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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-07
(45)【発行日】2023-12-15
(54)【発明の名称】前照灯及び製造方法
(51)【国際特許分類】
   F21S 41/25 20180101AFI20231208BHJP
   F21S 41/143 20180101ALI20231208BHJP
   F21V 5/00 20180101ALI20231208BHJP
   F21V 5/04 20060101ALI20231208BHJP
   F21W 102/13 20180101ALN20231208BHJP
   F21Y 115/10 20160101ALN20231208BHJP
【FI】
F21S41/25
F21S41/143
F21V5/00 600
F21V5/04 500
F21W102:13
F21Y115:10
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2022508688
(86)(22)【出願日】2020-03-18
(86)【国際出願番号】 JP2020011862
(87)【国際公開番号】W WO2021186595
(87)【国際公開日】2021-09-23
【審査請求日】2022-01-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003166
【氏名又は名称】弁理士法人山王内外特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】今儀 潤一
【審査官】河村 勝也
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-192609(JP,A)
【文献】特開2008-288010(JP,A)
【文献】国際公開第2016/006138(WO,A1)
【文献】特開2017-091816(JP,A)
【文献】特開2008-251940(JP,A)
【文献】特開2016-174008(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F21S 41/00
F21V 5/00
F21W 102/13
F21Y 115/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源により出力された光を集光する集光部を有する集光レンズと、前記集光レンズにより集光された光を車両に対する前方に投射する投射レンズと、を含む光学系を備え、
前記集光部は、第1集光部及び第2集光部を含み、
前記第1集光部は、前記光源により出力された光が入射するとともに屈折する第1入射面部を含み、
前記第2集光部は、前記光源により出力された光が入射するとともに屈折する第2入射面部と、前記第2入射面部に入射した光を反射する反射面部と、を含み、
前記第2入射面部は、前記光源に近づくにつれて次第に狭まるテーパ状の内周面部により構成されており、
前記投射レンズは、前記投射レンズの焦点に対応する位置に設けられたカットオフライン生成部を有する
ことを特徴とする前照灯。
【請求項2】
前記集光レンズの光軸及び前記投射レンズの光軸が所定の角度差を有して配置されていることを特徴とする請求項記載の前照灯。
【請求項3】
前記集光レンズの光軸及び前記投射レンズの光軸が同軸に配置されていることを特徴とする請求項記載の前照灯。
【請求項4】
前記集光レンズの材料は、シリコーン樹脂を用いたものであることを特徴とする請求項1記載の前照灯。
【請求項5】
前記投射レンズの材料は、前記集光レンズの材料と異なる材料を用いたものであることを特徴とする請求項記載の前照灯。
【請求項6】
前記投射レンズの材料は、前記集光レンズの材料に比して屈折率の温度依存性が低い材料を用いたものであることを特徴とする請求項記載の前照灯。
【請求項7】
前記投射レンズの材料は、ポリカーボネート樹脂又はアクリル樹脂を用いたものであることを特徴とする請求項記載の前照灯。
【請求項8】
前照灯の製造方法であって、
前記前照灯は、光源により出力された光を集光する集光部を有する集光レンズと、前記集光レンズにより集光された光を車両に対する前方に投射する投射レンズと、を含む光学系を備え、前記集光部は、第1集光部及び第2集光部を含み、前記第1集光部は、前記光源により出力された光が入射するとともに屈折する第1入射面部を含み、前記第2集光部は、前記光源により出力された光が入射するとともに屈折する第2入射面部と、前記第2入射面部に入射した光を反射する反射面部と、を含み、前記第2入射面部は、前記光源に近づくにつれて次第に狭まるテーパ状の内周面部により構成されており、前記投射レンズは、前記投射レンズの焦点に対応する位置に設けられたカットオフライン生成部を有するものであり、前記集光レンズの材料は、シリコーン樹脂を用いたものであり、
当該製造方法は、液状の前記シリコーン樹脂を金型に注入する工程と、前記シリコーン樹脂を加熱することにより前記集光レンズを形成する工程と、前記第2入射面部を含む部位の無理抜きにより前記集光レンズを離型する工程と、を備える
ことを特徴とする製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、前照灯及び製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両用の前照灯において、いわゆる「プロジェクタ方式」の光学系が開発されている。プロジェクタ方式の光学系は、集光素子、遮光板及び投射レンズを含むものである。ロービーム用の配光におけるカットオフライン(以下単に「カットオフライン」という。)は、遮光板により生成される。特許文献1には、プロジェクタ方式の光学系を有する前照灯が開示されている。特許文献1記載の前照灯においては、集光素子に反射板が用いられている。
【0003】
また、従来、車両用の前照灯において、いわゆる「ダイレクトプロジェクション方式」の光学系が開発されている。ダイレクトプロジェクション方式の光学系は、集光素子及び投射レンズを含むものである。投射レンズは、カットオフラインを生成する部位(以下「カットオフライン生成部」という。)を有している。ダイレクトプロジェクション方式の光学系を用いることにより、プロジェクタ方式の光学系を用いる場合に比して、光利用効率の向上を図ることができる。また、前照灯の高さ方向に対する投射レンズの小型化(すなわち薄型化)を図ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2009-199938号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年、いわゆる「細目」のデザインによる前照灯を実現する観点から、光利用効率を低下させることなく投射レンズを更に薄型にすることが求められている。このため、集光素子による集光能力の向上が求められている。
【0006】
ここで、集光素子に樹脂製のTIR(Total Internal Reflection)レンズが用いられることがある。TIRレンズは、光源に対して対向配置される平面状又は曲面状の入射面部(以下「第1入射面部」という。)を有している。また、TIRレンズは、第1入射面部に対する周囲(すなわち光源に対する周囲)に配置される内周面状の入射面部(以下「第2入射面部」という。)を有している。
【0007】
通常、TIRレンズの第2入射面部は、いわゆる「抜き勾配」を確保する観点から、光源に近づくにつれて(すなわち第1入射面部から離れるにつれて)次第に広がるテーパ状の面部により構成されている。これにより、投射レンズに対する光の放射角を小さくすることが困難であるという問題があった。すなわち、集光素子による集光能力を向上することが困難であるという問題があった。
【0008】
本開示は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、集光素子による集光能力の向上を図ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示に係る前照灯は、光源により出力された光を集光する集光部を有する集光レンズと、集光レンズにより集光された光を車両に対する前方に投射する投射レンズと、を含む光学系を備え、集光部は、第1集光部及び第2集光部を含み、第1集光部は、光源により出力された光が入射するとともに屈折する第1入射面部を含み、第2集光部は、光源により出力された光が入射するとともに屈折する第2入射面部と、第2入射面部に入射した光を反射する反射面部と、を含み、第2入射面部は、光源に近づくにつれて次第に狭まるテーパ状の内周面部により構成されており、投射レンズは、投射レンズの焦点に対応する位置に設けられたカットオフライン生成部を有する。
【発明の効果】
【0010】
本開示によれば、上記のように構成したので、集光素子による集光能力の向上を図ることができる。この結果、投射レンズの薄型化を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施の形態1に係る前照灯における光学系の要部を示す説明図である。
図2】比較用の集光レンズによる集光の例を示す説明図である。
図3】実施の形態1に係る前照灯における光学系に含まれる集光レンズによる集光の例を示す説明図である。
図4】実施の形態2に係る前照灯における光学系の要部を示す説明図である。
図5】実施の形態3に係る前照灯における光学系の要部を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、この開示をより詳細に説明するために、この開示を実施するための形態について、添付の図面に従って説明する。
【0013】
実施の形態1.
図1は、実施の形態1に係る前照灯における光学系の要部を示す説明図である。図1を参照して、実施の形態1に係る前照灯について、光学系を中心に説明する。
【0014】
前照灯100は、光源1を有している。光源1は、例えば、LED(Light Emitting Diode)により構成されている。また、前照灯100は、光学系2を有している。光学系2は、集光レンズ3及び投射レンズ4を含むものである。集光レンズ3は、集光素子の機能を果たすものである。すなわち、集光レンズ3は、光源1により出力された光を集光するものである。投射レンズ4は、集光レンズ3により集光された光を車両(不図示)に対する前方に投射するものである。図中、X1は、集光レンズ3の光軸を示している。また、X2は、投射レンズ4の光軸を示している。図1に示す例において、光軸X1及び光軸X2は、同軸に配置されている。
【0015】
ここで、集光レンズ3及び投射レンズ4は、いずれも樹脂製である。ただし、集光レンズ3の材料は、投射レンズ4の材料に比して、耐熱温度が高い材料を用いたものである。また、集光レンズ3の材料は、投射レンズ4の材料に比して、弾性変形しやすい材料を用いたものである。これに対して、投射レンズ4の材料は、集光レンズ3の材料に比して、屈折率の温度依存性が低い材料を用いたものである。
【0016】
具体的には、例えば、集光レンズ3の材料は、光学用のシリコーン樹脂を用いたものである。これに対して、投射レンズ4の材料は、光学用のポリカーボネート樹脂又は光学用のアクリル樹脂を用いたものである。以下、ポリカーボネート樹脂又はアクリル樹脂を総称して「ポリカーボネート樹脂等」ということがある。
【0017】
集光レンズ3は、TIRレンズにより構成されている。集光レンズ3は、略逆円錐台形状の本体部11を有している。本体部11の底面部に略円柱状又は略逆円錐台形状の凹部12が設けられている。すなわち、有天状の凹部12が設けられている。図1に示す例においては、略逆円錐台形状の凹部12が設けられている。
【0018】
かかる形状により、集光レンズ3は、第1入射面部13、第2入射面部14、反射面部15及び出射面部16を有している。すなわち、第1入射面部13は、凹部12の天面部に対応している。第2入射面部14は、凹部12の側面部に対応している。反射面部15は、本体部11の側面部に対応している。出射面部16は、本体部11の天面部に対応している。図中、矢印A1,A2は、第1入射面部13及び出射面部16を通る光路の例を示している。また、矢印A3,A4は、第2入射面部14、反射面部15及び出射面部16を通る光路の例を示している。
【0019】
第1入射面部13は、光源1に対して対向配置されており、かつ、平面状又は曲面状の面部により構成されている。図1に示す例において、第1入射面部13は、曲面状の面部により構成されている。より具体的には、第1入射面部13は、凸球面状の面部により構成されている。
【0020】
第1入射面部13においては、光源1により出力された光が集光レンズ3内に入射するとともに、かかる光が屈折する。これにより、かかる光が集光される(矢印A1,A2参照)。換言すれば、第1入射面部13により、かかる光を集光する部位(以下「第1集光部」又は「集光部」という。)17が構成されている。
【0021】
第2入射面部14は、第1入射面部13に対する周囲(すなわち光源1に対する周囲)に配置されており、かつ、内周面状の面部により構成されている。より具体的には、第2入射面部14は、光軸X1に対して平行な面部により構成されている。以下、かかる平行な面部における傾斜角度を「零の傾斜角度」ということがある。または、第2入射面部14は、光源1に近づくにつれて(すなわち第1入射面部13から離れるにつれて)次第に狭まるテーパ状の面部により構成されている。図1に示す例において、第2入射面部14は、かかるテーパ状の面部により構成されている。以下、かかるテーパ状の面部における傾斜角度を「負の傾斜角度」ということがある。
【0022】
反射面部15は、第2入射面部14に対する周囲に配置されており、かつ、外周面状の面部により構成されている。より具体的には、反射面部15は、光源1に近づくにつれて(すなわち出射面部16から離れるにつれて)次第に狭まるテーパ状の面部により構成されている。
【0023】
第2入射面部14においては、光源1により出力された光が集光レンズ3内に入射するとともに、かかる光が屈折する。当該入射した光は、集光レンズ3内を通過して、反射面部15にて反射する。これにより、かかる光が集光される(矢印A3,A4参照)。換言すれば、第2入射面部14及び反射面部15により、かかる光を集光する部位(以下「第2集光部」又は「集光部」という。)18が構成されている。
【0024】
出射面部16は、第1入射面部13に対して対向配置されており、かつ、反射面部15に対して対向配置されている。出射面部16は、平面状又は曲面状の面部により構成されている。図1に示す例において、出射面部16は、平面状の面部により構成されている。
【0025】
第1入射面部13にて集光レンズ3内に入射した光は、集光レンズ3内を通過して、出射面部16にて集光レンズ3外に出射する(矢印A1,A2参照)。また、反射面部15にて反射した光も、集光レンズ3内を通過して、出射面部16にて集光レンズ3外に出射する(矢印A3,A4参照)。
【0026】
図1に示す例において、投射レンズ4は、平凸球面レンズにより構成されている。すなわち、投射レンズ4は、平面状の入射面部21を有しており、かつ、凸球面状の出射面部22を有している。入射面部21は、集光レンズ3の出射面部16に対して対向配置されている。
【0027】
出射面部16にて集光レンズ3外に出射した光は、入射面部21にて投射レンズ4内に入射する(矢印A1~A4参照)。当該入射した光は、投射レンズ4内を通過して、出射面部22にて投射レンズ4外に出射する(矢印A1~A4参照)。
【0028】
このようにして、光学系2の要部が構成されている。
【0029】
次に、光学系2における効果について説明する。
【0030】
第一に、光学系2においては、集光レンズ3の第2入射面部14が零の傾斜角度又は負の傾斜角度を有している。これにより、以下のような効果が得られる。
【0031】
図2は、集光レンズ3に対する比較用の集光レンズ3’を示している。集光レンズ3’は、従来の集光レンズに対応するものである。
【0032】
すなわち、集光レンズ3’は、略逆円錐台形状の本体部11’を有している。本体部11’の底面部に略円錐台形状の凹部12’が設けられている。かかる形状により、集光レンズ3’は、第1入射面部13’、第2入射面部14’、反射面部15’及び出射面部16’を有している。集光レンズ3’の面部(13’,14’,15’,16’)は、集光レンズ3の面部(13,14,15,16)にそれぞれ対応するものである。
【0033】
ここで、集光レンズ3’の材料は、投射レンズ(不図示)の材料と同様の材料を用いたものである。具体的には、例えば、集光レンズ3’の材料は、ポリカーボネート樹脂又はアクリル樹脂を用いたものである。
【0034】
また、集光レンズ3’の第2入射面部14’は、光源1’に近づくにつれて(すなわち第1入射面部13’から離れるにつれて)次第に広がるテーパ状の面部により構成されている。以下、かかるテーパ状の面部における傾斜角度を「正の傾斜角度」ということがある。また、第2入射面部14’における光の屈折量に「φ’」の符号を用いることがある。また、第2入射面部14における光の屈折量に「φ」の符号を用いることがある。正の傾斜角度を有する第2入射面部14’における屈折量φ’は、零の傾斜角度又は負の傾斜角度を有する第2入射面部14における屈折量φに比して小さいものである。
【0035】
図2において、矢印A3’,A4’は、第2入射面部14’、反射面部15’及び出射面部16’を通る光路の例を示している。θ1’は、光源1’による光の放射角の例を示している。P’は、光軸X1’に沿う方向に対する位置であって、集光レンズ3’内に入射した光が反射面部15’にて反射する位置の例を示している。D1’は、光源1’と位置P’との間隔を示している。φ’は、第2入射面部14’における光の屈折量の例を示している。θ2’は、集光レンズ3’による光の集光角の例を示している。θ3’は、集光レンズ3’による光の放射角の例を示している(θ2’=θ3’)。
【0036】
他方、図3において、矢印A3,A4は、第2入射面部14、反射面部15及び出射面部16を通る光路の例を示している。θ1は、光源1による光の放射角の例を示している。Pは、光軸X1に沿う方向に対する位置であって、集光レンズ3内に入射した光が反射面部15にて反射する位置の例を示している。D1は、光源1と位置P間の間隔を示している。φは、第2入射面部14における光の屈折量の例を示している。θ2は、集光レンズ3による光の集光角の例を示している。θ3は、集光レンズ3による光の放射角の例を示している(θ2=θ3)。
【0037】
図2に示す放射角θ1’は、図3に示す放射角θ1と同等である。このとき、第2入射面部14’が正の傾斜角度を有しているのに対して、第2入射面部14が零の傾斜角度又は負の傾斜角度を有していることにより、間隔D1が間隔D1’に比して小さくなる。また、屈折量φが屈折量φ’に比して大きくなる。これにより、集光角θ2が集光角θ2’に比して小さくなる。この結果、放射角θ3が放射角θ3’に比して小さくなる。すなわち、投射レンズ4に対する光の入射角(不図示)が小さくなる。
【0038】
このように、集光レンズ3を用いることにより、集光レンズ3’を用いる場合に比して、投射レンズ4に対する光の入射角を小さくすることができる。すなわち、集光レンズ3’による集光能力に比して、集光レンズ3による集光能力を向上することができる。これにより、光利用効率を低下させることなく投射レンズ4を更に薄型にすることができる。この結果、例えば、細目のデザインによる前照灯100を実現することができる。
【0039】
第二に、光学系2においては、投射レンズ4の材料(例えばポリカーボネート樹脂等)に比して耐熱温度が高い材料(例えばシリコーン樹脂)が集光レンズ3の材料に用いられている。これにより、以下のような効果が得られる。
【0040】
図2におけるD2’は、光源1’と第2入射面部14’の先端部との間隔を示している。図3におけるD2は、光源1と第2入射面部14の先端部との間隔を示している。第2入射面部14’が正の傾斜角度を有しているのに対して、第2入射面部14が零の傾斜角度又は負の傾斜角度を有していることにより、間隔D2が間隔D2’に比して小さい。
【0041】
ここで、上記のとおり、シリコーン樹脂は、ポリカーボネート樹脂等に比して高い耐熱温度を有している。これにより、間隔D2が間隔D2’に比して小さいにもかかわらず、集光レンズ3が光源1による発熱に耐えることができる。また、光軸X1に沿う方向において、集光レンズ3に対して光源1を近接配置することができる。
【0042】
第三に、光学系2においては、投射レンズ4の材料(例えばポリカーボネート樹脂等)に比して弾性変形しやすい材料(例えばシリコーン樹脂)が集光レンズ3の材料に用いられている。これにより、以下のような効果が得られる。
【0043】
集光レンズ3’の製造方法は、以下のような第1工程、第2工程及び第3工程を含むものである。すなわち、まず、第1工程にて、液状のポリカーボネート樹脂等が金型に注入される。次いで、第2工程にて、当該注入されたポリカーボネート樹脂等が冷却される。これにより、当該注入されたポリカーボネート樹脂等が硬化して、集光レンズ3’が形成される。次いで、第3工程にて、当該形成された集光レンズ3’が離型される。
【0044】
ここで、第2入射面部14’が正の傾斜角度を有しているため(すなわち凹部12’の形状が略円錐台形状であるため)、第3工程における抜き勾配が確保されている。これにより、集光レンズ3’を金型から容易に取り出すことができる。
【0045】
これに対して、集光レンズ3の製造方法は、以下のような第1工程、第2工程及び第3工程を含むものである。すなわち、まず、第1工程にて、液状のシリコーン樹脂が金型に注入される。次いで、第2工程にて、当該注入されたシリコーン樹脂が加熱される。これにより、当該注入されたシリコーン樹脂が硬化して、集光レンズ3が形成される。次いで、第3工程にて、当該形成された集光レンズ3が離型される。
【0046】
ここで、第2入射面部14が零の傾斜角度又は負の傾斜角度を有しているため(すなわち凹部12の形状が略円柱状又は略逆円錐台形状であるため)、第3工程における抜き勾配が確保されていない。しかしながら、シリコーン樹脂は、ポリカーボネート樹脂等に比して弾性変形しやすい材料である。このため、集光レンズ3のうちの第2入射面部14を含む部位が弾性変形することにより、いわゆる「無理抜き」を実現することができる。これにより、集光レンズ3を金型から容易に取り出すことができる。
【0047】
第四に、光学系2においては、集光レンズ3の材料(例えばシリコーン樹脂)に比して屈折率の温度依存性が低い材料(例えばポリカーボネート樹脂等)が投射レンズ4の材料に用いられている。これにより、以下のような効果が得られる。
【0048】
通常、前照灯100の内部温度は、車両の走行状態及び車両の走行環境などに応じて変動する。また、投射レンズ4の温度は、前照灯100の内部温度及び光源1の点灯状態などに応じて変動する。このため、仮に投射レンズ4の材料にシリコーン樹脂を用いた場合、投射レンズ4の温度の変動に応じて投射レンズ4の屈折率が大きく変動する。これにより、例えば、前照灯100による配光の形状に歪みが発生することがある。これは、車両用の前照灯100において不適である。
【0049】
これに対して、投射レンズ4の材料にポリカーボネート樹脂等を用いることにより、仮に投射レンズ4の材料にシリコーン樹脂を用いる場合に比して、投射レンズ4の温度の変動に対する投射レンズ4の屈折率の変動を抑制することができる。この結果、例えば、上記のような歪みが発生するのを回避することができる。
【0050】
以上のように、実施の形態1に係る前照灯100は、光源1により出力された光を集光する集光部17,18を有する集光レンズ3と、集光レンズ3により集光された光を車両に対する前方に投射する投射レンズ4と、を含む光学系2を備え、集光部17,18は、第1集光部17及び第2集光部18を含み、第1集光部17は、光源1により出力された光が入射するとともに屈折する第1入射面部13を含み、第2集光部18は、光源1により出力された光が入射するとともに屈折する第2入射面部14と、第2入射面部14に入射した光を反射する反射面部15と、を含み、第2入射面部14は、集光レンズ3の光軸X1に対して平行な内周面部又は光源1に近づくにつれて次第に狭まるテーパ状の内周面部により構成されている。これにより、集光レンズ3による集光能力を向上することができる。この結果、集光レンズ3’を用いる場合に比して、光利用効率を低下させることなく投射レンズ4を更に薄型にすることができる。したがって、例えば、細目のデザインによる前照灯100を実現することができる。
【0051】
また、集光レンズ3の材料は、シリコーン樹脂を用いたものである。これにより、金型を用いて集光レンズ3を製造するとき、集光レンズ3の離型を容易にすることができる。また、光源1による発熱に耐えることができる。
【0052】
また、投射レンズ4の材料は、集光レンズ3の材料に比して屈折率の温度依存性が低い材料を用いたものである。これにより、仮に投射レンズ4の材料にシリコーン樹脂を用いる場合に比して、投射レンズ4の温度の変動に対する投射レンズ4の屈折率の変動を抑制することができる。
【0053】
また、投射レンズ4の材料は、ポリカーボネート樹脂又はアクリル樹脂を用いたものである。ポリカーボネート樹脂等を用いることにより、上記のような投射レンズ4を実現することができる。
【0054】
また、実施の形態1に係る製造方法は、前照灯100の製造方法であって、液状のシリコーン樹脂を金型に注入する工程(第1工程)と、シリコーン樹脂を加熱することにより集光レンズ3を形成する工程(第2工程)と、第2入射面部14を含む部位の無理抜きにより集光レンズ3を離型する工程(第3工程)と、を備える。かかる無理抜きにより、集光レンズ3を金型から容易に取り出すことができる。すなわち、前照灯100の製造を容易にすることができる。
【0055】
実施の形態2.
図4は、実施の形態2に係る前照灯における光学系の要部を示す説明図である。図4を参照して、実施の形態2に係る前照灯について、光学系を中心に説明する。なお、図4において、図1に示す要素と同様の要素には同一符号を付して説明を省略する。
【0056】
図4に示す如く、前照灯100aは、光源1を有している。また、前照灯100aは、光学系2aを有している。光学系2aは、集光レンズ3及び投射レンズ4aを含むものである。すなわち、光学系2aは、光学系2における投射レンズ4と異なる投射レンズ4aを含むものである。集光レンズ3の光軸X1及び投射レンズ4aの光軸X2は、所定の角度差αを有して配置されている。
【0057】
投射レンズ4aは、入射面部21及び出射面部22を有している。これに加えて、投射レンズ4aは、反射面部23及びカットオフライン生成部24を有している。
【0058】
入射面部21は、集光レンズ3の出射面部16に対して対向配置されている。出射面部16にて集光レンズ3外に出射した光は、入射面部21にて投射レンズ4a内に入射する。当該入射した光は、投射レンズ4a内を通過して、反射面部23にて反射する。当該反射した光は、投射レンズ4a内を通過して、出射面部22にて投射レンズ4a外に出射する(矢印A3,A4参照)。これにより、かかる光が車両に対する前方に投射される。
【0059】
ここで、投射レンズ4aの焦点Fに対応する位置にカットオフライン生成部24が設けられている。これにより、カットオフラインが生成される。この結果、ロービーム用の配光を実現することができる。また、かかる位置にカットオフライン生成部24が配置されていることにより、カットオフラインを明瞭にすることができる。
【0060】
以上のように、実施の形態2に係る前照灯100aにおいて、投射レンズ4aは、投射レンズ4aの焦点Fに対応する位置に設けられたカットオフライン生成部24を有する。これにより、ロービーム用の配光を実現することができる。また、かかる配光におけるカットオフラインを明瞭にすることができる。
【0061】
また、集光レンズ3の光軸X1及び投射レンズ4aの光軸X2が所定の角度差αを有して配置されている。これにより、後述する実施の形態3に係る前照灯100bに比して、前照灯100aの奥行き方向に対する光学系2aの小型化を図ることができる。この結果、例えば、かかる奥行き方向に対する前照灯100aの小型化を図ることができる。
【0062】
実施の形態3.
図5は、実施の形態3に係る前照灯における光学系の要部を示す説明図である。図5を参照して、実施の形態3に係る前照灯について、光学系を中心に説明する。なお、図5において、図1に示す要素と同様の要素には同一符号を付して説明を省略する。
【0063】
図5に示す如く、前照灯100bは、光源1を有している。また、前照灯100bは、光学系2bを有している。光学系2bは、集光レンズ3及び投射レンズ4bを含むものである。すなわち、光学系2bは、光学系2における投射レンズ4と異なる投射レンズ4bを含むものである。集光レンズ3の光軸X1及び投射レンズ4bの光軸X2は、同軸に配置されている。
【0064】
投射レンズ4bは、入射面部21及び出射面部22を有している。これに加えて、投射レンズ4bは、カットオフライン生成部24を有している。
【0065】
入射面部21は、集光レンズ3の出射面部16に対して対向配置されている。出射面部16にて集光レンズ3外に出射した光は、入射面部21にて投射レンズ4b内に入射する。当該入射した光は、投射レンズ4b内を通過して、出射面部22にて投射レンズ4b外に出射する(矢印A3,A4参照)。これにより、かかる光が車両に対する前方に投射される。
【0066】
ここで、投射レンズ4bの焦点Fに対応する位置にカットオフライン生成部24が設けられている。これにより、カットオフラインが生成される。この結果、ロービーム用の配光を実現することができる。また、かかる位置にカットオフライン生成部24が配置されていることにより、カットオフラインを明瞭にすることができる。
【0067】
以上のように、実施の形態3に係る前照灯100bにおいて、投射レンズ4bは、投射レンズ4bの焦点Fに対応する位置に設けられたカットオフライン生成部24を有する。これにより、ロービーム用の配光を実現することができる。また、かかる配光におけるカットオフラインを明瞭にすることができる。
【0068】
また、集光レンズ3の光軸X1及び投射レンズ4bの光軸X2が同軸に配置されている。これにより、実施の形態2に係る前照灯100aに比して、前照灯100bの高さ方向に対する光学系2bの小型化を図ることができる。この結果、例えば、かかる高さ方向に対する前照灯100bの小型化を図ることができる。
【0069】
なお、本願開示はその開示の範囲内において、各実施の形態の自由な組み合わせ、あるいは各実施の形態の任意の構成要素の変形、もしくは各実施の形態において任意の構成要素の省略が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0070】
本開示に係る製造方法は、前照灯の製造に用いることができる。本開示に係る前照灯は、車両に用いることができる。
【符号の説明】
【0071】
1 光源、2,2a,2b 光学系、3 集光レンズ、4,4a,4b 投射レンズ、11 本体部、12 凹部、13 第1入射面部、14 第2入射面部、15 反射面部、16 出射面部、17 第1集光部(集光部)、18 第2集光部(集光部)、21 入射面部、22 出射面部、23 反射面部、24 カットオフライン生成部、100,100a,100b 前照灯。
図1
図2
図3
図4
図5