実施する分析部であって、液体を循環させる分析部循環系を有している分析部と、前記分析部で用いられる液体を保管、供給する供給部であって、保管する前記液体をその内で循環させる供給部循環系を有している供給部と、前記分析部循環系と前記供給部のうち少なくともいずれか一方の前記液体に紫外線を照射する紫外線源と、前記自動分析装置の動作を制御する制御部と、前記分析部、および前記制御部への電力供給および遮断を切り替える継電器と、前記紫外線源に電力が供給された状態を保ち、前記分析部および前記制御部への電力供給を遮断する休止状態と前記分析部および前記制御部へ電力を供給する起動状態とを切り替える休止制御部と、を備え、前記制御部は、前記分析部循環系と前記供給部循環系のうち少なくともいずれか一方の前記液体の循環の流速を、通常時の第1流速と前記第1流速とは異なる第2流速とで切り替えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、液体の循環流路内での菌類の繁殖を従来に比べて抑制することで液体の交換および反応槽内の清掃作業の頻度を減らすことができる。上記した以外の課題、構成および効果は、以下の実施例の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の実施例1に係る自動分析装置の全体構成を概略的に示す図である。
【
図2】実施例1に係る自動分析装置における循環ポンプの動作の流れを示すフロー図である。
【
図3】本発明の実施例2に係る自動分析装置の全体構成を概略的に示す図である。
【
図4】実施例2に係る自動分析装置における温度調整機構の動作の流れを示すフロー図である。
【
図5】本発明の実施例3に係る自動分析装置の全体構成を概略的に示す図である。
【
図6】本発明の実施例4に係る自動分析装置の全体構成を概略的に示す図である。
【
図7】実施例4に係る自動分析装置の休止制御部および液体殺菌部の詳細を周辺構成とともに概略的に示す図である。
【
図8】本発明の実施例5に係る自動分析装置の全体構成を概略的に示す図である。
【
図9】実施例5に係る自動分析装置において、紫外線源の光量が規定値を下回った場合に表示部に表示される画面の例を示す図である。
【
図10】実施例5に係る自動分析装置において、紫外線源の光量が既定値を下回った場合に表示部に表示される画面の他の例を示す図である。
【
図11】実施例5に係る自動分析装置において、液体量の異常を検知した際に表示部に表示される画面の例を示す図である。
【
図12】本発明の実施例6に係る自動分析装置の全体構成を概略的に示す図である。
【
図13】本発明の実施例7に係る自動分析装置の全体構成を概略的に示す図である。
【
図14】本発明の実施例8に係る自動分析装置の全体構成を概略的に示す図である。
【
図15】実施例1に係る自動分析装置における反応槽の詳細を概略的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に本発明の自動分析装置の実施例を、図面を用いて説明する。
【0020】
<実施例1>
本発明の自動分析装置の実施例1について
図1および
図2を用いて説明する。
【0021】
最初に、
図1を用いて自動分析装置の全体構成について説明する。
図1は本実施例1に係る自動分析装置の全体構成を概略的に示す図である。
【0022】
図1に示す自動分析装置100は、検体を分析するための装置であって、主に、メインスイッチ32と、検体の分析を実施する分析部20と、自動分析装置100の動作を制御する分析制御部50と、を備えている。
【0023】
メインスイッチ32は、商用電源31から分析制御部50内の制御用電源回路55や分析部20内の機構用電源回路33へと電力を供給している。また、商用電源31側で漏電や過電流等が生じた場合に自動分析装置100全体への電力供給を遮断するブレーカとしての機能を有している。
【0024】
分析部20は、主に、分注機構1、反応容器11、試薬保冷部12、撹拌機構4、光源2、光度計3、反応槽10、流路5、温度センサ6、温度調整機構7、循環ポンプ8、液体供給部13、機構用電源回路33、およびアクチュエータ駆動回路34などを有している。
【0025】
分注機構1は、検体を検体容器(図示省略)から反応容器11に分注したり、試薬を試薬容器(図示省略)から反応容器11に分注するための機器である。反応容器11は、分注機構1により分注された検体と試薬とを反応させた反応液を保持する容器であり、装置内で複数設けられている。撹拌機構4は、反応容器11に保持されている反応液を撹拌するための機器である。
【0026】
試薬保冷部12は、分析に用いる試薬を収容した試薬容器を保冷する機器で、保冷用電源回路を備えており、商用電源31からメインスイッチ32を介して電力供給されている。これにより、休止状態においても、試薬を低温保存することにより、試薬が劣化するのを抑制している。
【0027】
光源2は、定性・定量分析するために反応容器11に保持された反応液に向けて光を放出する機器である。光度計3は反応液の光学特性を測定するための機構であり、例えば、光源2から放たれ、反応液を通過した光の量を検出する機器である。光度計3の検出結果は、分析制御部50のA/Dコンバータ59に対して出力される。
【0028】
反応槽10は、複数の反応容器11の温度を一定に保つための機構であり、その内部は循環流路から供給される恒温媒体により満たされている。
【0029】
流路5は、反応槽10内の恒温媒体の温度を管理するために設けられており、温度センサ6や温度調整機構7、循環ポンプ8を有している。流路5には液体供給部13が接続されている。
【0030】
温度センサ6は、反応槽10内に存在し、流路5を流れる恒温媒体の温度を検知するための温度計である。
【0031】
温度調整機構7は、流路5内の恒温媒体の温度を調整する例えばヒーターや冷却器から構成される機器である。
【0032】
循環ポンプ8は、反応槽10および流路5内の恒温媒体を循環させるポンプである。
【0033】
これら反応槽10、流路5、温度センサ6、温度調整機構7、循環ポンプ8により、分析部20内に存在する液体を循環させる分析部循環系が構成される。
【0034】
なお、上記の温度センサ6、温度調整機構7、循環ポンプ8の順番は適宜入れ替え可能である。
【0035】
また、
図1において温度センサ6は循環路内に流路5内に配置されている場合について説明しているが、
図1に図示する位置以外の個所に配置することができる。温度センサ6は例えば反応槽10内など恒温媒体の温度が測定できる位置であればよく、循環路外に配置することができる。
【0036】
液体供給部13は、分析部20で用いられる液体を保管しているとともに、恒温媒体を上流から分析部20内の各機器、例えば分注機構1に対して供給する機構であり、液体タンクなどで構成される。この液体供給部13内の液体は、基本的には温度が管理されていない。
【0037】
なお、液体供給部13内の液体が滞留することを抑制するために、液体供給部13内で液体を循環させる構成とすることが望ましい。この構成が供給部循環系を構成する。また、液体供給部13は一時的に恒温媒体を貯留する機能を持っていてもよい。
【0038】
機構用電源回路33は、商用電源31からメインスイッチ32を介して供給される電力を分析部20の各機構に供給する機器である。
【0039】
アクチュエータ駆動回路34は、分析部20を構成する各機構のそれぞれに設けられており、入出力ポート58を介してCPU53からの指令に基づいて各機構を駆動させる。
【0040】
分析制御部50は、入出力ポート58を介して接続された分析部20の機構用電源回路33およびアクチュエータ駆動回路34に制御信号を送り、各機構を駆動させる。また、反応液を測定時に光度計3が検出した信号をA/Dコンバータ59を介して受け取って必要な演算を行うことにより分析動作を実施する。
【0041】
この分析制御部50は、操作部51、インターフェース52、CPU(Central Processing Unit)53、表示部54、制御用電源回路55、メモリ56、記憶媒体57、入出力ポート58、A/Dコンバータ59等を有している。
【0042】
操作部51は、CPU53にインターフェース52を介して指示信号を入力するための機構であり、各種パラメータや設定、分析依頼情報、分析開始等の指示などの各種データを入力するためのキーボードやマウスで構成される。
【0043】
CPU53は、各種演算処理を行う機構であり、後述する記憶媒体57に記憶されたコンピュータプログラムに基づいて自動分析装置100内の各機器の動作を制御する。
【0044】
本実施例のCPU53では、分析部循環系と供給部循環系のうち少なくともいずれか一方の液体の循環の流速を、通常時の第1流速と、第1流速とは異なる第2流速と、で切り替える制御を実行する。その詳細は後述する。
【0045】
なお、本実施例における第1流速で循環させる際の「通常時」とは、例えば、分析の実行動作時のことを意味する。
【0046】
表示部54は、CPU53からの表示指示に基づいて各種情報を表示する機器であり、各種パラメータや設定の入力画面、初回検査あるいは再検査の分析検査データ、測定結果等の情報を表示する液晶ディスプレイ等で構成される。なお、上述した操作部51を兼ねたタッチパネル式の表示装置とすることができる。
【0047】
制御用電源回路55は、商用電源31からメインスイッチ32を介して供給される電力を分析制御部50の各部に供給する機器である。
【0048】
メモリ56は、一時的に種々の情報を記憶する機器である。
【0049】
記憶媒体57は、自動分析装置100内に投入された検体の測定結果、各検体ラックに搭載された検体容器に収容された検体の分析依頼情報等を記録しているフラッシュメモリ等の半導体メモリやHDD(Hard Disk Drive)等の磁気ディスク等の記録用機器である。この記憶媒体57には、自動分析装置100内の各機器の動作の制御用の各種パラメータや設定値、各種表示処理等を実行するための様々なコンピュータプログラム等についても記録されている。
【0050】
入出力ポート58は、CPU53と分析部20の機構用電源回路33およびアクチュエータ駆動回路34との情報の授受を行うための機器である。
【0051】
A/Dコンバータ59は、光度計3からの検出信号をアナログ形式からデジタル形式に変換しCPU53に送るための機器である。
【0052】
以上が自動分析装置100の全体的な構成である。
【0053】
なお、自動分析装置の構成は
図1に示すような生化学の分析項目の分析を実行するものに限られず、免疫の分析項目の分析を実行する免疫分析装置など、他の分析項目の分析を実行する分析装置とすることができる。また、生化学分析装置についても
図1に示す形態に限られず、様々な各機構を適宜追加、あるいは削除したものとすることができ、他の分析項目、例えば電解質を測定する分析機器を別途搭載したものとすることや、
図1に示した各機構の数を適宜変更したものとすることができる。
【0054】
また、自動分析装置は
図1に示すような単一の分析モジュール構成とする形態に限られず、様々な同一あるいは異なる分析項目を測定可能な分析モジュールや前処理を行う前処理モジュールを搬送装置で2つ以上接続する構成とすることができる。
【0055】
上述のような自動分析装置100による検体の分析処理は、一般的に以下の順に従い実行される。
【0056】
一検体に対して指示された検査項目の分析パラメータに従って、まず、分注機構1によって検体を反応容器11へと分注する。次に、分注機構1によって、分析に使用する試薬を試薬保冷部12の試薬容器から先に検体を分注した反応容器11に対して分注する。続いて、撹拌機構4で反応容器11内の検体と試薬との混合液の撹拌を行い、反応液を調製する。
【0057】
その後、光源2から発生させた光を反応液の入った反応容器11を透過させ、例えば透過光の光度を光度計3により測定する。光度計3により測定された光度を分析制御部50のA/Dコンバータ59を介してCPU53に送信する。
【0058】
CPU53における演算処理によって検体中の所定の成分の濃度を求めることで定性・定量分析を行い、結果を表示部54等にて表示させるとともに、記憶媒体57に記憶させる。
【0059】
次いで、本実施例の自動分析装置100における恒温媒体を始めとした液体の循環流量の変更制御の詳細について
図2と
図15を用いて説明する。
図2は循環ポンプの動作の流れを示すフロー図、
図15は反応槽の詳細を概略的に示す図である。
【0060】
自動分析装置100では、上記の分析動作が行われている間、反応容器11は反応槽10内に収容されている恒温媒体により一定の温度に保たれている。これは反応容器11内の検体と試薬とを一定の温度で反応させる必要があるためである。
【0061】
このような恒温媒体は、自動分析装置100外より液体供給部13を介して自動分析装置100内に導入される。恒温媒体としては水が用いられることが多い。この水は、同時に自動分析装置100内の分注機構1等の各所で洗浄を行う際にも使用される。
【0062】
恒温媒体は循環ポンプ8により、温度を安定させるのに適した既定の流速で反応槽10内および循環経路(流路5)内を循環している。この時の循環ポンプ8の回転数を第1回転数とする。
【0063】
しかしながら、分析動作時以外では反応容器11内に一定の温度に保つべき対象物がないため、恒温媒体を分析動作時と等しい流速で循環させる必要はない。同時に洗浄にも恒温媒体を利用している場合には消費もないため、恒温媒体の供給の必要がなく、液体供給部13においても流れは生じない。
【0064】
ここで、液体供給部13や反応槽10内は定期的に清掃作業を行わずにいると、菌が繁殖し、例えば、反応槽10の壁面などの流速が遅いところ又は恒温媒体が停滞するようなところにバイオフィルムが作られてしまうことが知られている。
【0065】
図15を用いて詳しく説明する。
図15の左は反応槽10を上面から見た図、右はA-A’の断面図およびB-B’の断面図である。反応槽10は、分注機構1を用いて抗菌作用などのある薬剤を添加するためのくぼみ10a、恒温媒体を流路5から反応槽10内に供給するための恒温媒体循環口10b、反応槽10内の浮遊物除去フィルタ17などの凹凸部を有する。このような場所は流速が遅くなったり恒温媒体が停滞し易いので定期的に清掃作業を行わないとバイオフィルムが作られ易い。また、特にバイオフィルムが作られやすい場所の例として、恒温媒体循環口10bの背面10cが挙げられる。A-A’の断面図の略円形の配管箇所から、図示するよう矢印方向に恒温媒体が反応槽内に供給される。矢印方向の媒体の流れは比較的速いもののその逆側の背面10cの付け根の箇所は背面10cが流れに対して抵抗となるため流速が比較的遅くなり恒温媒体が停滞し易い。このような箇所においても定期的に清掃作業を行わずにいるとバイオフィルムが作られ易い。
【0066】
そこで、本実施例では、所定の時間間隔で、定期的に、または、任意の時間間隔で複数回、分析作業後などの分析の妨げにならない際に、分析動作時と比べて恒温媒体や液体の流速を速くする、あるいは変化させることで、バイオフィルムの生成を抑制する制御を実行する。
【0067】
例えば、流速を速めることにより厚みのあるバイオフィルムが作成されるのを抑制できるため、光路を横切った際に分析の妨げとなるような大きなバイオフィルムへと成長するのを妨げることができる。
【0068】
恒温媒体や液体の循環速度制御は、上記の分析作業後など、分析の妨げにならない際に行うことが望ましく、CPU53が入出力ポート58を介してアクチュエータ駆動回路34に循環ポンプ8の回転数を制御する制御信号を送ることにより実行される。この際の制御信号を第2制御信号、循環ポンプ8の回転数を第2回転数とする。
【0069】
以下、
図2を用いて流速制御の流れについて説明する。
【0070】
図2に示すように、まず、CPU53は、オペレータの操作部51の操作によって入力された分析開始の指令をインターフェース52を介して受ける(ステップS201)と、入出力ポート58を介しアクチュエータ駆動回路34に第1制御信号を出力する(ステップS202)。
【0071】
アクチュエータ駆動回路34は、第1制御信号に基づき、循環ポンプ8を第1回転数で駆動させる(ステップS203)。これにより、恒温媒体が反応槽10や流路5内を第1流速で循環する。
【0072】
その後、CPU53は、現在の装置の状況が分析中であるか否かを判定する(ステップS204)。分析中であると判定されたときは処理をステップS204に戻し、分析中でないと判定されたときは処理をステップS205に進める。
【0073】
次いで、CPU53は、入出力ポート58を介しアクチュエータ駆動回路34に第2制御信号を出力する(ステップS205)。
【0074】
アクチュエータ駆動回路34は、第2制御信号に基づき、循環ポンプ8を第2回転数で駆動させる(ステップS206)。これにより、恒温媒体が反応槽10や流路5内を第2流速で循環する。
【0075】
第2流速は、例えば第1流速の1.2~2.5倍になるよう制御することが望ましい。流速を速くするとバイオフィルム自体は作られ難くなるが恒温媒体が反応槽10から溢れてしまうため溢れない流速が上限となる。一方、遅くする方について、第2流速は、例えば第1流速の0.2~0.8倍になるよう制御することが望ましい。流速を遅くすること自体でバイオフィルムの形成を抑制するのではなく流速を変化させることで、流れに変化が生じ恒温媒体が停滞する箇所の恒温媒体を効率的に置換することができる。これによりバイオフィルムの形成を抑制することが期待できる。
【0076】
その後、CPU53は、オペレータより分析開始の指令を受けたか否かを判定する(ステップS207)。指令を受けたと判定されたときは処理をステップS202に戻し、指令を受けていないと判定されたときは処理をステップS208に進める。
【0077】
その後、CPU53は、分析計画が全て終了したか否かを判定する(ステップS208)。終了したと判定されたときは処理を終了させ、終了していないと判定されたときは処理をステップS207に戻す。
【0078】
なお、液体供給部13に循環流路を設けた場合には、同様に流速変更制御を実行する。
【0079】
次に、本実施例の効果について説明する。
【0080】
上述した本発明の実施例1の自動分析装置100は、検体の分析を実施する分析部20と、分析部20で用いられる液体を保管、供給する供給部と、分析部20内に存在する液体を循環させる分析部循環系、および供給部内に存在する液体を循環させる供給部循環系と、自動分析装置100の動作を制御する分析制御部50と、を備え、分析制御部50は、分析部循環系と供給部循環系のうち少なくともいずれか一方の液体の循環の流速を、通常時の第1流速と第1流速とは異なる第2流速とで切り替える。
【0081】
これによって、一定の流速のみで循環している場合に液体供給部13や反応槽10、流路5内で恒温媒体や液体が滞留してしまう箇所にも流れを生じさせて、バイオフィルムの原因となる菌類の繁殖を従来に比べて抑制する。このため、恒温媒体を始めとした液体の交換の頻度や、液体供給部13や反応槽10、流路5内の清掃作業の頻度を従来の装置に比べて減らすことができる。従って、オペレータが行うメンテナンス作業の時間を軽減し、負担を軽減することが可能な自動分析装置とすることができる。
【0082】
<実施例2>
本発明の実施例2の自動分析装置について
図3および
図4を用いて説明する。
図3は本実施例2に係る自動分析装置の全体構成を概略的に示す図、
図4は温度調整機構の動作の流れを示すフロー図である。なお、実施例1と同じ構成には同一の符号を示し、説明は省略する。以下の実施例においても同様とする。
【0083】
図3に示す本実施例の自動分析装置100Aは、実施例1の自動分析装置100と同様に、分析動作時は恒温媒体が分析に適切な規定の温度になるよう温度調節を行う。更に、分析制御部50AのCPU53Aは、その日の分析がすべて終了して装置電源を切る時、装置起動時、分析部20Aで一定時間以上分析が計画されていない時、所定の時間間隔、のうち少なくともいずれかのタイミングで、液体を温度調整機構7による通常の温度調節時より加熱する制御を実行する。
【0084】
より具体的には、CPU53Aは、オペレータの操作部51による操作に基づいて装置電源オフの信号や電源オンの信号等の加熱制御開始のトリガー信号をインターフェース52を介して受け取った際には、温度調整機構7により加熱を開始するよう、加熱信号を入出力ポート58を介して分析部20Aのアクチュエータ駆動回路34へ出力する。
【0085】
CPU53Aは、常時、入出力ポート58を介して温度センサ6から温度情報を受け取り、その情報を基に入出力ポート58を介し温度調整機構7を駆動するアクチュエータ駆動回路34に信号を送ることにより、通常時の37度より高い温度、例えば75度以上に恒温媒体を加熱することで恒温媒体内の菌を殺菌する。なお、加熱温度は75度以上である必要はなく、装置の構成や運転条件に応じて適宜設定可能である。
【0086】
以下、
図4を用いて本実施例での加熱制御の流れについて説明する。
図4では、装置の電源オフの場合に加熱制御を実行する場合について説明する。
【0087】
図4に示すように、まず、CPU53Aは、オペレータの操作部51の操作によって入力された装置電源オフの指令をインターフェース52を介して受ける(ステップS301)と、入出力ポート58を介しアクチュエータ駆動回路34に昇温信号を出力(ステップS302)し、アクチュエータ駆動回路34は、昇温信号に基づき、温度調整機構7のヒーターの出力を上昇させる。
【0088】
その後、CPU53は、温度センサ6で検知される恒温媒体の温度が75度以上であるか否かを判定する(ステップS303)。75度以上でないと判定されたときは処理をステップS303に戻す。
【0089】
これに対し、ステップS303において75度以上であると判定されたときは処理をステップS304に進め、次いで、CPU53は、入出力ポート58を介しアクチュエータ駆動回路34および機構用電源回路33に対して昇温完了信号を出力する(ステップS304)。アクチュエータ駆動回路34は入力された昇温完了信号に基づき一定時間後に温度調整機構7の動作を終了させるとともに、機構用電源回路33は入力された昇温完了信号に基づいて一定時間後に温度調整機構7への電力供給を完了させ、処理を完了させる。
【0090】
その他の構成・動作は前述した実施例1の自動分析装置100と略同じ構成・動作であり、詳細は省略する。
【0091】
本発明の実施例2の自動分析装置100Aにおいても、前述した実施例1の自動分析装置100とほぼ同様な効果が得られる。
【0092】
また、分析部循環系内の液体の温度を調節する温度調整機構7を更に備え、分析制御部50Aは、装置電源を切る時、装置起動時、分析部20Aで一定時間以上分析が計画されていない時、所定の時間間隔、のうち少なくともいずれかのタイミングで、液体を温度調整機構7による通常の温度調節時より加熱することにより、反応槽10内の繁殖能力のある菌の数をより効果的に減らすことができるため、オペレータの負担の更なる軽減を図ることができる。
【0093】
なお、本実施例では、恒温媒体を加熱する形態に限られず、一定時間分析しない場合や装置の電源オフの前に恒温媒体を冷却する制御を実行するものとしてもよいし、加熱と冷却のいずれも実行するものとしてもよい。
【0094】
<実施例3>
本発明の実施例3の自動分析装置について
図5を用いて説明する。
図5は本実施例3に係る自動分析装置の全体構成を概略的に示す図である。
【0095】
図5に示す本実施例の自動分析装置100Bは、実施例1の自動分析装置100あるいは実施例2の自動分析装置100Aに、更に、分析部20B内の恒温媒体や液体に紫外線を照射することで恒温媒体を殺菌する紫外線源14a,14bを設けた構成となっている。
【0096】
なお、紫外線源14aは、循環している恒温媒体に紫外線を照射できる位置であれば、循環路外のいずれの位置に配置されていてもよく、例えば反応槽10の位置等に配置することができる。
【0097】
また、紫外線源14bについても、液体供給部13から分析部20B内の各機構に供給される液体に紫外線を照射する構成に限られず、液体供給部13の液体に紫外線を照射する構成や供給部の循環系を構成している液体に紫外線を照射する構成とすることができる。
【0098】
更に、
図5に示している温度センサ6、温度調整機構7、循環ポンプ8や、紫外線源14a,14bの順番は図示している箇所に限定されず、適宜入れ替えることができる。
【0099】
そして、本実施例の自動分析装置100Bでは、分析制御部50BのCPU53Bは、紫外線源14a,14bを、所定の時間間隔で定期的に、もしくは任意の時間間隔で複数回、点灯させるように構成されている。なお、常時点灯させる構成とすることもできる。
【0100】
例えば、分析作業後などの分析の妨げにならない時に紫外線を照射させることが望ましい。また、循環速度が速められていない場合に、紫外線源14a,14bの殺菌効率が高まるように恒温媒体の循環速度を遅くすることも可能である。これにより恒温媒体が紫外線源14a,14bの照射範囲に滞在する時間が長くすることができる。
【0101】
その他の構成・動作は前述した実施例1の自動分析装置100や実施例2の自動分析装置100Aと略同じ構成・動作であり、詳細は省略する。
【0102】
本発明の実施例3の自動分析装置100Bにおいても、前述した実施例1の自動分析装置100等とほぼ同様な効果が得られる。
【0103】
また、液体に紫外線を照射する紫外線源14a,14bを更に備えたことにより、殺菌力の高い紫外線照射を行うことができ、より効果的に菌類の繁殖を抑制することができる。従って、恒温媒体を始めとした液体の交換の頻度や反応槽10内の清掃作業の頻度をより効果的に減らすことができる。
【0104】
更に、分析制御部50Bは、紫外線源14a,14bを、所定の時間間隔で定期的に、もしくは任意の時間間隔で複数回、点灯させることで、更に効果的に菌類の繁殖を抑制することができるとともに、常時点灯させる場合に比べて紫外線源14a,14bの損耗を抑制でき、更なるメンテナンスレス化にも寄与することができる。
【0105】
<実施例4>
本発明の実施例4の自動分析装置について
図6および
図7を用いて説明する。
図6は本実施例4に係る自動分析装置の全体構成を概略的に示す図、
図7は休止制御部および液体殺菌部の詳細を周辺構成とともに概略的に示す図である。
【0106】
図6に示す本実施例の自動分析装置100Cは、実施例3の自動分析装置100Bに加えて、更に、継電器36や、休止制御部37、液体殺菌部38等を備えている。
【0107】
本実施例の自動分析装置100Cでは、商用電源31からメインスイッチ32および継電器36を介して機構用電源回路33および制御用電源回路55に電力を供給している。
【0108】
メインスイッチ32は、本実施例においても漏電や過電流等が生じた場合に自動分析装置全体への電力供給を遮断するブレーカとしての機能を有している。
【0109】
継電器36は、分析制御部50の制御用電源回路55や分析部20Cの機構用電源回路33への電力供給および遮断を切り替えるものであり、その切り替え制御は、休止制御部37からの指令に基づいて行われる。
【0110】
図7に示すように、休止制御部37は、各情報を記憶する記憶部としての休止制御部用メモリ37aや、制御部37b、CPU53と設定情報や異常情報を送受信する設定・異常情報通信路39などを備えている。
【0111】
制御部37bは、休止制御部用メモリ37aからの情報、および液体殺菌部38からの情報に基づいて、休止制御部37の動作を制御する。特には、制御部37bは、試薬保冷部12や液体殺菌部38の紫外線源14a,14bに電力が供給された状態を保つとともに、継電器36への電力供給、すなわち分析部20Cおよび分析制御部50への電力供給を遮断する休止状態と分析部20Cおよび分析制御部50へ電力を供給する起動状態とを切り替える制御を実行する。
【0112】
この制御部37bは、CPUやメモリ、インターフェース等を備えたコンピュータやFPGA(Field-Programmable Gate Array)にプログラムを読み込ませて計算を実行させることで実現できる。これらのプログラムは各構成内の内部記録媒体や外部記録媒体(図示省略)に格納されており、CPUによって読み出され、実行される。
【0113】
液体殺菌部38は、恒温媒体を循環させるための循環ポンプ8や、恒温媒体を殺菌する紫外線源14a,14b、商用電源31からメインスイッチ32を介して供給される電力を液体殺菌部38の各部に供給する殺菌用電源回路38aを備えており、休止状態においても、商用電源31からメインスイッチ32を介して電力供給されている。
【0114】
なお、休止状態時には、紫外線源14a,14bを点灯させ続けてもよいし、休止制御部37の制御部37bの指令により所定の時間間隔で定期的に点灯してもよいし、休止制御部37の制御部37bの指令により任意の時間間隔で複数回点灯してもよい。
【0115】
また、休止制御部37の制御部37bにより、休止状態時、起動状態で分析動作時以外のいずれか、もしくは、両方の場合において実施例1で説明したように、液体殺菌部38の循環ポンプ8を用い、恒温媒体の流速を分析動作時と分析動作時以外で変えてもよい。
【0116】
更には、実施例2で説明したように、温度調整機構7による液体、恒温媒体の加熱制御を実行することができる。
【0117】
その他の構成・動作は前述した実施例3の自動分析装置100Bと略同じ構成・動作であり、詳細は省略する。
【0118】
本発明の実施例4の自動分析装置100Cにおいても、前述した実施例3の自動分析装置100Bとほぼ同様な効果が得られる。
【0119】
また、分析部20C、および分析制御部50への電力供給および遮断を切り替える継電器36と、紫外線源14a,14bに電力が供給された状態を保ち、分析部20Cおよび分析制御部50への電力供給を遮断する休止状態と分析部20Cおよび分析制御部50へ電力を供給する起動状態とを切り替える休止制御部37と、を更に備えたことにより、自動分析装置100Cの電源がオフとなっている際にも、液体供給部13などの液体に対して紫外線を照射することが可能となる。このため、長期間にわたって分析を行わない場合においても液体に雑菌が繁殖してしまうことを効果的に抑制することができ、オペレータの負担軽減を更に効果的に図ることができる。
【0120】
<実施例5>
本発明の実施例5の自動分析装置について
図8乃至
図11を用いて説明する。
図8は本実施例5に係る自動分析装置の全体構成を概略的に示す図、
図9および
図10は紫外線源の光量が規定値を下回った場合に表示部に表示される画面の例を示す図、
図11は液体量の異常を検知した際に表示部に表示される画面の例を示す図である。
【0121】
図8に示す本実施例の自動分析装置100Dは、実施例4の自動分析装置100Cに加えて、分析部20Dの液体殺菌部38D内に、紫外線源14a,14bの異常を検知する点灯検知センサ15や、反応槽10内の恒温媒体の量を検知する液量センサ16を更に備えている。点灯検知センサ15は、紫外線源14a,14bから照射される紫外線の届く範囲に配置する必要があるが、液量センサ16は、反応槽10内でも反応槽10外でも、液量が検知できる限り配置は特に限定されない。
【0122】
本実施例の自動分析装置100Dでは、休止制御部37Dは、点灯検知センサ15の情報に基づいて紫外線源14a,14bに異常が生じていると判定された場合は、表示部54に異常を検知したことを表示する等の方法により異常をオペレータに知らせる。
【0123】
図9は紫外線源14a,14bの光量が制御部37bで指令した量より小さい場合に表示部54に表示する画面の例である。
図9に示すように、表示部54に警告情報54aとして、「注意:UV光源の強度低下が検出されました」と表示させる。
【0124】
また、
図10は紫外線源14a,14bの光量が既定値を下回った場合に表示部54に表示する画面の例である。
図10に示すように、表示部54に警告情報54bとして、「警報:UV光源を交換する必要があります」と表示させる。これにより、オペレータは紫外線源14a,14bの交換が必要であることを容易に認識することができる。
【0125】
また、休止制御部37Dは、点灯検知センサ15の情報に基づいて紫外線源14a,14bへの電力供給を遮断することができる。例えば、紫外線源14a,14bの光量が既定値を下回った場合は、紫外線源14a,14bへの電力供給を遮断するよう機構用電源回路33に信号を送ることができる。
【0126】
また、休止制御部37Dは、点灯検知センサ15の情報に基づいて、例えば紫外線源14a,14bの故障などの異常があると判定した場合においても、定期的にメンテナンス作業を実施すれば装置を使用可能とすることができる。
【0127】
また、本実施例では、温度センサ6を液体殺菌部38Dに組み込み、休止状態時においても電力が供給されるようにしている。
【0128】
そのうえで、休止制御部37Dは、液体殺菌部38Dの温度センサ6で測定された液体の温度情報に基づいて、紫外線源14a,14bで照射される紫外線の強度を調整することができる。また、液体殺菌部38Dの循環ポンプ8に指令を出して、実施例1のように分析部循環系あるいは供給部循環系での液体の流速、のうち少なくともいずれかを制御することができる。どちらの制御を実行してもよいし、いずれか一方でもよい。
【0129】
更に、本実施例では、温度調整機構7も液体殺菌部38Dに組み込み、休止状態時においても電力が供給されるようにする。
【0130】
そのうえで、休止制御部37Dは、休止状態時に、恒温媒体を温度調整機構7により75度以上に加熱することで殺菌することができる。または、恒温媒体を5度以下に冷却することで菌の増殖スピードを抑えることができる。これにより、恒温媒体を菌類の繁殖に適さない温度にすることができ、恒温媒体内での菌類の繁殖を抑制できる。
【0131】
また、本実施例では、休止制御部37Dは、休止状態時などにおいて、液量センサ16で検出される液量に異常が生じていると判断される場合は、表示部54に恒温媒体の量が異常値であることを検知したことを表示することによって異常をオペレータに知らせることができる。
【0132】
図11は恒温媒体の量の異常を検知した際に表示部54に表示する画面の例である。
図11に示すように、表示部54に警告情報54cとして、「警報:滅菌プロセスが一時停止されました」と表示させる。
【0133】
また、休止制御部37Dは、異常をオペレータに知らせることに替わりあるいは加えて、液体殺菌部38Dの殺菌用電源回路38aに対して、紫外線源14a,14b等の液体殺菌部38Dの各部への電力供給を遮断する指令信号を出力することができる。
【0134】
更には、休止制御部37Dは、異常をオペレータに知らせることや液体殺菌部38Dの各部への電力供給を遮断することに替わりあるいは加えて、液体供給部13からの液体を増量もしくは減量を実行することができる。この場合、液体供給部13は、恒温媒体を削減することも可能な構成であることが望ましい。
【0135】
液体殺菌部38への電力供給を遮断すると、その間、恒温媒体は殺菌されないため、装置起動時に反応槽10の清掃や恒温媒体の交換などのメンテナンス作業を行う必要がある。
【0136】
そこで、本実施例では、液量センサ16の情報を基に、制御部37bは恒温媒体の量が規定の正常値と乖離していると判断した場合は、液体供給部13より恒温媒体を追加もしくは削減することができる。
【0137】
その他の構成・動作は前述した実施例4の自動分析装置100Cと略同じ構成・動作であり、詳細は省略する。
【0138】
本発明の実施例5の自動分析装置100Dにおいても、前述した実施例4の自動分析装置100Cとほぼ同様な効果が得られる。
【0139】
また、紫外線源14a,14bの異常を検知する点灯検知センサ15を更に備えたことにより、紫外線源14a,14bの異常を早期に検知することが可能となり、紫外線による殺菌が行われない、との事態が生じることを抑制することができ、メンテナンスレス化をより容易に実現することができる。
【0140】
更に、点灯検知センサ15の情報に基づいて異常をオペレータに知らせることで、オペレータは紫外線源14a,14bの殺菌効力の低下を認識でき、紫外線源14a,14bを交換する時期が近づいていることを認識できるため、紫外線による殺菌が行われない、との事態が生じることをより確実に抑制することができる。
【0141】
また、点灯検知センサ15の情報に基づいて紫外線源14a,14bへの電力供給を遮断することにより、異常が生じている可能性の高い紫外線源14a,14bに対して不必要に電力が供給されることを防ぐことができ、より深刻な異常が生じることを抑制できる。このため、メンテナンスを要する箇所が必要以上に増加してしまうことを防ぐことができ、同様にメンテナンス作業時間の短縮をより容易に実現することができる。
【0142】
更に、分析部循環系あるいは供給部循環系の液体の量を検知する液量センサ16を更に備えたことにより、装置内における液体や恒温媒体の量に不具合が生じているか否かを判断することができるようになり、液量不足による分析中断などの不都合が生じることを抑制することができる。
【0143】
また、液量センサ16の情報に基づいて、異常をオペレータに知らせることにより、オペレータが恒温媒体殺菌作業が中断されていたことを認識でき、何らかの対処が必要であることが認識できる。更に、紫外線源14a,14bへの電力供給を遮断する、液体を増量もしくは減量することにより、休止状態時においても恒温媒体の量を一定に保つことができたり、液体殺菌部38への電力供給が遮断されないため、それに伴うメンテナンス作業を避けることができる。
【0144】
更に、菌類の繁殖率は温度に依存し、休止状態での恒温媒体の温度は装置が設置されている環境の温度に依存するため、温度センサ6で測定された液体の温度情報に基づいて、紫外線源14a,14bで照射される紫外線の強度、分析部循環系あるいは供給部循環系での液体の流速、のうち少なくともいずれかを制御することにより、装置の状態を考慮した殺菌作業をより的確に実行することができ、オペレータの負担の更なる軽減をより容易に図ることができる。
【0145】
<実施例6>
本発明の実施例6の自動分析装置について
図12を用いて説明する。
図12は本実施例6に係る自動分析装置の全体構成を概略的に示す図である。
【0146】
図12に示す本実施例の自動分析装置100Eの構成は、
図6で示した実施例4の自動分析装置100Cと略同じであり、装置の休止状態中などにおいても紫外線源14a,14bを、所定の時間間隔で定期的に、もしくは任意の時間間隔で複数回、点灯させる。
【0147】
図6に示した自動分析装置100Cとの違いは、自動分析装置100Cでは液体殺菌部38の循環ポンプ8を用い、恒温媒体の流速を分析動作時と分析動作時以外で変える制御を実施したが、本実施例の自動分析装置100Eでは、分析部20Eの液体殺菌部38Eや分析制御部50において、このような流速制御は実施しない。また、温度調整機構7による液体、恒温媒体の加熱制御についても実施しない。
【0148】
その他の構成・動作は前述した実施例4の自動分析装置100Cと略同じ構成・動作であり、詳細は省略する。
【0149】
本発明の実施例6のように、分析部20E、および分析制御部50への電力供給および遮断を切り替える継電器36と、紫外線源14a,14bに電力が供給された状態を保ち、分析部20Eおよび分析制御部50への電力供給を遮断する休止状態と分析部20Eおよび分析制御部50へ電力を供給する起動状態とを切り替える休止制御部37Eと、を備えた自動分析装置100Eによれば、装置の起動状態時のみならず、休止状態時も恒温媒体を紫外線源14a,14bにより殺菌することが可能となる。従って、休止状態時においても反応槽10の菌が繁殖することを効果的に抑制することができるため、前述した実施例1の自動分析装置100とほぼ同様な効果が得られる。
【0150】
<実施例7>
本発明の実施例7の自動分析装置について
図13を用いて説明する。
図13は本実施例7に係る自動分析装置の全体構成を概略的に示す図である。
【0151】
図13に示す本実施例の自動分析装置100Fの構成は、
図12で示した実施例6の自動分析装置100Eと略同じであり、休止制御部37Fは、装置の休止状態中などにおいても、液体殺菌部38Fの紫外線源14a,14bを、所定の時間間隔で定期的に、もしくは任意の時間間隔で複数回、点灯させる。
【0152】
本実施例の自動分析装置100Fでは、更に、休止制御部37Fは、分析停止中や電源オフの前等のタイミングで、分析部循環系と供給部循環系のうち少なくともいずれか一方の液体の循環の流速を、通常時の第1流速と、第1流速とは異なる第2流速と、で切り替える制御を実行する。
【0153】
または、流速制御に替わり、あるいは加えて、休止制御部37Fは、実施例2で説明したように、装置電源を切る時、装置起動時、分析部20Fで一定時間以上分析が計画されていない時、所定の時間間隔、のうち少なくともいずれかのタイミングで、液体を温度調整機構7による通常の温度調節時より加熱する制御を実行する。
【0154】
その他の構成・動作は前述した実施例6の自動分析装置100Eと略同じ構成・動作であり、詳細は省略する。
【0155】
本発明の実施例7の自動分析装置100Fにおいても、前述した実施例6の自動分析装置100Eとほぼ同様な効果が得られるとともに、実施例4特有の効果、あるいは実施例2特有の効果が得られる。
【0156】
<実施例8>
本発明の実施例8の自動分析装置について
図14を用いて説明する。
図14は本実施例8に係る自動分析装置の全体構成を概略的に示す図である。
【0157】
図14に示す本実施例の自動分析装置100Gは、
図8で示した実施例5の自動分析装置100Dと略同じである。
【0158】
本実施例の自動分析装置100Gでは、休止制御部37Fは、装置の休止状態中などにおいても、分析部20Gの液体殺菌部38G内の紫外線源14a,14bを、所定の時間間隔で定期的に、もしくは任意の時間間隔で複数回、点灯させる場合に、実施例5のように、点灯検知センサ15の検出結果に基づいた異常通知制御や紫外線源14a,14bへの電力供給を遮断する制御を実行する。または、あるいは加えて、液量センサ16の情報に基づいて、異常をオペレータに知らせる、紫外線源14a,14bへの電力供給を遮断する、液体を増量もしくは減量する制御を実行する。更には、温度センサ6で測定された液体の温度情報に基づいて、紫外線源14a,14bで照射される紫外線の強度、分析部循環系あるいは供給部循環系での液体の流速、のうち少なくともいずれかを制御する。
【0159】
その他の構成・動作は前述した実施例5の自動分析装置100Dと略同じ構成・動作であり、詳細は省略する。
【0160】
本発明の実施例8の自動分析装置100Gにおいても、前述した実施例6の自動分析装置100Eとほぼ同様な効果が得られるとともに、実施例5特有の効果が得られる。
【0161】
<その他>
なお、本発明は、上記の実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。上記の実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。
【0162】
また、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えることも可能であり、また、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えることも可能である。また、各実施例の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることも可能である。
【符号の説明】
【0163】
1…分注機構
2…光源
3…光度計
4…撹拌機構
5…流路
6…温度センサ
7…温度調整機構(温度調節部)
8…循環ポンプ
10…反応槽(恒温槽)
10a…薬剤添加用くぼみ
10b…恒温媒体循環口
10c…背面
11…反応容器
12…試薬保冷部
13…液体供給部
14a,14b…紫外線源
15…点灯検知センサ
16…液量センサ
17…浮遊物除去フィルタ
20,20A,20B,20C,20D,20E,20F,20G…分析部
31…商用電源
32…メインスイッチ
33…機構用電源回路
34…アクチュエータ駆動回路
36…継電器
37,37D,37E,37F,37G…休止制御部
37a…休止制御部用メモリ
37b…制御部
38,38D,38E,38F,38G…液体殺菌部
38a…殺菌用電源回路
39…設定・異常情報通信路
50,50A,50B…分析制御部
51…操作部
52…インターフェース
53,53A,53B…CPU
54…表示部
54a,54b,54c…警告情報
55…制御用電源回路
56…メモリ
57…記憶媒体
58…入出力ポート
59…A/Dコンバータ
100,100A,100B,100C,100D,100E,100F,100G…自動分析装置